米議会の新しいプライバシー法は警察がブローカーからデータを買う慣行に終止符

「Fourth Amendment is Not for Sale Act(修正第四条販売禁止法)」と名づけられた新しい法律は、本来なら合法的なアクセスができなかった個人を同定できる機密性の情報の集まりを、諜報機関や法執行機関が入手するために利用していた抜け穴を塞ぐだろう。

上院議員のRon Wyden(ロン・ワイデン)氏(民主党、オレゴン州)とRand Paul(ランド・ポール)氏(共和党、ケンタッキー州)が提出したこの新しい法案では、ブローカーから得たデータにアクセスするために政府機関は裁判所命令を入手しなければならない。同様のデータを政府がモバイルのプロバイダーやテクノロジーのプラットフォームから得ようとする場合に関しては、すでに裁判所命令の必要性が決まっている。

「データブローカーから取り出した情報が、電話会社やメールのプロバイダーが保持している同じデータと異なる扱いになるべき理由はない」とワイデン氏は述べている。同氏はこの抜け穴を、警察などの機関が「米国憲法修正第四条を迂回して」データを買う方法、と言い表している。

ポール氏は、政府がデータブローカーに関する現在の抜け穴を利用して、憲法に保証されている米国人の権利を欺いていると批判した。「不合理な捜索や押収に対する修正第四条の保護は、政府職員の恣意や金銭的取引によって侵されることのない自由を、すべての米国人に保証している」とポール氏はいう。

重要なのは、この法案では法執行機関は、ハッキングやサービス規約違反によって「ユーザーのアカウントやデバイスから」得られた米国人に関するデータを買うことも禁じられていることだ。

法案のその部分は、顔認識検索エンジンへのアクセスを売っているClearview AIの、厳しい議論の対象にもなっている疑わしい慣行を結果的に強調している。Clearviewのプラットフォームは、ソーシャルメディアサイトなどウェブからかき集めた顔の写真を集めて、そのデータへのアクセスを全国の警察ICEのような連邦政府機関に販売している。

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サイトからデータをかき集めて売ってるため、Clearviewはすべての大手ソーシャルメディアプラットフォームのサービス規約に違反している。FacebookやYouTube、Twitter、LinkedIn、Googleなどはすべて、彼らのサイトから摘み取ったデータを利用しているとしてClearviewを糾弾し、このデータブローカーの操業停止を命ずる停止命令を送ったところもある。

この法案はまた、プライバシー法を拡張して、基地局やデータケーブルを持つインフラストラクチャー企業にも適用し、諜報機関が位置データやウェブ閲覧データの取得を、その必然的大義に関するFISA裁判所の検討と許可なく、米国人の国際通信からメタデータを得て行うという回避策を封印する。

法案は下にあるが、単なる生まれたばかりの法案ではなく、民主党の上院多数党院内総務Chuck Schumer(チャック・シューマ)氏とBernie Sanders(バーニー・サンダース)氏、共和党はMike Lee(マイク・リー)氏とSteve Daines(スティーヴ・デインズ)氏など、すでに両党の複数の重要な支援者からの支持を得ている。

この文書はScribdでご覧ください

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Clearview AIプライバシーアメリカ警察

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

Ben Gabbe via Getty Images

GoogleはChromeブラウザにおけるサードパーティCookieを段階的に廃止していく一方で、新たな広告技術「FloC(Federated Learning of Cohorts)」の導入を計画しています。これは似たブラウジング行動をした人々をグループにまとめることで(個々人のブラウジング履歴はGoogleと共有しない)関連広告を表示する技術とされています。

これはGoogleのブラウザChromeにも実装される技術であり、同じくGoogleが管理するオープンソースのエンジン「Chromium」を使う他社のブラウザにも導入される可能性があります。その1つであるマイクロソフトのEdgeがFloCを無効化しており、事実上GoogleにNOと表明していることが明らかとなりました。

Chromiumのソースコードを確認すると、FloCはデフォルトでは有効とされています。つまりMicrosoft EdgeなどChromiumベースの他社ブラウザにも、コンポーネントを明示的に無効としない限り自動的にインストールされることになります。

しかし大手コンピュータヘルプサイトBleepingComputerによると、Edgeではコマンドライン引数を使ってFloCを有効にしてもブラウザ上で使用できないとのこと。つまりMSが意図的にFloCを無効にしていると解釈できるわけです。

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

そこでMSに意図を問い合わせたところ、明確な回答は得られず、代わりに自社の広告提案PARAKEETが紹介されるに留まっています。

GoogleのFLoCに関しては「正しく実装される保証がない」として、ユーザーのプライバシーにとって重大な脅威になるとの批判が相次いでいます。Chromiumベースのブラウザ「Brave」は、「Why Brave Disables FLoC | Brave Browser」にてFloCがプライバシー保護を装いつつ、プライバシーに重大な損害を与えると指摘。また同じくChromiumベースの「Vivaldi」も「No, Google! Vivaldi users will not get FloC’ed. | Vivaldi Browser」を表明し、今まで以上にプライバシーを損なう危険なステップだと痛烈に批判しており、両社ともFloCは採用しないと明言しています。

Googleは現在、何千万人ものChromeユーザーを対象にFloCをテストしており、最終的には数十億人のChromeユーザーに展開する予定です。それに対して、Chromeには及ばないものの大きなシェアを持つMSのEdgeが実質的にNoを突きつけたことで、今後の動向に影響が及ぶのかもしれません。

(Source:BleepingComputer、Via:MSPoweruserEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ウェブブラウザー(用語)オープンソース / Open Source(用語)Chromium(製品)Google Chrome(製品・サービス)広告 / アドテック(用語)FLoC(製品・サービス)Brave(企業・サービス)プライバシー(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Edge(製品・サービス)

フェイスブックの情報漏洩公表の遅れはGDPR違反の問題を招く

Facebookの2021年4月初旬の大規模な情報漏えいに対し、規制当局が同社に制裁を加えるかどうかは未だ明らかではない。しかし、この事件の時間的経緯が明らかになるにつれ、Facebookの立場は危ういものになりつつある。

Business Insiderが米国時間4月3日発表したこのデータ侵害について、Facebook は当初、ユーザーの生年月日や電話番号などの情報は「古い」ものだと示唆して問題を小さく見せかけようとした。しかし、最終的に同社は、米国時間4月7日遅くに公開されたブログ投稿で、問題のデータが「2019年9月以前に」悪意のある者によってプラットフォームからスクレイピング(ウェブサイトからの情報抽出)されたことを明らかにした。

情報漏えいの時期が新たに公表されたが、それによりこの情報漏えいが2018年5月に発効したEUにおけるGDPR(一般データ保護規則)に抵触するのではないか、という疑問が持ち上がっている。

EUの規制では、データ管理者は情報漏えいの開示を怠った場合、全世界での年間売上高の最大2%、より深刻なコンプライアンス違反の場合は年間売上高の最大4%の罰金を科せられる。

Facebookは過去のプライバシー侵害に対し、2019年7月にFTC(米国連邦取引委員会)と50億ドル(約5400億円)を支払うことで問題を解決したが、2019年6月~9月はこの合意に含まれていない。この点から見ても、EUフレームワークは重要だ。

米国時間4月7日、Facebookの監督機関であるアイルランドデータ保護委員会(DPC)は、今回の情報漏えいに対応する声明を出し、新たに公開されたデータセットの実態は完全には明らかではなく「オリジナルの2018年(GDPR以前)のデータセットから構成されているようだ」として、2017年6月~2018年4月の間に発生したとされる電話番号検索機能の脆弱性に関連する過去のデータ漏えい(2018年に開示済み)に言及した。しかしその中には、新たに公開されたデータセットは「それよりも新しい時点のものかもしれない記録と組み合わされている可能性がある」と書かれている。

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FacebookはDPCの声明を受け、2019年、同年9月までのデータがプラットフォームから抽出されていたことを認めた。

4月7日のFacebookのブログ記事では、ユーザーのデータが、前述の電話番号検索機能の脆弱性ではなく、まったく別の手口でスクレイピングされていたという事実も新たに明らかになった。連絡先インポートツールの脆弱性を突いた手口である。

この手口では、未知数の「攻撃者」は、Facebookのアプリを模倣したソフトウェアを使って、大量の電話番号をアップロードしてプラットフォームのユーザーと一致する電話番号を検出する。

例えばスパム送信者は、大量の電話番号データベースをアップロードして、名前だけでなく、生年月日、メールアドレス、所在地などのデータとリンクさせて、フィッシング攻撃を行う。

今回のデータ侵害に対し、Facebookは即座に、2019年8月にこの脆弱性を修正したと主張したが、8月であればGDPRはすでに発効している。

EUにおけるデータ保護フレームワークにはデータ違反通知制度が組み込まれている。データ管理者は、個人データの漏えいがユーザーの権利と自由に対するリスクとなる可能性が高いと考えられる場合、不当に遅延することなく(理想的には漏えいの認識から72時間以内に)関連する監督機関に通知することが求められる。

しかし、Facebookは未だに今回の事件についてDPCに一切の開示をしていない。これはEUの議会が意図した規制の在り方に反する行為であり、規制当局はBusiness Insiderの報告書を受けて、米国時間4月6日、Facebookに対し情報開示を積極的に求めることを明らかにした。

一方、GDPRではデータ侵害が広く定義されている。データ侵害とは、個人データの紛失や盗難、権限のない第三者によるアクセス、また、データ管理者による意図的または偶発的な行動や不作為による個人データの漏えいを意味する。

Facebookは、5億人以上のユーザーの個人情報がオンラインフォーラムで自由にダウンロードできる状態であったという今回のデータ漏えいについて「違反」と表現することを慎重に避けている。これは、この違反に付随する法的リスクによるものだと考えられる。

ユーザーの個人情報を「古いデータ」と呼んで、ことの重大性を小さく見せかけようとしているのも法的リスクを考慮したうえでのことだろう(携帯電話番号、メールアドレス、氏名、経歴などを定期的に変更する人はほとんどいないし、法的に生年月日が変更されるケースは考えられないのだが)。

一方で、Facebookのブログ投稿はデータがスクレイピングされたことに言及し、スクレイピングとは「自動化されたソフトウェアを使ってインターネット上の公開情報を取り出し、オンラインフォーラムで配布する一般的な手口」であると説明している。つまり、Facebookの連絡先インポートツールを通じて流出した個人情報が何らかの形で公開されていたことを暗に示している。

ブログ投稿でFacebookが展開しているのは、何億人ものユーザーが携帯電話番号などの機密情報をプラットフォームのプロフィールに公開し、アカウントのデフォルト設定を変更しなかったので、これらの個人情報が「スクレイピング可能な状態で公開されている/プライベートではなくなっている/データ保護法でカバーされていない」という論法だ。

これはユーザーの権利やプライバシーを著しく侵害する、明らかにばかげた論法であり、EUのデータ保護規制当局は迅速かつ決定的に拒否しなければならない。さもなければ、Facebookがその市場力を悪用して、規制当局が保護すべき唯一の目的である基本的な権利を侵害することに加担することになる。

今回の情報漏えいの影響を受けた一部のFacebookユーザーは、Facebookのプライバシーを侵害するデフォルト設定を変更していなかったために、連絡先インポートツールを通じて情報が流出したのかもしれない。その場合でも、GPDRの遵守にかかる重要な問題が生じる。なぜなら、GPDRはデータ管理者に対して、個人データを適切に保護し、プライバシーを設計段階からデフォルトで適用することも要求しているからだ。

Facebookは何億件ものアカウント情報が無防備にスパマー(あるいは誰でも)に奪われてしまった。これは優れたセキュリティやプライバシーのデフォルト適用とは言い難い。

Cambridge Analyticaのスキャンダル再び、である。

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過去にあまりにもプライバシーやデータ保護を疎かにしていたFacebookは、今回も逃げ切ろうとしているようだ。これまでデータスキャンダルの連続であっても、規制当局の制裁を受けることが比較的少なかったため、逃げ続けることに自信を持っているのかもしれない。年間売上高が850億ドル(約9兆3000億円)を超える企業にとって、1回限りの50億ドル(約5400億円)のFTCの罰金は単なるビジネス経費に過ぎない。

Facebookに、ユーザーの情報が再び悪意を持って自社のプラットフォームから抜き取られていることを認識した時点(2019年)でなぜDPCに報告しなかったのか、また、影響を受けた個別のFacebookユーザーになぜ連絡しなかったのかを問い合わせたが、同社はブログ投稿以上のコメントを拒否した。

また、同社と規制当局とのやり取りについてもコメントしないとのことだった。

GDPRは、情報漏えいがユーザーの権利と自由に高いリスクをもたらす場合、データ管理者は影響を受ける個人に通知することを義務付けている。それには、ユーザーに脅威を迅速に知らせることで、詐欺やID盗難など、データが漏えいした場合のリスクから自らを守るための手段を講じることができるという合理的な理由がある。

Facebookのブログ投稿にはユーザーに通知する予定はないとも記されていた。

Facebookの「親指を立てる」というトレードマークは、ユーザーに中指を立てている(ユーザーを侮辱する表現)と見た方が適切かもしれない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebookデータ漏洩プライバシーGDPREU

