FacebookのMessengerアプリは、友達同士で送金し合うしくみの準備を整えた。あとはFacebookがこの機能のスイッチを入れるだけだ。スタンフォードのコンピュータサイエンスの学生、Andrew Audeが、iOSアプリ解析ツール、Cycriptを使って撮ったスクリーンショットとビデオによる。
Messengerの支払いオプションを使うと、ユーザーは写真を送るのと同じようにメッセージでお金を送ることができる。そのためにデビットカードを登録するか、すでにFacebookに登録したカードを使える。アプリにはPINコードが導入され、支払いにかかわるセキュリティーを強化している。
FacebookがMessengerを収益化するために、少額の送金手数料を徴収するのか、この単体チャットアプリの利用を促進するために無料で提供するのかは不明だ。それは元PayPalのプレジデントで、新たにMessengerの責任者となったDavid Marcusの考え次第だ。
これでFacebookがMarcusを引き抜いた理由がはっきりした。Facebook Messengerによる支払いは、Venmo、PayPal、Square Cashその他のピアツーピア送金アプリと競合する。。
FacebookのCEO、Mark Zuckerbergは同社のQ2 収支会見で、「いずれ、Messengerと支払いにはある程度重複する部分ができるだろう・・・支払い機能は、Facebook全体の成功を後押しするものであり、ユーザーがユーザー同士あるいは企業とやり取りするのにも役立つようにになる」と語った。しかし彼は、「必要な基盤作りのためにはまだ山ほど作業が残っている」のでまだ実施には時間がかかると語った。
彼は、アナリストや投資家に対して、これ[支払い機能]がすぐ来ると予想していたならFacebookの収益予測を修正するように、と促した。「もしみなさんの立てたモデルなどに、われわれがこれをやる計画が反映されているなら、修正することを強く推奨する。なぜなら、まだやらないからだ。われわれは複数年をかけて、正しいやり方を探していく」
Messengerのコードに支払い機能があることを先月最初に見つけたのは、セキュリティー研究者のJonathan Zdziarskiだった。Audeは本誌に対して、彼がCycryptを使って、自分のjailbreakしたiPhoneのMessengerアプリのコードに入り込み、支払い機能を有効にしてスクリーンショットとビデオを撮ったことを話した。FacebookにMessenger支払いについて問い合わせたところ、同社はコメントを拒んだ。
Audeはこの機能とコードをいじってみた。彼によると使い方は、ボタンを押して支払い機能を起動し、送金したい金額を入力して送るだけだという。送金取引情報は非公開で、ニュースフィード等には一切流されない。
Audeが解析したバージョンのMessenger支払いでは、デビットカードのみが利用可能で、クレジットカードや銀行口座は使えない。おそらく、デビットカードを利用した方が安上がりで認証手続きも楽だからだろう。Audeは、「デビットカードの取引でFacebookにかかる手数料は0.40~0.50ドル程度だろう。アプリには送金手数料への言及がなかったので、少なくとも当初は無料と思われる。いずれ1ドルの手数料を追加するかもしれない」と語った。しかし、それを確認する術はない。
Messengerの支払いオプションの中にPayPalをなかったが、Audeが発掘したコードの中にはPayPalについての注記があった。Facebookは、ユーザーがメインアプリでゲームまたは広告の支払い設定を行う際に、自動的に支払い方法のリストを表示する。
実際に資金が送られる方法について、Audeは私に、「送金のしくみは、まず一方の口座から引き出し、次に何かの魔法を使って受け手の口座番号とACH[自動決済機関]を割り出して振り込む。これはSquare Cashと同じだ」と言った。
今のところ支払いは個人対個人に限られるが、いずれはグループ支払いもサポートするであろうことが、コードから見てとれる:「当面は単一の支払いのみの添付をサポートする。複数支払いは将来サポートする」
Audeは、Facebookは同機能を数ヵ月以内に米国で有効にし、いずれその他の国でも公開するだろうが、このコードは早期段階の内部テストに向けたものだと考えている。一般公開までにはまだ時間がかかりそうだ。しかし、いつの日かFacebookは、外国人労働者が自国の家族へ送金する際に、10~20%に及ぶ法外な手数料を取っている送金業界に挑戦できるかもしれない。
現在メッセージングでは、Facebook/WhatsApp、Apple iMessage、TencentのWeChat、Line、KakaoTalk、Google Hangouts、Kik、楽天のViber、その他のサービスによる国際戦争が起きている。それぞれがスタンプやゲーム、コマース、ソーシャルネットワーキングなどで差別化をはかっている。
もしMessenger支払いが成功すれば、Facebookのチャットアプりを選ぶ全く新しい理由が増えることになる。友達に送金する、というのは月に何度もあることではないので、そのために専用アプリを使うのは理にかなわない。Facebookは、人々が毎日使うアプリに機能を組み込むことによって、Venmo等の専用アプリと争うつもりだ。
さらには、ピアツーピア支払いだけでなく、この機能によってFacebookはテビットカードやその他の支払い情報を集めることができる。その情報は、これもFacebookが取り組んでいる、ニュースフィードから直接Eコマース購入ができるBuyボタンにとっても非常に有用だ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)