中国初の月への有人任務に備えて、4人のボランティアが密閉された実験室で200日間過ごす

中国トップの航空学大学の4人のボランティアが、同国最初の有人探査隊を月に送る準備を整えるため、200日間密閉された実験室内で外部との交流なしで暮らすことになった。人民日報(中国共産党発行の公式新聞の1つ)によれば、同グループはこの任務を、北京航空航天大学(略称:北航大学=Beihang University)内にある160平方メートルの研究室で日曜日に開始した。

中国は米国とロシアに続き、2013年12月に月面への軟着陸を成功させた。現在政府は、今後15〜20年以内に月面に宇宙飛行士を送り込むことを目標として 、有人任務を遂行することができる宇宙船の開発に取り組んでいる

最近承認された米陸軍予算には宇宙戦闘専任の新たな部隊の創設も含まれているが、米国と中国がすぐに宇宙競争を始めるという意味ではない。米空軍は、軍隊の現在の部隊からリソースを奪うと主張して、この提案を阻止しようとしている。

中国は月への熱望は他国との平和的協力の精神の下にあると主張しているが、NASAは安全保障上の懸念から、2011年以降中国側と協力することを議会によって禁止されている。しかし、以前NASA長官であったCharles Bolden元管理官は、有人ミッションを宇宙に送るプログラムのチャンスを米国が逃してしまうのを防ぐため、禁止は一時的なものに止まるべきだと述べた

北航大学の研究室であり、月の宮殿を意味する「月宮一號」(Yegong-1)は、生物生命維持支援システム(BLSS=bioregenerative life support system)の信頼性と、それがそれぞれの乗務員にどのようにどのように影響するかをテストするために5月10日に開始された1年に渡る実験の一部である。

「この種のものとしては世界最長のこの実験は、中長期に渡る宇宙飛行士の安全と生命を保証するために必要なテクノロジーの開発を助けるものです」と同大学は英語サイト上で述べている。なおすべてのボランティアは北航の大学院生たちだ。

月宮一號には、生活空間用と植物栽培用の2つのモジュールがある。言うまでもないが、人間の排泄物はバイオ発酵プロセスで処理される。現在のボランティアは、60日間の任務を終えた別のグループに続くものだ。そして現在のグループが去った後、ボランティアたちの第3陣がやって来て、さらに105日間を過ごす。これにより合計365日間の実験が完了する。

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(翻訳:Sako)

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SpaceX、2週間で3度目の衛星打ち上げに成功――大型静止衛星のためブースターは使い捨て

SpaceXのFalcon 9の打ち上げは今日(米国時間7/5)も成功した。ケネディー宇宙センターのLC-39A発射台から打ち上げられたFalcon 9は2週間で3基目となった。6月23日と6月25日のミッションも完全な成功を収めている。

今回のペイロード、Intelsat 35eはボーイングがIntelsatのために製作した大型の静止衛星でブロードバンド接続とビデオ配信のために高速のスループットを実現している。カリブ海、ヨーロッパとアフリカの一部がカバー予定地域となる。

SpaceXは当初、日曜に打ち上げを予定していたが軽微な技術的理由で中止された。【略】月曜の打ち上げもエンジン点火の10秒前に中止された。原因はロケットのセンサーの読み出し値がデータベースの設定値と異なっていたためだが、その後ロケットにはまったく不具合がなかったことが確認された。

今日の打ち上げではブースターの回収は行われなかった。 衛星が5.9トンと巨大であり、静止軌道への投入が必要なためFalcon 9の打ち上げ能力の最大限に近かったためだ。そのため着陸脚や姿勢制御用のグリッドフィンなどは装着されていない。

SpaceXはこの月曜日、Dragon補給船の回収に成功している。6月上旬に打ち上げられ、Dragonは国際宇宙ステーションに物資を補給した後、.太平上に無事着水した。

打ち上げから30分後にIntelsat 35e衛星は静止遷移軌道に投入され、Falcon 9は任務を完了した。SpaceXは一段と成功の記録を伸ばしつつある。

〔日本版〕打ち上げの模様はこちらで中継録画を見ることができる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Virgin Galactic、動力飛行テストを再開――2018年には商用宇宙旅行開始を目指す

Virgin Galacticが宇宙往還機の動力飛行のテストを再開する。2014年に副操縦士のMichael Alsburyが死亡した悲劇的事故以来SpaceShipTwoのの動力飛行は中断されていた。テストの再開はVirgin Galacticのファウンダー、リチャード・ブランソンがBloombergのインタビューの内容を共有したことで確認された。

現在実施中の滑空飛行の結果が集約された後は、3週間に1回のペースで動力飛行が行われる予定だ。テストは徐々に高度を上げ、今年11月か12月には宇宙との境界となる高度まで飛行するという。すべて順調に運べば、2018年半ばにブランソン自身が最初の乗客となって最初の宇宙飛行を行う。ブランソンは最終的にはこの機体で有料商用宇宙旅行を実現させようとしている。

2014年の事故以来、沈黙していたVirgin Galacticだが、今回初めて具体的な商用宇宙旅行計画が明らかにされた。ブランソンはBloombergに対し、計画の遅延とジェフ・ベゾスのBlue Originやイーロン・マスクのSpaceXなど民間宇宙企業の躍進にもかかわらず、「(ライバルがいくらあろうと)十分な数の宇宙旅行機を製作することはできない」と需要が旺盛であることを強調した。

Virgin Groupは現在Virgin Orbitとよばれる衛星打ち上げとロジスティクスを行う会社を所有している。同社は最近VSS Unityと呼ばれる機体の滑空実験を行い、成功させている。今後動力飛行の実験に移り、最終的にはこの機体から小型衛星の打ち上げを成功させたい考えた。

〔日本版〕Virgin Orbitの機体は専用のボーイング747、Gosmic Girlに背負われて成層圏に上がり、動力飛行して衛星を放出、軌道に乗せることが目的。SpaceShip IIは弾道軌道の有人商用宇宙飛行が目的で、双胴タイプのジェト機に吊り下げられ、上空で分離する。下は事故前にVirgin Galacticが公開したビデオ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、ロケットだけでなく補給線の再利用にも成功

SpaceXが新たな偉業をなし遂げた。補給船ドラゴンの再利用に初めて成功したのだ。今回用いたDragonは、前回もISSへの補給物資ならびに科学実験用機材などを運搬するミッションに利用されたものだ。

このDragonが最初に用いられたのは2014年9月のことだった。回収後にメンテナンスを行なって6月3日に再度打ち上げられたのだった。再打ち上げ後36時間ほどでISSとドッキングし、積載物を下ろすなどして、1ヶ月ほどの期間をISSにて過ごした。

Dragonは米国東部標準時で月曜日の午前中にISSを離れ、3度のエンジン燃焼を経て軌道を離脱した。軌道離脱後は数時間で、大気圏に再突入することとなった。再突入後はパラシュートを開いて、予定通り太平洋に着水した。時刻は東部標準時で午前8時14分のことだった。

宇宙船の再利用を狙うSpaceXとして、また新たな段階に達したといって良いのだろう。今回の成功で、宇宙補給線のコストを劇的に下げることが期待される。

なお、日曜日に予定されていたインテルサット35eの打ち上げは延期された。新たな打ち上げ予定は、東部標準時で火曜日の7時37分となっている。

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(翻訳:Maeda, H

Lockheed MartinがスタートアップTerran Orbitalに投資してナノサテライトのブームに乗るつもり

航空宇宙産業のリーダーLockheed Martinが、アメリカのナノサテライト企業Terran Orbitalに投資したことは、成長を続ける商用宇宙利用において小型衛星、とりわけ安価で軽量な人工衛星が、業界の新旧両勢力から重要な機会と見なされていることの、ひとつの例だ。

Lockheedはキャッシュと現物支給で今回の投資を行ったが、両社は過去に、DoDやNASAの仕事でパートナーしたことがある。Lockheed側の意図は、Lockheed Martin Venturesの常務取締役からの声明では、“敏速で応答性が良く、コスト効率の良い技術によるミッションとそれらの実証デモンストレーションへの関心が、弊社の顧客において昨今ますます増大しており、それに対応するため”、としている。

Boeingが開示した独自の計画では、同社の人工衛星製造ビジネスを再構成して、現在の大型衛星をはるかに下回るコストによるナノ衛星の生産に注力していく、となっている。そこは今、比較的低い起業コストで商用宇宙ビジネスへの参入をねらうスタートアップにとっての温床でもあり、Lockheedのようなレガシーの業界リーダーが今後の有力な商機とねらうのも、当然と言える。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

DARPAのXS-1宇宙往還機、ボーイングがプロトタイプの開発を受注

シアトルのボーイング本社ではシャンペンを抜いてお祝いしているに違いない。DARPA〔国防高等研究計画局〕のクールな宇宙往還機のプロトタイプの開発をボーイングが受注することに成功した。このプロジェクトを巡ってボーイング、ノースロップ・グラマン、Masten Space Systemsの3社が競争していた。

XS-1宇宙往還機は研究衛星、偵察衛星などを安価に低軌道に送り込めるようにするのが目的だ。最終的には一回の飛行コストを500万ドルに押さえ、年間最低10回飛行できるようにしたいという。

このプロジェクトはNASA,、空軍、民間企業のハイテクの総力を結集するものになる。軽量で超低温に耐える燃料タンク、マッハ10になる大気圏再突入時の高温に対応した強力な複合素材翼などの開発が必要だ。これにより1.3トンのペイロードを低軌道に乗せる。

こういうスーパー・ハイテク・プロジェクトの常としてデモビデオが制作されている。ただこういうビデオは2005年頃に中学生がありあわせの素材をつなぎ合わせたような出来栄えなのはどうしたわけだろうか。

DARPAのプログラム・マネージャー、Jess Sponableはプレスリリースで、「われわれはXS-1プロジェクのフェーズ1においてボーイングが達成した成果を歓迎している。新しく認可された予算により今後、フェーズ2、フェーズ3に進み、実機の組み立てと飛行を実現させたい」と述べた。

プロジェクトの第2段階は2019年まで続き、この間に設計を完了させ、推進システム(スペースシャトルのエンジンの改良版)のテストを実施する予定だ。その後2020年に10回程度のテスト飛行が予定されている。このテストの最後にはマッハ5以上の速度の飛行を10日で10回行うことになっている。.

XS-1についての最新情報はDARPAのサイトを参照のこと。.

〔日本版〕XS-1は無人機。ボーイング社は開発にあたってジェフ・ベゾスのBlue Originと協力しているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

イーロン・マスク、TEDでトンネル計画を語る――SpaceX、自動運転等の事業も

少なくとも3社のCEO、イーロン・マスクが先週金曜日にバンクーバーで開催されたTED 2017カンファレンスに登場した。上のビデオにその模様が収められている。マスクは注目の新事業、地下トンネルの掘削計画についてビジョンを語った。

マスクは地下トンネルの3Dネットワークによって現在の地上の交通渋滞が大幅に改善されるとしている。マスクはThe Boring Companyの事業計画についてこれまでになく詳しく語った。それによればこの事業を思いついたきっかけはロサンゼルスで交通渋滞に捕まって非常に腹立たしい思いをしたことだったという。

マスクはまたTeslaの将来計画についても語り、貨物運送のために電気トレーラーを開発していることを明かした。また2年のうちに自動運転の電気自動車を実用化すると述べた。マスクはまた火星植民計画についても語り、なぜ人類が地球外に進出することがマスク、またSpaceXにとって重要なのかを語った。

マスクは短いツイートでさえセンセーションを巻き起こす存在だ。マスクのアイディアの実現性に関してはさまざまな評価があり得る。しかしこれまでも新たな思考のきっかけを多数提供してきたTEDの舞台でマスクが将来を語るのを聞くのは実に刺激的な経験だ。

〔日本版〕対談の聞き手はTEDの代表者(オーナー)、キュレーターのクリス・アンダーソン。ビデオにはデフォールトで英語字幕が表示される。

下はマスクのトンネル計画を説明するビデオ。自動車は路上に設けられたエレベーターで地下トンネルに下り、スケートボード式台車に乗って高速移動できる。このトンネル・ネットワークについてはTechCrunch Japanでも詳しく解説している。マスクが最近購入したシールド掘削マシンについてはこちら

マスクの説明によれば、現在の道路トンネルが高価なのは内燃機関を用いて自走することを前提としているため。自動車を電気モーターを用いた台車に載せることで小型化が図ると同時に掘削テクノロジーを改良することでトンネル設置のコストを10分の1以下にすることが可能になるというのがマスクのビジョン。まずロサンゼルスの地下にトンネルを建設したいとしている。

マスクはゲリーというカタツムリをペットにしているが、ゲリーは現在のトンネル掘削機より14倍早く進むという。マスクはさまざまな改良によってトンネル掘削をカタツムリ以上の速度にするのが目標だという。

その後、電気自動車、太陽光発電について説明、最後にSpaceXの宇宙事業について語った。SpaceXは衛星打ち上げロケットのブースター(1段目)を繰り返し洋上の艀や地上基地に垂直着陸させ回収している。また回収したブースターの再利用にも成功している。下のビデオはNROL-76偵察衛星の打ち上げとブースター回収のもよう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceX、NROL-76の打ち上げに利用したロケットの地上回収に成功

NROL-76の打ち上げに利用したFalcon 9は、既報通りに無事回収された。Falcon 9は、打ち上げ後しばらくして第二段ロケットを切り離し、その後に予定通り地球に向けて下降した。

SpaceXがケープカナベラルのLZ-1にてロケットを回収するのはこれが4回目のことだ。この地における最初のロケット回収は18ヵ月前のことだった。地球に帰還する状況に応じて自在に着地地点を変更する海洋上のドローンによる回収に加え、地上でも安定的に回収することが可能となっているようだ。

回収したFalcon 9はテストを経て、再利用に向けた調整が行われることになっている。SpaceXとしては、究極的には回収後24時間で再利用できるようにしたい考えがあるのだとのこと。ちなみに、第一段ロケットの再利用自体については、今年の3月に成功している。そのロケットについても、回収を行なって再利用に備えているところだ。

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(翻訳:Maeda, H

Appleが元Googleの衛星部門の役員二名を雇用、目的はハードウェアのプロジェクトらしい

Bloombergによると、Appleはこのほど、Googleで衛星部門の役員だったJohn FenwickとMichael Trelaを雇用した。Googleは最近、同社の衛星画像事業(Fenwickが元いたSkyboxから買収)をPlanet Labsに売ったばかりで、衛星ネットワークのオペレーターであるよりも、画像の一利用者であることを選んだ。そのためFenwickら両人は、同じ市場で新たな仕事を求めていたようだ。

FenwickはGoogleの元宇宙事業の主席、Trelaは衛星部門の技術チームを統括していた。Appleはこの二人を起用して、何をするのか? Bloombergはいくつかの可能性を挙げているが、大きく言うとそれらは、画像または通信を目的とする衛星技術の構築や運用だ。

その記事はさらに、Boeing社が低地球軌道に展開している約1000基の衛星ネットワークを利用するブロードバンドアクセス計画の、‘仲間に加わる’件で、AppleがBoeingと話をした、とも報じている。Teslaにも同様の計画があるが、そちらは、人間を地球外植民地に送り込むなど、大規模な宇宙プロジェクト用らしい。

Appleが新たに雇用した元Googleの衛星部門役員は、元DropcamのファウンダーGreg Duffyの下に入り、衛星の仕事をしないこともありえる、と記事は言っている。DropcamはNestが買収してAlphabet傘下となったが、その後協同ファウンダーのDuffyはAppleへ行った。

Appleがこれから宇宙関連の事業として何をするにしても、FenwickとTrelaが知識経験共に豊富な、優秀な人材であり、Appleの貴重な資産になることは間違いない。非常に興味深い新規雇用ではあるけれども。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

NASAとAmazonが協力して宇宙から4Kライブ・ストリーミング―NABトレードショーの一環

4Kテレビ、あるいはディスプレイを持っている読者もいるだろう。しかしその解像力を本当に活かすようなコンテンツをいつも観ているだろうか? スポーツ中継? Netflixの番組? そんなとこだろう。では宇宙は? 

宇宙飛行士たち(たぶんいちばん事情に詳しいはず)によれば、大気圏外から見下ろす地球の景観は比較を絶して素晴らしいという。今月末にこの映像が高解像度スクリーンにやってくる。AWSとNASAが協力して世界初の宇宙からの4Kライブ・ストリーミングが4月26日に予定されている。

正確な時間は4月26日の太平洋標準時午前10:30だ(日本時間4/27午前2:30)。Varietyによれば、ラスベガスで開催される世界最大の放送機器のトレードショー、NABの一部としてストリーミングされるという。コンテンツは録画され、NASAのウェブサイトからも4K画質で公開される。AWSが協力するストリーミングでは国際宇宙ステーション(ISS)とNAB会場が結ばれ、NASAの宇宙飛行士、Peggy Whitson博士と AWSの共同ファウンダー、 Sam Blackmanが会話することになっている。

ストリーミングにはAWSが新しく公開したElementalエンコードが用いられる。宇宙からの高画質中継というのは驚くべきパフォーマンスだが、ISSとラスベガスを結んで会話ができるというのはエンコードのリアルタイム性をデモするのに絶好だろう。

NASAが宇宙からのライブ・ストリーミングに力を入れるのには理由がある。これは軌道上の強力なカメラを通して得た映像を地上の科学者がリアルタイムで観察、分析することが可能になるからだ。

〔日本版〕ライブ中継は日本では4/27 午前2:30になってしまうが、4K録画をNASAのサイトから見ることができるはず。

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ベゾス、Amazon株を毎年10億ドル売却して宇宙事業の資金調達―乗員カプセルのモックアップを披露

Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスは彼の他の事業の資金を得るために保有するAmazon株式の一部を売却する計画だ。 Reutersによれば、ベゾスは発表した。33回目のスペース・シンポジウムで 毎年10億ドル相当のAmazon株を売却して有人宇宙飛行を目指すBlue Originの資金にあてると述べた。ベゾス保有するAmazon株式は、水曜日の引け値で735.4億ドルの価値があるから、10億ドルの株式はごく一部に過ぎない。

Blue Originはイーロン・マスクのSpaceXと同様、ロケットの再利用によるコストダウンにより最終的にはそれ自身で黒字化を達成することを目標としている。このコストダウンによって宇宙で健全ビジネスが展開できると考えている点もSpaceXに似ている。ベゾスは「ロケットの再利用がビジネスの成功のカギ」というマスクの考え方に賛成した上で、「目標は似ているものの、われわれわれエンジニアリングのアプローチは〔SpaceXとは〕異なる」と述べている。

SpaceX同様、Blue Originも有人飛行の実現を目指している。Blue Originが有人宇宙飛行のために開発中のNew Glennロケット・システムは合計25億ドルのコストがかかるものと推定されている。これは巨額だがベゾスの資産も巨大だ。Blue Origin事業はビジネスであると同時に、ベゾス自身の情熱の対象でもあるようだ。ベゾスは引き続き現在のペースで資金援助を続けるとみていいだろう。

Blue Originは宇宙観光旅行を目指している。ベゾスは2018年を有人宇宙飛行開始の目安としている。シンポジウムでは11分間の宇宙旅行に用いられるのと同じサイズのリアルな乗員カプセルのモックアップが披露された。

画像:Mark Wilson/Getty Images

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SpaceX、中継切れのあのシーンを公開―Falcon 9ブースターがドローン艀に垂直着陸

SpaceXは衛星打ち上げミッションの一部始終を生中継で公開している。われわれも報じたとおり、前回のSES-10放送衛星打ち上げでは、回収したFalcon 9ブースターの再利用に成功し、さらに上の写真のように大西洋上のドローン艀への回収にも成功した。しかし SpaceXが公開していた生中継ビデオはブースターの大気圏再突入時にカメラの不具合でビデオの送信が途切れ、ドローン艀からの送信も中断してしまった。

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艀からの中継も切れたのは衛星アップリンクを失ったからだという。しかしSpaceXではブースターの着陸の瞬間を艀上のカメラでローカルに記録していた。このほどその瞬間のビデオが公開された。

着陸は複数のアングルから記録されており、タッチダウンの瞬間にわずかにバウンドする(安定性のため)ところも捉えられている。この成功の意味は大きい。いくら強調しても強調しすぎることはない。ロケットの回収と再利用により衛星打ち上げコストを劇的に減少させるというpaceXのビジネスモデルそのものがが有効だと証明された瞬間だった。

〔日本版〕上のInstagramビデオは再生時に音が出るので注意。キャプションにある"Of Course I Still Love You"はSpaceXが運用する2隻のドローン艀の1隻の船名。もう1隻は"Just Read the Instructions"。どちらもSF作家、イアン・M・バンクスの作品名から。

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SpaceX、Falcon Heavyの発射と2段目ロケットの回収に挑戦へ―火星植民への第一歩

Falcon 9ブースターの再利用の成功を受けて、イーロン・マスクはSpaceXがさらに大型のFalcon Heavyロケットのテストを実施することを発表した。このフライトでは2段目のロケットを地表に回収することも試みる。Falcon Heavyのブースターだけでなく2段目も再利用できるようにするのが目的だ。地表と宇宙をロケット全体が繰り返し往復できるようにすることは、SpaceXの最終目的である火星植民にとって欠かせないテクノロジーとなるという。

マスクによれば、Falcon Heavyのテストのスケジュールは「この夏の後半」だ。昨年9月、発射台上で点検中のFalcon 9が爆発するという事故により計画に遅れが出ていたが、Falcon Heavyのテスト時期は昨年暮に新たに設定されたスケジュールに沿ったものだ。

SpaceXのFalcon Heavyは商用打ち上げ企業としてまったく新しいビジネスチャンスを開くはずだ。Falcon Heavyのブースター部分は現在のFalcon 9のブースターを3基まとめたもので、Merlinエンジンは27基合計で22,819 kN(2327トン)の推力を発生する。NASAもSLS(Space Launch System)と呼ばれる独自の大型ロケットを開発しており、2018年には最初の打ち上げが行われる予定だ。

ロケットの完全な再利用化を目指す第一歩として、Falcon Heavyの打ち上げテストで2段目の回収実験を考えている。成功確率は低いがやってみる価値があると思う。

Falcon Heavyの低軌道打ち上げの最大ペイロード重量は54トンとされる。これは現在最大級の商用ロケット、ULA〔ロッキード・マーティンとボーイングの宇宙合弁事業〕のDelta IV Heavyの2倍のペイロードだ。ただしペイロードはミッションの内容によって大きく変化する。またロケットを使い捨てにするのではなく、再利用を図るのであればその分の燃料を必要とするためペイロードは減少する。SpaceXでは打ち上げ費用をULAのDeleta Heavyの3分の1にまで減少させることでNASAのSLSを打ち負かす計画だ。

SpaceXはFalcon Heavyに用いられるFalcon 9ブースターの回収に繰り返し成功している。この木曜日には回収したロケットを再利用した打ち上げに最初の成功を収めた。イーロン・マスクにとって次の目標は真空中で運用されるMerlin 1Dエンジンを搭載したFalcon Heavyの2段目を回収することだろう。

先に述べたように、ロケットの完全な再利用はSpaceXの火星プロジェクトの実現に必須となる。地表と軌道上の宇宙船を何度も往復して大量の燃料、資材などを積み込む必要があるからだ。この宇宙船が最終的に火星に向かうことになる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Blue Originに10万ドル払って宇宙旅行するときの座席はこれだ!

宇宙ロケットなどの記事を書いていると、自分も宇宙へ行きたくなる。今度のこれはBlue Originの記事だけど、やはり自分自身が宇宙へ行ってみたいよね。とくに、今回渡された素材は、同社のNew Glennロケットの豪華なインテリアの写真だから、なおさらだ。本革を贅沢に使っているし、しかもどのシートも窓側シートでかつ、通路側シートなのだ。

これらはもちろんモックアップだけど、10万ドル+αでチケットを買って10分間の宇宙旅行を楽しむときも、Ars Technicaによると、これとほぼ同じだそうだ。カプセル内の中央の装置が宙に浮いているのなんて、すごくクールだね。しかもこれは、Blue Originが昨年のロケットでテストした脱出エンジンで、緊急時にカプセルをロケットから最大限の力で素早く切り離すのだ。

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コックピットが全景ビューのパノラマだとかっこいいけど、でも表面に透明部分が多いとロケットの強度を確保できないのだろう。それとも、強度的には可能だけど、ラグジュアリー仕様の車のように、費用が高すぎるのかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SpaceX、再利用ロケットの打ち上げもいよいよ間近

SpaceXによるFalcon 9ロケットの次の打ち上げが、3月30日木曜日にせまっている。民間の人工衛星サービス企業のSES-10を打ち上げることになっている。またFalcon 9の話かと思う人もいるかもしれない。しかし今回はこれまでにない打ち上げとなる。すなわち打ち上げに、史上初めて再利用ロケットが用いられることになっているのだ。今回用いられるFalcon 9は、昨年の4月8日に打ち上げられたもので、初めて海上のドローン船により回収したものだ。

ロケットの再利用は、SpaceXにとって大きな一歩となる。創業時のビジネスモデルの正当性を証明することになるし、また民間宇宙サービスビジネスの可能性を大きく広げるものとなるからだ。もともとSpaceXはロケットの再利用を訴えて業界に参入してきた。それにより実現するコスト低減をビジネスチャンスとしているのだ。Elon Muskは昨年、火星探査のプランを発表する中で商用宇宙飛行の利益率向上をうたっていた。ロケットの再利用が実現すれば、Elon Muskの計画がいっそうの現実味を帯びることともなるわけだ。

ただし、何をもって「初めて」とするのかについては議論もある。たとえばJeff BezosのBlue Originはすでにロケットの再利用を実現している。しかしBlue Originのロケット回収はか低い高度でかつテスト目的で行われたものだった。SpaceXは軌道上に実用人工衛星を打ち出すもので、すでに有料サービス段階に達している。なお、NASA自身もシャトルの打ち上げに際してロケットを再利用を行なってはいた。しかし当時は固体燃料によるもので、液体燃料を利用する今回とはまた違った意味となる。さらにNASAは再利用をコスト的に見合ったものとすることができなかったことも記憶しておくべきだろう。

SpaceXは実績のあるロケットを再利用することで、顧客の信頼感も獲得したい考えだ。顧客が気に入ったロケットを何度も利用することで、顧客側には割引料金の提供などもできるようになると考えている。しかし、こうした目論見はいまのところ画餅に過ぎない。まずは「最初の」再利用において、打ち上げおよび回収を成功させることが大切なこととなる。

現段階での話ではあるが、打ち上げの予定は3月30日のEDT午後6時27分(PTD午後3:27)だ。TechCrunchではライブ中継も予定しているので、歴史的瞬間を目にしたいと考えている人は、ぜひアクセスして欲しい。

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(翻訳:Maeda, H

SpaceXの補給船、ISSから機器・データを無事回収

昨日(米国時間3/19)、SpaceXはISS〔国際宇宙ステーション〕へのCRS-10補給ミッションの最後の段階を実施した。2月19日に打ち上げられたDragonカプセルは2トン以上の物資および実験機器をISSに補給した。この数週間、ISSのクルーはペイロードの移動に忙しかった。

日曜日にDragon補給船はISSとの結合を解かれた。位置制御ロケットを噴射してISSから徐々に遠ざかり、地球大気圏への再突入軌道に入った。この5時間の帰還ミッション中にDragonはロケットの逆噴射を行い、また不必要なゴミを放出して大気圏上層で燃え尽きさせた。太平洋時間7:48ににDragonは無事太平洋に着水した。

SpaceXは洋上から無事にDragonカプセルを回収し、船に積んで帰還中だ。カプセルは陸揚げされた後、NASAに向かう。 カプセル及び宇宙から回収された各種の機器やデータはそこで精査される予定だ。

SpaceXの次回の打ち上げは3月27日が予定されている。ペイロードはルクセンブルクの衛星企業、SESのテレビ放送と多用な通信の能力を持つ衛星だ。

〔日本版〕リンク先記事にはDragon補給船を打ち上げたFalcon 9のブースターが垂直着陸に成功するビデオなどがエンベッドされている。

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SpaceX、EchoStar XXIII放送衛星を静止軌道に打ち上げ成功

SpaceXはEchoStarの放送衛星を静止軌道に打ち上げることに成功した。この打ち上げは2度目の試みだった。火曜日の打ち上げは地上の天候不順のため延期されていた。SpaceXはEchoStar XXIIIを水曜日(米国時間3/15)に高度35800kmの軌道に投入した。 発射されたのは火曜日の午前2時(東部時間)だった。

これまでSpaceXがFalconロケットで打ち上げてきた衛星に比べて、EchoStar XXIIIはきわめて大きいペイロードだった。そのためSpaceXは今回の打ち上げではブースターの回収を試みていない。SpaceXでは去る9月に打ち上げ前の点検段階でFalcon 9が爆発するという事故を経験しているが、その後の打ち上げは2回とも成功し、ブースターも回収している。

SpaceXがEchoStar打ち上げに使ったのはフロリダ州ケープカナベラルのケネディー宇宙センターのLC 39A発射台だった。SpaceXがこの発射台を使うのは2度目で、前回の打ち上げは国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給だった。EchoStarはSpaceXがLC 39A発射台を使う最初の商業的打ち上げとなる。この発射台はアポロ11号の打ち上げに使われたことがあり、NASAの歴史上重要な施設だ。アポロ11号は人類を最初に月面に到達させたミッションとして長く記憶されている。

〔日本版〕Dish Networkは当初EchoStar社のブランドとして出発した。2008年にDish Network社が分離されて衛星放送業務を担当、打ち上げを含む衛星テクノロジー全般をEchoStarが担当することになったという。

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これがジェフ・ベゾスの次世代ロケットだ―Blue Origin、New GlennのCGビデオ公開

ジェフ・ベゾスの宇宙企業、Blue Originは次世代大型ロケット、New Glennを開発中だ。Blue Originはさきほどビデオを公開し、このスーパーロケットがどのように打ち上げられるかを紹介するCGビデオを公開した。ネタバレになってしまうが、これはSpaceXのFalcon 9に非常によく似ている。

下にエンベッドしたビデオで、ロケットはBlue Originの発射基地から垂直に打ち上げられ、洋上を航行する大型プラットフォームに垂直に着陸する。これは現在SpaceXが用いているのとほぼ同様の方式だ。ただしCGアニメを見るかぎりでは、New Glennの着陸プラットフォームは大型船上に設けられており、乗員がいるもようだ。SpaceXのブースターはこれと異なり、自律航行する無人の艀に着陸する。

今回のビデオはBlue Originが宇宙計画の紹介するメディア・ツアーの一環でだ。昨日(米国時間3/6)、ベゾスは次世代ロケットで用いられるBE-4 エンジンを公開した。これに続いて今日、ベゾスはフランスの衛星テレビ企業、Eutelsatと契約を結んだことを発表した。この契約によれば、Blue Originは2021年ないし2022年に静止軌道に放送衛星を打ち上げる計画という。

SpaceXとBlue Originは本格的な宇宙競争に突入したようだ。平和的な競争なのが何よりだが、この2社のアメリカ企業の目標ははたいへん似通っている。つまりブースターを再利用することによって劇的なコスト削減と打ち上げ回数の増加を狙っている。Blue Originは2015年にNew Shepardでブースターの垂直着陸に最初に成功しSpaceXを出し抜いた。しかしSpaceXはその年の後半になってNew Shepardよりはるかに大きい実用衛星打ち上げロケット、Falcon 9で垂直着陸に成功し、その後も着陸を繰り返している。その中には洋上の艀への着陸も含まれる。現在、
両社とも月を目指しているという。さいわいなことに両社の競争はゼロサム・ゲームではない。どちらが勝つにしても本当の勝利は人類のものだ。

〔日本版〕 Blue Originのロケットはアメリカ初の有人宇宙飛行プロジェクト、マーキュリー計画の乗員の名前から命名されている。アラン・シェパードはアメリカ人として初の大気圏外飛行をした人物となった。ジョン・グレンは衛星軌道を飛んだ初のアメリカ人で、後にオハイオ州選出の上院議員を長く務めた。

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NASA、SpaceXの月旅行支援を発表―さらなる野心の現れだ

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SpaceXが来年乗員2名を月周回軌道に往復させるという計画を発表して世界を驚かせたのに続いて、NASAがSpaceXのプロジェクトを支援するという声明を発表した。短い声明だが言外の意味は大きい。民間企業の宇宙進出は政府機関の宇宙開発も拡大させる追い風となるようだ。

この声明は、「民間企業に協力することは宇宙の商用利用(という付随的任務)からNASAを解放し、次世代ロケットや宇宙船の開発、月以遠の宇宙の探索という本来の任務に専念することを可能にする」としている。

これはつまり「そこなら行ったことがある!」というたぐいの旅行の自慢話的な任務からNASAを切り離すという宣言だろう。「月? クールだね。なるほど1969年には最前線だった。SpaceXが再訪するというのはけっこうなことだ。初めて行く人は興奮するだろう。われわれは火星や木星に集中できる。惑星探査は素晴らしい任務だが、とてつもなく時間と資金を食う。SpaceXが月に行くのを引き受けてくれるなら素晴らしい」という意味に違いない。

NASAははるか昔から民間企業が宇宙を自由に利用できるエコシステムを建設しようと努力してきた。商用利用の主役が民間企業になれば、NASAは限られた資源を深宇宙の探査に振り向けることができる。実際これがNASAの本来的使命でもある。もっともSpaceXなどの民間企業自身が火星以遠への旅行について興味を示しており、ライバルになる可能性がある。

ともあれ宇宙マニアにとっては目が離せない展開になってきた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpaceXのDragon補給船、無事にISSにドッキング成功

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日曜日にケネディー宇宙センターから2.5トンの観測機器などの物資を搭載して打ち上げられたSpaceXのDragon補給船はISS〔国際宇宙ステーション〕とのドッキングに無事成功した。Dragonは一度ISSに接近したもののGPS計器の示す値に異常があったためドッキングは一度中断された。

2012年以來ISSに物資を補給しているSpaceXにとってドッキングの中断は初めてのことだった。しかし木曜日〔日本時間金曜〕の2回目の試みはなんら問題なく成功したようだ。ISSの長大なロボットアームがDragonをつかみ、物資搬入用アタッチメントをISSにドッキングさせた。

Dragon補給船の物資は約1ヶ月かけてISS内に搬入される。その後DragonはISSから切り離され、太平洋上の所定の海域に落下する予定だ。

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