米国がファーウェイ製品の使用禁止を1年延長

トランプ米大統領は今週、一部の海外通信会社との商取引を禁止した昨年の大統領命令の一年延長を決定した。これは当初の命令から1年近くたった時点での発令であり、今回の期限は2021年5月までとなっている。

本人の言葉によると、本命令によって「米国内における海外敵対者の所有、制御、あるいは司法また管理下にある者によって提供された情報通信技術を、自由に獲得あるいは利用することに起因する脅威に対応する」ための国際緊急経済権限法が発動される。

具体的には、Huawei(ファーウェイ)、ZTEなど、国家機密に関わるあらゆる種類の問題の原因であると政権が考えている中国企業を対象としている。中でも、国家が糸を引くスパイ行為や、北朝鮮、イランなどの国に対する制裁違反の疑惑が主要な問題だ。

関連記事:Trump declares national emergency to protect US networks from foreign espionage

ファーウェイへの影響は特に大きく、禁止令によって同社はGoogleアプリの使用を制限され、ソフトウェアエコシステムは大きな打撃を受けた。調査会社のCanalysが今月発表したデータによると、同社の中国市場以外への出荷台数は35%減少した。あらゆる市場が、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの前から困難な状態にあったことは確かだが「ファーウェイの落ち込みは、例えばApple(アップル)の非中国市場と比べて4倍になる」と同社は報告している。

それ以来、ファーウェイはGoogleアプリの代替品を社内で開発している。同社は、新型主要機種を必要なアプリ抜きで出荷しつつ、旧機種の販売に依存しなくてはならない。

画像クレジット:Mark Wilson (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トランプの新型コロナ「デマ」発言を巡りFacebookでファクトチェック抗争勃発

ファクトチェッカーは誰がファクトチェックするのか? トランプは新型コロナウイルスを民主党の「新たなデマ」だと言ったのか?

右派パブリッシャーThe Daily Caller(ザ・デイリー・コーラー)がPolitico(ポリティコ)とNBC News(NBCニューズ)の記事に「虚偽」のラベルを貼り付けた問題から、大きな疑問が湧き上がった。The Daily CallerのCheck Your Fact(あなたのファクトをチェック)部門は、Facebookのファクトチェックプログラムに加盟するファクトチェックパートナーであり、Facebook上のリンクに「虚偽」というラベルを添付する権限を持つ。ラベルが付けば、ニュースフィードでのランクも、その投稿者の全体的な露出度も下がることになる。

2019年4月、The Daily Callerをファクトチェックプログラムのパートナーに迎えたFacebookの判断は、批評家の激しい非難を浴びた。同社には、誤りであることが広く認知された記事をいくつも掲載した過去があるからだ。これにより、政治的に偏ったファクトチェックという恐れていた事態が現実になったと信じる人たちもいる。

トランプ大統領は、2月28日の夜、新型コロナウイルスの世界的な大流行を、弾劾とミュラー特別捜査官による捜査、そして自身の第1期の功績を不当に傷つけ批判する目的で仕組まれたリベラル派の陰謀と位置づけた。虚偽の情報です独立系ファクトチェッカーが判定しました。
画像クレジット:Judd Legum

今週、Judd Legum(ジャッド・レーガム)氏のニュースレターPopular Information(ポピュラー・インフォメーション)が指摘したように、Check Your Factは、Politicoの「トランプは新型コロナウイルスを『デマ』と扱うよう集会に参加した支持者に訴えた」と、NBC Newsの「トランプは新型コロナウイルスを民主党の『新たなデマ』と発言」という2つの記事を虚偽と評価した。このファクトチェックの説明には「トランプは実際には、新型コロナウイルスの脅威を『デマ』とする問題への彼自身の対応について説明していた」と書かれている。

トランプは、集会でこう述べていた(太字は編集部による)。

今、民主党は新型コロナウイルスを政治問題化している。知ってるだろ、違うか? 政治問題化してるんだ。我々は大きな仕事を成し遂げた

【中略】

彼らは弾劾という茶番を企てた。完璧なプロパガンダだ。やつらはあらゆる手を尽くした。何度も何度も挑んできた。なぜなら、こっちが選挙に勝ったからだ。逆転だ。やつらは負けた。逆転したんだ。考えてもみろ。考えてもみろ。これはやつらの新しいデマだ。だが我々は驚くべき手を打った。この巨大な国で「感染患者は」15人だ。早期に動いたから、早期に動いたから、我々はもっとやれた。

【中略】

誰も死んでない。なのに変だろ、マスコミはヒステリー状態だ

トランプがそこで何を言わんとしていたかを、正確に捉えるのは難しい。新型コロナウイルスをデマだと言っているようにも聞こえる。デマの深刻さを心配しているようでもあり、彼の対応への民主党の批判をデマだと言っているようでもある。定評あるファクトチェック機関Snopes(スノープス)は、トランプが新型コロナウイルスをデマ呼ばわりしたという主張を、嘘と本当が混在したものと評価し、次のように述べた。「彼の発言である程度の混乱が起きたものの、トランプは新型コロナウイルス事態をデマだとは言っていない」

結論:虚偽
この情報の中心的な主張は不正確です。
Check Your Factによるファクトチェック
「虚偽:トランプは実際には、新型コロナウイルスの脅威を『デマ』とする問題への大統領の対応について説明していた」
画像クレジット:Judd Legum

PoliticoとNBC Newsの見出しは、少々行き過ぎたかも知れない。またこれらの見出しは、トランプがこの事態をどう特徴付けているかを明確に表現している。

しかし最大の問題は、なぜThe Daily Callerの判定を他のファクトチェックパートナーが内部監査できないようにFacebookはこのファクトチェックシステムを設計したかだ。

これを問うと、Facebookは責任の所在をはぐらかし、すべてのファクトチェックパートナーは無党派の国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証を受けているため、内部監査の必要がないことを示唆した。この団体は倫理規定を公表しているが、そこにはチェックする者に「できる限り誤りのない作業を行うために、報告、記述、編集において高水準を保つ」ことを求める正確性の基準が含まれている。チェックする者はまた、記事の正確さを判断するための基準に従うことが要求され、「非常に疑わしい」や「見出しが虚偽」といった中間的なラベルを付けることも許されている。今回、The Daily Callerはそれらを使用しなかった。

The Daily Callerを真偽の判定者として相応しくないとは思っていないためIFCNの指針に頼ったと、Facebookは私に話した。またFacebookは、パブリッシャーがファクトチェックパートナーに直接掛け合い、判定の異議を申し立てもこともできると主張してた。だがさらに詳しく聞くと、パブリッシャーが異議申し立てができるのは、その判定を担当したパートナーに対してのみであり、他のパートナーに再判定を依頼したり、最初に付けられたラベルの内部監査を求めることはできないとFacebookは認めた。

これでは異論の多い、または不正確なラベルを撤回させられる余地はほとんどない。倫理規定に違反したファクトチェック団体は、IFCNから除外しFacebookのファクトチェックパートナーの資格も剥奪するべきだ。

