ジョニー・アイブのいないアップル、デザインのこれから

言ってみれば、面白い状況だった。およそ30年間をApple(アップル)で過ごしたJony Ive(ジョニー・アイブ)氏は、新会社LoveFrom設立のために会社を去ることになった。友人でよくコラボしていたMarc Newson(マーク・ニューソン)氏も一緒だ。彼もアップルを辞める。このニュースに対するアップルウォッチャーたちの反応は、予想通り大げさなものだった。

彼らの言葉を総合すると、次のように集約される。

  • ジョニーはチェックアウトした。使えなくなったか、やる気をなくしたからだ。
  • アップルはもうおしまいだ。なぜなら彼がいなくなるからだ。

この意見が矛盾していると感じたあなたは、まともな感覚をしている。

もし、こうした衝撃的な(私に言わせれば何かを渇望するような)意見を、ここ数年のジョニーにまつわる山ほどの噂と結びつけてひとまとめにするなら、それは、会社とそのデザインチームの発展に貢献してきた伝説のデザイナー二アップルが見捨てられ、今後の成長に陰りが出るという構図を描きたがっているのと同じだ。同時に、彼のいないアップルはおしまいだと言いたがっているのだ。

まあ、いいだろう。皮肉なことに(必然でもあるが)この話にまつわるツイートですら、扇情的な表現に乗っかっている。ティム・クック氏の電子メール(極めて平穏な内容だが)は、「手厳しい」と褒め称えられている。ウォールストリート・ジャーナルは、こう疑問を呈している。「なぜアップルは、何年間もヒット商品を出せずにいるのか?デザイン主任の退社を取り巻く社内のドラマを見れば、わかってくる」。結論としては、その話からはヒントしか得られないということだ。

私が知るアップルのウォッチャーたちは、ここ数年にわたり同社の社員に話を聞いているが、ほぼ全員が、ジョニーは社内で余生を持てあます状態であったことに気付いている。ショッキングではない。むしろ、いつどのように記者発表を行うかを決める権限が、常にある程度までジョニーに保証されていたことが驚きだ。

2015年当時、ジョニーが退屈な事務仕事を減らしたいと考えていたのは明らかだ。アップルのこの10年間は、経営上の難題が爆発的に増えさえしなければ平穏だった。生産量を大幅に増加させ、製造ラインを分割してきたことが、価格設定と機能、そしてとてつもなくもっと大勢の人たちに守られた余地を減らす努力につながった。

「アップルへの批判の多くは、懐古趣味的なものです」とCreative StrategiesのBen Bajarin(ベン・バジャリン)氏は言う。「一部のデザイナーが、今より大胆で、偶像的で、ひょっとしたら偏向していた時代にアップルに戻ってほしいと願っているのです。しかしあの当時のAppleは、製品の販売台数は数千万台規模でした。数億台規模ではありません。そこが、一般の多くの人たちが見落としている、決定的に重要なポイントなのです」。

企業が成長すれば、ジョニーのような人材は、製図台でペンを走らせる仕事から、より経営側に近い仕事に移されるのが自然の流れだ。アップルの場合は教育だ。

私はウォールストリート・ジャーナルの(ありがたいことに、他のどの刊行物でも)パブリックエディターではない。なので、ジョニーと彼の仕事のやり方に関していろいろ出て来る話を論評しようとは思わない。昔から批評は苦手だし、このごろはまったくその気が失せた。だが、これらの逸話が結びついてひとつの物語になっていくことに関して言いたいことはある。

長年にわたりアップルに密着して取材を重ねてきたおかげで、今回の出来事に関係する人たちを、私は大勢知っている。ジョニーは、デザインの会議をサンフランシスコの自宅で開くようになった。デバイスに関する意見を集めるために、The Battery(企業幹部のためのサンフランシスコのクラブ)でもデザイン会議を開いていたに違いない。彼は、ハワイやロンドンなどの自宅にもデザインスタジオを持っている。この数年間は、アップル本社よりも、外で過ごす時間のほうが圧倒的に多い。デザインチームも、工業デザイン内外の人たちも、彼を見かける機会が絶対的に減っていた。

この数日間、細かい話がいくつも飛び交っているが、私が知る限りでは、それらは不正確であるか、正確な脈絡の中で語られてはいない。しかし重要なのは、私の知人の中には、ジョニーが会社を去ってチームを見捨てると思っている人は一人もいないということだ。

自身も言っているように、ジョニーは単に疲れてしまったのだ。数多くの功績を残したデザイナーで、デザインの仕事を減らして事務をやりたいなんて思う人間が、どこにいるだろうか?

また、ジョニーがあまり出社しないことをアップルが問題視していたという説も、私は完全に否定する。その間も、アップルは大成功を収めた製品をいくつも送り出している。そこには、重要な大ヒットカテゴリーとなったApple Watchも含まれる。私は、誰かが書いたこんな批判も目にした。ジョニーは金時計を欲しがっていたので、無駄に時間をかけてApple Watchをめちゃくちゃ滑稽な姿にしたと。

金の時計には次の2つの目的があったという。

  • ジョニーがそれを作りたがっていた。
  • 昼夜身に着けていたくなる価値ある製品であるという期待感を生む。

まったくもって、あり得る話だ。最初の点がジョニーが権力を持ちすぎたこと、またはコンピューターは平等だとするアップルの理念とは異質に感じる方向に権力を行使したことを示していると考えても、おかしくはない。しかし現実には、どれだけ売れたかは別として、それは大きな話題を呼び、お陰でファッションやウェアラブルの世界でアップルの名前が出るようになった。以前には考えられなかったことだ。

それが足がかりとなり、Apple Watchが実際に何の役に立つのかを考える時間を人々に与えることとなった。そして、大きな成功をアップルにもたらした。同じ時期、同社はiPhone Xを予定を前倒しして出荷し、iMacを含むすべての製品ラインに大幅なアップデートを施した。

出荷する製品が少ないとき、ジョニーはよく時間をかけて、デザイナーと1対1の親密な打ち合わせを行っていたが、それがなくなって残念に思うデザインチームのメンバーがいることは、よく理解できる。今思えばこの数年間、Jonyの影響力が昔のまま生き続けているとは言えない部分がある。その証拠に、MacBookのキーボードはいまだにカスだ。

基本的に、あらゆるデザインは論評に値する。ジョニーのデザインも批評をまぬがれることはできない。何らかの機能に一貫性がない場合、または人間中心に感じられない場合、それが1950年代にディーター・ラムズ自身がデザインしたものかどうかは問題はない。ただのゴミだ。

しかし、ジョニーがアップル製品を脱線させたという議論は、事実を知ればまったくのでたらめだとわかる。この4年間、私が話を聞いたデザインチームの全員がこう言っていた。困難で、大変な努力を要する、思い入れの強い仕事のときこそ、ジョニーは彼らが目指すレベルにまで製品や機能を追い込むため、必要な時間と資源とエネルギーの確保に大きな力を発揮した。中国での材料関連の現地コンサルティングも、世界のアーティストとのコラボレーションも、デザインの効果に関する調査といった資源も、ソリューションを見つけるために「最善を尽くす」という精神の現れだ。それはひとつも失われてはいない。

とはいえ、ジョニーが管理職になりたくないとしたら、もう仕事に精を出すことはないのだろうか?絵本作家のシェル・シルヴァスタイン氏はこう言っている。「お皿を拭こうとして、床に落としてしまったら、もう二度とお皿拭きはさせてもらえない」。

何事にも計算が付きまとうと、どの大手企業の幹部も公言している。しかし、どこへ行っても役に立てる気がするというジョニーの言葉は、信じてもいいと思う。

「私には確かに野心があり、道義的責任感もあるので、役に立てます」とファイナンシャル・タイムズの記事の中で彼は話していた。「この30年以上の間、素晴らしい人たちと仕事ができ、大変に面白いプロジェクトに関わり、非常に難しい問題をいくつも解決できたことは、実に幸運だったと感じています。その経験を生かして、何か大きなことをやれという使命を強く感じているのです」

彼は会社を辞めたがっている。そして実際にそうしようとしている。しかし、全体的な観点からも、内部の観点からも、嫌な辞め方をするわけではない。

もういい加減な噂話からは卒業しよう。私は、ジョニーに関するこんな愚にも付かない話よりも、今後のアップルのデザインの方向性のほうにずっと興味がる。

アップルは、Evans Hankey(エバンス・ハンスキー)氏とAlan Dye(アラン・ダイ)氏をデザインの責任者に据え、Jeff Williams(ジェフ・ウィリアムス)氏の下に置いた。アップルは営業会社になってしまうと嘆くのは自由だが、その前にこの10年間どこを見てきたのかと聞きたい。

たしかに、アップルは変わった。しかし、それは必要なことだ。ジョニーは、この長い間、私たちに素晴らしい仕事(そして「冗談だろ!」みたいな驚きの瞬間)を残してくれた。次のアップルの時代に、新しいリーダーたちがどう取り組むかを見守るのは、とても楽しみだ。

また、この時期に「ジョニーの後継者」を1人立てるという発表をしなかったアップルは賢い。その人が直接彼と比べられることで、チームに良い結果がもたらされることはない。むしろ、新しい中心人物を選ぶ時間がチームに与えられ、これから数年をかけて新たな方向性を探ることができる。いずれ、デザインを引っ張ってゆく人物が頭角を現すだろう。だが、それが誰かは私にはわからない。

エバンス氏は、私が知る限りでは、ジョニーの指名で工業デザインチームをマネージャーとして率いることになった人物だ。これまでも彼女はマネージャーとして活躍してきた。有能なデザインマネージャーであり、自身の名義の特許を何百件も所有している。重要なのは、アップルには人材を単に役職に就かせるのではなく、そこから学び、その人たちに教えるために人を配置するという、歴史的、全社的なポリシーがあることだ。このアップルの方針は制度化され、新しい従業員に伝えられる。

私は、この制度はジョニーが去った後にも存続すると信じている。

最近、数多く語られているなかで、私がもっともショックを受けたのは、デザインチームのメンバーがあたかも無能な操り人形で、ジョニーがいちいち同意しなければ何もできない連中ばかりであるかのような論調だ。それは違う。まったくあり得ない話だ。アップルがスケジュールどおりに製品を出荷できるのは、この数年間、たとえジョニーが会議に遅刻しても支障なく、彼らが仕事をしてきたからに他ならない。

アップルには、頭がよくて才能に溢れる人材が大勢いる。彼ら全員がジョニーという名前ではない。

アラン・ダイ氏が、アップルでいかにうまくやっているかを見るのも興味深い。彼は温和で、控えめな態度の人物だ。元気がないように見えるが、仕事には極めて精力的に取り組む。そのデザインは内側から自己主張するように感じられると、アップルのデザイナーたちから尊敬を集めている。高い技術の持ち主だ。Dyeが在職中に続けてきた仕事のなかに、さまざまなプラットフォーム上でiOSのルック&フィールを統一するというものがあった。San Franciscoフォントもそのひとつだ。

ソフトウェアのデザインチームが遭遇した災難でもっとも大きかったのが、私が思うに、iOS 7だ。それは、自動車や腕時計、さらにその先の新しいプラットフォームのためにiOSを拡張するといった、いくつかの正統な理由により過去と決別する必要があった。しかしジョニーは、インタラクティブなものではなく、デザインを紙に印刷して持ってきた。アップルの他の部署からデザイナーが集められ、それに肉付けをして最終デザインが取りまとれられた。そうして出来たのが、過激に新しく、しかし過激に使い辛いiOSだった。

iOS 7は、いつも私に、どこで聞いたか覚えていない真偽が疑わしい話を思い出させる。運転が難しいことで悪評高いポルシェ911に関する話だ。ポルシェは美しい過ちを犯し、それを修正するのに50年を費やした。

911は、最初からバランスの悪い車としてデザインされた。エンジンを後部に配置して、重量とトラクションで地面に伝わる力を高めようとしたのだ。それでも冗談抜きで、食料品を積むことができる。

しかし残念なことに、それによって極端なオーバーステアとなってしまった。コーナーに勢いよく突っ込むと、いきなり車体が外側に流れる。ポルシェは、モデルチェンジのごとに、トラクション、長いホイールベース、ステアリング、ブレーキ、ギヤなど、あらゆる別の要素を改良して、それを改善しようとしてきた。オリジナルの形状は残したままでだ。しかし、打つ手がなくなれば死ぬだけだ。

アップルも、iOS 7でまったく同じことをしていた。必要と信じていたコンセプトはそのままに、もっと使いやすかった時代に戻そうと努力を続けてきたのだ。

iOS 7が登場したとき、とても気になったのが「ガラスのペイン」というメタファーだ。当時はそこまで明確ではなかったが、私はこれが、Palmからヘッドアップディスプレイまで、あらゆるインターフェイスに対応するための手段だと確信した情報機器の革命だ。

ダイ氏とデザインチーム(そして公正を期するならジョニー)は、最後の数年間を費やして、メカニカルな問題に対処する大幅な修正を行った。だが、今年のWWDCで、ガラスのペインのメタファーがかなり強調されていたことに私は興奮を覚えた。それは単なる深度とテクスチャのあるペインなのだが、願わくば今回は、もっとアクセスしやすいコンテキストを備えてほしい。

ジョニーが「完璧」なデザイナーであったとしても、アップルは常に少人数のチームに意志決定をさせている。一人の人間ではない。アップルは、プロダクトマネージャーに依存することなく実際に現場で作業をする人たちに大きな権限を与える構造になっている。多くのたちは、ジョニーが去れば、みんなはたちまち指示どおりにしか動けないボンクラになってしまうと心配しているようだが、私はそうは思っていない。そんなDNAはアップルにはない。

だからと言って、疑問がないわけでもない。ジョニーはアップルで巨大な力を持っていた。だから彼が去った後、デザインを重視するアップルの人たちは何を愛すればいいのかを気にするのは、そこに興味を抱くのは、そしてもちろん心配するのは、ごく自然なことだ。

ミッドソールがカーボンでプリントされたAdidas Futurecraft

私は、確立されたアップルのデザインパターンと、新進気鋭の考え方とがよいバランスを保ってくれることを願っている。どんな企業も、過去に完全に根を下ろしてしまうべきではない。今現在、デザインにも製造の現場にも、ものすごく面白いことが起きている。プログラマティック・デザインや「AI」デザインでは、デザイナーがアルゴリズムと制限範囲を定義することで、「あり得ない」ような形状を最新の素材から生み出すことができる。それは、従来の方法で絵に描いたり、形にしたりはできないものだ。

上の写真は、アーティストとアルゴリズムがコラボレーションして生まれた靴だ。Daniel Arsham(ダニエル・アルシャム)、アディダス、Carbonというスタートアップが、目標と扱う素材を理解し、ゴールまでの計画を自分で立てるデザインプログラムの助けを借りて作り上げた。これはデザインの新しい流派だ。

デザインと製造の積み重ねをひとつのセグメントに圧縮したもの、それが製品開発の今の時代の典型的な特徴になるのだと私は考える。アップルはその波に飛び乗る必要がある。

クパチーノのアップル旧本社ビルであったInfinite Loop 4の壁に、でかでかと掲げられていたスティーブの言葉がある。「何かを行って、それがとてもいい結果を生んだなら、他に素晴らしいことをすべきだ。長い間そこに居座ってはいけない。次は何かを考えるのだ」。

アップルのデザインチームがそうしてくれることを、私は楽しみにしている。新しい考え方を受け入れ、これまでうまくできてきた確実な方法とを統合する道を探る。この数年間、これほどアップルに魅力を感じ、追いかけたいと思ったことはない。どんな展開になろうが、退屈することはないだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

ジョニー・アイヴ、iPhoneのマルチタッチや創造プロセスを語る。「Macを開発した人と確かな繋がりを感じた」

eng-logo-2015MacやiPod、iPhoneなど数々のアップル製品を手がけたジョニー・アイヴ氏が、英ケンブリッジ大学にて講演会を行ったことを海外メディアが報じています。この講演は、今年9月にアイヴ氏がスティーブン・ホーキング・フェローシップを受賞したことを記念したものです。

講演の内容は、アイヴ氏とMacとの出会いや入社後のキャリア、手がけた技術やデザイン、創造のプロセス全般といった多岐にわたる話題に及んでいます。

アイヴ氏は大学でインダストリアルデザインを学んだものの、技術には苦手意識があったとのこと。しかし、アップルのMacとの出会いがすべてを変えたと語っています。

1988年に出会ったMacでは、2つのことを学びました。1つは、実際に使いこなせるということ。Macを使うのが大好きで、デザインや作成に役立つとても強力な道具となりました。もう1つは……デザインを4年も勉強してから分かったと認めるのは恥ずかしいのですが、創られたものは、創った人が何者かを語っていると分かったことです。

製品とは、創った人の価値観や考え方を形にしたものです。私はMacを使って、実際にMacを開発した人たちと確かな繋がりを感じました。初めて、機能的なものを超えて明らかな人間性と思いやりに気づいたんです

そしてアイヴ氏は、初代iPhoneの最重要テクノロジーと言えるマルチタッチの開発に言及。このインターフェース開発が2002年から2003年頃に始まったことから、2008年のAppStoreに至った経緯を振り返っています。

それはマルチタッチと呼んだプロジェクトでした。このインターフェイスを初めて体験したときのことを覚えている人もいるかもしれません。おそらく、それは初代iPhoneやiPadだったでしょう。しかし、元々マルチタッチの狙いは、画像をズームしたり指でフリックできるという風に、コンテンツに直接触れたり対話する機能だったんです。

重要なのは、(マルチタッチが)独自のインターフェイスを持つアプリケーションを作成できる場となったことです(中略)。私達はアプリケーションを具体的で魅力があり、使いやすいものにできました。そうして膨大な数のアプリの可能性が明らかになり、AppStoreのアイデアも浮かび上がってきたわけです

アイヴ氏がアップル製品と出会って30年近くが経ちますが、いまだに衰えを知らない創造への意欲も語られています。

今でも創造的なプロセスには惚れ込んでいますし、畏敬の念さえ抱いていますよ。私は予測不能なことと驚きが大好きなんです。創造のプロセスは、全てがとても恐ろしくて先が見えません。でも、(休み明けの)月曜日には大好きになってる。アイディアも何もなく、会話もなく部屋も静かで、もちろん描かれた絵もない。試作品は、将来にしかないんです。月曜日には何もないが、水曜日には存在している。部分的なものであれ、暫定的なものであれかまいません。問題は、何週目の水曜か?ということです

そしてアイディアを生み出す「好奇心」と、それを製品に導入するための現実的な「解決策」は、得てして矛盾しかねません。そんな創造を巡る葛藤について、アイヴ氏は次のように述べています。

正直なところ、私は仕事の2つの方法、2つの両極にあるやり方について、確たる考えはありません。一方では絶えず疑問を抱き、驚きを愛し、好奇心で夢中になりながら、他方では集中力を振り絞って、たとえ前例や参考になる事柄がなかったとしても、克服不能な問題を解決しようと力を注がなければならない。

そうした好奇心と解決方法を両立するという、難しい問題を解決するためには新しいアイデアが必要となり、アイデアをひねり出すにはオープンな好奇心を持っていなければなりません。数年にもわたるプロジェクトでは、そうした考えの切り替えは1回か2回ではすみませんね。1日に1〜2回は起こることもありますし、「好奇心と解決方法」の2つを行き来するのはとても厄介ですよ

一時はデザインの現場から離れてCDO(Chief Design Officer)職についていたアイヴ氏ですが、2017年末にはデザインチームの陣頭指揮へと復帰。アイヴ氏が設計から建設まで関わっていた新社屋アップル・パークはスティーブ・ジョブズ・シアターをはじめ驚きに満ちていますが、今後は再び目をみはるようなデザインのアップル新製品が登場するのかもしれません。

Engadget 日本版からの転載。

Jony Iveがチャリティオークションのために一台かぎりのiPad Proをデザイン…‘デザインの美術館’のためだ

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テクノロジーのコミュニティの中で生活している者にとって、本当に自慢できる物ってなんだろう? なんでそんなことを聞くの? とにかく、見せびらかして人の注目を集めたいという欲求がある人、それを健全な欲求と思える人、そして、とにかく本当に自慢できる物が欲しい、という人は、Jony Iveが特別にデザインしたこの、iPad Proに入札するとよい。それは、ある立派な目的のためだ。…少なくとも、あなたがそう思えるならば。

ロンドンのDesign Museumが、移築のための資金を募集している。今年中に、今のKensingtonから、テームズ河畔、Tower Bridgeの東側の、歴史的地区に移りたいのだ。

そのiPadはPro 12.9″タイプで、表面は陽極酸化により黄色い特殊染料の皮膜が覆っている。コバルトブルー色の革製スマートカバーもある。スエードを特製のマイクロファイバーで縫ったやつだ。Apple Pencilも必要だから、そいつは炎のようなオレンジ色の革製ケースに入っている。

iPadの裏には、レーザーで”Edition 1 of 1″と彫ってある。それが、本物の証明になる。レーザーによるエッチングは誰にでもできるが、その表面を本体と同じイエローにするのは至難だ。

せりは4月28日から始まる。主催当局は、落札価格10000〜15000ユーロ(約15000〜20000ドル)ぐらいを予想している。

黄色いiPadよりも、すばらしいビンテージの自転車や、前世紀半ばの可愛らしい寝椅子などの方がいい人は、今すでに行われているネットオークションを覗いてみよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ジョニー・アイブは、デザインに没頭してAppleの決算数値を知らなかった


Appleのデザインリーダー、Jony Iveは昨夜(米国時間10/30)サンフランシスコの近代美術館で講演し、Appleのスマートウォッチのデザインに苦労したことを話した。Wall Street Journalが報じた。Apple Watchをデザインすることは、「困難かつ屈辱的」であり、それはウェアラブルに関する技術やデザインに対する消費者の期待のためだとIveは語ったが、おそらく最も興味深かった発言は、Appleの売上と利益に対する彼の無頓着さだった。

Iveは、Appleが他の問題に優先して製品デザインに力を入れていることを指摘し、製品が第一、利益は後からついてくる、という同社の精神は賞賛に値すると言いたげだった。その点を強調するように、IveはAppleが最近発表した2014年度の年間売上1830億ドル、利益400億ドルなどの具体的数値をよく知らないという驚きの告白をした。

「正直なところ、数字は知らないのです」とIveはWSJに答えた。「でも大きい数字であることは知っています」。

Iveが会社の財務状況について具体的知識がないと明言することは、CEO直轄の上級幹部としては異常な行動にも思えるが、この著名なデザイナーは製品デザインに集中していることで知られており、彼が財務状況にさほど興味を示していないという事実は、製品を利益に優先させるという同社の長年の信念を後押しするものであり、顧客は最高品質の製品デザインを手にすることができるというメッセージと言える。

もちろん、製品デザインに100%没頭して、金銭問題を気にせずにいられる贅沢は、好調な企業にのみ許される特権であり、Iveがデザインルームにこもっていられることは驚きではないかもしれない。

Apple Watchは来年早くにデビューの予定で、Appleはファッション業界でもこれを強く推進しており、Vogue誌の記事には写真が紹介され、パリのファッションウィークでもイベントを開催した。それはまた、大きくIveの肩にかかっているApple製品でもある。そのデザインセンスに向けられている注目の大きさと、ユーザーが1日の大半身につけることになるデバイスにおけるデザインの重要性を踏まえれば、当然だろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


あなたならいくら払う? ジョナサン・アイブがデザインしたゴールドイヤホン

あなたなら、Jony Iveがデザインした一点ものにいくら払うだろうか?

先週Sothebyのデザイン中心オークションに集まった人々は、(ものによっては)世界的有名なデザイナー、Jony IveとMarc Newsonによって収集あるいはデザインされた商品に、1200万ドル以上を費した。

このオークションは、Bonoのプロジェクト(Red)の一環で、利益はAIDS、結核、マラリアと戦うGlobal Fundに贈られる。

しかし、最も予想以上の成果を上げたのは何だったのか?

予想にたがわず、テクノロジー関連の物件は予想以上の値を付けた。

例えば、 (Red) バージョンの赤いアルミニウムで作られたカスタマイズ版Mac Pro、Jony Ive選出は、97万7000ドルで落札された。そう、殆ど100万ドルだ。数年後、Appleがさらに素晴らしくて強力な製品を出した時には時代遅れになるパソコンが。

一方、Jony IveとMarc Newsonのデザインおよびカスタムメイドによるライカカメラは180万ドルで売れた。予定価格は50万~75万ドルだった。スペックは、F2.0、50mmのレンズと、陽極酸化処理済みアルミニウムボディーで、その価格を請け合うほどの価値はない。しかし、IveとNewtsonの名前には間違いなくその価値がある。

オークションには、IveとNewsonがカスタマイズしたローズゴールドのEarPodsも出品された。予想価格2~5万ドルの豪華なイヤホンは、46万1000ドルで売れた。ゴールドiPhone 5sの完璧なパートナー、だろう?

オークションで最高値を呼んだ商品の一つは、IveとNewsonがデザインした特別製デスクで、168万5000ドルで売れた。デスクは陽極酸化アルミニウムで作られ、どのデザインマニアの目も引く作品だが、おそらく最も重要なのは、誰がデザインしたかだろう。

iPhoneの時代に、Jony Iveデザインという印象がもたらす価値を見せつける話だ。iPhone自身が誰でも知っている名前になったように、Iveは世界で数少ない名前を知られたデザイナーになった。だからこそ、彼がデザインし、彼が選んだ商品なのだ。

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(翻訳:Nob Takahashi)


Appleが発売前のMac Proを真っ赤にカスタマイズしてAuction REDチャリティに出品

AppleのビッグデザイナーJony Iveと、世界のビッグデザイナーMarc Newsonが協力してカスタマイズした一台かぎりの真っ赤なMac Proが、U2のボノらによるチャリティオークションAuction REDに出品される。アフリカのAIDS撲滅を主な目的とするこのチャリティに、Appleはこれまでも頻繁に、このような特別製品を提供している。

REDからの発表によると、Appleの品目からの売上金額は累計6500万ドルに達している

このマシンはとっても美しいので、AppleのMac Proはすべてカラー化されるといいのに、とすら思ってしまう。この最新機種の一般発売は12月、オークションは11月23日に行われる。予想価額は4~6万ドルだ。

IveとNewsonが協作した限定アイテムは、ほかにLeicaのカメラやAppleのゴールドのイヤフォン、Neal Feay作のデスクなどがある。

オークションサイトSothebyの画像は変わることがあるので、これは最終製品ではないかもしれない。それでも、見事だけど。

REDとAppleに詳細を問い合わせているが。IveとNewsonによるREDオークションには、彼らの友人デザイナーたちからの協力作品も多く出品される。たとえばDeiter Rams、ファッションデザイナーのChristian Louboutin、それに大御所アーチストGeorge Lucasなど。

なお、下の、本誌が今週初めのAppleのイベントで撮ったビデオには、“本物の”Mac Proが写っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


iPhone 5cは「廉価版」にあらず。Jony IveがiOS 7搭載用としての理想を追求したデバイスだ

ご存知だろうか。iPhone 5cの「C」は「cheap」(安い)の「C」ではない。実は「clueless」(何も分かっちゃいない)という単語の頭文字なのだ。

部外者の誰もが、Appleがこのデバイスにこめた思いを見損じている。Appleはそれを見越して「clueless」を名前に組み込んだのだ。

(本当は「color」の「C」。記事を派手に初めてみたかっただけだ)。

新iPhoneの発表イベントを見て、さらにiPhone 5cのビデオを見てみれば、AppleがiPhone 5cに込めた思いを理解できるはずだ。その「思い」とは、すなわちJony Iveによるものだ。

これまでにJony Iveのビデオは数多く見てきた。その中で、iPhone 5cの説明をしているIveこそ(iPhone 5sに比べても)エキサイトしているように見える。もちろんIve(そしてApple)は認めないだろう。これまでのビデオも含め、Iveはすべて自分の子(Appleのプロダクト)について語ってきたわけだ。しかしiPhone 5sのビデオなどとも比較して、何度も見てみて欲しい。

双方のビデオにおける態度が対照的であると感じないだろうか。Appleが投入した次世代の主役はiPhone 5sだ。しかしiPhone 5sはiPhone 5とほぼ同じデザインを踏襲している。すなわち、Iveがハードウェアのみに関わり、ソフトウェアのデザイン面に関わるようになる前に生み出されたものであるのだ。

つまり、IveがiPhone 5を生み出す時点からiOSのデザインに関わっていたのなら、きっとiPhone 5をこのようにデザインしただろうというものが、まさにiPhone 5cであると思うのだ。昨年冬の組織改編から、より広い範囲でのデザインを担当するようになり、それでIveは思うままのデザインを実現してきたのではないだろうか。

「iPhoneというのは“エクスペリエンス”を提供するものです。そして“エクスペリエンス”は、ハードウェアとソフトウェアの生み出すハーモニーにより提供されるものです。ハードウェアとソフトウェアをより一体化することにより、さらに素晴らしい“エクスペリエンス”を提供していきたいと考えているのです」と、Iveはビデオ中で語っている。ハードウェアおよびソフトウェアのデザインを一手に引き受ける責任者としての発言であり、その責任者がiPhone 5cを世に問うているわけだ。

今年の夏、WWDCにてiOS 7がはじめてお目見えしたとき、そのカラフルなパレットUIに皆が驚いたものだった。しかし、長くApple製品を使っている人(あるいは長くAppleおよびIveに注目している人)は、初代iMacを思い出し、確かにこれもAppleないしIveのやり方だと納得したのだった。13種類のカラーバリエーションを用意して、Apple再生に大いに役立った。まさにカラーこそAppleのウリとなっていたのだ。

確かにIveはそれからしばらく、プラスチックからユニボディのアルミニウム(Iveの口調で言えばアリュミナムのように聞こえるだろうか)へと路線を変更していった。しかしそういう時代を経て、Iveは原点に戻ってきたのではないかと思うのだ。芸術家が、異なる時代を過ごすようなものとも言えるだろう。

ソフトウェア面にも関与できる立場となり、今ならば、色彩を一層活用できると判断したのだろう。ますます思いのままの「エクスペリエンス」を提供できるようになるからだ。

「一貫性のあるデザインとは、形状、素材、そして色合いなどのミックスによって生まれるものです。それぞれが関係しあって、お互いを求める関わりあいの中でプロダクトが成立するのです」とIveは言っている。Iveの上司でありまた仕事仲間でもあったスティーブ・ジョブス曰く、デザインというものは表面的なものではなく、あるいは見かけだけのものでもなく、実は機能面に強く関わっているのだとのことだった。そしてこうしたデザインを行うためにはハードウェアとソフトウェアの双方に関わる必要がある。IveはiPhone 5cにおいて、その地位を獲得し、そして理想を実現したわけだ。

しかし、果たしてこのiPhone 5cは中国やインドといった、普及途上国での売り上げを伸ばすのに役立つのだろうか。おそらくさほど役に立たないに違いない。実は、廉価なiPhoneを途上国に売り込むのが目的だというのは、何もわかっていないレポートによるミスリードなのだ。プラスチック素材であることを見て、なるほど新興国用の廉価版iPhoneだと騒ぎ立てたのだが、実はAppleの目的はそこにはない。

iPhone 5cは、iPhone 5に代わるものとして登場してきているのだ。Appleは、4Sの販売は続けるものの、iPhone 5は店頭から引き上げることになっている。Iveは、自分でデザインしたソフトウェアの入れ物としてのハードウェアをデザインし、iPhone 5にとってかわるiPhone 5cに自分の思いのたけを詰め込んだのだ。

iPhone 5cを投入したことで、Appleは「前年モデル」などよりもはるかに魅力的な(販売助成値引きして99ドルという、手に入れやすい価格)モデルを提供できるようになった。また、デザイン面でほとんど変更のないiPhone 5とiPhone 5sが(色こそ違うものの)混乱を招くような自体も避けることができる。すなわちiPhone 5cの投入はまさに良いことずくめな話なわけだ。

但し、テック系の「専門家」や、ウォール・ストリート方面には、Appleの選択を「良いことずくめ」とはみない人も大勢いる。そうした人はともかく「安いiPhone」を期待していたのだ。また、キーボードを登載したiPhoneの登場を待ち続けている人もいるらしい。

Appleは、ライバルに強いられて何らかの行動をとるといったことのほとんどない企業だ。周りの動向を気にしてばかりいては、戦略を見失うことになる。Appleは常に自らの戦略を大事に育んできた。もしAppleが「安い」iPhoneを出せば、Appleが収支報告で利益率の低下をアナウンスするまではAppleを「評価」するのだろう。そうした「評価」を受ける「イノベーション」は、実のところ誰も得をしない選択であるのだ。

もちろんAppleも、中国などの新興市場を無視しているわけではない。Tim Cookはなんども繰り返して新興市場に言及している。しかしAppleは、自分たちがここぞと思ったタイミングで、自分たちが良いと思うプロダクトを投入するだけだ。もしかするとそれは新興市場の獲得という面でみれば遅すぎる行動になるかもしれない。しかしそれはまだ評価すべき時ではないだろう。ともかく、iPhone 5cが新興市場向けの安価なデバイスというわけではないことは明らかだと思うのだ。

iPhone 5cは「Jony IveのiPhone」とでも言うべきデバイスだ。色彩豊かで、そして美しく、何らかの代替物としてではなく、プラスチックの魅力を前面に押し出したデバイスだと言える。

「ハードウェアとソフトウェアがお互いに高め合ってひとつのデバイスとして結晶しているのです」。

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(翻訳:Maeda, H)


iOS7で伝統のスキューモーフィズム追放の噂―Appleが必要としているのは新デザインではなく新たなキラー・サービスだ

噂によれば、iOS 7はこれまでiOSデザインの中核となっていたスキューモーフィズムのほとんどを捨てることになるという。新たにiOSの責任者となったJony IveはiOS 7から現実を模倣したリアルなテクスチャーを備えたデザインをことごとく追放し、きわめてフラットなものに置き換えたという。

それはそれで結構だが、iOS 7の新機軸がそこで終わりだったら Appleは大きな問題を抱え込むことになる。真の問題はiOSの見た目ではない。Siri、iCloud、iTunesといった中心的なサービスがGoogleや多くのスタートアップが提供するものに比べて今や見劣りすることが問題なのだ。

携帯電話のハードウェアというのは金属ないしプラスティックの薄い筐体の上に高精細度モニターを取り付けたものに過ぎない。そういうもので他社といつまでも大きな違いを出しつづけるのは難しい。なるほどAppleの製品は現在でも他のほとんどの製品に比べて品質に優位性がある。しかしその優位性は日一日と縮まっている。Appleはアプリの質と量を誇ってきたが、1年前に比べると、今はその説得力も薄れている。というのも優秀なアプリのほとんどはAndorooidとiOS(あるいはやがてWindowsPhoneでも)の双方で利用できるからだ。

今やメーカーがライバルに差を付けられる領域は提供するサービスになっている。SamsungやGoogleはこの点を理解している。Appleももちろん理解しているはずだが、現在提供されているサービスは一頭地を抜いて優秀という域には達していない。鳴り物入りで登場したSiriだったが、今になってもそれほど高い実用性を持つには至っていない。iCloudは特長がよくわからないサービスだし、クラウド・ストレージを必要とするデベロッパーはAppleのサービスよりGoogle Drive やMicrosoftのSkyDriveのようなクロスプラットフォームのサービスを好むようになっている。 iMessageは優秀なサービスだがキラー・サービスというほどの力はない。さらにこの分野ではWhatsAppを始めサードパーティーのメッセージ・サービスが猛威を振るっている。Mapsについては触れずに置くのが無難というものだろう。

一方でGoogleはユーザーがその時点で必要としそうな情報を予め推測して提供するGoogle Nowを提供している。またGoogleは「定額・聞き放題」の音楽サービスをAppleのiRadioに先駆けていち早くローンチした。地図、クラウド・ストレージは言うまでもなく、Googleドキュメントの生産性アプリも何光年も先を行っている。GoogleがQuickofficeを買収したので、Appleがこれまであまり力を入れて来なかったPages、Numbers、Keynoteといったツールより優秀な生産性ツールがiPadに提供されるかもしれない。なるほどGoogle+はまだFacebookほど巨大な存在ではないが、Googleに膨大なユーザー情報をもたらしつつある。一方、AppleはといえばPingで失敗したままだ。

Googleはデータとサービスだけでなく、デザイン分野においてさえ徐々に進歩している。Appleもいくつかデータセンターを持っているとはいえ、基本的にはハードウェア・メーカーだ。Appleの問題はライバルが次第に優秀なハードウェアを作れるようになり、品質における差を詰めつつあることだ。ライバルに対する優位性を今後も維持するためにはサービスで差をつけるしかない。

iOS 7のデザインはiOS 6より優れたものになるのだろう。しかしそれはショーウィンドウの模様替えに過ぎない。Appleが真に必要としているのはライバルにない新たなキラー・サービスだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


iOS 7の新装フラットデザインでJony IveはB&W(黒と白)を多用

6月のWWDCで発表されるiOS 7については、デザインの大変更の噂が氾濫しているが、9to5Macの背後にいる、比較的確かな情報筋によると、その新デザインではいわゆる“フラットデザイン”が強調されるだけでなく、UI全体においてB&Wの成分が多用されるらしい。

その記事は、これまでの情報も繰り返している…Jony IveはAppleのモバイルOSに対して大鉈をふるっている、とりわけiOSの視覚的な側面の改変に彼は集中している。そして新しい情報としては、Iveが全面的な廃止をねらっているスケウオモルフ的(skeuomorphic,実物の何かに似せたデザイン)*なUI成分に関する詳細と、そのほかのUI成分やアプリや一部機能の変化についてだ。〔*: skeuomorphic,たとえば、本物の機器パネル上のボタンに似せた立体的なデザインのボタン、など。〕

Iveは、これまでのiOSの重いテクスチャは永続性のないデザインだと感じている。9to5Macの情報筋によると、だから彼は真っ先に、その今や古びたルックスのリフォームに取り組む。物理的なメタファ*に基づくデジタルデザインは行き止まりの袋小路であり、個々のiOSアプリ…Notes、Maps、Game Centerなどなど…の不調和感、バラバラ感を重症化している張本人だ、と彼は考えているようだ。Windows Phoneなど最新のモバイルインタフェイスは統一感を重視しているが、しかしまだまだiOSと互角に勝負できるほどの状態ではない。フラットデザインはテクコミュニティで賞賛されていても、一般消費者のレベルで受けるとは限らない。〔*: 物理的なメタファ、たとえば“フォルダ”(ディレクトリ)を文房具のファイリングフォルダ…という物理的な物…で表す、といった流儀のデザイン。〕

人びとがこれまでのiPhoneで使い慣れているものの一つであるロック画面は、大きく変わる。9to5Macによると、それはついにアイコン主体のロック画面になり、光沢のない黒のインタフェイスになる。セキュリティコードの入力にはグリッドに代わって円形ボタンが使われ、通知はマルチタッチによる対話機能が増強されることによってより便利になる。

通知そのものも変わる。リンネルの布地のような背景は捨てられ、B&Wが支配する世界になる。Notification Centerのウィジェットが増えて、Wi-Fi、Bluetooth、Airplane Modeなどへのアクセスが加わる。

ホーム画面では、ボタンの光沢がなくなり、システムアプリはよりフラットなデザインになり、これまでほど頻繁に“ポップ”しなくなる。そしてなんと、iOS 7にはAndroidからの借り物もある: パノラマ的にスクロールできる壁紙が加わり、それがホーム画面全体…すべての画面要素…を載せる。従来のように個々の画面要素に対し一つの同じ静的な画像が使われることは、なくなる。またオンスクリーンキーボードのような共通的なインタフェイス成分はどれも、これまでのような影つきの仮想的立体感を排し、フラット化されると共に色もB&Wとグレーが主体になる。Mail、Calendar、Maps、Notesなどのコアアプリにも同様のUI変更が行われ、とりわけ、W(白)が強調された統一感のあるデザインになる。ただし、逆にボタンは色とハイライトを個々に変えることによって、全ソフトウェア共通的なデザイン基調の中で、「どのボタンが何であるか」がすぐ分かるようにする。

新しい機能としては、iPhone用のスタンドアロンのアプリとしてFaceTimeが提供され、FlickrとVimeoを統合、MapsとSiriでは車載用ハンズフリーツールがより充実する。またデベロッパ向けの変更事項も多くて、iOSのアップデートでは恒例の、公開APIの大幅増も当然ある。

9to5の記事によると、これらの変更は今秋発売の新型iPhoneと、おそらくiPadにも実装される。しかしチームはiPhoneのiOS 7バージョンを優先しているようだから、iPadはややあとになるものと思われる。そしてすべては、6月10日のWWDCのキーノートで明らかになる。本誌はもちろん、ライブで報じていくつもりだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))