Mac版OneDrive同期アプリがついにAppleシリコンにネイティブ対応、一般公開開始

Mac版OneDrive同期アプリがついにAppleシリコンにネイティブ対応、一般公開開始

Microsoft

マイクロソフトは昨年末、macOS版クラウドストレージOneDrive同期アプリがM1 Mac向けにパブリックプレビューとして利用可能になったと発表していました。それから約3ヶ月を経て、ついにM1、M1 ProおよびM1 MaxといったAppleシリコン(アップル独自開発プロセッサ)上でネイティブ動作する一般公開版がリリースしたと明らかにされています。

説明では、Appleシリコン用のOneDrive同期アプリが「GA(Generally Available)」版として利用できるようになったとのこと。MS的に「GA」とは、ベータテスター以外の誰でも利用できる一般公開版のこと。具体的にはバージョン22.022であり、最新版がインストールされているかどうかはアプリの環境設定で確認できます。

MSいわく、ネイティブ対応版は「OneDriveがAppleシリコンのパフォーマンス向上をフルに活用できる」とのことです。これまでも非ネイティブ対応版、すなわちインテル製チップ向けアプリもAppleシリコンMac上で動かせましたが、あくまでRosetta2経由であり、電力やRAM消費が最適化されていませんでした。

一般にM1ほかAppleシリコンは「消費電力が控えめのわりに高パフォーマンス」の傾向があることが好評です。ネイティブ対応したOneDriveアプリ最新版では、その恩恵が十分に受けられることになりそうです。

最初のM1チップ搭載Macが2020年末に登場してから、はや1年以上も経ちました。OneDriveアプリのネイティブ対応はようやくの感もありますが、他のクラウドストレージアプリも対応が遅れぎみです。Googleドライブの正式対応も昨年10月のことであり、Dropboxも今年はじめにベータテストを始めたものの、まだ一般公開には至っていません。

ともあれ各社クラウドストレージアプリのネイティブ対応が進めば、Appleシリコン搭載のMacBook各種が内蔵バッテリーだけで稼働できる時間も長くなるはず。今月のイベントで登場すると噂の「M2」搭載13インチMacBook Proは現行モデルよりバッテリー持ちが良くなるとの予想もあり、出先での作業がいっそうはかどるかもしれません。

(Source:Microsoft OneDrive Blog。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

マイクロソフトがMac版OneDriveの苦情に対応、全ファイルをローカル保持する方法を説明

マイクロソフトがMac版OneDriveの苦情に対応、全ファイルをローカル保持する方法を説明

マイクロソフトがmacOS 12.1以降のOneDriveアプリにつき「ファイルのローカル保存」オプションをなくし、実質的にファイルオンデマンドを強制したことで、ユーザーから様々な苦情が寄せられていました

この件につきMSが「Files On-Demand Experience(ファイルオンデマンド経験」を紹介するブログ記事を更新し、全てのOneDriveファイルをMacローカルに保持しておく方法などを説明しています。

現在テスト中のmacOS 12.3ベータでは、OneDriveが同期機能に使っていたKernel拡張が利用できなくなり、代わりにアップルのFile Providerフレームワーク使用が必須となりました。これを受けてMSはOneDriveアプリを更新したところ、ファイルオンデマンド機能を強制することになったわけです。

ファイルオンデマンド機能とは、全てのファイルをローカルに保存してストレージを圧迫することなく、必要になったときにクラウドからダウンロードして使えるようにする仕組みのこと。

最新版のOneDriveアプリでは本機能を無効にするオプションが削除されており、基本的にファイルはローカル保存されません。アプリ更新後には、同期済みのファイルがMacローカルから消されたとの声もありました。

なぜ、ファイルオンデマンドを事実上の強制としたのか。MSはブログで同機能をWindowsでは2017年に、Macでは2018年から提供しており、初めはオプトイン(ユーザーの同意を得てから有効にする)のみだったのが、デフォルトでオンに切り替える上で、どのぐらいのユーザーがオフにするかを慎重に監視してきたいきさつを説明。そしてWindowsとMacともに本機能を無効にしてるユーザーは非常に少数だったことを語っています。

そして「お客様のセットアップで何か問題が発生した場合は、サポート担当者にご連絡いただき、問題を診断させていただきます」とのことです。つまりMacでのトラブルは以前より劇的に減っており、それでも苦情があれば個別に対応すると示唆しているようです。

その一方でMSは、全ファイルをMacローカルに保持しておくことが「一部のユーザーにとって重要なシナリオ」だと認めており、そのための最良の方法は、「常にこのデバイス上に保持する」を選んでファイルをピン留めすることだと述べています。

さらにフォルダをピン留めしておくと「現在その中にある全コンテンツと、新たに追加されたコンテンツが端末に保持されます」として、ファイルをフォルダごとローカル保存する(1つずつピン留めしなくてもいい)方法を教えています。

このやり方を使えば、OneDriveの全ファイルをローカルに保持できます。まずFinder上でOneDriveフォルダを参照し、アイコン表示に切り替え、アイコン間の空白を右クリックして「このデバイスで常に保持」を選ぶという手順です。

マイクロソフトがMac版OneDriveの苦情に対応、全ファイルをローカル保持する方法を説明

Microsoft

これで当面は凌げる見込みですが、MSは「macOSとWindowsの両方で、この機能をより簡単に設定できる方法を積極的に検討しています」と付け加えています。

さらにMSは、一部ユーザーがOneDriveフォルダを閲覧する際に表示が遅いと経験した理由や、その回避策についても説明しています。詳しくはブログ記事をご確認ください。

最後にApp Store版アプリでのオートセーブに関する問題にも言及されていますが、こちらは最新版の「(バージョン)22.002.0201.0005で修正されています」と追記されています。

ともあれ、当面は「Finder上でOneDriveフォルダごとピン留め」により全ファイルをMacローカルに保持できるわけです。今後、よりMacユーザーに寄り添ったアップデートがやって来ると期待したいところです。

(Source:Microsoft。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

店舗の場所探しやサプライチェーンの最適化など、マップ上でのデータ可視化と活用を支援するCartoが約69億円調達

空間分析プラットフォームCarto(カート)がシリーズCラウンドで6100万ドル(約69億円)を調達した。多くの企業は、何らかの位置情報が結びついたデータを大量に収集している。Cartoは、そのデータをインタラクティブな地図上に表示し、より簡単に比較、最適化、比較検討、意思決定ができるようにする。

米国時間12月14日のラウンドは、Insight Partnersがリードしている。またAccel、Salesforce Ventures、Hearst Ventures、Earlybird、Kiboといった既存投資家の他、European Investment Foundも参加した。

多くの企業がデータ戦略に取り組み、何らかの知見を得ようとしている。まず、データウェアハウスを採用し、現在と過去のすべてのデータを1カ所に集約する。企業はAmazon Redshift、Google BigQuery、Snowflakeといった製品を利用している。

その後、ウェアハウスに蓄積されたデータを活用するために、さまざまなビジネスインテリジェンス、レポーティング、データ可視化ツールが用意されている。そのうちの1つが、空間分析に特化した製品を展開するCartoだ。

Cartoは、複数のソースからデータを取り込むことができる。過去のデータをローカルファイルとしてアップロードすることもできるが、ライブデータに直接接続することも可能だ。データベース(PostgreSQL、MySQL、Microsoft SQL Server)、クラウドストレージサービス(Dropbox、Box、Googleドライブ)、データウェアハウス(Amazon Redshift、Google BigQuery、Snowflake)との接続を提供する。

「この3年間で、データウェアハウスが台頭し、データウェアハウスをベースにしたアーキテクチャはほとんどなかったところから、支配的な実装になりました」と、CartoのCEOであるLuis Sanz(ルイス・サンズ)氏は筆者に語った。「そのため、我々はすべての主要なデータウェアハウスの上に空間的な拡張としてCartoを構築することに注力してきました。というのも、この傾向はちょうど加速しているところだからです」。

その後、顧客はSQLクエリを使ってデータを調べ、データを充実させることができる。特に、Carto独自のデータカタログを活用することができる。同社は、オープンデータソースと民間プロバイダーの両方から約1万のデータセットをコンパイルしており、約3600のデータセットがオープンデータだ。

すべての設定が完了すると、インタラクティブなダッシュボードが表示される。地図上を移動したり、レイヤーを選択・解除したり、実際の数字を見たりすることができる。まるで「シティーズ・スカイラインズ」をプレイしているような感覚になるはずだ。

顧客はCartoを使って、次の店舗を開くべき場所を探したり、屋外広告の予算を一部の地域に優先配分したり、サプライチェーンを最適化したり、適切な地域に携帯電話の基地局を配備したりしている。

地方自治体、銀行、消費財メーカー、クレジットカードネットワーク、そして交通機関、公共事業、通信事業といったインフラ企業など、さまざまな顧客を納得させることができるのはそのためだ。