画像クレジット:JOSH EDELSON / Contributor / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

近頃起こったデータ漏洩についてFacebookからの回答が待たれる

Facebookの欧州連合(EU)のデータ保護規制当局は、2021年4月第1週末に報告された大規模なデータ侵害について、この大手企業に回答を求めている。

この問題は、米国時間4月2日に Business Insiderが報じたもので、5億件以上のFacebookアカウントの個人情報(メールアドレスや携帯電話番号を含む)が低レベルのハッキングフォーラムに投稿され、数億人のFacebookユーザーのアカウントの個人情報が自由に利用できる状態になっていた。

ビジネスインサイダーによると「今回公開されたデータには、106カ国の5億3300万人以上のFacebookユーザーの個人情報が含まれており、その中には、米国のユーザーに関する3200万人以上の記録、英国のユーザーに関する1100万人以上の記録、インドのユーザーに関する600万人以上の記録が含まれる」。さらにその中には、電話番号、FacebookのID、氏名、所在地、生年月日、経歴、一部のメールアドレスなどが含まれていることを明らかにした。

Facebookは、データ漏洩の報告に対して、2019年8月に「発見して修正した」自社プラットフォームの脆弱性に関連するものだとし、その情報を2019年にも報告された「古いデータ」と呼ぶ。しかし、セキュリティ専門家がすぐに指摘したように、ほとんどの人は携帯電話の番号を頻繁に変更することはない。そのため、この侵害をそれほど重大でないものに見せようとするFacebookの反応は、責任逃れのための思慮の浅い試みのように思われる。

また、 Facebookの最初の回答が示しているように、すべてのデータが「古い」ものであるかどうかも明らかではない。

Facebookがまたしても起こったこのデータスキャンダルを、それほど重大でないものに見せようとする理由は山ほどある。欧州連合のデータ保護規則では、重大なデータ漏洩を関連当局に速やかに報告しなかった企業に対して厳しい罰則が設けられていることもその理由の1つだ。また、欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)では、設計上およびデフォルトでのセキュリティが期待されているため、違反自体にも厳しい罰則が課せられる。

Facebookは、流出したデータが「古い」という主張を推し進めることで、それがGDPRの適用開始(2018年5月)よりも前であるという考えを宣伝したいのかもしれない。

しかし、欧州連合におけるFacebookの主なデータ監督機関であるアイルランドのデータ保護委員会(DPC)は、TechCrunchに対し、現時点ではそれが本当に古いと言えるのかどうかは十分に明らかではないと述べる。

DPCのGraham Doyle(グラハム・ドイル)副委員長は「新たに公開されたデータセットは、オリジナルの2018年(GDPR以前)のデータセットと、それより後の時期のものと思われるデータ接セットで構成されているようだ」との声明を出している。

ドイル氏はまた「情報が公開されたユーザーの多くはEUユーザーだ。データの多くは、Facebookの公開プロフィールからしばらく前に取得されたデータのようだ」とも述べている。

「以前のデータセットは2019年と2018年に公開されたが、これはFacebookのウェブサイトの大規模なスクレイピングに関連するものだ(当時Facebookは、Facebookが電話検索機能の脆弱性を閉鎖した2017年6月から2018年4月の間にこれが発生したと報告していた)。このスクレイピングはGDPR発効以前に行われたため、FacebookはこれをGDPRに基づく個人データ侵害として通知しないことに決めたのだ」。

ドイル氏によると、規制当局は週末にFacebookから情報漏洩に関する「すべての事実」を取得しようとしており、現在もそれは「続いている」。つまり、Facebookが情報漏洩自体を「古い」と主張しているにもかかわらず、この問題については現在も明らかになっていないということだ。

GDPRでは、重要なデータ保護問題について規制当局に積極的に知らせる義務が企業に課せられているにもかかわらず、この問題についてFacebookから積極的な連絡がなかったことがDPCによって明らかになった。それどころか、規制当局がFacebookに働きかけ、さまざまなチャネルを使って回答を得なければならなかった。

こうした働きかけによりDPCは、Facebookとしては、情報のスクレイピングは、Cambridge Analyticaのデータ不正利用スキャンダルを受けて確認された脆弱性を考慮して2018年と2019年にプラットフォームに加えた変更の前に発生したと考えていることが分かったと述べている。

2019年9月、オンライン上で、Facebookの電話番号の膨大なデータベースが保護されていない状態で発見された。

関連記事:Facebookユーザーの電話番号が掲載された大量データベースが流出

また、Facebookは以前、自社が提供する検索ツールに脆弱性があることを認めていた。2018年4月には、電話番号やメールアドレスを入力することでユーザーを調べられる機能を介して、10億から20億人のFacebookユーザーの公開情報が抽出されていたことを明らかにしているが、これが個人情報の貯蔵庫となっている可能性もある。

Facebookは2020年、国際的なデータスクレイピングに関与したとして、2社を提訴している。

関連記事:Facebookがデータスクレイピングを実行する2社を提訴

しかし、セキュリティ設計の不備による影響は「修正」から数年経った今でもFacebookの悩みの種となっている。

さらに重要なのは、大規模な個人情報の流出による影響は、インターネット上で今や自分の情報が公然とダウンロードにさらされるようになったFacebookユーザーにも及んでおり、スパムやフィッシング攻撃、その他の形態のソーシャルエンジニアリング(個人情報の窃盗を試みるものなど)のリスクにさらされていることだ。

この「古い」Facebookデータが、ハッカーフォーラムで無料で公開されるに至った経緯については、謎に包まれている部分が多い。

DPCは、Facebookから「問題となっているデータは、第三者によって照合されたものであり、複数のソースから得られたものである可能性がある」との説明を受けたと述べている。

Facebookはまた「十分な信頼性をもってその出所を特定し、貴局および当社のユーザーに追加情報を提供するには、広範な調査が必要である」と主張しているが、これは遠回しに、Facebookにも出所の見当がつかないということを示唆している。

「Facebookは、DPCに対し、確実な回答の提供に鋭意努めることを保証している」とドイル氏は述べている。ハッカーサイトで公開された記録の中には、ユーザーの電話番号やメールアドレスが含まれているものもある。

「ユーザーには、マーケティングを目的としたスパムメールが送られてくる可能性がある。また電話番号やメールアドレスを使った認証が必要なサービスを自ら利用している場合も、第三者がアクセスを試みる危険性があるため注意が必要だ」

「DPCは、Facebookから報告を受け次第、さらなる事実を公表する」と彼は付け加えた。

本稿執筆時点で、Facebookにこの違反行為についてのコメントを求めたが、同社はこれに応じなかった。

自分の情報が公表されていないか心配なFacebookユーザーは、データ漏洩について助言を行うサイト「haveibeenpwned」で、自分の電話番号やメールアドレスを検索することができる。

haveibeenpwnedのTroy Hunt(トロイ・ハント)氏によると、今回のFacebookのデータ漏洩には、メールアドレスよりも携帯電話番号の方がはるかに多く含まれている。

彼によると、数週間前にデータが送られてきた。最初に3億7000万件の記録が送られてきたが、その後「現在、非常広く流通しているより大規模なデータ」が送られてきたという。

「多くは同じものですが、同時に多くが異なってもいます」とハント氏は述べ、次のように付け加えた。「このデータには1つとして明確なソースはありません」。

【更新1】Facebookは今回のデータ流出についてブログ記事を公開し、問題のデータは2019年9月以前に「悪意のある者」が連絡先インポート機能を使ってユーザーのFacebookプロフィールからスクレイピングしたものと考えていることを明らかにした。またその際、ツールに修正を行い、大量の電話番号をアップロードしてプロフィールに一致する番号を見つける機能をブロックすることで悪用を防ぐ変更を施している。

「修正前の機能では、(Facebookの連絡先インポートツールのユーザーは)利用者プロフィールを照合し、公開プロフィールに含まれる一定の情報のみは取得することができました」とFacebookは説明し、これらの情報には利用者の金融情報や医療情報、パスワードは含まれていないと付け加えた。

ただし、悪意のある者がツールを転用することでどのようなデータを取得できたかについて、あるいは当該行為者を特定し、訴追しようとしたかどうかという点については明記されていない。

その代わりに同社の広報は、そのような行為は同社の規約に違反しているとし「このデータセットの削除に取り組んでいる」ことを強調した。同社はまた「機能を悪用する人々を可能な限り積極的に追跡していきます」と述べているが、ここでも悪用者を特定して確実に排除した実例は示していない。

(例えば、Facebookが2018年にCambridge Analyticaのスキャンダルを受けて実施すると述べたアプリ内部監査の最終報告書はどこにあるのだろうか。英国のデータ保護規制当局は最近、Facebookとの法的取り決めにより、アプリ監査について公の場で議論することはできないと述べている。つまりFacebookは、自社ツールの不正使用にどう取り組むかについての透明性を回避することに関しては、積極的なアプローチをとっているようだ……)

「過去のデータセットの再流通や新たなデータセットの出現を完全に防ぐことは困難ではありますが、専任チームを設け、今後もこの課題に対して注力してまいります」とFacebookは広報の中で述べており、ユーザーのデータが同社のサービス上で安全であることを一切保証していない。

同社はユーザーに対し、アカウントに提供しているプライバシー設定をチェックすることを推奨している。その設定には、同社のサービス上で他人があなたを検索する方法を制御する機能も含まれている。これではデータセキュリティの責任はFacebook自身ではなくFacebookユーザーの手中にあると言っているようなもので、Facebookデータ漏洩の事実から逸脱し、責任転換をしようとしているだけである。

もちろん、実際はユーザー次第ではない。FacebookユーザーがFacebookから提供されるのはデータの部分的なコントロールだけであり、Facebookの設計と仕組み(プライバシーに配慮したデフォルト設定を含む)が全面的に関与するものだ。

さらに、少なくとも欧州では、製品の設計にセキュリティを組み込む法的責任がある。個人データに対して適切なレベルの保護を提供できない場合、大きな規制上の制裁を受ける可能性があるが、企業は依然としてGDPRの施行上のボトルネックから恩恵を享受している。

Facebookの広報はまた、ユーザーが二段階認証を有効にしてアカウントのセキュリティを向上させることを提案している。

それは確かに名案だが、二段階認証に関しては、Facebookが二段階認証用のセキュリティキーとサードパーティ認証アプリのサポートを提供していることは注目に値する。つまり、Facebookに携帯番号を与えるリスクを冒すことなく、この付加的なセキュリティ層を追加することができる。ユーザーの電話番号を大量にリークしていた過去もあり、ターゲティング広告に二段階認証の数字を使うことも認めているため、Facebookに自分の電話番号を託すべきではないといえるだろう。

【更新2】Facebookは追加の背景説明で、規制当局との通信内容についてはコメントしないことを明らかにした。

同社はまた、侵害についてユーザーに個別に通知する計画はないと述べ、さらに、データが取得された方法(スクレイピング)の性質上、通知が必要なユーザーを完全に特定することはできないとしている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebookデータ漏洩GDPREUヨーロッパプライバシー個人情報

画像クレジット:Jakub Porzycki/NurPhoto / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

米国のプライバシー保護団体が「監視広告」の禁止を米議会に強く要請

米国時間3月25日に、ビッグテックと議会による「映画のような」激しい応酬が行われた。米国議会は、虚偽情報という不快なトピックについて今回もFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Twitter(ツイッター)のCEOに聴聞する予定だ。それに先立ち、プライバシー、反トラスト、消費者保護、公民権の各分野の組織で構成される連合体が「監視広告」の禁止を要求し「ビッグテックの有害なビジネスモデルが民主主義を弱体化させている」という論調を強めている。

「不快な広告」の禁止を要求しているのは、40あまりの組織で構成される強力な連合体だ。このような広告には、行動広告のターゲティングを目的としたウェブユーザーの大規模追跡とプロファイリングが利用されている。この連合体には、American Economic Liberties Project(アメリカ経済的自由プロジェクト)、Campaign for a Commercial Free Childhood(広告のない子ども時代を目指すキャンペーン)、Center for Digital Democracy(デジタル民主主義センター)、Center for Humane Technology(人道的技術センター)、Epic.org(電子プライバシー情報センター)、Fair Vote(フェア・ボート)、Media Matters for America(メディア・マターズ・フォー・アメリカ)、Tech Transparency Project(技術透明性プロジェクト)、The Real Facebook Oversight Board(リアルフェイスブック監視委員会)などの組織が参加している。

同連合体は公開書簡の中で「我々はさまざまな問題や業種を代表しており、コミュニティの安全性と民主主義の健全性に対する懸念を共有している。ソーシャルメディア大手は、情報を吸い取る有害なビジネスモデルのサービスにおいて、合意された現実を侵食し、公共の安全を脅かしている。監視広告の禁止に向けた取り組みで我々が協力しているのはそのためだ」と述べている。

この連合体はまた、より安全な非追跡型の代替手段(コンテキスト広告など)が存在することを指摘している。一方で、アドテックのインフラストラクチャのさらなる透明性とそれに対する監督が、関連するさまざまな問題(ジャンクコンテンツ、陰謀論の増加、広告詐欺、デジタルイノベーションの荒廃など)の解決に役立つ可能性があると主張している。

前述の公開書簡の中には「この危機に対処するための特効薬はない。この連合体のメンバーは、包括的なプライバシー関連の立法、反トラスト法の改正、責任基準の変更など、引き続きさまざまな政策的アプローチを追求していく。しかし全員が同意できることが1つある。それは、今こそ監視広告を禁止すべきときだということだ」と書かれている。

さらに、同連合体は「ビッグテックのプラットフォームは、憎悪、不法行為、陰謀論を増幅している。また、ユーザーにますます極端なコンテンツを提供するようになっている。それによってエンゲージメントと利益を最大化できるためだ」と警告する。

「ビッグテック自身のアルゴリズムツールによって、白人至上主義者のグループ、ホロコースト否認主義、新型コロナウイルス感染症関連のデマ、偽造オピオイド、虚偽の癌治療情報など、あらゆる情報の拡散が促進されてきた。エコーチェンバー現象、急進化、嘘の拡散はこのようなプラットフォームの特徴である。これはバグではなく、ビジネスモデルの中心なのだ」。

また、この連合体は監視広告による従来型ニュースビジネスへの影響についても警告している。プロのジャーナリズムにおける収益が減ってきており、それにより民主主義で取り組むべき(真の)情報エコシステムへの危害が大きくなっていると述べている。

これらの批判にもそれなりの根拠はあるのが、従来型ニュースの終焉をテクノロジー大手のせいにするのは単純化しすぎである。巨大テック企業の存在そのもの、つまりインターネットによってもたらされた産業のディスラプション(創造的破壊)を批判しているのと同じだ。とはいえ、一部のプラットフォーム大手による、プログラムを使用したアドテックパイプラインの支配は、明らかによいことではない(オーストラリアの立法はこの問題に対して判決を下したが、つい最近のことであるため、まだその影響を評価することはできない。しかし、ニュースメディアへの対価の支払いを義務付ける法律の恩恵を受けるのは大手メディアビッグテックだけで、声を上げた両業界全体に利益がもたらされることにはならない、というリスクがある)。

同連合体は次のように警告する。「フェイスブックとグーグルの独占的な力と、データを『収穫』する行為は、両社に不公平なほど大きなメリットを与えてきた。それにより両社はデジタル広告市場を支配し、以前は各地域の新聞が得ていた収益を吸い上げるようになった。そのため、ビッグテックのCEOがさらに裕福になる一方で、ジャーナリストは解雇されている。ビッグテックは現在も差別、分断、迷いを煽っている。標的型の暴力を助長し、暴動の土台を用意することになる場合でも、金銭面でのメリットがある限りこれを行う」。

連合体は、具体的な被害をまとめたリストの中で、フェイスブックとグーグルなどのテクノロジー大手による圧倒的に有利なオンラインビジネスモデルが「医療関連のデマ、陰謀論、過激なコンテンツ、外国のプロパガンダを促進する狡猾な虚偽情報のサイト」の資金源になっていると指摘している。

「監視広告を禁止することで、デジタル広告の表示に対する透明性と説明責任を以前のように戻せる可能性がある。また、虚偽情報のパイプラインにおいて重要なインフラストラクチャとして機能しているジャンクサイトの資金を大きく減らせる可能性がある」と同連合体は主張し、さらに「このようなサイトでは、拡散目的で作られた陰謀論がいつまでも続くことになる。この陰謀論は、ソーシャルメディア上の悪意のあるインフルエンサーや、エンゲージメントに飢えたプラットフォームのアルゴリズムによって拡散が促進される。つまり、監視広告が有害なフィードバックループを加速し、資金源にもなっている」と述べている。

同連合体が指摘する被害には他にも、プラットフォームによるジャンクコンテンツや虚偽コンテンツ(新型コロナウイルス感染症に関する陰謀論やワクチンに関する誤った情報など)の拡散による公衆衛生に対するリスク、不公平に選ばれた、またはバイアスがかかった広告ターゲティング(女性や民族的マイノリティなどを違法に排除する求人広告など)を通じた差別のリスク、コンテンツや広告におけるユーザーエンゲージメントを増加させるために過激なコンテンツや悪意のあるコンテンツを増やす、広告プラットフォームによる道義に反する経済的インセンティブ(これは社会の分断を促進する。また、コンテンツが多く拡散されるほどプラットフォームが財務的に利益を得るという事実の副産物として党派性を促進する)、等がある。

同連合体はまた、監視広告システムが「小規模ビジネスに対して不正な試合を持ちかけている」とも主張している。プラットフォームの独占的状態が監視広告システムに組み込まれるためだ。これは「不快な広告は何らかのかたちで中小企業と大規模ブランドの勝負を公平にする」というテクノロジー大手の自衛的主張に対する妥当な反論である。

「フェイスブックとグーグルは自らを小規模ビジネスのライフラインであるかのように装っている。しかし真実は、単に独占企業としてデジタルエコノミーへのアクセスに対して課金しているだけだ」と同連合体は述べており、独占的状態にある両社による「広告市場に対する監視に基づく拘束により、小規模企業はレバレッジや選択肢を利用できない」と主張している。これはビッグテックによる搾取の余地を生む。

そのため、同連合体は、フェイスブックとグーグルが米国の広告市場の60%近くをコントロールしている現在の市場構造ではイノベーションと競争が抑制される、と断言している。

「監視広告はオンラインパブリッシャーに恩恵をもたらすのではなく、ビッグテックのプラットフォームに対して偏ったメリットをもたらす」と同連合体は述べ、フェイスブックは2020年に842億ドル(約9兆3214億円)の広告収入を、グーグルは1348億ドル(約14兆9231億円)の広告収入を得て「一方で監視広告の業界では詐欺の申し立てが多数あった」と指摘する。

行動ターゲティング広告の禁止を要求するキャンペーンは、今回が初めてではない。しかし、支持している署名者の数を考えると、これは、今の時代を形作り数社のスタートアップが社会と民主主義を弱体化させる巨人に姿を変えたデータ収穫型ビジネスモデルに反対する勢いの大きさを示している。

米国議会がビッグテックの影響に細かい注意を払うようになってきたため、この点は重要だと思われる。また、複数のビッグテックに対する反トラスト法関連の訴訟が進行中である。とはいえ、マイクロターゲティングの悪用の影響と民主的社会へのリスクについて早い段階で警鐘を鳴らしたのは、欧州のプライバシー規制当局だ。

話は2018年にさかのぼる。Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)が関与していたフェイスブックデータの不正使用と投票者をターゲットにしたスキャンダルが発生すると、英国のICOは、倫理的な理由から政治キャンペーン目的でのオンライン広告ツールの使用停止を要求した。また「Democracy Disrupted? Personal information and political influence(民主主義は崩壊したのか?個人情報と政治的影響)」というタイトルの報告書を作成した。

その同じ規制当局が、行動ターゲティング広告が制御不能になっているという警告を2019年に受けていながら、アドテック業界によるユーザーデータの違法使用に対してこれまでアクションを起こしてこなかったことは、ちょっとした皮肉では済まされない事態だ。

ICOが行動を起こさないのを見た英国政府は、ビッグテックを監督する専門の部門が必要だと判断した。

英国政府は近年、オンライン広告の分野を独占禁止法関連の懸念事項として挙げており、2019年に競争・市場庁が実施したデジタル広告セクターの市場調査に従い、競争重視の規制機関を作ってビッグテックの支配に対応していくと述べている。この調査では、アドテックによる独占的状況に対する大きな懸念が報告された

一方で、欧州連合のデータ保護監督機関のトップは先月、インターネットユーザーのデジタルアクティビティに基づくターゲティング広告を、停止ではなく禁止することを主張し、各加盟国の議員に対して、デジタルサービスルールの大規模な改正にそのための手段を組み入れるよう求めた。このルールは、運用者の説明責任などの目標達成を促進することを目的としたものである。

欧州委員会の提案がここまで踏み込んだのは今回が初めてだ。しかし、デジタルサービス法とデジタル市場法に関する交渉は現在も継続中である。

2020年、欧州議会でも、不快な広告に対してより厳しい姿勢で臨むことが支持された。ただし、ここでもオンラインの政治広告対応に取り組む委員会のフレームワークでは、あまり過激な内容は提案されていない。そのため、EUの議員はさらなる透明性を求めている。

米国議会が今回のキャンペーンにどう反応するかはまだわからないが、米国では市民社会組織は協力してターゲティング広告に反対するメッセージを広めようとしており、有害なアドテックを一掃すべきだ、という圧力が米国内でも高まっている。

同連合体のウェブサイトに記載されているコメントの中で、フォーダム大学ロースクールの法律学准教授であるZephyr Teachout(ゼファー・ティーチアウト)氏は「フェイスブックとグーグルは、権威主義国家における監視体制とタバコのような依存症ビジネスモデルを組み合わせた、巨大で独占的な力を持っている。議会には両社のビジネスモデルを規制する広範な権威があり、監視広告への取り組みを禁止するためにそれを使用するべきである」と述べている。

Ruby on Rails(ルビー・オン・レイルズ)のクリエイターであるDavid Heinemeier Hansson(デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)氏は、今回の活動を支持する別の声明の中で次のように述べている。「監視広告は、新聞、雑誌、独立したライターから、生活およびコモディティ化された仕事を奪ってきた。代わりに我々が得たものは、数社の腐敗した独占的企業だった。これは社会にとってよい取引ではない。このやり方を禁止することで、我々は文章、音声、動画の独自の価値を、それを集める者ではなく、それを作る者の手に取り戻すことができる」。

興味深いことに、米国の政策立案者がアドテックにさらに細かく注意を払うようになっている状況を受けて、グーグルは個人レベルの追跡サポートを「プライバシー保護」型の代替策として認知されている方法(FLoC)で置き換える努力を加速させている。

それでも、Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)でグーグルが提案したテクノロジーでは、ウェブユーザーのグループ(コホート)が引き続き広告主のターゲットになる。ここには引き続き、差別が発生するリスクや、社会的弱者のグループが何らかの標的にされ、社会的規模で操作が行われるリスクが存在する。そのため、議員はグーグルのブランディングではなく「プライバシーサンドボックス」の詳細に注意を払う必要がある。

「要するに、これはプライバシー保護の点では有害なことだ」とEFF(電子フロンティア財団)は2019年の提案について触れながら警告した。「集団の名称は基本的には行動の信用スコアだ。デジタル版の額にタトゥーが刻まれているようなもので、あなたが誰か、何が好きか、どこに行くのか、何を買うのか、誰と関係があるのか、といった情報を提供している」と述べている。

EFFはまた「FLoCはプライバシー保護テクノロジーとは逆のものだ」と付け加え「今日も追跡者はウェブ上であなたを追いかけている。あなたがどのような人間かを推測するためにデジタル環境でコソコソ動いている。グーグルによってもたらされる未来では、追跡者は椅子に座って何もせず、自分の代わりにあなたのブラウザに働かせるだろう」と述べている。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

ジャマイカの新型コロナアプリ失敗の経緯、サイバー攻撃ではなく単に安全ではなかった

2020年3月に新型コロナウイルスのパンデミックが宣言され、各国の政府が次々とロックダウンを発令する中、一部の国では国境の再開に向けた計画が進められていた。2020年6月、ジャマイカは国境を開放した最初の国の1つとなった。

ジャマイカ経済の約5分の1を占める観光業。2019年だけでも400万人の旅行者がジャマイカを訪れ、300万人の住民に多大な雇用をもたらしている。しかし夏が近づくにつれ新型コロナウイルスの影響が忍び寄り、ジャマイカは経済の急落に直面する。同国にとっては観光業が復活の道への唯一の希望である。たとえそれが公衆衛生の犠牲を意味したとしてもだ。

ジャマイカ政府は、キングストンに本社を置くテクノロジー企業Amber Groupと契約し、住民や旅行者が島に戻ってこられるような国境通過システムを構築した。アプリとウェブサイトで展開されたこのシステムは「JamCOVID」と名づけられ、到着前に入国者をスクリーニングできるようになっている。旅行者が米国などの高リスク国からのフライトに搭乗する前に、新型コロナウイルス検査の陰性結果をJamCOVIDにアップロードしなければ入国できないというシステムである。

Amber Groupの最高経営責任者Dushyant Savadia(ドゥシャント・サヴァディア)氏は、同社がJamCOVIDをわずか「3日」で開発し、ジャマイカ政府に同システムを事実上寄贈したと誇らしげに語っている(その見返りに政府がAmber Groupに対して追加機能やカスタマイズの費用を支払うという条件だ)。この導入は成功したと見られ、同社はその後少なくとも4つのカリブ海の島々に国境通過システムを導入する契約を獲得している。

ところが2021年3月、過去1年間に島を訪れた50万人近い旅行者(多数の米国人を含む)の入国書類、パスポート番号、新型コロナウイルス検査結果がJamCOVIDから漏洩したという事実をTechCrunchが暴いたのだ。Amber Group はJamCOVIDのクラウドサーバーへのアクセスをパブリックに設定しており、誰もがウェブブラウザーからデータにアクセスできるようになっていたのである。

今回のデータ流出の原因が人為的なものであれ過失によるものであれ、これはテクノロジー企業が、ひいてはジャマイカ政府が犯してしまった恥ずかしい過ちだ。

さらに、この騒動も終わるかというところで、今度はこれに対する政府の対応が新たな騒動となってしまった。

セキュリティ問題3連チャン

接触者追跡アプリがまだ初期段階の、新型コロナウイルスの第1波が終わった頃、国境に到着した旅行者をスクリーニングする計画を立てている政府はほとんど存在せず、ウイルスの広がりを把握するための技術を構築したり、獲得したりするために各国の政府は奔走していた。

関連記事:AppleとGoogleが共同開発する新型コロナ追跡システムは信頼できるのか?

