世界で戦えるAIテックカンパニーを目指す、ヤフーとLINE経営統合の理由

Yahoo! Japanの親会社であるZホールディングスとLINEは11月18日、両社の経営統合についての共同記者会見を開催した。登壇者は、Zホールディングス代表取締役社長/最高経営責任者の川邊健太郎氏、LINE代表取締役社長/CEOの出澤 剛氏。川邊氏はLINEのコーポレートカラーのグリーン、出澤氏はYahoo!のコーポレートカラーのレッドのネクタイを締めて登壇した。

今後はZホールディングスとLINEが対等に統合するが、東証一部の上場企業であるZホールディングスが親会社となって、Yahoo! JAPANとLINEが子会社となる。具体的には、経営統合後はソフトバンクとNAVERが50%ずつ出資したJV(65%)と一般株主(35%)がZホールディングスの株主となり、その子会社としてYahoo!とLINEが対等の関係でぶら下がるかたちだ。取締役はZホールディングスが3名、LINEが3名、社外が4名とし、少数株主に配慮したガバナンス体制を敷く。

新生Zホールディングスはソフトバンクの連結子会社となるので、実質的にはLINEがソフトバンクのグループに吸収されることになる。川邊氏と出澤氏が共同CEO(Co-CEO)に就任するが、代表取締役社長が川邊氏が引き続き務める。経営判断については、川邊氏が代表取締役社長としてはリードはするが、経営陣できちんと議論して取り決めていくとした。

経営統合のスケジュールは最終的な統合手続きを2019年末〜2020年年始に完了することを目指し、遅くとも2020年10月ごろには統合する予定とのこと。統合の向けての話し合いは2019年の6月ぐらいに本格的な話が進み、両社の親会社とも相談しながら進めたとのこと。ちなみにソフトバンク側では社長の宮内氏との協議は重ねてきたが、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫氏は、Yahoo!とLINEの経営統合について陣頭指揮と執るといった直接的な関与はしていないとした。

「両社は切磋琢磨する関係で近しい想いを持ちながらライバル関係だったが、今後は経営統合によって最強のOne Teamを目指していく」と両氏。続けて、両社を合わせると2万人の社員がおり、日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指すとしている。「両社は年1度ほど話す機会があり、これまでも共同で取り組む事業を模索していた」と出澤氏。

また、両社とも現状に対する危機感があったという。それはグローバルテックジャイアントの存在で、米国ではGoogle、Amazon、Facebok、Appleなどが、中国ではバイドゥやテンセント、アリババなどのプレーヤーがいる。「優秀な人材、資金、データなどは強いところに集約されてしまい、それ以外のプレーヤーとの差が開くばかりとなる」と両氏。「2社が一緒になっても時価総額、営業利益、研究開発費、従業員数を含めても数字上では現在のところ大きく差をあけられている」と続けた。

両社は統合することによって、まずは日本の労働人口、生産性、自然災害などの問題をテクノロジーで解決したいと表明。日本に住む人に最高のユーザー体験を提供して社会課題を解決していくとした。

統合におけるシナジーとしては、利用者基盤、サービス、グループ、人財、年間投資額などを挙げた。利用者基盤として月間利用者数とビジネスクライアント数は、Yahoo!が6743万人と300万社、LINEが8200万人と350万社。またLINEはアジア各地で銀行業を開設するなど進出していることをアピールした。

サービス面については、川邊氏がメッセンジャーサービスとeコマースを例に挙げた。「Yahoo!ではメッセンジャーのサービスがないがLINEにはあり、Yahoo!はeコマースが強いが、LINEはYahoo!ほど事業規模大きくない」と述べ、補完しあえる部分があることを強調。

グループについては、Zホールディングス/Yahoo!はソフトバンク、LINEはNAVERの子会社であり、親会社はAIなどをはじめさまざまなサービスを展開しており、このあたりにシナジー効果があるとした。

人財については両社を合わせると約2万人、年間投資額は両社で合計1000億円以上。AIを基軸に積極的な中長期投資を行い、新たな価値を創り出すとした。そのほか統合後も引き続き、プライバシー保護、サイバーセキュリティについては力を入れていくとした。

質疑応答では、PayPayとLINE Pay、Yahoo!ニュースとLINE NEWSなど競合するサービスについての今後について質問が集中したが、経営統合後に議論・調整していくが、当面は今後も競合しながら事業を進めていくとした。ただし、最終的には最もユーザーに支持されているサービスに絞り込んでいく可能性もあると表明した。

経営統合のトリガーの1つとなったビックプレーヤーの存在について川邊氏は「GAFAの最大の脅威はユーザーが支持されていること」を挙げた。続けて「Yahoo!とLINEが経営統合することで、我々もよりユーザーに支持されるサービス、プロダクトを目指す。そして、オールジャパン体制で協業を呼びかけていく」とした。「ネット企業は強いところにすべてが集まる。気付いたタイミングでは手遅れ」とコメントした。

出澤氏は「LINE単独という思いはあったが、より強くなるための決断としてYahoo!との経営統合を選んだ」とした。LINEの事業については、トロイカ体制はLINE側の意思決定のプロセスは変わらないとのこと。

ヤフーとLINEが統合合意を正式発表

Yahoo Japanなどを運営するヤフーの親会社Zホールディングス(以下ZHD)とLINEは11月18日、経営統合することで基本合意したことを正式に発表した。11月13日に日本経済新聞などが両社の合併を報じていた

両社は18日に開催したそれぞれの取締役会で、両社グループの経営統合について、資本提携に関する基本合意書を締結することを決議したことを明らかにしている。今後、2019年12月をめどに最終資本提携契約の締結を目指して協議・検討を進めていく予定だという。

また経営統合の実現に向けて、ZHDの親会社であるソフトバンクおよび、LINEの親会社であるNAVER Corporationは、上場しているLINEの非公開化を目的とした株式の共同公開買い付け(TOB)を実施し、対象となる全ての株式を取得する意向を発表している。

経営統合後はソフトバンクとNAVER(韓国NAVERおよびその日本子会社)が50%ずつ出資する新会社を設立し、ZHDの親会社となる。ヤフーとLINE(の承継会社)はZHDの完全子会社としてその傘下に入る形となる。

経営統合の目的について両社は、「それぞれの経営資源を集約し、それぞれの事業領域におけるシナジーを追求するとともに、AI、コマース、Fintech、広告・O2O、その他の新規事業領域における成長を目指して事業投資を実行することで、日本及びグローバルにおける熾烈な競争を勝ち抜くことができる企業グループへと飛躍すること」と述べている。

両社は18日17時から、共同記者会見を開催。ZHD代表取締役社長の川邊健太郎氏、LINE代表取締役社長の出澤剛氏が出席し、統合について説明する予定だ。

韓国NAVERがソフトバンクと共同で4300万ドル規模の新ファンドを設立

money-cash

アメリカと日本の株式市場に上場するチャットアプリ「LINE」の親会社であるNAVERは、ソフトバンクと共同で4300万ドル規模のファンドを設立すると発表した。同社の子会社が運営する2つのサービスを強化することが狙いだ。

「SB Next Media InnovationFund」と名付けられた当ファンドでは、NAVERの子会社であるSnowとWebtoonとシナジーを持つスタートアップやテクノロジーに投資することを目的としている。SnowはFacebookが買収を検討していると報じられたSnapchatに似たアプリを提供しており、Webtoonはオンラインコミックを提供する企業だ。このファンドの投資先は韓国国内の企業に限ったものではなく、世界中の企業を対象にしている。そのコネクションを提供するうえで重要なパートナーとなるのがSoftbankなのだ。

LINEは今年の夏に上場し、その際に11億ドルを調達している。その親会社である韓国の巨大Web企業NAVERが次に期待するのがSnowとWebtoonだ。Snow CEOのChang-Wook Kimと、Webtoon CEOのJun-Koo Kimがアドバイザーとして就任する当ファンドでは、主にコンテンツ製作やテック系のスタートアップに投資をしていくという。その中でも特に注力していく分野としてARとVRが挙げられている。

NAVERがこのようにファンドをビジネスの手段として利用するのは今回が初めてではない。今年9月には、LINEは海外市場でのプレゼンスの拡大を狙い、米国とフランスを拠点とするファンドに出資したと発表している。また、同社は「ライフスタイル」アプリの支援を目的として設立されたファンドを所有しており、同ファンドを通してゲーム関連企業などに出資をしている。

LINEにとって、グローバルなプレゼンスを持つことは特に重要だ。同アプリは2億1800万人ものアクティブ・ユーザーをもつものの、昨年の成長率はこれまでに比べてかなり落ち込んでいる。とは言うものの、創業から1年で総ダウンロード数が8000万回、そして月に1000万回のペースで新しいユーザーにダウンロードされているSnowの成長率と比べても、LINEの成長率が格段に高いことは確かだ(実際、今年の9月にLINEはSnowとのシナジー強化を目的に4500万ドルの出資を行っている)。

Webtoonのサービスはオンラインコミック版のNetflixとも言えるサービスだ。同サービスはWebに加えて、iOSとAndroidアプリで利用できる。同社もまた、新規ユーザーの獲得のためにLINEを利用しているものの、現在の会員数は公表していない。

同ファンドは今年の終わりまでに500億ウォン(約4300万ドル)を調達することを目指している。その内訳として、Naverがその大半の400億ウォン、ソフトバンクグループのSoftBank Venturesが45億ウォン、Korea Venture Investmentが5億ウォンを出資し、残りの50億ウォンを第三者から集めるとしている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Facebook、NaverのSnapchatクローン、Snowの買収を試みるも失敗していた

BERLIN, GERMANY - FEBRUARY 24:  The Facebook logo is displayed at the Facebook Innovation Hub on February 24, 2016 in Berlin, Germany. The Facebook Innovation Hub is a temporary exhibition space where the company is showcasing some of its newest technologies and projects.  (Photo by Sean Gallup/Getty Images)

FacebookはSnapchatのように動き、臭い、似ている存在はすべて買収しようとしているという噂の火に油を注ぐような出来事があったもようだ。事情に通じた情報源がTechCrunchに語ったところによると、この夏FacebookはSnowの買収を試みたが不成功に終わったという。このサービスはSnapchatによく似ており、運営しているNaverは時価総額250億ドルの巨大韓国企業で、有名なチャット・アプリ、Lineの背後の存在でもある。

われわれが接触した情報源によれば、Snowにはすでに8000万のダウンロードがあり、さらに毎月1000万ずつダウンロードを増やしているという。この急成長ぶりにひかれたのはFacebookだけではなく、Tencent(巨大チャット・アプリWeChatを運営)やAlibabaも買収を試みたことをTechCrunchはつかんでいる。

Naverはわれわれに対し「Snowが多数の企業からラブコールを受けたのは事実だ」と声明を送ってきた。ただしSnowが買収攻勢を受けたことは確認したものの、買収を試みた会社について具体的な社名は明かさなかった。

Facebookにはコメントを求めたが回答はなかった。

Snowはこの夏、韓国、日本、中国でAndroid、iOS双方のアプリがそれぞれの公式ストアでランキング入りし、合計3000万ダウンロードを集めたときにときにまず注目を集めた。7月にはNew York Timesに長文記事が掲載され、Snow(とNaver)はSnapchatがアジア市場への関心が低いことを好機としていると説明された。これも結果としてSnowへの関心を高めた。

この記事が出た後、Facebookのファウンダー、CEOのマーク・ザッカーバーグがSnowの存在に気づき、Naverのファウンダー、会長のHae-Jin Lee(イ・ヘジン)に電話して買収の希望を伝えた。Naverは7月にLineを日米で同時に上場させ、10億ドル以上の資金を得ることに成功している。しかしイ会長はSnowにはLineなみの将来性があると信じていたためFacebookの申し出を断った。

実際、9月に入ってLineが4500万ドルをSnowに投資するなどしてLineとSnowの連携は強化されている。この際のSnowの会社評価額は1億8000万ドルだったが、誕生わずか1年後の企業にしては悪くない額だ。Lineは日本、タイ、台湾という主要市場以外でのユーザー獲得に苦労している。そこでSnowとの連携が海外市場でのLineの事業拡張に有益だと考えられたのだろう。

SnowにはSnapchatクローン的な性格があるものの、内容には異なる点も多い。

まず第一に、Naverは各地域でサービスのローカライズに真剣に取り組んでいる。これは2011年から2012年にかけてLineが実行した戦略で、このときは韓国と日本でセレブを動員してサービス内に目立つように記事を載せることでサービスの立ち上げに役立てた。【略】

snow-filters

Snapchat — 現在は‘Snap’に改名 —は来年の株式上場に向けて準備中だと広く報じられている。上場されれば同社の時価総額は250億ドル前後になり、40億ドルの資金を調達できるものとみられている。

こうした数字は3年前にFacebookからの30億ドルでの買収の申し出を断ったCEOのEvan Spiegelの決定を強く支持するものになりそうだ。 当時、この決定は間違いだと強く批判されたものだが。

Snowは誕生後、日が浅いため、Facebookが買収失敗を悔やむような巨大な存在に成長するかどうかはまだ不明だ。

現在のところFacebookは自社サービスにリアルタイム・チャット的性格を盛り込むために全力を挙げている。これにはSnapchatからの「インスピレーション」が多数含まれているという。

具体的に見ていくと、Instagram StoriesはFacebook自身がSnapchatの影響を認めている。Facebookのこのサービスは2ヶ月で1億人のユーザーを獲得するという成績を挙げた。これより規模は小さいがFacebookからはティーンエージャー向けのビデオ・アプリSnapchat風のカメラ機能、ポーランドでテストされた MessengerのSnapchatクローン的機能なども出ている。

〔日本版〕Naver会長Hae-Jin Leeに関する日本語記事では「李海珍」という漢字表記がある。ただし本人に対する直接インタビューの記事では「李ヘジン」の表記だった。この記事では姓名ともカタカナ表記にとどめた。

画像: Sean Gallup/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Lineのオーナー、Naverが台湾の電話番号データベース・アプリのスタートアップ、Gogolookを買収

台北に本拠を置くスタートアップ、Gogolookは韓国の大手インターネット企業、Naverによって買収されたことを確認した。

NaverはLineのオーナーとして有名だ。Gogolookは買収価格を明らかにしていないが、昨日(米国時間12/25)発表された台湾経済省の投資委員会のレポートによれば、5億2900万台湾元(1760万ドル)とされる。

Gogolook CEO、Jeff Kuoは私にこういうメールを送ってきた。

Naverグループに参加したことによって、Gogolookは世界展開を念頭に置いたビジネス戦略を加速させることができるようになった。全世界に展開する親会社の豊富な資金とLINEとの連携によってビジネスチャンスは無限に拡大する。われわれは台湾のアプリ・スタートアップのイノベーションの力を世界に強く印象づけることができるだろう。

Gogolookの主力製品はWhoscallという通話の発信元調査アプリだ。月間アクティブ・ユーザーは120万人、データベースには6億件の電話番号情報が蓄積されているという。TechCrunchはGogolookが6月にWhoscallのiOS版をリリースしたときに紹介記事を掲載している。Gogolookが会社として正式にスタートしたのは2012年4月だが、実際にはそれより3年前にKuo、Edgar Chiuら3人の友達同士のサイドプロジェクトとして始まっていた。Chiuは今は別会社Camp Mobile(Naverの子会社のアプリ・デベロッパー)でCOOを務めている。

Whocallの電話番号データベースは当初、職業別電話帳やGoogle Place APIなどの情報を収集したものだったが、ユーザーベースが拡大するにつれ、ユーザー投稿によるクラウド・ソースの比重が増している。このデータベースにはスパム通話の発信者のリストも含まれている。Lineを世界に展開してWeChatWhatsAppなどのメインストリームのメッセージ・アプリと競争しようとしているNaverにとって、Gogolookの電話番号データベース・テクノロジーは大いに役立ちそうだ。

GogolookはTrinity VCなどから50万ドルのエンジェル投資を受けている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


国内の「NAVER検索」終了へ、経営資源はLINEと”まとめ”に集中


LINEは22日、日本国内で提供しているNAVERブランドの検索サービスを終了することを明らかにした。ウェブや画像、ブログなどを対象とした「NAVER検索」に加えて、「NAVER英語辞書」「NAVER韓国語辞書」「NAVER中国語辞書」といったアプリを12月18日に終了する。経営資源はLINEとNAVERまとめに再配置するという。

NAVER検索はかつて、韓国のNHNが開発したサービスを日本で提供していたが、2005年1月に撤退。その後、日本法人のNHN Japanが「ネイバージャパン(現LINE)」を2007年11月に設立。日本向けに独自エンジンを開発し、2009年7月から検索サービスを提供している。今後、NAVERブランドで展開する国内サービスは「NAVERまとめ」だけとなる。

LINEはオンラインストレージ「Nドライブ」とオンラインアルバム「NAVER Photo Album」を11月で終了することも発表済み。もっとさかのぼると、ブラウザ向け写真編集サービス「NAVERフォトエディター」や「NAVER人物検索」「NAVER映画検索App」など10サービスを4月末までに終了している。いずれもLINEやNAVERまとめに経営資源を集中させる狙いがあるとみられる。