荷主と個人ドライバーをつなぐマッチングプラットフォーム、「PickGo」が3.4億円調達

荷物を運んで欲しい荷主と、荷物を運びたい個人ドライバーをつなげる「PickGo」を運営するCBcloudは9月21日、シーアールイーKLab Venture Partners東熱パネコンのほか、名称非公開のコマース事業会社とベンチャーキャピタル1社を引受先とする第三者割当増資を9月1日に実施したことを発表した。調達総額は3億4000万円だ。

運送業界では、県をまたぐ長距離輸送に対して、荷物が倉庫から顧客へと受け渡される最後の区間の配送を「ラストワンマイル物流」と呼ぶことがある。

PickGoは、その短距離の輸送において、荷主である企業が個人ドライバーのちからを利用できるマッチングプラットフォームだ。

プラットフォームへの登録は荷主とドライバーともに無料。配送料金は距離料金と時間制料金の2つのメニューを用意しており、依頼登録画面で案件ごとに料金を算出する方式だ。CBcloudが受け取る手数料は、配送料金の10%だ。

ドライバーとして登録できるのは貨物軽自動車運送事業の届け出をしている人(いわゆる黒ナンバー保持者)のみとなっている。企業と契約してフリーのドライバーとして仕事をする人たちがPickGoのターゲットのようだ。現在の登録ドライバー数は2000人となっている。

具体的な配送件数は非公開だが、月に数千件程度だという。サービスを開始した2016年6月に比べ、配送件数は15倍に拡大したという。

2017年8月からはCtoCサービスも開始

CBcloudは、ここまでで説明した企業向けの「PickGo for business」のほかに、個人向けの「PickGo for personal」の提供も2017年8月より開始している。

personalでは、ユーザーが配送依頼をすると、PickGo登録ドライバーにその依頼が一斉配信される。それに反応したドライバーが提示する金額や日程などをもとに、条件の合うドライバーを選ぶという流れだ。

サービスのユースケースは個人の引っ越しなどを想定していて、配送料金は最低5000円から。ドライバーから提示される金額をもとに交渉することもできる。こちらも、登録ドライバーは黒ナンバー保持者のみだ。

ラウンドに参加した事業会社とのシナジーも

今回のラウンドにも参加したシーアールイーは、物流不動産を中心に約1400物件、約120万坪の管理運営を行っている。

本ラウンドを期に、CBcloudとシーアールイーは資本業務提携を締結。シーアールイーは今後、PickGoのサービス拡大にともなって必要になる配送拠点スペースを提供していくという。

また、同じく出資に参加した東熱パネコンはオーダーメイド型ワイン熟成セラー「Terroir(テロワール)」の製造・販売を行う企業。CBcloudは東パネコンは共同ビジネスとして、店舗向けワイン配送サービスの「動くワインセラー」を2017年6月から開始している。

これは、レストランに来店したユーザーが専用タブレットを使ってワインを注文すると、最短30分でそのワインが店舗に届くというサービス。

「好みのワインが店に置いてないが、どうしても飲みたい」というコアなワイン愛好家には嬉しいサービスかもしれない。30分のあいだに食事が済んでいなければ、という条件付きだけれど。

スマホ専用ブラウザ「Smooz」が広告ブロックなどiOS 11対応アップデート、8500万円の資金調達も実施

モバイルブラウザ「Smooz」を提供するアスツールは9月20日、ファンコミュニケーションズ、およびユーザーローカル代表取締役の伊藤将雄氏らを引受先とする、8500万円の第三者割当増資の実施を発表した。伊藤氏からの出資は2016年8月のシードラウンドでの資金調達に続き、2度目となる。

またアスツールは、iOS 11アップデートに対応したSmoozのバージョンアップも同日発表。App Storeでの配信を開始している。新バージョンでは「広告ブロック」、「かざして検索」などの新機能が追加された。

Smoozはスマホ専用のブラウザアプリ。スマホでの片手操作を念頭に、新規タブをバックグラウンドで読み込み、スワイプで切り替えやタブを閉じることができる独特のタブ操作や、読んでいるページを解析してユーザーが次に検索したいであろう検索語を予測表示する機能、SNSでの反応をワンタップで呼び出せる機能などが備わっている。2016年末にはAppleが選ぶApp Storeの2016年ベストアプリの1つに選ばれた。

新機能の広告ブロックは、Smoozユーザーへのアンケートで最も要望が多かった機能とのこと。iOS 11のコンテンツブロックAPIを利用しており、iOS 11上で動作する。設定をONにすることで、ウェブページ上の広告が表示されなくなる。機能の利用には、月額380円のプレミアムサービスへの加入が必要だが、初月は無料で利用することが可能だ。

また、調べたいものにスマホのカメラをかざすだけで、最適な検索結果を提供する新機能が、かざして検索だ。これまでのSmoozのバージョンでも、QRコードを開く、文字を認識して検索する、撮影した画像に似た画像を検索する、といった機能はあったのだが、今回のバージョンでは、iOS 11のVision Frameworkと呼ばれる機械学習ライブラリを使って被写体を自動的に判別する「自動モード」が搭載された。こちらの機能も利用するにはプレミアムサービスへの加入が必要だが、月10回までは無料で利用できる。

アスツールは、2016年2月に元楽天社員の加藤雄一氏が設立したスタートアップ。2016年9月のSmoozローンチ以来、これまで日本のApp Storeのみでアプリを配信してきたが、Android版の提供やグローバルでの展開も視野に入れているという。今回の調達資金はこれらの展開を見据え、開発チームおよびカスタマーサポートチームの強化に活用していく、としている。

フィンランドの広告スタートアップ、Smartly.io、既存株式売却で資金調達――2000万ドルでアメリカ進出へ

フィンランドの首都ヘルシンキを本拠とするSmartly.ioはFacebook広告プラットフォームを通じてマーケティングの自動化を狙うスタートアップだ。同社は今日(米国時間9/19)、発行済株式の売却によって2000万ドルの資金を調達したことを発表した。これは既存株主の株式をヨーロッパのベンチャーキャピタルのHighland Europeに売却するという方法で実施された。

2013年創業のSmartly.ioのファウンダー、CEOのKristo Ovaskaは「われわれは2年前からすでに黒字化している」と述べた。同社の株式はファウンダー、エンゼル投資家、社員が所有していた。そのため今回のラウンドはSmartly.ioに対して会社の売却あるいは上場による現金化の道を探るという圧力を与えずにファウンダーらの株式を現金化し、報酬に充てる効果があった。

Ovaskaは「Highland EuropeはアメリカのHighland Capital Partnerと密接な関係のあるベンチャーキャピタルだ。Smartly.ioはアメリカ市場を始めとする各国市場への進出を計画しており、HighlandはSmartlyの経営のグローバル化、進出先での企業買収などのアグレッシブな成長戦略やその資金づくり助けるだろう」と付け加えた。

Facebook Marketing PartnerはFacebookが開発したプラットフォームで、Facebookが審査、選定した企業のマーケティングを助ける。Smartly.ioのツールはブランドの商品画像から自動的にバナーやビデオによる広告を作成し、、Facebookに出広する。Smartlyはまたオーディエンスのターゲティングや出広のタイミングや表示先など広告予算の運用も独自に決定する。

Smartly.ioは最近、通年換算で10億ドルの広告予算を処理していることを発表した。現在、Smartlyのプラットフォームを利用しているブランド、広告代理店の数は500社以上で、eBay、JustFab、Zillow、SkyScanner、Lazada、Deliverooなどの有名企業が含まれる。【略】

「Smartly.ioの社員は150人だが急速に拡大中だ。Highlandはアメリカにおける有望なカスタマー候補企業をリストすることに十分な経験がある。顧客獲得だけでなく人材採用も助けるだろう」とOvaskaは述べた。【略】

Smartly.ioのカスタマー・サポートはすべて同社の社内で行われる。社員のほとんどはプログラミングの経験があり、CEOのOvaska自身も自ら毎日何時間かカスタマー・サポートを行っている。Ovaskaはカスタマー・サービスの充実が他のマーケティング自動化ツールに対するSmartly.ioの競争力の源泉だとしている。

Smartly.ioはシンガポールにもアジア太平洋地域のカスタマーのためのオフィスを開設しているが、もっとも重要な市場はいうまでもなくアメリカだ。

「アメリカ市場の成長可能性は非常に大きい。Facebookプラットフォームに向けられている世界の広告予算を見ると、アメリカ市場はその他の地域をすべて合計した以上の金額となっている。同時にもっとも成熟した市場でもある。われわれはアメリカを中心に投資していく」とOvaskaは述べた。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

“わが社のストーリー”を発信するプラットフォーム「PR​​ Table」が1.5億円を調達

企業がプレスリリースを打つサイトといえば、PR TIMESValurPress!DreamNewsなどがある。これらのサービスは伝統的なメディアに対して、伝統的な「プレスリリース」という完成された形式で自社ニュースなど発表文を効率良く届けるものだ。一方、2015年12月にスタートした「PR Table」は企業に埋もれている「ストーリー」を伝えることで、企業ブランディングや採用広報、社内広報、IRなどを支援するプラットフォームだ。

定食屋のスタートアップ「未来食堂」が、飲食業界の定説を覆す!?」というバズった記事を読んだ記憶があるだろうか? 2015年10月の記事だ。これがPR Tableのいうストーリーの1つで、この記事をきっかけにしてPR Tableはコンテンツと売上を伸ばしてきた。

そのPR Tableが今日、シリーズAラウンドとして1億5000万円の資金調達を終えたことを発表した。リードインベスターはDGインキュベーション。ほかに大和企業投資、みずほキャピタル、静岡キャピタル、ABCドリームベンチャーズが本ラウンドにVCとして参加している。PR Tableは2014年12月創業で、2016年10月には大和企業投資、みずほキャピタル、および個人投資家数名からシード資金として3000万円を調達していて、累計1億8000万円の資金調達となる。

共同ファウンダーで代表取締役の大堀航氏はTechCrunch Japanの取材に対して、「エモーショナルなものを発信する文化がどれだけ作れるか」がPR Table成功のカギの1つだと話す。プレスリリースというのは非常に歴史が古いものだが、ネット上のプレスリリース配信が始まったのは2009年ごろのこと。PR TIMESが上場したのは2016年3月のことで「10年近くかかっている」(大堀氏)。大堀氏らが次に普及させたいのは、従来ならニュースやプレスリリースにならないような企業情報をストーリーによって発信する文化だという。

「ゴールは、それぞれの企業が自分でストーリーを書けるようになることです」(大堀氏)

もともとPR Tableは企業から請負で、すべてのストーリーを制作していた。初期導入費用とストーリー5本で150万円。編集者がついて戦略やロードマップを策定し、実際のコンテンツの制作、公開、配信、集客、活用といった一連のプロセスを全部サポートするといったサービスだ。

このサービスで800アカウントほど獲得して足元の売上を作ってきたが、現在はプラットフォーム利用の月額制に移行を終えたという。初期導入費用30万円、月額10万円(初期キャンペーンは4万円)だ。

「企業からみるとコーポレートサイトに近いようなものを運用していくイメージで、1社1社の企業カルテのようなものになる」(大堀氏)という。できあがったランディングページを見てみると、今どきのHTMLでできた創業以来のイベントがタイムラインにアニメーションで表示されたりして、確かに「良い容れ物」という印象だ(たとえば例はここ)。ブラウザ下部には「働きたい」「事業を知る」「取材したい」という3つの大きなボタンが用意されていて、閲覧者にアクションを促す仕組みになっている。

各企業のストーリー作りは、これまでの知見を反映して戦略策定やコンテンツでフォーマットを標準化したり、工程管理のワークフローで業務を効率化できるようにするのが1つのポイントだそうだ。もともと大手PR会社にいた大堀氏は、「広報業務は非効率なところが多いのです。メディアリストをExcelで管理していたり。ストーリー発信は余計な業務なので効率化を進めたい」と話す。ワークフローを情報としてストックしていくことで、広報担当者が変わったときにも社内資産として引き継げるようなものになるという。現場利用者としては広報部以外も想定する。「広報部だけじゃなくて人事部もユーザーです。今後はIRもやっていきます。すでに現在、経営企画室でIR・広報・人事のすべてを見ている人がユーザーにいるのですが、好評です」(大堀氏)

現在すでにPR Tableには500ストーリーほどが掲載されていて、このうち4割ほどは顧客企業が制作している。全く添削が不要なストーリーは5%程度と、まだ編集や広報のプロの視点が必要とされている面もあるようだ。

既存媒体との連携も進めていて、今後は地方紙とも連携していく。例えば熊本出身の起業家のストーリーなどで、日経新聞連載の「私の履歴書」の地方版のようなものをPR Tableで作り、それを地元紙に掲載する取り組みだ。「地方にはニーズがあると思います。地方企業はニュースが少ないのでプレスリリースが出しづらい。でも企業内に良いストーリー自体はあるのです」(大堀氏)

動画制作のCrevoが動画制作プラットフォーム「Collet」を公開、総額3.1億円の資金調達も実施

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

2014年に動画制作特化のクラウドソーシングサービス「Crevo」を公開したスタートアップ、Crevo。これまでの累計700社の動画を制作してきた同社が、その動画制作ツールをオープン化し、事業を拡大するという。Crevoは9月14日、動画制作プラットフォーム「Collet(コレット)」を発表。30社に限定して、クローズドベータ版サービスに向けた先行申込み企業の募集を開始した。またCrevoは伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、三井住友海上キャピタル、AG キャピタル、D4Vを引受先とした総額3億1000万円の第三者割当増資を実施したこともあきらかにしている。

前述の通り、これまで700社の動画を制作してきたCrevoだが、20人弱という小さな組織で複数のプロジェクトを回すために、自社で制作管理ツールの開発を進めてきた。Crevoには現在、世界100カ国、3000人のクリエーターが登録しているが、そのクリエーターたちが離れた場所でも作業できるよう、ウェブ上で動画素材を集約。シーンごとに直接指示を出したり、コミュニケーションができる仕組みを作り上げた。Crevoでは、このツールによって、制作関連業務の負担を5分の1に圧縮したとしている。このツールを制作会社などに提供できるようにオープン化したものがColletだ。

Colletには大きく2つの機能がある。1つはCrevoが自社のビジネスで培ってきたノウハウを注ぎ込んだ、制作管理ツールとしての機能。そしてもう1つは、企業とクリエーターを直接繋ぐジョブボードの機能だ。Colletを利用する企業が、自社の動画制作案件をCollet上に掲載。Crevoに登録するクリエーターがその案件を引き受けるということができるようになる。

「若いクリエーターの労働環境は厳しいところがある。そこをなんとかしたい、働き方も改善して欲しいという思いがあった。クリエーターも(Crevoからの発注に限らず)さまざまな企業からの仕事ができるほうが魅力がある。動画制作事業は3年半で軌道に乗っているので、それで利益を上げつつ、Colletの開発に投資していく」(Crevo代表取締役の柴田憲佑氏)

Crevoでは、今冬をめどにColletをオープン化する予定。また今後はColletに限らず、「制作会社が困っていること、若い制作アシスタントたちが困っていることを解決できるようなサービスを提供していく」(柴田氏)としている。

インフォステラが8億円を調達、衛星通信アンテナ共有事業を2018年にローンチへ

人工衛星の運用に欠かせない要素の一つがアンテナだ。資金を投入しリスクを背負って打ち上げた人工衛星も、地上で電波を送受信するアンテナを確保できなければ運用できない。この衛星用アンテナのシェアリング事業を手がけるインフォステラが、シリーズAラウンドで8億円を調達した。航空宇宙分野のスタートアップを中心に投資活動を展開するAirbus Venturesがリードインベスターとなり、早稲田大学発のベンチャーキャピタルであるウエルインベストメントD4VSony Innovation Fund、そして既存投資家であるフリークアウト・ホールディングス500 Startups Japanの6社を引受先とする第三者割当増資を実施した。出資比率は非開示。

調達した資金の使途は事業開発と人員拡充である。同社は自社開発の通信機器の開発と生産を予定しており、そのための資金に使う。同社CEOの倉原直美氏は「ソフトウェアエンジニアはすぐにでも増やしたい」と語る。例えばアドテクやゲームインフラ分野のスキルは宇宙分野でも活用できるそうだ。

同社はアンテナシェアリングプラットフォーム「StellarStation」のプロトタイプを完成させ、事業化直前の段階にある。倉原CEOは次のように話す。「宇宙ビジネスには、ロケット、衛星、地上設備の3つが欠かせない。ロケットや衛星ではスタートアップがいくつか出ているが、地上設備は参入が少ない」。同社はおそらく世界初となるクラウド型のアンテナシェアリング事業を目指す。その概要を把握するには以下の動画をどうぞ。

 

倉原氏は、もともとロケットを作りたくて宇宙開発の道を志したが、東京大学で超小型人工衛星「ほどよし」のプロジェクトで地上システムの開発マネージャーを体験した。起業した背景として、やはり東京大学発の超小型人工衛星スタートアップであるアクセルスペースなどの先行するこの分野のスタートアップの存在が刺激になった。「起業した時点では、アンテナシェアリングは必要だという確信があった」。宇宙開発分野を経験した起業家ならではの着眼点といえる。

今回の増資とともに社外取締役に加わったLewis Pinault氏(Airbus VenturesのManaging Investment Partner)が発表資料に寄せたコメントは、同社のビジネスの可能性をうまく要約しているので一部引用したい。「周回衛星打ち上げ数の増加や宇宙から得られるデータの重要性が増している現状において、それを支える地上側のアンテナが需要の急増に間に合っていない。一方、他社の衛星が上を飛ぶ間、ほとんどの時間その地上アンテナは待機状態となっている。インフォステラはこの状況を劇的に変える。彼らは世界中の何百ものアンテナを何千機もの衛星の運用のために活用することができる。アンテナの所有者の待機時間を減少させ、利益を向上させる。そしてリアルタイムのネットワークコントロールを得ることで、誰もが衛星運用者になり得る」。

人工衛星を運用するためのアンテナをシェアリングプラットフォームの枠組みにより使いやすくし、人工衛星運用者、アンテナ所有者、インフォステラと当事者全員が得をするビジネスモデルを目指す形といえる。

2018年にプラットフォームをリリース、事業展開へ

同社が目指すビジネスについては2016年10月のシードラウンド資金調達の記事でも説明した。当時はハードウェア(同社仕様の専用通信機を開発)とソフトウェアの開発が進行中の段階だったが、1年近くが経過し、同社の衛星アンテナシェアリングプラットフォームのプロトタイプは完成した。間もなくクローズ試験を開始する。クローズ試験では大学発のCubeSat(超小型人工衛星)プロジェクトのように密にコミュニケーションを取ってフィードバックをもえらえる顧客を対象とする方向とのことだ。同社のサービスプラットフォームは、2018年早々に正式リリースする予定だ。

その後の事業展開にあたり、倉原CEOが有望なユースケースとして挙げるのは、(1)地球観測(Earth Observation)、(2) 船舶自動識別システム(S-AIS)、(3)航空機の放送型自動従属監視(ADS-B)である。超小型人工衛星は気象情報や農業などの目的で地球観測に用いられる例が多く、最も初期のユースケースはこの分野となる。船舶と航空機は無線通信による自動識別が義務付けられているが、この分野でも大幅な通信需要の増加が見込まれているとのことだ。

インフォステラの事業は、クラウドサービスにより衛星との通信機会をシェアし、急増する超小型人工衛星の通信需要への対応を図る。宇宙ビジネスに注目する人は増えているが、宇宙開発は地上設備なしには進まない。地上設備のリソースの中でボトルネックとなるアンテナに注目した同社の挑戦に期待したい。

“フリーランス営業マン”は生まれるか――企業と営業マンをつなぐ「Saleshub」が8000万円調達

営業スキルをもつ個人と企業をつなぐプラットフォーム「Saleshub」を運営するSaleshubは9月12日、インキュベイトファンドを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は8000万円だ。

Saleshubは、クライアントを紹介して欲しい企業と個人の営業マンをつなぐマッチングプラットフォーム。企業がSaleshubを利用して案件を掲載すれば、外部の営業リソースを幅広くあつめることが可能だ。

営業マンはまず、その案件に応募をし、企業との面接をクリアすることで「サポーター」となることができる。その後、企業が求めるクライアントを紹介することができたサポーターは、それに見合う報酬を企業から受け取れるという仕組みだ。

案件のなかには、アポをセッティングするだけで数千円の報酬を受け取れるものもあれば、成功報酬として数百万円を受け取れるものもある。Saleshubが受け取る手数料は報酬金額の35%で、その手数料を別途企業側から受け取る。

2017年6月にリリースしたSaleshubだが、今のところプラットフォームに掲載されている案件はBtoBのものがほとんどだという。Saleshubがこれまでに獲得した企業アカウントは約330件、営業マン側の登録アカウントは約1230件だ。

営業マンでも副業しやすい環境を

最近では、クラウドワークスなどのクラウドソーシングサービスも身近になり、なんらかのスキルをもつ個人が副業しやすい環境が整いつつある。先日TechCrunch Japanでも紹介した「副業サービスマップ」を見ていただくと分かるように、副業系サービスの数はかなり多い。

しかし、そういったサービスで副業をしやすいのは、エンジニアやカメラマンなど特定の専門スキルをもつ人たちだ。

Saleshub代表取締役の江田学氏は「専門スキルをもつ人たちよりも、いわゆる営業マンと呼ばれている人たちの方が人口的には多い。にもかかわらず、営業マンが副業しやすい環境はまだまだ整っていないと感じていた」と話す。これがSaleshub創業のきっかけだ。

聞いてみると確かにその通りで、「フリーランス・カメラマン」だとか「フリーランス・エンジニア」という言葉はよく聞くが、「フリーランス営業マン」という言葉はあまり耳にしない。このようなサービスが増えてこれば、そんな新しいカテゴリーが生まれる可能性もあるだろう。

Saleshubは2014年8月の創業。当時、同社はエンジェル資金として元ペロリの中川綾太郎氏から300万円を調達し、遊びにでかける場所の口コミサイトを運営していた。

同サービスは月間50〜60万人のユーザーが利用するまでに成長したが、「そのような口コミサービスでは月間1000万人くらいまで獲得しないとビジネスがワークしない」と判断した江田氏は、同サービスを停止してSaleshubへとピボットすることを決意した。

その方向転換を行うのと同時期に、Saleshubはマイナースタジオ代表取締役の石田健氏とEast Venturesから1300万円を調達している。今回の調達資金を含むSaleshubの累計調達金額は9600万円となる。

フレキ基板でイノベーション、エレファンテック(旧AgIC)が産革や大和から総額5億円を資金調達

家庭用プリンターで電子回路を「印字」するプロダクトを引っさげてTechCrunch Tokyo 2014のスタートアップバトルで優勝したエレファンテック(旧AgIC)が、より産業用へと軸足をずらして「フレキシブル基板」と呼ばれる領域で勝負をかけている。数日前にAgICからエレファンテックに社名を変更したばかりの同社は今日、産業革新機構をリードインベスターとし、大和企業投資、Beyond Next Venturesの3社から総額5億円の資金調達を行ったと発表した。VCからの調達ラウンドは2016年2月に続いて2度めで、これまで累計8億4000万円(うち国からの助成金や借入が約1億円)の資金を調達している。

エレファンテックが3年にわたって取り組んできたのは、電子回路を印刷により製造する「プリンテッド・エレクトロニクス」という分野。ハードウェア分解癖のある女子なら良く知っているだろうが、パソコンやデジカメを分解すると、必ずフィルム状のペナペナの基板が使われているのを発見することになる。固い樹脂製の基板に比べて厚さが10分の1程度と薄く、曲面にするなど取り回しがしやすいメリットがある。

エレファンテック創業者で代表取締役の清水信哉氏によれば、これまでフレキシブル基板は、特殊な部品だった。「従来はケータイのヒンジなど曲る部分にしか使わないというのが一般的でした。ところが今は軽量化のためにフレキシブル基板を使うケースが増えています」(清水氏)。軽量化のために最近のデジカメ製品などは中はほとんどフレキシブル基板がベースになっているそうだ。

コスト削減のためにフレキシブル基板を使うシーンも増えているという。部品点数の削減により、むしろコスト削減に繋がるからだ。たとえば自動車の方向指示器ではLEDに対して制御回路を搭載する基板とコネクターやケーブルが接続されているが、これをフレキシブル基板でやると、数点必要だった部品を「基板兼ケーブル」として1点で設計することができる。

エレファンテックが対象とする産業機器で多いのは、1つは1000〜3000台程度の専門性の高い機器類。例えば医療機器や食品の加工機などがエレファンテック顧客の製品だ。ロット数が少なく、多品種少量生産。後から機能追加のあるような機器でフレキシブル基板は生きてくるという。

開発の設計変更が多く発生するケースでも、短納期であるメリットが生きるため、PoCなど試作段階で使われることも増えているそう。「自動車メーカーなんかだと、PoCの段階で使っていただいています。新しく機能を付けたいというときに、いちいち型を作ると大変なんです。フレキシブル基板なら非常に安く、多くの試作ができます」(清水氏)

エレファンテックのイノベーションは「ピュアアディティブ法」と呼ぶ無電解銅メッキの新手法「P-Flex」にあるという。P-Flexの回路はフィルム上に吹き付けたナノ銀によるパターンに対して、銅メッキを成長させることで作る。回路というのは閉じたループもあるので、電気を流す「電気メッキ技術」は使えない。そこで電気を流さない無電解メッキという方法を使う。問題は無電解メッキはメッキ層の成長に時間がかかること。

銅メッキの溶液には銅イオンのほかに還元剤が入っていて、その濃度などで速度を調整するそうだが、成長を速めようとすると、ナノ銀がない場所(回路じゃないところ)にまで銅が析出してしまって精度が落ちるというトレードオフがある。これまではメッキ職人がこのプロセスの最適化を行っていたが、エレファンテックではここを現代的なフィードバック機構がある制御システムで最適化。反応速度が速くなりすぎたら妨害物質を入れたすることで、既存の10倍速のメッキシステムを開発したという。

「獺祭(だっさい)という日本酒と似ています。清酒づくりというのは昔は杜氏がいて職人が作っていた。それを科学的に分析してやったのが獺祭ですよね。メッキも同じで職人さんがいるのですが、われわれは現代の技術を使って、これまであり得なかった速度に速めたのです」(清水氏)

P-Flexは、印刷、インク、フィルム表面、メッキの制御などの複合的な技術によって成り立っていて、ナノ銀を密着させるためのフィルムで特許を取っているほかは独自技術。ここはブラックボックスのまま自分たちで持ち続けるという。

今後は両面基板や高精細化に取り組む。現在P-Flexでは最小線幅は200ミクロンだが、一般的な回路工場の100ミクロン程度にまで縮める。エレファンテックは製造技術周りのエンジニアを中心に、現在16人のチームとなっていて、新たに営業組織を立ち上げる。また東京・蔵前に自社工場を建設する。フレキシブル基板市場は年率10%以上で成長を続け、2022年にはグローバルで3.1兆円市場になると見ているという。

無料SIMカードとインバウンド旅行者向けアプリを提供するWAmazingが10億円調達

インバウンド旅行者向けアプリの「WAmazingアプリ」を提供するWAmazingは9月7日、リード投資家のANRIBEENEXT、およびSBIインベストメントみずほキャピタルSony Innovation FundBEENOSオプトベンチャーズ静岡キャピタルなどから総額約10億円の資金調達を実施した。

なお、エンジェル投資家の青柳直樹氏、有安伸宏氏らも本ラウンドに参加している。

写真右がWAmazing代表取締役の加藤史子氏

同社が手がけるWAmazingアプリ(iOS/Android)は、インバウンド旅行者向けにさまざまなサービスを提供するモバイルアプリだ。主な機能として、タクシー配車、日本での旅行ツアーやアクティビティの予約手配と決算機能、そして宿泊施設の予約機能などがある。

宿泊施設予約は8月14日から始まったばかりの新しい機能だが、すでに国内1万軒以上の宿泊施設を予約することができるという。

WAmazing代表取締役の加藤史子氏は、この新しい機能について「現在、WAmazingのユーザーの日本滞在平均日数は6日間程度。宿泊は、ほぼすべてのユーザーからニーズがある分野だ。宿泊場所が明確になることで、そこまでの交通や周辺観光などに展開しやすいことから、導入を決めた」と話す。

WAmazingアプリの機能については、こちらの記事も参考にしていただきたい。

無料SIMカードが集客のカギ。9月からは中部国際空港でも

インバウンド旅行者向けに魅力的な機能を提供するWAmazing。しかし、WAmazingの一番の特徴は、同社が空港で配布する無料のSIMカードだ。これまでにも同社は成田空港でSIMカードの配布を行ってきたが、9月1日からは新たに中部国際空港でも配布を開始した。

15日間有効のこのSIMカード、容量は500MBで、旅行者が自分の国であらかじめアプリをダウンロードしておけば誰でも利用することができる。追加料金を支払うことでデータ量の追加や期間延長も可能だ。

これは、空港についてすぐに交通情報などを調べる必要がある旅行者にとっては非常に嬉しい特典だろう。このSIMカードがアプリの集客のために一役買っているというわけだ。

ただ、加藤氏はサービスリリースの2017年1月から今までを振り返り、無料SIMカード配布にはなかなか苦労したと話す。

「SIM受取機といったハードウェアやアプリなどのソフトウェアも含め、開発着手から3ヶ月弱でリリースした。そのため、正直、不具合も色々とあった。最初の1ヶ月くらいは社員がシフトを組んで、土日も含めて成田空港のSIM受取機のまわりでひっそりとユーザーの様子を見守る、という状態だった」(加藤氏)

そんな苦労もありながら、WAmazingアプリはこれまでに約3万5000人のユーザーを獲得。そのうち実際に日本を訪れた(SIMを受け取った)のは1万2000人だ。

「無料SIMカードを受け取れるからといって、入国空港を変える人はいないと思う。そのため、設置空港を増やすことがそのままユーザー数の増加に直結する」とも加藤氏は話す。

また、WAmazingはアプリの配信国も広げていきたい構えだ。現在はインバウンド旅行者が多い香港と台湾に特化してアプリを開発しているが、今後はそれに加えて韓国、中国本土、タイにも拡大していくそうだ。早ければ年内にも中国本土への拡大を目指す。

2016年7月に創業のWAmazingは今回調達した資金を利用して、サービス拡大のための開発、人材確保を進めるとしている。

「今回の資金調達は、それぞれの戦略実行を高いクオリティで一気に推進していくための人材の採用やユーザー数を拡大するためのマーケティングアクセルを踏むために必須となる推進力となる。訪日外国人旅行者にワンストップで日本の魅力を堪能できるサービスを提供したい、そして、それにより観光産業を日本の基幹産業にしたい」(加藤氏)

テックビューロがジャフコらから16億円調達、「VCとICOは共存する」

テックビューロが、シリーズBラウンドで約16億円の資金を調達した。調達方法は第三者割当、引受先はジャフコが運用する投資事業組合が約15億円、インフォテリアが約1億円。調達した資金は同社の仮想通貨取引所Zaif、プライベートブロックチェーン技術mijinをはじめ事業の整備拡充に充てる。同社の今までの累計調達額は約25.4億円となる。

ご存じのようにジャフコは日本最大のベンチャーキャピタル(VC)で審査基準も厳しい。出資にあたり交渉や調査には数カ月をかけ、ジャフコ社長の豊貴伸一氏自身が検討に参加したとのことだ。また今回出資するインフォテリアは2016年4月に実施した資金調達にも参加しており、ブロックチェーン関係事業でのシナジーを狙う。

テックビューロでは調達した資金の使途として、下記の各項目を挙げている。

  • 経営基盤の拡充、人員増強
  • Zaif取引所のインフラとサービスの拡充
  • プライベートブロックチェーン技術mijinによるクラウド型BaaSサービスCloudChainの整備
  • mijinライセンスとCloudChainの販売体制を世界で拡充
  • 米国拠点の拡大、欧州、アジア拠点の設置。スイス、シンガポール、マレーシアなどを検討している。
  • 新規事業投資とM&A

リストの1番目には経営基盤、2番目に仮想通貨取引所Zaifの拡充が挙がっている。2017年4月から施行された仮想通貨法(改正資金決済法)の元では仮想通貨取引所Zaifの運営は金融庁の監督下に置かれることになるが、それに伴い財務基盤の強化が求められ、監査などの支出も増える模様だ。資金調達の背景の一つには取引所としての規制対応がある。

プライベートブロックチェーン技術mijinによるクラウド型BaaSサービスCloudChainは、商用クラウドサービスとしてmijinの機能を提供するものである。

COMSAは「自前」で資金を集める

調達資金の使途のリストに挙げられていないが、COMSAについて述べておく必要があるだろう(関連記事)。同社のプロダクト(Zaif、mijin)や経験をフル活用したシステムであり、直接の使途ではないが今回の資金調達とも深く関係する事案だからだ。

COMSAは同社が発表したICO(Initial Coin Offering、仮想通貨技術を応用したトークンの発行と販売による資金調達手段)プラットフォームである。COMSA自体のシステム開発やCOMSA対応のサービス拡張運営は、今回の資金調達とは別にCOMSA自体のICOにより調達するとしている。「会社はOSで、COMSAはアプリケーションのようなもの」とテックビューロ代表取締役の朝山貴生氏は説明する。テックビューロという会社組織とCOMSAでは資金も別々に管理することになる。

同社は9月5日、ICOプラットフォームCOMSAのプレセールに対して個人投資家の千葉功太郎氏が100万ドル相当のビットコインを直接投資したことを発表している。また、3社の機関投資家が出資することを表明している。第三者割当増資により調達した資金とは別勘定でCOMSAにも資金が蓄積されつつある。

「ICOはVCと競合しない、むしろ共存発展できる」

ICOはまだ世の中での理解が十分に進んでいない段階といえる。朝山氏は「ICOのメリットはネットワーク効果、そしてトークンエコノミーの効率の良さだ」と話す。ICOには仮想通貨を使い国境を越えて手軽に参加でき、機関投資家だけでなく個人でも参加が容易だ。ICOの参加者は、ICOで立ち上がったプロジェクトの初期利用者でもある。資金と顧客ネットワークの両方をロケットスタートで早い段階に揃えられることができる。これがICOの価値だ。

ICOが十分に発達するならVCは不人気になる、といった論調も一部にあるが、「VCとICOは、世間で思われているように競合するものではない。むしろ協働、共存できる」と朝山氏は説明する。実際、日本最大手のVCであるジャフコがCOMSAを推進するテックビューロに投資し、個人投資家の千葉功太郎氏がCOMSAに出資していることがその証拠だという訳だ。審査が厳しいVCが出資した株式会社の社会的信用は、ICO参加者にとってもプラスに働くといえる。

ICOの効率性は悪用される場合もある。人気が過熱し、詐欺的な案件も増えている。プロダクトがローンチされないままのICOプロジェクトも多い。プロジェクトの成功確率が低いことは必ずしも悪いことばかりではなく、冒険的なプロジェクトに挑戦できる可能性があるということでもあり、スタートアップの成功確率が小さいという話とも似ている。ただし、ICOの場合はプロダクトがない構想段階なのに数億円といった資金を手にできる場合があり、特にモラルハザードを起こしやすい構造がある。

ICOをめぐり、世界各国で最近多くの動きがあった。7月25日に米SEC(証券取引委員会)は、2016年のThe DAOを「有価証券にあたり規制対象となる」と位置づけ、類似するICOは規制する方向性を示した。シンガポールとカナダの規制当局も同様の方針を打ち出している。9月4日、中国の中央銀行である中国人民銀行は中国国内のICOを「大部分は詐欺」と断じて一律停止、過去の案件も調査のうえ場合によっては返金を命じるとの厳しい措置を打ち出した。同じ日、ロシア連邦中央銀行も、仮想通貨とICOは「高リスク」と警告する文書を公開している。ICO過熱への警戒から、各国の規制当局が動いている形だ。もっとも規制強化の話ばかりではなく、エストニアでは8月22日に政府公認のICO計画を公表している。

COMSAに話を戻すと、テックビューロは「実業」がある案件に絞ることで成功事例を作っていく立場だと説明している。COMSAではICO協議会を設置してICO案件を審査し、特に初期段階では成功確率が高い案件を主に実施する考えだ。米SEC基準で有価証券に相当しないトークン(例えばサービス利用時に利用料を割り引いてくれるトークンなど)を設計していく。

前述した海外での規制強化は、詐欺的な案件や有価証券に準じる性格のトークンを対象としたものだ。そうではない健全なICOには「むしろ良い動きだ」と朝山氏は説明している。

テックビューロは今までトークンエコノミーというキーワードで多くの試みをしてきた。トークン発行サービスZaica、タレントの卵を応援するトレーディングカード的なICOであるBitGirls、それにZaifの優良利用者に配布したZaifトークンなどだ。COMSAは、これらの試みから得られた知見を投入したプロジェクトといえる。

シリーズBを終えた同社の今後の活動により、ICOやトークンエコノミーの分野で経験と知見、そして成功事例が蓄積されていくことを期待したい。

2017年に閉鎖された、かつて多くの資金調達を行ったスタートアップたち10社

立ち上がるスタートアップもあれば、失速するスタートアップもある。2017年にはいくつもの著名なスタートアップが失敗に終わった。JawboneからBeepi、Yik Yakに至るこれらの企業は、最終的にその扉を閉ざす前に大金を調達していた。

以下に挙げるのは、2017年の最初の9ヶ月に閉鎖される、もっとも多くの資金調達を行った10社だ(破綻順)。これらの企業は合計で、ベンチャーキャピタリストと銀行から合計17億ドルを調達している。

最終的に何もかもが失われるわけではない。経験と教訓が残されるのだ。創業者や開発者、マーケティング担当者、そして販売担当者たちは、苦戦を強いられたスタートアップで働くことによってのみ得られる知識を、この先活用することができる。

2017年にはまだ数ヶ月が残されていて、より多くのスタートアップが年末までには閉鎖されるだろう。しかし、企業が倒れることによって、起業家精神はさらに飛躍する。

1/10:Beepi

2017年2月にシャットダウン

5ラウンドを経て、35人の投資家から1億4895万ドルを調達

Beepiは良いアイデアに基くスタートアップのお手本だった。利用者たちは中古車を売買できるマーケットを提供していた。Beepiによって中古車が査定され、事務処理が行われ、新しいオーナーに配達される仕組みだった。従来の中古車販売代理店のコストのかかる手間と、手数料の構造を回避することを可能にするものだった。そして運用もしっかりしていて、強力なカスタマーサービスも大きなセールスポイントだった。しかし、最終的に会社は破綻に追い込まれた。

これまでのラウンドでは最高5億6000万ドルと評価され、Yuri Milner、Comerica、 Redpoint、Foundation Capital、Sherpa CapitalそしてFabrice Grindaなどを含む35の投資家たちから資金を調達していた。

しかし、とある情報源によると、Beepiは優先順位の設定に間違いがあったということだ。かつての従業員の1人が語るには、Beepiは最高で300人を雇用していたときには、月に700万ドルを失っていたということだ(先の12月にはFair.comへの売却交渉のために200人をレイオフした)。

2/10:HomeHero

2017年2月にシャットダウン

3ラウンドで7人の投資家から2320万ドルを調達。

HomeHeroは、非医療在宅介護サービスの提供に失敗し、2017年2月に閉鎖された。CEOのKyle Hillは、Mediumの投稿の中で、1099型請負形態(税務の責任が全て労働側にあるフリーランス契約)からW2型雇用形態(雇用者側で源泉徴収の発生する契約)に転換したことを、「劣った雇用ビジネス」と呼び、中心となるアイデンティティを企業が失った理由とした挙げた。

同社は、在宅介護労働者たちを、それを必要とする家族たちとつなぐために2300万ドルを調達していた。途中、病院と提携し、HomeHeroに雇用された医療従事者の世話を受けて、家族の健康状態をモニタすることを助けるサービスを開始していた。

最終的な目標は、入院のリスクを減らしてくれるHomeHeroのようなサービスの費用をカバーできる保険会社と、直接仕事をすることだったが、明らかに会社を救うことはできなかった。

3/10:Auctionata

2017年2月にシャットダウン

6ラウンドで、9565万ドルを15人の投資家から調達。

Auctionataは、期待していた資金調達に失敗し、事業を停止した。同社は、2012年の設立以来、美術品と蒐集品のオンラインオークションをライブ放送するために、9500万ドル以上を調達していた。

ライブストリーミングオークションは、アート界の多くの人々の間では長年抱かれてきた野望だった。このようなフォーマットは、物理的制約からの脱却を可能にし、より幅広い入札参加者を得て、出品アイテムにもより高い入札が行われるだろうという、大いなる期待が抱かれている。しかし、ライブストリーミングイベントを使った初期の試みは、(言うならば…)彼らの期待を達成することができず、遅いブロードバンド速度は混乱を招き、それ以外の問題も多数あった
会社が閉鎖する前にはPaddle8と合併していた(Paddle8は2011年の創業以来4400万ドルを調達していた)。

4/10:Quixey

2017年5月にシャットダウン

4ラウンドで1億6490万ドルを調達

Quixeyは当初Mountain Viewを拠点とするモバイル検索会社として立ち上げられた。しかしその後アプリのためのデジタルアシスタントを作成するために分離した。

同社は1億6490万ドルを調達し、評価額は一時は6億ドルに達した。しかし、同社がデジタルアシスタントを構築していたときには、AppleやGoogle、そして最終的にはSamsungに買収されたVivのようなスタートアップも存在していた。

かつての同社の売りは、ユーザーがアプリ内でコンテンツを検索するのを助け、そして検索結果からパーソナライズされたアクション(例えば近くにいるFacebookの友人を表示したり、Spotifyの中で個人的なプレイリストを呼び出したり)を行える技術を開発したということだった。

5/10:Yik Yak

2017年5月にシャットダウン

3ラウンドで、9人の投資家から7350万ドルを調達。

かつて人気のあった匿名のソーシャルネットワークYik Yakは、2017年5月に閉鎖された。おそらくはサイバーいじめと不愉快なコンテンツが皆にとってのアプリ体験を望ましくないものとしたのだ。TechCrunchで報告済だが、2016年末までにユーザーのダウンロード数は2015年の同期間に比べて76%減少し、同社はほとんどの従業員を解雇し始めた。
このアプリケーションは、ユーザーに匿名性を提供するフォーラムや、お互いにチャットする手段を提供している場合には、当然予測可能な問題に直面していた。それはあらゆる種類のサイバーいじめに悩まされ、一部の学校では禁止もされた。しかし、世界中から集った資金とアドバイスはその勢いを維持する手助けはできなかった。
Crunchbaseによれば、Yik Yakは2013年に設立されて以来、ベンチャーファンドで7340万ドルを調達し、2014年の順調な時期にはその評価額は4億ドルに迫っていた。

6/10:Sprig

2017年5月にシャットダウン

4ラウンドで、26人の投資家から5670万ドルを調達。

独自の食品を作り配送していたスタートアップのSprigは、2017年の5月に閉鎖した。

2013年の創業以来、Sprigは健康に配慮したランチとディナーを提供するために5670万ドルを調達してきた。Sprigは、その最後の数ヶ月の間、興味深い戦略を試行していた。

同社はチップ機能を追加し、競合他社のほとんどが契約社員に頼っていた時に、従業員たちにフルタイムの雇用を提案した。Sprigはこのことによって顧客の引き留めをより効果的に行なうことができると考えた。これはSprig社のCEOであり、元TechCrunchライターのGagan Biyaniが1月に語ったことだ。

7/10:Jawbone

2017年7月をシャットダウン

14ラウンドで、19人の投資家から 9億5080万ドルを調達。400万ドルの借入金。

コンシューマー向けウェアラブル市場における存在感を維持するための、複数年にわたる闘いを続けた後、Jawboneは2017年7月に清算を開始した。

それは1990年代後半にその起源を持つJawboneの、長く引き伸ばされてきた終焉だった。かつて隆盛を誇ったJamboxスピーカービジネスは、私たちがこの会社の転換を今年の始めに報告したときには、既に関係のないものになっていた。そして同社はウェアラブル業界の継続的な縮小により、特に大きな打撃を受けているようだ。

合計で同社は約9億5100万ドルを調達したようだ、投資したのはAndreessen Horowitz、Sequoia、Kleiner Perkins、JP Morgan、Mayfield、Khosla、そしてBlackRockのような従来の貸出銀行(lending bank)たちだ。

しかし、すべてが失われたわけではない。新しい無名の投資家からの資本注入により、元の会社の背後にあった原動力のなかから、Jawbone Health Hubという新しいビジネスが立ち上がろうとしている。

8/10:Hello

2017年6月にシャットダウン

4ラウンドで、7人の投資家から4051万ドルを調達。

ベッドサイドに置く睡眠トラッカーのSenseを作っていたHelloは2017年5月に閉鎖された。 同社のブログ記事によれば直前まで会社の買い手を探していたようだ。

Temasekが主導し、4000万ドルを調達した昨年のラウンドでは、同社は2億5000万ドルから3億ドルの間に評価されていた。同社は、最初の製品を作る際にKickstarterで240万ドルを調達したが、それ以来、昨年出した音声認識バージョンのような、新しい機能を追加しようとして来た。その最後のユニットの価格は149ドルだった。
Helloは腕に装着する必要のない睡眠トラッカーという位置付けの製品だった。枕に小さなトラッカーを入れ、それを部屋の適当な場所においた親機で受信する仕掛けだ。睡眠のトラッキングは、ますます多くのフィットネスと健康トラッキングの構成要素となってきており、iOSには「ベッドタイム」という標準搭載機能さえ追加されている。

9/10:Pearl

2017年6月にシャットダウン

1ラウンドで、 4人の投資家から5000万ドルを調達。

Pearlは、車のナンバープレートカバーに埋め込まれる後方用カメラとして、2016年に世に出された。途中4人の投資家から5000万ドルを調達したものの、1年後の2017年6月に閉鎖された。

元Appleのエンジニアたちのチームによって設立された同社は、最高の後方用カメラを提供しているという意見も見られる。しかしそれは、後方用カメラがほぼ全ての車両の標準装備となっている現在、500ドルという価格は買い手にとって過大なものに映ったものと思われる。

10/10:Juicero

2017年9月にシャットダウン

4ラウンドで、17人の投資家から1億1850万ドルを調達。

Juiceroは創業後わずか16ヶ月で閉鎖される。同社は、Google Ventures、Kleiner Perkins、Campbell Soup Companyなどの著名なVCから1億1800万ドル以上を調達した。

しかし同社はブルームバーグの記事によって苦しめられた。この記事は、同社の提供するジュースパックは同社の提供する400ドルの絞り器を必要とせず、手で絞ることができることを示したものだ。

キューリグのコーヒーメーカーに触発されて、大きな注目を集めることができる類似のキッチンアプライアンスを探していたベンチャー投資家たちがいたようだ。ジュース提供は増加する傾向にあり、Juiceroのアイデアは、皆が自宅で簡単にジュースを用意できるようにするというものだった。しかし、マシンの初期費用は高く、 単に新鮮なフルーツを買って搾るのではなく、詰め替用ジュースパックの追加費用を支払わなければならなかった。

[原文へ]

(翻訳:Sako)

スマホでアクセサリーを製作・販売できる「monomy」運営元が1.2億円を調達

スマホ上で手軽にアクセサリーの製作から販売までできる、ものづくりマーケット「monomy」。運営元のFUN UPは8月31日、ベクトルと2名の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額1.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

FUN UPは過去にコロプラ元取締副社長の千葉功太郎氏、ソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏、楽天元代表取締役副社長執行役員の島田亨氏など複数のエンジェル投資家から合計数千万円を調達している。また同社は今回資金調達と合わせて、島田氏がFUN UPの社外取締役に就任したことも明かした。

登録後3カ月で4000件投稿するユーザーも

FUN UPは2011年にヤフー出身の山口絵里氏が立ち上げたスタートアップで、2016年8月にmonomyを正式にローンチした。monomyの特徴は面倒な手間や投資をすることなくスマホ上で気軽にオリジナルアクセサリーを作り、そのデザインを公開し、販売できることだ。

販売できるといっても、ユーザーはアクセサリーのデザイン案をアプリで作成し、投稿するだけ。素材集めやアクセサリー製作、決済、発送といった手間のかかる作業はmonomy側で担当。アクセサリーが売れた場合には、販売代金の10%をインセンティブとして受け取れる。高度な知識や技術は必要なく、在庫を抱えるリスクもない。気軽にアクセサリー作りに挑戦できることもあり、小学生のユーザーもいるのだという。

自分で作った商品を売るサービスは「minne」「Creema」といったハンドメイドマーケットや「メルカリ」をはじめとするCtoCのフリマサイトなどが存在する。それに比べて商品を作ることに焦点をあてたアプリを目にする機会はあまりなかった。

「ユーザー数や販売数よりも、ユーザーあたりの投稿数といった既存ユーザーのアクティブ率や満足度を重視してきた。新規ユーザーの登録後1週間の平均投稿数が30〜40件ほどに伸び、3カ月で4000件ものデザインを投稿するユーザーもいる。累計で100件以上投稿しているユーザーも600人を超えるなど、アクティブ率はかなり上がってきた」(山口氏)

monomyユーザーの多くはまず純粋にアクセサリー作りを楽しんだ上で、自分の作品を購入したり他ユーザーの作品を購入する。作品の投稿経験はなく購入経験だけがあるユーザーは、わずか3.6%だけだ。また「想定していたより他者の作品を購入している」と山口氏が話すように、自分で作品を投稿・購入している作り手の44.7%が、他ユーザーの作品も購入しているという。

今回山口氏の話を聞いていて興味深かったのが、作品が売れてインセンティブを取得したユーザーの換金率はわずか0.5%だということ。インセンティブを元手に自分や他ユーザーが作った作品を購入する人がほとんどで、monomyで手にしたお金をmonomyで使うという1つの経済圏のようなものができあがってきている。

正式リリースから約1年が経ち、現在monomyに投稿された作品は50万点を越えた。今後は引き続きアクティブ率を重視しながら、ユーザー数の増加も目指していくという。

今後は海外展開や横展開に加え、他ECとの連携も検討

monomyでは今回の資金調達も受けて、新たに海外展開と横展開を進める。

海外展開についてはすでにアメリカやアジアなど海外からmonomyへの流入が一定数あり、日本人のユーザーと同様積極的に作品を投稿しているという。商品を購入したいという問い合わせもあり、海外版のリリースを考えている。

あわせて靴やメガネなど、以前から構想としてかかげていた別領域への横展開も今後進めていく。これまで構築してきたmonomyのモデルを生かし、工場や職人とも連携しながらさまざまな領域における「ものづくりマーケット」を目指していく。

ものを「作る」部分で事業を広げていきながら、「売る」部分については他のコマースサービスとの協業も検討する。

「デザイン性が高いものを作れることがmonomyの特徴であり目指しているところ。作ったものを売れるサービスは他にもあり、ユーザーにとってはより売れる場所に出品できたほうが良い。たとえばAPI連携でmonomy上から他サイトに出品できるような機能を追加するなど、他社との協業も考えている」(山口氏)

直近では指定された予約数を達成すると割引価格で商品を購入できる「GOOD BUY」という共同購入機能をmonomy内でリリース。商品をより買いやすい・売りやすい仕組みも導入してはいるが、monomyが重視するのはあくまで作りやすいという部分。「販売をものすごく頑張るということは考えていない」(山口氏)という。

“3ステップで給料を前払い”、ミレニアル世代に向けた「Payme」が本日ローンチ

2017年はお金にまつわる面白いアプリがたくさん誕生した。CASHTimebankpolcaなどがその代表例だろう。そんななか、社会人なら誰にとっても身近な存在である「給料」に着目したサービスが生まれた。

本日ローンチした給料前払いサービス、「Payme」だ。

同時に、その運営会社であるペイミーは9月4日、インキュベイトファンドエウレカ創業者の赤坂優氏、ペロリ元代表取締役の中川綾太郎氏、CAMPFIRE代表の家入一真氏から総額5200万円を調達したと発表した。

ペイミーは今回調達した資金を給料前払いサービスの原資として利用するとしている。

企業がPaymeを導入することで、そこに勤める従業員は将来受け取る分の給料を先に受け取ることができるようになる。引っ越し、冠婚葬祭、アクシデントなど、給料日までに高額な出費があるときなどに便利だ。

ただ、給料前払いサービス自体は新しいものではない。三菱東京UFJ銀行もフレックスチャージという名で同様のサービスを展開しているし、enigmaが提供するenigma payもある。

では、それらのサービスとPaymeの違いはなんだろうか?24歳でPaymeを創業したCEOの後藤道輝氏によれば、それは若い世代でもストレスなく使えるUI/UXだという。

「既存のサービスは使いづらく、優しくない。Paymeはミレニアル世代によるミレニアル世代のためのサービスです」(後藤氏)

ミレニアル世代が使いやすく、とっつきやすいUI/UXを

取材時にサービスの流れを見せてもらったのだけれど、Paymeの使い方はたしかに簡単だった。必要なのは3ステップだけだ。

まず、会社で利用しているメールアドレスを入力し、アカウントのパスワードを設定する。すると、事前に企業から提供された従業員データと給与データをもとに、前払い可能額が表示される(正社員であれば給与全額の70%程度)。

あとは「申請」ボタンをクリックして銀行口座を指定すると、最短即日で前払いされた給料を受け取ることができる。

手数料は3〜6%を予定していて、企業の信用度によって変動するという。

Paymeを導入する企業側のメリットとしては、前払い制度を導入することで求人の応募数が上がったり、従業員満足度が向上したりなどが考えられる。もちろん、初期の導入時にPaymeと従業員管理システムとのすり合わせる必要があるなど、多少の作業は必要になる。

後藤氏によれば、Paymeはサービスローンチ時点ですでに20社への導入済みだ。具体的な企業名は非公開だが、「半分はIT系の企業だが、いわゆる『町の商店』のような規模の企業にも導入されている」のだそうだ。

VC投資業務の経験もある24歳起業家

「50年間変わっていない給料を変えたい」と話す後藤氏は、1992年生まれの24歳。

彼はEast Venturesでベンチャー投資業務に携わったあと、メルカリCAMPFIREを経てDeNAに中途入社した。そのDeNAの戦略投資推進室で約1年間勤務したのち、2017年7月にペイミーを創業した。

ローンチ当初は給料前払いサービスとして始まるPaymeだが、将来的には貸金業と第2種金融業を取得したいと後藤氏は語る。

そうすることで、給料データをもとにした貸金サービスを展開したり、Paymeをプラットフォーム化してユーザーから集めた資金を前払い用の原資にし、そのお金が生み出したリターンをユーザーにも分配するなどの構想があるようだ。

ペイミー代表取締役の後藤道輝氏

日本人がシリコンバレーで起業したFlyDataが400万ドルを調達して、日本オフィスを開設

2011年に米国シリコンバレーで創業したスタートアップ企業「FlyData」が、未来創生ファンド、アマノ、ニッセイ・キャピタルから総額400万ドルのシリーズAラウンドの資金調達を8月中にクローズしたことを発表した。既存投資家のニッセイは追加投資となる。FlyDataは2015年7月に約2億円のブリッジ資金調達をしているなど累計調達額は900万ドル超となる。

FlyDataが提供する主力製品の「FlyData Sync」は企業が持つデータベースをクラウド上にリアルタイムに反映して分析するためのSaaS製品だ。以前、TechCrunch Japanでは「データ駆動型組織になるための5つの構成要素」という記事を掲載したが(読んでないなら、すぐ読むべきだ)、企業が使うシステムではデータが分散していたり、アクセス権限がなかったり、分析に向かない形式であることが多い。FlyDataが提供するのは、企業がデータを活用するための基盤となる「常に最新状態の単一のデータ」をクラウド上で維持するためのサービスだ。

RDMSと呼ばれるデータベースはExcelでいう行(レコード)単位でのアクセスに最適化されている。行の読み書きは高速だが、列をまとめて傾向を調べるといった処理は苦手だ。特にデータ量が増えた場合には処理が遅くなる。本格的なITシステムであれば、高価なデータウェアハウス製品を導入し、さらに高額なコンサルフィーを払ってBIを導入するということになる。

FlyData Syncを利用すると、稼働中のRDMSのログから日々生まれる差分情報を監視して、これをAmazonのクラウド版データウェアハウスといえる「Amazon Redshift」にリアルタイムで反映し続けることができる。クラウド上のデータに対して任意のBIツールを組み合わせて使える。例えば、TableauやQuickView、Redash、Tibco、DOMOなどが利用できる。元のITシステムに変更は不要で、RDBMSに対してはリード操作すらかけないというのがポイントだそうだ。というのも、SIerが組んだシステムだと、たとえリード処理だけであってもデータベースに「触るな」と言われることがあるのが現実だからだ。

収益の8割以上が米国市場、日本でも拠点を構えて販売を本格化

FlyDataの顧客は米国を中心に世界に現在は約60社。FlyDataファウンダーの藤川幸一氏によれば、SaaSビジネスで最も金払いが良いのは米国。その結果、今のところは収益の8割以上が米国となっている。「アメリカのSaaSビジネスだと75%が米国というのが普通なので、弊社はやや高めです。東南アジアは『高い』といってSaaSにあまりお金を払ってくれません。人件費の違いですね。エンジニアの人件費が高いから米国はSaaSにお金を払う」(藤川氏)。創業者はもとよりメンバーに日本人が多いものの、現在日本市場の売上は1割程度。そこで日本でも市場を拡大するべく、8月末に東京・御徒町にオフィスを開設。技術の分かるソリューション営業など採用を進めているそうだ。「すでに5人くらいは日本で動き始めています」(藤川氏)

FlyDataファウンダーの藤川幸一氏。まだほとんど空っぽの東京・御徒町のオフィスも「すぐに社員でいっぱいにしますよ」と話す

導入顧客は、しっかり資金調達をしているスタートアップ企業が多く、顧客企業には99designs、Vivid Seats、InVision、MoveOnなどがある。日本の導入事例だとクラウドワークスやSansanのほか、マッサージのチェーンの「りらく」がある。りらくでは、それまで全国500店舗のCSVデータを本部に送ってデータに反映していたものをFlyData Syncを使ってRedshiftに反映。「毎日1時間各店舗で割いていた時間が削減され、エリア・マネージャーが店舗を回るときにも、リアルタイムでTableauからKPIを引き出して現場にフィードバックできるようになった」(藤川氏)という。「入社1年目の経営企画の社員でも使えます。以前は自分たちがどういうデータを持っているかも知らなかったが、専門家でなくても自分たちがほしいデータや知見を引き出せる」とデータ駆動のビジネスのメリットを語る。

今回資金調達に加えてFlyDataでは、AI研究者の東京大学の松尾豊氏が、個人としてアドバイザーに就任。データ処理の準備の部分にディープラーニングを適用する研究開発を進めるとしている。

インスタの投稿から飲食店を探せる「Tastime」、複数のエンジェル投資家から4050万円を調達

行きたいレストランをグルメサイトやグーグルで探すのはもう古いらしい。Tripboxが手がけるのInstagramの写真から飲食店を検索できるアプリ「Tastime(テイスタイム)」だ。本日、Tripboxは4050万円を第三者割当増資を実施した。引受先はDas Capital、EastVenturesの他、家入一真氏、中川綾太郎氏、佐藤裕介氏、田村淳氏といった個人投資家が参加している。

Tastimeのアプリを開くと、シズル感のあるピザや寿司などの料理の写真一覧が表示される。写真をクリックすると、その料理を提供する店舗の営業時間や連絡先、所在地の地図を確認することができる。エリアやレストランのジャンルを絞って飲食店を探すことも可能だ。

2017年3月にアプリの提供を開始して以来、アプリのダウンロード数は5万5000を超えたとTripboxは説明する。

今回、調達した資金はサービス対象地域の拡大に合わせ、開発やプロモーション、イベント開催に注力するという。具体的には、現在サービスを提供している東京・大阪以外に京都、名古屋、福岡の国内主要都市に加え、ハワイ、韓国、台湾、香港など海外都市にも対象地域を拡大する計画だ。

Tripboxは2016年4月に設立し、2017年4月にはDas Capital、Fablic代表取締役の堀井翔太氏らから1500万円の資金を調達している。

建設業界に健全な競争環境を―、3年ぶりの資金調達でシェルフィーが仕掛ける業界革新

施工主と施工業者をマッチングするプラットフォームを提供するスタートアップ企業のシェルフィーが、ジェネシア・ベンチャーズ、ベクトル、Skyland Ventures、個人投資家を引受先とする第三者増資により、総額1億円の資金調達を行ったことをTechCrunch Japanへの取材で明らかにした。

1億円の追加資金調達といえば、いまの日本のスタートアップ界では決して大きな金額ではない。資金調達が3年前のシード資金1500万円のみといえば、なおさらそう思う読者も少なくないことだろう。

シェルフィー創業者の呂俊輝(ろい・しゅんき)氏によれば今回の資金調達は「月額制から成果報酬へ」というビジネスモデルの転換のために行ったもので、一時的にキャシュフローが変わることに備える打ち手だという。創業以来、想定外のトラブルで社員の給与遅配という最悪の事態に青ざめることもある「自転車操業状態」(呂氏)だったことに比べると、1億円の資金のバックアップがあることで経営が安定。「最近顔色がよく元気だと言われます。よく眠れるんです」と笑う。

シェルフィー創業者の呂俊輝氏

「いつも月末にお金がなくて。常にお金がなかった。売上は安定して伸びていたのですが、月額制課金といっても1年一括前払いで頂いていたのでキャッシュフローで心配がつきなくて。ああ、今月はあと2社集めてこないと資金ショートだ、というような状態がずっと続いていました」

そんなシェルフィーは創業依頼、3年間かけて業界関係者の懐に深く入り込み、小さなピボットを積み重ねてきた。

建設業界のビジネスを効率化し、不要な中間マージンを吹き飛ばす。そのはずが、気づけば自分たちも上乗せされた手数料として図らずも中間マージンを取る側になってしまっていた。マネタイズしなければ生き残れないという現実がありつつも、業界の透明化と効率化を図るはずだったという理想のギャップからたどり着いたのは、課金モデルを大きく変える必要性。新しい課金モデルを根付かせて事業を大きく伸ばすために必要だったのが今回の資金調達だという。

ニーズを知り、信頼を勝ち取るために業界に深く潜入

シェルフィー創業者の呂CEOは「わらしべ長者」のように少しのキッカケをつかんで業界に入り込むのが得意なようだ。

「起業当初は右も左も分かりませんでした。でも、初めてお客さんとなってくれた1社目の施工業者の方が、現場を見せてくれたんです。工事現場って立入禁止のテープが張ってあるじゃないですか? あのテープ、あれを越えて中に入れてくれたんです。創業してまだ1週間目のことでした。うれしかったですね。『ああ、業界に受け入れられたんだ』って(笑)。いまもその方には本当に感謝しています」

テック系業界に身をおいていると勘違いしがちだが、伝統的な産業では「IT」に対する風当たりが強いこともある。

「(ライブドア創業者の)堀江さんの逮捕で『IT業界』のイメージが止まっているんです。地方の施工業者に営業に行っても、最初は『胡散臭いやつら』と見られて相手にされない。まあ、こちらはITの若造じゃないですか」

「ただ、ぼくらは施工のことはすごく勉強しているわけです。例えば木の加工手法の専門的な話なんかをすると、なんだお前たちITなのに俺たちの業界のことを良く分かってるじゃないかって感じで打ち解けて。それで飲みに連れて行ってもらったりするうちに、いろいろと教えていただけたりするんです。最初の壁を超えると後は話が早い」

業界の中から商習慣の革新に挑戦中

現在シェルフィーは東京、大阪、福岡など9都市に300社の施工業者を顧客として抱えている。全国には約3万の施工業者があるので伸びしろはまだ大きいが、顧客数や事業拡大よりも優先しているのが「施工案件のコンペを正常に開催するというイノベーションを起こすこと」という。逆にいえば、現在の建築業界のコンペは歪んでいる、というのが呂CEOの見立てだ。

シェルフィーが扱う建築案件の多くは、飲食、小売、ファッションなどの店舗。保育園や病院もある。実は全国チェーンを展開する大手が新規店舗を開くというケースが多いという。東京に本社があって、たいていは「店舗開発部」というような専門部署がある。この専門部署が「困っている」のだという。

バブル期に84兆円規模あった建設市場は直近で50兆円規模に落ち込んでいる。そこに2013年の東北震災やオリンピック需要もあって、いまは需給が逼迫。施工を請け負える業者を探すのが難しくなっているのだそうだ。

そんなこともあってシェルフィーでは「店舗開発ナイト」と名付けたディープな業界関係者向けイベントを主催し、業界の担当者間のノウハウ共有も支援しているという。

「店舗開発部は、どこも悩みは同じなんです。見積もりの適正価格が分からない、コンペの最後で施工主側の社長が出てきてプランをひっくり返す、後輩教育が難しい、そもそも依頼できる施工業者を探すのに困っている、といったことです」

例えば飲食チェーンが富山県に新規出店するというとき、担当者が出張して施工業者を探すのは負担が大きい。シェルフィーは典型的なツー・サイド・プラットフォームだが、地道に地方へ営業を行って施工業者を顧客として開拓していったことが奏功した。2014年の創業以来、発注総額は150億円に積み上がっていて、そこから得た「施工主」「施工業者」の両方の悩みと本音を知り尽くしたことが強みだと呂CEOはいう。

自転車操業でも売上増にコミットした意地と苦労

シェルフィーは2014年の創業以来、基本的に自己資金で事業を育ててきた。1500万円のシード資金はすぐに底をつき、VCからの出資話も頓挫するという苦労をしている。

「実は以前に1億円の資金調達の予定もあったんです。それが最後にVCに断わられてしまって……。そこからですよね、よし、自分たちで稼ぐぞ、外部に頼らないぞといってメンバーの意識が変わったのは。VCにプレゼンした事業計画の売上推移を何がなんでも達成するぞって」。

売上を作るために、1つ1つの案件をいわゆる「手売り」したことが、結果として業界の本質的問題への直感として結晶し、3年経過してみて呂CEOの信念に結び付く。

「最初は全部マッチングを人力でやっていたので、どちらかと言うと人材紹介ビジネスに近かったんです。施工業者ごとにシェルフィーの担当営業マンがいて、施工の依頼案件に対して施工業者の稼働状況とか得意地域とか、そういうのを勘案しながらマッチングしていました」

「施工主と施工業者は『顔合わせ』といって、受注の前に互いにニーズや条件を確認するミーティングをするのですが、そこに同席して司会進行もシェルフィーでやったりして(笑)。そうやって一件一件成約をしていました」

「ITリテラシーはどうか、何に困っているのか。そうしたニーズを知りたかったんです。だから、現場に入ってガッツリやってきました」

本音を言わない依頼主と受注側が、透明化と効率化のボトルネック

日本人らしい話だが、「顔合わせ」では、なかなか両サイドとも本音は言わないという問題があるという。施工主はやりたいことを言わないし、施工業者は工期がきつくても「できます」と言いがち。さらに言うと、発注者側は自分たちのニーズを把握していないことも多い。海外では施工主はプロジェクト・マネージャーを雇い、専門家が業者と交渉することが多いそうだが、日本では専門家のサービスに対価を支払うという商習慣や文化がない。

そこでシェルフィーがやったのは案件ごとの詳細な聞き取り情報のデータ化と透明化。

支払いサイトや支払い方法(現金か手形か)に始まり、図面、予算や工期はどうか、初出店か、ターゲット利用者は誰か、特に力を入れたい部分は何かといった100項目以上にわたる聞き取り調査シートを案件ごとに用意して可視化。項目には担当者の人柄なんていう項目もあるそうだ。いい人か悪い人かではなく、積極的に提案をする業者か、どちらかというと言われたことを的確にやるタイプかといった違いで、これは発注者側にとっては重要な情報なのだとか。

現在はこうした標準化されたフォーマットから最適な業者をランキングするアルゴリズムを開発。地域や得意領域、実績のある店舗の種類や業種といったことから施工業者を選び出せるようになっているという。

横浜の案件なら横浜の業者が良いし、マルイ系ショッピングモールの実績があるなら、マルイ系の案件のマッチ度が高いといったスコアで判断をしている。このランキングに基いて上位50〜60社の施工業者に案件メールを一斉送信する。人気案件だと3社というコンペの枠は数十秒で埋まるという。

案件終了後には20項目にわたる相互評価も行い、その結果はランキングにも反映される。

さらに、これまで施工実績がないために案件獲得が難しかったものの、実力的には施工可能というマッチングも生まれてきているそうだ。施工管理会社は専門化が進みがちで、何度かアパレルを手がけるとアパレルの案件ばかりが来るようになる。しかし、本当のところアパレルを手掛けたことがあれば、実はカフェも上手に施工できるというような組み合わせがある。シェルフィーは、そうした知見をためてマッチングの効率化を進めているそうだ。

「出店時期は業種ごとに重なりがちです。例えばアパレルばかりやってると繁忙期に左右されたりします。だから施工業者が業種の幅を広げるのは意味のあることなんです。ただ、未経験の業種の初めの1件目の案件受注というのは難しい。そこをお手伝いしている形です」

マッチングの最適化ということでいえば、これまで施工の工程やプレイヤーのかかわり方から難しかったことも可能になりつつあるという。例えば、納期は伸びるものの家具を中国に発注できる施工業者や、木工工場を持っていて金属にこだわらなければ安く良い家具が作れるというようなことがある。施工主のこだわりポイントを事前に詳細に聞いておくことで、何が重要で何が必須でないかを分かったマッチングができる。「これまでオフィスのパーティションなんかでも、後50センチずらせば安くできるのに、それが設計デザイナーに伝わらなくて高くなるということがありました。そういったところの『翻訳』は大事です」。

自分たちの手数料が余計に中間マージンを引き上げてしまう結果に

施工業者を1社ずつ開拓し、施工案件を1つ1つ積み重ねた3年間。累計発注額は150億円を超えた。現在シェルフィーでは平均案件単価が1500万円(30〜40坪の案件)で月間4〜8億円、年間100億円規模の発注額を積み上げているそうだ。

建設業界の案件は「施工主→施工管理会社→(実際の工事を行う)専門業者」というふうに流れる。施工主には自宅を建てる個人も含まれるが、実はここは日本では建売住宅が主流のため大きな市場ではなく、85%は店舗需要。年に10万店舗の新規出店や移転があるという。その下流工程といえる専門業者側のプラットフォームとしては、スタートアップのツクリンクがある。だだ、発注者側の「上流を透明化するところに最大のニーズとインパクトがある」というのが呂CEOの考えだ。

シェルフィーは当初は施工業者から15万円の固定フィーを得る月額制ビジネスを展開してきた。それを2016年末から転換。コンペにおける報酬制に変えようとしている。どういうことか。

問題だったのは施工業者側のインセンティブや、不透明な見積もり習慣だ。

当初シェルフィーでは施工費の5%を受け取るモデルを展開したが、そうすると、施工業者は自分たちの手数料にさらに5%を上乗せしてコンペに案を出すだけになってしまった。2000万円の案件に対してシェルフィーの手数料が100万円とすると、最初から2100万円としてコンペに出してしまうということが起こったのだそうだ。

透明化をして仲介手数料を下げるために始めたプラットフォームビジネスなのに、逆のことが起こった。そこで15万円の月額固定料金として、施工業者に安定して送客する月額課金制に変えてみた。それでもやはり「ぼくらが中間搾取の一部になってしまった」(呂CEO)という。それでは案件ごとの単価が上がるため「シェルフィー案件」はコンペに負けることにもなっていた。

月額課金制度を廃止して、コンペ参加費用を徴収するモデルへ

結局、日本の建設業界のコンペというのは情報が不透明で、「安くて良いプラン」で競争すべき理由が欠けているたのだ。コンペというのは発注側の上司や社長を納得させるためのポーズに成り下がっていて、あらかじめ「(発注側として)いくらなら出せる?」というのに合わせてプランを出すようなコンペすらあるという。アイミツを取ったということを言うためだけに「発注はできなくて申し訳ないけど、2000万円の金額の見積もりを作ってもらえないか?」という依頼が施工業者に来たりする、そんなおかしな商習慣まであるという。

「コンペの理想は、施工業者が得意分野で値段を切り詰めたり、資材も安いものを調達するなど努力をすることです。では、どうすれば努力をするか? 勝たないと損だという状況を作ることです。新しい課金モデルでは、まずコンペの参加費用として施工費の1%をコンペに参加する3社から徴収します。月額制だとコンペに負けても別に損はしません。コンペ参加費用を取れば、勝たなければ損なので良いプランを提案するインセンティブになります」

「コンペに勝ったら成果報酬として2%いただきます。合計3%の手数料ですが、仲介業者は5〜10%取るのが一般的なので、これでもまだ安いんです。しかも、従来は5〜10社でコンペしていたのを3社だけに絞る。勝率は悪くないですし、チェーン店展開の案件が取れれば、続く案件の受注にも繋がる可能性がある。施工業者にしてみたら高くはないんです」

コンペに負けると損をするという課金モデルへの変更は、一部の施工業者から反発もあったという。すんなりと受け入れられるものではなかったが、2016年末に開始した新課金モデルの移行は今回の資金調達と前後して完了しつつある。

シェルフィーには現在15人正社員と3人のインターンが在籍している。毎年4月には新卒入社も含めて全社員にストックオプションを配っているそうだ。新しい課金モデルで業界の変革に挑戦し、今回の仮説と方程式が正しいことが証明された段階で、次回は大きく不動産や商社などシナジーのある事業会社から大きく資金を調達をする。そして、ゆくゆくは200億円程度での上場を目指すしたい、と呂CEOは話している。

建設業界のコンペのあり方を変えて「公正公平なプラットフォームを作りたい」というシェルフィーの挑戦は現在進行系だが、業界特化プラットフォームの作り方としても、今後に注目だ。

ホームセキュリティー提供のSecualがLIXILに続き、NHN CAPITALより資金調達

Secual(セキュアル)は工事なしで窓やドアに取り付けるIoT端末を使ったホームセキュリティーサービスを提供している。Secualは本日、NHN CAPITALより第三者割当増資を実施した。調達金額は非公開だ。

Secualを利用するには、窓やドアに専用の「センサー」を貼り付け、「ゲートウェイ」端末とスマホアプリとを連携する。セキュリティーをオンにしている時にセンサーが窓やドアの開閉や衝撃を検知するとゲートウェイからアラームが鳴り、アプリにも通知する仕組みだ。

今回Secualに出資したのは2017年7月にNHN JAPANのCVCとして設立したNHN CAPITALだ。Secualが彼らにとっての第一号案件となる。

NHN JAPANの完全親会社は、韓国に拠点を置くインターネット企業NHN Entertainment Corp.だ。NHNグループは韓国、日本、中国、台湾、タイ、シンガポール、アメリカなどで電子決済、Eコマース、アドテクノロジー関連事業やコンテンツサービスを手がけている。

SecualはNHNグループ各社と協業することで、「センシングデータに対してより高度な分析を実現し、アラート通知の精度向上をはじめとするデータ利活用を推進しつつ、データインフラの安全性向上とコスト抑制の両立を図ります」とプレスリリースでコメントしている。

また、NHNグループのネットワークを活かしてSecual製品のアジア展開を目指すとSecualの代表取締役を務める青柳和洋氏は話す。NHN Entertainment Cort. は韓国ですでにTOAST CAMというセキュリティーカメラを提供していて、セキュリティーサービスへの需要があると言う。

Secualはイグニション・ポイントからスピンオフした会社で、2015年6月に設立。同月にウィルグループインキュベートファンドからシード資金を調達し、2015年8月にはMakuakeのクラウドファンディングキャンペーンで600万円を超える資金を集めた。2015年12月にはアドベンチャー、AMBITIONらから総額6000万円を調達。2016年5月にもベクトル、インベスターズクラウドから総額1億5000万円を調達している。2017年4月にはワイヤレス・ブロードバンドサービスを提供するワイヤレスゲートとの資本提携を実施した。

また、つい先日の8月29日、SecualはLIXILとの資本業務提携を発表している。資本提携では総額1億円を調達したとのこと。LIXILと協業では、「次世代の窓」をコンセプトとした一般住宅向け窓および周辺製品の企画、開発を行う計画だ。

 

面倒な日程調整はチャットボットが代行——「オートーク」運営元が数千万円の資金調達

「人手のかかる機械的な作業をテクノロジーで代替・最適化できないか」、AIやチャットボットといった最新の技術を活用しながらこの課題に取り組むスタートアップが増えている。日程調整をチャットボットで代行する「オートーク」を手がける、RegulusTechnologies(レグルステクノロジーズ)その1社だ。同社は8月31日、500 Startups JapanとKLab Venture Partnersから数千万円規模の資金調達を実施したことを明らかにした。

RegulusTechnologiesが手がけるのは、個人向けのオートークと企業向けの「オートークビズ」。このどちらにも共通するのが「手間のかかる作業をオートメーション化することで、人間の生産性を高める」というテーマだ。

個人向けのオートークは、チャットボット型のパーソナルアシスタントのような位置付けのサービス。GoogleカレンダーやOutlookカレンダーと連携しておくだけでチャットボットがユーザーの予定を把握し、日程調整する。ユーザーがやることはメールやDMで専用URLを相手に共有することだけだ。

企業向けのオートークビズはアルバイト採用時などに、担当者が応募者と日程調整をする際の手間を削減するもの。7月のリリース以降すでに複数の上場企業への導入実績があるという。

「ある企業の方から『アルバイトの応募があっても、面接まで来てくれない人が多くて困っている』という課題を聞いたことがきっかけ。通常は採用担当者が電話やメールで面接日の調整をするが、ここに時間がかかっている。チャットボットで代行できれば、応募後すぐにコミュニケーションがとれると考えた。応募者の熱量が高ければ面接に来てくれる確率もあがるし、チャットボットであれば採用担当者の負担も抑えられるのではないかと」(RegulusTechnologies代表取締役・伊藤 翼氏)

伊藤氏によると、たとえば飲食店では店長がアルバイトの面接を担当することも多く、すぐに連絡をとりたくても本来の業務が忙しく対応に時間がかかってしまうケースもあるそう。大量の応募があれば面接日程の調整だけで膨大な工数が割かれ、担当者の大きな負担になってしまう。

その課題を解決するべく、オートークビズでは担当者はカレンダーの更新と確認をするだけ。日程調整から当日のリマインドまではチャットボットが代行する。

「自動化とはいってもどこかの段階で人手がかかるサービスも多い。オートークビズの場合は面接を実際に行うまで、応募者と担当者が直接やりとりをすることは一切ないというのが特徴」(伊藤氏)

RegulusTechnologiesでは今回調達した資金をもとに人材採用やサービスの改善を進めていく。オートークについては日程調整時にレストランへの送客などを行う機能や、社内外の日程調整に使えるビジネス版の展開についても検討しているという。

写真左から、RegulusTechnologies共同創業者の塚由 恵介氏と伊藤 翼氏

RegulusTechnologiesはエンジニアの伊藤氏と、デザイナーの塚由恵介氏によって2016年に創業されたスタートアップ。伊藤氏は過去に複数のスタートアップに参画し、その際にチャットボットの開発にも携わった経験を持つ人物。塚由氏もFablic在籍時にフリマアプリ「フリル」のデザイナーを務めるなど、様々なプロダクトをデザインしてきた。

「自動化を意識しすぎるとコミュニケーションがドライになるので、キャラクターを用いるなどドライにならないように設計している。今後も気軽に使えて、面倒な作業も自動化されるサービスを目指していく」(伊藤氏)

AIスタートアップのAppierがソフトバンク、Line、Naverなどから3300万ドル資金調達

Appierの共同創業者兼CEOのChih-Han Yu(写真中央)と社員たち

AI(人工知能)を活用してマーケティングの意思決定を支援する台湾のスタートアップ企業Appierは、シリーズCにおいて名だたるアジアの投資家勢から3300万ドルを調達したことを本日(米国時間8/30)発表した。投資を行ったのは、ソフトバンクグループ、LINE、Naver、EDBI(シンガポール経済開発庁の法人投資部門)、そして香港に本拠を置く金融サービス企業AMTDグループ。

これにより、今までAppierが調達した資金の総額は8200万ドルになった。前回のラウンドを率いた主な投資家は、Sequoia CapitalやPavilion Capitalなど。Appierの共同創業者兼CEOのChih-Han Yuは、シリーズCで調達した資金を、シンガポールを含む台湾以外の国のエンジニアリング、および研究開発チームの成長に投じると述べている。

Appierは他の地域への展開を検討する前に、アジアにおける影響力を高めていく意向だ。

「我々はアジアのインターネット企業に焦点を置いており、今回のラウンドの出資者の皆さまに、アジア全体に展開するための多大なパートナーシップを頂いたと考える」。Yuはそう述べた。

ソフトバンクグループとLINE株式会社はいずれも日本に本社を置き、Naverは韓国最大のインターネット企業の1つだ。日本と韓国の両国は、北アジアにおけるAppierの最大の市場。(930億ドルのSoftBank Vison Fundは現在、前代未聞の投資規模として注目を浴びているが、Appierに対する出資はソフトバンクグループが行った)。EDBIは、もう1つの重要な市場である東南アジアを代表する企業であり、AMTDは香港への架け橋だ。

2012年にAppierが設立された当時、同社はクロススクリーン・マーケティングに焦点を当てており、それは他の製品を展開する下地として役に立ったとYuは語る。Appierは現在2つのメイン製品を持つ。1つはCrossX Programmatic Platformと呼ばれる製品。企業がデジタルマーケティングのキャンペーンにAIを活用できるよう制作されたものだ。2つ目はAxion。企業が顧客の行動を理解し、予測するのを支援するデータインテリジェンスプラットフォームだ。クロススクリーンマーケティングの基盤があるため、Appierはその予測の基礎となる強力なユーザーデータのグラフを持っているとYuは言う。

「マーケティングは企業と関わるうえで最初の出発点となり、そしてまた多くの素晴らしいパートナーと出会うことができた。ここ何年にもわたり我々は、多数の問題解決や、ユーザーに関するより深い洞察と分析、ユーザーの行動予測に対するより良い理解などを行うため、多くの企業がAIを活用したいと思う強いニーズを見てきた」とYuは述べる。

例えばある化粧品会社は、Appierのソフトウェアを使用して、小売店の売上やアプリなどといった様々な部門や情報源から来るデータを同期する。CrossXは顧客のエンゲージメント率をどのように高めるかを考え出すのを支援し、Axionはどういった顧客がリピーターになるのか、いつ製品を再び購入する可能性が高いのかなどといった、顧客層に関するさらに詳細な洞察を提供する。

Appierが現在ビジネス共にしている企業は3つのカテゴリーに分類できる。1つは消費者ブランド、2つ目は既に多くのユーザーデータを持っており、予測の精度を高めたいeコマース企業、3つ目は020サービスや、ゲーム内の行動におけるユーザーのエンゲージメントのパターンの理解を深めたいモバイルコマースやゲーム開発会社だ。

ソフトバンクグループ株式会社の執行役員兼事業副統括の田中錬は、事前に準備された声明の中で以下のように述べた。

「ビッグデータやIoTなどの革新的なテクノロジーと組み合わせることにより、AIは産業革命以上のインパクトを世界に与えようとしている。AIは既に我々の生活の多くの場面で役立っており、企業においても大きな役割を果たしていくものと考えている。Appierの法人向けAIというアプローチはユニークであり、ソフトバンクはAppierのパートナーとして、新しい画期的なAIソリューションの構築を楽しみにしている」。

 

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(翻訳:Keitaro Imoto / Twitter / Facebook

大麻情報ウェブサイトHerbが410万ドルを調達

米TechCrunchでは多くの大麻関連の営業を受けるが、 Herbほど著名な投資家から支援を受けている企業はほとんどいない。

Herbは今日(米国時間8/29)、シードファンドで410万ドルを調達したことを発表した。Lerer Hippeau Venturesがラウンドをリードし、Slow Ventures、Buddy Mediaの共同創業者Michael Lazerow、Bullpen Capital、Shiva Rajarama、Liquid 2 Ventures(NFLの殿堂入り選手Joe Montanaが率いる企業)、ShopifyのCEO Tobi Lutke、ShopifyのCOO Harley Finkelstein、そしてAdam Zeplainが参加した。

「大麻業界に関する調査を行ったところ、わたしとLiquid 2 Venturesのチームはどちらも、関連性の高い有益な大麻コンテンツを提供する企業で最もプロフェッショナルに経営しているのは、HERBであると判断した」。Montanaはファンドの表明にてそう語った。

Herbの記事や動画では最新の大麻関連ニュースを取り上げており、ハウツーや教育的コンテンツも豊富に揃えている。Herbの始まりは「The Stoner’s Cookbook」と呼ばれるウェブサイト。2015年、Matt Grayに買収されて商標を変更した。Tubular Labsによると、それ以降Herbは毎月2億回の動画再生回数を記録するまでに成長し、ユニーク視聴者数は530万人に達している。

現在、Herbはデジタルメディア事業のように見えるかもしれないが、Grayは「我々は単なるウェブサイトではない。我々は常にテクノロジープラットフォームを構築しようと試みてきた」と述べる。

Grayは最終的にHerbを、近所の店から大麻を購入し、自宅に数分で配達するといったような「大麻に関するすべてのこと」を行えるウェブサイトにしたいと考えているのだ。

GrayはHerbをUberやAirbnbと比較して話した。なぜなら両社とも消費者とサービス提供者間の仲介役を担っており、ビジネスを展開するうえで法廷での大きな争いを幾度か乗り越えなくてはならなかったからだ。Herbは地域の法律を尊重するとGrayは語る。しかし彼は同時に「これらの法律は変わっている — そろそろ動き出してもいい頃だ。法が変わった時、Herbはその場にいたいんだ」と述べた。

誤解を避けるために言うと、Herbが市場でビジネスを行うのはまだまだ先の話だ。とはいえ、地元の大麻薬局の詳しいプロフィールを作成するなど、目標に近づくための新しい機能をウェブサイトに追加しているとGrayは語った。

「現在は大麻に関する非常に悪いイメージが存在している。Herbの味方としては、昨日の社会的な偏見は明日の社会的な標準になると考える。我々はこの産業にとって最良の顔を提示し、大麻が一般に受け入れられるよう努めている」。

 

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(翻訳:Keitaro Imoto / Twitter / Facebook