ジャマイカは位置情報を利用して旅行者を監視していた数少ない国の1つで、権利団体からは当時からプライバシーやデータ保護に関する懸念が寄せられていた

こういった新型コロナウイルス関連のアプリやサービスを幅広く調査した結果、TechCrunchはJamCOVIDがパスワードのない露出したサーバーにデータを保存していることを発見した。

TechCrunchが報道を通じてセキュリティ上の欠陥データの流出を発見したのは今回が初めてではなく、またパンデミック関連のセキュリティ脅威もこれが初めてではない。イスラエルのスパイウェアメーカーであるNSO Groupは、新たな接触者追跡システムのデモに使用した保護されていないサーバーに、実際の位置情報を残していた。また、ノルウェーは接触者追跡アプリを最初に導入した国の1つだが、国民の位置情報を継続的に追跡するというのはプライバシー上のリスクになると同国のプライバシー当局が判断したため、アプリの導入は中止されている。

どんな記事の場合でも同様だが、我々はサーバーの所有者と思われる人物に連絡を取り、またジャマイカ保健省には2月13日の週末にデータが流出していることを報告した。しかし保健省の広報担当者であるStephen Davidson(スティーブン・デビッドソン)氏にデータ流出の具体的な内容を伝えたにも関わらず返事が来ない。その上2日後、データは依然として流出されたままだったのである。

このサーバーからデータが流出した2人の米国人旅行者と話した後、サーバーの所有者をAmber Groupに絞り込む事ができた。2月16日、CEOのサヴァディア氏に連絡を取ったところ、同氏はメールの受領は認めたもののコメントはなく、その約1時間後にサーバーのセキュリティが確保された。

その日の午後、 TechCrunchが本件の記事を掲載した後ジャマイカ政府が声明を発表し、この失態は「2月16日に発覚」し「直ちに修正した」という嘘を述べている。

それどころか同政府は 、TechCrunchが最初に書いた記事の発端となった保護されていないデータに「不正な」アクセスがあったかどうかについて刑事捜査を開始した。これは我々に向けられた薄っぺらな脅しである。同政府は海外の法執行機関と連絡を取ったと伝えている。

FBIの広報担当者にジャマイカ政府から連絡があったかどうかについて聞いてみたが、回答は得られなかった。

その後もJamCOVIDが改良されたことはない。最初の記事から数日後、政府はクラウドコンサルタントのEscala 24×7にJamCOVIDのセキュリティ評価を依頼しており、その結果は公表されなかったものの同社はJamCOVIDには「脆弱性がない」と確信していると述べている。またAmber Groupは、今回の失態が「単発的な出来事」であったと結論づけている。

1週間が経過し、TechCrunchはAmber Groupにさらに2つのセキュリティ問題を警告することになる。最初のニュースを見たセキュリティリサーチャーがJamCOVIDのサーバーやデータベースの秘密鍵やパスワードがウェブサイトに隠されているのを発見し、さらに50万人以上の旅行者の検疫命令の流出という3つ目の失態を暴いている。

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Amber Groupと同政府はサイバー攻撃やハッキングに見舞われたと主張しているが、実際は単にこのアプリのセキュリティがなっていないだけである。

政治的に不都合なタイミング

ジャマイカ政府は今回2度目の試みとなる国民識別システム(NIDS)の立ち上げを行おうとしている最中のため、このセキュリティ問題はジャマイカ政府にとって政治的に非常に不都合だ。NIDSにはジャマイカ国民の指紋などの生体情報も保存されることになる。

1度目の試みがジャマイカの高等裁判所で違憲と判断されてから2年、政府は今回2度目の立ち上げを目前にしている。

JamCOVIDのセキュリティ問題を国家データベース案打ち切りの理由として挙げている評論家もいる。プライバシーや権利に関する団体の連合はJamCOVIDを例に挙げ、国家データベースは「ジャマイカ人のプライバシーとセキュリティにとって危険」と主張。ジャマイカの野党の広報担当者は地元メディアに対し「そもそもNIDSはあまり期待されていなかった」と語っている

最初の記事を掲載してから1カ月以上が経過したが、Amber GroupがJamCOVIDの構築や運用の契約をどのようにして獲得したのか、クラウドサーバーがどのようにして公開されたのか、また発売前にセキュリティテストが行われたのかなど、多くの疑問点が残されている。

TechCrunchはジャマイカの首相官邸とジャマイカ国家安全保障省のMatthew Samuda (マシュー・サムダ)大臣にメールを送り、JamCOVIDを運営するために政府がAmber Groupにいくら支払いまたは寄付したのか、またどのようなセキュリティ要件が合意されたのかを尋ねてみたが、回答は得られなかった。

Amber Groupもまた政府との契約でいくらの金を手にしたのか明らかにしていない。同社のサヴァディア氏はある地方紙に対して契約額の開示を拒否しており、また契約に関するTechCrunchの質問メールにも答えていない。

ジャマイカの野党は、政府とAmber Groupとの間で交わされた契約書の公開を首相に要求しているが、Andrew Holness(アンドリュー・ホルネス)首相は記者会見で、政府との契約について国民には「知る権利がある」と述べた上で、国家安全保障上の理由や「機密の貿易および商業情報」が開示される可能性がある場合など「法的なハードル」が開示を妨げることもあると伝えている

地元紙のThe Jamaica Gleanerが国家公務員の給与を示す契約書の入手を要求したところ、法律に守られているため個人のプライバシーを開示することはできないとして政府から拒否された数日後に、首相のこの発言である。評論家らは、政府役人に対して公的資金がいくら支払われているかを知る権利が納税者にはあると主張している。

ジャマイカの野党は、被害者に対してどのように今回の件を通知したのかという質問も投げている。

サムダ大臣は当初セキュリティ問題を軽視し、影響を受けたのはわずか700人だと主張していた。我々は証拠を見つけるためソーシャルメディアを探ったが、何も見つかっていない。これまでのところ、ジャマイカ政府が旅行者にセキュリティ事故について通知したという証拠は一切見つかっていない。情報が流出して被害を受けた数十万人の旅行者にも、政府が通知したと主張しながらも公表されていない700人の旅行者にも同様である。

TechCrunchは政府が被害者に送ったという通知のコピーを要求するため大臣にメールを送ったが、回答は得られなかった。また、Amber Groupとジャマイカの首相官邸にもコメントを求めたが、返事は未だない。

今回のセキュリティ過失の被害者の多くは米国人である。1度目の記事で話を伺った2人の米国人は、いずれも情報漏えいの通知を受けていない。

住民の情報が流出したニューヨーク州とフロリダ州の検事総長の広報担当者は、TechCrunchの取材に対し、州法でデータ流出の開示が義務づけられているにもかかわらず、ジャマイカ政府からもAmber Groupからも連絡がなかったと伝えいてる。

大きな代償を支払うことになったジャマイカの国境解放。ジャマイカではその後1カ月間に100人以上の新規感染者が判明したが、その大部分は米国から到着した人々である。2020年6月から8月にかけてコロナウイルスの新規感染者数は、毎日数十人単位から数百人単位へと推移してしまった。

これまでにジャマイカでは、パンデミックによる3万9500人以上の感染者と600人の死亡者が報告されている。

ホルネス首相は先月、国会で国の年間予算を発表する際に、当時の国境解放に対する決定を振り返りコメントしている。同氏によると2020年度の経済の落ち込みは「観光産業における70%という大規模な縮小によってもたらされた」とのことで、住民と観光客を含む52万5000人以上の旅行者がジャマイカを訪れたというが、この数字は2月に流出したJamCOVIDサーバーで見つかった旅行者の記録の数をわずかに上回っている。

ホルネス首相は、同国の国境解放の決定を擁護している。

「もし国境を開けていなかったら観光収入の落ち込みは75%ではなく100%になり、雇用も回復せず国際収支の赤字も悪化し、政府全体の収入も脅かされ、さらに支出を増やそうという議論にもならなかったでしょう」と同氏。

ジャマイカ政府もAmber Groupも国境を開くことで利益を得た。ジャマイカ政府は落ち込んだ経済を回復させたいと考え、Amber Groupは政府との新たな契約でビジネスを活性化させたわけだ。しかし、どちらもサイバーセキュリティに十分な注意を払っておらず、彼らの過失による被害者には、その理由を知る権利がある。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ジャマイカ新型コロナウイルス旅行データ漏洩プライバシー

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

アップルが導入間近のデータトラッキング規制「App Tracking Transparency」の詳細をさらに公開

Apple(アップル)は米国時間4月7日、近く導入される「App Tracking Transparency(ATT)」機能についてさらに詳しい情報を発表した。この機能によりユーザーは、自分のデータが広告ターゲティングの目的で共有されるかどうかを、アプリごとにコントロールできるようになる。

現行バージョンのiOSを使用しているユーザーであれば、ある意味、App Tracking Transparencyがどのように機能するか確認できる。というのも、iOSにはすでに「プライバシー」設定の中に「トラッキング」メニューが含まれており、一部のアプリはすでにユーザーにトラッキングの許可を求め始めているからだ。

しかし、iOS 14.5(現在は開発者向けベータ版)が初春に一般公開されると、Appleは新しいルールを実際に適用し始めるため、iPhoneユーザーはより多くのリクエストを目にするようになるだろう。これらのリクエストはアプリ使用中にさまざまな場面で表示されるが、いずれも、アプリが「他社のAppやウェブサイトを横断してあなたのアクティビティを追跡することを許可」するか問う標準的なメッセージが表示され、その後、開発者からカスタマイズされた説明が表示される。

アプリがこの許可を求めると「トラッキング」メニューにも表示されるようになり、ユーザーはいつでもアプリのトラッキングをオン / オフに切り替えることができる。また、スイッチの切り替えでこれらのリクエストを一度にすべてオプトアウトしたり、すべてのアプリでトラッキングを有効にすることもできる。

関連記事:アップルのApp Tracking Transparency機能はデフォルトで有効に、早春にiOSで実装

Appleの開発者向けウェブサイトにはすでに記載されているものの、メディアの報道(TechCrunchも含め)では完全には明らかにされていないことで、強調に値するポイントが1つある。このルールは、IDFA識別子に限定されるものではないという点だ。確かにAppleが直接管理しているのはIDFAだが、同社の広報担当者によると、ユーザーがトラッキングを拒否した場合、Appleは開発者に対して、広告ターゲティング目的でユーザーを追跡するための他の識別子(ハッシュ化されたメールアドレスなど)の使用を中止し、そうした情報をデータブローカーと共有しないようにすることも求めるという。

ただし、開発者が複数のアプリをまたいでユーザーを追跡することは、それらのアプリがすべて1つの会社によって運営されている場合には妨げられない。

Appleの広報担当者は、同社自身のアプリはこのルールを遵守するとも述べている。しかし、Appleは広告ターゲティングを目的にサードパーティーのアプリ間でユーザーを追跡することはないため、AppleからのATTリクエストはないという(以前の記事で触れたように、Appleが自社のファーストパーティーデータを使って広告をターゲティングできるかどうか設定する、独立した「パーソナライズされた広告」オプションはある)。

Facebook(フェイスブック)はこの変更によって、効果的な広告キャンペーンを行うためにターゲティングを利用している中小企業が打撃を受け、Appleの収益にもつながると主張し、特に声高に批判してきた

Appleはそれに対し、プライバシーに焦点を当てた講演や「A Day in the Life of Your Data」と題されたレポートの中で、ユーザーが実際にどのように追跡されターゲティングされているのかを説明し、批判に反論していた。さらに加えて同社は最近、広告オークション、広告アトリビューション、Apple独自の広告製品に関する情報を追加して同レポートを更新した。

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タグ:Apple広告IDFAiOSiOS 14プライバシートラッキング

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)

GoogleがCookieに代わる広告ターゲティング手段FLoCをChromeでテスト開始

米国時間3月30日、GoogleはChromeのPrivacy Sandboxプロジェクトの重要な部分であるFederated Learning of Cohorts(FLoC)の、開発者によるトライアルを展開していることを発表した。

FLoCは、広告のテクノロジー企業がウェブ上でユーザーを追跡するために現在利用されているCookieに代わる技術だ。個人を特定できるCookieと違い、FLoCはローカルでユーザーのブラウジング行動を分析し、同じような興味を持つ志を持つ人々のグループにまとめる(ユーザーのブラウジング履歴をGoogleと共有することはない)。このコホートは、広告主が自分の行動を実行して関連広告を表示できるだけの限定的なものだが、マーケターが個人を特定できるほど具体的ではない。

Googleはこれを「関心に基づく広告」と好んで呼んでいるが、ユーザーが同じ関心を持つユーザーの群れの中に隠れてしまうことになる。ブラウザーが表示するのはグループ(cohort)のIDだけであり、ユーザーの閲覧履歴やその他のデータはローカルに残る。

画像クレジット:Google

トライアルは米国とオーストラリア、ブラジル、カナダ、インド、インドネシア、日本、メキシコ、ニュージーランド、そしてフィリピンでスタートし、Googleの計画では今後徐々にグローバルに展開されるという。2021年3月初めに明らかになったように、GoogleはGDPRなどのプライバシー規制を気にしてヨーロッパではテストを一切行わないい。特に、FLoC IDがその規制の下で個人データと見なされるかが不透明だ。

ユーザーは自分をデータの起点とするトライアルをオプトアウトできるし、Privacy Sandboxの各種トライアルをすべて拒否することもできる。

当然ながらFLoCは既存のオンライン広告システムの多くを否定するから、それが嫌な人たちもいる。広告主は当然、個人ユーザーをターゲットにできることを好むが、Googleの事前データによると「このようなグループ方式でも結果は前とほぼ同様であり、投じた広告費1ドル(約110円)当りに得られるコンバージョンレートは、Cookieを使う広告の場合のレートの95%以上」だという。

Googleによると、同社自身の広告プロダクトも、広告のエコシステムの中の競合他社とまったく同様に、CookieではなくFLoC IDにアクセスするという。

しかしこのプロジェクトを懐疑の目で見ているのは広告業界だけではない。プライバシー活動家たちも、このアイデアを完全には納得していない。たとえばEFF(電子フロンティア財団)は、FLoCによってマーケティング企業が、さまざまなFLoC IDを利用してユーザーの指紋を追跡するのが容易になると主張する。それはGoogleがPrivacy Budget という案で対応しようとしている問題だが、その効果はまだ未知数だ。

一方、ユーザーは広告業界が何と言おうと、広告を見ずに、そしてプライバシーを心配せずに単純にウェブを閲覧したいだろう。しかしオンラインのパブリッシャーたちは依然として、資金を広告収入に依存している。

このように、さまざまな関心がそれぞれ違う方向を向いているが、常に明白なのはGoogleが主導する企画をすべての人が喜ぶことはないということだ。その過程で摩擦が常に生まれる。そして、その他のブラウザーのベンダーが直ちに広告とサードパーティCookieをブロックすることはできるが、広告のエコシステムにおけるGoogleの役割は、それをさらにややこしくしている。単純ではない。

GoogleでPrivacy Sandboxを担当しているプロダクトマネージャーであるMarshall Vale(マーシャル・ベール)氏は、本日の発表声明でこう言っている。「他のブラウザーがサードパーティーCookieをデフォルトでブロックし始めたとき、私たちはその方向性に感激しましたが、その直接のインパクトが心配でした。プライバシーが守られるウェブを私たちは絶対的に必要としているから、感激するのは当然であり、しかもサードパーティーCookieが長期的な答えではないことを私たちは知っています。一方、心配なのは、今日では多くのパブリッシャーがCookieを使う広告に依存して自分たちのコンテンツ努力を支えていることです。そしてCookieのブロックがすでに、フィンガープリンティングのようなプライバシーを侵す抜け道を生み出していることです。つまりユーザーのプライバシーにとって、状況はますます悪くなっています。つまりサードパーティーCookieの完全なブロックを、エコシステムのための有効な代替を欠いた状態でやるのは無責任であり、私たちみんなが享受しているフリーでオープンなウェブにとって有害ですらあります」。

なお、FLoCや、Googleが主導するその他のプライバシーサンドボックスの企画はまだ開発途上である。同社によると、今回は最初のトライアルから学ぶことが主眼であり、学んだことに基づいてプロジェクトを進化させていきたいという。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

プライバシー重視のブラウザ開発Braveが独自の検索エンジンを発表、欧州版Firefoxの元開発者と技術の協力で

Mozillaの元CEOであるBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏によって共同設立されたプライバシー重視のブラウザ開発企業Braveは、デスクトップとモバイル向けに独自ブランドの検索エンジンをローンチする準備を進めている。

Braveは米国時間3月3日、Cliqzアンチトラッキング検索ブラウザコンボ(現在は廃止されている)の開発チームが開発したオープンソース検索エンジンの買収を発表した。このテクノロジーは来るべきBrave Searchエンジンを支えることになるだろう。同社は「Big Tech(ビッグテック)」によるものではない検索とブラウジング体験を何百万ものユーザーに提供していく予定だ。

「今日の検索エンジンのほとんどは、ビッグテック企業の検索結果に基づいて作られています。対照的に、Tailcatの検索エンジンは完全に独立したインデックスの上に構築されており、プライバシーを犠牲にすることなく、人々が期待する品質を提供することができます」とBraveは買収発表のプレスリリースに記している。

「Tailcatは、検索結果を向上させるためにIPアドレスを収集したり、個人を特定できる情報を使用することはありません」。

Cliqzはプライバシーに重点を置いたMozillaのFirefoxブラウザのヨーロッパ版であり、同社の主要株主であるHubert Burda MediaはGoogleに代わるブラウザを開発しようと複数年にわたる取り組みを続けていたが、パンデミックで厳しい取引環境が続いたことを受け、早期撤退を余儀なくされ、2020年5月に閉鎖された。

以前のCliqz開発チームはその後Tailcatで働いていたが、買収の一環としてBraveに移った。エンジニアリングチームを率いるのはJosep M Pujol(ジョセップ・M・プジョル)博士で、同氏はBraveのPRで「ビッグテックに代わる唯一の本格的なプライベート検索 / ブラウザを開発していることに大きな興奮を感じています」 と語っている。

「Tailcatは完全に独立した検索エンジンで、独自の検索インデックスをゼロから構築します」とアイク氏はTechCrunchに語った。「Tailcat as Brave Searchは、Braveがブラウザで提供しているものと同じプライバシー保証を備えています」。

「Braveは、ビッグテックのプラットフォームに代わる初めてのプライベートブラウザ+検索機能を提供することになります。ユーザーはプライバシーを保証された閲覧と検索をシームレスに行うことができます。またBrave Searchは、その透明性により、アルゴリズムのバイアスに対処するとともに直接的な検閲を防ぎます」。

アイク氏によると、Braveが検索事業に参入したことにはプライバシーが主流になりつつあるという同社の自信を投影しているという。同氏は、過去1年間で同社のブラウザの利用が「前例のないほど」増加しており、月間アクティブユーザーは1100万人から2600万人以上に増加していることを指摘し、それは非営利のe2e暗号化メッセージングアプリSignal(Facebook傘下のWhatsAppがプライバシーポリシーの変更を発表した後、WhatsAppのビジネスアカウントを通じてFacebookとデータを共有できるようになった)の利用が2021年初めに急増したこのと似通った現象だと語った。

同氏は声明で「2021年にはビッグテックの侵入的慣行から逃れるための真のプライバシーソリューションを必要とするユーザーが増え、Braveに対する需要はさらに高まると見込んでいます」と付け加えた。「Braveのミッションはユーザーを第一にすることであり、プライバシー保護検索を当社のプラットフォームに統合することは、監視経済を促進する目的でユーザーのプライバシーが奪われることがないようにする上で必要なステップです」。

関連記事:ウェブブラウザーBraveがピア・トゥ・ピアプロトコルIPFSのネイティブサポートを追加

Brave Searchは、ユーザーがブラウザのデフォルト設定として選択できるかたちで、既存のサードパーティー(Google、Bing、Qwant、Ecosiaなど)と並んで提供される。

アイク氏はまた、将来的にはこれがデフォルトになる(ユーザーが自ら選ぶことのない)可能性もあると述べている。

「当社は引き続き、複数の代替エンジンで『オープン検索』をサポートしていきます」と同氏は述べた。「ユーザーの自由な選択は、Braveの絶対的原則ですから、Braveはユーザーのデフォルトの検索エンジンに複数の選択肢を提供し続けます。しかし当社のユーザーはBrave Searchの比類ないプライバシーを選択すると考えています。準備が整い次第、Brave SearchをBraveのデフォルトエンジンにしたいと考えています」。

Tailcatによる検索結果の品質とGoogleとの比較について尋ねたところ、アイク氏は「かなり良好です」と述べ「普及することでさらに向上していくでしょう」と付け加えた。

「Googleの『ロングテール』はどんなエンジンにとっても打ち負かすのは容易ではありませんが、一度Braveブラウザーに統合されれば、その面でも競合する計画が私たちにはあります」と彼はメールインタビューの中で語り、Googleの巨大な規模は検索のライバルにある程度の競合の機会を提供していると論じた。「Googleが後れをとっている面もあります。検索が彼らの収益の主な源であるとき、彼らが検索の革新を進めることは難しいでしょう。

「彼らは新しい技術や透明性を試す対してリスクを回避しがちですし、株主から希少な検索エンジンの検索結果ページ(SERP)領域に彼らの事業を結びつけるよう求められたり、検索エンジン最適化(SEO)を迫られたりしています」。

「検閲、コミュニティからのフィードバック、アルゴリズムの透明性などの問題については、初期段階から改善が可能であると私たちは考えています。他の検索エンジンとは異なり、大きな改善を行う唯一の方法は新たなものを構築することであり、構築から得られるノウハウを活用することであると確信しています」と同氏は続けた。「インデックスを生成する代わりにBingを使うオプションもありますが(他の検索サービスと同様に)、そうすると品質の面ではBing止まりとなります(そうした場合ユーザーは完全にBingに依存することになるでしょう)」。

Braveは晩春ないし夏までにBrave Searchの一般公開を目指しているとアイク氏は語った。早期イテレーションのテストに興味のあるユーザーは、ウェイトリストにここから登録することができる。(テスト版は「今後数週間」のうちに登場する予定である。)

Tailcatという名称は、Cliqzが閉鎖される前にブラウザに実装されていない内部プロジェクトであったため、一般にはあまり知られていないようだ。

アイク氏によると「本格的な検索エンジンの開発に向けて」Burdaで開発が続けられていたという。(2020年4月に同社がCliqzの閉鎖を発表した際、同社はCliqzのブラウザーと検索技術を閉鎖すると述べたが、同時にAIや検索のような分野の技術的な問題に取り組むために専門家チームを招集するとも表明していた)。

「CliqzはSERPベースの検索エンジンを提供していましたが、ブラウザにはまだTailcatを実装していませんでした」とアイク氏はいう。「2020年4月にCliqzが閉鎖された後も、Burdaの開発チームは、本格的な検索エンジンを開発するために、新しいプロジェクト名をTailcatとして検索技術の開発を続けていました。チームはそのミッションを継続するための長期的な拠点を求めていましたので、Braveの一員になることに大きな喜びを感じています」。

買収の金額的条件は明らかにされていないが、我々はBurdaが買収契約の一環としてBraveの株主になっていることを確認した。

「当社の技術がBraveで使用され、その結果、ブラウジングと検索の中核的なウェブ機能において、Googleに代わる真の、プライバシーに配慮した代替手段が生み出されたことを大変喜ばしく思っています」とHubert Burda MediaのCEOであるPaul-Bernhard Kallen(ポール=ベルンハルト・カレン)氏は支持声明で述べている。「Braveの株主として、私たちは今後もこのエキサイティングなプロジェクトに関わっていきます」

Braveが代替ブラウザの開発に注力し始めたのは、主に広告資金によるインターネットビジネスモデルを再考し、暗号化通貨による報酬システムを利用してコンテンツクリエーターへの支払いを行う(およびユーザーの閲覧に対しても支払いを行う)ことを意識してのことであったが、今ではプライバシー重視の「スーパーアプリ」と自らを評している。

現在、Brave Browserはプライバシー保護広告プラットフォーム(Brave Ads)とニュースリーダー(Brave Today)をバンドルしている。今後リリース予定の検索エンジン(Brave Search)、プライバシー保護ビデオ会議サービス(Brave Together)に加えて、Firewall+VPNサービスも準備中だ。

「スーパーアプリ」による統一的なブランド提案は、主流のツールとは対照的に、ユーザーにオンライン体験の真のコントロールを提供するという誓約であるといえるだろう。

関連記事:ブレンダン・アイク氏の画期的なブラウザーBraveの1.0版が登場

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Braveウェブブラウザー検索エンジンプライバシー

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

プライバシーとデータのコンプライアンスを自動化するKetchが約25億円を調達

Ketchは、オンラインのプライバシー規則とデータのコンプライアンスが複雑さを増す世界に対処しようとする企業を支援するスタートアップだ。同社はシリーズAで2300万ドル(約25億円)を調達したと発表した。

また、同社はステルスから正式に姿を現した。筆者は2020年に同社のPrivacyGraderツールについて記事を書いたが、ここにきて同社はさらに大きなビジョンや有料の製品を公表した。

