C Channelが9億円超の資金調達、トランスコスモスとの協業も

C Channelは9月24日、約9億円の資金調達を発表した。第三者割当増資での調達で主な引受先は下記のとおり。今回調達した資金は、サービス拡充と事業基盤の強化に投入されるとのこと。

  • セラク
  • ナントCVC2号投資事業有限責任組合(南都銀行とベンチャーラボインベストメントの共同運営ファンド)
  • 博報堂DYメディアパートナーズ
  • 価値共創ベンチャー2号有限責任事業組合(ABCドリームベンチャーズとNECキャピタルソリューション、ベンチャーラボインベストメントの共同運営ファンド)
  • SBIインベストメント
  • VLI新ベンチャー育成投資事業組合

C Channelは動画メディアを中心にサービスを展開しており、女性向けの「C CHANNEL」(シーチャンネル)やママ向けの「mama+」(ママタス)を運営している。またこれら両メディアのほか、インフルエンサーマーケティング事業も手がけており、現在は日本をはじめ世界10カ国でサービスを展開している。

写真に向かって左から、トランスコスモスDEC統括 デジタルトランスフォーメーション本部 プラットフォーム戦略統括部・統括部長の野田朋哉氏、C CHANNEL公式クリッパーひよん、グランプリ~みかこ~、C Channel代表取締役社長の森川 亮氏

同日、同社はトランスコスモスと合同で「次世代インフルエンサー発掘プロジェクト」を発足させ、インフルエンサーとして将来的な活躍が期待される方をオーディション形式で選出。グランプリに~みかこ~さん、準グランプリに猪瀬百合さんが決定。~みかこ~さんは今後、トランスコスモスの専任クリエイターとして、C CHANNELやInstagramを中心としたSNSプロモーションの企画立案・クリエイティブ制作などに参画するとのこと。

森川社長が目指すT層/F1層特化型メディア「C CHANNEL」の未来とは?

LINEで代表取締役社長を務めていた森川 亮氏(写真右)が、2015年3月に同職を離れ、元日本テレビの三枝孝臣氏とともに同年4月から始めた女性向けの動画メディア「C CHANNEL」。スマホの縦型動画にいち早く目を付けたメディアで、現在では世界で600万ダウンロードを記録している。

C CHANNELの特徴は分散型のSNSになっている点。C CHANNELのコンテンツは同メディア上だけでなく、InstagramやLINE、YouTube、TikTok、Twitter、Facebookなどに発信することで合計2600万人以上のユーザーへリーチしているそうだ。C CHANNELのコアユーザーは18~34歳までの女性。現在は日本だけでなく、アジアを中心とした世界10カ国にサービスを展開している。

インフルエンサー(クリッパー)を自社で育成しているのも特徴。Instagramで100万人以上のフォロワーがいる韓国出身のテリも、同社所属のインフルエンサーだ。C CHANNELに動画を投稿できるクリッパーは1400人超が在籍しており、月間1500本以上の動画を投稿しているという。国内ではクリッパーと資生堂が組んでヘアチョークパレットを共同企画したり、同社がオンワードと組んで「TwoFaces」というアパレルブランドを展開したりとコマース事業にも進出している。海外では、タイの化粧品会社と共同で現地で人気のインフルエンサーを使ったコラボコスメを限定販売した実績もある。

さらにC CHANNELでは、コスメやファッション、ヘア、ネイルなど女性の関心が強いと思われる動画を、自社で月間500本以上を作成している。YouTube制作専門のチームが社内にあり、YouTube上のC CHANNELのチャンネル登録者数は39万人。同社が育成したインフルエンサーである「ひよん」「元美容部員 和田さん。」は、それぞれYouTube上で8.6万人、50万人を超えるチャンネル登録者数がいる。

森川社長が若年層の女性をメインターゲットに据える理由として「女子高生から社会人になりたての時期は、メイクやファッション、対人関係などに悩む時期。それぞれの方向性が固まっていないことが多いので、アドバイスや悩み相談などのコンテンツが必要なんです」とのこと。

同社が立ち上げたママ向けメディアの「mama+」も同様で「社会人にとしてキャリアを積んでいても女性は出産を機に新たに経験することが増え、さまざまな悩みが発生してくる。こういった需要に応えられるようにmama+を立ち上げた」そうだ。

C CHANNELはオンラインだけでなくオフラインのリアルイベントにも力を入れている。10月7日、8日の2日間、東京国際フォーラム(ホールE2)で開催された体験型フェス「Super! C CHANNEL 2018」には1万2000人が来場したほか、オンラインで25万人が視聴したという。「リアルイベントを開催することで、InstagramやTikTok、LINEなどを入り口としてC CHANNELのコンテンツに触れていたユーザーに、C CHANNELの認知度をさらに高めていきたい」と森川氏。

このフェスでは、同社所属のクリッパーが100均のコスメを使ったメイク方法や、DIYアクセサリーの作り方を披露。会場内に設営された、C CHANNELアプリ上でリアルタイムにショッピングできる「コマーススタジオ」でも、同社所属の人気クリッパーが商品を紹介した。オンラインとリアルイベントを活用し、広告・コマースの事業を拡大していく狙いだ。

そしてC Channel(サービス名はC CHANNEL)は10月30日、新COOとして渡邉康司氏(写真左)を迎えることになった。渡邉氏は大学卒業後に読売広告社に入社。2004年にZenithOptimediaへ移り、中国・北京オフィスでグループプランニングディレクターを務めた。2006年にはグループエム・ジャパン(旧名称・マイドシェア・ジャパン)に籍を移して、2009年には同社の代表取締役に就任した人物。「中国での事業や広告業界で得た知見を生かして、海外展開に力を入れるC Channelをさらにスケールさせたい」と渡邉氏。同氏は今後、広告・コマース事業を中心にC Channelの舵取りを担っていく予定だ。

C Channnelがエンタメ動画進出、オーディションアプリ「mysta」をパートナー7社と本格スタート

スマートフォンに特化した女性向け動画を配信するC Channelは4月25日、ラジオ、テレビなどのメディア企業を含む7社のパートナー企業とともに、スターの卵を応援するオーディションアプリ「mysta」のサービスを本格的にスタートした。

参加するパートナー企業は、エフエム東京産経デジタル集英社松竹ソフトバンク東京放送ホールディングス(TBS)ポニーキャニオンの各社。2017年9月にC Channelが設立したmystaと協業し、サービスを本格展開していくという。

オーディションアプリmystaは、歌手やアイドル、お笑い芸人など、さまざまなジャンルの新人タレントが投稿する動画を楽しめるサービス。ユーザーは“推し”のタレントを動画内の「応援ボタン」で応援して、動画のランキングを上げることが可能。ランキング上位のタレントには、生放送ライブの決勝イベントに参加するなど、各種の活躍の場が提供される。

mystaとパートナー企業は、今後それぞれ、以下のような取り組みを実施・検討していく見込みだ。

C Channel F1層をターゲットにした共同プロモーション企画の実施
新規インフルエンサーの発掘企画及び発掘後のアジアを中心とした海外展開の共同実施
エフエム東京 声のスターを探す参加型のオーディション番組を2018年7月より開始予定。グランドチャンピオンにはレギュラー番組の提供を予定
産経デジタル mystaで活躍するキャストが関係するニュースの発掘と報道
ゲーム実況者、Vtuberなどの発掘・共同オーディション企画展開、eSports関連事業への取り組み
集英社 集英社の媒体と連携した動画企画の実施
第1弾施策としてティーンズマガジン「Seventeen」との動画企画を毎月実施
松竹 スマホを利用する若年層に向けた新しいコンテンツの共同開発
次期公開予定作品のmystaを活用したプロモーション
ソフトバンク 自社媒体を通じたmystaサービスのプロモーション
若年層をターゲットにした共同プロモーション企画の実施
東京放送ホールディングス(TBS) 動画配信における協業を起点に、TBSグループとの連動企画を展開し、
事業シナジーを創出することをめざす
ポニーキャニオン 新規才能発掘企画の共同実施
イベント、興行の共同企画・制作・運営

また、これらの企業間で連携した企画なども、今後検討し、展開していく予定だ。

C Channelは2015年4月にサービスをスタート。スマホ向けの縦型動画メディアとして、コスメやファッション、恋愛などの女性向けコンテンツをSNS経由の分散型で提供し、2016年3月には月間再生回数1億回を突破している。現在、日本に加え、アジアを中心とした9カ国でサービスを展開。SNSファン数は2500万人を超えるという。2016年4月には、TBSテレビから数億円規模の資金調達も行った。

C Channelでは「スマホによる縦型動画の視聴は一般化し、この流れは今後グルメやハウツー系のみならず、エンタメ動画にも広がっていく」として、今回のmystaサービス開始に踏み切ったとしている。

スマホ特化型のエンタメ系動画サービスでは、FIREBUGが2017年9月に動画アプリ「30(サーティー)」を公開している。確かにこれからハウツーやショッピングなどの実用ものだけでなく、純粋に縦型動画をスマホで楽しむ、というフェーズが来るのかもしれない。

世界への進出、どうやるの? Facebook、C Channel、メルカリそれぞれの戦略

3月16日から17日にかけて福岡県・博多で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Spring in Fukuoka」。初日のセッション「インターネットビジネス、グローバルでの戦い方」にはフェイスブックジャパン代表取締役の長谷川晋氏、C Channel代表取締役社長の森川亮氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏が登壇。グリーの田中良和氏がモデレートする中、それぞれの世界戦略を買った。

メルカリの世界進出の理由、「ロマンの部分が大きい」

田中氏はまず、「スタートアップが海外進出をする理由」について登壇者に尋ねる。

今日まさにイギリスでサービスをローンチしたばかりのメルカリだが、最初に米国への進出をしている。山田氏は当時を振り返り、「ECのGMV(総流通総額)は10倍。米国で成功できれば世界でも成功できると思っている。だがロマンの部分のほうが大きい。せっかくインターネットのビジネスで世界中繋がっているのだから、大きな市場でいいサービスを作って全世界でやりたいな、と」と振り返る。当時、直接的な競合も居ない状況であり、海外進出のチャンスとも考えたという。「(競合がない方が)可能性があるんじゃないか。でもホームラン狙いのようにビジネスをやっているところがある。当然日本でうまくいったからといって米国やヨーロッパでうまくいく保証はない。でもとれたらでかいよねと」

テレビ局でのビジネス経験もある森川氏。C Channelについて「日本発のメディアブランドを作りたいな、と思った。僕たちのターゲットは若い女性なので、日本だとそれほど多くなかった」と振り返る。現在はタイや台湾、インドネシアに進出するC Channel。月間再生は現在6億6000万回で、そのうち5億回以上は海外なのだという。アジア進出の理由は、競合不在(まだYouTubeが強く、一方では分散型が出なくライブ配信のようなコンテンツが流行している)であり、前職のLINEでの経験も生かせると考えたからだそうだ。

積極的にグローバル展開を進めるFacebook。中でもユーザー数の伸び、ビジネスのスケールを考慮してもアジア圏、特にモバイル、動画の領域は注目だと説明する。

とはいえFacebookは一度モバイルで大失敗しているのだそう。2012年頃、当時はデスクトップからのアクセスが圧倒的だったため、モバイルシフトが大きく遅れてしまったのだと語る。現在ではMAUの90%、売上の80%がモバイルからのものになっているとした。

世界展開するプロダクト、どう作る?

世界進出を進める3社。では本国と海外ではどういったチーム作りをしているのか。メルカリは協働創業者の石塚氏が元RockYouの創業者であり、シリコンバレーのカルチャーにも精通していると言うことで、オペレーションまわりは100%現地のアメリカ人が担当しているそう。

一方で開発はほとんど日本人が担当しているそうだ。もともとは国別に作っていたプロダクトを「グローバル版」として米国の品質に寄せた経験があるそうだ。「ただ去年くらいから米国でプロダクトマネージャーやデザイナーを取り始めている。また日本からも赴任する人も増やし、そこで融合することを試している。そうしないとグローバルなプロダクト作りはできない」(山田氏)。

山田氏はまた、トヨタやソニー、ホンダ、任天堂といった日本企業が過去にどうやって海外で成功してきたかを、「日本は圧倒的に強い技術力があってプロダクト出てくるから、ローカルもマーケティングや販売戦略を立てられた」と説明。日本の強みを持ってしてプロダクトを作り、現地とコミュニケーションを取っているとした。

これに対して、田中氏は「日本の強さ」を作るのが難しくなってきたのではないかと語る。山田氏もそれに同意した上で、「シリコンバレーから新しいテクノロジーがやってくる中で、技術というより、『こういうモノがいいんじゃない?』という強い信念がないといけない」とした。

一方で森川氏が話したところによると、C Channelは、女性向けコンテンツということで現地のカルチャーを理解していることも重要だそうで、コンテンツに関しては現地での制作をおこなっているという。

長谷川氏はFacebookというグローバル企業、またグローバルのマーケティングのために使われるプラットフォームという視点で世界進出について語る。まずグローバル企業としての視点だが、Facebookは本社というよりは、世界に複数ある拠点でサービスを開発しており、一方でビジネス面に関しては、各国に権限委譲する文化なのだそうだ。

一方でプラットフォーマーとして、「米国も1つの国として進出を考えるのは必ずしも正解ではない」と説明する。米国と言っても地域や人種、年齢、性別もさまざま。いくつもあるクラスタのどこに徹底するのかを考えるのが大事だという。またその進出方法にしても、現地チームを作るかどうかだけが大事な訳ではないと語る。「ユーザーインサイトはPC1台で分かる。プロダクトの作り込み、動画の作り込みは現地でやって、マーケティングやブランディングは本社でやる、ということもできるようになってきた」(長谷川氏)

では具体的にどうやって世界に進出すべきなのか。田中氏はFacebookやTwitterといったグローバルサービスを例に、世界進出の鍵になるのは、日本発のプラットフォームを作ることではないかと登壇者に問う。

山田氏もこれに同意した上で、「2年半米国でサービスをやって、やはり経験によって得られるモノもかなりある」と語った。「海外で五里霧中という中で進んでいると、『こういうことなんだ』とか『こうことはやっちゃいけないんだ』と考え、いつの間にか高いレベルで戦えるようになっている」(山田氏)。

森川氏は「原則から言うと、現地の人がモノを作る」ということが大事だと語る。今はコンテンツでもさまざまなパターンが存在しているが、それはやがて成熟してくる。その中で何が大事なのか、差別化要素がどこにあるかを考えていかなければいけないと。自動車や家電メーカーが世界進出した時代は日本の技術が武器であったが、これからは技術だけで勝てる世界ではない。インターネットのビジネスも、よっぽどのものでないかぎり、コンテンツやサービスのデザインが重要だという。数字と感性、両方を見て、現地に根付いたコンテンツを徹底的に作れるチームが大事だとした。

世界進出、いくらかかる?

このあとは会場との質疑が行われたが、興味深かったのは「グローバル展開のためのお金のかけ方」というもの。

山田氏はメルカリについて「日本で収益も立ちはじめて、調達もグローバル進出に理解あるところからなので、お金をかけやすい状況」だとした上で、「市場がデカいということは、市場を取るためにもお金がかかるということ。戦略的にやらないとお金が尽きちゃう。普通にやるなら数十億円は必要。最低でも月1億円は欲しいと思うので」と説明。

森川氏も「あればあるだけいい」とコメント。たとえ話として、中国では1つサービスがローンチすると、80社くらい競合が出てくると説明。そこで勝つ方法というのは、「最後までやること」つまりお金を調達してやりきることだと聞いたと語った。「だから(C Channelは)真っ向からぶつかるのでなく、小さい点を取っていく。アジアで言うと、国ごとに押さえていくというやり方もある」(森川氏)

長谷川氏はまた別の視点で回答した。「2人がスケールも大きい話をしているが、そういう話ばかりではない。例えばドイツで家族経営の家具の会社があった。息子さんが家具の良さを伝えて(筆者注:Facebook Adの事例と思われる)、結果ビジネスが順調になって海外含めて5店舗くらいになった。必ずしもスケールを大きくしないとグローバルにいけないわけではない。そこは会社のスタンスとやりたいことで違うと思う」(長谷川氏)

TBSがC Channelに数億円規模の出資、テレビとスマホ“縦長”動画による協業も

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スマートフォンに特化した女性向け動画を配信するC Channel。サービス開始から1周年を迎えたばかりの同社が4月28日、TBSテレビを引受先とした第三者割当増資を実施したことがあきらかになった。金額は非公開だが、関係者によると数億円程度と見られる。なおTBSグループには「TBSイノベーション・パートナーズLLC」というCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)もあるが、今回は放送事業を行うTBSテレビからの出資となる。

C ChannelはLINE元代表取締役の森川亮氏による動画スタートアップ。2015年4月から動画ファッション投稿サイトの「C CHANNEL」を開始。スマートフォンに最適化した「縦型」フォーマットかつプロによる編集を加えた動画を配信してきた。

当初は自社プラットフォームでの動画配信に注力してきたC CHANNELだが、現在ではいわゆる「分散型」の施策をとっており、FacebookやTwitter、Instagram、YouTube、中国のTUDOUなどのプラットフォームに動画を配信している。同社の発表によると、2015年12月にオリジナルのハウツー動画の配信を強化したことを契機にして再生回数を大幅に伸ばしたそうで、2016年3月には月間の再生回数1億回を突破した。

TBSの本体(といってもTBSグループはホールディングス制なので、あくまで放送事業の本体だけど)出資となると、気になるのは両者の業務面での連携だ。

森川氏は「C Channelが持つスマートフォン向け映像コンテンツの企画制作力および特にF1女性にリーチする媒体力と、TBSの持つコンテンツ企画制作力や発進力とをうまく融合させることにより、国内および海外におけるオンライン動画事業の拡大を図る」としている。またTBSテレビ メディアビジネス局長の仲尾雅至氏も、スマートフォン視聴ならではの動画フォーマットに取り組むことが重要だとした上で、「両者の協業によって、テレビ放送ではリーチしにくい、若者層の、特にプライベートな時間に訴求できるメディアを構築していく」している。

具体的には、時事・芸能情報、番組・イベント情報、モノ・食などのライフスタイル分野の旬な情報を動画で配信していくことになるという。また通販番組と連動した商品情報なども紹介していく予定だ。そのほかスポンサー商品を紹介する動画を制作し、テレビ放送やネット媒体に発信する事業にも取り組むという。そのほか、2016年上期中にはTBSのの番組とC CHANNELのコラボレーションも検討しているという。

開催まで1週間を切ったTechCrunch Tokyo、LINE元代表・森川氏が語る動画ビジネスと“シンプル”な組織論

開催までいよいよ1週間を切ったスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」。タイムテーブルも今週発表しているが、また新たな登壇者をご紹介する。

1日目の11月17日午後のセッションに登壇するのは、LINE元代表取締役社長CEOで現在はC Channelの代表取締役を務める森川亮氏だ。

森川亮氏

森川亮氏

森川氏は筑波大学を卒業後、日本テレビに入社。MBAを取得したのちソニーに入社。さらに2003年にはハンゲームジャパンに入社することになる。そして2007年に同社の代表取締役社長に就任。同社は社名変更やグループ会社との合併などを経て今のLINE株式会社となった。

そんな森川氏だが、2015年3月にLINEの代表取締役社長を退任。4月にはC Channel株式会社代表取締役に就任し、動画事業を展開すると発表した

TechCrunchでの取材を通して僕がこの春以降感じていたのは「動画関連スタートアップの隆盛」。C Channelの発表と時を同じくして、オンライン動画関連のビジネスが大きく成長してきた感がある。YouTuberのキャスティングや動画メディアを展開する3Minute、動画広告プラットフォームのオープンエイトをはじめとして、メディア・広告・制作など動画に関わるあらゆる領域のプレーヤーが生まれている状況だ。本セッションではその中におけるC Channelの立ち位置やこの半年弱での成長などを森川氏に聞いてみたいと思う。

また森川氏と言えば、LINEの代表退任後に複数のスタートアップの外部取締役に就任したほか、母校・筑波大学でも起業志向の学生を支援するなどしている(11月11日には担当する自由科目の「筑波クリエイティブ・キャンプ」の起業プラン発表会も開催された)。こういった場を通じて、経営者としての経験を若き起業家、そしてその候補生に伝えているのだという。そのノウハウは5月に発売された同氏の著書「シンプルに考える」でも触れられている。

このセッションでは、そんな森川氏の経営哲学や組織論などにも触れたいと思っている。自らスタートアップする起業家だけでなく、組織の中でビジネスを組み立てる事業家、そして若きビジネスマンや学生まで、幅広い人に同氏の話を聞きに来て欲しい。

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LINE元社長・森川氏の次なる挑戦は動画メディア——5億円を調達し、女性向けの「C Channel」で世界を視野に

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4月1日にLINEの代表取締役社長CEOの座を退いたばかりの森川亮氏。LINEを取締役COOだった出澤剛氏に託し、自身はスタートアップの起業家として新たにサービスを立ち上げる。

新会社の名称は「C Channel」。設立にあわせてアイスタイル、アソビシステムホールディングス、グリー、GMO VenturePartners、ネクシィーズ、B Dash Ventures、MAKコーポレーション、楽天などから約5億円を調達する。今後は社名と同名の動画配信プラットフォーム(同社では「動画ファッション雑誌」とうたっている)「C Channel」のベータ版を展開する。現時点ではウェブのみでのサービス提供となるが、今夏にもスマートフォンアプリも提供する予定。

C Channelでは、「クリッパー」と呼ぶ約100人のモデルやタレントが、独自の動画を配信する。動画では、「カワイイ」「クール」といった切り口で、日本のファッションやフード、トラベル情報など紹介する。動画の長さは1本1分で、1つの店舗やスポットのみを紹介。位置情報とも連携する。お気に入りのクリッパーをフォローするといった機能も備える。ターゲットにするのは10代〜30代の女性。動画は日本語のほか、英語でも提供していく。

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Pinterestライクなクリッパーページ ※クリックで拡大

動画はクリッパーの自撮り、もしくはプロのカメラマンが撮影。そのあとプロが編集している。デモ動画を見せてもらったが、1分でも情報量はそれなりにあるし、クオリティは非常に高い。

もちろんネットにもともとあるようなストリーミングの垂れ流し動画だってライブ感があって面白いのだけれども、それとはちょっと方向性が違う。テレビ番組に近いクオリティだ。

このあたりの理由を森川氏に聞いたのだけれども、C Channelには現在タレントやカメラマン、動画編集者やエンジニアなど約10人のスタッフがおり、SPA(製造から小売りまでを統合・内製)モデルでコンテンツを制作しているため、安価かつ速いスピードで高品質の動画を提供できるのだそうだ。テレビや映画など、映像制作の“職人”的な経験者も多いという。

動画はベータ版のスタート時点で100本程度を用意。今後は毎日アップデートしていく予定だ。「映像のプロとITのプロが集まっている。ちょっとやそっとじゃマネできないと思う」(森川氏)

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動画のイメージ

 

10年かけてタイム・ワーナーのような会社に

「グローバルなメディアを作りたい。マスメディアはまだまだ変わっていないので、その変化の中で大きな流れを作ることに挑戦したい。日本のメディアが海外に成功した事例はないので、10年かけてタイムワーナーのような会社を作りたい」——森川氏はC Cannelについてこう語る。

では森川氏はどうしてLINEの代表退任後のチャレンジとして動画の事業を選んだのか? 森川氏は「起業するのであれば、『自分がやるべき領域』でやろうと思った」と説明する。

新卒で日本テレビ放送網に入社し、その後ソニーを経てLINEの代表となった森川氏は、放送とネット両方のメディアを経験してきた人物。若いスタートアップがメディア事業を立ち上げることについては、「しんどいと思う。資金も人も必要になるので、バイラル的、ワイドショー的なものになりがち」と分析する。だが世界を見てみるとメディアは変革の時期。「(テレビなどマスメディアの)最前線の人は、メディアの中でも問題意識を持っている」と語り、メディアビジネスへの注目度を説く。

また動画メディア事業について、「映像と技術が分からないとできない難易度の高い事業。映像だけだと職人の世界になるし、技術だけだとPVなどを意識しすぎる」と語る。

ではその両方を経験してきた森川氏のサービスがすぐに成功するのかというとそこは慎重で、「ビジネス的には相当厳しい。C Channelは、最初の1年程度は売上ゼロでもユーザー拡大に注力する」のだそう。

ECと広告でマネタイズ、海外展開も積極的に

C Channelでは今後、ECと広告でのマネタイズを進める。ECについては、C Channelブランドの商品を販売する予定。所属タレントによるプロモーションを行うほか、リアルイベントでの販売なども予定する。4月16日には東京・原宿にスタジオ兼オフィスをオープンする予定で、週末などはそこでクリッパーなどを呼んだイベントを積極的に展開していく。また出資するアソビシステムを通じて、所属するアーティストなどとも連携したイベントを検討しており「今後はきゃりーぱみゅぱみゅなどが参加するイベントもやっていきたい」(森川氏)とのことだった。

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スタジオを兼ねた原宿のオフィス

 

直近にはブランド広告を中心に展開する予定。「今まではナショナルスポンサーがつくようなブランド価値の高いような動画メディアがなかった。C ChannelのCはコミュニケーション、キュレーション。質の高いブランドを作りたい。そのためには『選ばれている感』や『憧れ』をどう出していくかが重要」(森川氏)。

また将来的には「アドテクの会社にしたい」(森川氏)とのこと。ユーザーの属性にあわせてリアルタイムに動画広告を編集・生成するシステムを開発中だそうだ。「YouTubeなどに乗らずに自分たちで(インフラまで)抱え込めばいろいろとできることがある。将来的にはそのエンジンを外部に提供することも検討する」(森川氏)。そのほか海外展開もすでに予定中。年内にはニューヨークにスタジオを作り、試験的に動画の制作を開始していく。

48歳での挑戦、「ビジネスはタイミングが大事」

ところで森川氏は今年48歳。この年齢での新しい挑戦を「遅い」と感じなかったのだろうか。

「ビジネスはタイミングが大事。早すぎても遅すぎてもダメ。IoTもITとハードウェアの組み合わせだが、ITと動画という違うモノを組み合わすようなビジネスは難易度が高い。『スケールさせること』と『いいものを作ること』の両方考えないといけない」(森川氏)

森川氏いわく、タイミングの重要性はLINEの時にもさんざん経験した話なんだとか。

「例えば検索(NAVER検索。2013年12月にサービス終了)もそう。どれだけすごい人が最高のものを作っても、タイミングが合わないとダメ。LINEも原型をたどればただのメッセンジャー。(先進性という意味では)大したものじゃない。そう考えていく中で、今のタイミングであれば『動画』だと思った。本当は教育なんかもやりたいが、まだ早い。技術があるか? 市場が熟したタイミングか? そしてビジネスモデルが見えるか? の3点が重要」(森川氏)

新しい産業を生み出す

前述の通り、映像と技術の組み合わせは難易度が高いという話があったので、森川氏に「若手のメディア系スタートアップを蹴散らしていくような感覚を受けた」と話したのだけれど、森川氏は笑いながらそれを否定して、「どちらかというと海外のメディアと戦っていきたい」と語る。

また森川氏は「やるなら正直ゲームのほうが儲かるし、(動画メディアは)あまり若いスタートアップがやらない領域だと思っている。だからこそ選んだ」とも説明。また、「秋元さん(秋元康氏)にも相談したら『応援する』と言ってもらった。メディアも変わるべきところにきている意識がある」とマスメディア側の見方も語ってくれた。

ちなみにLINE退任についても少し話を聞いたのだけれども、一昨年くらいから社内では話をしていたのだそう。

「LINEの次に何をやるか——この年齢になるといつ死ぬか分からないから、社会的に何かを残したいと思った。そこで考えた日本の課題は高齢化に伴う衰退。ではそこで大事なのは何かというと、新しい産業を生み出すこと。それが今は動画だった。そこを考えつつ、また別の軸で教育や投資などもできることをやっていきたい」(森川氏)。実はエンジェルとしても「結構多い数投資している」とのことだった。