Deep Science AIは、かつてDisrupt NY 2017のステージでデビューを果たした。そのライブデモでは、同社のコンピュータ映像認識システムが、監視カメラの映像の中の銃や覆面を発見する様子を見せた。店舗の管理者やセキュリティ会社に、犯罪の可能性を前もって警告することができるものだ。最近同社は、友好的な合併によってDefendryに買収された。それにより、その技術をより広く展開できることが期待されている。
この合併は、市場に参入しようとしている技術系企業と、的確な技術を求めているマーケティング系企業との結合の素晴らしい実例だ。
例えば、20の店舗を構えるチェーンがあって、各店舗に3台の監視カメラを備え付けているとしよう。1人の人間が一度に確実に監視できるモニターの数は、せいぜい8〜10台だ。その60台のカメラが意味のないものとならないためには、それなりの数の人員を雇わなければならない。そこで、Deep Science AIの中間レイヤーを採用すれば、拳銃が取り出された、といった怪しい状況を自動的に検出できるので、1人の人間で数百ものカメラの映像を監視できるようになる。そのデモは、優勝には至らなかったものの、素晴らしいものだった。
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「TechCrunchのBattlefieldに参加したことは、私たちの名前と能力を世間に知らしめるための機会としてとても役立ちました」と、Deep Tech AIの共同創立者、Sean Huver氏は、インタビューに答えて述べた。「私たちは、小売業を営む非常に大きな企業から、試験的な導入を持ちかけられました。しかし、これから先のことを考えると、そのためのインフラが整っていないことに、すぐに気付かされたのです」。
それはつまり、自動化されたセキュリティ要員の派遣、民間企業のサーバーやハードウェアとの連携、といったことだ。
「AI技術を中心にして、その周囲に監視機能を構築する必要があります。その逆ではだめなのです」と、Huver氏は言う。
一方で、DefendryのPat Sullivan氏は、モノのインターネットに接続されたデバイスのワークフローの自動化に取り組んでいた。 たとえば気温が一定の値を超えたらエアコンを調整するといったことから始めたのだ。しかしSullivan氏はある時点で、強盗の侵入や火災の発生など、深刻な問題を企業に通知することが必要だと気付いた。
「発生する可能性がある危機の中で、最も重大なものは、誰かが銃を持ち出して、何か悪事を働きそうな場合です」と、彼は言う。 「なぜ私たちのワークフローでは、そうした危機に対して、通知やタスクの実行など、即座に反応することができないのか、と考えました。そこで、武器や危険な状況を自動的に検出することを考えました。それがHuver氏の活動に目を向けさせたのです」。
そのステージで発表した段階では、彼の会社の技術は、まだプロトタイプだった。しかしチームメンバーによる実演のライブ映像によって、警告を発生することに成功したデモを見て、これは実際に使えると判断できた。Sullivan氏がそれまでに見つけた中にも、同じことができると宣伝している会社は何社もあったが、実際には違っていた。
「みんな、できると言うんです。しかし実際に自分で評価してみると、できないんです」と、彼は指摘する。「それでも、ほぼすべての会社が、私たちのために開発を引き受けたいとオファーしてきました。費用は100万ドルです。しかし、Deep Science AIに出会ったとき、彼らができると言ったことが実際にできるのを見て、私たちは興奮しました」。
彼の意見によれば、理想的には、進行中の犯罪を指摘するだけでなく、それが始まる前に検出できるようなシステムにしたい。たとえば、覆面をかぶった人物が、駐車場で銃を取り出すことを検出したら、入り口のドアをロックするといったことも可能にするもの。さらに、そうした人物が敷地に入っても、建物の入り口に到達する前に警官が出動できるようにしたい。また、もしそれが誤った判定だっと分かったら、何事もなかったかのように、入り口のロックを解除することもできるようなシステムだ。
実は、一般的なコンピュータによる画像認識のアルゴリズムには、一種の先入観も含まれている。しかし、幸いなことに、そのような性質は、このシステムでは問題にならない。たとえば、性別や、肌の色の違いによって、それ以外の要因によるものとは比べられないほどの誤動作、誤認識が発生することがある。そこで、Huver氏とSullivan氏に、こうした問題に対する彼らの取り組みを尋ねてみた。
それに対して、この技術は、人間の顔の分析や、その類のものには依存していない、という答えが返ってきたので安心した。
「私たちのシステムは、そうした問題とは無縁です。なぜなら、それとはまったく異なる対象に着目しているからです」と、Huver氏は説明する。「行動分析と動作分析を実行しています。私たちが必要としている範囲では、顔の分析が判断の正確さに影響することはありません」。
「私たちは、犯罪者やテロリストのリストを保存しておらず、カメラが捉えた顔をそのリストに照合するということもしていません」と、Sullivan氏は付け加えた。
両社は、技術をライセンス供与することも検討したが、最終的に1つの組織として仕事をするのがベストだと判断した。そして、ほんの2,3週間前に契約書にサインしたのだ。彼らは、財政的な部分については、詳細を明らかにしなかった。AIのスタートアップと、その評価に関する熱狂的な状況を考えれば、それもうなずける。
彼らは、セキュリティ関連のハードウェアを供給するAvinetとも協力している。同社は、この合併によって生まれた新しいDefendryチームにとって優先的なベンダーとなるだけでなく、このパートナーシップに、非公開の金額を投資してもいる。このBattlefiled参加者のサクセスストーリーについては、今後の進展も含めて詳しくフォローする予定だ。
画像クレジット:Defendry
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(翻訳:Fumihiko Shibata)