「データウェアハウスの台頭により、企業はすべてのデータを1カ所で統合し、接続することができるようになりましたが、地理空間データも例外ではありません。そして今、我々のクラウドネイティブサービスによって、その上で空間分析を行うことができるようになりました。当社のSpatial Extensionは、主要なデータウェアハウスの上で動作し、その利点を最大限に活用します。そしてユーザーに高いパフォーマンス、拡張性、安全性を備えた地理空間分析のための完全なツールを提供します」とサンズ氏は声明で述べた。

基本的に、Cartoはデータウェアハウスへの移行と一般的なデジタルトランスフォーメーションの恩恵を受けている。より多くの企業がクラウドに移行すれば、そうした企業はCartoの潜在顧客となる。

画像クレジット:Timo Wielink / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

AWSがデータ管理の改善を目的とした4つの新たなストレージサービスを発表

AWSは年次カンファレンス「re:Invent」で、より多くの選択肢の提供、コスト削減、顧客のデータ保護強化を目的とした4つの新しいストレージサービスおよび機能を発表した

1つ目のサービスは、Amazon S3 Glacierという新しいストレージクラスで、アーカイブデータにミリ秒単位でアクセスできるように設計されている。AWSによれば、このストレージクラスを利用することで、顧客は長期保存されていてほとんどアクセスされることはないが、要求があればすぐに取り出す必要があるデータに対して、クラウド上で最も低コストのストレージを実現することができる。

AWSはまた、新しいAmazon FSx for OpenZFSサービスを開始した。これは、オンプレミスのコモディティファイルサービスに保存されているデータを、アプリケーションコードを変更することなく、簡単にAWSに移行できるようにするものだ。AWSによると、この新サービスを利用することで、長大な認証を行ったり、既存のツールを変更したりする必要がなくなる。Amazon FSx for OpenZFSは、数百マイクロ秒のレイテンシーで最大100万IOPSの性能を発揮するという。

スナップショットのアーカイブにかかるコスト対応としては、AWSは新たにAmazon EBS Snapshots Archiveを立ち上げた。これは、1カ月から数年にわたって保持する必要のあるAmazon EBSスナップショットのコストを最大75%削減する新しいストレージだ。顧客は単一のアプリケーションプログラミングインターフェースでスナップショットをEBS Snapshots Archiveに移行できる、とAWSは説明する。

最後に、Amazon S3とVMwareのワークロードをサポートすることで、AWS Backupの機能をより多くのクラウドとオンプレミスのワークロードに拡張している。S3に対するAWS Backupのサポートにより、ユーザーはアプリケーション全体のバックアップを集中管理するために使用していたカスタムスクリプトを置き換えることができるようになった。また、VMwareワークロードに対するAWS Backupのサポートにより、オンプレミスでもVMware Cloud on AWSでも、顧客はVMwareワークロードを保護することができる。

「今日のすべてのビジネスは、データビジネスです。企業にとって最も重要な決断の1つは、データをどこに保存するかということです」とAWSのブロックおよびオブジェクトストレージ担当副社長のMai-Lan Tomsen Bukovec(マイラン・トムセン・ブコヴェック)氏は声明で述べた。

AWSは、これらの新しいストレージサービスにより、顧客のストレージ管理方法の柔軟性が向上するとしている。また、新しいオプションは、データの管理および保護機能の向上を目的としている。

画像クレジット:Chesnot / Contributor / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

Windows 7〜8.1デスクトップ版OneDriveの同期が2022年3月1日で終了へ

Windows 7〜8.1デスクトップ版OneDriveの同期が2022年3月1日で終了へ

Microsoft

米マイクロソフトは、2022年1月1日でWindows 7、8、8.1向けのOneDriveデスクトップアプリのアップデートを終了し、3月1日にはOneDriveとの同期も終了することを明らかにしました。これらのOSを使用している個人ユーザーは3月1日以降、ウェブインターフェースからファイルをアップ/ダウンロードすることができるものの、アプリケーションを介した自動同期を引き続き利用したい場合はWindows 10以降へのアップグレードが必要になります。


一方、ビジネスユーザーの場合はOneDriveサービスもOSのサポート期間に準ずるため、Windows 7、8.1は延長サポート終了期日の2023年1月10日まで同期も行えます(Windows 8はすでに終了済)。

マイクロソフトは、アプリアップデートと同期の終了について「新技術やOSにリソースを集中し、最新の安全な利用環境を提供するため」と述べていますが、わかりやすく翻訳すれば「いつまでもメインストリームサポートの終わったOSを使い続けていないで、さっさと新しいOSを買ってくれ」ということです。

もちろん、企業ユーザーがOSのアップデートをなかなかしないのは、業務上、使用しているソフトウェアの動作を保証できないなどやむを得ない事情もあります。一方で、ただ単に面倒だったり、情報部門担当者の立場が弱くアップグレードのための予算がなかなか確保できない可能性もあります。

とはいえ、やはり古いOSの古いセキュリティ設計では様々なリスクからPCや社内ネットワークを保護できない可能性が高まるのも事実。一時期猛威を奮ったランサムウェアなどは、気づかぬうち社内ネットワークにつながるPCすべてをロックしてしまい、企業や組織の活動を機能不全に陥れてしまうことがあります。そうなれば業種によっては甚大な損害を被ることになりかねません。

たとえ古いオペレーティングシステムに満足している場合でも、OneDriveを使い続けたいのであれば、これをきっかけに最新のWindowsへのアップデートを検討することをおすすめします。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

なにはともあれGitLabの巨額IPO

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
みなさん、こんにちは。良い週末をお過ごしだっただろうか。では始めよう!

先週スタートアップの世界でおきた重要なマネーストーリーといえば、なにはともあれ巨額のGitLab(ギットラボ)のIPOだ。

ご存じない方のために。私たちはGitLabが株式公開を申請したことを報じ、同時に現在の市場価格で、このDevOpsの巨人は約100億ドル(約1兆1400億円)の価値があることを指摘した。その後GitLabは、IPOの価格帯を当初の予想よりも大幅に引き上げ77ドル(約8790円)とした。金曜日(米国時間10月15日)の午後遅くには、一株あたり108ドル(約1万2300円)以上の価格となっている。

GitLabのCEOであるSid Sijbrandij(シッツェ・シブランディ)氏に、今回の公開についての話を電話で聞いた。私はシブランディ氏とは、この話題を皮切りに、以前からあちこちで話をしていた。ということでIPOの日に、通常のSEC規則に縛られている彼と話をするのはとても楽しかった。私が聞き出したのは以下のような話題だ。

  • なぜ今、GitLabを公開したのか?シブランディ氏は、収益規模、収益の予測可能性、コンプライアンスなど、すべての条件を満たしているからだと述べた。IPOの日は、共同創業者のDmitriy Zaporozhets(ディミトリー・ザポロゼツ)氏が同社のための初めてのコードを書いた日から10年後の同じ月となった。なので、それはいい循環のタイミングになった。なにしろ人間はキリの良い数字が大好きなので。
  • GitLabの力強い総合継続メトリクスは、収益予測に役立ったか?答えはイエスだが、シブランディ氏はそれをはっきりとは話そうとはしなかった。
  • オープンソースは今や障害ではなく利点となっている。この点は、先月スタートアップ企業に関して指摘したことと同じですが、いずれにしても指摘しておく価値がある。オープンソースのコードは、開発者との長期的な関係を築きたいと願う企業にとって、大きなメリットとなっている。敢えて言い切るならば、製品主導の成長に関してしばしば重要な意味を持つ。これは、10年前の世界とは正反対を向くものであり、おそらくMicrosoft(マイクロソフト)がオープンコードに対する考えをしばらく前に変更した理由でもある。
  • そして、将来GitLabはDevOpsだけでなくMLOpsにも参入するようになるのだろうか?おそらくは。シブランディ氏は、この件について明言はしなかったが、MLOpsの世界が加速しているいま、GitLabがそのうちにその領域に入り込んだとしても、私は驚かないだろう。確かに、いまはしたいことを何でもすることのできる資金があるのだから。

Cloudflareと世界

2021年9月下旬に発表された、Cloudflare(クラウドフレア)が「サービスとしてのストレージ」市場に参入するというニュースを振り返ってみよう。このニュースは、Cloudflareが世界中のデータセンターを束ねてクラウドストレージを提供しようとしているというものだった。この製品に関するニュースは、ウェブサイトをより速く、より安全に表示するという、Cloudflareが最も得意とするこれまでの仕事からはかけ離れていた。

関連記事:Cloudflareが「R2」でクラウドストレージ市場に参入、「第4の大型パブリッククラウド」を目指す

なぜいまさら上場企業が、ストレージというコモディティ化したものに参入したのだろうか。当時、Ron Miller(ロン・ミラー)記者は、Cloudflareは自分のために作ったものを他の人向けに転用していると書いていた。また、Cloudflareのストレージサービス「R2」は、一部の料金を省くことで、たとえばAmazon(アマゾン)が提供するインフラサービス「AWS」を介して使うストレージよりも安くなるという。

ある考えが浮かんだ。つまり、超巨大企業ではないものの、世界的に事業を展開し、特定のデジタルサービスを提供している大規模なハイテク企業が、始めはニッチと思われるインフラツールの提供に乗り出し、AmazonやMicrosoftが現在AWSやAzure(アジュール)を通じて提供しているものと、最初は控えめながら競合するようになったとしても、私はまったく驚かないだろう。

これはまったくの妄想かもしれないが、アナロジーである程度説明できる。私の主張は、Intel(インテル)が長い間、特定のCPUに関わり世界を牛耳ってきたにもかかわらず、いまや暗号資産の採掘に使われるGPUだけでなく、例えばAIにチューニングされたシリコンを作るスタートアップの台頭にも未来を奪われてしまったことに似ているというものだ。このたとえ話の中では、AWSはIntelで、AIチップはCloudflareのR2のようなものに対応している。

AWSとAzureが価格の駆け引きを繰り返していた時代は終わった。次は何だろう?

関連記事:AIチップメーカーのHailoが約155億円調達、エッジデバイスにおけるAIモジュールの機会を倍増させる

その他のこと

  • 中西部のVCが350万ドル(約4億円)を投じたPresidio(プレシド)は、一般消費者向けのデジタル情報金庫スタートアップだ。フロリダにある同社は、2022年のローンチを目指している。これについては、無数の疑問が湧いてくる。しかし、この時代にストレージを中心としたスタートアップを作っている人がいるということが私の目を引いた。
  • 資本政策表(キャップテーブル)ソフトウェア企業のCartaが、私が楽しんで触っていたデータ製品を発表しした。時代や会社の種類ごとに分類された多数の資金調達データをいじくり回したい人には、とても楽しいソフトウェアだ。
  • 英国のスタートアップが、母国での個人情報保護規則の変更を受けて、EUへの再進出をどのように進めているかというエッセイに対するメモを書こうと思ったのだが、我らがNatasha Lomas(ナターシャ・ローマス)記者に先を越されてしまった。ということで、彼女の投稿を読んで欲しい。私が思いついたものよりも良い内容だ。
  • また、英国といえば、同国のFreetrade(フリードレード)が100万人のユーザーを獲得した。この数字は、Robinhoodブームがまさに、多くのスタートアップのボートを上昇させる国際的な消費者運動であることを示しているので、とても重要だ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Cloudflareがクラウドストレージ「R2」で市場参入、「第4のパブリッククラウド」目指す

企業のウェブアプリケーションのパフォーマンスとセキュリティを向上させるCloudflareには、現在、世界中でおよそ250のデータセンターがある。同社はこのほど、R2と名づけたクラウドストレージを提供し、初めてインフラサービスを始めることを発表した。

同社の共同創業者でCEOのMatthew Prince(マシュー・プリンス)氏によると、ストレージサービスの提供は、同社がこれまで行ってきた他のプロダクトの提供と何ら変わるところはない。まず社内で何かが必要になり、それを自分たちで開発し、それを顧客にも提供するようになるというパターンだ。

「プロダクトを作るときは、それを自分たちが必要だから作ることが多い」とプリンス氏はいう。彼によると、ストレージは、画像などのオブジェクトを同社のネットワークに保存するニーズから生まれた。一度それができ上がると、クラウドストレージの市場を眺めてみて、これはプロダクトとして顧客にも提供した方が良いと思われてきた。

「他のストレージソリューションが提供するすべての機能を備えたものを構築できるかどうかを考えました。このソリューションは、当社のグローバルネットワークを利用しているため、非常に優れたパフォーマンスを発揮し、お客様にとって非常に魅力的な価格を設定することができます」とプリンス氏は語る。

「R2」という名称は、Amazonのストレージプロダクト「S3」を少々揶揄したもので、明らかに名前をもじったものだ。プリンス氏によると、その違いは、エグレスの料金をなくすことで、ストレージのコストを最大10%削減することができたという。Cloudflareでは、ストレージの価格を、保存データ1GBあたり月額0.015ドル(約1.67円)に設定する予定だ。これに対してS3の価格は月に50TBまでは1GBあたり0.023ドル(約2.56円)からとなっている。

「データ転送にかかるコストを考えると、どのクラウド事業者でも、データを上げるのは無料ですが、データを取り出すのにはコストがかかります」とプリンス氏はいう。今回のサービスの目的の1つは、データの移動にかかるコストをなくすことであり、同社がいうところの「不定期のアクセス」には料金を課さない方針だという。

関連記事:CloudflareがJamstackでウェブサイトを作成、クラウドでホスティングするサービスを準備中

プリンス氏は、これが帯域幅の価格が年々下がっているにもかかわらず、Amazonなどのクラウドサービスのストレージの価格が高止まりしていることの背景だと考えている。彼の見積もりでは、そうしたコスト削減分の一部を顧客に還元できるという。彼は、パートナーであるBackblazeやWasabiのようなスタートアップと直接競合するつもりはないが、両社とも同じようにクラウドストレージ市場でAmazonや他の大手クラウドプロバイダーに対抗しようとしている。

このプロダクトはまだ開発中で、数カ月後にベータ版のテストができるようになった時点で、参加希望者のためにウェイティングリストを設けている。

プリンス氏は、Cloudflareはストレージ以外のサービスの構築も視野に入れており、最終的にはAWS、Google、Microsoftの3大クラウドベンダーと競合すると考えているという。「私たちは第4のパブリッククラウドになるための道を歩んでいると考えています。私たちのアプローチは、他の3社よりもはるかに差別化されていると考えています」とのことだ。

画像クレジット:Yulia-Images/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウド市場の成長を脅かす中国によるテック巨人への弾圧、BATHの中での位置づけは

中国のテック企業が国内の規制当局の監視下に置かれる中、投資家や中国の4大クラウド企業であるBATH(Baidu AI、Alibaba Cloud[アリババクラウド、阿里雲]、Tencent Cloud[テンセントクラウド]、Huawei Cloud[ファーウェイ・クラウド])を含む国内のハイテク企業の間で、懸念やプレッシャーが高まっているとアナリストが報告している。

一連の独占禁止法やインターネット関連規制の取り締まりにもかかわらず、大手クラウド企業4社は着実に成長している。現在の精査は特にクラウド分野に集中しているわけではなく、デジタルトランスフォーメーション、人工知能、スマートインダストリーへの需要が堅調に推移していることから、中国のクラウドインフラ市場規模は、2021年第2四半期に前年比54%増の66億ドル(約7261億円)となった。

それでもなお、Baidu(バイドゥ、百度)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)の3社の株価はこの半年間で18%から30%下落しており、投資家は中国のテック企業に賭けることに慎重になる可能性がある。

「中国のテック企業は、有利な欧米市場へのアクセスが妨げられていたときには特に、常に国内市場に頼ることができました。しかし、過去9カ月間に国内の規制圧力が高まったことで、過去数年間にクラウド事業を大きく成長させてきた企業にとっては、苛立たしい逆風となっています」とCanalysのバイスプレジデント、Alex Smith(アレックス・スミス)氏は語る。

関連記事:中国TencentのWeChatが「法律・規制違反」で新規ユーザー受け付けを一時停止

中国のクラウド市場では、4大クラウド企業がクラウド支出総額の80%を占め、圧倒的な強さを誇っている。Alibaba Cloudは、2021年の第2四半期に33.8%の市場シェアを獲得し、トップランナーの地位を維持している。同じ第2四半期に中国の市場規模の19.3%を占めていたHuaweiは、これまで規制措置を回避してきた存在だ。

CanalysのチーフアナリストであるMatthew Ball(マシュー・ボール)氏はこう語る。「Huaweiはたまたま強力なクラウドビジネスも展開している、インフラとデバイスの会社です。クラウドインフラに関しては、BATだけでなく、BATH企業に注目しています。Huaweiは、特に同社が政府との良好で長期的な関係を持つ公共セクターにおいて、成長を促進するのに強い立場にあります」。

中国の規制当局が自国のテック企業への監視を強化する一方で、弾圧は中国の市場や同国に拠点を置く企業の株式に大打撃を与えている。

中国では、国家安全保障に関わる重要データの保護を目的としたデータセキュリティ法が6月に成立し、9月上旬から施行されている。また、8月下旬には、ByteDance(バイトダンス)、Alibaba Group(アリババグループ)、Tencent、DiDi(ディディ、滴滴出行)などを対象としたアルゴリズム企業の規制に関するガイドライン案が発表された。

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画像クレジット:Alex Tai / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

必要なファイルが見つけられないストレスを軽減させるPlaybookの「デザイナー」向けクラウドストレージを

Jessica Ko(ジェシカ・コ)氏がGoogleの、次いでOpendoorデザイン責任者であった時、彼女は部下たちがDropboxからアセットを探すのに彼らの時間の90%を費やしているのに気がついた。

多くの場合、彼らは古いバージョンのものしか見つけられないか、または探しているものを見つけられないでいた。また、さらに悪い場合には、別のアセットを間違って手に入れていた。

「それは非常に混沌としたプロセスでした」と、コ氏は回想する。「だれもがシステム内へアクセスし、何かに手を加えたりフォルダのストラクチャーを変えてしまうことができたために、大変なことになっていたのです。しかし他の選択肢がないために、そうした状態が続いていました」。

コ氏によると、Opendoorの規模が拡大するに連れ、問題はまずます大きくなっていったという。

「デザイナーはストレスを抱えて辞めていきました。Dropboxは今もこの問題を解決できていません。Googleドライブも優れた代替手段とはいえません。デザイナーは最も多くファイルを扱い、常にファイルを交換しています」。

ファイルストレージやファイル共有の問題に起因する不満やストレスに加え、適切なアセットが見つけられないこともエラーに繋がり、それは金銭的な損失にもつながっていた、とコ氏はいう。

「私たちは、新しいバージョンのものを見つけられないために、写真を撮ったり、デザインを再度作成しなければならず、そのために多くのお金を使いました」。

また、アセットにアクセスする必要があるのは、なにもデザイナーだけではない、という問題もある。財務チームもセールス用のプレゼン資料を作成したりするために常にアセットにアクセスする必要がある。

そこで2018年、コ氏は彼女を悩ませていたこの問題を、現在のデザインワークフローとプロセスに適したファイルストレージを作ることで解決すべく、Opendoorを離れた。より簡単な言葉で言えば、彼女はDropboxやGoogleドライブに替わる「デザイナーにより構築されたデザイナーのための」新しいクラウドストレージを構築したいと考えたのだ。

2020年初め、コ氏(CEO)はAlex Zirbel(CTO、アレックス・ザーベル)氏 と組んでサンフランシスコに拠点を置くPlaybookを立ち上げた。これを彼女は問題を解決するための「デザイナー向けDropbox」と説明している。そして米国時間8月26日、同社は突然姿を表し、Founders Fundが主導するシードラウンドで400万ドル(約3000万円)を調達したことを発表した。資金調達後の評価額は2000万ドル(約22億円)である。

この資金調達には、Abstract、Inovia、Maple、Basis Set、Backend、Wilson Sonsiniや、Opendoorの共同創設者兼CEOのEric Wu(エリック・ウ)氏、Gustoの共同創設者Eddie Kim(エディ・キム)氏、SV AngelのBeth Turner(ベス・ターナー)氏といった、多くのエンジェル投資家が参画している。

手短に言えば、Playbookは、組織のメディアライブラリ全体を数分で自動的にインポート、タグ付け、分類できるということを売りにしている。

立ち上げ後、Playbookがまず着手したのが、アセットのフォルダの管理方法を再考し、フォルダの下にサブフォルダを配置することだった。そして、同社はファイルの共有方法を変えようることに取り組んだ。

「現在、本当に多くのことがメールやSlackを通して行われているため、バージョンコントロールが一層難しくなっています」とコ氏はTechCrunchに語った。そこでPlaybookはファイルをさまざまなチャンネルを通して送るのではなく、当事者全員がアクセスできるストレージシステムを構築してきた。

「何年もの間、これらのアセットはファイルキャビネットのようなものに放り込まれてきました。しかし、今日、アセットの共有は、フリーランサーや下請け業者といったさまざまな関係者が関わるものになりました。そのため誰がこれらのファイルやバージョンの管理をするかはとても複雑な問題になりつつあります」。

Playbookは4TBの無料ストレージを提供している。これはコ氏によると、無料バージョンのGoogleストレージの266倍、Dropboxの2000倍に当たる。これでユーザーをひきつけ、ストレージ容量がなくなることを心配せずにオールラウンドのクリエイティブハブとしてこのプラットフォームを使ってもらいたいという狙いがある。また、ファイルを自動的にスキャン、整理、タグ付けし、ファイルやフォルダを視覚的に簡単に参照できるようにした。

画像クレジット:Playbook

Playbookが3月にデザインコミュニティに対しベータ版を公開したところ、2カ月で1000人のユーザーを獲得した。登録者数はその後も伸び続けたため、新たなユーザーに対処するために同社はベータ版を閉じなければならないほどだった。

現在、約1万人のユーザーがデータ版に登録している。初期のユーザーには個人で活動するフリーランサーからFast、Folx、Literatiといった企業のデザインチームが含まれる。

コ氏によると、9人の社員を擁する同社は、収益化をはかり、エンタープライズ版を出す前に(2020年になる可能性が高い)、製品を「適切なもの」にすることに力を注ぎたいと考えている。

当座Playbookは、フリーランサーのニーズに的を絞っている。同社はパンデミック後にはフリーランサーが爆発的に増えると考えており、そのためには「クラウドストレージはよりスマートになる必要がある」と確信している。

「私たちはまずフリーランサーが感じている問題を取り上げ、ボトムアップ式にこれを解決したいと考えています」とコ氏はTechCrunchに語った。

また、現在Playbookがフリーランサーに焦点を当てている背景には、 彼らが仕事の請負先にPlaybookを紹介してくれるだろう、というマーケティング上の戦略もある。

「彼らがPlaybookを通しクライアントにアセットやファイルを渡すと、クライアントはこれを採用する傾向があります」とコ氏は語る。

Playbook は現在、320万件のアセット管理に使用されており、毎月「登録を待っている人が何百人もいる」とのことである。

ザーベル氏は今後、画像スキャン、シミラリティ、コンテンツ検出、プレビュー、長期的なクラウドストレージ、そして数々のインテグレーションに進出することを考えている、と述べた。

「クラウドストレージのクリエイティブな側面に注目すると、興味深い技術上の課題がたくさんあります」。

Founders FundのJohn Luttig(ジョン・ルティグ)氏は、2020年に初めてコ氏やザーベル氏に会った際、Founders Fundが今まで見たことのないレベルで「彼らがファイル管理に関し深い理解と考えを持っていることが明確でした」と語った。また彼の見解では、Dropboxが2007年に立ち上げられて以降、クラウドストレージにおけるイノベーションはほとんど起こっていない。

「Playbookのプラットフォームは最新のデザイン、コラボレーションの原則、人工知能を取り込んだもので、これを用いることでファイル管理をはるかに早くしかも簡単に行うことができます。Playbookにはデザインの世界に深く関わってきたという強みがあり、ユーザーの視点でファイルシステムを再考する、という意味で同社は非常によいポジションにいると考えます」とルティグ氏はメールで伝えてくれた。

同氏は、Playbookはコンピュータービジョンやデザインの最新の進歩を活用し「今までのものよりもずっと優れた、ファイルを管理し共有するための製品を構築する」能力がある、と語った。

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画像クレジット:Playbook

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

スペインのInternxtは「分散型ストレージのCoinbase」を目指して約1.1億円を調達する

バレンシアを拠点とするスタートアップInternxt(インターネクスト)は、インターネットに接続している人なら誰でも大容量のアクセスが可能な分散型クラウドストレージを実現するという意欲的な計画を静かに続けている。

Internxtは、Juan Roig(フアン・ロイグ氏、スペインで最も賑わうスーパーマーケットチェーンの経営者であり2番目の億万長者)が所有するヨーロッパのVCファンドAngels Capital(エンジェルズキャピタル)と、マイアミに拠点を置くVenture City(ベンチャーシティ)を中心に、100万ドル(約1億1000万円)のシード資金を調達した。同社はこれまで、初期の開発資金として、トークンセールで約50万ドル(約5500万円)を調達していた。

このシード資金は、次の成長段階に向けて投入される。同社の前月比成長率は30%で、少なくともそれを維持できる自信があるとし、また、製品開発を加速させるために、大幅な人員の増強も計画している。

このスペインのスタートアップは、その短い歴史のほとんどを分散型インフラの開発に費やしてきたが、同社はそのインフラを、Google(グーグル)をはじめとする大手テック企業が提供する、主流のクラウドベースのアプリケーションよりも本質的に安全でプライベートなものだと主張している。

これは、データへの不正なアクセスを防ぐためにファイルが暗号化されているだけでなく、情報が高度に分散化されて保存されているためだ。小さなシャードに分割された情報は、複数のロケーションのストレージに分散されるが、そのストレージスペースはネットワーク上の他のユーザーから提供されるものだ(そして、そのスペースに対する報酬は、予想に違わず暗号資産で支払われる)。

創業者でもあるCEOのFran Villalba Segarra(フラン・ヴィラルバ・セガラ)氏は「これは分散型アーキテクチャであり、世界中にサーバーがある」という。そして「このアーキテクチャは、企業や個人が提供するストレージスペースを活用している。当社のインフラに接続したストレージ提供者は、データシャードをホストし、当社は提供者がホストするデータに対する報酬を支払う。これは、従来のアーキテクチャのようにデータセンターを借りて固定のストレージ料金を支払うという方法ではないため、より手頃な価格でサービスを提供できる」と語る。

そして「これは、Airbnb(エアビーアンドビー)やUber(ウーバー)と同じようなモデルであり、ストレージを大衆化したものだ」と付け加える。

Internxtは、2017年から3年間の研究開発を経て、1年前に最初のクラウドベースのファイルストレージアプリ「Drive(ドライブ)」を公開し、そして今回、Googleフォトのライバルとなる「Photos(フォト)」を発表した。

ヴィラルバ・セガラ氏によると、これまでのところ、マーケティングには重点を置いていないものの、約100万人のアクティブユーザーを集めているという。

Internxt Mailは、次にリリースを控える製品で、GoogleのフリーミアムウェブメールクライアントであるGメールや、そのGmailにプライバシー保護で勝ることを謳うProtonMail(プロトンメール)に対抗するためのものだ(同社に勝算がある理由については後述する)。

また、Internxt Send(ファイル転送アプリ)も近々発表される予定だ。

「Google Workspaceに置き換わる製品を開発しており、Googleとの競争ではGoogleと同じレベルになるように取り組んでいる」と同氏はいう。

1つの場所にしか保存されていないファイルは、他の人からアクセスされるという脆弱性がある。Internxtのアーキテクチャは、その問題を解決しようとしている。それがストレージプロバイダー自身であろうと(Googleのように、ユーザーのデータをデータマイニングすることでプライバシーを侵害するビジネスモデルかもしれない)、またはプロバイダーのセキュリティを突破しようとするハッカーや第三者であろうと、結果として、ユーザーのファイルを盗み見たり改ざんしたりするなど、不正なアクセスを許すことになる。

ネットワークが不正アクセスされた場合のセキュリティリスクには、ここ数年増加傾向にあるランサムウェア攻撃などがある。これは、ネットワークに侵入した攻撃者が、保存されているファイルの正当な所有者のアクセスを遮断し、情報を身代金として要求するものだ(通常、攻撃者独自の暗号化レイヤーを適用し、データを解除する代わりに支払いを要求する)。

Internxtは、サーバーやハードドライブにまとまって保存されているファイルは、格好の標的になるという考えに基づき、分散化を推進している。

この問題に対するInternxtの答えは、ゼロ知識暗号化と分散化を組み合わせた新しいファイルストレージインフラだ。つまり、ファイルを複数のセグメントに分割して複数のストレージに分散し、さらにミラーリングすることにより、ストレージの故障やハッキング攻撃、スヌープに対して高い耐性を実現する。

このアプローチは、クラウドサービスプロバイダーによるプライバシー侵害に対する懸念を低減する。というのも、Internxt自身さえもユーザーデータにアクセスできないからだ。

Internxtのビジネスモデルはシンプルで、段階的なサブスクリプションだ。既存および計画中のすべてのサービスをカバーする(現在は)1つのプランを提供し、必要なデータ量に応じていくつかのサブスクリプション料金を設定している(つまりこれも、無料の10GBから始まるフリーミアムだ)。

インターネットにおけるコアアーキテクチャを見直すことがユーザーにとって重要であると考えたのは、もちろんInternxtが初めてではない。

スコットランドのMaidSafe(メイドセーフ)は、10年以上も前から分散型インターネットの構築に取り組んでおり、10年間のテストを経て、2016年に初めてSafe Network(セーフネットワーク)と呼ばれる代替ネットワークのアルファテストを開始した。同社のインターネットを再発明するという長期的なミッションは今も続いている。

分散型クラウドストレージの分野におけるもう1つの(まだベテランとはいえない)競合企業は、企業ユーザーをターゲットにしているStorj(ストージ)だ。また、Filecoin(ファイルコイン)Sia(シア)も挙げられる。両社は、Bitcoin(ビットコイン)が暗号資産やブロックチェーン・分散化に対する起業家の関心に火をつけた後に生まれた、ブロックチェーン関連スタートアップの新しい波の一旦を担っている。

関連記事:クラウド上の余剰容量を活用する、分散ストレージサービス運営のStorjがエンタープライズに進出

では、Internxtのアプローチは、この複雑な最先端技術に長く取り組む、これらの分散型ストレージのライバル企業とはどのように違うのだろうか。

ヴィラルバ・セガラ氏は「欧州を拠点とするスタートアップで分散型ストレージに取り組んでいるのは当社だけだ(欧州連合ではない英国のメイドセーフを除いて)」とし「Storj、Sia、Filecoinなど……知る限りでは、他の企業はすべて米国を拠点としている」と、データ保護やプライバシーに関する欧州連合の法体系が米国の競合他社に対して優位に働いていると主張する。

同氏が挙げるもう1つの大きな差別化の要因は、ユーザビリティだ。前述の競合他社のサービスは「開発者が開発者のために作った」ものだと指摘する。一方、Internxtの目標は「分散型ストレージのCoinbase(コインベース)」に相当するものだという。つまり、非常に複雑なテクノロジーを、専門知識のないインターネットユーザーでも容易に使えるようにすることだ。

「ブロックチェーンの分野は、計り知れない可能性を秘めているにもかかわらず、非常に大規模なテクノロジーであるため、使用するのが非常に難しいという状況がよく見られる」と同氏はTechCrunchに語る。「本質的にコインベースがやろうとしていることは、より簡単に暗号資産に投資できるように、より使いやすいブロックチェーンをユーザーに提供することだ。だから、Internxtでも同じように、クラウドストレージのブロックチェーンを人々に届けようとしている。とてもわかりやすいインターフェイスで使いやすくすることなどだ」。

「分散型クラウドの分野では、事実上唯一の利用可能なサービスであり、それがStorjなど他社との大きな差別化要因となっている」。

「インフラの面では、SiaやStorjとよく似ている」と同氏は続ける。さらに、Proton Drive(プロトンドライブ。エンド・ツー・エンドの暗号化メールサービスであるプロトンメールのメーカーが提供するファイルストレージサービス)の「ゼロアクセス」暗号化アーキテクチャになぞらえ、Internxtの「ゼロ知識」暗号化も、クライアント側で暗号化されており、サービスプロバイダーがユーザーの情報を盗み見ることができないことを技術的に保証しているという(だから、プライバシーを侵害しないと会社を信じる以上の安心が得られるということだ)。

Internxtのゼロ知識暗号化は、既成のAES-256暗号を使用しているようだが、同社はスペインの大手サイバーセキュリティ企業S2 Grupo(エスツー・グルーポ)の監査を受けた「ミリタリーグレード」であり、クライアントサイドで暗号化を行い、オープンソース暗号を使用しているという。また、それに加え、暗号化されたデータを分散化するというステップも踏んでいる。そのため、セキュリティ面で付加的なメリットがあると、ヴィラルバ・セガラ氏はいう。

「暗号化に加え、データを断片化し、世界中に分散させている。つまり、基本的にサーバーがホストしているのは、暗号化されたデータシャードであり、たとえハッカーがそのようなサーバーにアクセスしても、そこにあるのは根本的に意味を成さない暗号化されたデータシャードであるため、さらに安全だ。当社でさえ、そのデータにはアクセスできない」。

「これにより、ハッカーや第三者によるデータアクセスに対するセキュリティが格段に向上した。そしてその上で、非常に優れたユーザーインターフェイスを構築している。これはユーザーが使い慣れたGoogleとほとんど同じインターフェイスであり、その点でもStorjやSiaとは大きな違いを生んでいる」と同氏は述べる。

Internxtのユーザーファイルを保存するストレージスペースは、ストレージスペースが余っているユーザーから提供されるものだ。ストレージスペースを提供しデータシャードをホストするユーザーには、暗号資産のマイクロペイメントでインセンティブが与えられる。つまり、単にノートパソコンでInternxtに接続している個人ユーザーからも、大量の未使用ストレージ容量を持つデータセンター企業からもストレージスペースが提供される可能性があるということだ(ヴィラルバ・セガラ氏によると、OVH[オー・ヴィ・エイチ]など、いくつかのデータセンター企業が同社のネットワークに接続しているという)。

「当社は(ストレージを確保するための)直接的な契約はしていない。誰でもInternxtのネットワークに接続することができる。つまり、提供可能なストレージ容量を持つデータセンターは、Internxtのネットワークに接続すれば、報酬を得られる。当社は、従来の方法でデータセンターにストレージ料金を支払うことに比べれば、それほど多くの料金を支払うことはない」と同氏はいい、このアプローチを、ホストとゲストの両方を持つAirbnbや、ドライバーとライダーを必要とするUberに例えている。

「当社はユーザーとデータセンターをつなぐプラットフォームだが、当社自体がデータをホストすることはない」。

Internxtでは、ネットワークのアップタイムとサービスの質を確保するために、レピュテーションシステムを使ってストレージプロバイダーを管理している。また、ブロックチェーンの「プルーフ・オブ・ワーク」チャレンジを適用して、ノードオペレーターがクレームするデータを実際に保存していることを確認している。

同氏は「分散型アーキテクチャの特性上、一定の信頼性を確保する必要がある」とし「そのため、ブロックチェーンテクノロジーを利用する。自社のデータセンターにデータを保管する場合は、信頼性を確保するという点では簡単だ。しかし、分散型アーキテクチャにデータを保存する場合は、プライバシーの保護や価格の安さなど多くのメリットがあるものの、データを実際に保存しているかどうかの確認が必要であるなど、デメリットもある」と述べる。

ストレージスペースの提供者への支払いもブロックチェーンテクノロジーによって行われる。ヴィラルバ・セガラ氏によると、世界中の約1万人に及ぶノードオペレーターに対して、大規模なマイクロペイメントを自動化するには、ブロックチェーン技術が唯一の方法だという。

ブロックチェーンの基盤となるテクノロジー「プルーフ・オブ・ワーク」は、計算にともなうエネルギー消費の問題を指摘されている。同氏は、エネルギーコストの問題について、Internxtの分散型アーキテクチャが、データセンターによる従来のアーキテクチャよりもエネルギー効率が高いことを示唆している。これは、データシャードがアクセスをリクエストしたユーザーの近くに配置される可能性が高いためであり、パケットを取得するために必要なエネルギーは、常に世界の数カ所に集中しているデータセンターから取得するのに比べて低減される。

「エネルギー消費の観点から見ると、Internxtは、従来のクラウドストレージサービスよりもはるかにエネルギー効率が高いことがわかった。なぜか?考えてみて欲しい。Internxtでは、ファイルをミラーリングし世界中に保存している。Dropboxなど特定の場所から送信されたファイルにアクセスすることは、実際には不可能だ。基本的に、DropboxやGoogleドライブにアクセスしてファイルをダウンロードする場合、テキサス州などにあるデータセンターから送信される。そのため、データ転送には膨大なエネルギーが消費されるが、人々はそれについて考えていない」と同氏は主張する。

「データセンターのエネルギー消費量は、記憶が正しければすでに全世界のエネルギー消費量の2%*に達している。そのため、レイテンシーが利用可能で、ユーザーの近くからファイルを送ることができれば、ファイル転送はより速くなり、その結果はすべて当社のレピュテーションシステムに反映される。したがって、Internxtのアルゴリズムは、ユーザーに近いファイルを送ることで、多くのエネルギーを節約することができる。これを数百万人のユーザーと数百万テラバイトの単位で計算すると、実際にはかなりのエネルギー消費と当社のコストを削減できることになる」。

では、ユーザーから見たレイテンシーはどうだろうか。Internxtへのファイルのアップロードや、保存されているファイルのダウンロードのため、ユーザーがアクセスする際、Googleドライブなどと比べて顕著な遅延はあるのだろうか。

ヴィラルバ・セガラ氏によると、断片化されたファイルをユーザーの近くに保存することで、遅延を補うことができるという。しかし、主流のクラウドストレージサービスと比較して、若干の速度差があることも認めている。

「アップロードとダウンロードのスピードについては、GoogleドライブやDropboxにほぼ匹敵する」と同氏はいい「また、そういった企業は10年以上の歴史があり、サービスは非常に最適化されている。加えて従来型のクラウドアーキテクチャを採用しており、比較的シンプルで構築しやすく、何千人もの従業員を抱えているため、スピードなどの面では明らかに当社のサービスよりもはるかに優れている。しかし、当社は主流のストレージサービスに追いつきつつあり、Internxtのスピードをそのレベルに引き上げるとともに、当社のアーキテクチャとサービスにできるだけ多くの機能を組み入れることを目指して、全力で取り組んでいる」と述べる。

「基本的には、使いやすさという点ではプロトンドライブやTresorit(トレソリット)のレベルにあると考えている」とし、遅延について「Googleドライブに非常に近づいている。しかし、平均的なユーザーにとってはそれほど大きな違いはないはずだ。そしてすでに述べたように、当社のサービスを文字通りGoogleと同じように利用できるようにするため、できる限りの努力をしている。しかし、InternxtがStorj、Sia、メイドセーフの何年も先を行っていることは確かだ」と述べる。

Internxtは現在、わずか20人のチームでこのような複雑なネットワークを構築している。しかし、新たなシード資金を手にしたことから、今後数カ月の間に雇用を拡大することで、製品開発を加速させ、成長を維持し、競争力を高めていくことを計画している。

「シリーズAを実施する頃には、Internxtの従業員は約100人になっているはずだ」とヴィラルバ・セガラ氏はいう。そして、次のように続ける。「シリーズAの準備はすでに進めている。シードラウンドを終了したばかりだが、成長の速さから、米国やロンドンの有力なVCファンドから声がかかっている」。

「かなり大きなシリーズAになるだろう。スペインで最大のシリーズAになるかもしれない。シリーズAまで、これまでの成長率である前月比30%以上の成長を計画している」。

同氏はまた、シリーズAでは5000万ドル(約55億円)の評価額での資金調達を目指すとTechCrunchに語る。

「まさにシードラウンドを終えたばかりのため1年後に行う予定だったが、多くのVCから声をかけてもらっているので、年内に実施することになるかもしれない」といい「しかし、時間は問題ではない。最も重要なことは、目標とする最低評価額を達成できるかどうかだ」と語った。

注記:IEA(イー・アイ・エー)によると、2019年の世界の電力消費量のうち、データセンターとデータ伝送ネットワークは、それぞれ約1%を占める。

画像クレジット:Internxt

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

クラウドインフラ市場は2021年第2四半期も成長を続け、売上高は約4.6兆円に到達

野球で、高い天井が見込めるなどという。若い選手の伸び代が大いにあるということだ。同じことがクラウドインフラストラクチャの市場にも言えるかもしれない。この市場は成長を続け、今後すぐに成長が鈍る兆候は見えない。主要ベンダーの第2四半期の売上合計は420億ドル(約4兆6000億円)に達し、第1四半期より20億ドル(約2200億円)増加した。

Synergy Researchのレポートによると売上は39%のペースで増えており、4四半期連続で増加している。これまで通りAWSがトップだが、Microsoftが急速に成長しGoogleも勢いを維持している。

AWSは依然として市場の論理をものともせず、前四半期をさらに5ポイント上回る37%の成長を見せた。成熟した市場を持つAWSとしてはすばらしい伸びだ。Amazonのクラウド部門の売上は148億1000万ドル(約1兆6300億円)でランレートは600億ドル(約6兆6000億円)近くに達し、市場シェアは33%でトップを走っている。シェアはここ数年このあたりにとどまっているが、市場規模が大きくなっているので売上も伸び続けている。

Microsoftの成長は51%とさらに急速だ。Microsoftのクラウドインフラストラクチャのデータを確実につきとめるのはいつも難しいが、Synergy Researchによると市場シェアは20%で売上は84億ドル(約9220億円)と、前四半期の78億ドル(約8560億円)から増加している。

GoogleもThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏のリーダーシップのもとでゆっくりと着実に成長を続けている。第2四半期の売上は42億ドル(約4610億円)で54%の増加となった。市場シェアは10%で、Google Cloudのシェアが2桁台のパーセンテージになったのはSynergyが四半期ごとのデータを調査するようになってから初めてだ。前四半期の売上は35億ドル(約3840億円)だった。

画像クレジット:Synergy Research

ビッグ3に続くAlibabaは前四半期と同じくシェア6%と堅調で(ただし発表はまだで近日中の予定)、IBMは前四半期よりも1ポイント落として4%となった。IBMはハイブリッドクラウドマネジメントへと移行する中で純粋なインフラストラクチャとして苦戦しているためだ。

SynergyのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、ビッグ3はこの成長を加速するために多額の資金を投じているという。同氏は発表の中で「Amazon、Microsoft、Googleの合計で、四半期あたり通常250億ドル(約2兆7500億円)以上の投資をしており、その多くは340カ所以上のハイパースケールデータセンターの建設や設備のためです」と述べた。

一方、Canalysの分析も同様の数字を示しているが、市場全体の売上をSynergyをやや上回る470億ドル(約5兆1500億円)としている。Canalysの調べによる市場シェアは、Amazonが31%、Microsoftが22%、Googleが8%となっている。

CanalysのアナリストであるBlake Murray(ブレイク・マリー)氏は、クラウドベンダーがその巨大なデータセンターの運営にあたって再生可能エネルギーの利用を増やしていることから、企業の業務がクラウドへと移行している理由の1つは環境に対する持続可能性のゴールを達成するためだと述べている。

マリー氏は発表の中で「クラウドベンダーが利用するベストプラクティスとテクロジーは、業界の他の部分にも今後広がっていくでしょう。一方、顧客は環境に対する責任の一端を果たし持続可能性のゴールを達成するためにクラウドサービスの利用を増やしていくでしょう」と述べた。

企業はデータセンタービジネスから離れてクラウドに移行しているのか、あるいはビッグ3の持続可能性の取り組みに便乗したいのかに関わらず、着実にクラウドに移行している。世界全体でのクラウド利用率は25%との推計もあり、特に米国外では多くの市場が未開拓であることから今後も成長を続ける可能性は高い。

このことはビッグ3や、市場シェアに食い込んで売上を大きく伸ばそうとしているビッグ3より小規模の事業者にとっては良い兆候だ。Synergyのディンスデール氏は「ビッグ3より小規模でターゲットを絞っているクラウドプロバイダにとってはまだ大いにチャンスがありますが、ビッグ3の目の飛び出るような数字から目を離せるほどの状況にはならないでしょう」と述べた。

確かに今のところ、ビッグ3が天井にぶつかるとは考えにくい。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:クラウドストレージクラウドコンピューティングSynergy ResearchAWSMicrosoft AzureGoogle CloudAlibaba Cloud

画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

Boxが電子署名プロダクトBox Signをリリース、コロナ需要に対応

Box(ボックス)は米国時間7月26日、法人向けプランの一環として追加コストと制限なしで電子署名ができるネイティブの電子署名プロダクト「Box Sign」をリリースした。

このプロダクトをリリースする5カ月前に、カリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とするBoxは電子署名のスタートアップSignRequestを5500万ドル(約61億円)で買収することに合意していた

BoxのCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、同社がすでに企業10万社のコンテンツ管理を行っており、Box Signは同社が事業プロセスで顧客をサポートできる新たなカテゴリーで、「社にとって画期的な製品」であるとTechCrunchに語っている。

「顧客がコンテンツを保持・管理できるよう、当社はコンテンツのライフサイクルを強化するコンテンツクラウドを構築しています」とレヴィ氏は述べた。「顧客のオンボーディング、取引のクロージング、あるいは監査などに関する多くの処理が毎日行われていますが、これらはいまだに手作業で行わています。当社はそれをデジタルへと移行させ、コンテンツに関する署名のリクエストを可能にしています」。

機能は次の通りだ。ユーザーはBoxから直接、Boxのアカウントを持たない人にでも電子署名が必要な書類を送ることができる。署名リクエストと承認の場所は書類のどこにでも設けることができる。この作業はSalesforceのような人気のアプリに統合でき、電子メールによるリマインダーや締切の通知もある。Boxの他のプロダクト同様、署名も安全でしっかりとしたものだ。

Prescient & Strategic Intelligenceによると、2020年の世界の電子署名ソフトウェアマーケットは18億ドル(約1986億円)で、IDCは2023年までに38億ドル(約4193億円)に成長すると予想している

レヴィ氏は、従来のツールの制限とコストの障壁のために電子署名を使っている組織は3分の1以下とマーケットがまだ初期段階にあると考えていて、これは将来かなりのチャンスがあることを意味している。しかし、状況は変わりつつあるようだ。Boxはパンデミックの間、デジタル処理の取り込みをサポートしようと、まだ書類の郵送、スキャン、ファックスに頼っている銀行と協業した。同社はまた、自社プロダクトについて顧客に2020年調査を行い、最も多かった「要望」は電子署名だった、とレヴィ氏は話した。

この分野で展開されているプロダクトの中でもメジャーなサービスである​​DocuSignとAdobe Signは引き続き使える、と同氏は指摘した。Boxは他の同業サービスと競合するつもりはなく、顧客の需要があり、顧客に選択肢を提供したかった、と述べた。

電子署名サービスの提供は、新しい最高製品責任者として6月にDiego Dugatkin(ディエゴ・ドガトキン)氏を迎え入れたことを受けてのものでもある。同社に加わる前、ドガトキン氏はAdobe Document Cloudのプロダクト管理担当副社長で、Adobe Signを含めAdobeの一連のプロダクトの戦略と実行を率いていた。

「当社の戦略は何年間もポートフォリオを拡大するというもので、より高度なユースケース、そしてすべてを管理する1つのプラットフォームを持つというビジョンの原動力となってきました」とレヴィ氏は述べた。「ディエゴはこの分野で20年という途方もない経験を持ち、電子署名を機能させることにおいてかなりの進歩をもたらすでしょう」。

電子署名プロダクトに加えて同社は、主なアドオンすべてと2021年夏から利用できるようになる高度な電子署名機能を含むEnterprise Plusプランも導入した、と明らかにした。

関連記事:クラウドサービス企業Boxが予想を上回る四半期決算を発表、業績見通しを引き上げ復調を示唆

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Box電子署名クラウドストレージ

画像クレジット:Box

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウドサービス企業Boxが予想を上回る四半期決算を発表、業績見通しを引き上げ復調を示唆

Box(ボックス)の経営陣は2020年以降、アクティビストインベスター(物言う投資家)であるStarboard Value(スターボード・バリュー)との交渉を続けながら、他のすべて人々と同様、新型コロナウイルス感染流行の時期を戦い抜いた。同社が米国時間5月27日に発表した財務諸表によると、2022年度第1四半期は、このクラウドコンテンツマネジメント企業にとって、全体的に良好な四半期となったようだ。

収益は前年同期比10%増の2億240万ドル(約221億9000万円)で、2億ドルから2億100万ドル(約219億3000万〜220億4000万円)というBoxの予測を上回った。Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)によると、アナリストの意見は2億50万ドル(約219億9000万円)だったので、市場の予想も上回ったことになる。

Boxのようなクラウド企業にとって好ましい状況が続いているにもかかわらず、同社はこの1年間、強い逆風にさらされてきた。会社の方向性とリーダーシップをめぐり、取締役会におけるStarboard Valueとの争いに直面している同社にとって、このような報告は非常に必要なものだった。

共同創業者でCEOを務めるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、この業績報告が良い傾向の始まりとなることを期待している。「現在はIT投資に適した経済状況になっていると思います。さらに、ハイブリッドワークのトレンドや、デジタルトランスフォーメーションの長期的なトレンドは、当社の戦略を大いに後押しするものだと私は思います」と、同氏は決算後のTechCrunchによるインタビューで語っている。

Boxは、2021年2月に電子署名のスタートアップ企業であるSignRequest(サインリクエスト)を買収したが、実際にその機能をプラットフォームに組み込むのは2021年夏以降になる予定だという。レヴィ氏によると、緩やかな収益の成長を支えているのは、コンテンツセキュリティ製品であるBox Shield(ボックス・シールド)や、顧客がBox上でワークフローをカスタマイズしたりアプリケーションを構築したりすることができるプラットフォームツールだという。

関連記事:Boxがセキュリティ強化ツールの「Box Shield」を発表

また、同社は大口顧客の獲得にも成功している。レヴィ氏によると、10万ドル(約1096万円)以上を支払っている顧客の数は前年同期に比べて約50%増加したとのこと。Boxの成長戦略の1つは、プラットフォームを拡大し、時間をかけて追加のプラットフォームサービスをアップセルすることだったが、この数字はその努力が実を結んでいることを示している。

レヴィ氏は、M&Aのカードについては手の内を見せようとしなかったものの、もし買収によってさらなる成長を促進する適切な機会が訪れれば、同氏は確実にさらなる人為的な成長を強く検討すると語った。「M&Aについては、今後も慎重に検討していくつもりです。金額と、我々のロードマップを加速させる力、あるいは現在参入していない市場の一部に参入する力になるという点において、我々が魅力的だと思うM&Aだけを行うつもりです」と、レヴィ氏は語った。

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この第1四半期の成長率はわずかに加速したが、これは同社の業績を連続的に見た場合にのみ言えることだ。簡単に言えば、今回Boxが報告した2022年度第1四半期の10%成長は、2021年度第4四半期の8%成長よりは良かったが、前年同期の13%成長よりは悪かったということになる。

しかし、Boxの場合は、一般的な慣例に基づいて判断するのではなく、四半期ごとに数字を見て、期待される加速の兆候を探ることにしたい。この基準では、Boxは自らの目標を達成したことになる。

投資家の反応はどうだったか? 時間外の同社の株価は、急落したり回復したりとさまざまだった。市場はこの結果に混乱しているようだ。決算報告書を吟味して、適度に加速しているBoxの成長が、同社の株式を保有するに値するほど魅力的なものか、あるいは逆に、同社の成長が、同社にもっと劇的な変化を求めている外部の人々を退けるほど、まだ十分に発展していないかを判断しているのだろう。

Boxの業績を俯瞰すると、成長率以外にも同社が事業を順調に導いていることがわかる。営業利益率(GAAPベースおよび非GAAPベース)は改善し、現金創出も回復している。

おそらく最も重要なことは、Boxが業績見通しを「8億4000万ドル(約921億円)から8億4800万ドル(約930億円)の範囲」から「8億4500万ドル(約927億円)から8億5300万ドル(約936億円)の範囲」に引き上げたことだ。これは大きいだろうか?いや、そうでもない。目標の下限値と上限値の両方とも、その差は500万ドル(約6億円)。しかし、目を凝らしてみると、同社の第4四半期から第1四半期にかけての収益の加速と業績見通しの引き上げは、業績回復の早期指標となる可能性がある。

レヴィ氏は、2020年がBoxにとって厳しい年であったことを認めている。「2020年は、マクロ環境やコロナ禍など、さまざまな要素が絡み合った複雑な1年でした」と、同氏は語る。しかし、CEOは、自分たちの組織が将来の成長に向けて準備が整っていると、引き続き考えている。

果たしてBoxは「物言う株主」を満足させるだけの業績を上げることができるだろうか?レヴィ氏は、今回のような四半期を重ねることができれば、Starboard Valueを食い止めることができると考えている。「次の3四半期を見れば、収益を上げる力、採算性を上げる力がわかると思います。非常に好調な業績報告となり、現在の事業の勢いを示すものになると我々は確信しています」と、レヴィ氏は語った。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Box決算発表クラウドストレージ

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Ron Miller, Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

クラウドインフラ市場の2021年第1四半期売上高は約4.3兆円、新型コロナ追い風に移行が加速

パンデミックによって企業は2020年、かつてない速さでクラウドへと移行した、というのが広く受け入れられている見解だろう。数年かかるトランスフォーメーションを数カ月で達成し、強制するような要因がなければなし得なかったスピードだった。直近の四半期のクラウドインフラ市場の売上高はこの見解が正しかったことを証明しているようだ。

Synergy Researchのデータによると、今週四半期決算を発表したAmazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)のビッグスリーを含め、クラウドインフラマーケットの売上高は400億ドル(約4兆3735億円)だった。前四半期より20億ドル(約2190円)増加し、前年同期比37%増だった。Canalysの数字はわずかに高い420億ドル(約4兆5900億円)だった。

この業界をフォローしている人なら予想していたかと思うが、AWSが前年同期比32%増の135億ドル(約1兆4760億円)で業界トップだった。ランレートは540億ドル(約5兆9030億円)だ。とんでもない数字である一方で、真に注目に値するのは年間売上高の伸びだ。特にAmazonのような規模と成熟度が高い企業においてはそうだ。大数の法則に従えばそうした数字は持続可能ではないが、全体のパイは成長し続けていて、Amazonは引き続きかなりの割合を占める。

全体をみると、AWSのマーケットシェアは32%だった。売上高は増え続けているが、マーケットシェアはここ数年横ばいだ。シェアを伸ばしてきたのは別の企業で、最も顕著なのがMicrosoftだ。同社の四半期売上高は78億ドル(約8525億円)で、シェアは20%だった。

GoogleはThomas Kurian氏(トーマス・クリアン)氏の下で引き続き有望なサインを示していて、35億ドル(約3825億円)の売上を達成した。マーケットシェアは9%で、2桁に向けて着実に成長している。IBMですら好成績の四半期となり、Red Hatが引っ張ってシェアは5%、売上高は20億ドル(約2190億円)だった。

画像クレジット: Synergy Research

SynergyのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏はAWSとMicrosoftがマーケットをしっかりと掌握しているが、これは業界の他の企業が売上を伸ばせないということではない、と指摘する。

「AWSとMicrosoftはミラーで後ろを見るのにあまり時間をかける必要はなく、競争を意識しています。しかし、他のプレイヤーにとってすばらしい機会がないと言っているわけではありません。AmazonとMicrosoftを除いた残りのマーケットは四半期に180億ドル(約1兆9675億円)を売り上げ、前年比で30%成長しました。特定の地域やサービス、ユーザーグループにフォーカスしているクラウドプロバイダーは今後数年間、大きな成長を目指すことができます」とディンスデール氏は声明で述べた。

Synergy同様にこの業界をウォッチしているCanalysも、わずかに異なる部分はあるもののほぼ同じようなデータを示した。マーケットシェアはAWSが32%、Microsoftは19%、Googleは7%だった。

画像クレジット:Canalys

CanalysのアナリストBlake Murray(ブレイク・マリー)氏は、成長する余地がまだあり、数年にわたってこの分野の売上高は継続して増えるだろうと話す。「2020年は大規模なクラウドインフラ支出がありましたが、大半の企業のワークロードはまだクラウドに移行していません。顧客の自信が2021年に高まり、移行とクラウド支出は続きます。2020年延期された大型プロジェクトが再浮上し、その一方で新しいユースケースが獲得可能な最大市場規模を広げるでしょう」と同氏は述べた。

我々が目にしている数字はもはや驚きではない。企業がさらに多くのワークロードをクラウドに移行するにつれ、この数字は今後も拡大する。MicrosoftがマーケットシェアでAmazonに引き続き近づくことができるか、というのが現在の疑問だ。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

コスパで勝負するクラウドストレージの中堅WasabiがシリーズCで約122億円調達

クラウドストレージでAmazon S3と戦うのは無謀な挑戦のようにも思えるが、Wasabiはストレージの安価な構築方法を見つけて、節約効果を顧客と共有している。米国時間4月29日、ボストン生まれの同社は7億ドル(約761億7000万円)の評価額で1億1200万ドル(約121億9000万円)のシリーズCを発表した。

Fidelity Management & Research Companyがこのラウンドをリードし、これまでの投資家たちも参加した。同社のこれまでの調達総額は2億1900万ドル(約238億3000万円)になる。この他に多少の負債金融もある。ストレージの構築というビジネスは金食い虫だ。

CEOのDavid Friend(デビッド・フレンド)氏によると、投資は、業績が好調なのでそれを維持するためにお金が必要、ということを意味している。「事業は爆発的に成長している。このラウンドでは7億ドルの評価額を達成したため、好調であるとご想像いただけるでしょう。過去3年間では、各年に3倍増を達成し、2021年は計画値を超えそうです」とフレンド氏はいう。

フレンド氏によると需要はずっと堅調で、さまざまな国からリクエストがあるという。今回の増資も、それが1番の理由だ。データの属国性を求める一連の法律が、財務やヘルスケア関連の機密データを国内で保存することを要請しているため、企業は容量を増やす必要があるとのことだ。

企業はストレージを分散ではなく、いくつかのコロケーション施設内に固定するようになったとフレンド氏はいう。パンデミックの間に、彼らは業者を雇いハードウェアをオンサイトにまとめ、効率を上げているとのこと。彼らはまた、マネージドサービスプロバイダー(MSP)や付加価値リセラー(VARs)などのチャネルパートナーたちに、顧客にWasabiを販売するよう奨励している。

Wasabiのストレージは1テラバイトあたり月額5.99ドル(約651.7円)からとなっており、Amazon S3よりずっと安い。S3は、最初の50テラバイトまでが1Gバイトあたり0.023ドル(約2.5円)であるためら、1テラバイトあたり23ドル(約2502.5円)になる。Wasabiより相当高い。

しかしフレンド氏は、Wasabiは今でもスタートアップであるため向かい風がきついという。どれだけ安くても企業は自分のデータがいつまでもそこにあることを求めるため、信頼性のイメージで負けることもある。今回のラウンドで名門のFidelityが幹事会社になってくれたことは、ベンチャーキャピタル企業からの業務改善要求が特になくても、大企業の顧客が同社の信頼性イメージを高めることに貢献するだろう。

「私にとってFidelityは理想的な投資家です。彼らは取締役の席を欲しがらない。会社の経営について、あれこれ言わない。彼らがIPOなどを求めていることは当然ですが、彼らの関心はこのビジネスに投資することにあります。なぜならクラウドストレージは事実上、無限大の市場機会だからです」とフレンド氏はいう。

彼によると、同社は典型的なマーケット刺激剤だという。同社は同業他社から見れば業界の外れ者であり、超巨大のストレージ企業から見れば箸にもかからぬ小物だとフレンド氏はいう。IPOは遠い未来かもしれないが、機関投資家がこんなに早く関心を示したのは、いずれIPOがあると信じているからだ。

フレンド氏は次のように述べている。「私たちが今いるマーケットは、大きなマーケットです。そこに、正しい技術で正しいタイミングで入れたことは、ラッキーなことです。今後のWasabiが、クラウドインフラストラチャーという業種で、かなり注目される上場企業になることは間違いないでしょう。それは私たちにぴったり合ったニッチであり、そんな私たちが今後成長できない理由はどこにもありません」。

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タグ:Wasabi資金調達クラウドストレージ

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)