iPhone/iPadアプリは本当にそのままApple Silicon Mac上で動くのか?

先日のアップルのWWDCのキーノートでは、後半のかなり長い時間を使ってMacが採用することになったアップル独自のCPU「Apple Silicon」に関する発表があった。その中では、ちょっと意外なことも語られた。Apple Siliconを搭載したMac上では、iPhone用やiPad用のアプリが「まったく変更を加えることなくネイティブに」動作するというのだ。そこでは詳しい話はいっさいなく、「Monument Valley 2」というゲームなど、2、3本のアプリがMac上で動く様子がデモされた。この話は、時間にして全部で40秒ほど。そのときは、なんだか狐につままれたような気がした人も多かったのではないだろうか。

本当にiPhone/iPad用のアプリがMac上でそのまま動くのだろうか。確かに今後のMacは、iPhoneやiPadと同じARM系のCPUを採用するようになるのだから、基本的なコードがネイティブで動くのはわかる。また、すでにMac Catalystを使えば、iOSやiPadOSのAPIが、部分的にせよ、macOS上で利用可能になっているのも確かだ。しかし、当然ながらすべてが共通というわけではない。それに、そもそもiPhone/iPadアプリは、専用のApp Storeからダウンロードしてインストールするしかない。Macからはアクセスすらできないようになっている。なんとかアプリのバイナリを持ってくることができたとしても、ライセンスの問題もありそうだ。このように疑問は噴出する。

結論から先に言えば、答えはほぼイエスだ。ここで「ほぼ」を付けるのは、どうしても制限と選択があるから。制限とは、動くアプリは、そのままでまったく問題なく動くが、完全には動かないアプリもあるということ。そして選択とは、アプリのデベロッパーがそれを望まない場合、macOS上では使えないようにすることもできるからだ。どういうことなのか、少し詳しく見ていこう。

Mac上でiPhone/iPadアプリが動く仕組み

キーノートの後のWWDCのセッションの1つに「iPad and iPhone apps on Apple Silicon Macs」というものある。17分程度の短いセッションだが、求める答えはズバリこの中にありそうだ。

このビデオでは、まず現状のmacOS Catalinaのアプリケーションアーキテクチャを確認している。大別すると、現状のMacでは4種類のアプリケーションフレームワークが動いているとしている。つまり、通常のMac用アプリのためのAppKit、元はiPad用のものをMac Catalystを使ってMacに移植したアプリのためのUIKit、ウェブアプリのためのWebKit、そしてゲーム用のMetalというわけだ。

引用:Apple

Apple Siliconを搭載したMacのmacOS Big Surでは、そこにもう1つのフレームワークが加わるのではなく、iPhoneやiPadのアプリをそのまま動かせるように、macOS上のUIKit部分を拡張するかたちを取るようだ。

引用:Apple

確かに、macOS上の実行環境がiOSやiPadOSに近づけば、そしてアプリから見て実質的に同等なものになれば、何も変更していないモバイルアプリがMac上でも動作することになる。それでも、macOSのアプリ実行環境にはiOSやiPadOSとは異なる部分も多い。顕著な例は、指によって直接画面をタッチする操作と、マウスやトラックパッドを使ってカーソルを動かしてクリックする操作の違いがある。また、macOSの画面には必ずメニューバーがあって、アプリの終了など、基本的な操作を担当しているが、iOSやiPadOSにはMacのメニューバーに相当するものはない。逆にiPhone/iPadのホームボタンに相当するものはMacにはない。

そうした基本的な操作環境がうまくコンバートされなければ、アプリは恐ろしく使いにくいものとなったり、操作不能になったりしてしまう。そこでBig Surでは、モバイルアプリがMac上で動くために必要なリソースやインターフェースは、自動的に追加されたり、変換されたりするようだ。例えば、すでに述べたメニューバーの利用、環境設定パネルの表示、Dockへのアクセス、ファイルを開く/保存ダイアログの利用、スクロールバーの表示と操作といったものだ。iOSやiPadOS上での標準的なマルチタッチ操作も、可能な限りmacOSのマウスやトラックパッド操作に置き換えられる。

さらに、マルチタスクに対応したiPadOSアプリなら、macOS上でも自由にウィンドウのリサイズが可能となる。フルスクリーンでの動作も可能だ。またマルチウィンドウに対応したアプリなら、Mac上でも複数のウィンドウを開いて動作できる。macOS上のファイルにもアクセスできるようになり、macOSによる「共有」機能も利用可能となる。細かいところでは、macOSのダークモードにも追従する。

このような自動的な環境への対応がどんな感じになるのかを知るために、一例として現状のMac Catalystのアプリを見てみよう。iOSやiPadOSにもあって、現在のmacOSにもある「ボイスメモ」は、Mac Catalystアプリの代表的なもの。iPadOSの「設定」には「ボイスメモ設定」がある。そこに配置されているのは「削除したものを消去」するまでの日数、「オーディオの品質」、そして「位置情報を録音名に使用」するかどうかのスイッチだ。

それに対してmacOS上の「ボイスメモ」では、「ボイスメモ」メニューの「環境設定…」を選ぶことで、「ボイスメモ環境設定」のウィンドウが開く。そして、その中に並ぶ設定項目は、文言も含めて、iPad用アプリとまったく同じなのだ。

これはあくまでも、現在のMac Catalystアプリのユーザーインターフェースの自動変換の例だが、このようなインターフェースに関しては、Big Sur上のiOS/iPhoneアプリも、Mac Catalystアプリも、だいたい同じ環境になると考えていいだろう。

Apple Silicon Mac上で動かないiPhone/iPadアプリ

一般的なアプリの多くがAPIの利用を含めて自動的に変換されるとしても、どうしても変換しきれない機能もある。そうしたモバイルデバイス特有の機能に大きく依存しているようなアプリは、Mac上でそのままうまく動かすことはできないだろう。少なくとも、iPhoneやiPadとまったく同じような機能を発揮することは期待できない。

そのようなアプリの代表的なものとしては、iPhone/iPadが備えている多様なセンサー類を使ったものが挙げられる。加速度、ジャイロスコープ、磁気、気圧、といったセンサーや、深度センサー付きのカメラ、GPSといったものはMacにはない。そうしたものに依存するアプリは、そのままの機能をMacで発揮するにはどうしても無理がある。

ただし、例えばGPSのハードウェアはMacにはないが、その代わりになる機能はある。位置情報を提供するCoreLocationフレームワークだ。iOSやiPadOSのアプリでも、GPSのハードウェアに直接アクセスしているものは、まずない。通常はmacOSともほぼ共通のAPIであるCoreLocationを利用して位置情報を検出している。そうしたアプリが必要とする位置情報は多くの場合、Mac上でもCoreLocationによって供給され、支障なく動作するものも少なくないだろう。

またMacにはない背面カメラに関しても、最初から背面カメラの存在を前提として動作するiPhone/iPadアプリを、そのままMac上で動かすのは確かに厳しい。しかし、アプリが非常にマナーよく作られていれば、MacにUSB接続された外部カメラなどを利用することも可能になる。AVFoundationフレームワークのAVCaptureDeviceDiscoverySession機能を利用して、デバイスに接続されたカメラを確認してから利用するようなアプリなら、柔軟に対応できる可能性が高い。

Macという新たなプラットフォームを得たことで、今後iPhone/iPadアプリのデベロッパーの意識改革が進み、デバイスへの依存性の低いアプリが増える可能性にも期待できるだろう。

iPhone/iPadアプリはどうやってMacにインストールする?

Mac上で動作するiPhone/iPadアプリがあっても、それらを実際にどうやってMacにインストールするのか。というのも、キーノートではまったく触れられず、大きな疑問が残る部分だった。これについては、実は何も心配はいらない。Apple Siliconを搭載するMac上で動作するiPhone/iPadアプリは、ほぼ自動的にMac App Storeに表示されるからだ。Macユーザーは、通常のMac用アプリとまったく同じようにダウンロードしてインストールできるようになる。

デベロッパーが新たなアプリをiOS(iPadOS)のApp Storeに掲載する際、デフォルトではMac App Storeにも掲載されるようになる。ただし、上で述べたような理由でMac上では十分な機能を発揮できないアプリや、同じデベロッパーがすでにMac用のアプリを別にMac App Storeに掲載しているような場合には、そのアプリをMac App Storeでは公開しないように設定できる。それも、チェックを1つ外すだけだ。

有料アプリについては、もちろんユーザーはMac App Store上で購入手続きを済ませてからダウンロードしてインストールするようになる。また、インストールしたアプリのApp内課金も可能なので、デベロッパーはiPhoneやiPadとまったく同様に、Macユーザーからも収益を得ることができる。

アプリをMacにインストールする際には、特定のモバイルデバイスに特化したようなリソースは、自動的に排除され、Macに最適なリソースのみを含むようになる。このようなApp Thinningのメカニズムも、これまでと同じように動作する。Macが非常に強力なiPad類似の新たなデバイスとして加わるだけだ。

macOSにインストールしたアプリのアイコンは、通常どおりmacOSの「アプリケーション」フォルダーに入る。ただし、これを別の場所に移動しても動作する。例えばデスクトップに移動して配置することも可能だ。現状のCatalinaでは、アプリのアイコンをアプリケーションフォルダーから別の場所にドラッグするとエイリアスが作成されるが、Big Surでは「移動」となるようだ。また、新しいApp Bundleフォーマットの採用によって、ユーザーがアプリの名前を変更することも可能になるという。このあたりは、iOSやiPadOSでは得られなかった新たな動作環境だ。こうしたユーザーに大きな自由度を与える動作環境は、macOS Sierraで導入されたApp Translocationを利用することで可能となっている。

Macにアプリを提供する3つの方法

こうして、Apple Silicon搭載MacでiPhone/iPadアプリが利用可能になることで、言うまでもなくMacのアプリケーション環境は、これまで類を見ないほど充実することになる。そして、デベロッパーとしてMacにネイティブなアプリを提供する経路も、大きく3種類が利用できることになる。

1つは、これまでのMacアプリと同様の、macOSのオーソドックスなアプリで、もちろんMacならではの機能や操作性がフルに活用できる。それから、これまでにも利用可能だったMac Catalystを利用して、iPadからMacに移植したアプリがある。この記事では述べなかったが、Mac Catalystは、Big Surで大幅にアップデートされ、より強力なものとなる。

いずれにせよ、Macならではの機能をできるだけ利用できるようにiPadアプリをカスタマイズしたければ、Mac Catalystの利用が効果的だ。そして3つ目は、iPhone/iPadアプリを、そのまま提供すること。もちろん、その場合にはMac上での動作を事前に十分テストして、不自然なことにならないか確認することは必要だ。しかし、デバイスに大きく依存したアプリでなければ、コードもほとんど修正する必要はないだろう。

以前は、iPhone/iPadとMacは、2つの似て非なる世界だった。同じアプリを両方の世界に提供する場合、基本的には両者をまったく別のアプリとして開発する必要があった。それがMac Catalystの登場で、iPad用を簡単にMacに移植できるようになり、さらにApple Silicon Macの登場で、1種類のソースコードからビルドしたアプリを、そのまま両方の世界に供給できるようになる。デベロッパーにとっては、マーケットが大きく拡がるチャンスであることは間違いない。

ユーザーとしては、今後登場するApple Silicon搭載Macを準備して、ただ待っているだけでいい。そうすれば、iPhone/iPadの世界から、魅力的なアプリがどんどんMacに流入してくる。面白すぎて笑いが止まらない状況が、もうすぐそこに迫っている。Macユーザーとしては、まったくいい時代になったものだ。

アップル、デフォルトのメールやブラウザアプリの変更を許可

Apple(アップル)はひっそりと、モバイル版ChromeやGmail、Outlookのユーザーの生活を変える大きな発表をおこなった。同社はアプリのデフォルト設定に対する方針を変更し、ユーザーがメールアプリとブラウザアプリにサード製のアプリをデフォルトとして設定できるようにする予定だ。

アップルはこの変更がiPadOSとiOS 14で提供されると発表したが、これはおそらく、ユーザーがリンクをタップしたときにどのブラウザにリダイレクトされるのかを指定できることを意味する。同社が独自サービスのために何らかの機能を確保しているかどうかは、今後判明するだろう。キーノートではこの新機能は強調されず、数秒間表示された要約画面の下部中央にて示された。

これはアップルにとって大きな変化だが、ステージ上でこの点を強調しなかったのも当然だ。同社はサードパーティー製アプリをデフォルトとして使用するオプションをユーザーに提供することに、これまで消極的だった。ただし例外として、Google マップをアップルのアプリのデフォルトに設定できる設定は早い段階で導入された。

メールとブラウジングはモバイルデバイスの重要な機能で、今回のアップデートまでChromeやGmailのようなアプリをデフォルトに設定する機能がなかったのは驚くべきことだ。アップル自身が反トラスト法の議論の中心にいることの理由として、アプリのデフォルト設定が変更できないことは、同社が他社のサービスよりも自社のサービスを優先する手法として常に槍玉に挙げられてきた分野の一つだ。

この機能が具体的にどのようなものになるのか、どのようなサービスがサポートされるのかの詳細は不明だが、ベータ版が公開されれば多くの情報が得られるだろう。

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(翻訳:塚本直樹)

アップルが各OSをアップデート、iPadOS 13.4はトラックパッドをサポート

 

AppleはiPhone、iPad、Apple Watch、Apple TV、Mac用のOSアップデートをリリースした。最大の変更があったのはiPadだ。新しいiPadOSではマウスないしトラックパッドをiPadとペアリングし、ディスプレイ上のカーソルを動かせるようになった。

Appleは先週、新しいiPad Proを発表 したとき、iPadOSのトラックパッドサポートを発表した。またAppleはトラックパッドを内蔵した新しいMagic Keyboardの売り込みを図っているが、ユーザーは新しいiPadやアクセサリを買わなくてもトラックパッドを使うことができる。

トラックパッドをペアリングすると、画面に新デザインの丸いカーソルが表示される。カーソルを載せた対象によってカーソル形状が変化する(上のスクリーンショット参照)。ボタンをクリックしようとする場合、カーソルは消えてボタンがハイライト表示になる。Apple TVでアイコンを動かすときのような感じだ。

テキストカーソルは垂直のバーになる。Pagesドキュメントでテキスト領域のサイズを変更する場合は、背中合わせの矢印になる。トラックパッドを使用している場合、iPadOSはジェスチャーをサポートしており、アプリの切り替え、スイッチャーの起動、Dockやコントロールセンターのアクティブ化を行うことができる。

今回リリースされたiOSおよびiPadOS 13.4には、トラックパッドのサポート以外にもいくつかの機能が追加されている。iCloud Driveフォルダは他のiCloudユーザーと共有できるようになった。これはDropboxの共有フォルダとほぼ同様の機能だ。

Memojiステッカーに9種類の絵文字が追加された。ハートつきの笑顔、つないだ手、パーティーの顔などが登場している。メールアプリのアーカイブ/削除、移動、返信、作成、メール送信などを行うためのボタンのデザインが微調整された。

またAppleは、iOSだけでなくMac App Storeを含むすべてのApp Storeで単一アプリのバイナリをリリースする機能を追加した。つまりデベロッパーはMacとiPhoneの双方で有料アプリをリリースできるようになった。このアプリはどれか1つのストアで購入すれば他のデバイスでも利用できる。

また、macOS 10.15.4には利用時間を制限する機能が追加されている。これは、iOSにすでに存在する機能と同様で、 メッセージとFaceTime通話に時間の上限を設定できる。

watchOS 6.2ではチリ、ニュージーランド、トルコのユーザー向けに心電図機能のサポートが追加された。またApple Watchアプリのデベロッパーはアプリ内購入が設定できるようになっている。

アップデートにはバグの修正とセキュリティパッチが含まれる。ソフトウェアのアップデートを自動にしていない場合は、デバイスの設定を開いて手動でOSのアップデートを行うことができる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

人気メールアプリSparkが新デザインに

Readdleの人気メールアプリ、SparkのiOS版とAndroid版のデザインが一新された。Sparkのモバイル版は、これまでインターフェイスがちょっとごちゃごちゃしていた。それが今回のアップデートは、何よりもクリーンなデザインに重点を置き、そこにいくつかの新機能を加えたものとなっている。

まずデザインについて見てみよう。最新のSparkは、シンプルなヘッダーを使用して、ニュースレター、通知、個人のメールといったスマートセクションに分類している。背景がカラフルな角の丸い長方形よりも見た目はすっきりしている。

新しいデザインでは、空白部分も多いが、今回のアップデートでダークモードにも対応した。またスレッドをタップするだけで、そのスレッドのビューが更新されるようになっている。

新機能に関して言えば、まず送信者のプロフィール写真を、できるだけ受信トレイに自動的に表示しようとする。Vignetteと同様、一般的なウェブサービスから画像を引っ張ってくるのだ。たとえば、メールの送信者が、同じメールアドレスでTwitterアカウントを持っていれば、Sparkは自動的にTwitterのプロフィール画像を持ってきて受信トレイに表示する。

メールの受信トレイの扱い方は、人によってだいぶ異なる。そこでSparkでは、メールスレッドの下部に表示するボタンを選択できるようにした。たとえば、フォルダを頻繁に使用する人は、そこにフォルダボタンを配置すればいい。あるいは、そこにスヌーズボタンを置きたければ、それも可能だ。

さらに、iPadOS 13ならではの機能への対応も進んでいる。複数のSparkのインスタンスを、同時に開いておくことができる。たとえば、Split View(スプリットビュー)を利用して、1つの電子メールスレッド内でドキュメントを開き、2番目のSparkウィンドウを開いて別のワークスペースで受信トレイをチェックしたりできるようになった。またiPadOS上のSparkは、フローティングキーボードや、新しいiPadOSならではのジェスチャーもサポートしている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

iOSとiPadOS 13ではPS4やXbox Oneのゲームコントローラーをサポート

Apple(アップル)のiOS 13と、新しい名前で登場するiPad用のiPadOSは、いずれも複数のBluetoothゲームコントローラーの同時接続をサポートしている。そして、それらのリリース最新版では、Xbox Oneや、PlayStation 4のコントローラーのサポートが追加された。実際にあれこれいじってみたところ、どちらのタイプのコントローラーについても、1台のマシンに同時に複数を接続して使えることが確認できた。もちろん、個々のコントローラーごとに別のキャラクターを操作できる。

これ自体は良いニュースだが、悪いニュースもある。今のところ、この機能を利用できるゲームは、あまりないということ。たとえば、Appleの新しいゲームサブスクサービス、Arcadeでは、対応するゲームを見つけることができなかった。また、Archadeには含まれない一般のiOSゲームでも、対応するものを探すのに骨が折れた。やっと見つけたのは、2人で協力してプレイすることも可能なローカルな対戦ゲーム「Horde」で、無料で遊ぶことができるもの。これは、複数のコントローラーを使って、マルチプレーヤーで期待通りに操作できる。

AppleはArcadeによって、App Storeを、そしてiOSでのゲームを、再び活性化させるため、最初にiPhoneが登場して以来最大の努力を払ってきた。Arcadeは、広告やアプリ内購入なしで、非常に高品質のゲームが、どれでも遊び放題となるサブスクサービスだ。サービス開始時の品揃えを見ても、かなりめぼしいものが揃っている。たとえば、「Where Cards Fall」、「Skate」、「Sayonara: Wild Hearts」、「What the Gold」など、ちょっと挙げたただけでも素晴らしいタイトルがある。

このようなライブラリの品質と価値を、iOS、iPadOS、Apple TV、そして最終的にはMacという広範囲にまたがるデバイスと組み合わせることで、たとえば、Nintendo Switchや、他の家庭用ゲーム機が現在押さえているゲーム市場の大きな部分を奪い取る可能性もある。

特に、iPadのローカルなマルチプレイヤーゲームには、大きな可能性が秘められているだろう。iPadのオーナーは、すでに自宅だけでなく、外出先でもiPadを使っているという人が多い。そしてiPadなら、どこでも大画面で高品質のゲームをプレイできるのだ。あとは、スーツケースや、機内持ち込み用のバッグに、PS4やXboxのコントローラーを入れておけば、旅先でも素晴らしいゲーム体験が得られる。

上でも述べたように、今のところ、これらのコントローラーをサポートするゲームは多くないが、ゲームのデベロッパーさえその気になれば、いつでもそれらを利用するための機能が用意されているということが分かっただけでも、なんだかワクワクさせてくれる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

iOS、iPadOS、tvOSの13.1アップデートが公開

つい先ほどApple(アップル)はiOS 13.1を公開した。このアップデートには、(もしまだインストールしていないなら) iOS 13の新機能すべてに加えてたくさんのバグ修正が入っている。安定した状態にするために、iOS 13.1にアップデートすることを推奨する。

ただしそれだけではない。iPadOSとtvOSもようやくバージョン13になり、iPadOS 13.1とtvOS 13.1が本日公開された。

アップデートは現在順次公開中で、「設定」アプリからインストールできる。iOS 13.1の対象機種はiPhone 6s以降、iPhone SE、 および第7世代のiPod touch。iPadOS 13.1は、2014年以降に発売されたiPad、iPad mini、iPad Pro全機種。tvOS 13.1はtvOS 12が動作しているApple TVに対応している。

もうひとつ注目すべきなのは、今回のiPadOSとtvOSの公開に伴い、iPadとApple TVで Apple Arcadeが使えるようになることだ。月額4.99ドル(600円)で、数十種類のゲームをAppleの各種デバイス共通でプレイできるようになる。PlayStation 4やXbox OneのコントロールをAppleデバイスとペアリングしてゲームをプレイすることもできる。

ただし、まずバックアップを取ること。iCloudのバックアップが最新状態になっているかどうかは「設定」アプリのアカウント情報から確認できる。iOSデバイスをパソコンに接続してiTunes経由で手動バックアップすることもできる(もちろん両方やってもいい)。

iTunesのバックアップは暗号化するのを忘れずに。誰かがパソコンに侵入したときの安全性を高められる。暗号化されたバックアップには保存されたパスワードや「ヘルスケア」アプリで記録されたデータも入っている。このためオンラインのアカウントにログインし直さなくてすむ。

バックアップができたら、設定アプリで「一般」→「ソフトウェアアップデート」に行って指示に従えばサーバーの準備が整い次第、自動的にダウンロードが始まる。

関連記事:iOS 13を早速使ってみた、ダークモードやBTスキャニングオフなど多数の新機能

iOS 13の新機能を簡単に紹介しておく。今年はダークモードが加わったほか、あらゆるアプリに何らかの「生活の質」向上のためのアップデートが施されている。写真アプリにはギャラリービュー、Live Photosとビデオの自動再生、スマートキュレーションや没頭的なデザインが採用された。

このバージョンでは新しいサインイン方法の「Sign in with Apple」(Appleでサインイン)、BluetoothとWi-Fiの確認画面やバックグラウンド位置情報追跡など知らせるポップアップ通知など、プライバシー面がかなり強調されている。純正の「マップ」アプリにはGoogleストリートビュー風のLook Around機能が入った。まだ、ごく一部の都市でしか利用できないが、周囲を見回してみることをお勧めする。すべてが3Dで表示される。

そのほか多くのアプリがアップデートされた。「リマインダー」アプリは全面改訂され、「メッセージ」アプリでは「連絡先」アプリに登録された人とプロフィール写真を共有できるようになった。「メール」アプリの書式設定が改善され、「ヘルスケア」アプリでは月経周期を追跡できる。「ファイル」アプリにはデスクトップ風の機能が追加され、Safariには新しいウェブサイト設定メニューが付いた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

もうアップルのSidecarが手放せない


Apple(アップル)のmacOSと新しいiPadOSのパブリクベータの公開によって、ついにSidecarを自ら体験することができた。iPadをMacの外部ディスプレイとして利用できるようにする機能だ。私としても、iPadが登場したときから、こうなればいいのに、と思っていたことで、その望みがついにかなったというわけだ。

これらはまだベータ版のソフトウェアなので、当然ながらいくつかのバグに遭遇した。例えば、Macのディスプレイが点滅したり、再起動しなければならなくなったりもした。もちろん、これは問題ではない。ベータ版は、まだ完成品ではないのだから。しかし、Sidecarはすでに大変革を起こしつつある。将来は、おそらくこれなしてやっていくのは難しくなるだろう。特に出張中は。

Sidecarも「そのままでうまく動く」というAppleの精神にぴったりと適合しているので、設定はものすごく簡単だ。MacのOSが10.15 Catalinaになっていて、iPadOS 13 betaをインストールして、BluetoothとWi-FiがオンになったiPadが近くにあれば、MacのメニューバーにあるAirPlayのアイコンをクリックするだけで、ディスプレイのオプションが表示される。

そこでiPadを選択するだけで、SidecarがMacの拡張デスクトップをiPadのディスプレイに表示する。macOSのシステム環境設定では、通常の外部ディスプレイとして扱われるので、他の外部ディスプレイも含めて並べ方を変えたり、ミラーリングモードに設定することもできる。一般的な外部ディスプレイにできてSidecarではできないことの1つは、解像度を変更すること。ここは、デフォルトの1366×1024ピクセルのままとなる。これは、私がテストに使用した、第1世代の12.9インチiPad Proの場合だ。Retinaディスプレイのデバイスとしての解像度は2732×2048ピクセルだ。この設定が、iPadとして最も使いやすい標準的な解像度なのだ。そのため、ピクセルで構成された画像も、装飾的なフォントも、まったく自然に表示される。

Appleは、仮想Touch Barと「サイドバー」と呼ばれる新機能をデフォルトでオンにしている。そう、Sidecarにサイドバーがあるのだ。このサイドバーからは、Dockを開いたり、ソフトウェアキーボードを引き出したり、すばやくコマンドにアクセスしたり、といったことができる。これは、Mac側ではなく、iPad側を操作する際に特に便利だ。ドローイングのアプリにどっぷり浸かっている場合など、たとえば取り消しのようなコマンドが使いたくなった場合にもありがたい。Appleは、そのためのボタンをサイドバーに用意してくれているのだ。

Touch Barの内容は、2016年以降のMacBook Proが備えるハードウェアのTouch Barと基本的に同じもの。 このTouch Barは、お飾りの機能のようなもので、特にハードウェアの「esc」キーがないことを理由に、Touch Barのないエントリーレベルの13インチMacBook Proのほうがいいと声高に主張する人もいた。また、Sidecarを使用しているiPadでは、その最も優れた機能かもしれないTouch IDを利用することができない。それでも、Sidecarを写真やビデオの編集に使う場合には、アプリに特有のクイックアクションを可能にするサイドバーが自動的に呼び出され、すぐに使えるように準備されるは、見ていて感動的だ。

特に優れているのは、Touch Barもサイドバーも、簡単にオフにできるようになっていること。いずれもMacのメニューバーから簡単に操作できる。そうすれば、大きくて美しいiPadディスプレイをフルに表示用として利用できる。Sidecarは、この設定を憶えているので、次に接続したときも同じ状態で利用できる。

また、macOS Catalinaの新機能として、ウィンドウ左上にあるウィンドウをコントロールする3色のカラーボタンに、マウスホバーで表示するメニューが加わっている。そのメニューにより、フルスクリーン表示にするか、ウィンドウを画面の左半分、または右半分にタイリング表示するか、さらにSidecarを使っている場合には、そのウィンドウをiPad側に移動するか、あるいはiPadからMacに戻すか、といった操作が選べる。

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  2. Screen-Shot-2019-06-28-at-7.51.15-am

これによるウィンドウ操作は、かなりうまく機能する。元のウィンドウの設定も憶えていてくれる。たとえば、手動でサイズ変更してMacの画面の4分の1くらいの大きさにしたウィンドウを、いったんSidecarでつないだiPad側に移動してから、またMac側に持ってきた場合、しっかりと元のサイズと位置に復帰するのだ。このように複数のディスプレイ間でウィンドウを管理する機能が、純正のソフトウェアによってサポートされたのは間違いなく素晴らしいことだ。

私はSidecarを無線接続で使ってみたが、もちろん有線接続でも動作する。Appleによれば、どちらの接続でも、それによる性能の差はないはずだという。これまでのところ、無線接続でも、あらゆる期待を上回っていた。特に信頼性と品質の点で、競合するサードパーティの製品よりも優れていた。Sidecarは、iPad Proをキーボードケースに格納した状態でも機能する。その場合、Mac本体が離れたところにあっても、何の問題もなくiPad側のキーボードでキー入力を代用することができる。

Sidecarは、デジタルアーティスト用としても本当に優れている。Mac上でのスタイラス入力を最初からサポートするAdobe PhotoshopやAffinity Photoといったアプリでは、そのままApple Pencilによる入力が可能となるからだ。私は、こうした用途のために、MacにWacom Cintiq 13HDを接続して使っていた。そして今回、AppleのSidecarは、驚くほどうまく、その代替として使えることがわかった。それは無線接続が可能だからというわけでもないし、12.9インチのiPad ProであってもWacom製のデバイスよりは持ち運びに便利だから、というわけでもない。入力する際の応答の遅延がほとんどなく(実際、まったく認識できないほど)、Pencilの先端の位置が画面上のカーソルと一致するようにキャリブレーションする必要もない。上でも述べたように、Sidecarと専用の「取り消す」ボタンの組み合わせは、アーティストにとって生産性向上マシンのようなものだ。

このPencilは、Sidecarにおける唯一のタッチ入力手段となっている。この点は、これまでサードパーティ製のアプリを利用してきた人にとって、奇妙に感じられるだろう。それらのほとんどは、iPad上でのタッチ入力を、Macでもフルに利用できるようにしているからだ。Appleは意図的に、指によるタッチ入力ができないようにしたのだ。なぜなら、Macはそれを意識した設計になっていないからだ。実際に使ってみると、私の脳が期待した通りの動作が得られる。したがって、ほとんどのユーザーにとって、指による入力ができないことは、それほど問題にはならないだろう。

Appleは5K iMac以降のモデルで、長い間そのオールインワンのデスクトップの大きな魅力の1つだったターゲットディスプレイモードを省いた。その発表は、古くなったiMacを最大限に活用したいと考えていた人にとっては残念なものだった。しかしSidecarは、それを補って余りあるものだ。それによって、比較的最近のモデルなら、iPadの利用価値は、ほとんど倍増する。もちろん、追加された画面の表示面積を、有効に活用できる人なら、の話だ。その際、感圧式のApple Pencilを利用するかどうかは、さほど大きな要因ではない。出張や、オフィスの外で仕事をすることが多い人にとって、Sidecarは、まるでAppleのエンジニアリングチームと一緒になって、自ら設計したもののようにしっくりくるだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

iPadOSのプレビュー:ファイルシステムやマルチタスクなどプロの仕事用機能充実

MicrosoftがWindows 10でその概要を描いたPCとタブレット両用のオペレーティングシステムは、ハードウェアの設計者たちの間にコンバーチブルモデル(可換機)のブームをもたらした。それらはラップトップとタブレットの両方に使えて、着脱型のキーボードがある。

しかしiPadはひたすらもっぱら、その逆の道を歩んできた。iOSとmacOSの境界はProject Catalystで薄めようとしたが、タブレットというカテゴリーをあらためて再定義したAppleのタブレットはあくまでもモバイルファーストで、iPhoneのオペレーティングシステムのスケールアップしたバージョンが動いていた。それは同社とその製品との相性も良く、消費者から見てもシンプルで分かりやすい形だった。

関連記事: iOS 13に画期的新機能は少ないがクオリティ・オブ・ライフ改善が満載

しかしiPadの成熟とともに、消費者の求めるものも成熟した。最近のAppleはiPadと呼ばれる製品を嬉々として、企業と教育向けのラップトップ代替機と位置づけている。その姿勢はiPad ProとApple Pencilの登場で加速され、クリエイティブのプロが使う道具という説得力を増すとともに、さまざまな新しい機能がマルチタスキングに向かう道を作った。

iPadOSの登場は同社のタブレットの進化の、次の重要な一歩だ。デバイスにはすでに、大型化や計算能力の強化を促す機能が多くなっていたが、今回OSの名前そのものを変えたことは、iOSからフォークしたこのオペレーティングシステムが独立し自立したことを意味し、それとともに、生産性ツールという位置づけがますます大きくなっているこの製品にふさわしい、独自の機能が多数導入された。

今後iPadOSは、iOSがiPhoneのOSとしてアップデートされたら、同時にそれらのアップデートの多くをゲットするだろう。今回のそれらは、iOS 13のダークモードや、地図のアップデート、Photos(写真アプリ)のデザイン変更などだ。しかし改名された独立のOSであるiPadOSにふさわしい、タブレットならではの機能もたくさんある。

アップデートされたのは、まずホーム画面(Home Screen)。既存のレイアウトが単純に大きくなったのではなく、情報が増えた。画面上のアイコンは最初から30あり、6×5に並んでいる。アイコンはもちろん、今後ユーザーの使用により増えたり減ったりするだろう。

右にスワイプすると左に、新登場の日付時刻の下にリバーウィジェットが出る。このウィジェットには、カレンダー上のアポイントとか、天候、写真などの最寄り情報が出る。下へ大きくスワイプすると設定だが、これをホーム画面のデフォルトにすることもできる。

一方、このアップデートの主役と言えばマルチタスキングだ。第二の浮遊アプリを提供するSlide Overに、ドックからドラッグした複数のアプリを同時に動かす機能が加わった。画面中央へスワイプすると今開いているすべてのアプリが、カードの束のように表示される。アプリを上までスワイプすると、そのアプリが全画面になる。

もうひとつ重要なのは、ひとつのアプリで複数のウィンドウを開けることだ。これもマルチタスクに慣れているデスクトップのユーザーには当たり前のことだが、Pagesなどのアプリケーションでは、あるドキュメントの内容を、今書いてるほかのドキュメントに利用するなど、便利な使い方がいろいろある。

同社が、ファイルのアップデート以上の本格的なデスクトップ的ユーザー体験を今後も提供するのか、その明確なサインはない。今回の変更でユーザーは、自分のデバイス上でファイルシステムを前よりもっとコントロールできるようになった。これまで同社はそれを、よりシンプルなユーザー体験を提供するの名のもとに、ずっと隠してきた。でもそうすると、システムとの対話が不明瞭になるから、iPadをよりプロフェッショナルなマシンと位置づけるのなら、多くのことを明快にした方が良い。

関連記事: macOS 10.15 Catalina preview…Catalinaのプレビュー(未訳)

外部ハードディスクをUSB Cポートから使えるので、今後は大量のドラッグ&ドロップをしなくても済みそうだ。そうやってマウントしたドライブはFilesアプリのLocationsカラムに入る。Lightroomのように、SDカードやカメラからファイルを直接インポートできる。フォルダーのzip/unzipもFilesアプリの中でできる。download(ダウンロード)フォルダーがあるので、MailやSafariなどからダウンロードしたコンテンツにも直接アクセスできる。

iPadOSは今日から公開ベータで入手できる。iOS 13やmacOS Catalinaと一緒だ。最終バージョンは、秋になる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルがiOS 13、iPadOS 13のベータ版を一般公開

iOSやiPadOSが今後どうなるのか誰でも試してみることができるようになった。Apple(アップル)は先ほどiOS 13、iPadOS 13の最初のベータ版を一般公開した。

これらのOSはモバイルデバイスの2大陣営の一方であるiPhoneとiPadに搭載される。このバージョンは.現在デベロッパー向けに公開されているベータとは異なり、99ドルの有料デベロッパーアカウントを取得する必要がない。ただしあくまでベータ版だということに留意すべきだろう。

正式な安定版が公開されるのは今秋これまでの例だと9月だが、それまでの間もベータ版は数週間ごとにアップデートされる予定だという。一般のユーザーに実際の環境で利用してもらいフィードバックを収集するのはバグフィックスに非常に効果的な方法だ。

いつものとおり、アップルの一般向けベータのアップデートはデベロッパー向けベータのアップデートと同期しているはずだ。アップルはiOS/iPadOS 13のベータのv2を先週公開したところだ。今回の一般向けベータはデベロッパー向けベータのv2とほぼ同内容と考えていいだろう。

ただしベータ版は普段メインで使っているデバイスにはインストールしないほうがいい。各種のバグが含まれていることに加えて、いくつかの新機能はまだ作動しない可能性がある。レアケースだが、相性によってはベータ版はデバイスを文鎮化することもないではない。

私はデベロッパー版ベータを使っているが、まだバグが非常に多い。開けないサイトもあるし、作動しないアプリもある。

万一作動しなくなっても仕事や生活に支障ないiPhone、iPadを持っていて、いち早くベータ版を試してみたいなら、インストール方法は次のとおりだ。アップルのベータサイトを開き、コンフィギュレーションプロファイルをダウンロードする(Apple IDとパスワードの入力を求められる)。このファイルはiPhone、iPadにベータ版を正式版のアップデートと同様にインストールするようを指示する。

コンフィギュレーションプロファイルはデバイス上のSafariから入手することもできるし、AirDropを使って転送することもできる。再起動して「設定」アプリを開く。9月の正式版ではこうした手続は不要で自動的にアップデートが行われるはずだ。このときにベータ用コンフフィギュレーションプロファイルを削除できる。

ここでiOS 13の新機能について簡単に復習しておこう。デザインの変更では暗めの場所で見やすいダークモードが目立つが、これ以外にも全アプリ共通で使い勝手、感触が改善されている。写真アプリではギャラリー表示が可能になり、写真やビデオのオープレイ、高度な編集も可能人なった。

新バージョンの重要な変更点の1つはプライバシー全般の強化とSigh in with Apple(アップルでサインイン)のサポートだ。これにより個人情報をサイトやアプリの運営者に渡すことなくアカウントが作れるようになった。サードパーティーがBluetoothやWi-Fiからバックグラウンドで位置情報などを入手しようとすると、警告のポップアップが出る。Look
Aroundという新しい機能はアップルのマップにGoogleのストリートビュー的な現場写真を追加する。これは今のところ一部の都市のみカバーしているが、3D表示可能なので試してみる価値がある。

メール、リマインダー、メッセンジャーをはじめアップル製アプリ多数アップデートされている。リマインダーには各種の操作を簡単に実行できるツールバーが新設された。メッセージではユーザーのプロフィール写真が表示できる、アニ文字やユーザー独自のミー文字を共有できるようになった。メールはヘルスケアアプリでは生理周期をモニターする機能が追加されている。またデスクトップパソコンのようにファイルを操作できるようになった。Safariではサイトごとの設定機能が強化された。その他iOS 13の新詳細はTechCrunchのこの記事(英語)を参照いただきたい。NFC(短距離無線通信)のサポートについてはこちらに詳しい。

今回始めてアップルはiPhone向けと別個にiPad向けOSを発表した。iPadOSのリリースにより大画面を生かした複数アプリの表示や高機能なスタイラス、Apple Pencilのサポートなどタブレット特有の機能の追求が可能になった。またパフォーマンス面でもSafariその他のアプリがmacOS同等の能力を備えるようになった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップル製品の将来を占う新しいアプリ開発環境

開発ツールに関しては、デベロッパー向けのメディア以外で大きく扱われることはあまりない。しかし、Apple(アップル)がWWDCで発表した開発ツール類は、今後のアップル製品向けのアプリの数と質の両方に、多大な影響を与える可能性が高い。それはiPhoneだけに限らない。macOS、watchOS、tvOS、そして新たに加わったiPadOSを搭載する製品にすべて関わってくる。

今回のイベントの主役ではなかったが、デベロッパーがさかんに話題にしていたのはSwiftUIだった。

5年前、アップルはプログラミング言語Swiftを発表して、アプリ開発をできるだけ容易なものしようとする動きを見せた。そして今回のWWDCでは、SwiftUIと呼ばれるまったく新しいユーザーインターフェースのフレームワークを発表し、そのビジョンをさらに押し進めた。SwiftUIを利用することで、スムーズなアニメーションの付いたフル機能のユーザーインターフェースを、シンプルな宣言的コードによって実現できる。

デベロッパーにとっては、これは大幅な時間の節約につながる。SwiftUIが備える自動化の機能によって、アプリの設計を洗練されたものにできるだけでなく、バグを減らすことになるからだ。また、アップルがデベロッパーに説明したところによれば、「単にコードの量を減らせるだけでなく、より良いコードにできる」ということだ。

シンプルであることを目指したのは、そうでなければどうしても避けられない、さまざま種類の誤りの発生を防ぐことを意図したもの。SwiftUIのコードは、まるで他の人からユーザーインターフェースについて説明を受けているかのように読みやすい。さらに、デベロッパーは異なるプラットフォーム間で、より多くのコードを再利用できるようにもなる。

それによって、開発サイクルの大幅な短縮にもつながる。デベロッパーが、アプリのユーザーインターフェースの一部だけを変更したくなった場合でも、素早く、しかも簡単に変更できる。

SwiftUIのフレームワークは、インターフェースのレイアウトをはじめとして、さまざまな面に効果を発揮する。たとえば、iOS 13が装備するダークモードへの対応、アクセシビリティ、右から左へ向かって書く言語への対応を含む国際化などだ。しかもSwiftUIは、同じAPIをiOS、iPadOS、macOS、watchOS、さらにtvOSという複数のOSに共通のものとすることで、アップルのアプリのエコシステム全域にまたがって使えることも重要なポイントだ。

このような特徴によって、これまでiOSだけに注力していたデベロッパーも、既存のアプリをSwiftUIに対応させさえすれば、クロスプラットフォームの開発に着手しやすくなる。

もちろん、アプリの性格によって、どこまでSwiftUIに対応できるかの程度は異なるだろう。しかしSwiftUIは、新規のデベロッパーにとっても魅力的なだけでなく、初めてアプリ開発に取り組むような初心者をも惹きつけるものがある。

SwiftUIは、Xcodeの新バージョンとともに発表された。このXcode 11には、新しいグラフィカルなUIデザインツールが含まれている。それによってデベロッパーは、コードを書くことなく、SwiftUIを使ったユーザーインターフェースの開発が可能となる。

視覚的なデザインツール上でUIが変更されると、そのつど新たなSwiftコードが自動的に生成される。さらに、そのアプリがどのような表示になり、どのように動作するのか、iPhone、iPad、iPod Touch、Apple Watch、Apple TVなど、接続されたデバイス上のリアルタイムのプレビューで確認できる。

これによりデベロッパーは、各プラットフォームでコードがどのように機能するかをテストできる。たとえば、マルチタッチに対してどのように応答するか、カメラやセンサー類の動作はどうかなど、開発プロセスの中で確認できるのだ。

Watchアプリ

watchOSに関しては、SwiftUIによって、Watchアプリならではのアニメーションとエフェクトの開発の複雑さを解消することができる。これまでは、その難しさのせいで、Watchアプリに手を出すのを躊躇するデベロッパーもいた。

SwiftUIは、スワイプして削除、リストアイテムの並べ替え、カルーセルのスライド、デジタルクラウンへの直接アクセス、といった機能を備えたWatchアプリの開発をサポートする。

またApple Watchは、デバイスから直接App Storeに接続できるようになり、ペアとなるiOSデバイスやiPhoneがなくても、スタンドアローンのアプリをインストールできるようにもなった。

このスタンドアローンのWatchアプリは、iOSから独立して動作させることができるだけでなく、Apple Watchを独立したプッシュ通知のターゲットに設定することも可能となる。つまり、そのユーザーがログインしているすべてのデバイスにではなく、Watchにだけ通知を送信することができる。

Watchアプリは、CloudKitのサブスクリプションをサポートできるようになり、プッシュ通知をコンプリケーションとして表示することで、ユーザーに最新情報を伝える。Watchアプリは、対応するiPhoneアプリを使っていないユーザーをもターゲットにできるようになったので、ユーザー名とパスワードを入力するテキストフィールドを表示するようになった。そこに入力してサインアップするか、今回発表された「Sign in with Apple」ボタンを使うこともできる。状況によってはアップルでサインインが必須の場合もある。

Watchアプリは、オーディオのストリーミング再生もできるようになった。これにより、これまで可能だったものとは異なるタイプのアプリへの道が開かれる。デモで見たように、Pandoraのようなインターネットベースのストリーミングサービスを利用して、スポーツ中継や音楽をストリーミング再生するアプリを想像するのも難しいことではなくなった。

さらに、watchOSの新しい拡張ランタイムは、ユーザーが手首を下げた状態でも動き続ける、新たな種類のWatchアプリの開発を促すことにもなるだろう。

たとえば、セルフケア、マインドフルネス、理学療法、スマートアラーム、健康状態のモニタリング、といった分野のアプリは、このランタイムを利用することで、Apple Watchのユーザーにとって新たな体験を創出することができるだろう。

これまでのWatchアプリのエコシステムが停滞したのは、アプリ開発の複雑さによるものだけでなく、ユーザーが手首を持ち上げている状態でしか動作しないというような制限をデベロッパーに課してきたことにもよる。ユーザーの手首の上で何ができるかを考えることを止めても、たとえばセンサーやストリーミングオーディオを利用することで、デベロッパーは単純に普通のiOSアプリを移植することも可能となる。

驚くべきことではないが、これまでそうしたアプリの多くは失敗し、やがて削除されることになった。アップルは、Watchアプリのエコシステムの再起動を狙っている。

macOSアプリ

今回のWWDCで発表された新しい開発ツールは、iOSのデベロッパーが、1億人のアクティブなMacユーザーにアピールする機会を生むことになる。

アップルによれば、いくつかの純正iPadアプリは、Mac上でも十分通用するものであることを認識しているという。しかし、一般のデベロッパーは、macOSのAppKitを使ってiPadアプリを移植する時間的な余裕がない。そこで今年のWWDCでは、デベロッパーにとって「最小限」の労力でiPadOSアプリをMac用に移植できるような技術を発表した。

現在、iPad用には100万本を超えるアプリのエコシステムがあり、その多くはMac上で動かしても意味のあるものだと考えられるということだ。

この取り組みの一環として、アップルはiOSからMacに40個ものフレームワークを移植した。その結果、わずかな例外を除いて、ほぼすべてのiOSのAPIの移植が完了した。これは、UIKitをネイティブなフレームワークとして採用し、次期macOSのリリース、Catalinaに直接組み込むことによって実現した、とAppleは述べている。

さらにアップルは、iPadアプリをMacに移植するための3段階のプロセスを用意した。

その最初のステップは、Xcodeのプロジェクト設定で「Mac」と書かれたチェックボックスをオンにすること。

するとXcodeでは、ソースに変更を加えるたびに、iOS、iPadOS、そしてmacOS用のすべてのアプリが自動的に更新されるようになる。

またiPadアプリを優れたものにすることは、ベストプラクティスをサポートするところから始まるという考えに沿って、デベロッパーはMac用にカスタマイズすべき部分を示唆される。つまり、状況に応じてメニューバー、タッチバー、マウスホバーのイベントなどをサポートすべきことが示される。

チェックボックスをオンにするだけで優れたMacアプリが開発できるわけではないが、それによって作業量は軽減される。

ただし、アップルが(優れた」iPadアプリの条件として、どの程度のものを要求するかについては疑問も残る。アップルは最大の効果を得るためには、デベロッパーはiPadのベストプラクティスを採用すべきだとしている。たとえば、外部キーボードをサポートしたり、Metalのようなキーとなる技術を採用することなどだ。

とは言え、もしアップルが本当にMac App Storeの品揃えを充実させたいなら、そしてもっと利益を生み出すアプリを増やしたいと考えているなら、Macに移植されるiPadアプリに、それほど多くを強いることはないかもしれない。

アップルでは、WWDCで発表する前に、すでに10社程度のデベロッパーとこの移植プロセスを試している。その中には、アメリカン航空、Crew、DCユニバース、Post-It、ツイッター、Tripit、フェンダー、アスファルト9、Juraなどが含まれる。

iPadOS

ところで、iPad上で動作するiOSには、iPadOSという新たなブランディングが施されることになった。

これまでのiPadは、発売当初からずっとiOSを搭載してきた。しかし時が経つにつれ、iPadの大きな画面を活かすための独自の機能も実現してきた。たとえば、スライドオーバー、スプリットビュー、ドラッグ&ドロップや、Apple Pencilのサポートなどが挙げられる。

まずはじめに、iPadOSでは、ホーム画面のアイコンのグリッド間隔は狭くなる。これは、サードパーティアプリが使えるホーム画面のスペースが広くなることを意味する。また、ウィジェットはホーム画面に固定できるようになる。これも、iPadアプリがホーム画面に占めるスペースを確保することになり、それだけユーザーの注意を引くことになるだろう。

しかし、iPadが本当に優れているのは、ノートパソコンの代わりに使えること。生産性も高くなり、スケッチやデジタルアートなど、クリエイティブな使い方も可能なのだ。

仕事効率化アプリのデベロッパーにとっては、1つのアプリから独立した別ウィンドウを開けるようになるのは、パソコン的な使い方を可能にする便利な機能だ。さらにアプリExposeや、3本指によってコピー、カット、ペースト、取り消しを可能にするジェスチャーも使えるようになる。

デベロッパー向けのツールについては、PencilKitというAPIが新たに加わり、サードパーティのアプリでも、純正アプリと同様に新しいApple Pencilにアクセスすることが可能になる。

それでも、実際にiPadアプリの開発を促進するのは、iPadアプリを簡単にMacに移植できるようになることかもしれない。言い換えれば、iPadアプリを開発しようというデベロッパーのモチベーションを本当に高めるのは、以前よりもずっと少ない労力で、同じアプリをMacでも動かせるようになること、なのかもしれない。

tvOS

Apple TV用のtvOSは、SwiftUIとiPadアプリのMacへの移植の話題に比べると、ほとんど注目されなかった。それにはアップルは、Apple TVとそのストリーミングサービス、つまりApple TV+に関しての熱意を示すイベントを開催したばかりだったということもある。

とは言え、SwiftUIはここでも活躍する。tvOSアプリでも、コードの再利用が可能になるからだ。

拡張現実と機械学習

アップルが今回のWWDCで発表したのは、作業をシンプルにして開発を促進することを狙ったものばかりではない。他の技術としては、まずARKitをさらにアップデートしたARKit 3が挙げられる。これは、モーションキャプチャー機能を備え、フレームの中の人物も認識できるようになった。それによって、人物をARオブジェクトの後ろに配置したり、前に出したりすることなどが可能となる。

これもアップデートされたCore ML 3を使えば、デベロッパーが機械学習の専門知識を持っていなくても、自分のアプリで機械学習を構築し、学習させ、その結果を利用できるようになる。

他にも、MetalやCreateMLのような重要な技術に進化が見られる。そうした技術を利用することで、デベロッパーは、それぞれの領域で、より品質の高いアプリを開発できるようになるだろう。

それでも、もっとワクワクさせ、興味を引きつける部分は、やはりアップルが現在最も人気のあるアプリプラットフォームであるiOSにテコ入れして、アプリのエコシステム全体に活を入れようとしていることだろう。今回のWWDCで発表されたツールによって、アップルは開発とデザインを合理化し、よりシンプルなものにしようとしている。それにより、より多くの人にプログラミングに参加してもらい、アプリのデベロッパーのコミュニティがiPhoneを超えて発想してくれるよう促しているのだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アップルの音声コントロールはアクセシビリティをOSレベルで強化する

Apple(アップル)は、なめらかで直感的なユーザインタフェースをお家芸としている。しかし、もしユーザーがクリック、タップ、ドラッグといった操作のための指を持っていなければ、そんなものは何の役にも立たない。障がいを持つユーザーのために、Appleは強力な「音声コントロール」を装備し、音声ベースのアクセシビリティ機能の強化に本気で取り組んでいる。Mac、iPad、iOSデバイスで利用できる。

多くのデバイスが、すでに優秀な音声入力機能を備えている。そしてもちろん、Apple製のスマホやパソコンにも、もうかなり前から音声ベースのコマンド機能が備わっていた。古くはMacintosh Quadraにさえ、そのためのマイクが標準装備されていた。しかし今回の音声コントロールは、これまでにないほどの大きな進化だ。声による操作を、誰でも使える万能なものに近付ける。そして、すべてオフラインでも機能する。

基本的に音声コントロールでは、ユーザーはセットコマンドと、コンテキストに固有のコマンドの両方が使える。セットコマンドとは、「Garage Bandを起動」とか、「ファイルメニュー」とか、「タップして」などといったもの。もちろん、ユーザーが命令しようとしているのか、文章を入力しようとしているのかを区別するだけのインテリジェンスは備えている。

しかし、こうしたコマンドは、多くのボタンや入力フィールド、ラベルなどが1画面に混在しているようなインターフェースでは、うまく動かない。もし、すべてのボタンやメニュー項目に名前が付いていたとしても、いちいちすべての名前を端から読み上げて選択を促すのは時間もかかり、現実的ではない。

この問題を解決するため、Appleは表示されているすべてのUI項目に単純に番号を付けた。ユーザーが「番号を表示」と言えば表示する。そこでユーザーは、単に番号を発音するか、たとえば「22をタップ」のように、操作の種類も合わせて指示できる。基本的なワークフローは、下のGIF動画に示されている。ただ、音声がないので、伝わりにくい部分があるかもしれない。

こうした数字なら、声を出しにくい人、あるいはまったく出せない人にとっても、比較的簡単に指示できることは重要なポイントだ。たとえば、ダイアルや息を吹き込むチューブといったような、単純な入力デバイスでも選択できるのだ。視線を追跡するのも優れた入力方法だが、それなりの限界もある。数字を使う方法は、それを補うことができるだろう。

たとえば地図のように、どこでもクリックしたくなる可能性があるような画面用には、グリッドシステムを用意している。それによって拡大したり、クリックしたい場所を指定する。まさにブレードランナーのようだ。スクロールやドラッグといったジェスチャーに対応する機能もサポートしている。

テキストの音声入力は、ちょっと前から使えるようになっていたが、それについても進化した。あるフレーズだけを選択して置き換える、といったことも声で指示できるようになった。たとえば、「”be right back”の部分を”on my way”に置き換えて」のように言えばいい。他にも細かな改良点があるが、この機能を頻繁に使用する人なら、その変化に気付き、きっと気に入るはずだ。

音声の解析などの処理は、すべてオフラインで行われる。そのため応答も早く、ネットワークとの接続状態に影響されない確実な動作が可能。データ通信が困難な外国に出かけている場合も安心だ。また、Siriに組み込まれたインテリジェンスによって、基本的な語彙に含まれない名前や、特定のコンテキストに固有の単語なども認識できる。音声入力の進歩により、絵文字を選択したり、辞書に項目を追加したりすることも、簡単にできるようになった。

現状では、すべてのApple純正アプリが音声コントロールをサポートする。またAppleのアクセシビリティAPIを使用しているサードパーティ製アプリなら、簡単にそのメリットを享受できるはずだ。さらに、特に対応していないアプリでも、数字とグリッドによるインターフェースは機能するはずだ。というのも、OS自体が、アプリが表示しているUI項目の位置を把握しているからだ。このように進化したアクセシビリティ機能は、デバイスをiOS 13またはCatalinaにアップデートするだけで、すぐに利用できるようになるだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

WWDCで発表されたiOS、macOS、watchOSのおいしい部分まとめ

米国時間6月3日のWWDCの基調講演では、予想通り多くのものが発表された。そのすべてを見終わってみると、なんだかAppleは、今回取り上げた新機能の間で競争を繰り広げていたようにも感じられた。全部を2時間ちょっとのイベントに詰め込まなければならなかったのだから、それも当然だろう。

多くの人にとって、新しいMac Proが今回の発表のハイライトに見えただろう。ただしAppleとしては、ソフトウェアに焦点を当てていたのは確かだ。Appleは、ハードウェアの売り上げが伸び悩むにつれて、やはり将来はソフトウェア、サービス、そしてコンテンツにかかっているのだと、痛切に感じているはずだ。今回の基調講演では、iOS、macOS、そしてwatchOSが提供することになる新しい機能の中でもベストな部分を、解説付きで観ることができた。

驚くべきことではないが、その中ではiOS 13が最も大きな変更をもたらす。ダークモードは、いわばその中のハイライトだ。この機能のセールスポイントは、macOSなど、他のOSのものと基本的に変わらない。つまり、目に優しく、バッテリーの消費を抑えるというもの。ユーザーの設定によって、常にそのモードを使うか、太陽が沈んでいる間だけ有効にするかを選ぶことができる。

ダークモードにすると、自動的に暗い壁紙が選ばれる。とりあえずAppleの純正アプリで動作するが、やがてサードパーティ製アプリもサポートする。また、アプリ開発環境も標準的にサポートするはずだ。

Appleマップは、登場した直後には鳴かず飛ばずだったが、大きなアップグレードがずっと加えられてきた。今回の新機能で最も注目に値するのはLook Aroundだ。Googleがずっと前から実現しているストリートビューに対抗するものとなる。デモを見る限り、非常にスムーズに動作する。ただし、実際に路上のセルラーネットワーク環境でどのように動くかはわからない。しかしデモは、間違いなく印象的なものだった。

イメージングに関しては、これまでもiOSにとって重要なアップグレードのポイントとなってきた。それは今回も同じだ。写真アプリの編集機能はかなり進化している。ホワイトバランス、コントラスト、シャープネス、ノイズ除去など、プロっぽいコントロールが可能となった。

簡単に使えるフールプルーフ的な機能も加わっている。たとえば、肌の色に影響を与えずに彩度を調整する機能などだ。また、画質や色調の調整や、全体の回転など、ビデオに対して使える編集ツールも加わった。また写真アプリでは、撮影した写真の1画面の表示数、並べ方をダイナミックに変更できる。たとえば、誕生日に撮影した画像をグループ化して表示すれば、時の経過を嫌でも再認識することになるだろう。

今年の基調講演は、iPadにとって、大きな節目となるものだった。iPad用のOSが、iPhone用のiOSから分離されたからだ。ユーザーにとっては、iPadの大きな画面を活かした機能を利用できるようになることを意味する。たとえば、同じアプリのウィンドウを複数開いて、これまでとはまた違う意味のマルチタスクも可能となる。さらに、ジェスチャーによってテキストを選択したり、コピー&ペーストまでできるようにもなる。こうしてiPadOSは、パソコンの操作感覚に近づいていく。

しかし、それより何より、最もエキサイティングな新機能は、実はMac側にあった。macOS Catalinaは、DuetやLuna Displayのようなセカンドディスプレイ機能をiPadに付加する。つまり、iPadをMacの外部モニターとして利用できるのだ。この機能は、Bluetoothによる無線接続でも、USBによる有線接続でも使える。

WWDCの会場は、無線通信にとっては過酷な環境のためか、デモは有線接続で行われた。複雑な操作にも対応して完璧に動作したことは言うまでもない。iPad Proなら、Apple Pencilで描くこともできる。また、iPadのディスプレイの下部には、Touch Barのようなメニュートレイも表示される。

watchOSについても、いくつか付け加えておく価値があるだろう。中でも重要なのは、月経周期の記録、予想機能だ。この機能はiOSでも利用できるようになる。これまでとはまた違った意味での健康管理を可能とするもの。

その他、watchOSに追加される機能としては、オーディオブックをApple Watchで直接聴くための純正アプリ、内蔵マイクを使用して、聴覚障害の原因となる可能性のある騒音をユーザーに警告するNoiseアプリなどがある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

タブレットがとうとう独自OSにWWDCでiPadOSが登場

iPadは登場から10年を迎え、ハードウェアは大きく強化された。一方、OSをiPhoneと共有していることが制約になり始めていた。米国カリフォルニア州サンノゼで米国時間6月3日に開幕したWWDCで、アップルはiPadに独自のOSを搭載することを発表した。今後iPadアプリはiPadOSに適合したものとなる。

iPadOS

とはいえ、新OSは iOS 12と比較してさほど劇的な変化はしていない。実のところ、アップデートの内容はかなり地味だ。しかしiPadOSという独自名称を与えたことでAppleはiPhoneとOSを共有する制約から離れ、iPadの持つ潜在能力を充分に発揮させる方向に舵を切った。

ここで重要なのはApple(アップル)の戦略転換だ。iPadアプリは今後macOS版よりさらに強力になっていくだろう。Phoneのサイズに縛られて iPadが能力を完全に発揮できないなどというのはナンセンスな事態だった。iPadに独自OSが来たことでで一番わくわくするのはどの部分だろうか。

  • Safariでサイトを訪問するとき、モバイル版ではなくデスクトップ版が開くようになった。これは大きなニュースだ。 
  • ホーム画面にウィジェットを追加できる。ホーム画面の構成もアップデートされ、これまでより多数のアイコンを並べることができる。 
  • ファイルをフォルダーにまとめてiCloudに保存、共有するファイルやアプリもiPadに最適化された。表示にカラムビューが加わり、USB-C接続のフラッシュドライブからデータをコピーすることも簡単になった。.
  • iPadOSでは同一アプリで複数の窓を開ける。これ以外にもiPadの画面のサイズを生かしてマルチタスクを容易にする機能が追加された。 
  • Apple Pencilのレイテンシーが20msから9msにほぼ半減した。AppleはPencilKitというデベロッパー向けAPIを用意。これによりアプリにカスタマイズされたペンシルの機能を開発することが簡単にできるようになった。 

こうしたアップデートはさほど劇的なものではない。iPhoneの狭い世界からiPadが解放されたことはグッドニュースだ。今後に大いに期待できる。

もっともあまり劇的なアップデートが用意されていないこの時期にiPadのOSの名称を変更したのはやや不思議だが、デベロッパーにとっては iOSがiPhone向けとiPad向けに正式に分岐したことは決定的に重要だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook