授業料は就職してからの出世払い、バーチャルコーディングスクールのLambda Schoolが約78億円を調達

テクノロジーの世界では、オンライン学習は過去数カ月の中で最もその特性を享受したものの1つだ。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのためで、人びとは家にいて、通常のルーチンから離れ、得た時間を使って知識を拡大してきた。よりシリアスな場合だと、キャリアを変えたい場合に次に何をすべきかを考えたり、失業してしまった自分に気がついた人もいる。

現在、そうした在宅で求職している人たちに対して、バーチャルなコンピュータサイエンス教育を行うビジネスを展開するスタートアップの1つが、その需要を活かすための大規模な資金調達ラウンドを発表した。

現在、データサイエンスならびにフルスタックウェブ開発を教えているLambda School(ラムダ・スクール)は、バーチャルに開催される9カ月(フルタイム)もしくは18カ月(パートタイム)のコンピューターサイエンスコースを3万ドル(約317万円)で提供しているが、受講者は最低年収5万ドル(約529万円)の職に就いてから収入に比例して受講料を支払えば良い仕組みだ。そのLambda SchoolがシリーズCで7400万ドル(約78億3000万円)を調達した。

投資資金は主にGigafundから投じられ、Tandem FundとLambda SchoolのインキュベーターであるY Combinatorもそれに加わった。Gigafundは元Founders Fundのパートナーたちによって、2017年(未訳記事)に設立されたVCで、当初はより多くの資金をSpaceX(スペースX)に提供していた。他の支援者にはGV、GGV、およびStripeも名を連ねている。Lambdaの事業開発責任者であるTommy Collison(トミー・コリソン)氏は、Stripeを共同創業したコリソン兄弟の2人の弟の方だ。

Lambda Schoolはその評価額を開示していないが、Ben Nelson(ベン・ネルソン)氏とLambdaを共同創業したCEOのAusten Allred(オースティン・オールレッド)氏によれば、2019年1月に3000万ドル(約31億7000万円)を調達したシリーズB(The New York Times記事)の際に、Lambdaが達成した1億5000万ドル(約158億7000万円)の評価額よりは高いことを認めた。また、IPOを計画しているからではなく、利益を上げられるようになることを目的としているために、これがLambdaにとって最後の資金調達になることを望んでいるとも述べた。オールレッド氏はまだ利益が出ていないことを認めた。

オールレッド氏は、スタートアップは急増するそのコースへの需要に対応するために、調達資金を使用する計画を立てると付け加えた。

「資金調達は行いましたが、現在私たち自身が処理できる以上の需要があるのです」と彼はいう。「それが良いことなのか、悪いことなのかはわかりません」。現在、約3000人の学生が在籍していて、全員が異なるタイムゾーン用にプログラムされたタイムテーブルに従ってライブ(オンデマンドではない)クラスを受講している。

今回の資金は、Lambda Schoolが提供するコンテンツの範囲を拡大するために、コンテンツそのものにも、またおそらくビジネスモデルの開発にも使用される。

良い動きの1つとして、米国時間8月20にLambda Schoolは、カリフォルニア州のBureau for Private Postsecondary Education(カリフォルニア州私立高等教育局、BPPE)から承認を受けた(Lambda Schoolリリース)ばかりだ。同社は、州内での教育を止めさせて(Business Insider記事)罰金を課そうとする当局との間で、長期にわたって揉めていた。

しかし、承認のための取り決めの一環として、少なくとも現時点では、Lambdaはもはやカリフォルニア州の受講生に対して所得分配契約(ISA)を提供していない。ISAは同社が遅延支払モデルを提供するための基礎であるため、オールレッド氏はLambdaはまだISAを利用できるようにするための取り組みを続けているが、暫定版としての「学生にやさしい代替手段」も検討していると語った(Twitter投稿)。

正確にいえば、教育局理事会による承認は学校としての認定と同じものではない。Lambda Schoolは学生がコースを修了した際に、公式な学位は提供しないが、修了証明書を提供する。現在、学位を授与できるようにするために認定を受ける計画はないと、オールレッド氏は述べている。

「規制の観点から見れば、認定を受けて学位を授与することもできますが、(理事会は)1年前にカリキュラムの変更を提出することを要求しているため、受講生にはそれを受け入れる余裕がありません。認定機関が要件を変更するまで、そのことは役に立ちません」と彼は述べ、さらに認定を受けている学校が常に自分たちより優れているとは限らないと付け加えた。

「完全に認定されていて、卒業率20%の学校が何千校もあります」と彼はいう。「そんな学校では良い成果を得ることはできません。私たちは別の方法で、受講生たちに自分の価値を証明する必要がありますが、通常それは成果を通して行われます」。

Lambda Schoolの資金はコースへの需要が急増している最中に得られたものかもしれないが、だからといって今がスタートアップにとって困難な時期ではないという意味ではない。

Lambda Schoolは2020年4月に、新型コロナウイルスの流行による市場の不確実さの中で、19名のスタッフを解雇し(未訳記事)役員報酬を15%削減した(また、通常スタートアップが資金調達を行う過程でしばしば発生する経理上の引き締めも、おそらく行われたことだろう)。現在の同社のチームは約150人体制で、その中に運営スタッフたサポートスタッフ、コースの教師、チームリーダー(基本的にはティーチングアシスタントたち)が含まれている。オールレッド氏によれば、現在のところ全員がリモートで働いているという。

しかし、4月より前の時点でも、Lambda Schoolはその遅延支払いビジネスモデルをどのように適用するかについて、多くの否定的な意見に直面していた。酷評する者は、収入に基づいて授業料を返済するやり方を、年季奉公の奴隷(Twitter投稿)とか搾取だと表現してきた。そして、このビジネスモデルは非現実的だと批判する人もいる。なぜなら同社は受講生たちが期待されるような給与を得ることができなかった場合のリスクを抱えているからだ。ISAモデルは給与額に基いて段階的に変化する返済を行うだけでなく、授業料の返済に対して24カ月という制限を与えている。このことが意味するのは、3万ドルの全額を返済する受講生もいれば、返済しない受講生もいるということだ。

オールレッド氏は支払いの不履行数を明らかにしなかったが、受講生の約15%が最初の月の終わりまでに脱落する、つまり彼らは一切何も支払わないと語った。

そうしたことを気にする人もいるだろうが、それはスタートアップの成長や、投資家の間の関心を抑えるには不十分のようだ。

「私たちはCEOとしてのオースティンに引きつけられました」とインタビューで語ったのは、Lambda Schoolの取締役会に参加する、GigafundのパートナーであるStephen Oskoui(スティーブン・オスコイ)氏だ。「Gigafundは、何十年にもわたって形作られていくであろう強みに、重点を置いています。そしてLambda Schoolの運営方法のモデルは、そこに多大な影響を与える可能性があるのです」。

関連記事:堅実ではあるが成長の遅いスタートアップはこの先どうなるか?

カテゴリー:EdTech

タグ:Lambda School

画像クレジット:Carlina Teteris/ Getty Images

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(翻訳:sako)

atama plusと駿河台学園が新大学入試共通テスト準拠模試に続き、高1・高2向けオンライン模試も実施へ

atama plusと駿河台学園は8月21日、2021年1月より、高校1・2年生向けオンライン模試「駿台atama+学力判定テスト」を隔月開催(年6回)実施することを明らかにした。

また、2021年に新導入される大学入試共通テスト準拠の「駿台atama+共通テスト模試」について、7月27日~8月9日に実施した第1回の受験者が約2万8000人になったこと明らかにした。両社によると、国内最大規模とオンライン模試になったとのこと。

今後も受験者のアンケート調査などによって改善を進めつつ、こちらも継続して年3回実施していく。さらに、2021年1月より、高1・2年生向けオンライン模試「駿台atama+学力判定テスト」を年に6回実施(隔月開催)することを決定しました。コロナ禍で模試の会場開催が難しい状況を踏まえ、「駿台atama+共通テスト模試」「駿台atama+学力判定テスト」のいずれも2021年度中はオンライン模試に限りすべて無料での実施となる。

今後の各テストの実施スケジュールは以下のとおり。

駿台atama+プレ共通テスト

受験科目:英語(リーディング、リスニング)、数学(数学Ⅰ、数学Ⅰ・数学A、数学Ⅱ、数学Ⅱ・数学B)、国語(現代文、古文、漢文)、理科(物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎、物理、化学、生物、地学)、地歴公民(世界史B、日本史B、地理B、現代社会、倫理、政治・経済、倫理、政治・経済)
2020年度実度施日:2020年12月12日〜12月17日(2021年度は年3回を予定)
対象学年:高3、既卒
受験方法:オンライン、会場

高1向け 駿台atama+学力判定テスト

受験科目:英数国(リスニングなし)
2020年度実度施日:2021年1月5〜1月18日、3月2日〜3月15日(2021年度は年6回を予定)
対象学年:高1 (3月は、新高1にも実施)
受験方法:オンライン

高2向け 駿台atama+学力判定テスト

受験科目:英数国(リスニングなし)
2020年度実度施日:2021年1月5~1月18日、3月2日~3月15日(2021年度は年6回を予定)
対象学年:高2
受験方法:オンライン

atama plusは、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて、生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成する学習システム「atama+」を開発中のスタートアップ。数学の正弦定理が苦手な生徒の場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて身体で覚えるのではなく、平方根や三角形の内角などの基礎的な要素を理解させることに重点を置くのが特徴だ。生徒の苦手分野を特定するためにさまざまな角度からatama+が出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成する。現在、駿河台学園運営の駿台予備学校のほか、城南進学研究社運営城南予備校、能力開発センターなどに導入されている。コロナ禍の中、予備校の教室での事業のほか、自宅でatama+の授業を受けられるウェブ版も提供中だ。

AI英会話アプリとオンライン英語コーチング運営のスピークバディが総額3億円を調達

AI英会話アプリとオンライン英語コーチング運営のスピークバディが総額3億円を調達

AI英会話アプリ「スピークバディ」(iOS版Android版)の開発・運営、オンライン英語コーチング「スパルタバディ」運営のスピークバディ(旧社名: appArray)は8月20日、シリーズBラウンドの第三者割当増資として、総額3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はグローバル・ブレイン、31VENTURES Global Innovation Fund。

2013年5月設立のスピークバディは、「マルチリンガルになれる時代を創る」をミッションに掲げ、最新のAI技術を活かした言語学習サービスを開発・提供。調達した資金は、スピークバディの機能・コンテンツの拡充およい新規ユーザー獲得、スパルタバディのコーチ増員・カリキュラム改善に利用する。

スピークバディは、音声認識、会話AI、デジタル音声等の技術を活用した英会話レッスンを行えるAI英会話アプリ。2020年8月現在、累計90万ダウンロードを突破。従来の人との対話ではなく、感情豊かなAIキャラクターと対話をしながら発音やフレーズ、単語、イディオムなどを学べるという。「第二言語習得理論」に基づいた学習モードで英会話の習得をサポートするほか、機械学習や自然言語処理、ディープラーニングによって、発音を採点する。

AI英会話アプリとオンライン英語コーチング運営のスピークバディが総額3億円を調達

スパルタバディは、TOEIC900点以上の厳選された専属英語のコーチのもと、12週間、1日1時間のトレーニングメソッドで英語学習をサポートするオンライン英語コーチングサービス。コーチがユーザーのレベルにあわせてカリキュラムを作成。完全オンライン化により、忙しい方でも隙間時間を活かしながらの学習が可能。

VR理科実験用ソフトでアジアに進出するLabster

理科の授業にZoomで参加したり、仮想現実(VR)で実験したり。特に後者は、新型コロナウイルス禍のおかげで、今ほど大きな可能性を感じたことはない。

Zoomを超える学習ソリューションの世界的需要は、まさにデンマーク・コペンハーゲンのスタートアップであるLabsterの急成長を促した。同社は、仮想現実を利用して個人がSTEM(科学、技術、工学、数学)教室向けのシナリオに参加できるよう手助けをする企業だ。3月以来、LabsterのVR製品の利用件数は15倍に増加した。

この前代未聞の状況を受け、Labsterは、まさに今勢いを増すエデュテック系スタートアップの仲間に交じり、900万ドル(約9億6000万円)のエクイティー・ベンチャー投資を獲得した。このラウンドを主導したのはGGV Capital。これに、以前からの投資会社であるOwl Ventures、Balderton、Northzoneが参加している。

「新型コロナウイルスがLabsterの認知度を大きく高め、うまくいかないことが多いZoomのみの学習とは対照的な、オンライン授業の良い面を教師たちに提示できました」と、CEOで共同創設者のMichael Jensen(ミハエル・イェンセン)氏はTechCrunchに話した。

Labsterは、人が進める授業をサポート・強化するeラーニングソリューションを販売している。教育機関は同社とサブスクリプション契約を交わすと、そのコースに応じてレベルの異なる仮想実験室が使えるようになる。行える実験は、細菌の増殖と分離から、太陽系外惑星の生物多様性の探査までと、大変に幅広いことが想像できる。それぞれの実験では、シミュレーションに加え、3Dアニメーションによる概念説明、シミュレーションのリプレイ、テスト問題の出題、仮想学習アシスタントなどがLabsterから提供される。

画像クレジット:Labster

Labsterの顧客の大部分は私立学校だが、このコロナ禍の最中に、同社はカリフォルニア州のコミュニティー・カレッジとの契約を成立させた。この提携により、年間ライセンスと提携関係による大幅な成長に支えられたLabsterのユーザーベースに「さらに210万人の学生が加わることになった」とイェンセン氏は言う。

GGVの支援を得て、Labsterはアジアでの地位の強化も考えている。新しい市場に参入する際には、通常は、その市場がどのように機能し、考え、そして最も重要なこととして、どう学ぶかを熟知した現地の戦略的投資家が必要になる。アジア市場は、北アメリカ市場と比べて個人消費が大きいため、エドテック企業にとって大変に儲けの多いところだ。

上海で活動するGGVのパートナーであるJenny Lee(ジェニー・リー)氏が、Labsterの取締役会に加わった。リー氏は、自動化、仮想化、AIベースの教師が、K-12(幼稚園から高校3年生まで)市場と、いたるところで質の高い教師が不足している問題とのギャップをどう埋めるかに関心を示している。

イェンセン氏はまた、アジアのモバイル利用率が北米やヨーロッパよりも高いことから、モバイル対応の充実化にも投資を使うと話している。

今回の投資は、2019年4月にクローズした前回の210万ドル(約2億2000万円)のシリーズB投資から見るとかなり小規模だ。しかも、数百億円規模の投資を決めたMasterClass(マスタークラス)、Coursera(コーセラ)、また報道によるとUdemy(ユーデミー)の勢いとは、明らかな差がある。

この点についてTechCrunchでは「なぜそう控えめな金額のか?」と率直に聞いてみた。

「この900万ドルの資金は、GVVを呼び込む戦略的成長のための資金だったからだ」とイェンセン氏は話した。なお、Labsterの既存の投資家も全員がこのラウンドに参加している。2012年の創業以来、同社は資金調達には比較的控えめだった。今に至るまで、今回のラウンドを含め、Labsterはベンチャー投資として4000万ドル(約43億円)を調達している。

そのためこの新規の資金は、守りの投資ではなく、攻めの投資だとイェンセン氏は言う。世界のドアを開くための戦略的資金だ。

新型コロナ禍で、予想よりも少額のラウンドを決めたエドテック企業は、他にもある。ユニコーン企業であるDuolingo(デュオリンゴ)は、アジア進出のために小さな1000万ドル(約10億円)という調達を行い、国際市場への拡大のための投資家としてGeneral Atlantic(ジェネラル・アトランティック)を招き入れた。

それでもDuolingoのキャッシュフローは黒字だ。Labsterが利益を出しているかどうかについてイェンセン氏は触れなかったが、それが同社の評価額を1億ドル(約106億円)に引き上げた「驚くほど上向きのラウンド」だったことは明言していた。

「私たちの第一目標は、今後も変わらず、利益よりも急速成長とグローバルインパクトです」とTechCrunchに話した。

画像クレジット:Benjamin Torode / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Preferred Networksが教育事業第2弾、子ども向けタイピング練習Webアプリのベータ版

Preferred Networksが教育事業第2弾、子ども向けタイピング練習Webアプリのベータ版
Preferred Networksは8月12日、子ども向けのタイピング練習教材「Playgram Typing」(プレイグラム・タイピング)のベータ版をWebアプリとして無料公開した。

PFNは、コンピュータサイエンス教育事業の第1弾であるプログラミング教材Playgramを2020年7月に発表。 今回はそれに続き、コンピュータを知的創造のツールとして使いこなすための基礎となるタイピング能力を身につける教材、Playgram Typingを提供する。
Playgram Typingでは、PCのキーボードを使って五十音から段階的に日本語のローマ字入力方法を学び、苦手なキーを特に重点的に反復練習できる。ビジュアル表示された指のホームポジションにならって音声読み上げにも対応した練習メニューを進めていくことで、タイピングを始める児童や、アルファベットを勉強中の未就学児でも、タイピングの正しい指使い、正確性、スピードを身につけられるよう設計している。
Preferred Networksが教育事業第2弾、子ども向けタイピング練習Webアプリのベータ版
ローマ字入力を一通り覚えたあとは、スピードと正確性を鍛える「うでだめしモード」を用意。ひとりひとりの学習履歴から苦手なキーを自動選出して重点的に出題することで、効率的に練習できるという。
Preferred Networksが教育事業第2弾、子ども向けタイピング練習Webアプリのベータ版
アルファベットを知らなくても音声読み上げとふりがな表示により、アルファベットの学習から始めることが可能。五十音表から段階的に日本語のローマ字入力を学び、語句のタイピングに進んでいく。
Preferred Networksが教育事業第2弾、子ども向けタイピング練習Webアプリのベータ版
子どもたちがPlaygram Typingでローマ字入力に慣れることで、日本語だけでなく英語やプログラミング言語を入力するための基礎が身につき、タイピングでつまずくことなく、文書作成やプログラミングにコンピューターを使えるようになるとしている。

 

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Minecraft: Education EditionがChromebookに対応

米国時間8月10日、Microsoft(マイクロソフト)はMinecraft: Education EditionがChromebookでも利用できるようになったことを発表した。

ただし、通常のマインクラフトのゲームがChromebookにも対応したと期待している人にとっては、残念ながらおそらく期待はずれだ。Education EditionにはMicrosoft 365 EducationのA3またはA5プランが必要だ。さらにゲームというよりは教育用ツールで、数学、科学、言語、歴史、美術に特化したレッスンが用意されている。

マイクロソフトは、Chromebookを導入している教育関係者にマインクラフトを使ってもらうためにGoogle(グーグル)の教育チームと連携したという。

Chromebook版では、クロスプラットフォームのマルチプレイヤー対応も含め、Windows、Mac、iOSのMinecraft: Education Editionと同じ機能を提供する。現時点では生徒のログインにMicrosoftアカウントが必要だが、マイクロソフトによれば「近い将来」にGoogleアカウントでのログインに対応するという。

画像クレジット:Microsoft

今回の発表の中でマイクロソフトは次のように説明している。「Minecraft: Education Editionはゲームベースの学習プラットフォームで、コーディングや問題解決といった21世紀型の重要なスキルの構築に役立つ。標準に準拠した数百もの無料のレッスン、デザインチャレンジ、STEMカリキュラムをゲーム内とオンラインで利用でき、先生向けにはオリジナルの学習アクティビティを設計するための柔軟なテンプレートを提供している。学びの場でのつながりがとりわけ大切になっているこの時期に、マインクラフトは共同作業と生徒主導の有意義な学びを支援する」。

該当するライセンスを所有しているユーザーは、Google PlayストアからMinecraft: Education Editionを利用できる。ログインにOffice 365 Educationのアカウントが必要であると明記されているにもかかわらず、通常のマインクラフトと勘違いしてがっかりしたユーザーが星1つのレビューをたくさん書き込んでいる。ただし条件を満たすChromebookを持っていれば、Chrome OS上でAndroid版のマインクラフトをプレイすることはできる。

関連記事:Minecraft Earthが北米その他の地域で正式開始

画像クレジット:Gabe Ginsberg/FilmMagic / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

クリエイティブなスキルに焦点を移したオンライン学習Skillshareが70億円調達

Skillshare(スキルシェア)のCEOであるMatt Cooper(マット・クーパー)氏は、新型コロナウイルスの感染拡大により大勢の人たちが家に留まり、娯楽や勉強のためにオンライン学習を始めるようになる以前から、2020年は急成長の年だったと語る。

2017年にCEOに就任したクーパー氏が私に話したところによると、昨年、同社は「持ち前の強みに焦点を当てた」ことが2020円1月の「ブランド再構築」につながり、創造性を主題としたコンテンツを充実させることができたという。同時に、同社は創造性の定義を大きく拡張し、クラスを、アニメーション、デザイン、イラスト、写真、映画制作、執筆といったカテゴリーに分割したと、クーパー氏は教えてくれた。

これはボブ・ロス(Wikipedia)とは違います」と彼は言う。「私もボブ・ロスは大好きですが、あれは創造性のごく一部の話です。創造性とは、アート、デザイン、ジャーナリズム、文芸など、もっといろいろな形で発揮できるものです。料理であっても、クラフトであってもいいのです」。

またクーパー氏は、新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカ全土に社会的距離の確保が要請されるようになった3月中旬には、すでに毎日の利用回数が大幅に増加していたとも話している。これはとくに、ユーザーが講師となるクラスと並行して同社が提供している、Skillshare Originals(スキルシェア・オリジナルズ)と呼ばれるより専門的なクラスに、大きな刺激をもたらした。ちなみにオリジナルズでは、イラストレーターのVicto Ngai(倪傳婧、ビクト・ンガイ)による色彩上級クラス、ビジュアルアーティストShantell Martin(シャンテル・マーティン)による「自分の創造的な声を発見する」コース、ジャーナリストSusan Orlean(スーザン・オーリアン)による創造的なノンフィクションのクラスなどがある。

もちろん、クーパー氏が言うように、「多くの人が家で時間を持てあまし、建設的に時間を使う方法を探すようになった」パンデミックの影響もある。実際、ブランド再構築以来、新規登録者数は3倍に跳ね上がり、既存の会員が1日に見るレッスンの数も3倍になったと同社は話している。

Skillshareではまた、「機材を詰めた大きな箱」を講師に送り、遠隔で撮影の監督を行っている。これが、オリジナルズ制作チームの「まったく新しい世界を開いた」とクーパー氏は言う。「カメラマンを派遣して撮影しようとまでは思わなかった、世界のいろいろな部分が見えるようになったから」だ。

Skillshareには、現在、登録会員が1200人、講師が8000人、クラスは3万本ある。すべてのクラスは年会費99ドル(約1万円)または月会費19ドル(約2000円)で受講できる。同社はまた、OMERS Growth Equity主導の新規ラウンド6600万ドル(約70億円)を調達したことを発表した。これに伴い、OMERS Growth Equityの業務執行取締役Saar Pikar(サー・パイカー)氏が取締役会に加わった。これまでの投資会社であるUnion Square Ventures、Amasia、Burda Principal Investments、Spero Venturesもラウンドに参加している。

「Skillshareは、創造的業界のプロにも、日常の創造的なホビイストにも、同等にその需要に応えています。それが、オンライン学習市場に、極めて革新的な価値命題を与えました」とパイカー氏は声明の中で話している。「私たちは、マット・クーパー氏と彼のチームが国際的なリーチを拡大できるよう、さらにSkillshareがオンライ学習への独自のアプローチの潜在力を存分に引き出す助けとなれるよう、Skillshareと、そして仲間の投資家たちとの関係をさらに深めるたいと楽しみにしています」。

同社は前回、4200万ドル(約44億6000万円)を調達しているが、2020年前半のキャッシュフローは黒字であり、成長のための新たなラウンドで資金調達ができたのはそのためだと、クーパー氏は言い足している。この投資は、とくにSkillshareの企業向け製品であるTeamsに向けられる。GM Financial、Vice(バイス)、AWS、Lululemon、American Crafts and Benefitといった顧客企業は、従業員特典としてSkillshareを提供している。

クーパー氏は、世界展開も考えている。新規登録会員の3分の2はアメリカ国外から参加しているように思われるのだが、Skillshareが急成長している市場にインドがある。「地元語のコンテンツも、地元語を話す講師も」ないにも関わらずだ。当面は英語コンテンツ制作に集中するとクーパー氏は決めているが、世界の人たちにも見てもらえるうようにするには、Skillshareはいくつかの課題を解決する必要があるという。異なる通貨での支払いや、異なる言語への対応などだ。

「もう少しだけ簡単に、世界のユーザーが私たちのプラットフォームの価値を引き出せるようになれば、国際市場での劇的な成長が期待できます」と彼は話していた。
画像クレジット:Westend61 / Getty Images
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(翻訳:金井哲夫)

クリエイティブなスキルに焦点を移したオンライン学習Skillshareが70億円調達

Skillshare(スキルシェア)のCEOであるMatt Cooper(マット・クーパー)氏は、新型コロナウイルスの感染拡大により大勢の人たちが家に留まり、娯楽や勉強のためにオンライン学習を始めるようになる以前から、2020年は急成長の年だったと語る。

2017年にCEOに就任したクーパー氏が私に話したところによると、昨年、同社は「持ち前の強みに焦点を当てた」ことが2020円1月の「ブランド再構築」につながり、創造性を主題としたコンテンツを充実させることができたという。同時に、同社は創造性の定義を大きく拡張し、クラスを、アニメーション、デザイン、イラスト、写真、映画制作、執筆といったカテゴリーに分割したと、クーパー氏は教えてくれた。

これはボブ・ロス(Wikipedia)とは違います」と彼は言う。「私もボブ・ロスは大好きですが、あれは創造性のごく一部の話です。創造性とは、アート、デザイン、ジャーナリズム、文芸など、もっといろいろな形で発揮できるものです。料理であっても、クラフトであってもいいのです」。

またクーパー氏は、新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカ全土に社会的距離の確保が要請されるようになった3月中旬には、すでに毎日の利用回数が大幅に増加していたとも話している。これはとくに、ユーザーが講師となるクラスと並行して同社が提供している、Skillshare Originals(スキルシェア・オリジナルズ)と呼ばれるより専門的なクラスに、大きな刺激をもたらした。ちなみにオリジナルズでは、イラストレーターのVicto Ngai(倪傳婧、ビクト・ンガイ)による色彩上級クラス、ビジュアルアーティストShantell Martin(シャンテル・マーティン)による「自分の創造的な声を発見する」コース、ジャーナリストSusan Orlean(スーザン・オーリアン)による創造的なノンフィクションのクラスなどがある。

もちろん、クーパー氏が言うように、「多くの人が家で時間を持てあまし、建設的に時間を使う方法を探すようになった」パンデミックの影響もある。実際、ブランド再構築以来、新規登録者数は3倍に跳ね上がり、既存の会員が1日に見るレッスンの数も3倍になったと同社は話している。

Skillshareではまた、「機材を詰めた大きな箱」を講師に送り、遠隔で撮影の監督を行っている。これが、オリジナルズ制作チームの「まったく新しい世界を開いた」とクーパー氏は言う。「カメラマンを派遣して撮影しようとまでは思わなかった、世界のいろいろな部分が見えるようになったから」だ。

Skillshareには、現在、登録会員が1200人、講師が8000人、クラスは3万本ある。すべてのクラスは年会費99ドル(約1万円)または月会費19ドル(約2000円)で受講できる。同社はまた、OMERS Growth Equity主導の新規ラウンド6600万ドル(約70億円)を調達したことを発表した。これに伴い、OMERS Growth Equityの業務執行取締役Saar Pikar(サー・パイカー)氏が取締役会に加わった。これまでの投資会社であるUnion Square Ventures、Amasia、Burda Principal Investments、Spero Venturesもラウンドに参加している。

「Skillshareは、創造的業界のプロにも、日常の創造的なホビイストにも、同等にその需要に応えています。それが、オンライン学習市場に、極めて革新的な価値命題を与えました」とパイカー氏は声明の中で話している。「私たちは、マット・クーパー氏と彼のチームが国際的なリーチを拡大できるよう、さらにSkillshareがオンライ学習への独自のアプローチの潜在力を存分に引き出す助けとなれるよう、Skillshareと、そして仲間の投資家たちとの関係をさらに深めるたいと楽しみにしています」。

同社は前回、4200万ドル(約44億6000万円)を調達しているが、2020年前半のキャッシュフローは黒字であり、成長のための新たなラウンドで資金調達ができたのはそのためだと、クーパー氏は言い足している。この投資は、とくにSkillshareの企業向け製品であるTeamsに向けられる。GM Financial、Vice(バイス)、AWS、Lululemon、American Crafts and Benefitといった顧客企業は、従業員特典としてSkillshareを提供している。

クーパー氏は、世界展開も考えている。新規登録会員の3分の2はアメリカ国外から参加しているように思われるのだが、Skillshareが急成長している市場にインドがある。「地元語のコンテンツも、地元語を話す講師も」ないにも関わらずだ。当面は英語コンテンツ制作に集中するとクーパー氏は決めているが、世界の人たちにも見てもらえるうようにするには、Skillshareはいくつかの課題を解決する必要があるという。異なる通貨での支払いや、異なる言語への対応などだ。

「もう少しだけ簡単に、世界のユーザーが私たちのプラットフォームの価値を引き出せるようになれば、国際市場での劇的な成長が期待できます」と彼は話していた。
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(翻訳:金井哲夫)

グーグルがインド・マハラシュトラ州で2300万人の生徒と教師のためのデジタル学習プラットホームを展開

Google(グーグル)の米国時間8月6日の発表によると、同社はインド最大の州のひとつをパートナーとして、同州の数千万人におよぶ児童生徒と教師にデジタルクラスルームを提供していく。これにより同社は世界で2番目に大きいインターネット市場で、教育をさらに強力にプッシュしていく意向だ。

同社は最近、インドに100億ドルを投資すると発表したが、今回パートナーしたのはインド西部のマハラシュトラ州政府で、そこでは2300万の児童生徒と教師がグーグルの教育サービスに無料でアクセスする。

米国時間8月6日の発表の前にマハラシュトラ州政府は、教師たちへのアンケート調査により、デジタルクラスルームへの関心を測っていた。グーグルによると、15万人あまりの教師たちが48時間足らずでこの事業にサインアップした。

マハラシュトラ州はインドの中でも新型コロナウイルスの被害が大きく、確認された感染者は46万人を超えている。同州はインドの他の州と並んで3月終わりに国のロックダウン命令に従ったが、それにより国中の学校と公共施設が閉鎖した。

マハラシュトラ州の首相Uddhav Thackeray(ウッダブ・サッカレー)氏は「我々が全員が教育の未来を心配している。しかしパンデミックのおかげで答えに一歩近づいたようだ」と述べている。

州の教育相であるVarsha Gaikwad(ヴァルシャ・ガイクワッド)氏は「グーグルとのパートナーシップにより約19万校の児童生徒にテクノロジーによるソリューションを提供できる」と説明している。

同氏は「オンラインのリソースと、プラットホームと帯域と技術を有効利用して、マハラシュトラ州を、教育ではいちばん進んでいる州にしたい。そのためにインターネットの力を利用して大量の児童生徒たちに教育を届け、教育の格差を埋めたい」と続ける。

同国ではパンデミックでいろんな部門が麻痺しているが、学習のデジタル化に力を入れているスタートアップの育成には熱心だ。Byjuや、Facebookが支援するUnacademy、Vedantu、そしてTopprなどは、今年の3月以来数千万の新たな児童生徒学生を受け入れている。

グーグルは児童生徒と教師に幅広いサービスを提供する。それらは、G Suite for Educationや、小テストと試験を行うためのGoogle Forms、Google Meetによるビデオ会議、そして宿題の作成管理と評価を行うGoogle Classroomなどだ。これにより、児童生徒とのダイレクトなコミュニケーションもできる。

同社はさらに、マハラシュトラ州で利用者の多いマラーティー語によるTeach from Anywhereを、教師たちのために作った。

Google Indiaのトップで副社長のSanjay Gupta(サンジャイ・グプタ)氏はGoolgeGoogleブログで「教師と学校には、新しい世代の未来を形作る大きな責任がある。多くの教師がさらに多くの児童生徒たちに、彼らが学習の道にしっかり踏みとどまれるようにするデジタルツールを、今だけでなく今後にわたっても継続して提供できることは、私たちの大きな栄誉だ」と書いている。

グーグルはインドにおける教育者との協力を、このところ急いでいる。先月同社は、インドの学校監督機関、中等教育中央委員会をパートナーにして、全インドの2万2000校の中学高校の教師に同社の教育関連サービスを提供していくことになった。

また同社の慈善部門であるGoogle.orgは、恵まれない子どもたちのための教育財団のKaivalya Education Foundation(カイヴァッリャ教育財団、KEF)に100万ドル(約1億560万円)の寄付をした。その用途は、この財団が今後組むパートナーたちで決まってくる。

グーグルのグローバルなライバルFacebookも、やはり中等教育中央委員会をパートナーとして先月、デジタルの安全性とオンラインの幸福、および児童生徒と教育者のための拡張現実に関する、同委員会公認のカリキュラムを立ち上げた。

画像クレジット: ARUN SANKAR/AFP/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

150ヵ国で利用される思考力育成アプリ「シンクシンク」開発のワンダーラボが小学館から2.5億円の資金調達

ワンダーラボ シンクシンク

子ども向けアプリ・タブレット教材開発・運営のワンダーラボ(旧社名: 花まるラボ)は、第三者割当増資として2.5億円の資金調達を発表した。引受先は小学館。

今回調達する資金は、主にプロダクトの開発体制の整備や人材採用、プロモーションに投資し、成長を加速させる。また小学館とワンダーラボは、これまでも子ども向け教材の監修やイベント共催などの取り組みを続けており、今回の調達を機に協業体制を強化するとしている。

ワンダーラボは、STEAM教育領域の子ども向けデジタル教材の開発・運営を手がけるEdTech(教育テック)分野のスタートアップ。2017年リリースの思考力育成アプリ「シンクシンク(Think!Think!)」(iOS版Android版)は、抽象思考の基礎となる思考センスを育てる問題を多数収録する形で世界中に配信しており、150ヵ国のべ120万人に利用されているという。

日本e-Learning大賞 Edtech特別賞受賞、海外でGoogle Play Awards 2017/2019 TOP5に選出。2018年11月には、世界最大の教育ベンチャーのコンペ「Global EdTech Startup Awards」(GESA)の日本予選にて最優秀賞を受賞した。

また、STEAM教育領域の新しい通信教育「ワンダーボックス」も2020年4月よりスタートしている。

EdTech分野では、マシンラーニングなどを用いた学習の効率化・最適化にスポットライトがあてられているが、同社は、「子どもの『知的なわくわく』を引き出す」ことにこそ技術や知見を活用するとしている。

新たな学校

編集部注:本稿を執筆したJoe Apprendi(ジョー・アプレンディ)氏はRevel Partners(レベルパートナーズ)の創設者兼ジェネラル・パートナーである。

COVID-19により高等教育に変化が起きている。しかし、これはCOVID-19に対処するための大学による単なる「遠隔授業への移行」にとどまらない。今起こっている変化は全体的、かつ変革的で、長い間待たれていたことである。これらの変化は採用、訓練、そして最終的には雇用者が企業のための人材をどう見い出すかにも及ぶだろう。この変化は高等教育の性質そのものをも変容させると考えられる。

職を得ようとする場合、COVID-19以前には、伝統的な教育ルートを経るのが普通だった。高校から大学へ、そして時には大学院へと進む。これらのほとんどがキャンパス環境で行われ、そこで学生は自分が誰であるかだけでなく、何をしたいのか、誰としたいのかを模索した。このルートの存在により、企業は特定の技能や文化的適合性など、将来の従業員となるべき人物にどのように手をかけ訓練するかを決定する確立された教育モデルに対応する必要があり、すべてを適正な人材を判断する取り組みの中で行う必要があった。

このモデルは年月の経過とともに肥大化し、それを支える教育業界は、2030年までに世界で10兆ドル(約1070兆円)規模になると予測されているが、この10年間でテクノロジー主導の変化に対しますます脆弱になっている。この変化が古い体制の教育業界を小売から物流、不動産に至るまで全般的に混乱させているのだ。

ニューヨーク大学スターンビジネススクールでマーケティングの教授を務めるScott Galloway(スコット・ギャロウェイ)氏は5月下旬CNNに対し「大学は報いを受けています」と語った。「私たちは1400%の値上げをしてきましたが、イノベーションを見れば…今の教室に入ってみればおわかりいただけると思いますが、その見た目や雰囲気、印象は40年前と大きく変化していないのです」。

ギャロウェイ氏はさらに4月に投稿したブログ記事の中で、COVID-19により大学間で淘汰が起こると予測した。小売業界における撤退は2019年には9500件であったが、2020年には1万5000件以上と大幅に増加した。これと同様、コロナウイルスの影響から立ち直ることができない大学が、数百とはいかないまでも数十の規模で出る可能性が高い。彼はまた過去数十年で初めて四年制大学への願書数が減少し始めその傾向は続くだろうと予測した。

ライブビデオコースマーケットプレイスのJolt Inc.(ジョルト)の共同創設者兼CEOであるRoei Deutsch(ロエイ・ドイチュ)氏はポッドキャスト「Coffee Break」での講演中に「高等教育世界への打撃は必然的に起こりました」と語った。「学生が得るものと支払うコストが釣り合わない、高等教育バブルが起きています。コロナウイルス禍でこのバブルの崩壊が始まっているのです」。

ウイルスは高等教育に必要とされていた変革を早める可能性がある一方、従来の高等教育に代わる別の選択肢を生み出すスタートアップにもチャンスを生み出すだろう。ただし、多くの他の分野でそうであるように、主にグローバル企業内でCOVID-19は急進的な変化を引き起こす力としてよりも、舞台裏で既に起きていた動きを加速する形で作用している。

過去10年に渡り大企業に様々なテクノロジーが急速に普及するにつれ、企業の人材開発(L&D)の重要性が増してきている。グローバル企業のeラーニング市場は、2022年までに年間平均13%の成長率で300億ドル(約3兆2000億円)まで成長すると推定されている。この成長の大部分は、実際に必要な技能と労働者の能力とを一致させる重要性が増したことによるものである。

人材開発で企業に主に利用されている製品は、学習体験プラットフォーム(LXP)や学習管理システム (LMS)である。これらは、従業員の学習活動を監視、追跡、管理するのに使用され、通常は、デジタル化されたオンラインカタログの形でサービスが提供される。学習用ソフトウェアは主に、よりパーソナライズされた学習体験を提供し、様々なソースから学習内容を組み合わせることでユーザーが新しい学習機会を発見できるように設計されている。またAIを使ってデスクトップアプリ、モバイル学習アプリなど、複数のデジタルタッチポイントに学習コンテンツを推奨および配信している。

重要なのは、まさにこれらのオンライン教育ツールが、COVID-19への対処法を探す多くの大学に採用され始めていることである。この事実がこれらのアプリ、ツール、プラットフォームへの考え方を変革するのに役立つだろう。これらのツールを既に採用していた企業は今、その可能性を再考しているところである。この先どうなるかを見通すのに多くの想像力は必要ない。

組織内の新しい、あるいは拡大された役割にふさわしい人材を継続的に育てるために訓練学校やLMSシステムを構築する代わりに、企業は今、採用プロセス(ファネル)の初期段階、つまり高等教育が始まる時点にターゲットを絞っている。COVID-19により大学生活が変容したことで、企業がそのファネルへどのように参加するかを再評価する可能性が開かれたのだ。グローバル企業が大学に匹敵する体験を提供する可能性が突然現実的なものになっている。

これらの既存の教育およびトレーニングプラットフォームを活用して、企業に特化したカリキュラムを作成することを想像してみよう。大学の閉鎖で職を離れた教授たちが、ギグワーク的な形でオンラインで授業を行うことができるだろう。彼らは企業のニーズに特化したカリキュラムをデザインする。

これらの企業主導の新たなオンライン大学システムは人々を学業成績や文化的調和の観点から精査し、誰を教育するか、そして究極的には誰を採用するかを決定する。そして、そのすべてで学生を直接彼ら自身のシステムで受け入れる。現在もこうした大学システムは存在している。例えば米国のNaval Academy (海軍士官学校)のようなシステムである。このシステムでは授業料が無料であるかわりに、学生は卒業後一定期間海軍で勤務する義務を負う。大学とグローバル企業が融合した一種の営利型ハイブリッドモデルが現れるかもしれないと考える人もいる。

ギャロウェイ氏は提案する。「MITとGoogleが共同でSTEMの2年間の学位を提供するということもありえます。10万人の学生が授業料10万ドル(約1070万円)(特別価格である)でMIT/Googleのコースを取れば、年間50億ドル(約5300億円)(2年のプログラムである)がもたらされます… これはMITとGoogleに匹敵するマージンです。Bocconi/Apple、Carnegie Mellon/Amazon、UCLA/Netflix、Berkeley/Microsoftなど…いろいろな組み合わせが考えられます」。

抜本的変革への準備が整っているのは高等教育だけではない。新型コロナウイルスの大流行でその全体規模が21%低減すると予測されている米国の人材派遣およびリクルート市場は、 運営方法の面で変化する可能性がある。企業はこれまでのように大学で採用活動を行ったり、これらの旧式なシステムから新入社員を特定するために必要なツールやプラットフォーム、そしてリソースを使用する必要がなくなるだろう。こうして彼らは自社のニーズを完璧に満たすよう教育された社員へのダイレクトなファネルを持つことになるのだ。これにより企業は社内で新たな利益を生み出すことができるだけでなく、費用のかさむ非効率的な社員探しのプロセス(今日の採用モデルのほとんどがそうである)を回避することができる。費用の節減もわずかなものではない。

米国労働省によると、採用に失敗した場合にかかるコストは、その従業員の初年度の収入の最大30%に達する可能性がある。Undercover Recruiter(アンダーカバー・リクルーター)は採用に失敗した場合、企業は、採用、報酬、保持に関連した費用24万ドル(約2570万円)を支払うことになると見ている。CareerBuilder(キャリア・ビルダー)によると、ある調査で、不適切な人物を採用したと認めた企業の74%が個々の採用の失敗に対し平均1万4900ドル(約1600万円)の損失を出していることが明らかになった。

また学生側には付随的なメリットがある。高等教育にかかる費用はここ何十年にも渡って急騰しており、学生の負債は許容できないレベルに達しているにもかかわらず、学位をとったことで得られる収入は減少しているのだ。転換点は間近に迫っている:ある研究では、卒業生数が増えるにつれて、大学の学位の価値が下がっていることが示された。サハラ以南のアフリカ (ここでは学位は比較的希少である) では、学位を取ることで収入が20%増加する。スカンジナビア (成人の40%が学位を持つ) では、このパーセンテージは9%まで低下する。

これらの新たな企業固有の大学システムであれば、教育へ投じたすべての資金が実際に活かされ目に見えるROIが得られる。不安定な経済状況においては、卒業と同時によい収入が得られる特定の仕事が保証されていることは、極めて重要である。大学の授業料が法外なものになるに連れ、大学側はその額を正当化するのが難しくなるだろう。Google、Twitter、Microsoftへ直接人材を送り込むオンライン教育システムが併存する場合は特にである。そうしたオンライン教育が、多くの学生にとって魅力的であることが証明される可能性が高い。

COVID-19の高等教育に関連した二次的影響はまだはっきりしていないが、こうではないかと想定される状況が現れ始めている。誰を対象にいつどのように採用活動を行うのか、変革が必要な可能性がある。企業からのデジタル教育やデジタルトレーニングの要求が着実に増加する中、これらの要求をサポートしてきた急成長中の業界が、一夜にして変化を遂げ飛躍的に成長する可能性がある。学生は負債を半額に抑え、雇用に向けた明確な道筋を持てるようになる。最終的にどうなるにしても、待ち構えている変化は大学側にとって決して愉快なものではない。

「私は、大学は大変な危険にさらされており、COVID-19による打撃を受けると考えています」とギャロウェイ氏はCNNに対し語った。「10万ドル(約1070万円)を請求し90ポイント以上のマージンを取っている業界が他にあるか考えてみてください。希少な癌の治療薬を扱う製薬会社以外に、それほどのマージンが得られる製品が他にあるでしょうか?率直に言って、私たちはこれをやってきました」。

ある種の変化が起こるのは確実と思われるが、教育におけるパラダイムがシフトすることが良いことかどうかはそれほど確実ではない。ソフトウェアやテクノロジーによって破壊された業界の多くと同じく、テクノロジーによって市場効率が促進される中、莫大な価値が何百万という消費者に流れ込むだろう。消滅、あるいは変容する仕事がある一方、物事を進めていくための新しいやり方に適った仕事が新たに生み出されるだろう。より多くの富と力がFAANGの元に流れ込む状況で、主要なグローバル企業およびテクノロジー企業はこの変革から最大の利益を得る立場にある。

キャンパスベースの教養教育の特徴である知的発見、文化的評価、個人の成長といったものが、狭く定義された職業技能や企業効率の追求に置き換わるに連れ、高等教育における優先順位も再形成される。グローバル企業の高等教育への進出は、我々の人々に対する教育、採用、訓練の仕方を変えるだけでなく、高等教育についての根本的な捉え方や評価の仕方も変えることになるだろう。

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カテゴリー:EdTech

タグ:コラム 教育

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(翻訳:Dragonfly)

高3・既卒生対象のオンライン模試「駿台atama+共通テスト模試」申込数が4万人を突破

atama plus駿河台学園は7月22日、全国の高3・既卒生対象のオンライン模試「駿台atama+共通テスト模試」において、申込数が4万人を突破したと発表した。高校生・既卒生向けオンライン模試では国内最大規模という。

駿台atama+共通テスト模試は、生徒が会場に行かなくても自宅で安心して受験できるオンライン模試。2020年7月よりatama plusと駿台が開始したもので、オンラインの特性を活かし、きめ細かな弱点分析とフィードバックを試験終了直後から受けられる。模試を実力判定・志望校判定のツールで終わらせず、より効率よく、最短で弱点を克服し力を伸ばす学びのサイクルにつなげるという。

第1回の「駿台atama+共通テスト模試」は、2020年7月27日〜8月9日に実施予定。2020年7月18日に第1回申込が終了し、4万人を超える申込があった。

会場で実施した「駿台共通テスト模試」の申込数は3万3578人に対し、オンラインで実施する「駿台atama+共通テスト模試」の申込数は、約1.3倍の4万1819人となった。新型コロナウイルス感染を避けるためにオンライン受験を選択する大学受験生が多かったこと、会場での受験において定員を制限したことが影響しているという。

atama plus 駿河台学園 駿台atama+共通テスト模試 オンライン模試

また、駿台共通テスト模試と駿台atama+共通テスト模試を合わせた申込数は7万5397人で、前年比の約1.5倍となった。受験方法にオンライン受験が加わったことで、全体の申込数を伸ばす結果となった。図中の「公開会場」は、一般申込の受験生が駿台が用意した会場で受験する方法で、「高校会場」は高校などで団体申込をした受験生が、各学校を模試会場として受験する方法。

さらに、会場で実施した「駿台共通テスト模試」と比較して、オンラインで実施する「駿台atama+共通テスト模試」は、地方からの申込割合が約1.3倍に増加した。また、八丈島などの離島や海外からの申込も含まれていた。

模試のオンライン化により、これまで受験が難しかった地域の生徒も受験できるようになり、新たな学習機会の提供につながったとしている。

atama plus 駿河台学園 駿台atama+共通テスト模試 オンライン模試

今後atama plusと駿台は、共通テスト対策以外の模試のオンライン化にも取り組む予定。テクノロジーを活用し、オンラインの良さを活かした新しい模試を生徒に届けていく。

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グーグルがインドの教育事業を強化、100万人以上の教員を対象にツールの提供と訓練の計画も発表

米国時間7月13日、Google(グーグル)はインドの公私立学校を束ねる政府機関であるCBSEとの提携を発表した。2020年中に世界第2位のインターネット市場であるインドの2万2000の学校に「blended learning experience(融合された学習体験)」を提供する。

同じ日に検索の巨人は、インドに1兆円超の投資を5~7年かけて行い、この国の100万人以上の教員を対象に、G Suite for Education(Gスイート・フォー・エデュケーション)、Google Classroom(グーグル・クラスルーム)、YouTubeなどのツールの提供、訓練を行う計画も発表した。 インドは他の国々と同様に新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大防止のために学校が閉鎖され、教育のデジタル化が求められている。

グーグルは、インドの教育システムには課題が3つあると語った。インド言語のデジタルコンテンツの質、教員のデジタルツール対応、および端末とインターネットの普及だ。

「誰もがインターネットを利用できるわけではないことを認めざるを得ない」とグーグルのインド・東南アジア担当マーケティングディレクターであるSapna Chadha(サプナ・チャダ)氏は13日のオンラインイベントで語った。同社はパートナーと協力して上記の課題に取り組み、インターネットを利用できない生徒でもテレビ、ラジオなどのメディアを通じてつながることができるよう努力していると同氏は語っている。

関連記事:Education technology is a global opportunity(未訳記事)

最近数カ月間でグーグルは、Googleミート、Google Classroomなどの教育ツールをPodar、Kendriya Vidyalaya、Nehru World、GD Goenkaなどインドのさまざまな学校に無料で提供してきた。

グーグルの13日の発表は、世界のライバルFacebook(フェイスブック)の同様の取り組みに続くものだ。フェイスブックは2020年7月始めにCBSEと提携し、デジタル安全性と適切なオンライン利用、拡張現実などの認定カリキュラムを学生および教育者向けに提供する。

グーグルはまた、パートナーと協力して恵まれない子どもたちに教育機会を与えるインドの基金であるKaivalya Education Foundation(KEF)に、グーグルの慈善部門であるGoogle.orgから100万ドル(約1億1000万円)の助成金を提供することも発表した。

「このファンドを使って、Kaivalya Education FoundationはCentral Square FoundationおよびTeacherAppと協力して、脆弱な子どもたちが在宅学習できるように70万人の教員にバーチャル教育を訓練する」とチャダ氏は語った。

ほかにもグーグルは、インド最大の国営放送機関であるPrasar Bharatiとも提携して、新型コロナウイルスと戦う企業オーナーが他の企業から学び、長期的未来を計画する手助けをする一連のエデュテイメントシステムを提供すると語った。

そしてグーグルは、2019年にインドで公開した生徒の読書や理解のスキルを開発する教育アプリのBolo(未訳記事)をRead Alongブランドで9言語、180カ国に展開することも発表した。同社は2020年5月にRead Alongの世界展開計画を発表している。

関連記事:グーグルが世界最後の成長マーケットであるインドに1兆円超を投資

画像クレジット:Sanjeev Verma / Hindustan Times / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

プログラミング学習サービスのProgateが世界登録ユーザー数150万人突破

Progate プロゲート プログラミング学習

Progate(プロゲート)は7月10日、オンラインプログラミング学習サービス「Progate」、同名スマホアプリ(Android版/iOS版)の合計登録ユーザー数が全世界で150万人を突破したと発表した。

Progateによると、2019年10月に登録ユーザー数100万人を突破、その8ヵ月後に150万人に到達したことになるという。背景にはステイホーム期間におけるユーザー登録数の増加があるとした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19))による外出自粛要請を受けて自宅で過ごす時間が増えた多くの方に、オンラインプログラミング学習サービスを提供できたという。

Progateは、実際にプロダクトを作りながらコードを書く練習をすることで、初心者でもプログラミングを学べるというオンライン学習サービス。一般的なプログラミング学習には「環境構築」と呼ばれる開発を始めるための準備が必要だが、Progateでは、Webブラウザーやアプリのみで学習を始められる。

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Preferred Networksが教育事業に参入、独自のプログラミング教材「Playgram」を開発

ディープラーニングの研究や各種ロボットの開発を手掛けているPreferred Networksは7月6日、コンピュータサイエンス教育事業を立ち上げたことを発表した。深層学習などAI技術の実用化が進むこれからの時代に不可欠な論理的かつ創造的な思考力を育み、世界レベルで活躍できる人材の育成を目指す。

教育事業の第1弾として同社は、小学生から始められるプログラミング教材「Playgram」(プレイグラム)を開発。総合教育サービス事業を展開するやる気スイッチグループと提携し、2020 年8月よりプログラ ミング教室パッケージとして首都圏の3教室での対面授業および家庭でのオンライン授業に順次導入する。

Playgramは、米国のコンピュータサイエンス教育のガイドラインである「K-12 Computer Science Framework」を参考にしたプログラミング教材で、同社のエンジニアが開発。「楽しみながら学ぶ」「創造力を働かせて作る」という学習体験と、やる気スイッチグループが培ってきた子供もやる気を引き出すメソッドとを組み合わせることで、アプリケーション開発に生かせるスキル、課題解決力、自由な創造力を身に付けることを目標とする。将来的に同社は、PlaygramをAR、IoT、AI 技術なども組み込んだプログラミング教育のプラットフォームに育てていく計画だ。

Playgramの特徴は、ビジュアルプログラミングから、タイピング、プログラミングの基礎、Pythonによるテキストコーディングまでに対応しており、段階的にプログラミングを学べる点だ。また、3Dグラフィックを採用しておりロボットを動かしたり空を飛んだり、プログラミングを駆使して課題解決する面白さを体感できたりと、表現力や空間認識能力を養えるとしている。また、学習データから一人ひとりの得意や苦手分野を解析し、学習状況を可視化してリアルタ イムで共有することも可能で、進捗に応じた最適な学びをカスタマイズできるため、プログラミング経験のない講師・保護者でも学習指導はできるとのこと。

詳細は追って記載する。

勃興するEdTech

他のほとんどの分野とは異なり、EdTech(エドテック)はここ数か月間、急速に成長している。フラッシュカードを専門とするQuizlet(クイズレット)が既にユニコーン企業になっており、デジタルテキスト企業のTop Hat(トップハット)のユーザー数がこれまでにない伸びを見せ、学生の成功を支援するEdsights(エドサイツ)は一流の投資家から200万ドルにおよぶ資金を集めている。これらすべては業界内で興味が高まった結果である。投資家は自宅学習が流行すると確信しているため、つい最近、「フルスタックのインフラ」を提供し、親たちが自宅教育を開始しやすくするPrimer(プライマー)へ370万ドルを投資した

しかし、保護者が仕事、家庭、理性のすべてに対し毎日、またはほとんどの日で向き合う一方で、エドテックは現在の学習環境の課題をすべて解決するわけではない、と言われている。

収入の大小に関係なく、どの保護者も自宅学習に困難を感じている

Fuze(フューズ)でブランドおよび企業マーケティングのバイスプレジデントを務めるLisa Walker(リサ・ウォーカー)はこう語る。「精神状態の上がり下がりはまるでモグラ叩きのようだ。」ウォーカーはボストン在住だが、パンデミックのためバーモント州へ引っ越している。彼女は10歳と13歳の子供を2人抱えている。「一人が機嫌よくしている日に、もう一人は機嫌悪く、いつも家族の誰かをケアしなければいけない。」

社会経済的に困難を抱えている家族は頼れるものがなく、両親は生活を維持するために複数の仕事を掛け持ちしなければならないため、さらに深刻な状況にある。

保護者にとって大きな問題のひとつに、「自分のペース」で学習する量の増えるにつれ、ライブ授業が減っているため、バランスをとりにくい点が挙げられる。

ウォーカーは、10歳の子供が毎日教師やクラスメートと直接やりとりする時間が少ないことに不満を感じている。1時間のライブ授業が終了すれば、子供は残りの1日中、コンピューターの前で座っているだけになる。録画済みのビデオとオンラインのクイズをこなしたら、Google ドキュメントで宿題を済ませて終了となる。

非同期型の学習はインタラクティブ性に欠けるが、どんな社会経済的な背景の生徒も対象にできるため、一概に良し悪し判定できない、とウォーカーは述べる。教材がすべて録画済みであれば、コンピューターよりも子供の数が多い家庭の場合、午前8時の科学の授業に間に合わせる手間が省け、交代で授業を受けられる。

ウォーカーはこう述べる。「多くの子供たちがビデオ接触に疲労を感じるのはわかっているが、それでもライブ授業をもっと多くしてほしいと感じている。テクノロジーは問題を解決してくれるが、問題を増やす原因でもある」。

PWC(プライス・ウォーターハウス・クーパース)のシニア税務マネージャーとしてフルタイム勤務し、アトランタに住むシングルマザーのTraLiza King(トラリザ・キング)は、小さな子供を相手にする場合、ライブのビデオ授業が欠点となることを指摘する。

難題の一つは、4歳の娘のZoom(ズーム)通話を見守ることである。ズームは小さな子供が直感的に扱えるプラットフォームではないため、キングはその場で娘を助けなければならない。彼女は娘のゾーイがログオン・ログオフに手伝い、皮肉なことに、授業を中断なく進められるよう必要な場合にミュートする。

大学1年生になる彼女のもう一人の子供は4歳児の面倒を見れるはずだが、キングは長女に教育の責任を負わせたくないと考えている。つまり、キングは母親とフルタイムの従業員に加え、ズームの技術サポートと教師の役割も演じなければならないことになる。

彼女はこう述べる。「現在の状況は良い面と悪い面が両方あります。娘たちが何を学んでいるかを見て、生活を共有できるのは素晴らしいと思っているが、私は幼稚園の先生ではないのだ」。

保護者の中には、これまでと同じように対処すると決めて、そしてうまくやり過ごしている人々もいる。ロサンゼルスに拠点を置くRythm Labs(リズム・ラブズ)の創立者、Roger Roman(ラジャー・ローマン)と彼の妻は、シャットダウンを目の当たりにした直後、子供たちのスケジュールを大急ぎで組み立てた。午前6時に朝食、その直後に体育、続いてワークブックと宿題の時間が並ぶ。彼らの5歳の子供がすべてをこなせば、電子機器で遊ぶ時間を30分間だけ「勝ち取る」。

テクノロジーは間違いなく役に立つ。ローマンは、Khan Academy Kids(カーン・アカデミー・キッズ)やLeapfrog(リープフロッグ)など数種類のアプリを活用して、仕事の電話やミーティングの時間を確保している。しかし、こうした対策は解決策というよりは一時しのぎのようなものだ、と彼は言う。彼によると、本当に役に立ったのは、あまりハイテクとは言えないものだった。

「プリンターで本当に救われました」と彼は言う。

子供たちが自宅にいることで、ローマン一家はアメリカを覆う人種差別に起因する暴力や警察による強権の行使について話し合う機会が得られている。歴史に関する既存の教材は、黒人のリーダーや奴隷制度をあまり正確に、詳細に扱っていなかったため、現在審査が入っている。両親が家にいる現在、こうした現実との乖離はますます明白になっている。各家庭に応じて、奴隷制度に関する教育が欠如していることは、アメリカでの差別制度に関する難しい話し合いを始めさせたり、学校が再開された際の議題として置かれたりしている。

ローマンによると、彼は人種差別や不正に気付かされなかったことは人生で一度もなく、彼の子供たちも同様のはずだと考えている。

「Ahmaud(アマド)、Breonna(ブレオナ)、George(ジョージ)の殺害事件を通じて、私と妻はアメリカに横たわる白人優位主義と人種差別の長い暗黒の歴史を真剣に捉えなければならなかった。子供とそうした会話をこれほど早く行うことになるとは思ってなかったが、彼は目にする映像についてたくさんの疑問を抱えており、私たちはそうした質問を正面から受け止めている」。
ローマンは本を通じて息子たちへ人種差別を説明している。エドテックプラットフォームのほどんどは人種差別撤廃をどう扱うかについて沈黙を保ってきたが、クイズレットでは「真のインパクトを与えるためにプログラミングを結集している」と語る。

遠隔学習の将来

現行のオンライン学習ツールは若い学習者に刺激を与えられないため、保護者や教育者は苦慮している。それに対応するため、新たなエドテックのスタートアップは遠隔学習の将来を描き出そうとしている。

Zigazoo(ジガズー)の共同創立者、Zak Ringelstein(ザック・リングルスタイン)は、彼が「子供向けのTikTok(ティックトック)」と呼ぶプラットフォームを立ち上げている。このアプリは幼稚園から中学校までの子供を対象にしており、ユーザーはプロジェクトごとのプロンプトに応じて短い動画を投稿できる。課題は、ナトリウム化合物を用いた火山を噴火させたり、日用品を使用して太陽系を構築するなど、科学実験のようなもので、また保護者はアプリを管理できるようになっている。

最初のユーザーは、リングルスタインの子供たちである。子供たちは画面を眺めるだけでは学習に集中しなかったため、双方向のやりとりが鍵を握るとの結論に至ったと彼は語る。将来的に、キャラクターが「ブランドアンバサダー」として振る舞い、短いビデオコンテンツに登場できるよう、ジガズーはエンターテイメント企業との提携を予定している。例えば、光合成について子供たちが学べるように、「セサミストリート」のキャラクターがティックトックのトレンドに現れるのを想像してみてください。

「子供向けのティックトック」を目標としたジガズーのプレビューとビデオベースのプロンプトを通じ、彼は「教育者として、エンターテイメント性を持つだけでなく、学習効果も高いコンテンツがあまりにも保護者へ提供されていないことに驚きました」と言う。

Lingumi(リングミ)は、例えば英語学習などの重要なスキルを幼児が学習できるプラットフォームである。同社が設立された理由は、幼稚園のクラスで生徒が多すぎで、子供が「スポンジのように知識を吸収する時期」に教師が十分な1対1の時間を提供できなかったことにある。リングミは別のスタートアップ企業であるSoapBox(ソープボックス)と同社の音声技術を使用して、子供たちの声を聴き取って理解し、彼らが言葉を発音する様子を評価して、流ちょう度を判定している。

ソープボックスのCEO、Patricia Scanlon(パトリシア・スカンロン)博士はこう述べる。「エドテック製品は教室で機能するよう設計されており、どこかで教師が介在しなければならない。現在、教師は子供たちと個別に交流できないため、この技術を使用すれば子供の進捗度を把握できる」。

もう一つのアプリ、Marcus Blackwell(マルクス・ブラックウェル)が作成したMake Music Count(メイク・ミュージック・カウント)は、生徒がデジタルのキーボードを使用して数式を解けるようにしている。200を超える学校で5万人の生徒が使用しており、最近ではCartoon Network(カートゥーン ネットワーク)とMotown Records(モータウン)と提携し、両社のコンテンツをレッスンとしてフォロワーが利用できるようにしている。アプリへログインすれば数学の問題が提示され、解決すればどのキーを弾くかが示される。セット内の数式をすべて解けば、弾いたキーが並んで、Ariana Grande(アリアナ・グランデ)やRihanna(リアーナ)などのアーティストの人気曲が流れる。

このアプリはゲーミフィケーションと呼ばれる有名な戦略を使用して、若年層のユーザーを引き付けている。学習のゲーミフィケーションは、特に若年層に対し、生徒の興味を持続させ、学習を体系化させるための効果が長い間実証されてきた。歌や最終製品などで達成感が得られれば、ポジティブなフィードバックを求めている子供たちが満足する。この戦略は、クイズレットDuolingo(デュオリンゴ)など、今日最も成功した教育企業の一部が基本原則として採用している。

しかしメイク・ミュージック・カウントの場合、ゲーミフィケーションで通常用いられるポイントやバッジ、その他のアプリ内の報酬を採用せず、仮想的なアイテムよりもずっと楽しいものーー子供たちが楽しみ、自分で探すことも多い音楽を提供している。

テクノロジーと同様に、ゲーミフィケーションは学校で得られる個人的で実践的な体験をすべて賄えるわけではない。しかし、それこそが保護者が現在求めているものなのである。私たちは、遠隔学習しか選択肢がない場合だからこそ、テクノロジーがこんなに役に立てることと、教育は単なる知識の理解やテストにとどまらない豊かさを常に提供してきた事実を痛感した。

エドテックに欠けている要素:学校は学ぶだけの場所ではなく、子供をケアする場所である

結局、仕事が将来的にリモート化するのであれば、保護者たちが子供のケアをするためにより多くのサポートを必要としている。それを目指すスタートアップの1社にCleo(クレオ)が挙げられる。同社は子育てをサポートするスタートアップであり、最近、オンデマンドの保育サービスを提供するUrbanSitter(アーバンシッター)提携した

CleoのCEO、Sarahjane Sacchetti(サラジェーン・サッケッティ)は5月にTechCrunchに対してこう答えている。「保護者が危機に直面している今、仕事を持つ母親はソリューションを熱望している。当社は単に会員や企業の顧客が利用できるだけでなく、私たち自身でも使用しようと思うソリューションの開発を目指した。仮想ケアからスケジュール調整や新たな保育士探しまで、私たち自身ですべてを試して実験した結果、家庭の手助けになる唯一のソリューションには、新型コロナウイルスがもたらした独自の問題を解決するために構築された新たな保育モデルが必要であると判明した。」

保育のマーケットプレイスであるWinnie(ウィニー)の共同創立者、Sara Mauskopf(サラ・マウスコプフ)は、遠隔学習の支援を試みるテック企業は、「解決するのは教育面の問題だけではない」ことを念頭に置かなければならない、と言う。

彼女はこう述べている。「学校は保育の一形態だ。一番私の気に障るのは、『これまで以上に多くの人が自宅学習に切り替える』というツイートが氾濫しているのを見ることだ。だからといって誰も、私の赤ん坊へマカロニチーズを食べさせたり、おむつを替えてくれないじゃない」。

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Category:EdTech

Tag:教育 コラム

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(翻訳:Dragonfly)

保護者と教員のコミュニケーションプラットフォーム「ClassTag」が約5.4億円を調達

子供を持ちながら働く保護者の多くは、子供の教育にもっと関わりたいと思っている。ClassTagの創業者兼CEOのVlada Lotkina(ヴラダ・ロトキナ)氏も、自分の娘の幼稚園についてそう思っていた。今度の遠足のプリントがリュックの中でぐしゃぐしゃになっていて、保護者と先生のコミュニケーションがスマートなテクノロジーになればいいのにと願ったことを、彼女は思い出す。

ロトキナ氏は幼稚園の他の保護者も同じようなストレスを抱えていることを知った。そこで同氏は、保護者仲間であるJason Olim(ジェイソン・オリム)氏とともに、60以上の言語に対応した保護者と教員のコミュニケーションプラットフォームであるClassTagを始めた。

米国時間6月8日、ClassTagは500万ドル(約5億4000万円)のシード資金を調達したと発表した。参加した投資家はAlleyCorp、Contour Ventures、Founder Collective、John Martinson、Newark Venture Partners、Smart Hub、TMT Investmentsだ。同社のプラットフォームは米国内で2万5000校、200万ユーザーに成長しているという。

ClassTagのエンドユーザーは、保護者と教員だ。保護者はClassTagで行事、校外学習、募金活動などの情報を知ることができる。教員はClassTagを使って、簡単に保護者と関わり、保護者会の日程を決め、リソースを共有できる。さらに教員は保護者のダッシュボードを見て、深く関与しているのはどの家庭か、連絡や注意が必要なのはどの家庭かを知ることもできる。

ClassTagでは、保護者はメール、SMS、アプリ、ウェブ、さらに完全にオフラインなら紙と好きな手段でコミュニケーションをとれる。アプリをダウンロードする必要はない。お知らせやメッセージは自動で多くの言語に翻訳される。

ClassTagは、教育や家族向けの企業広告で収益化している。一般に広告で収益を上げているEdTechのプラットフォームは保護者から懸念を持たれがちだが、ClassTagは子ども向けのプラットフォームではないため、この点は問題になりにくい。同社は個人を特定できる情報は広告主とは一切共有しないが、特定の学年や郵便番号に属するユーザーの数といった統計情報は共有するとしている。

また、ClassTagの収益の一部は学校の備品のために寄付される。同社はこの関係性を「ブランドが広告主ではなくスポンサーになる」と表現している。

ClassTagには社会経済的な階層や仕事のスケジュールにかかわらず、すべての保護者に利用してもらうという目標があるため、プラットフォームのシンプルさがストレステストで試されている。デジタルディバイドはいくらか解消してきたとはいうものの(Pew Research Center記事)、社会経済的に恵まれない家庭では携帯電話以外の手段でデジタルを利用するのが難しい場合がある。したがって時給ベースの仕事をしている保護者は、メールよりもテキストメッセージの方が連絡を取りやすいかもしれない。

学校のコミュニケーションをデジタル化しようとしているプラットフォームとしてもうひとつClassDojoがある。これは子供、教員、保護者のためのコミュニケーションプラットフォームだ。ClassDojoは米国の95%の学校で使われている。

ロトキナ氏は、ClassDojoは主に子供の行動を扱っていると語る。例えば、ClassDojoでは教員が子供にポイントを付けて行動について保護者に注意を促すことができ、教室での関わり合いと管理を主眼としている。これに対してClassTagは、情報を知らせることに重点を置いている。

ウクライナ出身のロトキナ氏は、17歳の時からスタートアップの世界で活動し始めた。ウクライナのデザイナーを売り込みながら西ヨーロッパを回った。その後、ペンシルベニア大学のビジネススクールであるウォートン・スクールを志望して合格し、米国へ移った。銀行が利益を出す前に投資家のリスクがあるため、ウクライナよりも米国の方が起業しやすいと同氏は語る。

Mediumの記事の中でロトキナ氏は「しかも、ウクライナをはじめとする多くの国には、汚職や規制の圧力が明らかにたくさんある。残念ながら、真の問題を解決する影響力のある企業を起こすことは、ウクライナのような国では難しい」と述べている。

200万人のユーザーを得てから500万ドル(約5億4000万円)の資金を新たに調達したロトキナ氏の選択は、今のところ順調だ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Kaori Koyama)

セレブによる特別講座を提供するMasterClassが107億円調達、コンテンツ拡充へ

著名人が教える講座(クラス)を販売するスタートアップであるMasterClass(マスタークラス)がシリーズEラウンドで1億ドル(約107億円)を調達した。本ラウンドは、Fidelity Management & Research Companyがリードし、新規投資家としてOwl Ventures01 Advisorsが、既存投資家からはNEA IVP Atomico NextEquity Partnersが参加した。

同社が間もなく資金調達するとのニュースを今月初めにスクープしたBloomberg(ブルームバーグ)によると、本ラウンドでのバリュエーションは8億ドル(約860億円)となる。同社は新たなバリュエーションの公開を却下したが、8億ドルを上回るとは述べた。

MasterClassは、コンテンツライブラリーへのアクセス料金として年間サブスクリプションとして180ドル(約1万9000円)を課している。同社の売上高にサブスクリプションが占める割合は2018年に80%だったが、いまは100%だ。

同社は、エンターテイメントと教育が交差するところに自社は位置するとの認識だ。同社はこれまでにセレブや専門分野の「名人」が教える85講座を制作した。同社のプラットフォームは著名人を引きつけてきた。いかに事業を成長させるかについて語ったAnna Wintour(アナ・ウィンター)氏、料理法について話したGordon Ramsey(ゴードン・ラムゼイ)氏、ユーモアであることについてがテーマだったDavid Sedaris(デイビッド・セダリス)氏など、そうそうたる名前が並ぶ。講座の予告は「トレイラー」と呼ばれている。

著名人がどのように考えて取り組んでいるのか、人々が生まれながらに持っている好奇心をくすぐる。そうした好奇心に少し応えつつ、根本的に「デジタル化」はあり得なかった講座を提供している。かなり接触するスポーツ、例えば、Serena Williams(セリーナ・ウィリアムズ)氏のテニスのレッスン、Steph Curry(ステフィン・カリー)氏のバスケットボールのレッスンを考えてみてほしい。あるいは、RuPaul(ルポール)氏の自己表現についての考えや、Neil deGrasse Tyson(ニール・ドグラース・タイソン)氏の科学的な考えとコミュニケーションといった一般教養など。

燦然としたスターぞろいにもかかわらず、MasterClassはセレブへのアクセスではなく、セレブたちの取り組みの一部を販売する。セレブたちは日常的に生徒と交流しないし、まったく交流しないセレブもいる。

コンテンツがプラットフォームにアップされた後はセレブは特に大きな責任は負わない。もちろんコンテンツ制作はMasterClassが声をかけた人が対象となる。サイトには数多くのレッスンが用意されており、20〜30分のビデオとダウンロード可能なワークブックに分けられる。各講座の生徒はコミュニティハブに集ってバーチャルのクラスメートと話すことができる。セレブたちが生徒と交流する機会はあるが、それは契約には含まれていない。

同社では「セレブが自分の講座でお気に入りを選ぶという例外がある」とも宣伝している。電子音楽プロデューサーであるDeadMau5(デッドマウス)氏は一緒に曲を録音するためにMasterClassの生徒の1人を招待したとされている。セリーナ・ウィリアムズ氏も生徒の1人と試合をしたようだ。

セレブにどのように払っているかについては同社は明らかにしなかった。売上高はというと昨年倍増した。同社はコンテンツがかなり魅力的なために、カリー氏のバスケットボールのワークショップ目的で登録した人が、その後ラムゼイ氏の料理セッションものぞくというふうになっていると話す。

何百万という人がやることなく家で過ごしている最中に同社は資金を調達した。CEOで共同創業者のDavid Rogier (デイビッド・ロジャー)氏は「講座の中で最も視聴されているものは、前FBI交渉官Chris Voss(クリストファー・ボス)氏による戦術的な共感について考えを語るものだ」と話した。

この逸話を紹介した後、ロジャー氏はMasterClassの使用が新型コロナウイルス(COVID-19)が始まってからどのように変化したかを示すデータを共有することは繰り返し却下した。エドテック業界の競合他社が最近騒がしいため、MasterClassの沈黙は目立つ。リモート教育への移行は、エドテック企業の資金調達をあと押ししていて、新たなユニコーン(未訳記事)の誕生につながったものもあればシードステージでの調達(未訳記事)だったものもある。

沈黙はまた、MasterClassが純粋に教育にフォーカスしているというより、エンターテイメントの要素が大きいコンテンツと位置付けているからかもしれない。同社はクオリティーの高いドキュメンタリースタイルのコンテンツを制作している。そのため、新型コロナウイルスによる活動停止でエンターテイメント業界(外部英文記事)が現在直面しているように、制作面で困難を抱えているのかもしれない。

ただ、他のエドテック企業と同様、MasterClassは新たな資金調達は必要に迫られてというより機会に恵まれてのものだったとしている。

資金は生徒向けの新しい講座の制作、そして1週間に1つの講座という制作ペースにアップするのに使う、とロジャー氏は話した。同社はまた音声のみのモード、短いバージョン、拡張現実(AR)も試している。「想像してみてほしい。ステフィン・カリーの講座があるが、もしスマホにARがあったら、実際にどこに足を置くべきかがわかる」とロジャー氏は述べた。

MasterClassのマーケティング戦略は、現在アグレッシブに展開されていることから、このところ話題となっている。YouTubeビデオを観るたびに、コマーシャル時間にMasterClassの広告が入るという感じだ。

ロジャー氏はマーケティング予算を明らかにしなかったが、戦略は手応えのあるもののようだ。MasterClassはYouTubeと競合せず、YouTubeプラットフォーム上に広告を出している。人々はクオリティの高いセレブによる講座を望んでいて、そのために喜んで払うのは確かだ。「もし広告をより頻繁に目にしていたら、それは広告が機能しているからだ」と同氏は話した。

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(翻訳:Mizoguchi

チャットボットで大学生のドロップアウトを減らす,姉妹が考案したEdSightsとは?

チャットボットに心を打ち明けるなんて気持ちが悪いと感じるかもしれないが、Claudia(クラウディア)とCarolina(キャロライナ)のRecchi(レッキ)の姉妹は、それこそ米国中の大学生がいま必要としているものだと考えた。

姉妹は、2017年、脱落の恐れが中程度から高程度の大学生が学校に留まれるよう支援し、大学の定着率を高めるための企業EdSights(エドサイツ)を共同で創設した。

EdSightsは、学校のマスコットに見せかけたチャットボットを使っている。学生に個人的な質問やメッセージを送り、自身の最大のストレスを理解させる。そして彼らを、経済、食事、メンタルヘルスを支援する大学の制度につなげてゆく。

パンデミックによって何百万人もの学生がキャンパスから離れて家で勉強している今、学生たちをつなぎとめる新しい方法を模索する大学から、姉妹は急成長のヒントを得た。

またパンデミックによって、学生たちは、以前にも増して正直な気持ちを返すようになった。

「世界中が大変なことになって、人々は職を失い、家計はなんとかギリギリの状態。今は、学校は緊急の問題ではない」とある学生は書いていた。「それでも、成績は成績。この先どうなるのか不透明な状態のまま、成績が私たちの将をが決められてしまう」

別の学生は「仕事場が閉鎖されて収入が途絶えた」と書いている。また、「外に出られないから、生活のいろいろなことから気を紛らすことができない」と訴える学生もいる。

チャットボットの他に、どれだけの学生がどのような問題に悩んでいるか、その割合を管理者に示すダッシュボードもEdSightsは提供している。同社は、退学の恐れが高い学生とその最大の問題に関する情報を扱っているため、プラットフォームではプライバシーが重要になる。EdSightsでは、米国家族教育権とプライバシー法(FERPA)とEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠し、第三者に情報を見せたり売ったりはしないと話している。学生には、自身の記録の修正要求と、全記録を取得する権利が与えられる。

「秋に学生が戻って来ないのではないかと、大学側は明らかに恐れています」と姉妹は言う。「そこで、学生と確実につながり、大学に来ないまでも、大学とつながっているという感覚を学生に持たせたいと考えているのです」

同社は、1年をかけて顧客を16件まで増やした。その中には、ベイカー大学、ミズーリ・ウェスタン州立大学、ベテル大学、カルバー=ストックトン大学、ウェストミンスター大学などが含まれている。年間経常収益は前月比で平均68パーセントずつ増加し、2月に比べて収益は2倍になった。

大学がEdSightsに支払う利用料は、学生1人あたり15ドルから25ドル。ほとんどの大学が、全学生を含めている。

「以前は、1年生にだけ適用できるか、第一期生だけを含めることができるか、特別な支援が必要な学生にだけ使えるか、と聞いてくる大学が多くありました」とキャロライナ・レッキ氏。「今は、4年間をとおして学生に適用したいというだけでなく、大学院生にも使いたいと申し出てくる学校もあります。大学院はやったことがないので、新しい試みです」

この新たな情勢に乗った姉妹は、大勢の有名投資家から160万ドル(約1億7000万円)のベンチャー投資を調達した。このラウンドに参加した投資家には、Lakehouse VC(レイクハウスVC)、Kairos VC(カイロスVC)、The Fund(ザ・ファンド)などが含まれる。

またこの投資には、Warby Parker(ワービーパーカー)、Harry’s(ハリーズ)、Allbirds(オールバーズ)、Bonobos(ボノボス)、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)の創設者たちも加わった。

EdSightsの創設者姉妹は、歴史的に専門教育関連企業の条件規定書だけを受け付け、この分野には懐疑的だった専門分野を持たない投資家たちの興味を集めた理由のひとつとして、COVID-19があると話している。実際、彼女たちはいくつもの投資の申し出を断わることになったわけで、他の投資家たちが資金調達シーン全体を覆っていると主張する萎縮効果には、大きな差があった。

EdSightsが今回調達した資金は、一般の人々が教育とテクノロジーの交差点について考える際に、パンデミックによってどれほど細やかな事情を踏まえるようになったかを示す、新たなデータポイントとなった。

パンデミックの間、数百万人の学生を遠隔支援できるのはチャットボットだけかも知れない。それがいつになろうと学校が再開し始めたとき、このテクノロジーが世界にとって必要なものになるかどうかを証明するのは、EdSightsだ。

“新型コロナウイルス

画像クレジットnonchai

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(翻訳:金井哲夫)00

オンライン記憶カードのQuizlet、リモート学習の急拡大で新たな10億ドルのスタートアップに

世界中の生徒、学生や教員たちがリモート学習に移ることを余儀なくされている中、デジタル記憶カードのスタートアップが10億ドルの会社評価額を得た。QuizletGeneral AtlanticがリードしたラウンドCで3000万ドルの資金を調達した。

QuizletのCEO、マシュー・グロツバック(Matthew Glotzback)氏は、「今回の資金調達ラウンドでは10億ドルの会社評価額を得た。前回、2018年のラウンドの5倍となった」と述べている。Quizletの判明している資金調達総額は6000万ドル以上だ。

Quizletはオンライン記憶カードとその利用ガイドを簡単に作成できるサービスで、パンデミックで途方もないトラフィックを集めているというニュースに引き続いてこの資金調達が発表された。ユーザーは自分で学習ガイドと記憶カードを作成するだけでなく、ガイドやカードを友達と共有して互いに問題を出し合うなどグループ学習もできる。これは試験の準備にも有効だ。COVID-19によって休校になったため、オンラインで情報を共有、交換しながら学習を続けるために効果的な方法を探していた生徒たちがQuizletプラットフォームに殺到した。

生徒、学生は毎週10億以上の小クイズをQuizletに追加しており、学習ガイドも4億本以上が作成されている。 サンフランシスコを本拠とするこのスタートアップは主要な国際市場で200%から400%のユーザー拡大という急成長を遂げている。同社は1日のあたりのトラフィックの具体的数字を示すことは避け、「月間ユーザーは5000万人以上だ」と述べたるにとどまった。これは2年前に発表した統計の数字だ。

グロツバック氏によれば、アメリカの高校生の3分の2以上、大学生の少なくとも半数がQuizletを使用していると指摘した。これほどの規模のマーケットには量にくわえて非常に大きな多様性がある。Quizletは化学における酸や塩基 からジェットコースターの力学芸術の知覚心理学まで数多くの分野を扱っている。

なぜ記憶カード企業が10億ドルもの評価を受けるのか不審に思う読者も多いだろう。実のところ10億ドルの価値はカード事業にあるわけではない。人工知能をベースにした学習プラットフォームというところにある。現在Quizletのビジネスのコアでありもっとも力を入れているのがこの部分だ。グロツバック氏は「Quizletの学習モードがもっとも人気のある機能だ」と述べている。AIを利用した学習により、ユーザーは限られた時間でテーマとするトピックをマスターし、試験に備えることができる。

Quizletの新たな投資家となったGeneral Atlanticは世界ののエドテック企業に投資しており、OpenClassrooms、Ruangguru、Unacademy、さらに最近ではDuolingoがポートフォリオに追加されている。グロツバック氏は「われわれは今後も国際市場における拡大を図っていくが、具体的な目標や地域名を念頭に置いているわけではない」と述べた。現在、同社は130か国、19言語で利用されている。つまり成長の余地はまだ十分あるわけだ。

Quizletでは売上は前年比で100%成長していると述べているが、収益性についてはコメントを避けた。

Quizletでは、2013年11月に上場したオンライン教科書のCheggを最も近いライバルに近い存在と見ている。
グロツバック氏は「アメリカではCheggのユーザーは(われわれより)多く、教育分野では非常に大きな存在となっている」と述べた。また「Duolingoなどは(言語学習という)特定マーカットを対象としたバーティカルなサービスだが、Quizletは幅広くカリキュラム全般に対応する」と述べた。

今回のラウンドでQuizletは正式にユニコーン(10億ドル企業)となったが、これを社員に発表したとき、」グロツバック氏は「われわれは一層ラクダ(のような着実な存在)に近づいた」と語った。

「われわれのビジネスは大規模なものとなっている。使い方が簡単で、すぐに始め、すぐに共有できるプロダクトのおかげだ。有料バージョンにアップグレードするユーザーがこれほど多数に上るのはサブスクリプション料金がきわめて低価格だからだ。これがわれわれの経営を支えている」。

多くのスタートアップとは異なり、「ゆっくり、着実に」というのは創業時からの精神だという。Quizletは2005年にに当時わずか15歳だったAndrew Sutherland(アンドルー・サザランド)氏によって創立された。サザランド氏はマサチューセッツ工科大学の学生寮からQuizletを運営し、資金は2015年まで完全にブートストラップ(自己資金)だった。元YouTubeのエグゼクティブだったグロツバック氏は2016年にCEOとして迎えられた

そのような慎ましいルーツから出発したにも関わらず、パンデミックで多くのスタートアップに逆風が吹いている中、今回のラウンドを成功させたのは注目に値する。

グロツバック氏は「われわれが資金調達ラウンドの処理と会社業務のリモート化に取り組んでいたのは株式市場が連日暴落を続けていた。今回のラウンドはそういう不安な時期だったが無事に完了させることができた」という。

グロツバック氏は「今回のラウンドは機会があったために実行したもので、経営上キャッシュを必要としていたわけではない」と語った。

つまりQuizletの(ユニコーンという)勲章は、この壊滅的な時期に、エドテック分野には再活性化将来への希望の芽の双方があること立証した例といえるだろう。 オンライン・リモート学習は今や単なるツールから必須の学習プラットフォームに成長しつつある。

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滑川海彦@Facebook