「ITの活用でダンス市場を変えたい」ダンサーが立ち上げたDanceNowが資金調達

テクノロジーを活用して業界のルールや構造を変え、その市場の課題解決に挑む——TechCrunch Japanではそのようなチャレンジをしている日本のスタートアップをいくつも取り上げてきた。

今回紹介するDanceNowもその1社。社名から何となく想像がつくかもしれないけれど、同社が取り組んでいるのはダンス市場の課題だ。収入を得る手段が少ないというダンサー、そしてダンスに興味を持った際に手軽に学べる手段がないという個人。双方の悩みを解決するサービスを通じて、この業界をさらに盛り上げようとしている。

そんなDanceNowは11月28日、複数のエンジェル投資家を引受先とする第三者割当増資と金融機関からの融資による資金調達を実施したことを明らかにした。

同社に出資したのはファンコミュニケーションズ代表取締役社長の柳澤安慶氏、同社取締役副社長の松本洋志氏、同じく取締役の二宮幸司氏、FIVE代表取締役CEOの菅野圭介氏、ReproでCSOを務める越後陽介氏の5人。具体的な調達額は明かされていないものの、トータルで数千万円規模になるという。

短尺のダンスレッスン動画サービスを軸に、コミュニティを拡大

DanceNowでは現在ダンス市場において2つの事業を展開している。ひとつが主に初心者を対象とした短尺のダンス動画サービス「Dance Now」、もうひとつがオフラインのダンス練習スタジオだ。

Dance NowのInstagramより

動画サービスのDance Nowは代表取締役CEOの廣瀬空氏が“レシピ動画サービスのダンス版”と話すように、プロのダンサーによる1分ほどのレッスン動画をInstagramやFacebook上に投稿している。2018年6月に本格始動して、現在までに約50件の動画を作成。体制を整えた上で年内に100本まで動画を増やす計画だ。

投稿するコンテンツは初歩的なダンスレッスン動画、ダイエットやフィットネス文脈の動画、振付など実際に踊りのテクニックを学べる動画の大きく3タイプ。10〜20代を中心に、ダンスに興味を持ったユーザーにとって「ダンスを始める入り口」となるような場所を目指したいという。

「今は何かのきっかけでダンスを始めたいと思った時、ダンススクールに行く以外の選択肢がほとんどない。まずはオンライン上で、1分で手軽に踊りを学べる動画を通じてそのハードルを下げていきたい」(廣瀬氏)

現在は既存のSNS上のみに動画を投稿しているけれど、次のステップでは自社アプリを開発する予定。そこで動画を軸にダンスを学びたいユーザーとインストラクターをマッチングする機能を取り入れる方針だ。

廣瀬氏の話ではそのフェーズで公式のレクチャー動画に加えて、用意されたフォーマットを基に各ダンサー(インストラクター)が自身で動画を投稿できる環境を整備。ダンサーにとってはマーケティングプラットフォームのような位置付けとなり、動画を起点に自身のワークショップやプライベートレッスンの顧客を獲得できる状態を目指すという。

まずはSNS上で動画を運用し、ユーザー側のニーズやダンスをする上での課題を探っていく方針。それも踏まえて来年の夏頃を目安にアプリをリリースする予定だ。

また少し先の話にはなるけれど、テクノロジーを活用した遠隔ダンス練習システムの開発にも取り組む意向があるそう。従来の仕組みだとインストラクターの収益モデルはその場でレッスンを受けられる生徒数の制約を受けていた。そこでその“箱の制約”を取り払うシステムに投資し、ダンサーがより多くの収益を得られるモデルを構築する狙いだ。

遠隔でのダンスレッスンが実現すれば地理的な制約もなくなるため、近くにダンススクールがないユーザーにとっても新しい選択肢になるだろう。

ダンサーがより多くの収益を得られる環境を

DanceNowは2018年7月に設立されたばかりのスタートアップ。代表の廣瀬氏は学生時代にダンスに熱中し、コンテストでトップクラスの成績を収めたこともある。

一時はダンスの道に進むことも真剣に考えたが「ダンスだけで生計を立てられる人はほんの一握り」という現実に直面。最終的にはダンサーになるのではなく、事業を通じてダンス業界を変える道を選んだ。

新卒でWeb系の制作会社に進み開発スキルを身につけた後、ファンコミュニケーションズに入社。新規事業の立ち上げを経てDanceNowを起業した。廣瀬氏を含めて現在正社員として働く3名は全員がダンス経験者だ。

「ダンサーが稼ぐ手段が少なく、それだけでは食べていけない世界を少しでも変えたい。現状はプロダンサーとして収入を得る機会に恵まれずダンスのインストラクターになる人が多いが、スタジオでのレッスンでは1回あたりの報酬がだいたい5000円くらい。まずはそこから変えるべきだと考えた」(廣瀬氏)

上述した通り、Dance Nowでは動画サービスの他にオフラインのレンタルスタジオ事業を運営している。このスタジオではダンサーが直接所属するのではなく、フリーランスのような立ち位置で自らプライベートレッスンやワークショップを開くスタイル。そのため既存の仕組みに比べてダンサーの手元には約2倍の収益が入るという。

今は10月にオープンした渋谷のスタジオ1箇所のみだが、これから他店舗展開を進める方針。このレンタルスタジオはDance Nowにとって直近の収益源でもあり、今後はマッチングしたインストラクターとユーザーがプライベートレッスンを実施したり、遠隔ダンスシステムなど新しい取り組みをテストする場にもなる。

とはいえここまで紹介してきた通り、Dance Nowはスタートしたばかり。事業もこれからというフェーズで、廣瀬氏自身も「完全に想い先行で始まったスタートアップ」だと言う。まずは動画メディアとオフラインのスタジオを軸に、ダンスに関心のあるユーザーとダンサーのコミュニティを広げながら事業の拡大を目指す。

「ダンスはユースオリンピックの正式種目にも採用され、今後の伸びが期待されている。日本でも教育課程に採用されてから手軽なスポーツとして定着し、若者を中心に愛好者は600万人を超えるような規模になってきた。今からダンスを始める人にとって少しでもいい環境や選択肢を提供できるようなサービスを作っていきたい」(廣瀬氏)

LINEが銀行参入 みずほと提携し「LINE BANK」20年開業めざす

eng-logo-2015LINEは11月27日、銀行業への参入を発表しました。みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)と提携し、2019年上半期に準備会社を設立。「LINE BANK」の2020年開業を目指します。

ターゲットは「デジタルネイティブ世代」

新銀行は、LINE傘下のLINE Financialとみずほ銀行の共同出資によるもの。出資比率はLINE Financialが51%、みずほ銀行が49%となります。

LINEの出澤社長は『今の銀行は20年30年前に考えられた設計で、それをなんとかインターネットに対応させている状況』と語り、開業する新銀行では『5年後に必要とされるサービス”から逆算した、スマホ世代のニーズに適した金融サービス』を提供するとのこと。

またみずほFG側は『旧来型の銀行が苦手としている若い世代、デジタルネイティブとの接点を持つこと。これがみずほとしては第一の目的』とコメント。また『LINEさんが積極的に金融領域のビジネスを展開する中で、決済、そして決済についてくる与信というものが発生します。みずほとしてはこの部分をサポートしていきたい』とも語りました。

新銀行の詳細については、今後準備会社にて検討を行い、決定次第改めて公表するとしています。

Engadget 日本版からの転載。

LINEがクレジットスコア領域に参入へ、個人向けローンサービス「LINEポケットマネー」も発表

LINEは11月27日、同日開催のLINE Fintech Conferenceにて個人向けのスコアリングサービス「LINEスコア」と、個人向け無担保ローンサービス「LINEポケットマネー」を発表した。

両サービスは2018年5月に設立されたLINE Creditが開発・運営にあたり、2019年上半期のローンチを目指していくという。

関連してLINE CreditがLINE Financial、みずほ銀行、オリエントコーポレーション(以下オリコ)を引受先とした第三者割当増資を実行することで合意したことも発表。取引は来春の完了予定で、同社への出資比率はLINE Financialが51%、みずほ銀行が34%、オリコが15%となる見通しだ(現在はLINE Financialが100%出資)。

個人向けのクレジットスコアサービスと言えば、アリババグループのアント・フィナンシャルが提供する「芝麻(ジーマ)信用」が特に有名だろう。決済サービス「アリペイ」などアリババのサービスに蓄積された各ユーザーの行動データを分析し、それぞれの信用度をスコア化。そのスコアがローンの貸付利率を始め、さまざまなサービスに影響を与える仕組みだ。

日本国内でも、先日ヤフーがこの領域への参入を発表。自社で保有するビッグデータから算出した独自のスコアを活用し、複数のパートナー企業と実証実験に取り組む。

これらのサービスと同じくLINEスコアも自社サービスに貯まったデータを活用したもの。みずほ銀行およびオリコが有する与信審査ノウハウに、LINEが提供する各種サービスの利用状況を含むLINEプラットフォーム上での行動傾向データ、ユーザーが能動的に入力した情報を組み合わせてスコアを算出する予定だという。

LINEではこのスコアを活用したプロダクトの第1弾として、スコアに応じて貸付利率(年率)や利用可能額を決定する個人向け無担保ローンサービス「LINEポケットマネー」を発表。急な飲み会や、出張の立替え、医療費など突発的な資金需要に応えるサービスとして、申し込みから返済まですべてのフローがアプリ上で完結するモデルを検討する。

なおスコアリングデータについてはLINEの各種サービスでも活用していく予定。将来的には外部パートナーとの連携も見据えていくという。

本日のLINE Fintech Conferenceではその他にも「LINE Pay Global Alliance」や、LINEとみずほ銀行のタッグによる「LINE Bank」の発表もあった。LINEはここ数ヶ月の間に保険や資産運用、家計簿など金融系のサービスを続々とローンチしているけれど、今後もこの動きは加速していきそうだ。

質問に答えるだけで家計の健康状態を把握、無料でFPに相談もーー「お金の健康診断」正式リリース

資産運用をAIがアドバイスするロボアドバイザー「THEO」を運営するお金のデザインは11月27日、同社子会社の400Fにて、将来のお金に不安を感じるユーザーとフィナンシャルプランナー(FP)とをつなげるマッチングサービス「お金の健康診断」を本日より正式リリースすると発表した。

「お金の健康診断」では、ユーザーがお金や家計に関する数題の質問に答えるだけで家計の健康状態を調べることができる。また、希望するユーザーはアプリ上のチャットでFPやIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)にお金にまつわる相談をすることも可能だ。ユーザーはこれらの機能を無料で利用することができる(FPへの相談にはアカウント登録が必要)。

ユーザーは相談したFPを5段階で評価することができる。このような評価の仕組みを取り入れることでマッチングプラットフォームとしての質を高めていくという。FP側からしても、相談を受けるユーザーの家計状態がすでに分かっている状態でコミュニケーションが始まるので、よりスピーディーで的確なアドバイスが可能だという。

400Fは今年9月に同サービスのベータ版をリリース。その際に募集した先行登録ユーザーは700人を超えた。また、質問の回答を完了した人のうち40%が実際にFPと相談したという。ベータ版の利用状況データによれば、ユーザーの70%が20〜30代の若い世代で、年収の中央値は500万円だった。お金のデザインにとって、それらのユーザーがどれだけ投資に意欲的なのが気になるところだとは思うが、投資額の中央値は10万円だったという。

お金のデザイン代表取締役の中村仁氏はこの新サービスについて、「お金の不安は、(将来の夢など)“やりたいをやる決断”の大いなる阻害要因。お金の話となると、なんとなく萎縮する、現実を見たくないといったところがある。お金の不安を、『お金の健康診断』を通していかにカジュアルな方法で解消していくか、というのは非常に意義のある取り組みだと考えている」と話した。

オーディオブック配信のオトバンクが東ガスやニッポン放送ら5社と資本提携、音声コンテンツの浸透目指す

オーディオブックの配信サービス「audiobook.jp」を展開するオトバンクは11月27日、東京ガス、カルチュア・エンタテインメント(CCCグループ)、フロンティアワークス(アニメイトグループ)、VOYAGE VENTURES、ニッポン放送の5社と資本提携を結んだことを明らかにした。

今回の提携は業務提携を見据えたもので、各社とはそれぞれのアセットやチャネルを活かしてオーディオブックの普及を推進するとともに、音声コンテンツに関する取り組みも実施する計画だ。なお具体的な金額は公開されていないものの、オトバンクでは今回の資本提携を通じて数億円規模の資金を調達しているという。

オトバンクの主力サービスであるaudiobook.jpは、さまざまな書籍を音声コンテンツとして配信するオーディオブックサービスだ。前身となる「FeBe」は2007年から運営していて、今年の3月にサービス名の変更も含めたリニューアルを実施。コンテンツの単品購入に加えて月額750円の聴き放題サービスも始めている。

オトバンク代表取締役社長の久保田裕也氏によると、聴き放題の影響もあり夏頃からグロースのペースが上がってきていて「(リニューアル前と比べ)デイリーの加入者も数倍に伸びている」状況だ。

とはいえ海外のオーディオブック市場が年次30%くらいのペースで拡大していることを踏まえると「求める成長の幅までは足りない」というのが久保田氏の考え。国内のマーケットをさらに盛り上げるための取り組みとして、今回5社とタッグを組むことになったという。

「もっとペースを上げていくためには自社だけでやるのは難しい。音声コンテンツ領域への関心が高い企業やこれまで一緒にコンテンツを作ってきたような企業を中心に、具体的にどんなことができそうかを見据えながら時間をかけて話してきた。まずはオーディオブックを軸とした取り組みが中心にはなるが、先々の構想も含めて話を進めている」(久保田氏)

たとえば提携先の1社である東京ガスは異色のコラボのようにも思えるけれど、両社では2017年7月から入浴時にオーディオブックを楽しめる「Furomimi」を提供。今回の提携を機に協業を深め、入浴に限らず育児や家事などの生活シーンに向けたサービスの開発を予定しているという。

そのほかカルチュア・エンタテインメントとはリアル店舗のTSUTAYAや蔦屋書店といったアセットに加え、オーディオブックのメリットを活かしたコンテンツの企画・製作面で協業していく計画。ニッポン放送とは共同企画や音声マーケットを広げる取り組みなどを進める。

またVOYAGE GROUPとは音声コンテンツ領域、ドラマCD制作に力を入れているフロンティアワークスとは「聞くエンタテイメント」という軸で事業面での連携を模索していく方針だ。

各社とはオーディオブック関連、およびそれを超えた音声コンテンツ領域の双方で協業について話をしているそう。すでに具体的な動きのある取り組みもいくつかあるという。

「オトバンクとしては今後もオーディオブックが事業の柱であることに変わりはないけれど、それだけしかやらないというわけではない。自分たちの業界を幅広く“音声コンテンツ”と捉えれば、あくまでオーディオブックはそのひとつ。各々が培ってきたインフラを持ち寄ることで、この領域をもっと面白く、良い形にできるかもしれない。今後は各社とそのようなチャレンジをしていきたい」(久保田氏)

植物メディアのストロボライト、園芸業界のジョブマッチングサービスを開始

植物と暮らしをテーマにしたWebメディア「LOVEGREEN」などを運営するストロボライトは11月27日、花・植物に関わる仕事のマッチングアプリ「ミドッタ」を提供開始し、iOSとAndroidアプリを公開した。

ミドッタは園芸や造園などに関わる仕事で働きたいという人と、人手がほしいという事業者をつなぐマッチングアプリだ。働きたいユーザーは、アプリをインストールしてプロフィール登録をし、働くエリアを選択すれば、人材募集がリアルタイムで届く仕組み。また、気に入った仕事が見つかれば、ボタン1つで申し込みが可能で、依頼主が受け入れれば正式にマッチング成立となる。仕事を依頼する業者は、1日単位で募集が可能だ。

このように、個人と業者間のBtoCマッチングとしても機能するが、例えば花屋を経営するオーナーが自分の店が閑散期に入ったタイミングでミドッタを利用するなど、空いた時間や人手のシェアプラットフォームとしても機能しそうだ。

ストロボライトは、園芸・造園業界が抱える課題として「人での確保が大きな課題となっている。そもそも業界に特化した求人サービスもまだ少ない。また、母の日などの暦イベントや、繁忙期・閑散期により必要な人手が変動するため、固定スタッフを雇うことが難しい」などを挙げている。

ミドッタは、リリース日から2019年1月31日まで「リリース記念」としてすべての機能を無料で開放するものの、その後は働き手を探す側からマネタイズをする予定だという。

入居申込から契約まで完結、不動産業務基盤「キマRoom! Sign」にIT重説・電子契約の新機能

「不動産業界はアナログで、紙の書類・FAX・電話が好き、というイメージがあるが、あれは全部“ウソ”。なるべくしてなった“必然”なんです」広島発の不動産テックスタートアップ、セイルボート代表取締役の西野量氏は、そう切り出した。

「不動産業界、特に賃貸物件では、管理会社と仲介業者の間で、契約が決まるまでの間に情報のやり取りが数多く発生する。しかも、そのキャッチボールは無数の仲介業者との間で行われる。相手ありきの自己完結しない業界。そのことがローテクに寄る理由です」(西野氏)

大家、管理会社には自分で借主を見つける手段はない。そこで管理会社は何軒もの仲介業者と、物件の空き状況確認から始まり、内覧の可否伝達や条件交渉など、契約までやり取りを重ねる。だが、キャッチボールの方法は相手である仲介業者に委ねることになる。そこで選択されるのは、どんな業者でも最大公約数的に使える、最も“枯れた”テクノロジー、すなわち「紙・FAX・電話」にどうしても偏ってしまうのだと西野氏はいう。

仲介業者も巻き込んで使えるプラットフォームを作りたい。1つのプラットフォームの中で、入居申込から契約まで、やり取りを完結したい。そうした西野氏の思いから誕生したのが、不動産業務の電子プラットフォーム「キマRoom! Sign(キマルームサイン)」だ。

このキマRoom! Signに11月27日、「IT重説」(ITを活用した重要事項説明)と電子契約の機能が加わった。IT重説とは、それまで義務とされていた、対面での賃貸契約の重要事項説明がオンラインでも行えるようになったもの。2017年10月に本格運用が始まり、テレビ会議システムなどを使った説明が各社で始まっているが、1つのシステムで入居申込・IT重説・契約の3つの業務を行えるのは、日本では初だという。

「システム連携があってこそ不動産業界の電子化は進む」

キマRoom! Signが公開されたのは、2017年8月のことだ。このときには、入居の電子申込機能が先行してリリースされた。

仲介業者は入居希望者に、タブレット端末への手書き入力で入居申込に記入してもらう。記入するとリアルタイムでテキストデータ化されるので、その場で電子化された内容が確認ができ、データの再入力の手間や誤転記などの心配もない。

仲介店舗で記入したデータは直接、管理会社へ送信される。従来の紙と同じフォーマットで、手書き文字が記入されたPDFも送信可能だ。印刷すれば紙で保存できるし、FAXしか受け取れない相手にはFAXで送信もできる。西野氏は「一斉に取引先全部が導入してくれるわけではない以上、どうしても紙でのやり取りは残る。従来の業務を電子化しながら、運用に乗せることを重視している」と話す。

サービス公開から1年経ち、今年の11月5日には家賃保証会社、少額短期保険・火災保険会社、付帯サービスといった“不動産周辺業種”の各社とのデータ連携を実現する「キマRoom! Sign コネクト」がリリースされた。APIを提供することで、周辺業種での審査や契約もスムーズに行えるようになる。

西野氏は「不動産会社が業務過多となっているのは、契約主体の貸主と借主だけでなく、関係する第三者も多いから」と、API提供による業界の枠を超えた連携を進めた理由についても述べている。

「せっかく契約が電子的に一気通貫でできるようになったとしても、家賃保証や火災保険、かけつけサービスなどの付帯サービスの申込はまた別の紙で、となっていたら、意味がない。周辺業種も含めた全体でやらないと、電子化は浸透しない」(西野氏)

そしてキマRoom! Signは今回、IT重説・電子契約機能が追加されたことで、申込から契約までのフローを一気通貫で完結することが可能となった。

西野氏は「重要事項説明のみオンラインでできたとしても、説明を確認したことを示す書面はどうするのか。契約は紙・郵送のまま、というのでは、そこからまた書類を返送してもらって、大家さんに送って……となって時間もかかるし、確認の手間も減らず、電子化・効率化は進まない」と機能追加の意図について話している。

前述したとおり、IT重説ではテレビ会議の仕組みを活用して各社工夫もされているようだ。また電子契約の仕組みでは、「クラウドサイン」や「DocuSign」などの汎用的なものもある。だが西野氏は「電子化とは単に紙をデータに置き換えるということではなく、システム連携があってこそ」と不動産賃貸業務に特化した、キマRoom! Signのメリットを説明する。「契約に至るまでのキャッチボールの間に、紙や手入力の業務が入らずに済むようにするためには、システム連携も必要なんです」(西野氏)

保証人や仲介業者も含めた契約プレイヤーが多いために、書類の転送だけでも時間がかかる不動産賃貸契約では、電子化することで締結までのタームを短くすることも期待できる、と西野氏。IT重説と電子契約なら、借主も仲介店舗に出向く必要がなく、スマートフォンを使って、すきま時間で重要事項の確認と契約が完了できるため、時間の節約にもなる。

さらに、これまでは今、何件の申込が契約までのどの段階にあるのか、不動産会社がステータスを一覧することは困難だった。それがキマRoom! Signでは、「社内審査中」「審査OKで契約待ち」など、ステータスが見える化されるため、契約件数などの目標に対する進捗管理もやりやすくなる。

キマRoom! Signの料金体系は、書類を電子化するための初期費用が1書式あたり5万円、月額費用は基本料1万円(店舗など1拠点あたり)。それに申込1件につき300円〜500円の従量課金が加わる(いずれも税抜価格)。金額については「書類の送付コストを意識した」と西野氏は言う。「契約書類を対面受取で1回送付するのに約500円。それを貸主・借主と会社との間で、返送プラス往復で3回は使うと考えれば、その3分の1の費用で利用できる。業務効率という見えないコストよりは、書類のデリバリーコストが節約できると考えてもらえれば、分かりやすいと思って」(西野氏)

「5年後には電子化が進んだ業界と言われるようになる」

セイルボートは2010年の設立。広島・岡山の物件を中心に紹介する、不動産業者間の物件情報検索ポータル「キマRoom!」を運営し、2014年3月には広島ベンチャーキャピタルから3000万円の資金調達を実施している。

その後、物件検索では不動産流通機構(レインズ)のオンラインシステムの浸透もあって苦戦。不動産流通のフローの中でテクノロジーを生かせる領域を探していた西野氏は、「物件確認」や「VR内見」、「スマートロックによる内見自動化」といったサービスは既にあるものの、「入居申込」「契約」の部分ががら空きだと気づく。こうして、申込から契約までをシームレスにカバーする、不動産業界向けのデジタルソリューションの提供に注力することとなった。

そして2017年8月に、キマRoom! Signをリリース。2018年11月にはリログループの子会社リロケーション・ジャパンと既存株主の広島ベンチャーキャピタルから合計約2億円の資金調達を実施した。

「不動産業界は、例えば飲食業界などに比べれば、エンドユーザーである借主の利用頻度も低く、非日常の世界。それだけにカスタマー最適化が構造的に進まない分野です。そこを、頻度高く利用する仲介業者や管理会社をユーザーとしたマーケットインで考えることで、カスタマー最適化を進め、電子化を推進したい」と西野氏は語る。

キマRoom! SignのIT重説・電子契約機能は、大手不動産会社から徐々に導入を進める、と西野氏。「日本の不動産会社は13万社ある。5000戸以上を管理する大手企業は、そのうち約250社。この250社で日本の半分の物件を管理している。2020年度には、この250社にサービスを浸透させたい。そうしていくうち、5年後には不動産業界が『電子化が進んだ業界』と言われるようになるのではないか」と今後の見通しについて述べていた。

セイルボート代表取締役 西野量氏

ハードウェアはチャレンジングだがリスクは低減できる、Scrum Connect 2018レポート

Scrum Venturesが11月19日に開催したイベント「Scrum Connect 2018」。「Hardware Session~Nikkei Startup X Special Session​~」では、ハードウェアスタートアップ企業2社のCEOが登壇し、パネルディスカッションを行った。

“芽”も見え始めたと米国スタートアップCEOは語る

セッションには燃料とバッテリーを組み合わせたハイブリッドエネルギーパワーシステム採用のドローンを開発している米Top Flight Technologies CEO兼CTOのLong Phan氏と、ロボットを自律制御させる「モーション・プランニング」の技術を開発する米Realtime Robotics President&CEOのPeter Howard氏が登壇した。

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米Top Flight Technologies CEO兼CTOのLong Phan氏

Long Phan氏は自社の技術についてハイブリッドエンジンとドローンを組み合わせることで「有効荷重と耐久性、安定性の3つの問題を解決した」と自信を見せる。

Realtime Roboticsが持つモーション・プランニング技術は、周囲の動きや障害物を検知して避けながら安全にロボットを自律制御させるというもの。周囲に作業者がいるような環境でもロボットを協調動作させられるという技術だ。

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米Realtime Robotics President&CEOのPeter Howard氏

司会者から「過去10年は基本的にソフトウェアスタートアップが中心だったのに対し、最近はハードウェアのエリアでスタートアップの活躍の余地が広がっている背景について聞きたい」という質問が出た。

「ハードウェアは非常にチャレンジングで、多くの資本投入が必要なこと、開発に多くの時間が必要になるという2つの課題がある。そのためほとんどの投資家はより早く結果が出るソフトウェアに投資したいという考えだった。しかし最近はハードウェアとソフトウェアのツールを組み合わせることで開発時間を短縮し、リスクを低減させている」(Long Phan氏)。

「シリコンバレーのVCコミュニティのうち、ハードウェア投資に興味を持っているのは10%以下程度だと思う。ハードに関心はあるものの、潜在的な投資家は減少しているように思っている。そのため、市場に対して投資が魅力的であるとアピールしなければならないと考えているが、なかなか難しい」(Peter Howard氏)。

続いてTop Flight Technologiesが韓国のヒュンダイと提携した経緯についての質問が出た。「最近は自動車メーカーの多くが自動運転に資本を投下しているが、将来的には自動運転だけでなく自動で飛ぶ車も考えられる。自動車メーカーは航空宇宙産業まで視野に入れており、人などを輸送する伝統的な自動車から空を飛ばすところまで、今後5年から10年の間に大きな変革が起こる。自動車メーカーも空を飛ぶ自動車を作らなければいけない時代に入っている。ヒュンダイは飛ぶ自動車を作ろうと考えてTop Flightに来た。私たちはツールを提供することでより迅速に飛ぶ自動車を作るための研究に入った」(Long Phan氏)。Long Phan氏は日本の自動車メーカーとコミュニケーションしているものの、「日本のメーカーは少し動きが遅いように思う」と語っていた。

自動運転AI開発を行うトヨタ自動車の子会社であるTRI(Toyota Research Instituteからの出資も受けているRealtime RoboticsのPeter Howard氏の見方は違う。「私はそんなに動きが遅いとは思っていない。伝統的な企業であるトヨタ自動車とは違って、TRIは迅速に動いている。我々はドイツのBMWなどとも一緒に取り組んでいるが、大きな違いはない。ただし、会社機構にどのくらいのマネジメント層がいて、説得する段階には大きな違いがあるように思う」(Peter Howard氏)。

Peter Howard氏はロボティクスにおいて日本市場は最も重要だと語った。「約50%のロボットは日本で作られているため、日本は我々にとって最も集中すべき市場だ。我々は50年以上FA(ファクトリーオートメーション)に取り組んでいるJOHNANとパートナーシップを結び、さまざまな工場の自動化を進めている。ロボット業界では日本が最も重要で、2番目がドイツ、その次に重要なのが米国だ。これらの市場に技術を導入していきたい」(Peter Howard氏)。

日本の企業と協業する魅力についてPeter Howard氏は続ける。「ロボットは人の近くで働くため、最も関心が高いのが安全性だ。いろいろな人が作業している中でロボットがコントロールできなくなると、作業者の怪我にもつながる。日本やドイツのメーカーが強いのは品質や信頼性が高いからだ」(Peter Howard氏)。

オープンイノベーションは日本の文化に根付いた大企業には難しいとPeter Howard氏は語った。「知的財産を保護することなどはオープンイノベーションの逆で、克服するのは難しい。例えばTRIとオープンイノベーションを進めていても、トヨタ自動車のエンジニアリングチームとやり始めると我々のペースで進めるのが難しくなる部分はある。しかしトヨタは別の新会社(TRI)を設立したことでオープンイノベーションが生き残れるチャンスを作った」(Peter Howard氏)。

Long Phan氏は「4年前から観察してきて日本の企業も変わってきた」と話す。「最初の頃は下から順番に上げていかないとならなくて時間がかかり、結果も出なかった。今は日本に来ると大企業のトップでも私と会ってくれるようになった。先進的なロボット技術を取りこむということを企業トップが自分の責任として意識してやり始めたのは素晴らしいと思う」(Long Phan氏)。

家具レンタルairRoom、セット商品のサブスクを開始

家具の月額制レンタルサービス「airRoom」を運営するElalyは11月26日、airRoom上の家具を使用した“コーディネート済みのパッケージ商品”のレンタル提供を開始した。

2018年10月に正式ローンチしたairRoomはサードパーティ製のインテリア家具を月額定額で利用できるサービス。ユーザーは家具を月500円〜借りることができ、1ヶ月単位で自由に家具の入れ替えを行うことができる。

これまでは一つ一つの家具を選ぶ必要があったが、本日発表されたパッケージレンタルサービスを使えばセットで借りることが可能だ。新サービス提供の背景に関しElalyは「『airRoomで家具のコーディネートをされた商品をレンタルできないか?』というお声を多数いただいており、需要は感じておりました」と説明している。

パッケージ一覧をのぞいてみると「北欧風」「モダン風」「ナチュラル風」「男前風」という4つカテゴリーにおいて2種類ずつパッケージが用意されている。値段は4644円〜なので、気軽に試せるのでは。上記のパッケージでカバーしきれないものに関しては、airRoomのLINE@を通じて無料相談も行なっているそうだ。

「男前テイスト」

「北欧テイスト」

“家具のサブスク化”を行う日本のスタートアップはElalyの他にもあり、TechCrunch JapanでもこれまでにKAMARQCLASKaggレンタルなどを紹介してきた。今後、同様のサービスがどのような広がりを見せるのか注視していきたいと思う。

共有と熱量がオープンイノベーション成功の鍵、Scrum Connect 2018レポート

米シリコンバレーでアーリーステージのスタートアップ企業を中心に投資を行っているVC(ベンチャーキャピタル)のScrum Venturesは、2018年11月19日に米国で活躍する起業家によるセッションや投資家同士のネットワーキングを目的としたイベント「Scrum Connect 2018」を開催した。

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「Scrum Connect 2018」の会場の様子

「ビジョンの共有」と「熱量」がオープンイノベーション成功の鍵

「日本における、オープンイノベーションの現状と展望~Nikkei Startup X Special Session​~」では、実際にオープンイノベーションを起こしているバカン代表取締役の河野剛進氏とエクサウィザーズ取締役の粟生万琴氏が登壇し、それぞれの取り組みについてのトークセッションが行われた。

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バカン代表取締役の河野剛進氏

バカンは「VACANT(空いている)」という言葉が語源で、レストランやカフェなどの空席情報を提供する「VACAN(バカン)」、トイレの空席管理IoTサービス「Throne(スローン)」、お弁当を探して取り置きができる「QUIPPA(クイッパ)」の3つのサービスを展開している。

京都大学、大阪大学出身者のエンジニアが創業したベンチャーと静岡大学情報工学部のベンチャーが一緒になったエクサウィザーズは、AIを利活用したサービス開発を進めている。高齢者の認知症患者のケアの技法としてフランスで開発された「ユマニチュード」を広げるケア事業、労働人口減少に向けたHR(人事)テックなど、社会課題解決に向けた6つの事業を展開しているという。

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エクサウィザーズ取締役の粟生万琴氏

ケア事業では、認知症患者をケアするコミュニケーションとスキンシップのメソッドである「ユマニチュードケア」の達人の技をAIが学習し、その内容をコーチングすることで技能を伝承する実証実験を行っている。

ロボット事業では、製造業の労働人口減少という課題を解決するためにロボットの導入を進めている。通常はロボットが動作するための複雑な制御プログラムが必要になるのだが、人間の動作をAIが学習して再現することで、複雑なプログラミングなしにロボットの導入ができるように開発を進めているところだ。創業間もない頃にデンソーから無償でロボットを借り受け、開発を進めることができたと粟生氏は話していた。

オープンイノベーションを成功に導くために重要なこととして、バカンの河野氏は「熱量」を挙げた。「私たちもそうだが、熱量がないとコラボはうまくいかない。本気でこういうサービスを世の中に一緒に広げていきたいと思ってもらえることと、困難があっても乗り越えようという思いがあること。それを大企業の上の方が認めて『やってみなはれ』と言ってくれる環境があるかどうかが大事だ」(河野氏)。

河野氏は続ける。「プロダクトができきっていない時に、よく分からない人たち(スタートアップ企業)から提案を受けて、それを自社で取り組むかどうかを判断するのは大企業の方にとってすごく難しい。その企業の中に本当に熱心な方が『このサービスはあるべきだ』と考えて一緒に伴奏してくれて、実証実験をしていただいたり、そこで出てきた課題をどう解決するかを一緒に悩んでいただたりした。価格についてもアドバイスをもらいながら作ってきた。大変だったが、まさにオープンイノベーションが普及した中で乗り越えられたと思っている」

エクサウィザーズの粟生氏は「受発注の意識じゃオープンイノベーションは成立しない」と語る。「私たちも『受託している』という意識をまず捨てることが非常に重要だ。本気で投資していただく代わりに、我々スタートアップが技術を含めて一緒に汗をかくこと。会社対会社ではあっても、熱量を一緒に上げていく中で『誰』と『何をやるか』が重要だ。お互いの人となりや価値観を話しあう場を最初に無駄にしなてはいけないと思った」(粟生氏)

バカンの河野氏も「相手とビジョンが一致ことが重要」だと語った。「多少トラブルがあったとしても、ビジョンさえ合っていればこれから何をすればいいか案を出しながら解決したり、修正したりしていける。将来どういう世界を作っていきたいかをお互いに語ったり、そういうことを応援してくれる方たちなので、共感できるビジョンを最初にしっかりプレゼンするといいと思う。スタートアップの組織内もそうだが、しっかり話し合ってお互いに信頼関係を築くこと。自分の欲だけではオープンイノベーションはうまく行かない。ここは譲れるけどここは譲れないというメリハリを付けるのも大事だと思う」(河野氏)。

一緒に熱量を上げて共創していくためのポイントとして、大企業側の担当者に気持ちよく仕事をしてもらうための取り組みが重要だとエクサウィザーズの粟生氏は語った。「オープンイノベーション担当者は大企業の中ではどちらかというとマイノリティだと思う。そういう人が社内で気持ちよく仕事をしていただくためには、縦の人間関係だけでなく横や斜めの部門にも我々を紹介していただくなどして、新規事業担当者がやっている取り組みを一緒になって語るような形に入り込んでいる。むしろ我々スタートアップのメンバーをうまく使ってほしいと思う」(粟生氏)

バカンの河野氏も「担当者の評価が上がるように僕たち自身も頑張るというのが大事で、『このアライアンスのKPIは担当者の評価が上がること』というのを繰り返し言いながら進めている」と語った。

還元率20%の衝撃──スマホ決済のPayPay、100億円バラマキでキャッシュレス市場に攻勢

eng-logo-2015ソフトバンクとヤフーが手がける決済アプリ「PayPay(ペイペイ)」は、総額100億円を還元する「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施します。12月4日~2019年3月31日。

今回の”100億円”キャンペーンは、ユーザーの拡大に加えて、小規模加盟店の開拓を進める狙いがあります。PayPayの中山一郎CEOは「ユーザーと加盟店の獲得のために、100億円を投じる。QR決済市場のユーザー数と加盟店数、両方でナンバーワンを目指す」と宣言しました。キャンペーン原資についてはソフトバンクとヤフーの両社がPayPayに出資した金額を拠出すると説明しています。

​​​​​​100億円あげちゃうキャンペーン

1回のPayPay支払いごとに、最大20%が「PayPayボーナス」としてPayPay残高に還元されます(上限はひと月辺り5万円)。

さらに、抽選で40回に1回の確率で、支払い額の全額がキャッシュバックされます(最大10万円)。全額還元のキャンペーンでは、ソフトバンクとY!mobileのユーザーは10回に1回、Yahoo!プレミアムのユーザーには20回に1回と、確率が上がる特典も用意されます。

なお、還元金額が総額100億円に達したときは、キャンペーン期間の途中でも終了となるとしています。

また、「100億円あげちゃうキャンペーン」の開始に先立ち、11月22日より5000円をチャージすると1000円分の残高がもらえるプレキャンペーンが実施されます。

加盟店にファミマ、ビックカメラ、松屋など

PayPayは12月4日より、全国のファミリーマートで利用できるようになります。そのほか家電量販店のビックカメラグループ、ヤマダ電機や、飲食チェーンの松屋などが加盟店になることも発表されました。

強みはソフトバンクの営業力

PayPayは、ソフトバンクとYahoo! JAPANの決済サービスを統合し、誕生したスマホ決済サービス。10月5日よりQRコードを使ったサービスを開始しました。運営企業のPayPayは、ソフトバンクとヤフーの合弁会社となっています。

関連記事:スマホ決済「PayPay」サービス開始 ヤフーアプリでも利用可

PayPayにはQRコードを使った決済方法として、スマホのQRコードを見せてレジのリーダーで読み取る「ストアスキャン」と、店に設置されたQRコードをユーザーのスマホで読み取る「ユーザースキャン」という2つの決済方法が用意されています。このうち後者は小規模な加盟店でも導入しやすい方式です。

サービス開始以来、中国アリババの「Alipay(アリペイ)」との決済連携や、Yahoo! JAPANアプリでの決済対応など、機能拡充を図ってきたPayPay。11月21日には残高の個人間送金にも対応しています。

PayPayの強みはソフトバンクの営業力を利用できること。発表会に登壇したソフトバンクの榛葉副社長は「すでにPayPayには有能な営業幹部を送り込んでいる」と紹介しました。PayPayで加盟店開拓にあたる営業人員は数千人規模としており、個人店向けの営業も積極的に行っていくとみられます。

また、PayPayにはインドのQR決済事業者「Paytm」が技術協力しています。Paytmは3億人が利用するインド最大規模のQR決済事業者で、ソフトバンクグループの通称「10兆円ファンド」ことビジョン・ファンドの投資先ともなっています。

このPaytmの協力について中山氏は「Paytmの技術協力は強いアドバンテージだ。失敗例を多く知っているため、同じ轍を踏まずにすむ」とコメントしています。PayPayでは今後の機能拡張として、店舗マップの情報拡充を予定しています。

Engadget 日本版からの転載。

PayPayが考えるキャッシュレス決済浸透のロードマップ——#tctokyo 2018レポート

11月15日・16日の両日、東京・渋谷ヒカリエで開催されたTechCrunch Tokyo 2018。2日目には「モバイル決済界の“大型ルーキー”誕生、後発組のPayPayが考える勝機とは?」と題し、ソフトバンクとヤフーが6月に設立した合弁会社PayPayのキーパーソン2人を迎え、同社の展望や日本におけるスマホ決済の未来について聞いた。

登壇したのは、PayPay代表取締役社長/CEOの中山一郎氏と、取締役副社長/CTOのHarinder Takhar(ハリンダー・タカール)氏だ。聞き手はTechCrunch Japan編集部の菊池大介が務めた。

中山氏は今年6月より、PayPayの代表取締役社長に就任し、PayPayの舵取りを担う人物だ。タカール氏は、PayPayとの連携を発表したインドの電子決済・EC事業のPaytmに設立当初から参画し、2011年〜2014年まで同社のCEOを務めていた。2014年からはカナダのグループ会社Paytm LabsでCEOに就任。2018年6月からは、PayPayのCTOにも就いている。

PayPayが提供するスマホ決済サービス「PayPay」は、バーコードを活用した実店舗決済が可能。ユーザーがアプリを使って店舗のレジ付近などに提示してあるQRコードを読み取る方式(ユーザースキャン)か、アプリに表示されるバーコードを提示して店舗側がスキャンする方式(ストアスキャン)の2タイプで決済できる。ユーザーの支払はクレジットカードと電子マネーから選択できる。

会場で紹介されたデモ映像

ローンチから1カ月、PayPayの手応えは

キャッシュレスの波が日本にも寄せていることは間違いない。だが、日本での浸透はまだまだと言える。はじめに中山氏に、他国と比べたときの日本のキャッシュレス決済の状況について、考えを聞いた。

PayPay代表取締役社長/CEO 中山一郎氏

中山氏は「まずQRコードが使える店が少ない、ということが一番大きい」と述べる。「世界の人口の約3分の1を占める中国やインドでは、キャッシュレスが進んでいる。それは、使える店が圧倒的に多いから。キャッシュレス決済が進むには、使える店が増えることがとても大事」(中山氏)

そうした状況のもと、PayPayはソフトバンクとヤフーの合弁会社として誕生。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先でもあるPaytmの技術やノウハウを活用して、新しいモバイル決済サービスを構築しようとしている。

「私たちソフトバンクグループは、ご存じの通り情報革命を推進する企業。QRコード決済が世界の潮流となっている今、日本でもそれを推進したいと、グループを挙げて事業に取り組んでいる。合弁会社設立、Paytmとの連携については、それがユーザーにとって、ストアにとって一番いいサービスを提供できるだろうとの考えからだ」(中山氏)

浸透が遅れているとはいえ、LINE Pay、楽天ペイやOrigami Payなど、さまざまなモバイル決済サービスが登場している日本。この領域では後発となるPayPayだが、ほかの競合と違う点、勝負していく点はどういうところになるのか。

「QRコード決済自体が日本では、それほどまだ浸透していないので、先輩プレイヤーといっしょにやっていけばいい。後発であるということは、あまり気にしていない」と中山氏。

「狭い見方をすれば最後発かもしれないが、スマホで決済するということ自体、皆さんがそれほど使っているわけではない。競合とも仲間として(サービスの浸透を)これからやっていくのが大事だと考える」と言いつつも「ソフトバンクの営業力、ヤフーのユーザーリーチ、Paytmの技術が組み合わさっているのは、ユーザー、ストアにとって早く、良いサービスを提供するためには、アドバンテージではないか」と中山氏は自信を見せる。

10月5日にPayPayがローンチしてから、イベントの時点で約1ヶ月半。手応えはどうだったのだろうか。

中山氏は「順調に1ヶ月半、支えられてきた」と振り返り、「これからさらに使える場所を増やしたい。また、ユーザーが使いたくなるような機能を備えたい」と話す。

「我々は日常的に使える店があることが大切と考えており、12月頭にはファミリーマートで使えるようになる。日本では平均すると1日7〜8回、支払いシーンがあるという。コンビニエンスストアもそうだし、例えばコーヒーショップや自動販売機、ドラッグストア、スーパーなど、その支払いシーンの大部分にあたる店に対し、営業をがんばってかけていく」(中山氏)

また10月25日に中国で普及するモバイル決済「Alipay」と連携を開始したことについては、中山氏は「非常に良かった」と述べている。

「Alipayが使われている店には特徴がある。数字の面でも、訪日中国人のお客さんは平均数倍、日本人より使う金額が大きい。日本人のみならず、外国人も送客できるので、ストアにとっては新しいお客さんが来ることになり、PayPayの特徴になっているかと思う」(中山氏)

日本でユーザーやストアを増やすための戦略については「先月ローンチしたばかりなので、まだまだこれから」と中山氏。「僕たちがTwitterでユーザー、ストアの皆さまから、よく言われていることが3つある」として、それぞれへの対応について、このように語った。

「ひとつはPayPayという一風変わったネーミングについて。これは浸透させる努力をしなければ、と考えている。次に、使える店の数と、どこにあるのか分からない、という点。ストアの数については営業が日々開拓しているので、時間を追えば十分な数ができるだろう。店の場所の表示については、PayPayのアプリ内にある地図機能をバージョンアップしていくことで対応する。それから、PayPayを使う理由は何か、というツイートもある。これは利用で得られる直接のインセンティブ、ということだと思うのだが、これは今、どういうものにするか検討しているところだ」(中山氏)

インセンティブについては今日、PayPayでの支払いで、ユーザーに20%相当のPayPayボーナスが還元される「100億円あげちゃうキャンペーン」が12月4日からスタートすることが発表されている。

モバイルファースト選択がPaytm成長の理由

中山氏は、普段はカナダにいるタカール氏と毎日、テレビ会議でミーティングを欠かさないという。

「日本の朝、カナダでは夜の30分〜1時間ぐらい、ミーティングしている。もともと、テーマがあれば24時間以内に解決しようね、という約束があり、このミーティングで判断し、決断を行うことにしている。また、特にテーマがない日も顔を合わせて、家族のこととか昨日どこへ行った、とか、たわいもない話でもするようにしている。合弁事業、かつ国を超えてやっていく中では貴重な時間ではないかと思うし、充実感もある」(中山氏)

タカール氏も「プロジェクトを始めたとき、毎日必ず顔を合わせようと決めた。何かニュースがあればシェアし、私から何かアイデアが出ればシェアするといったことをやってきている。私たちは数多くの1対1のコミュニケーションを行うことで、この6カ月間でとてもよいビジネスパートナーとなれた。一緒に働くチームとして、(誰かの伝聞でなく)直接、共通言語で会話できていることは大切なことだ」と、毎日のミーティングの効用について述べている。

タカール氏がCEOを務めていたPaytmは、2011年に最初のサービスをローンチした。親会社のOne97は1999年創業。長年、通信業に関わってきて、その後マーケティングソリューション、電子決済、eコマース、銀行と、さまざまな産業へテクノロジーを適用し、効率化してきた会社だ。現在、Paytmはインド、カナダで事業を展開している。

PayPay取締役副社長/CTO Harinder Takhar(ハリンダー・タカール)氏

カナダ進出は2017年と最近だが「非常に調子がいい」とタカール氏は述べる。「消費者の要望やニーズがインドと異なるので、その理解が大変重要だ。何がビジネスの課題であるかを理解するために時間を取っている。例えばデジタルペイメントの受け入れ方など、インドや日本と比較しても悪くない。その地で何が実際に求められているのかを知り、解決方法を見出すことが大事だ」(タカール氏)

Paytmは現在3億人のユーザーを抱える。成長の秘訣について聞くと、タカール氏は「数多くのハードワークと幾夜もの眠れない夜によるものだ」と笑いながら答えた後、「この8年間でスマートフォンを誰もが使うようになったこと」を理由として挙げた。

「スマートフォンが100ドル、150ドル程度で買えるようになり、インターネットにも接続できる。生活がスマートフォンにどんどん最適化され、ユースケースがスマホに集まる。私たちは2011年から“モバイルファースト”と言っていたが、他社はそれをしていなかった。だからインドには我々ぐらいしかプレイヤーがいなかった。また私たちはモバイルファーストを選択したことで、非常に顧客中心のサービスになっていくだろう」(タカール氏)

日本よりキャッシュレスが進んでいるインドの決済事情について、タカール氏は「インドでは現金を持ち歩かなくても済む。銀行口座の開設もデビットカードの発行もすべてスマートフォンの中で完結できる」と説明する。

タカール氏は過去10年以上、現金を持っていないそうだ。「それによるトラブルはときどきある。特に日本では、食べ物や何かを買おうとすると現金が必要になる。そういうときは誰かに現金を出してもらって、電子マネーと替えてもらうことになるが、それでも、現金は持たないようにしている」(タカール氏)

タカール氏にとってキャッシュを持たないことは、「実はいいモチベーションでもある」とのことだ。「いろいろなトラブルも、現金なしで生活できるということには代えがたい。もうお金を無くす心配もない。それに何とかして問題を解決しようという(サービス改良の)原動力にもなっている」(タカール氏)

日本のキャッシュレス事情については、「インドに比べて遅れているが、日本にはすばらしいものもたくさんある」とタカール氏は語る。「やるべき仕事はたくさんあるが、PayPayはチャレンジング。そのポテンシャル、日本にキャッシュレスサービスをもたらすことが、仕事への大きなモチベーションになっている」(タカール氏)

PayPayに対してアドバイスはあるか、との質問に対し、タカール氏は以下のように答えている。

「ひとつは、テクノロジーは流動的で変化する、ということ。最初に使っていた技術が10日後にも使えるという保証はない。何世代もリデザインして、失敗を修正しながら進めることだ。5世代目で最適な利益をもたらしたとしても、6世代目でも同じとは限らない。次の世代、次の世代でベストになるようにPayPayでも取り組んでいく」(タカール氏)

また世界規模で仕事を進めるPaytmならではの助言として「多文化チームでの仕事の仕方」について、こう述べた。

「多文化の人材が揃うチームでは、多様なバックグラウンドを持つ人々が、異なるタイムゾーンに所属しながら働く。日本が眠りにつけばカナダが起きる、といった具合に24時間動き続け、チームで働くことでたくさんの課題が解決できる。たくさんの会話が1日の間に交わされ、チームレベルではいろいろなことが起きる。これは私たちのユニークな、スーパーパワーだ。誇りに思う」(タカール氏)

タカール氏はPayPayへPaytmが技術提供を行うことのメリットについて、「QRコード決済の仕組みは、その辺に売っているものを買ってきた、というものではない。自分たちで構築したものだ。だからこそ、既に経験してきたことをシェアし、起きた失敗は避けることができる」と述べる。

「他国で開発したソリューションのすべてを日本に持ってくる、というのは意味がない。ある国の問題は、特定のテクノロジーで解決される。だがその時に『他の国ではどうなっていたのか』をいろいろな国から来ている人たちと話せる環境があるのは、価値があることだ。違うオリジンを持ついろいろな人が1つの部屋に集まり、解決策を編み出すことには意義がある」(タカール氏)

戦略は「顧客をハッピーにすること。ほかはなくてもOKだ」

PayPayが競合に勝つための戦略についても2人に聞いた。タカール氏は、イベント前夜に中山氏と行ったミーティングの内容に触れて、こう語る。

「我々のゴールは何か、というテーマで話したのだけれども、中山さんの答えは実に明確だった。『我々の価値は、お客さまの問題を解決する、それ以外にはない』。ほかのことは重要ではない、お客さんを確実にハッピーにするんだ、と中山さんは言った。ほかのことはなくても、それでOKだ、と我々は本気で考えている」(タカール氏)

中山氏は「ありきたりだけど、自分がユーザーだったら一番快適なサービスを使いたいと思う。それを、あらゆる技術の力を使って実現していくという、地道な作業を毎日続けることじゃないか」とその意図を説明する。

「一番大切にすべきことは、ユーザー、そしてストア。これは徹底していて、そのことには2人ともブレがない。それを推進するのみ」(中山氏)

中山氏は「モバイル決済が浸透することで、現金を使うより便利な世界を作らなければ」と日本での事業展開による未来を語っている。

「繰り返しになるが、どこででもモバイル決済が使えることが一番大事。日本はキャッシュ・イズ・キングで、現金が使えないところはない。それと同じだけモバイル決済が使える店やシーンがなければ、使ってもらえない。モバイル決済で現金より便利な世界は、各国で始まっている。そんな中で使われなくなった機能なども分かってきている。我々は最短距離で便利な未来へ向かっていく」(中山氏)

タカール氏は「我々のやり方は、フラストレーションがたまる状況で『なぜ?』と自問すること」とも話している。

「例えば日本のスタンダードな取引では、なぜか、店などにお金が入ってくるまでが遅く、1カ月後になることもある。その1カ月で利子が稼げるわけでもない。お金が決済と同時に店に行く、それでいいはずだ。私たちはそれを実現しようとする。あるいは、日本のタクシーに乗れば、ステッカーで30種類ぐらいの支払い方法が表示してある。なぜそれが必要なのだろう。我々は、今のテクノロジーが実際に何を成しているのかをよく観察することで、より良いソリューションを実現するための力を得ている」(タカール氏)

PayPayがこれから備える機能についても、期待が膨らむところだ。中山氏は直近の新機能として「割り勘機能は間もなく実装できるのではないか」と明かす。また「それ以外にも都度、実装したい機能について話している。ロードマップはいっぱいあるので、それを順次作っていく。期待していてほしい」とのことだった。

AnyPayの新会社、110億円の投資対象はインドの“自動車”ーーシェアされるあらゆるモノに投資

わりかんアプリ「paymo」などを提供し、連続起業家・投資家の木村新司氏が会長を務めるAnyPay。同社は11月22日、2017年より開始した投資事業を切り離し、新しく投資会社を設立すると発表した。Habourfront Capital(以下、ハーバーフロント)と名付けられたこの新会社は、ちょっと変わった存在だ。投資対象は、Airbnbなどシェアリングエコノミー関連のスタートアップ。でも、彼らはその企業の株式ではなく、そのサービス上でシェアされる“モノ”に投資をする。

ハーバーフロントにとって初めての投資案件となったのは、インドで“クルマ版Airbnb”を提供するDrivezyだ。同サービスは、ユーザーが自身の保有する車両(クルマやバイク)をプラットフォームに掲載し、他のユーザーに貸し出すことで収益を得ることができるシェアリングエコノミー型のサービスだ。Airbnbは不動産を貸し出せるプラットフォームだが、その代わりにクルマを貸し出すと考えれば分かりやすいだろう。

Drivezyの特徴は、貸し出す車両にGPSなどを搭載した専用モジュール積むことで貸し出し中のクルマのデータを細かく取得しているという点。車両保有率が約7%と低いインドではクルマは高価な資産であり、ゆえに盗難などのリスクが付きまとう。GPSなどでそのようなリスクを軽減するとともに、ガソリンの残量など車両状態のデータも取得している。そのため、ユーザーはアプリを開くだけでどこにどんな状態のクルマがあり、それをいくらで借りれるのかが一目瞭然で分かるというわけだ。

このような特徴からDrivezyは順調に成長を続けている。2015年の創業以来、サービス利用可能都市はインド国内11箇所に拡大。累計で30万人のユーザーが同サービスを利用した。投資家からの注目も熱い。Drivezyは2018年8月にシリーズBで1430万ドルを調達。この調達ラウンドをリードしたのは韓国の自動車メーカーHyundaiだ。そのほか、Y CombinatorやGoogleなどからも資金を調達。AnyPay会長の木村新司氏の投資会社Das Capitalもシードラウンドからすべてのラウンドに参加している。

しかし一方で、プラットフォームに掲載されている車両台数はいまだ1000台程度(米国TechCrunch取材時)と、十分な水準ではないのも確かだ。車両を供給するのは一部の富裕層や元Uberドライバーなどに限られ、供給が不足している状態だという。Drivezyもそれを把握しており、Hyundaiなどと手を組むことで車両数を今後約1年間で1万〜1万2000台までに増やす計画を明かしていた。そこで登場するのが、今回の主役であるハーバーフロントというわけだ。

シェアされるあらゆるものに投資

ハーバーフロントはDrivezyに供給する車両それ自体を「投資性資産」とみなし、今後3年間で110億円を投入して車両自体を購入。それをDrivezyのプラットフォーム上に掲載する。通常のフローと同じく、Drivezyユーザーがその車両をレンタルすればハーバーフロントに収益が入る。ハーバーフロントはTechCrunch Japanの取材に対し、この投資によってどれほどの収益率を見込んでいるのかは明かさなかったが、「新しいサービスであること、インドというカントリーリスクがあることなどを考えれば、既存の国内不動産ファンドが投資可否の判断をするIRRよりも高い水準であることは間違いない」(ハーバーフロント代表の中川渉氏)と話す。

ハーバーフロントを率いる中川氏は、コールマン・サックス証券の投資銀行部門でM&A業務や資金調達業務などに携わり、不動産のシェアリングサービスなどを手がけるSQUEEZEの創業メンバーとして取締役COOを勤めたあと、AnyPayの投資部門に転籍した。そして今回、そのAnyPayの投資部門を丸ごと新会社として切り出す形でハーバーフロントが生まれた。

ハーバフロントの投資対象は技術的な強みをもつシェアリングエコノミー関連企業だということだが、今後もエクイティを通した出資は行なわず、シェアされるアセットそのものへの投資に特化していくという。これは個人的に、シェアリングエコノミーの新時代が始まったと感じる話だった。

シェアリングエコノミーはそのサービスの性質上、世界中のすべてのものを投資性資産に変える力をもつ。シェアリングエコノミー型サービスの誕生により、時計やパソコン、机、服、クルマなどの有形資産だけでなく、時間やスキルなど無形のものまでありとあらゆるものがシェア可能になった。そして、それを他人にシェアして収益を得られるのであれば、それは立派な「投資対象」となる。

これまで不動産ファンドなどが所有する物件をAirbnbなどのプラットフォームに載せて収益化するという事例があったが、僕が知る限り、あらゆるシェアリングエコノミー型サービスを横断的に投資対象とする「シェアアセット特化型ファンド」はハーバーフロントが初めてだ。彼らのような投資企業が生まれたのも、それだけシェアリングエコノミーが成熟し、人々の生活のなかに「シェアする」という概念が根付いた証拠だと言える。

シェアリングエコノミー型サービスは、ユーザーと並行して、シェアされる資産を早急に集める必要がある。登録したはいいが、利用できるケースが限られていればユーザーから見放されてしまう。「ユーザー」と「シェアアセットの供給者」は、サービスにとって欠かせない両輪なのだ。シェアリングエコノミーの世界市場規模は2025年までに約41兆円にまで膨らむという試算もあり、今後もこの分野へ大量の投資マネーが流れ込む。しかし、従来のエクイティ投資に加え、ハーバーフロントのように、さまざまなプラットフォームにアセットを直接供給するというプレイヤーが増えれば、早期に持続可能となるプラットフォームも増える。そうなれば、シェアリングエコノミー型サービスの数が増加し、さらに普及が進むという循環が生まれるのだろう。

LINE PayがQUICPay対応、スマホをかざして決済可能に Android限定

eng-logo-2015LINE PayがQUICPay決済に対応しました。本日(11月21日)よりAndroid端末限定で利用できます。

LINEアプリ内にある「LINE Pay」のメインメニューからGoogle Payに登録することで利用可能。全国81万か所のQUICPay+に対応した店舗で、アプリの立ち上げ不要、スマホをかざすだけの非接触決済が使えるようになります。

利用方法は下記の通りです。

  • 「Android」対応スマートフォン端末に、「おサイフケータイ」「Google Pay」の両アプリをダウンロードする
  • スマートフォンの「LINE」アプリ内、「ウォレット」の残高表示部分を選択する
  • 「LINE Pay」メインメニュー内「QUICPay」を選択
  • 「Google Payに登録」を選んで「LINE Pay」をメインカードに登録し、設定完了

対応デバイスはAndroid 5.0以上、かつおサイフケータイアプリ(6.1.5以上)を搭載した機種。

なお、物理LINE Payカードを持っていないユーザーに対しては、非接触決済を利用できるバーチャルカードを発行。後日物理カードを郵送します。また、Google Payアプリ経由の登録も順次提供するとしています。

Google Payに登録で1000ポイント付与キャンペーンも

この対応を記念して、LINE PayアカウントをGoogle Payに登録完了したユーザーを対象に、初回登録時に限り一律LINEポイント1000ポイントをプレゼントするキャンペーンも実施します。

Engadget 日本版からの転載。

誰でも先生になれるスキルシェアサービス「ストアカ」が3.8億円を調達

教えたい人と学びたい人をつなぐ、まなびのマーケットプレイス「ストアカ」。同サービスを展開するストリートアカデミーは11月22日、複数の投資家より総額3.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはスパイラル・ベンチャーズ・ジャパン、TBSイノベーション・パートナーズ、モバイル・インターネットキャピタルの各社が運営するファンドとAPAMANグループのグループ会社だ。

ストリートアカデミーは2012年の設立。2016年9月に総額1.5億円を調達しているほか、これまでに複数回の資金調達を実施している。

同社が運営するストアカ(2017年1月にストリートアカデミーから名称を変更)は、個人間でナレッジを共有できるスキルシェアのマーケットプレイスだ。講師としての経験がなくても教えたいスキルと情熱があれば、すぐに誰でも先生になって講座を開くことができる。

この領域のサービスは「ココナラ」のようなオンライン完結型と対面でレクチャーを行うオフライン型があるけれど、ストアカは後者のオフライン形式。サービス上で出会ったユーザー同士がリアルの場で直接会ってスキルをシェアする。

また同じ対面でも「サイタ」のようなマンツーマンのプライベートレッスンではなく、基本的には1人の先生が複数の参加者に教える教室スタイルだ(マンツーマンレッスンを行うことも可能)。

各講座は単発で受講可能で、1講座はだいたい数千円のものが多く気軽に参加できるのが特徴。現在は生徒ユーザーが25万人、先生ユーザーも1万6000人を超えていて、ビジネスやIT、ハンドメイド、フィットネスなど170ジャンル2万3000以上の講座が掲載されている。

対面式のためオンライン完結型と比べて場所の制約は受けるが、現在は福岡や関西への展開も強化。東京メトロ、蔦屋書店、近鉄百貨店、丸井グループなどとの共同講座や、北九州市との創業支援などにも取り組む。

ストリートアカデミーでは今回調達した資金を用いて、マーケティング・システム開発への投資や地域展開に向けた人材採用を進めていく方針。具体的には先生ユーザーに対する顧客管理機能や、生徒ユーザーに対する最適な「まなび」を提案するマッチング機能の開発、首都圏以外のエリア展開に注力する。

また調達先の企業とは事業連携も視野に入れていく計画。APAMANグループのグループ会社とは、同グループ企業のfabbitが運営するコワーキングスペースの活用面での連携、TBSホールディングスとはTBSグループの番組・イベントとの連動などを検討しているようだ。

DMMがプログラミングスクールのインフラトップを買収ーー今月だけで2度目、DMMの財産が起業家を惹きつける

DMM.comは11月22日、プログラミング教育スクール「WEBCAMP」を運営するインフラトップを買収したと発表した。インフラトップが発行する株式の60%を取得する。株式取得総額は非公開。なお、今回の買収によりDMM.com COOの村中悠介氏、同CTOの松本勇気氏がインフラトップ取締役に就任する。

写真左より、DMM.com CTOの松本勇気氏、インフラトップ代表取締役の大島礼頌氏

インフラトップは、社会人向けプログラミングスクールのWEBCAMPを運営するスタートアップ。これまでに3000人の卒業生を輩出しているという。同社はWEBCAMPの上位コースとして転職に特化した「WEBCAMP PRO」も提供。プログラミング未経験者であっても、3ヶ月のコースを修了後にエンジニアとしての転職を保証するというものだ(転職が決まらなかった場合、スクール費用は返却する)。

インフラトップ代表取締役の大島礼頌氏は、「転職保証は、弊社のビジョンでもある“プログラミング教育を通して人生を実際に変える”ことにコミットするという意思表示だった。それを達成するため、Gitによるチーム開発なども想定した実践的なカリキュラムを設計した」と語る。その結果、現在までにWEBCAMP PRO卒業生の転職成功率は98%、転職後3ヶ月間の離職率は0%と高水準となっている。

今回の買収を主導したDMM.com CTOの松本勇気氏も、「インフラトップはチーム開発を含めたカリキュラムによる実践的な教育や、またその成果として、その後の就職率の高さなどが際立っている」とコメントし、同社のプログラミングスクールの質を評価している。

DMM.comによるスタートアップ買収と言えば、2018年11月に発表された終活ねっとの買収が記憶に新しい。「当初は上場しか考えておらず、今回の買収以前にも並行して他社からの増資の話もあった。しかし、DMM.comには『DMM英会話』を通してスクール運営のナレッジが溜まっていたこと、そしてサービスの磨き上げについて、松本さんからのコミットメントを感じたことを踏まえ、今後1〜2年の成長速度を考えるとDMMグループに入ることが正解だと思った」と大島氏はDMM傘下入りの理由を語る。

インフラトップのこれまでの株主構成は、総数の約80%が同社代表取締役の大島礼頌氏、残り20%がEast VenturesやMistletoeなどの外部投資家だった。今回の買収により、株式60%をDMM.comが所有、40%が大島氏が保有することになる。現時点での増資はなく、同社に直接キャッシュが入るわけではない。だが、大島氏は今後利用可能になるDMMのリソースを利用して、サービスのさらなる改善とマスプロモーションに注力すると話す。

「転職市場の現状として、40代や50代のエンジニア転職は難しいという現実がある。しかし、今後はWEBCAMPを利用すれば年齢や経歴関係なく転職によって人生を変えられるということを実現したい。また、弊社はリアルとオンラインのどちらでもスクールを運営しているが、オンラインでもリアルと遜色ないクオリティを追求していく」(大島氏)

終活ねっとの買収でも同様だが、DMM.comが事業拡大のためにアクセルを踏みたいと願う起業家を強く惹きつけている。DMMの事業は非常に広範囲に渡り、それだけ蓄積されたノウハウの種類も多い。キャッシュカウ化した本業から潤沢な資金も流れ込む。だからこそ、即時買い取り、終活メディア、プログラミングスクールなど、彼らが手を組めるスタートアップのスコープも当然広くなる。DMM.comが日本の若手起業家を惹きつける“シェアハウス”のようだと感じるのは僕だけだろうか。

阪大のロボット・ヘッド、Affettoの表情は不気味なまでに人間そっくり

Affettoは魂の底を見通すような視線をこちらに向けたまま微笑することができる。大阪大学の研究グループが開発したこの子供の頭のロボットは人間の表情を巧みに模倣することができる。微笑するだけでなく、鼻をうごめかしたり、 目を閉じて物思いにふけったりする。総じていえば、正気では目を覚ますことができない悪夢ができあがりそうだ。

大阪大学の石原尚助教は研究のリリースで「アンドロイドの表情は、柔らかい顔被覆の内部に搭載された機構の動きを操ることで作り出されます。これまでは、顔表面の変形の特性が調べられていなかったため、変形の作り分けは大まかにしか実現されていませんでした。…〔この研究の成果により〕ぱっと開く笑顔や恐る恐る出す笑顔など、ニュアンスを含んだ生き生きとした表情をアンドロイドで表現できるようになることが期待されます」と述べている。

実はTechCrunchでは2011年にも開発初期のAffettoを取り上げている。このときは今よりもさらに怖かった。研究グループはロボットの顔に皮膚を貼り、髪を乗せたのでAffettoの表情のない目にじっと睨まれたときの恐怖がほんのわずかだが減った。未来バンザイだ。

Affettoが頭だけでなく身体を得たらわれわれの支配者になってしまうのではないと心配だが、ともあれ研究グループはこう述べている。

〔石原助教らの〕研究グループでは、アンドロイドの顔表面に多数の三次元位置計測(モーションキャプチャ)用マーカを貼り付け、各内部機構の動きに伴う表面の動きを精密に計測し、表面の操りやすさと変形の特性を機構毎に評価しました。…各機構に対して表面の変形の特性を考慮に入れた制御器を設けることで、無表情から笑顔に至る5パターンの表情の変化を作り分けることに成功しました。…このような研究によって、コミュニケーションロボットが状況に応じてより効果的な情報を、より豊かに人と交わすことができるようになると期待されます。

このロボット・ヘッドをルンバに載せて家の中を掃除させてみよう。子供たちは大喜びだろうが、ネコは心臓マヒを起こすかもしれない。

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滑川海彦@Facebook Google+

ラズベリーパイより簡単にIoT電子工作ができる「obniz」が1億円を調達、コンセプトは“ハードウェアのAPI化”

数年前、3Dプリンターやレーザーカッターなどが普及することで“製造業の民主化”が実現するという「メイカーズムーブメント」が大きな話題を呼んだ。

技術革新によって製造コストが大幅に削減されただけでなく、クラウドファンディングのように資金と顧客を募れる仕組みが登場したことで“おもしろいアイデアと熱量”を持った個人が、思いのままにものづくりにチャレンジできる環境が整い始めている。

今回紹介する「obniz(オブナイズ)」が目指している世界観もメイカーズの文化に近いかもしれない。このプロダクトが叶えてくれるのは「電子工作をやってみたい、IoTプロダクトを作ってみたい」というロマンだ。

詳しくは後述するけれど、クラウドサービスと専用の組み込みデバイスによってさまざまな電子部品をインターネット経由で、あらゆるプログラム言語で操作できるのが特徴。電子工作やIoT機器の開発ハードルを下げ、高度な専門知識のない人でもその魅力を体験できる仕組みを提供する。

そんなobnizを開発するのはCambrianRobotics(カンブリアンロボティクス)という日本のスタートアップ。小学生の頃からマイコンやパソコンのプログラムをやっていたという2人のエンジニアが立ち上げたチームだ。

同社は11月22日、UTECを引受先とする第三者割当増資により約1億円を調達したことを明らかにした。

JavaScriptで電子工作が可能に、面倒な初期設定は不要

上述した通り、obnizは“インターネットと連携して動くもの”を簡単に作れるサービスだ。

写真にあるブルーの組み込みデバイスをWifiに接続した状態でセンサーやモーターといった部品に繋げば、それらの部品をインターネット(API)経由であらゆるプログラム言語から操作できるようになる。

実際に使い始めるまでの工程はわずか3ステップ。まずはobnizをWifiにつなぎ、使いたいモーターなどを接続する。あとはスマホからobnizに表示されるQRコードを読み込み、表示されたプログラムを実行するだけ。IoT機器を作ってスマートホーム化に挑戦したり、ラジコンやロボットを作ったりいろいろと応用の幅も広い。

最大の特徴はそのハードルの低さだ。

obnizの場合、組み込みデバイスに接続されたモーターやセンサーを操作するのに必要なのは、ブラウザでプログラムを書いて実行するだけ。従来IoTプロダクトを開発する際に高い壁となっていた「組み込みデバイスにおけるファームウェアの作成(ハードウェアを制御するソフトウェア)」を必要としない。

SDKを使えばJavaScriptから利用が可能。obnizにつないだリアルな部品をHTMLの中で“プログラム上のオブジェクト”として扱えるようになる。

全くの初心者であってもブロックプログラムを通じて簡単な操作を実行することができる上に、専用のアプリも不要で複雑な環境構築で行き詰まる心配もない。

kickstarterのプロジェクトを経て(160万円以上を集めることに成功)2018年5月より開発ボードの販売をスタート。1台の価格は5980円で、すでに2000台以上の販売実績があるという。

エンジニアが趣味でIoT機器の電子工作をする際や教育用のコンテンツとして活用されるケースが多いそう。obnizが電子工作デビューというユーザーも一定数いて、中にはプログラミング未経験ながら挑戦する人もいるようだ。

何か動くものを自作したいとなった場合、今であればArduino(アルディーノ)やRaspberry Pi(ラズベリーパイ)が代表的な選択肢にあがるだろう。obnizは両者では少しハードルが高いと感じる層のユーザーにもリーチしていきたい考え。使いやすさと作れるものの幅が広い点をウリに「グローバルにおいて、動くものを作る際の選択肢として1番最初に想起されるような存在を目指したい」という。

また個人だけでなく企業におけるPoC(概念実証)などプロトタイプ作成や、IoTへの導入目的でも使われ始めている。具体的には遠隔地のデータ収集や装置の監視などでの利用が考えられ、とある装置の故障予知を目的とした実証実験も企業と計画しているとのことだ。

コンセプトは「ハードウェアのAPI化」

そもそもobnizはどのような背景で生まれたのか。CambrianRobotics創業者でCEOの佐藤雄紀氏によると、IoT開発の壁をなくし「すべてのエンジニア、個人が自由にIoTを作れるようにする」という思いが根本にあるようだ。

IoTプロダクトの開発にはその性質上、ハードウェアとソフトウェア、そしてネットワークなど複数の領域に関する知見と開発スキルが必要とされ、それが大きな障壁となってきた。特に難点となっていたのがファームウェアの開発だ。

「スマホアプリで言えばiOSとAndroidがあって、iOSアプリはAndroidの機種では動かない。それと同じようなことがいろいろな世界で起きていて、組み込みの世界における小さなコンピューターにおいても同様だ。メーカーが違えばiOSとAndroidぐらいの違いがあるため、同じ電子部品を使う際にもソフトを書き換える必要がある」(佐藤氏)

佐藤氏によると、一般的には使うセンサーや装置が変わるごとにファームウェアを書き直す必要があるそう。しかも「(そこで動くようなソフトは)LinuxやMacやiOSのように洗練されたシステムと違って、機械言語に近いレベルで書かないといけない」ため、できる人が限られているのだという。

「IoTを進めたい場合には必ずそういったエンジニアの力が必要になるが、そもそも人材が足りない。また回路やその上で動くファームウェアには詳しくても、クラウドに繋ぐためのネットワークの知識は別の領域になるので、余計に難易度があがる」(佐藤氏)

そんな状況を打破するために開発したobnizのコンセプトは“ハードウェア(電子部品)のAPI化”だ。

それこそ今ではさまざまなWebサービスがAPIを公開している。たとえば天気の情報を取得したいような場合、該当するAPIの使い方さえわかれば、詳しい知識がなくとも欲しい情報を取ることができる。ハードウェアにおいても同じような仕組みがあるべきだというのがobnizの考え方だ。

「たとえ温度に関するデータの取り方を知らなかったとしても、APIがわかっていることで、どんなエンジニアでもその情報を使える。そのような環境を整えていければ、電子工作やIoTが初めてのエンジニアもチャレンジしやすくなるし、企業でのIoT活用も進められると考えている」(佐藤氏)

電子工作にチャレンジしたいユーザーを後押しできるプロダクトへ

写真左からCambrianRobotics共同創業者でCEOの佐藤雄紀氏、同じく共同創業者の木戸康平氏

CambrianRoboticsの創業は2014年。佐藤氏と共同創業者の木戸康平氏は早稲田大学総合機械工学科の同級生。学生時代には他の友人も含めて起業し「papelook」という1000万DL超えの画像加工アプリの開発に携わった。

その後佐藤氏はスポットライト(連続起業家の柴田陽氏が創業、2013年に楽天により買収)にジョインし、ポイントサービス「スマポ」のiOSアプリや超音波ビーコン、超音波プロトコルの設計や開発を担当。高校時代からロボコンなどに関わっていたという木戸氏はpapelookで一緒に活動した後、大学院を経てKDDIで働いた。

そんな2人が再び合流して立ち上げたのがCambrianRoboticsというわけだ。

同社では今回調達した資金を活用して、開発やテクニカルセールスを中心とした人材採用を進めるほか、国内外でのマーケティングにも力を入れる方針。現在はプログラミング教育などコンシューマー向けのプロダクトを強化していて、ロボットやセンサーなどをセットにしたAIロボットキット、IoTホームキットの準備も進めている(クラウドファンディングのMakuakeで先行販売中)。

「もちろん今まで回路に携わっていたような人が便利に使えるツールでもあるが、回路などの知識がないWebエンジニアの人が『ハードにも挑戦してみたい』と思った時に、それを後押しできるようなプロダクトにしていきたい」(木戸氏)

「(個人法人問わず)obnizがあったからIoTを始められたという声がいろんな所から出てくるような、そんなプロダクトを目指したい」(佐藤氏)

京急がVCファンドへ初の出資、アクセラレータープログラムもスタート

京浜急行電鉄は11月21日、VCのサムライインキュベートとともに「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」を発表した。募集期間は2018年11月〜2019年8月。2017年に続く第2期の募集となる。また「Samurai Incubate Fund 6号投資事業有限責任組合」に出資することも発表。京急としては初のVCファンドへの出資となる。出資額は明らかにしなかったが、数億円規模とのこと。

京急の新規事業企画室で部長を務める沼田英治氏によると、ファンド出資については社内でもかなり調整が必要だったという。京急としては投資による儲けではなく、スタートアップとの事業連携を重視したうえでの決断だったそうだ。

今後、京急自らが投資する可能性としては、社内でもCVCを作るという話は議論したが、当面はサムライインキュベートなど連携してスタートアップに投資していきたいと沼田氏。ただし、京急としても数社への直接出資は検討しているようだ。

京浜急行電鉄の新規事業企画室で部長を務める沼田英治氏

KEIKYU ACCELERATOR PROGRAMは、少子高齢化や労働力不足の深刻化を背景に、AIやIoTによるオープンイノベーションの進展を図るのが狙い。新たな顧客体験や鉄道を中心とした生活インフラ、沿線周辺にある資源の活性化などで新たなライフスタイルの創出を考えていくというものだ。第2期では、移動、くらし・働き方、買い物、観光・レジャー、テクノロジーの活用という5つのテーマで募集する。

サムライインキュベート創業者/共同経営パートナーの榊原健太郎氏

昨年の第1期の募集では、7件の事業を採択し、4件の実証実験や事業連携を実現。エンジョイワークスが葉山の空き蔵を宿泊施設にリノベーションしたほか、チャプターエイトは民泊施設へのチェックインの代行事業を手がけるといった展開があった。そのほかヤマップは、三浦半島の新たな観光資源を掘り起こす「MIURA ALPSD PROJECT」を立ち上げた。

また今回のファンド出資にともなう提携により、サムライインキュベートは京急に対して、国内外の有望なスタートアップの紹介、投資や育成のノウハウの提供などを行うという。

“ファンクラブの民主化”目指す「CHIP」が4600万円を調達、開設されたファンクラブ数は2600個に

ファンクラブ作成アプリ「CHIP(チップ)」を運営するRINACITAは11月21日、East Venturesと複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額4600万円を調達したことを明らかにした。

今回同社に株主として加わった個人投資家はヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏、ペロリ創業者の中川綾太郎氏、nanapi創業者の古川健介氏、Vapes代表取締役社長の野口圭登氏、Candle代表取締役の金靖征氏、AppBrew代表取締役の深澤雄太氏と匿名の個人が1名。

RINACITAは過去にSkyland VenturesとEast Venturesからも資金調達を実施していて、今回はそれに続く調達となる。

3ヶ月で約2600個のファンクラブが開設

“ファンクラブの民主化”という紹介をしている通り、CHIPはスマホアプリから誰でも簡単にファンクラブを作れるサービスだ。

最初にテーマ画像を1枚設定した後は、ファンクラブの名前と説明、月額会員費、会員証のデザインなどを選ぶだけ。作るだけなら2〜3分もあればできる。テキストや画像の投稿、コメントなどを通じてアーティストとファンが交流を楽しむ場所になっていて、会員費の90%がアーティストに還元され、10%がCHIPの収益となる仕組みだ。

2018年8月5日のリリース後にSNSなどでちょっとした話題を呼び、約2週間で約1.3万人がユーザー登録。1700個ほどのファンクラブが開設され、実際に1400人が何らかのコミュニティに“CHIP”(課金)した。

RINACITA代表取締役の小澤昂大氏によると「今は一旦落ち着いたフェーズ」とのことで、確かにペース自体は落ちているものの、約3ヶ月が経過した現在もファンクラブ数が2600個、登録ユーザー数が2.2万人、課金ユーザー数が2700人と伸びている。

左からトップページ、CHIPの公式ファンクラブページ、ファンクラブの追加プラン作成画面

ただし現時点でCHIPを使ってできることはまだまだ限定的。「ローンチしてからの2〜3ヶ月はバグの修正や本当に最低限必要な機能を整備していた状態」(小澤氏)で、基本的にはアーティストがテキストや画像を投稿し、それに対してコミュニケーションをとるシンプルなプラットフォームだ。

直近では複数のプランを設定して金額や投稿の内容を変えられる機能や、入会できるファンの上限を設定できる機能、画像を複数枚投稿できる機能などが追加。11月からはより本格的なアップデートに向けた開発を進めていて、今回調達した資金も主にプロダクト強化に向けた人材採用などに用いるという。

現在はiOS版のみとなっているが、来年春ごろまでを目安にAndroid版とWeb版をローンチする方針。並行して(1)投稿できるコンテンツの種類を拡大(2)今までよりも本格的なファンクラブページを作れる機能の追加(3)アーティストと個人によるダイレクトメッセージ(DM)機能の追加 という3つを軸にアップデートを進めている。

投稿できるコンテンツに関しては動画や音声への対応を進める計画。今はテンプレートから選ぶ仕様になっている「ファンクラブの会員証」をカスマイズできる仕組みや、外向けにファンクラブサイトをデザインできる機能など、アーティストの世界観を反映しやすい環境も整える。

双方の交流を深めるという点で、DMの機能なども用意していく予定。なおDMについては全員が対象というよりは少人数限定の上位プランで特典として提供するなど、アーティストが範囲を選択できる仕様を検討しているとのことだ。

初期コストを気にせず、誰でも気軽にファンクラブを作れる場所へ

CHIPをローンチしてからの数ヶ月で「予想以上に多くの人に初期から使ってもらえ、多くの発見があった」と話す小澤氏。同様のサービスやオンラインサロンを含め“個人をエンパワーメントするサービス”が増えてきてはいるけれど、CHIPとしてはよりファンクラブに寄せていきたいという思いが強くなったという。

そのきっかけのひとつが「実際にCHIPを出してからファンクラブは『トップレイヤーのアーティストしか作れない』ということに改めて気づいた」ことにあるようだ。

「初期コストがかかるため、大手の事務所でもそれに見合った成果が見込めなければ簡単には作らない。結果として駆け出しの人達はもちろん、一定数のファンがいて良い作品を作っているアーティストでもファンクラブを持っておらず、収益化やファンとの交流の仕方に悩んでいるケースも多い。そんなアーティストが初期コストとかを気にせず、気軽にファンクラブを作れるようにしたい」(小澤氏)

とはいえ、ほとんど名も知られていないようなアーティストが熱狂的なファンを獲得したり、活動資金を確保したりできる場所を確立するには、解決しなければいけない課題も多い。

実際にCHIPを眺めてみても、多くのファンを集めているコミュニティはまだまだ一定数。もちろん試しに開設されたものもあるのだろうけど、ファンの数が0人や数人のものも少なくない。現在はSNSなどで影響力を持ちすでにフォロワーを抱えているユーザーが、そのパワーをCHIPでも発揮しているような状況にも見える。

これは他のサービスも抱えている問題かもしれないけれど、小澤氏も「その点は今後も試行錯誤を続けていきたい。まずは使いやすさなどで価値を感じてもらえるように改善をしていきつつ、『もともとのフォロワーが少ない人でもCHIPに来れば新たなファンがつく』『CHIPを開けば応援してみたいと思えるアーティストが見つかる』ような仕組みを模索していく」と話していた。