サブスクサービスの年間利用料を契約時に一括受領、MF KESSAIがB2B事業者の早期資金化を支える新プラン

マネーフォワードのグループ会社で企業間後払い決済サービス「MF KESSAI」を展開するMF KESSAIは4月30日、BtoBサブスクリプションサービスを運営する事業者の請求業務効率化と早期資金化をサポートする新プラン「MF KESSAI グロースサポート」を開始した。

このプランはMF KESSAIの1つのオプションのような形で提供されるもので、サブスクサービスの年間利用料を本来の支払期限が到来する前に一括受領できる点が最大の特徴。早期資金化によってSaaSを始めとしたB2B事業者の資金繰りや攻めの投資をサポートすることが狙いだ。

MF KESSAIは取引先の与信審査から請求書発行、代金回収までの決済業務を一括代行する“企業間後払い決済サービス”として2017年にスタートしたサービスだ。企業は管理画面(CSVもしくは手動入力)やAPI経由で取引データを入力するだけで取引先の与信審査を実施することができ、承認された場合には一連の業務をMF KESSAIに代行してもらえる。

審査に通過した取引についてはMF KESSAIが債権を譲り受けて請求業務を行う形をとっており、請求先の未入金リスクも同社が負担。利用企業にとっては一連の請求業務を大幅に効率化できることに加えて、回収業務の不安や悩みを解消できることが大きなメリットだ。

本日からスタートするMF KESSAI グロースサポートではそのような特徴を引き継ぎつつ、そこにサブスク事業者のニーズに応えるための仕組みが新たに追加された形になる。具体的には「年間契約分のキャッシュをある意味“前借り”できるような仕組みによって、その資金をどんどんサービスグロースに投資できるようにするサービス」(MF KESSAI取締役の田中謙太朗氏)だ。

SaaSなどを展開する事業者の中には年間契約で顧客にサービスを提供している企業も多い。事業者にしてみれば年間契約時の利用料を一括前入金で受け取り、事業を加速させるための軍資金にできるのが理想だけれど、導入企業側としては稟議やキャッシュフローの観点から月ごとに分割して支払いたいという場合もある。

その結果として年間契約であっても毎月利用料を受領するケースも少なくないそうで「それに伴う請求業務の負担増加に加えて、途中解約や何かしらのトラブルが発生した際の料金回収など将来的な与信の問題を抱えやすい構造である点が課題になっている」(田中氏)という。

実はMF KESSAI グロースサポート自体、第一弾の導入先でもあるカラクリとの商談から生まれたサービスだ。カラクリはまさにAIチャットボットSaaSを展開するスタートアップとして、上述したような課題の解決策を探していたとのこと。MF KESSAIでも解決方法を模索する中で、サブスク事業者とサービス利用企業の間に同社が入れば「利用企業の分割払いの要望にも応えながら事業者の毎月の請求業務や与信業務も代行できる」という手応えを掴めたため、新プランの提供を決めたという。

なおMF KESSAI グロースサポートについてカラクリでは以下のようにコメントしている(本件のリリースより一部抜粋)。

「エンタープライズ向けのSaaSは、契約期間中の売上が確約されているものの、前払いの交渉負荷が高く、資金化までの期間が長いのが問題点でした。本サービスの導入により、取引先へ前払いをお願いすることなく契約期間中の売上金額を先立って受領することができるようになるため、資金調達を必要とするスタートアップSaaS企業にとって、新たな調達手段になりうると考えております」

MF KESSAI グロースサポートはMF KESSAIの資料請求時に同プランを利用したい旨を告げることで使うことができる。全体の利用フローはMF KESSAIと基本的には同じだ。

最初に請求先のデータを入力して与信審査を受けた後、通過した場合には1年間分の請求情報(1年以内であれば半年や9ヶ月などでも可能とのこと)をまとめて登録する。これらのフローが完結すると債権がMF KESSAI側に譲渡され、サイト上から早期の振り込み手続きを行えば最短5営業日後に年間利用料を一括受領できる仕組みだ。

期間が長くなる分、審査は若干厳しくなるとのこと。ただ審査を厳しくしすぎて利用できる企業が限定されてしまうことを防ぐため、利用料率を6%〜10%と通常のMF KESSAIよりも少し高めに設定している(MF KESSAIの場合は0.5% 〜3.5%)。

「これまでMF KESSAIを通じて請求代行の部分を、MF KESSAI アーリーペイメントというファクタリングサービスを通じてファイナンスの部分をサポートしてきた。ただ事業部サイドとしてはこの2つが重なる部分をまだ十分にやりきれてはいなかった感覚で、ファイナンスと請求代行の両機能を自前で持っているなら、それらを融合したサービスにもチャレンジしたいという思いもあった」(田中氏)

特に直近ではコロナウイルスの影響もあって資金繰りやファイナンスをサポートするサービスの需要は高まっている。MF KESSAIのファクタリングサービスの申し込み件数自体も増えてきているそうで、今月にはMF KESSAIとMF KESSAI アーリーペイメントの累計取扱高は200億円を超えたという(両サービスを通じてMF KESSAIが譲り受けた累計債権額)。

