SnapchatのPRを担当した企業がInstagram上のSpectaclesの宣伝をサボったインフルエンサーを告訴

【抄訳】
もしもSnapchatのPR企業がこの訴訟で勝ったら、インフルエンサーを利用するマーケティングは今後責任が重くなるだろう。Snapchatは、ソーシャルメディアのスターたちが同社のカメラサングラスSpectaclesのv2を、同社の最大のコンペティター(Instagram)の上で宣伝し、人気を盛り上げてくれることを期待していた。なにしろv1は22万台しか売れず、4000万ドルを償却せざるをえなかった。しかしところがSnapは、一般消費者にSpectaclesをクールと思わせたいあまり、やり方がややずさんだったようだ。

Snap Inc.は。同社のPRを担当しているPR Consulting(なんと想像力豊かな社名だろう!)に、Instagramを利用するインフルエンサーマーケティングキャンペーンを委嘱した。PRC社は、テレビの人気コメディGrown-ishに出ているLuka SabbatがKourtney Kardashianと共演しているのを見て、彼を起用した。Sabbatは前金45000ドルをもらい、Spectaclesを着けている写真をInstagramにポストしたらさらに15000ドルもらえることになった。

契約ではSpectaclesを着けた状態でInstagramのフィードへのポスト1回、Storyへのポスト3回、そしてパリとミラノのFashion Weeksへ行ったときも、Spectaclesを着けた状態で写真に撮られること、となっていた。Storyのポストのうち2回は、スワイプするとSpectaclesを買えるリンクがあること。ポストはすべてPRCの事前承認を要すること。それらの効果に関するアナリティクスの数値を送ること。といった契約だった。

しかしSabbatは、Storyは契約3に対し実行1、スワイプ購入リンクは契約2に対し1、事前承認とアナリティクスはゼロ、という実行内容だった。このことを最初に報じたVariety誌のGene Maddausの記事によると、PRCはSabbatに、すでに支払った45000ドルの返金と被害補償45000ドルの支払いを求めて、訴訟を興した。Snap自身は、訴訟に参加していない。

訴状の原文を、この記事の下に埋め込んだ〔この記事の原文で埋め込みを見られます〕。それによると、“Sabbatは不正に金銭を受け取り、PRCに賠償請求の権利が生じた”、とある。Snapは、PRCにキャンペーンを委嘱したことを認め、ファッションブログMan RepellerのファウンダーLeandra Medine Cohenともキャンペーンを契約したことも認めた。そしてこのぼくは、一応礼儀として、Spectaclesを着けたSabbatの顔写真(この記事冒頭)をちょっとPhotoshopした。

【後略】

〔参考記事: Influencer marketing startup Mavrck raises another $5.8M(未訳)〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

企業のPR活動を評価するTrendKiteがソーシャルメディアとインフルエンサーに強い同業二社を買収

企業のPR活動の効果分析などを行うTrendKiteが、初めての買収を、しかも二件も行う。CEOのErik Huddlestonによれば、これによって、完全なPR分析プラットホームが必要とする最後の二つの部品が揃う。

これまで、TrendKiteの主な売りは、企業について書かれた記事を見て、その到達オーディエンスやブランド知名度への影響などを測る能力だった。

しかし、確かにそういうジャーナリスティックな視点は今後も重要だが、Huddlestonによると、“今の世界は前よりも複雑なので、誰が大衆に影響を与えているのか、簡単に判断できない”。そこで、Insightpoolと、その、ソーシャルメディアインフルエンサーたちのデータベースが役に立つことになり、企業のストーリーを広めることのできるインフルエンサーを見つけて売り込むことが、企業のPRの仕事になる。

一方Union Metricsは、ソーシャルメディアのアナリティクスを提供する。Huddlestonによると、“われわれがメディアのカバレッジを分析するように、彼らはストーリーをめぐる会話について分析をする”。

彼によると、両社を買収することによって、これまですでに利用していた彼らのプロダクトをより深くTrendKiteに統合できる。Union Metricsとはすでにパートナーシップがあり、Insightpoolについては、顧客がTrendKiteとInsightpoolを併用しているのを見て、統合すべきと考えた。

InsightpoolとUnion Metricsが加わったTrendKiteがどんな料金体系になるのか、それはまだ未定だ。それにまた、Huddlestonによると、今後も両者をスタンドアローンのプロダクトとしてもサポートしていく。

両社のチームと、InsightpoolのCEO Devon Wijesinghe、そしてUnion MetricsのCEO Hayes DavisはTrendKiteに加わり、InsightpoolはオースチンのTrendKiteにアトランタの拠点を与える。

買収の価額等は公表されていない。Crunchbaseによると、InsightpoolはTDF Venturesとシリコンバレーの銀行などから、750万ドルを調達している。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

企業のPR事業の分析プラットホームTrendKiteが新たに$11Mを調達、アーンドメディアの価値を強調

企業のPR業務を助けるTrendKiteが、新たに1100万ドルの資金を調達して、2017年を終えようとしている。

テキサス州オースチンに本社を置く同社によると、現在同社は毎日420万件の記事を分析して、企業や広告/マーケティング代理店が行っているPR努力の効果を測定している。たとえば、その会社名が登場する記事が何人の人の目にとまっているか、ブランド認知度のアップにいちばん貢献した記事はどれか、などなど。

TrendKiteの売上は前年比100%増以上の増加率で成長している。顧客には、Mondeléz International, Nike, Deltaなどが名を連ねる。同社によると、今回の資金は主に新たな製品開発に向けられる。同社の目標は、“CMOやCRM、およびマーケティング自動化ソフトウェアにとって必須のPRソフトウェアになること”だ。

しかし昨今のマーケティングの世界では、広告や自己メディアに比べて“アーンドメディア(earned media)”(得られたメディア==他のメディアに載ること)の効果がもてはやされるけれど、現アメリカ大統領による執拗なメディア攻撃や、各人が自分の殻や偏見の中に閉じこもる傾向の中では、その説も怪しくなっている。

こんな逆風の中でTrendKiteはどうやって生き延びていくのか。CEOのErik Huddlestonによると、上の二つの問題は、主に政治の領域に限られている。彼は曰く、“日頃から人気と信頼のあるライターや個人などによる、よく考えぬかれたレビューの方が、バナー広告やマーケティング的コピーよりもずっと強力だ”。

でも、偏見やいわれなき攻撃が、政治の世界以外にも広がったら、どうするのか?

Huddlestonの見解は: “もしそうなれば、TrendKiteのようなプラットホームの、より正しい記事やジャーナリストを見つけ出す能力が、ますます重要になる。メディアの世界は、何らかの偏向によって汚染されればされるほど、ターゲットにフォーカスした正しい清流の価値が目立ってくるんだ。これからのマーケティングは、そんなメディアを見つけ出し、味方につけていく努力がブランドイメージの向上のためにも重要だ。それは、企業のマーケティング部には手に負えない仕事だろう”。

今回のラウンドでTrendKiteの総調達額は4600万ドルあまりになる。ラウンドをリードした投資家Harmony Partnersは、ほかにもChartbeat, mParticle, Postmatesなどをそのポートフォリオに擁している。

Harmony Partnersのファウンダーで常勤役員パートナーのMark Lotkeは、声明文でこう述べている: “TrendKiteの高成長と優れた能力、そしてアーンドメディアが購買の意思決定者にとってますます重要になっている現在の市場機会を見れば、それ〔rendKiteへの投資〕はHarmony Venture Partnersにとって自明の選択である”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

『デジタルPR実践入門 完全版』に当ブログ編集長の記事が掲載されました[PR]

宣伝会議発刊(8月1日)の『デジタルPR実践入門 完全版』に、INBOUND marketing blog編集長の寄稿記事が掲載されました。 『デジタルPR実践入門 完全版』は同社発行の月刊『広報会議』のシリーズ連載が一 […]

TechCrunchへの掲載は100万円――スタートアップがこんなPR会社と付き合う必要はない

少し前の話だが、とあるPR会社の営業マンが成長中のスタートアップ企業に以下のような提案を持ってやってきたそうだ。

こういった営業の提案自体はよくある話。ただその提案資料には成果報酬(媒体で放送されたり、記事が掲載されたりすることで報酬を支払う)で日本経済新聞とワールドビジネスサテライト(WBS)が180万円、日経ビジネス、ダイヤモンド・オンライン、東洋経済オンラインなどが150万円、ITmedia、CNET Japan、ITProなどが100万円と、具体的な金額が並んでいた。TechCrunchも100万円なのだそうだ。380万円で4社掲載のパッケージプランもある。

お金を払えばあなたの手掛けるサービスが記事になります!お手軽!素晴らしい!――そんなわけがない。PRノウハウのないスタートアップがこんな提案を受け入れるのはやめたほうがいい。

複数のPR会社が「高い」と答える価格設定

そう思う理由は大きく2つあるのだけれど、まずは価格だ。複数のPR・広報関係者にこれらのプランについて聞きまわったのだけれども、誰もが一様に「高い」と声を揃えた。中には「この価格でやれるなら、今頃大金持ちですよ」なんて笑って語るPRの会社のスタッフもいた。

もう1つ、やめたほうがいいと思った理由がある。この提案書にロゴが掲載されている媒体数社の「中の人」に話を聞いてみたのだけれど、そもそもこの提案を持ってきたPR会社のことを知っているという人がいなかったのだ。

ちなみに提案書に名前のあったテレビ番組、ワールドビジネスサテライトのサイトには次のような注意書きが掲載されている。

最近、「ワールドビジネスサテライト」の制作会社を名乗り、番組に取り上げるよう計らうので一定の費用を払え、という売り込みをする会社がある、との情報が寄せられました。「ワールドビジネスサテライト」を始めとする報道番組は、あくまで報道番組の視点から番組が独自に取材対象の選定にあたっており、当社や番組制作会社が取材対象者から金銭を受け取って番組を制作することはありません。

まずはプロダクトへ注力すべき

僕はPR会社も広告代理店も否定しているつもりはないし、そもそもメディアビジネスとは切っても切れないものだと思っている。ただスタートアップが冒頭のようなPR会社を使うべきでないと言いたいのだ。

成果報酬ということだし、いくら関係者が高いと言おうがこれが「スタートアップを対象にした詐欺である」なんてことはないだろう。だからといって、媒体と接点のないPR会社に対して言われるままに数百万円を払い、1回限りになるかもしれない掲載実績を作ろうなんて思わないで欲しい。例えばTechCrunchにアプローチしてくれるのならば、サイト上のタレコミ欄からコンタクトを取ってくれればいい。タレコミは1円もかからない。

そんなことよりもまずスタートアップが注力すべきなのは、世の中に求められるいい企画、いいプロダクトを作ることだ。まずはプロダクトありき。そうすればうんざりするほど取材依頼も来るだろうし、ユーザーだって就職希望者だって集まってくる。

定量的な成果を求められるPR会社の悩み

この記事を書くまでに、提案書の内容をもとにかなりのPR・広報関係者に話を聞いてきた。その中では、今PR会社(特にオンラインメディアをカバーしている部隊だ)が抱えている悩みも知ることになった。

実はここ最近、クライアントがPR会社に対して、掲載媒体数やその数字をもとにした「広告費換算でいくら」というような定量的な成果を求める傾向が以前にも増して強くなっているのだそうだ。ようはPR会社も、「関係性を作るがどうかよりも、媒体に掲載されてナンボ」。そんな注文が来るのだという。特にマーケティング部門がお金を出す場合にこの傾向が強いのだとか。そりゃあ部署の役割としても、PRと広告とを同じように考えるのだろう。「広告費換算」なんて言葉でPRを語る人もいるのだけれど、さまざまな媒体のさまざまな枠が広告としてどれくらいの価値があるかで考えられていたりする。

こういうクライアントのニーズに対して、あるPR会社の役員は「特定の媒体に出すことだけを求められる場合、『PRとは何か』という話をし、特定の媒体だけに露出することが価値になるかよく話してからでないと案件を引き受けない」と語る。また別のPR会社のスタッフは、「記事広告やネイティブアドを発注するような、広告代理店的な動きを求められることがあるのは事実。だが結局はクライアントのニーズありき。ビジネスとしては正しいかも知れない」なんていう愚痴をこぼした。ほかには「あの媒体の○○という枠は、いくら払えば大体出せますよ」なんて生々しい話も聞いた。また別の関係者は「PR会社もクライアントも、パブリシティとパブリックリレーションズの違いを理解していないのではないか」と嘆いた。そんな背景もあって、冒頭のような提案が出てきたのかも知れない。

スタートアップのPRはどうすべきか

では優れたプロダクトを作り、いよいよ大々的にPRをする、という必要性が出てきたときにはどういうことをすればいいのか?「いいやり方」のヒントが見つかるコンテンツをいくつか紹介しておく。

まずは米国TechCrunchの記事だ。紹介しているサービスは日本ではまず関わりがないが、この中で筆者のRomain Dilletは「スタートアップについて誰なら興味をもってくれそうか、それをまず見つける。そして、短い、おいしそうなメールを送るのだ」なんて言っている。これはまさにそのとおりだと思う。TechCrunch Japanでもサイト上から投稿できる「タレコミ募集」のメールはチェックしているし、僕はソーシャルメディアでも声をかけてもらうのも歓迎だ(とはいえ最近はメッセージの洪水に流されそうになっていることもある)。

また、Impress Watchの編集記者を経て現在CerevoでPRを担当している甲斐祐樹氏のブログも非常に参考になると思う。これはプレスリリースを出す際のコミュニケーションについて書いたものだが、オンラインメディアとPRの両方を経験している同氏のエントリーは非常に具体的だ。参考にできるスタートアップも多いと思う。僕もスタートアップ向けに何度かPRの話をしたことがある。

工数はもちろんかかるが、タダでできる施策だっていくらでもある。スタートアップでPRを考えるなら、まずそんなところから始めればいい。そしていよいよPR会社などに依頼するときは、掲載実績ばかりをうたうようなところでなく、長いスパンでの戦略を共に考えられる文字どおりの「パートナー」を見つけて欲しい。