遠隔地採用のスタートアップDeelの新機能は企業が暗号資産でペイロールを蓄えるオプション

2019年、Alex Bouaziz(アレックス・ブアジズ)氏とShuo Wang(シュオ・ワン)氏は、企業がコンプライアンスに基づいて世界中の人材を遠隔地から雇用し、給与を支払うことを目指すスタートアップ、Deel(ディール)を設立した。

2人のミッションは真剣そのものであり、リモートワークがこれからは主流になるというビジョンは、新型コロナの大流行よりも先にあり、新型コロナは同社の提供するサービスへの需要を一層高めることになった。

Deelは、企業が現地法人を介さずに5分以内に従業員や契約社員を雇用することを可能にすると主張している。また「ワンクリックで」で150以上の通貨でチームへの支払いが可能だとのことだ。

「私たちは、企業がどこでも誰でも雇用できるようにしたいのです」とブアジズ氏はTechCrunchに語っている。「才能はどこにでもありますが、チャンスはそうではありません。だから、我々はそれを少し平準化し、企業が誰でも採用できるようにしたいのです。ただ、もっと重要なのは、出身地に関係なく、彼らにふさわしい経験を提供することです」と語る。

ブアジズ氏は、これまで「一度もオフィスで働いたことがない」と告白するなど、確実に有言実行している。

ブアジズ氏とワン氏は、明らかに何かを掴んでいた。10月のDeelは、シリーズDで4億2500万ドル(約489億円)を調達し、55億ドル(約6331億円)と評価された。ブアジズ氏は12月に、2021年の同社が「400万ドル(約4億6000万円)から5000万ドル(約57億5500万円)以上のARRになり、60カ国以上で50人から550人以上に……そして6億ドル(約690億円)以上を調達した」と公に語っており、その成長ぶりは驚くほど透明である。

2021年、Deelは契約者向けに「Crypto Withdrawals(クリプト・ウィズドローワル)」を開始し、Deelを通じて支払われた人は、支払いの一定割合をビットコイン、イーサリアム、USDC、ソラナとダッシュで直接Coinbaseアカウントに引き出し、ほぼ瞬時に出金できるようになった。

しかし、これまでDeelを利用する雇用主は、遠隔地の従業員への支払いに暗号資産を使用するオプションを持っていなかった。

現在、このスタートアップはその使命をさらに一歩進め、企業に暗号資産で給与資金を確保する方法を提供しようとしている。まず、ブアジズ氏によると「最も急速に成長しているステーブルコインであり、ドルに固定されているため、変動する余地が少ない」ことからUSDCを利用することにした。企業がインターナショナルなチームに対して暗号資産を使って支払いを行うことは、Coinbase(コインベース)、Shopify(ショッピファイ)、Dropbox(ドロップボックス)など、Deelの6000を超える既存顧客の多くに歓迎されそうなオプションである。

Deelチームによると「柔軟性は、どこで雇うかだけでなく、どのようにチームに支払うかということでもあるはずです」とのことだ。

共同創業者のシュオ・ワン氏、アレックス・ブアジズ氏(画像クレジット:Deel)

この新しい製品機能は、暗号資産で資金を引き出すことを労働力に任せるのに対して、雇用者がUSDCでチームに即座に支払うことができるようになるという点で「Crypto Withdrawals」とは異なるものだと同社は述べている。

具体的には、USDCで資金を保有している企業は、グローバルチームの給与や支払いをまかなうために、Coinbaseのアカウントを介してDeelに直接支払いを行うことができる。企業がDeelにお金を払い込むと、契約者は暗号資産を含む150以上の通貨で出金することができる。

Deelによると、企業が主に暗号資産で業務を行っている場合、従業員に支払う前に、例えば米ドルに変換するための為替手数料を支払うことを心配する必要もない。暗号資産で直接支払えばいいのだ。

「これは、取引手数料や通貨手数料が少ないエンド・ツー・エンドの暗号資産支払い体験であり、さらに、企業や請負業者が銀行口座にお金を保持する必要性を排除します」と述べている。

Deelにとって、この動きは暗号資産の主流化における次のステップだ。

「これは暗号資産企業にとって画期的なことです」とBouazizは述べている。

Deelによると、この動きは、会社の暗号資産残高を使用してチームに支払いを行いたい企業と、暗号資産で支払いを受けたいというチームメンバーの両方からの「急増」した需要によって促されたとのことだ。例えば、同スタートアップによると、暗号資産給与支払いに対する需要は前月比10%増となった。

その他、同社が発表した愉快な統計データをいくつか紹介しよう。2021年の7月から12月の間に、支払いの2%が暗号資産で引き出された。2021年12月にDeel経由で約470万ドル(約5億4100万円)が暗号資産で従業員に支払われ、2021年11月から49%増加した。興味深いことに、暗号資産の出金の地域別内訳は、ラタム(52%)、EMEA(ヨーロッパ、中東およびアフリカ、34%)、NAM(北米)(7%)、APAC(アジア太平洋、7%)とのこと。

画像クレジット:cokada / Getty Images

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スペインの給与前払いスタートアップPayflowが約10.4億円獲得、スーパーアプリの成長戦略を促進

バルセロナを拠点とし、ネオバンクへの進化を目指すYC出資の給与前払いフィンテック企業Payflow(ペイフロー)が、シリーズA資金調達ラウンドで910万ドル(約10億4200万円)を調達した。それにより、事業設立の2020年1月からの調達額は1360万ドル(約15億5800万円)に達した。

このラウンドの投資家には、Payflowの新たな支援者であるスペインのSeaya Ventures(シーヤ・ベンチャーズ)や、C. Entrepreneurs Fund(C. アントレプレナーズ・ファンド)を通じたCathay Innovation(キャセイ・イノベーション)が共同リードを務め、Force Over Mass Capital(フォース・オーバー・マスキャピタル)、Y Combinator(Yコンビネーター)、Rebel Fund(リベル・ファンド)が参加するなど、国内外のファンドが混ざり合っている。

このスタートアップは、雇用主が従業員に提供するための給与前払いサービスを販売している。(他の給与系スタートアップが行っているように)給与の一部を早期に引き出すために利用者に手数料を課すのではなく、技術に対して雇用主に手数料を課しているのである。

Payflowによれば、このモデルは労働者評議会や労働組合の支持を得ているという。

また、同社は、このモデルは他の給与前払い系のスタートアップとの差別化要因であるとアピールしている。

共同創業者のAvinash Sukhwani(アビナッシュ・スクワニ)氏は「我々が他のオンデマンド型企業と異なるのは、従業員にサービス利用料を請求したことがないことです(我々のサービスは、全額会社負担の、初の真の従業員福利厚生です)」と語る。

また、共同創業者のBenoît Menardo(ブノワ・メナルド)氏は「(Payflowは)ユーザーにとって無料であり、今後もそうあり続けるでしょう。私たちのビジョンは、ブルーカラー労働者のための初の真の福利厚生を提供することであり、従業員がそれを支払わなければならないのであれば、それは本当の特典とは言えないと考えています」と述べている。

ユーザーの間ではダウンロード率が平均40%、一部のクライアントでは90%と、高い普及率を示しており、他のオンデマンド給与プラットフォームや他の社会福利厚生に比べて5〜10倍高いとしている。

また、同社のアプローチは、雇用主にとっても適切な条件を満たしているようで、すでに175以上のクライアントが契約している(10万人のユーザーをカバー)。

本製品はSaaS型のビジネスモデルで、利用する従業員の数に応じて段階的に料金を徴収する。

Payflowは大企業をターゲットにしている。同社によれば、顧客はあらゆる業界にわたるが、予想通り、ブルーカラー労働者の間で最も利用が多いとのことだ。

「レストランからスタートアップ、病院まで、あらゆる業種に対応していますが、ブルーカラーの人たちが一番利用しています」とスクワニ氏はいう。

給与前払い制度は、低所得者にとっては、急な出費に備えて月に何度も給与を受け取ることができるため、借金をする必要がなくなる。しかし、給料をすぐに受け取れるということは、例えば、給料をすぐに使ってしまい、月末にお金がないといった負のスパイラルに陥る可能性がある。

この点についてPayflowは「利用を制限したい場合に備えて」雇用主のダッシュボードに「安全限度額」を設けているという。

「ほとんどの企業はこの上限を50%程度に設定し、従業員が毎月の給与で少なくとも残りの50%を常に受け取れるようにしています」とメナルド氏はいい「そうすれば、家賃など毎月の必要経費を十分に確保することができます」と付け加えた。

同社のシリーズAの資金調達は、Payflowの海外展開に充てられる。

また、ネオバンクへの進化という目標を達成するために、製品開発にも費やす予定だ。

もちろん、ネオバンクの中には、給与前払いを追加機能として提供する企業もある(例えば、Revolutなど)。

フィンテックの場合、スタートアップの勝負は、顧客の取り込みを最大化するためのさまざまな戦略やアプローチに集約される。その後、十分な牽引力があれば、人気のある機能のユーザーを、先の機能の成功によって資金を得た、より本格的な銀行サービスにアップセルするチャンスがあるのだ。

つまり、フィンテックの競争は非常にダイナミックであるということだ。

特定のユーザー層は、他のユーザーよりも忠実で乗り換えが少ないかもしれない。もし、そのような層に、同社のサービスを知ってもらい、忠誠心を高めるような粘着性の高い機能を通じて銀行サービスを売り込むことができれば、今後何年にもわたって一連のサービスをクロスセルできる、解約の少ない銀行顧客基盤ができるかもしれない。もしくは、それがフィンテックの夢というものだろう。

製品開発の面では、Payflowは「スーパーアプリ」を開発し、機能セットの拡張を始めている。

「2022年には、ブルーカラーの従業員にファイナンシャルウェルネスをもたらすことを通じて、B2Bの価値提案を強化する2つの機能が追加されます。その後、多くのB2C機能を開発することで、(アプリの計画は)本質的にネオバンクに変わります」とメナルド氏はいう。

Payflowは、給与前払いSaaS事業を消費者直結のネオバンクに進化させるスケジュールを明らかにしていないが、メナルド氏は、顧客ベースを10倍以上に拡大したいと示唆し「このコンセプトは、数百万人のユーザーを獲得したときに、特に威力を発揮します」と述べた。

「2022年中に最初のD2C機能を開始する予定です」と彼は付け加えた。

スペインで顧客基盤を5倍に拡大することを目標に、市場統合のために新たな資金調達のうち300万ドル(約3億4300万円)を費やす計画である自国市場から、かなり大きな成長を期待している。

市場拡大の面では、Payflowは、すでにサービスを提供しているチリとコロンビアに加え、スペイン以外の2つの市場に進出することを計画している。

拡大は欧州と中南米が中心になる予定だ。

現在、イタリアとポルトガルで試験運用を行っている。また、ラテンアメリカでも2022年中にもう1市場開設する予定というから、2022年中に(現在の)3市場から合計5市場に拡大することになりそうである。

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

従業員の報酬に秩序と公平性をもたらすシステムAssembleが約5.7億円の資金を獲得

どの企業も従業員の給与を決定し、その報酬を何らかの方法で管理していく必要がある。多くの場合、スプレッドシートと、給与計算、財務、人事システムなどの異なるシステム間を行き来しているだろう。また、企業は、同レベルの経験を持つ従業員に対して、同じ仕事に対して同水準の報酬を支払っていることを確認する必要がある。

アーリーステージのスタートアップであるAssemble(アセンブル)は、このプロセスを整理したいと考えており、米国時間1月11日、Susa Ventures(スーザ・ベンチャーズ)、Goldcrest Capital(ゴールドクレスト・キャピタル)および複数の業界エンジェル投資家から500万ドル(約5億7600万円)のシード投資を受けたと発表した。

Assembleの共同設立者であるEnrique Esclusa(エンリケ・エスクルーサ)氏は、同スタートアップが報酬決定のためのエンゲージメントシステムを構築したと述べている。

「これは、通常はバラバラのシステムで管理されている報酬と労働力のデータをすべて1カ所に集め、会社全体のさまざまな関係者がアクセスできるだけでなく、実行可能で理解しやすいようにするためのシステムです」と彼は説明した。

エスクルーサ氏と共同設立者のLisa Wallace(リサ・ウォレス)氏は、ウォレス氏が採用を担当し、エスクルーサ氏が財務と事業運営を管理していた別の企業で一緒に働いていた。そこで2人は、この種の情報を管理することがいかに難しいかを、身をもって知ったのである。

「私たちが気づいたのは、すべてが仮想的にスプレッドシートで管理されていたということです。このデータとフレームワークをまとめ、会社全体の意思決定を行う人々に正しい情報を共有し、人を雇い、引きつけ、失わない競争力を持つだけでなく、財政的な責任と公平・公正さを持った意思決定を行うためには、とても苦痛で時間のかかる方法でした」と、彼は述べた。

そこで2020年、この2人の創業者が集まり、自分たちが経験した問題に対処するための製品を作ることを決めたのだ。

ウォレス氏によると、企業は通常、組織を構築した後に、それを修正するために、コンサルタントがさまざまなシステムから情報を引き出す必要があるため、直接的な方法で公平性を考慮することはないという。Assembleは、最初から報酬体系に公平性を組み込むように設計されている。

「重要なのは、1つの場所で報酬の公平性分析を実施したり、別の場所で管理職に単発の可視性を提供したりすることだけではありません。報酬に関わる複数のステークホルダーからなるエンゲージメントのレイヤーを組織全体に設けることです。Assembleは、報酬システムに公平性を最初から組み込むように設計されています。というのも、報酬にはさまざまなステークホルダーが存在し、各自さまざまな目標があるため、簡単にレールを外れてしまうことがあるからです」と、彼女はいう。

画像クレジット:Assemble

Assembleは現在10名の従業員を持ち、多様な創業チームと給与の公平性に関わるDE&I(多様性、公平性、包摂性)ミッションを掲げており、多様で包摂性のある企業づくりに取り組んでいる。

「私たちは多様な候補者を面接し、評価するために、各採用案件に対してかなり協調的な努力をしてきました。それは、私がとても重視していることです。エンリケと私は、自分たちの時間の3分の1を採用活動に費やしています」と語った。加えて、従業員数は10名と少ないが、多様性の数値は多くの指標でかなり良好であると述べている。

「会社としてのヒスパニック系は40%で、従業員の60%が移民か移民の子どもなんです」と彼女はいう。現在10名の社員のうち、女性はわずか2名だが、ウォレス氏は今後の採用で対応する予定だという。また、歴史的に存在感の薄いエンジェル投資家をキャップテーブルに迎え入れ、資金調達の面でも多様性の確保に取り組んでいるという。

報酬は組織内では単独で存在しえないため、AssembleはWorkDay、Gusto、ADP、Bamboo HRなどの人事・給与ソフトツールと連動して動作するようになっている。

画像クレジット:Golden Sikorka / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Akihito Mizukoshi)

銀行口座を持たないインドネシアの労働者向けサービスGajiGesaが約7.4億円調達、給料日前に給料を引き出せるEWAに注力

GajiGesaの給料日アクセス機能のユーザーフロー

インドネシアの労働者向けサービスに特化したフィンテック企業であるGajiGesa(ガジゲサ)は、プレシリーズAで660万ドル(約7億4500万円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、MassMutual Ventures(マスミューチュアル・ベンチャーズ)がリードし、January Capital(ジャニュアリー・キャピタル)、欧州のEWA(給与サイクルの終了前に未払い賃金の一部を利用することができる金融サービス)会社のWagestream(ウェイジストリーム)(EWAはGajiGesaの主要機能)、Bunda Group(ブンダ・グループ)、Smile Group(スマイル・グループ)、Oliver Jung(オリバー・ジョン)氏、Patrick Walujo(パトリック・ワルジョ)氏を含むNorthstar Group(ノーススター・グループ)のパートナー、Nipun Mehra(ニップン・メーラ)氏(UlaのCEO)、Noah Pepper(ノア・ペッパー)氏(StripeのAPAC責任者)が参加した。戻ってきた投資家には、defy.vc(ディファイ.vc)、Quest Ventures(クエスト・ベンチャーズ)、GK Plug and Play(GK プラグ&プレイ)、Next Billion Ventures(ネクスト・ビリオン・ベンチャーズ)などがある。

GajiGesaの詳細については、250万ドル(約2億8200万円)のシードラウンドを実施した2月のTechCrunchによる同社のプロフィールを確認して欲しい。

アグラワル氏とマリノフスカ氏は、プレスリリースの中で、GajiGesaのチームは過去6カ月間で2倍の50人以上になったと述べている。このスタートアップは、今回の資金調達を、製品開発、インドネシアでの事業拡大、東南アジアの新市場への参入に充てる予定だ。

同社は、銀行口座を持たない労働者を対象としており、毎月の給料を待たずにすぐに給料を引き出すことができる「アーンド・ウェッジ・アクセス(EWA)」に注力している。

GajiGesaは現在、工場、プランテーション、製造業、小売業、レストラン、病院、テック企業など、さまざまな分野の120社以上の企業と取引している。同社は、顧客企業を対象とした調査によると、従業員の80%以上がEWA機能を利用したことで非正規の貸金業者の利用をやめるようになり、40%が請求書の支払いやデータリチャージなど、同社プラットフォーム上の他の金融サービスを利用しているとしている。

同社は「GajiTim(ガジティム)」と呼ばれる雇用者向けアプリを提供しており、これは東南アジアで「最初で最大の統合型従業員管理ソリューション」であると主張している。つまり、雇用主は、パートタイムやフルタイムの従業員、ギグワーカーなど、幅広い労働力の管理業務を行うことができるということだ。同社によると、GajiTimには現在20万人以上のユーザーがいるという。

今回の投資について、MassMutual VenturesのマネージングディレクターであるAnvesh Ramineni(アンヴェシュ・ラミネニ)氏は「(GajiGesaの)統合プラットフォームは、顧客中心の製品設計と世界クラスの技術インフラを組み合わせたもので、慢性的にサービスが行き届いていない市場に力を与え、東南アジアの何百万人もの人々の経済的回復力を高めるために、独自の地位を確立しています」と述べている。

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】社員を逃さないよう壁で取り囲むことはできない ──離職率を下げる方法を考えてみた

私は15年間テック企業のCEOをしてきたのだが、人々がさまざまな理由で当社に入社したり退職したりするのを見てきた。しかしこの4カ月の退職者数が過去2年間の退職者数の合計を上回る事態となり、我社は50人の社員のうち20%近くを失ってしまった。このため残った社員たちには大きな負担がかかっている。

こうした事態を引き起こしている原因はなにか?昨今の労働力不足で、今多くの優秀な労働者に前例のないチャンスが到来している。彼らは他社へ移ることでより高い給料を得ることができるのだ。全国的に見て労働力が3500万人目減りしたのだが、これは1970年代以来初めてのことだ。雇用される側は、近年の中で一番と言ってよいほど強気の交渉をすることができる。

大手企業は全国規模で在宅勤務の社員を探している。彼らは、小規模な市場を主戦場とする小規模企業が従来支払ってきた給与の20~30%増しの給料をオファーすることもある。

我社では、テック業界では常である人材の引き抜きを避けるため、社風の醸成に力をいれ社員に手厚い投資をしてきた。パンデミック前でさえ、2016年に立ち上げられた社員持ち株制度を通して社員たちは会社の40%を所有していた。しかしパンデミックの期間中、私たちは給与や福利厚生が適切なものになるよう継続的にこれを調整してきた。

我社の主だった取り組みの1つは、従来社員育成のために取り置いてあった資金を、社員の学生ローンの返済に当てられるようにしたことだ。社員は今までほどには人材育成講座を取らなくなっており、多額の人材育成費が未使用のままになっていた。パンデミックが続くなか、人々は専門的な会議などに行く時間も意欲もなくし、またそもそもそういった会議も開催されていなかった。

この資金を別の用途に回すことができのは、あまり知られていない、新型コロナウイルス経済救済法 (CARES)の条項のおかげである。私たちは社員があるツイートを見たことがきっかけでこれを知ったのだが、雇用者は2020年から2025年までの間、社員の収入とはみなさない形で、一年に5,250ドル(約58万円)まで社員のために学生ローンの返済をすることができるのだ。

これが我社にとって適切なものであるかを確認するため、実施する前に社員調査を行ったところ、40~45人の社員のうち、20人がこの払い戻しプログラムで恩恵を受けることがわかった。これに自信を得て、私たちはプログラムの立ち上げに踏み切った。

まずは試験プログラムを開始し、毎年各社員に1200ドル(約13万円)を払い戻すことにした。これがうまくいったので、今度は1年間の支給額を2倍の2400ドル(約26万円)に引き上げた。このようにすることで、私たちは他の雇用者との差別化を図っている。米国人材管理協会によると、2019年時点でこうした学生ローン返済プランを実施している雇用主は全体の8%に過ぎないとのことである。

このようなプログラムを実施するにはある程度の準備が必要だ。内国歳入法の第127条に則った教育支援プログラム(EAP)を実施しなければならない。しかも、このプログラムは一握りの社員ではなく、社員全員を平等に利するものではければならない。学生ローンの無い社員が資金を利用できるようにするため、私たちは引き続き人材開発プログラムも同時に実施している。どの社員も同じ資金プールから人材開発にかかった費用の払い戻しを受けることができる。

幸いなことに、プログラムの立ち上げにはそれほど時間がかからなかった。調査を終えてから1カ月たたないうちに学生ローンに関する規則の草稿を作成し、公開して、社員に告知した。

プログラムを実施にあたっては、社員とのウィークリービデオ会議でそれを発表した。申請手続きもシンプルなものにし、社員は申請用紙1枚に記入すればよい。払い戻しを受けるには、ローンの支払い内容がわかる過去12カ月の学生ローンの請求書のコピーを提出する必要がある。その後、会社側で払い戻しの小切手を切る。

現在までのところ、このプログラムは大変好評である。私たちの業界の社員は多くが若手で、多額の学生ローンの支払いに苦労している。学生ローンの支払い免除は当社の社員が必要としているものなのだ。

このプログラムには他にも節税というメリットがある。社員は自らの連邦税と給与税の支払い分を節税でき、雇用者も給与税を節税し、提供した払い戻し額に等しい補償控除を受けることができる。

私たちは学生ローン払い戻しプログラムに大きな手応えを得ているが、これだけでは人材獲得競争に打ち勝つことはできないと思っている。社員が何を必要としているかを知るにはただ彼らの発言に耳を傾けるしかない。そこで、私たちはニーズの聞き取りに多大な時間を費やしている。

社員の生活費への懸念に応えるため、私たちは現在残留特別ボーナスと勤続10年ボーナスの支給を検討している。問題は、私たちのような小さな企業がこうしたボーナスを支払うための資金をどこから捻出するかである。当社の顧客のほとんどは1年または2年契約を結ぶので、このようなプログラムを追加するには、料金の値上げをしなければならない可能性がある。料金の値上げをしたとしても、私たちの予算にその値上げの効果が現れるまでにはしばし時間がかかるだろう。

そうではあっても、私たちはクリエイティブな解決法を模索したいと思っている。社員には、私たちが手厚い配慮をしていることを知ってもらいたい。そうした配慮をするのは、それが正しい行いだから、というだけでない。社員が出勤する際ガゾリン代が払えるだろうかと心を煩わすことなく、最大限我社のために能力を発揮できるようにするためでもある。

社員が我社に腰を落ち着けてくれたら、今度はお金や福利厚生とは関係ないもの、つまりパンデミックの間に多くの人にとってより重要になった帰属意識や目的意識といったもので最高の人材を惹きつけられるようになりたいと願っている。

ここでは仕事は、単なる仕事以上のものだ。当社のように小さな会社では、全社員が大切な役割を担う。そして当社がいるような小さな街では、すべての雇用者が地域にとって重要な存在である。優れた人材が集いアイディアを交換し、人間関係を楽しみ、きついプレッシャーのかかるシリコンバレーの外で違いを生み出せるような場所を提供することで、こうしたことを求めている人々を持続的に惹きつけられたら、と考えている。

当社の社員は他社にまさる福利厚生や給与を得るだろう。しかし最終的には、こうしたものは、私たちが会社の繁栄と成長を維持を目指してたくさんの知恵を注ぎ込んで作り上げようとしている総合的な環境の一部にすぎないのだ。

編集部注:本稿の執筆者Delcie Bean(デルシー・ビーン)氏はParagus IT.の創業者兼CEO。

画像クレジット:Tetiana5 / Getty Images

原文へ

(文:Delcie Bean、翻訳:Dragonfly)

暗号資産取引所Coinbaseの口座への給与振込が可能に、まずは米国で展開

暗号資産取引所のCoinbase(コインベース)はいくつかの新機能を発表した。同社は米ドルをさまざまな暗号資産に変えられる取引サービスでよく知られているが、ユーザーがこれまで以上に多くの金融サービスで同プラットフォームを活用できるようにするために消費者サービスを拡大する。

まず、間もなく米国で口座振替の機能を立ち上げる。この機能ではユーザーは支払われる給与の一部をCoinbaseに預け入れることができる。Coinbaseアプリのユーザーは現在給与を支払っている会社あるいは雇用主をアプリで見つけて、そこから給与の分配を更新できる。最も積極的なユーザーは給与全額をCoinbaseの口座に入れることを選ぶのではないだろうか。

Coinbaseの口座に入金されると、ユーザーはCoinbaseに米ドルをどのように扱わせるかを決められる。単に全額を米ドルのままにしておくこともできるし、全額を暗号資産に変えることもできる。

ユーザーはCoinbaseで利用できる暗号資産から選べる。この機能は、もしあなたがいちいち考える必要もない繰り返しの購入を設定したい場合に特に便利だ。

口座振替は、CoinbaseがMarqetaの手を借りて、Apple PayとGoogle Payで使える自前のVisa(ビザ)デビットカードを提供していることを考えると理に適っている。つまり、Coinbase口座での入出金ができることになる。

Coinbaseアプリから、ユーザーはカード決済のためのソースウォレットを選ぶことができる。カードを使うたびに、Coinbaseがユーザーの暗号資産を米ドルに2.49%の決済手数料で替える。

カード決済ではまたリワードも受けられる。現在、リワードにはDAI、ETH、DOGE、BTCでの1%還元、GRT、XLM、AMP、RLYでの4%還元がある。なので決済手数料でお金を使い、リワードで少し稼げる。

ユーザーはまた直接米ドルを使うこともできるようになっている。その場合、カード決済での手数料は発生しない。CoinbaseはここしばらくCoinbase Cardをテストしていて、2021年10月から誰でも使えるようになる見込みだ。

Coinbaseはすでに米国の何百万人という人にとって重要な金融アプリだ。そうした顧客を抱える同社が使用を増やすために新しいサービスを追加するのは何ら不思議ではない。Coinbaseはモバイルアプリに新たに「アセット」「取引」「支払い」「あなたのために」の4つのタブを加える。そしておそらく一部のユーザーはCoinbaseのアプリをこれまでよりも少し頻繁に使うことになり、銀行アプリの使用が少し減ることになる。

画像クレジット:Steve Jennings / Getty Images

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Index Venturesが従業員のストックオプションを計算するウェブアプリを発表

スタートアップにとって、ストックオプションの提供は非常に重要だ。ストックオプションがあれば、すでに大企業となったテック企業が提示できるような高い給与を払えないスタートアップでも、優秀な人材を入社させることができる。

だが、競争力のあるストックオプションプランを開発するには複雑な計算が必要だ。幸いなことに、ロンドンに拠点を置くベンチャー企業のIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)は現地時間9月15日、計算に使える手軽なウェブアプリと、欧州と米国のスタートアップが重要な従業員にどのような報酬を与えているかについて、新しい調査結果を発表した。

OptionPlan Seedは、シードステージの創業者がESOP(従業員自社株保有制度)を設計するためのウェブアプリだ。これは、Index Venturesが実施したシードステージ企業のオプション付与に関する分析がベースになっている。同社は1000社以上のスタートアップから得たデータを分析に使った。

このウェブアプリは、さまざまなポジションを網羅し、6段階の配分ベンチマークがあり、各チームメンバーの金銭的なアップサイド(税金を含む)を計算し、米国、カナダ、イスラエル、豪州、欧州20カ国の政策の枠組みに応じて調整を行う。

これは、Index Venturesが数年前に発表したシリーズA企業向けの「OptionPlan」をベースにしている。

Index Venturesによると、新ツールのための調査の結果、シードステージ企業の従業員のほぼ全員がストックオプションを受け取っていることがわかったという。だが、米国ではシードステージのスタートアップの技術系従業員の97%、技術系以外の若手の80%に達しているのに対し、欧州では技術系の75%しかオプションを受け取っておらず、技術系以外の若手では60%にとどまっている。

とはいえ、Index Venturesによると、ストックオプション付与の規模は拡大している。特に「技術的なDNAを多く持ち、ベイエリア志向」のスタートアップで増加している。一方、電子商取引やコンテンツなど、技術的要素が少ない分野では、付与額はあまり変化していない。一方、ここ数年でシードのバリエーションが上昇しているため、付与の規模は全体的として拡大し続けている。

Index Venturesは、シードステージの企業でESOPの割合が上昇していることを発見した。これは、採用のスピードが速く、従業員1人当たりの付与割合が大きくなっているためだ。同社は、シードステージでのESOPの割合を、従来の10%ではなく、12.5%または15%に設定することを推奨している。これは、スタッフの維持と誘致が目的だ。

また、今回の調査では、欧米でシード時の資金調達額が2倍になった一方、評価額は2.5倍になったことがわかった。

さらに、シードステージの給与は「劇的に上昇」しており、平均給与は60%以上も上昇した。米国のシードステージのスタートアップ企業におけるシニア技術職の給与は現在、平均18万5000ドル(約2035万円)で、3年間で68%増加した。22万ドル(約2420万円)を超える者もいる。だが欧州で給与の上昇が最も著しいのは、技術系・非技術系を問わず若手従業員だ。

しかし、Index Venturesの調査によると「欧州の技術系人材の間で、依然として報酬格差があり」、欧州のシードステージ企業の技術系社員の平均給与は、米国に比べ40〜50%低いという。同社の調べでは、この格差は2018年以降拡大しているという。「技術系以外のポジションでは格差が縮小しているにもかかわらず」だ。

また、欧州では、ロンドンのような高コストの拠点と、ブカレストやワルシャワのような低コストの都市があることから、給与のばらつきが「米国よりもはるかに大きい」ことがわかった。

人材獲得競争は今やグローバルなものだ。技術系人材の米国との給与格差は20〜25%に縮小している。

Index Venturesは「欧州の野心的なシードステージの創業者は、特に技術職において、採用する人材の水準を高めるべきだ」と結論づけている。また、給与面で競争力を高めるためには、より多くの資金を調達して、より経験豊富で高い能力を持った候補者を狙うべきだとしている。

画像クレジット:OptionPlan web app

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

企業が「自分で作る」給与計算プロダクトのインフラを提供するZealが約14.3億円調達

Zealの共同創業者であるプラナブ・クリシュナン氏とキルティ・シェノイ氏(画像クレジット:Zeal)

組み込み型フィンテック企業であるZealは、個別化された給与計算製品を構築することができるプラットフォームの開発を継続するために、シリーズAで1300万ドル(約14億3000万円)の資金を確保した。

今回のシリーズAには、Spark Capitalが主導し、Commerce Venturesの他、MarqetaのCEOであるJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏とCROのOmri Dahan(オムリ・ダーハン)氏、Robinhoodの創業者であるVlad Tenev(ウラジミール・テネフ)氏、UltimateSoftwareの役員であるMitch Dauerman(ミッチ・ダウアーマン)氏とBob Manne(ボブ・マンネ)氏、Namelyの創業者であるMatt Straz(マット・ストラズ)氏などの個人投資家が参加した。今回のラウンドにより、同社は2020年の160万ドル(約1億7500万円)のシードラウンドを含め、総額1460万ドル(約16億400万円)の資金調達を行ったことになると、CEOのKirti Shenoy(キルティ・シェノイ)氏はTechCrunchに語っている。

ベイエリアに拠点をかまえる同社の原点は、シェノイ氏とCTOのPranab Krishnan(プラナブ・クリシュナン)氏が2018年に設立したギグエコノミー向けの決済処理スタートアップPuzzlだった。PuzzlはY Combinatorの2019年のグループに参加していた。2人は、何千人もの1099型契約社員(米国の契約労働者の種類)の一部をW2従業員(雇用契約にある一般的な従業員)契約へ移行させたのち、会社の方向を大きく変更する必要があった。

ADPやPaycorなど、大量の給与を自動で処理してくれる給与計算ソフトを探したが、どれもシェノイ氏とクリシュナン氏が求めていた、労働者への日払いや収入の構成要素の細かなカスタマイズなどの機能に対応していないことがわかった。

他の企業が同じ問題に直面しないように、彼らは顧客企業が独自の給与計算製品を構築し、従業員に毎日給与を支払うことができるような給与計算向けAPIを開発することを決めた。従来、企業は時代遅れの他社製給与計算ツールを重ね合わせ、そのための相談・使用料に数百万ドル(数億円)を費やしていた。ZealのAPIツールは、バックエンドの支払いロジスティックを管理すると同時に、給与計算のプロセスをより現代風にわかりやすくし、給与計算の責任を引き受けてくれる」とシェノイは述べている。

現在、企業はZealを利用して大量の従業員に給与を支払い、支払いデータを自社のネイティブシステムに保管している。その上、BtoBのサービスを販売するソフトウェアプラットフォームを提供する企業は、Zealを利用して独自の給与計算製品を構築し、顧客に販売している。

クリシュナン氏は「私たちの使命は、当社の税務・決済技術を米国のすべての給与明細に適用し、米国の従業員が正確、かつ効率的に給与を受け取れるようにすることだ」と語る。

米国には2億人の従業員がおり、年間8兆8000億ドル(約967兆3900億円)以上の給与が処理され、1万1000の税務管轄区では年間2万5000件以上の税法変更が行われている。

一方、シェノイ氏はIRS(米国内国歳入庁)のデータを引用し、中小企業の40%以上が年に1回以上の給与支払いのペナルティを支払っていることを示している。これが、Zealの最新プロダクトであるAbacusグロス / ネット計算ツールの原動力の1つとなった。Abacusは、給与計算の会社が所得税の支払いを遵守しているかどうかを確認するために使用できる。

同氏らは今回の資金調達により、チームを強化し、企業との取引実績を確保するためのコンプライアンス対策を強化したいと考えている。

「当社は、より多くの企業との契約を獲得し始めており、毎日数百万ドル(数億円)を動かしている。この分野は長い間手つかずであったため、多くの企業が迅速に対応できるプロバイダーと仕事をしたいと考えている」とシェノイ氏は述べている。

シェノイ氏は、今後5年から10年の間に、より多くの企業が事細かくカスタマイズできるユーザー体験を提供するモデルへ移行すると予測している。従来はADPのような企業が主流だったが、企業は自社のデータを管理し、顧客が1つのプラットフォームですべての給与関連業務を行えるようなプロダクトを作りたいと考えるようになるだろう。

今回の投資の一環として、Spark CapitalのパートナーであるNatalie Sandman(ナタリー・サンドマン)氏がZealの取締役会に参加した。同社は以前、AffirmやMarqetaといった他の組み込み型フィンテック企業に投資しており、彼女はこの分野にはAPIが切り開くことができる新しい体験があると考えている。

サンドマン氏は、Zenefitsで働いていたときに、給与計算を構築する痛みを自分でも感じていた。当時、同社は同じようなことをやろうとしていたが、接続するためのAPIがなかったのだ。データを転送するためのスプレッドシートは存在したが、1つでも間違った控除があると、それが結果的に税金のペナルティに繋がってしまう。

シェノイ氏とクリシュナン氏はともに「顧客にこだわり」、顧客がどのように給与計算製品を作りたいのかを理解するために、スピードと思慮深さのバランスを保っているとサンドマン氏はいう。

彼女は、新入社員をオンライン型にすることは、従来のスプレッドシートよりも価値をもつ製品に新入社員を組み込むことを意味するような、オーディエンス主導の人事へのマクロ的な変化を見ている。

「APIが賃金や控除の方法に柔軟性を与えることは至極当然のことだと思う。従業員が雇用主への信頼を失うこともある。給与計算は、雇用主と従業員の関係において最も信頼度に影響を与えるエリアであり、人はそのニーズを解決するために透明性と堅牢なソリューションを求めている」とサンドマン氏は語る。

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

給料日を待たずに給与の一部が引き出せる新機能をRevolutが英国で導入

フィンテック(金融テクノロジー)スタートアップのRevolut(レボリュート)は「Payday(ペイデイ)」と呼ばれる新機能の導入を開始する。これはクレジットカードローンやキャッシングでお金を借りる代わりに、給料の一部を早期に受け取ることができるというものだ。企業がRevolutとの統合を決めれば、ユーザーは同社の金融スーパーアプリから、直接この機能を利用することができる。

現時点で、この機能は英国の企業に限定されているものの、欧州経済地域や米国でも導入が計画されているという。ここがややこしいところなのだが、給与をRevolutの口座に直接振り込んでもらっているすべての人が、Paydayを利用できるわけではない。

Revolutは、従業員がどの時点でいくら稼いでいるかを知るために、まず雇用主の給与システムに接続する必要がある。だが、Revolutによると、雇用主は給与システムを変更する必要はないという。

これが完了すると、従業員は好きなときに、これまで稼いだ給料の一部を受け取ることができるようになる。ユーザーはまだ支払われていない給料の最大50%までの金額を、給料日よりも前に引き出すことができる。この機能は企業にとっては無料だが、Revolutはユーザーに少額の定額料金を請求する。

「私たちは、すべての人が経済的健康でいられることの重要性を信じています。これには、経済的な安定が従業員の精神的な健康に与える影響を重視することも含まれます」と、Revolutの共同創業者でCEOのNik Storonsky(ニック・ストロンスキー)氏は、声明の中で述べている。「2020年の困難な状況を経て、いま従業員が最も忌むべきものは、経済的な不安やストレスです。多くの従業員が給料日ローンや高金利のキャッシングに依存している状況から脱却することが重要です。この依存は毎月の給料サイクルによってさらに悪化します」。

給料日から給料日へ綱渡りのような生活をしている人は、予定外の出費にPaydayを活用することができる。例えば急にクルマを修理しなければならなくなり、月末まで待っていられない人は、今すぐ給料の一部を引き出すことができる。

これは借金ではないし、クレジットスコアにも影響しない。自分で稼いだ給料の一部だからだ。ということは、月末の給料日には受け取る金額が少なくなるわけだが。

給料の前払い機能を使っていなくても、Paydayでは今月いくら稼いだかを確認することができる。多くの企業がこの機能を採用するかどうか、注目したいところだ。英国には何百万人ものユーザーがいるので、企業は自社の従業員からPaydayについて知ることになるだろう。

関連記事
英フィンテックRevolutの2020年売上高は前年比57%増の約398億円
英フィンテックRevolutが米国で銀行免許を申請
フィンテックのRevolutがウェブアプリと英国での早期給与支払い機能をローンチ
画像クレジット:Revolut

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)