スタートアップの資金調達環境も今後厳しくなることが予想される中で、自前の売掛金を早期に資金化して使っていける仕組みには需要がありそうだ。田中氏によると「まずは今年度中に20社への導入を目指していく」という。

B2B向け融資のFundboxがシリーズCで約188億円を調達

クレジットカードは消費者に広く使われている。理由は簡単だ。Visaのような決済ネットワークが買い手(消費者)と売り手の取引を仲介し、買い手の信用リスクがわからなくても、売り手がお金と引き換えに商品やサービスを提供することを可能にしているからだ。消費者はすべての売り手にクレジットを申請する必要はなく、クレジット発行機関で一度申請すれば、決済ネットワーク上のすべての売り手と取引できる。これは次のような簡単な公式で表せる。摩擦を減らすことでより多くの売り上げと利益がもたらされる。

経済の中で消費者が利用できるイノベーションに比べて、B2Bの世界で利用可能な手段は極めて限られている。企業間の決済は請求書を通じて行われる。回収サイトが90日を超えるのに顧客の財務リスクについてほとんど知らないこともある。消費者のFICOスコア(米国でクレジットカードの審査などに利用される個人の信用の指標)に相当するものが企業にはない。企業間の取引を仲介して摩擦を減らすシステムもない。

そこでFundbox(ファンドボックス)の出番だ。サンフランシスコ本社のスタートアップで、Visaのような決済ネットワークを構築してB2Bの決済の形を変えたいと考えている。顧客の信用リスクをがわからなくても取引を進められるだけでなく、顧客からの早期回収も可能にするネットワークの構築を目指す。

この構想に多くのベンチャーキャピタルが注目した。2013年創業の同社は9月24日、シリーズCのエクイティファイナンスで1億7600万ドル(約188億円)を調達したと発表した。Allianz X、Healthcare of Ontario Pension Plan、HarbourVestなどで構成されるコンソーシアムがラウンドをリードした。既存株主である、Khosla、General Catalyst、Spark Capital Growthも参加した。調達総額は3億ドル(約321億円)を超えた。

エクイティに加えて、債権引き受けに使う1億5000万ドル(約161億円)の信用枠を確保したことも発表した。

FundboxのCEOであるEyal Shinar(エヤル・シナー)氏は、今回の資金調達における投資家選択で重視した点としてエクイティ投資ができるだけでなく、Fundboxが成長するにつれ増えるであろう債権引き受けをサポートする十分な資金力を挙げた。

Fundboxの主なサービスは中小企業向けのリボルビングクレジットライン(一定限度の信用枠内で自由に借り入れや返済ができる契約)だ。資金繰りが大きな悩みになっている会社は多い。顧客から入金されるまでは、次のプロジェクトへの投資や新たな雇用ができないといったことが頻繁に起こる。リボルビングクレジットラインが使えれば柔軟な資金の借り入れや返済が可能になるし、手数料は借り入れた分のみ払えばいい。

融資を申請するには、QuickBooks(米国の中小企業向け財務会計ソフトウェアの定番)などの会社の財務データにFundboxがアクセスできるようにする。Fundboxがデータを分析し数分で審査結果を提示する。審査に通ればすぐにクレジットライン(信用枠)から運転資金を引き出せる。顧客から入金されたら、引き出したお金を返済して手数料の支払いも終えることができる。

シナー氏は、Fundboxの融資の仕組みから考えると、Fundboxが狙うマーケットは究極的にはGDPの規模に近いとみている。企業や経済が実現し切れていない経済的価値があるからだ。「活用できる売掛債権が3兆ドル(約320兆円)以上あるはずだ」とシナー氏は説明する。「世の中の取引のうち、3.4兆ドル(約370兆円)が消費者クレジットカードで支払われるが、23兆ドルが請求書払いだ。中小企業だけでも9兆ドル(約970兆円)ある」

Fundboxは市場のあらゆるプレーヤーからデータを収集している。集めたデータが生み出すネットワーク効果を活用して、最終的にはB2Bの決済プラットフォームを運営したいと考えている。売り手側にクレジットラインを提供するのではなく、売り手と買い手双方の手間を省き、取引を複雑にしている根本の原因を取り除く構想だ。

大胆な青写真だが、多様なプレーヤーが同様の壮大なビジョンを携えて業界に参入してきた。スタートアップの世界では、Kabbageがクレジットラインを中心にビジネスを構築し、Fundboxと同様にベンチャーキャピタルから多額の資金を調達した。なお筆者は、Kabbageの共同創業者兼社長のKathryn Petralia(キャスリン・ペトラリア)氏に10月2日から始まるDisrupt SFでインタビューする予定だ。

Square、PayPay、Intuit(QuickBooksを所有)などの大企業が、B2Bの顧客にさまざまな貸付サービスを提供している。支払いに関しては、Stripeが新しいクレジットカードを、Brexが従業員による立て替え払いを容易にする手段を提供している。

Fundboxの最優先事項は引き受けの効率化だ、とシナー氏は言う。同社の従業員の大部分を占めるデータサイエンティストが、中小企業に広がるデジタル化を活用する。「どの会社にも一通りのAPIがある。データはアクセス可能であり粒度も細かい」とシナー氏は説明する。Fundboxは既存のデータを利用して金融事業に一般的な人間による審査を回避している。

同社の取り組みの1つに「X-Ray」と呼ばれるツールがある。機械学習モデルが行う審査の判断過程を詳しく説明するツールだ。シナー氏は、決済業界は規制が厳しいため、会社は意思決定について説明できるだけでなく、会社に質問してくるどの規制当局に対しても偏りなく対応していると説明できる必要があるとの見解を示した。

同社は現在、サンフランシスコ、テルアビブ、および最近開設されたダラスを含め240人の従業員を抱える。シナー氏は、新しい資金を使って「果敢に攻め」「順調な取り組みにはさらに力を入れる」と強調した。

画像クレジット:GlobalStock / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

General Catalystが期待する「善い行いで成功する」機会は企業向けARにある

TechCrunch Disrupt Berlin 2018にて、拡張現実(AR)技術パネルディスカッションが行われた。登壇したAR企業の創設者とその投資家は、VR分野での消費者のハイプサイクルがまたしても定石どおりの「幻滅の谷」に落ち込んだ後、企業ごとの使用事例をもとに業界を再編して成長を期するよう提言した。

モバイルARのスタートアップ6d.aiのCEO、Matt Miesnieksは、業界全体が再び落ち込んでいることを認めたが、3度目のハイプサイクルを抜けようとしている今、水平線に新しいb2bのチャンスが見えてきたと話している。

6d.aiに投資しているGeneral CatalystのNiko Bonatsosも登壇し、ARスタートアップの課題は、b2b市場が複合現実の松明を手にして前に進めるよう、企業向けの製品をいかにして作るかを考えることにあると、Miesnieksとともに提言した。

「私が思うに、Apple、Google、Microsoftがこの分野に強く関与してきたことは、長期的に大きな安心につながっています」とMiesnieksは話す。「10年前のスマートフォン業界のように、私たちも、いろいろなピースが集まってきていることを感じています。そのピースが今後数年で成熟して、iPhoneのように合体するのです」

「私は今でも前向きに考えています」と彼は続ける。「消費者に大受けする製品を目指すべきではありません。本当に大きなチャンスは、企業の垂直方向に、コア技術を実現する場所に、ツールの世界にあります」

投資家たちは消費者向けVRとARに関わるターゲットに矢を放ったが、それはコンテンツ制作の難しさを甘く見ていたからだとBonatsosは指摘する。

「私たちの誤算は、もっとたくさんのインディー系開発者がこの分野に参入して、今ごろはポケモン型の大ヒット・コンテンツが10個ほど現れていると思いこんでいたことでしょう。でも、それはまだ実現していません」と彼は言う。

「いくつかゲームがあればと思っていました。ゲームはいつでも、新技術のプラットフォームへの入り口になってくれたからです。しかし、本当にエキサイティングなものは企業の中にありました」

「確かに言えることは、iPhone現象を引き起こすためには、ずっと高性能なハードウエアが必要だということです」と彼は言い、未来を引っ張るAppleのような企業が現れることをみんなが期待していることを示唆した。嬉しいことに、今の気持ちは「1年前よりもずっとずっとずっといい」とのことだ。

(TCビデオ)

AR技術のb2bへの応用の可能性を話し合う中で、Miesnieksは、移動プラットフォームのアイデアを持ち出した。オンデマンドまたは自律走行車両の位置と利用者とを結ぶというものだ。

この他に、ハードウエア企業と共同で開発できるアイデアとして、スマートフォンやドローンの空間認識力を高めて、その機能を拡大するというものもあった。

より一般的で、大きな可能性のある分野として、技術職のトレーニング、外交販売、共同作業の使用事例も挙げている。

「医療、石油、ガスの分野への応用も楽しみです。この技術を使えば、これまで細かすぎて不可能だった、あらゆる作業が可能になります。画面ですべてのものを見ることができて、必要なすべての作業を自分の手で行えるのです」とBonatsos。「だから、ものすごくエキサイティングです」

「これらは私が目にしてきた応用例の一部です。でも、まだ初期段階です。この分野の製品はまだ数が少なく、ひとつの開発会社が、少しでも早くデモを作りたいと、ものすごく前向きな企業の最高イノベーション責任者と仕事をしているといった、そんな感じです」

「今、いくつものアーリーステージの技術系スタートアップが、この問題に取り組もうとしています。そんな彼らに多額の投資が行われているのは、良い兆候だと思います。大企業から資金を引き出せる人間は、本当の事業家精神の持ち主であり、それが望ましい形です。だから、私は大いに期待しています」

これと同時に、混合現実を現実のビジネスに組み込もうとしたとき、技術者を悩ませる複雑さと社会的課題にも話が及んだ。

スマートフォンが動くものを感知し追跡できるようになると、ドラマ『ブラック・ミラー』のようなディストピアが現実になるのではないかと不安になる。6d.aiの技術は、それを予言している。

Miesnieksは、短編のデモ動画を上映した。スマートフォンに備わった3D技術によって、動く車や人をリアルタイムで特定するというものだ。

「私たちは、この課題に取り組んでいる世界のどの企業よりも、1年早く、実現できました。素晴らしいことです。3Dをよく知る人にこれを見せると、文字どおり、椅子から飛び上がります。しかし、これには意図しない結果を招く恐れもあります」と彼は言う。

「私たちは、この使い道で葛藤しています。ポケモンがさらに楽しくなるのは確かです。目の不自由な人が、車や人にぶつからずに街を歩けるようにもなります。杖もいらなくなるかも知れない」

「しかし、反対に人にぶつかるようになるかも知れません。視界から見たくない人を排除して、見たい人だけを見られるようにすることが可能だからです。それは恐ろしい未来です」

彼は、他の技術業界も含めて広く直面している問題も指摘している。社会的な影響やプライバシーの問題だ。「これが間違った方向に進めば、社会的な問題が起こります。善意で使っているつもりでもです」

「こうした技術革新が普及すれば、これまで考えも付かなかった用途が登場し、それについて、もう少し深く考えるという責任を、私たちは負うことになります」

Bonatsosは、投資家の視点からすれば、企業向けARも、技術を取り巻く世界に対して同様に敏感であるべきだと話す。

「それは、善い行いで成功しようと考えているMattのような専門家を探し出すことより、重要です。この分野には、考えなければならない要素が山ほどあり、それを実現させるには市場の信頼を得なければなりません」と彼は言う。「むしろ、昔風の企業投資に近い」

「今は、善い行いで成功するために、この新技術を役立てる絶好の機会です」とBonatsosは話す。「プライバシーと、これが作り上げてしまいかねないフェイクなものと、私たちが目指すものと、制限すべきことに対して、最初から責任を持って行動しなければなりません。さらに、私たちは巨大な拡張現実と、世界の3D版を創造しているわけですが、それは誰が所有するのか、この富をどう分配するか、このまったく新しいエコシステムの恩恵がすべての人に行き渡るようにするにはどうしたらよいか。考え甲斐のある課題です」

プライバシーにまつわるリスクを低減させるために行った、スマートフォンからのデータの匿名化や曖昧化といったローカルな処理など、6d.aiがとった段階ごとの対策を説明した後で、Miesnieksはこう話をつなげた。
「正しいと思ったことを、そのとおりにやれたとしても、また自分は善意に基づいて行動していると確信していたとしても、あちらこちらにグレーゾーンがあり、たくさんのミスを犯すことになります」

「もしもの話ではなく、(ミスが)起きたときは、私たちが頼れるものは、企業としての価値と、これが私たちの価値であり、そのために私たちは生きていると公言してコミュニティーと共に築き上げてきた信頼だけです。その価値のために生きている私たちのことを人々は信頼し、この分野のすべてのスタートアップは私たちの価値を理解し、価値を伝え合い、この繊細で抽象的な心構えを重視するようになります。単なる製造業として起業したスタートアップは、ここで失敗しています。

「大手の企業であっても、自分たちの価値を明確に言えるところは少ないでしょう。しかし、ARとこの新興の技術分野では、人々の信頼こそが、まさに中核となるのです」

Bonatsosはまた、社会的影響力が強すぎるとして中国政府がゲーム市場の規制を決定したことを挙げ、この分野のスタートアップにとって最大の逆風となる政治的リスクについても指摘している。

「信じられないことです。そこは私たちが今まさに技術の世界を引き連れて乗り込もうとしている場所です。私たちは、本当の意味でそれを完成させました。主流になったのです。私たちには責務があります。私たちが作るものには、大きな大きな意図した結果と、意図しない結果が伴います」と彼は話す。

「ゲームの制作本数と販売本数を政府が決めるなんて、冗談じゃありません。そんなことをリスクとして予測していた企業など、ひとつもないでしょう。しかし、大勢の人が、日常的に技術製品を長時間使い、多額のお金をつぎ込むようになれば、それは(避けようのない)次の段階となります」

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(翻訳:金井哲夫)

中小企業営業チームの見込み客発掘精製過程を機械学習で自動化するGrowlabsがシードで$2.2Mを調達

生後6か月とまだ非常に若いスタートアップのGrowlabsは、マシンインテリジェンスを利用して外回りの営業チームを支援している。このほどシードラウンドで220万ドルを調達した同社は、チケットアプリのUniverseを作ったBen Raffiが創業し、これにJaclyn KleinとSafeer Jiwanが加わった。Growlabsは、小さな営業チームの効率を上げることによって、企業の顧客獲得コストを減らすお手伝いをする。

Universeの経験からRaffiが学んだのは、顧客獲得コストを肥大させずにアプリケーションをスケールするのが、とても難しいことだ。チームが80%の時間を調査と、メールの乱発に費やしても、それが売上に結びつく保証はどこにもない。

“見込み客の生成に努力したが、結果は良くなかった”、とRaffiは語る。“何もかも、いきあたりばったりだった”。

Growlabsを使うと、営業チームがターゲットのタイプと業種を指定すると、Growlabsが自動的に見込み客を生成し、メールを送り、結果を評価する。

Growlabsは機械学習と3億5000万件の見込み客候補のデータベースを組み合わせて、一番売りやすいターゲットを見つける。対話のデータをすべて集めて、今度はいつメールを送るべきか、フォローアップは何回必要か、などをアドバイスする。

ターゲットに対しては、基本的な分析のほかに、自然言語処理によりメールの内容を分析する。メッセージを分類すると、どの役職にはどんな売り込みが効果があるか、などのフィードバックが浮かび上がってくる。CTOが関心を向けても、CMOはさっぱり、ということもある。

課金は有効見込み客の生成数に対して行われるから、高価な一律会費制のSaaSサービスを使えない零細企業でもGrowlabsの顧客になれる。Growlabsのいちばん小さい顧客でも、このサービスを使って毎月数千通のメールを送っている。大きな顧客なら、2万とか3万になる。

今日の資金調達ラウンドは主にエンジェルたちと、B2Bの営業活動の経験のある戦略的投資家たちが主体だ。Growlabsは今、社員が8人だが、同社自身がこれからますます、中小企業への営業を成功させていかなければならない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Sympleは「B2B版のVenmo」を目指す

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VenmoやSquare Cash、そしてSnapcashなどのサービスが存在するいま、友人への送金が難しすぎるなんてことは言えなくなった。

しかし、かつてそれは面倒な作業だった。ひと昔前のデファクトスタンダードは紙の小切手だったのだ ― それは複雑な作業で、時間がかかり、即時送金なんて夢の話だった。小切手を書いてからその資金が相手に到着するまでに1ヶ月かかるなんてこともあった。小切手を書いたことすら忘れてしまった頃、引き落としにビックリしてしまうなんてこともあった。

しかし驚くべきことに、アメリカの多くの小規模ビジネスは今でも他社への送金手段として紙の小切手を使っているのだという。例えば、アメリカの典型的なレストランでは、複数のベンダーへの送金のために、1ヶ月に100枚以上の小切手を切ることもある ― そして、そのベンダーが銀行に持ち込む小切手の枚数を想像してみてほしい!

そこでSympleの出番だ。2017年冬のY Combinatorバッチにも参加した同社は、彼ら自身のことを「ビジネス向けのVenmo」と呼ぶ ― 確かにその通りのサービスだ。

使い方は以下の通り:

小規模ビジネスは受け取ったインボイスの写真を撮って、それをSympleに送信する(Eメールでインボイスが送られてきた場合、そのメールをSympleに転送すればいい)。Sympleはそのインボイスに表記されている金額や締め切り日をパースする ― そして、支払い担当者にそれを通知するという仕組みだ。

その後、支払い担当者はSympleを利用してワンクリックでベンダーの銀行口座に振り込みをすることが可能だ。

もちろん、ベンダーがSympleの会員となって口座情報を登録しておくことは必要だ。しかし、Symple共同創業者のSteve Abrahamによれば、ベンダーたちはこの会員登録の作業を受け入れる傾向にあるという。なぜなら、それによって長期的には売掛金を回収するスピードが上がることになるし、資金回収の安心感も増すからだ。

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Sympleには基本的な分析ツールも備わっている。同社が提供するダッシュボードでは、支払いのトラッキング機能、支払期限の通知機能などが利用できる。また、自分たちのビジネスがどこにお金を費やしているのかを確認することも可能だ。

現在、Sympleの主なターゲットはレストランやバーなどの外食ビジネスだという。外食ビジネスは週ごとに送るインボイスの数が多いからだ。しかしSympleは他の産業にもビジネスを拡大していく予定で、最終的にはすべての産業に利用されるプラットフォームを目指すという。

今のところSympleは無料で利用することができる。しかし同社は今後、プレミアム会員の導入も予定しているようだ。プレミアム会員では、QuickBooksなどの会計サービスとの統合機能など、より高機能なサービスを提供していく。プレミアム会員の料金は最大で月額150ドルで、ユーザー数や処理するインボイスの数によって料金が変動する。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

起業家円卓会議(ERA)デモデーにおける12社のプレゼンテーション

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ご存知ない方へ。Entrepreneur Roundtable Accelerator(起業家円卓会議アクセラレーター)は、他のアクセラレーターと同様に、参加するスタートアップ企業を投資候補者へ紹介するプログラムである。

プログラムはまた、スタートアップがマーケットに参加することを助けてくれる、業界に関連したメンターとのペアリングも行う。今年は、12スタートアップのうちの11社が、ERAから40000ドルのシード投資を受けた

このプログラムの有名な卒業生の1つはPublic Stuffだ。苦情管理で顧客をアシストするソフトウェア企業である ‐ 現在はブルジュ・ハリファのビル管理における苦情管理を支援している。

今年のスタートアップは、あらゆる場所からのB2B市場への対応、サイバーセキュリティプラットフォーム、そしてネット接続された犬小屋までをカバーする幅広いものだった。以下に、各企業についての概要をまとめよう。

Caylent

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ソフトウェア開発者が、クラウドを通じてコンテナの構築、ロールアウト、そして管理をできるようにデザインされたDevOpsプラットフォーム。Caylentは、企業のプログラマーたちの新しいプログラムとプロジェクトの構築と保守を簡単にして、本質的に1つの強い組織を作り上げる手助けをする。

Caylentのパイプラインは、アプリケーションのテスト、構築、そしてデプロイを含んでいて、サーバー管理にもおよぶ。Dockerとコンテナテクノロジーで提携し、新しいコードのデプロイ、監視、そして自動テストを可能にしている ‐ これによって企業のプログラマーをDevOpsマシーンへと変身させる。

プレゼンテーションの中では、このフィールドに関する同社の向かう方向への将来性へのアピールに加えて、MicrosoftがCaylentのクラウドインフラストラクチャに投資していることも言及された。

ClearChat

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安全な通信のための企業向けサイバーセキュリティプラットフォーム。私たちも以前取り上げたことがある。今も増大し続ける、金融、健康、法務、政府などに適した、セキュアなチームのコミュニケーションとファイル共有の必要性に応えることを狙っている ‐ もちろんTechCrunchのような出版にも。

ClearChat は、本質的にSlackの補完を狙っている。隔週とも言えるペースで主要なコミュニケーションプラットフォームが破られていて 、個人情報が危険にさらされている。ClearChatは、やりとりしているものの内容に関してプライバシーと安全を守る、チームのためのよりよいプラットフォームを提供しつつ、こうした危険な現状を終わらせたと願っている。

CoLoadX

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古臭い慣習が支配する国際海上貨物業界を狙っているB2Bマーケットプレイス。CoLoadXは海上貨物の船積みの近代化を行おうとしているが、輸送費の節約だけではなく、大規模な船積みにも対応できる標準的な方式の地位になることを狙っている。

現在、彼らの最初の顧客たちはニューヨークからドバイまでの範囲で運行を行っている、このように彼らは既にいくつかの海と大洋をカバーしている。

Fauad Shariff、Petere Miner、そしてSalima Fassellの3人組に率いられた同社は、輸送コンテナ業界に新しい方式を持ち込むことに断固たる決意で臨んでいる。単に最もコストが安い提案を顧客のために見つけるだけでなく、それをインターネットを介して行うのだ – これは大部分をFAXと電話に頼っている業界にとって、新鮮な手段なのだ。彼らがこのジレンマに対して正しいアプローチをしていると考えてくれる顧客が、どの位いるのかがこの先注目される点だ。

Dog Parker

dog-parker-2-190x80彼らは今年のDisrupt NYの参加者である。これが要約だ:安全で、分刻みの温度管理がされた犬小屋。よく分からない説明である。

Dog Parkerの目標は、店舗がその敷地内に安全な犬小屋を設置できるようにすること、具体的にはDog Parkerの犬小屋を置いてもらうということだ。ビジネス上の観点は、通常は衛生上の規制から、こうした施設がなければ来店することのできない犬の飼い主を、小売店が引きつけられるようにすること。そうして業界を問わずビジネスの推進が行われるようにすることである。

一方、商品としての本当のアイデアは、犬の所有者が健康と安全に関してDog Parkerを信頼できるようにすることで、安全で、抗菌で、温度管理のされた鍵のかかる犬小屋は事前にアプリを通して予約をすることが可能で、どの位置にあるかもアプリを通して知ることができる。

問題は、私のジャーマン・シェパードのどの1匹もその中に収まろうとしないことだ。

Felix Gray

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David RogerとChris Benedictによって創業されたFelix Grayは、目の健康を意識している21世紀のスタートアップだ。大人のミレニアル世代と現代の子供たちの両方を相手にしている。眼精疲労の原因になるブルーライトやスクリーンの反射から目を保護することを目的としたメガネを売っている(この技術はGunnar Optiksに酷似している)。これによってドライアイの、究極には不眠の原因になるという眼精疲労を予防するのである。

結局のところ、いまや誰もが何時間も画面を見つめている。何時間もの間画面を見続ける私たちの眼精疲労を軽減するための手頃なソリューションを提供したいというのがFelix Grayの主張である。Felix Grayのメガネはブルーライトフィルター付きで95ドル、なしで75ドルである。

問題は、これは光学的なアプローチではなく、ハードウェアの改良によって解決されると思われる問題に対する一時的な解だということだ。

FROTH

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Catie Cole、Dae Lim、そしてHarry Leeによって創業された First Round on the House(FROTH)はアルコール飲料ブランドのためにデザインされたニューヨークのマーケティングプラットフォームだ。

その目的は、iOSアプリを介して、消費者に飲料ブランドのマーケティング効果を届けることだ。もしAbsolutウォッカが気になっているが、飲むことがなかった場合、Absoluteはあなたに彼らのウォッカを飲む気にさせる。

ブランドは、アプリを利用して飲み手のために特定の場所(バー)を指定する。飲み手(ユーザー)は自分の手元でアプリを使い、気分に合った飲み物を指定する。ユーザーの選んだ場所で飲料ブランドはこのコネクションを使って、ユーザーをターゲットにして飲み物の選択肢を提供することが出来る ‐ その店でのテイスティング(味見)の一環としてだ。皆がタダ酒を好きなこと、そして無料で試飲させてくれるブランドには更に向かいやすいことにに気がつくのにそれほど長い時間はいらない。そして、結局それらが飲み手の好む飲料になっていくことにも。

Bullet BourbonとKetel One VodkaがFROTHの新しい2つのパートナーである、今年の後半にはノンアルコールのブランドの参加も計画されている。

inkHunter

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InkHunterはモバイルアプリ全般を改善することを狙ったARプラットフォームである、ARはモバイルでは遅く、一貫性がないと思われてることがその開発の動機だ。

Oleksandra RohachoveとPavlo Razumovskyiによって創業されたinkHunterは、ARを使って自分の体の上のタトゥーをプレビューすることを可能にする – これは、彼らの提供するマークベースのARテクノロジーの1応用例である。身体の上でタトゥーを入れたい場所にスマイルマークを描くことで、inkHunterアプリはその落書きを認識しタトゥーに変換してARを使い画面上に表示する。

これまでのところ、inkHunterはApp Storeで250万回以上ダウンロードされている。彼らはプレゼンテーションで、タトゥーを超えて、彼らのAR技術をeコマースや、健康産業、そしてゲーム会社で利用してもらうことが彼らの希望だと述べた。

Karate Health

karate-health-190x80Arif SorathiaとBrett Adelmanによって創業された、データサイエンス主導のスタートアップである。狼瘡などの、慢性で自己免疫疾患の患者を対象にしている。

Karate Healthは、ピアリレーションシップ、薬や副作用の追跡、そして教育素材を組み合わせたアプリだ。ユーザーは自分の処方薬、経験した症状、そして幾つかの必要な個人情報(年齢や性別など)を入力する。患者たちに自分自身の状態について学んでもらうことがKarate Healthの最終目標であり、一方ヘルスケアプロバイダーに彼らの患者の状態や症状について知るためのよりコスト効率の高い手段も提供し、研究と治療を改善する。

成功の可能性という点では、Karate Healthはそのプレゼンテーションの中で、現在1500人以上の狼瘡患者を支援しており、程なくその専門分野を関節リウマチ(RA)患者を支援にも広げると述べた。

Koa

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Mark Hartmanによって創業されたKoaは、住宅ローンの買い手と売り手のためのソフトウェアプラットフォームである。エンドツーエンドの取引及びローン管理を行うこのシステムは、2008年の金融危機からずっとアップデートされて来なかった業界の、近代化を目指している。

Koaの現在および将来の顧客は、彼らのローン投資に対する管理、分析、執行を、コンピューター上のオンラインコントロールパネルを使用して行う。有効性に対するKoaの主張は、Koaのそのまま使えるソフトウェア実装によってユーザーはコストを減らし、利益を増やす便益を受けることができるというものだ。一見ものすごくエキサイティングなものではないが、潜在的な顧客の増加に伴い、Koaの究極のビジョンは顧客同士の取引を可能にするものとなる – おそらくそれは有用なものであろう。

Pairprep

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Pairprep:教育プラットフォームのスタートアップ。Sean Lanningによって創業され、AIを活用する企業だ。写真を撮るか、PDFをアップロードすることで、教師(または親)が課題を作成することができ、それらを彼らの生徒たちのための個別の必要性に応じて調整することができる。

より良くより豊かな課題を作成し、究極的には主要な教科書出版社と競うことを可能にするために、複数の教師(または親)がコラボレーションするためのツールが用意されている。Pairprepの主張は、50000人の代数教師のチームは、PearsonやMcGraw-Hillといった大出版社の専門家たちよりも、生徒のためのよりよい課題を生み出すことができるというものである。

35万8000人のユーザーを擁するPairPrepは、業界を根底から覆すだけの強みと知識を(その協力する教師たちが)持っていると考えている。当初、ソフトウェアの基本機能に対しての教師からの支払いは発生しない、プレミアム機能(生徒のための個別支援機能など)に対して支払いを行ってくれる学校を獲得するのが彼らの目標である。

SensorKit

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Houtan FanisalekとKenneth Krugerによって設立されたSensorKitは、アクティビティやジェスチャー認識を行うプラットフォームである。彼らが主張するのは、機械学習を使ってApple WatchやMoto 360 smartwatchesのようなウェアラブルからのトラッキングを向上させるという点である。ありがたいことに、これは新しいハードウェアを生産するということではなく、既存のウェアラブルのセンサーを改良するという話である。

SensorKitはアプリを裏側で支える頭脳であり、YouMoveとよばれるソフトと同じメンバーによって開発された。AndroidとiOS向けのものが存在していて、プラットフォームを用いてユーザーのアクションを自動的に検出する。検出されるものはベンチプレス、スクワット、ボート漕ぎ運動、時間の設定や休憩などである ‐ すべて聴覚フィードバックを用いてユーザーのコーチに利用される。

以前はiPhone上のアプリだけだったが、SensorKitは新しく解放されたApple Watchのセンサーをこの先活用するようになる。よってYouMoveはApple Watch上で使えるようになる。これは10月7日からである。

Turnout.ai

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Julien Newmanが共同創業者であるTurnout.aiは、企業に近代的な世論調査を可能にする、B2Bの分析プラットフォームだ

世論調査員や申込書から世論データを手動で集めることは定型作業なので、Turnout.aiはそうしたフォームをスキャンして検索可能なPDFの形に変換する。「草の根アプリを使った草の根運動」の世論調査員は、リストを撮影しデータを集める。Turnout.aiはデータをデジタル化し、支持者たちにあなたの主張(登録時にアウトラインを入力したもの)に関連するデータとして送ることができる。

Turnout.aiの名簿に加わった最初の顧客はUberである、(アプリ全体ではなく)分析エンジンのみを使って、Turnout.aiによって定量化されたデータから定性データを見つけている、そうして社会的反発を回避するようにしている。その通り、本質的に彼らは企業や個人的な課題への支援を行うために対話の内容をマイニングしている – その是非の判断はお任せする。

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(翻訳:Sako)

SalesforceがDemandwareを28億ドルで買収、Eコマースに参入

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Salesforceは、セールス人員が見込み顧客や案件のクロージングを管理するためのクラウドベース・ソフトウェアとして名を上げた企業だ。同社は本日、セールスのビジネスそのものに足を踏み入れたことを発表した。本日、SalesforceはDemandwareを28億ドルで買収すると発表した。Demandwareは中小から大手企業にまで、クラウドベースのEコマースサービスを提供している。この買収で、Salesforceは新しい事業部門「Salesforce Commerce Cloud」を立ち上げる。

Demandwareは2012年に上場し、SalesforceはキャッシュでDemadwareの全ての発行済株式を1株あたり75ドルで買い取ると発表した。これはDemandwareの現在の評価額を考えると大幅なプレミアムがついている。昨日の大引け後の評価額は18億7000万ドルだった。買収は、SalesforceのQ2内、2016年7月31日頃までに完了する予定だという。

「Demandwareは素晴らしい企業です。数百億ドルのデジタルコマース市場で世界的なクラウドサービスのリーダーです」とSalesforceの会長でCEOのMarc Benioffは声明で伝える。「Demandwareと共にSalesforceは、Customer Success Platformの一部として未来のコマースを実現し、新たに数十億ドル規模のクラウドビジネスを構築していきます」。

Demandwareのもう一つ素晴らしい点は、その出世具合だろう。Demandwareはまだスタートアップだった頃、主に3社の投資家から、たった5400万ドルしか調達していない。前四半期の収益も謙虚なものだ。4月末の決算報告によると前四半期の売上はわずか6700万ドルで、純損失が1200万ドル弱だった。しかし売上は伸びていて、損失も縮小し続けている。

「DemandwareとSalesorceは共通してカスタマーの成功にフォーカスし、熱意があります」とDemandwareのCEOであるTom Eblingも声明で伝える。「私たちの最も革新的なデジタルコマースのソリューションで、ブランドがいかなるチャネルからでもカスタマーと1対1で接することを可能にします。Salesforceに参加することで、世界の優秀なブランドを支援するという私たちのビジョンに向かって邁進することができます」。

これは、Salesforceにとって大きな買収であるのには、金額面以外にもいくつか理由がある。

一つは、この買収によりSalesforceは自社の「ファネル」を成長させることができる。つまり、既存カスタマーとの契約関係を拡張する手立てとなる(Marketing CloudやCRMのカスタマーには、コマースサービスを含むより広範なプランにアップセルすることが可能になる)。

他にもSalesforceはこれまで提供していたマーケティング、オンライン・アナリティクス、営業向けバックオフィス・ソフトウェアなどのサービスをアップセルすることのできる新しいカスタマーグループを獲得することになる。Demandwareのカスタマーには、Design Within Reach、Lands’ End、L’Oreal、Marks & Spencerなどがいるとしている。

さらに興味深いことは、SalesforceがShopify、Amazon、eBayとeBayが以前手がけていたMagentoといった企業と競合することだ。これらの企業はサードパーティー企業にコマースソフトウェアを提供するだけでなく、数社(特にAmazonとeBay)は売買取引の筆頭プラットフォームになるために競っている。

Eコマースは巨大な市場で、人々が初めてウェブを使用し始めた時からトラクションを生み、巨大ビジネスへと成長した分野の一つだ。現在も、ウェブ上でお金を使うという習慣が普及するほどに成長し、ユーザーにオムニチャネルならぬ「オムニコマース」体験を提供している。Eコマースはますます身近なものになっている。

Gartnerは、デジタルコマースのプラットフォームでの世界的な利用額は年間で14%成長することが見込まれおり、2020年には85億4400万ドルに届くと予想している。この数値はSalesforceが出しているものだ。

Salesforceは新しいCommerce Cloudについて「SalesforceのCustomer Success Platformに必要不可欠な部分となり、企業がカスタマーと全く新しい方法でつながることができるようになります。Salesforceのカスタマーは業界を牽引するクラウドコマースのプラットフォームにアクセスすることができます。そして、DemandwareのカスタマーもSalesforceの見込み販売管理、サービス、マーケティング、コミュニティー、アナリティクス、IoTとプラットフォームソリューションを活用し、包括的でパーソナライズしたカスタマー体験を提供することができるようになります」と伝えている。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter