AI搭載した遠隔操作ロボットのTelexistenceが22億円のシリーズA2調達、製品開発チームを拡大

AI搭載した遠隔操作ロボットのTelexistenceが22億円のシリーズA2調達、製品開発チームを拡大

AI(人工知能)搭載の遠隔操作ロボットを開発するTelexistence(テレイグジスタンス)は6月16日、シリーズA2ラウンドにおいて、約22億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のモノフルのグループ会社(モノフル)はじめ、Airbus Ventures、KDDI Open Innovation Fund、DEEPCORE、東大IPC、複数の新規投資家(非公開)など。2017年創業以来の資金調達総額は約45億円となった。

調達した資金は、製品開発チームの拡大や、オフラインの小売店舗・物流分野で広がる顧客層への製品開発・展開の加速に活用する。

またTelexistenceとモノフルは、物流施設業務向けの拡張労働基盤(AWP。Augmented Workforce Platform)の開発、商用運用や社会実装をさらに進めるため、パートナーシップを強化した。

遠隔操作ロボット技術を核とするAWPは、物流施設内の業務に携わる労働者が倉庫に物理的に立ち会うことなく労働力を提供できるプラットフォーム。倉庫内に設置されたロボットをインターネット経由で操作できるほか、在宅のままパレタイズ(パレットへの積みつけ)やデパレタイズ(パレットからの荷下ろし)などの作業に参加可能という。Telexistenceは、AWPの構築により労働者により安全に、より低コストで、より便利に世界の労働市場に参加できる基盤を提供するとしている。

今回のパートナーシップはその一環となっており、国内最大級の物流業者をパートナーとし、物流分野向けに開発した遠隔操作ロボットのトライアル導入の準備と製品試作を進める。

現在、ロボット(主に産業用ロボット)は、主に自動車・総合電気メーカーの工場内でしか普及していないという状況にある。Telexistenceは、ロボットの活躍の場を工場の外にまで広げ、社会の基本的なあり方を変革することを目指しているという。最終的には、人間が複数の空間的・時間的スケールのネットワーク構造を介してつながり、相互作用し、進化していく社会の創造を目指す。

モノフルは、先進的物流施設のリーディングプロバイダーである日本GLPのグループ会社の出資により2017年11月に設立。社名には、「物(mono)であふれている(full)」という物流の現状を表す意味に加え、同社が目指す未来の物流の姿である「単一の(mono)プラットフォームで遂行させる・実行する(fulfill)」という意味を込めている。

2017年設立のTelexistenceは、「ロボットを変え、構造を変え、世界を変える」をミッションとし、遠隔操作・人工知能ロボットの開発およびそれらを使用した事業を展開するロボティクス企業。世界中から高い専門性をもつ人材が集まり、従業員の国籍は10を超え、ハードウェア、ソフトウェア、自動化技術を一貫して自社で開発している。半自律型遠隔操作ロボットとAWPを通じて、人々が場所を問わず労働参加できる基盤構築を目指す。

関連記事
JAXAと鹿島建設が月面有人拠点建設のための遠隔施工実験を実施、好成績を確認
キャタピラージャパンが次世代油圧ショベルなどを遠隔操作するCat Commandステーションを2022年発売
遠隔地でも仮想空間でも釣りができる小型ロボット「TeleAngler」、ロボティクスのRe-alが2021年内販売へ
建機の遠隔操作や自動操縦で建設現場のDXを進める東大発スタートアップARAVが6300万円を調達
宇宙で活躍するロボット労働力の供給を目指す日本のGITAIが18億円の資金調達を完了
モーションリブが模型用小型モーター使い固い・柔らかい物をつかんだ感触を伝送する技術を開発
東大・松尾研発AIスタートアップDeepXが総額16億円の資金調達、建機自動化や工場内作業自動化の事業化加速
遠隔地のロボットを自分の“分身”にできるTelexistenceが十数億円を調達——エアバスやKDDI系のファンドから

カテゴリー:ロボティクス
タグ:AI / 人工知能(用語)遠隔操作 / リモートコントロール(用語)Telexistence(企業)ロボット(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

建設現場の床に図面をプリントする自動走行ロボットを開発する「Dusty Robotics」

主要な建設ロボティクス企業が、健全な高まりをともなう中で鉄が熱いうちに打つというのは最もな動きだ。ベイエリア拠点のDusty Robotics(ダスティ・ロボティクス)は米国時間6月15日、1650万ドル(約18億円)のシリーズAを発表した。Canaan Partnersがリードし、NextGen Venture Partners、Baseline Ventures、Root Ventures、Cantos Venturesが参加した同ラウンドにより、Dusty Roboticsの累計調達額は2370万ドル(約26億円)となった。

「全米、そして世界中の顧客からかなりの引き合いがあります」と創業者でCEOのTessa Lau(テッサ・ラウ)氏はTechCrunchに語った。「チームの増強に加えて、ロボットを補強し、また需要に応えるべくさらに多くのロボットを作ります」。

CanaanのパートナーであるRich Boyle(リッチ・ボイル)氏はパンデミックがすでにあった需要をさらに加速させたと付け加えた。

「どちらのマーケットも驚くほどアクティブで、急速に進化しています。これはほぼ長期的なトレンドによるものだと確信しています。長期的なトレンドとは、AIの向上や主要産業における労働力不足、ロボティックハードウェアの値下げなどです。つまり、新型コロナウイルスパンデミックは、人々がデザインや建設、不動産資産の利用の継続についてどのように考えているのかという点で変化を促しました。そして、どのように働き、生活し、買い物するかという行動面での大きな変化につながりました。新型コロナによって加速されたと我々が考えるそうした変化の一部は定着しています」。

Dustyのチームは17人とまだかなり少なく、チームの大半はマウンテンビューを拠点としている。同社初のプロダクトは建設現場のフロアに図面を印刷するロボットField Printerだ。同社はマップを「Ikeaインストラクション」になぞらえる。この自動走行ロボットはSwinerton、DPR Construction、Build Group、Pankow Buildersなどによって使用されてきた。

「第3世代のハードウェアプラットフォームをリリースしたばかりで、これは建設現場で正確かつすばやくレイアウトを制作できるよう、マウンテンビューのチームがゼロからデザインしたものです」とラウ氏は話す。「2018年秋からこのプロダクトに取り組んでいて、100万平方フィート(約9万3000平方メートル)超のレイアウト制作で学んだことを第3世代のデザインに組み込みました」。

関連記事
農地の石を除去するロボットを開発するTerraClearが約27.3億円を調達
現場と社内をつなぐビジネスチャット「direct」など手がけるL is Bが12.3億円資金調達
ソフトバンクが支援する建設の巨人「Katerra」が約2200億円以上を使い果たし事業を閉鎖
これぞ「メイド・イン・デトロイト」の実力、現場労働者の安全性を向上させる多数センサーを搭載したGuardhatのスマートヘルメット

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Dusty Robotics資金調達建設

画像クレジット:Dusty Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

GROUNDがトラスコ中山と資本業務提携し5億円調達、流通プラットフォーム「トラスコプラットフォーム」構築支援

GROUNDがトラスコ中山と資本業務提携し5億円調達、流通プラットフォーム「トラスコプラットフォーム」構築支援

AIとロボティクスで「永久に持続可能な物流の未来」を目指す物流テック企業GROUND(グラウンド)は6月15日、機械工具や工事用消耗品の卸売を行う企業トラスコ中山と資本業務提携を結び、2021年6月末までにトラスコ中山を引受先とする第三者割当増資を実施すると発表した。これはシリーズCラウンド総額5億円の資金調達となる。

この資金を使って、GROUNDは、「次世代型物流施設の研究・企画・開発」「AIによる物流データ整備およびAI物流ソフトウェア標準化モデルの研究・開発・提供」「AIおよびロボットなど、先端テクノロジーを活用したソリューションにおける営業・販売体制の強化」という3つのコア事業の拡大と加速に加え、トラスコ中山の事業戦略である流通プラットフォーム「トラスコプラットフォーム」の構築を目指す。さらに、「事業拡大に向けた人材の積極採用や育成、物流領域における新しいテクノロジーのリサーチや開発体制の強化」にも取り組んでゆく。

物流業界の流通モデルはこの10年間で大きく変化し、「消費者ニーズの高度化や多様化、配送短期化、人件費や運送費の高騰」に加え、物流施設管理の複雑さなどにより大変に厳しい環境になっているという。また、生産年齢人口の減少、新型コロナウイルスによるeコマースや物流への需要の拡大に対応するためにも、AIやロボットといったテクノロジーの必要性が高まっている。

GROUND代表取締役CEOの宮田啓友氏によると、GROUNDとトラスコ中山とは、2018年の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構による助成事業「AIシステム共同開発支援事業」の共同実証実験をきっかけに、トラスコ中山の物流センター「プラネット埼玉」への物流機器を導入するなど、さまざまな先進的な取り組みを行ってきた。「トラスコ中山様の流通プラットフォーム構築へ寄与し、両社の企業価値向上を目指します」と話している。

またトラスコ中山代表取締役社長の中山哲也氏は、「当社のあるべき姿を実現するにあたり、最新鋭の物流・ITソリューションは今後必要不可欠」であり、GROUNDとの資本業務提携により「最先端のテクノロジーを導入し、庫内の最適化に取り組んでまいります」と話している。

関連記事
国際物流プラットフォーム「Giho」を手がけるWillboxが9500万円を調達し事業を本格始動
在庫管理SaaSとECフルフィルメントで小売産業のDXを支援するロジクラが総額3.6億円の資金調達を実施
物流業界向けクラウドのHacobuが9.4億円調達、業界初のビッグデータ・ガバナンス体制立ち上げ

カテゴリー:ロボティクス
タグ:AI / 人工知能(用語)GROUND(企業)トラスコ中山(企業)物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)
資金調達(用語)日本(国・地域)

3Dビジョン対応の自律型倉庫用ロボットを開発するクロアチアのGideon Brothers

クロアチアのザグレブを拠点とするロボット・AI関連のスタートアップであるGideon Brothers(ギデオンブラザーズ、GB)は、Koch Industries Inc.のベンチャー・成長部門であるKoch Disruptive Technologies(KDT)がリードするシリーズAラウンドで3100万ドル(約34億円)を調達した。DB Schenker、Prologis Ventures、Rite-Hiteもラウンドに参加した。

今回のラウンドでは、Gideon Brothersの既存の投資家も複数参加した。Taavet Hinrikus氏(TransferWiseの共同創業者)、Pentland Ventures、Peaksjah、HCVC(Hardware Club)、Ivan Topčić(イワン・トプチッチ)氏、Nenad Bakić(ネナド・バキッチ)氏、Luca Ascani(ルカ・アスカニ)氏などだ。

今回の投資は、GBのAIと3Dビジョンを活用した「自律移動ロボット」(AMR)の開発と商品化を加速するために使用される。AMRは商品の運搬、集荷、受け入れなどの単純作業を行い、人間はより価値のある作業に専念できるようになる。

また、ドイツのミュンヘンとマサチューセッツ州ボストンにそれぞれオフィスを開設し、EUと米国で事業を拡大する。

Gideon Brothersの創業者たち(画像クレジット:Gideon Brothers)

Gideon Brothersは物流、倉庫、製造、小売業向けの水平・垂直方向のハンドリングプロセスに特化したロボットと、それに付随するソフトウェアプラットフォームを手がけている。理由は明らかだが、パンデミックの際には、サプライチェーンのロボット化の必要性が爆発的に高まった。

GBのCEOであるMatija Kopić(マティーヤ・コピック)氏は次のように述べた。「パンデミックにより、スマートオートメーションの導入が大幅に加速していますが、当社は前例のない市場の需要に対応する準備ができています。そのための最善の方法は、当社独自のソリューションを、世の中で最も大きく、最も要求の厳しい顧客と結びつけることです。当社の戦略的パートナーが抱える真の課題は、当社のロボットがすでに解決しつつあるものです。彼らは我々とともに世界で最も革新的な組織にロボットによる変革をもたらすすばらしい機会を捉えようとしています」。

さらにコピック氏は付け加えた。「このような先進的な業界のリーダーとのパートナーシップは当社のグローバルな活動の拡大に役立ちますが、我々は常にクロアチアのルーツに忠実であり続けます。それは私たちのスーパーパワーなのです。クロアチアのスタートアップシーンは急激に拡大しており、我々はこの国がロボットとAIの大国になるためにさらなる機会を引き出したいと考えています」。

Koch Disruptive Technologies(KDT)のディレクターであるAnnant Patel(アナント・パテル)氏は次のように述べた。「全世界で300以上のKochのオペレーションと生産ユニットを担うKDTは、最先端のAIと3D AMR技術により企業が倉庫や製造プロセスにアプローチする方法を著しく変革するGideon Brothersの技術の独自性と可能性を理解しています」。

DB Schenkerのコントラクト・ロジスティクス担当取締役のXavier Garijo(サビエ・ガリコ)氏は「Gideon Brothersとのパートナーシップにより、クラス最高のロボットやインテリジェント・マテリアル・ハンドリング・ソリューションへのアクセスが確保され、最も効率的な方法で顧客にサービスを提供することができます」と述べた。

GBの競争相手はSeegrid、Teradyne(MiR)、Vecna Robotics、Fetch Robotics、AutoGuide Mobile Robots、Geek+、Otto Motorsなどとなる。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Gideon Brothersクロアチア倉庫資金調達

画像クレジット:Gideon Brothers robots

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

工場や倉庫で活躍する産業用ロボットの制御システムを手がけるボストンのRealtime Roboticsが約34.6億円調達

ボストンを拠点とするRealtime Robotics(リアルタイム・ロボティクス)は米国時間6月3日朝、3140万ドル(約34億6000万円)の資金調達を発表した。これは同社がかなり前となる2019年末に1170万ドル(約12億9000万円)の調達を発表したシリーズAラウンドの一部で、投資家にはHAHN Automation(ハーン・オートメーション)、SAIC Capital(上汽投資)、Soundproof Ventures(サウンドプルーフ・ベンチャーズ)、Heroic Ventures(ヒロイック・ベンチャーズ)、SPARX Asset Management(スパークス・アセット・マネジメント)、Omron Ventures(オムロン・ベンチャーズ)、Toyota AI Ventures(トヨタAIベンチャーズ)、Scrum Ventures(スクラム・ベンチャーズ)、Duke Angels(デューク・エンジェルス)などが名を連ねている。

Realtime Roboticsは、産業用ロボットの制御システムを手がける数多くのスタートアップ企業の1つだ。具体的には、限られたプログラムのシステムを導入する企業を助け、一度に複数のシステムに機能する適応性の高い制御を提供することを目的としている。

今回のラウンドは、同社がこれまで調達した資金の約2倍に相当する。これは世界的な新型コロナウイルスの流行を背景に、ロボット工学に対する関心が高まっていることを示すものだ。新たな資金は同社の製品開発を加速させ、世界のより多くの市場に製品を提供するために使われることになる。

「世界有数の製造会社や自動化技術企業による今回の投資は、ロボット導入の価値提案を劇的に改善する当社の能力を証明するものです」と、Peter Howard(ピーター・ハワード)CEOはリリースで述べている。「導入の初期段階ですでに成功を実感した幅広い顧客やパートナーは、私たちと協力して機能やユーザー体験を改善し、当社の技術をエンジニアリング、工場、倉庫へ積極的に導入しようとしています」。

Realtime Roboticsが提供するシステムは、ピック&プレース、パッケージング、パレタイズなど、幅広い分野におけるさまざまな産業用ロボットのタスクに役立っている。

関連記事:

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Realtime Robotics資金調達工場倉庫

画像クレジット:Realtime Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

DHLが2022年までにLocus Roboticsのユニットを2000台配備する計画を発表

米国時間6月2日、DHLはマサチューセッツを拠点とするLocus Roboticsとの間ですでに進行しているパートナーシップを今後拡大すると発表した。2020年にDHLはLocusのロボットを1000台配備する計画を発表していた。この台数が2022年までに2000台と、2倍の計画になった。これによりDHLはLocusにとって他社に大差をつけて最大の顧客となる。

両社は2021年から共同でロボティクスの試験運用をしているが、コロナ禍でオートメーションに対する関心は大幅に高まった。その理由はたくさんあるが、中でもロボットは休業中も稼働し、世界的に感染が拡大していても感染を媒介する恐れが低いことが挙げられる。

DHLのグローバルサプライチェーンCOO / CIOであるMarkus Voss(マルクス・フォス)氏は、以下のように数字を示している。

これまでに500台以上のピッキング支援ロボットが米国、ヨーロッパ、英国のDHLの倉庫ですでに実際に使用されています。2021年末までにさらに500台のロボットを20カ所以上の拠点に追加する予定です。最新の倉庫業務において、共同開発しているピッキング技術の有効性と信頼性は明らかに実証されました。2022年にさらに配備する予定のロボットについても、導入拠点は具体的な実装ロードマップですでに決まっています。DHLの倉庫におけるピッキング支援ロボットの全般的な可能性はさらに大きく、我々はLocus Roboticsとともに設定した目標を達成できると確信しています。

LocusはDHLの複数のロボティクスパートナーの1社だ。DHLは2018年後半にこの分野に3億ドル(約329億円)を投資する計画を発表し、2020年時点では全米の倉庫に20万台以上のロボットを配備したと述べた。これはライバルであるAmazonのロボティクスの取り組みに匹敵する数字だ。

Locusはこの計画に加え、現金の調達でも問題はなかったようだ。2021年2月に同社は10億ドル(約1097億円)のバリュエーションで1億5000万ドル(約164億5000万円)のシリーズEを発表した。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:DHLLocus Robotics物流倉庫資金調達

画像クレジット:Locus Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

Alphabet傘下で2021年初めに解散したLoon元トップがロボット配達Starship TechnologiesのCEOに

自律走行ロボティクス会社Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)が、新しいCEOを迎える。同社は米国時間6月1日、ロボティクス配達サービスの拡大を追求する中でAlphabet(アルファベット)傘下のLoon(ルーン)の元CEOであるAlastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏がStarship Technologiesを率いると発表した。

ウェストガース氏はこの前に、高高度の気球経由でブロードバンドを提供するというAlphabetの実験のLoonを2017年から率いていた。同社は2021年初めに解散した。解散を発表した最後のブログの中で同社は「商業化の実現可能性への道が思った以上に長く、リスクをともなうものであることがわかりました」と述べた。Loonで働く前にウェストガース氏はワイヤレスアンテナ会社Quintel Solutionsを率い、そして通信会社Nortel で副社長を、 Bell Mobilityではエンジニアリングのディレクターを務めた。

同氏はStarship Technologiesが事業を急拡大する中で同社に加わる。2020年初め、Starshipはいくつかの地域と大学のキャンパスで自律走行ロボット数百台を運用していた。同社は2021年5月、パンデミック以来、配達件数は4倍に増え、グローバルで150万回のマイルストーンを達成した、と明らかにした。

「自律走行配達は知っての通りロジスティックを変えていて、世界中の何十億という人にインパクトを与えています」とウェストガース氏は声明文で述べた。「Starshipのチームは2014年にロボット配達部門を創出して以来、何年もの間、テクノロジーとオペレーションを開発・洗練してきました。今回の機会はうれしいものであり、この業界をリードする便利で安全、そして環境に優しい配達サービスにより多くの人がアクセスできるよう、Starshipがキャンパスと地域で事業を拡大するのをサポートすることを楽しみにしています」。

Starshipの前CEOであるLex Bayer(レックス・バイエル)氏は同社を3年間率いた後、2020年12月に密かに社を去った。暫定CEOを務めた共同創業者のAhti Heinla(アーティ・ヘインラ)氏はCTOとなる。

関連記事
Alphabetが成層圏気球によるインターネット接続プロジェクトLoonを閉鎖
自動運転ロボのStarship Technologiesが17.7億円調達、今夏までに100の大学で事業展開へ

カテゴリー:ロボティクス
タグ:AlphabetLoonStarship Technologies自律運転ロジスティクスロボット配達

画像クレジット:Starship Technologies under a license.

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

農地の石を除去するロボットを開発するTerraClearが約27.3億円を調達

農業用ロボットと聞いて、石を拾うロボットは最初に思い浮かばないだろう。それは当然だ。果物や野菜の収穫、除草、畑の手入れなどを自動化しようとしている企業は数多い。だが、石は多くの農家にとって依然として大きな問題だ。大きくて重いから除去するのが大変だし、放置していると機械を壊してしまう恐れもある。

「これは、私自身が人生をかけて取り組んでいることです」と、TerraClear(テラクリア)のCEOであるBrent Frei(ブレント・フライ)氏は、プレスリリースで述べている。「世界には4億エーカー以上の耕作に適した土地があり、この問題に対する費用対効果と生産性の高いソリューションを待ち望んでいます。このような反復的な作業は、自動化するのに最適な対象であり、我々の技術を農地に導入すれば、植え付けの準備に必要な労働力と時間を劇的に削減させることができます」。

ワシントン州ベルビューを拠点とするTerraClearは、1時間あたり最大400個の石を拾い上げ、最大300ポンド(約136kg)の石を移動させることができる、自動化されたロボットソリューションを作り上げた。2019年に製品開発を加速させるために600万ドル(約6億5500万円)の資金を調達した同社は、米国時間5月26日、シリーズAラウンドで2500万ドル(約27億3000万円)を調達したと発表した。

Madrona Venture Group(マドロナ・ベンチャー・グループ)が主導したこのラウンドによって、同社がこれまでに調達した資金の総額は3800万ドル(約41億5000万円)に達した。今回の資金は2022年に向けて、生産と販売の拡大および従業員の増員に充てられる。TerraClearのロボット「Rock Picker(ロックピッカー)」は現在、予約受付中だ。同社のシステムは、マッピングサービスやサードパーティのドローンサービスと連携し、AIを使って大きな石を識別して、投入されたロボットがこれらの石を除去することができる。

関連記事
ブロッコリーの収穫期をドローン画像とAI解析で診断、スカイマティクスの葉色解析サービス「いろは」が生育診断提供開始
スマホ活用・画像解析AIによるイチゴの高精度生育解析の検証実験結果をキヤノンITSが報告
タイヤ交換だけで農業用一輪車・ねこ車を電動化する「E-Cat Kit」が広島県JA尾道市で販売開始
田んぼの自動抑草ロボットを開発する有機米デザインが2億円を調達し実用化を加速
コロナ禍でむしろ育ち盛りの「インドア農業」Boweryがセレブの支援あり約326億円調達

カテゴリー:ロボティクス
タグ:TerraClear農業資金調達

画像クレジット:TerraClear

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

M5Stackを搭載するROS対応学習用6軸ロボットアーム「myCobot」がスイッチサイエンスより発売

M5Stackを搭載するROS対応学習用6軸ロボットアーム「myCobot」がスイッチサイエンスより発売

スイッチサイエンスは5月25日、中国深センの産業用ロボットメーカーElephant Robotics(エレファント・ロボティクス)が開発した低価格なロボットアーム「myCobot」の発売を国内で初めて開始したと発表した。

今回発売されたのは、ロボットアーム本体の「myCobot 280」と、それを固定する「ベース」2種、アーム先端に取り付けて使う「エンドエフェクター」2種となる。

myCobot 280は、小型、安価、軽量な学習用ロボットアーム。Elephant Roboticsの主力製品である産業用ロボットアームと基本的に同じ6軸構造であり、制御システムには日本でも広く普及しているM5Stack(エムファイブスタック)シリーズの「Basic」が使われている。また、ロボット開発用のソフトウェアプラットフォームROS(ロボット・オペレーティング・システム)にも対応している。

プログラミングは、Elephant Roboticsが提供する総合ロボット制御環境「myStudio」で行えるほか、ROS、Arduino IDE、同社の産業用ロボット制御環境「RobotFlow」も使える。

M5Stackとは、ArduinoやRaspberry Piのような開発ボードのこと。ただし他のボードと異なり、液晶ディスプレイ、スピーカー、USBポート、microSDカードスロットを備え、BluetoothとWi-Fiの接続も可能な高機能なもので、初心者にも比較的簡単に扱える。

アームの先端には、M5Stackシリーズの最小ユニットであるATOM Matrixが搭載され、補助的なディスプレイとして使うこともできる。

オプションのエンドエフェクター(アームの先端で物を使うなどの実際の作業を行う装置)には、小さな物を掴める「myCobot用グリッパー」と、紙などグリッパーでは掴みにくいものを空気圧で持ち上げる「myCobot用吸引ポンプ」が用意されている。

myCobot用グリッパー

myCobot用吸引ポンプ

myCobot 280を固定するベースは、吸盤を利用する「myCobot用フラットベース」と、クランプで固定する「myCobot用Gベース(クランプ)」の2つ。

myCobot用フラットベース

myCobot用Gベース(クランプ)

myCobotの仕様は次のとおり。

  • 軸数:6軸
  • ペイロード:250g
  • アーム長:350mm
  • 作業半径:280mm
  • 精度:±0.5mm
  • 重量:850g
  • 電源電圧:12V
  • 動作温度:-5°〜45°C
  • USB Type-Cコネクター(M5Stack Basic本体)

価格は次のとおり(すべて税込み)。

  • myCobot 280本体:8万5140円
  • myCobot用フラットベース:7227円
  • myCobot用Gベース(クランプ):7227円
  • myCobot用グリッパー:1万4465円
  • myCobot用吸引ポンプ:1万6445円

スイッチサイエンス経由でメーカー保証が受けられる。

関連記事
Linuxが動作する高性能AIカメラモジュール「M5Stack UnitV2 AI カメラ」が税込9592円で近日販売
5852円のAWS向けIoT開発キット「M5Stack Core2 for AWS」が販売開始

カテゴリー:ロボティクス
タグ:M5StackElephant Robotics(企業)スイッチサイエンス電子工作(用語)ROS(製品・サービス)日本(国・地域)

田んぼの自動抑草ロボットを開発する有機米デザインが2億円を調達し実用化を加速

田んぼの自動抑草ロボットを開発する有機米デザインが2億円を調達し実用化を加速

山形県を拠点とする「地方都市の課題を希望に変える街づくり会社」ヤマタガデザインのグループ会社、有機米デザイン(本社は東京都小金井市)は5月25日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億円の資金調達を行ったと発表した。引受先はTDK。この増資により資本金などの合計は、資本準備金1億3908万円を含め3億1626万円となった。

有機米デザインは、田んぼの除草の手間を最小化するための自動抑草ロボットを開発するなど、有機米栽培ノウハウの確立に向けた研究開発を行う企業。2012年、元日産自動車のエンジニア2人を中心に始まった自動抑草ロボットの開発は、ヤマガタデザインに母体が移行し、やがて実用化を促進するため、2019年にヤマガタデザインの100%出資により有機米デザインとして独立した。同時に東京農工大学との共同研究契約を締結し、2020年には11都県の農家と連携して実験を重ねた。

自動抑草ロボットは、代掻き(しろかき。田んぼに水を張り土を攪拌して平らにならす作業)の後の田んぼを自律航行して、水をかき混ぜ泥を巻き上げることで水中に差し込む光をさえぎり、水面下の雑草の成長を抑制するというもの。除草剤を使用しない米の有機栽培は、慣行農法にくらべて10アールあたりの粗収入が2倍近くになる一方で、労力が大きく増える。特に除草にかかる労働時間は5倍に上るといわれているため、自動化への期待が高まっているとのこと。これまでの実験で自動抑草効果が確認され、同社では量産化に向けたさらなる改良を加えているところだ。現在は、条件の異なる全国17都府県に75台のロボットを投入し、実証実験を行っている。

TDKとは、2019年12月から協業の可能性を検討し始め、2020年4月から実証実験などで連携してきた。今後はTDKのバッテリーマネージメント技術や量産技術などの開発面でサポートを受け、数年以内の実用化、事業化を目指すという。

関連記事
「宇宙ビッグデータ米」が2021年中に販売予定、宇宙領域の天地人・農業IoTの笑農和・米卸の神明が栽培着手
米の銘柄判定をAI搭載スマホアプリで実現する「RiceTagプロジェクト」の実証実験が成功
水田向けスマート農業サービス「paditch」開発・運営を手がける笑農和が1億円を調達
産業用リモートセンシングのスカイマティクスが日本初のAI米粒等級解析アプリ「らいす」公開

カテゴリー:ロボティクス
タグ:農業 / アグリテック(用語)資金調達(用語)食品(用語)有機米デザイン(企業)ヤマタガデザイン(企業)日本(国・地域)

【コラム】警察犬ロボのパトロールが嫌ならCCOPS法の検討を

編集部注:本稿の著者であるAron Solomon(アロン・ソロモン)氏は、NextLevel.comのデジタル戦略責任者であり、モントリオールのマギル大学Desautels Faculty of Managementのビジネスマネジメントの非常勤教授。

ーーー

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボット「犬」やその類似製品は、ハワイ、マサチューセッツ、ニューヨークの警察署ですでに採用されている。ベールに包まれた実験とあって、これらの強力な監視装置を使用する利点やコストについて警察からの回答はほとんどない。

米国自由人権協会(The American Civil Liberties Union、ACLU)は、 CCOPS(警察の監視に対する地域社会による制御)に関する立場表明書で、監視技術の透明性を促進し、市民の権利と自由を保護するための決議を提言した。これまでに米国の19の都市がCCOPS法案を可決させている。つまり他のすべての地域社会では、事実上、警察による監視技術の使用の透明性は必要とされていないことになる。

このようにさまざまな場面で新しい未完成技術を使用できることは、多くの人にとって問題となる可能性がある。世界的に有名な人工知能の専門家であり、TuraltのCTO(最高技術責任者)のStuart Watt(スチュアート・ワット)氏はこれに不快感を示している。

「こうした指針とロボット犬、そして、その実情には愕然としています。膨大な資金の浪費であり、実際の警察業務の妨げとなっているのです」とワット氏は述べた。「間違いなく、地域社会はこれらに関与していく必要があります。正直言って、警察がどう考えているのかさえわかりません。物理的な監視システムを使って思いとどまらせるためでしょうか?それとも、実際に、ある時点で行われる何らかの監視に人々を備えさせているのでしょうか?」

「警察の大部分は『保護し、奉仕する』ことをすべて忘れてしまい、それを実行していません」とワット氏は付け加えた。「もし人工知能を使ってホームレス、麻薬中毒者、性労働者、貧困層、不当に攻撃されているマイノリティのような弱者を実際に保護し、奉仕することができるなら、その方がはるかに良いでしょう。人工知能に資金を費やす必要があるならば、人々を助けるために使うべきです」。

米国自由人権協会の主張は、ワット氏の提言とまったく同じだ。国中の市議会への提言で、米国自由人権協会は次のように明確に述べている。

市議会による監視技術に関する資金、導入、または使用の承認は、監視技術の利点がコストを上回り、その提案が市民の自由と権利を保護し、監視技術の使用や配備が、差別や見解要因に基づくことなく、いかなる地域社会やグループにも差別的インパクトがないと判断される場合にのみ行われるものとしなければならない。

Team Lawで特別顧問を務める、弁護士のAnthony Gualano(アンソニー・グアラノ)氏は、法的観点からCCOPS法案は多くの面で理に適っていると考えている。

「全国各地で警察による監視技術の使用が増えるにつれて、人々を守るために使用する技術はより強力で、効果の高いものとなってきます。使われる技術やその使用方法を確認するために、透明性を義務付ける法律が必要です」。

このボストン・ダイナミクスの犬だけでなく、未来のスーパーテック犬のすべてについて心配している人にとって現在の法的環境が問題なのは、地域社会が大手テクノロジー企業や政府が関わる実験場となるのを本質的に認めているからだ。

ちょうど先月である2021年4月、世論の圧力によって、ニューヨーク市警本部はDigidog(デジドッグ)という非常に控えめな名前のロボット犬の使用停止を余儀なくされた。市民からの反発のため、テクノロジー犬が一時帰休措置にされた後の3月に、ニューヨーク市警は公営住宅でそれを使用した。予想通り、これに端を発して、ニューヨークでのこうしたテクノロジーの当面の扱いに関する議論がもたらされた。

ニューヨーク・タイムズはこれを目の当たりにして「過度に攻撃的な治安維持活動の悲惨な例として批判者の注目を集め、ニューヨーク市警はこのデバイスを予定よりも早く返却することになるだろう」と的確に表現した。

これらのバイオニックドッグは犯罪を減少させるのには十分だが、それを使おうとしている警察は、まずは多くの広報活動を行う必要がある。警察は積極的かつ前向きにCCOPSの議論に参加し、明日、翌月、そして、今から数年後に使用する可能性があるテクノロジーの詳細やそれら(およびロボット)の使用方法を説明することから始めるべきだろう。

関連記事
ロボティクスの先駆者Boston DynamicsのCEOがヒュンダイによる買収後の展望を語る
シカゴ警察の武力行使における黒人警官と白人警官の差が新データで明らかに
反人種差別デモの発端となったミネアポリス市が警察による顔認識技術の使用を禁止

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics警察アメリカ米国自由人権協会コラム

画像クレジット:Harry Murphy / Getty Images

原文へ

(文:Aron Solomon、翻訳:Dragonfly)

街のレストランにピザをカットするロボットがやってくる

本当の話。週末に筆者はとある人とレストランのロボティクスについて話していた。人々が思い浮かべるのが難しいコンセプトだ。それは当然のことだろう。何といっても、ときに文字どおりロボットアームがハンバーガーをひっくり返すという分野における、真に一般的に受け入れられているフォームファクターはない。

筆者の即座の返事は「ピザを作る大型のキオスク」というものだった。正直、それは真実からそれほどかけ離れてはいない。そうした種の自己完結型の組み立てラインロボットはおそらく、我々がこの分野で持つべき総意にほぼ近づいている。それらのロボットは最小限の相互作用で動くようにデザインされていて、従業員の関与は注文の入力、材料の追加、清掃に限られている。

ピザの場合は2要素から成る。まず人々はピザが好きだ。ありふれていて、しかも人気とあって、自動化したい最初の食べ物の1つとなるのは理に適っている。2つ目に、自動化が比較的簡単なことだ。ピザ作りのプロセスは一貫していて制約はない。フォローするのが簡単なステップバイステップのインストラクションに分解することができる。

筆者は先週、2つのレストランロボットを取り上げた。レストランロボットはパンデミック中にかなりの関心を集めた分野だ。というのも、新型コロナウイルスがどのように拡散するのかを科学が明らかにするにつれ、レストランは人間が食べ物に接触するのを最小限に抑える方法を模索し、人手不足の必要不可欠なサービスだったからだ。

Picnic(ピクニック)は上の記述にかなり当てはまる。言葉どおり、大きなピザ作りボックスだ。今週、シアトル拠点の同社は、1630万ドル(約18億円)の資金調達を発表した。ここには2020年秋の300万ドル(約3億円)のブリッジが含まれる。同社はレストラン、そして学校やスタジアム、病院のような人々が集う場所(覚えているだろうか?)にターゲットを絞っている。この分野ではひと握りの企業が事業を展開していて、以前Zumeとして知られこの分野を切り開いたXRoboticsも含まれる。

関連記事:XRoboticsはピザロボットの夢を諦めず正式発表に漕ぎ着ける、1時間で最大150枚、20種類以上のトッピングに対応

Chef Roboticsは今週、770万ドル(約8億4000万円)の資金調達を発表した。最終的なロボットがどんなものになるのかは企業秘密のためまだ伝えることはできない。同社は以下のように述べている。

Chefは、顧客が最小限のハードウェア変更で何千もの異なる種の食べ物を扱えるよう、人間のフレキシビリティを模倣するようデザインされています。Chefはより多くの材料の扱い方を学ぶことができ、改善も図れる人工知能を使っています。これにより顧客はメニューを頻繁に変える、といったことができます。加えて、Chefのモジュラーアーキテクチャによって、スタッフをさらに雇用してそうしていたように、すばやく業務を拡大することができます(しかし人間と違ってChefは時間通りに出勤し、休憩を必要としません)。

そこまでたどり着く企業はあまりないが、モジュール性は興味深い。こうした企業の多くが模索しているものだ。シンプルな反復作業を自動化するロボットを入手できれば、テクノロジーを異なる食べ物に適用できる交換可能なハードウェアを提供できるかもしれない。

今週あった他の目をひく資金調達にはMech-Mind robotsがある。北京拠点の同社はシリーズCを発表した。具体的な数字は公開していないが、新たな資金調達によって累計調達額が1億ドル(約109億円)を超えたと言っていて、またこの前に7900万ドル(約86億円)を調達した(2020年の1500万ドル[約16億円]のシリーズBを含む)ことからおおよそを推定できる。

Mech-Mindはさまざまな製造タスクを専門とする産業ロボットとAIの会社だ。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:PicnicChef Robotics資金調達ピザレストラン

画像クレジット:Picnic

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

製造業の米国回帰を目指して溶接ロボットのPath Roboticsが56億円相当を調達

オハイオ州コロンバスのPath Roboticsが今日(米国時間5/3)、5600万ドルのシリーズCを完了したことを発表した。このラウンドはAdditionがリードし、Drive CapitalとBasis SetとLemnos Labが参加して、この溶接ロボットの企業の総資本を7100万ドルとした。

製造業の自動化という大きなパズルに、同社は溶接ロボットというピースを加えた。そのシステムはスキャン操作とコンピュータービジョンとAIを利用して、自分自身をさまざまなパーツに適応させる。パーツのサイズを理解するだけなら、それは不完全な科学だ。さらに難しいのは、反射性の強い金属を相手にするときは、ロボット工学のちょっとおもしろい問題を解かなければならないことだ。

CEOのAndrew Lonsberry氏がこのニュースに付随するリリースで次のように述べている: 「今の工業ロボットは自分の環境とやるべき仕事を理解する能力が乏しい。多くのロボットが単に言われたことを繰り返すだけで、自分を良くしていく能力がない。弊社の目標は、これを変えることだ。製造業の未来は、能力の高いロボットにかかっている」。

同社は、溶接工の不足に対応したい、と言っている。全米溶接協会によると、2024年には不足数が40万に達するそうだ。パンデミックによって多くの企業が仕事を国内でこなしたい、と思うようになっている。ここ数十年続いたオフショアリングの傾向に、そろそろ歯止めをかけたいのだ。

関連記事: Enhanced computer vision, sensors raise manufacturing stakes for robots as a service(未訳、有料記事)

(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Path Robotics

[原文へ]

ヒザを痛めた人用のスマート装具をRoam Roboticsが開発

ロボットの外骨格を作っている企業はとても多い。むしろそれは、この分野のもっとも活気あるカテゴリーだ。それには理由がある。この種の技術には、人間の仕事や動きや機能再生努力の未来に重要な影響を及ぼす力がある。

このカテゴリーにはまた、驚くほど多種類のソリューションがあり、まるでSFのようなSarcosもあれば、他方にはRoam Roboticsがある。Roamのソリューションは実は、ウェアラブルをウェアラブルロボットに仕立てている。つまり具体的には、同社はロボット的な補助装具を金属やプラスチックでなくファブリックから作る。

そうすると結果的にはもっと工業的なソリューションの強みの一部を失うことになるが、日常的利用により適しているとも言える。だからこそ、ロボットのスマートニー(コンピューター内蔵のスマートヒザ)による整形術が、極めて理に適っているといえるようになる。この製品は最近、Class 1の医療器具としてFDAに承認されたが、AIを利用する適応化技術により装着者の動きを関知して、それに合わせて自分を調整する。

画像クレジット:Roam Robotics

共同創業者でCEOのTim Swift(ティム・スウィフト)氏が、ニュースと同時に出た発表声明で次のように述べている。「Roamは製品やサービスがまだほとんど発達していない市場に奉仕しています。地球の人口の20%ほどが、体の動きに不自由があり、医学の進歩で人間の寿命が長くなるとその数は増える一方です。ウェアラブルロボットへの弊社のアプローチは人体の動きと完全に滑らかにフィットし、人びとにより健康で幸せで活動的な人生を届けることができ、物理的な制約に邪魔されることがありません」。

この製品は同社のスキーヤー用や軍用製品の仲間入りをし、階段の昇降や、坐った姿勢から立ち上がるなどの動きを検出する埋め込みセンサーを利用している。他に電源装置と、運動をアシストするための動きを作り出すエアーコンプレッサーが使われている。

この装置は予約受付中で、発売は2021年夏の終わり頃になる。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Roam Robotics外骨格

画像クレジット:Roam Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

全エンジニアがGoogle出身のスマイルロボがアーム付搬送ロボットによる配膳・下膳の自動化に向け実環境で試験運用実施

全エンジニアがGoogle出身のスマイルロボがアーム付搬送ロボットによる配膳・下膳の自動化に向け実環境で試験運用実施

スマイルロボティクス(スマイルロボ)は4月28日、野口観光グループの野口リゾートマネジメントが運営する「源泉のお宿 湯河原千代田荘」のメインダイニングさくらにおいて、開発中の「アーム付搬送ロボットACUR-C」(アキュラシー)の試験運用を実施したと発表した。

ACUR-C(Autonomous Clear Up Robot Type-C)とは、配膳・下膳を全自動・非対面で行えるようにした開発中のロボット。これにより、スタッフが「人にしかできないおもてなし業務」に注力することで、オペレーション改善および売上・利益貢献を目指すという。

特徴としては、「既存の配膳ロボットとは異なり『ロボットアーム』を有する」「既存の配膳ロボット同様に『自律移動』が可能」の2点を挙げている。これらにより「つかむ」「はこぶ」を完全自動で行い、店員も飲食客も皿の乗せ換えをする必要がなくなり、配膳・下膳の無人化を実現できる。

試験運用の内容は、施設側のオペレーションに合わせて「下膳」にフォーカスして実施した(ロボット自体は配膳も対応可能)。具体的な動作は以下の通り。

  1. タブレットでテーブル番号を指示
  2. ロボットが自律移動で障害物を回避しながら指定テーブルに移動
  3. アームを使ってトレイを体内の棚に回収
  4. 別の空トレイをテーブルに設置(動画では割愛)
  5. 再び自律移動で障害物を回避しながら所定の下膳口まで移動
  6. 回収したトレイを下膳口に置く

全エンジニアがGoogle出身のスマイルロボがアーム付搬送ロボットによる配膳・下膳の自動化に向け実環境で試験運用実施

飲食客が食べ終えた後の実際の食器には、汁物が残っていたり、バランス悪く積まれていたりなどもあったが、落下させるなどのトラブルもなく、想定通り一連の動作を実現できたという。

今回の試験運用で確認できた各種技術の有効性と新たに得られた課題を踏まえて、引き続き同社は、ロボットの社会実装・実用化に向け、様々な環境下での試験運用を行い、追加開発を行うとしている。またアーム付搬送ロボットに限らず、ロボティクス技術の社会実装・実用化を見据えた開発全般(共同開発・受託開発含む)も積極的に進めるとしている。

スマイルロボティクスは「ロボット技術で全世界に笑顔を」をミッションとする、2019年に創業したロボットスタートアップ。元Google(Alphabet傘下でロボットの研究開発を手がけていた「SCHAFT」)のロボットエンジニアが集まり立ち上げたという。

関連記事
全エンジニアがGoogle出身のスマイルロボがNEDOスタートアップ事業化支援公募で採択、新たな資金調達も実施
“下膳ロボ”で飲食店の片付けを自動化、Google出身エンジニア創業のスマイルロボティクスが資金調達
漫画の自動翻訳、手術支援AI、下膳ロボ、昆虫食など、東大IPC起業支援プログラムが第4回目の支援先を発表

カテゴリー:ロボティクス
タグ:飲食業界(用語)スマイルロボティクス(企業)ロボット(用語)日本(国・地域)

警備ロボット「Ugo」を手がけるMira Roboticsがugoに社名を変更し2.25億円をシリーズA調達

警備ロボット「Ugo」を手がけるMira Roboticsがugoに社名を変更し2.25億円をシリーズA調達

警備アバターロボット「Ugo」(ユーゴー)を手がけるMira Robotics(ミラ・ロボティクス)は、5月より「ugo株式会社」と社名を変更。本社を神奈川県川崎市から東京都千代田区に移し、ロボット開発、生産、サービス提供体制の強化、さらに警備分野以外への展開をはかる。

それに先立ち同社は、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億2500万円の資金調達を実施した。引受先は三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合、大成、きぼう投資事業有限責任組合、およびKSP6号投資事業有限責任組合。シードラウンド以来の総調達額は3億8500万円となった。

またサポートする経営陣も強化された。東京大学名誉教授、工学博士、元日本ロボット学会会長として50年間にわたり日本のロボット研究を牽引してきた佐藤知正氏がCPS(サイバーフィジカルシステム)戦略アドバイザーに、AIの社会実装を推進する株式会社ABEJA(アベジャ)の元CTOであり現在はフリーランスとして企業アドバイザーや研究者として活躍する緒方貴紀氏がAI戦略アドバイザーに、三菱UFJキャピタル株式会社にて日本、イスラエル、アメリカのテック系スタートアップへの投資事業を担当してきた経歴を持つ新谷圭次郎氏が社外取締役に、それぞれ就任する。

今回の社名変更は、「人とロボの融合でサステナブルなワークスタイルを実現する」という同社の企業使命にもとづき、製品と企業のブランディングを統一するためのものだという。

関連記事
京急アクセラレーションプログラム第3期の参加企業10社が決定、with/afterコロナの事業共創が始まる
洗濯や整理整頓が得意な家事ロボ、今夏に試験導入

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ugo(企業・製品)資金調達(用語)日本(国・地域)

物流や倉庫で使用されるロボット用コンピュータービジョンソフトのPlus Oneが約36億円調達

サンアントニオを拠点とするPlus One Roboticsは米国時間4月27日、3300万ドル(約36億円)のシリーズBを発表した。このラウンドは2018年に発表した830万ドル(約9億円)のシリーズAに続くもので、同社の資金調達総額は4000万ドル(約43億円)を超えた。今回のラウンドはMcRock CapitalとTransLink Venturesが主導し、既存の投資家にくわえてBMWi Ventures、Kensington Capital Partners、Ironspring Venturesが参加している。

2016年に設立されたPlus Oneは、物流や倉庫で使用されるロボット用コンピュータービジョンソフトウェアに主に注力している。多くの企業がバックエンドの自動化を目指す中で、この分野は明らかに注目を集めているカテゴリーだ。具体的にはこのシステムはさまざまなロボットアームやグリッパーに対応できるように設計されており、エンドユーザーの異なるニーズを満たすことができる。

Plus Oneは今回の資金調達により、急速に高まるロボット需要に対応するため海外での事業拡大を計画している。またこのシステムでは、最大50台のロボットを一度に制御するグループ管理も可能だ。

CEO兼共同創業者のErik Nieves(エリック・ニーブス)氏は「私たちは国内外の顧客とともに成長していくことに興奮しています」。と述べている。「この強力な組み合わせにより、Plus Oneは今後も国際的なインストールベースを拡大し続けることになります」。

今回のこのラウンドではMcRock CapitalのWhitney Rockley(ホイットニー・ロックリー)氏とTransLinkのToshi Otani(トシ・オオタニ)氏がPlus Oneの取締役に加わった。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Plus One Robotics物流倉庫資金調達

画像クレジット:Plus One Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

四足歩行ロボット「ANYmal」は階段を上り人の代わりに現場を24時間パトロールする

スイスのロボット企業ANYboticsについては何年にもわたって取り上げてきた。同社は四足歩行ロボットの分野で独自の取り組みを行っており、当然のことながらBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のSpotと比較されてきた。もちろん先述したように、このカテゴリーでの同社の取り組みは数年前から続いており、収斂進化を遂げるケースもあるだろう。

米国時間4月21日、ANYboticsはANYmalを次のレベルに引き上げる準備ができたと発表した。同社はこのロボットを「エンド・ツー・エンドのロボット検査ソリューション」と位置づけている。具体的には、このロボットはエネルギーや産業プラントのような場所を検査するために設計されており、人間が24時間365日現場にいることが理想的ではない場所をパトロールする。

画像クレジット:ANYbotics

ロボットの上部にはカスタマイズ可能なペイロードが搭載されており、視覚、聴覚、熱などさまざまな検査用センサーが搭載される。オンボードカメラは遠隔操作でパンやチルトが可能で、エリアをより鮮明に映し出すことができる。

ANYmalは階段を上ったり、従来の車輪つきロボットでは入れないような場所にも入っていったりできる。さらに自律的に検査を行い、バッテリー残量が少なくなると充電ドックに戻ることができる。

現在このロボットは試験的に導入されているが、ANYboticsはこのロボットの予約販売も開始している。そして、2021年の下半期には顧客への納入を開始する予定だ。また、同社はクライアントをスピードアップするための一種のオンボーディングを提供している。

画像クレジット:ANYbotics

「ANYboticsの専門家が窓口となり、お客様と密接に連携して自動化すべきタスクを評価し、自律移動型検査ロボットの導入に向けて組織を準備します」と、リリースでは述べられている。「チームはシミュレーション、オンサイトでのデモンストレーション、および長期的なパイロット導入における実現可能性と影響を確認します。導入ロードマップが確立された後、チームはお客様の試運転のトレーニングを行い、施設全体にシステムの拡大をサポートします」。

関連記事:ロボティクスの先駆者Boston DynamicsのCEOがヒュンダイによる買収後の展望を語る

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ANYbotics四足歩行ロボット

画像クレジット:ANYbotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

今週のロボットニュースまとめ:ピザとピックアップと泳ぐヘビ、医療と食品に大きな資金提供

ロボット関連のおもしろい記事が少ない週もある。だが今週は明らかに豊作だった。実際、この7日間、ロボット関連の情報の洪水についていくのが少し大変だった。サンプル数は少ないものの、このカテゴリーへの投資意欲がまだ白熱していると雰囲気を伝えるものとして、受け取っておきたいと思う。

今週は、投資活動がロボットの全領域に及んだ週となった。外科手術、フルフィルメント、農業関連の企業が並んで出資を受け、食料品やフードデリバリーの分野では重要なパートナーシップが結ばれている。それに加えて、水中ヘビロボットもいる!興味深いものだらけだ。

画像クレジット:Memic

まずは、このMemic(メミック)の大型だったシリーズDの紹介から始めよう。Memicは、医療用ロボット企業にとって大きな一歩となるFDA(米国食品医薬品局)の認可を取得した後、Peregrine VenturesとCerosが主導する9600万ドル(約104億5000万円)の資金調達を発表した。今回のラウンドは、同社のこれまでの資金調達額である3180万ドル(約34億6000万円)の3倍以上となる。そのHominis(ホミニス)プラットフォームは現在、経膣処置用にデザインされているが、同社は他の手術にも拡大することを検討している。

関連記事:手術支援ロボットを手がけるMemicが約105億円の資金を調達

それよりもずっと新しい企業のはるかに小規模なラウンドとして、Moray Media(モレイ・メディア)が、2021年初めに発表したものよりも300万ドル(約3億3000万円)多い570万ドル(約6億2000万円)の資金調達を発表した。同社が提供するCoral(コーラル)システムは、経カテーテルによる僧帽弁修復用にデザインされている。類似の多くのシステムと同様に、最終的な目標は、さまざまなスキルをもつ施術者による手術の有効性を高めることだ。

共同創業者でCEOのMark Barrish(マーク・バリッシュ)氏はこう語る。

私たちのCoralプラットフォームは、あらゆるスキルレベルのインターベンショニスト(低侵襲治療医)が、単に処置を行えるだけでなく、コストパフォーマンス高い方法で行えるようにデザインされています。これによって現在治療を受けられない何百万人もの患者の方が、必要な救命処置を受けられるようにすることを目標としているのです。

画像クレジット:Pickle

倉庫、フルフィルメントの分野では、MITのスタートアップPickle(ピックル)が今週ステルス状態から脱して、575万ドル(約6億2600万円)を調達したことをTechCrunchに伝えてきた。ダジャレ系の名前はさておき(他に「Dill(ディル)」というロボットもある)、同社の技術は1時間に1600個の箱をピックアップすることが可能で、同社はそれを「競合他社の2倍のスピード」だと主張している。

関連記事:荷降ろしロボットを手がけるMITのスピンオフPickleが約6200万円の資金を調達

シードラウンドであることからわかるように、まだほんの初期段階だ。しかし、同社にしてみれば、すべてがあっという間にまとまってきたようだ。6月にはピッキングシステムの予約受付を開始し、2022年初頭での出荷を予定している。

ピッキングシステムといえば、RightHand Robotics(ライトハンド・ロボティクス)が同社にとって第3世代となるロボットを発表した。この自律型システムは、従来のシステムよりも高速で、より幅広い対象をピックアップできるように設計されている。前者の高速動作は確かにハードルが高い。動作スピードは、以前から同社の特徴の1つだったが、今回の高速化は、部分的には、6倍の速度でデータを処理できる高速なGPUのおかげでもある。

画像クレジット:Nuro

サービスパートナーシップを通じて、ロボットがより多くの人々に関係できることに関する、今週の注目すべき2つの記事を紹介しよう。米国時間4月12日、ピザ大手のDomino’s(ドミノ)は、Nuro(ニューロ)との提携による、ロボットデリバリーの展開を発表した。ヒューストン在住の顧客は、同社のロボット「R2」によるピザの配達を受けることができる。ウッドランドハイツ店へピザを注文する際には、実際に「ボット」をリクエストすることができる。

関連記事:ドミノ・ピザがヒューストンで無人のピザ配達を開始、自律配達車両スタートアップNuroと提携

画像クレジット :Kroger

一方、スーパーマーケットチェーンのKroger(クローガー)は、Ocado(オカド)との契約がようやく締結され、シンシナティ郊外に巨大な倉庫を開設した。同社によると、37万5000平方フィート(約3万5000平方メートル)のスペースに、1000台のロボットと400人の人間の労働者を採用する予定だ。この倉庫は、同地域の約20の実店舗にサービスを提供する。

関連記事:米スーパーKrogerが初の大規模ロボット化フルフィルメントセンターをオハイオに開設

買収の話題としては、インドア農業を手がけるAppHarvest(アップハーベスト)ががRoot AI(ルートAI)を買収する意向を表明した。AppHarvestは6000万ドル(約65億3000万円)で、ボストンを拠点とするロボット企業を買収する、その目的はRoot AIの持つ作物収穫技術中のデータ収集機能を手に入れることだ。

関連記事:屋内農業のAppHarvestが農業ロボット企業Root AIを買収

AppHarvestの創業者でCEOのJonathan Webb(ジョナサン・ウェブ)氏は「異常気象、干ばつ、火災、動物による汚染など、食糧システムを不安定にする要因が増えているために、これまでの農業は崩壊しています。インドア農業は、そのような課題の多くを解決し、集められたデータは、作物の品質と収穫量の予測と管理に役立つ、より多くの洞察を大量に提供することができるのです」。

シアトルに本社を置くCarbon Robotics(カーボン・ロボティクス)は、今週、巨大な除草ロボットを発表した。同社のAutonomous Weeder(自動除草機)は、コンピュータビジョンとレーザーを使って、1時間に約10万本の雑草を取り除く。これは間違いなく「地味」な話題だが、除草剤を使わずに雑草を取り除きたいと考えている農家のにはうれしい話だろう。

研究の世界に目を向けると、CMUが長年使用してきたヘビ型ロボットに、またまた楽しい新たな用途を提案してきた。私がキャンパスを訪れるたびに、何か新しいものが作られているようだが、このプロジェクトの最新式水泳能力を実際に目にすることができなかったのは、少し残念だ。研究チームは、この技術を潜水艦や船の底のような、手の届きにくい水中での表面検査に応用することを考えている。

関連記事:カーネギーメロン大学のヘビ型ロボが泳ぎをマスター

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ロボット資金調達

画像クレジット:CMU

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:sako)

米スーパーKrogerが初の大規模ロボット化フルフィルメントセンターをオハイオに開設

ほぼ3年前、提携の契約を交わした米国のスーパーチェーンKroger(クローガー)と英国のオンライン食料雑貨販売店Ocado(オカド)は米国時間4月15日、この契約による最初の主力製品を公開した。Krogerは、Ocadoの技術を使った顧客向けフルフィルメントセンターを、オハイオ州シンシナティの郊外、モンローに開設した。約3万5000平方メートルにおよぶその巨大な倉庫では、Krogerのオンライン店舗で受けた注文に応じて、何千種類もの商品を梱包して消費者に配達する。

Ocadoは自社の倉庫のことを「Shed」(シェッド、納屋)と呼んでいるが、ここでも他のシェッドと同様に、床には巨大なグリッドが描かれ、その上で1000台ほどのロボットと400人の従業員が、商品の棚出し、分類、移動を行うことになる。年間、実店舗20件に相当する7億ドル(約760億円)の売り上げにつながる処理が見込まれている。

注文を受けた商品は、Ocadoのバンをモデルに米国で製造されたKroger Delivery(クローガー・デリバリー)バンで配達される。これは温度管理が可能で、一度に20件分の荷物を積むことができる。この車両はまた、マッピング・アルゴリズムで最も早く、最も燃料を節約できるルートを割り出し、配達を最適化するOcadoのソフトウェアによって制御される。

画像クレジット:Kroger

KrogerとOcadoの提携関係は長い時間をかけて築かれてきたが、そこから生み出されるもへの関心は、2020年のオンラインショッピングの激増を受けて、今、最も熱くなっているに違いない。新型コロナウイルスのパンデミックと、社会的距離の確保を強要される事態から、実際の店舗へ出かけるより、食料品も生活必需品も丸ごとオンラインで注文したいと考える大勢の人々が、インターネットへ駆け込んだ。

その傾向は、この分野での競争も激化させた。Amazon(アマゾン)、Walmart(ウォルマート)をはじめ、昔ながらの食料雑貨販売業者もデジタル戦略を着々と進め、オンライン業界のプレイヤーたちは、今やオンラインでの買い物を受け入れるようになった消費者の市場をわずかでも確保しようと奮闘している。

この潮流はKrogerの船も浮き上がらせた。本日開催された記者発表会で、Krogerの会長兼CEOのRodney McMullen(ロドニー・マクマレン)氏は、Krogerの配達事業は、2020年150パーセントの成長を見せたと話した。

新型コロナが終息すれば(そう願いたい)、実店舗でのショッピングに戻る人もいるだろうが、業界では、壷から魔人が現れたと信じる向きは多い。オンラインショッピングに接した人の多くは、少なくとも一部はそのまま残るため、その新しい需要に応えるための新たなインフラを構築する時期に来たというのだ。

これを裏づけるデータはいくつもある。OcadoのCEOで共同創設者のTim Steiner(ティム・スタイナー)氏は、パンデミック以前のOcadoでの平均注文金額は105ポンド(約1万6000円)だったが、2020年は180ポンド(約2万7000円)となり、現在は120ポンド(約1万8000円)だと述べている。

多くの実店舗プレイヤーと同じく、Krogerもデジタル戦略における前線を複数築いている。同社はOcadoと協力して、たとえばShelf Engine(シェルフ・エンジン)などの企業と提携するなどして、倉庫内の業務の効率化を高める技術に投資してきた。さらに、Instacart(インスタカート)と食料雑貨の配達で手を結んだ。

KrogerとInstacartとの提携はまだ続いている。特に、Ocadoのアプローチよりもずっと広いエリアをカバーしているからだ。Ocadoは現在シンシナティで活動しており、フロリダに進出するという話も聞く。Krogerは本日、消費者向けフルフィルメントセンター(CFC)の規模はそれぞれ異なり「モジュール」という考え方に基づいて建設されると話していたが(ちなみにモンローの倉庫は7モジュールで構成されている)、これは、Instacartのモデルと比較するとまだ資本集約的なアプローチであるため、全体的に展開が遅く、おそらくその有効性が発揮されるのはKrogerの密度の高い市場に限られる。

「この2つの提携は、Krogerと私たちのお客様にとって極めて重要なものです」とKrogerのCIOであるYael Cosset(ヤエル・コセット)氏は本日の記者発表で語っていた。「私たちは、InstacartとOcadoとの戦略的パートナーシップで密接に協力できることを期待しています」。

Ocadoは、英国で2000年にスタートした初期のプレイヤーであり、多くの人たちからは、オンライン専用の食料雑貨販売ビジネスの構築と運用の業界標準と見られている。

だがOcadoは、食料雑貨直販ビジネスを英国外で展開して成長を目指すことはせず、むしろ自社のために開発したテクノロジーを活かし、それを商品化することでリーチを伸ばしてきた。商品化については、今も進行中だ。現在は、棚出しのロボット化やその他の自動化システム、さらには配達サービスの高効率化のためのテクノロジーの開発を進めている。

自社用に開発したテクノロジーを商品化して他社に販売するというOcadoの「AWS」戦略は実を結んだ。今では、オンライン食料雑貨販売サービスと、特にフルフィルメントセンター(日本ではイオン、フランスではCasino、カナダではSobeysと提携)でのパートナーシップが実現している。これは、Krogerの展開モデルが実証されたことを意味する。しかし、同社にとって米国進出は極めて重要な一手であり、同時に、WalmartやAmazonといった同国の巨大プレイヤーたちと戦うにはどうしても欠かせないインフラの一部をKrogerにもたらすものとなる。

そこに関しては、Ocadoの支援による巨大なインフラを、Krogerは他のプロジェクトにも応用するのか、するとしたらどんなかたちになるのかには大変に興味が湧く。同社は、Mirakl(ミラクル)と共同でサードパーティーの小売り業者のための独自のマーケットプレイスを開発中だ。これは同様のサービスを展開している企業、そう、AmazonとWalmartとの真っ向勝負となる。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:KrogerOcadoeコマース倉庫フルフィルメント物流ロボットオハイオ

画像クレジット:Kroger

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:金井哲夫)