ニュージーランドの機械学習を利用した写真編集ソフトスタートアップ「Narrative」が約2.8億円調達

フリーランスの写真家にとっては、写真を撮影するのと同じぐらい、宣伝や写真の編集に時間がかかる。2017年に創業したニュージーランド・オークランドのNarrativeは、ウェブサイトビルダーやAIを活用してベストショットを選ぶNarrative Selectといったツールでプロの写真家を支援し、膨大な数のショットを扱う時間を削減する。

米国時間7月14日、NarrativeはFounders Fundが主導しIcehouse Venturesが参加したシードラウンドで258万ドル(約2億8000万円)を調達したことを発表した。

NarrativeのウェブサイトソフトウェアであるNarrative Publishはすでに数万人の写真家が使用しているという。今回調達した資金の一部はNarrative Selectのマーケティングに使用する予定だ。Narrative Selectはサブスクリプションとして提供され、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響から立ち直ろうとしている世界中の写真家に対してユーザーベースを広げていく。

Narrativeは、米国や英国から技術職の社員を採用し、ニュージーランドのオフィスで仕事をしてもらう計画も進めている。新型コロナウイルスの封じ込めに成功しているとして、ニュージーランド移住に対する関心は高まっている(The Guardian記事)。

Narrative Selectは機械学習を利用し、写っている人物に対して特に着目して写真に魅力があるかどうかのフラグを立てる。例えば被写体がブレていたり目をつぶったりしていれば、その写真には魅力がないとフラグが立てられる。同社によれば、通常30%の写真に魅力がないというフラグが立てられ、編集時間を短縮できるという。Narrative Selectはファッション、広告、ライフスタイルの写真にも利用できるように拡張される予定だ。

画像クレジット:scyther5 / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

ライティングアプリUlyssesがアップデート、ダッシュボードや文法チェック機能を搭載

Mac、iPhone、iPad用の人気ライティングアプリでありUlyssesがアップデートされ、新機能がいくつか加わった。ユーザーインターフェイスが若干変更され、新たに右側のコラムがダッシュボードになった。文法とスタイルのチェックも追加され、Apple(アップル)のプラットフォームで提供されている機能よりも進化した。

ダッシュボードから見てみよう。これまでにもあった要素が新しいコラムにきちんとまとめられている。これまでは、ボタンをクリックして文書の統計情報を表示し、別のボタンをクリックして文書のアウトラインを表示し、さらにクリップの形のボタンをクリックして添付ファイルやメモ、タグ、目標にアクセスしていた。

統計情報を目標と一緒に見られないのは、ちょっと不便だった。また、ポップオーバーメニューをドラッグすると自動で閉じないことを知らなければ、アウトラインをドキュメントと並べて表示しておくこともできなかった。

新バージョンでは、すべてが3つのボタンにまとめられている。「共有」「マークアップメニュー」「ダッシュボード」だ。ダッシュボードには複数のタブがあり、ほとんどのタブでウィジェットをカスタマイズすることができる。

例えば、右コラムのアウトラインと文書を並べておけるのは、これまでよりずっと便利だ。見出しや小見出しをクリックして、その箇所にジャンプできる。脚注や画像、リンクの一覧も表示できる。新しいダッシュボードは、iPadやiPhoneでも利用できる。

画像クレジット:Ulysses

スペルチェックに関してはUlyssesはずっとアップルのネイティブの機能を利用していて、スペルミスがあると赤い下線で示される。

しかしUlyssesはLanguageTool Plusと統合することで、アップルのデフォルトの機能を超えた。LanguageTool Plusはブラウザで動作し、他社の開発者向けにAPIを公開している校正サービスだ。この新機能により、Ulyssesから書き出さなくても文章を確認できるようになった。

LanguageTool Plusはフリーミアムの製品で、2500文字以上のチェックには有料のサブスクリプションが必要だ。例えばこの記事の原文である英文記事は2500文字より少し多く、2500文字という制限はすぐに超えてしまいがちだということがわかる。Ulyssesユーザーなら、文法とスタイルのチェックはサブスクリプションに含まれている。

この機能ではスペルミスだけでなく、句読点の誤り、冗長な表現、タイポグラフィ、スタイルなども分析される。Grammarlyとの比較でいうと、LanguageTool Plusは20以上の言語に対応している。指摘を受け入れるか無視するかを1つひとつ判断したり、ダッシュボードでカテゴリーごとに見たりすることができる。

文法とスタイルのチェックは現時点ではMac版でのみ利用でき、iPhoneとiPadでは年内に利用できるようになる予定だ。

画像クレジット:Ulysses

画像クレジット:Ulysses

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(翻訳:Kaori Koyama)

SnapchatがTikTokスタイルの垂直スワイプで移動する操作をテスト中

Snapchatが、TikTokに対するより直接的な挑戦の準備をしているようだ。同社は、Snapchatの公開コンテンツを垂直方向のスワイプで移動できる新しい操作方法をテストしていることを認めた。この操作はTikTokによって普及したビデオ切り替え方式だ。Snapchatによると、この機能はコミュニティコンテンツのための、さまざまな没入型ビジュアルフォーマットを探究する実験の1つだ。

このテストは友達のプライベートストーリーではなく、Snapchatディスカバーに公開されているコンテンツに焦点を当てている。ただし、ストーリーは様々な要素で構成されているので、ユーザーはこれまでと同様にタップしてストーリーを進めることもできる。しかし今回の新しい実験では、左右を問わず水平方向にスワイプすると、これまでのようにストーリーの切り替えを行うのではなく新機能は終了してしまう。

TikTokに多くの時間を費やすようになった人にとっては、いまや垂直スワイプが、ビデオを移動するためのより自然な方法のように感じられるようになっている。そうしたユーザーは、水平スワイプが使用されているSnapchatやその他のアプリに戻ると、方向感覚を失ったような気分になるのだ。

このテストの存在は、ソーシャルメディアコンサルタントのMatt Navarra(マット・ナバラ)氏によって、Twitterユーザーの@artb2668からの投稿を引用する形で最初に報告された(Twitter投稿)。そこでシェアされた写真の上には、新しい機能をどのように操作すれば良いかを示すアプリのポップアップが示されており、そしてその操作感覚を示すビデオも添付されている。

Snapchatはこのテストが初期段階にあることと、ごく少数のユーザーにしか提供されていないこと以外の、テストに関する具体的な詳細を提供することを拒否した。

「私たちはいつでも没入的で魅力的なコンテンツを、モバイルファーストのSnapchatコミュニティに投入する方法を試しています」と広報担当者はTechCrunchに語った。

もちろん、Snapchatによるテストのタイミングは興味深いものだ。

トランプ政権は現在、TikTokが中国と緊密な関係を持っていること、そしてアメリカ人の個人ユーザーデータが最終的に中国共産党の手に渡るのではないかという恐れから、TikTokを米国で禁止するぞという圧力をかけている(The Wall Street Journal記事)。このアプリは、同様の理由ですでにインドでは禁止されている。米国時間7月10日には、Amazonは従業員に対して、会社が発行したスマートフォンからTikTokアプリを削除するように指示した(The NewYork Times記事)が、5時間後にはその要請を撤回した。2020年初めにはペンタゴンの警告を受けて、米軍の各部門も同アプリへのアクセスをブロックしている(The NewYork Times記事)。一方、Musical.ly(このアプリがTikTokとなった)は、中国のByteDance(バイトダンス)による買収により、米国の国家安全保障レビューを受けている(The NewYork Times記事)。

TikTokが削除の脅威に晒される中で、競合するソーシャルアプリであるByte、Like、Triller、Dubsmashなどが、アプリストアチャートで上昇している。一方Instagramは、TikTokに似たReelsをインド(未訳記事)を含む新しい市場に拡大している。最近はYouTubeでさえ、TikTokのようなエクスペリエンスのテストを開始した(未訳記事)。

TikTokの米国ユーザーをすぐに手に入れられる可能性を考えると、Snapchatが自社のユーザーベースでも同じことをやりたがるのは当然のことだ。

このテストは、ソーシャルアプリのユーザーエクスペリエンスの支配力に対して、TikTokがどれだけ影響力を持つようになったのかも示している。Snapchatはかつて、Instagramを含むほとんどすべての他のソーシャルアプリによってそのショート形式のストーリーのコンセプトを盗まれたが、いまやTikTokのスワイプ可能な垂直フィードがみんながコピーする対象となったのだ。

画像クレジット:Denis Charlet / AFP / Getty Images

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(翻訳:sako)

評価額1.1兆円超に急増した業務自動化のUIPathがシリーズEで約241億円を追加調達

2019年に、ガートナーがRobotic Process Automation(RPA)をエンタープライズソフトウェアで最も急成長しているカテゴリであるとレポートした(未訳記事)。こうした事情を考えれば、この分野の先頭を走るスタートアップであるUIPathが、米国時間7月13日に102億ドル(約1兆1000億円)という驚異的な評価額のもと、2億2500万ドル(約241億円)のシリーズE調達を発表したのは驚くに値しないことだろう。

ラウンドを主導したのはAlkeon Capitalで、そこにAccel、Coatue、Dragoneer、IVP、Madrona Venture Group、Sequoia Capital、Tencent、Tiger Global、Wellington、T. Rowe Price Associatesが参加した。Crunchbaseのデータによれば、今回の投資により調達総額は12億2500万ドル(約1313億円)に達した。

なおWellingtonのような機関投資家が参加していることは、しばしばある時点での株式公開を検討している可能性があることを示していることを指摘しておきたい。CFOのAshim Gupta(アシム・グプタ)氏は、共同創業者でCEOのDaniel Dines(ダニエル・ダインズ)氏が、この数カ月その構想と公開の条件を議論していることを隠そうとはしなかった。

「私たちは市場の状況を評価している最中です。候補がないとは申しませんが、この日が公開日だといえる日はまだ選んでおりません。私たちは、市場の準備が本当に整ったときに向けて、備えておくべきだという考えです。それが12〜18カ月後であったとしても不思議ではありません」と彼は語る。

投資家の関心を非常に引き付けている要因の1つは成長率だ。その勢いは企業が自動化する方法を模索する中で、たとえパンデミックの間でも上昇を続けているとグプタ氏はいう。実際、彼は過去24カか月で経常収益が1億ドル(約107億円)から4億ドル(約429億円)に増加したと語った。

RPAは、企業が手動の既存業務に一定レベルの自動化を追加し、既存のシステムを破棄することなく近代化をもたらす手助けをする。このアプローチは、デジタルトランスフォーメーションのもたらすある程度の利点を手にするために、既存のシステムを完全に置き換えてしまうことを望まない多くの企業にとって魅力的なやり方だ。今回のパンデミックによって、企業がより迅速に自動化する方法を模索するようになったため、この種のテクノロジーが最前線へと押し出されることとなった。

同社が70億ドル(約7500億円)の評価額で5億6800万ドル(約609億円)を調達してから(未訳記事)わずか6カ月後の2019年秋に、400人の従業員を解雇すると発表したときには周囲を驚かせた。だがグプタ氏は、そのレイオフはそれまで2年間急成長してきた会社の一種のリセットだという。

「2017年から2019年まで、私たちはさまざまな分野に投資してきました。そのことについて考えたのは2019年10月でした。自分たちの戦略に自信が持てるようになるになったため、一度立ち止まってみたのです。そして削減したい分野を再評価し、そのことが10月のレイオフの決定を後押ししたのです」。

関連記事:Gartner finds RPA is fastest growing market in enterprise software(未訳記事)

なぜ会社がそこまで多額の現金を必要としているのかと問われて、グプタ氏は成長する市場でできる限り多くの市場シェアを獲得するためには多くの支出をしており、そのためには多くの投資を必要としているのだと答えた。さらに、パンデミックによる経済的な不確実性に対するリスクヘッジとして、銀行にたくさんのお金を置いておくことは害にならないとも答えた。グプタ氏は、UIPathは製品ロードマップ上の穴をより早く埋めるために、今後数カ月以内の戦略的買収もあり得ると語った。

同社は2017年と2018年に経験したような成長を期待はしていないものの、今後も採用を続ける予定である。そして幹部チームは、組織のすべてのレベルで多様なチームを構築することに力を注いでいるとグプタ氏は語る。「私たちは最高の人材を求めていますが、最高の人材と最高のチームを持つということは、多様性もその一部でなければならないと確信しています」と彼は語った。

同社は、自動化ライブラリとソフトウェアのアウトソーシング企業として、2005年にルーマニアのブカレストで設立された。2015年にRPAへのピボットが始まり、それ以来飛躍的な成長を続けている。最終的には2億6500万ドル(約284億円)に膨らんだ(未訳記事)が、2018年9月に行われた2億2500万ドル(約241億円)のシリーズC(未訳記事)のころ、私たちは同スタートアップに話を聞いているが、そのときの顧客数は1800社だった。現在その数は7000社になり成長が続いている。

関連記事:UiPath nabs $568M at a $7B valuation to bring robotic process automation to the front office(未訳記事)

画像クレジット:simon2579 / Getty Images

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(翻訳:sako)

ベルリン拠点の新たな生産性向上アプリを開発するAmie、有名欧州VCのCreandumが支援

フィンテックスタートアップのN26でプロダクトマネージャーを務めていたDennis Müller(デニス・ミュラー)氏が手がける新しい生産性向上アプリの「Amie」が、プレシードで130万ドル(約1億4000万円)を調達し、製品開発と人材の雇用に弾みをつける。

23歳のミュラー氏を支援するのは、Spotifyの初期の投資家として有名なヨーロッパのVCであるCreandumで、Tiny.VCや多数のエンジェルも支援している。支援者には、元AccelのLaura Grimmelmann(ローラ・グリメルマン)氏、米N26のCEOのNicolas Kopp(ニコラス・コップ)氏、Dubsmash共同創業者のRoland Grenke(ローランド・グレンケ)氏、米チャレンジャーバンクChimeのプロダクト担当シニアバイスプレジデントのZachary Smith(ザカリー・スミス)氏などがいる。

ベルリンを拠点とするAmieは2020年前半に創業し、2021年前半に生産性向上アプリの公開を計画している。Amieが開発しているアプリは個人のカレンダーとTo Doリストを1カ所にまとめるもので、以前はcocoという名前だった。すべてのデバイスにわたって使え、「思いどおりに動作する」インターフェイスになると予告されている。

ミュラー氏は筆者に対し「以前はオフィスの壁にカレンダーがかけてあり、To Doリストはノートに書き留めていた。To Doリストを持ち出すことはできても、カレンダーはできなかった。こうしたことが、フローを再考することなくデジタル化された。生産性向上アプリはたいてい極めてピンポイントな問題を解決するもので、新たな問題が発生し、しかもユーザーが必要とするツールが多くなりすぎる」と述べた。

Amieのプレリリースアプリのスクリーンショット

Amieは「To Doや習慣、イベントはすべて時間を要するものであり、すべて同じところに属する」という原則のもとに作られているとミュラー氏は言う。多くの人はすでにTo Doのスケジュールを立てているが、Amieは最も素早くTo Doを作成し、イベントのスケジュールを決め、カレンダーをチェックし、さらに「Zoomの会議に参加する」ことまでをも実行するツールを提供しようとしている。

リリース予定のアプリを少し見てみたところ、AmieではTo Doを日付にドラッグ&ドロップしたり、リンクやスクリーンショットをTo Doにしたりすることができる。「AmieはランチャーアプリのAlfredのようなアプリで、ほかのアプリを起動する間にイベントを作成し、別のタイムゾーンの人を招待できる」と同社は説明する。

もっと広く言えば、ブラウザのタブを新たに開くとそれに伴って「脈絡の切り替え」が発生してしまうが、Amieはワークスペースの中心となって、そうした切り替えなしにビデオ会議に参加したりメモを取ったりメールを扱ったりできるようにすることも目指している。

さらにミュラー氏は「Amieには統合機能があるので、現在Googleカレンダーを使っているプロフェッショナルがターゲットになるだろう。ウェイトリストにはすでに数千人のユーザーが登録していて、そのほとんどがデザイナーや開発者、事業開発などテック業界で働いているプロフェッショナルだ」と述べた。

トップ画像:Daniel Farò

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(翻訳:Kaori Koyama)

インドネシアの零細ショップ向け簿記アプリ「BukuWarung」

インドネシアには、約6000万人の「マイクロマーチャント」がいる。彼らは食品やその他の生活必需品を販売する零細商店の店主であり、顧客と親しい関係にあることが多い。彼らはよく顧客にツケ払いを認めるが、財務追跡の多くは依然としてペンと紙の台帳で行われている。BukuWarung(ブクワルン)の共同創設者Chinmay Chauhan(チンマイ・チョウハン)氏とAbhinay Peddisetty(アブヒナリ・ペディセッティ)氏はこのプロセスをインドネシアの小規模な企業向けにデザインされた財務プラットフォームでデジタル化したいと考えている。彼らの目標は、簿記ツールから始め、運転資本へのアクセスなどへサービスを拡大していくことだ。

BukuWarungは現在、Y Combinatorのスタートアップ・アクセラレータ・プログラムに参加している。またBukuWarungは、East Ventures(イーストベンチャーズ)、AC Ventures(ACベンチャーズ)、Golden Gate Ventures(ゴールデンゲートベンチャーズ)、Tanglin Ventures(タングリンベンチャーズ)、Samporna(サンポルナ)、ならびにGrab(グラブ)、Gojek(ゴジェック)、Flipkart(フリップカート)、PayPal(ペイパル)、Xendit(エクセンディット)、Rapyd(ラピッド)、Alterra(アルテラ)、ZEN Rooms(ZENルームズ)、およびその他の企業の戦略的エンジェル投資家からシード資金を調達している

チョウハン氏とペディセッティ氏は、シンガポールに拠点を置くピアツーピアのマーケットプレイスであるCarousell(カルーセル)で働いているときに知り合った。ここで彼らは販売者向けの収益化製品を開発していた。チョウハン氏はさらに、東南アジアにおける配車サービスとオンデマンドデリバリーの最大手Grabで、商店主向け製品開発にも取り組んでいた。しかし、BukuWarungを思い付いた背景には本人たちが育った環境も関係している。チョウハン氏とペディセッティ氏の家族はどちらもご近所向けの小規模商店を経営しているのだ。

「GrabやCarousellで商店主向けの収益化製品を開発していた経験から、どうやればいいのかはよくわかっています。またインドネシアには大きなポテンシャルがあるのもわかっています。6000万人の商店主がオンラインを利用しデジタル化を遂げるのを支援することができるのです。マクロレベルで見ると、これは大きなビジネスチャンスであり、また個人レベルでも、何百万という商店主に影響を与えられるという可能性を感じています」とチョウハン氏は語っている。

紙での簿記の場合、財務追跡に手間がかかるだけでなく、顧客のツケがどれくらいあるのかがわかりづらい。チョウハン氏とペディセッティ氏はTechCrunchに対し、彼らの目標は、KhataBookやOKCrediがインドで行っているのと同様のことをインドネシアで行い、彼らの会社を財務サービスも扱う会社に拡張することだと述べた。

BukuWarungは昨年サービスを開始して以来、インドネシアの750の市町村で60万人の商店主が契約しており、現在月平均ユーザーは20万人に上る。チョウハン氏とペディセッティ氏は、インドネシアの6000万人に上る零細・中小規模の商店主たちにサービスを利用してもらうことが目標だと言う。彼らはすでにインドネシア初のクレジット追跡アプリの1つであるLunasbos(ルナスボス)を買収している。

Image Credits: BukuWarung

BukuWarungのサービス開始準備を進める中で、2人はインドネシアを旅しておおよそ400人の商店主と、簿記、クレジット追跡、会計の問題点について話し合った。このときの商店主たちとの会話から、2人はまずは簿記アプリに焦点を当てることにし、簿記アプリサービスを10ヶ月前に開始した。

4月から6月にかけてインドネシアでは部分的なロックダウンが行われたが、BukuWarungのユーザーの大部分は食料品など生活必需品を扱う商店主であるため、アプリは成長を続けている。小さな都市や村では、人々のキャッシュフローが非常にタイトで、またその多くは月々の定期収入を持たないため、商店主はよく顧客にツケ払いを認める。チョウハン氏は「みなツケで売り買いしているということを、私たちは調査で突き止めました」と述べている。

そこへ来て、多くの商店主は顧客と親しい関係にあるという地域的特色がある。

チョウハン氏によると「これは地域によって異なるのですが、商店主はご近所のたくさんの人々のことを昔から知っていて、通常、500インドネシアルピーから最大約100万インドネシアルピー(約7500円)を貸し付けています」ということだ。しかし、顧客の自宅を回って支払いを求める回収時期になると、多くの商店主はためらいを感じるのだという。

「私たちが開発したアプリを使用すれば、彼らは顧客を探したり電話をしたりしなくてもすみます。アプリが顧客に自動的に貸付回収通知を送るからです。この『ソフトなメッセージ』のおかげで、ためらいを感じることなく、商店主として確実に顧客に通知を届けることができるのです」と同氏は付け加えている。

商店主たちと話すうちに、BukuWarungの創設者は、多くの商店主が従量課金制のデータプランとローエンドのスマートフォンを使用していることにも気付いた。そのためユーザーがいつでもそれぞれの記録にアクセスしアップデートできるよう、アプリは可能な限り軽量で、オフラインでも機能する必要があった。アプリの開発においてデータと容量をできるだけ少なくすることに重点を置いた結果、他の簿記アプリとの差別化を図ることができ、このことがインドネシアで契約数とユーザー数を維持することに役立っていると2人は述べている。

チョウハン氏とペディセッティ氏は、ユーザーがデジタルウォレットやファイナンスなどのオンライン決済システムへアクセスできるよう、同社の成長に合わせ金融テクノロジー企業と提携するつもりであると語った。

Y CombinatorのパートナーであるGustaf Alströmer(グスターヴ・アルストレーマー)氏は、TechCrunchへの声明で「新興経済圏向けのデジタルインフラストラクチャ開発は、特にCOVID後の世界においては大きなビジネスチャンスとなります。BukuWarungはこの課題に取り組むことができるチームであると信じています。私たちはインドでのKhatabookやOkCreditの取り組みを見てきましたが、BukuWarungが同様に成長し、インドネシアにおいて零細企業に力を与えることになると考えています」と述べている。

関連記事:データクリーンアップのスタートアップ、インドネシア拠点のDelmanが約1.7億円を調達

カテゴリー:ソフトウェア

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インテルCPUからApple Siliconへの移行のキモとなるUniversal 2とRosetta 2とは何か?

MacのCPUをインテルからApple Siliconに乗り換えることは、アップル自身にとってはもちろんのこと、サードパーティのアプリのデベロッパーにとっても、そしてユーザーにとっても、それなりに大事業であり、大きな変化を余儀なくされることがあるのも確かだ。

しかしアップルでは、この大事業をできるだけスムーズかつシームレスに成し遂げられるよう、そしてユーザーやデベロッパーの負担ができるだけ小さくて済むように、何種類、何段階もの施策を用意している。

WWDC20のキーノートでも述べられていたように、こうした動きを広く捉えると全部で4種類の方策が数えられる。そのうち最初の2つが特に重要だ。1つはインテルとApple Silicon、両方のネイティブコードを含む1つのアプリを提供するためのUniversal 2というバイナリフォーマットの採用。もう1つは従来のインテル用のアプリをApple Silicon Mac上で自動的に変換して実行できるようにするRosetta 2の導入だ。アップルでは、それらに加えてサードパーティ製の仮想化技術と、iPhone/iPadアプリがそのままMac上でネイティブ動作するBig Surの新しいアプリ環境を挙げている。

後半の2つのうち、仮想化技術は、これまでのインテルMacでも、非Mac、あるいは非ネイティブなアプリ用の動作環境として重要な役割を果たしてきた。そうした環境がApple Silicon Mac上でも継続的に用意されることは重要だ。

それに比べると、以前には存在しなかったiPhone/iPadアプリの動作環境は、インテルからApple Siliconへのスムーズ/シームレスな移行には直接関係ないように思えるかもしれない。しかし、Apple Siliconに移行した直後には、真にネイティブなサードパーティ製のMacアプリが不足気味になる可能性もあることを考えると、その際にネイティブで動作するiPhone/iPadアプリが存在するのは、ユーザーにとっても心強いことだと考えられる。

ともあれ、やはり今回の移行をストレスのないものにするための重要な技術は、Universal 2とRosetta 2の2つであることは間違いない。これらの技術は、主に誰のためにあるものかと考えると、対照的な位置づけであることに気付く。つまり、Universal 2は、アプリのデベロッパーが利用して、両方のCPUにネイティブ対応できるアプリを作成するためのものであるのに対して、Rosetta 2はもっぱらユーザーが利用して、旧形式のアプリを新しいプラットフォームで動作させるためのもの。それぞれ現時点でわかっている範囲で詳しく見ていこう。

デベロッパーのトランジションをスムーズにするUniversal 2

今回のWWDCで、Universal 2について最初に言及したのは、もちろんキーノートだった。その際には、インテル用とApple Silicon用のネイティブコードを1つのバイナリで供給できるフォーマットであることが紹介されただけで、それ以上の技術的なことは述べられなかった。

ただしデモとしては、すでにApple Siliconにネイティブ対応しているマイクロソフトやアドビなど、大手のデベロッパーのアプリが登場した。こうしたアプリは、インテルからApple Siliconへの移行期間として想定されている少なくとも2年間は、Universal 2アプリとして供給されることになるだろう。実のところユーザーの手元には、さらに長期間インテルMacも残るはずなので、Universal 2アプリが必要とされる期間は2年よりもう少し長くなるはずだ。

キーノート以外では「Platforms State of the Union」でも、実際にXcodeを使ってUniversal 2アプリをビルドするデモを交えなから、より詳しい話が語られた。

そこでまず出た話は、複数のCPU用コードを内蔵するユニバーサルアプリは、特に新しいものではないということ。Macでは、PowerPCからインテルに移行する際にはもちろん、同じインテルでも32ビットから64ビットに移行する際にも同様の仕組みを利用している。それを考えれば、今回は複数のCPUコードの組み合わせが、インテルとApple Siliconになったに過ぎないと考えることも可能だろう。

また、ユニバーサルアプリの基本的な情報として、コードは確かに2種類だが、それ以外のリソースはすべてひととおりしか持たないということも示された。つまり、画像や音声、3Dモデル、機械学習モデルといった容量が大きくなる可能性のあるデータは、コードの種類によらず共通なので、1つ持てばいい。そのため、ユニバーサルアプリにしてもアプリのサイズの増加は最小限に留められる。実際の増分はアプリの内容によって異なるが、通常のアプリでは純粋なコードの容量はアプリサイズの数十%以内だろう。とすれば、その部分だけが2倍になっても全体の増分は元の数十%に収まることになる。仮にリソースとしてのデータをまったく持たず、すべてコードだけで構成されているようなアプリがあったとしても、最大でほぼ2倍には収まるはずだ。

Xcodeでアプリをビルドする場合、そのXcodeが動作しているMacと同じアーキテクチャのネイティブコードをターゲットにビルドするには、単にそのMacの名前(この例では「My Mac」)を選べばいい。そして、Universal 2アプリをビルドするには、その選択を「Any Mac」に変更するだけ。それだけで、インテルとApple Silicon、2種類のCPUの実行コードを含んだユニバーサルアプリがビルドできる。

原理的には、このようにXcodeのターゲットを切り替えるだけでUniversal 2対応のアプリを作成できるわけだが、アップルではインテルアプリからUniversal 2への移行に要する時間を、ほとんどのデベロッパーについて「数日」以内としている。それは、CPUのアーキテクチャの違いからくる可能性のある問題を解決したり、最適化したりするのに時間を要する場合があるからだろう。

それでも、インテルからApple Siliconへの移行は、少なくともPowerPCからインテルへの移行よりは、かなり楽にできるはずだとしている。その理由として、3つの要因を挙げている。

まず、Apple Siliconとインテルのエンディアンが同一だから。つまり2バイト以上で表現するデータのメモリ上での配置の順番が、いずれも下位バイトのデータをメモリアドレスの小さいほうに、上位バイトのデータをアドレスの大きいほうに格納していくリトルエンディアンを採用している。そのため、データのバイト順をスワップする必要がない。

実はPowerPCは、バイエンディアンと言って、リトルエンディアンとビッグエンディアンのいずれに設定することも可能だった。しかしMacでは、それ以前の68Kプロセッサーがビッグエンディアンだったため、PowerPCをインテルとは逆のビッグエンディアンで使用していたのだ。PowerPCからインテルに変換したアプリでは、実行時にデータを扱うたびに余計な時間がかかるだけでなく、トリッキーなデータの扱いをしているプログラムでは、重大な、それでいて見つけにくいバグの原因となっていた。

2つ目の理由は、macOSアプリのデベロッパーは、iOS/iPadOSアプリもリリースしていることが多いことからくるもの。その場合、macOS用とiOS/iPadOS用のコードで、ソースレベルでは共通のものも少なくないはずだ。少なくともその部分は、すでにARMアーキテクチャへの移行が完全に済んでいることになる。そこには触る必要なくユニバーサルに移行できる。

3つ目は作業効率的な問題だが、Apple Silicon用アプリを開発するマシンは、必ずしもApple Silicon搭載Macである必要はない。つまりXcode 12をインストールしたインテルMacでも、Apple Silicon用のコードを含むUniversal 2アプリをクロスコンパイルしてビルドすることが可能なのだ。それによって、Mac用アプリのデベロッパーは既存のリソースをフルに生かしてApple Silicon対応アプリ開発に取り組むことができる。

なお「Port your Mac app to Apple Silicon」というセッションでは、アプリがCPUに関わるローレベルの情報を直接扱っているような場合や、プラグインを利用している場合などに発生しがちな不具合を取り上げて、移行の方法をXcode上で具体的に示している。デベロッパーにとっては参考になるはずだ。

ユーザーに気づかれない移行を目指すRosetta 2

Rosetta 2についても、最初に紹介されたのはキーノートでだった。そこでは大きな特徴として、高性能かつ互換性が高いこと、アプリのコードはインストール時に変換されること、プラグインなどは実行直前にダイナミックに変換することも可能であること、ユーザーにとっては意識せずに動作することなどが挙げられた。

また「Platforms State of the Union」でもRosetta 2は取り上げられた。Metalでも有効で高性能を発揮することが付け加えらたほか、いくつか新しいデモが示されたが、技術的な内容としてはキーノートと大差がなかったと言える。

一方「Explore the new system architecture of Apple Silicon Macs」のセッションでは、比較的詳しい技術的内容も明らかにされた。まず示されたのは、Rosetta 2で動作可能なアプリの種類だ。一般的なmacOSのアプリはもちろん、Mac Catalystを利用して作られたアプリ、ゲーム、JavaScript用のJITコンパイラーなどを含むウェブブラウザーなどが挙げられた。Metalを利用したアプリでも、Rosetta 2によって適切なApple Silicon上のGPUコマンドが生成されるという。さらに、機械学習を扱うCoreMLフレームワークを利用したアプリでも、Apple Siliconに内蔵されるニューラルエンジンを利用して動作するようになる。

次に、Rosetta 2によって実際のコードの変換が発生するタイミングについても説明された。それによると、1つは、App Storeからインストールするタイミング。もう1つは、どこからかダウンロードしたインストーラーのパッケージからインストールするタイミングだ。そして、こうしたアップル製の標準的なインストーラーを使わないアプリでも、初めて起動するタイミングで自動的に変換が実行される。その場合でも、最初だけDockの中でアプリのアイコンがバウンスする回数が多くなる程度だという。

またRosetta 2によるコードの変換は、セキュリティ的にも配慮されたものとなっている。コードは署名され、安全に保存される。また変換を実行したマシンでしか動作しない。こうしたセキュリティ設定は、OSをアップデートする際に更新されるので、変換済のコードはそのまま利用できるはずだ。

変換済のアプリを起動すると、当然ながら変換後のコードが動作する。ただし、プラグインのように、インストール時に変換されなかったコードについては、実行時に自動的に変換されるようになっている。

それでも、インテルCPUとApple Siliconには、細かな点でいろいろと違いがあるため、Rosetta 2で吸収しきれずにうまく動作しないアプリがあることも考えられる。たとえばRosetta 2は、インテルのAVX(Advanced Vector eXtension)と呼ばれるベクトル演算の拡張命令をサポートしていない。行儀のいいアプリであれば、事前にCPUがAVXをサポートしているかどうかを確認してから使うように作られている可能性もある。そうしたアプリでは問題ないかもしれないが、最初からAVXの存在を仮定して、いきなりそうした命令を使うようなアプリは、Apple Silicon上では動作しないだろう。

Rosetta 2は、多くの場合デベロッパーがアップデートをやめてしまったり、Apple Siliconへの移行をあきらめたような過去のアプリを動作させるためのものと考えられる。そのようなアプリにRosetta 2が対応できない部分が出てきてしまった場合、対処方法はほぼない。実際にはApple Silicon搭載Macが登場してみないと何とも言えないが、そのようなアプリがそれほど多くないことを願いたい。

画像クレジット:Apple

アップルが教育者向けにSwiftとXcodeが学べる無料のプログラミング教材を拡充

米国時間7月9日、Apple(アップル)は、あらゆるスキルレベルの教育者がSwift(スイフト)とXcode(エックスコード)の両方を教えることができるようにするための、新しい無料教材の計画を発表した(Appleリリース)。米国時間7月13日には、アップルは「Develop in Swift(Swiftで開発)」カリキュラムの入門編として役立つ無料のオンライントレーニングを、教育者に提供し始める。

アップルによれば、このカリキュラムは学生の学習スタイルに合うように、ユーザーのフィードバックに基いて完全に再設計されたものだという。

この結果、新しいシリーズには「Develop in Swift Explorations」(探究)「Develop in Swift AP CS Principles」(上級コース)および「Develop in Swift Fundamentals」(基礎)という3つのコースが含まれることになり、いずれもすぐに利用可能となる。また4冊目の本「Develop in Swift Data Collections」(データコレクション)は、今秋後半に発行される予定だ。すべてApple Booksから入手できる。

カリキュラムは高校および高等教育の学生を対象としており、アップルが設計したオープンソースのプログラミング言語Swiftに焦点を当て、Mac上でXcodeを使用して行う。

画像クレジット:Apple

4年生から8年生(日本の中学2年生に相当)の若い学習者向けには、アップルのEveryone Can Code(誰でもプログラミングができる)カリキュラムが用意されていて、そこではSwift Playgroundsアプリを通じて、パズルとゲームを使いSwiftのブロック式コーディングが教えられている。このコースも、現在拡張されている最中だ。

「Everyone Can Code Puzzles」本をすでに完了している学生は、新しい本「Everyone Can Code Adventures」に進むことができる。この本は、学生が重要なプログラミングの概念について学びながら、Swiftでの開発を練習できる、より高度なアクティビティを含んでいる。

同社は、新しく拡張されたコースの意図を、しばしば必要とされる米国でのコンピューターサイエンス教師たちのニーズを補足することだという。

アップルはComputer Science Teachers Association(CSTA、米国コンピューターサイエンスティーチャーズアソシエーション)が、今日コンピューターサイエンスのクラスを提供している高校は全体の半分にも満たず、多くの大学生が教師不足のために卒業に必要なコンピューターサイエンスコースに参加できないと主張している点に着目している。

さらに、これらのコースは保護者にも提供されている。多くの保護者は現在、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックの中で、自宅スクールで教師の役割を果たしている。

またアップルは自宅学習者の保護者向けに、iPadまたはMac上での10のコーディング課題を含む「A Quick Start to Code」などの、10歳以上向けの新しいリモート学習リソースセットを加えた。さらに、今春にローンチしたアップルの Learning from Home(リモート学習)ウェブサイトにも、リソースが置かれている。このサイトには、オンデマンドビデオやリモート学習に関する仮想会議、および無料の1対1の仮想コーチングセッションをスケジュールするオプションが含まれており、アップルの教育者によってホストされる。

アップルによって推し進められているコーディング教育の強化の長期的な影響は、まだわからない。例えば「Everyone Can Code」は2016年に開始されたばかりで「Develop in Swift」カリキュラムは2019年に始まったばかりだ。合計すると、現在それらのプログラムは、世界中で9000を数える高等教育機関で採用されている。

「誰もが」コードを学ぶことができ、そして学ぶべきであるという考えは、まだ議論の余地がある。多くの人がコーディングの基礎を学ぶことはできるかもしれないが、誰もがコーディングを楽しんだり、それに優れているわけではない。さらに、人はしばしば間違った理由でコーディングに目を向けたり(Bloomberg記事)、わずか2、3週間のトレーニングで簡単に年収数千万円を手にすることができると煽るブートキャンプに騙されたりしている。

その一方で、より多くの子供たちをコーディングの概念を教えることで、見過ごされていた可能性のある、潜在的な才能とプログラミングへの関心を発見できる可能性もある。そうした関心は、子供が成長する中で、将来のコースや教育によって育むことができる。

「アップルは40年の間、教育者の方々と協力してきました。特にDevelop in SwiftとEveryone Can Codeが、教師と生徒のみなさんがコミュニティに影響を与えるお手伝いをできたことを誇りに思います」と、アップルのマーケット、アプリ、ならびにサービス担当副社長であるSusan Prescott(スーザン・プレスコット)氏は声明で語った。「私たちは、コミュニティカレッジの学生がキャンパス向けの食品安全アプリを作成したり、中学校の先生たちが夏休みに仮想コーディングクラブを主催したりするのを見ました。コンピューターサイエンス教育への関与を拡大する取り組みの一環として、これまでの経験に関係なくより多くの教育者がコーディングを学び、次世代の開発者やデザイナーに教える機会を提供できるようする新しい専門学習コースを追加できることを、うれしく思っています」と彼女は付け加えている。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:sako)

MacにApple Siliconを搭載するアップルの本当の狙い

2020年6月に開催されたアップルのWWDCでは、MacのメインCPUをIntel(インテル)からアップル製のいわゆるApple Siliconにスイッチすることが発表された。それ以来、その方針があたかも金科玉条のように語られ、ずっと以前から運命付けられていたかのような雰囲気さえ漂っている。それこそが実際の製品の発売にかなり先立って、こうした方針転換を発表したアップルの狙いだったことは間違いない。

いみじくもAPIを公開し、サードパーティにアプリケーションの開発を可能にしているパソコンが、CPUのメーカー、系統を大きく変更するというのには大きく2種類の理由が考えられる。1つは技術的なもの。もう1つは政治的なものだ。WWDCのキーノートなどでは、当然ながら政治的な狙いについては何も語られていない。もちろん技術的なメリットがなければ、政治的な理由だけでCPUを変更するとも考えにくいが、すでに成熟した製品となって久しいMacが、この段階に来て変更に踏み切るからには、政治的なメリットもそれなりに大きいはずだ。

この記事ではそこには深入りしないが、アップルにしてみれば今後はCPUの選択、設計、コスト、納期など、あらゆる面に関して、自らコントロールできるようになる。すべてが自分の責任になるものの、そこから生まれるメリットは絶大だろう。とはいえ、それはあくまでもアップルにとってのメリットだ。デベロッパーやユーザーは、性能や機能、価格など、背に腹は代えられない部分で明らかなメリットがなければ、MacのCPUの変更は面倒の種が1つ増えるだけで、できればやめてもらいたいと思うだろう。

もちろん、MacのCPUがiPhoneやiPadなどのモバイルデバイスと共通になるのは、それだけで大きなメリットだ。「iPhone/iPadアプリは本当にそのままApple Silicon Mac上で動くのか?」でも述べたように、すべてのアップル製品のアプリケーションの基盤が共通化され、膨大な数のiPhone/iPadアプリがそのままMacで動作する夢のような環境への扉を開くからだ。しかし、Apple Silicon採用のメリットは、それだけではない。キーノートでは詳しく述べられていなかった数多くのメリットがある。それらを具体的に見ていこう。

高性能と低消費電力の両立は真のメリットではない

今回のキーノートでは、CEOのティム・クック氏自らが、Apple Siliconへの転換を明らかにした。その際に述べられていた動機は、大義名分としてまことにもっともなものだった。かいつまんで言えば、アップルではハードウェアとソフトウェアのインテグレーションが、すべての基本となっている。「自ら開発するApple Siliconの採用によって、それがさらに高いレベルで実現し、より優れた製品を提供できるようになる」というのだ。

キーノートでクック氏を引き継いだハードウェア技術担当の上級副社長であるJohny Srouji(ジョニー・スルージ)氏も、技術的にはそれほど詳しい具体的な話はしなかった。ただ、「Apple Siliconはパフォーマンスと消費電力のバランスに優れ、1つのアーキテクチャでApple WatchからMac Proまでカバーできるほどのスケーラビリティを備えている」ということを強調していた。

これも確かにそのとおりだろうし、納得しやすい話だが、Apple Siliconでなければならない理由には踏み込んでおらず今ひとつ説得力には欠ける。というのも、現在のコンシューマー機器向けCPUであれば、力点を置く部分に多少の違いこそあれ、どんなメーカーの製品でも高性能と低消費電力の両立を目指していると考えられるからだ。

同じWWDCの「Platforms State of the Union」でも、今年は当然ながらApple Siliconがメインのトピックに据えられた。アップルのプラットフォームに関して、キーノートよりも技術的に突っ込んだ話をすることになっているセッションだ。しかしそこでも、どうしてApple Siliconが優れているかについては漠然とした話しか語られなかった。

そのセッションで挙げられたApple Siliconの技術的なメリットは、次の4点に集約される。

  • Huge Improvements to Speed(速度の飛躍的な向上)
  • Graphic Performance(グラフィック性能)
  • Power Consumption(消費電力)
  • Security(セキュリティ)

これらのメリットについて、いくつかのアプリケーションのデモが示され、すでに実際にApple Silicon上でMacのソフトウェアが動作し、高性能を発揮していることが強調された。それでも、なぜApple Siliconでなければならないのか、簡単なアーキテクチャの図が示されただけで技術的な説明はここでもまだ具体性に欠けている。

Apple Siliconのパフォーマンス面でのメリット

Apple Siliconについて技術的に一歩踏み込んだ詳しい話は、ようやく「Explore the new system architecture of Apple Silicon Mac」というセッションで登場した。実際にmacOSをApple Siliconに移行させる仕事をしているCore OSグループの担当者であるGavin Barraclough(ギャビン・バラクロー)氏による説明だ。

そこではまず、現状のインテルベースのMacの基本的なアーキテクチャの確認から入った。独立したGPUを持つマシンでは、インテル製のCPUとAMD製のGPU、そして主にセキュリティに関するコントローラーとして動作するアップル製のT2チップを備えている。この場合、CPUとGPUは、それそれ独立したメモリを使って動作する。それがメリットになる場合もあるだろうが、両メモリ間でのデータ転送はPCIバス経由となり、大量のデータを扱うには効率が悪い。

それに対してApple Siliconでは、1つのSoC(System on a Chip)として、CPU、GPU、セキュリティ関連の機能はもちろん、ビデオのエンコーダー/デコーダー、機械学習関連の処理をハードウェアで実行するニューラルエンジン、機械学習アクセラレーターなどが詰め込まれている。このように多様な機能をワンチップに統合できるのは、iPhoneやiPad用のSoCとして培ってきた設計技術の成果だろう。

この構成では、CPUとGPUが1つのメモリを共有することになり、画像やテクスチャ、ジオメトリなどのデータ転送は効率化される。アップルではこれをUnified memory architecture(統合メモリアーキテクチャ)と呼んでいる。

またApple SiliconのCPUには、これまで採用していたインテル製のCPUにはない大きな特徴がある。それは内蔵する複数のコアの処理能力が、すべて同一ではないということだ。アップルではこれをAsymmetric multiprocessing(非対称マルチプロセッシング)、略してAMPと呼ぶ。例えば、ユーザーによる操作の追従のような軽い処理は低能力のコアで実行し、負荷の重い高度な演算処理は高能力のコアで実行することで、全体的なコアの利用効率を高めることができる。アプリのデベロッパーとしては、プロセスの優先順位を適切に見積もって設定し、効率的な処理が実行されるよう追求する必要がある。とはいえ、一般的なマルチタスク処理は、これまでどおりGCD(Grand Central Dispatch)を利用して、個々のタスクが適切にスレッドに割り振られるようにすることが推奨される。

アプリとして、こうしたApple Siliconの能力を利用するために、特に新たなAPIを導入する必要ない。例えばGPU処理に関しては、これまでどおりMetalを利用すれば、自動的に最大限のパフォーマンスが発揮される。また、ビデオ関連はAVFoundationやVideoToolbox、機械学習関連はCoreMLのように、それぞれ使い慣れたフレームワークを利用すれば最適な処理が実行される。機械学習関連については、Accelerateフレームワークを利用して、ハードウェアをより効率的に利用することも可能だ。

Apple Siliconが可能にするMacならではの機能

Macに搭載されるApple Siliconは、これまでiPhoneやiPadといったモバイルデバイスに使われてきたアップル製のSoCとは異なる部分もある。それはMacがデスクトップコンピューターであることに関連する機能だ。つまり、Macに搭載されるApple Siliconは、単にiPhoneやiPadにすでに搭載されているものをそのまま、あるいは性能を強化して持ってくるのではなく、Macならではの機能も盛り込んだものとなる。

まず異なるのが起動プロセスだ。Apple Siliconを搭載するMacでは、iPhoneやiPadと同様の起動セキュリティを確保しつつ、外付けのディスクを含めて複数のボリュームから選択的に起動する機能を実現する。それらの複数のボリュームには、異なるバージョンのmacOSがインストールされている可能性がある。そのため、新しいブートローダーは、その時点での過去のバージョンも含め、アップルによってサインされたすべてのバージョンのmacOSから起動できる。

さらに新しいリカバリー機能も含まれている。これは、新世代のMacの大きなメリットの1つに数えられるだろう。「Startup Options UI」という専用のインターフェースが用意され、すべてのMacから共通の操作によってアクセスできる。MacBookシリーズではTouch IDボタン、デスクトップでは電源ボタンを長押しするだけで、このUIを起動できる。

ここからは、起動ディスクの選択だけでなく、新たに搭載される「Startup Manager」(起動マネージャ)、「Mac Sharing Mode」(Mac共有モード)を起動することも可能となる。後者のMac Sharing Modeは、これまでのターゲットディスクモードに代わるものとなる。これはSMBを利用したファイル共有機能によって、外部からユーザーデータにアクセスすることを可能する。当然ながらMac内部のディスクにアクセスするには、正当なユーザー認証が必要となる。

起動ディスクの選択についても、これまでにはなかった細かな設定が可能となる。具体的には、起動ボリュームごと独立にセキュリティポリシーを選べるようになる。Macを何らかの業務に使うだけであれば、iPhoneなどと同様、常に最高のセキュリティポリシーを適用して起動すればいい。しかし、研究者や趣味でいろいろいじりたいユーザーは、それでは自由度が制限されて目的が達成できないことある。そこで、あえてセキュリティを低減させるモードも用意している。

セキュリティポリシーは、これまで同様csrutilコマンドによって設定できる。しかしインテルベースのMacでは、設定したセキュリティーポリシーはシステム全体で有効となるものだった。そのため1つのボリュームのセキュリティを低減させたい場合、他のボリュームのセキュリティも低減させざるを得なかった。Apple Siliconを搭載するMacでは、起動ボリュームごと独立にセキュリティポリシーが設定できるので、他の部分のセキュリティを強固に保ったまま、目的のボリュームだけ低減させるという使い方が可能となる。

リカバリー機能も強化される。macOSには、通常のボリュームから起動できなくなった場合に備えて、リカバリーボリュームが用意されている。そこから起動すれば、通常のボリュームを修復したり、再インストールしたりすることが可能となる。ここまでは、インテルベースのMacでもApple SiliconのMacでも同じだ。リカバリーボリューム自体も起動できない場合、インテルベースのMacでは、インターネットリカバリー機能によって、サーバーにある最小限のOSを起動できるようになっている。Apple Silicon Macでは、さらに最小限のOSを保持した「System Recovery」と呼ばれる隠しコンテナを内蔵している。万一の場合は、そこから起動することでリカバリボリュームや通常のmacOSボリュームを修復、再インストールすることが可能だ。

現時点で明らかにされている内容は、Apple Siliconの全容からすれば、まだほんの一部だと考えられる。しかし、Apple Siliconが単に高性能と低消費電力の両立だけを狙ったものでないことは、すでに明らかだろう。とはいえ仮にそれが本当にメインの理由だったとしても、最近発表されたスーパーコンピュータの世界ランキングで、複数の部門にまたがってトップの座を獲得した理化学研究所の富岳が、ARMベースのアーキテクチャを採用しているという事実は、Macの将来にとっても極めて明るいニュースであることに疑いの余地はない。

画像クレジット:Apple

フェイスブックのコード変更の影響でSpotifyやPinterest、WazeなどのiOSアプリがクラッシュ

米国時間7月10日の朝、iPhoneユーザーの多くがアプリを再起動しようとしていらいらしていただろう。私の場合は、Spotifyが起動せず朝の散歩が台なしになった。PinterestやWazeといった多くのアプリでも、同様の問題が起こっていたと報告されている。

その後、問題は解決したが、Facebook(フェイスブック)は原因はもっぱら自分たちにあるという。同社のログページによると、数時間前からフェイスブックのiOS SDKに起因するエラーが急増している。フェイスブックによると、原因はコードの変更だという。

「今朝、フェイスブックのSDKを使っている一部のiOSアプリで、コードの変更によりクラッシュが発声した」と開発チームは書いている。「私たちは問題をいち早く特定し、解決した。ご不便をお詫びしたい」。

対応は比較的早かったが、大切なアプリに影響を受けた人には、数時間が永遠のように感じられたかもしれない。2020年5月にもSDKのアップデートで同じ問題が起きたことを関係者は覚えている人もいるだろう。今回の問題は、フェイスブックのSDKを使っているアプリの開発者が最も苦痛な思いをした(GitHub投稿)はずだ。

同じ問題を二度も経験したユーザーの中には、ソーシャルネットワークとの関係を見直そうとしている人も多いと思われる。そもそも、ひどい体験をした人はアプリそのものを嫌いになってしまう。Apple Music対Spotifyをめぐるソーシャルメディアに関する議論も、今朝になって指摘したように悪い体験は人をアプリから完全に遠ざけることになる。多くのユーザーが、今回の原因であるフェイスブックのSDKではなく、アプリに責任があると考えるだろう。

SDKのアップデートについていえば、フェイスブックのそれはあまりにも早すぎて、多くのものを壊しているようだ。TechCrunchは現在、フェイスブックに対して今後の問題解決について確認している。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

コンテナ仮想化のDockerがAWSと提携しワークフローを改善

DockerとAWSは米国時間8月9日、DockerのComposeとDesktopの開発者ツール、およびAWSのElastic Container Service(ECS)とECS on AWS Fargateの深い統合を発表した。これまでComposeファイルを取り込んでECS上で実行するワークフローは、開発者にとって困難なことが多かったと両社は指摘している。今回両社はこのプロセスを簡素化し、ローカルで実行中のコンテナとECS上で実行中のコンテナの切り替えを容易にした。

「Dockerと協力して、コンテナ化されたアプリケーションの構築とAWSへのデプロイに関する開発者の経験を単純化できることに非常に興奮している」 と、AWSのCompute Services担当VPであるDeepak Singh(ディーパック・シン)氏は語った「これにより顧客は、コンテナ化されたアプリケーションをローカルのDocker環境からAmazon ECSに直接デプロイすることが容易になった。このようにアプリケーション開発とデプロイメントが迅速になることで、顧客はアプリケーションの独自の価値に集中することが可能になり、クラウドへデプロイする方法を考える時間を削減できる」。

なお意外なことにDockerは昨年、エンタープライズ事業をMirantisに売却し、クラウドネイティブの開発者体験にのみ注力していた。

DockerのCEOであるScott Johnston(スコット・ジョンストン)氏は今年、TechCrunchのRon Miller(ロン・ミラー)に対し、「11月には業務や経営幹部、直販モデルに重点を置いていたエンタープライズ事業を切り離し、Mirantisに売却した」と語った。「その時点で残りのビジネスに開発者を注力させることが、2013年と2014年におけるDockerの本当の目的だった」。

このパートナーシップによって解決されるワークフローの問題は、すでにかなり前から存在していたことを考えると、本日の動きは新しい提携の一例といえるだろう。

Dockerは最近Microsoft(マイクロソフト)と戦略的パートナーシップを結び、Dockerの開発者エクスペリエンスをAzureのContainer Instancesと統合したことも注目に値する。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップルがiOS 14、iPadOS 14の公開ベータをリリース

アップルはiPhoneとiPadのOSについて今秋のメジャーアップデートを予定しているが、そのiOS 14とiPadOS 14の最初の公開ベータ版がリリースされた。これはiOS、iPadOSがこれからどうなるのか知るいい機会だ。

デベロッパー向けベータ版とは異なり、99ドルが必要なデベロッパーアカウントを持っていなくても誰でも今回のベータ版をダウンロードできる。しかしベータ版だということは忘れないほうがいいだろう。

iOSおよびiPadOS 14.0の製品版のリリースはあくまでこの秋だが、同社は今後数週間ごとに新しいベータをリリースする。 これはできるかぎり多数のバグを修正すると同時に、ユーザーから大規模にフィードバックを得るためだ。

これまで同様、アップルの公開ベータはデベロッパー向けベータのリリースサイクルに連動している。同社は今週初め、iOSとiPadOS 14の2番目のデベロッパーベータをリリースしている。両者を比較すると、公開ベータはデベロッパーベータのバージョン2とほぼ同じビルドのようだ。

日々利用しているメインのアップルデバイスにはベータ版をインストールしないほうが安全だ。単なるバグではなく、まったく作動しないアプリや機能もあるし、レアケースではあるが、デバイス自体が反応しなくなる可能性もある。iCloudに保存したデータを失うリスクさえあるかもしれない。利用には充分な注意を払う必要がある。

と、断ったうえで、ダウンロードは次のような手順となる。アップルのベータ版サイトにアクセスして、コンフィギュレーション・プロファイルをダウンロードする。 これは製品版アップデートと同じように、アップデートの通知をiPhoneとiPadに送ってくる小さいプログラムだ。

インストールしたいiOSデバイスのSafariからコンフィギュレーション・プロファイルを直接ダウンロードしてもいいし、ほかのデバイスにダウンロードしてからAirDropを使ってターゲットデバイスに転送してもいい。デバイスを再起動して「設定」を開く。9月にデバイスは自動的にiOSおよびiPadOS 13の最終版に更新される。その後はコンフィギュレーション・プロファイルを削除できる。

すでに説明したように、iOS 14の最大の変更はホーム画面でウィジェットが使えるようになった点だ。これにともない、すべてのアプリを表示するアプリライブラリが導入され、アプリをダウンロードしてインストールせずに一部の機能をその場で実行できるApp Clipsが使えるようになった。

これ以外にも当然広範部分で改良されている。メッセージでは@メンションと返信によるグループ機能に重点が置かれているようだ。翻訳アプリはクラウドにデータを送り返さず、デバイス内で作動する。一部の都市では純正の「マップ」アプリに自転車ルートのナビ機能が加わる。メモ、リマインダー、天気、ホームなどもアップデートされている。

今回リリースされたiOS 14の公開ベータについては別記事(未訳記事)で詳細を紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」のソースコードが公開

東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ ソースコード オープンソースソフトウェア OSS

アスコエパートナーズは7月9日、東京都の委託を受け構築した「東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」について、デジタル・ガバメントやスマートシティなど新しい取り組みにチャレンジしたい自治体職員が活用できるよう、ソースコードの一部が公開されたと発表した。

東京都とアスコエは、各自治体が同様のサイトを構築できるよう支援することを目的に、ソースコードの一部をMITライセンスとして公開。MITライセンスは、オープンソースソフトウェア関連ライセンスのひとつ。ソースコードは同サイトの「このサイトについて」ページより入手できる(ソースコードは、同サイトのすべての機能を実装するものではない)。

またこのソースコードは、特別なプログラミング技術や知識を有していない方でも、支援制度情報のデータを追加することでサイトを構築可能。必要なツールはテキストエディターとWebブラウザーのみで、データをWebサーバーにアップロードするだけで公開できる。

合わせて、ナビに掲載する支援制度情報のデータ構造についても、一般社団法人ユニバーサルメニュー普及協会が作成を支援。一般社団法人コード・フォー・ジャパンが公開した「新型コロナウイルス感染症対策に関する支援制度情報標準フォーマット」との互換性を高めたオープンデータフォーマットとして再公開した。両方ともに、「CC-BY 4.0 東京都およびアスコエ」として利用できる。配布は、東京都オープンデータカタログサイト東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報で行っている。

東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により問題を抱えている住民や事業者が、東京都および一部省庁が提供する支援制度情報を一元的に検索でき、またそれぞれの状況に応じて利用できる支援を絞り込めるナビゲーションシステム。

東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ ソースコード オープンソースソフトウェア OSS

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スマニューがUI/UXを刷新、ピンポイント降雨予想やニュース検索などの新機能も搭載

スマートニュースは7月9日、同名のニュースアグリゲーションアプリ「SmartNews」のメジャーアップデートを発表した。今回のアップデートにより、ピンポイント降雨予報、ニュース検索、閲覧履歴などの機能が追加されたほか、画面下部に新たにナビゲーションバーを新設するなどUI/UXを刷新した。

ピンポイント降雨予報は、その名のとおり現在地周辺や指定した場所の天気をピンポイントで調べられる機能。予報範囲は250m四方で、15時間先までの降雨量を確認できる。もちろん無料で利用可能だ。同機能について同社でシニアプロダクトマネージャーを務める水波 桂氏は「4月から一部ユーザーに対しテストしていた雨雲レーダーを進化させ、『ピンポイント降雨予報』の機能を追加しました。雨がいつ降るのか、いつ止むのか、一瞥して把握できるデザインしました。このひと目でわかるUIはユーザーにとって利便性が高く独自性もあると考え、特許を出願しています。これからも、ユーザーに役立つ機能を追加できたらと思います」とコメントしている。

ニュース検索は、SmartNewsの各チャンネルを横断してキーワード検索できる機能。SmartNews上の話題のトピックについても一覧できる。

閲覧履歴は、Apple IDやFacebookアカウントなどでSmartNewsにログインしているユーザーが使える機能。過去にSmartNews上で閲覧した記事が新しいものから一覧できる。同機能が加わったことで、気になる記事を一度開いておけば、あとでまとめて読むことが可能になる。もちろん、一度見た記事をもう一度見る際に探す手間も省ける。

そしてこれらの新機能に併せてナビゲーションバーを画面下部に新設。通常のSmartNewsの画面に切り替える「ホーム」のほか、天気予報やピンポイント降雨予報をチェックできる「天気」、記事検索が可能な「検索」、閲覧履歴の参照などができる「アカウント」の4つのメニューが用意される。同社でプロダクトデザインを担当する山本興一氏は「ユーザーの使い心地の向上にこだわりました。雨がいつ降るのか、いつ止むのか、調べなくてもひと目でわかる。検索キーワードが思い浮かばなくても、調べたくなる話題を手軽にチェックできる。前に読んだあの記事はどこにあるんだろう、そんな記事をすぐ見つけられる。そんな『かゆいところに手が届く』機能です。これからも、ユーザーの日常生活に役立つプロダクトを作っていきたいと考えています」と語る。

「ITアーキテクチャ向けGoogleマップ」開発のSaaS企業LeanIXが86億円を調達

ドイツのボンを拠点とするエンタープライズアーキテクチャソフトウェア企業のLeanIXが、シリーズDで8000万ドル(約86億円)の資金を調達した。このラウンドは、新しい投資家としてGoldman Sachs Growthが主導した。以前の投資家であるInsight PartnersとDTCPも参加している。

シリーズDによって、LeanIXの調達資金総額は1億2000万ドル(約129億円)を超える。同社は、今回の資金を利用して、国際的な成長を継続し、クラウドガバナンスのための補完的なソリューションをさらに開発すると述べている。過去12か月間に、LeanIXは、ハイデラバード(インド)、ミュンヘン(ドイツ)、ユトレヒト(オランダ)に新しいオフィスを開設し、現在世界中に230人の従業員を抱えている(私たちが最後に同社を取り上げたときは80人だった)。

2012年創業のLeanIXは、エンタープライズアーキテクチャスペースで活動しており、そのSaaSは「ITアーキテクチャ向けGoogleマップ」と呼ぶのがふさわしいかもしれない。企業はこのソフトウェアを使用することで、組織で運営されているレガシーソフトウェアから最新のSaaSに至るまでのすべてを網羅することができる。その中には、異なるアーキテクチャがどのように組み合わされているかといった情報はもちろん、ソフトウェアがどの業務プロセスに利用されているのか、どの業務プロセスに適用可能なのか、どんな技術が使われているのか、どのチームが利用している、あるいはアクセス権をもっているのかといったメタデータの作成も含まれている。

つまり、企業が異なるベンダーから買い入れたすべてのソフトウェアを、分散したチーム間でどのように異なっているか、またはどうすればより適切に利用できるかなども含めて、より良く扱えるようにするだけでなく、新しいソリューションを採用したり、これまでのシステムを破棄する際に、より機敏に行動できるようにするということだ。

「多くの有名企業が、LeanIX使うことで、エンタープライズアーキテクチャ(EA)活動の再開に成功しています」と語るのはLeanIXのCEOで共同創業者であるAndré Christ(アンドレ・クライスト)氏だ。「LeanIXの高いユーザビリティと他のデータソースとのシームレスな統合によって、Atlassian(アトラシアン)、Dropbox(ドロップボックス)、Mimecast(マインキャスト)などの急成長しているビジネスも、EAの実践を開始しました」。

画像クレジット:LeanIX

この結果、「LeanIXは現在、300の海外顧客と協力しており、2019年の売上は100%増となった」という。具体的には、総売上の39%は米国市場で、57%はホームグラウンドであるヨーロッパ市場で発生している。

Goldman Sachs GrowthのマネージングディレクターであるChristian Resch(クリスチャン・レッシュ)氏は、次のようにコメントしている。「LeanIXはエンタープライズアーキテクチャー界のソートリーダーです。その力強い売上の増加や、顧客からの高い評価、そして「LeanIXは、ITアプリケーション環境の複雑さを軽減するためのソフトウェアソリューションを開発する」という、ビジョナリーとしてのコンセプトに、私たちは感心しています。大事なことですが、LeanIXのソフトウェアは、クラウドと最新のマイクロサービスアーキテクチャの両方に対する、移行とメンテナンスを企業に対して提供するのです」。

Goldman Sachs GrowthのバイスプレジデントであるAlexander Lippert(アレクサンダー・リッペルト)氏がLeanIXの取締役会に参加する予定だ。

画像クレジット: LeanIX

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(翻訳:sako)

iPhone/iPadアプリは本当にそのままApple Silicon Mac上で動くのか?

先日のアップルのWWDCのキーノートでは、後半のかなり長い時間を使ってMacが採用することになったアップル独自のCPU「Apple Silicon」に関する発表があった。その中では、ちょっと意外なことも語られた。Apple Siliconを搭載したMac上では、iPhone用やiPad用のアプリが「まったく変更を加えることなくネイティブに」動作するというのだ。そこでは詳しい話はいっさいなく、「Monument Valley 2」というゲームなど、2、3本のアプリがMac上で動く様子がデモされた。この話は、時間にして全部で40秒ほど。そのときは、なんだか狐につままれたような気がした人も多かったのではないだろうか。

本当にiPhone/iPad用のアプリがMac上でそのまま動くのだろうか。確かに今後のMacは、iPhoneやiPadと同じARM系のCPUを採用するようになるのだから、基本的なコードがネイティブで動くのはわかる。また、すでにMac Catalystを使えば、iOSやiPadOSのAPIが、部分的にせよ、macOS上で利用可能になっているのも確かだ。しかし、当然ながらすべてが共通というわけではない。それに、そもそもiPhone/iPadアプリは、専用のApp Storeからダウンロードしてインストールするしかない。Macからはアクセスすらできないようになっている。なんとかアプリのバイナリを持ってくることができたとしても、ライセンスの問題もありそうだ。このように疑問は噴出する。

結論から先に言えば、答えはほぼイエスだ。ここで「ほぼ」を付けるのは、どうしても制限と選択があるから。制限とは、動くアプリは、そのままでまったく問題なく動くが、完全には動かないアプリもあるということ。そして選択とは、アプリのデベロッパーがそれを望まない場合、macOS上では使えないようにすることもできるからだ。どういうことなのか、少し詳しく見ていこう。

Mac上でiPhone/iPadアプリが動く仕組み

キーノートの後のWWDCのセッションの1つに「iPad and iPhone apps on Apple Silicon Macs」というものある。17分程度の短いセッションだが、求める答えはズバリこの中にありそうだ。

このビデオでは、まず現状のmacOS Catalinaのアプリケーションアーキテクチャを確認している。大別すると、現状のMacでは4種類のアプリケーションフレームワークが動いているとしている。つまり、通常のMac用アプリのためのAppKit、元はiPad用のものをMac Catalystを使ってMacに移植したアプリのためのUIKit、ウェブアプリのためのWebKit、そしてゲーム用のMetalというわけだ。

引用:Apple

Apple Siliconを搭載したMacのmacOS Big Surでは、そこにもう1つのフレームワークが加わるのではなく、iPhoneやiPadのアプリをそのまま動かせるように、macOS上のUIKit部分を拡張するかたちを取るようだ。

引用:Apple

確かに、macOS上の実行環境がiOSやiPadOSに近づけば、そしてアプリから見て実質的に同等なものになれば、何も変更していないモバイルアプリがMac上でも動作することになる。それでも、macOSのアプリ実行環境にはiOSやiPadOSとは異なる部分も多い。顕著な例は、指によって直接画面をタッチする操作と、マウスやトラックパッドを使ってカーソルを動かしてクリックする操作の違いがある。また、macOSの画面には必ずメニューバーがあって、アプリの終了など、基本的な操作を担当しているが、iOSやiPadOSにはMacのメニューバーに相当するものはない。逆にiPhone/iPadのホームボタンに相当するものはMacにはない。

そうした基本的な操作環境がうまくコンバートされなければ、アプリは恐ろしく使いにくいものとなったり、操作不能になったりしてしまう。そこでBig Surでは、モバイルアプリがMac上で動くために必要なリソースやインターフェースは、自動的に追加されたり、変換されたりするようだ。例えば、すでに述べたメニューバーの利用、環境設定パネルの表示、Dockへのアクセス、ファイルを開く/保存ダイアログの利用、スクロールバーの表示と操作といったものだ。iOSやiPadOS上での標準的なマルチタッチ操作も、可能な限りmacOSのマウスやトラックパッド操作に置き換えられる。

さらに、マルチタスクに対応したiPadOSアプリなら、macOS上でも自由にウィンドウのリサイズが可能となる。フルスクリーンでの動作も可能だ。またマルチウィンドウに対応したアプリなら、Mac上でも複数のウィンドウを開いて動作できる。macOS上のファイルにもアクセスできるようになり、macOSによる「共有」機能も利用可能となる。細かいところでは、macOSのダークモードにも追従する。

このような自動的な環境への対応がどんな感じになるのかを知るために、一例として現状のMac Catalystのアプリを見てみよう。iOSやiPadOSにもあって、現在のmacOSにもある「ボイスメモ」は、Mac Catalystアプリの代表的なもの。iPadOSの「設定」には「ボイスメモ設定」がある。そこに配置されているのは「削除したものを消去」するまでの日数、「オーディオの品質」、そして「位置情報を録音名に使用」するかどうかのスイッチだ。

それに対してmacOS上の「ボイスメモ」では、「ボイスメモ」メニューの「環境設定…」を選ぶことで、「ボイスメモ環境設定」のウィンドウが開く。そして、その中に並ぶ設定項目は、文言も含めて、iPad用アプリとまったく同じなのだ。

これはあくまでも、現在のMac Catalystアプリのユーザーインターフェースの自動変換の例だが、このようなインターフェースに関しては、Big Sur上のiOS/iPhoneアプリも、Mac Catalystアプリも、だいたい同じ環境になると考えていいだろう。

Apple Silicon Mac上で動かないiPhone/iPadアプリ

一般的なアプリの多くがAPIの利用を含めて自動的に変換されるとしても、どうしても変換しきれない機能もある。そうしたモバイルデバイス特有の機能に大きく依存しているようなアプリは、Mac上でそのままうまく動かすことはできないだろう。少なくとも、iPhoneやiPadとまったく同じような機能を発揮することは期待できない。

そのようなアプリの代表的なものとしては、iPhone/iPadが備えている多様なセンサー類を使ったものが挙げられる。加速度、ジャイロスコープ、磁気、気圧、といったセンサーや、深度センサー付きのカメラ、GPSといったものはMacにはない。そうしたものに依存するアプリは、そのままの機能をMacで発揮するにはどうしても無理がある。

ただし、例えばGPSのハードウェアはMacにはないが、その代わりになる機能はある。位置情報を提供するCoreLocationフレームワークだ。iOSやiPadOSのアプリでも、GPSのハードウェアに直接アクセスしているものは、まずない。通常はmacOSともほぼ共通のAPIであるCoreLocationを利用して位置情報を検出している。そうしたアプリが必要とする位置情報は多くの場合、Mac上でもCoreLocationによって供給され、支障なく動作するものも少なくないだろう。

またMacにはない背面カメラに関しても、最初から背面カメラの存在を前提として動作するiPhone/iPadアプリを、そのままMac上で動かすのは確かに厳しい。しかし、アプリが非常にマナーよく作られていれば、MacにUSB接続された外部カメラなどを利用することも可能になる。AVFoundationフレームワークのAVCaptureDeviceDiscoverySession機能を利用して、デバイスに接続されたカメラを確認してから利用するようなアプリなら、柔軟に対応できる可能性が高い。

Macという新たなプラットフォームを得たことで、今後iPhone/iPadアプリのデベロッパーの意識改革が進み、デバイスへの依存性の低いアプリが増える可能性にも期待できるだろう。

iPhone/iPadアプリはどうやってMacにインストールする?

Mac上で動作するiPhone/iPadアプリがあっても、それらを実際にどうやってMacにインストールするのか。というのも、キーノートではまったく触れられず、大きな疑問が残る部分だった。これについては、実は何も心配はいらない。Apple Siliconを搭載するMac上で動作するiPhone/iPadアプリは、ほぼ自動的にMac App Storeに表示されるからだ。Macユーザーは、通常のMac用アプリとまったく同じようにダウンロードしてインストールできるようになる。

デベロッパーが新たなアプリをiOS(iPadOS)のApp Storeに掲載する際、デフォルトではMac App Storeにも掲載されるようになる。ただし、上で述べたような理由でMac上では十分な機能を発揮できないアプリや、同じデベロッパーがすでにMac用のアプリを別にMac App Storeに掲載しているような場合には、そのアプリをMac App Storeでは公開しないように設定できる。それも、チェックを1つ外すだけだ。

有料アプリについては、もちろんユーザーはMac App Store上で購入手続きを済ませてからダウンロードしてインストールするようになる。また、インストールしたアプリのApp内課金も可能なので、デベロッパーはiPhoneやiPadとまったく同様に、Macユーザーからも収益を得ることができる。

アプリをMacにインストールする際には、特定のモバイルデバイスに特化したようなリソースは、自動的に排除され、Macに最適なリソースのみを含むようになる。このようなApp Thinningのメカニズムも、これまでと同じように動作する。Macが非常に強力なiPad類似の新たなデバイスとして加わるだけだ。

macOSにインストールしたアプリのアイコンは、通常どおりmacOSの「アプリケーション」フォルダーに入る。ただし、これを別の場所に移動しても動作する。例えばデスクトップに移動して配置することも可能だ。現状のCatalinaでは、アプリのアイコンをアプリケーションフォルダーから別の場所にドラッグするとエイリアスが作成されるが、Big Surでは「移動」となるようだ。また、新しいApp Bundleフォーマットの採用によって、ユーザーがアプリの名前を変更することも可能になるという。このあたりは、iOSやiPadOSでは得られなかった新たな動作環境だ。こうしたユーザーに大きな自由度を与える動作環境は、macOS Sierraで導入されたApp Translocationを利用することで可能となっている。

Macにアプリを提供する3つの方法

こうして、Apple Silicon搭載MacでiPhone/iPadアプリが利用可能になることで、言うまでもなくMacのアプリケーション環境は、これまで類を見ないほど充実することになる。そして、デベロッパーとしてMacにネイティブなアプリを提供する経路も、大きく3種類が利用できることになる。

1つは、これまでのMacアプリと同様の、macOSのオーソドックスなアプリで、もちろんMacならではの機能や操作性がフルに活用できる。それから、これまでにも利用可能だったMac Catalystを利用して、iPadからMacに移植したアプリがある。この記事では述べなかったが、Mac Catalystは、Big Surで大幅にアップデートされ、より強力なものとなる。

いずれにせよ、Macならではの機能をできるだけ利用できるようにiPadアプリをカスタマイズしたければ、Mac Catalystの利用が効果的だ。そして3つ目は、iPhone/iPadアプリを、そのまま提供すること。もちろん、その場合にはMac上での動作を事前に十分テストして、不自然なことにならないか確認することは必要だ。しかし、デバイスに大きく依存したアプリでなければ、コードもほとんど修正する必要はないだろう。

以前は、iPhone/iPadとMacは、2つの似て非なる世界だった。同じアプリを両方の世界に提供する場合、基本的には両者をまったく別のアプリとして開発する必要があった。それがMac Catalystの登場で、iPad用を簡単にMacに移植できるようになり、さらにApple Silicon Macの登場で、1種類のソースコードからビルドしたアプリを、そのまま両方の世界に供給できるようになる。デベロッパーにとっては、マーケットが大きく拡がるチャンスであることは間違いない。

ユーザーとしては、今後登場するApple Silicon搭載Macを準備して、ただ待っているだけでいい。そうすれば、iPhone/iPadの世界から、魅力的なアプリがどんどんMacに流入してくる。面白すぎて笑いが止まらない状況が、もうすぐそこに迫っている。Macユーザーとしては、まったくいい時代になったものだ。

時系列データベース開発のQuestDBが2.5億円調達

Y Combinator summer 2020のメンバーであるQuestDBは、スピードを最優先に置いたオープンソース時系列データベースを開発している。スタートアップは米国時間7月2日、230万ドル(約2億5000万円)のシードラウンドを発表した。

ラウンドを主導したのはEpisode1 Venturesで、そこにSeedcamp、7percent Ventures、Y Combinator、Kima Ventures、および複数の無名のエンジェル投資家たちが加わった。

もともとこのデータベースは、現在のCTOであるVlad Ilyushchenko(ブラド・イリュシェンコ)氏が、2013年に金融サービス企業向けにトレーディングシステムを開発していたときに着想を得たものだ。当時彼は市場にあったデータベースのパフォーマンスに不満を抱いていた。そこで膨大なデータを非常に高速に扱うことができることができるデータベースの開発を始めたのだ。

長年QuestDBは、イリュシェンコ氏にとって趣味のプロジェクトだった。それが変わったのは、CEOに就任したほかの共同創設者であるNicolas Hourcard(ニコラス・アワカード)氏とCPOに就任したTancrede Collard(タンクレーデ・コラド)氏に出会ったときだった。3人はそのオープンソースプロジェクトを用いたスタートアップを創業することを決めた。

「時系列データ向けのオープンソースデータベースを構築していますが、時系列データベースは、金融サービス、IoT、その他のエンタープライズアプリケーションの中心となるため、数十億ドル規模の市場になるのです。そして、私たちのシステムは、基本的には爆発的な量のデータを簡単に処理できるようにして、インフラストラクチャのコストを劇的に削減できるようにするのです」とアワーカード氏はTechCrunchに語った。

彼はまた、それが高性能であることを付け加える。「最近、ウェブサイトから超巨大なデータセットをアクセスできるデモをリリースしました。16億行に対するクエリをほぼ1秒未満で実行することが可能です、基本的にソフトウェアの性能を示すことだけが目的ですけれど」と彼は語る。

彼は、オープンソースというやり方を、まず組織内の開発者たちの気持ちを掴んで、草の根的採用を行ってもらう方法として捉えている。そしてスタートアップがやがて製品のマネージドクラウドバージョンを開発したときに、企業の中に深く食い込むのだ。現段階では、オープンソースであることは、データベースの開発と機能の追加を行う貢献者のコミュニティに、小さな彼らのチームを手助けしてもらえるという利点もある。

「無料で使用できるこのオープンソースプロダクトを用意しました。こうした分散開発モデルを採用することはとても重要なのです、なぜなら開発者たちが自分の問題を解決するお手伝いができますし、私たちも様々なコミュニティからの協力をお願いすることができるからです。[…] そして、これは実際に採用の拍車をかける方法なのです」とアワーカード氏は言う。

彼によれば、Y Combinatorと協力することで、彼ら同様にオープンソースベースのスタートアップを立ち上げた、エコシステム内の他の企業と話をすることができ、それはとても役に立ったという。だがそれはまた、目標の設定と達成を学ぶことや、シリコンバレーのビッグネーム、例えばインタビューと同じ日にY Combinatorで講演を行ったマーク・アンドリーセン氏などと知り合う機会も与えてくれた。

現在、同社には3人の創業者を含む7人の従業員がおり、米国、EU、南アメリカに分散している。彼はこの地理的多様性が、将来的多様なチームを構築する際に役立つと考えている。「私たちは多様なチームを持つことを確実にするために、本気でより多様なバックグラウンドを持ちたいと考えていますし、本気でそれに取り組んでいます」。

短期的には、同社はコミュニティの育成を続け、オープンソースプロダクトの改善を続けながら、マネージドクラウドプロダクトに取り組みたいと考えている。

画像クレジット:oxygen / Getty Images

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(翻訳:sako)

アプリ開発のデータベースの部分をシンプルなAPIにしたFaunaがシリーズAの拡張を獲得

開発者はつねに、アプリケーションの中でデータベースの部分が重くなりすぎないよう気を使う。そこで、データベースの部分を簡単なAPI呼び出しに変えたFaunaが、今日(米国時間7/1)2700万ドルの資金調達を発表した。

そのラウンドは実際には、Madrona Venture Groupがリードした2017年のシリーズAの拡張で、それにはAddition、GV、CRV、Quest Ventures、および数名の個人投資家が参加した。同社によると、今日の投資で調達総額は5700万ドルになる。

同時に同社は役員の強化を図り、元OktaのチーフプロダクトオフィサーEric Berg氏をCEOに、元SnowflakeのCEO Bob Muglia氏を会長に迎えた。

APIへの移行と言えば、決済のStripeや通信のTwilioがその代表格だ。高度な機能を自分でスクラッチから書くのではなく、サービスのAPIを呼び出せば、次の瞬間には道具立てがあっさりと揃っている。Faunaはそれを、データベースでやろうとしている。

CEOのBerg氏はこう述べる: 「Faunaのコードを数行書くだけで、あらゆる機能の揃ったグローバルな分散データベースを自分のアプリケーションに加えられる。コーディングが楽になり、コストを下げ、データベースの正しさ、容量、スケーラビリティ、レプリケーションなど面倒な問題で悩まないので納品も早くなる」。

自動化をさらに徹底するためにそのデータベースはサーバーレスで、スケールアップもダウンもアプリケーションのニーズに応じて自動的に行われる。共同創業者でBerg氏の下(もと)でCTOになったEvan Weaver氏は、Stripeを見ればAPIの利便性がよく分かるという。「Stripeをプロビジョニングする、なんてことを考える必要がない。しなくてもいいのだから。アカウントにサインアップするだけで、そのあとのプロビジョニングとかオペレーションは一切考える必要がない」、とWeaver氏は説明する。

多くのAPI企業と同様に、同社は開発者のコミュニティとコンセンサスを重視している。現在、およそ25000名のデベロッパーがこのツールを利用している。オープンソースのバージョンはないが、無料ティアのユーザーを同社は増やそうと努めている。彼らは今後、途中で従量制や月額固定料金で利用する有料ユーザーに変わってもよい。

同社は前からずっとリモートなので、新型コロナウイルスが襲ってきても40人の社員の働き方は変わらない。Berg氏によると、会社の成長に伴い、今ではダイバーシティとインクルージョンに関する積極的な目標がある。

Berg氏曰く、「うちの人事には、弊社のパイプラインと雇用努力におけるダイバーシティについて考える場合のかなり積極的な達成目標があり、会社がまだ小さなチームでもあるので、成長によってそれを維持できなくなるおそれはない。社員が倍になったら目標のパーセンテージを大きく変えることになると思うが、それがつねに念頭にあることは変わらない」。

Weaver氏によると、資金調達を初めたのは今年の初めなのでCOVID-19の前だ。でも、タームシートに署名したのは3月だ。そのときはすでにパンデミックが宣言されていたので、かなりナーバスになった、と彼は認める。Faunaのように技術が高度な企業は、成長に時間を要する。彼は、今の厳しい経済状況がなかったとしても、投資家たちがその難しさを理解してくれるか、気にしている。

氏は曰く、「ディープテクノロジーの事業なので、成長とスケールに本物の資本が要る。ハイリスク・ハイリターンのビジネスだが、ブームのときには資金調達も容易だ。しかしずばり言えば、最良の企業は人材の獲得が楽で資本へのフォーカスが大きい不況時に作られると私は思う」。

関連記事: Twilio 2010 board deck gives peek at now-public company’s early days…Twilioの成長の足跡をたどる(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebookが写真日記&ショートムービ作成アプリ「Hobbi」を半年足らずで終了

Facebookがつい最近リリースした実験アプリのHobbiが、早くも終了する。Hobbiは個人的なプロジェクトや趣味などPinterestぽいコンテンツに関する短いビデオを作るアプリだ。Facebook社内のR&DグループであるNPEチームがリリースしたアプリのひとつで、2020年2月にiOS版が公開された。

Hobbiのユーザーにはアプリが2020年7月10日に終了するというプッシュ通知が送られている。ユーザーのデータはアプリの設定からエクスポートできる。

Hobbiは米国のApp Storeで数カ月間公開され、Sensor Towerの推計ではダウンロード数はわずか7000回だった。Apptopiaも、このアプリのダウンロード数は1万回に届かず、5月と6月はきわめて少ないダウンロード数だったとレポートした。

HobbiがPinterestからヒントを得たことは明らかだが、気になったアイデアを集めるピンボードとして設計されたものではなかった。Hobbiのユーザーは、ガーデニングや料理、アート&クラフト、装飾品といった自分のプロジェクトに関する写真を、ビジュアル化された日記のように整理することができる。プロジェクトの進捗を時系列で撮影し、必要に応じて段階を説明するテキストも加えるためのアプリだった。

プロジェクトが完了したら、すべての段階をつなげたハイライト動画にして、外部に公開することができた。

しかしHobbiはかなり簡素なアプリだった。自分のプロジェクトを記録する以外の機能がない。サンプルをいくつか見られるだけで、ほかのユーザーが作ったプロジェクトを見ることはできない。このサービスのトップユーザーをフォローすることもできない。記録のためのツールとしても発展途上だった。プロジェクトの段階を書き留めるための専用の「メモ」フィールドはあるものの、アプリのエクスペリエンスは「ストーリーズ」の劣化版のようだった。

短いクリエイティブコンテンツの可能性を追求しているのはFacebookだけではない。Googleの社内R&DグループであるArea 120もこのジャンルのビデオアプリ、Tangiを公開している。Pinterestは最近、Story Pinsの新バージョンのテスト(未訳記事)を目撃された。この新バージョンでユーザーはDIYなどのクリエイティブコンテンツを似たような感じで公開することができる。

人気が得られなかったことを考えれば、Hobbiが早々に終了することに驚きはない。かねてよりFacebookは、NPEチーム(Tech@facebook)は急速に変化するアプリに関して実験し、消費者が有用性を感じなければ終了すると述べていた。

NPEチームは2019年夏以降、Hobbi以外にも、ミームづくりのWhale、おしゃべり用アプリのBump、音楽アプリのAux、カップル向けのTunedApple Watch app Kit、オーディオ通話アプリのCatchUp(未訳記事)、共同音楽制作アプリのCollab(未訳記事)、ライブイベント向けのVenue(未訳記事)、予測アプリのForecast(未訳記事)など、多くのアプリをリリースしている。Hobbi以前に終了したアプリはBumpのみだった(アプリにより公開されている国が限られる)。

もちろんFacebookは、これらの実験を通じてまったく新しいソーシャルアプリをゼロから作ろうとしているわけではないだろう。どんな機能がユーザーに響き、どんな制作ツールが使われるのか、データを収集しているようだ。こうしたデータは、FacebookのメインのアプリであるFacebook、Messenger、WhatsApp、Instagramなどの機能の開発に反映させることができる。

我々はFacebookにコメントを求めたが、本稿公開までに回答はなかった。

関連記事:最新のモバイルアプリには変革が必要だ

カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Facebook

画像:Hobbi

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(翻訳:Kaori Koyama)

Apple上級副社長へインタビュー: 「HEYアプリへの対応もApp Storeのルールも変える予定はない」

TechCrunchは米国時間6月18日、Basecamp(ベースキャンプ)がiOS App Storeで販売しているHEY Emailアプリの件について、Apple(アップル)のPhil Shiller(フィル・シラー)上級副社長に電話取材を行った。取材の中でシラー氏は「問題のアプリが今のままApp Storeで販売を続けることを可能にするようなルール変更を行う予定はない」と語った。

「現時点で、App Storeに関して変更を検討しているルールはない。App Storeの現行ルールの範囲内でこのアプリを機能させるために開発者にできることはたくさんある。それをぜひ行っていただきたい」とシラー氏は言う。

HEY Emailアプリに対するAppleの対応に世界中が注目している。HEY Emailアプリの完全版の利用料金をアプリ内課金ではなくHEY(ヘイ)のウェブサイト経由で支払うようにしたことを理由に、App Store審査の初期承認をすでに受けていた同アプリのアップデートがApp Storeによって繰り返し拒否されていたことを、2人の創業者David Heinemeier Hansson(デヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)氏とJason Fried(ジェイソン・フリード)氏を含むベースキャンプの開発者たちがツイートしたためだ。

HEY Emailアプリは現在、App Storeからダウンロードするだけでは使うことができない。ヘイのウェブサイトでサブスクリプション料金を支払ってはじめて使えるようになる。

「ユーザーがアプリをダウンロードしただけではそのアプリが機能しないのは、われわれの望むことではない」とシラー氏は語り、アプリ外にあるのと同じ決済機能をアプリ内でも利用できるようにすることをApp Store登録の条件にしているのはそのためだ、と説明した。

誤解のないように言うと、HEY EmailはApp Storeに登録されている大半のアプリに課されているルールに違反している。このルールの例外は、音楽、書籍、映画など特定の外部コンテンツを表示するための「リーダー」と呼ばれるアプリと、エンドユーザーではなく組織や企業を対象とする一括購入料金オプションのみを提供しているアプリだけである。

シラー氏はTechCrunchの電話取材に対し、HEY Emailはそのような例外アプリではない、とはっきり答えた。

Nextflixをはじめとする「リーダー」タイプのアプリについてシラー氏は「例外アプリとしての扱いはすべてのソフトウェアを対象としたものではない」と語り、「メールアプリが例外として認められることはなく、これまでも認められた前例はない」と説明する。

実は、HEY EmailのMac用アプリは、現在iOS用アプリがApp Storeで警告されているのと同じ理由ですでに拒否されている。iOS用アプリのオリジナルバージョンは誤って承認されただけであり、そもそもApp Storeに公開すべきではなかった、とシラー氏は言う。

そうなると問題は、現行のApp Storeルールを専門的に分析すればHEY EmailがApp Storeから削除されずに済む方法が見つかるのか、ということではなく、そもそもアップルの対応が妥当なのかどうか、という点になる。

私はシラー氏に、アップルは、App Storeにアプリを公開しているすべての企業から、その企業がiOSファーストであるかどうかにかかわらず、収益の一部を受け取る権利があると考えているのか、と質問してみた。

「そう質問したくなる気持ちはわかるが、われわれはそのように考えているわけではない」とシラー氏は答えた。

現行ルールの範囲内でApp Storeでの公開を継続させるためにベースキャンプが導入できたであろう決済方法はいくつもある、とシラー氏は語り、実際に「アプリ内とウェブサイトで異なる料金を課金する」、「追加機能付きの無料版を提供する」などの方法を例として挙げてみせた。

とはいえ、ユーザーに課金するデジタルサービスを開発するのであれば、アプリのユーザー体験向上と決済システムの安全確保のために、アプリ内課金の仕組みとアップルの決済システムを使ってほしいと考えている、とシラー氏は語る。

シラー氏によると、HEY Emailは1つの方法として、まずは基本的なメール閲覧機能を持つアプリの無料版または有料版をApp Storeに公開した後で、そのiOS用HEY Emailアプリを使って利用できるアップグレードされたメールサービスをiOSまたはHEYのウェブサイトで提供することができたはずだという。さらに別の方法として、すべてのフィードを読み込むことも別サイトで課金できる有料フィードを読み込むこともできるRSSアプリを使う手もあった、とシラー氏は語る。いずれの場合でもApp Storeからダウンロードした時点ですぐに使えるアプリができたはずだ。

多くのユーザーにとってよりなじみ深い別の方法は、やはりアプリ内課金によって有料版にアップグレードできる無料版アプリである。

もちろん、残念なことに現行ルールの下では、ヘイはアプリ内で何らかのアップグレードサービスを宣伝することも、それに言及することさえもできないため、そのようなサービスはアプリ外のチャンネルで売り込むしか方法はない。

現在繰り広げられているこの議論についてTechCrunchのSarah Perez(サラ・ペレツ)が記事にまとめてTechCrunchウェブサイトに投稿したので、最新の情報を確認するためにぜひご一読いただきたい。そして、米国時間6月18日、Facebook(フェイスブック)のゲームアプリがルール違反を理由にApp Storeの公開承認を5回も拒否されていたことをThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)が報じた。こうしたニュースはすべて、アップルの開発者向けイベント「WWDC」が開催直前であるうえに独占禁止法違反の疑いでEU(欧州連合)がアップルの捜査を始めるのも目前という、まさに最悪のタイミングで飛び込んできた。

普段からアップルに関する記事を書く機会が非常に多く、App Storeに関するルールの個人的解釈のせいでアプリがアップルから拒否されるのではないかと舞台裏でいつも心配する開発者の姿をこれまで頻繁に目撃してきた者として、私はこの問題について自分なりに真剣に考えてきた。

個人的に、今回の件は、突き詰めるといくつかの明快な事実で成り立っていると思う。HEY EmailがApp Storeのルールに違反しているのは事実だ。つまり、問題は「HEYによる違反を正当化するためにはどのようにルールを歪曲あるいは拡大解釈すればよいか」ということではなく、「そもそもそのようなルールは存在すべきなのか」ということである。

アップルがこのような状況であえて地雷を踏むような対応をしているのは、自分たちは正しく公平なことを行っているという認識がアップル社内にあるからだと思う。App Storeというプラットフォームを作ったのはアップルなのだから、デジタル領域にも現実世界にも多大な経済的利益をもたらしているそのプラットフォームの収益を受け取る権利がアップルにはある。さらに、アップルが決済プラットフォームを管理することがセキュリティおよびプライバシー保護の観点から有益であることは疑う余地がない。

「でも確かにアップルは世間の反応を見て対応を変えている」と反応する人は、スケールの力を過小評価していると思う。アップルは毎週10万件ものアプリを承認しており、承認が拒否される理由のほとんどは簡単に修正可能な問題によるものだ。大海原に白く砕ける波がちらほら見えると、どうしても海より波の方に目が行ってしまう。それと同じように、メディアも承認が拒否されたアプリにばかり注目する。アップルが持つスケールの大きさが世間の見方を組織とそれをリードする人々に都合のよい方向に曲げてしまうことがしばしばある。

だが私はこの件について以下のように感じており、そこには世間一般で見落とされがちな点が含まれているように思う。

  1. App Storeに対する嫌悪感や苛立ちを自分の中に鬱積させる人が増えている気がする(私の情報筋のみならず他の記者の情報筋もこれが事実であることを裏付けている)。人々がその感情を表に出さない理由は、そうする度胸がないことと、App Storeには存続してもらう必要があるためだ。
  2. 誰に批判されるかによって反応が大きく異なる場合がある。ハンソン氏は声高に不満を叫ぶ面倒な人物かもしれないし、あんな意見の伝え方では言われた方も聞く気が失せるだろう。しかし、変化と自省のきっかけになるのは、何も友人や仲間からの言葉だけではない。そして、怒りに燃えて不親切に見える人から発せられた助言を当てはめて変化するのは、2倍辛い。しかし、そのような人の意見こそが正しい場合もある。

青臭いことを言っていると思われるかもしれないが、アップルはその偽りのない誠実な価値観を、大企業として他に類のない真に独特な方法でビジネスにおいて実践していると私は感じている。この意見に同意できない人がいくらかというよりも大勢いることはわかっている。しかしこれは、長年にわたってアップルへの取材を重ねる中で数えきれないほどの役員やあらゆる部署・役職の社員と公私にわたって実際に会って話してきた私が目撃してきたことである。John Gruber(ジョン・グルーバー)氏が書いているように、「われわれは正しいことをしている」という論点を「何が正しいことなのか」という論点にすり替える無駄な努力に意味があるとは思えない。

この電話取材の直前に、TechCrunchはアップルから1通のレターを受け取った。アップルがフリード氏とヘイに宛てて書いたレターと同じものだ。

このレターでは、ヘイがApp Storeの現行ポリシーに違反しているというアップルの主張が繰り返されていた。以下はその抜粋だ。

「iOS用Appを開発してくださり感謝いたします。App審査委員会は、ベースキャンプがこれまで長年にわたり数々のAppとその後継バージョンを開発してApp Storeで提供してくださり、そしてApp StoreがそうしたAppを幾百万ものiOSユーザーに配布してきたことを理解しています。これらのAppではApp内課金の機能が提供されていません。結果として、過去8年間にわたりApp Storeには何の収益ももたらされませんでした。現行の『App Store Reviewガイドライン』とすべての開発者に順守が義務付けられている条件を貴社が順守してくださる限り、App審査委員会は今後も貴社のAppビジネスを支援させていただきたいと考えており、貴社のサービスを無料で提供するためのソリューションを提案させていただく所存です。

この文面からわかるとおり、今のところアップルの姿勢が変わる気配はない。

以下がこのレターの全文である:

ジェイソン・フリード様

貴社のAppであるHEY Emailに関する申し立ての審査結果についてご報告いたします。

App Review Board(App審査委員会)は、貴社のAppについて審査を行った結果、先日の承認拒否は有効であると判断いたしました。貴社のAppは、下記に詳述するApp Store Reviewガイドラインに抵触しています。お気づきのとおり、HEY Emailが2020年6月11日にMac App Storeに提出された際に拒否されたのも同じ理由によるものです。

HEY EmailはApp Storeにおいてメール用Appとして提供されていますが、ユーザーが同Appをダウンロードしても使うことができません。ユーザーは、ベースキャンプのHEY Email用ウェブサイトでHEY Emailの使用ライセンスを購入するまでは、同Appを使うことができません。これは、App Store Reviewガイドラインに記載されている以下の条項に違反します。

ガイドライン 3.1.1 – ビジネス – 支払い – App内課金

Appのコンテンツまたは機能をリリースするには、App内課金を使用していただく必要があります。貴社のAppでは、ユーザーはコンテンツ、サブスクリプション、機能をアプリ外で購入することが必要ですが、そうしたアイテムをApp Store Reviewガイドラインに従ってApp内でApp内課金を使用して購入できるようになっていません。

ガイドライン 3.1. 3(a) – ビジネス – 支払い – 「リーダー」App

リーダーAppは、ユーザーがApp外ですでに購入したコンテンツやコンテンツのサブスクリプションにApp内からアクセスできるようにするものです。貴社のメール用Appは「リーダー」Appに関するこのガイドラインの下で許可されているコンテンツタイプ(具体的には、雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、動画、プロ向けデータベースへのアクセス、VoIP、クラウドストレージ、授業管理Appなどの承認済みサービス)には該当しません。そのため、貴社のApp内でApp内課金を使用してコンテンツまたは機能へのアクセスを購入するオプションをユーザーに提供する必要があります。

ガイドライン 3.1. 3(b) – ビジネス – 支払い – マルチプラットフォームサービス

複数のプラットフォームで動作するAppでは、ユーザーは別のプラットフォーム上または開発者のWebサイトで入手したコンテンツ、サブスクリプション、機能にアクセスできます。ただし、そうしたアイテムをApp内のApp内課金アイテムとしても購入できるようにする必要があります。貴社のHEY Email Appでは、コンテンツ、サブスクリプション、機能がApp内のApp内課金アイテムとして購入できるようになっていません。実際のところ同Appは、ユーザーがベースキャンプのHEY Email用ウェブサイトにアクセスして無料トライアルを開始するか、意図された用途で同Appを使用するための別途ライセンスを購入するまで、メールや他のいかなる用途でもAppとして機能しません。

対策

この問題を解決するために、App Store Reviewガイドラインのいかなる条項にも違反しないように貴社のAppを修正していただくようお願いします。

App Store Reviewガイドラインを順守するよう貴社のAppまたはサービスを修正する方法はいくつもあります。これまでにコンテンツ、サブスクリプション、機能をApp外で購入したユーザーは、App内でも引き続きこうしたアイテムを利用できます。ただし、App Store Reviewガイドラインに従って新規のiOSユーザーがApp内課金を使用してアクセスを購入するオプションが提供される場合に限ります。

貴社がユーザーにApp内課金のオプションを提供することを希望しない場合は、提示されているApp機能のとおりに、標準的なIMAPとPOPのメールアカウントを使用するメールクライアントとしてAppを提供し、ユーザーが任意でメールサービスプロバイダーとしてHEY Emailサービスを使う設定ができるようにすることも可能です。これにより、コンテンツや機能を使用するためにユーザーが追加の支払いを行わなくても、同Appはメールクライアントとして機能します。このアプローチでは、貴社が貴社のWebサイトで販売するメールサービスは、App Storeで提供されている貴社のAppとは明らかに別のメールサービスとなります。

App審査委員会は、貴社がこうした方法や別のアイデアを活用し、HEY Email AppをApp Store Reviewガイドラインに準じたものにするために役立つ情報を提供したいと考えています。

iOS用Appを開発してくださり感謝いたします。App審査委員会は、ベースキャンプがこれまで長年にわたり数々のAppとその後継バージョンを開発してApp Storeで提供してくださり、そしてApp StoreがそうしたAppを幾百万ものiOSユーザーに配布してきたことを理解しています。これらのAppではApp内課金の機能が提供されていません。結果として、過去 8 年間にわたりApp Storeには何の収益ももたらされませんでした。現行の『App Store Reviewガイドライン』とすべての開発者に順守が義務付けられている条件を貴社が順守してくださる限り、App審査委員会は今後も貴社のAppビジネスを支援させていただきたいと考えており、貴社のサービスを無料で提供するためのソリューションを提案させていただく所存です。

App審査委員会は、貴社がHEY Email AppをApp Storeで提供できるよう、今後もサポートさせていただきたいと考えております。

どうぞよろしくお願いいたします。

App審査委員会

関連記事:アップルがApp Store、Apple Musicなどのサービス提供をアフリカをはじめとした数十の国や地域でも開始

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タグ:Apple App Store インタビュー

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(翻訳:Dragonfly)