ノバセルとアドレクス、テレビCMからウェブ広告まで一気通貫で運用する成果報酬型クロスマーケティングプランX-MAX開始

ノバセルとアドレクス、テレビCMからウェブ広告まで一気通貫で運用する成果報酬型クロスマーケティングプランX-MAXを提供開始

運用型テレビCMサービスを運営する、ラクスルグループのノバセルは3月2日、ウェブマーケティング事業を展開するADREX(アドレクス)と共同で、テレビCMからウェブ広告までを一気通貫で運用するオンオフ統合成果報酬型マーケティングプラン「X-MAX」(クロスマックス)を提供開始した。まずは同プランのリリースを先駆けとし、広告主の求める投資対効果を透明化しながら運用負荷も軽減し、事業を伸ばす。

X-MAXは、あらかじめ広告主と合意した成果指標を基に成果報酬制で広告費が決まるサービス。テレビCMに関しては「検索エンジンでの指名検索増加数」、ウェブに関してはROAS(Return On Advertising Spend、投資した広告コストの回収率)をそれぞれ計測指標とし、同目標の達成度を基準に手数料率が変動する仕組み。「広告主のビジネスにおける成功」と「広告費用」を連動させ「成果報酬型」の料金体系を実現するほか、複数広告会社に委託することで生じる、データや目標管理の連携不足を解消するという。

また、ノバセルの利用開始条件は以下2つという。
・これまでノバセルおよびADREXともに取引実績がない
・ノバセルおよびADREXが、成果報酬での取引が実施可能と判断

ノバセルは2020年にローンチ。テレビCMに関する企画・制作・放映・効果測定を通し、経験・知見を蓄積してきた。事業を運営する中で、「マーケティング投資後の広告主企業の売上拡大や新規顧客獲得などにおいて、広告費がどのような成果を得られたかに関わらず、固定で発生するもの」という商慣習に疑問を感じるようになったという。また広告運用面においても、テレビCMをはじめとしたマス広告の企画・実行を行う広告会社と、ウェブマーケティングを行う広告会社が別に存在していることで「マーケティング戦略にオンラインとオフラインで一貫性がなく、チャネル統合としての効果が最大化されないこと」や「広告会社が異なることで、広告主のオペレーションが煩雑になる」と感じてきたそうだ。そこで、ノバセルのノウハウと、ウェブマーケティング事業を通じ企業を支援してきたADREXのノウハウを組み合わせ、テレビCMからウェブ広告までを一気通貫で行おうと、X-MAXのリリースに至ったという。

ノバセル代表取締役社長でラクスル取締役CMOでもある田部正樹氏は、「ラクスルグループでは自社がほしいものを作っていくという文化があり、ノバセル事業を立ち上げました。新サービスであるX-MAXも、自分自身が発注者の立場となったときに必要だと思う機能を想像しながらプロダクトを設計しました。ウェブマーケティングとテレビCMを一貫して見られるツールはまだないことと、デジタルマーケティングにあたってまだテレビCMまでは不要という層にも事前にリーチしノバセルのカバレッジを広げたいという思いから、効果の最大化という由来を込めてX-MAXというプランを作りました」と語る。ノバセルの利用者は、企業フェーズを問わずインターネットサービス企業が中心とのこと。

ノバセルでは、マーケティング投資回収の仕組み化を通して、「マーケティングの民主化」というビジョンを掲げ、プロダクト作りを行っていく方針だという。

流通小売・メーカーDX支援やリテールメディア運用のアドインテにグローリーとSony Innovation Fund by IGVが資本参加

流通小売・メーカーDX支援やリテールメディア運用のアドインテにグローリーとSony Innovation Fund by IGVが資本参加

IoTとAIを活用し流通小売・メーカーDX支援、リテールメディア開発・運用を行うアドインテは1月24日、グローリー、また新たにSony Innovation Fund by IGV(Sony Innovation Fund、大和キャピタル・ホールディングス)などを引受先とする28.6億円の資本参加を受けたことを発表した。これにより、総額52億円の資金調達と資本参加の実施が完了した。

今回の資本参加により、現在同社が構築しているリテールメディア事業のさらなる拡大と、流通小売・メーカー向けDXソリューション開発を強化する。

今後もアドインテは、店舗でのユーザー体験向上を目的としたリテールメディア開発・運用など販促DX支援と、流通小売企業様と連携したプロダクト開発やサービス強化を進める。また、今後控えているデータ連携の拡大や分析レポートの高度化を図り、デジタルマーケティングキャンペーンにおいて、ファーストパーティデータを活用した、精度の高いマーケティング施策の実現を目指す。

アドインテは、人・モノ・流通の変革を促し、持続可能な社会を構築すべく、様々な社会課題・経営課題を解決するソリューションサービスの提供を目指し事業を展開している。

昨今では、IoT・AIなどを活用した流通小売業のDXとともに、オフラインの消費者行動のデータ化・可視化が進展、また店頭のアナログ販促のデジタル化も進み、リアル空間データとID-POSデータなど既存のデータ資産を掛け合わせることで、店舗を起点としたリテールメディア事業が国内外で成長しているという。

また同社は、消費者ニーズの多様化・消費行動変化を捉えた購買起点でのマーケティングデータ基盤は、GoogleによるサードパーティCookie利用の段階的な制限など、ウェブ広告の活用方法が世界的に見直される方向にあることから、プライバシーに配慮した広告効果の高いマーケティングソリューションは、今後さらに重要になると考えているという。流通小売・メーカーDX支援やリテールメディア運用のアドインテにグローリーとSony Innovation Fund by IGVが資本参加

広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」提供

広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」を提供開始

広告クリエイティブ運用型クラウド「リチカ クラウドスタジオ」を運営するリチカは1月19日、ショートムービープラットフォームの「TikTok」(ティックトック)において、TikTok For Businessの監修のもと「運用型クリエイティブパッケージ」の提供を開始すると発表した。

TikTok For Businessは、広告代理店や制作会社を通さずにTikTokに広告を出稿できるセルフサーブ型広告のプラットフォーム。企業・ブランドと関心事や新しい興味の対象を探すオーディエンスを結びつけることで、広告の枠組みを超えたコミュニケーションを実現させ、認知拡大や顧客獲得といったビジネス課題にアプローチする。

リチカ クラウドスタジオは、デジタル広告やSNS用途で動画や静止画を量産・運用できる「運用型クリエイティブクラウド」。配信面に最適化したクリエイティブを制作・検証・改善が可能で、大手事業会社や広告代理店を中心に400社以上に導入されている。

TikTokはユーザー数の増加とともに広告媒体としての需要も高まっているものの、成果に結びつく広告クリエイティブの研究はなされておらず、最適解が見つからないという課題があった。その状況を受けリチカは、TikTok For Businessの監修のもと、今回の「運用型クリエイティブパッケージ」の提供に至った。TikTokへの出稿を希望する広告主に対してリチカ クラウドスタジオを活用し、TikTokに最適化したクリエイティブを制作。大手事業会社や広告代理店のデジタルマーケティング支援を行ってきた実績を元に、成果につながる広告クリエイティブを提供する。

以下は、広告クリエイティブのサンプル。

広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」を提供開始広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」を提供開始

企業向け動画配信クラウド・動画SNSの市場データ分析を手がけるエビリーが7億円調達、開発・人材採用・販促活動を強化

企業向け動画配信クラウドのエビリーが総額7億円を調達、開発・人材採用・販売促進活動を強化

企業向けクラウド型動画配信システム「millvi」(ミルビィ)と動画SNSの市場データ分析サービス「kamui tracker」(カムイ トラッカー)を運営するエビリーは10月20日、第三者割当増資と金融機関からの融資による総額7億円の資金調達の実施を発表した。引受先は、大和企業投資、地域創生ソリューション、西武しんきんキャピタル、みずほキャピタル。調達した資金は、動画プロダクトの開発強化、マーケティング強化、開発・幹部をはじめとする全部門での人材採用の強化にあてる。

累計700社以上の利用実績を持つmillviは、企業内でのコミュニケーションや教育において動画の活用が進んだことで新規契約数が前年比の約380%増。動画によるプロモーション活動をサポートするkamui trackerは、YouTuber、広告主、広告代理店など利用者数は2万人以上。YouTubeのチャンネル運用や市場トレンドの分析、YouTuberのキャスティングやタイアップなどに活かされている。

エビリーは「動画の活用で企業のDX推進を支援する」をミッションにかかげ、今後はデータに基づいた動画制作から配信までをワンストップで提供することを目指す。顧客の動画マーケティング領域、インナーコミュニケーション領域の課題解決を支援するためのソリューションをより強化したいという。

広告詐欺などアドフラウドの対策ツール「Spider AF」を提供するSpider Labsが約5.5億円のシリーズB調達

広告詐欺などアドフラウドの対策ツール「Spider AF」を提供するSpider Labsが約5.5億円のシリーズB調達

広告詐欺・不正広告といったアドフラウドへの対策ツール「Spider AF」(スパイダーエーエフ)を提供するSpider Labs(スパイダーラボズ。旧Phybbit)は9月29日、総額約5億5000万円となる第三者割当増資をシリーズBラウンドにおいて実施したと発表した。引受先はHeadline Asia、三菱UFJキャピタル、Darwin Venture Management、Golden Asia Fund。調達した資金によりSpider AFの事業拡大を行ない、インターネット上における不正を撲滅し社会課題の解決を目指すとしている。

Spider Labsは2011年に設立された日本発のサイバーセキュリティカンパニー。Spider AFをメインサービスとしており、信頼性の高いアドフラウド対策を提供している。デジタル広告業界の信頼性を高める世界最高水準の認証機関「Trustworthy Accountability Group」(TAG)の不正防止部門から、日本およびAPACで初めて認証を取得している。

SpiderAFは、不正な手法によって広告のインプレッションやクリック、コンバージョンを水増しして広告報酬を詐取するアドフラウド(広告詐欺)の対策ツール。誰にでも手軽にアドフラウド対策が行なえるよう、自動化と非属人化に特化しているという。無駄な広告トラフィックを排除する機能を持っており、2018年12年には複数事業者でブラックリストを共有する「SHARED BLACKLIST」(シェアードブラックリスト)を日本で初めて提供を開始したとのこと。

ネット動画広告制作の内製化を後押しするリチカが8億円調達、独自の自動生成技術や広告の自動最適化を強化

ネット動画広告制作の内製化を後押しするリチカが8億円調達、制作自動化に向け独自の自動生成技術や広告の自動最適化を強化広告クリエイティブ運用クラウド「リチカ クラウドスタジオ」の開発・運用などを行う広告テック企業リチカは、9月28日、第三者割当増資による約8億円の資金調達の実施を発表した。引受先は、既存株主であるみずほキャピタル、新生企業投資、FFGベンチャービジネスパートナーズ、DIMENSION、マネックスベンチャーズの他、新規株主としてGMO VenturePartners、大和企業投資、博報堂DYベンチャーズ、rooftopが加わった。これにより累積調達額は約10億6000万円になった。調達した資金は、「ネット広告の制作自動化」に向けた、独自の自動生成技術や広告の自動最適化の強化に充てられるという。

リチカ クラウドスタジオは、「導入したその日からネット広告で戦略的なクリエイティブ制作・改善を実現できる」というクラウドサービス。プロレベルの動画広告が簡単に作れるサービスだ。コロナ禍の影響で、広告を内部で制作する企業が増え、ネット広告制作ツールの需要が高まっているという。リチカのシステムは、ベネッセ、カドカワ、セブン銀行など大手を中心とした400社以上に導入され、月間2万本以上の動画広告が作られているとのこと。ネット広告以外にも、渋谷駅前のサイネージやテレビCMにも使われている。

リチカ クラウドスタジオの特徴は、クリエイティブ、テクノロジーなどの専門家集団「リチカ クリエイティブファーム」や独自のマーケティング研究機関「RC総研」を構え、プロレベルの広告用素材や簡単に使える動画制作ツールなどを提供する他、クライアントには専任のコンサルタントが付き、1対1で寄り添いながら、動画制作から広告運用まで総合的な「ワンストップ」でのマーケティング支援をしてくれる点にある。

代表取締役の松尾幸治氏は、デジタル世界でも「定量化できない曖昧なものの価値」を高めたいと話す。伝えにくいものを伝えるテクノロジーを提供するリチカは、それを「作り方の革命であり、届け方の革命」としている。

 

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

ウェブマーケティング・ウェブ広告に必要なクリエイティブ(バナー・ランディングページ・動画)の制作および改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」を手がけるガラパゴスは9月1日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による約11億円の資金調達を発表した。引受先として、既存株主のArchetype Ventures、みずほキャピタル、Globe Advisors Venturesに加え、新たにSTRIVE、THE FUND(シニフィアン が運営するグロース・キャピタル)、DIMENSION、THE GUILDの計7社が参加した。調達した資金は、AIR Designのプロダクト開発とマーケティング、採用強化にあてる。

AIR Designは、2019年秋にサービスを開始。2年弱で300社以上の広告制作に導入されたという。この成長を加速させるべく、今後は「デマンド・サイド(顧客開拓)」「サプライ・サイド(制作キャパシティ)」「プロダクト・サイド(システム開発)」の3方向に注力するとしている。

ウェブ向けクリエイティブの制作・改善をAIとデータを活用し実現する「AIR Design」のガラパゴスが約11億円調達

  • デマンド・サイド(顧客開拓):AIR Designの導入パートナーとしての代理店ネットワーク構築
  • サプライ・サイド(制作キャパシティ):社員や外注パートナーとしてのデザイナーネットワーク構築
  • プロダクト・サイド(システム開発):AIとデータを活用したSaaSプロダクトの開発

ガラパゴスは、「プロセスとテクノロジーで人をよりヒトらしく」をフィロソフィーに、属人性が強く再現性に乏しいデザイン領域のDXを推進し、コストパフォーマンスに優れたクリエイティブを広告主に提供するとともに、デザイナーがルーチンワークから解放され、スキルアップと付加価値向上に専念できる環境作りを目指すとしている。

アップルがアプリ追跡の透明性をユーモラスに表現した「iPhoneのプライバシー|追跡」CMを公開

アップルがアプリ追跡の透明性をユーモラスに表現した「iPhoneのプライバシー | 追跡 」CMを公開

Apple

今年4月末に配信されたiOS 14.5ではアプリトラッキング透明性(App Tracking Transparency/ATT)が導入され、今後アプリが異なるWebやアプリをまたいでユーザーを追跡する際には、ユーザーの明示的な許可を得ることが義務づけられるようになりました。アプリがユーザーのIDFA(広告識別子)を取得する前には、プロンプトを表示してユーザーの許可をもらうことが必須となっています。

これを受けてアップルは、ATTをユーモラスに表現したテレビCM「iPhoneのプライバシー|追跡」の公開を開始しました。

アップルいわく、アプリのトラッキング透明性とは「あなたのデータを、あなた自身がコントロールできる新しい機能」とのこと。それを朝の一杯のコーヒーを買った人の一日を追うかたちで分かりやすく可視化しています。

その人がコーヒーを買ったり店で買い物するたびに後を付いてくる店員(勝手にプライバシーを追跡するアプリの擬人化)が続々と増えていき、気が付けば部屋は追跡者で満員に。そこでiPhoneに「アクティビティを追跡することを許可しますか?」というプロンプトが表示され、「Appにトラッキングしないように要求」をタップすると追跡者がドロンと消えてゆくという流れです。

アップルはプライバシーが基本的人権であり、ユーザーが自分の情報を自分でコントロールできるように製品を設計していると述べています。そうした信念は昨日今日のことではなく、共同創業者スティーブ・ジョブズ氏がCEOだった時代まで遡り長年にわたって追求されてきたものです。4月初めに公開されたプライバシー保護原則やATTに関するデジタルブックでも、ジョブズ氏の「彼らのデータで自分たちが何をしようとしているのか、正確に説明すべきです」との言葉が引用されていました。

かといってアップルは広告一般に反対しているわけではありません。ティム・クックCEOも人々がオンラインで費やす時間が長くなるなかで、デジタル広告が増えていくのは自然な成り行きであると認めていました。その上で「このような詳細なプロフィールの構築(追跡から得た情報に基づいて作ったユーザー属性)をお客様の同意なしに行うことが許されるかどうかです」として、広告関係者には事前にどんな情報を集めるかを知らせ、ユーザーが自らのデータを制御できる権利を尊重するよう呼びかけているしだいです。

iPhoneにATTが導入された直後、米国ユーザーの96%がアプリ追跡を無効にしたとの調査結果もありました。その一方でマーケティング業界団体は一時的にはiOS向けの広告費は減りながらも、いずれはユーザー追跡なしの広告が増えていくという楽観的な見通しも発表しています

無料でアプリやサービスが楽しめる対価として広告が表示されるビジネスモデルはテレビやラジオから引き継がれたものであり、もしも否定してしまえばあらゆるコンテンツが有料になりかねません。

ATTはあくまで異なるWebやアプリをまたいだユーザー追跡に同意を求めるにすぎず、自社アプリやサイト上でのデータ収集は今まで通り続けられるはず。今後はその会社の経済圏内に留まり続けるかぎり行動履歴に基づくパーソナライズド広告が表示され、一歩外に出ればテレビのスイッチを切るように追跡もオフにされる、という新たな行動様式が定着していくのかもしれません。

(Source:Apple(YouTube)Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Apple / アップル(企業)App Tracking Transparency / ATT / アプリのトラッキングの透明性(用語)広告 / アドテック(用語)広告業界(用語)個人情報 / 個人情報保護(用語)プライバシー(用語)メディア(用語)

モバイル関係者が震撼、AppleのATT導入でマーケティングはこう変わる

4月8日、モバイル広告効果測定プラットフォームを提供するAppsFlyerがメディア向けレクチャーを実施した。

AppsFlyer Japan Country Managerの大坪直哉氏

AppsFlyerでJapan Country Managerを務める大坪直哉氏は「現在のモバイル広告は、セキュリティ重視、プライバシー重視の流れにある」と指摘する。

iOS 14のリリースに伴い、ユーザーの個人情報保護を目的としたフレームワークATT(App Tracking Transparency)をApple(アップル)が導入しようとしているのがその例だ。ATTが導入されると、ユーザーは自分のIDFA(広告識別ID)を広告目的でアプリ開発者に共有するかどうかを明示的に問われるようになる。つまり、ユーザーが自身の判断で「IDFAを共有しない」と意思表示する可能性が今より高くなるかもしれないのだ。

また、Google(グーグル)は2022年までにChromeにおけるサードパーティーのクッキーのサポートを終了すると発表している。

大坪氏は、「IDFAが使えなくなり、クッキーも使えなくなると、マーケターの打つ手がなくなるのか。そうではありません。ユーザーとのエンゲージメントと、それを実現するためのマーケターの知識が究極的に重要になる時代が到来するのです。この難関を切り抜けるには、広告主、代理店、広告媒体、ソリューションそしてMMP(モバイルアプリ計測ツール)など、エコシステムすべての構成員の理解と協力が必要です」と語る。

では、こうした「セキュリティ重視、プライバシー重視の流れ」は日本市場に置いてどんな意味があるのか。

AppsFlyer Japan Director of Partner Developmentの渡辺エリナ氏

Japan Director of Partner Developmentの渡辺エリナ氏は「世界的にデジタル広告投資額が年々増加しています。その中でも、モバイル広告が占める割合が順調に成長しており、重要性が増しています。中でも日本は、アプリのダウンロード数の増加に対し、収益の増加が大きい。2019年から2020年の間では、34%もの成長を見せています。さらに、端末ではiPhoneユーザーが65%を占めます。したがって、アップル、グーグルが示すセキュリティ重視、プライバシー重視の流れにキャッチアップしていくことは、必要不可欠です」と解説する。

Japan Senior Partner Development Managerの早川俊太郎氏は、iOS 14はユーザーとマーケター、2つの立場から理解すべきだという。

AppsFlyer Japan Senior Partner Development Managerの早川俊太郎氏

「ユーザーは、アプリ開発者にIDFAへのアクセスやアプリ間での共有を許可するかどうか、またそのタイミングを選ぶことができます。そのため、データの透明性とプライバシーが向上し、プライベートな未来が待っています。一方、マーケターにとっては、ATTにより、大量のオプトアウトが発生し、事実上、IDFAを広告主が以前のようには利用できない状態になります。また、確定的なアトリビューションであるアップルのソリューションは、限定的で複雑であり、LTV、リテンションなどの計測が困難です。
ターゲティングデータの喪失は広告の価値を下げ、広告をベースとしたアプリ経済を圧迫します。リターゲティング広告は永続的な識別子が失われることで大きな影響を受け、これまで同様の精度での施策実施は不可能です。このように、モバイル測定やターゲット広告に大きな課題や制限が生じる複雑な未来が待っています」(早川氏)

こうした状況から、AppsFlyerでは、ユーザーがATTに同意すればIDFAを活用し、そうでなければ、取得するデータポイントを最小限に抑え、ユーザーを追跡するための固有の永続的または恒久的な識別子を作成できないように設計された「確率論的モデリング」を活用する。確率論的モデリングでは、精度90%以上で広告効果を測定することができる。

大坪氏は「IDFAが取得できなくなると、メールやプッシュ通知などのIDFAを使わないコミュニケーションの工夫・活用が重要になってくるでしょう。また、Web-to-Appの活用、個々のユーザーではなくユーザー属性にフォーカスしたマーケティングが重要になってくるかもしれません」と結論した。

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フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、第三者と多くの個人データ共有

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、広告主と最も多くの個人データ共有

SOPA Images via Getty Images

アップルは2020年末から新規およびアップデートするApp Storeアプリに、収集しているプライバシー情報(プライバシーラベル)の表示を義務づけています。FacebookGoogleなどは何らかの事情から遅れていましたが、ようやくトップアプリのほとんどが表示を実装しています。

そのプライバシーラベルに基づいて、スイスのクラウドストレージ企業pCloudがユーザーから最も多くの個人データを集めて第三者と共有する「侵略的な」アプリのランキングを発表し、InstagramとFacebookの2つがトップに位置づけられました。

InstagramとFacebookアプリはサードパーティ広告主(第三者)と最も多くのデータを共有しており、購入や位置情報、連絡先の詳細やユーザーコンテンツ、検索履歴から閲覧履歴まであらゆる情報を対象にしているとのこと。その事実は別のメディアが確認しており、両アプリを運営するFacebookのプライバシーに配慮の薄い印象から言っても全く意外ではありません。

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、広告主と多くの個人データ共有

pCloud

しかしInstagramは個人データの79%を収集し、Facebookは57%と数値化されると、やはり圧倒的ではあります。それに続くのはビジネスSNSのLinkedInとUber EATSで50%と並んでいます。また本調査はGoogleがGoogle検索アプリとChromeのプライバシーラベルを公開する前に行われましたが、それでもYouTubeとYouTubeMusicも43%を叩き出してトップ10入りを果たしています。

第三者との個人データの共有とは、たとえばYouTubeが動画を検索するたびにデータがアプリ外に送信され、他のSNSで個人をターゲットにしている業者などに販売されるということです。特にpCloudは、月間アクティブユーザー数が10億人を超えるInstagramが自覚のない人々のデータを大量に共有するハブ化していることに懸念を示しています。

かたや、ほとんど個人データを集めていないアプリの顔ぶれはSignalやClubhouse、NetflixやShazam、SkypeやTelegramといったところです。インストール時に「連絡先をぜんぶ吸い上げる」仕様を廃止したばかりのClubhouseですが、ログイン後の挙動はプライバシー重視だった模様です。

(Source:pCloud、via:MacRumorsEngadget日本版より転載)

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EUの主管プライバシー規制当局が行動監視に基づくターゲティング広告の禁止を求める

欧州連合の主管データ保護監督機関は、インターネットユーザーのデジタル活動の追跡に基づくターゲティング広告の禁止を、他の重要な目標の中でもとりわけ事業者の説明責任を強化することを目的としたデジタルサービス法の抜本改革に盛り込むよう勧告した。

欧州データ保護監督官(EDPS)のWojciech Wiewiorówski(ヴォイチェフ・ヴィエビオロフスキ)氏は、EUの議員からの協議要請を受け、欧州委員会のデジタルサービス法(DSA)を参照して、行動監視に基づくターゲティング広告の禁止を求める決断を下した。

DSAの法案は、デジタル市場法(DMA)の案と共に12月に提出された。これにより、EUの(しばしば長期化する)共同立法プロセスが始まり、最終案が承認される前に、欧州議会と欧州連合理事会での修正案の議論と交渉が行われることになる。これは、数十年にもわたって行われてきたEU全体でのデジタル規則の大改革において、その最終形に影響を与えるためにすべてを賭けたせめぎ合いが始まることを意味する。

ターゲティング広告の禁止を求める欧州の主管データ保護監督機関による介入は、消費者の利益の保護を目的とした法案を骨抜きにしようとする試みに対する強力な先制攻撃だ。

欧州委員会の提案ではそれほど深く踏み込んでいなかったが、大手テクノロジー企業のロビイストは確かに反対に向けて力を注いでいたので、EDPSがここで強硬な措置を講じたことの意義は大きいと考えられる。

EDPSのヴィエビオロフスキ氏は、DSAに関する意見書において、欧州委員会が提案したリスク軽減措置を補完するために「追加のセーフガード」が必要であると述べ、「オンラインプラットフォームにおけるある種の行為は、個人の権利だけでなく、社会全体に対するリスクを増大させている」と主張している。

EDPSが特に懸念している分野は、オンライン広告、レコメンドシステム、コンテンツモデレーションだ。

ヴィエビオロフスキ氏は、「オンラインのターゲティング広告には数多くのリスクが関係するため、EDPSは、透明性からさらに踏み込む厳格な規則を検討するよう、共同立法者に強く求める」とし、「そのような措置には、広く浸透しているトラッキングに基づくターゲティング広告の禁止に向けた段階的な廃止、ターゲティングに利用できるデータカテゴリーに関する制限、およびターゲティング広告を可能または容易にするために広告主や第三者に開示しうるデータカテゴリーに関する制限が含まれるべきである」と述べている。

これは、欧州議会が昨年の10月、EUの議員に対して段階的禁止の検討を提案した際により厳格な規制を求めたことに続き、大衆の行動監視に基づくターゲティング広告をピンポイントで狙った直近の攻勢となる。

しかし、ここでも、EDPSは実際に同様のことを求めながら、さらにもう少し踏み込んでいる(FacebookのNick Clegg(ニック・クレッグ)氏は苦虫をかみつぶす思いだろう)。

最近、長年アドテックの利権を得てきた一人であり、欧州の大手出版社Axel Springer(アクセル・シュプリンガー)のCEOであるMathias Döpfner(マティアス・デップナー)氏は、米国の主導によるデータマイニング技術プラットフォームが市民を「資本主義的独占のマリオネット」に変えているとの(保護貿易主義的な)非難を公然と行い、地域のプライバシー規則を強化して、プラットフォームで個人データを保存することや商業利益を目的として利用することを一切禁止するようEUの議員に求めている。

同氏は2021年1月、Business Insider(ビジネス・インサイダー)に「自発的な同意を名目にしてデータ保護を弱体化させようとする目論見は、すべて排除されなければならない。データ使用の許可は、そもそも行えるようにすべきではない。機密性の高い個人情報は、市場を支配するプラットフォーム(いわゆるゲートキーパー)や国家が自由に利用できるものではない」と書いている。

Apple(アップル)のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏も2021年1月、(本来ならば)ブリュッセルで開催される予定だったカンファレンスのバーチャルセッションに登壇し、基幹法令である一般データ保護規則(GDPR)の施行を強化するよう欧州に要請した。

クック氏は演説で、アドテックの「データ企業集団」が、大衆操作で利益を得ようとして偽情報の拡散を促進し、社会の大惨事を引き起こそうとしていると警告した。同氏は、欧米両岸の議員に向けて、「ユーザーの個人情報に対する権利を主張する人に、何が許され何が許されないのか、普遍的かつ人道的な意思を示す」よう強く促した。つまり、アドテックにおけるプライバシー保護の改革を求めているのは、欧州の企業(と機関)だけではないということだ。

Appleは、アプリがiPhone内のデータを簡単に利用できないよう、トラッキングの許可をユーザーから取得しなければならないような仕組みにして、トラッキングをより厳格に制限することを検討している。当然、この動きは、「関連」広告を提供するために大衆監視を利用しているアドテック業界の反発を招いている。

そのため、アドテック業界は、同意のない監視を規制するプラットフォームレベルの動きを阻止するために、「独占禁止法違反」を訴えて競争規制当局を動かす戦術に頼ってきた。この点で注目に値することとして、市場で最も力のあるプラットフォームを仲介するための規則の追加を提案している、DMAに関するEDPSの意見書では、競争、消費者保護、データ保護法の3つは「オンラインプラットフォーム経済の観点では表裏一体の政策分野」であり、「ある分野が別の分野に取って代わったり、ある分野と別の分野が矛盾したりする関係ではなく、お互いに補完し合う関係であるべきだ」と述べ、これら3つの重要なつながりを改めて強調している。

ヴィエビオロフスキ氏はDSAの意見書でレコメンドシステムにも狙いを定めており、各地域のデータ保護規則(設計と初期設定によってプライバシーを保護することが法律で規定されているものと仮定する)を確実に遵守するために、レコメンドシステムは初期設定でプロファイリングに基づかないものとすべきであると述べている。

ここでも同氏は、「透明性とユーザーによる管理をさらに促進する」ことを目的に、欧州委員会の立法案を強化するための追加措置を求めている。

EDPSの主張によると、レコメンドシステムのようなシステムは「大きな影響力」があるため、このような措置がどうしても必要である。

コンテンツレコメンデーションエンジンがインターネットユーザーを憎悪に満ちた過激主義的な視点に誘導するのに一役買っているのではないかという点は、長い間、議論の的となってきた。例えば2017年には、英国の国会議員らがこの話題について数社のテクノロジー企業を厳しく追及した。その議員らの懸念は、ユーザーのエンゲージメントを高めることでプラットフォームの利益を最大化するように設計されたAI駆動ツールには過激化を自動的に促進する危険性があり、そのアルゴリズムが生み出す憎悪に満ちた視点は、のめり込んだ個人を害するだけでなく、疑心暗鬼の目が社会の結束をむしばむことによって市民全員に波及する有害な連鎖反応を引き起こすというものだ。

しかし数年経過した今も、このようなアルゴリズムによるレコメンドシステムがどのように機能しているのかについては、ほとんど情報が得られていない。これらのAIを運用して利益を得ている民間企業が、その仕組みを独占的な企業秘密として保護しているためだ。

欧州委員会のDSA案は、説明責任の妨げとなるこの種の機密性に狙いを定め、透明性確保の義務化を求めている。草案で提案された義務には、プラットフォームへの要件として、ターゲティング広告に使用される「意味のある」基準を提供すること、レコメンドアルゴリズムの「主なパラメータ」を説明すること、ユーザーコントロール(「プロファイリングを拒否する」というオプションを少なくとも1つ含む)を前面に表示することが含まれている。

しかし、EDPSは、個人情報の搾取から個人を保護するため(そして、取得した個人情報を基に人々を操作する産業が生み出す有害な副産物から社会全体を保護するため)、EUの議員がさらに踏み込むことを望んでいる。

コンテンツモデレーションについて、ヴィエビオロフスキ氏の意見書では、これが「法の支配に従って行われるべきである」と強調している。一方、欧州委員会の草案では、法の解釈をプラットフォームに委ねた方がよいとしている。

同氏は、この分野における最近のCJEU(欧州連合司法裁判所)の判決を暗黙の了解のようにして、「地域独自にすでに行われている個人の行動監視を考慮すると、特にオンラインプラットフォームの観点では、『違法コンテンツ』に対抗するために、その検出、識別、対処を行う自動化された手段の使用をいつ合法化するのか、DSAは明確にすべきだ」と書いている。

「プロバイダーが、DSAによって明示的に特定されたシステムリスクに対処するため、そのような手段が厳密に必要であることを示すことができない限り、コンテンツモデレーションを目的としたプロファイリングは禁止されるべきだ」と同氏は付け加えている。

また、EDPSは、非常に大規模なプラットフォームや(DMAによって)「ゲートキーパー」として指定されたプラットフォームに対して最低限の相互運用性要件を提案しており、欧州レベルでの技術標準の開発を促進するようEUの議員らに求めている。

同氏はDMAについても、「関係者の基本的な権利と自由の保護を強化し、現行のデータ保護規則との整合性を保つ」ことを求め、修正案が「GDPRを効果的に補完する」ものとなることを強く要請している。

EDPSの具体的な提言には、ゲートキーパープラットフォームにおける同意の管理方法をユーザーにとってより簡単でアクセスしやすいものとしなければならないことをDMAで明示すること、草案で想定されているデータポータビリティの範囲を明確化すること、集約したユーザーデータへのアクセスを他の企業に提供することをゲートキーパーに要求する条項を書き換えることが含まれており、これも「GDPRとの完全な整合性」を確保することを念頭に置いている。

EDPSの意見書では「効果的な匿名化」の必要性についての問題も提起しており、「ゲートキーパーのオンライン検索エンジンにおいて、有料無料を問わずエンドユーザーが生成した検索に関連するクエリー、クリック、閲覧のデータを共有する際の再識別テスト」を求めている。

停滞を脱するePrivacy改革

ヴィエビオロフスキ氏の提言はやがて始まるプラットフォーム規制を方向付けるものであったが、この提言が行われたのは、欧州連合理事会が既存のePrivacy規則をめぐるEUの改革への交渉姿勢について、予定からかなり遅れてようやく合意に達した日と同じ日だった。

欧州委員会は、この進展を発表するプレスリリースで、電子通信サービスの利用におけるプライバシーと機密性の保護に関する規則の改訂について、加盟各国が交渉権限に関する合意に達したと述べている。

「これらの『ePrivacy』規則の改訂版では、サービスプロバイダーによる電子通信データの処理や、エンドユーザーのデバイスに保存されたデータへのアクセスが許可されるケースを決めることになる」とした上で、「本日の合意により、EU理事会の議長国であるポルトガル(2021年1月現在)は、最終案について欧州議会との協議を開始できるようになる」と続けている。

ePrivacy指令の改革は、利害の対立のために何年にもわたって停滞しており、2018年にはすべての取り組みが無事片付くだろうという(先任の)欧州委員会の期待はすっかり外れてしまった(当初のePrivacy改革案は2017年1月に発表されたが、4年後、欧州連合理事会が主張するところの授権に落ち着いた)。

GDPRが初めて可決されたという事実は、アドテックと電気通信事業の両方の分野で、データに飢えたePrivacyのロビイストたちの利害関係を激化させたように見える(後者は、メッセージングやVoIPのサービスを提供するライバルのインターネット大手が長年利用してきた膨大なユーザーデータの宝庫を狙って、通信データに関する既存の規制障壁を取り除くことに強い関心を持っている)。

ePrivacyを利用してGDPRに組み込まれた消費者保護を無効にしようとする協調的な取り組みが行われており、そうした動きには、機密性の高い個人データの保護を骨抜きにする試みも含まれている。そのため、欧州議会との交渉が始まると、醜い利権闘争の舞台の幕が上がることになる。

メタデータとクッキーの利用許可の規則もePrivacyと密接に結びついているため、この件に関してもさまざまな利権が絡む難題を解決する必要がある。

デジタル権利擁護団体のAccess Now(アクセスナウ)は、ePrivacy改革の経過を要約して、欧州連合理事会が「極めて」的外れだと非難している。

アクセスナウのシニアポリシーアナリストであるEstelle Massé(エステル・マッセ)氏は声明の中で、「この改革はEUでのプライバシー権を強化するもののはずだ。[しかし]、各国がさまざまなケチを付けたため、改正案が穴だらけになってしまった。今日採択された法案は、議会の法案や欧州委員会の以前の見解と比べて見劣りがする。行動監視の手段に関する言及がいくつか追加されている間に、プライバシー保護のための前向きな条文が削除されてしまった」と述べた。

アクセスナウは、サービスプロバイダーがオンラインユーザーのプライバシーを初期設定で保護するための要件を元に戻すことや、クッキー以外のオンライントラッキングに対する明確な規則を確立することを、他の優先ポリシーの中でも特に強く推し進めていくと述べている。

一方、欧州連合理事会は、「追跡しない」という非常に弱体化された(そして、おそらく役に立たない)方策を支持しているように見える。欧州委員会によると、これは、ユーザーが「ブラウザーの設定で1つまたは複数のプロバイダーをホワイトリストに登録し、特定の種類のクッキー」の使用に同意できるようにすべきであると提案するものだ。

欧州連合理事会はプレスリリースで、「ソフトウェアプロバイダーは、ユーザーがブラウザーでホワイトリストを簡単に設定したり、修正したり、いつでも同意を取り消したりできるようにすることが奨励される」と付け加えている。

抵抗勢力が欧州連合理事会内部に潜んでいることは明らかだ。(それに対して欧州議会は以前、ePrivacyのための「法的拘束力があり、強制力のある」追跡禁止メカニズムを明確に承認している。つまり、ここでも衝突が予想される)。

暗号化もまた、ePrivacy論争の種となる可能性が高い。

セキュリティとプライバシーの研究者であるLukasz Olejnik(ルーカス・オレイニク)博士が2017年半ばに述べたように、欧州議会は通信データの機密性を保護する手段としてエンドツーエンドの暗号化を強く支持している。また、加盟各国は強力な暗号化を弱めるような義務をサービスプロバイダーに課すべきではないとも述べている。

ここで注目すべきなのは、欧州連合理事会はエンドツーエンドの暗号化について、少なくとも公的立場のPR版では、あまり多くを語っていないということだ(「原則として、電子通信データは機密扱いとなる。エンドユーザー以外の者によるデータの盗聴、監視、処理などの干渉は、ePrivacy規則で許可されている場合を除いて禁止される」という記載はあるが、まったく安心できない)。

暗号化されたデータへの「合法的な」アクセスを支持する欧州連合理事会レベルでの最近の取り組みを考えると、確かに憂慮すべき不作為にも見える。デジタル権と人権の擁護団体は抗議活動を起こすと予想される。

関連記事:WhatsAppが新プライバシー規約を同意しないユーザーへの対応内容を説明

カテゴリー:セキュリティ
タグ:プライバシー 広告業界 EU

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

アドテックは衰退し信用経済の時代が到来する

著者紹介:Richard Jones(リチャード・ジョーンズ)氏は、クロスチャネルでのカスタマーエンゲージメントソリューションを提供するCheetah Digital(チーター・デジタル)のCMO。ゼロパーティデータの専門家として、消費者の注目、エンゲージメント、およびロイヤルティの獲得と引き換えに、ライフサイクル全体で消費者と価値交換ができるようにブランドを支援している。

ーーー

2020年は、多くの人が待ち望んでいた社会運動が実行に移された年となった。6月、活動家たちは「Stop Hate for Profit(利益のためのヘイトをやめろ)」キャンペーンを開始し、Facebookのようなソーシャルメディア企業に、自社のプラットフォーム上で発生しているヘイト行為の責任を取るように要請した。

その狙いは、対象のソーシャルプラットフォームでの広告を停止することによって、ソーシャルメディア企業の目を覚まさせることだった。The North Face(ザ・ノース・フェイス)、Patagonia(パタゴニア)、Verizon(ベライゾン)といったブランドを含む1200以上の企業や非営利団体がこの運動に参加した。私は自社のチーターデジタルを率いて、Starbucks(スターバックス)やVF Corp(VFコーポレーション)などのクライアントとともに、この運動に参加した。

Stop Hate for Profitは、ソーシャルメディアが転機を迎えていることを浮き彫りにした。Twitter(ツイッター)とSnapchat(スナップチャット)はヘイトスピーチに異を唱えることを選び、政治的広告を禁止し、偽情報に対して警告を発することを決めた。しかし、残念ながらFacebookはまだそれほど積極的ではなく、その場しのぎの対応を取るのがせいぜいだ。

多くの人が、この運動はすぐに廃れると考えていたが、実際には始まったばかりである。米国は今、ほぼ間違いなく、両陣営の対立が史上最も激しい選挙を行っている。この状況を考えると、ソーシャルメディア上のヘイトをめぐる問題がすぐに解消されることはないだろう。マーケティング担当者にとって、Stop Hate for Profitは単なる社会運動ではない。この運動はアドテック全体に関わる問題を浮き彫りにするものだ。

ソーシャルメディアのボイコットやデータ保護により、私たちが知るアドテックは今、衰退への道をたどっている。

ソーシャルメディアの苦境

Forrester(フォレスター)は5月、「It’s OK to Break Up with Social Media(ソーシャルメディアと決別してもいい)」と題したレポートを発表した。このレポートには、消費者がソーシャルメディアに飽き飽きしていることを示す統計が含まれている。回答者の70%が、ソーシャルメディアプラットフォームとそのデータを信用していないと答えているのだ。ソーシャルメディアで読む情報が信頼できると信じている消費者は14%にすぎない。米国でインターネットを使用している成人の37%が、ソーシャルメディアは有益というよりも有害だと考えている。

マーケティング担当者は、「ソーシャルメディアは、消費者にマーケティング目的でリーチするために作られたものではない」という事実に立ち返らなければならない。ソーシャルメディアが流行し始めた頃、ブランドは急いでそれを導入し、消費者との対話に利用し始めた。多くのブランドが気付いたことは、これらのチャネルがポジティブなブランド認知を築くためではなく、顧客からの苦情に対応するためのプラットフォームになった、ということである。さらに、マーケティング担当者がよく利用するソーシャルプラットフォームは、顧客にリーチするマーケティング担当者に課金するようになった。

残念なことに、表示されるコンテンツを定義するアルゴリズムにより、ユーザーは自分の意見と異なる意見を目にする機会が減り、なによりも社会のさらなる分断化が助長されている。例えば、Qアノンのコンテンツを見始めるとすぐに、アルゴリズムによって、Qアノンに関するコンテンツばかりがフィードされるようになる。ユーザーは、ソーシャルプラットフォームに多くの時間を費やし、広告収入を増加させるのと同時に、現実を把握する力を失っているかもしれないのだ。マーケティング担当者は、ソーシャルメディアの状況が度を越していること、そして次の段階に進むのが正しいということを認めなければならない。

プライバシー問題

さてここで、自分が簡単な手術を必要としている患者であると想像してほしい。おそらく、Uberに乗って専門家のところに相談に行くだろう。次に、手術を受けに行き、手術は成功する。そして、すぐに回復して自宅に戻る。すべてが順調だ。しかし、Facebookを開いてスクロールし始めた途端、状況は一変する。突然、医療ミス専門の弁護士の広告がポップアップ表示される。しかし、あなたは手術のことを誰にも話していないし、もちろん手術についてソーシャルメディアに何かを投稿したこともない。

自宅で休養し回復したいだけなのに、広告攻めにされるのだ。それでは、このような広告はどのようにして、あなたの目に触れるようになったのだろう。デジタルフットプリントを残した結果、そのデータが誰かに売られて、押しつけがましい広告を見せられているのである。この話は、私たちを取り巻く世界でアドテックが助長してきたデータ乱用の現実を如実に表していると思う。プライバシーは完全に侵害されており、消費者はそれに気付いていないのだ。

ここ数年、データプライバシーはマーケティング担当者にとって注目のトピックとなってきた。今年に入って、米国ではカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が施行され、法的強制力を持つようになった。この法律は、データの管理権限を消費者に戻すものである。6月にApple(アップル)は、アプリやパブリッシャーが位置データを追跡し、広告ターゲティングに利用するのを困難にするアップデートを発表した。8月初めには、Meredith(メレディス)とKroger(クローガー)が 、クッキーの廃止を目指して、広告活動のためにファーストパーティ販売データを提供するパートナーシップを発表した。データ保護のブームが今後もしばらく続くことは間違いない。

マーケティングが向かう先

私は、マーケティングの未来は信用経済にあると確信している。Stop Hate for Profitキャンペーン、プライバシーの侵害、消費者の態度や行動の変化は、マーケティング担当者が第三者のデータに依存する時代が終わったことを示している。現在、経済に対する影響力が最も強いのはデータではなく信用である。今年初めにeConsultancy(イーコンサルタンシー)と共同で調査を行ったところ、米国の消費者の39%がクッキーデータに基づいて表示される個人広告を好まないことがわかった。人々は、ウェブをクリックしているうちに追跡されたり、ターゲットにされたりしたくないと考えている。アドテックの屋台骨は崩壊しつつあり、マーケティング担当者はそれに適応しなければならない。

従来のマーケティング方法では、信用経済の時代を生き残ることはできない。今は、新しいチャネルに目を向け、古いチャネルを再考すべきときだ。表示されるコンテンツを自分でコントロールできるチャネルに立ち返らなければならない。ソーシャルプラットフォームの広告活動は、オウンドチャネルに消費者を誘導し、そこで消費者の許可に基づいてデータを獲得して、消費者と直接つながれるようにすることにフォーカスすべきだ。注目すべきチャネルとして、メールについて考えてみよう。

心配は無用だ。メールはなかなか使えるチャネルである。前述のイーコンサルタンシーのレポートによると、4人のうち3人近くの消費者が、過去12か月の間にブランドや小売業者から配信されたメールがきっかけで買い物をしており、販売を促進するという点においては、メールのほうがソーシャルメディア広告より格段に優れていることが判明している。同様に、2020年にロイヤルティプログラムへの参加を増やしたいと考えている米国消費者の数は、参加を減らしたいと考えている消費者の数の9倍にのぼる。私たちは自分のデータを確実に所有し、ロイヤルティプログラムが自分の消費者データの宝庫になるようにしなければならない。フォレスターのEmily Collins(エミリー・コリンズ)氏は、そのことを、単なる報酬プログラムではなく、真のロイヤルティ戦略によって実現できる理由をわかりやすく説明している

マーケティング担当者は、消費者と直接的なつながりを構築することを目標とすべきだ。信頼を築くということは、データとエンゲージメントに応じて価値を交換することであり、第三者からデータとエンゲージメントを購入することではない。フォレスターの主席アナリストであるFatemah Khatibloo(ファテマ・カティブルー)氏は次のように述べている。「ゼロパーティデータとは、顧客が意図的かつ積極的にブランドと共有するデータのことだ。データには、購入意思、個人的背景、個人がブランドにどのように自分の存在を認めてもらいたいか、といった情報が含まれている」。このゼロパーティデータは信用経済の基盤となるものである。プライバシーとパーソナライゼーションの舵取りにゼロパーティデータがどのように役立つかについては、ファテマ・カティブルー氏のアドバイスをチェックするとよいだろう

責任ある行動を

信用経済とは、実のところ、マーケティング担当者として自分が何を売り込みたいのかを自問することである。消費者との関係をどのように考えているだろうか。消費者の気持ちに配慮しているだろうか。どのような関係を望んでいるだろうか。プライバシーは、消費者との関係を構築するための要素だ。最も重要なのは説明責任である。広告費を投入する対象について、説明責任を果たす必要があるのだ。今こそ、ヘイトを支持すること、最悪な状態の社会を擁護すること、分裂をあおることを止めるときだ。責任を持ち、社会問題に関心を持ち、信頼に基づいて顧客との有意義な関係を築いていこう。

関連記事:IAB Europeの広告トラッキング同意フレームワークがGDPR規格に適合しないことが判明

カテゴリー:ネットサービス
タグ:コラム 広告業界

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(翻訳:Dragonfly)

IAB Europeの広告トラッキング同意フレームワークがGDPR規格に適合しないことが判明

広告業界団体のIAB Europeが作成した、行動ターゲティング広告でインターネットユーザーの同意を取り付ける主力のフレームワークが、データ保護で要求される法的基準を満たさないことが、EUデータ監督局の調査で明らかとなった。

プログラマブルな広告のリアルタイム入札(RTB)コンポーネントにおける個人データの利用に関する告発を受けて、ベルギーのDPAは調査を開始した。高速の個人データ取引は、EU法に組み込まれたデータ保護要求へ本質的に適合できないとするものだ。

IAB Europeの透明性と同意の枠組(TCF)はヨーロッパのあらゆるウェブに出現し、ユーザーへ広告トラッカーの同意(または拒否)を要求する。広告業者がEUのデータ保護規則に従いやすくするのが、表向きの目的だ。

これは、2018年5月にEUの一般データ保護規則(GDPR)が開始し、欧州地域のデータ保護規則が大幅に変更されたことに応えて、広告業界の規格団体が作成した内容である。GDPRは個人データ処理の同意に関する基準を厳しくし、準拠しない場合は大幅な罰則を適用するため、広告トラッキング業界の法的リスクが増している。

IAB Europeは2018年4月にTCFを導入し、その時点では「デジタル広告のエコシステムがGDPRとeプライバシー指令の要件に適合しやすくなった」と述べていた。

今年8月にフレームワークを導入したアドテックの巨人であるGoogleを含めて、同フレームワークは広範に普及している。

欧州以外でも、IABは最近、同じツールの別バージョンをカリフォルニア州の消費者保護法への「準拠」に使用するよう働きかけている。

しかし、ベルギーのデータ保護当局の調査部門が発見した内容は、フレームワークが名目上の目的を満たしていないことを示唆しており、フレームワークの採用に疑問を投げかけている。

TechCrunchがレビューしたベルギーDPAの捜査サービスのレポートでは、多数の懸念事項が発見されている。これには、TCFがGDPRの公開性、公平性、説明責任の原則に適合していないことや、データ処理の非合法性が含まれる。

また、TCFが特殊カテゴリー(健康情報、支持政党、性的嗜好など)で十分な規定を設けていないにも関わらず、データを処理していることも指摘されている。

また、IAB Europeの評判を著しく損なう事例も報告されている。DPAの検査官はデータ保護担当者の不在や、社内のデータ処理活動を記録していない事実を発見した。

IAB Europeのプライバシー方針も、十分とは言えないことが指摘されている。

私たちはIAB Europeに対し、検査官の発見内容に対するコメントを要求した。更新情報:本記事の末尾に、最初の回答が記載されている。更新情報2:広告規格団体は声明を発表し、TCFが「最小限のベストプラクティス」を含む「任意参加の規格」であることを説明している。また、「広告業者によるTCFの解釈に基づき、IAB Europeがデータを取得しているとする、(ベルギーDPAによる)法の拡大解釈に対し、敬意を表しつつも反対いたします。」とし、こう付け加えている。「(ベルギーDPAによる)解釈が認められた場合、業界に属する企業を支援し消費者を保護することを目的とした、オープンソースの準拠規格作成が大きく勢いをそがれます」。

過去2年間にわたり、イギリスとアイルランドを筆頭に、欧州全体でRTBに対して多数の告発が寄せられている

最初のRTB告発を提出し、アイルランドの人権評議会でシニアフェローに就任したJohnny Ryan博士は、TechCrunchにこう答えた。「TCFは、行動ターゲティング広告とトラッキング業界に深く浸透している、違法の可能性がある大量のデータ侵害に対してトラッキング業界が応急処置を施した成果です。今回、ベルギーDPAがそれをひき剥がし、違法性を暴露しました」。

Ryanは以前、RTB問題を「史上最大のデータ侵害」と呼んだことがある。

先月、彼はRTBがどれほど広範囲に、かつ問題ある方法で個人データを漏洩しているか、戦慄すべき証拠一式を発表した。データブローカーが2019年のポーランド議会選挙の結果を左右するため、RTBを使用してLGBTQ+コミュニティの人々をプロファイリングしていたことなどが記されている。また、別のデータブローカーがアイルランドのインターネットユーザーを「薬物乱用」、「糖尿病」、「慢性痛」、「睡眠障害」などのカテゴリーに分類してプロファイリングし標的としていたことも判明している。

RTBに対する最初の告発を手掛けた弁護士、Ravi Naikは声明を通じ、ベルギーの検査官が発見した内容についてこう述べている。「この発見結果は衝撃的で、しかも遅すぎます。模範を示すべき存在であったIABは、今やGDPRの違反の元凶です。監督局は、IABがデータ所有者に対するリスクを「無視」していることを、当然のごとく発見しました。IABの責任は今や、こうした侵害を止めることにあります」。

RTBに対する告発を受け、イギリスのデータ監視団体であるICOは2019年6月に行動ターゲティング広告に対して警告を発し、業界に対してデータ保護基準に適合する必要性を促している。

しかし、規制当局は強制力のある行動を起こせていない。口調の柔らかなブログ記事がいくつか発表されただけだ。最近では、コロナウイルス感染症が理由で、本件に関する(進行中の)捜査活動を一時的に停止している

昨年度起こったもう一つの事例では、アイルランドのDPCがGoogleのオンラインAd Exchangeに対する捜査を開始し、個人データの処理の違法性を調べ始めた。しかし、この捜査はほとんど手が付けられていない案件の山に埋もれたままである。また、アイルランドの規制当局は、ITの巨人が関わる大規模な国際GDPR事例では、決断までに時間がかかりすぎると批判を浴びている

アムステルダム大学でデータ保護を研究する博士研究員であり、かつベルギーの事例では原告の一人でもあるJef AusloosはTechCrunchに対して、DPAの行動は他のEU規制当局へも対応を迫っており、そうした組織の「身がすくんで全く何もできないでいる実態」を浮かび上がらせていると述べた。

彼はこう付け加えている。「今後数か月から1年の間に、アイルランド当局の行動を待たずに他のDPA組織がしびれを切らし、自身で対処を開始することになるでしょう。

データ保護当局がオンライン広告業界を根底から突き崩すため、ようやく動き出したことは歓迎すべき兆候です。監視資本主義を打破するための、重要な最初のステップと言えるでしょう」。

規制プロセスには多数の作業が存在するため、ベルギーDPAが検査官のレポート内容に従い、具体的な行動をとるまでにはまだ数段階のハードルがある。私たちはベルギーDPAへ意見を求めて打診した。更新情報:以下を参照していただきたい。

しかし、原告によれば、検査官が発見した内容は訴訟局へ移管されており、2021年初頭には何らかの行動がとられると予想されている。つまり、EUでプライバシー保護を求めて活動する人々は、近い将来に広告トラッキング業界/データ処理産業体に対して、ようやく自らの権利を主張できるようになる可能性がある。

広告業者にとっては、コンテンツを収益化する方法を変革しなければならないことを意味する。疑わしい広告に代わり、人権を尊重した代替の手法(個人データを利用しない、コンテキスト別の広告ターゲティングなど)がとられる可能性がある。一部の広告業者はすでにコンテキスト広告に切り替え、収益を上げる方法を見出している。会員制のビジネスモデルも可能となる(ベンチャーキャピタルの一部には反対する声もあるだろうが)。

更新情報 I:次の行動と決定を下すまでにかかる予想時間について、ベルギーDPAの広報担当者は私たちの質問にこう答えた:「手続きの点でいえば、調査サービスのレポートはベルギーDPAの訴訟局へ移管されたため、訴訟局が妥当性を評価して案件を審査します。

現時点では、訴訟局がこの案件に関して決断を下すまでにかかる期間を予想することは差し控えたいと考えています」。

更新情報 II:レポートに対する意見を求められたIAB EuropeのCEO、Townsend Feehanは、私たちに対して広告規格団体は間もなく声明を発表する用意があると答えた。また、レポートのタイトルについて、Feehanはこう述べている。「タイトルは誤解を招きかねません。事実とは異なっています」。

どの部分が事実とは異なっているのかについては、Feehanは「GDPR標準に適合しない」とした部分を指摘し、「規制当局の裁定であるとの印象を強く与える」と反論した。

私たちの報道は、ベルギーDPAからの説明と引用を含め、手続きが現在進行中であると明確に述べていると指摘した際、Feehanはこう述べている。「私の考えでは、タイトルが誤解を招きやすい表現になっています。捜査の初期段階において『TCFがGDPR基準を満たしていない』ことが判明したと述べていれば、より正確に事実を描写しているはずです」。

特殊カテゴリーのデータについては、Feehanはこう主張する。「TCFを通じて特殊カテゴリーを処理することはできません。

レポートの細部に踏み入ることは避けますが、タイトルだけをとれば、TCFがGDPRに違反しているとDPAが発見したかのような印象を受けますが、それは事実とは異なります」。また、こうも付け加えている。「数時間のうちに、さらに詳細な声明を発表します」。

更新情報 III:IAB Europeのウェブサイトで、ベルギーDPAの捜査で判明した内容に関する声明の全文が読めるようになり、そこではこう述べられている。「APDのレポートはAPDの捜査部門による初期見解に基づいており、IAB Europeがいかなる意味でも法律違反を犯したと断定する拘束力は持ちえません」。

関連記事:EUのウェブサイトにおけるGoogleアナリティクスとFacebook Connectの使用禁止を求め集団訴訟が発生

カテゴリー:セキュリティ
タグ:広告業界 プライバシー GDPR

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(翻訳:Dragonfly)

ポッドキャスト広告におけるビジネスインテリジェンスの問題

著者紹介:クリスティーナ・ルビーノ氏は、Right Side Up(ライト・サイド・アップ)社のマーケティングエグゼクティブとして、オフラインにおけるグロースマーケティング活動を主導している。

グラント・ドゥランド氏は、現在、グロースマーケティングのリーダーとして、ライト・サイド・アップ社においてポッドキャストおよびオフライン広告のコンサルティングを行っている。

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ポッドキャストの利用とエンゲージメントに関する統計情報の収集と公開には、かなり重大な問題が数多く存在している。このメディアの分散型特性のために広告技術がいまだに発展途上であることも相まって、ユーザーの利用状況、広告の露出と効果を把握することが難しくなっている。また、 マーケターがこれらのチャネルで直面する課題についても、誤報や誤解が数多く見られる。

こうした問題はどれも新規および追加の広告投資を妨げ、チャネルにおける投資関係者全員のビジネスチャンスを奪うことになるため、クリエイターやパブリッシャー、ネットワーク関係者にとって広告収入の成長を阻害するものとなっている。業界全体に求められていることは、無料の統合レポートソリューションや新しいビジネスベンチャーを活用してより包括的なデータの収集と公開を行い、最終的にそれをポッドキャスト広告の成長につなげることだ。

ポッドキャストの配信、利用、コンバージョンに関する分析については、常に課題が指摘されてきた。ある業界では、2021年の広告費が10億ドル(約1050億円)を超えると推定されているが、驚くべきことにその広告にはRSSが使用されるという。確かに安定した技術ではあるが、数十年前の、文字通り大変シンプルな配信技術である。このテクノロジーにはデータフローが単方向であるという特性がある。公開が容易であるため普及率は高く、クリエイターにとってもコンテンツを共有しやすいメディアではあるが、広告主にとってはパフォーマンスを測定して広告費の投資先を決定するのが難しいという欠点がある。さらに、このメディアに特有の、クリエイター、サーバー、配信先やエンドポイントが分散しているという状況が、この問題をさらに複雑にしている。

クリエイター側では、Art19(アート19)Megaphone(メガフォン)Simplecast(シンプルキャスト)などといったホスト統合サービスの増加や、IABの影響を受け、ポッドキャストの配信分析の正規化が始まっている。一方、広告主側では、消費やコンバージョンの分析がいまだ大幅に遅れている状況にある。我々のようなパフォーマンス重視のマーケターや、我々がサポートするような成長著しいテクノロジー企業にとって、広告費の投資利益率を測定することは必須である。

ポッドキャストはビジネスインテリジェンスの点で他のメディアチャネルよりも遅れているため、消費者へのリーチ力や購入行動に与える影響が大きい割に、十分な投資がなされていない。このことは、今年の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、ポッドキャスト広告に非常に関心を持っている広告主や、すでに多額の投資を行っている広告主から、「新型コロナウイルス感染症とそれに伴うライフスタイルの変化により、ポッドキャストの利用状況も影響を受けているのか。受けているとすればどのような影響か」という非常に基本的な質問が出されたことからも分かる。

分散型ポッドキャストの広告データにおける課題

信頼できるパートナー企業に、それぞれの番組の現状について取材した。Acast(エーキャスト)でセールスおよびブランドパートナーシップの米国ディレクターを務めるNick Southwell-Keely(ニック・サウスウェル・キーリー)氏によると、「パンデミックにもかかわらず、ポッドキャストの再生回数はこれまでで最多となっている。[7月]には、1万件を超えるポッドキャストエピソードを含むポートフォリオ全体で、再生回数がエーキャスト史上最高の日が発生した」という。実際、他のほとんどのパートナー企業から同様の情報が得られた。しかし、このようなデータは集計されていないため、1社だけへの取材や1本のレポートだけで全体像を把握することはできなかった。さらに重要なこととして、それぞれのパートナー企業から得られたような情報を証明するサードパーティーの見解も発表されていないのだ。

広告のパブリッシャー、代理店、関連企業からは、質問への回答が多数寄せられた。それにもかかわらず、数か月経った今でさえ、何かが生じたのか、生じたとすれば実際にはどのようなことか、それは現在も続いているのかといった問いに対し、チャネル全体の一元的かつ本質的な情報は得られていない。むしろ、マイクロトレンドを特定してそこに資金を供給できるよう、引き続きさまざまなパートナー企業に対する調査を行っている。このような現状は、有料検索メディアや有料ソーシャルメディア、「従来の」接続型メディア(TV、CTV/OTTなど)といったネイティブなデジタルチャネルとは対照的だ。そのようなチャネルでは、メディアに投資する際の参考となる統合レポートをマーケターに提供しているためだ。

新型コロナウイルス感染症の流行により露呈したポッドキャストメディアの不透明な挙動は、分散型の(あるいは、存在しない)世界的な調査ベンダー/企業が直面している課題や、広告主の収益が受けている可能性がある影響に関する最近のケーススタディの1つにすぎない。分かりやすい例を挙げよう。ある広告主は、ダウンロードに関するレポートを取得できず、投資の効果が得られないことを心配し、配信不足を恐れるあまり、定額料金単位の広告をキャンセルしたため、収益増加のチャンスを逃す結果となる。広告業界にとって、ポッドキャストの広告費が予測額を超えることよりも、このような基本的な欠点について説明することの方が重要と言えるだろう。

投資の効果が得られないことを心配する広告主は、配信不足を恐れるあまり、広告をキャンセルし、収益増加のチャンスを逃してしまうかもしれない。

指標やインテリジェンスが不明確なポッドキャスト広告に希望があるとすれば、それは優秀なグロースマーケターたちがこの新しいメディアを採用し、それを最大限に活用してパーソナライズした広告を使ってコンバージョンを増やそうとしていることである。それらの「ベテランたち」は、需要と料金がデータとともに増大する広告業界において、今のところ比較的目立たない存在であるポッドキャスト広告を巧みに活用している。

Babbel(バベル)でオフライングロースマーケティングのシニアマネージャーを務めているAriana Martin(アリアナ・マーティン)氏は、次のように述べている。「一方、パーソナリティーによる読み上げ広告を使ったポッドキャストマーケティングは、パーソナリティーの技量に依存するという側面もあり、時代やポッドキャストの内容によって効果が変化する可能性がある。このような要素が関係するため、ポッドキャストマーケティングがデータのみで単純に判断できるものになるとは言い切れない。ポッドキャストのデータは限られているという点を受け入れた上で、例えば、ポッドキャスト[広告]による売上を[アンケート調査]で特定する[など]、結果を判断するための基準があるのであれば、ポッドキャストは非常に有用だと言える」。

では、革新的ではあるものの、少数のブランドだけが利用している秘密のチャネルのようなポッドキャスト広告が、業種や業界全体に普及するために必要なものは何だろうか。

ここからは、ポッドキャスト関連のデータが普遍的ではないという問題と、その問題が広告主やパブリッシャー、サードパーティーの調査/追跡組織、そして広い意味ではポッドキャストのエコシステムにどのように損失となるかについて説明しよう。また、ポッドキャスト広告の利用率を増やしていくためのステップや、業界の今後の展望についても概説していく。

ポッドキャストの測定に関連した根強い誤解

1. ダウンロードの標準化

多くの記事では、注目を集めているこの成長中のチャネルが、より確立されたメディアタイプと比べて広告収入の点でどれほど遅れているかについて、正規化されていない「リスナー」数や「ダウンロード」数を根拠にしようとしている。ライト・サイド・アップ社は、直接の広告主によって実行されるスケーリング済みプログラムのほとんどをサポートしており、DR購入力においては業界トップ3に入っているが、把握している限りでは、ほとんどのパブリッシャーはIAB Podcast Measurement Technical Guidelines(IABポッドキャスト測定テクニカルガイドライン)バージョン2.0を採用している。

さまざまなネットワークや番組において、CPM計算の基礎成分となる変数、つまり非標準的な「ダウンロード」を測定する際にこのガイドラインを使用できるため、同じ基準による比較が可能となった。このガイドラインが広く採用される前は、あるパブリッシャーが言う「ダウンロード」と別のパブリッシャーが言う「ダウンロード」が同じものかどうかを判断できなかったため、特定のCPMを使ってパフォーマンスマーケティングの成果を予測することが困難だったのである。

ただし、Chartable(チャータブル)のCEOであるDave Zohrob(デイブ・ゾロブ)が指摘しているように、IAB 2.0ガイドラインはユニークユーザーの識別に関する問題を完全に解決しているわけではない。「ある種の匿名化されたユーザー識別子を使用してリスナーの規模を適切に計算することが望まれる。IABガイドラインでは、手元のデータに基づく概算が提供されるが、それぞれのIPまたはユーザーとエージェントの組み合わせが表す実際のリスナー数を知ることができれば、大変有用だろう」。

2. 広告配信の証明

多くの記事で成長阻害の原因として指摘されている2つ目のビジネスインテリジェンスの問題は、「配信証明」がないことである。広告のインプレッションを確認できず、チャネルに投稿ログがないため、ポッドキャストの広告主がスポットの実行を確認するためには、ポッドキャスト広告そのものの「エアチェック」(録音された音声の確認)を行う必要がある。

昔からポッドキャストを使っている広告主は、未熟なスタッフからなるフルタイムのチームから電話やメールで面倒なエアチェックを求められたことや、時にはスポットの実行確認に1週間以上もかかったことを記憶している。このように正確な支出レポートを提供するのに時間がかかったため、パフォーマンスを重視するマーケターの迅速な要望に応えられず、ポッドキャストは遅く、柔軟性がなく、融通が利かないメディアタイプであるという印象を与える結果となった。

エアチェックの収集が体系的に行われるようになったことは、費用の検証だけでなく、創造的なコンプライアンスと最適化という点でも、ポッドキャスト広告への信頼を高める出来事であった。興味深いことに、これらのサービスを提供している企業が主に行っているのは実際には別のビジネスであり、ほとんどの場合、この機能は別の開発過程における副産物として誕生している。例えば、我々の良きパートナーであるMagellan AI(マゼランAI)は、本来、優秀なインテリジェンスプラットフォームであるが、広告主にとってエアチェックが問題となっていることに気付き、このサービスも提供するようになった。また、AI企業のVeritone(ベリトーン)は、エアチェックサービスを同社の広告代理店事業、Veritone One(ベリトーン・ワン)に関連付けて提供している。さらに、Podsights(ポッドサイツ)は、ピクセルベースのアトリビューションモデリングソリューションである。

3. 競合分析

最後に、競合分析とメディアリサーチは未解決の課題となっている。マゼランAIとポッドサイツは、業界活動を示す有料および無料のさまざまなレポートを提供している。このようなレポートでは、関連のあるポッドキャストの広告活動について、番組、広告主、カテゴリなどを検索でき、全体像とは言えないが、ある程度の方向性を見極めることができる。完璧ではないが、ポッドキャストに参加するかどうかを決定する際に、業界を垣間見て検討するには十分なリソースだと言えるだろう。

ポッドサイツの創業者、Sean Creeley(ショーン・クリーリー)氏は、適切にも次のように指摘している。「ポッドキャストを推進したいという思いから、ポッドサイツでは調査データ、分析、投稿などをすべて無料で提供している。DIYの広告主としてポッドキャスティングを採用する [ブランド]には、実に大変な作業が求められる。このような調査結果を見れば、少なくとも同じ分野の企業が何をしているのか理解できるだろう」。

パブリッシャーにとって役立つ非技術的なツールもある。Wonder Media Network(ワンダー・メディア・ネットワーク)の共同創業者であるShira Atkins(シーラ・アトキンス)に、ポッドキャストに関する調査をどのように行っているか尋ねたところ、驚くには当たらないが、非常に斬新な答えが返ってきた。「正直に言うと、私が行っている『調査』とは、本当に有能でポッドキャストを愛用している営業担当者の知人3~5人にテキストメッセージを送ったり電話をかけたりすることだ。私が高校生の時にラジオの営業をしていた人たち、ポッドキャストの複雑さを分かっている人たちは、パブリッシャーと広告主のどちらにも役立つキャンペーンをうまく展開している。異なる業界の在庫を追跡して、どのくらい売れているかを追跡する方法があればいいと思う。はっきりしているが、ポッドキャストで成功するための良い方法は、トップクラスのパブリッシャーの番組のサンプルを聞いて、どのように販売しているか、どのような広告を流しているかを体感することだ」。

ポッドキャスト広告の問題は、ダウンロードの標準化、支出の検証、競合調査などによって解決されているとはいえ、チャネルには克服すべきハードルがまだ残っている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:広告業界 ポッドキャスト

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(翻訳:Dragonfly)

「トラッキングは広告収益増に絶対必要」という思い込みを覆すオランダ国営放送局の事例

「ウェブ上でユーザーを追跡し、その行動履歴を元にターゲットを絞って広告を配信するという、プライバシーに反した手法で、果たしてパブリッシャーはどの程度の収益を手にしているのか」と疑問に思ったことがあるだろうか。議論の的となってきたこの点について、プライバシー重視のブラウザBrave(ブレイブ)が、オランダの国営放送局NPOから許可を得て入手した興味深いデータを公開した。

このデータによると、NPOが今年1月から6月までターゲット広告用のトラッカー使用を停止したところ、広告収益が増えたという。しかも、3月に新型コロナウィルス感染症のパンデミックが始まり、世界的にデジタル広告が大きな打撃を受けたのにも関わらず、そのような結果となった(例えば、Twitter(ツイッター)は第二四半期の広告収入が約4分の1減少したと報告している)。

NPOが運営するさまざまなウェブサイトにおけるオンライン動画の視聴者数は月710万人、月あたりの表示リーチは580万人に達する。同局は今年1月に、それらのウェブサイトに表示する広告をコンテキスト広告に切り替えた。

Braveが今回公開した過去6か月分のデータの分析結果によると、当該期間中、NPOの広告収入は毎月増加している。監視資本主義を機能させるための基盤として使われてきたアドテック(広告テクノロジー)の泥沼から抜け出したNPOの広告収益は、以下のように毎月、前年比増を続けている。

  • 1月:62%、2月:79%、3月:27%、4月:9%、5月:17%、6月:17%

今月初め、BraveはNPOの5か月分の広告収益データを公開した。したがって、上記のデータは、このトピックについてBraveが少し前に投稿したブログ記事に掲載されたデータの最新版となる。NPOの広告販売会社であるSter(ステア)から提供されたこの最新のデータでは、数字が若干上方修正されている。要するに、非追跡型広告の収益は、パンデミック発生中も含めて半年間、増え続けているということだ。

行動ターゲティングからコンテキストターゲティングに切り替えることで広告収益が増加するという話を、現在、広告トラッキング業界とトラッカー擁護派から聞くことはない。いわゆる大手プラットフォームは、インターネットのアテンションエコノミー(人々の関心や注目の度合いが経済的価値を持つという概念)とデジタル広告を売買するためのデジタルインフラをがっちり押さえることによって、この5年間ほど莫大な収益を上げてきた。(一方で、このデジタル広告好況期においてもパブリッシャーの広告収入は多くの場合停滞または低下してきた)。

アドテック業界は、コンテンツ制作者が読者監視システムの排除を余儀なくされたら、パブリッシャーの収益は大幅に減少する、と主張し、トラッキングとターゲットの絞り込みは切っても切れない関係にあると考えたがる(Google(グーグル)の広告プラットフォーム担当副社長は昨年、AdExchanger(アドエクスチェンジャー) に対して、トラッカーをブロックすることでパブリッシャーのプログラマティック広告収入が減少すると、CPMが半分に削減される可能性があると述べている)。

驚いたことに、広告トラッカーの使用を中止した後パブリッシャーの広告収入が増大したという報告はこれが初めてではない。

Digiday(ディジデイ)が昨年報じたところによると、New York Times (ニューヨークタイムズ)が欧州の大幅な規制改正を前に追跡型広告を停止してコンテキスト・地理ターゲティングへと切り替えたところ、広告収益が増加したという。

ニューヨークタイムズには、すべてのパブリッシャーが持つわけではない、一定のブランド力がある。そのため、トラッキング業界は、ニューヨークタイムズのケースを他のパブリッシャーでも広く再現することは不可能だ、と反論している。そんな中で公開されたNPOのデータは、同局のコンテンツが支配的でないウェブサイトにおいてさえ広告収益が増加したことを示しているという点でより興味深いものだ、とBraveは分析する。

NPOのポリシー/インダストリー・リレーションズ最高責任者Dr Johnny Ryan(ジョニー・ライアン)博士は次のように書いている:

NPOとその広告販売会社ステアは、コンテキストターゲティング広告とそのテストに投資し、同社のコンテンツが支配的ではないサイトでも大幅な収益増を達成した。確かにステアにはNPOのメディアグループ全体の広告在庫を一手に扱えるという強みがある。2019年の収益増はそのおかげだったかもしれない。しかし、2020年の収益増はそれでは説明がつかない。パブリッシャーに市場優位性がない場合でも、サードパーティによるトラッキングを止めて、NPOのように大幅な収益向上を実現することは可能だ。

ライアン氏は、(ジャンクやクリックベイトなどではない)「正当な」パブリッシャーであれば、規模に関係なくNPOのように広告収益の増加を実現できると考えており、その理由を以下のように語っている。

NPOは国営放送グループではあるが、そのさまざまなウェブサイトはオランダのウェブトラフィックランキングの上位を占めているわけではない。NPOのウェブサイトのうち、その分野でオランダの上位5位以内に入っているサイトはNos.nlだけである。NPOの他のウェブサイトはオランダの上位100位以内にも入っていない。Similar Web(シミラー・ウェブ)が(オランダの他社サイトと比較して)算出した他のNPOサイトのトラフィックランキング推定順位は、オランダの人気サイトランキングの180位~5040位の範囲に収まる程度である。NPOウェブサイトの人気や各コンテンツ分野の市場での地位は、販売インプレッション数の増加とは無関係だ。全国サイトランキング、カテゴリ別のサイトランキング、ページビュー数はそれぞれのウェブサイトによって大きく異なるが、インプレッションの増加は、すべて83%を超えている。1つ例外があるが、原因ははっきりしている(該当期間中に技術的な問題が発生し、最も人気のあるプログラムの1つにおける広告表示が阻止されたことが原因だった)。

もちろん、トラッキングに反対する市場の価値観と一致した収益モデルを持つBraveにとって、これは自社を宣伝するチャンスだ。しかし、だからといって、追跡型広告の中止によりNPOの広告収益が増加したという事実が持つ意義が損なわれることは決してない。

NPOのプライバシー担当責任者であるJoost Negenman(ヨースト・ナインマン)氏はTechCrunchに取材に対し、「コンテキスト広告に切り替えることで広告収益が増加するなど思ってもみなかった」と答えた。同氏によると、コンテキスト広告への移行は、昨年半ば頃、NPOが使っていたプログラムによるターゲティング広告システムは、同局が担う「公的役割」と相反するものだと自ら確信したために実施されたのだという。

「広告収益はかなり減るだろうと思っていた」とナインマン氏は語る。コンテキスト型への移行時点で、ステアが自社のプログラム型広告システムに必要なCookieの使用についてユーザーから獲得していた許諾率は10%程度にすぎなかった。ちなみに、GDPR(一般データ保護規則)の施行前は許諾率は75%を超えていた(これはおそらく、当時のCookie同意モジュールが「明示的ではなく暗黙の同意」に基づくものだったからだと思われる。GDPRでは、同意を法的に有効なものとするには、具体的で、十分な告知がなされ、自由に決定できるものでなければならない)。

「当時は洗練された代替テクノロジーが存在しなかったこともあり、NPOとステアが市場で標準となっていたアドテックを拒否すれば、広告主から完全に無視されるだろうと思っていた。ところが幸いにもこれは我々の誤算だった。プログラマティック型広告ソリューションを信奉し広めていたのがオンラインの商売人や企業だったという点も幸いしたのだろう」。

ナインマン氏は、コンテキスト広告に切り替えたことで以外にも広告収益が増加した要因として、NPOとその関係放送局の「Aブランド」としての強みがあったことを指摘する。つまり広告主はコンテキスト広告への移行後もユーザーにリーチできることを望んだのだ。また、プライバシー保護を支持する時代精神を味方につけたことも収益増に貢献した。

「アドテックのユーザー監視機能が強化されていることには誰もが気づいていた。この点は説明不要だろう」とナインマン氏は言う。

NPOがコンテキスト広告へ移行するにあたり、かなりの投資が必要だったことも指摘しておく必要があるだろう。例えば、記述的メタデータを構築することで動画コンテンツでより精密なコンテキストターゲティングが行えるようにするなど、ウェブ資産全体でコンテキストターゲティングを実現するテクノロジーのためにNPOはかなりの額を費やした。NPOと同レベルの高度なコンテキスト広告ターゲティングを実行するための資金を、すべてのパブリッシャーが用意できるとは限らない。

それでも、NPOのようにコンテキスト広告への移行後も継続的に広告収益増を達成できるとなれば、投資は短期で回収できる。初期投資をするだけの資金的余裕のあるパブリッシャーにとっては、今回のNPOのケースはかなり説得力のある事例だ。

「投資は1か月程度で回収できた。グーグルや他の仲介業者に支払う料金がすべて不要になった点は大きい。1ユーロの広告が売れれば、その1ユーロすべてがSterの収益になるからね」とナインマン氏は語る。

同氏はまた、オランダではNPOに対して90%以上のコンテンツに字幕を付けることを義務化する法律が制定されたため、コンテキストターゲティングを構築するための厄介な作業の一部がすでに終わっていたという点も指摘する。

「字幕データは当然価値のある記述的メタデータとなる。つまり、必要な前準備はある程度整っていたということだ。ただし、最近は比較的容易に自動作成できるようになっている字幕以外にも、(サブ)ジャンル、クレジットの俳優名などの標準的な番組情報も動画コンテンツにコンテキストを追加するのに大いに役立つ」とナインマン氏は語る。

Braveのライアン氏は、NPOの広告販売会社ステアもコンテキスト広告の成功に重要な役割を果たしたと推測する。「小規模なパブリッシャーは、ステアがNPOのさまざまなウェブ資産に対して行っているように供給を集約できる評判の良い広告販売会社と連携することで利点を享受できる。広告主や代理店が評判の悪い販売会社から広告を購入する場合は別として、どんな規模のパブリッシャーでも、その利益は評判の良しあしによって決まる」と同氏は言う。

コンテキスト広告への移行がすべてのパブリッシャーでうまくいくと思うかという質問に対して、ナインマン氏は、「そこまでは思わない」という。同氏は「すべてのAブランドのパブリッシャーには、このアプローチは確実に機能する。報道機関も、そのようなシステムへのフィードとして完全な(メタ)データを所有している」とし、市場にはコンテキスト広告にもターゲット型広告にもそれぞれに適した需要があると指摘する。

「すべてのオンライン広告が同じではない。オンラインでしつこく追いかけてくる追跡型広告でAブランドの認知度を獲得することはできない。コンテキスト型システムを開始することでおそらく、ユーザーが追跡されることないプライバシー保護の『楽園』が構築される。このシステムはそこで、広告収益とオーディエンスの尊重の両方においてその価値を証明することになる」とナインマン氏は語る。

「他の国営放送局にも、少なくともコンテキスト型広告のテストを開始する道義的責任があると思う。「アドテックシステムによる個人データと行動データの利用は正当化できないレベルに達しているため、GDPRに規定されている情報に関する義務を順守するのはほとんど不可能になっている」と同氏は付け加える。

アドテックプラットフォームによるユーザー情報の利用がもたらすさまざまな被害が増える中、前述の通り、プライバシーを侵害する監視資本主義に代わる実行可能な代替策があるという証拠が次々に発見されている

あらゆるタイプのパブリッシャーにとってコンテキスト型広告が収益増につながるというわけではないが、追跡型でなければ絶対にダメだという考え方はまったくの間違いだ。

(低俗なパブリッシャーを支えているユーザーデータの乱用は社会的悪であり、したがって、他人の不幸を利用するクリックベイト(および膨大な広告詐欺)を支えているシステムを支持することも(利益を手にする悪質業者以外の)すべての人にとって悪であるという、筋の通った主張もできる)。

ライアン氏は、従来型のアドテックを「正当なパブリッシャーをむしばむガン」とまで言い切る。以前、PageFair(ページフェア)という広告ブロックの解除を行うアドテック企業に在籍したことがあり、自身が酷評する悪質な企業の内部で働いた経験がある同氏だからこそ、その批判には容赦がない。

ライアン氏は内部関係者としての専門知識を生かして欧州の規制当局に多くの問題点を提起しており、とりわけ、プログラマティック広告が依存しているリアルタイムビディング(RTB)に反対している。RTBは、大量のインターネットユーザーの個人情報を集めて、手当たり次第に吐き出すからだ。

このような個人データの高速なやり取りは、個人情報は安全に扱う必要があり、紙ふぶきのようにまき散らすべきではないと規定されている欧州のデータ保護フレームワークと真っ向から対立する、というのがライアン氏の意見だ(ただしRTBについては、個人データを除外した上でコンテキスト広告専用に使うのであれば問題ないと同氏は考えている)。

欧州のデータ保護規制当局は、現在のアドテックの利用には「合法性」の問題があることを認めてはいる。しかし、現時点では、問題が広範に及ぶことを考慮し、強制的な行動に出ることはせず手をこまねいている状態だ

(ナインマン氏によると、興味深いことに、NPOは個人データを除外した上でプログラマティック広告のRTB利用を継続することを検討したことがあるという。「とはいえ、結局のところ、このアイデアが実用段階まで進むことはないだろう。個人的には、規制に準拠した広告とRTBの組み合わせを想像することはできる。最も重要なのは、個人データを信頼できるデータパートナーの管理下から出したり広告主と共有したりしてはならない、という点だ」と同氏は付け加えた。)

アドテック業界という大型タンカーを方向転換させるには時間がかかる。この機会に追跡型の広告でユーザーを付け回すのを止めてコンテキスト広告を実験的に試すパブリッシャーが増えれば、市場全体がプライバシーを保護する方向にシフトする可能性は高くなる。そうなれば、NPOのケースが示すように、パブリッシャーとユーザーの双方にとって大勝利となる可能性がある。

一方、競争規制当局は大手アドテックの市場支配力の問題に迫っており、巨額のデジタル広告支出を大手プラットフォームへと流す役割を果たす「垂直統合された中間業者チェーン」によって生じる利害の対立にも注目している。公的機関の介入によってグーグルのビジネス帝国を分割しアドテックのアド(広告)とテック(技術)を切り離すことで強制的に市場を改革するという考えを思いつくのは難しくない。

監視資本主義の原動力である私利的な力は、その手法が個人データを搾取しているという事実に誰も目を向けることがないまま富を築いた。今、多くの目が大手プラットフォームに向けられており、彼らの天下が終わる日もそう遠くはない。変化が起きるかどうか、という段階はもう過ぎている。事態はすでに目まぐるしく変化しており、プラットフォーム各社自体もサードパーティによる追跡型Cookieへのアクセスを制限する方向へ動いている

パブリッシャーは、プラットフォーム各社の次のパワーゲームを見越して、すでに次の手を考えておくのが賢明だろう

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カテゴリー:セキュリティ

タグ:広告業界 プライバシー

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(翻訳:Dragonfly)

オフライン広告プラットフォーム「Bizpa」が正式版を提供開始、検索、見積もり、発注をワンストップで

ビズパは8月4日、全国のオフライン広告商品の検索から発注までをワンストップで行えるプラットフォーム「Bizpa」を正式版として提供することを明らかにした。2019年11月からベータ版をしており、取り扱い広告商品は700媒体、27,000点を超えている。具体的な広告媒体は、屋外の看板やデジタルサイネージ、紙媒体や店舗内ポスター、交通広告などのオフライン広告。10万円以下の広告商品が80%以上で、主な顧客や中小企業やスタートアップ企業とのこと。

Bizpaこれまでオフライン広告は、実際の掲載料が不明瞭だったり、デジタルサイネージの場合は掲出する時間や期間で掲載料に大きな差があるなど適正価格を知ることが難しかったほか、電話やFAXを使った在庫確認や見積書取り寄せ、発注などの業務も付随していた。Bizpaはこれらをまとめて解決するSaaSだ。

同社は今後は、取扱商品の拡充やプラットフォームのシステム強化を進めていく。具体的には、広告媒体のデータ充実、マッチング精度向上、クリエイティブ補助機能などを実装する予定だ。また商品数は、2020年内に4万点、2021年内に10万円を掲載を目指す。

同社は、2018年12月設立のスタートアップ。代表取締役兼CEOの石井俊之氏は、2006年に東証マザーズ上場、2016年に東証一部に上場したラクーン(現・ラクーンホールディングス)の創業メンバーの一人(ラクーンの創業は1993年、会社設立は1995年)。取締役副社長として執行部門を統括し、B2Bマーケットプレイス事業、B2B決済事業、子会社社長などを歴任した人物だ。

パンデミック時代に適合し動画制作方法を作り変えるVidMob

マーケターと動画制作者を結ぶマーケットプレイスとしてスタートしたVidMob(ビドモブ)は、今では自らを「クリエイティブテクノロジープラットフォーム」と位置づけている。現在もマーケットプレイスは残っているが、それは動画制作管理と、動画をオンライン広告に仕上げるための膨大なツール群の一部に収まっている。

VidMobは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下でも進化を続けてきた。この数カ月間でプラットフォームの使われ方が大きく変化した、と創設者でCEOのAlex Collmer(アレックス・コルマー)氏は私に話した。例えばそのプラットフォームの「最も上手な使い方」は、既存の映像を利用することだ彼はいう。テレビCM用に撮影されたものも含む映像資産を利用してソーシャルメディア用の広告を作ることだ。しかしご案内のとおり、「この数カ月間、実際の撮影はキャンセル」されている。

さらにコルマー氏は、企業はVidMobを単にソーシャルメディア用の広告ツールとしてではなく、動画の遠隔制作のための手段として使うようになってきたと話す。その結果、同社の「ロゴグロース」(つまり新規顧客)数が第1四半期で前年比100パーセントの伸びを記録し、第2四半期もさらに50パーセント伸びた。

「ここで起きているのは、企業のデジタル変革の加速化です」と彼はいう。「私たちのクライアントのほとんど、私たちが話を聞いたマーケーターの全員が、自分たちのクリエイティブな業務を、なんらかのソフトウェアプラットフォームに統合する方法を真剣に模索しています。今後もリモートで作業しなければならない状態が続いたとしても、安心できるようにです。また既存メディアをより効率化するためでもあります」。

そんなクライアントのひとつにCiti(シティ)がある。企業間コミュニケーション副社長Megan Corbett(ミーガン・コーベット)氏は、2019年からVidMobを利用していると私に話してくれた。パンデミックの結果、多くのマーケターがそうであるように、「プログラムの変更や規模の調整などを、本当の意味で迅速に柔軟に行う必要に迫られました」。

例えば「#InItTogether(一緒に頑張ろう)」ハッシュタグへの対応で、CitiはVidMobを使って従業員の活動を紹介し、人々の気持ちを鼓舞する動画シリーズを制作した。地域コミュニティーのために防護具を3DプリントしているMihir(ミハイア)を紹介した上の動画もその1つだ。

「どのような話を伝えたらよいかを考えたとき、大活躍するヒーローが自分たちの同僚の中にもいるということに気づいたのです」とコーベット氏は話す。

Citiによれば、2020年5月初めにキャンペーンを開始して以来、動画は25万回も視聴されたという。そのうちの80パーセントがLinkdin(リンクトイン)で再生されている。

パンデミックとシャットダウンが始まった当初でさえ対応がとても厳しかったが、人種差別への抗議運動や新型コロナウイルスの第2波や企業倒産などなど、ニュースは絶え間なく届く。

「当面の間、私たちは不安定な時代を生きていかなければなりませんが、正直言って、私はこれを好機と見ています」とコーベット氏。「消費者が何を求めているかを理解しているブランド、文化的時代精神に波長を合わせているブランド、ビジネスの主要業績評価指標を重視、連動し、そこから力を得るブランド……それが未来の勝利を手にします」。

同じくコルマー氏も、この不安定な時代に関して、ブランドはただ黙っているのではなく、より迅速に対応する必要があると話す。「何も言わず逃げていては、自分の立場を確立できません」。

関連記事:VidMob raises $25M for its video advertising tools

画像クレジット:scyther5 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

ユニリーバとベライゾンがFacebookから広告を引き揚げ

Facebook(フェイスブック)のコンテンツと収益化ポリシーに対する広告主の反発が拡大を続けている。

米国時間6月25日、TechCrunchの親会社であるVerizon (ベライゾン)は、「『我々の納得がいく、さらにTwitter(ツイッター)などのほかのパートナーとの我々の同意内容と一貫性のある解決策をFacebookが提示するまで』、FacebookとInstagram(インスタグラム)に出している広告を一時差し止める」と話した(The Verge記事)。

そして6月26日、一般消費財の大手Unilever(ユニリーバ)もこれに加わり、米国内のFacebookおよびInstagram、さらにはTwitterに出しているすべての広告を、少なくとも今年いっぱい停止すると話した。

「現在米国が抱えている二極化問題と、今年の大統領選挙を踏まえ、ヘイトスピーチの領域には極めて厳重な取り組みが必要です」とユニリーバのグローバルメディア担当上級副社長Luis Di Como(ルイス・ディ・コモ)氏はWall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)に語った

Facebookに対して広告主から圧力をかける取り組みは「#StopHateforProfit」(営利目的のヘイトを阻止しよう)キャンペーンから始まった。これは、Anti-Defamation League(名誉毀損防止同盟)、NAACP(全米黒人地位向上協会)、Color of Change(カラー・オブ・チェンジ、公民権擁護団体)、Free Press(フリープレス、メディアの民主主義を擁護する団体)、 Sleeping Giants(スリーピング・ジャイアンツ、リベラル派のソーシャルメディア活動団体)によって推進されている。このキャンペーンは、人種差別、反ユダヤ主義、ヘイトの犠牲者への支援を改善し、偽情報やヘイトに満ちた広告で利益を上げることを阻止するための変革を促すのが狙いだ。

Facebookから広告を引き揚げることに同意した企業には、アウトドアブランドのREI(アールイーアイ)、The North Face(ノースフェイス)、Patagonia(パタゴニア)も含まれる。ただし、Gizmodeによれば、これらの広告主がFacebook Audience Networkからも広告費を引き揚げたかどうかは定かではない。

Unilever:#StaySafe 私たちは米国内のFacebook、Instagram、Twitterの広告を停止する決断を下しました。

二極化の空気により、各ブランドには信頼できる安全なデジタル・エコシステムを構築する責任が増しています。私たちの行動は今から2020年末まで継続されます。

Facebookは、Unileverの発表を受けて次の声明を公開した。

私たちは、年間数十億ドルを投資し、私たちのコミュニティーの安全を守り、外部の専門家と協力して継続的に弊社ポリシーの評価と改善を行う努力を重ねています。私たちは公民権の監査を受け入れ、250の白人至上主義者団体をFacebookとInstagramから追放しました。私たちはAIに投資を行うことで、ヘイトスピーチの90%近くを検出し、利用者からの報告を受ける以前に行動を起こせるようになりました。最新のEUの報告には、Facebookは24時間に受け取ったヘイトスピーチの報告を、TwitterやYouTubeよりも多く処理できていると示されています。これで十分だとは思っていません。今後も公民権擁護団体、GARM(責任あるメディアのための国際連合)、その他の専門家と共に、この戦いを継続するためのさらなるツール、テクノロジー、ポリシーの開発を進めて参ります。

Twitterは、グローバル顧客ソリューション部門副社長Sarah Personette(サラ・パーソネット)氏を通じて次の声明を発表した。

私たちの使命は、Twitterを、公の会話を促し、人間同士のつながりの構築、正しい信頼できる情報の検索と収集、自由で安全な発言が行える確かな場にすることです。私たちは、公の会話を守り支援するためのポリシーとプラットフォーム機能を開発しました。そして常に変わらず、少数派コミュニティーや、社会から取り残された人々からの声を増幅することを責務としてきました。私たちは、パートナー企業の判断を尊重し、この期間も、彼らと密接に協力し対話を続ける所存です。

米国東部夏時間6月26日午後1時57分(日本時間で6月27日午前3時57分)の時点で、Facebookの株価は取引開始時よりも7%下落した。CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、米国東部夏時間6月27日午後2時よりタウンホール・ミーティングを開催し、これらの問題について話し合う予定だと語った

関連記事:Big outdoor brands join #StopHateForProfit campaign, boycott Facebook and Instagram ads(未訳)

画像クレジット:Alexander Koerner/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

英国、新型コロナ危機で広告業界に対するプライバシー侵害調査を一時見合わせ

新型コロナウイルスは、アドテック業界に思いがけない幸運をもたらしている。

英国のデータ保護規制当局はアドテック業界によるインターネットユーザーの個人情報の処理に対する調査を一時的に停止した。COVID-19の大流行によって事業に混乱がもたらされているため、対象となるプライバシー監視の一時停止は有益であるとしている。

情報コミッショナー事務局 (Information Commissioner’s Office:ICO)によるアドテック業界の慣行に対する調査は、2018年に当局に寄せられた、プログラマティック広告のリアルタイム入札に伴う体系的で大規模な個人データの高速取引に対する苦情に関連するものである。

それ以来この問題についてはEU全域で多くの苦情が申し立てられており、「現在までに記録された中で最大の個人データの漏洩である」と言われている。

これらの苦情が最初に申し立てられたのは英国のICOに対してであったが、この苦情は未だに解決されていない。

そして、今後もさらに待ち続けなければならない…

苦情申立人の1人、 BraveのJohnny Ryan(ジョニー・ライアン)博士は、彼が監視機関に継承を鳴らして以降、2年に渡り監視機関がなんらの規制も行わなかった事を「大変な驚き」と表現した。

「規制当局は、調査も含め、同局の持つ法的強制力を行使できていません」とライアン氏はTechCrunchに語った。「これは執行どころの話ではないのです。彼らの無策には驚くほかありません」

「これは驚愕に値します。私は英国における最大のデータ侵害であると申し立てていますが、これに対し誰かが異議を唱えるのを聞いたことはありません。この巨大な違反は日々継続しているのです。RTBによる膨大なデータ侵害はすでに終息した単独の出来事ではなく、繰り返されることで害は絶えず蓄積されています」

TechCrunchからもICOに対し、アドテックに対する調査見合わせの決定について問い合わせを行った。問い合わせには、高度な業界プラットフォームによる侵害に対し、英国市民は自らのデータに関する権利が守られていることをどう確信したらよいか、という質問を含めた。

規制当局は我々の質問には答えず、かわりに次のような一般的な声明を送ってきた。

ICOは先日、COVID-19の感染拡大を受け、その間の規制手法に関する提示を行い、その中で当局の優先事項とリソースの再評価についてお伝えしました。

これを念頭に、当局ではリアルタイム入札およびアドテック業界への調査を一時的に見合わせる決定を行ったものです。

現状においては、どの業界に対しても過度の圧力をかけることは避けたく思っております。ただしアドテックに対する懸念が解消されたわけではありませんので、当局では、適切なタイミングで数か月以内に調査を再開することを目指しております。

規制当局がこの苦情に関し、アドテック業界に対し「一時的休息」を与えるのは今回が初めてのことではない。

実際、今までに数々の「警告」が発せられ、穏やかな文言が並ぶブログ(これや、これ、それにこれのような)が投稿される期間がそれに続いた。規制の執行は、というと、皆無なのである。

一方、EU一般データ保護規則 (GDPR)は今月末で2歳になる。つまり、更新されたフレームワークが適用されることになってから、丸2年が経過する。

多くのプライバシー専門家や運動家は、市民のデータへの法的保護措置に対して行われた最も重要なアップデートに伴って実施された規制執行(1995年にまで遡る)の量と質に疑問を投げかけている。

ライアン氏は、ICOによる規制放棄はEUデータ保護体制全般の成功を反映していないと述べ、英国の規制当局はEUに加盟する(ブレグジット後の)27カ国の中で最も豊富なリソースを持った機関であると指摘した(ブレグジットの移行期間が終了するまでは英国は加盟国と見なされるので、現時点で英国は実質上は加盟国である)。

「EUのデータ保護において最大かつ最も資金に富んだ規制機関が、自国が今まで経験した中で最も大規模なデータ侵害を取り締まることができないとしたら、GDPRは一種の集団妄想なのでしょうか?それともこれは英国に限定された出来事なのでしょうか?」とライアン氏は述べた。

ライアン氏が指摘するより大きな問題とは、ブレグジット後に英国がEUの企業との間で今までのような自由なデータ交換を望む場合、欧州委員会にデータ保護の「妥当性合意」を要請する必要があることである。

英国が欧州委員会に対し、EUからの個人情報が自由に流れてもよい安全で適切な第三国と見なすように要請した場合、EU側で検討すべき事項の1つは、そうした個人データを保護する規制機関があるかどうか、ということです。現時点での答えは『ノー』でしょう。英国には欧州市民の個人データを保護することのできる規制機関はないのです」とライアン氏。

「ICOの無策はブレグジット後に影響をもたらします。 これにより英国経済の非常に多くの分野に影響が出るでしょう」と彼は警告した。

ライアン氏を雇用するブレイブは、プライバシーの保護を重視するウェブブラウザを製作しているが、最近欧州委員会に対しEU加盟国を相手取り、自国のデータ保護機関に対し十分なリソースを与えていない政府を非難する報告書を提出し、委員会に対し侵害訴訟を開始するよう要請した。

「ICOでデジタル分野を専門に扱う人員がわずか3%に過ぎないのは一体なぜなのでしょう?」とライアン氏は続ける。「侵害の3%以上がデジタルであり、生活の3%以上がデジタルで占められているのは明白です。ICOは、我が国がデジタル移行の初期段階にあるという誤った認識の元に人員を配置しているのです。ICOはこの十年に対応できる規制機関ではなく、その人員配置は前世紀向けのものです。ICOに大きな管理上の問題があることは明確です。彼らはデジタルの問題を規制することを望まない、あるいはできないように見受けられます。ICOは目的に合わせて体制を整える必要があります」。

「彼らは依然として印刷物ベースの世界に生きているのです。私たちは印刷物ベースではない、私たちの生活のあらゆる側面に影響する問題を彼らに切実に突きつけています。もちろん、これには前回の選挙が含まれます。そしておそらく次の選挙でも…ですから、ICOがデータ保護を適切に行えていないという事実は、あらゆるレベルでの大きな問題なのです」。

ブレグジットの結果、他のEU規制当局が、例えば現在EU外の法的管轄下にあることが多い大手テックプラットフォームから英国市民を守ってくれているように権利の保護に関与してくれることはなくなる。英国市民にとって個人情報に対する権利を保護してくれる唯一のデータ保護規制機関はICOのみとなるのだ。

例を挙げるならば、Googleはブレグジットへの対応として、英国のユーザーを米国の管轄下に移すと述べている

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Category:セキュリティ

Tag:ヨーロッパ / EU 広告業界 GDPR

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(翻訳:Dragonfly)