狙え、撃て?いや、狙え、対話せよだ。Snapchatは宿題を手伝うことができるようになった。いまやSnapchatアプリのカメラは「Scan」という名で知られる拡張現実開発プラットフォームの基盤となりつつある。米国時間4月4日、SnapはPhotomathと提携し算数の問題を解く能力を追加した。またGiphyとはオブジェクト検出に関しての提携を結んだ、これにより関連したGIFがスクリーンの上に登場するようになった。Scanはすぐに、すべてのSnapchatユーザーに対してロールアウトされるだろう。このプラットフォームに参加することに興味がある開発者は、Snapに連絡することができる。
これまでは、SnapchatのカメラはShazamで曲を識別することができたし、オブジェクトを認識してAmazonでそれらを購入することもできた。しかし現在のSnapchatは、バラバラなツールをいくつか提供するだけではなく、ユーザーの周囲の隠れた情報を掘り起こすという計画を、具体化しようとしている。
「私たちのカメラは、私たちの世界にある自然の光が、インターネットの暗闇を貫通することを可能にします…インターネットを日々の生活に使えば使うほど、私たちはそれを少しでも人間的なものにする方法を必要としているのです」と、同社初のプレスイベント「Snap Partner Summit」で語ったのは、SnapのCEOであるエヴァン・スピーゲル氏である。そこではまた、他のアプリの中でSnapchat Storiesを活用できる広告ネットワークのローンチ、そしてリアルタイムのマルチプレイヤーゲームプラットフォームのローンチも発表された。
Blipparのような他アプリも、ARユーティリティプラットフォームを構築しようとしたが、彼らはコミュニティを持たず日常の必要性に欠けていたし、人が何かをスキャンしようと考えたときに、心にすぐ思い浮かぶような日常的な存在でもなかった。しかし、Snap CEOであるエヴァン・スピーゲル氏は、本日次のように述べている「米国では、Snapchatは13〜34歳全員の75%近くの手に届き、13〜24歳に限ればその90%の手に届いています。実際、米国、英国、フランス、カナダ、そしてオーストラリアでは、FacebookやInstagramよりも、13歳から24歳の年齢層ではより多く使われているのです」。
この比較データは、Facebookのアドマネージャの見積もりから得られたもので、必ずしも完全に正確というわけではない。それでもこの統計は、ARを介して世界を探究する見込みのある顧客の中で、Snapchatが巨大な存在であることを示している。Facebookがこの振る舞いを構築しようとしたとしても、それは不可能だ。なぜならFacebookカメラはそのソーシャルネットワークの中心ではないからだ。
ユーザーがSnapchatカメラを長押しすると、周囲の「Scan」が開始される。算数の式に対する答が魔法のように現れるのだ。10ドル札を撮影すれば、肖像として印刷されたハミルトンが生き返り、ミュージカルからのナンバーを歌い出すだろう。もしピザのスライスをスキャンしたなら、ダンスするGiphyのGIFピザが登場する。ユーザーには新しいSnapchat AR Barも表示される。そこにはScan、Lens作成、あるいはSnapchatのコミュニティによって作成された40万個のAR Lensを探索するための専用ボタンが表示される。実際、Snapの1日あたり1億8600万人のユーザーの75%が、Lensを使って毎日プレイしており、これまでの累計プレイは150億回に達している。ScanはScan.meと呼ばれるスタートアップの買収によって開発されたものだ。これまではSnapに友達を追加したりLensをアンロックするための、QR Snapcodeのための機能を提供していた。
実用性の他にも、Snapchatはユーザーを楽しませ、アプリケーションを使い続けてもらうための、たくさんの新しい創造的なAR機能を加えている。例えば、Landmarkersという機能をローンチしたが、これはOur Storiesにユーザーが投稿した、主要なランドマークに関するクラウドデータを利用して、有名な場所の派手な変形ARアニメーションを楽しむというものだ。現在は、エッフェル塔、バッキンガム宮殿、ロスアンゼルスのチャイニーズシアター、ワシントンDCのキャピトルビルディング、そしてニューヨークのフラットアイアンビルなどが、虹を吐いたり、光を放ったりしている。
SnapのLens Studioツールを使用している開発者およびLensクリエイターたちのために、自分が提供したすべてのLensを披露することができる、新しいクリエイタープロファイルをSnapは用意する。クリエイターたちはみな、手や体そしてペットに対して、難しいコンピューターサイエンス的効果を適用してくれる、新しいARテンプレートへのアクセスが可能になる。クリエイターは、犬の口ひげ、人々の手から飛び出す火の玉、腕をかざすと誰かの上に現れる虹のようなグラフィック資産を追加するだけでいい。
Snapはまた、そのスキャン結果に基いて、Lensカルーセル内に関連するコミュニティLensを浮上させてくる。とはいえ、1点不足しているところは、独立Lensクリエイターに対する直接的な収益化の手段が与えられていないということだ。一方でSnapは、時折最高のARアーティストと提携してLens開発を有償で依頼している。Snapchatは、長期的にはより良いインセンティブを提供する必要があることを認めている。
昨日の大きな記者会見で、同社の最高幹部らは、もはや成長はSnapchatにとっての成功基準ではないと説明した。Instagram Storiesの立ち上げによって、Snapの成長が四半期あたり17%から、実際のユーザー流出へと転じ、今四半期で落ち着いたことを考えると、それは便利な言い回しだ。スピーゲル氏は、その代わりにユーザーの関与を深め、それによってユーザーから生み出される広告収入を増やすことが、Snapの進むべき道であると述べている。
Snapが、ARフィルターと提供するより良い開発ツールによって、より多くのユーザーたちを遊ばせれば遊ばせるほど、より多くのブランドと開発者が、そのLensをLensカルーセルの中で宣伝し、Lensを試してみたくなる宣伝ビデオに対してお金を払うようになる。
だがそうした組み合わせは、次のARの局面に向かって、SnapchatがFacebookやInstagramに先行するためにもとても重要だ。 Instagram Storiesには1日に5億人のユーザーがいるかもしれないが、そこではARは主に顔に対して適用されており、世界とやり取りをするために使われているわけではない。Snapchatは、ARによる探求を日常的なものにするために、Landmarkersのような楽しいARエンターテイメントを、可能な限り多く必要としている。そのことによってScanプラットフォームの可能性が解放されることになるだろう。それによって、いつかARコマースやその他の収益源から、アフィリエイトを供給することになるかもしれない。
さらに、Snapchatによれば、Lensは単にiOSやAndroidだけではなく、将来のARハードウェアプラットフォームとも互換性があるようにコード化されているという。ARエクスペリエンスの最大のレポジトリを構築するためには、私が2年前の記事「Snapchatの反開発者的な態度は大いなる問題だ」【未訳】で指摘したように、Snapchatは外部からの協力を必要としている。これでやっと、開発者の一群が現実世界を想像上の驚異で満たすための、ツールとプラットフォームが整ったことになる。「私たちが正しいLensを正しい瞬間に見せることができれば、まったく新しい創造性の世界に刺激を与えることができます」と、Snapの共同創業者ボビー・マーフィ氏は締めくくった。
【日本版注】日本時間4月6日19時の段階では、日本向けiOSアプリにはまだ反映されていない)
画像クレジット: Bryce Durbin / TechCrunch
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(翻訳:sako)