Rocket LabがElectronロケットの推力を300kgに増強

米国時間8月4日、Rocket Lab(ロケット・ラボ)は既存のElectronロケットのペイロード重量を大幅に向上させることに成功したと発表した(Rocket Labリリース)。同社によると、現在Electronは低軌道に300kg(太陽同期軌道なら約200kg)を輸送でき、その主な原因はバッテリー技術の進歩にあるという。

エレクトロンはもちろんバッテリー駆動ではないが、Rutherfordエンジンへと燃料を供給するための電動ポンプがある。そこでRocket Labは他のいくつかの最適化とともに、総ペイロード重量を3分の1増加させている。小型衛星の打ち上げ市場では、CubeSatの重量が3ポンド(約1.4kg)以下になることもあり、今回は大きな重量増加となる。

Rocket Labによると、これはPhotonプラットフォームを衛星バス(企業からの特定のニーズを満たすための基本的な衛星プラットフォーム)として使用している顧客が、約400ポンド(約180kg)の機器を搭載できるようになったことを意味しており、これは広い範囲で潜在的な新しい需要を喚起できる可能がある。

エレクトロンは7月上旬のミッションの早期終了と打ち上げ失敗が発生した後、早ければ2020年8月中にも定期的な打ち上げに戻ることを目指していると発表した。同社はすでに問題を特定し、修正を実施しているという。

関連記事:Rocket Labの打ち上げは第2段ロケットの燃焼中に失敗、キヤノン電子開発の地球観測衛星などが消失

カテゴリー:宇宙

タグ:Rocket Lab

画像クレジット:Rocket Lab

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXのスターリンク衛星10回目の打ち上げが日本時間8月7日14時からライブ中継


SpaceX(スペースX)は10回目のStarlink(スターリンク)ミッション打ち上げを行う。今回が3度目の試みで、これまでに6月と7月の2度の機会が延期された。その間にもSpaceXは多くの実績を上げていて、GPS衛星を打ち上げ、ボブ・ベンケン、ダグ・ハーリー両宇宙飛行士の国際宇宙ステーションからクルードラゴンに乗って地球帰還に成功した。

今回のStarlinkミッションは東海岸夏時間8月7日金曜日午前1時12分(日本時間午後2時12分)にフロリダ州ケネディー宇宙センターで実施される。予備の時間帯は8月8日土曜日午前0時50分(日本時間午後1時50分)

本ミッションの積載物は当然ながらStarlink衛星で、57基がすでに衛星群の形成されている地球低軌道に加わる。SpaceXは今年の夏にベータテストを開始する予定だ。Starlinkは低遅延高速ブロードバンドを接続環境のよくない地域に提供することを目的としており、ベータテストは米国とカナダの一部で行われる。今回飛行するStarlink衛星には特別な折りたたみ式太陽光バイザーが装備され、地球での展開観測を妨害する反射を防止する。

ほかに、BlackSky(ブラックスカイ)衛星も積載され、打ち上げサービス会社のSpaceflight(スペースフライト)経由でSpaceXを利用する顧客の一つだ。SpaceXが自社のStarlink衛星以外の積荷を載せるのは今回が2度目であり、宇宙のライドシェア・ビジネスの始まりを表している。

ライブ中継は打ち上げ時刻の15分ほど前に開始される。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXがStarshipのホップ飛行と着陸動画を公開

SpaceX(スペースX)は米国時間8月4日の火曜日の夜、宇宙船Starshipの開発プログラムを大きく進展させ、プロトタイプ機ことSN5をRaptorエンジン1基で推進し、約500フィート(約150m)の高度まで飛行させた。このテストは、テキサス州ボカ・チカにある同社のロケット開発・試験施設で行われ、実物大のStarshipのプロトタイプが離昇したのはこれが初めてだ。

SpaceXはテスト打ち上げ全体の動画を公開し、ドローン視点からの映像、SN5に搭載されたカメラからの映像、胴体内からのRaptorエンジンの動作、着陸に備えて展開される脚などを紹介した。

テストが成功した後、同社創業者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、Starshipの開発プロセスの次の段階を概説した。マスク氏によると、着陸脚は今後いくつかの変更を予定しており、まず長さが長くなり、次に幅が広く高くなり、より平坦でない地形に着陸できるようになるという。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがStarshipプロトタイプの高度150メートル飛行試験に成功

SpaceX(スペースエックス)は、テキサス州ボカチカの同社打ち上げサイトで、次世代宇宙船Starship(スターシップ)を開発している。今日まで、同社はいくつものStarshipのプロトタイプを建造してきたが、Starhopper(スターホッパー)と呼ばれる1つ前のバージョンは、基本的にロケットの下の部分だけだった。米国時間8月4日、SpaceXは実物大のプロトタイプ(ただし最終バージョンに取り付けられる予定の先端のドームと下部の操縦翼面を除く)の初飛行を行い、同機はおよそ150メートルの高度に達した。

これは、この試験段階で建造されたプロタイプの中で、最も高く飛行したものとなった。Starship SN5と呼ばれるこの機体は、このシリーズでは5番目のプロトタイプとなる。しかしSpaceXは、現在の命名法則に切り替える前にStarship Mk1(マークワン)という名の実物大プロトタイプを建造しているので、今回のものが実際には6番目だ。これまでのバージョンは、タンクの加圧テストやエンジンの地上燃焼試験など、準備段階のさまざまな時点で失敗に見舞われている。

SN5は、実物大の機体として実際に飛行した初めてのものとなった。今週初めにエンジンの地上燃焼試験をパスしたことで、今回の短距離飛行試験への道が開かれた。このプロトタイプにはRaptor(ラプター)エンジンが1基だけ搭載されているが、完成形では6基のRaptorエンジンを搭載して、大きな推進力を発揮することになっている。同機は垂直に跳び上がり、垂直に着陸を果たした。こうした目に見える結果から、すべてが予定通りに進行したものと推測される。

画像クレジット:NASA Spaceflight

Starhopperが同様の短距離飛行試験を成功させたのは、2019年8月のことだった。SpaceXでは、早ければ2021年中に軌道に載せる実際の宇宙船を使って、ペイロードを搭載した打ち上げという意欲的なゴールに向けて、Starshipの実用化を目指したプロトタイプ開発計画を積極的に進めている。Starshipは、将来のFalcon Heavy(ファルコン・ヘビー)ブースターを装着できるように設計されており、これを使って大きなペイロードを地球軌道、月軌道、そしていずれは火星軌道にまで運ぶことが予定されている。

画像クレジット:NASA Spaceflight Forums

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(翻訳:金井哲夫)

Virgin Orbitは2度目の軌道上での打ち上げでNASAのために11の衛星を運ぶ

Virgin Orbitの軌道への打ち上げの最初の試みは、打ち上げ後の飛行の中断で終わってしまったが、早くも次の試みためのペイロードを契約している。それはNASAの科学衛星11基で、米国の大学が設計、生産し、NASAが選択したものだ。Virginによると、この2度目となる打ち上げは、積荷を完備した状態で、2020年末までに行う予定だという。

計画どおりの結果を得ることなく中断した最初の打ち上げは、おそらく軌道高度への、空のLauncherOneロケットの再利用可能な飛行を目指していた。その後、Virgin Orbitのチームは事故原因の徹底的な調査を行なった。現在ではその調査も終わりに近く、同社はブログで、ミッションを終わらせたエラーの原因がLauncherOneのロケットエンジンに液体酸素を供給する高圧管の破損だった、と述べている。それはロケットを駆動する燃料燃焼のために必要な部品だ。

Virginによると、調査はあと少しで完了するが、この小型衛星打ち上げ企業の声明によれば、将来同じ事故が起こらないようにするための技術的対策には確信があり、その実装も開始しているという。

NASAはVirgin Orbitにとって初めての顧客の1つであり、当然ながらVirginは失敗した最初の飛行の目標を確実に達成するために、2度目の試みもペイロードというリスクがない状態でやりたいと申し出たが、NASAは次はペイロードがあっても問題ないだろうと述べている。

これはVirgin Orbitと彼らの計画への大きな信頼を表している。また宇宙への打ち上げ事業の標準から見ても、年末という目標は相当野心的なものだが、同社によると、技術的な詳細と問題解決についてはすべて標準に準拠するつもりだが、発表したスケジュールを守っていくという。

Virgin Orbitは、その正規事業としての打ち上げも早く顧客に提供したいと願っている。同社のその計画では、747輸送機の改良機にロケットを装着し大型ジェット旅客機が飛ぶあたりの高度に機が達したら、ロケットを飛行機から切り離してエンジンに点火し、それより先の宇宙に小規模なペイロードを運んでいく。

画像クレジット:Virgin Orbit

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Crew Dragonテスト成功でSpaceXはNASA初の有人民間宇宙飛行事業者へ


既報のとおり、SpaceXとNASAは極めて重要なミッション「Demo-2」を成功させて、宇宙飛行の新たな歴史を作った。SpaceXのCrew Dragon宇宙船は初の有人飛行を無事完了したのだ。NASAの2名の宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏は5月30日に軌道上国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、約2か月間実験などに従事したのち無事に地球に帰還した。

Crew Dragonは当初の計画どおりに全任務を進めることができたようだ。打ち上げ、ISSへのドッキング、逆噴射による衛星軌道離脱、完全自動操縦により着水という重要なステップを予定どおり実施し、何より重要なことだが、すべての段階で2名の宇宙飛行士の安全を確保できた。

今回のミッションの最終段階はベンケンとハーリーの両飛行士を乗せたCrew Dragonをメキシコ湾にパラシュートで着水させ、ゴーナビゲーターと呼ばれるSpaceXの回収船に引き上げることだった。このプロセスは米国東部時間午後3時18分(日本時間8月3日午前5時18分)にスムーズに完了した。その後、午後4時ごろにカプセルのハッチが開かれ、4時6分に両宇宙飛行士が姿を現した。

周辺には多数の民間船が見物のために集まっていた。これは航行禁止区域の違反でセキュリティー上の問題なのだが、SpaceXは制止線を作って作業を続行した。ともあれこの状況では他に方法はなかっただろう。

今回の飛行が成功したことで、Crew DragoとFalcon 9ロケットをNASAの正規の基準により商用有人宇宙飛行システムとして認証する準備がすべて整った。ただし最終的な認証決定までには今回の飛行に関する情報をすべて詳細に審査し、解決を要する何らかの問題が残っていないかチェックする必要がある。我々が中継で見た限り、Demo-2は終始絵に描いたように順調に作業が進んだように思われるので、NASAの認証を得るための困難は大きくないだろう。もうひとつ記憶すべき点は、これが45年ぶりの有人着水だったことだ。前回の着水は1974年のSkylabの最後のクルー(NASAプレスリリース)だった。

Crew Dragonが進むべき次のステップは宇宙ステーションへの往還における米国の主要手段となることだ。次回からは本番任務となり、Crew-1と呼ばれる。スケジュールとしては9月中が予定されており、NASAの宇宙飛行士と日本の宇宙開発機関であるJAXAの星出彰彦宇宙飛行士がISSへ向かう(JAXAプレスリリース)。

これによってNASAは2011年のスペースシャトルの退役以後失っていた自国(および友好国)の宇宙飛行士を自力で宇宙ステーションに往復させる能力を取り戻す。ただしこれは商用クループログラム(Commercial Crew program)とう名前が示すとおり、スペースシャトルの際のようにNASAが打ち上げから機体運用まですべて単独で実施するものではなく、あくまで民間企業との協力によって行われる。全ミッションを完了したのはSpaceXが最初となったが、ボーイングもNASA向け商用宇宙飛行の実施の2社目となるべく準備を進めている。

NASAは将来にわたってISSへのアクセスを確保したい意向だ、また宇宙産業育成の資金とするためにできるかぎりコストを節約したいのでCrew DragonもボーイングのStarlinerも有料の乗客のための席を確保している。SpaceXはすでにCrew Dragonによる宇宙往復(ISSには滞在しない)旅行のチケットの予約を取り始めている。Dragonカプセルは最大7名の収容能力がある。NASAはこのうち4席のみを予約している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXの有人宇宙船Crew Dragonがメキシコ湾に着水し船上回収成功

SpaceXと NASAはこれまでで最大の共同ミッションを遂行中だ。Crew Dragon Demo-2による有人宇宙飛行を完了する準備を整えている。Crew Dragonは、一般人の宇宙飛行を可能にするよう設計された宇宙船だ。今回のミッションはCrew Dragonが商用宇宙飛行に適格であると認定するもので、SpaceXとNASAの協力の成果の集大成となる。

NASAの2名の宇宙飛行士は数時間にわたって高度を下げ、フロリダ半島東側、アラバマ州ペンサコラ沖に着水する。

Behnken(ベンケン)氏、Hurley(ハーリー)氏の両宇宙飛行士は米国東部時間8月1日午後7時30分(日本時間8月1日午後9時30分)にすでに国際宇宙ステーション(ISS)を離脱しており、以後の飛行はCrew Dragonのシステムが自動操縦となる。SpaceXは、Crew Dragonの打ち上げと帰還飛行を完全に自動化するようデザインされているのだ。前回の無人無人宇宙飛行ではこれに成功している。

Demo-2ミッションは ベンケン氏とハーリー氏をメキシコ湾のペンサコラ沖に米国東部標準時8月2日午後2時48分(日本時間8月3日午前43時48分)着水させること完了する。ここにはSpaceXの回収チームが待ち受け、回収船に収容する。Crew Dragonは 5月30日にEndeavourの飛行を成功させているが、今回は宇宙飛行の歴史上最初の商用宇宙飛行の成功となる。

Dragonカプセルは大気圏を降下し、まず小型のパラシュートを使って姿勢を安定させ、さらにメインパラシュートを展開して時速24km程度に減速する。ISSを離脱してから着水までに非常に長い時間が必要な理由は、ISSをスタートしたきは時速2万8000km程度で飛行しており、非常に大きな減速の必要があるためだ。

NASAとSpaceXは回収の模様をペンサコラ沖とカリフォルニア州ホーソーンのミッションコントロールの双方からライブで中継している。新しい情報が確認でき次第、記事をアップデートする。

【Japan編集部追記】ペンサコラ沖の洋上回収に成功。両宇宙飛行士に異常はなく、カプセルは回収船のU型クレーンによって船上引き上げられハッチが開かれるのを待っている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceX Crew Dragonが国際宇宙ステーションから無事離脱、地球への帰還の途に就く

NASAの宇宙飛行士であるBob Behnken(ボブ・ベーンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏は、地球への帰還の最初の重要なミッションとなる国際宇宙ステーション(ISS)からのドッキング解除に成功した。このあと彼らは、宇宙から大気圏を通って地球に戻ってくるコースを下降し、SpaceXCrew Dragon(クルー・ドラゴン)宇宙船のパラシュートを広げ、機体回収のために大西洋に落下する準備をしながら速度を落として進むことになる。

ドッキング解除と沿岸作業およびスプラッシュダウン(宇宙船をパラシュートで水域に着陸させる方法)の作業は、SpaceXCrew Dragonのために設計したシステムを利用してすべて自動制御される。これにはISSから離脱したカプセルの移動と大気圏へ突入する際の噴射も含む。大気圏に再突入する間、Crew Dragonはとてつもないストレスを受けるため、二人の宇宙飛行士の安全を確保しながら降下角度を調整しつつ、パラシュートを安全に展開できる地点までコントロールするのだ。

機体回収作業には何時間もかかる。SpaceXとNASAは、米国東部標準時(EDT)の8月2日午後2時42分(日本時間8月3日午前3時42分)ごろに、カプセルは最終的なスプラッシュダウンになると予想している。

今回は、NASAとの商用クループログラムにおけるSpaceXのDemo-2ミッションの最終段階。NASAが宇宙飛行士を宇宙ステーションと地球を往復させる通常運用ミッションのためにCrew Dragonを認証するために必要なプログラムだ。ベーンケン氏とハーリー氏は、5月30日にSpaceXが製造した民間宇宙船に搭乗した初の宇宙飛行士で、歴史的なミッションの第1部で打ち上げに成功し、それから数カ月間は宇宙ステーションで通常のクルーミッションに従事してきた。

Crew Dragonは、Demo-2を終了するためにフロリダ沖に着水する。SpaceXの地上クルーは、その時点で宇宙飛行士を回収したあと陸地を目指す。すべてが計画どおりに進めば、前述したようにSpaceXは正式に宇宙飛行士の定期飛行を開始する準備が整う。

今後の動きについては最新情報が入り次第、記事をアップデートする。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

アマゾンのインターネット衛星コンステレーションKuiperがFCCの承認を獲得、1兆円超の投資を発表

Amazon(アマゾン)は、これまで計画していた3236基のインターネット用衛星コンステレーションの打ち上げに対する米国連邦通信委員会(FCC)の承認を得た(Amazonリリース)。その衛星群はアマゾンのProject Kuiperの柱であり、それまで高速インターネット接続を得られなかった米国の世帯に高速低遅延のブロードバンドインターネットサービスを人工衛星から提供しようとするものだ。

当局からの重要な承認と並行してアマゾンは、Kuiperに100億ドル(約1兆500億円)あまりを投じると発表した。その費用は衛星の構築や試験ばかりでなく、顧客が実際に接続を利用できるために必要な地上局ネットワークのインフラストラクチャの構築も含む米国に雇用を生み出すものだ。

アマゾンのKuiperの計画には、消費者直通のサービスだけでなく、キャリアのための中継回線(バックホール)のネットワークサービスも含まれる。これによりキャリアは、高速のLTEおよび5Gワイヤレス接続を、対応した地上局がない圏域の顧客にも提供できる。アマゾンによると、これは米国だけでなく全世界に提供される。つまりKuiperのネットワークは最初は米国市場だけのものだが、その後グローバルに拡張される計画になっているのだ。

実際のところ、アマゾンはSpaceXの後を追う形になっている。後者はすでにそのStarlinkネットワークのために衛星を打ち上げており、2020年の夏にはベータテストが行えるようになるという。しかしJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が率いるeコマースの巨人は、ワシントン州レドモンドにKuiperの開発専用の新たなR&D施設をオープンさせること。そして同じくベゾス氏の宇宙への打ち上げ企業であるBlue Originもそのパートナーであることから、この強力でパートナーシップによりKuiper用衛星の打ち上げサービスは比較的早く準備が整うかもしれない。

低地球軌道衛星と呼ばれるこの新興市場において、勝者は1人ではない。遅延と速度と接続の質に関してこれらのネットワークがその約束を十分に守れるのであれば、複数のプロバイダーが文字通り地球規模で十分に競争できるだろう。アマゾンによる100億ドルの投資も、その実現することに賭ける理由の1つだ。大きな衛星コンステレーションの打ち上げには、その前段階のインフラの費用も膨大であるため、それだけの資金を確実に用意できる競合他社はそれほど多くはない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXのStarship SN5がエンジンテストに成功、高度150mの短距離飛行テストに移行

SpaceX(スペースX)の創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、同社の宇宙船Starship(スターシップ)の6番目の試験用プロトタイプを使った極めて重要なRaptor(ラプター)エンジンの地上燃焼試験が見事に成功した。SN5と呼ばれるこのプロトタイプは今後高度150mの短距離飛行テストに移行する。SpaceXの開発計画を通じて製造された試験用宇宙船の中で、最も遠くまで飛行するものとなる。

SpaceXは、最初の実証試験用の小型版Starshipを製造したのに続き、去年からStarshipの試験用プロトタイプの製造とテストを繰り返してきた。プロトタイプはSNという名称で表され、その後に製造順に番号が付く。この小型版は実際にはStarshipの基礎部分だけで、短距離飛行と着陸の実証試験を行うためのRaptorエンジンが1基だけ搭載されていた。

以来SpaceXは、数々の飛行テストのための実物大の実証試験用プロトタイプを複数製造してきたが、当初はすぐにでも高高度飛行テストを行う予定だった。これまでのプロトタイプはMK1とMK2として知られている。MK1は、タンクの加圧テストの最中に爆発。MK2は、同社がMK3(SN2)にフォーカスを移したことで破棄された。なおMK2はSN1と改名され、ここから新しい命名規則が始まっている。開発されたプロトタイプは製造と試験が急がれたのだが、SN3とSN4はテスト中に壊滅的な失敗に見舞われた。

だがSpaceXは、ここまでにSN5のエンジン燃焼テストを成功させ、実物大試験機による低高度の「ホップ」飛試験に進めるようになった。

最終的にSpaceXは、Falcon 9(ファルコン9)やFalcon Heavy(ファルコン・ヘビー)を含む同社のすべてのロケットをStarshipに置き換える計画で、将来の火星の有人基地建設建設にはStarshipにSuper Heavy(スーパー・ヘビー)ブースターを装着して対応させることにしている。

その壮大なゴールに到達するまでには、まだまだ多くのテストを繰り返して改善を重ねる必要があるのは明らかだが、マスク氏とSpaceXは一般大衆の目に見えるかたちで大急ぎでテストと改良を繰り返すことに力を入れているようだ。

宇宙船開発は十分にテストを重ねるのが定番となっているが、それをオープンに行うということ、そして実際の飛行テストに使用する宇宙船の製造を急ぎ、その結果を新しい(そして改善が期待される)バージョンの製造に生かすという考え方は斬新だ。
画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:金井哲夫)

ロケット打ち上げスタートアップAstraが8月2日以降に初軌道飛行テストを実施、SpaceXなどより低コスト

米国拠点のロケット打ち上げスタートアップであるAstra(アストラ)は、初の軌道飛行テストの準備を進めている。天候に応じて、今週末か来週末にも打ち上げを実施する。同社は、アラスカ州コディアクから「Rocket 3.1」と呼ばれるロケットを打ち上げる。厳密に言えば軌道飛行テストに分類されるが、米国時間7月30日に開かれた記者会見では「最初の3回の打ち上げが、どれも正しく軌道に載ると信じているわけではない」とジャーナリストに対して早々に釘を刺していた。

「ホールインワンを狙っているわけではありません」とCEOのChris Kemp(クリス・ケンプ)氏は言う。「これはパー3のコースです。3回の打ち上げを行った後に、適切に軌道飛行が行えると確証を持てるだけの経験を積もうと考えているのです。私たちにとってそれは、予定どおりに第1段のエンジンが燃焼し、第2段が正常に分離されることを意味します。そこで習得したあらゆることを、上に積み上げてゆきます。私たちは、第2段が点火すれば満足です。そして第2段が、次の打ち上げをもっとうまくやるための何かを教えてくれたらそれで十分なのです」。

Astraのロケットの建造と打ち上げに対する考え方は競合他社とは異なっている。このスタートアップは創業からまだ3年しか経っていない。同社は、オークランドにほど近いカリフォルニア州アラマダでロケットを建造している。Rocket 3.1は、高さおよそ40フィート(約12m)で、小さなペイロードを打ち上げることができる。現在、数多くの企業が地球の低軌道で運用する衛星コンステレーションを打ち上げているが、それを構成する小型衛星1基が搭載できる程度だ。ちなみにSpaceXのStarlink計画では、一度に60個の衛星を載せて打ち上げている)。

結局は受賞者を出さずに終了したDARPA(米国防高等研究計画局)の打ち上げコンテストに初めて挑戦する前にケンプ氏が私に話した(未訳記事)ところによると、低コストで大量にロケットを作り、SpaceX(スペースX)やRocket Lab(ロケット・ラボ)などの新進宇宙企業よりも、失敗を許容するマージンを大きく取るのだと強調していた。

「最初の1回で成功させるために何年間も費やすのではなく、我々は軌道への挑戦を何度も繰り返します」とケンプ氏は、来週の打ち上げを前にした7月30日の記者会見で話していた。

Rocket 3.0型では、最初の計画から何度もやり直すこの方法で、同社は異常事態によりロケットを丸ごと失うという事故に見舞われた(未訳記事)。同社はその後、設計を見直して失敗の原因になったものを含めいくつもの問題点を解決した。今回の打ち上げは、もともと3月末に予定されていたものだが、新型コロナウイルスの影響で延期されていた。だがAstraは、オフィスに従業員を集めて仕事を続けることができる数少ない企業のひとつに国から指定されている。なぜならその事業が、国の安全保障にとって重要なものだからだ。

これから行われる3回の打ち上げテストでは、ペイロード(積載物)は搭載されない。理由のひとつとして、少なくとも最初のロケットは完全に失われることを想定しているという点がある。しかしAstraのロケットは、その経済性のために多少の失敗は許容できる。1回の打ち上げ費用は、小型衛星を打ち上げたいときに候補に挙げられるSpaceXやRocket Labなどの乗り合い型ミッションと比較しても、ずっと安い。

最初のAstraのテストの打ち上げ計画は、米国時間8月2日から8月7日の間の、米国太平洋夏柑午後7時から午後9時(日本時間8月3〜8日の間の午前11時)の間に設定されている。いまのところ、現地の8月2日の天候はあまり芳しくない。しかし同社によれば、天候は目まぐるしく変化するため、注意深く観察し、柔軟に対応するとのことだ。

画像クレジット:Astra

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(翻訳:金井哲夫)

NASAが火星探査車搭載ロケットの打ち上げに成功、古代微生物の痕跡を探す旅へ

NASA(米航空宇宙局)は史上最も重要な科学ミッションの一つとされるMars 2020ミッションのスタートを切り、火星探査車(ローバー)であるPerserverance(パーセヴェランス)を載せたロケットを打ち上げた。この探査車はロボッティック探査車 Curiosity(キュリオシティー)の後継であり、火星で古代微生物の痕跡を発見するために作られたセンサーを装備している。

Mars 2020は米国東部夏時間7月29日午前7時50分(日本時間7月30日午後8時50分)に、フロリダ州ケープ・カナベラルを出発した。PerseveranceはUnited Launch Alliance(ULA)のAtlas Vロケットに搭載され、ロケットは順調に離昇したあと第2ステージを切り離し、火星への旅に向けて待機するためのパーキング軌道に宇宙船を送り込む。火星には2021年2月に到着する予定だ。

火星に着いたら、2021年2月18日に着陸船がPerseveranceを火星表面に運び、Jezero Crater(ジェゼロ・クレーター)と呼ばれる着陸地点に向かう。そこは、かつて火星が現在のような乾燥してほこりまみれで低温な環境と異なるはるか昔には湖だった場所だ。ここが選ばれた理由は、存在するかもしれない微生物の何らかの痕跡を見つける最良の場所であり、火星で最も保存状態のいい三角州沈殿物が見られるからだ。

NASAの科学者らはPerseveranceに搭載した機器を使って火星の生命の存在を確認できるとは期待していない。しかし、かつて生命が存在するために必要だった環境や物質を示す強い可能性を発見できると考えている。究極の証拠は、2026年に予定されている待望の火星サンプル回収ミッションで見つかるかもしれない。このためにNASAは、Perseveranceが収集したサンプルを載せて火星表面から離陸することが可能な帰還用ロケットを火星に送り込む。ロケットはその後、欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げ予定の探査車とも出会ったあと、科学者たちの待つ地球への帰路につく。

Perseveranceには、動力源である原子力電池、環境センサー、カメラ、その他何らかの古代生命の保存された証拠を収集するための機器群に加え、マイクロホンを搭載している。別の世界の表面にマイクロホンが持ち込まれるのはこれが初めてであり、つまり、別の世界の表面でどんな音がするのかを聞けることを意味しており、これはこれまでになかったことだ。

Perseveranceには、Ingenuity(インジェヌイティー)と呼ばれるヘリコプターも載せられている。史上初めて自力で飛行する小型ドローンで、冷たい火星の夜を生き延びるために自身を温めるように作られている。30日間に5回の飛行を予定しており、カラー写真も撮影する。見晴らしのよい空中から撮る初めての写真だ。

歴史的Mars 2020ミッションは大きな第一歩を踏み出した。注目すべき次の大きな節目は約2週間後に宇宙船がエンジンに点火して地球軌道を離れ、火星への長い旅を始める時だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

日本の宇宙開発スタートアップispaceが月着陸船「HAKUTO-R」の最終デザイン公開、2022年の初ミッションに向け

日本の宇宙開発スタートアップであるispaceが、月着陸船「HAKUTO-R」の最終デザインを公開した。この着陸船は、以前は2021年10月の飛行が予定されていたが、この度アップデートされた計画に従って2022年に初めて月に着陸する予定だ。ispaceはNASAのCommercial Lunar Payload Services(CLPS)プログラムに選定されたDraperに率いられるチームの一員で、 2024年にNASAが計画する月有人探査ミッションに先立って、さまざまなペイロードを月に輸送する。

ランダー(着陸機)は人より少しだけ高く、全高は約7フィート半(約2.3m)で、基本的には幅も長さも同じ。4K解像度のカラーカメラが搭載されており、ミッション全体の映像を中継できるほか、推進剤を保持する燃料タンク、発電用ソーラーパネル、着陸装置、スラスタ、最大66ポンド(約30kg)の実験装置やその他の機材を保持するペイロード収納部などがある。

前述したように、HAKUTO-Rの初の月面着陸機ミッションのタイミングの調整も発表されている。1回目は2022年に行われる予定で、SpaceXのFalcon 9ロケットを使用し、科学実験機器を含む商業ペイロードを搭載する。第2回目は2023年に予定されており、月面を調査する小型ローバーを搭載し、月面での長期的な商業投資の可能性の道を開くことを目指す。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAが火星探査機「Perseverance」の打ち上げに成功

NASAは米国時間7月30日の朝、最新のローバー(探査車)を火星に向けて打ち上げた。打ち上げは米国東部夏時間7月29日午前7時50分(日本時間7月30日午後8時50分)に設定されており、放送は米国東部夏時間7月29日午前7時00分(日本時間7月30日午後8時)だった。このミッションでは、ULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のAtlas Vロケットを打ち上げ、2021年2月に火星に到着し数カ月間におよぶ火星探査ミッションとなる「Perseverance」を実施する。

重量2260ポンド(約1トン) のこの探査機には、火星で過去に発見された微小な有機生命体の痕跡を探すためのさまざまなセンサーが搭載されているほか、火星の大気や地質を調査することもできる。またヘリコプター型ドローン「Ingenuity」も搭載しており、火星の大気中を飛行する初の装置となることを目指している。

Perseveranceはいくつかの点で、以前のローバーから大きくアップグレードされている。例えば、1日あたりの自律的な移動距離でこれまでのどの探査車よりもより多くの場所をカバーでき、またこれまで以上に多くの科学調査が実施できる。車体には19個のカメラを搭載しており、周囲の様子を詳細かつ高品質に地球に向けて映し出すことができる。このローバーはまた、将来の有人火星探査(および長期の有人月探査)を手助けするように設計されており、火星の大気中に存在する二酸化炭素から酸素を生成する装置であるMOXIEのような実験を搭載している。これは火星において自立型電源として機能し、将来開発される洗濯機サイズのバージョンのための実質的な準備となる。

またPerseveranceは、収集したサンプルの一部を再利用するための準備をしている点でもユニークだ。最終的にはNASAと欧州宇宙機関(ESA)の協力を得て、将来の探査機と回収ランダーを利用してPerseveranceが回収容器に残した火星の土のサンプルを回収し、地球に持ち帰って直接研究する計画だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

1日に何度も準軌道を往復可能なスペースプレーン「Mk II Aurora」をDawn Aerospaceが発表

我々が地上でさまざまな移動手段を利用しているように、宇宙経済の可能性はさまざまなタイプの乗り物や打ち上げシステムを可能にする。米国時間7月28日にDawn Aerospace(ドーン・エアロスペース)は小型車よりも小さく、1日に何度も準軌道を往復可能なスペースプレーンのDawn Mk-II Auroraを発表した。

Mk-IIはその名前が示すように、Dawnによって作られたコンセプトの第2弾だ。Mk-Iは実際に製造され2018年5月に飛行し、通常の滑走路から水平に離陸した後、飛行中にロケットを発射する能力を実証した。Mk-IIの主要な能力の1つも通常の滑走路で離着陸する能力であり、特殊で高価な垂直発射施設は必要としない。

Dawn Aerospaceはオランダのデルフトにてデルフト工科大学と提携して設立され、またニュージーランドでも運営されている。ニュージーランドは商業打ち上げサービスで最も成功を収めている新興企業の1つであるRocket Lab(ロケット・ラボ)の本拠地として、ニュースペース業界でさらに高い評価を得ている。同社のミッションはすべて持続可能な宇宙経済を中心に構築されており、CubeSat推進システム事業でも成功している。

Mk-II Auroraは持続可能な商業宇宙飛行の目標に向けて、異なる方法でアプローチしており、3Uのペイロードを搭載し60マイル(約97km)以上の飛行が可能だ。リアルタイムのダウンリンク通信機能を備え、1回のフライトにつき約5万ドル(約530万円)の費用で、1日に何度も往復できる。

さらにDawnは長さ60フィート(約18メートル)で、110~220ポンド(約50〜100kg)のペイロードを軌道上まで運ぶことができるスペースプレーン「Mk-III」の計画も進められている。こちらも毎日複数回の飛行が可能で、世界中のどこにでもある通常の滑走路から離着陸できる能力を考えれば、小型衛星打ち上げ業界の常識を覆すものとなるだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Virgin Galacticの眺めを重視した観光宇宙船の内装が初公開

有人宇宙飛行の商用サービス開始に向けた準備が進む中、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)はVSS Unity(ユニティー)宇宙船の客室の最終デザインを初めて公開した。同社は、本日開かれたバーチャルイベントでその内部を披露し、VRを使って私も含む報道関係者を特別に案内してくれた。客室は、1回数万ドル(数百万円)という料金に見合う乗客のエクスペリエンスを第一に考えて作られている。

Virgin GalacticのVSS Unityは、最大6人の乗客で宇宙の準軌道を飛行するという、前代未聞の旅を提供する。そこでは無重力を体験でき、地球の丸さや大気圏外の宇宙の暗さを観察できる。客室は、料金を支払って搭乗した民間宇宙飛行士たちの飛行中の安全性、居住性、自由が最大限に確保できるよう設計されている。Unityは母機で上空に運ばれ、切り離された後にロケット噴射によって急加速される。宇宙空間では自由浮遊飛行となり、最後に大気圏を脱出したときとは反対の方向に高い加速度がかかる形で地上に帰還する。

快適な飛行を可能にするために、Virgin GalacticはUNDER ARMOUR(アンダー・アーマー)と共同で、カーボンファイバーとアルミにメタリックなローズゴールドのアクセントを織り込んだ三次元の柔らかい素材とファブリックを組み合わせるシートを開発した(UNDER ARMOURは乗客が着る専用宇宙服も作っている)。飛行の途中で乗客は地上の3倍の重力を体験することになるため、できる限り安全に快適に過ごせるように考えられている。このシートは、それぞれの乗客の体型に合わせて個別に製作される。その際、例えばポニーテールにしている人ために頭がフィットするようにヘッドレストの中央に穴を設けるなど、大変に細かい部分まで配慮される。

シートに組み込まれた5点式シートベルトは、1つのボタンを押すだけで簡単に外すことができ、無重力状態になる自由浮遊飛行の際に危険にならないよう、ベルトはシートに内蔵された固定具の中に自動的に引き込まれる。地球に帰還するときには再びベルトを装着するが、そのときは簡単に場所がわかるようになっている。

すべてのシートは、無重力状態の間は手で掴まって体を支えるハンドグリップとしても活躍する。もっとも、客室内のあらゆるものがハンドグリップの役割を果たしている。どのシートも壁から突き出た取り付け具で固定され、下に空間が作られているのもそのためだ。これによりUnityが地球の大気圏を抜け、上下という概念がなくなったときに探索の幅が広がるわけだ。

同じ理由で、客室全体が柔らかい素材で作られている。また窓は2名の乗員用の3つを含めて全部で17箇所あり、乗客用の窓のそれぞれに柔らかい素材で作られたリング状の「ヘイロー」照明とハンドグリップそしてカメラが内蔵されている。この他にもVirginは、客室のいたるところにカメラを設置した。これには飛行中に条件が変化しても高画質の写真撮影ができるよう、映像の専門家が調整を施す。乗客が自分で撮影する手間を省き、それぞれの体験を最良の形で確実に記録することが狙いだ。Virginによれば、画像は着陸とほぼ同時に乗客に送られるため、宇宙旅行者たちは即座にSNSで写真をシェアできるという。

すべての座席が窓際席で、横と上に2つずつ窓が配置されていて、息を呑むような眺めが楽しめる。また、客室とロケットエンジンとを仕切る後方の遮蔽壁全体を大きな鏡が覆っている。これは、乗客が無重力での自分のおかしな姿を見て楽しむためのものだ。

シートは、飛行中の段階に応じて方向や角度が変わる。ロケットを噴射して3.5Gで加速中は背もたれが起きる。大気圏の縁をかすめて再突入のために3Gで減速するときは、背もたれが倒れる。各シートには情報ディスプレイがあり飛行中の状況を確認できるようになっているが、操縦士と副操縦士は完全に乗客と遮断されているわけではないため、理論的にはその場で乗客が質問することも可能だ。

Virgin Galacticでは、定期航空便が先駆者となって採り入れた飛行中の雰囲気を演出する照明方法を、宇宙用に作り直して採用している。客室のよく考えられた位置に巧妙に隠された照明器具から発せられる光が、飛行の各段階に応じて動的に変化する。客室の内装の詳細を表した下の写真を見て欲しい。3名搭乗の場合の座席の配置を示した写真では、片側に実験器具が並べられている(実験器具の搭載は、Virgin Galacticがもう1つの収益源として考えているものだ)。

  1. Virgin Galactic宇宙船客室のペイロード配置

    Virgin Galactic宇宙船客室のペイロード配置。
  2. Virgin Galactic宇宙船の宇宙でのシートの状態

    Virgin Galactic宇宙船の宇宙でのシートの状態。
  3. Virgin Galactic宇宙船シートの細部

    Virgin Galactic宇宙船シートの細部。
  4. Virgin Galactic宇宙船の宇宙での客室内部

    Virgin Galactic宇宙船の宇宙での客室内部。
  5. Virgin Galactic宇宙船客室の内装

    Virgin Galactic宇宙船客室の内装。

実際に料金を取って乗客を飛行させるまでには、まだ最後の準備が残されてはいるが、VSS Unityの内装が決定したことでゴールにぐっと近づいた。これはまったくユニークな提案であるため、実際に乗って確かめた人の意見なしに評価は下せない。しかし明らかにいえるのは、Virgin Galacticはこの宇宙旅行の料金が支払えるすべての人を満足させるために数多くの見解、考察、専門知識をこの宇宙船の内装デザインに注ぎ込んでいるということだ。

画像クレジット:Virgin Galactic

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(翻訳:金井哲夫)

スペースXがDragonの未来的な宇宙服の開発過程を公開

SpaceX(スペースX)は有人宇宙飛行に進出する際、独自の宇宙服を社内で開発すると決めた。これはNASAを含む多くの宇宙服のプロジェクトとはまったく異なるアプローチだ。一般的には長年の経験を持つ外部の専門業者に仕事を依頼するが、スペースXは新たに公開した動画の中で、なぜそのようなプロジェクトに自ら取り組んだのか、その独自性と現代的なデザインがどのようにして生まれたのか、そしてユニークでモダンな外観の宇宙服が、美的にも機能的にもどのようにDragon宇宙船を完璧に補完するようにデザインされているのかを紹介している。

スペースXの宇宙服・クルー機器マネージャーのChris Trigg(クリス・トリッグ)氏と、リード宇宙服スペシャリストのMaria Sundeen(マリア・サンディーン)氏が、同社の宇宙服のコンセプト、デザイン、製造プロセスを説明している。なお宇宙飛行士は今週中に、復路にてこの宇宙服を装着する予定だ。

トリッグ氏によると、このスーツはドラゴン宇宙船のクルーシートを含むシステムの一部であり、プラグを差し込めば必要なものすべてが自動的に提供するように設計されている。彼はまた、ヘルメットのデザインの背景にあるアイデアと、宇宙船のコントロールサーフェスで作業するためのタッチスクリーンとの互換性と同時に、加圧と保護を提供する手袋を作る必要性についても説明している。

前述したように、天候などに問題がなければDragon宇宙船は8月1日に国際宇宙ステーション(ISS)から帰還し、8月2日には大西洋で宇宙飛行士を乗せて着水する予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAが第2次Crew Dragonミッションの宇宙飛行士を発表、JAXAの星出彰彦さんも参加

NASAとSpaceXは、同社のCrew Dragon宇宙船の最後のデモミッションを今週末に完了させる予定で、すでに2021年春に予定されているCrew Dragonの2番目の運用フライトであるCrew-2に向けて準備を進めている。その打ち上げには2人のNASAの宇宙飛行士と宇宙航空研究開発機構(JAXA)からの1人、欧州宇宙機関(ESA)からの1人の合計4人が搭乗することが明かされた(NASAリリース)。

NASAのMegan McCarthur(メーガン・マッカーサー)宇宙飛行士とShane Kimbrough(シェーン・キンブロー)宇宙飛行士は、JAXAの星出彰彦宇宙飛行士とESAのThomas Pesquet(トーマス・ペスケ)宇宙飛行士とともに、Demo-2が終了した後の9月下旬に予定されているCrew-1の次のミッションに参加する。これはISSに長期的に人員を配置するための通常の運用ミッションにあたり、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在(6カ月間)し、ロシアのソユーズ宇宙船を利用する3人の宇宙飛行士と軌道上の研究プラットフォームを共有することになる。

つまり、同時に7人の乗組員がISSを共有することになり、通常の6人よりも多くなる。NASAによると7人体制が新たな標準になる予定で、追加されたクルーは「宇宙で実施できる科学実験の量を効果的に倍増させる」ことを意味する。

ISSのクルーが日常的なメンテナンスや作業に多くの時間を費やしていることを考えて欲しい。7人目の乗組員が日常的な作業を手伝うことで、ISSの良好な動作を維持するための分割時間を削減につながり、実験や研究のために多くの時間を割けるようになる。

このクルーメンバーは全員、以前に宇宙に滞在したことがあるが、マッカーサー飛行士にとっては初めてのISSでのミッションとなる。彼女が最後に宇宙に行ったのは2009年にスペースシャトルに搭乗し、ハッブル宇宙望遠鏡の最後のサービスミッションに参加したときだ。マッカーサー飛行士は仲間の宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベーンケン)飛行士の妻でもあり、ベーンケン飛行士はCrew Dragonで打ち上げられた史上初の宇宙飛行士として、ISSに滞在している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

米宇宙軍が中央に北極星が輝く正式ロゴと標語を発表、配備された軍用馬も紹介

2020年に入っていろいろと揶揄されもしたが、実際のところ非常に重要な新しい軍種である米国宇宙軍が発足した(未訳記事)。その宇宙軍がこのほど「スタートレック」を連想させるシャープなイメージの公式ロゴを発表、またロゴに伴うモットーも発表している。ラテン語で「Semper Supra(センパースープラ)」つまり「常に上に」といった意味だ。

実はロゴの候補画像は2020年1月に明らかになっていた。画像を見て多くの人は米国が宇宙艦隊を作るのかと思ったようだがそうではない。宇宙軍の主要な任務は宇宙空間の監視とモニターだが、新しい公式ロゴは組織の目的をよく表現している。ロゴは宇宙軍のブランドイメージとしてプレスリリースやリクルート活動にも使用される。

宇宙軍はツイートでロゴの各要素を説明している。特に難解なものではないが、クールだからというだけなく、デザインにはそれぞれちゃんと意味があるという。

画像クレジット:米国宇宙軍

周囲の銀色のラインが天空を指す全体の鋭いデルタ形は、宇宙からのあらゆる脅威から米国を防衛、保護することを表現しており、中央の星は不動の北極星だという。

星の周囲となる真ん中の黒い部分は「深宇宙の広大な闇」を表しており「恐怖を感じる人もいるが、我々はむしろ新しい挑戦として立ち向かう」とのことだ。

北極星は、北の空にあって人々を導くという意味がある。それがロゴの中心に置かれている理由だ。

星の周囲の4つの三角形は、宇宙軍をサポートする既存の4軍である空軍、陸軍、海軍、海兵隊を表現している。上方に向かって鋭く尖っているのは。宇宙に向かってロケットを発射するイメージなのだろう。

「常に上に」を意味する「センパースープラ」という公式モットーだが、宇宙軍によって「守られている」と感じるか、「脅威が増大した」と考えるか、どちらの側にいるかによって印象は逆になる。モットーは宇宙における米国の存在を「確立、維持、確保」することを表現している。もちろん地上の兵士にとっては、宇宙軍が常に頭上にいて戦術的支援を提供することは心強い。スパイ衛星や軌道レーザー兵器を考えるものもいるかもしれない。

宇宙軍は組織を確立し、新規採用を行う必要があるため今後数年間、このロゴとモットーをあちこちで見かけることになるだろう。

もう1つ重要なことだが、宇宙軍には軍用馬もいる!

宇宙からの脅威から米国を守ることにはさまざまな側面があります。例えば軍用馬保存育成プログラムを実施する@30thSpaceWingで軍用馬が訓練されています。「ゴースト」は5歳の@BLMNationalのマスタングです。pic.twitter.com/r1dAd0plsc

新しいロゴとモットーを得た宇宙軍と美しい軍用馬にお祝いををいっておこう。

画像クレジット:U.S. Space Force

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAがサッカー場サイズの高高度気球で光の波長を観測する成層圏望遠鏡を浮かべ誕生まもない星を研究

NASAの最新ミッションは、実際には宇宙に到達しない。しかしサッカースタジアムサイズの高高度気球で構成される巨大な観測船と、地球の大気に遮られた星から発せられる光の波長を観測できる新たに開発された特別な成層圏望遠鏡によって、宇宙へと限りなく近づく。

このミッションは「Astrophysics Stratospheric Telescope for High Spectral Resolution Observations at Submillimeter-wavelengths(サブミリ波の高スペクトル分解能観測のための天体物理学成層圏望遠鏡)」と名づけられているが、省略してASTHROSと呼ばれている。現時点では2023年12月に南極から離陸するように設定されており、そのメインペイロードは科学者が星形成活動を観察してきた天の川の2つの領域を含む、4つの主要なターゲットを補足する8.4フィート(約2.6メートル)の望遠鏡だ。

ASTHROSの望遠鏡はこの方法で輸送される最大のもので、地上から科学者がその方向を正確に設定でき、また完全に膨らませたときには約400フィート(約120メートル)幅となるバルーンによって空中に保持される。そのミッションには、高高度成層圏の気流に沿って3〜4週間の間に、南極上空を2〜3周するものも含まれる。その後、望遠鏡はバルーンから分離しパラシュートで減速して地球に帰還するが、将来的には回収され再び飛行させる可能性もある。

気球を地球の大気圏の端まで浮かべるというのは、ロケットで人工衛星を打ち上げるよりも簡単に聞こえるかもしれないが、NASAのジェット推進研究所のエンジニアであるJose Siles(ホセ・サイレス)氏によれば、気球観測ミッションは宇宙観測ミッションよりも実際にはリスクが高いとNASAのリリースで述べている。しかし同時に、ロケットでの衛星打ち上げに比べて、コストを抑えて大きな成果を得られる可能性もある。

ASTRHOSの最終目標は、誕生したばかりの星の周囲にある領域が、その星の発達を妨げたり星の誕生を促したりすることができるのかをより理解するための「ガスの密度、速度、運動に関する最初の詳細な3Dマップ」を作ることだ。この研究は銀河の形成と進化に関する既存のシミュレーションを洗練させるのに役立つだろうと、NASAは述べている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter