シェアリングエコノミーに欠かせない本人確認情報をブロックチェーンで共有、ガイアックスが実証実験

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スタートアップ企業がシェアリングエコノミーのアイデアを事業化しようとするとき、乗り越えないといけない壁がある。利用者の本人確認だ。利用者は「運転免許証のコピー」のような重要な個人情報を含む書類を事業者に預けることになる。手間もかかるし、信頼性も求められる。社会的な信頼を獲得する途上段階にあるスタートアップ企業にとっては大きなハードルとなる。ここで、利用者側から見ても信頼できる透明な個人情報共有の枠組みを低コストで作れるとしたら、そのメリットは計り知れない。

ガイアックスが発表したブロックチェーンの実証実験(プレスリリース、同社のブロックチェーン技術サイト)の狙いは、シェアリングエコノミーのスタートアップ企業が参加しやすいような、非集権化(decentralized)された個人情報管理の枠組みを低コストで作ることだ。「強大な1社が個人情報を管理する枠組みではうまくいかない。もっといい形で共同所有できるようにしたい」とガイアックスは説明する。

同社は「シェアリングエコノミー協会」の理事として立ち上げに参加しており(関連記事)、その参加企業の一部に呼びかけて、今回の実証実験を行う。今回の実証実験に協力あるいは賛同する企業およびサービス名は以下のようになる。

  • コギコギ スマートロック型シェアサイクルサービス『COGICOGI
  • MOSOMafia 美容のプロフェッショナルを出張でオンデマンド予約『careL(ケアエル)』
  • BUZZPORT 仲間を集めて海外旅行プランに参加『TRAVEL PLANET
  • DogHuggy 外出する飼い主と近くの犬好きホストをマッチングする『DogHuggy
  • Huber 訪日外国人旅行者と国際交流を望む人たちをガイドとしてマッチングする『TOMODACHI GUIDE
  • ココナラ 知識・スキル・経験をマッチングする個人間マーケットプレイス『ココナラ
  • notteco 長距離ライドシェアサービス『notteco
  • Tadaku 外国人宅での食のシェア(家庭料理教室マッチング)『Tadaku

本人証明をP2Pデータベースとパブリックブロックチェーンで

ガイアックスが現在考えている枠組みは、本人確認をある1社が行えば、複数の会社で「本人確認済み」であるとの情報を共有できるようにするものだ。構想では、本人確認書類(例えばパスポートや運転免許証など)そのもののデータは、最終的には特定の企業ではなく非集権化されたP2Pのデータベース(候補はIPFS)により管理する。本人確認を行った後、本人確認に利用したデータのハッシュ値を改ざんが事実上不可能なパブリックブロックチェーンに刻み込み、証明書を発行する。証明書のデジタル署名、ブロックチェーン、タイムスタンプを照合することで、本人確認データおよび証明書が改ざんされていないことを確認する。このような非集権化された枠組みを作り上げる構想である。

利用するブロックチェーン技術の候補だが、今のところ最も利用者数が多く実績があるビットコインのブロックチェーンが有力だ。「現段階の要件、つまりIDと本人確認ドキュメントを確認して証明書を発行するには、ビットコインの仕様で十分ではないかと思う」とガイアックスでは話している。ただ、最終的にどの技術を活用することになるかどうかは未定だ。「もし求められる要件にスマートコントラクトの要素が含まれるようなら、Ethereumを検討することもありえる」(同社)。

個人情報管理の「重たさ」(コスト、手間、リスク)は増す一方だ。しかも、複数の事業主体による個人情報の利用(第三者への提供)に対して世間の目は厳しくなる方向にある。

ブロックチェーン技術で本人確認の情報を共有する仕組みがうまく構築できれば、システム構築コストを押さえつつ、セキュアで透明な枠組みを作れるはずだ。この仕組みがうまく回れば、スタートアップ企業の側にとっても、個人情報を預ける利用者の側にとってもメリットは大きい。希望としては、個人情報を預ける利用者の側から見ても「大事な情報は自分でも管理できる」ような透明性を担保した仕組みにして欲しいと願っている。

ブロックチェーンで経理効率化、複雑化するサプライチェーンに挑む、レジュプレスとPwC

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企業の送金コストを削減し、「サプライチェーンの複雑さ」に対応するためにブロックチェーン技術を投入する試みが登場した。ビットコイン取引所coincheckやビットコイン決済のビジネスを手がけるレジュプレスと、大手コンサルティングファームPwCコンサルティングが手を組み、ブロックチェーンを活用した企業間送金の実証実験を開始する(発表資料)。

実証実験の当面の狙いは、国境をまたぐ2社間の送金を合理化することだ。例えば一定期間の債権・債務を相殺するネッティングや請求書の電子化、請求項目の消し込みなどの合理化により、業務の効率化を図る。合わせて仮想通貨を活用し、為替交換手数料を削減する。レジュプレスは、仮想通貨を送金に活用することで「送金金額を数パーセント削減できる」と試算する。例えば、日本円と米ドルの間の送金では1円のスプレッドが上乗せされているし、他の通貨ではスプレッドはさらに開く。送金コスト圧縮は、企業にとってすぐ手に入る直接的なメリットといえる。

以上に加えて、セキュリティの検証、それに企業側の障壁(財務、法務的なリスク評価、採用の意思決定に至るステップなど)についても検証する。

「仮想通貨の本質的な価値はお金の移動(トランザクション)を低コストに素早く行える側面にある。海外送金のさい支払っているばく大な為替レート手数料と送金手数料を低コストにすることで、企業は利益率を向上できる」とレジュプレスCOOの大塚雄介は話している。

複雑化するサプライチェーンの透明化を目指す

送金の低コスト化はすぐ目に見える直接的なメリットだが、今回の実証実験はさらにその先のメリットも見据えている。サプライチェーンの透明化だ。特にアジアに進出している製造業分野で顕著だが、サプライチェーンの複雑化に伴い「あるはずの部品がない」といった契約不履行の事案が増えているとのことだ。企業の会計監査を手がけるPwCではこのような企業のニーズを把握し、この課題の解決策としてブロックチェーンに注目、不動産売買から大手Webサイトまでビットコイン送金で実績があるレジュプレスと組むことにした。なお、今回の実証実験で用いるブロックチェーン技術、仮想通貨の固有名詞は発表されていない。

ブロックチェーンは簿記と会計のイノベーションだとの指摘もある(Joi ItoのBlogエントリ)。ブロックチェーンや仮想通貨を使うことで企業の経理会計にメリットがあることが実証できれば、そのインパクトは大きい。金融業界に続き、会計経理業務を見ているコンサルティング大手からブロックチェーンへ取り組む動きが出てきたことには意味がある。実証実験の結果を待ちたい。

ブロックチェーンを利用してアーチストが自分の知的財産権を保護するサービスBlockai

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ブロックチェーンをめぐる議論は、デジタル通貨などお金のことが中心だったが、Blockaiは視点が違う。同社は、写真家などのアーチスト〜クリエイターたちのための、著作権を侵される心配の少ない作品登録サービスとして、ブロックチェーンの利用を考えている。

CEOのNathan Landsはそのサービスを、作品を国会図書館に登録することと、何もしないこととの中間だ、と表現する。厳密にいうと、作品には、それが作られたときから著作権が存在するが、誰かを著作権侵犯で訴えるためには登録が必要なのだ。

しかしLandsによると、サンフランシスコのベイエリア周辺のアーチストたちにインタビューした結果では、自分の作品を国会図書館に登録している人はわずかに10%だった。でも、そのほかの人たちも、登録が必要と感じている。そこでBlockaiの目的は、時間と費用を投じて公式に登録しなくても、一般公開されているデータベース、すなわちブロックチェーンに、自分の作品であるという証拠を作っておこう、というものだ。

Blockaiでは、自分の作品をドラッグ&ドロップするだけで登録ができ、登録証明書をもらえる。そして、誰かがその写真などを作者の許可無く使おうとしたら、そいつに証明書のコピーを送る。

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それは、法的にも有効なのだろうか? Landsによると、まだ実際に訴訟が起きたことはないが、Blockaiを使ってブロックチェーンの上に作られた記録は、法廷で十分な証拠になると信ずる、ということだ。そして彼の期待としては、証明書を送ることはInsagramの写真を送ることとは違うから、訴訟に持ち込まなくても効果はある(だろう)。

“創造の証拠を提供する方法としてブロックチェーンは完璧なソリューションだ”、とLandsは語る。“それは恒久的で不変な記録だ。一度記録がそこにできたら、それは永久に存在するし絶対に変えられない”。

有効性について尋ねると、Landsはdigital rights management(デジタル権利管理)の話を持ちだした。それはメディアの共有のされ方を規制する、往々にして面倒な、ときには役立たずのシステムだ。どうやら彼はゲーム業界にいた経験から、厳格なDRMは適正なソリューションではない、しかも画像などでは適用不可能、と確信したのだ。

“未来の理想的なシステムは、普遍的なデータベースがあって、そこで作品の権利を主張でき、 ロイヤルティー支払いのベースにもなる、という方式だ”、とLandsは述べる。“人びとが正しく使えるためには、できるかぎりシンプルなシステムであるべきだ”。

BlockaiでLandsは、その理想の方向へ進もうとしている。同社は、Scott and Cyan Banister(とそのAngelListの仲間たち), Social Starts, Sterling VC, Vectr Ventures, Brian Cartmell, そしてRamen Undergroundらから、54万7,000ドルの資金を調達した。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ブロックチェーン活用の金融向け事業でテックビューロとシンガポールDragonfly社が合弁

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ブロックチェーン技術NEMを活用した金融機関向け決済プラットフォーム「Automated Clearing and E-Settlement (ACES)」を日本市場に提供するため、テックビューロとシンガポールDragonfly Fintech Pte Ltdは日本に合弁会社を設立することで合意した(プレスリリース)。2016年第3四半期のサービス提供を目指す。合弁会社の設立時期や資本金などの詳細は今後明らかにしていくとのこと。

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決済プラットフォームACESの概要。「従来型の決済手法と比べコンプライアンス上の煩雑さを軽減できる」としている。

決済には法定通貨(例えば円)とペグするデジタルマネーを使う。従来の即時グロス決済(RTGS)に替わる銀行どうしの即時決済の手段として、双方の取引勘定をブロックチェーンに記録する機能を提供する。

テックビューロはNEMをベースとするプライベートブロックチェーン技術mijinの各分野での業務提携を多数発表しているが(関連記事)、現時点で発表された提携先に金融機関は含まれていない。関連する案件として、住信SBIネット銀行は野村総合研究所(NRI)と共に実施する実証実験において NEMとmijinを併用するとしており、実装を担当する一社としてDragonfly社の名前が上がっている(発表資料)。

最近、米Ripple社が日本を含むアジア市場の展開でSBIホールディングスと合弁すると発表している。Rippleの決済システムとACESは、銀行向け決済システムという点で競合する。

サイドチェーン技術を推進するBlockstreamが5500万ドルを調達、日本では弁護士ドットコムとスマートコントラクトを検討

blockstブロックチェーン技術を手がけるカナダBlockstream Corp.が、シリーズA資金調達で5500万ドルを手にした(発表ブログ)。投資したのは、Horizon Capital、AXA Strategic Ventures、それに日本のデジタルガレージの子会社DGインキュベーションなどだ。

Blockstreamは、暗号通貨とブロックチェーン技術の本流といえるビットコインのブロックチェーンと2-Way PEGで連動する「サイドチェーン」をビジネスとする。ビットコインには7年間の技術的蓄積があるが、すでに多くの利害関係者がいることから新技術を投入しにくい。だがサイドチェーンであれば、技術的蓄積が長いビットコインの基幹技術を利用しつつ、新技術を素早く投入できるメリットがある。

サイドチェーンの応用として、複数のデジタル通貨を束ねるプラットフォームや、スマートコントラクト(アルゴリズムで記述された電子契約)、デジタル不動産登記、ポイント交換などが挙げられる。

peg日本での具体的な取り組みとして、DGがインキュベーションするスタートアップの一社である弁護士ドットコムと連携し、同社の電子契約サービス「CloudSign」に基づく「日本の商習慣に最適化した」スマートコントラクト・システムの開発を検討していく。またデジタル通貨や各種ポイントサービスなどを利用可能な次世代決済プラットフォームを、クレジットカード会社や銀行とコンソーシアムを組織しつつ進める予定だ。

Blockstreamは2014年1月創業。創業者はカナダZero­Knowledge Systemsの出身のAustin HillとAdam Back。創業後間もない2014年11月に、LinkedIn創業者のReid Hoffman氏、Khosla Ventures、Real Venturesをリードインベスターとして2100万ドルを調達し話題となった。CTOのGregory Maxwell氏、エンジニアのPieter Wuille氏は共にビットコインのコア開発者として知名度が高い。

プロダクトとして、オープンソースのアプリケーション開発向けプロダクト「Elements」と、ビットコイン取引所を対象とする「Liquid」がある。同社の主要ビジネスモデルは、(1)オープンソースで提供するプロダクトに対する定額制カスタマーサポートと、(2)サイドチェーンをBlockchain-as-a Sreviceとして提供することだ。

ブロックチェーン技術の関連企業の中でも、特に有名エンジニアを抱え豊富な資金を持つBlockstreamが日本でのビジネスを展開する。今後の動向に注目したい。

ブロックチェーンでゲームインフラ運用コストを1/2に、テックビューロがGMOインターネットと提携

GMOインターネットテックビューロの両社は2016年2月1日、業務提携を発表した。テックビューロが提供するプライベートブロックチェーン技術mijinをベースとしたオンラインゲーム用バックエンドエンジンを共同開発する。「GMOアプリクラウド」のサービスとして2016年秋の提供を目指す。mijinをより使いやすくするための管理機能などを提供する予定だ。

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GMOインターネット 事業本部ホスティング事業部長、児玉公宏氏(左)、アプリクラウド事業部 高田幸一氏(画面内)、テックビューロ代表取締役社長の朝山貴生氏(右)

オンラインゲーム向けインフラと、改ざんできない分散台帳を実現するブロックチェーン技術。意外な組み合わせに聞こえるかもしれない。もっとも、ブロックチェーン技術のルーツである暗号通貨に初期段階で関心を寄せたのは、ゲーム内仮想通貨に親しんだゲーム業界の人々だったという話もある。

両社は、ブロックチェーン技術を用いてオンラインゲーム部門のどのような問題を解こうとしているのか。両社の話によれば、大きく2つのメリットがある。一つはmijinにより無停止かつ高トラフィックへの耐性があるバックエンドを作れるとの期待があること。インフラ運用コストを従来の約1/2以下に削減できると見ている。「サーバーが落ちなくなる技術」と聞けば、検討したくなる向きも多いだろう。もう一つは、ブロックチェーンの本来の機能である分散台帳が、ゲーム内アイテムやゲーム内仮想通貨の管理に適しているとの考え方だ。ネイティブに台帳の機能を提供するブロックチェーンを使えば、バグや不正が発生しにくい、との主張には一理ある。

GMOインターネットの高田幸一氏(アプリクラウド事業部)は次のように語る。「従来のオンラインゲームの運営では、スパイク的なトラフィック急増に備えてサーバー台数を用意しなければならなかった。トラフィック急増に対応できるmijinを使えば、インフラコストを抑えつつ、停止せず、データも失われないサービスを作れると期待している」。同社事業本部ホスティング事業部長の児玉公宏氏も「ボトルネックはDB周りにくる。mijinを使うことで、DB周りが落ちないようにする設計を大幅に省略できる。工数的なメリットは大きい」と話す。

ここで、無停止の根拠は、ブロックチェーンは複数のノード上で分散台帳を保持する仕組みなので単一障害点を持たないように設計できるからだ。ノードを地理的に分散させ、より強靱なバックエンドを作ることもできる。トラフィック耐性があるのは、処理能力を越えるトランザクションが到着してもキューに貯めて遅延実行する形となり、機能停止にまでは至らないからだ。もちろん、恒常的にトラフィックが能力を上回る状況には対応できないが、スパイク的なトラフィックに対してより少数のサーバーで対応できる──そう聞けば、可能性に挑戦したいと考える人はいるのではないだろうか。

「ゲーム会社は、ゲームタイトルがヒットしてトラフィックが急増したところでサーバーが落ち、肝心な局面で機会を逃すことがある。これを防げる」とテックビューロ代表取締役社長の朝山貴生氏は話す。特に重大なのは、高トラフィックでサーバーが落ちたときにデータの不整合が生じて、ユーザーのゲーム内で得たアイテム数や仮想通貨残高の一貫性が損なわれる事態だ。要は、金融や商取引に使われるOLTP(オンライントランザクション処理)分野と似た責任がオンラインゲームにはある。このこような一貫性を保つためにも、ブロックチェーン技術は有用だというのである。

改ざんできない分散台帳の性質に加え、トランザクション処理性能も確保

mijinを推進するテックビューロは、これまで複数の分野で1社ずつ提携の成果を発表する作戦を採ってきた。インフォテリアのデータ連携さくらインターネットのクラウドアイリッジのO2OロックオンのECサイトOKWAVEのコールセンターSJIの金融SIフィスコの金融情報、そして今度はGMOのゲームインフラだ。また、さくらインターネットのインフラ上で提供する実証実験環境「mijinクラウドチェーンβ」には167社の申込みがあった。

ゲーム分野は、実はmijin発表当時にすでに考えていたことだそうだ。

「オンラインゲームでは、ゲーム内通貨やアイテムに関わる不正が横行する問題もあった。そうした仮想通貨やアイテムの管理に、改ざんできない分散台帳であるブロックチェーンは非常に有効だ。ソフトのバグによりアイテム個数が増えたり減ったりする現象も未然に防げる」(朝山氏)。

GMOアプリクラウドは、1800種類以上のゲームタイトルをホスティングしている。ゲーム産業で、ブロックチェーンを活用する動きが出てくるなら、ブロックチェーン技術に接する開発者人口を増やす要因となるかもしれない。

今回の提携は、規模が大きく、内容的にも興味深い。特に、従来のインフラではデータ格納にMySQLのようなRDBMS(あるいはKVS)とキャッシュサーバーを使っていた訳だが、それらとブロックチェーン技術をどのように使い分けるのか。アプリケーション開発者からはどのように見えるのか。インフラ技術の観点からも、情報システムのアーキテクチャとしても、またアプリケーション開発者にとっても、興味深い話題だ。

テックビューロのmijinが、トランザクション処理性能の確保に重点的に取り組んでいることには、特に注目したい。従来のブロックチェーン技術は、海外送金、ID管理、土地登記などに活用できる「分散台帳」として、またプログラムにより契約を自動実行するスマートコントラクトの基盤としての活用法が広く議論されてきた。ただし、高トラフィックな処理が必要な場合はブロックチェーン外部(オフチェーン)の情報システムを利用するやり方をよく耳にする。例えば、暗号通貨の取引所は個別の売買をいちいちブロックチェーンに流している訳ではない。大半の取引はオフチェーンで実施されている。

ECサイトやゲーム用インフラのように大量のトランザクションをさばくOLTP(オンライン・トランザクション処理)インフラとしてブロックチェーン技術を売り込もうとしているのは、テックビューロ以外にはほとんどいない。テックビューロ朝山氏は「mijinではブロックチェーン本来のメリットである改ざんできない分散台帳としての性質に加えて、実用性、汎用性、安定性を重視する。トランザクション処理性能も一定の水準を確保するために努力を続けている」としている。同社は「mijinは地理的に離れたノード間で1000トランザクション/秒以上の性能を実現した」と話しており、情報システムのインフラとしての利用に耐える能力があることを強調している(関連記事)。公表されている情報がまだ乏しいこともあり、まだ同社の主張に納得できない人もいるかもしれないが、実証実験の結果は時間が経てば公開されるものも出てくるだろう。

オンラインゲームは厳しい業界だ。ゲーム会社のインフラエンジニアや開発エンジニアは、ブロックチェーン技術に対してどのような評価を下すのだろうか。ゲームインフラ分野へのmijinの挑戦は「プライベートブロックチェーンは本当にモノになるのか?」との疑問を持っている人にとって、その判断材料を提供する機会となりそうだ。

ブロックチェーン活用の海外送金を日中韓などアジアで、Ripple LabがSBIと合弁

ripple暗号通貨とブロックチェーン技術に関して、日本にいる我々にとって身近でかつ大きなニュースが飛び込んできた。金融機関向けにブロックチェーン技術の提供を行う米Ripple Labと日本の金融大手SBIホールディングスが合弁会社SBI Ripple Asiaを作り、日本を含むアジア諸国の金融機関に海外送金インフラを提供することを発表したのだ(Ripple LabのプレスリリースSBIホールディングスのプレスリリース)。

Ripple Labは、時価総額でBitcoinに次ぐ第2位の暗号通貨XRPの発行主体であり(このサイトによれば時価総額は2億2570万ドルにのぼる。ただし一時期Ethereumに抜かれた)、同時に複数の法定通貨を交換、送金できる海外送金のソリューションRipple Connectを提供する企業でもある。企業が運営する暗号通貨は珍しい。

今回の発表で強調しているのは、暗号通貨よりも海外送金ソリューションRipple Connectの活用だ。従来の海外送金が手数料が高額で時間も数日を費やしていたのに対して、Ripple Labのインフラは所要時間は数秒、手数料はゼロに近い送金が可能となる。

新会社が対象にする地域は日本、中国、台湾、韓国、それにASEAN諸国だ。オーストラリア、シンガポール、その他の地域は引き続きRipple APACがカバーする。

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Ripple Labのプレスリリースに、SBIホールディングスの北尾吉孝CEOは「市場調査の結果、Rippleは現場でテストされたエンタープライズ・ソリューションを提供できる唯一の企業だった」との発言を寄せている。「分散金融テクノロジーは間違いなく金融インフラを変革する。アジア全体でその普及を推進することに興奮している」としている。Ripple Labは、暗号通貨XRPをグループ企業のオンライン証券会社で取り扱う検討も行う。なお、SBIホールディングスは国際送金サービスSBIレミットをグループ企業の一社として抱えているが、発表では同社への言及はない。

暗号通貨の源流であるBitcoinは、中心を持たない(Decentralization)ネットワークにより国境を越える送金を低コスト、高速にしたことが大きな改革だった。Ripple Labは、暗号通貨/ブロックチェーン技術の海外送金の側面に注目し、ビジネスを構築した。運営主体を持たないBitcoinと、現行法定通貨の送金というB2Bビジネスを展開するRipple Labは対極的な存在といえる。

Ripple Connectの中身はP2Pネットワークによるブロックチェーン技術である。同社資料によると、金融機関のシステムのファイアウォール内部のオンプレミス環境で動かすのが典型的な使い方だ。システム間は、 HTTPSとRESTful API、つまり今どきのWebテクノロジーで結ぶ。ブロックチェーン技術は内部的に使われているものの、利用企業にとってはインターネットプロトコル(IP)を用いた金融システム間連携の技術との見方をした方が分かりやすいかもしれない。

最近の金融業界では、ブロックチェーン技術に関連する取り組みがいくつもある。最近R3 CEV社が11行(Credit Suisse、HSBCなどそうそうたる顔ぶれ)が参加したブロックチェーン技術EthereumとMicrosoft AzureによるBlockchain as a Service (BaaS)の実証実験に成功した。日本発のブロックチェーン技術であるmijinを開発するテックビューロはある国の中央銀行から打診を受けたそうだし、野村総合研究所(NRI)は住信SBIネット銀行はmijinとそのベースとなったNEMを併用した実証実験を進めると発表している(なお住信SBIネット銀行の資本比率は三井住友信託銀行50%、SBIホールディングス50%)。やはり独自ブロックチェーン技術を提供するOrb社もある地銀と話をしているそうだ。

日本経済新聞は、SBIホールディングスは約30億円でRipple Labの発行済み株式の17%弱を取得すると伝えている。FinTechの掛け声のもと、金融機関は今どきのITのメリットを取り入れるべく動き出している。そのような状況の中で、日中韓を含むアジア主要地域という大きなマーケットでRipple Labの金融機関向けブロックチェーン技術を展開するSBIホールディングスは、いち早く有利な地位を得たといえそうである。

 

ソフトバンクがブロックチェーンの研究開発に着手、国際募金プラットフォームに応用

1月6日にスタート、4日か5日にリリース予定
sb年末年始とブロックチェーン関連の話題が急に増えているが、ちょっと予想外の方向からもブロックチェーンの取り組みが聞こえてきた。ソフトバンク株式会社が1月6日からブロックチェーンを使った国際募金プラットフォームのプロトタイプ開発に取り組むという。

ソフトバンクといえば、孫社長の「ロボットやるぞ」というような鶴の一声で物事が進む印象が強いが、今回の話は、クラウドサービスなどを担当する部隊が技術的知見を蓄積するのために始めるボトムアップのもの。スマートコントラクト関連で将来的にキャリアがポジションを築けるようにと具体的の実装に着手してみるものだという。

ソフトバンクの福泉武史氏(情報システム統括 ITサービス開発本部 本部長)によれば、「ブロックチェーンは、かれこれ2年は分野として追い続けてる。マネーロンダリングなどネガティブな印象もあるので、まずは分かりやすいユースケースを確立したい」ということから、第1弾のプロジェクトとして募金プラットフォームを選んだ。透明性、堅牢性、分散性、永続性などブロックチェーン技術は募金に向く特性を持っているという。

ソフトバンクはこれまでにもQRコードにスマホをかざすと募金ができる「かざして募金」を日本赤十字社などに対して提供、数億円の寄付金を取り扱った実績がある。

今回の取り組みの実装面では、アピリオが運営するTopCoderのコンテスト方式を採用する。2001年にスタートしたTopCoderは、アルゴリズム競技などエンジニアの腕比べの場として長らくコミュニティーを運営しているが、一方で、人材採用プラットフォームやクラウドソーシングによる開発受注というビジネスを実践している。今回、ソフトバンクでは実装の半分をTopCoderのコンテストで行い、ブロックチェーン実装の1つである「Ethereum」を使ったバックエンドは、国内のブロックチェーン技術関連コンサルで知られるコンセンサス・ベイス合同会社が行う。

冒頭に書いたように今回の取り組みは「研究開発」。2016年末までに実用に供するプラットフォームを実現するといったような具体的なゴールは特にない。今回の取り組みから具体的な実績が何か出てくるのかはよく分からないが、通信キャリアがブロックチェーンに興味を示すこと自体は自然なことかもしれない。

さくらインターネットがブロックチェーン環境をベータ提供、石狩・東京で分散

さくらインターネットテックビューロが今日、ブロックチェーンの実証実験環境「mijin クラウドチェーンβ」を2016年1月から提供すると発表して申し込み受け付けを開始した。ベータ版は無料で利用でき、金融機関やITエンジニアの実験環境としての利用を見込む。2016年7月にはmijinはオープンソース化される予定で、同時期にさくらインターネットは有償サービスの提供も開始する。

mijinクラウドチェーンβは、テックビューローが開発するプライベート・ブロックチェーンを、さくらのクラウドの東京リージョンに2ノード、北海道・石狩リージョンに2ノード用意したサーバー環境で実行するもの。4ノード1セットで稼働し、JSONベースのAPIで利用できる。地理的に分散したプライベート・ブロックチェーン環境をクラウドで用意するのは世界的に見ても先進的。金融やポイントシステム(企業通貨)、勘定システム、契約文書の保存先などの応用事例の実証実験が手軽に始められる。

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Bitcoinとは違う「ブロックチェーン」

ブロックチェーンはBitcoinを実現している要素技術として注目されているが、今回の話は暗号通貨としてのBitcoinとは直接は関係はない。mijinはBitcoin以来、1000以上は登場したと言われる仮想通貨・ブロックチェーン技術の実装の1つ。その多くはBitcoinのコードベースから派生したフォーク・プロジェクトだが、mijinはスクラッチで書かれたブロックチェーン実装だ。この区別は重要だ。ITシステムの世界で「データベース」と一口にいってもリレーショナルDBだけでなく、今やNoSQLと呼ばれる異なる特性を持った一群の各種ストレージ技術を使い分けているのと同じで、同じブロックチェーンでもさまざまなアイデアや、特性の取捨選択によって多様な実装が生まれつつある段階だからだ。

Bitcoinを実現しているブロックチェーンとmijinの違いは、1つにはクローズドなノードで実現していることが挙げられる。もう1つはブロックチェーンの上の通貨データであるトークン(コイン)のマイニングが不要なこと。これによってBitcoinで送金に10分程度かかる原因だったトランザクションの検算処理ともいえるProof of Workと呼ばれる処理が不要となっている。このため今回さくらインターネットが用意する環境では1日に200〜300万トランザクションという高いスループットでの処理が可能だという。

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さくらインターネット フェローの小笠原治氏

今回さくらインターネットでテックビューロとの実証実験の取り組みを進めた小笠原治氏(さくらインターネット フェロー)は、「200〜300万という数字は、大手の都銀をのぞく約9割の銀行で必要なトランザクション量です。いちばんトランザクションの多いセブン銀行で500万程度です」と話す。実証実験に続いて2016年7月からは4ノードの実行環境とテックビューロのサポートが受けられる有償サービスも開始するが、これはクラウド利用料も含めて1年間で77万円。もし銀行のシステムをブロックチェーンに載せることができれば、従来システムの劇的なコストダウンになるだろうという。

小笠原氏によれば今回の実証実験には2つの目的がある。1つは立ち遅れている日本のブロックチェーンの理解・普及を促進するため。「ちょっとできる人ならポイントシステムを作るのは簡単にできる。無料なので試してみる人が出てくるでしょうし、ブロックチェーンという技術を実感していただきたい」(小笠原氏)。もう1つは、ユースケースによって、実際に必要な機能やチューニング、仮想インスタンスやサービスはどうあるべきなのかという知見を早めに収集・蓄積すること。さくらインターネットがブロックチェーンに前のめりである理由は、複数ノードを分散運用すべきブロックチェーンは「クラウドと親和性が高いから」ということだ。クラウドと言っても実際には物理サーバーがデータセンターにある。そこでのトランザクション性能のボトルネックになるネットワーク帯域の増強や物理サーバーへのメモリー追加搭載、GPGPU搭載などは、さくらインターネットのようなデータセンター事業者が取り組んで来た領域だ。

シェアリングエコノミーで立ち上がる可能性もあるブロックチェーンの応用

石橋を叩いて壊すような日本の金融業界が、いきなりブロックチェーンを導入するという展開は考えづらいが、例えば楽天のように技術に明るいネット企業がポイントシステムでブロックチェーンを導入することはあり得るだろう。もっとありそうなのは、例えば弁護士ドットコムのようなスタートアップ企業がウェブ完結型のクラウド契約サービス「クラウドサイン」で契約文書の保存先として利用するようなケースだろう。

Bitcoinではブロックチェーン上に40ビットのトークンを保存していて、これが通貨データを扱っていたが、今回のmijinの実装ではこの領域を180バイトとしているそうだ。180バイトといえばちょっとしたメッセージを保存できることから、「例えば社内向けのセキュリティの高いメッセージシステムを作ることもできる。あるいはfreeeのような企業会計でも使えるかもしれない」(小笠原氏)という。180バイトというのは1つのパラメーターなのでユースケースによって1KBにするということもありえる。

いったん書き込んだデータの改ざんが極めて難しいという特徴から勘定系システムへの導入が分かりやすいブロックチェーンの応用例だが、小笠原氏はもっと広い領域へ適用が始まると見ている。

1つはシェアリング・エコノミー系のサービスでの利用だ。「誰が誰に何を貸したかを記録できる。部屋やクルマの貸し借りであれば鍵のオン・オフにも使えるし、セキュリティーも担保される」。スタートアップ企業なら、特にプロダクトのスタート当初はユーザー数もトランザクションも少ないだろうし、MySQLやPostgreSQLを冗長構成で並べてフロントにキャッシュを置けば十分ではないのか、と、ぼくはそう思ったのだけど、小笠原氏の指摘は逆だった。MySQLが上手に使える人を雇うよりも、JSONベースでAPI経由でデータをクラウドに投げるだけでトランザクション、高可用性が実現できるなら、そのほうが良いかもしれないではないかということだ。「出退勤システムのデータ保存先でもいいわけですよ」と。

もう1つ、さくらインターネットは競合のAmazonのAWS IoTなどを横目に見つつ、IoT領域のサービス展開も視野に入れ、そこでブロックチェーンが果たす役割を見据えている。そんなことも今回の実証実験の背景にあるようだ。

IoTではデバイスの数が1桁とか2桁といったレベルで増えていくし、センサーネットワークであれば小さなデータが一斉に吸い上げられることになる。その保存先としてブロックチェーン技術は注目されていて、例えば2015年1月にIBMが発表した論文は話題になった。中央集約的なサーバーやサーバー群は、IoT時代に破綻するだろうという考察だ。IBMの論文には冷蔵庫やエアコンにブロックチェーンが載る時代が来るだろうという結構ぶっ飛んだものだが、たとえIoTの末端にまでブロックチェーンが搭載されずとも、例えばデバイスの保守契約の期間をブロックチェーンに保存しておいて、あるデバイスが故障したときに、保守サービス側にアラートをあげる、保守サービス期間が終わっていればアラートをあげないというような仕組みはブロックチェーン上で実現できるだろう。ブロックチェーンにチューリング完全なプログラミング言語を搭載するEthereumが注目されているのは、まさにこうした理由からだ。

誤解の多いブロックチェーンに危機感

実は今回の実証実験の話は、TechCrunch Tokyo 2015がきっかけとなっているそうだ。テックビューロはスタートアップバトルのファイナリストで、さくらの小笠原氏は審査員の1人だった。パーティーの場で話をしているときに「(ブロックチェーンのようなものは)使ってもらわないとダメだ」ということで意見が一致したそう。例えばIoTのデバイスからセンシングデータを吸い上げるようなケースで、自分たちでバックエンドを用意しなくても、ブロックチェーンの1実装を使った実験ができるようにしたほうが話が早いということだ。

ビットコインの登場や、その後の騒動が出来事として印象が強かったために、今もまだブロックチェーン技術が理解されていないと感じているという。一部では、今でもまだブロックチェーンは仮想通貨のためのものであり、しかもその多くは投機目的であるという印象が先走っているのではないかと小笠原氏はいう。

面白いのは、小笠原氏が20年前のさくらインターネット創業時に、現在のブロックチェーンの取り組みを重ねて見ていることだ。さくらインターネットは1996年に創業しているが、当時は都市型データセンターの構築ブームでインターネットの黎明期だった。その頃は「インターネットってオタクのものでしょ? ビジネスになるの? っていうことを最初の5年くらいは言われたものです」という。その黎明期に似て、今はブロックチェーンも「何に使えるの?」と聞かれる日々だという。2015年夏に元創業メンバーとして、さくらインターネットに復帰した小笠原氏が取り込むプロジェクトとしては、なるほど感がある。小笠原氏はDMM.make AKIBAの仕掛人、ハードウェアスタートアップの国内アクセラレータ「ABBALab」(アバラボ)の共同設立者でもあるので、今回の実証実験は「ブロックチェーンのIoTへの応用」という文脈が感じられる。さくらインターネット的な立場からは、「いずれクラウドで動くブロックチェーンが日本以外から入ってくると思う。だから先にちゃんと手がけて知見やノウハウを手に入れたい」(小笠原氏)という国際競争の観点もあるようだ。

ブロックチェーンをどう言い換えると人びとは理解するか?

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ブロックチェーン(blockchain)は、界隈の人びとにとって分かりづらい技術だ。そこらのコンピュータおたくたちでも、相当レベルの高い人でないと無理。ブロックチェーンをベースとするスタートアップにとっては、まずこの、ふつうの人にとって分かりづらい、という技術の特性が障害になる。

そこで本誌主催TechCrunch Disrupt London 2015は、ブロックチェーンのエキスパートたちに、それをもっと分かりやすい言葉で言い換える試みに、挑戦してもらった。

ブロックチェーンとBitcoinに投資しているPantera CapitalのパートナーSteve Waterhouseのは、単語が一つだけで、いちばんコンパクト、しかも一見、分かりやすそうだ: ‘分散化(decentralized)’。

独立系のブロックチェーンプラットホームEthereumのファウンダVitalik Buterinは、ちょっと気取って: ‘crypto 2.0’。cryptoはふつうに暗号の意味だから、ブロックチェーンほど技術用語っぽくはないけどね。

Blockstreamの協同ファウンダでCEOのAustin Hillは、“マーケティングのお遊びだ”と言ってこのパネルそのものに反対した。しかし、技術を多くの人びとに分かりやすくするためには、マーケティング的努力こそが必要だ。ブロックチェーンベースの生命保険や、今の銀行よりも安全な分散化銀行を一般消費者が理解納得するためには、まずそのための努力が必要。なお、Blockstreamはサイドチェーン(sidechains)というものを作っている。それは同社の言葉を借りれば、“互いに相互運用性のある並列ブロックチェーン”だ。

結局Hillが提案したのは、“分散化台帳技術(distributed ledger technology)”と“プログラマブルな信用のインフラストラクチャ(programmable trust infrastructure)”だ。ブロックチェーンよりもさらに難解になったようだが。

パネルの最初の方の雑談で彼は、ブロックチェーンは“大規模な分散化信用マシン”だ、と言った。こっちの方が、ましだと思うけどね。

ブロックチェーンを一般消費者向けにマーケティングするためには、10分間のブレーンストーミングを一回やったぐらいでは、名案は生まれない、ということ。

“ブロックチェーンについて考えるための一般的なアプローチは、それをプログラマブルな信用*のインフラストラクチャととらえることだ”、とHillは述べる。“信用をルールやコンセプトでプログラムできることが、重要な利点であり、それによってシステムのリスクを取り除けるのだ”。〔*: “信用”については、この本誌日本語記事などを。プログラム自身が信用を実装していることに比べると、国や大銀行に対する人びとの信用の方が、むしろ物理的な根拠も保証もなく、あやうい。 〕

“ブロックチェーンはリアルタイムの先験的な監査の機構(==信用の実装)として働く。それを長期的な視点で見ると、ほんとにすごいということが分かる”。

現在の監査の方式は、たとえばスポットチェックというものを行って、それらが事業全体の財務の過程を表している、と期待する。しかしブロックチェーンなら、それ自身に継続的連続的な追跡可能性(トレーサビリティー)がある、とHillは言う。そこで理論的には、スポットチェックで財務の不正を見抜けなかった場合には、別の検死的監査をしなければならない(Enronの場合のように)が、ブロックチェーンではその必要がない。監査は、ユーザがそれを利用するたびに行われるからだ。

ブロックチェーンの将来性を示すアイデアとしてHillが挙げるのが、P2P経済のための取引保険(transactional insurance)だ。

“今やあらゆる業界、あらゆる産業に、新しいタイプの新進企業が続々生まれている。先日保険業界で見たのは、P2P経済のための取引保険をやろう、という企業だった。たとえば、ある人が、週に2日Uberのドライバーをやり、週末にはAirbnbの貸主になる、という場合、そういうばらばらなユースケースをどうやって保険でカバーするのか? そこでその新進企業は、ブロックチェーンベースの保険市場というものを、作ろうとしている。すばらしいよね。ブロックチェーンの、斬新でエキサイティングなユースケースだから”、とHillは語る。

EthereumのButerin(前出)は、Ethereumのネットワークでも将来性のある保険業プロジェクトが進行中だ、と言った。たとえばそれは、フライトの遅れに対する保険だ。

“その場合おもしろいのは、暗号化によってWebページのセキュリティを確保し、そこから取り出したデータを実際に直接、スマートコントラクト*へプッシュする、という実用技術やサービスがすでにあることだ。ブロックチェーンによる分散化保険市場も、そんな技術の応用にすぎない”、と彼は言う。〔*: スマートコントラクトについては、英語Wikipedia本誌日本語記事などを。従来のコントラクトのように国など第三者による監査監督規制を要さず、コントラクト自身に(プログラミングによる)厳しい自己監査機能があるのが、スマートコントラクト。不正行為があり得ない。〕

Buterinが挙げたもうひとつのエキサイティングな事例が、IoTへのブロックチェーンの統合だ。ブロックチェーンの自己監査能力を利用して、物理的なオブジェクト(物)の所有権やレンタル等を支え、追跡するのだ。

“たとえば、完全に自動化された自転車レンタルシステムなら、ブロックチェーンによる暗号化決済技術で完全に実現可能だ。そういうものは、いったん立ち上げたら、その後は完全に自律的に動いていける”、とButerinは語る。

“そのほか、いろんなものがブロックチェーンで自動的自律的に不正なく管理運用できるから、応用例はあらゆる業界/産業にわたって無限にある。そう考えると、ぞくぞくしてくるよね”、と彼は付言した。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

ブロックチェーンの正体

image編集部注この原稿は、森・濱田松本法律事務所パートナーの増島雅和弁護士 (@hakusansai)による寄稿である。増島氏は2000年に東京大学法学部を卒業し、2001年弁護士登録、森・濱田松本法律事務所入所。2006年に米国のコロンビア大学法科大学院を卒業し、シリコンバレーのウィルソン・ソンシーニ法律事務所に勤務。2007年ニューヨーク州弁護士登録。帰国後には2010~2012年まで金融庁監督局保険課兼銀行第一課で、法務担当課長補佐を務めた。日本ベンチャーキャピタル協会顧問、日本クラウドファンディング協会理事などを歴任している。

ブロックチェーンの「誤解」

ここのところ急速にブロックチェーンに対する注目度が高まっています。Overstockが開発した、ブロックチェーン技術を用いた非上場株式の取引プラットフォーム「」、ブロックチェーン技術を用いて中央清算機関なしに株式の仲介を実現することを目指してNASDAQと提携したChainなどがこれまで取り上げられてきましたが、三菱UFJフィナンシャル・グループが、ブロックチェーン技術を国際的な金融取引市場に応用することを標榜するR3CEVのプロジェクトに参加する22の銀行の1つとなることがアナウンス(発表PDF)されてから、日本のマーケットでもブロックチェーンまわりがざわついてきました。

日本では、ブロックチェーンというとビットコインを連想する人が多いと思います。「ビットコイン」とは仮想通貨の1つであるビットコイン(これは小文字でbitcoinと記載されるのが通例です)と、これを支えるブロックチェーン技術としてのビットコイン(これは大文字でBitcoinと記載されます)の2つを意味しており、ここで議論をしているのはブロックチェーン技術としてのBitcoinに関連するものです。しかし、この記事でご説明しようとしているブロックチェーンとは、Bitcoinそのものを意味するものではありません。日本のビジネス界では、まだブロックチェーンとはビットコインが採用しているブロックチェーン技術(Bitcoin)のことを意味しているものと捉えている人が多く、ブロックチェーンとBitcoinを混同してブロックチェーン(特にそのリスク)を論じるものが多く見られます。テクノロジー系媒体を代表するTechCrunchすらそのような記事を掲載していますので(「次の革命をもたらすのはブロックチェーンかもしれない」(原文))、ビジネス界でこうした記事にも目配りをしているビジネスパーソンの多くが、このような捉え方をされているのは無理からぬものがあります。

技術サイドの方には当然のこととして理解されていることなので改めて指摘するのも憚られるところですが、Bitcoinというのはブロックチェーン技術を応用した1つのプロトコルに過ぎません。技術を評価して応用する側にあるビジネス界の人々にとっては特に、ブロックチェーンとBitcoinを混同して理解し議論することは、ブロックチェーンの本当の破壊力を見誤るように思います。実際、ビジネスの観点からすると、Bitcoinはブロックチェーン技術の中ではかなり極端なシチュエーションを想定したプロトコルであり、ブロックチェーン技術の応用例としては例外の方に位置づけられるべきものであるともいえるように感じます。

この記事は、ビジネスサイドの人たちに、ブロックチェーン技術をどのように体系を立てて理解すればよいかについて、同じくビジネスサイドにいる筆者の考えを共有することを目的とするものです。そのうえで、ブロックチェーン技術がビジネスにどのように応用することができるのかについて、その見取り図を示そうとするものです(編注:ビットコインの解説にについては、「誰も教えてくれないけれど、これを読めば分かるビットコインの仕組みと可能性」も参照)。

なぜ、ビジネスサイドが、わざわざブロックチェーン技術について理解しなければならないのか、ブロックチェーン技術のビジネス応用について理解しておけば十分なのではないか、という考え方があるかもしれません。しかし、筆者の考えでは、これではブロックチェーン技術のビジネス応用を適切に評価・議論することができません。なぜなら、Bitcoinという、かなり極端なシチュエーションを想定したブロックチェーン技術のアイディアが先行して世の中に広まってしまったため、ブロックチェーン技術のビジネス応用を考える際に、Bitcoin固有の技術的な制約や限界に関する言説が、ブロックチェーン技術に対する評価を歪めてしまいがちであるためです。ブロックチェーン技術についての体系的な理解をすることなくそのビジネス応用について評価・検討しようとすると、技術的な側面からの誤った理解がこれを邪魔するということが起こりうるように思います。

説明を開始する前に1つ留保事項を述べておきます。ブロックチェーン技術は多義的な解釈が可能な技術です。インターネットとは何か、と問われたときに、それぞれの時代ごとに主流の捉え方があり、時とともにバージョンアップされていったのに似ているかもしれません。この記事では、現時点で筆者が一応納得している、ビジネス応用に関する初期的な検討に耐えると思われる、ブロックチェーン技術の体系的な理解を皆さんと共有したいと思います。ビジネス業界の外からは、別の解釈もあるでしょうし、ビジネス業界からも、時を経てより良い解釈の方法が提示される可能性も十分にあると思っています。ぜひとも皆さんの考えを教えて下さい(@hakusansaiにてお待ちしています)。

管理者の有無によるブロックチェーン技術の分類

テクノロジーサイドの論文を読んだり技術者の方々と議論したりした結果、ブロックチェーン技術は、下図のような体系で整理して理解すると、ビジネス応用について検討・評価する際の見通しが良いように思います。

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(*)ただし、管理者がいてノード参加が自由というものも作ることができる

まずは、管理者について、ブロックチェーン技術を採用し、ビジネスの用途でこれを管理するのは誰か、という点からブロックチェーン技術を見る視点です。ブロックチェーン技術については「管理者が存在しない」という事態も想定されており、その典型がBitcoinということになります。ブロックチェーンをビジネス用途に用いる場合、その導入を検討する企業はブロックチェーンを管理したいと考えるのではないでしょうか。管理の主体は、単体企業とすることもパートナーシップ関係にあるコンソーシアムによって担われるとすることも考えられます。管理主体を誰にするかは、ビジネスの戦略上はたいへん重要なポイントになりますが、ブロックチェーン技術という観点からはそれほど大きな問題ではありません。すなわち、ブロックチェーン技術としては、単体企業を管理者とするものとコンソーシアムを管理者とするもののいずれもが可能であり、それぞれに最適化したプロトコルを持ったサービスを採用するか、もしくは同一のプロトコルを用いて他の技術的な側面からそれぞれに最適化したサービスを採用するかということをビジネスサイドとしては考えることになります。

コンピューターシステムであれそれ以外のものであれ、およそ一定の仕組み・システムを運用するためには管理者が必要と考えられていました。企業内システムしかり、コーポレート・ガバナンスしかり、自治体や国家運営であってもしかりです。Bitcoinというのは、理論的にはこの管理者の存在を前提としないプロトコルを採用しています。管理者の存在を前提とする必要がないことから、Bitcoinは民主的な技術であるといわれ、その応用である仮想通貨(bitcoin)は、国家システム(なかんずく貨幣システム)に対する強力な代替案を提供しうるアプリケーションであるとして、驚きをもって受け止められました。しかしながらこのことは、ブロックチェーン技術は管理者が存在しないものでなければならないことを意味するものではありません。ブロックチェーンは分散型台帳技術であり(ブロックチェーンを「台帳」と解釈すべきかどうか自体についても諸説があり、ものの見方によって多義的な解釈が可能です)、それ自体は無色透明のものであって、管理者をどのように設定し、または設定しないことにするかは、プロトコルのアーキテクチャの問題にすぎないということができます。

誰でもノードとして参加できるか、管理者によるコントロールを可能にするか

ブロックチェーンはpeer to peer技術を応用したものなので、技術的にノードの存在が必要になります。このノードに誰がなることができるのかというのが次の視点となります。管理者が存在しないブロックチェーン技術の場合には、管理者が存在しないというその特性は、ノードの参加の可否を判断する者が存在しないということを意味し、したがって誰でもノードに参加することができるというアーキテクチャを採用することになります。ブロックチェーン技術を解説する際に「Trustless」という表現が出てくることがありますが、これは主としてこのことを述べたものです。

逆に、管理者が存在するブロックチェーンについては、ノードとなるかどうかについて管理者がこれをコントロールすることができるということになります。これには、エンドユーザーを直接ノードとするものや、エンドユーザーは誰かということと誰をノードとするかを分けて考えるものとがありますが、いずれにしても、ノードとなることができる主体を管理者がコントロールすることができること自体には変わりがありません(エンドユーザーが自動的にノードとなるものについては、そもそもそのエンドユーザーにアカウント開設を許可するかどうかを管理者がコントロールすることによって、ノードをコントロールすることができることになります)。この特性を表現するものとして、しばしば「Trusted」という表現が用いられています。

コンセンサスとプルーフの必要性

ブロックチェーン技術について、これをpeer to peer技術を用いて管理する分散型台帳であると見た場合、この台帳の書き換えをコントロールする方法が技術の中核を占めることになります。台帳の書き換えは、そこに何らかのトランザクションが起こることを意味していますが、このトランザクションに対する同意(コンセンサス)と、それが真に当事者によって行われたものであること、さらには対象が二重にトランザクションの対象となっていないことを確認(プルーフ)する作業が必要となります。

ブロックチェーン技術に、誰でもノードに参加することができるアーキテクチャを採用する場合、ノードには悪意のある者が参加する可能性があることを念頭に置いて全体を設計しなければならないことになります。すなわち、悪意のあるノード参加者が分散型台帳を改ざんしないことを確保する仕組みが必要ということになります。Bitcoinにおいては、これをproof of workと呼ばれる方法で、台帳の書き換えには一定の計算を行うことを要するものとすることで、解決しようとしています。計算が必要であるということは、コンピューターリソースとこれを動かす電力を必要とするということを意味していますが、これらの資源を提供することのインセンティブとしてbitcoin自身を資源の提供者(つまりマイナー)に付与することをあらかじめ約束することで、悪意のあるノード参加者にとって、台帳を改ざんするよりはマイニングに従事するほうが経済的に効率的であるという状態を創出しているわけです。これにより、悪意のあるノード参加者を想定しつつ、台帳の改ざんの懸念を払拭しているところに、Bitcoinというプロトコルの際立った特徴があるといえます。

逆にいうと、ブロックチェーン技術に管理者の存在を想定し、ノード参加者を管理者が選定することができるというアーキテクチャを採用した場合、そもそもそんなに悪意のあるノード参加者などというのを想定してガチガチなプルーフ作業を必須としなくても良いではないか、という発想がうまれうることになります。

どの程度のプルーフ作業を必要とするかは、分散型台帳の書き換えの速度、すなわちトランザクションの速度と深く関係することになります。厳格なプルーフ作業を要求する場合、これはビジネスにおいては取引の実行に要する時間が長くなることを原則として意味します。そうすると、その長さがすなわち決済速度ということになり、この点のブロックチェーンのアーキテクチャ、さらにはそのプロトコル自身が、ビジネス上、その取引にそのブロックチェーンが使えるかどうかという話に直結することになります。

このように、ブロックチェーン技術においては、厳格なプルーフ作業を求めること、ビジネス的に言うと台帳に対する悪意のある改ざんがなされないという信頼性を技術的に高く確保することと、トランザクション速度を高速化することの間には、一定のアンビバレントな関係があるといわれています。このバランスをどこに置くのか、ということを考える際に、悪意のある改ざんを防止するためにノード参加者自身をコントロールするという発想を持つことができる、管理者が存在するブロックチェーン技術とその存在を前提としていないブロックチェーン技術の間には、サービスの設計を考える上で、大きな差があるということだと思います。

さらに言うと、プロトコルをどうするかという問題は、ビジネスの応用に際して一定の制約を生むことになるとはいえますが、この点は提供される製品のアーキテクチャによって、一定程度解消されうるということであると思います。例えばBitcoinのプロトコルを用いたとしても、その上に何か別のレイヤーを設けて工夫することにより、トランザクション速度に関して何らかの改善を図ることができる余地はあるということかと思います(Bitcoinというプロトコルは、管理者の存在を前提とはしていないというだけで、このプロトコルを用いたサービスを設計する際に、管理者を置いた形のサービスを作ることができないということではまったくありません。)。但し、Bitcoinのプロトコルに本源的に存在する制約や限界が、これを用いたサービスの設計を窮屈にするということはありえるかもしれず、それによってサービスがビジネス上どの領域に利用することができるのか、ということに影響することはありうるのだと思います。

また、Bitcoinが完全なオープンソースであることに関連して、事業者が提供するサービスの中には、そのおおもとをBitcoinに由来するものが多くあります。これらはビットコインフォークと呼ばれ、Bitcoinが持つ特性を多かれ少なかれ引き継いでいることになります。ブロックチェーン技術を用いたサービスを一から開発する(すなわちコードを一行目から書いていく)ためには、peer to peerによる分散型合意形成技術、暗号技術、セキュリティ技術など異なる領域にわたる技術を開発陣が高いレベルで習得していなければならず、そのような開発チームを組織して、ビットコインフォークではない、特定のビジネス応用に最適化したサービスを作り上げるためには、かなりの時間と開発コストがかかると言われています。

ブロックチェーンには「トークン」は必須ではない

ブロックチェーン技術に言及する際には、しばしば「トークン」と呼ばれるシステム内の貨幣のようなものと、マイナーと呼ばれるトークンの発掘者の存在が指摘されることがあります。しかしながら、これらはブロックチェーン技術にとって必要不可欠の要素ではありません。ブロックチェーン技術を分散型台帳としてとらえる見方からすると、システム内でこの分散型台帳を適切に管理することができればよいわけであり、そのための設計として、トークンというものを導入するかどうか、またマイナーという仕組みを導入して分散型台帳の管理のためのリソース提供を動機付けするかどうかは、サービスのアーキテクチャないしその根本にあるブロックチェーンのプロトコルをどのようにするか、という問題に過ぎません。

同様に、台帳を誰が見ることができるかという点も、サービスの設計の問題ということになります。

ブロックチェーン技術の応用

ブロックチェーン技術を分散型台帳とみた場合、その応用としてビジネス界が着想するものとして決済分野があります。決済には資金や証券などの分野がありますが、資金は記録によりその価値の帰属者を法的に定めることができ、証券についても電子的な記録によりその保有者を法的に定めることができますので、ブロックチェーン技術を用いてトランザクションの実行を適切に記録する(誰と誰の間のいつ行われた何の移転に関する取引かを記録し、その認証を行うことで、二重譲渡のような事態を防止する)ことにより、ブロックチェーン技術に決済機能を発揮させることができそうです。

他方で、このような記録台帳による記載と資産の法的な所有の決定が必ずしも対応していないものも存在します。例えば債権の譲渡は、誰が現在債権者であるかについて対外的に主張することができるためには、債務者に対する通知や債務者による承諾が必要です。したがって、記録台帳による記載を債務者への対抗可能なものとするためには、債権の売買当事者間の合意とその認証のみではなく、債務者に対する通知がなされたことや債務者が承諾したことについての認証が必要になることになります。動産の場合には、売買当事者間の譲渡の合意のほかに、その動産が買主に引き渡されたことについての認証もなければ、記録台帳の内容のとおりの資産の所有関係があるということは言えません。不動産の場合にはその権利の取得や喪失について対外的に主張するためには登記が必要ということになりますので、ブロックチェーンによる記録と登記システムが何らかのつながりを持たなければならないことになります。そこで、もっとも先進的なアイディアとして、登記システムにブロックチェーンが組み込まれるべきであるという主張がなされているところです。技術的にはともかく現状の登記実務を念頭に考えると、それなりに超えるべきハードルがあると言わざるをえませんが、確かにそのような仕組みが採用された暁には、現在の中央集権的な登記システムの維持にかかるコストは劇的に減らせることになるでしょう。現に、債権については電子債権記録法という法律により、電子債権記録機関における記録によってその権利の発生と移転の法律上の効果を担保する仕組みができており、こうした新しい法律上の枠組みの制定により、資金や証券以外の資産の移転分野にブロックチェーン技術が応用されていく可能性はあると考えられます。

ブロックチェーン技術の捉え方として、これは台帳ではなく5W1Hが記載された記録簿であるという識者もいます。これを台帳と表現するか記録簿と表現するかは言葉の綾に過ぎないように思われますが、このような表現をされる人の中には、チューリング完全なブロックチェーン技術であれば、契約上の義務をデータレイヤーを取扱うチェーンと同じチェーンで取扱うことができ、これによりブロックチェーン上で契約関係を表現することができると同時に、その契約条件が整った際に契約上の支払の履行がなされることを確保するという仕組みをつくり上げることができるということを強調する人が多いようです。これを表現する単語として、「スマートコントラクト」という呼び方がなされることがあります。このようなスマートコントラクトにおいては、単純化して言えば、移転対象となる資産を移転する諸条件がブロックチェーン上に表現され、記述されたすべて条件の成就が認証された場合に資産が台帳上移転するという仕組みをブロックチェーンに織り込んでおくという発想がなされています。

このようなスマートコントラクトの考えは、ガバナンスないしモニタリングと呼ばれるものの考え方を変更するかもしれません。例えば取締役に対する株主のモニタリングについて、取締役の行動に様々な条件を課したうえで、それらの条件を成就した場合に報酬が付与されるものと考えた場合、これらの条件関係がブロックチェーン上に表現されていれば、その条件の成就が認証されないかぎり取締役に報酬が支払われないということになります。取締役のモニタリングを、判定が容易な複数の条件の組み合わせとその成就の認証行為としてとらえ、これを報酬と紐付けることで、コーポレート・ガバナンスの最重要の問題の一つであるところの取締役の行動規律を低コストで確保することができるのではないか、と考えることは、スマートコントラクトの延長上の議論として少なくとも成立し得るように思われます。

また、スマートコントラクトとIoTの関係にも着目する必要があります。スマートコントラクトでは、一定の条件が成就することをもって資産の移転が生じる(より正確には帳簿上の記載が変更される)ということをブロックチェーン技術によって自動的に発生させることができるわけですが、この「条件」が客観的な事象の発生そのもの、もしくはそのような事象と紐付いたものであることがあります。例えば、「午後10時までに帰宅する日が1週間のうち4日以上あったら5000円を支払う」という契約があった場合、「午後10時までに帰宅する」という条件が果たされたことを確認する方法として、本人が帰宅したことを申告させ、誰かが本人の自宅に電話して認証する方法がありえます。これに代わる方法として、本人が電子鍵で自宅ドアを解錠した場合にスマートロックからモバイル端末を経由して帰宅の事実とその時刻が送信されれば、その日に「午後10時までに帰宅する」という条件を満たしたことをブロックチェーン上で認証することができることになります。

こうしてみてみると、そもそもビットコインという仮想通貨システム自体が、これまでは国家がコストを掛けてメンテナンスしてきた貨幣システムのガバナンスに相当するものを、ビットコインというプロトコルの中で、法定通貨のガバナンスとコスト構造が全く異なる仕組みにより、実現したものととらえることも可能であるように思われます。すなわち、ビットコインという仮想通貨システムが成立していることそのものが、ブロックチェーン技術がこれまでのガバナンスとそのためのコストというものに対して、強烈な転換を迫るものたりうることの証左であるという見方もできるということです。

金融インフラをブロックチェーンで代替してコストを10分の1に、日本から「mijin」が登場

ミッションクリティカルな金融機関システムを、Bitcoinなどの暗号通貨で使われる要素技術であるブロックチェーンで置き換える――。こういうと日本のIT業界に身をおいてる人の反応は2つに割れるのではないだろうか。「何を寝言みたいなことを言ってるのだ?」という反応と、「それはとても理にかなってるね」という反応だ。

ダウンタイムの許されない高可用性や、データ損失のない信頼性が要求されるITシステムというのはハードもソフトも「枯れた技術」を使うのが定石。まだ実用性や有用性が証明されていないBitcoinの技術を使うなどというのは、世迷い事っぽくも聞こえる。ただ、Bitcoinという仕組みを実現するベースになっているブロックチェーンそのものは、可用性と堅牢性の高いP2Pネットワークとして様々な応用が期待されている技術だ。

ブロックチェーンは複数のサーバが参加するP2Pネットワークであるということから、中央管理サーバのない、いわゆる冗長構成となっているほか、原理上データの改ざんがきわめて難しいという特徴がある。

このことから、例えばシティバンクは独自のデジタル通貨プラットフォーム「CitiCoin」を実験中だし、Nasdaqはブロックチェーン技術を提供するChainと提携して未公開株式市場で同社技術を使うと発表している。ほかにもUBSが「スマート債権」を実験中だったりと、アメリカの金融大手が新技術の取り込みに向けて動き始めている。9月15日にはゴールドマン・サックスやバークレイズを含む9つの大手銀行がブロックチェーンで提携すると発表している

金融関連ベンチャー投資支援をしているAnthemisグループは「The Fintech 2.0」という分析レポートのなかで、ブロックチェーンによって銀行のインフラコストを2022年までに150〜200億ドル削減できるのではないかとしている。

面白いのは、最近アメリカの金融関係者らがBitcoinというネガティブなイメージのつきまとう言葉を避けて「ブロックチェーン」という言葉を使うようになっていることだ。Bitcoin関連のポッドキャストやコンサル、講演で知られるアンドレア・アントノポラス氏の言葉を借りて言えば、Bitcoinというのはインターネットにおける電子メールのようなもの(ちょっと長めの動画インタビュー)。1995年ごろにWebブラウザが爆発的普及を始めるまでは、インターネットとはメールのことだった。しかしTCP/IPを使った最初に成功したアプリがメールだっただけで、実際にはインターネットはもっと多様なサービスを生み出す革新的なイネーブラーだった。同様に、Bitcoin発案者とされる中本哲史の本当の発明はブロックチェーンのほうで、Bitcoinのような暗号通貨は、その1つの応用にすぎないという。

ちなみにシリコンバレーの著名投資家マーク・アンドリーセンは2014年初頭の時点でBitcoinの登場のインパクトを、1975年のパーソナル・コンピューター、1993年のインターネットの登場になぞらえている。アンドリーセンは、Bitcoinの本質的な価値は、ビザンチン将軍問題というコンピューター・サイエンスの研究者たちが取り組んできた課題におけるブレークスルーであることが根底にあると強調している。互いに無関係の参加者が、信頼性のないインターネットのようなネットワーク上で、どうやって合意形成を達成するのかという問題だ。

自社内、またはパートナー間のみ利用可能なブロックチェーン「mijin」(ミジン)

さて、アメリカでブロックチェーン技術利用へ向けて金融大手が動き出している中、日本発のBitcoin関連スタートアップであるテックビューロが今日、自社内、またはパートナー間のみ利用可能なブロックチェーン「mijin」(ミジン)を発表した。Bitcoinはオープンでパブリックなブロックチェーンで運用されているが、mijinは、そのプライベートネットワーク版といった位置付けだ。

mijinは現在クローズドβのテストフェーズにあり、2016年初頭から提携企業への提供を開始する。また2016年春には有償の商用ライセンスのほか、オープンソースライセンスのもとソースコードの一般公開を予定している。mijinは、地理的に分散したノード間で2015年末までに秒間25トランザクションの処理能力を提供し、2016年末までに秒間100トランザクションを実現するのが目標だという。プライベートな同一ネットワーク内では秒間数千トランザクション以上での高速動作も実現するとしている。mijinを提供するテックビューロは日本発のスタートアップ企業だが、顧客の大半が欧米顧客になると見ていて、そのことから「忍者」的なキャラをあえて選んだのだそうだ。mijinというのは忍者が使った武器の一種なんだとか。

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テックビューロ創業者で代表の朝山貴生氏は、mijinで構築したブロックチェーンで既存のデータベースを置き換えることで、企業のポイントサービスや決済サービス、オンラインゲーム、航空会社マイレージ、ロジスティックス、保険、金融機関、政府機関などの大規模で高度なシステム基盤にまで幅広く利用できると話す。銀行系のシステムだと初期構築とハードウェア費用で数億円、運用フェーズでも月額数千万円ということがある一方、mijinでクラウド上に数十台のインスタンスを立ち上げることで、初期費用ゼロ、月額数十万円の運用が可能となるだろうという。

このコスト削減の背景には、システムの堅牢性や冗長化といった技術的な部分がなくなることに加えて、不正防止対策や運用マニュアルの整備など運用コストの削減効果もある。テックビューロのリーガルアドバイザーである森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士はプレスリリースの中で、「ビットコインプロトコルに依存しないプライベートブロックチェーンというユニークな立ち位置でローンチされるmijinが金融・商流・ガバナンスをどのように変えていくのか、大変興味深い」と語っている。

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ブロックチェーン技術を使ったスタートアップ(またはプロジェクト)には、BlockstackSETLBankchainHYPERLEDGERMultiChainEthereumFactomStorjなどがある。金融向け、汎用ビジネス向けなどいろいろあって、すでに走りだしている。ただ、オープンソースで非アプリケーションのプラットホーム指向というmijinのモデルはユニークで、今からでもポジションを確保できるのではないかと朝山氏は話している。

テックビューロは国内でBitcoinを含む暗号通貨の取引所「Zaif Exchange」を運営していて、2015年3月に日本テクノロジーベンチャーパートナーズから1億円を資金調達している。

Bitcoinやブロックチェーンがどういう技術なのかという解説は、朝山氏によるTechCrunch Japanへの寄稿も参考にしてほしい。

Bitcoinのブロックチェーンに便利なメタデータ層をつけて多様なアプリケーションを可能にするColu

暗号通貨Bitcoinを支えるブロックチェーンという技術は、現実世界のいろんなトランザクションにより高いレベルの信頼性をもたらすプラットホームとして、かなり前から投資家が注目してきた。

テルアビブのColuは、そのヴィジョンを現実化するプラットホームを、開発しようとしている。Coluが提供するAPIを使ってデベロッパは、カラードコイン(colored coins,証書性通貨)とBitcoin 2.0のインフラストラクチャにアクセスして、新しい分散アプリケーションを作ることができる。

ColuのCEOで協同ファウンダのAmos Meiriはこう語る: “ブロックチェーンはいわば、この惑星上の誰とでも共有しているGoogleのスプレッドシートみたいなものだ”。そのスプレッドシートに誰もがアクセスでき、そしてそのシート(bitcoinの台帳)の変更(書き換え)を承認する手段を誰もが持つことによって、トランザクションにより高い信頼性とセキュリティ*がもたらされる機会が作られる。〔*: 原理的に、本人性詐称が起こりえない。〕

Coluがやることは、bitcoinの基本的なトランザクションの上に、取引された通貨量だけでないメタデータの層を作ることだ。すると、Coluを利用して作ったアプリケーションは、単なる仮想通貨だけでなく、鍵やチケットや役職や行為など、現実世界のいろんなものでブロックチェーンベースのトランザクションを承認できるようになる。

“この、bitcoinでセキュリティを確保されたプラットホームにより、これまでネットでの買い物をためらっていた層も安心してeコマースなどを利用できるようになる”、とMeiriは語る。

すでに、Coluのプラットホームを利用してトランザクションの部分にbitcoinを統合しているアプリケーションデベロッパが数名いる。

この技術の開発を加速し、またアプリケーションデベロッパたちの利用促進を図るためにColuは、イスラエルのVC Alephと合衆国のSpark Capitalが率いるラウンドにより、250万ドルの資金を調達した。

Coluはいわゆる、bitcoin 2.0 technology(bitcoin 2.0テクノロジ)の最新の例だ。この技術はbitcoinの、単なる仮想通貨を超えた用途を開拓しようとしている。

Meiriは語る: “Coluの目標は、ブロックチェーンの能力を利用して、あらゆるものへのアクセスを安全にすることだ。オンラインの買い物も、別荘のドアも、車のドアロックも。その用途はきわめて多様だが、ブロックチェーンの確認とセキュリティの能力があれば、何でも可能だ”。

Meiriと彼のチームは、それまで、カラードコイン(colored coins)の開発に関わっていた。その経験が、Coluの技術のベースになっている。

Culuの開発プラットホームはまだベータだが、2015年の第二四半期には一般公開でリリースされる予定、という。

昨年Bitcoinの価値は下落を続けたが、それにも関わらずその技術の継続的成熟と、bitcoinを利用する消費者の数の増加は着実に続いている。

今週は、CoinBaseが7500万ドルという巨額の資金を調達し、合衆国で初めての、州公認のBitcoin取引所をローンチした。

本誌のライターJon Russellが、昨日の記事で書いている:

先週、ニューヨーク証券取引所とUSAAを投資家に加えた同社は、Wall Street Journalの記事中で、ニューヨークやカリフォルニアなど重要な地域も含めて全米の半数の州から“州の規制下での営業”を認められた、と述べている。とくにニューヨーク州は、州の規制を受け入れないかぎり営業をさせない、と強硬に主張していた

Coinbaseはすでに、世界の19か国で取引所サービスを提供しており、これまで合衆国国内での営業許可や承認を得るのに5か月かかった、と言っている。ユーザは、同社の営業が許可されている州内でないと同社のサービスにサインアップできない。今、そのほかの州でも許可を得るべく、継続的に努力が行われている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ブロックチェーンを利用する多様なアプリケーションのためのインフラやAPIを提供するBlockCypherが多方面からシード資金を獲得

Bitcoinの公開台帳、ブロックチェーンの利用を、どんなアプリケーションにも容易に導入できるためのサービスを提供するBlockCypherが、初めての資金調達として310万ドルを獲得した。

そのタイミングはたまたま、昨年来Bitcoinの価格が急落を続けてきた時期と一致する。そのため、市場の人気はいまいちだった。

しかしBitcoinの急落がBlockCypherに大きく影響することはないだろう。協同ファウンダのCatheryne Nicholsonによれば、同社の技術はどんな暗号通貨でも利用できるからだ。

Nicholsonは曰く、“うちがやってるのは要するにブロックチェーンのためのWebサービス、つまりブロックチェーンのアプリケーションを作るデベロッパのためのソフトウェア的インフラストラクチャであり、それが、アプリケーションの構築やモニタリング、セキュリティの確保などを支え、それらを容易にする”。

つまりBlockCypherを利用するデベロッパは、ゼロ地点から始める必要がない。カリフォルニア州サンマテオで創業された同社は、Nicholsonと協同ファウンダMatthieu Riouのそれまでの仕事から生まれた。

“うちはワレットというものを初めてインストールした企業の一つだけど、暗号通貨に関してはいろんな人たちがもっといろんなことに取り組んでいるはずだ、といつも考えていた。うちのワレットはとても使いづらかったから、それを何とかすることから始めるべきだ、と悟った。それが、インフラストラクチャの方に手を染めるきっかけになった”、そうNicholsonは語る。

同社の技術を使うと、デベロッパは暗号通貨のワレットを一日足らずで作れる。“うちはマルチシグネチャのAPIや決済のAPIを提供しているから、デベロッパはそれらを利用すればよいので楽だ。自分で作らなくてもよい。デベロッパは、アプリケーションの層だけ作ればよい。インフラは、うちが提供する”。

その最初のアプリケーションでは同社は、Bitcoinの処理に要するトランザクションの時間を短くする方法を考えた。そしてそのために、ブロックチェーンがトランザクションを承認するかを事前に予測判断するツールを作った。

Nicholsonはさらに述べる: “実際のデータスループットに対応したマイクロペイメントができるようになれば、そのとき初めてWebビジネスの収益化の未来を築くいろんなイノベーションが可能になる。したがって、アプリケーションの種類や数も爆発的に多くなる。収益化が足かせになっている現状は、決して、多様なWebビジネスが本格的に花咲いている状態とは言えない”。

Bitcoinのブロックチェーン上に起きていることを分析し洞察するCoinalyticsのような企業や、アジアの最速トランザクションプロセッサと呼ばれるシンガポールのBitcoin取引所CoinHako、それにフィリピンの送金サービスPalarinなどが、そういった新しいアプリケーションの先駆けだ。

“完全に信じているのは、決済や金融はそういう膨大な種類のアプリケーションの、氷山の一角にすぎないこと。うちを利用してヘルスケアの記録のためのレジストリを作っているデベロッパもいる。彼らはブロックチェーン上にハッシュの置き場を設けている。分散ホスティングを構築しているスタートアップは、それによってアルゼンチンの内陸部にあるサーバでも利用できる。ブロックチェーン上に法律文書を置くアプリケーションを、スリランカの人たちが作っている”。

Nicholsonの興奮した話しぶりは、人を惹きつける。Draper一族の三代にわたるVCの資金も、彼女の企業に吸い寄せられた。

このラウンドのそのほかの投資家は、Foundation Capital、New Enterprise Associates、Yahoo!の創業者Jerry YangのAME Cloud Ventures、Upside Partnership、Streamlined Ventures、そしてFenox Ventureだ。

Tim Draperの娘で通称Valley GirlのJesse Draper、それに通称Mrs.Brook ByersのShawn Byersも、このラウンドで投資した。

Valley Girl VenturesのCEO Jesse Draperはこう言う: “女性の起業家に投資をすることが、テクノロジ世界の女性人口を増やす最良の方法だ。女の子たちが、自分の役割モデルとして女性のファウンダを知ったら、彼女らもファウンダになる。BlockCypherが今ブロックチェーンでやってることは、世界を変える。それには、女性も関与すべきだ”。

実のところ、ブロックチェーンの技術は、今後暗号通貨にできるいろんなことの、道を切り開く先陣部隊だ。Foundation CapitalのがゼネラルパートナーCharles Moldowは、そういう言い方をする。

彼はこう言っている: “Bitcoinでいちばん将来性に富んでいる技術が、ブロックチェーン関連の部分だ。その上で今後、数々の重要なイノベーションが起こっていくが、BlockCypherは、それのエキスパートなのだ”。

BlockCypherにはさらに、Ben NarasinとTriplePoint Capital、YahooのCFO Ken Goldman、WSO2のCEO Sanjiva Weerawarana、VoyLét Capital、Granite Ventures、Boost VC、500 Startups、Crypto Currency Partners、Michael Liou、ヒップホップのアーチストNasなども投資している。Nasはどうやら、自分を代表するものとして、死んだ大統領以上のものを、探しているようだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))