たとえFacebook自身が真偽の判定をしたくないにしても、せめて決められた数のファクトチェックパートナーがその役割を果たせる制度を整えるべきだろう。ラベルが不正確だと複数のパートナーが合意したときは、記事のラベルの段階を軽くするか、ラベルを削除する。さもなければ、ひとつのファクトチェック団体の誤りや偏見が、報道機関の仕事全体を抑圧し、人々から真実を奪い去りかねない。

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(翻訳:金井哲夫)

トランプ大統領は何の証拠もなく何百万もの票を操作したとグーグルを非難

大統領は米国時間8月19日の朝、Twitter(ツイッター)でGoogle(グーグル)を激しく非難した。2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン氏に票が傾くようにGoogleが操作したと訴えたのだ。この重大な告発の元になった情報の出所は、何カ月も前の議会証言を蒸し返した古い報告書の中で語られていた仮説に過ぎない。

今朝のトランプ大統領のツイートには、実際の報告書からの引用は一切ないが、保守系監視団体Judical Watchのタグが付けられている。恐らく同団体に調査を依頼しているのだろう。大統領が誰にGoogleを訴えろと言っているのかは、定かではない。

https://platform.twitter.com/widgets.js
ワオ、報告書が今出た!2016年の大統領選挙でGoogleは260万から1600万もの票をヒラリー・クリントンに流していた!これはトランプ支持者ではなくクリントン支持者からもたらされた情報だ!Googleは訴えられるべきだ。だが、私の勝利は実際はもっと大きかったということだ! @JudicalWatch

偶然にも、FOX Newsはそのような報告書が存在することを、5分ほど前に報道している。トランプはまた、先日、さまざまな中傷を受けたとしてGoogleとCEOのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏を批判した

実際のところ、この報告書は「今出た」ものではなく、大統領が指摘しているような内容も書かれていない。FOXとトランプが言っているのは、おそらく2017年に発表された報告書のことだ。そこでは、2016年の大統領選挙の前哨戦でGoogleや他の検索エンジンに偏りがあったことを執筆者たちが解説している。

なぜ、そのような調査があったことに気がつかなかったのかと不思議に思っている方のために、その理由をお教えしよう。でたらめな調査だからだ。その内容には得るものが何もなく、ある大企業が選挙に介入したと非難するに値する証拠すら示されていない。

執筆者たちは、選挙前の25日間に95人が行った検索の結果を見て、最初のページで偏向の有無を審査した。彼らはほとんどの検索結果で、特にGoogleの結果ではクリントン氏が有利になる傾向にあったとの「クラウドソーシング」による判定を基に偏向を認識したと主張している。ただしその判定方法は説明されていない。

この検索に関するデータ、つまり、サンプル検索とその結果や、なぜそれを偏向と判断したかの理由などは示されていない。ファクトの考察もない。例えば、Googleが日常的に、またはオープンに、その人の普段の検索の内容、報告されている嗜好、地域などに合わせて検索結果を提示していることなどは考慮されていない。

関連記事:トランプ大統領が朝のツイートでGoogleとサンダー・ピチャイ氏を攻撃(未訳)

実際、Epstein(エプスタイン)氏の報告書は、通常の調査報告書の体をまったく成していない。

要約や序論もない。統計上の計算方法の解説もない。用語説明、考察、出典の記載もない。こうした基本的な情報がなければ、同分野や他分野の専門家の査読も叶わないばかりか、まったくの捏造された仮説と判別がつかない。この報告書の真偽を判断できる材料が何ひとつないのだ。

しかしRobert Epstein(ロバート・エプスタイン)氏は、自身のたった1件の報告書を大いに参照している。それは、2015年にPNAS(米国科学アカデミー紀要)に掲載された、故意に操作を加えた検索結果が候補者の情報を探す有権者にどのような影響を与えるかを解説したものだ。この題材に関して、彼は非常に多くの意見記事を執筆している。Epoch TimesやDaily Callerといった最右翼のメディアに頻繁に登場しているが、USA TodayやBloomberg Businessweekなどの無党派メディアにも寄稿している。

この調査で提示された数値には、まったくなんの恩恵もない。計算方法が説明されていない数字の中には、「Google検索でのクリントン支持の偏向は、時を重ねることで、少なくとも260万票がクリントンに移動する結果を招く」とエプスタイン氏が話しているものがある。この主張の裏付けとなる仕組みも正当な根拠も示されていない。あるのは、今回の報告書との共通点がほとんど見られない、2015年の彼の報告所に示された非常に空論に近い見解と憶測のみだ。その数値は、実質的にでっち上げと言える。

つまり、この報告書と呼ばれているものは、じつに異質なのだ。その主張に科学的な正当性を持たない事実無根の文書であり、ほぼ毎月Google批判の論説を掲載している出版社の人間の手によるものだ。これは、雑誌などに掲載されたわけではない。American Institute for Behavioral Research and Technology(行動調査およびテクノロジーのためのアメリカの研究所、AIBRT)という非営利の私的調査機関がネット上で発表したものに過ぎない。エプスタイン氏はこの研究所のスタッフだが、ここは今回の報告書など、もっぱら彼の文章を発表するためだけに存在しているように見える(私の質問に対してAIBRTは、資金提供者の公開に法的義務はなく、公開しない方針だが、「研究所の調査に偏向をきたすような寄付」は受け付けないと話していた)。

報告書の巻末でエプスタイン氏は、この報告書のために収集していたデータをGoogleが操作していた可能性を推測している。Gmailユーザーとそれ以外のユーザーからのデータの差を引き合いに出して、Gmailユーザーのデータは、報告書作成中ではあったが、すべて破棄することにしたという。

おわかりのとおり、非Gmailユーザーが見た検索結果は、Gmailユーザーが見た結果よりもずっと大きく偏っている。おそらくGoogleは、Gmailシステムを通じて我々の協力者を特定し、偏向していない結果が彼らに示されるよう計らったのだ。現時点でそれを確認することはできないが、我々が発見したパターンの説明としては妥当だ。

この仮説を妥当と見るかどうかは、みなさんの判断にお任せする。

これだけでも十分に酷すぎる話だ。しかし、トランプ大統領がこの軽薄な報告書を引き合いに出したことで、さらにファクトが歪められてしまった。大統領は「2016年の大統領選挙でGoogleは260万から1600万もの票をヒラリー・クリントンに流していた」と主張したが、そのようなことはこの報告書にすら書かれていない。

関連記事;ケンブリッジ・アナリティカ、トンランプ、ブレグジット、そして民主主義の死を紐解くNetflixのドキュメンタリー「The Great Hack」(未訳)

この虚偽の主張の根源は、7月にエプスタイン氏が米上院司法委員会に出席したことにあるようだ。そこで彼は、テキサス州選出のTed Cruz(テッド・クルーズ)上院議員からスター扱いされ、投票における技術操作の可能性について専門家としての意見を求められた。それまでこの問題でクルーズ氏を支えていた専門家は、保守系ラジオのトーク番組のホスト、Dennis Prager(デニス・プレガー)氏だった。

またしても、データも調査方法も仕組みも示さず、エプスタイン氏は、Google、Facebook、Twitterなどが影響を与えたかも知れない260万票を「どん底の最低数」と説明している(影響を与えた、またはそれを試みたとは明言していない)。彼はまた、今後の、特に2020年の大統領選挙において「もしこれらすべての企業が同じ候補者を支持したなら、150万の浮動票が、人々が知らないうちに、当局が追跡できないよう紙の資料を残さず、流れる可能性がある」とも話している。

「彼らが用いている手法は目に見えない。潜在意識に働きかけるものであり、私が行動科学の世界で見てきたいかなる効果よりもずっと強力なものだ」とエプスタイン氏は言うが、その手法が何かは、はっきり説明していない。しかし彼は、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が民主党支持者だけに「投票に行こう」と呼びかける可能性があり、それは誰も知り得ないとも述べた。馬鹿げている。

すなわち、数値がでっち上げであるばかりでなく、2016年の選挙とは何の関係もなく、しかもGoogleだけの話ではなく、これはすべてのハイテク企業が関わることなのだ。たとえもし、エプスタイン氏の論にいくばくかの正当性があったとしても、トランプ大統領のツイートがそれをねじ曲げ、すべてを台無しにしてしまった。何もかもが、真実からは遠くかけ離れている。

Googleは、大統領の批判に対して声明を発表した。「この研究者の不正確な主張は、それが発表された2016年の時点で誤りが証明されています。当時私たちが主張したとおり、私たちが政治的信条を操る目的で検索結果の順位の操作や変更などは行ったことは一度もありません」。

下にその報告書の全文を掲載する。

EPSTEIN & ROBERTSON 2017-A Method for Detecting Bias in Search Rankings-AIBRT(エプスタイン、ロバートソン 2017年 検索結果順位の偏向を見抜く方法 – AIBRT)
TechCrunch on Scribd

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(翻訳:金井哲夫)

ファーウェイ排除で米国は貿易戦争には勝ったがネットワーク戦争に負ける

米国政府関係者は、低価格で高性能なネットワークを提供するファーウェイと、中国のその他のハードウェアメーカーとの戦争に勝利したことを祝っているに違いないが、より大きな世界規模の電気通信技術と顧客の獲得競争において、米国は大幅に遅れをとるリスクを背負ってしまった。

それは米国が敗北を認めたがっているレースかも知れないが、米国内での事業活動能力を完全に奪ったところで 、ファーウェイの影響範囲はますます広がっていることには注意しなければならない。

実際、ファーウェイのエグゼクティブディレクターであり、同社の投資審査委員会議長でもあるDavid Wang(デイビッド・ワン)氏はBloomberg(ブルームバーグ)にこう話している。「私たちの米国での事業はそれほど大きなものではありません。私たちはグローバルな事業を展開しています。今後も安定的に事業が行えるでしょう」。

ワン氏は正しい。ただし、ある1点においてはだ。年始に発表された2018年の会計報告によれば、ファーウェイの売り上げは、そのほとんどが国際市場からのものだが、同社の機器は、技術的に米国の半導体メーカーに大きく依存している。その供給が止まれば、ファーウェイはかなり厳しい状況に追い込まれるのは確かだ。

ファーウェイの年末会計報告によれば、現在の収益の柱は消費者向けデバイス事業であるが、その収益の大半は米国市場以外で上げられている。

そして米国には、ファーウェイが同社のネットワーク技術を普及させようとする努力を妨害しなければならない理由がある。それを投資家のAdam Townsend氏が、Twitterのスレッドで説得力をもって見事に言い表している。

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中国のファーウェイに関するスレッド。諜報活動と第5(g)世界大戦
あなたは中国諜報機関の長になる。権力者となり、あらゆる喧嘩に勝利するようになる。
では始めよう……

そもそも中国は、次世代の無線通信技術への支援として、基本的に無限の資本を投入し、次世代スタートアップやイノベーターを買収している。そのすべてが、米国が初期段階のリスクを背負って生み出したものだ。同時に、抵抗する恐れのある規制当局者や業界の専門家を、無限の資金を使って懐柔している。

ファーウェイは、中南米、東ヨーロッパ、東南アジア、アフリカといったネット接続の需要が高まる新興市場の国々への侵入を続けている。それらは、米国が多大な戦略的利害を持つ地域でありながら、強い動機や選択肢を提供できずにいるために、中国のネットワーク企業に対抗するよう世論を動かしたり政府を説得する力が大幅に制約されている。

米国の海外援助や投資を600億ドル(約6兆6000万円)のパッケージで活性化させるBUILD法が2018年10月に成立しているが、2018年に欧州だけで470億ドル(約5兆1700億円)近くを投資した中国の支出額の前では影が薄い。中国によるその他の直接投資の総額は、American Enterprise InstituteのデータをForeign Policy誌がまとめたところによると、アフリカと中東に494億5000万ドル(約5兆5400億円)、南米に180億ドル(1兆9800億円)となっている。

こうした投資により、本来強力な政治同盟で結ばれていたはずの国々は、米国の立場への支持を渋ったり、建前上いい顔を見せるだけになっている。たとえば、米国とブラジルの関係を見てみよう。長年にわたり強力な同盟関係にあるブラジルと米国は、どちらも超保守派リーダーの主導のもとで、ますます関係が深まるように見えていた。

しかし、Foreign Affairs誌によれば、米国と歩調を合わせて中国の経済的拡大阻止に協力して欲しいというトランプ大統領の要請に、ブラジルは難色を示しているという。

「ブラジルの経済団体は、すでに中国との密接な貿易関係を擁護する態勢に入っており、中国を封じ込め、米国を再びブラジルの最も重要な貿易相手にしようという望みは、もはや非現実的な郷愁に過ぎない」と、Foreign Affairs誌の特派員であるOliver Stuenkel(オリバー・スタンキル)氏は書いている。「強力な軍部同士が手をつないだこの事業連合は、この地域からファーウェイを追い払うことで生じる5G稼働の遅延を一切許さない方向に動いている」。

この記事は一読の価値があるが、要は、ファーウェイと中国経済の浸入は経済発展途上国にとって国家安全保障上の脅威だと吹聴する米国政府高官の声は耳に届いていないという内容だ。

これは単にネットワーク技術だけの問題ではない。中南米諸国と米国で投資を行っているあるベンチャー投資家は、TechCrunchに匿名でこう話した。「米国と中国の関係が中南米の今後にもたらす影響には興味があります。中国はすでに、金融面で非常に積極的になっています」。

中国の巨大ハイテク企業は、事業者として、また投資家として、南米大陸にも興味を示している。CrunchBaseの記事の中で、南米と中国に特化したベンチャー投資家Nathan Lustig(ネイサン・ラスティグ)氏は、その傾向を強調していた。実際には、こう書いている。

民間分野と公的分野の両方で、中国は中南米への支援を急速に増やしている。金融技術の専門知識を有する中国は、世界の発展途上市場への影響力と相まって、中南米のスタートアップや起業家の戦略的パートナーになりつつある。これまで、中国の対中南米投資の大半はブラジルに向けられていたが、にも関わらず、中国は投資家として中南米で手を広げ、地方の技術エコシステムとの親密さを増してゆく傾向にある。その可能性がもっとも高いのがメキシコだ。

1月にDidi Chuxingがブラジルの99を買収したのに続いて、中国企業はブラジルのフィンテック系スタートアップに対する巨額の投資を開始した。今年、特に目立つのがNubankStoneCoだ。

実際、中国には、安価なテクノロジーと、国有と民間の投資会社による経済支援策の総合カタログがあり、受け入れ国を援助すると同時に、新興市場での多方面にわたる技術的リーダーとしての中国の地位を固めようとしている。

米国がそれに対抗するならば、内向きな保護主義を脱して、より大きな海外の経済発展に真剣に寄与する覚悟が必要だ。税収は減少傾向にあり、見上げるほどの巨大な赤字の山が築かれると予測されるなかでは、ファーウェイに取って代わるものを世界に提供する余裕はない。それにより米国はますます孤立を深める。取り残されることで、さらに大きな問題が生じることになるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

トランプの国境の壁を支援する民間人によるクラウドファンディングは何が問題なのか?

フロリダの人間は、大蛇ワニレストランの珍事件など、奇妙な事件に遭遇することが多いようだ。 それは、2013年、Twitterのパロディーアカウント「フロリダマン」が登場してからのことで、たちまち大人気になった。

だが、5日前にクラウドファンディング・プラットフォームGoFundMeでフロリダマンが開始した、ドナルド・トランプが推進するメキシコ国境の壁の建設資金を集めるためのキャンペーンは、どうもジョークにしか思えない。10億ドル(約111億円)という強気な目標を立てて先週の日曜日にローンチしてばかりだが、すでに20万人以上の個人から1300万ドル(約14億5000万円)もの資金を調達した。GoFundMeのキャンペーンには締切がない。

その増え続ける巨額の現金の山がどこへ行くのか、そこに疑問がわく。このキャンペーンを立ち上げたBrain Kolfageという男性は、以前、10月にFacebookによって削除されたRight Wing News(右翼ニュース)というFacebookページと共に、陰謀説を唱えるウェブサイトを運営していた。

イラクに派遣されて両足と片腕を失ったアメリカ退役軍人のKolfageは、GoFundMeのページで自身の行動の公共性について長々と話している。また彼は、Fox Newsに「何度も登場している。(だから)自分が信頼できる実在の人物であることがわかる」だろうと言っている。その一方で彼は、寄付しようと思っている人の気持ちを「邪魔したくない」と昨日(現地時間21日)のNBC Newsで語り、これまでのメディアでの問題発言については言及しなかった。

それより心配なのが、寄付の100パーセントが「トランプ・ウォール」に使われるとKolfageはGoFundMeのページに書いているが、今の時点では、その資金を政府に提供できる制度がない。それを実現するためには、そのための法案が議会を通過しなければならない。Kolfageはこう言っている。「この資金を、適切な場所にどのように届けるか? 私たちはトランプ政権と連絡をとり、調達が完了した時点で資金を送る先について確認をしています。この情報が確定し次第、お知らせします。すでに私たちは、非常に高度なレベルで複数のコンタクトをとり、支援を得ています」

このページでは、また、Carlyle Groupの共同創設者David Rubensteinが750万ドル(約8億3400万円)をワシントン記念塔のてっぺん近くにできたひび割れの修繕費用として寄付した2012年の話を例にあげて、アメリカ政府が過去に個人の投資家から巨額の寄付を受け取っている事実を伝えている。しかし、彼のGoFundMeキャンペーンでは、米国議会がその活動の背後にあり、750万ドルの寄付が、それに同額を上乗せする条件(マッチングギフト)で修繕に使用されたのかどうかは明らかにしていない。

たしかに、National Endowment for the Humanities(全米人文科学基金)などのいくつもの政府機関が、マッチングギフト制度のもとで個人の寄付を受け取っている。しかしこの考え方は、寄付金で政府主導の活動に大きな力を与えるものであり、自分たちには決定権のない寄付を募ることになる。バージニア州選出の共和党下院議員で下院司法委員会の議長を務めるBob Goodlatteは、昨日、New York Postにこう述べている。「市民が資金を集めて『政府がこういう目的で私の金を使う』と宣言することなど、とうてい許されない」

アメリカ人有権者のおよそ3分の1が共和党支持者で、その3分の2がトランプが推し進める国境の壁の建設を支持していると考えると、Kolfageの10億ドルの目標が突拍子もない額だとは言い切れない。キャンペーンにはすでに、5万ドル(約560万円)を寄付した人が1人現れている。さらに勢いがつけば、他の人たちも、これが財政的政治的な力を動かす単純で直接的な方法だと思うようになる。

このまま勢いが高まれば、ある時点でこのキャンペーンには、Kolfageに寄付することが賢い方法なのか否かという疑問とは別に、いろいろな問題が浮かび上がってくる。なかでも、紐付きの寄付を政府が受け取ることは法律に反するわけだが、アメリカの一般市民がGoFundMeなどの資金調達プラットフォームを通して団結すれば、ロビイスト・グループのような大きな力を振るうようになるかも知れないという心配がある。KolfageのGoFundMeキャンペーンにどれだけ金が集まっても、政府は壁を作る責任を負うわけではないが、共和党議員たちはすでに、壁の建設のための寄付を財務省が国民から受け取れるようにする法案の準備を進めている。来月、民主党が下院の過半数を占めるようになれば、この法案が通る見通しは消えるが、将来の政権に筋道を付ける可能性は残る。

では、Kolfageが集めた数百万ドルの資金はどこへ行くのか。それを見るのは興味深い。昨日のNew York Postの記事にも書かれているが、GoFundMeでは、「明記された用途以外に資金を使ってはいけない」という規定がある。そのため、政府がKolfageと協力する道が絶たれれば、Kolfageは寄付者に寄付金を返金しなければならなくなる。または、少くともGoFundMeは(我々の質問への返答はないが)、そうする責任を負うことになるだろう。

GoFundMeは、以前にも寄付者に返金をしたことがある。

つい先月のことだ。ニュージャージーの夫婦と1人のホームレスの男性が、GoFundMeを使って作り話で40万ドル(約4450万円)以上を集めた罪で告発された。彼らはその金を、車や旅行や高級ハンドバッグやカジノなどに使っていた。その夫婦と男性は、不正行為による窃盗を犯したことから、詐欺と共謀による第二級窃盗罪に問われている。GoFundMeは、キャンペーンに寄付をした1万4000人の寄付者に全額を返金すると話している。

おかしなことに、GoFundMeは、自社がどれだけの資金を調達しているかは公表していない。同社に投資をしているのは、Iconiq、Stripes Group、Accel、TCV、Greylock、Meritech Capitalなどだ。GoFundMeが最初に外部からのラウンド投資を受けたのは4年前。同社は2010年に設立されている。

上の写真:コロラド州キャッスルロックにある小規模ショッピングセンター。ここでKolfageのGoFundMeキャンペーンへの寄付が呼びかけられていた。

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(翻訳:金井哲夫)

ジェームズ・マティス国防長官が辞任

トランプ政権で最初の2年間国防省を率いた人物が来年始めに在職期間を終える。退役海兵隊大将のジェームズ・マティスは2019年2月28日に辞任する。マティス氏は2013年に海兵隊を退き、特別議会免除を受け国防長官に就任した。

トランプ大統領はいつものように辞任をツイートで発表し、続いてマティス氏の辞表全文が公開された。

マティス氏は辞職届の中で、米国の指揮および同盟国との関係におけるトランプ大統領との根本的な思想の違いをほのめかした。

「同盟国に敬意を払い、悪意を持つ者や戦略的ライバルにはっきりと目を向ける私の生き方は、40年以上にわたりこれらの問題に取り組んでいた私の経験に支えられ、培われた」とマティス氏は書いた。

「誰もが自分に近い考え方の国防長官を任命する権利を持っている…この職務を辞することが正しい判断だと私は信じている」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

かつては誰もが移民だった―、移民の子孫の視点から見た現在のアメリカ

ここ数年の間、世界は怒りで溢れている。まともに見えた国がヨーロッパ大陸から自らを切り離し、慈悲深く見えた国境警察が怒りで震え、移民は仕事を奪い、人を殺し、ドラッグや暴力事件を持たらすような存在だと言われている。

何かが間違っている。

移民賛成派の意見として、全体の数を比較すれば、移民よりもアメリカ生まれの人の方が犯罪率が高いという事実が知られている。一方反対派からは、全てを決定づけるように見える複数の凶悪事件についての話を聞くことが多い。さらに、アメリカやイギリスの労働者の苦境についても知っておかなければいけない。移民は実際にその国で生まれた人から仕事を奪っているのだが、ホワイトカラーの人たちはその影響を理解できていないのだ。『Chaos Monkeys』の著者であるAntonio Garcia-Martinezが、その様子をうまくまとめている。

青い州(民主党支持者の多い州)の人たちが、トランプや国境沿いに壁を作るという彼の発言を支持する、労働者階級の赤い州(共和党支持者の多い州)の人たちを馬鹿にするのも当然だ。というのも、ホワイトカラーにはH1ビザと言う名の壁が既に存在し、彼らはこのビザのおかげで、インド工科大学や精華大学の卒業生と職探しで張り合わずにすんでいるのだ。FacebookやGoogleのオフィスの前に、まじめで実力のある中国人やインド人のエンジニアが大挙する様子を(アメリカのHome Depotの前に集まるメキシコ人の様子のように)想像してみてほしい。無料のスペアリブを頬張っている甘やかされた社内のアメリカ人よりも低い賃金で同じ仕事をする覚悟が彼らにあるとしたら、不法移民に対する社内のエンジニアの意見はどうなるだろうか?

赤い州の人々が求めているのは、青い州の人々に与えられているような、移民労働者の制限という保証なのだ。

いつものように、政治的な意見は先を見据えた理想ではなく、権力や私欲をもとに決められてしまう。ホワイトカラーは、既に自分たちが守られているからこそ、移民を受け入れることに賛成しているだけで、Home Depotの外に列をなすメキシコ人たちを自分たちの生活を脅かす存在として(正しく)認識しながら、ルイスビルやデモインで生活する、高卒の配管工や土木作業員のことなど気にかけていないのだ。

誰もが正しいようで、誰もが間違っている。移民労働者の苦境とは無縁のハイテク業界は、プログラマーや海外のデータセンターに関しては、政府の気前の良さに頼り切っている。本来であれば、Home Depotの前に停められたトラックの中にいる男性から、Uberに乗ってGolden Gate(サンフランシスコのベイエリアにある橋)を渡っている女性まで、全ての人が現状を吟味し、移民に手を差し伸べなければいけないはずだ。

究極的に言えば、移民は国に変化をもたらす必要不可欠な存在だ。人口は高齢化し、文化は変わり、新しいテクノロジーが昔の問題を解決していく。市民に受け入れられた健全な移民制度を通じて入国してきた熟練・非熟練労働者、難民、外国人居住者がその全ての変化において、私たちを支えてくれるのだ。自分たちの問題を外から来た人たちになすりつけるというのは、人類の大きな失敗であり、これは暗黒時代から何度も繰り返されてきた。私たちは、自分と違う人を恐れると同時に必要としているのだ。だからこそ”よそ者”に対する恐怖心を払拭しなければならない。

この問題を短期的に解決するために、私がアドバイスできることはひとつかふたつしかない。まずひとつめは、自分のルーツや生き方を見つめ直し、自分と同じ道を進んでいる人に手をさしのべるということだ。例えば、私の祖父母はポーランド人とハンガリー人だ。これまで私は、自分なりのやり方でこの2国を発展させるために全力を尽くしてきた。両国の経済や各業界のエコシステムは既にかなり発達しており、私の手助けなどいらないということは重々承知しているが、彼らは依然投資や世界からの注目を必要としているため、私にもできることがある。

世界中に起業家精神を広めるというのも問題の解決に役立つだろう。数週間前に私が出会った、デンバーを訪問中のキューバ人起業家グループは、アクセラレーターについて知るためBoomtownを訪れた。男性・女性の両方から成るこのグループは、逆境や政治的陰謀に立ち向かって、キューバにネットインフラを構築しようとしているのだ。彼らは若い企業の成長を支えるアクセラレーターの仕組みを気に入ったようで、恐らくこの経験から新たな可能性に気づくことができただろう。私はせめてもの手助けとして、彼らを5月に行われるDisruptに招待した。

キューバ出身の起業家たちと出会って1番驚いたのは、ザグレブやアラメダなど世界各地の起業家と彼らの間にはかなりの共通点があるということだ。全員が明確なビジョンを持ち、変革を起こすために努力する覚悟ができていた。全員が苦境に屈さず、前に進もうとしていた。彼らは仕事を奪うためにアメリカにいるのではなく、仕事を生み出すためにここにいる。彼らは国家を崩壊させようとしているのではなく、悪人を排除して、善者を支えようとしている。そして彼らは、母国と世界の問題の両方を解決しようとしているのだ。

彼らは移民ではなく人間だ。ある場所から別の場所へと移り住みながら、少々の悪とそれよりもずっと多くの善を移住先にもたらしている。彼らは歩みを止めず、諦めることもないため、受入国は移民を抑え込むのではなく、彼らのエネルギーを有効活用するべきなのだ。

数年前ピッツバーグで行われた結婚式に出席した際に、私がポーランド人の血をひいていると知った年上の友人からある話を聞いた。その話の主人公は、1900年頃にワルシャワからグダンスク経由でアメリカに移住してきた、当時8歳、10歳、14歳の少女3人。鍛冶工で酒飲みの父親と一緒に彼女たちは海を渡り、体調不良と寒さで震えながらニューヨークにたどり着いた。そこから一家は陸路で炭鉱で有名な地域へと進み、最終的にピッツバーグに住み着くことに。父親は鉱山で働き、娘たちは学校へ通っていたが、ある日娘たちが家に戻ると、そこには父の姿がなかった。

父親は娘たちを残してポーランドに戻っていたのだ。実は父親はポーランドから妻を連れてこようとしていたのだが、娘たちはなぜ父が書き置きも残さずにいなくなったのかわからず、残されたお金もすぐに底をつきそうな程だった。結局彼女たちは、裁縫や清掃の仕事をしながら、長女が次女の面倒を、次女が三女の面倒を見ながら生活を続け、時間の限り学校へも通った。移民で溢れる近所の人たちの助けもあり、彼女たちは徐々に自立していく。しかし、彼女たちが知らないうちに両親はポーランドで亡くなっていたため、両親宛の手紙が戻ってくることはなかった。森に住む少女たちの貧しく、不安に満ちた破滅的なこの物語は、バッドエンドを迎えようとしていた。

しかし、話はここから好転する。

彼女たちはそのまま成長を続けて結婚し、かつては隅に追いやられていた新しい世界で自分たちの生活を築くことができたのだ。ピッツバーグにあるKościół Matki Boskiejの洗礼盤に浸りながら泣き声をあげる赤ん坊のように、彼女たちは目の前で次々と起こる出来事にショックを受けながらも、生き抜くことができた。父親は(もっと娘たちのことを考えた去り方があったとは言えるが)アメリカであれば彼女たちが無事に生きていけるだろうと考え、ポーランドに残した妻を迎えに行ったのだった。娘たちが住む世界は、彼が去った世界ほどは危険にあふれておらず生存の確率はずっと高いと考えた父親は、移民の流れに娘たちを託し、それが功を奏した。

話の最後に「三女が僕の祖母なんだよ」と言った私の友人は、現在ピッツバーグでエンジニアとして働くアメリカ人だ。

かつては誰もが、遠い場所から何も持たずにアメリカにやってきた移民だったのだ。だからこそ私たちの後に続く人のことを怖がってはいけない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

米電子機器持ち込み禁止令の対象はイスラム教国からの直行便―、航空会社9社に影響

昨日の混乱の後、中東や北アフリカからアメリカに向かうフライトでは、スマートフォンよりも大きな電子機器の機内持ち込みが本当に禁止されることになるという情報を、新たに政府高官から入手した。この禁止令が施行されると、乗客はノートパソコン、タブレット、ゲーム機、カメラ、ポータブルDVDプレイヤーといった電子機器を預入荷物の中にいれなければいけなくなる。なお、禁止令がいつ頃解除されるかについては決まっていない。

運輸保安局(TSA)の”緊急修正”と呼ばれるこの禁止令によって、中東と北アフリカにある以下の10ヶ所の空港から運航している航空会社9社に影響が及ぶことになる。

  • クィーンアリア国際空港(ヨルダン)
  • カイロ国際空港(エジプト)
  • アタテュルク国際空港(トルコ)
  • キング・アブドゥルアズィーズ国際空港(サウジアラビア)
  • キング・ハーリド国際空港(サウジアラビア)
  • クウェート国際空港(クウェート)
  • ハマド国際空港(カタール)
  • ムハンマド5世国際空港(モロッコ)
  • ドバイ国際空港(ドバイ首長国・アラブ首長国連邦)
  • アブダビ国際空港(アブダビ首長国・アラブ首長国連邦)

実際に影響を受けることになるのは、ロイヤル・ヨルダン航空、エジプト航空、トルコ航空、サウジアラビア航空、クウェート航空、ロイアル・エア・モロッコ、カタール航空、エミレーツ航空、エティハド航空だ。この9社は、合計で1日あたり50便のアメリカ行きフライトを運航している。

各航空会社には、電子機器の持ち込みに関する禁止令に応じるまで、96時間の猶予期間が与えらえているが、もしも応じなかった場合、連邦航空局(FAA)がその航空会社の権利を剥奪し、アメリカへの渡航を禁じる可能性もある。例えば、昨年トルコのアタテュルク国際空港で起きたテロ事件を受けて、FAAが同空港から運航する全ての航空機のアメリカ入国を一時的に禁止していたことを考えると、アメリカ政府がこのような対応をとること自体は全く予想外というわけではない。

この禁止令が対象にしているのは、前述の空港からアメリカに直行するフライトのみであり、影響を受ける航空会社や空港の所在国はなんの関係もないと、政府関係者は強調していた。その一方で、対象となる空港とアメリカの空港間で直行便を運航しているアメリカの航空会社は一社もないため、国内の航空会社は禁止令の影響を全く受けないということにもすぐ気がつく。

なぜアメリカ政府はこのタイミングで禁止令を施行しようとしているのだろうか?政府関係者は具体的な脅威については触れず、テロ組織が電子機器に爆発物を隠して旅客機に持ち込もうとしていることを示す情報をもとに、政府は禁止令を発布したと語っている。この関係者によれば、2016年2月にモガディシュ(ソマリア)発ジブチ行きのダーロ航空159便で起きた爆発事件でも電子機器が使われていたようだが、1年以上前に起きた事件を理由にこの段階で禁止令を出すのも不自然だ。

突然で対象がランダムな印象を受けるだけでなく、この禁止令には明らかな問題もいくつかある。まず、FAAは火災発生の可能性を理由に、リチウムイオン電池を預入荷物に入れることを明確に禁じている(電池の発火事故で昨年話題になったホバーボードのことを覚えているだろうか?)。客室であれば電池に火がついても簡単に消すことができるが、貨物室ではそうはいかない。

さらにノートパソコンといった高価な電子機器を預入荷物の中に入れると、もちろん盗難のリスクが増える。アメリカで液体の持ち込みに関する3-1-1ルールが導入されるきっかけとなったテロ未遂事件を受けて、イギリスが2006年に似たような電子機器の持ち込み禁止令を施行した際には、荷物の盗難が急増したと報じられていた

FAAは航空会社と協力しながら、貨物室にコンピューターを保管するための最善策を模索しているが、私の知る限り、彼らの最善策とはそもそも貨物室でコンピューターを保管しないということのようだ。そうなると、禁止令の影響を受ける航空会社は、一体どのようにして禁止令に応じながら、乗客のノートパソコンを貨物室で預かればいいのだろうか(もしかしたら電子機器は別のチェックを受けるようになるのかもしれない)?ちなみにパイロットや乗務員に関しては、恐らく空港や航路に関する情報を表示したり、飛行計画を立てたりするためにタブレットを使うことが多いということを理由に、禁止令の対象からは外されている。

今回の禁止令では、主要イスラム教国からのフライトのみが対象となっていることから、先の入国禁止令との関連性を疑わずにはいられない。一方で入国禁止令の対象となっていた国は、電子機器の持ち込み禁止令の対象となっている空港の所在国とは異なる。

長年アメリカの航空会社の多くが、カタール航空やエティハド航空、エミレーツ航空といった競合が各国政府から受け取っている助成金について不満の声を挙げていたことも知っておいた方がよいだろう。なお私たちが話を聞いた政府高官は、先月各航空会社のCEOがトランプ大統領に直接苦情を伝えたことと、今回の禁止令の間には何の関係もないと強く否定していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

トランプ次期大統領の戦略政策フォーラムにUberのカラニック、TeslaとSpaceXのマスクも参加

SARASOTA, FL - NOVEMBER 07:  Republican presidential nominee Donald Trump holds up a rubber mask of himself during a campaign rally in the Robarts Arena at the Sarasota Fairgrounds November 7, 2016 in Sarasota, Florida. With less than 24 hours until Election Day in the United States, Trump and his opponent, Democratic presidential nominee Hillary Clinton, are campaigning in key battleground states that each must win to take the White House.  (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

ドナルド・ J・トランプ次期大統領が設置する戦略政策フォーラム(Strategic and Policy Forum)が2人のスーパー経営者を選んだことが判明した。もっとも高い能力と成功への強い意思を持つ経営者のリストにテクノロジー界からトラビス・カラニックとイーロン・マスクが加わった。

今日(米国時間12/14)の発表によれば、カラニックとマスクの2人は非上場の巨大投資ファンドThe Blackstone Groupの創立者スティーブン・シュワルツマンが議長を務めるフォーラムに参加する。なお今回の発表ではPepsiCoのCEO、会長のインドラ・ヌーイもメンバーに加わっている。

今月初め、トランプ次期大統領のが設置を決めたこのフォーラムのメンバーにはアメリカ・ビジネスのビッグネームが並ぶ。 GMのトップ、メアリー・バラ、 JP Morgan ChaseのCEO、会長のジェイミー・ダイモン、資産運用会社BlackRockのCEO、会長ラリー・フィンク、Walt Disney Companのボブ・アイガー、Boston Consulting GroupのCEO、リッチ・レッサー、 IBMの会長、ジニ・ロメッティなどに加え、現役を退いていたGEの元CEO、ジャック・ウェルチ、ボーイングの元会長、ジム・マクナニーの名前もみえる。

フォーラムがどの程度ひんぱんに開かれるのかは明らかではないが、最初の会合は2月に予定されているという。

カラニックは声明で「このフォーラムのメンバーとなり、次期大統領にUberの乗客、ドライバー、運営している450以上の都市に影響を与えることがらについて意見を述べられることを楽しみにしている」と述べた。

SpaceXはマスクに任命を確認したがそれ以上のコメントは避けた。

マスクとカラニックの任命は、今日この後ニューヨークのトランプ・タワーで予定されているテクノロジー業界のトップとの会談の直前に発表されたことが興味深い。この会談にはOracleのサフラ・カッツ、Appleのティム・クック、Alphabetのラリー・ペイジ、Facebookのシェリル・サンドバーグ、Microsoftのサティヤ・ナデラらが参加する。

Kalanickが参加を決めたのはUberが株式上場を控えてそのプロセスをできるだけ円滑に進めたいという戦略的狙いがあったかもしれない。Twitterを活用し株式市場を操れるトランプとの衝突は避けたかったに違いない。一方、Muskの動機についてははっきりしない。

SpaceXとTesla Motors(7年前のクリーンテック・ブームの際のベンチャーキャピタルの投資先で生き残ったほぼ唯一のスター企業)の創業者でトップであるマスクは選挙期間中はトランプの激しい批判者だった。

マスク以外にも、特に地球温暖化に関して、トランプと見解を異にする参加者は多い。

エネルギーの専門家、ダニエル・ヤーギンは『石油の世紀―支配者たちの興亡』(The Prize)で ピューリッツァー賞を受賞しており、『探求――エネルギーの世紀』(The Quest)もベストセラーとなったが、代替エネルギーに関して詳しく述べている。Wal-MartのCEO、ダグ・ミロンはオバマ大統領の政策を支持する活動を行ってきた。またフィンクとアイガーは民主党の選挙運動への献金者だ。

現実を見れば、この委員会はビジネスの世界に向けた超党派的な飾り窓だろう。シリコンバレーが重視する課題についてのトランプ政権の態度は閣僚級人事をみれば明らかだが、テクノロジー系の任命はまったくない。

次期政権の閣僚は、たとえばエネルギー省長官の候補、リック・ペリー・テキサス州知事は以前その解体を主張していた(本人は忘れているのかもしれないが)。教育省長官候補のベッツィ・デヴォスは公立学校が非効率的だと主張してきた。国務長官候補のレックス・ティラーソンは非常に親露的人物だ(ロシア政府はハッキングによって統領選挙に影響を与えたことを疑われている)。

気候変動、教育、インターネットのセキュリティーはいずれもシリコンバレーが重視する課題だが、トランプ政権の閣僚候補はいずれも戦略政策フォーラムのメンバーの多くとは政策的にも倫理的にも反対の立場を取っている。

このような事実からすると、戦略政策フォーラムの提言がさほどの重みを持つとは考えにくい。

今月初めにこのフォーラムの設置を発表した大統領政権移行チームは、「重要な課題に関して…官僚主義を排し、率直かつ超党派的な意見を大統領にインプットする」ことが目的だと述べている

画像: Chip Somodevilla/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トランプ次期大統領、12月14日にニューヨークでテクノロジー・ビジネスのトップとミーティング

New York City - USA - April 27 2016: Republican presidential candidate Donald Trump gestures while speaking to press after his five-state super Tuesday win

IT起業家、ベンチャーキャピタリスト転じて大統領政権移行チームの重要メンバーとなったピーター・ティールとのブロマンス〔男の友情〕はさておき、選挙期間中のドナルド・トランプとテクノロジー界の関係はかなり緊張したものだった。シリコンバレーは全体として対立候補を支持しており、逆にトランプ候補はAppleからAmazonのジェフ・ベゾスに至るまでテクノロジー企業のトップに手荒い言葉を浴びせた。

しかし11月に選挙結果が出てからはAppleのティム・クックも和解と統一を呼びかけており、トランプも腰を下ろしてテクノロジー・ビジネスのトップ・リーダーたちと話し合う機会を持とうとしているようだ。ピーター・ティール、大統領主席補佐官に決まったレインス・プリーバス、女婿で顧問のジャレド・クシュナーは連名でテクノロジー企業のトップをラウンドテーブル形式でのミーティングに正式に招待した。会合はニューヨークのトランプタワーで12月14日に開催される。

このニュースはPoliticoが報じ、USA Todayが確認したが、参加者、議題も含めて具体的な内容はほとんど明らかになっていない。しかし最近のトレンドを考えれば、サイバー・セキュリティー、ネット中立性はもちろん職をいかに増やすかも議題となると考えていいだろう。

選挙期間中にも目立った次期大統領の論争的な性格からして、招待された人物と同時に招待されなかった人物、企業の名前も同様に重要だ。われわれは関係者にコメントを求めているので新たな情報が得られ次第アップデートする。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

これがトランプ政権が掲げるテクノロジー政策だ

NEW YORK, NY - NOVEMBER 09:  Republican president-elect Donald Trump acknowledges the crowd during his election night event at the New York Hilton Midtown in the early morning hours of November 9, 2016 in New York City. Donald Trump defeated Democratic presidential nominee Hillary Clinton to become the 45th president of the United States.  (Photo by Joe Raedle/Getty Images)

ドナルド・トランプはテクノロジーに詳しくない。私たちが彼について知っているのはそれくらいだ。彼は携帯電話やEメールをあまり利用しないことで知られている。Anderson Cooperがモデレーターを務めたCNN主催のタウンホール・ミーティングでは、トランプ流のツイートの仕方が説明されている。「そばにいる若くて素晴らしい女性たちの1人に、ツイートしてほしい内容を叫ぶだけだ。私がやることは叫ぶことだけで、あとは彼女らがやってくれる」。

しかし、たとえ彼がアーリーアダプターではないにしろ(そして、コンピューターを生涯使わないかもしれないにしろ)、大統領選挙に当選した彼の政策はテクノロジー業界に大きな影響を与えることになる。そして、最終的には私たちの生活にも大きく関わってくる。

テクノロジーが彼の政策の中心的な要素となっているわけではないが、インタビューやスピーチ、ディベートの中には彼がテクノロジーについて語っている部分がある。そこから、トランプ大統領のテクノロジーに関する政策を予測してみよう。

Apple製品はアメリカ国内で製造させる:トランプはこれまでもAppleに対して強い態度を取ってきた。サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件の犯人から押収したiPhoneのロック解除をAppleが拒絶した問題に対してトランプは、バレンタイデーの5日後にApple製品のボイコットを訴える発言をしている。

その1ヶ月前には、彼は中国に対する不信感を利用するように、Apple製品はアメリカ国内で製造させると発言している。バージニア大学に集まった聴衆に対してトランプは、「Apple製のコンピューターは他のどこでもなく、アメリカ国内で製造させる」と話した。彼はまた、Ford製のクルマやOreoのクッキーについても同様の発言をしている。

温暖化対策の予算を削減する:彼はインタビューの中で地球温暖化問題について大いに語っている。そのほとんどは、地球温暖化という問題が存在している事すら信じていないという主張だ。または、それを引き起こしたのは人間ではないという主張である。地球温暖化は中国のでっちあげだと主張する時もあった。9月のCNNとの対談で彼は、「きれいな空気や、清潔さというものは信じているが、地球温暖化は信じていない」と話している

2012年のツイートを見てみると、「地球温暖化のコンセプトは、アメリカの製造業の競争力を落とすことを狙う中国によって作り上げられたものだ」と彼は述べている。彼は「ジョーク」だと言うかもしれないが、その数年後にはもう一度、地球温暖化はでまかせであり、アメリカはその対策にお金を費やすべきではないと述べている。

2015年12月に開かれた集会では以下のように述べる場面もあった。「オバマはこのことを地球温暖化と関連付けて話しているが、(中略)その多くはでまかせだ。でまかせなんだ。つまり、地球温暖化は金になるんだ。いいかい?それはでまかせなんだ、そのほとんどはね」。彼の主張は明らかだろう。また、寒い日が来ると彼は、これこそが自身の「でまかせだ」という主張を裏付けていると述べることもあった。

Jeff Bezosには悪い知らせ:「もし私が大統領になったとしたら、彼らに何か問題があるだろうか」。これは、今年2月にトランプがJeff BezosとAmazonを指して言った言葉だ。「大いに問題だろう」。その時トランプは、Jeff BezosによるThe Washington Postの買収について話していたところだった。Jeff Bezosが「クリントンびいき」のThe Washington Postを、税金逃れの手段、そしてAmazonに有利となるような政治的な影響力を振りかざすための手段として利用しているという主張だ。

それに対する返答としてBesozがトランプに用意したのは、彼が開発するBlue Originロケットの乗車券だった(これは片道チケットだと推測する人もいる)。

NASAは低軌道を離脱して、地球の調査をやめるべきだ:トランプはアメリカの宇宙開発プロジェクトを大きくしたいと考えている。NASAの本拠地があるフロリダに集まった聴衆に彼は、「地球低軌道の物流業者という役割からNASAを開放する。その代わりに、私たちは宇宙のさらなる探検に注力する。トランプ政権になったあと、宇宙開発の主導権を握るのはアメリカとフロリダなのだ」と述べた

だが、トランプが無限の彼方に興味があることを示す一方で、彼のNASA計画には内省の意味が込められているとは言いがたい。つまり、彼の政権は地球上の生命には興味がないということだ。

先月公開されたSpace Newsの論説では、2人の専門家が「NASAは地球中心の活動よりも、深宇宙での活動に専念すべきだ」と述べている。おそらくこの見解は、トランプが人間が引き起こしたものではないと主張する、地球上の気候変動のことを考慮したものではないだろう。
まあ、居住可能な新しい惑星を地球が完全に破壊される前に見つけることができれば、万事うまく収まるというわけか。

ネットワーク中立性は支持しない:トランプがネットワーク中立性について不平を言う理由は、彼がこのコンセプトを検閲とイコールで考えているのが理由のようだ。彼はネットワーク中立性のことを「トップダウン型の権力掌握術」だと呼び、それはFCC(連邦通信委員会)の公平原則と同じようなものだと加えた。公平原則とは、ある問題のすべての側面に対して均等な時間を割いて取材をし、その問題を公平に伝えることをニュースの報道者に求めたものだ。今後予定されている、反規制を掲げる運動家のJeffrey Eisenachとトランプとの会見は、ネットワーク中立性の支持者にとって悪いニュースだと考えられている。

サイバー攻撃には厳罰を:ヒラリー・クリントンとの最初のディベートで明らかとなった、トランプのサイバーセキュリティに関する政策は、、、とても分かりづらかった。モデレーターのLester Holtにサイバー攻撃について聞かれると、彼はこう語った。

私たちはサイバー攻撃やサイバー戦争に対して厳しい態度で望む必要があります。これは大きな問題なのです。私には10歳になる息子がいて、彼はコンピューターを持っています。それを彼は非常にうまく扱うので驚きです。インターネットのセキュリティというものは、とても、とても難しい。もしかすると、それは達成不可能なものなのかもしれません。しかし私が言いたいのは、私たちはやるべき事をやっていないということです。

トランプのWebサイトでは、彼がこのコメントで言いたかったことをもう少し明確に伝えている(このコメントよりも何かを明確に伝えることは、そう難しいことではないことは明らかだが)。そこではヒラリー・クリントンのEメール問題が何度も言及されているのに加えて、ハッキング被害を伝える過去数年分の記事の引用、そして、アメリカのインターネットがもつ脆弱性に対して彼がどのように行動していくかということが列記されている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter