12月開催のSight Tech Globalでマイクロソフトの研究者が視覚障がいに対する「パーソナル」なAIのあり方を語る

Microsoft(マイクロソフト)の主任研究員であるCecily Morrison(セシリー・モリソン)博士が視覚障がい者にとってAIがどう役立つかを研究しているのは、強い個人的な思いによるものだ。博士の7歳の息子が視覚障がい者だからというだけではない。人を助けるパワフルなAI関連テクノロジーは、それぞれの人の環境や能力に応じてサポートするパーソナルなものであるべきだとの信念があるからだ。

Microsoft Research Cambridgeでヒューマン・コンピュータ・インタラクションやAIについて研究しているモリソン博士は「ユーザーが自分の体験をパーソナライズできるような新しいAIテクノロジーが登場するだろう」と言う。「一人ひとり、すべての人が異なる。障がいがあるというラベルは、同じラベルを持つ別の人と同じニーズを持つという意味ではない。それぞれに固有のニーズに合わせて体験をパーソナライズするために、新しいテクニックによって障がい者の情報のニーズをごくわずかなサンプルでAIに教えることができる。テクノロジーは障がいというラベルのためのものではなく、パーソナルなニーズのためのものになる」。

画像クレジット:Cecily Morrison

モリソン博士は12月2日と3日に開催されるバーチャルのグローバルイベント、Sight Tech Globalで講演をする。Sight Tech Globalは、AI関連テクノロジーによって視覚障がい者のアクセシビリティの未来がどのように具体化されるかを考えるイベントだ。先日、TechCrunchで開催が発表され、現在は事前登録を受け付けている

モリソン博士は現在、全盲やロービジョンの人々に対するAIの可能性を探るいくつかの研究プロジェクトに関わっている。例えばProject Tokyo(Microsoft発表)では、周囲の状況に関する情報をリアルタイムで提供し、意味づけのスキルと能力を拡張する方法を研究している。

研究チームは全盲やロービジョンの人々と緊密に連携し、その体験とニーズに基づいて研究をしている。「きわめて重要なのは、全盲やロービジョンの人々の能力を高めるためにテクノロジーは何ができるのかを考えることだ。視覚障がい者の多くは高度なストラテジーをもって周囲を認識し意味づけている。AIテクノロジーは、情報のギャップをカバーすることでこうした高い意味づけのスキルをさらに強化するものでなくてはならない。テクノロジーは視覚の代わりではなく、人が生活の中ですでに持っている情報を補強するものと捉えることが大切だ」。

視覚障がいの子を持つ母親としてモリソン博士は「違う視点で世界を見てきたし、他の立場では見ることも参加することもなかったであろうコミュニティに参加してきた」という。このことは間違いなく博士の研究を後押ししてきた。インクルーシブデザインのプロジェクトであるProject Torino(Microsoftブログ)は、視覚障がいを持つ子どもたちがプログラミングを学ぶというニーズから発想を得ている。このプロジェクトから、視覚の程度を問わず7〜11歳の子どもが計算論的思考と基本的なプログラミングを学ぶための物理プログラミング言語が作られた。この取り組みがCode Jumperというプロジェクトにつながり、視覚障がい者の教育や自立支援に取り組むNPOのAmerican Printing House for the Blindから有料で販売されている。

視覚障がいを持つ7〜11歳の子どもたちと緊密に連携して試行錯誤することで、このプロジェクトが成功した。そしてモリソン博士は、対象となる人々と研究者が緊密に連携する重要性について理解を深めた。さらに博士は、視覚に制限のある人々は一般に、テクノロジーに対して際立ったアーリーアダプターであると指摘する。

モリソン博士は次のように語る。「エージェントを利用した空間で、我々は全盲やロービジョンの人々とともに研究をしてきた。なぜなら、我々がエージェントの研究を始めた時点では、一般の人はエージェントのヘビーユーザーではなかったからだ。それどころか、ほとんどの人がエージェントはおもちゃだと考えていた。その一方で視覚障がい者はエージェント技術のアーリーアダプターでありヘビーユーザーだった。彼らはエージェント技術の可能性を広げるための大きな力になった。テクノロジーを日常的に使っていなければ、今後どうなるかを想像することはできない。能力の高い視覚障がい者のグループと協力して、未来のエージェントが私たちすべてにとってどのようなものになるかを考えることができる。これはインクルーシブデザインの好例だ」。

モリソン博士はケンブリッジ大学でコンピュータサイエンスの博士号を取得し、コロンビア大学バーナードカレッジで民族音楽学の学士号を取得した。パートナーと2人の子どもがいて、子どものうち1人は視覚に障がいがある。

現在、Sight Tech Globalでは事前登録を受け付けている。メインプログラムは無料で視聴できる。

Sight Tech Globalはスポンサードを受けて開催するイベントで、これまでにWaymoGoogle、Wells Fargo、TechCrunch、Verizon Mediaがパートナーとなっている。収益はすべてNPOのVista Center for the Blind and Visually Impaireの収入となる。スポンサーシップについての問い合わせはsponsor@sighttechglobal.comまで。

画像クレジット:Sight Tech Global

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(翻訳:Kaori Koyama)

Microsoft Azureの「読む能力」をアップするImmersive Readerが一般公開へ

米国時間8月25日にMicrosoft(マイクロソフト)は、アプリケーションに音声合成や読解ツールを追加したい開発者のためのサービス「Immersive Reader」を一般公開したと発表した。

Immersive Readerは、AzureのAIプロダクトであるCognitive Servicesスイートの一部で、開発者はテキストのテキスト音声合成エンジンにアクセスできるが、同じく重要なのは、一般的に使用される単語の上に画像を表示したり、与えられた文の音節や品詞を分離したりすることで、読者の読解力を向上させるツールを提供していることだ。

また、最新のブラウザで見られるのと同じように、気が散らず集中できる読書ビューを提供する。実査、マイクロソフトのEdgeを利用している場合、Immersive Readerは他のアクセシビリティ機能とともに気が散らない記事表示の一部として、すでに含まれている。また、マイクロソフトはImmersive Readerに翻訳サービスもバンドルしている。

画像クレジット:Microsoft

本日のローンチでマイクロソフトは15のニューラルテキスト合成音声に加え、翻訳サービスから新たに5つの言語、オディア語、北部クルド語、中央クルド語、パシュトー語、ダリー語を追加する。Immersive Readerがサポートする言語は、これで計70になった。

本日の発表にもあったように、マイクロソフトはCode.orgおよびSAFARI Montageと提携して、学習ソリューションにImmersive Readerを導入している。

「マイクロソフトと提携してImmersive ReaderをCode.orgのコミュニティに提供できることを嬉しく思っている。Immersive Readerの包括的な機能により、さまざまなバックグラウンドや能力、学習スタイルを持つ者のル独か威力と理解力を向上させることは、すべての学校の、すべての生徒にコンピューターサイエンスを学ぶ機会を確保するという私たちの使命と直接的に一致している」とCode.orgの創業者でCEOのHadi Partovi(ハディ・パルトビ)氏はいう。

マイクロソフトによると、2月から5月にかけてImmersive Readerの利用は560%増えたという。これは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで、オンライン教育のツールを求める人びとが多くなったためだろう。毎月、2300万人以上がImmersive Readerを使用しており、同社は新学期が始まる秋にはさらに増えると予想している。

関連記事:マイクロソフトがウェブ版Word用の音声文字起こし機能と音声認識機能を提供開始

カテゴリー:EdTech

タグ:Microsoft Azure

画像クレジット:Microsoft

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マイクロソフトがWord用の音声文字起こしサービスを提供開始

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間8月25日、Microsoft 365の利用者全般に向けた新しい音声文字起こしサービス「Transcribe in Word(トランスクライブ・イン・ワード)」を開始(Microsoftブログ)したことを発表した。現在、この機能は、Word(ワード)のオンライン版で使用できる。他のプラットフォーム用のものは、後日追加される。さらに、新しい音声認識機能もWordに追加された。例えば、文章のフォーマット調整や編集が声でできるようになる。

その名前が示すとおり、この新機能は会話を文字に変換してくれる。その場で話した会話にも、録音にも対応し、聞き取った文章はそのままWord上で編集が可能だ。これにより、MicrosoftはOtter(オター)などのスタートアップやGoogle(グーグル)のレコーダーアプリと競合することになるが、どれにも一長一短がある。

画像クレジット:Microsoft

Transcribe in Wordを使うためには、メニューバーの「Dictate」ボタンをクリックし、続けて「Transcribe」をクリックするだけだ。後は、そこで交わされる会話が録音される。例えばスピーカーフォンやノートパソコンのマイクから直接録音できるが、別の方法で録音してからファイルを読み込ませることも可能だ。対応ファイル形式はmp3、wav、m4a、mp4となっている。

マイクロソフトのNatural User Interface & Incubation部門の主席グループPMマネージャーであるDan Parish(ダン・パリシュ)氏は本日の発表に先立つ記者会見で、例えば電話の音声を生で録音するとき、インタビュー中にバックグラウンドで書き起こしが行われると話していた。彼らは、その場で書き起こした文章は、あえて表示させないように決めたという。ユーザーへの調査で、表示させると気が散ると指摘されたからだ。正直にいって、私はOtterやレコーダーがその場で書き起こしてくれるのを見るのが好きなのだが、そんな人間は私だけなのだろう。

他社サービスと同様に、Transcribe in Wordでも書き起こされた文章の段落をクリックすると、いろいろな速度で読み上げさせることができる。自動書き起こしには聞き取りミスが付きものであるため、これは必須機能だ。しかしながら残念なことに、Transcribe in Wordでは個々の単語はクリックできない。

今のところ、このサービス最大の制約は、オフラインで録音した音声ファイルを読み込む際に、長さが300分に限定される点だ。追加料金を払ってこれを延長することもできない。私は、月あたり5時間以上のインタビューを書き起こすことも少なくない。それを考えるとこの上限は低すぎる。Otterなどは、最も安いプランでも6000分の容量がある。Otterは最大が4時間。それに対してマイクロソフトは読み込むファイルサイズも200MBに制限している。ただし、生で録音する場合は制限がない。

もう1つ私が気づいたのは、誤って録音中のWordのタブを閉じてしまうと、録音が中止されるという問題だ。しかも再開方法がどこにも見つからない。

また、読み込んだ音声ファイルの書き起こしにもかなり時間がかかる。録音した会話と、ほぼ同じぐらいの時間になる。だが、結果は極めて良好だ。競合サービスよりも優れていることも多い。さらにTranscribe for Wordは、会話中に話し手が変わったときに区別する能力にも長けている。ただしプライバシー保護の関係上、いつも同じ人間が録音する場合でも、いちいち自分の名前を登録する必要がある。

OneNote(ワンノート)などにも、同じような機能があったらいいと思う。マイクロソフトはいずれ、同社のメモアプリにもこの機能を追加するだろうと私は考えている。私には、そちらのほうが使い慣れているのだ。

画像クレジット:Microsoft

Wordの新しい音声認識機能は、例えば「最後の文章を太字に」といったコマンドを出したり、「パーセンテージのマーク」や「アンパサント」というように声で記号を入力することが可能になる(Wordでそんなノリの文章を書いている人の場合は「笑った顔」なども入力できる)。

音声の書き起こしはそれほど必要ないという人もいるだろうが、この新機能には、同社のサブスクリプションサービスに新しいプレミアムな機能を追加することで、無料プランのユーザーを有料プランに誘うための役割もある。有料プランのユーザーにより多くの機能を提供しているMicrosoft Editor(エディター)やこの書き起こしサービス、またはExcel(エクセル)やPowerPoint(パワーポイント)に新たに搭載されたAI機能などのツールが、有料プランにユーザーを乗り換えさせる役に立たなかったとしたら、むしろ驚きだ。特に今は、利用者のためにOffice 365をMicrosoft 365に統合したところだ。その結果、Grammarly(グラマリー)とOtter(オター)を個別に契約するほうが、Microsoft 356よりもかなり高額になっている。

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

テクノロジー企業と法執行機関との協力の停止を訴える「テクノロジーは中立ではない」キャンペーン

法執行機関と協力したり、彼らに技術を提供している企業は少なくない。Amazonのドアベルカメラ企業Ringは1300以上の警察とパートナーしているし、Amazon Web Services(AWS)はそのプロダクトを移民税関取締局(ICE)に売っている。また、GoogleはG Suiteツールを警察に売り、Microsoft(マイクロソフト)にはシアトルの警察との契約があって、同社のGitHubにはICEとの契約がある。そしてNextdoorは、そのAgenciesアプリで警察とパートナーしている。

このようなパートナーシップを警戒する人びとによって、Tech Is Not Neutral(テクノロジーは中立でない)と名乗るキャンペーンが生まれた。創始者はチャリティNPOのKairos Fellowshipで、これにThe Movement for Black LivesやMedia Justiceなどの団体がパートナーしている。

Kairos FellowshipのキャンペーンマネージャーJelani Drew-Davi氏は、TechCrunchに次のように語った: 「Black Lives Matterのような黒人解放運動が起きると、テクノロジー企業とそのCEOたちは一応賛意を示すが、しかしテクノロジー企業は実際には、人の命や民主主義ともっと深く関わっている。テクノロジー企業の製品は人びとに現実的な結果をもたらし、それが良くない結果であるときには黒人などの有色人種がいちばん被害を受ける。このキャンペーンは、テクノロジーのこのような不公平をなくすことが目的だ」。

このキャンペーンは7月初めに立ち上がり、まず大手テクノロジー企業のCEOらに公開書簡を送った。その書簡の宛先は、AmazonやMicrosoft、Nextdoor、およびGoogleのトップで、Black Livesのためのアクションを要求している。しかしDrew-Davi氏によると、キャンペーンの現在のフォーカスはNextdoorとMicrosoftだ。6月にはNextdoorが、情報を警察に送る機能を無効にしたが、Tech Is Not Neutralキャンペーンの人たちは、ほかにもやるべきことがある、と言っている。

Drew-Davi氏はこう言う: 「Nextdoorは近隣社会の何千人もの人びとを結びつけるが、その人種差別問題は何年も前から詳しくドキュメントされている。それは、警察とのパートナーシップにより人びとが一方的に黒人を悪人として通報できることだ。それが、問題なのだ。Nextdoorはモデレーターを教育訓練すると言うが、警察との関係を断つとは言わない。彼らのプラットホームの上で黒人を保護するために、第一番にやるべきことがそれなのに」。

Microsoftの場合は、シアトル警察との契約に加えて、同社は米国防総省との100億ドルの契約を他社と競っている。またMicrosoftには2016年以来、国防総省やそのほかの法執行機関との5000件を超える下請け契約がある

Drew-Davi氏は曰く、「Microsoftには、国と州の両方のレベルで政府との深く絡み合った関係があり、それに関する情報の公開はない。われわれも、あの記事を読むまでは知らなかったのだ。Microsoftは、監視を要する重要な企業だ。Microsoftに光を当てれば当てるほど、このおなじみの名前の企業が私たちに害を与えていることが、分かってくる」。

Kairos Fellowshipのこのキャンペーンの直近のステップは、これらの企業との会話と、具体的な要望の提出、そして要望に彼らが同意しなければこれらの行為を一層強化していくことだ。Kairos Fellowshipの常務取締役Mariana Ruiz Firmat氏は、TechCrunchにそう語った。

Firmat氏は曰く、「これまでは、テクノロジーは中立であるという主張を隠れ蓑にして、テクノロジー企業は人種差別を許容し、権威主義を広め民主主義を破壊するやり方で彼らの技術が使われてきた。私たちがとても重要と感じているこの戦いは長期戦になると思うが、これまでテクノロジー企業に対して漠然と想定してきた中立的という見方を一掃して、実際には偏向があることを私たちは認めるべきだ」。

Microsoft(マイクロソフト)は、この記事に対するコメントを拒否した。そしてNextdoorとGoogleとAmazonは、本誌のコメントの求めを無視した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

自身も視覚障がいを持つ開発者がMicrosoft Seeing AIによるアクセシビリティ改善について語る

マイクロソフトのCEOを務めるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は2016年のBUILDカンファレンスでエンジニアのSaqib Shaikh(シャキブ・シェイク)氏を紹介し、彼の情熱と思いやりが「世界を変えるだろう」と述べた。

この予言は正しかった。シェイク氏はその後、目が見えないあるいは視覚障がいのあるユーザー向けのスマートフォンアプリ「Seeing AI」を共同開発し市場に送り出した。このアプリは AI の応用がアクセシビリティの改善にどれほど役立つかをよく示すケースとなっている。Seeing AIはスマートフォンカメラを利用し その場の情景を認識して描写してくれる。

例えば、人物の人数、性別、表情などを音声で告げる。また手書きのものを含め文章を撮影すると読み上げてくれる。紙幣であれば額面を対象物の色も分かる。アプリの最新バージョンではハプティック・テクノロジーを利用しておりユーザーは人物などの対象の位置を振動で知ることができる。このアプリは3年前の発表以来2000万回利用されている。現在のバージョンは日本語を含む8カ国語がサポートされている。

視覚障がい者のアクセシビリティを改善するテクノロジーをテーマとするオンライン・カンファレンス「Sight Tech Global」でシェイク氏が講演することになったのはうれしいニュースだ。シェイク氏はAIテクノロジーの急速な進歩がいか視覚障がい者の生活の質を改善しつつあるかを解説する。TechCrunchなどがメインスポンサーを務めるSight Tech Globalは、視覚障がい者を支援する活動を75年以上続けてきたVista Centerが主催する。このオンライン・カンファファレンスは最近TechCrunchで開催の詳細を発表した(未訳記事)。

シェイク氏は7歳の時に視力を失い、盲学校で学んだ。ここで視覚障がい者に「話しかける」ことができるコンピューターに魅了された。その後、英国のサセックス大学でコンピュータ科学を学んだ。シェイク氏によれば「大学卒業後常に夢見ていたのはいついかなる時でも自分の身の回りに誰がいて何が起きているのかを教えてくれるようなテクノロジーだった」という。同氏はこの夢の実現に向かって歩み続けた。

2006年にマイクロソフトに入社し、2014年と2015年の一週間に及ぶ定例ハッカソンでAIを視覚障がいのあるユーザーのためのソフトウェアの開発を試みた。その後間もなくSeeing AIは同社の公式プロジェクトとなり、 シェイク氏のフルタイムの業務となった。開発には同社のCognitive Services APIが決定的な役割を果たしたという。現在同氏は視覚障がい者のためにAIを役立てるチームのリーダーとして活動している。

シェイク氏は「AI について言えば障がいを持つユーザーは最も有望なアーリーアダプターだと思う。視覚障がい者は何年も前から本を音声録音によって利用してきた。人間の読み上げに代わるものとしてOCRやテキスト読み上げのテクノロジーなどが開発された。これらは初期のAIの応用といえる。現代ではコンピューターは高度な AI を利用して視覚的認識によって、文章化して読み上げることができる。このテクノロジーには数多くのユースケースが見出されている。しかし最も有望な分野は視覚障がい者に対して周囲の状況を認識し音声で教えるものだ。これは視覚障がい者の能力を信じがたいほどアップさせる」と説明する。下のビデオはマイクロソフトが2016年にリリースしたものでシェイク氏とSeeing AIプロジェクトをフィーチャーしている。

Seeing AI はAI テクノロジーがほとんど知性を持つように振る舞うツールを実現できるという例のパイオニアだろう。 このアプリは単に文書を読み上げるだけではなく、文章を正しく読み取れるようにするためにスマートフォンをどちらに動かせば良いかユーザーに教えてくれる。また目の前に誰かがいることを教えてくれるだけでなく(事前に名づけていれば)名前や簡単な見た目も教えてくれる。

Sight Tech Globalでシェイク氏はSeeing AIの将来に加えてクラウド・コンピューティングの発達、ネットワーク遅延の低下などによるアクセシビリティの改善、AIアルゴリズムによる高度なデータセットの利用などについてビジョンを語る予定だ。

Sight Tech Globalは、12月2日〜3日に開催される。参加は無料だが、事前登録がこちら必要だ。公式Twitterは@Globalsightとなる。カンファファレンスではスポンサーを募集中で、さまざまな支援の道がある。関心を持った企業は、運営事務局のメールにぜひ問い合わせてほしい。

画像クレジット:Saqib Shaikh

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

マイクロソフトやオラクルはTikTokを買収して何がしたいのか

トランプ政権からの圧力を受けて、TikTokのオーナーであるByteDanceがこのショートムービーアプリを売りに出しているという話はすでに何度も聞いたことがあるだろう。そして、驚くべきことにいくつかの大手エンタープライズ企業が買収に興味を示している。これらの企業は一般的なTikTokユーザーを泣かせるような技術を持つことで知られている。マイクロソフトやオラクルが、TikTokを嗅ぎまわっているという話が続いているのだ。

TechCrunch記者のDanny Crichton(ダニー・クリクトン)が先週指摘したように、TikTokの買収価格を押し上げるために、この売却に関与する銀行家たちはメディアにさまざまな噂を流す動機がある。すべてが真実ではないかもしれないが、噂は消えない。なぜオラクルやマイクロソフトのような企業がTikTokの資産に興味を持つのだろうか?

まず第一に、オラクルはデータベースの会社として知られているが、最近ではマーケティングオートメーションやクラウドインフラストラクチャサービスなどさまざまな事業を手掛けている。新型コロナウイルスの感染爆発は始まったばかりの4月に、オラクルのクラウド部門がZoomとの提携を発表したときは皆を驚かせた。

オラクルは、クラウド・インフラストラクチャの市場シェアでは、ライバルのAWS、マイクロソフト、グーグル、アリババ、IBMの後塵を拝しており市場シェアに1桁台に落ち込んでいる。オラクルはTikTok買収により、この市場でより大きなプレーヤーになりたいと考えているのだ。

一方のマイクロソフトは、ほかの企業と同様にクラウドへの移行には成功しているが、クラウドインフラ市場ではAWSに大きく後れを取っている。AWSとの差を縮めたいと考えており、TikTokを所有することで、より早くその目標に近づける可能性がある。

調査会社のConstellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏によると「簡単に言えば、オラクルがZoomとTikTokを自社に取り込めば、2つの優れたサービスを手に入れることができます」とのこと。有名なショッピングモールがディスカウントチェーン大手のTargetとデパートチェーン大手のNordstromを誘致するのと同様に、Oracleも自社のクラウドサービス2つの人気サービスを取り込もうとしている。

「TikTokは、各社のインフラサービスの利用率を押し上げるだろう。それこそが各社が望んでいることだ。もしマイクロソフトがTikTokを獲得すれば同社サービスの利用率は2%から5%増加する可能性があるが、オラクルなら10%増加する可能性がある」とミューラー氏。同氏によると、オラクルのユーザーベースは今ではずっと少なくなっているので、そのぶん利用率が上がるだろうという想定だ。

同氏が指摘するように、政府がTikTokの運営者であるBytedanceに事業売却を強く要請しているため、オラクルやマイクロソフトのような企業にとっては大きなチャンスだ。そのためこういった噂がたくさん出てくるのだ。「クラウドビジネスの観点からも、そして米国政府が作成したビジネス機会の観点からも買収は妥当だ」とミューラー氏は説明する。

顧客関係管理を事業とするCRM Essentialsの創業者でありプリンシパルアナリストであるBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、米国の大手テック企業がTikTokを買収することで、マイクロソフトやオラクルが獲得したいと考えているユーザーにとっては魅力が薄れる可能性があると指摘する。

「老舗エンタープライズ企業が買収すると、現在のユーザーのTiktokへの魅力が薄れてしまう可能性があります。若い人たちは、中高年の利用者が多いFacebookからすでに離れています」と同氏。そしてこの事実は、現在のプラットフォーム人気を支えている若いユーザーは、次の大きな社会現象にすぐに飛びつくことを意味する。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、米国時間8月19日にトランプ大統領がオラクルへの支持を示したことは注目に値する。WSJによると、オラクルの創業者で億万長者であるLarry Ellison(ラリー・エリソン)氏は、今年の初めに自宅で再選のための資金調達パーティーを開くなど、大統領の大物支持者だ。オラクルCEOのSafra Catz(サフラ・カッツ)氏も2016年に政権移行チームの一員として活躍し、政権とのつながりを持っている。

これらの企業が本当に関心を持っているかどうかは不明だが、一般的な感覚では、誰かがサービスを買おうとしており、誰が買おうと各社の保有資金の何%かを使用するだけで、ユーザー数の大幅なブーストを図ることができる。Twitterも買収に関心を持っている企業に上がっており、TwitterとTiktokという2大ソーシャルプラットフォームを統合にすることで、Facebookに直接的に競合するメガプラットフォームができるかもしれない。

IBMやグーグルのように、クラウドインフラの利用率を高めようとしているほかの大企業が参入してくるかもしれない。 もしかすると、アマゾンでさえ、そのリードを確固たるものにするためにオファーを出すかもしれない。ただし、この取引が米政府の承認を得なければならない場合、アマゾンCEOのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)とトランプ大統領との間の緊張した関係性により、アマゾンが買収する可能性は低くなるだろう。アマゾンは国防総省のJEDIクラウド契約で米政府と揉めたからだ。

アップルは、どの企業よりも多くの1930億ドル(約20兆4600億円)以上の現金を持っているにもかかわらず、TikTokの買収には明らかに興味を持っていない。アップル自体はそうかもしれないが、どこかの企業が興味持っていることは確かであり、中にはTikTokの資産を所有することを我々が想像できない企業もあるだろう。

画像クレジット:CHRIS DELMAS / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

2020年版「Microsoft Flight Simulator」は完璧ではないが待ち続けたファンの期待を裏切らない出来栄え

長く続いたシリーズの最後のリリースになるかと思われていた「Microsoft Flight Simulator X」の発売から14年が経過した。ちょうど1年前に、マイクロソフトが新しいグラフィックエンジンとBing Mapsの衛星データを使用してこのシリーズを再始動すると発表したとき、古くからのファンはもちろん、旧バージョンをプレイしたことがなくても同社が予告編で披露した次世代グラフィックスに魅了されたユーザーの間では最新版は話題になっていた。新しいMicrosoft Flight Simulatorは待ったかいが十分にあるクオリティーで、8月18日からは自分の目で確かめることができるようになっている。

Microsoft StoreとSteamの両方販売されており、価格はいずれもStandard版が7450円だ。より多くの飛行機や空港にアクセスしたい場合は、1万700円のDeluxe版がある。さらに多くの飛行機を利用したい場合は1万3100円のPremium版も用意されている。各バージョンにどの空港と飛行機が含まれているかの詳細はこちらで確認できる。

フライトシミュレーターを初めてプレイする読者も安心してほしい。Standard版でも他のバージョンと同じ3万6000の空港に着陸することができ、飛行機も十分すぎるほど用意されている。また、必要に応じてPremium版などへのアップグレードも可能だ。

このゲームをとりあえず試してみたいならのXbox Game Passに1カ月間登録するのが最も安上がりだ。私はすでに数週間前にベータ版をかなり深く試しているが、マイクロソフトはPremium版の最終リリースの早期レビュー版を提供してくれたので、それをもう一度見てみる価値はある(未訳記事)。

私がこの最新版を見せたときにみんなが同様に感じたのは「その美しさ」だ。それは風景にも言えることで、Bing Mapsの写真測量データのおかげで細部まで再構築された都市と、マイクロソフトのパートナーであるオーストリアのスタートアップBlackshark.aiが2Dマップから再構築した都市が混在している。なお、詳細はBlacksharkへのインタビューを参照してほしい。リアルなのは都市や町だけではなく、高速道路や地元の道路、街灯、そして夜には家の窓がライトアップされるなど、まるでそこで誰かが生活しているようだ。

気象モデルに注目だ。最新版のFlight Simulatorでは、ゲームでは見たこともないような美しい雲が描かれている。遠くに見える雨雲は、現実の生活の中と同じように見える。そして風は、操縦している飛行機にリアルに作用する。また冬のフライトでは、雪が地面を覆っている。

画像クレジット:TechCrunch

マイクロソフトとフランス拠点のゲームスタジオのAsobo Studios(アソボスタジオ)は、フライトシミュレータで地球のほぼデジタルツインを作ることにした。それを実現するための唯一の方法が、すべてのオブジェクトを手作業で配置するのではなく、機械学習を活用することだった。そのため、最新版の世界にはまだたくさんの奇妙なものが残っている。ベータ版から最終版リリースまでの間に、開発チームがもっと修正してくれることを期待していたが、この点ではベータ版からあまり変化が見られなかった。ダムのように見える橋や、水の中に入ってしまう道路、そして建物や木の位置を間違えたものがいくつかある。

私の見解では、2020年版Flight Simulatorはまだ発展途上であり、最終リリースでもそれは変わっていないと考えている。たとえ間違いがあったとしても、都市や町はほかのフライトシミュレータの有料アドオンよりも高品質で、個人的には納得している。また、これらの画像データの多くはAzureクラウドからストリーミングされており、開発チームはアルゴリズムを微調整し続けているので時間が経てばこのような問題が減ることも期待できる。当初、私はこの間違いにこだわっていたのだが、しばらくするとゲームの楽しみを奪うものではないことに気付いた。

画像クレジット:TechCrunch

マイクロソフトに改善してほしかった点の1つに航空管制がある。これは常にマイクロソフトが、公平に言えば競合他社も苦戦していた分野だ。アルファ版とベータ版の間に問題になっていたもので、最終版でも変わっておらず本当に残念だ。なにが残念かというと、あまり現実的ではないのだ。

Flight Simulatorの航空管制官は通常の指示は出さず、離陸するまでは飛行機側にコントロールを引き渡してくれない。常に全員にゴーアラウンド(着陸復行、着陸のやり直し)するように伝えるのだ。ちなみに現実の航空管制官は、操縦する飛行機が離陸するタイミングを教えてくれる。最終バージョンのFlight Simulatorを使って3日間で行ったゴーアラウンドの数は、私のパイロットライセンスのためのトレーニング全体よりも多い。これは次のアップデートで改善されるはずだ。

あと、個人的には管制官が航空会社を実名で呼んでほしいところだ。ゲームとは異なるが、マイクロソフトはFlightAwareと提携して、飛行機の発着時刻をリアルタイムで表示するサービスを提供している。しかし、どういうわけかゲーム内では限られたモデルしか登場しない。ただし、ユナイテッド航空の欠航便が時折発生していることを除けば、今後さらに多くの旅客機が登場することが予想される。繰り返しになるが、これはおそらく今後のアップデートで改善されるだろう。

画像クレジット:TechCrunch

飛行に関していえば、同社はベータ版以来いくつか微調整を加えている。私はボーイング787のコックピットには乗ったことがないが、私が乗ったシングルエンジンのセスナは期待どおりに動作した。ただし、舵はまだかなり不安定で調整が必要だが。そのほかの飛行機については保証できないが、本物のパイロットも同じようにリアルだと思うはずだ。

また、シミュレーター内の飛行計器にはいくつかバグがある。例えば、GPSシステムがときどき飛行機を滑走路に入れてくれないことがあった。また、ガーミン社の航空機用グラスコックピットであるG1000とG3Xのシミュレーション精度をもう少し上げてほしい。マイクロソフトとAsobo Studioは、アドオン開発者にもっと多くの余地を残すために、あえてこの精度に留めているのだろうか。

画像クレジット:Microsoft

ゲームのパフォーマンスはベータ版から変わっていない。バルセロナやベルリンのような都市で建物の屋根の上をかすめる場合でも、GeForce RTX 2070 SUPERとCore i7-9700Kの組み合わせで常時40フレーム/秒程度の速度を得られた。

パフォーマンスが20フレーム/秒台に落ち込んだのは、フランクフルト空港のように開発チームが手作業で作った空港の上空を低空飛行しているときだけだった。そのときでさえも、空港の上空を旋回して再び飛行した後には数値は40フレーム/秒台に戻っていた。

画像クレジット:TechCrunch

この記事では 「シミュレーター」 と 「ゲーム」 を同じ意味で使っていることに気づいたかもしれない。さまざまな理由でFlight Simulatorがユーザーが望むものを提供してる。飛行訓練、着陸チャレンジ、ブッシュフライング(着陸帯や滑走路が整備されていない場所への着陸や離陸)など、ゲーム要素がたくさんある。また、新型コロナウイルスが蔓延している現在においては、地球を低空でゆっくりと飛行し、素晴らしい景色を眺め、ほかのことをしばらく忘れられる、とてもリラックスできる環境を提供してくれる。とはいえ、ほとんどのカジュアルプレーヤーは、しばらくプレイすると飽きてしまうかもしれない。

ファンにとっては2020年版Microsoft Flight Simulatorは神からの贈り物だ。マイクロソフトが今後もアップデートを続け、多くの企業があらゆる種類のアドオンを開発する予定であることを考慮すると、ファンにとっては楽しみが今後何年も続くための素晴らしい基盤を手に入れたといえる。ゲームにはまだまだ開発の余地が残されており、例えば誰かが航空機や手作りの小さな空港を作ることも可能だろう。

プレビュー版でも言及したが、Flight Simulatorは技術的な驚異ともいえる作品だ。まだ完璧ではないが、その不完全さに目をつぶることはできる。

画像クレジット:Microsoft

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(翻訳:TechCrunch Japan)

2020年版「Microsoft Flight Simulator」の陰の立役者はオーストリア拠点のスタートアップBlackshark.ai

マイクロソフトの最新フライトシミュレーターである2020年版「Microsoft Flight Simulator」は、このジャンルで新基準を打ち立てた技術的な驚異(未訳記事)である。さて、マイクロソフトと、このシミュレーターの開発を担当したフランス拠点のゲームスタジオのAsobo Studios(アソボ・スタジオ)が、このリアルで生き生きとした世界を再現するために複数の企業と連携したことをご存じだろうか。

その1社が、オーストリアで人口第二の都市であるグラーツを拠点とするスタートアップ企業のBlackshark.ai(ブラックシャークAI)だ。同社は、わずか50人ほどのチームで、クラウド上のAIと大規模なコンピューティングリソースの助けを借りて、世界中のあらゆる都市や町をリアルに再現した。

新しいフライトシミュレータの発売を前に、TechCrunchはBlacksharkの共同創業者でCEOのMichael Putz(マイケル・プッツ)氏にマイクロソフトとの協業と同社のビジョンについて話を聞いた。

画像クレジット:Microsoft

Blackshark は、多人数参加型オンライン(MMO)ゲーム「World of Tanks」の開発元であるBongfish(ボンフィッシュ)のスピンオフとして誕生した。Bongfishは、World of Tanksのほか、Frontline、Motocross Madness、そしてスノーボードゲームのStokedシリーズの開発に携わったゲームスタジオだ。プッツ氏によると、Blackshark創業の道を切り開いたのはStokedシリーズだったという。

「2007年に手がけた最初のゲームの1つが『Stoked and S Stoked Bigger Edition』というスノーボードゲームで、360度の山を完全に再現したゲームでした。山自体はプロシージャル(数式による画像合成)によって構築・描写していましたが、植生やほかのスノーボーダー、小動物などの障害物の配置もプロシージャルを使っていました。このゲームの開発後、レースやシューティング、ドライビングのジャンルも手掛けましたが、我々の心の奥底にはこのプロシージャルによる配置と描写のアイデアがずっと残っていました」と語る。

BongfishがWorld of Tanksでプロシージャルによる描写に戻ったのは、すべての岩を手作業で配置した巨大な地図を作るのに時間がかかったからだ。

そしてこの経験を基にBongfishは、社内にAIチームを立ち上げることになる。このチームは、さまざまな機械学習技術を使って、デザイナーがどのようにマップを構築するかを学習し、独自のAIが作成したマップを構築するシステムを作った。同チームは、マイクロソフトと連携する前にも、実際にいくつかのプロジェクトでこのシステムを使っている。

「偶然にも、新しいフライトシミュレータの開発を手伝ってくれるスタジオを探しているマイクロソフトの担当者と会いました。新しいフライトシミュレータの核となるアイデアは、マイクロソフトの地図サービスであるBing Mapsを、地図としてはもちろん、背景として使うことでした」とプッツ氏。

しかし、Bing Mapsの写真測量データからは400の都市の正確な1:1のデータは得られるものの、地球上の大多数の都市の同様のデータは存在しなかった。マイクロソフトとAsobo Studiosは、残りの都市を構築するためのシステムを必要としていた。そんな状況で現れたのがBlacksharkだったのだ。同社はMicrosoft Flight Simulator向けに、2D衛星画像から15億棟の建物を再構築した。

さて、パッツ氏はマイクロソフトチームと偶然出会ったと話したが、実はこれには少し裏がある、その昔、同社の拠点であるグラーツではBing Mapsチームが働いており、初期の鳥瞰写真地図や3D版のBing Mapsを開発していた。その後、Googleマップが市場を制してしまったが、3DマップにおいてはBing MapsはGoogleマップよりも優れていた。マイクロソフトがグラーツに立ち上げた研究センターがのちに閉鎖されると、アマゾンなどが地元の人材を獲得するためにグラーツに入ってきたという経緯がある。

「だから、建物の再構築を専門とする博士号のようなポジションを埋めるのは簡単でした」とパッツ氏は当時を振り返る。「私は研究センターの存在すら知らなかったのですが、そこからまさに私たちが必要としていた2人のエンジニアを獲得できました」と続ける。

「2Dの地図から3Dの建物を再構築するのが難しい理由は簡単に説明できます。建物の正確な輪郭を把握するは非常に難しいのです」と同氏。

画像クレジット:Blackshark.ai

「基本的にフライトシミュレータでやっていることは、2Dのエリアを解析して建物の足跡(フットプリント)を見つけることですが、これはコンピュータビジョン(画像解析)の作業になります。例えば非常にシンプルな例ですが、建物が木の影に遮られている場合は影が重なっているため、何が建物の一部で何がそうでないのかがわからなくなります。そこで機械学習が重要になってくるのです」とパッツ氏。

Blacksharkは、写真、センサーデータ、既存の地図データなど、ほかのデータも活用できたが、建物の高さや特徴の一部については、非常に少ない情報に基づいて判断しなければならなかった。

もう1つの難題は、建物の高さを把握すること。既存のGIS(地理情報システム)データがあれば、この問題は簡単に解決できるが、世界のほとんどの地域ではGISデータが存在しないか、容易に利用できない。そういった地域では、開発チームは2D画像を使用して、影などの画像の中にあるヒントを探す。とはいえ、影から建物の高さを判断するには時間帯の情報も必要になる。Bing Mapsの画像には正確なタイムスタンプが記録されていなかったが、Blacksharkはそれを可能にする技術を有していたことで突破口が開けた。ここで再び機械学習が注目されることになる。

画像クレジット:Blackshark.ai

「機械学習は少し違った道を歩んでいます」とパッツ氏は指摘する。「機械学習では影の部分も見ていると思いますが、実際はブラックボックスなので何をしているのかよくわかりません。実際の高層ビルやショッピングモールの屋上を見てみるとどちらもほとんどが平らですが、屋上の設備は異なります。この違いをAIが認識することで建物を正しく分類することができます」と説明する。

そして、ある地域のショッピングモールの平均的な高さが通常3階建てであることをシステムが知っていれば、それに合わせて3D画像を生成することもできる。

Blacksharkが「このシステムは間違いを犯す」ことも公言している。実際にFlight Simulatorをプレイしてみると、いくつかの建物の配置に明らかな間違いがあることがわかるだろう。実際にパッツ氏は、このプロジェクトで最も困難だった課題の1つとして「マイクロソフトにこのアプローチを使う許可を得ることだった」と話してくれた。

「15億棟のビルを再構築する話をしています。この膨大な数字の前では、従来のQA(品質保証)のプロセスは役に立ちません。AIによる統計に基づいて開発を進める場合、FPSゲームのHaloのように『このピクセルはイマイチだから修正してくれ』と指を立てるような伝統的なQAは現実的ではないのです。15億棟もの建物を手作業でモデル化することは、論理的にも予算から見ても不可能なので、この課題に取り組むには他に方法がありませんでした」。

時間が経てば、このシステムも改善されていくだろう。マイクロソフトはAzureからゲームに多くのデータをストリーミングしているので、ユーザーは時間が経てば必ずその変化を目にすることになるはずだ。

画像クレジット:Blackshark.ai

このような建物のラベリングはAIモデルを訓練するために開発チームが取り組むべきことの1つで、実際にこのAIによってBlacksharkは大きな進歩を遂げた。しかし、AIモデルの詳細については、パッツ氏はあまり多くを語ろうとしなかった。たった50人のチームで成し遂げたことからも、かなりの企業秘密なのだろう。

「我々のパートナーにとってデータラベルは優先事項ではありませんでした。そこで我々は、独自のライブ・ラベリングを使用して、2~3人の少人数で地球全体のラベリングを進めました。簡単に説明すると、データアナリストが船を検出したい場合、学習アルゴリズムにその船が何であるかを伝えると、サンプル画像の中で検出された船をすぐに出力してくれるような感じです」。

このようにしてデータアナリストがアルゴリズムを鍛え、船のような特定の物体やショッピングモールを検出できるようしている。「ほかの地理空間解析会社は特定のニッチな分野に焦点を当てる傾向がありますが、Blacksharkのツールは解析対象のコンテンツの種類にとらわれないのが特徴です」とパッツ氏。。

画像クレジット:Blackshark.ai

そして、ここにBlacksharkのより大きなビジョンが登場する。Blacksharkは現在、マイクロソフトとの提携で高い評価を得ているが、実はほかの企業とも協力関係にあり、自動運転のシミュレーションのために街の風景をデモリングなども手掛けている。

「我々の大きなビジョンは、地球の表面のほぼリアルタイムのデジタルツインを作ることです。Google Earthやアップル製マップのような従来の写真測量によるモデリングは用途が限られますが、我々のデータを使えば何兆件ものユースケースを切り開くことが可能です。我々は航空データから必要な情報を抽出しています。これらは2D画像の場合が多いですが、そこから3D化することが可能で、すでに別のプロジェクトで実現しています」。

同社の技術を使えば建物を非常に詳細に描画できるため、写真測量に比べて大きな利点が1つある。一般的な写真測量では、基本的に光と影の情報がイメージに組み込まれるため、各シーンを現実のように照らすことは困難だ。Blacksharkの技術では、その建物の構造まで把握しているので、ビルに窓や照明を設置することが可能にあり、実際にMicrosoft Flight Simulatorでは驚くほどリアルな夜のシーンを作り出すことができる。

Flight Simulatorでは使われていない点群(ポイントクラウド、コンピュータで扱う点の集合)も、Blacksharkが注目している分野の1つだ。点群は人間にとっては非常に理解しずらいデータだが、同社はAIシステムを使用して点群を分析することで建物の階数を判別している。

「会社全体がこの大きなビジョンに到達するには、技術的に大きなアドバンテージが必要です。アサシン クリードやGTA(グランド・セフト・オート)のようなビデオゲーム大作は、今では何千人もの人々が開発に携わっておりキャパシティーの限界に達しており、製品管理が非常に困難になっています。この状況を変えるには、より自動化、または半自動化されたステップが必要であることは明らかでした」と同氏。

Blacksharkはゲーム分野からスタートし、マイクロソフトやAsobo Studiosと共同で取り組んでいるが、実際にはゲームではなく自動運転や地理的分析のような分野にも焦点を当てている。プッツ氏は「ゲームエンジンとしてスタートして、他分野でも活用されているUnreal Engineがもう1つの好例でしょう」と語る。

「ゲーム業界に長く携わってきた私にとって、ゲームを開発しているとほかの業界と比べて技術がどれほど画期的なものであるかを知ることができるは非常に心強いです。軍事用・産業用シミュレータの映像をみると、ドライビングゲームに比べてかなりクオリティーが低く見えてしまいます。ゲーム技術がゲームスタックから広がって、他のすべての産業を助けるときが来ています。Blacksharkは、それを可能にした例の1つだと思います」と同氏は締めくくった。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

PC・タブレットとしてより使いやすく格段の進化を遂げた「Surface Pro 7」

マイクロソフト Surface Pro 7

マイクロソフトの「Surface Pro」シリーズは、フル機能のWindowsが動くタブレット型PCだ。ペン入力に対応しており、オプションのキーボード付きカバー「Surfaceタイプカバー」を装着することでノートPCのように使うことができる。今回は、第10世代CoreプロセッサーやUSB Type-Cコネクタ、Wi-Fi 6などを搭載して順当な進化を遂げた最新モデル「Surface Pro 7」の使用感やパフォーマンスをレビューしていこう。

第10世代Core iプロセッサーを採用して性能を強化

Surface Pro 7は、OSにWindows 10 Home 64bit、ディスプレーに12.3インチのタッチ対応液晶パネルを採用し、5MP(500万画素)のフロントカメラとWindows Hello顔認証対応カメラ、8MPのオートフォーカス機能付き背面カメラを搭載する2-in-1 PCだ。

マイクロソフト Surface Pro 7

マイクロソフトのSurface Pro 7。直販価格は税込み10万9780円から。キーボード付きカバー「Surfaceタイプカバー」とSurfaceペンは別売オプションであることに注意

液晶ディスプレーは2736×1824ピクセル(267ppi)と変則的な解像度となっているものの、縦横比が3:2と一般的なノートPCよりも縦方向に広く、電子ブックや電子コミックスなどを見開きで楽しむのに便利だろう。

Surface Pro 7のサイズは292×201×8.5mmとなっており、フットプリント(占有スペース)はA4サイズ(297×210mm)に近い。Surface Pro 7自体の重量はCore i7搭載モデルの場合約790g、別売のSurfaceタイプカバーが約310gとなっており、合計の重量は1kgを超える。

12.3インチのタッチスクリーン(2736×1824ピクセル、267ppi)を搭載。サイズは292×201×8.5mmとなっており、フットプリント(占有スペース)はA4サイズ(297×210mm)に近い

12.3インチのタッチスクリーン(2736×1824ピクセル、267ppi)を搭載。サイズは292×201×8.5mmとなっており、フットプリント(占有スペース)はA4サイズ(297×210mm)に近い

マイクロソフト Surface Pro 7

ディスプレー上部のベゼルにはWindows Hello顔認証対応カメラと5MPのフロントカメラが搭載されている(写真左)。本体背面には8MPのオートフォーカス機能付きカメラを搭載する(写真右)

CPUに第10世代Core i搭載、Wi-Fi 6(11ax)をサポート

前モデルとの大きな違いは、CPUに第10世代のインテルCore iプロセッサーを採用し、無線LANがWi-Fi 5(11ac)からWi-Fi 6(11ax)に、外部端子がMini DisplayPortからUSB Type-Cに変更された点。USB Type-Cは外部映像出力やPower Deliveryにも対応しており、外付けディスプレーに画面を表示したり、モバイルバッテリーなどから給電したりすることも可能だ。

マイクロソフト Surface Pro 7

本体天面(写真上)には電源スイッチとボリューム調節、また本体左側面(写真下)には、3.5mmヘッドフォンジャックが搭載されている

マイクロソフト Surface Pro 7

本体右側面(写真上)には、USB Type-C、USB Type-A、Surface Connectポート、microSDXCカードリーダーが搭載されている。USB Type-Cは映像出力やPower Deliveryにも対応している。本体底面(写真下)には、Surfaceタイプカバーポートがある

直販サイトでは以下のような構成から選択でき、最小構成時の税込み価格が10万9780円、また全部盛りで税込み29万5680円となっている。

  • CPU: Core i3-1005G1/Core i5-1035G4/Core i7-1065G7
  • メモリー容量: 4GB/8GB/16GB
  • ストレージ容量: 128/256/512GB SSDおよび1TB SSD
  • ボディカラー: プラチナ/マットブラック
  • 重量: i3/i5の場合775g(ファンレス仕様)、i7の場合790g(ファン搭載)

Core i3とCore i5を選んだ場合はファンレス仕様となり重量は775gに、Core i7を選んだ場合はファン搭載となり重量は790gになる。いずれもバッテリー駆動時間は公称値で最大10.5時間だ。

今回は、CPUがCore i7-1065G7、メモリーが16GB、ストレージが512GB、ボディカラーがマットブラックという構成で、オプションのSurfaceタイプカバーとSurfaceペンも同時に試せた。

ボディはマグネシウム製だけあって上質な手触りで剛性も高い。背面パネルは下半分がキックスタンドとなっており、無段階で自由な角度に調節できる。Surface Proタイプカバー装着時は、キックスタンドをある程度開くことで膝の上でも十分安定して使用することが可能だった。

本体にSurfaceタイプカバーとSurfaceペンを装着した状態。ノートPCスタイルで使用できる

マイクロソフト Surface Pro 7

マグネシウム製ボディは上質で剛性が高く、使っていて安心感がある。背面下部にはキックスタンドが内蔵されており、角度を調節することで自立させられる

Core i7-1065G7は、4コア8スレッドのプロセッサーでIntel Iris Plusグラフィックスを内蔵したもの。統合型グラフィックスとしては、一般的なインテルUHDグラフィックスよりもかなりパフォーマンスが高い。実際、グラフィックス性能をはかるベンチマークでは、インテルUHDグラフィックスの倍近いスコアが出ており、負荷が中程度のPCゲームなら快適にプレイできるという結果だった。

CINEBENCH R20では、マルチコアが1743pts、シングルコアが431ptsという結果に。一般的な薄型ノートPCに搭載されることの多いCore i7-10510Uよりもマルチコアのスコアは1~2割高い

CINEBENCH R20では、マルチコアが1743pts、シングルコアが431ptsという結果に。一般的な薄型ノートPCに搭載されることの多いCore i7-10510Uよりもマルチコアのスコアは1~2割高い

PCの総合力をテストするPCMARK 10では、基本性能を示すEssentials、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivity、クリエイティブアプリのパフォーマンスを示すDigital Content Creationのいずれもが快適さの目安となる3000を軽く上回る結果に

PCの総合力をテストするPCMARK 10では、基本性能を示すEssentials、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivity、クリエイティブアプリのパフォーマンスを示すDigital Content Creationのいずれもが快適さの目安となる3000を軽く上回る結果に

グラフィックス性能を測る3DMARKでは、ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマークテスト「Time Spy」が949、同DirectX 11テストの「Fire Strike」が2812、統合型グラフィックス向けDirectX 12テストの「Night Raid」が9970、ミッドレンジPC向けテストの「Sky Diver」が9163という結果に。UHDグラフィックスの倍以上のパフォーマンスだ

グラフィックス性能を測る3DMARKでは、ゲーミングPC向けのDirectX 12ベンチマークテスト「Time Spy」が949、同DirectX 11テストの「Fire Strike」が2812、統合型グラフィックス向けDirectX 12テストの「Night Raid」が9970、ミッドレンジPC向けテストの「Sky Diver」が9163という結果に。UHDグラフィックスの倍以上のパフォーマンスだ

ドラゴンクエストX ベンチマークソフトはフルHD、標準品質で「すごく快適」という評価

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ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、フルHD、標準品質で「とても快適」という評価

ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、フルHD、標準品質で「とても快適」という評価

ストレージの性能をCrystalDiskMarkでチェックしてみたところ、PCIe接続のSSDを採用しているだけあって、シーケンシャルリード(1MiB Q8T1)が2000MB/s超と非常に高速。実際、電源オフの状態からOSが完全に起動するまで10秒とかからないほどで、アプリの起動やスリープ・休止状態からの復帰も高速だった。

SSDは4レーンのPCIe 3.0で接続されているだけあって非常に高速

SSDは4レーンのPCIe 3.0で接続されているだけあって非常に高速

バッテリー駆動時間は公称値で10.5時間となっているが、バッテリーベンチマークソフト「BBench」での計測では9時間23分という結果になった(Surfaceタイプカバーを装着した状態で、電源モードは推奨に、明るさは40%に設定し、BBenchは「60秒間隔でのWeb巡回」と「10秒間隔でのキーストローク」にチェックを入れて満充電状態から電池残量3%で自動休止するまでの時間を計測)。これだけ持てば普段使いには十分すぎるといえるだろう。

付属のACアダプターはコンパクト(写真左)。充電用のUSB Type-Aポートも搭載されている(写真右)

付属のACアダプターはコンパクト(写真左)。充電用のUSB Type-Aポートも搭載されている(写真右)

ペンの描き心地やキーボードの操作感も良好

オプションのSurfaceペンは傾き検知や4096段階の筆圧検知に対応した本格的なもの。純正アクセサリーということもあってSurface Pro 7との相性は抜群で、視差や遅延もほとんどなく滑らかな描き心地を実現している。

別売オプションのSurfaceペンは傾き検知や4096段階の筆圧検知に対応。消しゴムとしても機能するヘッドボタンと、サイドボタンが搭載されている

別売オプションのSurfaceペンは、消しゴムとしても機能するヘッドボタンと、サイドボタンが搭載されている

Surfaceペンは本体左側面にマグネットで吸着する。持ち運びには便利だが、右利きだと着脱する際に持ち手を変えることになるのが少しめんどう

Surfaceペンは本体左側面にマグネットで吸着する。持ち運びには便利だが、右利きだと着脱する際に持ち手を変えることになるのが少しめんどう

実際にざっくりとスケッチして確かめてみたが、筆圧の違いによる濃淡の差や、ペンを傾けたときの線幅の広がりなどが自然で、紙に描くような感覚で操作することができた。ペン先の感触もソフトでカチカチせず、スムーズに線を引くことが可能だった。

Surfaceペンは傾き検知や4096段階の筆圧検知をサポートしており、紙に鉛筆やペンで描くように直感的に扱える

Surfaceペンは傾き検知や4096段階の筆圧検知をサポートしており、紙に鉛筆やペンで描くように直感的に扱える

個人的にはデフォルトのペン先でまったく問題を感じなかったが、別売で3種類のペン先がセットになった「Surfaceペン先」も用意されているので、描き心地にこだわりのある人も安心だ。

Surfaceタイプカバーは一部のキーをのぞき、キーピッチが約19mmあり、キーストロークも十分確保されている。タイプカバー自体が薄いため膝の上などでタイピングすると若干キーボード面のたわみが気になることもあるが、操作に支障をきたすほどではない。打鍵感がよく、長時間のタイピングも快適に行えた。

Surfaceタイプカバー。フルサイズのキーボードとクリックボタン一体型のタッチパッドが搭載されている。パームレストなどは耐水性のあるスウェード調のアルカンターラ素材でできており、肌触りが良く耐久性が高いのが特徴

Surfaceタイプカバー。フルサイズのキーボードとクリックボタン一体型のタッチパッドが搭載されている。パームレストなどは耐水性のあるスウェード調のアルカンターラ素材でできており、肌触りが良く耐久性が高いのが特徴

キーボード部分はバックライトを内蔵しており、暗所でもどのキーかを判別しやすい

キーボード部分はバックライトを内蔵しており、暗所でもどのキーかを判別しやすい

クリックボタン一体型のタッチパッド。細かいカーソル操作もスムーズに行えた

クリックボタン一体型のタッチパッド。細かいカーソル操作もスムーズに行えた

普段使いのタブレットとノートPCを1台にまとめたい人に最適

第10世代Core iプロセッサーやUSB Type-Cポート、Wi-Fi 6を採用し、パフォーマンスと使い勝手がより一層向上したSurface Pro 7。オプションのタイプカバーやペンを一緒に購入すれば、タブレットとしてもノートPCとしても使いやすく、テレワークから趣味のお絵描きまで幅広く活躍してくれるはずだ。

今回はパフォーマンスに優れたCore i7搭載機を試したが、Intel Iris Plusグラフィックスを内蔵しながらファンレスを実現したCore i5搭載機や、普段使いには十分な性能ながら11万円を切る価格を実現した良コスパのCore i3搭載機も魅力的。好みや利用シーンに合わせて、自分に最適な構成を選んでみてほしい。

マイクロソフト Surface Pro 7
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カテゴリー:ハードウェア

タグ:Microsoft Microsoft Surface レビュー

ScribdがLinkedInからプレゼンテーション共有サービスSlideShareを買収

SlideShare(スライドシェア)のオーナーが変わった。前オーナーのLinkedIn(リンクトイン)がこのプレゼンテーション共有サービスを非公開価格でScribd(スクリブド)に売却したのだ。

LinkedInによると、Scribdは9月24日にSlideShareビジネスの運営を引き継ぐ予定だ。

ScribdのCEOであるTrip Adler(トリップ・アドラー)氏は、2つの会社は非常に似たルーツを持っているという。2006年にSlideShare(未訳記事)を2007年にScribd(未訳記事)をTechCrunchで採り取り上げたことがあり、どちらもコンテンツとドキュメントの共有に重点を置いていた。

「2つのプロダクトは常に同じようなミッションを追っていました」とアドラー氏は語る。「両者の違いは、『SlideShare』はPowerPointプレゼンテーションとビジネスユーザーに重点を置いていた一方で、私たち『Scribd』はPDFとWordドキュメントと長文のコンテンツに注力し、一般消費者により重点を置いていたということでした」。

その後、両者の運命は分かれていく。2012年にSlideShareはLinkedInによって買収され2016年にはLinkedIn自身がMicrosoft(マイクロソフト)によって買収された(未訳記事)。

一方でScribdは、電子書籍とオーディオブック向けにNetflix(ネットフリックス)スタイルのサブスクリプションサービス(未訳記事)を開始した。しかしアドラー氏は「ユーザー生成の側面」と「プレミアムの側面」の両方が、ビジネスにおいて依然として重要であると語った。

「ドキュメントを探しにきてプレミアムコンテンツにサインアップする人たちを、私たちは獲得しています」と彼はいう。「しかし、そうした人たちも(無料の)ドキュメントは読み続けています」。

マイクロソフトとLinkedInが、SlideShareの買収についてScribdにアプローチしてきたとき、アドラー氏はそれをプロダクトのドキュメント側を劇的に拡大できる機会と捉えた。そのことでSlideShareに置かれた4000万個のプレゼンテーションコンテンツライブラリと、毎月1億人のユニークビジターが取り込めるのだ。

アドラー氏は今回の買収について、基本的にはSlideShareの「コンテンツとオーディエンス」を獲得するためだが、さらにScribdが組み込むことができる、サービスのテクノロジーの側面もあるかもしれないと述べている。Scribdはこの買収にともなう新規採用は行わない。その代わりに既存のチームが引き続きSlideShareの運用を担当する。

アドラー氏はSlideShareはScribdとは別のスタンドアロンサービスとして引き続き運営されると述べ、この先もLinkedInと十分に統合され続けることを期待していると付け加えた。

「最初の数カ月は何も変化しません」とアドラー氏はいう。「私たちは、テクノロジーの側面と、コンテンツをアップロードするユーザーの側面とで、このようなプロダクトに関して多くの経験を持っています。私たちは、SlideShareを本当に成功させることができる良い位置にいるのです」。

一方、LinkedInのエンジニアリング担当副社長であるChris Pruett(クリス・プルエット)氏の声明は、買収以来、SlideShareに対して同社が行ってきた作業を強調したものだった。

LinkedInが2012年5月にSlideShareを買収したのは、専門家同士がLinkedInを人脈を作る以上の目的に利用していることが明らかになってきたタイミングでした。過去8年間にわたってSlideShareチーム、プロダクトおよびコミュニティは、LinkedIn上のコンテンツエクスペリエンスの形成に貢献してきました。そしてLinkedIn上でドキュメントをアップロード、共有、およびディスカッションする機能を組み込みました。

関連記事:Scribd raises $58M for subscription e-books and audiobooks(未訳記事)

画像クレジット:Scribd

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(翻訳:sako)

次世代Xboxは2020年11月発売。ようやくマイクロソフトが発表

この数カ月間、次期Xboxコンソール関する情報が小出しされてきた。そのデバイスはXbox Series X(未訳記事)と呼ばれている。

どんな外観かわかっている。中身についてもいろいろわかっている(未訳記事)。新ゲーム機のために開発中のタイトルも10種類以上わかっている(未訳記事)。

わかっていないのは、「いつ」店頭に並ぶのかだ。Microsoft(マイクロソフト)は年末までには発売するといったが、それ以上の詳細は明かしてこなかった。そして米国時間8月11日、マイクロソフトは発売日の範囲を狭め11月中に出荷すると 発表した(Microsoftリリース)。

同社は、11月の「いつ」かはいっていないため、正確な発売日についてはまだ幅がある。しかし、これまでの3カ月間の幅よりはいい。

このニュースは、343 IndustriesがHalo Infiniteの発売を2021年に延ばすことを発表したのとほぼ同時だった。「343のビジョンに合致するHaloのゲーム体験を届けるため」と同社は述べた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Minecraft: Education EditionがChromebookに対応

米国時間8月10日、Microsoft(マイクロソフト)はMinecraft: Education EditionがChromebookでも利用できるようになったことを発表した。

ただし、通常のマインクラフトのゲームがChromebookにも対応したと期待している人にとっては、残念ながらおそらく期待はずれだ。Education EditionにはMicrosoft 365 EducationのA3またはA5プランが必要だ。さらにゲームというよりは教育用ツールで、数学、科学、言語、歴史、美術に特化したレッスンが用意されている。

マイクロソフトは、Chromebookを導入している教育関係者にマインクラフトを使ってもらうためにGoogle(グーグル)の教育チームと連携したという。

Chromebook版では、クロスプラットフォームのマルチプレイヤー対応も含め、Windows、Mac、iOSのMinecraft: Education Editionと同じ機能を提供する。現時点では生徒のログインにMicrosoftアカウントが必要だが、マイクロソフトによれば「近い将来」にGoogleアカウントでのログインに対応するという。

画像クレジット:Microsoft

今回の発表の中でマイクロソフトは次のように説明している。「Minecraft: Education Editionはゲームベースの学習プラットフォームで、コーディングや問題解決といった21世紀型の重要なスキルの構築に役立つ。標準に準拠した数百もの無料のレッスン、デザインチャレンジ、STEMカリキュラムをゲーム内とオンラインで利用でき、先生向けにはオリジナルの学習アクティビティを設計するための柔軟なテンプレートを提供している。学びの場でのつながりがとりわけ大切になっているこの時期に、マインクラフトは共同作業と生徒主導の有意義な学びを支援する」。

該当するライセンスを所有しているユーザーは、Google PlayストアからMinecraft: Education Editionを利用できる。ログインにOffice 365 Educationのアカウントが必要であると明記されているにもかかわらず、通常のマインクラフトと勘違いしてがっかりしたユーザーが星1つのレビューをたくさん書き込んでいる。ただし条件を満たすChromebookを持っていれば、Chrome OS上でAndroid版のマインクラフトをプレイすることはできる。

関連記事:Minecraft Earthが北米その他の地域で正式開始

画像クレジット:Gabe Ginsberg/FilmMagic / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

TikTokはトランプ政権の使用禁止大統領令の提訴を準備

米国と中国の経済紛争の主役に踊り出た動画共有アプリTikTok(ティックトック)は、ドナルド・トランプ大統領が発効した大統領令、TikTokなどに事業の売却を強制し、従わなければ米国内でのサービスを禁止するというものに異議を申し立てる構えを見せている。

米国の公共ラジオ放送National Public Radio(ナショナル・パブリック・ラジオ、NPR)は米国時間8月8日、TikTokは早ければ8月11日にも異議申し立ての連邦訴訟を起こす可能性があると報じた。この訴訟は、TikTokの米本社がある米カリフォルニア南部地区連邦地裁に起こされる見通しだ。

NPRによると、TikTokは、この大統領令による禁止と、その根拠としている動画共有サービスが国家安全保障上の脅威になるという主張の合憲性を問うことになるという。

この放送の直後にTikTokにコメントを求めたが、返事はない。

8月6日に大統領は、TikTokの親会社であるBytedance(バイトダンス)と、中国の巨大テック企業Tencent(テンセント)が所有するメッセージングアプリWeChat(ウィチャット)との業務提携を45日の期限を設けて解消するようアメリカ企業に命令(未訳記事)する大統領令に署名した。

TikTokは、大統領令に大統領が署名したという最初のニュースが届いた時点で、すでに反対の態度を示していた。

既報のとおり、この命令は「適正な過程を経ずに発効された」とTikTokは主張している。そのため「グローバル企業が米国政府の法規範に不審を抱く」危険を招きかねないという。ホワイトハウスがアプリ禁止の拠り所としているものに、International Emergency Economic Powers Act(国際緊急経済権限法)とNational Emergencies Act(国際緊急法)とがある。だが、海外企業の子会社が米国内で事業を行うことを国家の緊急事態だとする理屈は、まったくもって前代未聞だ。

1976年に発生したイラン人質事件の際に成立した国際緊急経済権限法の下では、大統領は、関税を課す権限と外国企業との経済的関係を停止させる権限を全面的に有する(NPR記事)。

TikTokの親会社であるByteDanceは、売却により米国での問題を緩和して事業を続けたいと考えているため、大統領命令を訴えるのなら急ぐ必要がある。

この大統領令が発表された後、Microsoft(マイクロソフト)は声明を出し(Microsoftブログ)、TikTokの買収についてByteDanceと協議中であると話した。

マイクロソフトはこう話している。

CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)とドナルド・J・トランプ大統領との対話を受け、マイクロソフトでは、TikTokの米国での買収の可能性を探る協議継続の準備を整えていました。マイクロソフトは、大統領の懸念に対処する重要性を十分に理解しています。完全なる安全保障上の監視の下で、米国債も含め米国に相応の利益をもたらすよう、弊社はTikTokの買収に尽力します。

アナリストや銀行は、米国で1億人を超える顧客を有するユーザーベースのお陰で、TikTokの米国での事業価値は200億ドルから500億ドル(約2兆円から5兆3000億円)と目算しているとフォーチュンは伝えている

TikTokの米国での事業には、別の交渉人も現れている。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、TikTokはTwitter(ツイッター)と提携の可能性に関して予備的な話し合いを開始したとのことだ。

関連記事:マイクロソフトが9月15日までにTikTok買収へ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの事業が対象
画像クレジット: TechCrunch

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

マイクロソフトがXboxクラウドゲームと連動するモバイルゲームアクセサリ発表

2019年10月にMicrosoft(マイクロソフト)はDesigned for Xboxの認証をモバイルアクセサリのラインアップに拡大すると発表した。その目的は明白だ。同社は独自のストリーミングサービスであるProject xCloudを通じて、スマートフォン向けゲームに本腰を入れようとしている。

マイクロソフトは米国時間8月4日午前、公式ブログでいくつかの新製品を発表した。製品ランナップでは、ゲームアクセサリに興味を持つ人なら誰でも知っているはずのブランドから5種類の認定デバイスが登場する。また9月15日のXbox Game Pass Ultimate発売を前に、すべての製品の予約受付が開始されている。

アクセサリのほとんどは、当然ながらコントローラーだ。レイテンシーを別にすれば、この種のテクノロジーにおける最大の障害はコントロールだ。つまり、タッチスクリーン式のスマートフォンでコンソールゲームをプレイする場合が問題となる。十分なアクセサリがなければ、ほとんどのタイトルはうまくプレイできないだろう。

ありがたいことにRazer、PowerA、8bitdoの3社が、xCloudのストリーミングサービスへと特別にデザインされたコントローラを発売する。拡張性の高いRazer KishiとPowerA MOGA XP7-X Plus Bluetoothコントローラーは両方とも100ドル(約1万600円)、8bitdoのコントローラーは50ドル(約5300円)だ。PowerAと8bitdoはともにXboxコントローラーをスマートフォン装着するクリップを15ドル(約1600円)で提供する。

さらに、SteelSeriesから100ドル(約1万600円)のヘッドフォンであるArctis 1も登場する。このヘッドフォンは、コンソールゲームとモバイルデバイスの両方で利用できるように専用に設計されている。

画像クレジット:Microsoft

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

マイクロソフトやアマゾンが音声認識チップの新興メーカーSyntiantに出資

Microsoft(マイクロソフト)のベンチャーキャピタルであるM12が南カリフォルニアのアーバインに本拠を置く音声認識のチップメーカーであるSyntiantの資金調達ラウンドをリードした。参加した投資家には著名なベンチャーキャピタルが多数含まれている。Syntiantは音声認識の半導体の新興メーカーだ。

SyntiantのCEOであるKurt Busch(カート・ブッシュ)氏は「我々は機械学習を利用した専用プロセッサーを作っている。最初に出荷したのはバッテリー駆動で常時動作するデバイス向けの音声認識チップだ」と述べた。

ブッシュ氏によれば、こうしたチップのデザインには従来とは異なるアプローチが必要だという。伝統的なコンピューティングはロジック処理を中心とするが。深層学習ではメモリアクセスが重要となる。また伝統的なチップのデザインはメモリへの並列的アクセスにあまり向いていない。

またブッシュ氏によれば、Syntiantの新しいチップは従来の製品に比べて二桁以上効率性が高い。これは深層学習学習に特化したデータフローアーキテクチャを採用しているためだという。

この効率性の高さがマイクロソフトのM12を含む多数の有力ベンチャーファンドの関心を引くことになった。今回のラウンド参加したベンチャーキャピタルにはAmazonのAlexa Fund、Applied MaterialsのApplied Ventures、Intel Capital、Motorola Solutions Venture Capital、Robert Bosch Venture Capitalなどが含まれる。

今回の投資家には米国のテクノロジー産業を代表するチップメーカーやソフトウェアの開発企業が含まれている。これらの大企業が力を結集して南カリフォルニアの新興チップメーカーを支援することになったわけだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

AmazonのAlexa FundのディレクターであるPaul Bernard(ポール・バーナード)氏は次のように述べている。

Syntiantは音声テクノロジーを利用してイノベーションを推進していこうとする企業の努力に理想的にマッチする。同社のテクノロジーはAlexa、特にバッテリー駆動のデバイスでのAlexaのアプリケーションをさらに進化させるために膨大な可能性を秘めている。Amazonは音声認識テクノロジーのデバイスと環境を整備するために今後Syntiantとの提携を強化していく。

Syntiantがリリースした最初の製品は1.4×1.8ミリのマイクロチップで消費電力は140マイクロワットだ。このチップはアプリケーションによってはボタン電池1個で1年以上作動するという。

一方、Applied MaterialsのApplied VenturesのプリンシパルであるMichael Stewart(マイケル・スチュワート)氏は次のように述べている。

Syntiantのニューラルネットワークを利用したメモリー処理はApplied Materialsの中心的テクノロジーに極めて適合する。これはメモリー製品において根本的な飛躍をもたらし、デバイスのパフォーマンスを高め、新素材を利用したチップの可能性を広げる。またニューラル意思決定プロセスを利用したチップは非常に低消費電力であり、この種のチップのマーケットを大きく拡大する可能性がある。音声とビデオに対するニーズが大きく高まっている現在、同社の製品はソリューションは非常に有望だ。

現在Syntiantの製品をプロダクトに組み込もうとしている顧客は80社ある。十数社はすでに具体的なデザイン段階にありスマートフォン、スマートスピーカーのリモートコントロール、補聴器、スマートモニターなどのデバイスに音声認識チップを統合する計画だ。Syntiantは音声認識チップの最初のバージョンを既に100万個出荷している。

Syntiantのブッシュ氏は「今年中に会社の規模を10倍にする計画だ」と述べた。

Syntiantのチップセットはデバイスの起動、各種の命令の認識に対応している。ブッシュ氏によれば同社のチップセットはユーザーが自分の声に合わせて認識精度を改良したり独自のコマンドを設定したりすることができるという。

SyntiantはAtlantic Bridge、 Miramar aAlpha Edisonといった欧米のベンチャーキャピタルの支援を受けて2017年10月に資金調達ラウンドを成功させている。ブッシュ氏によれば同社は現在までに総額で6500万ドル(約68億7000万円)の資金を調達している。

Microsoft M12の投資を機に同社のSamir Kumar(サミル・クマル)氏がSyntiantの取締役に就任した。クマル氏は「Syntiantのアーキテクチャは現代のコンピューテーションを特徴づける並列処理と深層学習ネットワークによく適合しており、人工知能やIoT の分野でブレークスルーをもたらす可能性があると考えている」と述べている。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

マイクロソフトがTikTok買収に対する米政府への「支払い」と引き換えに要求すべきこと

これは狂気のニュースの1つである。米国時間8月3日、ドナルド・トランプ大統領はメディア向けのイベントで、米国政府がMicrosoft(マイクロソフト)とTikTokの水面下での取引を承認するには「その買収額のかなりの部分が米政府に入ってこなければならないだろう」と発言した。

企業が契約書に署名してもらうために米国政府に賄賂を贈ったりはしないので、実際には実現不可能に近いと思われるが、これをあえて額面通りに受け止めてみよう。マイクロソフトは支払うべきか。支払うとしたら、米国政府との交渉で何を要求すべきか。

まず、いくつかの背景を説明しておく。TikTokの親会社であるByteDanceは、1000億ドル(約10兆6000億円)以上の企業価値がある。ByteDanceは、TikTokの中国版で非常に人気の高い姉妹アプリ「Douyin」や、大成功を収めているニュースリーダーの「Toutiao」など一連の著名アプリを所有しているため、TikTokの評価額を単独で推測するのは難しい。取引規制上の混乱や、Facebookなどの資金力のある企業による買収の多くは、独占禁止法違反の疑いがあるという事実が、さらに事態をややこしくしている。

実際の買収価格が数百億ドルではないにしても、少なくとも100億ドル(約1兆600億円)だと仮定すると、同社は政府との交渉をどのように考えるべきだろうか。

最も重要な目的は、マイクロソフトの買収後に規制上の頭痛の種を減らすことにある。TikTokには、規制が非常に敏感な分野である、十代の若者をも巻き込んだプライバシー問題が取り沙汰されている。Facebookがプライバシーの問題に直面した際は、最終的に米連邦取引委員会(FTC)との50億ドル(約5300億円)の和解金を支払うことで昨年合意し、すべての懸念事案に答えを出した。また、コンプライアンスを確保するために、監視メカニズムだけでなく、一連の制限事項にも合意している。なおTikTok(旧Musical.ly)は昨年、実際にFTCのプライバシーに関する570万ドル(約6億円)の和解に合意している。

プライバシーに加えて、財務省からの輸出ライセンス問題、米議会からの中国製アプリのデータ保護に関する懸念、司法省からの反トラスト問題などが出る可能性もある。

この取り引きは、いまがまとめの時期だ。マイクロソフトがTikTok事業を買収する前に、プライバシー、貿易、独占禁止法規制に関するすべての請求に対する免責と引き換えに、最終的な買収価格に応じておそらく数十億ドルという高額な金額を米国政府に「和解金」として提示する必要があるだろう。おそらくマイクロソフトは、買収後180日間でプライバシー問題をクリアし、データを米国の独自のAzureクラウドに移動させ、TikTokが過去数カ月で導入しているペアレンタルコントロールよりもさらに優れた制御機能を実装することも計画しているだろう。

これは悪い選択肢ではないはずだ。なぜなら、マイクロソフトの長期的な負債を大幅に制限することができるからだ。また、買収者が将来の訴訟で多額の費用を負担しないように、買収価格を全額前払いすることはない大規模なM&A案件で発生する典型的なエスクロー(第三者預託)とホールドバック(一部留保)も回避できる。

このような問題に大統領自身が直接的かつ不明確な方法で関与するのは恐ろしいことだ。自らが扉を開けてしまったいまとなっては、実はそれほど悪い方向には進んでいないのかもしれない。トランプ大統領には省庁間を調整して、すべての政府関係者を集め「罰金」と引き換えに免責レベルを受け入れる力があるのだ。

ただし、和解によってすべての問題を解決することはできない。TikTokは米国の他のインターネットアプリと同様に、連邦法だけでなく、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)のようなプライバシーに関する州法にも従う必要がある。連邦政府との和解により、関連する州法に抵触する可能性があるのだ。さらに、選挙シーズンの真っ只中に多額の支払いに同意することは、議席の両サイドでも議論を呼ぶことになるかもしれない。

にもかかわらず、この取引は決して典型的なものではなく、典型的なM&Aのプロセスがあるとは考えるべきではないだろう。路上強盗のような奇妙な契約形態について、連邦政府の関与を勧める弁護士はほとんどいないと思われるが、今回の交渉は通行料を払って何らかの法的保護を得て先に進むだけの正当な理由はある。

画像クレジット:NICHOLAS KAMM/AFP / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

トランプ大統領がTikTokは「ホットなブランド」、買収金額の一部は米国政府に入るべきと発言

米国時間8月3日、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領は、Microsoft(マイクロソフト)によるTikTok買収交渉開始を祝福し、契約の可能性に関する態度を変化させた。米国時間7月30日に、TikTokは米国拠点企業に売却されるよりも禁止される方がいいと発言した後、トランプ大統領は週末にかけて意見を変えた。TikTokは中国拠点企業で様々なアプリやサービスを所有しているByteDanceの傘下にある。

マイクロソフトのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏と週末に話した電話が大統領の考えを変えたようで、マイクロソフトは買収交渉の継続を1日に公表する運びとなった。

そして本日、トランプ大統領はTikTokを巡る米国企業とByteDanceの契約を支持することを表明(C-SPAN動画)し、買収金額の一部が米国政府を潤すこと期待していると語った。

大統領は以前から経済の基本概念の理解に苦しんできた。例えば、誰が関税を払うか(The New York Times記事)についてなどだ。それにしても、トランプ氏が事実上推奨している民間企業2社間の契約で、金額の一部を受け取ることを期待していると発言するのは現実離れしている。

彼の考えをもっと深く理解するべく、本誌は大統領がマイクロソフトのナデラ氏と電話で話したことに関する質問に答えた今朝の説明の要点(C-SPAN動画)を書き起こした。

実りある会話だった、彼から電話があり、私がどちらなのか、いやどう思っているかを尋ねられた。そして私はそう、安全保障上、中国にコントロールされるわけにはいかない。あまりにも重要であり、侵略的すぎる。絶対にいけない。そしてこう言った。マイクロソフトかどうか、私は気にしない。大企業、安全な企業、非常に米国らしい企業が買うべきだ。

おそらく全部を買う方が30%買うより簡単だろう。なぜなら、30%で何ができるのか?誰が名前を手に入れるのか?この名前はホットだ、ブランドとしてホットだ。それで誰が名前を取るのか?2つの会社が所有していたら、どうやってそれができるのか?だから私の個人的意見は、30%を買うより会社全体を買う方がいい。30%を買うのは複雑だと思う。

それで、えー、彼にはゴーサインを出した。やってみていいと。そして日付を決めた。私が決めた。9月15日頃、その頃彼らは米国で廃業しているだろう。しかし誰かが、マイクロソフトでも他の会社でも、彼らを買えばそれはおもろいことになる。

もし買うなら、価格がいくらであっても金は会社の所有者にいく。重要なのは、事実上、それは中国だということであり、だから金額のかなりの部分は合衆国財務省にいくべきだと私は言った。この契約を実現させようとしているのは我々だからだ。たった今、我々が与えない限り、彼らはなんの権利も持っていない。だから、もし我々が彼らに権利を与えるのなら、金はこの国に入らなくてはならない。

これは、大家とテナントの関係に少し似ている。そう、賃貸契約がなければテナントには何もない。だから、いわゆる「権利金」か何かを支払う。しかし合衆国はかなりの金額を払い戻されるべきだ。合衆国がなければ、先方は何も得られなかったからだ。少なくとも30%に関わる部分については。

だから、彼にこう言った。我々は契約を、えーおそらく契約が結ばれることになると思う、これは大切な財産、これは大切な財産だ。しかし、合衆国の承認を受けない限り、それは大切な財産ではない。

そういうわけで、マイクロソフトまたは他の誰かが会社を買収しない限り、適正な契約を結ばない限り、TikTokは9月15日に閉鎖されることになる。その場合、財務省がそう合衆国財務省が、多額の金を得る必要がある。多額の金を。

画像クレジット:Doug Mills-Pool(opens in a new window) Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTok売却で中国のネットユーザーが「売国奴」と ByteDanceのCEOを非難

たとえTikTokが最大のマーケットであるインドを失っても、米国で抗い難い困難に直面しても、ByteDance(バイトダンス)はグローバルなテクノロジー会社にとなるという野心を失ってはいない。しかし中国の一部の人々は、北京拠点のByteDanceが米国の要求に応じ過ぎだと非難している。

ByteDanceは降りかかってくるさまざまな困難にも関わらず、8月2日遅くに投稿した声明で「グローバル化した企業になるというビジョンをこれまで通り追求する」と述べた。

米国の議員や世論を動かそうと何カ月も取り組み、TikTokは不本意ながら2つの譲歩に至った。「CFIUS(対米外国投資委員会)によるTikTokの米国事業の強制売却、または米国でのTikTokアプリを禁止する大統領令の可能性に直面した」とByteDanceの創業者でCEOのZhang Yiming(張一鳴、チャン・イーミン)氏は8月3日、従業員に宛てたレターの中で説明した。

TikTokの件は目まぐるしく動いている。この記事の執筆時点で、Microsoft(マイクロソフト)がTikTok買収で米国当局と協議していることを認めている。先にDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領は、米国企業による中国所有のアプリの買収は支持しないと話していた

中国側では、ByteDanceが「米国でTikTokアプリの提供を続けるための障害を取り除くのをサポートしてくれるテック企業と予備的協議を始めた」と張氏はスタッフに語っていた。このコメントは、TikTokの米国ゼネラルマネジャーであるVanessa Pappas(ヴァネッサ・パパス)氏の、TikTokは「どこかに行くつもりはない」という言葉をフォローするものだ。

張氏はレターの中で不満を堂々と述べた。「CFIUSの結論には同意しない。なぜなら当社は常にユーザーの安全、プラットフォームの中立性、透明性を守ってきたからだ。しかし、現在のマクロ環境の中での彼らの決定は理解する」。

怒れるネット市民

しかしByteDanceの対応は明らかに中国の一部の人の賛成を得ることができなかった。中国の人気ミニブログプラットフォームであるWeibo(新浪微博)では、数百人もの匿名ユーザーが張氏のレターについて投稿し、同氏を「売国奴」「米国擁護者」「臆病者」などとなじった。

「意見が一方通行の中国と違って、議論が許される米国を称賛するのに張一鳴は慣れている。そして今、彼は平手をくらった。彼はなぜ米国と議論しないのか」。この厳しい批判には3600以上の「いいね」がついた。

2010年初めからの張氏のWeibo投稿に言及するコメンテーターも現れた。それらの投稿はリベラルに偏っていて、こうした投稿によって同氏は「パブリックインテレクチュアル(公的な知識人)」ランキング入りした、と一部の人には映っている。インターネット愛国者はそうした人々を無知で西洋価値の崇拝者とみなし、「パブリックインテレクチュアル」は近年、軽蔑的な言葉として考えられている。

「中国人ソーシャルメディアユーザーの一般的な見方は、今回の件は米国・中国貿易戦争の一環としてのしっぺ返し策であるというものだ。またTikTokが成功し、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)といった米国プラットフォームにとって脅威となっているために、こうした事態になったと考えている」とAppInChinaのCEOであるRich Bishop(リッチ・ビショップ)氏は話した。同社は海外のアプリやゲームの中国でのリリースをサポートしている。

張氏のWeiboアカウントは現在一時凍結されている。これはおそらく、怒った愛国者たちが張氏の投稿に流れ込むのを防ぐためだろう。

オンライン上での感情がどれくらい中国社会を代表するものなのか、あるいはそうした動向が政府が雇ったコメンテーターによる操作なのかを見極めるのは難しい。インターネット上の怒りに比べると、中国政府は比較的、状況を甘受している。外務省の報道官は定例会見でTikTokに対する米国の主張を「いちゃもん」をつけていると否定した(CGTN記事)にすぎない(米政府はまだTikTokが国家保障の脅威であるという主張を支える確たる証拠を示していない)。

結局、中国で大々的に事業を展開している米国インターネット大企業が少ないため、中国政府はそれほど報復措置を取れない。

業界からは同情

中国のスタートアップや投資家はByteDanceに対して同情的だ。もしマイクロソフトによる買収案が進めば、TikTokにとっては最悪の結果とはならないかもしれないと考えている。

「彼らは動きが取れない」とSOSVが支援するクロスボーダーのアクセラレーターでChinacceleratorのゼネラルパートナーであるWilliam Bao Bean(ウィリアム・バオ・ビーン)氏は話した。「規則が急変する状況にある。消費者はおそらくTikTokを利用し続けたいはずで、マイクロソフトによる買収は使用継続を可能にする1つの方法だ。しかしByteDanceが真に望むものだとは思わない」。

AppInChinaのビショップ氏は、マイクロソフトの中国政府に対する対立的でない態度を指摘した。「どちらのサイドにとってもいい結果だと思う。もちろんマイクロソフトはTikTok買収でかなり恩恵を受ける。ByteDanceはそれなりの対価を受け取る。同社と中国政府はマイクロソフトに対して割に友好的だ」。

テック業界は、TikTokが珍しい存在であることをよく知っている。対抗措置は中国企業の米国進出、おそらく他の欧米マーケットへの進出にも萎縮効果をもたらすが、そもそも中国から欧米諸国に進出するインターネット企業はそう多くはない。

「中国のために構築されたソリューションのほとんどは、西洋諸国で人々が抱える問題を解決しない」とバオ・ビーン氏は述べた。

WeChatの親会社Tencent(テンセント)が示しているように、積極的な買収と数多くのヒット作で中国のゲームはおそらく西洋諸国で最も受け入れられているものだ。小規模のデベロッパーは、中国の企業であることを「表に出さない」戦略に頼っている。

米国に上場しているとある中国インターネット企業のCEOは「我々はメディアのインタビューを受けないようにしている」と匿名を条件に語った。

「問題は萎縮効果ではなく米国、カナダ、オーストラリア、インドなどで機会を失うことだ。ヨーロッパで成功するチャンスもまた小さくなり、リスクは増大している」と匿名希望のCEOは述べた。

「これから世界に出ようとする中国企業が目を向けられるのは東南アジア、アフリカ、南米だけになる」。

画像クレジット:DuKai photographer / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ポンペオ米国務長官が「米国はTikTokと他の中国のハイテク企業に対してまもなく行動を起こす可能性がある」と発言

ドナルド・トランプ大統領がTikTokを米国から追放するために執行命令を使う可能性があると発表した数日後、Michael Pompeo(マイケル・ポンペオ)国務長官は、トランプ政権は「解決策に近づいており、まもなく大統領の発表があるだろう」と述べた。

ポンペオ氏は、Fox News(フォックス・ニュース)の「Sunday Morning Futures」ホストのMaria Bartiromo(マリア・バーティロモ)氏のインタビューで、トランプ政権が米国でビジネスを展開しているほかの中国のテック企業に対しても行動を起こす可能性があると述べ、一部の企業が「中国共産党に直接データを供給している」と主張した。

TikTokの運営元である中国・北京拠点のByteDanceは現在、米国および他の数カ国でのTikTok事業を売却するためにマイクロソフトと交渉中だ。トランプ政権が人気アプリに関する発言をエスカレートさせていることから、この交渉はここ2週間でさらに緊急性を増している。

マイクロソフトは米国時間8月2日、9月15日までに米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのTikTokの事業を買収するための協議を行っていると述べ、同社の最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏がトランプ大統領の安全保障上の懸念についてトランプ氏と話し合ったと述べた。

ロイター通信は先週、ByteDanceが米国のTikTok事業の少数株を保持することを希望していたが、完全にマイクロソフトに支配権を譲ると報じた。

特に注目すべきは、マイクロソフトは声明の中でインドについて言及していないことである。Steven Mnuchin(スティーブン・ムニューシン)財務長官は米国時間7月29日、TikTokが米国外国投資委員会(CFIUS)の審査中であることを明らかにした。CFIUSは現在、ByteDanceが2018年買収したMusical.lyとTikTokとサービス合併が国家安全保障上の脅威に該当するかどうかを調査している。

売却すれば米政府をなだめるのに十分なのかと、ホストのバーティロモ氏に質問されたポンペオ氏は、トランプ政権は「我々が行ってきたすべてのことが、米国民のリスクをゼロに近い状態に追い込むようにする」と述べた。

しかし、共和党議員の中には「売却だけでは十分ではない」という意見もある。上院情報委員会の委員長であるMarc Rubio(マーク・ルビオ)氏は先週、フィナンシャル・タイムズ紙に対して「TikTokはデータがどこに保存されているか、どのように保護されているかについて、まだ質問に答える必要がある」と語っていた。

「TikTokの所有者が誰であろうと、これらの基本的な質問に答え、話をはっきりさせるまでは、私は会社の活動と報告されている中国との結びつきを懸念し続けている」とルビオ氏はコメントしている。

TikTokを超えて

ポンペオ氏のFox Newsのインタビューの前日、ホワイトハウスの貿易顧問を務めるPeter Navarro(ピーター・ナバロ)氏はFox Newsに対し、トランプ政権は「『米国人の情報を中国のサーバーに送り返すあらゆる種類のソフトウェア』も検討している」と語った。

ポンペオ氏はまた、米国政府がより多くの中国のテクノロジー企業に対して行動を起こす可能性があることを示唆した。

「ピーター・ナバロが言ったように、米国でビジネスをしているこれらの中国のソフトウェア企業は、TikTokやWeChatなど数え切れないほどあり、顔認識パターンや居住地、電話番号、友人などの情報を中国共産党や国家安全保障装置に直接供給している」と彼は主張した。

ポンペオ氏は、トランプ氏が「中国共産党に接続されたソフトウェアによって提示される国家安全保障上のリスクの広範な配列に関して、今後数日間で行動を起こす」と付け加えたが、それが何を意味するか、またはどのような企業が影響を受ける可能性があるかについては詳しく説明しなかった。

しかし、その中にはTencent(テンセント)が所有するWeChatも含まれているかもしれない。米政府は先月、米国で利用可能なWeChatのバージョンは中国のものよりも機能が限られているにもかかわらず、米国でWeChatを制限する可能性があると述べた。

中国ではWeChatはユビキタスな存在だが、米国でのユーザー数は中国に比べるとはるかに少なく、主に米国の中国コミュニティのメンバーや、中国で事業を展開している、または中国に関係のある外国企業が利用している。

画像クレジット:JIM LO SCALZO/AFP / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

マイクロソフトが9月15日までにTikTok買収へ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの事業が対象

米国時間8月2日、マイクロソフトは同社のコーポレートブログに、米国でのTikTok買収の可能性についての議論を継続する声明を掲載した。声明の中には「米国の投資家」を少数派で参加させる可能性があるという記載もある。

今回の声明は、同社CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏とトランプ大統領との会話の結果だという。これまでの報道やTechCrunchの調査では、状況は完全にホワイトハウスの手に委ねられていると指摘されていた。同社は買収に意欲的だが、大統領の感情という障害物を抱えている。もし、ナデラCEOがトランプ大統領に直接接触したのであれば、TikTok米国事業の行く末は明るいものになるかもしれない。

声明には「ナデラCEOとトランプ大統領の直接交渉に続いて同社は、米国でのTikTok事業の買収を探索するための議論を継続する準備ができている」と書かれている。「マイクロソフトは、大統領の懸念に対応する重要性を十分に認識しています。完全なセキュリティ審査を受け、米国財務省を含む米国に適切な経済的利益を提供することを条件に、TikTokの米国事業を買収することを約束しています」ともある。

同社はいずれにしてもByteDanceからの買収に関する協議を2020年9月15日までに完了するとしており、大統領や米国政府との協議を継続する。今回の買収は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでのTikTokの事業を対象としており、これらの市場ではマイクロソフトが所有・運営することになる。

声明には「他の手段の中で、マイクロソフトはTikTokの米国ユーザーのすべてのプライベートデータを米国内に転送したうえで米国内に残すことを保証します。これらのデータが米国外に保存またはバックアップされている場合、データが転送された後に国外のサーバからそのデータを削除することを保証します」とも記載されている。

ここでの歴史的経緯は、マイクロソフトが今回のアクションを起こしているのは、ByteDanceの最大市場の1つである米国でTikTok事業を継続するには事業売却の必要があるからだ。事の発端は、中国企業が運営するネットサービスでのデータの扱いについてホワイトハウスが強い懸念を示したこと。FacebookやTwitter、Googleなどのなどを含む多くのネットサービスが、グローバルでさまざまユーザーデータを集計・分析しているにもかかわらず、反中国の旗を掲げて、米国市民の膨大な量の行動データにアクセスできることが間違いないアプリ、つまりわかりやすいターゲットを狙う機会を得たわけだ。

一方でTwitter界隈では、トランプ大統領がTikTok上で彼をからかうことで人気を博したコメディアンに腹を立てただけだという説(Vouge記事)もあるが。

いずれにせよ、今回のことでTikTokの刻みの時計の中にもう1つの「トック」が増えた。関係者には手を差し伸べるが、この件に関しては先週末のバタバタしたニュースの最終的な結果になりそうだ。

情報に更新があれば記事をアップデートする。