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Ketchを創業したのはCEOのTom Chavez(トム・チャベス)氏とCTOのVivek Vaidya(ヴィヴェーク・ヴァイディヤ)氏だ。2人は以前にデータ管理プラットフォームのKruxを創業し、2016年にSalesforceに買収された。ヴァイディヤ氏は筆者に対し、Ketchは自らに対する問いかけの答えだと語った。「どのようなインフラストラクチャを作れば、以前の自分たちはより良くなるだろうか?」。

チャベス氏は、Ketchは訪問者や顧客がどこにいても企業が常にデータ規則を遵守するためのプロセスを自動化できるように設計されていると語る。同氏は、ヨーロッパのGDPRのような地域ごとの規則があると最も厳しいルールにグローバルで従おうと考えてしまいがちだが、それは必要ではなく望ましくもないという。

「データを使って成長し、規則に従うことは可能です。我々のある顧客は、規則を守るためにデジタルマーケティングを完全に止めてしまいました。このような事態は防がなくてはなりません。【略】この顧客は責任感がたいへん強いのですが、複雑さに対処するツールを知らなかったのです」とチャベス氏は語る。

画像クレジット:Ketch

創業者の2人は、物事は考えているよりもさらに複雑だとも指摘する。真のコンプライアンスは「ハリウッドの正面入口」のようなプライバシーのバナーだけにはとどまらず、複数のプラットフォームにわたって顧客のリクエストを本当に実行することが求められるからだ。ヴァイディヤ氏は例として、誰かがメーリングリストを解除する際には「メールが今後確実に送られないように、そしてタイムリーに顧客の選択に応えるために必要な、複雑なワークフロー」が存在すると説明する。

チャベス氏は「顧客から『私のデータを削除して欲しい』と言われたのにマーケティングのメールやターゲティング広告がまだ顧客に届くとしたら、『弊社の社内では対応しました、それはマーケティングやメールのパートナー企業の問題です』と説明しても顧客は満足しないでしょう」と補足した。

同氏は、Ketchは既存のマーケティングや顧客データツールに代わるものではなく「企業が事業を運営している管轄区域に応じて規則に遵守するための設定をするもの」と説明する。資金調達の発表の中で、Patreonの法律顧問代理であるPriya Sanger(プリヤ・サンガー)氏はKetchについて「最短のエンジニアリング時間で我々のシステムに統合」し「同意管理とオーケストレーションシステムを簡単に設定し国際的に展開できた」と述べている。

シリーズAではCRV、super{set}(チャベス氏とヴァイディヤ氏が設立したスタートアップスタジオ)、Ridge Ventures、Acrew Capital、Silicon Valley Bankが支援した。CRVのIzhar Armony(イザール・アーモニー)氏とAcrewのTheresia Gouw(テレジア・ゴウ)氏がKetchの経営陣に加わる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Ketch、資金調達プライバシーPrivacyGraderコンプライアンス

画像クレジット:Ketch

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

インドの独占禁止監視機関がWhatsAppのプライバシーポリシー変更に対する調査を命じる

WhatsApp(ワッツアップ)が計画しているポリシー変更は、このインスタントメッセージングサービスが最大のユーザー数を抱えるインドで順調に進んでいない。同国の独占禁止監視機関であるインド競争委員会は現地時間3月24日、Facebook(フェイスブック)傘下のWhatsAppが、ポリシーの更新を装い現地の独占禁止法にあたる競争法に違反しているとして、同社のプライバシーポリシー変更に関する調査を命じた(PDF)。

インドの監視当局は、WhatsAppの新ポリシーを調査し「ユーザーの不本意な同意によるデータ共有の全容、範囲、影響を確認」するよう、同国の事務局長(DG)に命じた。事務局長は、60日以内に調査を完了し、報告書を提出するよう命じられている。

インドの監視当局はこの命令の中で、WhatsAppのプライバシーポリシーと利用規約の「嫌なら使うな」的な本質について「WhatsAppが享受している市場での地位と市場支配力を考慮すると、詳細な調査が必要である」と述べている。

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これに対しWhatsAppの広報担当者は声明で「インド競争委員会との交渉を楽しみにしています。WhatsAppは、エンド・ツー・エンドの暗号化によって人々の個人的なコミュニケーションを保護し、これらの新しい任意のビジネス機能がどのように機能するかについて、透明性を提供することに引き続き取り組んでいます」と語っている。

「WhatsAppは顕著なネットワーク効果を享受しており、インドのインスタントメッセージング市場に信頼がおける競合他社が存在しないことから、個人情報保護の観点における水準を妥協できる地位にあり、ユーザーベースの減少を恐れることなく、『オプトアウト』などのユーザーフレンドリーな選択肢を保持する必要がないと判断できる立場にあると思われる。さらに、WhatsAppを継続したくないユーザーは過去のデータを失う可能性がある。なぜなら、WhatsAppから他の競合アプリにデータを移植することは、面倒で時間のかかるプロセスであるだけでなく、すでに説明したようなネットワーク効果により、ユーザーがアプリを切り替えることは困難だからだ。以上のことは、ポリシー変更によって代替アプリへの移行を希望するユーザーの乗り換えにともなう代償を増大させ、強調するものである」と、インド競争委員会の命令文には書かれている。

「プライバシーポリシーの2021年の更新により、事業者はFacebookのような第三者のサービスプロバイダーに、通信内容を送信、保存、読み取り、管理、その他の処理を行うことができるアクセス権を与えることになる。Facebookが企業にサービスを提供する際には、収集したデータの使用を条件とする可能性もある。DGは調査の際にこれらの点についても調査することになるだろう」。

今回の動きは、WhatsAppが2021年5月に施行を予定している新たなポリシーのアップデートをめぐり、インドで繰り広げてきた数カ月に及ぶ法定闘争に続くものだ。インド政府は先週、WhatsAppが計画しているプライバシーアップデートがいくつかの点で現地の法律に違反していると主張した。また、連邦政府はデリー高等裁判所に提出した書類の中で、WhatsAppがインドでアップデートを実施することを阻止するように裁判所に求めてもいる。

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2021年初め、インドのIT省はWhatsAppの責任者であるWill Cathcart(ウィル・カスカート)氏に書面を送り、アップデートとその影響について「重大な懸念」を表明し「提案された変更を撤回するよう求め」ていた。

WhatsAppは2021年初めから、その懸念を払拭するためにインド政府に協力してきた。しかし、インドはFacebookの説明に納得していないようだ。インドの監視当局は、強い言葉で書かれた命令の中で「Facebookは新しいアップデートの直接的かつ隣接的な受益者であり、このような状況下でFacebookがアップデートの潜在的な影響についてまったく知らないふりをして、それについての見解の提供を避けているのは言語道断である」と述べている。

20億人以上のユーザーに利用されているWhatsAppは、2016年から親会社のFacebookと一部の情報を共有している。それ以来、利用規約を大幅に更新していなかった同社は、2020年、電話番号や位置情報など、ユーザーの個人データをFacebookと共有するために、いくつかの変更を行うと発表した。

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2021年1月にWhatsAppは、アプリ内のアラートを通じて新規約への同意をユーザーに求めたが、これに対して一部のユーザーは即座に反発。数千万人のユーザーがSignal(シグナル)やTelegram(テレグラム)などの競合サービスを求めるようになったため、WhatsAppはユーザーに新しい規約を確認するための期間をさらに3カ月間設けると発表した。

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月間アクティブユーザー数が4億5千万人を超えるインドは、WhatsAppにとって、そしてその親会社であるFacebookにとっても、最大の市場だ。この巨大ソーシャル企業は近年、インドを重要な市場にすることに賭けており、そのための投資を倍増させている。2020年はインド最大の通信事業者であるJio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)に57億ドル(約6211億円)を投資した。この会社は、インドで最も裕福な人物であるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバーニ)氏が経営している。

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タグ:インドプライバシーWhatsApp独占禁止法

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドイツ裁判所がフェイスブックに対する「スーパープロファイリング」訴訟を欧州司法裁判所に付託

ドイツ裁判所は、了解なくユーザーデータを組み合わせることを禁止する現地競争当局の先駆的プライバシー保護命令に対するFacebookの上訴を検討していたが、同裁判所はヨーロッパの最高裁判所に付託することを決定した。

現地時間3月24日のプレスリリースでデュッセルドルフ裁判所は次のように書いた。「Facebookの上訴は、欧州司法裁判所(ECJ)に付託した後にのみ裁決できるという結論に達した」。

「Facebookがドイツ市場におけるソーシャルネットワーク提供者としての独占的立場を乱用し、EU一般データ保護規則(GDPR)に反してユーザーのデータを収集、利用していたかどうかは、ECJに付託することなく結論を下すことはできません。なぜなら、欧州法の解釈についてはECJが責任を負っているからです」。

ドイツ・連邦カルテル庁(Bundeskartellamt)の「搾取的不正使用」の告訴は、Facebookが自社製品のユーザーに関わるデータを、ウェブ全般、サードパーティーサイト(同社がプラグインや追跡ピクセルを提供している)、および一連の自社製品(Facebook、Instagram、WhatsApp、Oculus)を通じて収集する能力を、同社の市場支配力と結びつけている。すなわち、このデータ収集はユーザーに選択権が与えられていないため、EUプライバシー法の下で違法であると主張している。

したがって関連する争点は、不適切な契約条項によってFacebookが個々のユーザー毎に専用データベースを作ることが可能になり、ユーザーの個人データをそこまで広く深く集められないライバル他社に対し、不公正な市場支配力を得ているかどうかにある。

カルテル庁のFacebookに対する訴えは、(通常は)別々であり(かつ矛盾すらある)競争法とプライバシー法の論理を組み合わせている点で、極めて革新的だとみられている。実際にこの命令が執行されれば、Facebookのビジネス帝国の構造分離を,さまざまなビジネスユニットの分割命令を下すことなく実現できるという興味深い可能性をもっている。

ただし、現時点(カルテル庁がFacebookのデータ慣行の捜査を開始した2016年3月から早5年)での執行には、まだ大きな疑問符がつく。

ユーザーデータ照合を禁止する2019年2月のカルテル庁による命令からほどなくして、Facebookは2019年8月の控訴によって命令を停止させることに成功した。

しかし2020年の夏、ドイツ連邦裁判所はこの「スーパープロファイリング」禁止命令の停止を解除し、テック巨人による無断データ収集に対するカルテル庁の挑戦を復活させた。

この最近の展開が意味しているのは、これまでEUのプライバシー規制当局が失敗してきたことが競争法の革新によって遂行されるのかどうかは、当分待たなくてはわからない、ということだ。Facebookに対する一般データ保護規則を巡る複数の訴訟が、アイルランドデータ保護委員会のデスクの上に未決のまま置かれている。

どちらの道筋をとるにせよ、現時点でプラットフォームの支配力を「迅速に動いて破壊する」ことが可能になるとは思えない。

陳述の中でデュッセルドルフ裁判所は、Facebookのデータ収集のレベルについて問題を提起しており、ユーザーに選択肢を与え、幅広いデータソースではなく、自分でアップロードしたデータのみをプロファイリングに使い、InstagramやOculusのデータ利用方法について問い合わせることで、Facebookは反トラストの問題を回避できることを示唆した。

しかし、同裁判所はカルテル庁のアプローチの欠陥も見つけている。Facebookの米国およびアイルランドにおける事業体が、ドイツのFacebookに対する命令が発行される前には公正な発言機会を与えられなかったことなどいくつかの手続きの不備を指摘した。

欧州司法裁判所への付託は、最終結果が得られるまで数年かかることがある。

今回のケースで欧州司法裁判所は、カルテル庁が権限を逸脱していないかの検討を依頼されている可能性が高いが、実際に付託されている内容は確認できない。プレスリリースによると、今後数週間のうちに書面で公表される見込みだ。

Facebook広報担当者は、裁判所のこの日の発表に対する声明で次のように述べた。

本日デュッセルドルフ裁判所は、カルテル庁の命令の正当性に疑問を呈し、欧州司法裁判所に付託することを決定しました。当社はカルテル庁の命令が欧州法にも違反していると確信しています」

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タグ:FacebookEUドイツプライバシー

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド政府がWhatsAppの新プライバシーポリシーを法律違反として裁判所に差し止めを申請

WhatsAppが計画するポリシーの変更に関して同社は、何カ月もかけてユーザーの心配や混乱の解消に努めてきたが、その努力があまり功を奏さなかった相手が、インド政府だ。

インド政府は現地時間3月19日、2カ月後に発効するWhatsAppのプライバシーに関する新しいポリシーが、いくつかの点でインドの法律に違反していると主張した。

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デリー高等裁判所に提出した文書で連邦政府は、FacebookのメッセージングアプリWhatsAppに、ユーザー数では世界最大の市場であるインドでポリシーのアップデートをさせないよう求めた。

「近年、ソーシャルメディアは世界中で数十億の人々に利用され、今日では数百万のインド人がWhatsAppに依存している。つまり大量の個人情報が共有されている。この情報はソーシャルメディア大手が販売や悪用をしようと思えば、間違った使われ方をする可能性があり、ユーザーが人に知られたくない情報などがサードパーティーの手に渡るおそれがある」と同国政府は提出文書で述べている。

この裁判所提出文書は、WhatsAppが政府の懸念を払拭できなかったことを示唆している。インド政府がWhatAppのポリシー変更の計画を最初に問題として提起したのは2021年1月だ。

2021年初めにインドのIT省はWhatsAppのトップであるWill Cathcart(ウィル・カスカート)氏に書簡を送って、ポリシー変更とその含意に関する「重大な懸念」を表明し、ポリシー変更案の「撤回を求めた」。

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一方、WhatsAppの広報担当者は、声明で次のように述べている。「この問題が最初に提起された2021年1月に申し上げたように、私たちが強調したいのは、このアップデートがFacebookとデータを共有する私たちの能力を拡大するものではないという点です。私たちの狙いは、ユーザーが企業とエンゲージするときの透明性と新しいオプションを提供して、彼らが顧客に奉仕し成長できるようにすることです。WhatsAppは常にエンド・ツー・エンドの暗号化で個人のメッセージを保護し、WhatsAppにもFacebookにもそれが見えないようにします。私たちは誤った情報への対処に努め、いかなるご質問にもお答えする体制を今後も維持いたします」。

WhatsAppの今後の規約と条件の変更に対し、インド政府の態度が変わらないことと訴訟が進んでいることは、人気の高いインスタントメッセージング企業にとってまた新たな頭痛だ。さらに同社は、インド政府からの今後の新しいガイドライン、特にその中のエンド・ツー・エンドの暗号化を法執行目的のために解読できる件についても悩んでいる。

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ユーザー数20億ほどのWhatsAppは2016年以降、情報の一部を親会社のFacebookと共有している。これまでサービス規約を大幅に変えたことがない同社は2020年、その一部を変更し電話番号や位置といった一部の個人データをFacebookと共有すると発表した。

2021年初めのアプリ内通知でWhatsAppはユーザーに対して、新しい規約への同意を共有するよう求めた。それに対し、一部のユーザーからの反発が起こった。反発に続いて現在では、何千万ものユーザーがSignalやTelegramなどの競合するサービスを検討している。WhatsAppはユーザーに、新しいポリシーの検討のためにさらに3カ月の猶予を与えている。人気の某モバイル情報サイトによると、Signalのモバイルアプリは月間アクティブユーザー数が1億を超えたという。

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タグ:WhatsAppインドプライバシー

画像クレジット:SAJJAD HUSSAIN/AFP/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ドイツに続き仏プライバシー監視当局も苦情・嘆願書を受けてClubhouseの調査開始

シリコンバレーのテック系知識層に人気のある招待制のソーシャルオーディオアプリClubhouse(クラブハウス)が、フランスのプライバシー監視機関によって調査されている。

CNIL(Commission Nationale de l’Informatique et des Libertés)は中央ヨーロッパ標準時3月17日、苦情を受けてClubhouseの調査を開始し、アプリを開発した米国のAlpha Exploration Co.から初期回答を得たことを発表した。

またCNILは、規制当局の介入を求める1万人以上の署名を集めた請願書がフランスで出回っていることも指摘している。

同規制当局によると、Clubhouseの所有者が欧州連合内のどこにも設立されていないことを確認したという。これは、EU市民のデータに関して苦情を受けたり、独自の懸念を抱いているDPA(データ保護当局)であればEUのどの国でも、同アプリを調査できることを意味する。

2021年2月にはハンブルグのプライバシー規制当局もClubhouseに懸念を示し、欧州のユーザーとその連絡先のプライバシーをどのように保護しているかについて、アプリに詳細な情報を求めたと述べている。

EUでは通常、テック巨人が関与する国境を越えたデータ保護のケースでは、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、GDPR)には苦情を主管データ監督機関、つまりEU内でその企業が事業を確立している国の機関に送る仕組みがあるため、このようなシナリオは避けられる。

この「ワンストップショップ(one-stop shop、OSS)」メカニズムは、アイルランドに地域本部を設置しているFacebookのようなテック巨人に対するGDPRの施行を遅らせる側面もあった。もしこのOSSが、Clubhouseのような新規参入企業(現在はOSSの対象外)に対する一方的なプライバシー保護の迅速な実施と組み合わされた場合、規制の堀の効果によって「ビッグテック」が有利になるリスクはさらに高まる。

フランスの監視当局は、Google(グーグル)やAmazon(アマゾン)のような巨大企業がOSSの影響を受けていない場合には、迅速に規則を施行する姿勢を示してきた。例えば最近では、Cookie(クッキー)の同意問題で1億6000万ドル(約174億2000万円)を超える罰金を科している。また、Googleが地域ユーザーの管轄をアイルランドに移す前の2019年には、同社に5700万ドル(約62億円)のGDPR罰金を科した。

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よってCNILがClubhouseを調査する際にも、同様にすばやく動かない理由はない(ただし17日のプレスリリースでは、欧州各国のDPAが「情報を交換し、GDPRの一貫した適用を確保するために、この問題について互いに連絡を取り合っている」と書かれている)。

Clubhouseは、ユーザーの電話帳に入っている連絡先データをアップロードし、取得した電話番号を使って利用状況のグラフを作成し、ユーザーがサービスに招待する連絡先を選択する際に非ユーザーの同アプリ上での「友達」の数を表示することができるなど、プライバシーに関わる問題を抱えていた。

また、CNILへの嘆願書は、Clubhouseが保有するユーザーの連絡先に関する「秘密のデータベース」が第三者に販売される可能性があるとしている。

嘆願書の著者はこう書いている。「政治家たちは長年、私たちのデータを吸い上げているFacebook(フェイスブック)を攻撃する勇気がありませんでした。今日、私たちの民主主義は大きな代償を払っています。Clubhouseは、私たちがFacebookのやり方から何も学んでいないこと、そして同社の疑わしい行為に気づかないことを願っています。しかし、ドイツのプライバシー保護機関は、すでに同社がEU法に違反していると非難しています。これから他の国の規制当局も追随し、Clubhouseに圧力をかける必要があります」。

「何千人ものみなさんがCNILに法律の施行を求めれば、私たちの私生活に対するこのあからさまな侵害に終止符を打つことができます。これはまた、巨大テック企業に「我々のデータは我々のものであり、他の誰のものでもない」という強いメッセージを送る機会でもあります」。

Clubhouseの開発元はプライバシーポリシーの中で「当社はお客様の個人データを販売することはありません」と書いているが、ユーザーデータを第三者と「共有」する理由として「広告およびマーケティングサービス」をはじめ、可能性のある幅広い理由を列挙している。

Clubhouseにコメントを求めたが、現時点で返答はない。

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タグ:Clubhouseフランスプライバシー

画像クレジット:Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Aya Nakazato)

フランスの競争委員会がアップルのプライバシー保護施策に対する阻止要求を却下

Apple(アップル)は、サードパーティのアプリケーションがユーザーを追跡する前にユーザーの同意を得ることを義務づけるiOSのプライバシー保護施策の導入を予定しているが、これを競争法に違反すると申し立て、阻止しようとしていたフランスの広告業界による企てを回避した。

フランスの競争委員会(FCA)は現地時間3月17日、アップルの動きを阻止するために先手を打って介入するよう求めるIAB France、MMAF、SRI、UDECAMの申し立てを拒否したと発表した。App Tracking Transparency(ATT)機能の導入が、同社による支配的地位の乱用であるとは現時点では考えていないと述べた。

しかし同委員会は「本案に基づいて」アップルの調査を継続すると述べ、同社が自社のアプリにサードパーティーの開発者よりも制限の少ないルールを適用してるのではないかという疑いについて確認するとしている。

Reuters(ロイター)によると、フランス競争委員会は同国のプライバシー監視機関であるCNILと緊密に連携し、ATTの停止要求を却下したとのこと。

CNILにコメントを求めているところだ。

アップルの広報担当者は以下のように語った。

「iOS 14で導入するApp Tracking Transparencyが、フランスのiOSユーザーの利益になると認めてくれたフランス競争委員会に感謝しています。ATTは、アプリ開発者が広告目的で他社とデータを共有したり、データブローカーとデータを共有したりする前に、ユーザーの許可を得るように義務づけることで、ユーザーに強力なプライバシー保護上の利点をもたらします。私たちは、ユーザーのデータはユーザーのものであり、そのデータがいつ、誰と共有されるかはユーザーが管理すべきであると確信しています。当社は、ユーザーのプライバシーと競争に関するこの重要な問題について、FCAとのさらなる協力を期待しています」。

アップルは2021年1月、同年の春よりiOSにATTを適用すると発表した。

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その後、フランスのスタートアップのロビー団体であるFrance Digitale(フランス・デジタル)が、同国のプライバシー監視機関に苦情を申し立て、アップルがプライバシーに関する「偽善的」行動を取っていると非難した。

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この苦情も同様に競争上の問題を提起している。アップルは、サードパーティのアプリケーションがiOSユーザーを追跡する前に同意を得ることを義務づけるのに対し、自身のアプリケーションについてはiOSのデフォルト設定で追跡を許可するようになっているというのだ。しかしアップルは、この申し立てを「まったくの誤り」とし、ATTは「アップルを含むすべての開発者に等しく適用される」と述べた。

デフォルトで「許可しない」ようになっているiOSのATT設定は、Facebook(フェイスブック)のようなアドテクノロジー企業には非常に不評で、それらの企業は開発者のアプリの収益化に悪影響を与えると主張している。また、フェイスブックは、アップルの動きが自社の収益を著しく低下させるであろうことも認めている。

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一方、アップルはこれを、アドテック業界のヒステリーと間違った主張であると非難し、インターネットユーザーに忍び寄って個人情報を搾取し、利益のために人々を操ろうとする「データ産業複合体」を糾弾し続けている。

アップルが自社アプリでiOSユーザーにパーソナライズされた広告を提供できることは事実だが「パーソナライズされた広告のための限定的なファーストパーティデータの使用」と称して、ユーザーにそのオプトアウトを許可しているため、アドテック業界のデータ産業複合体よりも「高い基準」を保っていると同社は主張し、その機能が「当社を一線を画したものにしている」と強調している。

Google(グーグル)に関しても最近同じような動きがあった。2020年末に英国では、Googleが同社のChrome(クローム)ブラウザで、ユーザーがサードパーティーから追跡される方法を変更するのを阻止しようと、競争法違反の申し立てが行われた。

Googleのいわゆる「Privacy Sandbox(プライバシー・サンドボックス)」計画は、広告主からも非常に嫌われている。広告主は、Googleがユーザーを追跡する機能を廃止しながら、自らは追跡を続けることで、支配的な立場を乱用していると非難している。

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同時に、アドテクノロジー業界では、ウェブユーザーの行動を追跡する代替手段を考案するためのさまざまな取り組みが行われている。これは、市場で圧倒的なシェアを占めているChromeで、近い将来サードパーティcookieのサポートが廃止されるという見通しによって加速している。

英国の競争・市場庁は1月、プライバシーサンドボックスに関する多くの苦情を受けて、Googleによる競争法違反の疑いについて調査していると発表した。

この調査は現在も続いている。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Appleフランス広告iOSiOS 14プライバシー

画像クレジット:Apple (livestream)

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、第三者と多くの個人データ共有

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、広告主と最も多くの個人データ共有

SOPA Images via Getty Images

アップルは2020年末から新規およびアップデートするApp Storeアプリに、収集しているプライバシー情報(プライバシーラベル)の表示を義務づけています。FacebookGoogleなどは何らかの事情から遅れていましたが、ようやくトップアプリのほとんどが表示を実装しています。

そのプライバシーラベルに基づいて、スイスのクラウドストレージ企業pCloudがユーザーから最も多くの個人データを集めて第三者と共有する「侵略的な」アプリのランキングを発表し、InstagramとFacebookの2つがトップに位置づけられました。

InstagramとFacebookアプリはサードパーティ広告主(第三者)と最も多くのデータを共有しており、購入や位置情報、連絡先の詳細やユーザーコンテンツ、検索履歴から閲覧履歴まであらゆる情報を対象にしているとのこと。その事実は別のメディアが確認しており、両アプリを運営するFacebookのプライバシーに配慮の薄い印象から言っても全く意外ではありません。

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、広告主と多くの個人データ共有

pCloud

しかしInstagramは個人データの79%を収集し、Facebookは57%と数値化されると、やはり圧倒的ではあります。それに続くのはビジネスSNSのLinkedInとUber EATSで50%と並んでいます。また本調査はGoogleがGoogle検索アプリとChromeのプライバシーラベルを公開する前に行われましたが、それでもYouTubeとYouTubeMusicも43%を叩き出してトップ10入りを果たしています。

第三者との個人データの共有とは、たとえばYouTubeが動画を検索するたびにデータがアプリ外に送信され、他のSNSで個人をターゲットにしている業者などに販売されるということです。特にpCloudは、月間アクティブユーザー数が10億人を超えるInstagramが自覚のない人々のデータを大量に共有するハブ化していることに懸念を示しています。

かたや、ほとんど個人データを集めていないアプリの顔ぶれはSignalやClubhouse、NetflixやShazam、SkypeやTelegramといったところです。インストール時に「連絡先をぜんぶ吸い上げる」仕様を廃止したばかりのClubhouseですが、ログイン後の挙動はプライバシー重視だった模様です。

(Source:pCloud、via:MacRumorsEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:広告 / アドテック(用語)Instagram / インスタグラム(企業)広告業界(用語)Google / グーグル(企業)SNS / ソーシャル・ネットワーキング・サービス(用語)Facebook / フェイスブック(企業)プライバシー(用語)

Chromeで「シークレットモードでも個人情報を収集」発覚、Googleが約5000億円の集団訴訟に直面

Chromeで「シークレットモードでも個人情報を収集」発覚、Googleが約5000億円の集団訴訟に直面

Mateusz Slodkowski/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

Chromeのシークレットモードは、閲覧履歴などを残さずWebサイトを閲覧できるとうたっています。しかし昨年(2020年)6月、Googleが本モード使用中も個人情報を集めているとの集団訴訟が米連邦地裁に提起されていました。

Googleの親会社であるAlphabetは本訴訟を取り下げるよう求めていましたが、地裁判事はこれを退け、Googleに対する集団訴訟を認定したと報じられています。

訴状によれば、ユーザーがGoogleの提供する広告をクリックするかどうかに関係なく、GoogleアナリティクスやGoogleアドマネージャー、スマートフォンアプリを含む他のアプリやWebサイトのプラグインが個人データを収集しているとのこと。原告の3人は、この行いが米国の盗聴法とカリフォルニア州のプライバシー法に違反していると主張しています。

Googleは原告らがプライバシーポリシーに同意したとして、本訴訟の却下を求めていました。裁判所に提出された書類では「“シークレット“とは『目に見えない』という意味ではなく、そのセッション中のユーザーの行動は、訪れたWebサイトや、そこで使用されているサードパーティの分析サービスや広告サービスから見える可能性があることを明示しています」と述べられています。

しかし連邦地裁のルーシー・コー判事は、Googleが「ユーザーがプライベートブラウジングモードにある間、Googleが疑惑のデータ収集を行っているとユーザーに通知していなかったと結論づけた」との判断を語っています。

原告の主張では、本訴訟は2016年6月1日以降、シークレットモードを使ってインターネットを閲覧したGoogleユーザーの「数百万人」が対象になる可能性が高いとのことです。そして1人あたり5000ドルの損害賠償が求められており、合計額は少なく見積もっても50億ドル(約5450億円)に達します。Googleがこの訴えに対して「強く異議を唱え、積極的に弁護していく」と全面対決の姿勢を示しているのも当然でしょう。

またGoogle広報は米Engadgetに「明確に記載されているとおり、新しいシークレットタブを開くたびにWebサイトがセッション中に閲覧アクティビティに関する情報を収集できる場合があります」との声明を出しており、引き続きユーザー追跡を行う模様です。

GoogleはChromeにおけるサードパーティCookieを2022年までに段階的に廃止していくと発表した一方で、それに代わりターゲティング広告の新たな基礎となるFLoC技術のテストを行う予定です。しかしGoogle本体は「ファーストパーティ」として引き続きユーザーを追跡でき、競合他社を排除して自らの優位を強める狙いとのOracleからの批判もありました。

つまりサードパーティCookie完全廃止についても「ただしGoogleによる個人情報の収集は続く」の構図は今回の件と共通しており、こちらでも集団訴訟が起こされる可能性もあるのかもしれません。

(Source:BloombergEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
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音声SNS「Clubhouse」が「連絡先をすべて吸い上げる」仕様を廃止、プライバシー侵害の指摘で

音声SNS「Clubhouse」が「連絡先を全部吸い上げる」仕様を廃止、プライバシー侵害の指摘で

aap Arriens/NurPhoto via Getty Images

すでに日本では最初のブームは過ぎた感もある、音声チャットサービスのClubhouse。専用アプリをインストールしてログインしようとすると連絡先へのアクセス許可が求められる、つまり連絡先データを全て吸い上げることがプライバシー保護的に問題視されていましたが、これを改めたと発表しました。

Clubhouse公式アカウントは、専用アプリの最新アップデートにて連絡先へのアクセス許可が必要なくなり、招待したい相手の電話番号を手動で入力できるようになったと報告しています。アプリの実験的機能を独自の方法で探し出すことで知られるJane Manchun Wong氏も、それが事実だと確認した上で、プライバシー保護が改善されて良かったと述べています。

これまでClubhouseがユーザーから提供された連絡先のデータをどう扱っているのかは不透明として、テック系ニュースメディアのOneZeroなどは注意を呼びかけていましたが、ようやく対応されたかたちです。

またClubhouse共同創業者のポール・デイビッドソン氏もThe Vergeに対して、ユーザーは前にアップロードした連絡先を削除するよう会社に連絡でき、手動で連絡先を削除できるツールもまもなく提供すると述べています。

ほか(こちらが本来Clubhouseとしては主題ですが)Clubhouseに参加するクリエイターが充実したトークを主催し、聴衆を集め、収益化を支援する「Clubhouse Creator First」プログラムも発表しています。3月31日までの期限付きで、20人のクリエイターを募集中です。

YouTubeが人気YouTuberで盛況となり莫大な収益を上げているように、才能あるクリエイターはSNSに多くのユーザーを集め、市場規模を拡大する原動力になります。日本でもClubhouseが提供が始まった当初は芸能人らが一斉に参加し、すぐに潮が引くように姿を消しているのは「いずれ収入源となると見越して、拠点を築いておくため」との憶測もありましたが、収益化が本格的になればまた戻ってくるのかもしれません。

(Source:Clubhouse(Twitter)、via:The VergeEngadget日本版より転載)

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アップルのプライバシー対策にフランスのスタートアップのロビー団体が苦情

Apple(アップル)は欧州でまたもやプライバシーに関する苦情に直面している。スタートアップのロビー団体であるFrance Digitale(フランスデジタル)は、EUの規則に違反している疑いについて、同国のデータ保護監視機関調査を依頼した。

Politico(ポリティコ)が報じたこの苦情は、EUのプライバシー保護活動団体「noyb」が2020年、ドイツとスペインで訴えた2つの苦情に続くものだ。

これらの苦情はすべて、(直接および間接的に)Appleの「IDFA」と呼ばれる広告主のためのモバイルデバイス識別子を標的にしている。noybはAppleがその独自の識別子(その目的は、名前が示すように、広告ターゲティングのためにデバイスの追跡を有効化すること)をデバイスに割り当てる前に、ユーザーから同意を得るべきだったと主張している。

一方、France Digitaleによる訴えは、近々行われるAppleのプライバシーポリシー変更が、競争を阻害するという懸念を提起するものだ。この変更が実施されれば、サードパーティーのアプリ開発者は、ユーザーに追跡の許可を得なければならなくなるが、それと対照的に、Appleがユーザーを追跡することができるiOSの「パーソナライズされた広告」設定は、初期状態で有効になっていることをFrance Digitaleは指摘している。

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初期状態では、EUの法規(GDPR、EU一般データ保護規則)で求める要件に反しているのではないかと、France Digitaleは提言しているわけだ。

France Digitaleの苦情はまた、Appleが広告ターゲティングに利用するデータアクセスのレベルについての疑問も浮かび上がらせた。Appleは、提供されているiOSユーザーのデータは「一般的なデータ(出生年、性別、場所)」だけで、完全なターゲティングデータではないと述べている。

訴状に対応する声明の中で、Appleの広報担当者は次のように述べている。

この訴状における主張は、明らかに事実に反しており、ユーザーを追跡している人たちが、自分たちの行動から目をそらし、規制当局や政策立案者を誤解させようとする粗末な企てのように思われます。

ユーザーのための透明性と規制は、当社のプライバシー哲学の基本的な柱であり、Appleを含むすべての開発者に、等しく「AppTrackingTransparency(アプリのユーザー追跡の透明性)」を適用するようにしたのはそのためです。プライバシーは我々がプラットフォーム上で販売する広告に組み込まれており、ユーザーを追跡することはありません。

パーソナライズ広告のためのデータの使用は、ファーストパーティであるAppleに限定されており、ユーザーがこれをオフにすることができるようにすることで、より高い基準を維持しています。

CNIL(フランスの「情報処理と自由に関する国家委員会」)にも、この訴えについてコメントを求めているところだ。

今回のAppleに対するIDFA関連の苦情は、プライバシー保護団体によるものではなく、スタートアップのロビー団体からのものという点で少々珍しい。

しかし、サードパーティーのトラッキングをiOSユーザーが許可する必要があるように(「許可しない」を選ぶことができるようにしたのではなく)変更したAppleの決定が、強い反発を招いていることは明らかだ(この動きは、2020年フランスでパブリッシャーのロビー団体が不公正な競争を訴える事態にもつながった)。このあまりにも微妙な意味合いを含んだ行為によって、Appleは偽善という非難を受けている。

France Digitaleに、Appleに対してプライバシーに関する苦情を訴えた理由を尋ねると、広報担当者は次のようにTechCrunchに答えた。「スタートアップはルールに基づいて事業を行っています。世界最大のハイテク企業もそうであることを我々は期待します。競争の場に公平な規制がなければ、どんなに事業を拡大しても繁栄はないと、我々は信じています」。

「我々はCNILに法の執行を求めているに過ぎません。個人情報保護の番人は、私たちスタートアップのメンバーを常に調査しています。彼らの専門知識を、もっと大きな企業にも適用させようということです」と、彼は続けた。

同グループのCNILに対する訴えが急速に注目を集めている一方で、GDPRのワンストップショップのメカニズムの下、この問題はEU内でAppleのデータ運用を監督するアイルランドのデータ保護委員会による参照が必要だ。その後、調査するかどうかについての決定が下されることになる。

だから、この問題に何らかの迅速な規制措置が取られる可能性は低い。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleフランスGDPRデータ保護プライバシー広告

画像クレジット:Apple (livestream

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルが「Cookie廃止後、それに代わる他のユーザー追跡技術を採用するつもりはない」と発言

これまでTechCrunchでは、複数のウェブサイトにわたるユーザーを追跡するCookie(クッキー)に代わるものを構築する試みについて何度か記事にしてきた。しかし、Google(グーグル)はそのような道をたどるつもりはないと述べている。

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この検索の巨大企業は、すでに同社のブラウザ「Chrome(クローム)」でサードパーティ製Cookieのサポートを段階的に廃止することを発表している。米国時間3月3日、Googleはさらにその先の方針を明らかにした。同社の製品管理ディレクターで広告のプライバシーと信頼を担当するDavid Temkin(デイビッド・テムキン)氏は「サードパーティのCookieが段階的に廃止された後、それに代わってウェブをブラウズする個人を追跡する識別子を我々が構築するつもりはありません。また、そのようなものを我々の製品で使用するつもりはありません」と、ブログ記事に書いている。

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「他のプロバイダーがウェブ上の広告トラッキングのために、例えばeメールアドレスをベースにしたユーザー識別情報のような、当社が提供しないレベルの(ユーザー識別)機能を提供する可能性があることはわかっています」と、テムキン氏は続けている。「私たちはこれらのソリューションが、ますます高まりつつある消費者のプライバシーに対する要望に合致するとは思いませんし、急速に進化しつつある規制に対応できるとも思えません。そのため、長期的に持続可能な投資ではないと考えます」。

これは、Googleが個人をターゲットにした広告を一切行わないという意味ではない。代わりに「集計、匿名化、オンデバイス処理、その他のプライバシー保護技術の進歩」のおかげで「デジタル広告の利点となるパフォーマンスを得るために、もはやウェブ上で個々の消費者を追跡する必要はない」とテムキン氏は主張する。

例としてテムキン氏は、現在Googleによってテストされている「コホートの連合学習(FLoC)」と呼ばれる新しいアプローチを提示した。これは共通の関心に基づくユーザーの大規模なグループをターゲットにした広告を可能にする。テムキン氏によれば、Googleは2021年の第2四半期に、広告主とFLoCのテストを開始する予定だという。

テムキン氏はまた、これらの変更はサードパーティのデータを対象とするもので、パブリッシャーが自サイトの訪問者を追跡してターゲティングする能力には影響しないと述べている。「私たちはパートナー企業がその顧客と直接関係を持てるように、我々の広告プラットフォームで、引き続きファーストパーティとの関係をサポートしていきます」。

しかし、そのFLoCについて、電子フロンティア財団が「プライバシー保護技術の対極」と表現し「行動的信用スコア」と比較していることは注目に値する。

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Cookieは業界全体で段階的に廃止されているが、英国の競争・市場庁は現在、独占禁止法上の懸念を理由にGoogleのクッキー廃止計画に関する調査を進めている。Googleが市場力を高めるために口実としてプライバシーを利用していると批判する声があるからだ。同様の批判は、近々施されるiOSのプライバシー変更をめぐりApple(アップル)に対しても寄せられている

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleCookieプライバシー

画像クレジット: Ana Maria Serrano / Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)