マッチング系アプリの決済に関するオランダにおけるアップルの罰金総額が約68億円に

出会い系アプリの決済方法に関してオランダで独占禁止法上の命令を受けたApple(アップル)に対する罰金の額は、継続的なコンプライアンス違反で規制当局が10回連続で毎週500万ユーロ(約6億8000万円)を科して5000万ユーロ(約68億円)となり、(現時点では)最大額に達した。

しかし、消費者市場庁(ACM)は現地時間3月28日、Appleが前日に直近の提案を修正したことを受け、修正提案は「出会い系アプリのプロバイダーにとって決定的な条件となるはずだ」と述べ、より前向きにとらえている。

完全な詳細を受け取り次第、当局は市場のフィードバックを求め、提案が受け入れられるかどうか早急に決定すると述べた。しかし、その評価にどれくらいの時間がかかるか、また修正案自体の詳細については、何ら情報を提供していない。また、修正案が受け入れられないと判断された場合、Appleはさらなる罰則を受ける可能性があるとも警告している。つまり、すでに数カ月に及ぶこの騒動は、まだ終わらないかもしれない。

Appleによるこれまでの提案は、当該開発者に不合理な摩擦をもたらすとしてACMによって拒否された。

3月28日発表された声明の中で、オランダの規制当局は次のように述べている。「ACMはAppleの今回の措置を歓迎します。修正された提案は、App Storeの利用を希望する出会い系アプリのプロバイダーにとって決定的な条件となるはずです。最終的な条件についての提案を受け取った後、ACMはそれを市場参加者に提出し、協議を行う予定です。ACMはその後、Appleがこれらの確定条件を実施する際に、出会い系アプリにおいて代替の支払い方法が可能であるべきというACMの要件を遵守しているかどうか、できるだけ早く判断を下す予定です」。

「先週末までは、AppleはまだACMの要件を満たしていませんでした。そのため、10回目の罰金を支払わなければならず、Appleは最大5000万ユーロの罰金を支払わなければならないことになります」と付け加えた。「Appleが要件を満たしていないという結論に達した場合、ACMはAppleに命令遵守を促すために、定期的な罰金支払いを条件とする別の命令(今回はより高い罰金となり得る)を科す可能性があります」。

TechCrunchはAppleに対応を問い合わせている。

ACMの命令は2021年までさかのぼるが(しかしAppleによる法廷闘争により、報道は制限された)、オランダの出会い系アプリが希望すればデジタルコンテンツのアプリ内販売を処理するのにApple以外の決済技術を使用できるようにするというACMが命じた権利の付与をめぐる世論戦は1月から続いている。

この件は、ACMがこのような命令を出す権限を与えられている欧州の小さな1つの市場内のアプリのサブセットという、ほとんど滑稽なほど小さなものに見えるかもしれない。一方で、デジタル市場法(DMA)として知られる汎EUデジタル競争法の改正が進行中で、ビジネスユーザーに対するFRAND(公平、妥当、差別のない)条件、相互運用性要件の組み込み、自己参照のような反競争的行為の禁止など、ゲートキーパーである大手の「すべきこと」と「すべきでないこと」といった領域における行動基準を前もって定義することで、近い将来、最も強力なプラットフォームがEU圏内でどのように活動できるかを再構築しようとしている。

つまり、ACMの命令は、今後予想されるEUの大きな要求の縮図を垣間見せている。

DMAはAppleのApp Storeにも適用される可能性が高い。そのため、オランダのケースはEU内で高い関心を集めているが、これは少なくとも今秋以降、欧州委員会がゲートキーピングプラットフォームの事前監視に切り替える際に、執行上の大きな課題を突きつけるものだからだ(EU機関は先週、DMAの詳細について政治的に合意したが、正式な採択はまだ先だ)。

市場改革の下では、欧州委員会が科すことのできる罰則の規模はかなり大きくなり、違反が繰り返される場合には全世界の年間売上高の20%にも達する。したがって、プラットフォーム大手にとっては無視できない体制となりそうだ。

もう1つの重要な変化は、DMAが積極的に行動し、EUの競争規制当局が変更を命じる前に数カ月あるいは数年かけて遵守していないことをを証明する必要がなく、最初から遵守を求めるようになることだ。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

出会い系アプリ決済めぐる独禁法違反でアップルがオランダで9回目の罰金、当局に新たな提案も

Apple(アップル)は、出会い系アプリに関連する独占禁止法上の命令をめぐり、オランダで再び罰金を科された。この命令は、AppleのiOS向けアプリ内決済APIしか使えないよう縛るのではなく、開発者が希望すればサードパーティーの決済技術を利用できるようにすることを求めている。

消費者市場庁(ACM)は1月以来、命令を継続的に遵守していないとしてAppleに対し一連の罰則を(週ごとに)科している。

今回で9回目となる500万ユーロ(約6億7000万円)の罰金により、この問題に関するAppleに対する罰金総額は4500万ユーロ(約60億円)に達した(来週までに再び規制当局を満足させられなかった場合の最大総額は5000万ユーロ[約67億円]だ)。

Appleはこの間の一連の罰金に対して、規制当局が明らかに異なる(反対の)見解を示しているにもかかわらず、命令を遵守していると主張している。

ACMは、Appleの対応を失望するもの、かつ不合理なものとし、Apple以外の決済技術を使用してアプリ内決済を処理する法的資格を得ようとする開発者に、単にそうすることを容易に選ばせるのではなく、不必要な障害を作り出していると非難している。

この争いは何週間も続いていて、また新たに罰金が科せられたにもかかわらず、Appleによるシフトの兆しがあるかもしれない。ACMによると、Appleは現地時間3月21日に「新しい提案」を提出した。ACMはその合否を決定するために精査しているとした。

「我々は今、これらの提案の内容を評価するところです」とACMの広報担当者は声明で述べた。「そうした状況下で、さまざまな市場参加者と話をする予定です。この評価をできるだけ早く完了させることが目標です」。

ACMは、Appleがこの修正されたコンプライアンスオファーで提案している内容の詳細を明らかにしていない(そして当局はより詳細な情報の求めには応じなかった)。

「先週末まで、AppleはまだACMの要件を満たしていなかったことに留意すべきです」と広報担当者は付け加えた。「そのため、同社は9回目の罰金を支払わなければならず、同社が支払わなければならない総額は現在4500万ユーロに達しています」。

Appleにもこの展開についてコメントを求めたが、本稿執筆時点では回答はない。

更新:Appleはコメントを却下した。

ACMの独禁法命令はオランダ国内でのみ適用され、アプリの一部(出会い系アプリ)にのみ適用されるため、テック大手の壮大でグローバルなスキームの中ではかなり些細なことに見えるかもしれない。しかし、国の規制当局とプラットフォームの巨人の間の綱引きは、欧州連合(EU)でかなりの注目を集めている。つまり、この法執行は、政策立案者が主要な競争改革の最終的な詳細を打ち出す中で注視されている。

EUは、デジタル競争政策(デジタル市場法、通称DMA)の長年の懸案であった改革を完結させようとしている最中であり、これは最も強力な中間インターネット・プラットフォームのみに適用される予定だ。

AppleはDMAの下で「ゲートキーパー」に指定されることがほぼ確実であるため、これは関連性がある。DMAでは、デジタル市場をよりオープンで競争しやすいものにすることを意図した、反トラスト法遵守の積極的な体制が導入されることになる。例えば、プラットフォームがアプリケーションを交差結合することを禁止、あるいはロックインを強制し、同時に相互運用性のサポートやサービスの切り替えを義務化する。つまり、Appleは今後、同様の(実際にははるかに広範な)汎EU反トラスト法に基づく命令に直面する可能性があり、第三者に対してどのように行動しなければならないか(してはならないか)を規定されることになる。

EUの反トラスト部門を統括し、デジタル政策立案を主導するMargrethe Vestager(マルグレーテ・ヴェスタガー)委員は2022年2月の講演でオランダの事例を取り上げ、Appleが同意できない競争法の判決に従うよりも、定期的な罰金を支払うことを「本質的に」好んでいると非難している。また、AppleのApp Storeにおけるサードパーティアクセスに関する義務について「……DMAに含まれる義務の1つになるだろう」と警告している。

この来る汎EU法は、重大な効力を持つ。世界の年間売上高の最大10%の罰金を科すことができ、またゲートキーパー解体を命令する構造的救済を適用することによって、欧州連合が組織的なルール違反に対応することができる。

したがって、DMAの対象となるハイテク企業にとっては「遵守 vs 拒否」の計算は罰則を「ビジネスを行うためのコスト」として帳消しにできる場合にのみ可能であり、再起動したEU競争体制の下では根本的なバランス再調整を模索することになる。500万ユーロ、あるいは5000万ユーロの罰金で事業運営に影響を与えることはできないが、数十億ユーロ(数千億ユーロ)にもなり得る罰金は、法的要件を回避し続けることによって、規制当局が解体用ハンマーを手にせざるを得なくなるリスクと背中合わせで、コンプライアンスとはまったく別次元の話のようだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

欧米の制裁でロシアから逃げ出すテック人材、この波は数十年続く慢性的な頭脳流出の最後かもしれない

欧米の制裁と政情不安により、ロシアでは国際的な事業を展開することが不可能になり、起業家やコンピュータープログラマー、その他教育を受けた中産階級の人々が国から脱出している。

ロシアのウクライナ侵攻により、何百万ものウクライナの人々が命の危険を感じながら故郷を追われた。しかし、この戦争は、ロシア人が母国を後にすることにもつながっている。筆者は、ロシアの起業家やベンチャーキャピタリストに話を聞き、彼らが祖国を離れた理由、あるいは離れようとしている理由を聞いた。しかし、海外で新たなスタートを切ろうとする彼らにとって、反ロシア感情や経済制裁は重荷になっている。

きっかけ

2月中旬、ロシアがウクライナ国境に軍隊を集め続ける中、Eugene Konash(ユージン・コナシュ)氏は、ロンドンにある自身のゲームスタジオDc1abのためにロシアにいるスタッフをリモートで働かせていたが、次第に心配になってきた。しかし、他の多くの人々と同様、コナシュ氏も本格的な侵攻は予想していなかった。

緊張が和らぐという期待は、すぐに消えた。ロシアがウクライナに全面戦争を仕かけていることが明らかになると、欧米諸国はロシアに制裁を加え始めた。企業もすぐにその影響を受けた。

コナシュ氏の従業員の1人は、銀行が制裁を受け、自分の口座への海外送金ができなくなった。ルーブルが暴落したロシアでは銀行の前に長蛇の列ができ、人々は慌てて貯蓄をドルに換えようとしたが、高額な手数料と政府が外貨の入手を制限していることに気づいた。

コナシュ氏にとって転換点となったのは、投資家から「このままロシアに重きを置いていては、投資できない」とはっきり言われたことだった。ロシアを拠点としていたチームも、離れる時期だと賛同した。

「1カ月前までは、どんなことがあってもロシアを離れないと言っていた連中が、荷物をまとめて、文字通りクルマで陸路国境を越えてカザフスタンに行こうと言い出したのです。というのも、ロシアを脱出する航空券は売り切れているか、非常に高価でしたので」とコナシュ氏は語った。

国際展開する多くのテック企業と同様、同氏のゲームスタートアップも、手頃な価格で質の高いプログラマーを確保できる東欧各地の開発者を雇用している。ベラルーシ出身の同氏は、旧ソ連圏の国々が科学と数学の教育に力を入れてきたことで、世界レベルのエンジニアリングと科学の人材が育ってきたことをよく理解している。

金融制裁はともかく、外国のテックサービスが禁止されるか撤退し始めると、ロシアからIT会社を運営することは現実的ではなくなってきた。

Google(グーグル)とMicrosoft(マイクロソフト)はロシア国内での販売をすべて停止し、ロシアはFacebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)をブロックしようとしたが、その結果はまちまちだった。一部のユーザーは、禁止された後もこれらの米テック企業のプラットフォームにアクセスすることができ、ロシアが中国のような強固な検閲機関を持つにはまだ少し時間がかかることを示唆している。FacebookとTwitterは、ロシアでのサービス復旧に取り組んでいると述べた。

「Unityのような開発ツールがいつブロックされるかは誰にもわかりません」と、2015年のクリミア併合とその後の西側による経済制裁を受けて国を離れたシベリア生まれのゲーム投資家は語った。「誰も外の世界にアクセスできない国で終わりたくはありません」。

この投資家は、ロシア政府による反対派への取り締まりを恐れて名前を伏せた。

ロシア国外に法人設置

7年前のクリミア侵攻の後、多くのロシア系企業は、ロシア企業を支援することにともなう政治的リスクや見栄えを懸念する投資家をなだめるために、別の場所に法人を設立し始めた。以前は、こうした企業の多くは、書類上は国外に拠点を置き、チーム全体はロシアにいることが多かった。しかし、ウクライナへの本格的な侵攻により、その流れは一変した。

「2015年以降、企業は合法的にロシアから流出するようになりました」と、最近モスクワのチームを国外に移したあるベンチャーキャピタルの投資家は指摘する。ウクライナ危機以前でも、この会社はロシアに拠点を置くスタートアップが国外で法人化され、国際的な事業展開をしている場合にのみ支援していた。

「物理的には、これらのスタートアップはまだロシアに拠点を置いています。物価が安いため、ロシアでR&Dを行うのでしょう」。この投資家は、ロシアと距離を置こうとしている会社にとってこの話題は「非常にセンシティブ」であるため、匿名を要望した。

4年前にAkimov(アキモフ)から姓を変えたNikita Blanc(ニキータ・ブラン)氏は、海外で設立され、モスクワで活動するスタートアップとしての生活は、つい最近までかなり楽なものに思えたと語った。ブラン氏の会社Heyeveryone(ヘイエブリワン)は、IR管理を自動化するツールを構築しているが、デラウェア州で法人化の手続き中だ。

ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアを離れる前にモスクワで働くニキータ・ブラン氏のチーム

Heyeveryoneは初めからロシア市場だけにサービスを提供するつもりはなかった。しかしブラン氏と同氏の妻は、いくつかのメリットのためにモスクワを拠点とした。それは、双方の両親が3歳の娘の世話を手伝ってくれること、当時はインターネットが高速で安価、かつ無料だったこと、モスクワには技術者の集まりが多く、同じ志を持つ創業者を見つけられたことなどだ。

脱出

ブラン夫妻のいいとこ取りの起業家生活は、ロシアのウクライナ攻撃で突然終わった。侵攻から3日後、ニキータ氏の妻ヴァレンティナ氏はベッドに横たわり、祖国ウクライナが崩壊するのを目の当たりにして打ちのめされていた。そして、ヴァレンティナ氏はロシアを去ることを決めた。

「仕事も手につきませんでした。私の家族の一部はウクライナ出身なんです」とヴァレンティナ氏は語った。「子どもを連れて去るのは困難なものになるでしょうが、この状況が変わるとは思っていませんでした。それで、それぞれ23キロの荷物をまとめて、片道切符を買いました」。

夫妻は幼い娘を連れて、現在ロシアの人材流出先として上位に位置するグルジアに移住した。トルコ、アルメニア、カザフスタン、タイなどと並んで、ロシア人にとって比較的物価が安価で入国しやすい国として人気がある。

最近モスクワを離れたベンチャーファンドは、ここ数週間で自社のスタッフや投資先企業を中心に数百人のロシア人を国外に引き揚げている。インターネット上では、数万人のロシア人が脱出計画を議論し、互いに助け合うTelegram(テレグラム)グループが急増している。

「ロシア人は最悪な状況に」

ロシアへの制裁が日々強化される中、移住希望者たちは急いで脱出計画を立てなければならない。どの国がまだロシアからのフライトを受け入れているのか、どうやってお金を移動させるのか。

制裁は、海外に逃れたロシア人、あるいはずっと前に逃れたロシア人にも影響を与え続けている。PayPal(ペイパル)、Mastercard(マスターカード)、Visa(ビザ)といった著名な金融インフラプロバイダーはすでにロシアでの業務を停止しており、これはロシアの銀行を利用している駐在員は海外でカードを利用することができないことを意味するに。エストニアは最近「制裁逃れや違法行為の可能性を防ぐため」ロシアやベラルーシの国民からのeレジデンシー(電子住民)申請を停止した。欧州連合(EU)の規制当局は一部の銀行に対し、EU居住者を含むすべてのロシア人顧客による取引を精査するよう指示したと報じられている

この広範な制裁の波は、一部の人にロシアのパスポートを手放すことを促している。シベリア生まれのゲーム投資家は、ロシア国籍によって米ドルベースの金融システムから切り離されることを恐れ、シンガポールの市民権を手に入れようとしている。

「ウクライナ人は世界中で難民として受け入れられているが、我々ロシア人は最悪な状況だ」とこの投資家は嘆いた。

また、5年前に資産の大部分を暗号資産に投資したブラン夫妻のように、暗号資産が制裁回避に役立つと賭けている人もいる。ゲーム起業家のコナシュ氏は、スタッフが今後ロシアで身動きが取れなくなった場合、Bitcoin(ビットコイン)とEthereum(イーサリアム)がクロスボーダー決済の最後の手段になると予想した。

Binance(バイナンス)やCoinbase(コインベース)などの大手取引所は、すべてのロシア人に全面禁止を科すには至らなかったものの、制裁を守ってターゲットとなる個人をブロックしてきた。BinanceのCEOは、取引は公開された台帳に記録されるため、政府が追跡しやすく、暗号資産は逃げ道にはなり得ないと主張した

しかし、EU規制当局は、ロシアとベラルーシに科された制裁がすべての暗号資産に及ぶと主張し続けており、米国の議員たちはロシアが制裁を逃れるために暗号資産を使用できないようにすることを財務省に促している

「冷静さは新しい通貨」

ロシアを離れる人は、家族や友人と離れるという困難もあるが、それ以上に最近の出来事に対する認識の違いによる苦悩がある。

「両親や年配の親族は、『ここは大丈夫だから戻れ』と言い続けています。ロシアはすばらしい国だと」とブラン氏は信じられないような、しかし悲しい口調で話した。

教育を受け、自由を求めるロシアの技術者たちは、おそらく後ろを振り返ることはない。筆者が話をした、国を出るか他の人の脱出を手伝っているロシア人は、自国の苦境を語るとき驚くほど冷静だった。それは部分的には、避けられない別れに対して精神的に準備してきたからだ。

「投資家であるSOSVは、私たちに起業家としてゴキブリのように新しい環境に柔軟に適応することを教えてくれました。この哲学が、今、不確実な時代を乗り越える支えになっています」とヴァレンティーナ・ブラン氏は話した。「冷静さは新しい通貨です」。

ブラン夫妻のような移住者は、数十年前から続くロシアの慢性的な頭脳流出の最後の波となるかもしれない。

「私が気になるのは、ソ連やロシアで生まれたすばらしいエンジニアリングや科学の人材に目を向けると、大半が機会あるごとにソ連の世界を離れていっていることです」とコナシュ氏は話した。

「ソ連崩壊後の世界には、誰が残るのでしょうか? 私にとっては、この頭脳流出の最後の波は、ソ連から生まれた数少ないポジティブなものである教育や文化科学の伝統に死を告げるものです」。

画像クレジット:People line up to withdraw U.S. dollars at a Tinkoff ATM in a supermarket on Tverskaya street in Moscow. Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシアでテック企業が販売を停止するなか、スマホやクラウドサービスなどのビジネスへの影響は?

ロシアがウクライナを攻撃して以来、ここ数週間で、さまざまな業界の企業とともに、多くのテック企業がロシアでの営業を停止していることを耳にした。これは幅広い反響を呼んでおり、企業がロシアで通常どおりビジネスを続けることはできないというメッセージであることは明らかだが、これらの行動は、営業を停止した企業に実際にどのような経済的影響を与えるのだろうか?

IDCが今週初めに発表したレポートで指摘したように、ウクライナが攻撃を受けており、ロシアに制裁が適用されているため、その地域で事業を行うテクノロジー企業に何らかの影響を与えることは必至だ。

「紛争によってウクライナの事業活動は停止しており、ロシア経済は欧米の制裁の初期の影響を受けている。2022年には現地市場の需要は2桁の縮小し、両国の技術支出に強く影響するだろう」と、同社は書いている。

しかし、純粋な数字で見ると、ロシアとウクライナを合わせても、大国ではあるものの、世界の技術支出全体に占める割合はそれほど大きくはない。実際、IDCの報告によると、この2カ国を合わせても、ヨーロッパの技術支出の5.5%、世界の技術支出のわずか1%を占めるに過ぎない。

Canalys(カナリス)は、ロシアでの販売を停止していないテック企業は、停止するようにプレッシャーを受けていると述べている。「Accenture(アクセンチュア)、Apple(アップル)、Cisco(シスコ)、Dell(デル)、HP、HPE、Oracle(オラクル)、SAP、TSMC(半導体)などが、ロシアとの関係を断つ(あらゆるセクターの)国際企業のリストに名を連ねている。そうしない企業は、世界の情勢にますますそぐわなくなる」と、同社は今月初めに発表した報告書の中で述べている。

Canalysによると、ロシアはヨーロッパのスマートフォン市場の20%、PC市場の8%を占めている。AppleはロシアのPC市場の17%を占め、Lenovo(レノボ)とリードを分け合っている。HPは15%でわずかに及ばない。

画像クレジット:Canalys

Canalysによると、この数字はこれらの企業の売上高全体の約2%に相当する。市場をリードする3社ともロシアでの販売を停止している。中国企業であるレノボが、その決定を覆すよう中国政府から圧力を受けているとの報道は注目に値する。

スマートフォンについては、中国のスマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ)が31%で市場をリードし、Samsung(サムスン)が27%で続き、Appleは11%で3位に大きく後退している。

画像クレジット:Canalys

これは、Apple全体の売上高の2%、Samsungの4%を占めている。Apple、Samsungともにロシアでの販売を停止している。

Canalysは、ロシアがこの問題を解決するために、中国の技術に目を向ける可能性があると推測している。「西側諸国が技術輸入に制裁を加えているため、ロシアは(制裁に反対すると表明している)中国にもっと目を向けると予想される。特にロシア政府は、西側ブランドを置き換え、主要技術へのアクセスを維持しようと急いでいる。欧米の貿易禁止措置の犠牲となったHuawei(ファーウェイ)などの中国ベンダーが勝者となる可能性が高い」と、同社は書いている。

しかし、Lenovoの状況が示すように、欧米の顧客と大きな取引をしている中国企業にとっては、より複雑な状況になっている。

Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)の3大クラウドベンダーはどうだろう。クラウド市場を調査するSynergy Research(シナジーリサーチ)の主席アナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏は、ロシアがこれらの企業のビジネス全体の1%に満たないことを指摘している。

「AWS、Microsoft Azure、Google Cloudの観点からすれば、ロシアの顧客を切り離してもほとんど影響はないでしょう」と、彼はいう。

しかし、それらの顧客にとっては、やはり痛みをともなう可能性がある。「もちろん、切り離されるかもしれない顧客にとっては、その影響は非常に意味のあるものになるかもしれません。ロシアは特に発展した市場ではありませんが、クラウドベースの業務に大きく移行した企業にとって、その後に軌道修正するのは大変なことです」と、同氏は述べた。

CanalysのアナリストBlake Murray(ブレイク・マレー)氏もこれに同意していますが、スマートフォンやPCと同様に、制裁によって窮地に立たされた顧客が中国のクラウド大手に目を向ける可能性もあると述べている。「全体として、ロシアの企業はYandex(ヤンデックス)のようなロシアのCSPや、国内にデータセンターを持つ中国のプロバイダーに軸足を移すと予想されます。また、Officeのようなソフトウェアをロシアで登録された同等品に置き換えることも検討されるでしょう」と述べている。

それは簡単なことではない。しかし、マレー氏によると、ロシア国内の多くの組織が、少なくともこの方向で移行作業を始めているとのことだ。

SaaS企業への影響も気になる。ディンズデール氏は、SaaS市場はより細分化される傾向にあり、国内にもより多くの選択肢があると述べている。とはいえ「ロシアは、世界のSaaS売上高の1%未満しか占めていない小さな市場です。MicrosoftとSalesforce(セールスフォース)の両社にとって、ロシアはSaaSビジネスの1%未満に過ぎません」。

最後に、インターネットバックボーンプロバイダーがロシアから撤退すると報じられており、Cogent(コジェント)とLumen(ルーメン)が今週、事業を停止することを発表した。

「我々が提供するビジネスサービスは、我々の物理的存在と同様に極めて小規模で、非常に限定的なものです」と、Lumenは声明で述べた。「しかし、我々はこの地域でのビジネスを直ちに停止する措置をとっています」。

Cogentは公式声明を出していないが、ロシアでの事業を停止していることは広く報道されている。どのような影響があるかは不明だが、Cogentのネットワークマップを見る限り、ロシアにデータセンターはないようだ。

それでも、インターネットアクセスが遮断されることは、国外のニュースを得ようとする人々や、ビジネスを行おうとする企業にとって、深刻な影響を及ぼす可能性がある。ディンズデール氏が指摘するように、インターネットに接続できなければ、どんなクラウドサービスにもアクセスできないので、深刻な影響を及ぼす可能性がある。

画像クレジット:kynny / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Yuta Kaminishi)

英国で制裁を受けたチェルシーFCのロシア人オーナー、Truphoneの株式に影響を与える「関連利益」なし

サッカー・プレミアリーグで大成功を収めているチェルシーのオーナーでロシアのオリガルヒ(新興財閥)のRoman Abramovich(ローマン・アブラモビッチ)氏は今週、ロシアのウクライナへの正当な理由なき侵攻を理由に、英国政府が自身などに科したロシア制裁の一環としてクラブの資産を差し押さえられた。しかし、現在のところ、アブラモビッチ氏のテクノロジーとの結びつきには触れられていない。同氏を主要な資金提供者とする2つのファンドから2億ドル(約233億円)超を調達し、事実上その2つのファンドを主要オーナーとしていることを明らかにしているTruphone(トゥルーフォン)は、アブラモビッチ氏と同社の関係は「間接的」であるため、現在、制裁は同社のビジネスや持ち株に影響を与えていないと述べている。

Truphone Limitedの顧問弁護士Rachel Chapman(レイチェル・チャップマン)氏は「3月10日に英国政府によって、Truphoneと間接的な関係を持つローマン・アブラモビッチ氏に制裁が科されたことを承知しています」とTechCrunchに提供した声明の中で述べている。「しかしアブラモビッチ氏は、英国の制裁法の目的に照らしてTruphoneとの『利害関係』はありません。これは、Truphoneの事業が通常通り続くことを意味します。Truphone がいかなる制裁措置の対象にもなっていないことは強調する必要があります。法的なアドバイスを受けながら、常に状況を監視しています」。

このスタートアップの2大株主が事実上アブラモビッチ氏の投資ビークルでありながら、アブラモビッチ氏自身から手の届かない距離にいるという事実は、テック業界で資金調達を追跡することがいかに難しいかを浮き彫りにしている。特に「直接」投資と「間接」投資、つまり公式にも非公式にも制裁の影響を受けるものを紐解くことの難しさがある。

アブラモビッチ氏は、従来のネットワークを迂回したグローバルな音声・データ接続を可能にするeSIMやその他の技術を開発する通信技術企業であるTruphoneに、自身が出資する投資ビークルを通じて、数年にわたって一連の投資を行ってきた。

2013年に同氏の会社Minden(ミンデン)は7500万ポンド(約115億円)のラウンドをリードし、うち7000万ポンド(約107億円)を出資した。2018年には、今度はMindenとVollin Holdings(ヴォリン・ホールディングス)の2つのアブラモビッチ氏所有の会社を通じて、Truphoneはさらに5400万ポンド(約82億円)を受け取っている(1800万ポンド[約27億円]を前払い、残りを「条件付き」で後払い)。そして2020年には、さらに3000万ポンド(約46億円)をやはりVollinとMindenから受け取っている。

PitchBookによると、VollinはTruphoneの72.45%、Mindenは22.77%を所有しており、両社には他にアクティブな投資先はない。Truphoneの評価額は2020年に5億1600万ドル(約603億円)とされている。

(補足:これらの投資をTechCrunchが取り上げた際、Truphoneは投資会社周辺の詳細を控えめにしようとした。広報担当者から「記事で名前を出さないでくれ」と少し慌てた様子の電話が筆者にかかってきて、自身の関与を軽くしようとしたのを覚えている。まったく怪しくない)

アブラモビッチ氏は先週、状況を踏まえてチェルシーFCを売りに出し、ウクライナの救済に寄付をすると発表していた。しかしその手続きは、アブラモビッチ氏がそれまでに持ち株からいかなる利益も得られないようにするため、3月10日政府によって保留にされた。今後チェルシーFCは、新規のチケット販売(すでに代金を支払ったシーズンチケット保持者のみ入場可能)、グッズ販売、選手の移籍・放出が認められないなど、制限付きライセンスのもとで運営される。

アブラモビッチ氏のテック分野への関わりに何が起こるか、また、政府が間接投資と言われるものをどのように、そして実際に追求するのかを見守る価値はありそうだ。

アブラモビッチ氏は、英国国外にも投資ビークルを持っている。PitchBookでTruphoneを唯一の投資先としているMindenとVollinに加えて、同氏は英領ヴァージン諸島に拠点を置くNormaと、Impulse VCという2つのVCにつながっている。Impulseはモスクワに拠点を置き、合計61件の投資を行っている(同じスタートアップに対して複数回のラウンドを行ったものもあり、また撤退したものもある)。Normaは、バッテリーのスタートアップStoreDot、OpenWeb(旧Spot.IM)、BrainQ Technologiesなど13件に投資している。

アブラモビッチ氏は、数年前のTelegram(テレグラム)の不運なICO(新規暗号資産公開)で、複数のロシア人投資家の1人として名を連ねている。しかし筆者はTelegramのPavel Durov(パーヴェル・ドゥーロフ)氏に連絡を取り、アブラモビッチ氏が現在投資家であるかどうかを尋ね、そうではないことを確認した。

「いいえ、幸いにも彼らは誰も当社の投資家ではありません 」とドゥーロフ氏はTelegramのメッセージで筆者に話した。

ある人がいうには、欧州のベンチャーマネーの45%はロシアに由来するという。鉄のカーテン崩壊後、自由になったソ連のインフラで富を築いた人々による、いわゆる「オリガルヒ」資金や、(ある人が主張するように)再建のためにロシアに流れ込んだ資金が別の場所に流れただけではない。そのような資産の裏側で、その間に何十億もの利益を得てきた。その後の他の事業からの配当、そしてもちろんロシアの事業家が長年にわたって通常の手段で稼いできた金もある。

Index VenturesEQTなど、いくつかの投資家はここ数日、ロシアやロシアマネーとの関係について声明を発表している。これらの声明は、ロシアやロシア出身のLPからの資金が「直接」ではないことを注意深く指摘している。そのため「間接的」というのがどのような役割を果たすかという疑問が生じる。一方、彼らはロシアのスタートアップへの投資から撤退し、ロシアで事業を展開する投資先企業にもその事業を縮小するよう促している。

画像クレジット:Alexander Hassenstein – UEFA / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラ、大気浄化法違反で米環境保護庁から罰金

Tesla(テスラ)は、カリフォルニア州フリーモントの電動車製造工場における国の大気浄化法(Clean Air Act)違反に関して環境保護庁との和解に達し、27万5000ドル(約3160万円)の罰金を払うことに合意した。

しかし2021年の第4四半期だけでも23億2000万ドル(約2668億円)の純利益を得ている企業にとって、この罰は無きに等しい。

環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)は、Teslaが2016年10月から2019年9月までの間に、自動車と軽トラックの塗装に関する汚染排気規準(National Emissions Standards for Hazardous Air Pollutants for Surface Coating of Automobiles and Light-Duty Trucks)に違反したとしている。それは、近隣住民の健康と環境に危害をもたらしたとされる。Teslaの工場は、危険な汚染物質であるホルムアルデヒドやエチルベンゼン、ナフタレン、およびキシレンを含む塗料を使用した。

EPAはTeslaに要求したいくつかの情報に基づいて、同社がクルマの塗装に使用する塗料の保存や混ぜ合わせをする場所からの有害汚染物質の排出を抑えるための作業慣行計画を、開発または実装していないと判断した。EPAはさらに、Teslaが国の規準とのコンプライアンスを示すための毎月の排出量計算を行っていないことを見出した。また同社は、塗装工程における汚染排出の計算に必要な記録の収拾と保存を怠っていた。

Teslaないし同社のフリーモント工場はセクハラ人種差別でも非難されているが、EPAに呼び出されたことはこれが初めてでなない。EPAによると、2019年にTeslaは、機器装置類から漏れる排気が規準に準拠していないこと、有害廃棄物の管理を怠ったこと、および一部の固形廃棄物に関しては有害廃棄物排出を同社が正しく判断しなかったことで、3万1000ドル(約360万円)の罰金に合意した。またTeslaはフリーモント消防署のために、5万5000ドル(約630万円)の緊急時応答装置を買わなければならなかった。

Teslaのフリーモント工場の塗装場は何度も火災を起こしているが、その原因の大部分は、外部と空気の給排気を行なうフィルターが、目視で分かるほどの量の塗料とクリアコートで皮膜していたからだ。Teslaの従業員が2018年に、CNBCにそう語っている

「コンプライアンスの監視は、規制対象の界隈が環境法と規制に従っていることを確認するためにEPAが用いる重要な手段です。この度のケースは、この施設における当庁の長年のコンプライアンス監督のさらなる例でです。Teslaは2つの和解に記されている違反を修正し、コンプライアンスに復帰しています」と、EPAは声明で述べている。。

画像クレジット:David Paul Morris/Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルに5回目の罰金、出会い系アプリの決済めぐりオランダ独禁当局との対立続く

オランダの競争当局は、決済技術および同国の出会い系アプリに関する独占禁止命令に遵守しなかったとして、Apple(アップル)に科した罰金を再び引き上げた。

5回目の罰金として500万ユーロ(約6億4900万円)が科せられたことにより、Appleは2500万ユーロ(約32億3700万円)の支払い義務を負うことになり、命令に従っていないとみなされ続ければ、最大で5000万ユーロ(約64億7200万円)に達する可能性がある。このような状況の中、同社は、解決策を提示するどころか障壁を作り続けていると、いら立ちを隠せない様子の規制当局から非難された。

消費者市場庁(ACM)は、声明で次のように述べている。

過去1週間の間に、AppleからACMの要求を満たすような新たな提案は得られませんでした。そのため、Appleは5回目の罰金を支払う必要があります。つまり、すべての罰金の総額は現在2500万ユーロ(約32億3700万円)となります。

「当庁はAppleに対し、どのようにすればACMの要求事項を満たすことができるかを明確に説明しました。ですがこれまでのところ、Appleは真剣な提案をすることを拒否しています。特に、12月24日にACMの要求が裁判所で支持されたことを考えると、Appleの態度は遺憾です。Appleのいわゆる「ソリューション」は、独自の決済システムを利用したいと考えている出会い系アプリ業者にとって、あまりにも多くの障壁を設けています。

「Appleが支配的地位にある企業であることはすでに確立されました。それには、同社サービスの購入者、さらには社会全体に対する責任が伴います。Appleは、自社のサービスを利用すのに妥当な条件を設定しなければなりません。その文脈において、Appleは同社の支配的地位を濫用してはなりません。Appleの規約は購入者の利益を考慮したものでなければなりません。

規制当局の広報担当者は、先週の提案が「不合理」であると判断されて以来、Appleが新たな提案を行っていないことを確認した。

「Appleがこの命令に従うことを期待しています」と同担当者は付け加えた。「それができなければ、定期的な罰金支払いの対象となる、別の命令を下す機会となります」。

ACMからの最新の罰金に対するコメントをAppleに求めているが、同社の広報部門はここ数週間、罰金や告発の件数が増えていることから、これからの問題に備え静かにしているようだ。

Appleに収益の大部分を渡さずにデジタルコンテンツを販売したいと考えている一部のアプリからの苦情を取り締まろうとする、欧州の(小さな)一国の競争規制当局と、自らのエコシステムのコントロールを維持しようとする巨大プラットフォーム企業との間での争い。これは、EU(およびその他の区域)がデジタル巨人に対して、厳しい事前規制とそれに見合った罰則を採用(および施行)した場合にどうなるか、今後のはるかに大きな戦いを予見させるという点で有益だ。

例えば、導入が急がれているEUのデジタル市場法(DMA)案では「ゲートキーパー」と判断されたプラットフォームが、事前に設定された運用上の義務のリストに違反していた場合、全世界売上高の10%を上限とする罰金などの制裁措置が講じられる可能性がある。

そうなればAppleの場合は、2500万ユーロ(約32億3700万円)ではなく、2500億ユーロ(約32兆3700億円)に近い罰金が科せられることになる(クパチーノにとって、軽く見ることがより難しくなるのは確かだ)。

それでも、規制当局が、リソース豊富なテック巨人を自分たちの思うように踊らせようとするのは至難の業であることは明らかだ。

ACMの苦情に対するAppleの対応は、規制当局が不公平だと判断したからといって、儲かる収入源を簡単に放棄する気はないことを示しており、同社は代わりに事業を再構成して、ほぼ同じ手数料を取るための新しい方法を見つけることで、それに対抗しようとしている(Appleは、サードパーティの決済技術を利用するオランダの出会い系アプリに対して、App Storeの標準的な手数料30%に対して、売上の27%の手数料を請求すると述べている)。

関連記事:アップル、オランダのマッチングアプリの代替決済システム使用に手数料27%を請求へ

収益に影響を与えるような規制上の制限を回避することに大きなインセンティブを持っている、高速なイテレーションを武器とするテック巨人を取り仕切ることは、我々がこれまで見てきたように、果てしない遅延に負けてしまいがちなゲームだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)

アップル、オランダのデートアプリの決済に関する命令で再び罰金を食らう

デートアプリの支払い方法をめぐって、オランダでApple(アップル)の反トラスト法違反が続いている法案が、さらに500万ユーロ(約6億6000万円)増えて1500万ユーロ(約19億8000万円)になったことを同国の消費者保護・市場監督局(Authority for Consumers and Markets、ACM)が認めた。

このペナルティは消費者保護・市場監督局の命令に関わるもので、それによるとAppleは同国のデートアプリがデジタルコンテンツを販売した場合、その代金の支払いに関して、Appleに手数料をもたらすApple自身の決済インフラの使用を強制するのではなく、サードパーティの決算プロバイダーの使用を容認しなければならない。

iPhoneのメーカーであるAppleは2021年以来、オランダの命令に逆らい、控訴を続けてきた。しかし2022年1月、最初のコンプライアンスの締切とペナルティ執行の脅威が近づくにともない同社は、アプリがApple以外の決済技術に接続することに合意し、オランダのApp Store上にあるデートアプリに限り、2つの「オプション的資格」を導入するとした。それによりアプリは、命令が指示しているように別の決済処理の選択肢をユーザーに提供できる。

しかしAppleの1月のコンプライアンスの主張を、ACMはただちに無効として罰金を科した。どうやら規制当局は、Appleが命令のすべての要求に従うことをためらっている点を問題にしたようだ。

ACMの命令に対するAppleの抵抗に関する裁判所命令は、まだ一部しか公表されていないため、消費者保護・市場監督局は、現在、言えることに限界があると述べている。

一方、Appleは命令に逆らうことをPRに活かそうとしている。そして1月の声明では「複数の決済サービスを使えることによりユーザー体験が損なわれ、プライバシーとデータのセキュリティに新たな脅威が作り出される」と主張している。

自分たちのデートアプリにApple以外の決済技術を使いたいと思っている開発者にAppleが提供した情報も、できる限りその決定に二の足踏ませようとしている。つまりAppleの主張では「ユーザーはApp Storeの機能の一部を使えなくなり、そのような販売方法によって発生する返金や購入履歴やサブスクリプションの管理といったサポートの欠如により、ユーザー自身がそれらの責任を負うことになる」という。

の新たな打撃でAppleは、Apple以外の決済技術を使うデートアプリからの販売に関しては27%の手数料を課すと発表した。これはAppleが通常、アプリ内購入に課している30%とほぼ同額だ。

つまり、標準料金のわずかな割引と、カスタマーサービスの責任、および技術的な諸経費を追加するだけでは対象となるアプリの収益が増えるとは思えない。これは、Appleが、ローカル開発者がサードパーティの決済システムを使用することをできるだけ難しく、そのハードルを高くしようとしていることを示唆している。

関連記事:アップル、オランダのマッチングアプリの代替決済システム使用に手数料27%を請求へ

しかしこれは、Appleのアプローチが偽りのコンプライアンスを選択することであることを意味している。ACMの命令の字面ではなくその精神に反して、同社は外部決済を使うことを開発者にとってほとんど魅力のないものにしている。しかしながらACMの最新のペナルティは、Appleが規制当局が命令で強制していることの中核にさえ達していないことを示唆している。

懸案のコンプライアンス問題の詳細を尋ねたところ、競争当局は、Appleが完全な情報を提供していないと答えた。これはおそらく、Appleがコンプライアンスに従っているかどうかを正しく評価できないと感じていることを意味する。

「ACMは、Appleが定期的な違約金支払いを条件とする命令を遵守するために既に実施したとする変更について、Apple自身からまだ何らの情報も受け取っていません。当該命令に基づき、Appleはこれを行うことが要求されています。Appleは、そのような情報を適時に、また完全な形で提供していないため、Appleは引き続き同命令に定められた要件を遵守していないことになります。そのため、Appleは3回目の違約金を支払わなければならず、Appleが支払わなければならない総額は現在1500万ユーロに達しています」と広報担当者は述べている。

「Appleのウェブサイトに掲載されている情報だけでは、同社が定期的なペナルティ支払いを条件とする命令で定められた実質的な要件を遵守しているかどうかを評価することはできない。ACMは、Appleの行動と行為に失望しています。私たちは、Appleが最終的にACMの要求事項を遵守することを望んでいます。しかも、これらの要件は裁判所によって支持されています」と付け加えた。

Appleにコメントを求めたが、本稿を書いている時点では返事はない。

金儲け主義の巨大企業にとって、比較的小さな欧州の単一市場のアプリのサブセットなど大した問題ではないかもしれないが、同社のApp Store手数料モデルは現在、世界中の開発者からの苦情や規制の圧力にさらされている。

つまり、Appleは市場ごとに足を引っ張り、現地の開発者に複雑さと疑念をもたらし、一般的にこのプロセスを遅くて辛いものに空回りさせるよりも、App Storeの中核的な収益モデルを切り崩すような大規模で意味のある変更をすばやく行うことの方が、ビジネスにとってはるかに大きなリスクとなると考えているだ。

ACMによると、Appleのノン・コンプライアンスの罰金は毎週上昇し、最大の5000万ユーロ(約66億円)に達するまで上がり続ける。しかしそれは、時価総額2兆8170億ドル(約325兆円)の企業にとってポケットの小銭であるため、この問題を困難で不快なものにし続けても問題ない。

とはいえ、ヨーロッパの市場の一部は現在、競争法の改定に取り組み、テクノロジー大手からの途方もないチャレンジに対応しようとしている。たとえばEUのDigital Markets Actは、インターネットのいわゆるインターネットの「門番たち」のための先取り的ルールの提案だ。またドイツの、すでに法律として成立した規則は「すべての市場で重要な意義を持つ」プラットフォームに対する権力の迅速な介入について定めている。現在、その対象企業はGoogleだ

ドイツ連邦カルテル事務局はAppleのApp Storeの捜査に関してオープンな手続きをとっているが、こちらも同社のやり方が競争に関するローカルな限度を超えそうなときは、規制のギアをさらに上げるだろう。

英国でも、競争保護促進のためのリフォームが進んでいる。こちらも議会の判断で「大きな市場ステータス」を持つとされるテクノロジー大手に対する特別法を導入できる。

このように各国の議会は、気に入らないルールを単純に無視しようとするプラットフォームをターゲットとする権力を急速に強化している。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オランダ当局がアップルに約6.4億円の罰金、出会い系アプリの独占禁止法違反で

オランダの競争当局は、同国の出会い系アプリがサードパーティの決済技術を利用できるようにするよう求めた命令に従わなかったとして、Apple(アップル)に500万ユーロ(約6億4000万円)の罰金を科した。

来週までに当局が求める要件を満たさなければ、同社はさらに500万ユーロの罰金が科される可能性があり、その後も毎週、数カ月にわたって、この命令に関連して最大5000万ユーロ(約64億円)の罰金が課される可能性がある。

この罰金は、オランダの監視機関である消費者・市場庁(ACM)が2021年に出した命令に関連するものだ。当局はAppleが独占禁止法に違反していると判断し、出会い系アプリプロバイダーに押し付けている条件を見直すよう命じていた。

独占禁止法上の問題となっているのは、デジタルコンテンツの販売にApple独自のアプリ内決済インフラ(別名IAP API)を使用することを義務付けるApp Storeの規約で、AppleはこのAPIを通じて手数料を徴収している。

Appleの規約では、出会い系アプリが代替決済システムを利用することも禁止している。

当局は、出会い系アプリがアプリ内で他の支払い方法に言及することをAppleが禁止していることも問題視した。

ACMは1月24日、Appleが命令に従っておらず、出会い系アプリに関する規則を命令に沿うよう修正しなければならないと発表した。

「出会い系アプリのプロバイダーがApp StoreでApple以外の決済システムも利用できるようにしなければならない。加えて、出会い系アプリのプロバイダーは、アプリ外の決済システムを参照できなければならない」と発表にはある。

現在も続くAppleの違反の全容は、明確に述べられていない。しかし、重要なのは、Appleが求められていることをまだ行っておらず、実際に出会い系アプリのプロバイダーが他の決済システムを利用できるようにしていないことのようだ。

オランダ当局はまた、出会い系アプリのプロバイダーがApple以外の決済インフラを利用することを難しくするためにAppleが構築したと示唆する障壁を批判している。

「Appleはいくつかの点で要件を満たしていない」とACMは書いている。最も重要なのは、Appleが条件を見直さなかったことであり、その結果、出会い系アプリのプロバイダーはいまだに他の決済システムを利用できないでいる。現時点では、出会い系アプリのプロバイダーは、単に「関心」を表明することしかできない。

「加えてAppleは、出会い系アプリのプロバイダーがサードパーティの決済システムを利用することに対して、いくつかの障壁を設けた。これもACMの要求と相反する。例えば、Appleはアプリプロバイダーに対して、アプリ外の決済システムを参照するか、代替の決済システムを参照するかの選択を迫っているようだ。これは許されない。プロバイダーはどちらの選択肢も選ぶことができなければならない」。

ACMは2021年に下した決定で、出会い系アプリに対する条件を修正する必要があるとAppleに伝えた。しかし、TechCrunchが報道したように、Appleは差止命令を求め、命令への対応を遅らせることに成功した(命令の一部はまだ封印されたままだ)。

また、同社はこの命令の適用を1月中旬まで遅らせることもできた。

Apple以外の決済インフラで処理されたデジタルコンテンツの販売について、同社はオランダの出会い系アプリから依然として手数料を徴収する意向があることが先週明らかになった。開発者向けサポートノートには「ACMの命令に従い、リンクアウトまたはサードパーティのアプリ内決済プロバイダーを使用する資格を与えられた出会い系アプリは、取引にかかる手数料をAppleに支払う」と記されている。

本稿執筆時点では、その主張はAppleの「StoreKit External Purchase Entitlement」(ACM命令に言及している)に関する投稿にまだ掲載されている。そして、封印されたままの命令の一部は手数料に関係している可能性がある。しかし、詳細を確認することはできていない。

Apple以外の決済システムを使用するアプリにも手数料を課すことができるというAppleの主張について、TechCrunchは先週ACMに問い合わせたが、当局の広報担当者は回答を却下した。「裁判所が支持し、公表を許可した命令の部分しか言及できない」とのことだ。

一方、Appleのサポートサイトは、Apple以外の決済手段を導入するための明確なプロセスを提供する代わりに、関心のあるデベロッパーに「developer interest form」を紹介するにとどまっている。

説明文も「間もなく」詳細情報が提供される、という曖昧な表現にとどまっている。

オランダの出会い系アプリが代替決済手段を導入するための手続きの実装遅れによってAppleに500万ユーロの罰金が発生した(そして増えている)。

もちろん、数百万ドル(数億円)の罰金、あるいは5000万ユーロ(約64億6000万円)の罰金でも、Appleは騒ぎはしないだろう。

しかしいま、App Storeの規約に対する複数の競争法上の苦情や調査はAppleにとってはるかに大きな懸念となっている。これらはアプリ内課金で徴収する手数料を攻撃していて、EU英国アジア米国ではデベロッパー向けの契約条件について当局が調査し、命令が出されているところもある。

短期的には、そして(または)AppleがApp Storeの競争に関する苦情をなくすような実のあるグローバルな競争改革の提案をしない場合、各市場 / 地域の規制当局がAppleの規約の評価に注意を向けるため、iOSアプリ開発者のための規制のパッチワークが迫っている。

差し当たり、iOSアプリの競争と価格設定に関する消費者と開発者の勝利は、しぶしぶもたらされる可能性が高く、苦労して勝ち取るもののようだ。

しかし、Appleの契約条件の事前規制は現在多くの市場で検討されており、その明確な目的は、行動修正を加速させることにある。つまり、故意に遅らせるという戦略は、将来的にもっと高くつくことになりそうだ。

ACMの罰金についてAppleにコメントを求めている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アドエクスチェンジのOpenX、子どもの位置情報収集で連邦取引委員会が罰金

広告テクノロジー企業のOpenX(オープンX)は、同社が米国の児童プライバシー法に違反したという疑惑を解決をするため、連邦取引委員会に200万ドル(約2億3000万円)を支払うことになった。

連邦取引委員会は、カリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所に提出した訴状において、OpenXが親の同意を得ずに13歳未満の子どもから個人情報を収集したことにより、児童オンライン・プライバシー保護法(COPPA)に違反したと主張している。

カリフォルニア州に本社を置くこの企業は、子どもや幼児、就学前児童の学習用に販売されている数百ものアプリから故意に情報を収集し、このデータ(詳細な位置情報、IPアドレス、デバイスの固有識別子など)を、ターゲット広告に使用する第三者に渡したとしても告発されている。

「OpenXは、子ども向けアプリから直接または間接的に数百万から数億のアドリクエストを受信し、子どもの個人情報を含む数百万から数億のビッドリクエストを送信した」と、訴状には書かれている。

連邦取引委員会の訴状では、OpenXはCOPPAに違反したことに加え、データ収集をオプトアウトしたユーザーから詳細な位置情報を収集していないと偽り、連邦取引委員会法に違反したと主張している。連邦取引委員会によると、OpenXは、一部のAndroidユーザーが位置情報の収集を「許可しない」を選択した後も、位置情報の収集を続けていたとのことだ。

「OpenXは、位置情報を密かに収集し、子どもを含む大規模なプライバシー侵害の扉を開きました」と、連邦取引委員会の消費者保護局で局長を務めるSamuel Levine(サミュエル・レビン)氏は述べている。「デジタル広告のゲートキーパーは、舞台裏で活動していても、法を免れることはできません」。

連邦取引委員会の理事を務めるNoah Joshua Phillips(ノア・ジョシュア・フィリップス)氏は、別の声明の中で、この命令は当初、OpenXに対して750万ドル(約8億5000万円)の罰金を求めていたが、同社の支払い能力が不十分であったため、罰金を200万ドルに減額したと述べている。また、この和解案では、同社がターゲット広告を配信するために収集したアドリクエストのデータをすべて削除し、COPPAを完全に遵守するための包括的なプライバシープログラムを実施することが求められている。

OpenXはTechCrunchのコメント要請にすぐには応じなかったものの、和解案に言及したブログ記事の中で、データ収集は「意図しないミス」であるとし、内部検査の結果「99%以上のドメインとアプリは適切に分類されていた」と述べている。

「当社は、COPPAを完全に遵守するために、ポリシーや手順の見直しと強化に取り組んでいます。また、質的および量的属性の厳格な基準に引き続き従い、サイトやアプリが当社のエクスチェンジに含まれるのに適しているかどうかを判断していきます」と同社は述べている。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イタリアがアマゾンとアップルに約264億円の制裁金、Beats製品の再販で

Amazon(アマゾン)とApple(アップル)は、AmazonのイタリアのeコマースマーケットプレイスでのAppleおよび(アップル所有の)Beats製品の再販に関する調査の結果、イタリアの反トラスト当局から総額約2億3000万ドル(約264億円)の制裁金を科せられた。

当局によると、両社は共謀し、AmazonイタリアのマーケットプレイスでAppleおよびBeatsの製品を購入する消費者が受けられる割引の水準が低下した疑いがあるとのことだ。

また、再販業者に対する制限を廃止するよう両社に命じた。

AGCM(イタリア競争・市場保護委員会)は現地時間11月23日、制裁措置を発表し、調査の結果、Amazon.itにおけるBeats製品の一部の「正当な」再販業者を阻止するために、2社間で制限協定があったことが判明したと述べた。

制裁金の内訳は、Amazonが1億3450万ユーロ(約174億円)、Appleが6870万ユーロ(約89億円)となっている。

問題の協定は、2018年10月に2社間で締結された。

AGCMのプレスリリースによると、この協定には、AppleおよびBeatsの製品の公式および非公式の再販業者がAmazon.itを使用することを禁止する多くの契約条項が含まれていることがわかった。Amazon.itでのAppleおよびBeatsの製品の販売をAmazonと、当局が「個別に差別的な方法で選ばれた」とするいくつかの再販業者に限定するという制限があり、これは欧州連合の機能に関する条約第101条に違反する。

「調査の結果、小売業者の数に純粋に量的な制限を設け、Amazonと差別的な方法で選ばれた特定の小売業者のみがAmazon.it上で販売できるようにする意図があることが判明した」と当局はリリースに記している(TechCrunchはイタリア語をGoogle翻訳で翻訳した)。

「この協定条件は、小売業者が地理的に差別されているため、国境を越えた販売も制限している。協定の制限は、サードパーティがAmazon.itで提供する割引の水準に影響を与え、その割引の度合いを縮小させた」。

当局は、Amazonのローカルマーケットプレイスが、同国における家電製品購入の少なくとも70%を占めており、そのうち「少なくとも40%は、Amazonを仲介プラットフォームとして利用している小売業者だ」と指摘している。

「それゆえ、競争ルールの適用は、特に今日の状況において、商業活動をする上でますます重要な場所としてマーケットプレイスを利用するすべての小売業者にとって、競争を制限する差別的行為を避け、公平な競争条件を確保することが不可欠だと思われる」と付け加えている。

「こうした観点から、当局の決定は、EU司法裁判所の判決に沿って、競争規則に適合するためには、販売システムは差別的ではなく、すべての潜在的な再販業者に等しく適用される質的基準に基づく必要性を認めている」。

さらにイタリア当局は、Amazon・Apple間の協定に関する調査を踏まえ、ドイツとスペインの競争当局が同様の手続きを開始したことを指摘している。

スペインのComisión National de los Mercados y la Competencia(国家公正競争市場委員会)は今夏、AmazonとAppleに対する懲戒手続きの可能性を発表し、独自の調査を開始した(調査完了までに最大18カ月かかるとされている)。

一方、2018年には、ドイツのBundeskartellamt(連邦カルテル庁)が、Amazonのマーケットプレイス販売者からの苦情を受けて、同社に対する不正行為の手続きを開始した。Amazonが販売者向けの一般取引条件を修正し、競争上の懸念を軽減するための追加変更を約束したことで、翌年、2019年には手続きを終了した。

直近では、デジタルプラットフォームに関するドイツの競争法が大幅に改正されたことを受けて、連邦カルテル庁が両社の市場支配力の審査手続きを開始した。同法では、両企業が「市場間競争にとって極めて重要である」ことが確認された場合、連邦カルテル庁は、市場濫用のリスクを抑制するために、AmazonとAppleがドイツ国内で事業を行う際に積極的に条件を課す事前措置を適用することができる。

今回のAGCMの決定について、AmazonとAppleにコメントを求めた。

本稿執筆時点ではAppleからの回答はなかったが、Amazonは控訴することを明らかにし、広報担当者は以下の声明を発表した。

「当社は、イタリア競争当局(ICA)の決定に強く反対しており、控訴する予定です。提案された罰金は不釣り合いで不当なものです。

当社のビジネスモデルは販売者の成功に依存しているため、販売者を当社のストアから排除することでAmazonが利益を得ているというICAの指摘は受け入れられません。協定の結果、イタリアの顧客は当社のストアでAppleおよびBeatsの最新の製品を見つけることができ、より良い価格、そしてより迅速な配送をともなう、2倍以上に増えたカタログの恩恵を受けています」

また、Amazonは、Appleとの協定は消費者にとって有益だと主張し、マーケットプレイスで購入できるApple製品の量が増えたことや、一部のApple製品に割引が適用された個別の事例を紹介した。

Amazonは、同社のマーケットプレイスが世界の小売市場の1%にも満たず、イタリアを含む同社が事業を展開しているすべての国に、より規模の大きい小売業者が存在すると述べ、いかなる市場支配も否定しようとしている。また、企業はApple製品を販売するために、オンラインと店頭の両方で複数のチャネルを持っていると主張している。

Amazonのマーケットプレイスにおける売上の約60%はサードパーティの販売者が占めており、その中にはAmazonで販売しているイタリアの中小企業約1万8000社も含まれる、とも付け加えた。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

EVトラック開発Nikolaが米証券取引委への制裁金支払いに142億円を準備

EVトラック開発のNikola(ニコラ)は、米証券取引委員会(SEC)と、1億2500万ドル(約142億円)の民事制裁金支払いに関して協議中だと第3四半期決算発表で明らかにした。SECは、同社が投資家をミスリードしたかどうかを調査中で、制裁金はその一環だ。

同社は第3四半期決算発表で、支払いは分割して行う予定であり、解決を見越して資金を確保していたと述べた。

2021年10月にSECとの協議が進んだことを踏まえ、同社は「2021年9月30日において発生済みの偶発債務の最善の見積もりとして、1億2500万ドルの損失を計上した」と決算発表で明らかにした。

一方、苦境に立たされている創業者のTrevor Milton(トレバー・ミルトン)氏は、自身の刑事訴訟の防戦に忙しい。同氏は異なる2件の告発に直面している。1つは証券取引法違反の疑いでSECから、もう1つは証券詐欺2件、通信詐欺1件の刑事訴訟で米連邦検事局からだ。

Nikolaは引き続きミルトン氏の弁護士費用を負担しており、2021年9カ月間で約1260万ドル(約14億円)に上る。同社は同氏に対し「政府および規制当局の調査に関連した費用および損害」の弁済を求めると述べた。9月末時点で、同氏は同社の株式を約16%保有している。

当会計年度は、同社にとって苦難の連続だったと言っても過言ではない。2020年9月にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)と20億ドル(約2240億円)の戦略的提携を発表したときには、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。提携の内容には、当時スタートアップだったNikolaにGMが11%を出資することと、Nikolaの燃料電池トラックの生産条件が含まれていた(この燃料電池トラックはその後つぶれた)。しかし、そのわずか1カ月後、空売り投資家であるHindenburg Research(ヒンデンブルク・リサーチ)の報告を受け、SECが調査を開始した。その後、GMは契約を解消した

SECに1億2500万ドルを支払う決定は、まず規制当局の承認を得なければならない、とNikolaは投資家に述べた。

画像クレジット:Nikola Motor Company

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

WhatsAppに欧州のGDPR違反で約294億円の制裁金、ユーザー・非ユーザーに対する透明性の向上も命令

長らく待たれていたが、ついにFacebookは、大々的に報じられていた欧州のデータ保護体制からの批判を感じ始めている。2021年9月初旬、アイルランドのデータ保護委員会(DPC)が、WhatsAppに2億2500万ユーロ(約294億円)の制裁金を科すことを発表した。

Facebook傘下の同メッセージングアプリは、欧州連合(EU)のデータ統括者であるアイルランドのDPCによって2018年12月から調査を受けている。その数カ月前には、WhatsAppのユーザーデータ処理方法をめぐって最初の苦情が申し立てられていた。同社のユーザーデータ処理方法は、欧州の一般データ保護規則(GDPR)の適用が2018年5月に開始されている。

関連記事:GDPR施行、「同意の強制」でさっそくFacebookとGoogleに対し初の提訴

WhatsAppに関する具体的な苦情がいくつも寄せられたにもかかわらず、2021年9月初旬に決定が下されたDPCによる調査は「自発的」な調査として知られているものであった。つまり、規制当局が調査自体のパラメータを選定し、WhatsAppの「透明性」に関する義務を監査することを選択したものだ。

GDPRの重要な原則の1つは、個人のデータを処理する事業体はその個人の情報がどのように使用されるかについて、その個人に対して明確でオープンかつ正直でなければならない、ということにある。

この度のDPCの決定(266ページに及ぶ)は、WhatsAppがGDPRで要求されている基準を満たしていなかったと結論づけている。

この調査では、WhatsAppが同サービスのユーザーと非ユーザーの両方に対する透明性に関する義務を果たしているかどうかが検討された(例えばWhatsAppは、ユーザーが他人の個人情報を含む電話帳を取り込むことに同意すれば、非ユーザーの電話番号をアップロードすることができる)。また、親会社のFacebookとのデータ共有に関してプラットフォームが提供する透明性にも注目していた(2016年にプライバシーUターンが発表された当時、大きな議論を呼んだが、GDPRの適用前だった)。

要約すると、DPCはWhatsAppによる一連の透明性侵害を発見した。GDPRの第5条1項(a)号、第12条、第13条、第14条に及ぶものである。

多額の制裁金を科すことに加えて、当局はWhatsAppに対し、ユーザーと非ユーザーに提供する透明性のレベルを向上させるために多くの措置を講じるよう命じている。このテック大手には、指示されたすべての変更を行うために3カ月の期限が与えられた。

WhatsAppはDPCの決定に対する声明の中で、調査結果に異議を唱え、この制裁金を「まったく不相応」と表現するとともに、控訴する意向を示し、次のように記している。

WhatsAppは、安全でプライベートなサービスを提供することに尽力しています。当社は提供する情報の透明性と包括性の確保に努めており、今後も継続的に取り組んでいきます。当社が2018年に人々に提供した透明性に関するこの度の決定には同意できず、制裁金はまったく不相応なものです。当社はこの決定に控訴する意向です。

最終的な決定が下されたDPC調査の範囲は、WhatsAppの透明性に関する義務への考慮に限定されていたことを強調しておきたい。

規制当局は、明示的に、広範囲の苦情について調査してこなかった。それはFacebookのデータマイニング帝国に対して3年以上も前から提起されているもので、そもそもWhatsAppが人々の情報を処理していると主張する法的根拠に関するものである。

したがって、DPCはGDPR施行のペースとアプローチの両方について批判を受け続けることになるだろう。

実際、今日に至るまで、アイルランドの規制当局は「ビッグテック」に対処するための国境を越えた大規模な訴訟において、わずか1つの決定しか下していなかった。Twitterに対して行われたもので、2020年の12月に遡るが、歴史的なセキュリティ侵害をめぐりこのソーシャルネットワークに55万ドル(約6045万円)の制裁金を科したというものだった。

これとは対照的に、WhatsAppの最初のGDPR罰則はかなり大きく、EUの規制当局がGDPRのはるかに深刻な侵害だと考えていることを反映している。

透明性は規制の主要原則の1つである。そして、セキュリティ侵害はずさんな慣行を示しているかもしれない一方で、アドテック帝国が大きな利益を上げるためにそのデータに依存する人々に対する、組織的な不透明さは、むしろ意図的なものに見える。確かに、それは間違いなくビジネスモデル全体のことである。

そして、少なくとも欧州においては、そのような企業は、人々のデータを利用して何をしているのかについて最前線に立たされることになるだろう。

GDPRは機能しているだろうか?

WhatsAppの決定は、GDPRが最も重要なところで効果的に機能しているかどうかについての議論を再燃させるだろう。世界で最も強力な、そしてもちろんインターネット企業でもある各社に対して。

EUの代表的なデータ保護規制では、越境事案の決定には影響を受ける全規制当局(27の加盟国)の同意が必要である。そのためGDPRの「ワンストップショップ」メカニズムは、主規制当局を介して苦情や調査を集めることにより、越境企業の規制上の義務を合理化しようとしているが(通常は企業がEU内に主要な法的根拠を持っている場合)、今回のWhatsApp事案で起きたように、主監督当局の結論(および提案された制裁)に対して異議を申し立てることができる。

アイルランドは当初、WhatsAppに対して5000万ユーロ(約65億円)という、はるかに少額の制裁金を科すことを提案していたが、他のEU規制当局がさまざまな局面でこの決定案に異議を唱えた。その結果、欧州データ保護会議(EDPB)が最終的に介入し、多様な論争を解決するための拘束力のある決定を下さなければならなかった(EDPBはこの夏に施行された)。

DPCはその(確かにかなり痛みをともなう)共同作業を通じて、WhatsAppに科される制裁金の額を引き上げるよう求められた。Twitterの決定草案で何が起きたかを反映して、DPCは当初、より軽微な制裁金を提案していたのだった。

EUの巨大なデータ保護機関の間の紛争を解決するには、明らかな時間的コストがかかる。DPCは12月にWhatsAppの決定草案を他のDPAに提出して審査を求めていたので、WhatsAppの不可逆的ハッシュ化などに関するすべての紛争を徹底的に洗い出すのに半年以上かかっている。その決定と結論に「修正」が加えられているという事実は、たとえ共同で合意していなくても、少なくともEDPBに押し切られた合意を経て到達しているのであれば、プロセスが遅くて不安定ではあるが機能していることを示している。少なくとも技術的な意味においては。

それでも、アイルランドのデータ保護機関は、GDPRに関する苦情や調査の処理における大きな役割について批判を受け続けるだろう。DPCが、どの問題を(ケースの選択や構成によって)詳細に調査し、どの問題を完全に排除すべきか(調査を開始していない問題や、単に取り下げられたり無視されたりしている苦情)を、本質的に選り好みしていると非難する声もある。最も声高な批判者たちは、DPCが依然として、EU全体におけるデータ保護権の効果的な実施の大きなボトルネックになっていると主張している。

この批判に関連した結論は、Facebookのようなテック大手は、欧州のプライバシー規則に違反するためのかなりのフリーパスをまだ得ている、というものである。

しかし、2億2500万ユーロの制裁金がFacebookのビジネス帝国の駐車違反切符に相当するものであることは事実だとしても、そのようなアドテック大手が人々の情報を処理する方法を変更するよう命じられたことは、少なくとも問題のあるビジネスモデルを大幅に改善するポテンシャルを秘めている。

とはいえ、このような広範な命令が期待される効果をもたらしているかどうかを判断するには、やはり時間を要することになるであろう。

欧州の長年のプライバシー活動家Max Schrems(マックス・シュレムス)氏によって設立されたプライバシー擁護団体noybは、この度のDPCのWhatsAppの決定に反応した声明で次のように述べている。「アイルランドの規制当局によるこの初の決定を歓迎します。しかし、DPCには2018年以来、年間約1万件の苦情が寄せられていますが、今回が初めての大きな制裁措置です。DPCはまた、当初は5000万ユーロの制裁金を科すことを提案しており、他の欧州データ保護当局によって2億2500万ユーロへの移行を余儀なくされました。それでもFacebookグループの売上高の0.08%にすぎません。GDPRは売上高の最大4%の制裁金を想定しています。このことは、DPCが依然として極めて機能不全に陥っていることを示しています」。

シュレムス氏はさらに、同氏とnoybは、DPCの前で保留中の訴訟をいくつか抱えており、その中にはWhatsAppも含まれていることを指摘した。

さらなる発言の中で同氏らは、DPCが他のEUのDPAによって強化を余儀なくされた制裁措置を筋の通った形で擁護するのかについて、また上訴プロセスの長さについての懸念を表明した。

「WhatsAppは確かに決定を不服として控訴するでしょう。アイルランドの裁判所のシステムにおいて、これは制裁金が実際に支払われるまでに何年もかかることを意味します。私たちのケースでは、DPCは事実上の基礎固めを行うことよりも、見出しに関心があるように私たちはしばしば感じていました。DPCが実際にこの決定を守るかどうかを見るのは、非常に興味深いことです。なぜなら、DPCは基本的に欧州のカウンターパートによって今回の決定を下さざるを得なかったからです。私はDPCが単純にこの訴訟に多くのリソースを割くことをしないか、アイルランドにおいてWhatsAppと「和解」することを想像することができます。私たちは、DPCが確実にこの決定に従って進めていることを確認するために、この件を注意深く監視していきます」。

【更新】別の反応声明で、Facebook傘下のWhatsAppに対して苦情を申し立てている欧州の消費者保護団体BEUCは、この決定を「遅すぎた」と評している。

デジタルポリシーのチームリーダーであるDavid Martin(デビッド・マーティン)氏は次のように付け加えた。「今回のことは、Facebookとその子会社に対して、データ保護に関するEUの規則を破ることは重大な結果をもたらすという重要なメッセージを送っています。また、アイルランドのデータ保護当局がEUのカウンターパートによってさらに厳格なスタンスを取ることを余儀なくされたことから、欧州データ保護委員会がGDPRの施行に果たした決定的な役割も今回示されました。私たちは、消費者当局がこの決定に留意し、BEUCがWhatsAppに対して起こしている、規約やプライバシーポリシーの最近の変更を受け入れるよう同社がユーザーに不当な圧力をかけたことに関する別の苦情について、速やかな対応がなされることを願っています」。

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画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)