バイデン大統領が掲げる2050年太陽光発電の目標を達成するために米国が必要な4つのこと

米国エネルギー省(DOE)が発表した太陽エネルギーの未来に関する報告書には、今後30年間における明るい未来像が描かれており、30年後には国のエネルギーの半分近くが太陽でまかなわれるようになるという。ただしそれを実現するためには、太陽光発電の性能向上、エネルギー貯蔵量の増加、ソフトコストの低減、そして約100万人規模の労働力の確保という4つの分野における大きなハードルを乗り越えなければならない。

この野心的な目標を達成するためには何が必要なのか、同報告書による考えをご紹介したいと思う。

太陽光発電の向上

DOEが期待するような導入量を達成するためには、太陽電池自体のコストと効率性の両方を改善していく必要がある。2020年には過去最高の15ギガワット分の太陽電池が設置されているが、2025年までにその2倍、2030年までにはさらに2倍の設置量が必要となる。

もし太陽光発電の効率が上がらなければ、すでに野心的な数字をさらに上げる必要がある。また、現在の価格のままではコストが高すぎてその数量を達成することは不可能である。

太陽光発電は確実に進歩を遂げてきたものの、まだまだ今後の進展が必要だ(画像クレジット:米国エネルギー省)

幸いにもすでに効率は向上しているし、コストも下がっている。しかしこれは当然、ただ自然に起きたことではない。世界中の企業や研究者たちが新しい製造プロセスや新素材などの改良に何百万ドル(何億円)も費やしてきたのである。それぞれが少しずつ進化を遂げ、時間をかけて実績が積み上げられてきた。このような太陽電池に関する基礎研究や科学および手法は、これからも過去20年間と同様のペースで、あるいはそれ以上のスピードで進歩し続けなければならないのだ。

DOEは、より特殊なPVをより安価にしたり、バンドギャップによる損失を最小限に抑えるためにセルを積層したりするなどの研究が重要であると指摘している。また、柔軟性のあるタイル状や板状の基板や、作物や建物の内部に光を通す半透明の設備も考えられるだろう。こういった計画全てを通して、2030年までに全体のコストを現在の1ワット平均1.30ドル(約140円)から、0.70ドル(約77円)とほぼ半減させることを目指している。

このレポートでは太陽集光器が取り上げられているが、多くの企業が産業プロセスの代替として太陽集光器を検討し始めている。大規模なグリッドをサポートするために使用されることはないだろうが、多くの化石燃料ベースのプロセスを置き換えることになるだろう。

より多くのエネルギー貯蔵

太陽からエネルギーを得ていると、夜間は何らかの形での蓄電に頼らざるを得ない。当初は原子力や石炭が使われていたが、最近では昼間に集めた余剰電力を蓄えるタイプのものも増えている。ピーク時の電力を自然エネルギーでまかなうことで、都市は安心して炭素系エネルギーからの脱却を図れるようになる。

蓄電というと電池のイメージがある。確かに電池はあるが、蓄えなければならないエネルギーの大きさを考えると、リチウムイオン電池のようなものは主な蓄電手段としては使えない。しかし、余ったエネルギーは水素燃料電池のようにエネルギーを大量に消費する再生可能な燃料の生産に回すことが可能だ。そしてこの燃料が、太陽光が需要を満たせないときに発電するために使用されるというわけだ。

この図では、通常の需要(紫)、太陽光発電による需要(オレンジ)、蓄電による負荷軽減(混合色)を示している(画像クレジット:米国エネルギー省)

これは数ある計画の中のほんの一部である。報告書には「熱的、化学的、機械的な貯蔵技術は、揚水式熱貯蔵、液体空気エネルギー貯蔵、新しい重力ベースの技術、地中の水素貯蔵など、さまざまな段階で開発が進められている」と記されている。

この国が必要とするさまざまなレベルのエネルギーの冗長性と貯蔵期間をもたらすために、新旧のあらゆるテクノロジーが活用されていくことは間違いない。これらのテクノロジーは、太陽光やその他の再生可能エネルギーがより多くの需要に対応できるようにするため、大いに役立っていくことだろう。

ソフトコストの削減

太陽電池の導入率を2倍、3倍にしようとすれば、太陽電池自体のコストだけでなく、アセスメント、会計、労働、そして当然実際の作業を行う企業の利益など、すべてのエンドツーエンドのプロセスにかかるコストを下げなければならない。

ハードウェア以外のコストを下げるというのは、すでに多くのスタートアップ企業の目標となっている。たとえばAurora Solar(オーロラ・ソーラー)はこの兆候を見逃すことなく、ソーラー設備の計画、視覚化、販売をオンラインでできるだけ簡単に行えるようにしている。

おそらく現在のソーラールーフのすべて込みの価格は、ハードウェアコストの2倍以上になるだろう。これには資金調達、規制、市場など、いくつかの要因があり、それぞれに本稿では説明しきれないほどの複雑な事情がある。ただ、これらの分野で時間やコストを効率化することで、太陽光発電の設置費用を1%でも安くすることができれば、その1%を巨額の金額に変えるだけのボリュームが存在すると言えるだろう。PVの改良に多くの科学者の努力が必要であるように、これを実現するためには多くの組織の努力が必要となる。

100万人規模の労働力

そして何より、これらの作業を実際に行う人がいなければどうしようもない。現在アメリカでソーラー産業に従事していると推定される25万人の何倍にもあたる、大量の労働力が必要となる。

画像クレジット:Will Lester/Inland Valley Daily Bulletin/ Getty Images

この分野での仕事は、建設経験のある熟練工から、送電網を管理してきたエネルギーの専門家、政府の必然的なトップダウンの性質と商業を結びつける官民パートナーシップの専門家まで多岐にわたる。50万から100万の雇用が追加されることで、多くの新企業やサブ業界が形成されることは間違いないが、これまでの一般的な内訳は、設置やプロジェクト開発が約65%、販売や製造が約25%、残りがその他さまざまな役割を担っている。

しかし、現在老朽化しつつある石油や石炭のインフラにしがみついているエネルギー関連企業は、何万人もの従業員を適切に対処していく責任があり、再生可能エネルギー分野がそのための完璧な移行スペースであるということは注目に値する事実である。本報告書では「移行期間中、一部の化石燃料企業の財務状況は悪化する可能性がある」と記されているが、これは控えめすぎる表現である。著者らは、トレーニング、転勤のほか、年金などの既存の経済的利益の保証をカバーする移行プログラムに資金を提供することを強く提案している。

太陽電池業界は他のいくつかの業界と同様、圧倒的に白人と男性が多い業界であるということが同報告書で指摘されている。何百万人もの雇用を少しでも公平にするためには、その面においても努力する価値があるのではないだろうか。

調査内容の全文はこちらからご覧いただける

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

ニッケル水素電池で定置型エネルギー貯蔵に革命を起こすEnerVenueが109億円調達、クリーンエネルギーを加速

再生可能エネルギーは、1日のある時間帯に発電が過剰になり、ある時間帯には足りなくなる傾向にある。これを普及させるために、電力網は大量のバッテリーが必要になる。リチウムイオンは家電製品や電気自動車には十分だが、バッテリーのスタートアップEnerVenue(エナベニュー)は、定置型エネルギー貯蔵に革命を起こす画期的技術を開発したという。

ニッケル水素バッテリーのテクノロジー自体は新しくない。実際、航空宇宙分野では人工衛星から国際宇宙ステーション、ハッブル望遠鏡にいたるまで、数十年前からさまざまなものの電力源として用いられている。しかしニッケル水素は、地球規模で利用するには高価すぎた。しかし、スタンフォード大学教授(そして現在EnerVenueのチェアマン)のYi Cui(イ・クイ)氏は最適な材料を組み合わせる方法を見つけることでコストを大幅に引き下げようとしている。

ニッケル水素にはリチウムイオンをしのぐ重要な利点がいくつかある、とEnerVenueはいう。まず超高温にも超低温も耐えられる(空調や温度管理システムが必要ない)、メンテナンスがほとんど必要ない、そしてはるかに寿命が長い。

このテクノロジーが石油・ガス業界の巨人2社の目に留まり、エネルギーインフラストラクチャー企業のSchlumberger(シュルンベルジェ)と石油最大手Saudi Aramco(サウジアラムコ)のVC部門はスタンフォード大学とともに、EnerVenueのシリーズAラウンドに計1億ドル(約110億円)を出資した。EnverVenuがシード資金1200万ドル(約13億1000万円)を調達してから1年後のことだ。同社はこの資金をニッケル水素バッテリー製造の規模拡大に使用する予定で、米国のGigafactory(ギガファクトリー)はその1つだ。またSchlumbergerとは国際市場における製造・販売契約の交渉に入っている。

「私はEnerVenueと出会う前に3年半、リチウムイオンと競争できるバッテリーストレージ技術を探していました」とCEOのJorg Heineでmann(ヨーグ・ハイネマン)氏が最近のインタビューでTenCrunchに話した。「私はほとんど諦めかけていました」。そしてクイ氏に会った。彼は研究成果を駆使して、キロワット時当たり2万ドル(約220万円)のコストを100ドル(約1万1000円)にまで下げる見通しを立てた。それは既存のエネルギー貯蔵と肩を並べる驚愕の価格低下だった。

EnerVue CEOのヨーグ・ハイネマン氏(画像クレジット:EnerVenue ))

ニッケル水素バッテリーはバッテリーと燃料電池のハイブリッドの一種だと思って欲しい。圧力容器の中で水素を発生させて充電し、放電すると水素は水に再吸収される、とハイネマン氏は説明した。宇宙にあるこのバッテリーとEnerVenueが地球上で開発しているものとの大きな違いは材料にある。軌道上のニッケル水素バッテリーはプラチナ電極を使っていて、ハイネマン氏によるとコストの最大70%を占めている。従来技術はセラミックのセパレーターも使っていてこれもコスト高の要因だ。EnerVenueの重要なイノベーションは、低コストで地球に豊富に存在する材料を新たに見つけることだ(ただし具体的な材料は公表していない)。

ハイネマン氏は、社内の上級チームが別の技術革新に取り組んでいて、さらにコストダウンを進めてキロワット時当たり3ドル(約330円)以下を目指していることもほのめかした。

利点はそれだけではない。EnerVenueのバッテリーは、充電速度と放電速度を顧客のニーズに合わせて変えることができる。10分の充電または放電から10~20時間の充電・放電サイクルまで可能だが、同社は約2時間の充電と4~8時間の放電に最適化している。EnerVenueのバッテリーは性能を落とすことなく3万回の充電サイクルが可能なように作られている。

「再生可能エネルギーが益々安くなることで、1日の多くの時間、たとえば1~4時間、何かの充電に使える無料に近い電力を得られる時間帯が生まれます。そしてその電力は電力網のニーズによって速くあるいはゆっくりと送り出される必要があります」という。「そして私たちのバッテリーはまさにそれをやります」。

このラウンドが石油・ガス業界で大きな位置を占める2社によって出資されたことは注目に値する。「私が思うに、現在石油・ガス業界の100%近くが再生可能エネルギーへの大がかりな転換に取り組んでいます」とハイネマン氏は付け加えた。「彼らはみんな、エネルギーミックスがシフトしていく未来を見据えています。私たちは今世紀半ばに75%再生可能を目指していますが、多くの人はそれがもっと早く訪れると考えていて、それは石油・ガス業界が実施した研究に基づいています。みんなそれをわかって新しい台本が必要だと知っているのです」

画像クレジット:EnerVenue

ニッケル水素がもうすぐあなたのiPhoneに搭載されることを期待してはいけない。このテクノロジーは大きく重い。できる限りスケールダウンしても、ニッケル水素バッテリーは2リットルの水筒くらいのサイズなので、当分はリチウムイオンが主役を続けるだろう。

定置型エネルギー貯蔵は別の未来を迎えるかもしれない。EverVenueは現在、米国に工場を建設するための、場所とパートナー選びの交渉が「レイトステージ」に入っている。毎年最大1ギガワット時のバッテリーを生産し、最終的にさらに規模拡大することを目標にしている。ハイネマン氏は、メガワット当たりの設備投資はリチウムイオンのわずか20%になると推計している。SchlumbergerはEverVenueとの提携の下で、独自にバッテリーを生産してヨーロッパと中東に販売する計画だ。

「これは今使えるテクノロジーです」とハイネマン氏は言った。「私たちは技術革新を待っていません、未来に何かを証明するために必要な科学プロジェクトはありません。うまくいくことはわかっています」。

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画像クレジット:EnerVenue

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラが旧来のリン酸鉄リチウムバッテリーに賭けていることは、メーカーにとって何を意味するのか

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、鉄ベースのバッテリーに関してこれまでで最も強気の発言をした。Tesla(テスラ)は、エネルギー貯蔵製品と一部のエントリーレベルのEVにおいて、旧来の安価なリン酸鉄リチウム(LFP)セルへの「長期的なシフト」を行っていると強調した。

テスラのCEOは、同社のバッテリーは最終的に製品全体で鉄ベースが3分の2、ニッケルベースが3分の1になるだろうと思慮深く語り「これは実際に好ましいことです。世界には十分な量の鉄が存在していますから」と付け加えた。

マスク氏のコメントは、主に中国の自動車業界ですでに進行中の変化を反映するものだ。中国以外の地域でのバッテリー化学組成は大部分がニッケルベースで、具体的にはニッケル・マンガン・コバルト(NMC)とニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)である。これらの比較的新しい化学組成は、エネルギー密度が高いことから自動車メーカーにとって魅力的なものとなっており、OEM(完成車メーカー)におけるバッテリーの航続距離の改良に貢献している。

マスク氏の強気の姿勢がEV業界全体に真の変化をもたらしつつあるとすれば、中国以外のバッテリーメーカーが追随できるかどうかが問われるところだ。

LFP方式への回帰を示唆しているのはマスク氏だけではない。Ford(フォード)のCEOであるJim Farley(ジム・ファーリー)氏は2021年、一部の商用車にLFPバッテリーを採用すると発表した。一方、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)のCEO、Herbert Diess(ヘルベルト・ディース)氏は、同社のバッテリーデーのプレゼンテーションで、VWのエントリーレベルEVの一部にLFPが使用されることを明らかにした。

エネルギー貯蔵の面では、マスク氏がコメントで言及した、Powerwall(パワーウォール)とMegapack(メガパック)でのLFPベースの化学組成の採用は、鉄ベースの処方を推進する他の定置型エネルギー貯蔵企業の潮流に沿うものとなっている。「定置型貯蔵業界は、より安価なLFPへの移行を志向しています」と、バッテリー調査会社Cairn Energy Research Advisorsを率いるSam Jaffe(サム・ジャッフェ)氏はTechCrunchに語った。

LFPバッテリーセルが魅力的な理由はいくつかある。まず、コバルトやニッケルのような極めて希少で価格が変動しやすい原料に依存していない(主にコンゴ民主共和国から調達されているコバルトは、非人道的な採掘条件のためにさらなる精査の対象となっている)。また、ニッケルベースの化学組成に比べてエネルギー密度は低いものの、LFPバッテリーははるかに安価に製造できる。電気自動車への移行を促進したいと考えている向きにとって、これは朗報となる。EVの普及には、1台あたりのコストを下げることが重要な鍵となる可能性が高いからだ。

マスク氏は明らかに、テスラにおける鉄ベースの化学組成に大きな未来を見出しており、同氏のコメントは、LFPが再びスポットライトを浴びるのに効果的な役割を果たした。ただし、それがショーのスターであり続けている場所は1つ、中国である。

中国によるLFPの独占

「LFPは中国でしか生産されていないといっても過言ではありません」と、調査会社Benchmark Mineral Intelligenceで価格・データ評価の責任者を務めるCaspar Rawles(キャスパー・ローレス)氏は、最近のTechCrunchとのインタビューで説明している。

LFPバッテリー生産における中国の優位性の一部は、大学や研究機関のコンソーシアムによって管理されている一連の主要なLFP特許に関連している。このコンソーシアムは10年前、中国のバッテリーメーカーとの間で、LFPバッテリーが中国市場でのみ使用されることを条件に、ライセンス料を徴収しないことで合意した。

こうして、LFP市場は中国が独占する形となった。

中国のバッテリーメーカーは、LFPへの構造的シフトのポテンシャルから最大の恩恵を受ける可能性がある。具体的にはBYD(比亜迪)とCATL(寧徳時代新能源科技)で、後者はすでに、中国で生産・販売されているテスラ車専用のLFPバッテリーを製造している。(一方、フォルクスワーゲンは中国のLFPメーカーGotion High-Tech[国軒高科]にかなりの出資をしている。)こうしたバッテリーメーカーの勢いはとどまる気配を見せていない。1月にCATLとShenzhen Dynanonic(深圳市徳方納米科技)は、中国の地方省の1つと、LFPカソード工場を2億8000万ドル(約307億円)の費用で3年をかけて建設する契約を結んだ。

業界アナリスト企業のRoskillによると、LFPの特許の存続期間の満了は2022年で、中国以外のバッテリーメーカーが生産の一部を鉄ベースの製品に移行し始める機は熟していることが予想されるという。しかし、LG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)など、韓国の大手企業との合弁事業が多い欧州や北米のバッテリー工場はいずれも、依然としてニッケルベースの化学組成にフォーカスしている。

「米国がLFPの強みを生かすには、北米の製造業が必要となるでしょう」とジャッフェ氏は説明する。「今日、米国でギガファクトリーを建設する人々は皆、高ニッケル化学製品の製造を計画しています。現地で製造されるLFPバッテリーに対するアンメットニーズが非常に高くなっています」。

ローレス氏は、特に特許の有効期限が失効した後、数年のうちに北米と欧州である程度のLFPキャパシティが確保されると予想している。ドイツではCATLも、他のバッテリーメーカーSVOLT(蜂巣能源科技)も動きを見せているが、どちらも中国企業であり、その他のアジア企業や欧米企業がLFP市場で競争できるかについては疑問が残る、と同氏は指摘した(Stellantis[ステランティス]は2025年以降のバッテリーサプライヤーの1つとしてSVOLTを選定している)。

エネルギー貯蔵に関して、ジャッフェ氏は「定置型貯蔵システムのほとんどが最終的にはLFP系になることは避けられない」と考えているという。

しかし、米国の国内製造業にとってすべてが失われるとは限らない。「地元でLFP製造を確立するための好材料として、サプライチェーンがシンプルであることが挙げられます。リチウム以外にも、鉄とリン酸という2つの安価な材料が(米国で)大量に生産されています」とジャッフェ氏は付け加えた。

結局のところ、これはバッテリーの化学的性質の問題ではない。より有望な点は、テスラを含む自動車メーカーの動向からすでに明らかになっている。鉄ベースのバッテリーは主にエントリーレベルの低価格車に使用され、ニッケルベースのセルはハイエンドの高性能車に使用される。多くの消費者は、300マイル(約483km)から350マイル(約563km)の走行距離を持つ車よりも、数千ドル(約数十万円)安い200マイル(約322km)から250マイル(約402km)の走行距離の車の方に満足するだろう。

自動車メーカーは、垂直製造や既存のバッテリー会社との合弁事業を通じて、バッテリー供給をコントロールする方向に動き始めている。このことは、北米と欧州におけるLFPキャパシティの拡大は可能性が高いだけでなく、必然的であることを意味している。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Elon MuskTeslaバッテリー電気自動車FordVolkswagenPowerwallMegapack中国エネルギー貯蔵リチウムイオン電池

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

ついにテスラの太陽電池・エネルギー貯蔵事業が売上原価を超える、売上げ約882.6億円

Tesla(テスラ)は、電気自動車の販売を主な収益源としているが、最新の四半期業績報告書の中では、エネルギー貯蔵と太陽光発電事業の成長が確認できる。

テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、エネルギー貯蔵製品のために十分なチップを入手できれば、同部門への需要はさらに明るくなるという。

テスラは米国時間7月26日、太陽光発電、家庭・企業向け蓄電装置Powerwall(パワーウォール)、大規模蓄電装置Megapack(メガパック)の3つの主要製品を含む、発電・蓄電事業から8億100万ドル(約882億6000万円)の売上を発表したが、これは120億ドル(約1兆3200億円)近くある総売上のほんの一部に過ぎない。小さいながらも、この部門は蓄電や太陽光発電の販売を強化している。この部門の売上は前四半期比で62%増え、2020年の同四半期比では116%以上の伸びを示している。テスラは太陽光発電とエネルギー貯蔵の売上を分けていない。

関連記事:テスラの第2四半期の純利益は過去最高の約1257億円、決算好感で株価も上昇

さらに重要なことは、太陽電池・エネルギー貯蔵事業の売上原価が7億8100万ドル(約860億5000万円)であったことだ。すなわちエネルギー貯蔵関連製品の生産・販売にかかる総コストが、初めて売上額を下回ったことを意味する。これは良いニュースだ。

当然のことながら、総設置量も増加している。テスラは、2021年第2四半期に、前年同期比205%増の1274メガワット時(MWh)のエネルギー貯蔵装置を設置した。また、2021年の第2四半期に設置された太陽光発電量の合計は85MWhで、2020年第2四半期から214%増加している。補足すると、テスラの太陽光発電とエネルギー貯蔵の総設置量は、2019年第2四半期と2020年第2四半期の数字を比較するとほぼ横ばいだった、これはパンデミックによってビジネスが全般的に停止したためと思われれる。

大事なのは売上の伸びだ。2019年、テスラは太陽光発電とエネルギー貯蔵事業からの売上を3億6900万ドル(約406億6000万円)と報告した。2020年第2四半期時点での売上は停滞し、同事業からの収益は3億7000万ドル(約407億7000万円)にとどまった。今回の四半期は、2019年と2020年の同じ四半期にテスラが達成した売上の倍以上の数字となった。

何が変わったのだろう?新型コロナウイルス以外にも、テスラはいくつかのMegapackプロジェクトが稼働し始めていることや、太陽光発電とPowerwall(パワーウォール)を組み合わせた製品の人気が高まっていることを指摘している(太陽光発電設備を設置せずにPowerwallを注文することはできなくなった)。またテスラのウェブサイトに掲載されている概算によると、Megapack1台の価格は税抜きで約120万ドル(約1億3000万円)だ。テスラによれば、いくつかの州では、最も早い納入が2023年になるという。

だが、テスラのエネルギー貯蔵事業は困難に直面している。マスク氏によると、Megapack、Powerwallともに需要が供給を上回っており、バックログが増えているのだ。世界的なチップ不足のため、その需要に応えることができないのだという。

テスラは、Powerwallに自動車と同じチップを使用しており、マスク氏は、供給が少ない間は自動車を優先すると表明している。

マスク氏は業績説明会で「この大幅な不足が解消されれば、Powerwallの生産を大幅に増やすことができます」と語っている。「来年には、Powerwallを年100万台のペースにできるチャンスがあると思います、おそらく週に2万台のペースということです。繰り返しますが、セルの供給や半導体に依存します【略】世界が持続可能なエネルギー生産に移行する中で、太陽光や風力が注目されていますが、その不安定さを考えると、安定した電気を供給するためにはバッテリーパックが必要なのです。そして、世界中の電力事業を見れば、膨大な量のバックアップバッテリーを必要としていることがわかります」。

マスク氏は、長期的には、テスラと他のサプライヤーが蓄電需要に対応するためには、合わせて年間1000〜2000GWhが必要になると述べている。マスク氏によると、同社はセルサプライヤーに2022年に供給量を2倍にするよう要請しているが、この目標はサプライチェーンの問題に左右されるとマスク氏は注意を促している。現在の同社の戦略は、セルの供給をオーバーシュートさせて、それをエネルギー貯蔵製品に振り向けるというものだが、チップが不足した場合と同様に、その場合でも自動車の生産が優先されるだろうとマスク氏は述べている。

バッテリー計画

バッテリーの話題は、開発中の4680バッテリーに集中していたが、マスク氏は、安価なLFP(リン酸鉄リチウムイオン)を一部の製品に利用したいというテスラの意図にも触れた。具体的には、すべての固定蓄電池を鉄系電池に移行し、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーやニッケル・コバルト・アルミニウムバッテリーから撤退する可能性が高いということだ。

「おそらく3分の2が鉄、3分の1がニッケルになるのではないかと思います」とマスク氏はテスラの計画について語った。「実際これは良いことなのです、なにしろ世界には膨大な量の鉄がありますから。一方、ニッケルとコバルトは非常に少ないのです」。

ニッケル系として残る3分の1のバッテリーは、より長距離巡航型の電気自動車に使用される。また、その他のEVもすべてLFPバッテリーに移行するが、これは中国で生産している車両ではすでに行われている。

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タグ:Tesla太陽電池バッテリー決算発表MegapackPowerwallイーロン・マスクエネルギー貯蔵

画像クレジット:Bloomberg/Contributor/Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

水素貯蔵・発電システムをディーゼル発電機の代わりに、オーストラリア国立科学機関の技術をEnduaが実用化

水素を利用する発電機は、従来のディーゼル燃料発電機に代わる環境に優しい発電機だ。しかし、その多くは太陽光や水力、風力に頼っており、いつでも利用できるとは限らない。ブリスベンに拠点を置くEndua(エンドゥア)は、電気分解によってより多量の水素を生成し、それを長期貯蔵することで、水素を利用する発電機をもっと使いやすくしようとしている。Enduaの技術は、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)によって開発されたもので、CSIROが設立したベンチャーファンドのMain Sequence(メイン・シーケンス)とオーストラリア最大の燃料会社であるAmpol(アンポル)によって商業化される。

Main Sequenceのベンチャーサイエンスモデルは、まず世界的な課題を特定し、次にその課題を解決できる技術、チーム、投資家を集めてスタートアップを起ち上げるというものだ。このプログラムを通じて設立されたEnduaの最高経営責任者には、電気自動車用充電器メーカーのTritium(トリチウム)の創業者であるPaul Sernia(ポール・セルニア)氏が就任し、Main SequenceのパートナーであるMartin Duursma(マーティン・ダースマ)氏とともに、CSIROで開発された水素発電・貯蔵技術の商業化に取り組んでいる。アンポルはEnduaの産業パートナーとしての役割を担うことになる。

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Enduaは、Main Sequence、CSIRO、アンポルから500万豪ドル(約4億2000万円)の出資を受けている。同社はまずオーストラリアで事業を展開し、それから他の国々へ拡大していく計画だ。

セルニア氏によれば、Enduaは「再生可能エネルギーへの移行が直面している最大の問題の1つである、再生可能エネルギーをいかにして大量に、長期間にわたって貯蔵するかという問題を解決するために設立された」という。

Enduaのモジュール式パワーバンクは、1パックあたり最大150キロワットの電気を出力できる。さまざまなユースケースに合わせて拡張することが可能で、ディーゼル燃料で稼働する発電機の代わりとして機能する。蓄電池は通常、停電時などに備えたバックアップとしての役割を果たすが、Enduaが目指しているのは、大量に貯蔵できる再生可能エネルギーを提供することで、送電網から切り離されたインフラや、電気が届いていない地域コミュニティが自立した電源を持てるようにすることだ。

「水素の電気分解技術はかなり前から存在していますが、商業市場の期待に応え、既存のエネルギー源と比較になるほどコスト効率を高めるには、まだ長い道のりがあります」と、セルニア氏は語る。「我々がCSIROと共同で開発した技術なら、化石燃料と比べてもコストを抑え、信頼性が高く、遠隔地でも容易に維持できるようになります」。

このスタートアップは、産業界の顧客に焦点を当てた後、小規模な企業や住宅にも手を広げていくことを計画している。「最大の好機の1つは、地域社会や鉱山、遠隔地のインフラなど、これまであまり取り組まれることがなかったディーゼル発電機のユーザーです」と、セルニア氏はいう。「農業分野では、Enduaのソリューションは、掘削機や灌漑用ポンプなどの機器の電源として使用できます」。また、同社のパワーバンクは、太陽光や風力などの既存の再生可能エネルギーシステムに接続することができ、ユーザーは経済的な切り替えが可能であると、同氏は付け加えた。電気分解のプロセスには水が欠かせないが、必要な量はわずかだ。

「電池は出力を調整しながら少しずつ電力を供給できる優れた方法であり、全体的なエネルギー移行計画を補完するものです。しかし私たちは、地域社会や遠隔地のインフラが、信頼できる再生可能エネルギーをいつでも利用できるように、大量かつ長期間にわたって貯蔵できる再生可能エネルギーの供給に注力しています」と、セルニア氏はTechCrunchの取材に語った。

アンポルは、同社のFuture Energy and Decarbonisation Strategy(未来のエネルギーと脱炭素化戦略)の一環として、Enduaと協力している。同社はEnduaの技術をテストして商品化し、その8万社にものぼるB2B顧客に提供する予定だ。ますば年間20万トンの二酸化炭素を排出しているオフグリッドのディーゼル発電機市場に焦点を当てている。

アンポルのマネージングディレクター兼CEOであるMatthew Halliday(マシュー・ハリデイ)氏は「Enduaと関わりを持てることに興奮しています。これは、エネルギー移行を後押しする新しいエネルギーソリューションを発見・開発することによって、顧客価値提案を拡大するという当社のコミットメントの一環です」と、プレスリリースで述べている。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:水素電力オーストラリアEnduaAmpolエネルギーエネルギー貯蔵

画像クレジット:Andrew Merry / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EVや蓄電システムに搭載したままバッテリーの状態や劣化度合をシミュレートできるTWAICEの分析ツール

すべてのバッテリーは時間とともに劣化していく。電気自動車メーカーや車両運行管理会社にとって、それがいつ、どのくらい劣化するのかを知ることは重要であり、収益に関わる鍵にもなる。

しかし、バッテリーの健康状態を把握することは、大がかりで高額な検査を行わなければ意外と難しく、車両に搭載された状態では不可能な場合も少なくない。ドイツのバッテリー分析ソフトウェア企業であるTWAICE(トワイス)は、2018年の創業以来、この問題に取り組んできた。同社は米国時間5月19日、シカゴに拠点を置くEnergize Ventures(エナジャイズ・ベンチャーズ)が主導したシリーズBラウンドで、2600万ドル(約28億3000万円)を調達したことを発表した。主にモビリティやエネルギー貯蔵の分野で活躍する同社は、これで資金調達総額が4500万ドル(約49億円)に達したことになる。

TWAICEの開発や運営面について共同設立者のStephan Rohr(ステファン・ロア)氏にインタビューした際「私たちは、バッテリーシステムのライフサイクル全体を本当にカバーできるバッテリー分析プラットフォームを構築することに焦点を当ててTWAICEを起ち上げました」と語った。この会社は、実際にバッテリーが車両やエネルギー貯蔵システムに搭載されている状態で、開発や設計を行うために適したツールを提供している。Audi(アウディ)やDaimler(ダイムラー)、インドのHero Motors(ヒーロー・モーターズ)などが同社の顧客だ。

今回の資金調達により、TWAICEは欧州での事業展開を拡大し、さらに米国進出の可能性も探っていくという。また、製造会社だけでなく、物流や旅客輸送業者との連携なども含め、同社の分析プラットフォームをもとに、さらに多くのユースケースを構築したいと考えている。

同社の革新的な技術の1つに「デジタルツイン」という概念がある。これはTWAICEのクラウドプラットフォーム上で動作するバッテリーシステムのシミュレーションモデルで、バッテリーの熱特性や電気的挙動、劣化などのパラメーターを連続的に更新していくことによって、実際のバッテリーの状態がこの「デジタルな双子」に反映されるというものだ。つまり、EVバスを運行している企業は、それぞれの車両のバッテリーパックの状態を、このデジタルツインを通してモニターすることができる。

「バッテリーシステムの現在の健康状態をモニターするだけでなく、将来のシミュレーションや予測も可能になります」と、ロア氏はいう。

TWAICEはまた、バッテリーが自動車やエネルギー貯蔵システムに搭載される前の段階にもソリューションを提供している。「バッテリーの設計エンジニアは、当社のシミュレー ションを利用することで、充電戦略,放電深度,異なる電池化学の評価などのテスト作業を軽減することができます」と、ロア氏は説明する。

TWAICEのソフトウェアの主な使用例の1つは、保証追跡や安全性リスクに関するものだ。同社のバッテリー分析を利用することで、製造メーカーはバッテリーがセルやモジュールなどのどこで故障したのかを正確に把握することができ、将来の保証請求に対して過去のデータに基づく貴重なデータを得ることができる。TWAICEの営業担当責任者を務めるLennart Hinrichs(レッナールト・ヒンリクス)氏は、製造メーカーにとって保証は大きなリスクであると説明する。その理由の1つは、バッテリーが非常に複雑で、車両に搭載されてしまうと、状態を理解することが非常に難しいからだという。

しかし、バッテリーの寿命を把握することは、消費者にとっても有益だ。ドイツの試験・認証機関であるTÜV Rheinlandは、民間市場におけるEVの中古車販売に関してTWAICEと提携し、中古車市場のEVが搭載するバッテリーの標準的な評価プロセスの確立を目指している。

EVの車載バッテリーが長期的な使用を経て本来の用途に適さない状態にまで劣化した後、自動車メーカーはTWAICEのソフトウェアを使って、バッテリーシステムの健康状態と残りの寿命を評価し、例えばエネルギー貯蔵などのセカンドライフに再利用するか、あるいはそのままリサイクルに回すべきかを判断することができる。

2020年3月に行われたTWAICEの前回の資金調達ラウンドでは、アーリーステージ専門ベンチャーキャピタルのCreandum(クリーンダム)が主導し、既存の投資家であるUVC Partners(UVCパートナーズ)、Cherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)、Speedinvest(スピードインベスト)が追加投資を行った。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:EVバッテリーTWAICE資金調達エネルギー貯蔵

画像クレジット:TWAICE

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

再生可能エネルギーSwell EnergyのNY新規プロジェクトは調達した490億円の用途を示す

2020年12月、Swell Energy3つの州における分散型電力プロジェクトの開発を支援するために、4億5000万ドル(約490億円)を調達すると発表した。そして今、ベンチャーにより支援された同社とニューヨーク市の電力会社ConEdとの契約が発表されたことで、これらのプロジェクトがどのようなものになるのか、業界関係者の目に触れることになった。

関連記事:住宅用再生エネルギー推進のSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達

ロサンゼルスに本社を置くSwell EnergyはConEdと共同で、クイーンズの住宅所有者を対象に太陽光発電とエネルギー貯蔵を組み合わせた新しいプログラムを展開する予定だ。

これはConEdの顧客を対象に、太陽光発電を利用した家庭用バッテリーを設置するプロジェクトだ。

ニューヨーク州は2040年までに州全体の電力網をゼロエミッションにすることを目標に、2030年までに3GWのエネルギー貯蔵設備を導入することを目指している。

ConEdプロジェクトでは、ニューヨーク市はクイーンズの顧客がエネルギーグリッドのリソースから独立して利用できるバックアップ電力を利用できることを望んでおり、これはエネルギー貯蔵設備を持たない顧客の電力を確保することになる。

プロジェクトに参加する住宅所有者は、システムのコストを下げるためのインセンティブを受けることができる。システムは当初はフォレストパーク、グレンデール、ハンターズポイント、ロングアイランドシティ、マスペス、ミドル・ビレッジ、リッジウッド、サニーサイド、クイーンズの近隣地域の一部住民を対象としている。

Swellの広報担当者によると、ニューヨークのバーチャルパワープラントは同社の他の取り組みとは異なり、ネットワークの過負荷時に顧客の電力需要を減らすために、グリッド上の特定の配電回路に空き容量を提供するという。

バーチャルパワープラントの導入により、ConEdは新たな送配電インフラを構築する必要がなくなり、ネットワークの信頼性を確保することができる。Swellの広報担当者によると、これは需要の問題に対する「ノンワイヤーソリューション」と呼ばれるものだという。

対照的に、Swellのハワイでのプロジェクトはシステムレベルの容量と周波数調整を提供し、Southern California Edisonとのカリフォルニアでのプログラムは、ベースロード時のエネルギー管理と操業地域の全体的な負荷増加のための需要応答能力を提供する。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Swell Energy再生可能エネルギー太陽光発電エネルギー貯蔵電力網

画像クレジット:Don Emmert / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

テキサス大寒波から学ぶ3つのエネルギー革新

本稿の著者Micah Kotch(ミカ・コッチ)氏はURBAN-Xのマネージング・ディレクターだ。

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気候変動の総合的危機に対する個別なソリューションがいくつも登場している。非常用ディーゼル発電機、Tesla(テスラ)のPowerwall、地下シェルターの「Prepper」などがある。しかし、現代文明が依存しているインフラストラクチャーは相互につながり、相互に依存している。エネルギー、輸送、食料、水、ごみのシステムは、気候による緊急時に対していずれも脆弱だ。私たちのエネルギーインフラ危機を救う唯一の孤立したソリューションは存在しない。

2005年のHurricane Catarina(ハリケーン・カタリナ)、2012年の巨大暴風雨SANDY(サンディ)、2020年のカリフォルニアの山火事、そして最近のテキサス大寒波以来、大多数の米国市民はいかにインフラが脆弱であるかを認識しただけでなく、それを適切に規制しその復旧に投資することがいかに重要であるかを思い知らされた。

今必要なのは、インフラを考える際の発想の転換だ。具体的には、リスクをどう評価するか、維持をどう考えるか、気候の現実に沿った政策をどう作るかだ。テキサスの大寒波は、異例の寒波に備えていなかった電気・ガスインフラを壊滅状態にした。もし私たちがインフラへの緊急な(超党派?)投資を、特に異常気象が当たり前になりつつある今行わなければ、この惨劇は今後も続くばかりだ(そして最前線の人たちは特に重荷を背負う)。

テキサスの記録的暴風から1カ月が過ぎ、焦点は生活を取り戻そうとしている数百万の住民を助けることに正しく向けられている。しかし、短期的未来に目を向けには電気自動車への転換点の兆しが見える現在、この国のエネルギーインフラと公共事業の大転換というツケを払うことを優先しなくてはならない。

エネルギー貯蔵の重要性

テキサス州の電気の75%が化石燃料とウランから生まれており、州内で起きた停電の約80%がこれらのシステムに起因していた。同州と国は、時代遅れの発電、通信、および配送技術に依存しすぎている。2030年までにエネルギー貯蔵のコストが75ドル/kWhまで下がると期待されていることから「需要管理」およびグリッドを「(排除しようとするのではなく)支える」分散エネルギー源に今以上に重点を置くことが必要だ。小規模なクリーンエネルギー発電と家庭内貯蔵電力を蓄積、集約することで、2021年は「バーチャル発電所」が全潜在能力を発揮する年になるかもしれない。政策立案者は、家庭のメーターの内側に設置する新たな分散エネルギーリソースを普及させるための刺激策と報奨金制度を施行させるべきであり、カリフォルニア州の自家発電奨励プログラムはその一例となる。

労働力開発への投資

エネルギー大転換が成功するためには、労働力開発が中心的要素になる必要がある。石炭、石油、ガスからクリーンエネルギー源へと移行するためには、企業と政府(国から市レベルまで)は、労働者がソーラー、電気自動車、バッテリーストレージなどの新興分野の高賃金職に就くための再教育に投資すべきだ。エネルギー効率(エネルギー大転換で最も手をつけやすいところ)に関して、都市は株価に基づく労働力開発プログラムを建物エネルギーベンチマーキング条件と結びつける機会を利用するべきだ。

これらのポリシーは、この国のエネルギーシステムの効率と老朽化する建物の利用率を高めてより生産的な経済を作るだけでなく、 21世紀の成長産業における雇用の拡大と労働の専門化にもつながる。 Rewiring Americaの分析によると、国の野心的な脱炭素宣言によって、今後15年の間に2500万の高賃金職が生まれるという。

信頼性のためにマイクログリッドをつくる

マイクログリッド(小規模発電網)は、主要グリッドと繋ぐことも切り離すこともできる。非常時だけでなく、日常の「青空」運用の日々にも運用することで、マイクログリッドは主要グリッドが停止した際に途切れなく電力を供給できる。そして、主要グリッドにつなげた場合、グリッドの制約とエネルギーコストを減らす。かつては軍事基地と大学だけの領域だったマイクログリッドは年間15%成長し2022年の米国市場は180億ドルに達する

グリッドの回復力と信頼性の高い電力源を確保のためには、重要インフラ施設を近隣の住宅と商業負荷と結びつけるコミュニティ規模のマイクログリッドに勝るソリューションはない。実現性調査と高度な設計に資金提供し、コミュニティがゼロコストで高品質な建設プロジェクト実施できるようにすることは、ニューヨーク州が NYプライズ・イニシアティブでやったように、コミュニティをエネルギー計画に参加させ、民間セクターを低炭素の回復力あるエネルギーシステムの構築に携わらせる有効な方法であることが実証されている。

予測不能性と複雑さが急速に高まり、テクノロジーは居場所を見つけたが、それは単なる個別の安全策や偽りの安心感としてではない。テクノロジーは、リスクを高精度で計算し、システムの回復力を高め、インフラの耐久性を改善し、コミュニティの人々同士のつながりを深めるために使われるべきだ。緊急時もそうでない時も。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:コラムテキサス自然災害電力網エネルギー貯蔵エネルギー

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(文:Micah Kotch、翻訳:Nob Takahashi / facebook

脱炭素で注目が集まるエネルギー貯蔵スタートアップをVolta Energy Technologiesが支援

エネルギーおよびエネルギー貯蔵素材の最大手数社の支援で、エネルギー系企業への投資とアドバイザリーサービスを提供するVolta Energy Technologies(ボルタ・エナジー・テクノロジーズ)は、1億5000万ドル(約158億5000万円)を目標とした投資ファンドをおよそ9000万ドル(約95億円)でクローズしたことが、同グループの計画に詳しい人たちの話でわかった。

このベンチャー投資ビークルは、これでEquinor(エクイノール)、Albermarle(アルベマール)、Epsilon(イプシロン)、Hanon Systems(ハンソン・システムズ)の4社からすでに約束されている1億8000万ドル(約190億1000万円)のコミットメントを補うこととなった。しかもそれは、これまでになくエネルギー貯蔵技術への関心が高まった時期とうまく重なった。

内燃機関と炭化水素燃料からの移行が本格的に始まると、各企業は、大量の電気自動車(EV)と、いまだ開発段階にある再生可能エネルギーの大量貯蔵に欠かせないコスト削減とバッテリー技術の性能向上を、こぞって追求するようになった。

「資本市場は、脱炭素に巨大な投資機会を見込んでいました」と話すのは、Voltaの創設者で最高責任者のJeff Chamberlain(ジェフ・チェンバレン)氏。

同社は、2012年、オバマ政権下の米エネルギー省トップとチェンバレン氏が話し合いを始めたときに出たアイデアから誕生した。それは、チェンバレン氏がアルゴンヌ国立研究所在籍中に米国政府のバッテリー研究コンソーシアムに参加し、米国屈指の研究所となるJCESR(エネルギー貯蔵研究共同センター)の開設を率いた際の経験が、Volta Energyへと進化した。そこでチェンバレン氏は、民間セクターの投資パートナーに向けて、国立研究所の最先端の研究を活用して民間企業が最高のテクノロジーを生み出すと売り込んだ。

チェンバレン氏によれば、官民双方の研究機関からのVoltaへの支援は強力なかたちで続いたという。トランプ政権下においてさえ、Voltaの主導力はますます力を増し、化学、電気、石油ガス、そして産業熱利用の各業界の大手企業から1億8000万ドルという長期投資につながるファンドへの出資を引き出すことができたと、同氏は話す。

同社の計画に詳しい人たちの話では、1億5000万ドルを目標とし、2億2500万ドル(約237億7000万円)を上限とするこの新規投資ファンドは、現在の投資ビークルを補い、バッテリー業界に大きな資金の流れを作ることで同社の火力をさらに高めるという。

チェンバレン氏は制限があることを理由に、この投資の具体的な内容や条件の説明は避けたが、同社にはバッテリーとエネルギー貯蔵に関連する技術に投資すること、そして「電気自動車の普及と太陽光発電や風力発電の普及を可能にする」と語った。

最初のクリーンテックブームの際に、Voltaの頭脳を支える人たちは、大量の善意の資金がお粗末なアイデアに注ぎ込まれ、商業的成功を見ることなく消えていった様子を目の当たりにしたとチェンバレン氏はいう。Voltaは、エネルギー貯蔵分野で研究者たちが取り組んでいる本物の投資機会に関する教育を投資家たちに施し、そうした企業に資金を投入することを目的に創設された。

「投資家たちがゴミ焼却炉に資金を投げ込んでいると、私たちは感じていました。それが脱炭素へ悪影響を及ぼしかねないとも気づいていました」とチェンバレン氏。「私たちの全体的な目的は、膨大な個人資産の投資先をを各人に指南し、燃え続けるゴミ焼却炉への資金投入を止めさせることにありました」。

このミッションは、バッテリー市場にさらに多くの資金が流入するようになって、さらに重要性を増してきたとチェンバレン氏はいう。

EV業界でのNikola(ニコラ)のPOに端を発したSPAC騒動は、QuantumScape(クアンタムスケープ)のバッテリー関連SPACへ繋がり、その他もろもろのEV関連のOPを招き、やがてはあらゆる方面で、EV充電およびバッテリー関連企業への投資額が吊り上げられた。

チェンバレン氏はVoltaのミッションを、バッテリーと電力管理のサプライチェーン全般にわたる市場への参入を待つ、もっとも優れた新生の技術に資金提供し、生産を確実に軌道にのせ、伸び続ける需要を満たす準備の手助けをすることだと考えている。

「エネルギー貯蔵エコシステムと、その底流にある技術的な課題を深く理解していない投資家は、明らかに不利な立場にあります」と、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元幹部であり、Voltaの初期の投資家でもあるRandy Rochman(ランディー・ロックマン)氏は声明の中で述べている。「Voltaの知識がなければエネルギー貯蔵の世界では何も起こり得ないと、私は非常に明確に理解しました。エネルギー貯蔵への投資機会を特定し落とし穴を避ける上で、彼らに勝るチームはありません」。

Voltaからの新しい資金は、すでにいくつもの新しいエネルギー貯蔵法と実現技術の支援に向けられている。そこには以下の企業が含まれる。急速充電が求められる場所に適応する、プルシアンブルーを応用した高出力で火災の危険性がないナトリウムイオンバッテリーを開発するNatron(ネイトロン)、使われていない電灯線を利用して電力を分配することで、再生可能電力の統合を最適化し、電力網でのエネルギー貯蔵を可能にするハードウェアを開発するSmart Wires(スマート・ワイヤーズ)、移動体と電力網の両方に使える全固体リチウムバッテリーを製造するIonic Materials(アイオニック・マテリアルズ)。同社のプラットフォーム技術も、5Gモバイルや充電可能なアルカリ電池といった他の成長市場にも革新をもたらす可能性がある。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volta Energy Technologiesエネルギー貯蔵再生可能エネルギー資金調達電気自動車

画像クレジット:NeedPix under a Public domain license.

原文へ](文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)