アマゾンがAlexaを病院や高齢者施設に導入、Alexaで家族の呼び出しやニュースの確認などが可能に

Amazon(アマゾン)はすでにホテル集合住宅などの分野をターゲットに含めていたが、米国時間10月25日、医療機関や高齢者施設向けに新しいソリューションを展開すると発表した。このソリューションは、Alexa Smart Properties(アレクサ・スマート・プロパティーズ)の一部だ。Alexaデバイスを大規模に導入するニーズに応えるために特別に設計されており、施設の管理者は、患者や入居者のためにカスタマイズされた体験を作り出すことができる。

高齢者施設の入居者は、Alexaデバイスを使って家族など大切な人を呼び出したり、コミュニティでの出来事などのニュースを把握したりすることができる。Alexaデバイスは、お知らせ、音声メッセージによる入居者同士のコミュニケーション、音声通話やビデオ通話、チェックインやメンテナンスの依頼、さまざまな管理業務など、施設での活動の効率化にも利用できる。Amazonは、これが施設の効率化と生産性の向上に資すると考えている。

Amazonによると、Atria(アトリア)やEskaton(エスカトン)などの高齢者施設が、この新しいソリューションを導入するという。

高齢者施設でAlexaを利用する市場は、K4Connectのようなサードパーティプロバイダーがすでに開拓している。K4Connectは2020年、Alexaの音声アシストを含む新しいテクノロジーを高齢者や障害者に提供するため、シリーズBで2100万ドル(約24億円)を調達した。K4Connectをはじめ、Lifeline Senior Living、Aiva、Voceraなどの企業も、Alexa Smart PropertiesのツールやAPIを利用し、独自にカスタマイズしたソリューションやソフトウェアを展開しようとしている。

画像クレジット:Amazon

一方、AmazonはすでにCedars-Sinai(シダーズ・サイナイ)と共同で、試験的にAlexaを病室に置いている。患者は音声コマンドを使って、テレビのチャンネル変更などの基本的なタスクを実行したり、介護スタッフとコミュニケーションを取ったりすることができる。日常的な作業の一部をAlexaに任せ、看護師を医療に専念させる構想だ。

Amazonの病院向け新ソリューションにより、患者はAlexaを使って介護スタッフとコミュニケーションをとったり、自室の機器を操作したり、ニュースや音楽を楽しんだりすることができる。また、医療従事者は、Alexaの通話やDrop-In(ドロップイン)などの機能を使い、病室に入らなくても患者とコミュニケーションをとることができる。これが病院の生産性を向上させ、医療用品や手袋、マスク、ガウンなどの保護具を節約することもできるとAmazonは指摘する。パンデミックで新型コロナウイルスの症例が急増し、個人防護具の不足が複数の現場で継続的に問題となっていた。

Amazonによると、Cedars-SinaiはAlexa Smart Propertiesソリューションを正式に展開する企業の1つであり、上記のパイロットプログラムに続き、BayCareやHouston Methodistもその動きに名を連ねている。

「音声は、年齢や技術的な知識に関係なく、患者にとって直感的に使えるものです」とCedars-Sinaiの医療・外科サービス部門のエグゼクティブ・ディレクターであるPeachy Hain(ピーチー・ヘイン)氏は声明で述べた。「患者は、部屋に入ってすぐに、Alexaを使ってケアチームと連絡を取り合い、いろいろ楽しむことができます。ケア提供者は作業を効率化して患者さんのケアに時間を割くことができます。これは、私たちの病院での体験を向上させる完全なゲームチェンジャーです」と同氏は付け加えた。

Amazonはこれまで、音声の録音や書き起こしに関連したプライバシーの問題に悩まされてきた。医療機関や高齢者施設向けのソリューションでは、音声の録音は保存されず、ユーザーがデバイスを使用する際にAlexaと個人情報を共有する必要もないと説明する。また、ユーザーは上部のボタンでいつでもEchoのマイクをミュートすることができる。加えて、Amazonは、HIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)適格のAlexaの技術に基づく通信により、保護の対象となる健康情報を守るとしている。

Amazonは以前から、Alexaを医療機関に導入しようと取り組んできた。CNBCの2018年の報道では、音声アシスタントを医療の分野で役立てるために、Alexaを使ったヘルスケアチームを構築中だと伝えていた。そのために必要となる複雑なHIPAA規制をクリアすることも目指していた。翌年、HIPAAに準拠した最初の医療用技術を発表し、デバイスの病院での試験運用を開始した。Amazonは、他にもヘルスケアソリューションに投資しており、医師の診断書や患者の健康記録などから情報を収集する機械学習ツール「Amazon Comprehend Medical」のようなソリューションや、オンライン薬局PillPackのような買収などが投資の対象だ。

新しいAlexa Smart Propertiesソリューションは、いずれも11月から米国で展開されるとAmazonは話している。

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】何千年も前から続く人類と「乳がん」との戦いにAIはどう貢献するのか

この40年、毎年10月の「乳がん啓発月間」は、地球上で最も多く発生する癌であり、毎年約25万人の命を奪っている「乳がん」の認知度を高めることに貢献してきた。

乳がんは、古代エジプトにまでさかのぼる記録があるにもかかわらず、何千年もの間「口に出せない病気」と考えられてきた。女性は黙ったまま「尊厳」を持って苦しむことが求められていたのだ。

このような偏見が教育上の無知を助長し、ほんの数十年前まで乳がんは比較的研究が進んでいない病気だった。20世紀のほとんどの期間、他のがん治療が発展する一方で、乳がんを患った女性は、放射線治療や手術を受けることになるのだが、しばしば根治的な手術が行われたものの、大した効果が得られないまま、患者が傷つくことも多かった。

乳がんの死亡率は、1930年代から1970年代までほとんど変化がなかった。しかし、フェミニストや女性解放団体の努力により、乳がんの研究と治療は、男性優位の病院や研究機関の中で、正当な地位を得られるまでになった。その治療法は、一世代でがらりと変わったのだ。

1970年代には、乳がんと診断された女性が、その後10年間を生き延びられる確率は、およそ40%に過ぎなかった。それが今では、新薬や最先端の検診法、より繊細で効果的な手術のおかげで、その確率がほぼ2倍に伸びた。

このような変化に不可欠なのが、早期診断の重要性だ。乳がんの発見が早ければ早いほど、治療はしやすくなる。人工知能は、この乳がんの発見において、ますます重要な役割を果たすようになっている。2021年、英国の国民保健サービス(NHS)は、AIを用いて乳がんをスクリーニングする方法の研究を発表した。この方法は、人間の医師に代わるものではなく補完するものだが、放射線技師の不足を解消するのにも役立つ。新型コロナウイルスの影響からNHSが抱える検査の滞りを解消するためには、さらに2000人の放射線技師が必要とされているという。

いくつかのスタートアップ企業も、AIを使ってこの人手不足に取り組んでいる。英国のKheiron Medical Technologies(ケイロン・メディカル・テクノロジーズ)は、AIを使って50万人の女性の乳がんをスクリーニングすることを計画している。スペインのthe Blue Box(ザ・ブルー・ポックス)は、尿サンプルから乳がんを検出できる装置を開発中だ。インドのNiramai(ニラマイ)は、農村部や準都市部に住む多くの女性のスクリーニングに役立つ低コストのツールをてがけている。

しかし、生存率を高めるためには、再発のリスクが高い患者を特定することも同じくらい重要だ。乳がん患者の10人に1人は、初期治療後に再発し、生存率が低下すると言われている。

そのような患者を早期に特定することは、これまで難しかった。しかし、筆者のチームは、フランスのがん専門病院であるGustave Roussy(ギュスターヴ・ルシー)と協力して、再発のリスクが高い患者
の10人に8人を発見することができるAIツールを開発した。AIは、患者が必要とする治療を早期に受けられるようにすると同時に、リスクの低い患者が頻繁に不安な検診を受けなくて済むためにも役立つ。一方、製薬会社はリスクの高い患者をより早く募集することによって、乳がんの治験を加速させることができる。

だが、患者のデータのプライバシーは、迅速な研究の妨げとなる可能性がある。病院はデータを外部に送信することに慎重であり、製薬会社は貴重なデータを競合他社と共有したくない。しかし、AIはこのような問題の解決に役立ち、新しい治療法をより早く、より安全に、より安価に開発することを可能にする。

Federated learning(連合学習)は、データを病院から集約することなく、複数の機関のデータを使ってトレーニングを行う新しい形のAIで、研究者が必要不可欠でありながらこれまでアクセスできなかったデータにアクセスできるようにするために、欧州全域で使用されている。

我々はまた、最も侵攻性の高い乳がんがなぜ特定の薬剤に耐性を示すのかについて、AIを用いて理解を深め、化学療法よりも健康な細胞と腫瘍細胞との識別に優れた、新しい個別化された薬剤の開発に役立てている。

AIの影響力はますます大きくなっているものの、成果を向上させるために同じくらい重要なことは、医療は基本的に人間が行うものであるという認識である。どんなアルゴリズムでも、患者の最も暗い瞬間を慰めることはできないし、どんな機械でも、すべての患者が病気に打ち勝つために必要な回復力を植え付けて鼓舞することはできない。

私だけでなくすべての医師は、病気の治療と同じくらい患者を理解することが重要であると知っている。臨床医の共感は、患者の満足度の高さや苦痛の少なさに関係し、患者が困難な治療コースを続ける動機となり得る。ありがたいことに、乳がん治療にますます役立っているAI技術は、医師の能力を補完し、高めてくれる。

毎年、乳がんと診断される何百万人もの人々にとって、乳がんはもはや「口に出せない」病気ではない。10月の始まりを告げるピンクリボンの海は、最古の敵の1つである乳がんとの戦いにおいて、私たちがどれだけ進歩したかを示している。私たちは現在、この戦いに打ち勝ちつつあるのだ。乳がんを完全に根絶することはできないかもしれない。しかし、AIが患者の早期診断を助け、治療法の迅速な開発を可能にすることによって、数十年後には、もはや「乳がん啓発月間」の必要性がなくなるかもしれない。

編集部注:本稿を執筆したThomas Clozel(トーマス・クローゼル)医学博士は、Owkin(オウキン)の共同設立者兼CEOであり、パリのHôpital Henri-Mondr(アンリモンドール病院)の臨床非血液学の元助教授、ニューヨークのWeill Cornell Medicine(ワイル・コーネル・メディスン)のMelnick(メルニック)ラボの元研究員でもある。

画像クレジット:NYS444 / Getty Images

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(文:Thomas Clozel、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【ロボティクス】パンデミックの影響、看護支援ロボットDiligent Robotics CEOとの興味深い話

筆者はここ数日、大きなプロジェクトに関わっていた(詳細については近日公開予定)ため、残念ながら最新ニュースにしばらく目を通しておらず、ロボティクスに関する今週の大きなニュースについてまったく把握していなかった。そこで、このコラムでその遅れを少し取り戻したいと思う。

そのニュースを取り上げる前に、少し別の話を紹介しよう。筆者は、パンデミックの期間中にユニークな経験をした興味深いロボティクス企業と対談する機会があった。

Diligent Robotics(ディリジェント・ロボティクス)がシリーズAを発表したとき、世界はそれまでとはまったく違ってしまったと言っていいだろう。2020年3月は今からそれほど遠い昔ではないが、現在に至るまでパンデミックによって世界中の医療機関は非常に大きな負担を強いられ続けており、その影響がこれほどまでに広範囲かつ長期間に及ぶとはほとんど誰も予想していなかった。病院スタッフの過労と人手不足の傾向は、新型コロナウイルス感染症の流行以前にも見られたが、流行後にはその傾向が顕著になり、同社の看護支援ロボットMoxi(モキシー)の需要が急激に増加した。

2020年実施された1000万ドル(約11億円)の資金投入がディリジェントの成長に貢献したことは間違いないが、同社は在宅勤務に移行する際に誰もが遭遇する課題に対処しながら、生産能力を高めるという難しいタスクに取り組んでいた。

2017年にVivian Chu(ヴィヴィアン・チュー)氏とともにディリジェントを設立した、Interactive Computing at Georgia Tech(ジョージア工科大学インタラクティブ・コンピューティング学部)のAndrea Thomaz(アンドレア・トマス)准教授は筆者たちと今週会い、2020年経験したユニークな課題と機会について話してくれた。

ロボティクス業界とディリジェントが、パンデミックによって受けた影響の度合いは?

さまざまな業界で労働市場が実に劇的に変化した。これはロボティクス業界とディリジェントの両方に言えることだが、この劇的な変化は、多くの従業員が退職しようとしていること、すなわち何か別のことを始めようとしていることと関係しているように思える。そして実際、多くの人が職を変えている。この傾向はあらゆる技術的な職業に見られ、我々の業界や医療業界で多くの事例が上がっている。とにかく、多くの人が何か別のことを始めようと考えている。パンデミックが始まる前も労働力に関する課題はあったが、今やそれが危機的なレベルになりつつある。

技術的な仕事に就きたいと思う人は常に少ないが、技術的な仕事の需要は常に高い。これはある意味、危機的な状況と言えるだろう。

この傾向はパンデミック前から始まっていた。パンデミックでそれが顕著になったに過ぎない。この傾向は、医療保険改革法(オバマケア)に端を発している。より多くの人が医療を受けられるようになったということは、病院に行って医療を受けられる人が増えたことを意味する。これが高齢化と相まって、必要な医療を提供するスタッフのさらなる不足を引き起こしている。

パンデミック発生の時点でロボットを採用していた病院の件数と、需要がその後どのように急増したかという観点から、需要を把握することはできるか?

我々はまだその情報を公開していない。来年の前半までには、その規模についてより具体的な数値を発表できるだろう。ただし、四半期ごとにロボットの出荷台数を2倍に増やしていることは確かだ。

そのようなロボットの運用に至るプロセスはどのようなものか?

これは、病院市場に関して非常に興味深いテーマであると考えている。このプロセスは、倉庫や製造における従来の自動化とは異なる。ロボットを運用する環境では、看護師や臨床医が働いている。ロボットは、そのような環境で人と一緒に作業をしなければならない。我々は、まず初めにワークフローを評価する。つまり、その環境で現在どのように業務が行われているかを評価するのだ。

画像クレジット:Diligent Robotics

パンデミックは企業の成長にどのような影響を与えたか?

パンデミック前は、製品の市場適合性が満たされていた。我々の研究開発チームの作業は、製品に変更をわずかに加えるだけの非常に小規模なものだった。製品を顧客に見せて価値を示すだけでよかった。しかし現在は契約の締結と納入が重要で、最短期間で導入し、耐久性を最大限高めることを考えることが必要だ。特にハードウェアの面では、製造プロセスと信頼性に関してどのように設計すべきかが大切だ。現在、当社のロボットが現場で1年以上稼働しており、以前と比べて信頼性が高まっている。今や、ロボティクスのロングテール現象が起こりつつあり、今後が楽しみだ。

パンデミックによって、ロボティクスの分野で驚くべき機能や需要が生まれたか?

当社の顧客のどの現場でも「そのロボットはコーヒーを持ってこられるようになるか」と看護師は口を揃えていう。モキシーがロビーのStarbucks(スターバックス)に行き、みんなのためにコーヒーを買ってくることを看護師たちは期待している。自分たちはスターバックスに行って並ぶ時間がないから、時間の節約になるというわけだ。実現できないわけではないが、積極的に試してみようとは考えていない。

つまり、モキシーにエスプレッソマシンを搭載する計画はないということか?

その計画が来年のうちに実現することはないだろう。

近い将来、資金をさらに調達する予定はあるか?

現在、増資の計画中だ。今のところ順調だが、顧客からの需要が非常に高まっているため、チームを増強してロボットの出荷台数を増やすのは、やぶさかではない。

現時点では米国市場に注力するつもりか?

当面はその予定だ。当社では、世界的に展開する戦略について検討を始めている。2022年中に当社の製品が世界中に行き渡るとは考えていないが、すでに多くの引き合いが来ている。現在、販売パートナーを選定中だ。世界各地のクライアントから、1カ月に何件も問い合わせが来ている。今のところ、それらのクライアントと積極的に進めているプロジェクトはない。

画像クレジット:Tortoise / Albertsons

資金調達とコーヒーの配達については、別の機会に取り上げよう。今週は、配送関連で注目の話題がいくつかあるので紹介しよう。まず、過去に何度も取り上げたTortoise(トータス)だが、同社のリモート制御による配達ロボットのチームに追い風が吹いてきた。米国アイダホ州を拠点とするKing Retail Solutions(キングリテールソリューションズ)との取引によって、ラストワンマイル配送用に500台を超えるトータスのロボットが米国内の歩道に導入される。

CEOのDmitry Shevelenko(ドミトリー・シェベレンコ)氏は「未来の姿がニューノーマルになるというこの新しい現実に、誰もが気づき始めている。ラストワンマイル配送で時給20ドル(約2300円)稼ぐスタッフを動員しても、想定されるどんな状況でも消費者の期待に応え続けるということはできない。単純計算は通用しないのだ」と語る。

先に、Google(グーグル)のWing(ウィング)は、同社による提携を発表した。ウィングは、オーストラリアの小売店舗不動産グループであるVicinity Centres(ビシニティ・センターズ)と提携し、ドローンを使用した配達プログラムの範囲をさらに拡大する。ウィングは、10万件の配達を達成したという先日の発表に続き、オーストラリアのローガン市にあるグランドプラザショッピングセンターの屋上からの配達件数が、過去1カ月間に2500件に達したと発表した。

ローガン市の住民は、タピオカティー、ジュース、寿司を受け取ることができる。今や美容と健康に関する製品まで配達できるようになった。ウィングは「一般的な企業の建物には屋上があるため、当社の新しい屋上配達モデルによって、ほんの少しの出費とインフラ整備だけで、さらに多くの企業がドローン配達サービスを提供できるようになる」と語る。

画像クレジット:Jamba / Blendid

ジュースといえば(といっても、まとめ記事で筆者がよく使う前振りではない)、米国サンフランシスコのベイエリアを拠点とするスムージーロボットメーカーのBlendid(ブレンディド)は先に、Jamba(ジャンバ)のモールキオスク2号店に同社の製品を導入すると発表した。このキオスクは、米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡のダウニー市のモールに今週オープンした。ちなみにダウニー市は、現在営業しているMcDonald’s(マクドナルド)の最も古い店舗がある都市でもある(Wikipediaより)。

これは時代の波だろうか。それとも何かのトリックだろうか。答えはどちらも「イエス」だ。

ジャンバの社長であるGeoff Henry(ジェフ・ヘンリー)氏はプレスリリースで「Jamba by Blendid(ジャンバ・バイ・ブレンディド)のキオスク1号店オープン後に、Stonewood Center(ストーンウッド・センター)に試験的にキオスク2号店をオープンして、モールの買い物客に新鮮なブレンドスムージーを販売できることをうれしく思います。ジャンバ・バイ・ブレンディドでは最新の非接触式食品提供技術を採用しているため、当社の現地フランチャイズ店は、ジャンバ好きのファンにスムージーを簡単に提供できます」と述べている。

画像クレジット:Abundant Robotics

ここで、フルーツに関するビジネスの果樹園サイドに注目しよう。Robot Report(ロボットレポート)に今週掲載された記事には、Wavemaker Labs(ウェーブメーカーラボ)が今夏に廃業したAbundant Robotics(アバンダント・ロボティクス)のIPを取得したことが紹介されている。残念ながら、アバンダントのリンゴ収穫ロボットが復活するわけではなさそうだ。どうやら、ウェーブメーカーのポートフォリオスタートアップ企業であるFuture Acres(フューチャー・エーカーズ)のロボティクスシステムに、このIPが組み込まれるようだ。

最後に、アームに搭載されたRFアンテナとカメラを使用して紛失物を探す、MITが研究しているロボットを簡単に紹介しよう。以下はMITの発表からの引用文だ。

このロボットアームは、機械学習を使用して対象物の正確な位置を自動で特定し、対象物の上にある物を移動させ、対象物をつかみ、目標とする物体を拾い上げたかどうかを確認する。RFusionにはカメラ、アンテナ、ロボットアーム、AIが包括的に統合されており、どんな環境でも的確に機能する。特別な設定は不要だ。

画像クレジット:Diligent Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

臓器調達におけるテクノロジーの推移

米国では毎年、10万人以上の人々が移植用臓器の提供を待っている。そして、臓器の提供を待っている間に、毎日10数人の患者が亡くなっている。臓器調達の世界で働くには、このような冷酷な計算と楽観的な考え方が必要となる。

この数十年の間に、57の臓器調達機関(OPO)が設立されたが、いずれも全米臓器分配ネットワーク(UNOS)と提携している。UNOSは、連邦政府との契約に基づき提供された臓器と患者(レシピエント)とのマッチングを行う非営利団体だ。

これは医療界のユニークな一面であり、また初めの印象より驚くほどテック系スタートアップに似ている。初期のベータ版製品から、より専門的かつ近代的な技術スタックに至るまで、UNOSのネットワークとそれに関わる企業は、臓器移植プロセスのスピードと信頼性を向上させるべく努力してきた。

ここでは、物流や分配計画のためのインフラ整備など、いくつかの団体における最新の取り組みを紹介するとともに、異種移植、ドローン配送システム、臓器生存プラットフォームなど、よりSF的なプロジェクトについても探ってみたい。そこでUNOSと2つのOPOの関係者数人にインタビューを行い、最先端の状況と将来の夢について聞いた。

ある電話番号の男

UNOSで30年近く働き、現在シニアコミュニケーションストラテジストを務めるJoel Newman(ジョエル・ニューマン)氏は「移植は、誰もがリアルタイムでコミュニケーションを取り、協力し合わなければならない。しかも常に知っている相手とは限らない。そういう意味では以前からずっとユニークだ」といい、臓器移植という生死にかかわる問題のわりには、意外かもしれないが「これらの段取りの多くは、驚くほど略式のものだった」と語る。

実際、初期の頃はあまりにも簡易的であり、ドナーとレシピエントのマッチングはボイスメールの受信箱を介して行われていた。

臓器調達機関Gift of Life(ギフト・オブ・ライフ)の現社長であるHoward Nathan(ハワード・ネイサン氏、1984年に代表に就任して以来、全OPOの中でも最も長く社長を務めている)によると、1980年代に臓器移植が活発に行われるようになってきた初期には、Don Denny(ドン・デニー)氏という1人の男性が協力体制の多くを運営していたという。

1977年にピッツバーグに移り住んだデニー氏は、レシピエントの状態を1~4の段階で評価する独自のシステムを構築した。同氏のシステムでは、「1」が最も臓器移植の緊急性が高いことを示していたが、現在の評価システムでは逆になっている。「デニー氏は毎日、ボイスメールにレシピエントの状態を録音し、ドナーを探す側ではその録音を聞く。そして、集中治療室で移植に適合する臓器のドナーが見つかった場合、家族の同意を得てデニー氏に電話する」とネイサン氏は当時を説明する。同氏によると、デニー氏は4年半の間に2700件の移植をコーディネートしたが、すべてはデニー氏の録音したボイスメールと電話を介して行われたという。

UNOSは1977年に設立され、1984年に法人化された。1986年には、当時の最新通信技術だったFAXを利用して、臓器移植のマッチングを行うためによりコンピューター化されたシステムを開発した。現在、ギフト・オブ・ライフの臨床サービス担当副社長であり、2022年にネイサン氏の後任として社長に就任するRick Hasz(リック・ハース)氏は、当時の技術はそれほど信頼できるものではなかったという。「入社した頃は、感熱紙のFAXを使っていた。早くマッチングしなければ、印字が消えてしまい、情報が失われてしまっていた」と同氏は語る。

もちろんUNOSは、ドナー、ドナー病院、レシピエント、移植センターのニーズに合わせて、時間とともにテクノロジーを進化させ続けてきた。UNOSは、ウェブベースのアプリケーションを利用しており、現在ではモバイルアプリも提供している。

同社でITカスタマー支援担当ディレクターを務めるAmy Putnam(エイミー・パットナム)氏は、間違いを減らすためにモバイルアプリを導入したことが大きなブレークスルーになったという。「2012年、UNOSはTransNet(トランスネット)と呼ばれる変革に取り組んでいた。トランスネットはiOS(アイオーエス)とAndroid(アンドロイド)上で動作するモバイルアプリで、OPOが臓器を電子的にパッケージ化し、ラベル付けすることができる。夜中の3時ともなると、大抵の人の手書き文字は読みづらく、データ入力のミスが多くなってしまう。だからトランスネットは本当に助けになった」と同氏は語る。

しかし、このシステムを構築したことによる真の成果は、すべてのOPO関連企業と協力して作業を進め、すべてのユーザーからのフィードバックに基づいてプロセスを改善できるようになったことだった。

臓器のエクスペディアを構築する

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移植の調整では、電話とコミュニケーションが重要となる。臓器提供は通常、突然発生し、ほとんどどこでも起こりうる。そして、ドナー病院から移植センターのレシピエントに臓器を届けるまでOPOに与えられる時間は、わずか数時間しかない。加えて、対象の臓器の提供を待つ可能性のある数十の移植センターの中から、どの患者が適合するか極めて迅速に判断しなければならない。そういった要件をリアルタイムで処理することが、UNOSの最新技術スタックの大きな強みとなっている。

ニューマン氏は、その複雑な作業の一部を説明してくれた。「腎臓は多くの場合、およそ24時間以内であれば移植できる。しかし、摘出した後は早く移植するほうが望ましいため、おそらくほとんどが12時間以内に移植されている。肝臓や膵臓の場合は8時間以内が理想的で、心臓や肺の場合は4~6時間程度にまで短くなる」と同氏は述べる。血液が供給されなくなった後、臓器が生存できる時間を「阻血時間」という。

この数年をかけ、UNOSは臓器の所在を把握するために、より精巧な追跡システムを開発してきた。OPOの1つであるLifeSource(ライフソース)の主任臨床役員を務めるJulie Kemink(ジュリー・ケミンク)氏は「今見ているものは、Amazon(アマゾン)のパッケージに似ている。出荷されたことはわかるが、正確にどこにあるかは必ずしもわかるわけではない」という。

しかし、UNOSのインフラが新しくアップデートされたことにより、すべての臓器のリアルタイムな位置情報が提供されるようになってきた。「これは、Uber(ウーバー)のようなもので、臓器が実際にどこにあるのかを常に確認することができる」と同氏はいう。

臓器ごとにGPS位置情報を持たせるのは簡単なことのように思えるが、膨大な調整が必要だった。ドナー病院、臓器調達機関、移植センターはそれぞれ異なる団体であるため、位置に関する共通基準を定義することには困難が伴った。さらに、基本的に臓器の輸送はランダムに起きるため、適切な機器と追跡装置を米国各地に設置することは、それだけでハードルが高かったのだ。

物流情報が充実した現在、移植外科医は臓器の到着時間をリアルタイムに把握できるようになった。臓器が飛行機の貨物室に入れられ空輸される場合でも、その飛行機が早く空港に到着すれば、医師に予定よりも早く進行していることが通知され、レシピエントの準備を早めることができる。逆に、車の渋滞で臓器の到着が遅れている場合、移植センターはレシピエントの術前処置を遅らせることができる。

UNOSでは、より多くのデータが得られるようになったことを受け、パットナム氏が「臓器のエクスペディア」と呼ぶ「トラベルアプリ」の開発を検討している。「そのアプリでは、OPOや移植病院が、ドナー病院とレシピエントセンターに関する具体的な情報を入力すると、オプションが表示され、飛行機の選択肢や、車で移動する場合の輸送に要する時間を確認してオプションを選ぶことができる」と同氏は述べる。また、このアプリは現在試験的に運用されているが、将来的にはアプリの操作だけで臓器の割当ができるようになるかもしれないと、同氏はいう。

このインフラは非常に重要だ。というのも、UNOSは臓器の距離を定義する方法を改定しているからだ。数十年にわたり、UNOSとそのOPO加盟団体は、地域の境界線に基づきシステムを運用していた。例えば、ミネソタ州にある臓器は、まずミネソタ州のレシピエントが対象とされ、その後、適合者が見つからなければ近隣の地域に対象を広げる、といった具合だ。

これは単純なシステムだが、富裕層を中心に利用される可能性があった。今から10年以上前、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がテネシー州に住んでいないにもかかわらず、テネシー州で臓器移植を受けたことが物議を醸した。同氏は、当時「マルチプルリスティング」と呼ばれていた方法を利用して臓器移植を受けた。これは、手段を持つレシピエントができるだけ多くの地域の臓器提供の順番待ちリストに登録することができる仕組みだ。米国内のどこかで適合する臓器が見つかれば、レシピエントはすぐにプライベートジェットをチャーターして臓器移植を受けに行き、リストを待つ時間を実質的に短縮することができたのだ。

現在、UNOSでは、恣意的な地域の境界線ではなく、実際の半径に基づいた距離アルゴリズムを使用している。しかし、それでもいくつかのバランスの悪さが残る。ミネアポリス地域を担当するOPOであるライフソースのケミンク氏は「ミネソタ州は東西どちらの海岸にも近いため、米国全土から臓器提供を受けるチャンスがある」という。これは、沿岸部では利用できないオプションだ。「カリフォルニアでは、ニューヨークから心臓の提供を受けることは基本的に不可能だ」と同氏はいう。

物流の改善に加えて、UNOSは統合のためにプラットフォームを最適化した。「一般に、多くの人は複数のユーザー名やパスワードを持つことを嫌い、複数のソリューションを持つことも嫌う。そのため、最も重要なことは統合だ。統合する必要がある」とパットナム氏は最近のアップグレードについて語る。

統合の一環として、レシピエントのデータや画像ファイルをアップロードする方法を増やした。「医師らは、アップロードされた冠動脈造影を実際に見て、[心臓が]レシピエントに適しているかどうかを確認できるようになった」とケミンク氏はいう。このことにより臓器のオファーを受けてから決定までの時間が短縮され、結果として臓器移植の成功率が高まることになる。

臓器におけるIFTTT(イフト)

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米国政府のデータによると、同国では3万9000件の臓器移植が行われた。臓器移植が頻繁に行われるようになったことで、配分ネットワークの戦略を細かく調整するために利用できるデータセットは次第に増加し、結果的に移植に成功する臓器の数は増えている。

「現在、当社は臓器提供プロセスに予測分析を導入するプロジェクトに取り組んでおり、レシピエントがこの臓器を受け入れた場合の生存確率に関する分析を検討している」とパットナム氏は述べる。逆に臓器提供を断った場合「同程度かそれ以上の臓器が提供されるまでの確率と期間」の予測も行う。UNOSは現在、これらの変更について顧客からのフィードバックを得るための導入試験に取り組んでおり、また、臓器提供という非常にセンシティブな面を考慮し、アルゴリズムにおける極めて明確な説明性を確保している。

また、2020年からは「オファーフィルター」と呼ばれる機能も試験的に導入している。これは、移植センターが、臓器適合の可能性に関する意思決定をより自動化するために使用するものだ。パットナム氏は「当社が行ったことは、過去の腎臓の受け入れデータを見て『移植センターが受け入れるはずがないとわかるオファーがあるかどうか』を調べることだった」という。

UNOSのニューマン氏は「これまでも、移植センターが設定できるスクリーニング基準はあったが、オファーフィルターにより『70歳以上のドナーを絶対に受け入れないということはないが、70歳以上に加え到着までに6時間以上かかる場合は、関心がない』というように、もう少し細かなフィルタリングができるようになった」と述べる。UNOSでは、2021年の後半には全米へ展開したいとしている。

臓器提供の未来

臓器調達のプロセスは非常に重要だが、過去10年間に得られた成果の多くは、結局のところITアプリケーションの進歩とその実装によるものだ。多くのスタートアップの創業者やベンチャーキャピタリストの強い関心を集めるテーマは、臓器を必要としている患者のためにその入手性を根本的に変えることができる「ムーンショット」となるアイデアの実現性だ。

ドローンを使って臓器を届けるというプロジェクトは、すでに試行が始まっている。ギフト・オブ・ライフのネイサン氏は「現在、ドローンを使った試みは行われており、実際に1件の例がある」といい、さらに「メリーランド州にも実験を行っているグループがある」と付け加える。同氏は、数百マイル(数百キロメートル)に及ぶ場合もある臓器の移動距離や、臓器が受ける損傷の可能性を考えると「臓器を危険にさらしたくはないから」と、このテクノロジーにはやや懐疑的だ。

また、臓器調達機関に登録されている患者の中でも最も移植が優先されるレシピエントに臓器を届ける時間を確保するため、阻血時間を長くする(あるいは完全になくす)ことを目的とした低温保存や温灌流保存などのテクノロジーがある。現在、いくつかの装置やシステムが米国食品医薬品局(FDA)の審理を受けており、今後10年の内には実用化されると予想されている。

ライフソースのケミンク氏は、臓器生存率向上を目的とするテクノロジーの進歩により臓器の分配を改善できる2つの要素として、血液型の一致と年齢を挙げている。同氏は「AB型は最も少ない血液型のため、その血液型の臓器を待っている患者はあまり多くない」とし、タイミングよく「適合するレシピエントがいないかもしれない」ため、適したレシピエントが現れるまで、低温保存技術で臓器を「氷漬け」にしておくことができるかもしれない、という。同様に、提供される臓器はレシピエントのサイズに合っている必要がある。「12歳の子どもから心臓を摘出しても70歳のレシピエントに移植することはできない」と同氏はいう。体の大きさが合わないからだ。そして「適合するレシピエントが現れるまで、保存することができるようになれば、それはすばらしい進歩だ」と同氏は続ける。

また、循環器死(DCD)と呼ばれる、循環死したドナーからの臓器調達も進んでいる。ネイサン氏は「米国では毎年280万人の人が亡くなっているが、そのうち医学的に臓器提供に適しているのは2万人程度だ」という。それが、臓器提供を非常に長い時間待たなければならない理由の1つだ。

ハース氏は、このような状況下でも、臓器調達の方法が進歩したことで、移植可能な臓器が見つかる可能性が高まったと述べる。同氏は「2、3年前までは何も変わっていなかった。肝臓や腎臓などに限られていた」とし、しかし「ここ数年、心臓や肺の移植でより多くの人を助ける機会が生まれ、200件の心臓移植が行われた」と述べる。そして最終的には、これらの新しいテクノロジーによって「DCDによる心臓のドナープールを30%拡大できると考えている」と続ける。

最後に「異種移植」と呼ばれる、動物から人間への臓器移植について見てみよう。このような実験は、何十年も前から行われているが、目立った進歩は見られない。ハース氏は「異種移植については、常に10~15年先といわれてきた」と述べる。とはいえ、CRISPR(クリスパー)のような新しい技術により、近年、この分野での進歩が見られ、人間の臓器の不足を動物の臓器で解決する道が開かれる可能性もある、と同氏は説明する。

しかし、このような変革や新しいテクノロジーがあっても、米国における臓器の根本的な課題は変わらない。命を救うためには、人々が「イエス」にマークする必要があるのだ。「最も必要としているのは、臓器提供にイエスと答えてくれる人を増やすことだ。臓器提供の意思表示をしてもらわないと、誰も移植を受けられないのだから」とケミンク氏はいう。現在、米国民の約半数が臓器提供の登録をしている。この課題を解決するためには、技術的な問題ではなく、人々に命の力、そして自分が他の人に提供できるものを思い出してもらうことが重要だ。

画像クレジット:PIERRE-PHILIPPE MARCOU / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

花のような形状のMatternetのドローン自動発着ステーションがスイスの病院で初めて実用化

ドローンによる配送が物流の将来にどのように適合していくのか、誰にもはっきりとはわからない。しかし、1つ確かなことは、ドローンが大事な荷物を、注文主の家の芝生に直接落としてしまうわけにはいかないということだ。その解決策となりそうなのが、Matternet(マッターネット)の「Station(ステーション)」と呼ばれる、自動化されたドローンの着陸スペースと荷物の受け取り・送り出し機能を備えたタワーだ。この花のような形の構造物は、ついにレンダリング画像から現実の世界へ飛び出し、スイスの医療施設に設置された。

このStationは2020年初めに発表があったものだが、コンセプトのレンダリング画だけでは、最終的にアイデア通りのものになるかどうかはわからない。今回のケースでは、完全に60年代のSF映画の小道具のようなものができあがった。

しかし、この特異な形状は、荷物運び用ドローンが着陸してバッテリーを交換するための安全な場所を提供し、雨や風などの天候、そして罪のないロボットから医療用ペイロードを奪おうとする困り者から、ドローンと荷物を保護するという目的に適っている。

初めて実際に設置された今回のケースでは、ドローンが輸送するのは温度管理されたハードシェルケースで、中には通常は陸路で移送される多数のバイラル瓶が入れられる。これらは検査サンプル、血液、薬など、使用期限が短く、何らかの理由で施設間を移動する必要があるものが対象となるだろう。

ドローンで別の施設に運ぶために、スイスポストのキャリアに入れる小瓶を仕分けする女性(画像クレジット:Matternet)

Stationの内部で、ハードケースはドローンから取り外され、許可された人が取り出せるように保管される。支柱の部分には、病院の制限区域に入るときに使うようなIDバッジで開閉が保護された小さな収集用のドアが備わる。これは通常の認証システムと統合させることで、ドローンによって運ばれた荷物を、空気チューブやカート、マニラ封筒のように、しかし同じ建物内にいなくても、簡単に受け取ることができるようにするアイデアだ。

最初のStationはルガーノのEOC病院グループに設置されたが、最初の大規模な展開はアブダビで、市の保健局および同地のドローン配送会社SkyGo(スカイゴー)と協力し、市内の40カ所にStationのネットワークを構築する予定だ。これらも、比較的軽量で緊急性の高い医療品の搬送という基本的に同じ目的のために使用されるが、その規模はより大きなものになる。

アブダビで提案されているMatternet/SkyGoネットワークの地図(画像クレジット:Matternet/SkyGo)

2021年8月、Matternetはドローン企業として初めて、Pfizer(ファイザー)製ワクチンを拠点間で輸送した。これはどこの病院ネットワークや保健所も実現を望んでいる短期輸送だ。もし繁華街で大量の注射が必要になったら、多数の人々を避難させるのではなく、配給所や近くの診療所から数百人分のワクチンを空輸することができるようになる。

もちろん、このような貴重な荷物は、中庭や屋根の上に無造作に置き去りにするわけには行かない。だからこそ、Stationはこの種のネットワークに必須となるだろう。とはいえ、ネットで注文した食品を配達してもらうために、自宅の裏庭にStationを設置しようとは思わないほうがいい。

画像クレジット:Matternet

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)