WeChatとTikTokのダウンロードが9月20日から不可に、米商務省が発表

米商務省は、TikTok(ティクトック)とWeChat(ウィチャット)の利用禁止に関する詳細を発表した(米商務省プレスリリース)。国家安全保障上の懸念によるこの措置については9月20日までに実施するとの方針を8月に示していた。今回の詳細では、9月20日と11月12日がカギとなる。両アプリ、そしてそのアップデートも9月20日から米国のアプリストアで利用できなくなる。しかしTikTokは11月12日までオペレーションを展開できる。これは11月3日の米大統領選挙以降も利用できるようにするだけでなく、サービス提供を中断することなくOracle(オラクル)やその他のパートナーがTikTokの米国事業を引き継ぐという複雑な交渉を完了させるのに時間を与えることにもなる。

そうしたタイミング、加えて商務省長官Wilbur Ross(ウィルバー・ロス)氏の声明は、この件に関する政治的な意図を如実に表している。

「今回の措置は、トランプ大統領が国家の安全を保障し、米国民を中国共産党の脅威から守るためにあらゆる手段を尽くすことを示している」とロス氏は声明で述べた。「大統領の指示のもと、我々の価値、民主的なルールに基づく規範、米国の法律や規則による積極的な取り締まりを推進する一方で、中国の悪意ある米国市民の個人情報データ収集と戦うために重要な行動を取った」

最初の行動として、Tencent(テンセント)が所有するWeChatと、ByteDance(バイトダンス)が所有するTikTokは9月20日からアプリの配布を停止しなければならない。言い換えると、同日から両アプリはダウンロード全面禁止で、アップデートも不可となる。また「米国内での資金の移動や決済処理を目的とするWeChatモバイルアプリを通じたサービスのいかなる提供」、つまり決済も禁止する。

9月20日以降、WeChatはまた「機能や最適化を可能にするインターネットで展開するサービスの提供」、コンテンツ配信やインターネットトランジット、ピアリングの提供、構成コード、ファンクション、アプリのサービスの提供も禁止され、つまり全面禁止となるようだ。

注意を引くのが、TikTokはオペレーション面で同じような禁止措置を受けないことだ。つまり9月20日までにダウンロードされたTikTokはまだ当分使える。

日付はいくつかの理由で重要だ。まず、大統領選後もしばらくTikTokを利用できる状態にしている。トランプ大統領はこの人気アプリを禁止すると多くの人が言っていた。しかしそうすることで若い有権者の票を失うことになるかもしれない。実際そうなるかはわからないが、再選へ向けた問題となっていたようだ。

2つめに、TikTokのオペレーションを引き継ぐために交渉しているOracleやWalmart(ウォルマート)、その他の企業によるコンソーシアムがサービス提供を中断することなく交渉を完了させられるよう、猶予を与えた。TikTokは米国にユーザー約1億人を抱え、欧州にも同規模のユーザーがいる。

交渉を巡るニュースは日々変化している。完全買収と報じられたかと思えば、OracleはTikTokのデータを管理するがソースコードは含まれないという話になり、はたまた中国と米国の承認を得るためにソースコードもライセンス提供するという話になったりしている。最新のニュースには、上場して新CEOにInstagram(インスタグラム)共同創業者Kevin Systrom(ケビン・シストロム)氏を据えるというアイデアもあった。

皮肉なことに、この最新の動きについて率直に意見を言うテック業界リーダーの1人が、現在のInstagramの責任者Adam Mosseri(アダム・モセリ)氏だ。同氏は他のテック企業にも影響を与える含意について自身の考えをツイートしていた。

アダム・モセリ:この見出しには注意してください、禁止はTikTokの「新規ダウンロード」だけです。

前にも言いましたが、米国のTikTok禁止は、Instagram、Facebook、そしてより広くインターネットにとってかなり悪いことになります。

(もちろん我々はこのところ、アプリと国境を越えて事業展開するための自由をめぐるしっぺ返し戦争の最中にいる。ファイアウォールを備えた多くの国は、国家安全を脅かしていると感じた場合に他国のアプリを禁止することはまったく誤ったことではないとしてきた)。

米商務省の決定はトランプ大統領が8月6日に署名した大統領令に沿ったものだ。大統領令では、国家安全に関する懸念を理由にTikTokとWeChatへのアクセスを阻止する政府の意向をByteDanceとTencentに通達した。

大統領令は、署名されるまでの数週間にわたってTikTok禁止を回避するために展開されていた交渉を促した。協議はまだ続いていて結論は出ていない。米国9月18日現在、Oracle、そしておそらくWalmartもホワイトハウス、財務省、そしてByteDanceと大統領に受け入れられる取引となるよう協議を続けている。中国にもまたTikTok売却を承認する部門がある。

ここ数週間、トランプ政権はアプリや米国のテクノロジーを支えるクラウドインフラにおける海外干渉を排除するための「クリーンネットワーク」という政策を推進してきた。この政策には、特定のアプリの排除、米国ユーザーデータ主権の米国への移管、「クリーン」な設備で構築されたモバイルネットワークインフラ、米国民にとって「クリーン」なコンピューティング環境を整備するためのその他の方策が含まれている。そうした政策は一般的に書かれているが、政権高官の発言からするに明らかに中国をターゲットとしている。

TikTokとWeChatだけが突然排除されることになったアプリではない。インドでは同国で最も人気の決済アプリの1つPaytm(ペイティーエム)が「度重なるポリシー違反」を理由にGoogle Play Storeから排除された。Paytmは何千万もの月間ユーザーを抱える。そして6月下旬にインドは、TikTokを含む中国企業が開発した59のアプリを禁止すると発表した。

テックがグローバル経済の大きな部分を占めるようになり、また国家利益の競合と相まって、テクノロジーの未来をめぐるそうした国家間の戦いは抜き差しならない状態になりつつある。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

中国政府はTikTokの米国事業を売却せずに潰すかもしれない

世界中で人気を博しているショートムービーアプリTikTokの一部またはすべての事業を米国を拠点とする企業に売却することを強行しようとしていることで、中国のテックユニコーンであるByteDance(バイトダンス)の周辺が騒がしい。米国時間9月11日、中国政府がこの取引に反対する可能性があるとの報道を受け、売却話の先行きが不透明になりつつある。ロイターの報道によると、中国政府はTikTok事業を米国企業に売却するのではなく、米国事業を閉鎖することを望んでいる可能性があるという。

TikTokの売却の可能性は、通常のビジネス取引ではない。ドナルド・トランプ米大統領の執行権限で対外経済政策を指示しているため、この取引は米国政府によって要求されているものだ。トランプ大統領は、自身のビジネスセンスを生かして、最終的な売却価格の一部を政府が受け取れるように要求している。この考え方が合法かどうかは不明である。

米国と中国が経済的にも政治的にも覇権を巡って世界中で争う中、今回の取引は両国の間で企業が入り乱れていることが浮き彫りになっている。ByteDanceは、マイクロソフト、Wallmart(ウォルマート)、実現度の差はあるががOracle(オラクル)などの企業と一緒にこの争いに巻き込まれている。トランプ政権は取引成立のタイムラインを9月中旬に設定しているが、月日が経つにつれ、そのタイムラインに間に合うかどうか暗雲が立ちこめてきた。

ちなみにTikTokの事業売却は、インドが他の数十本の中国ベースのアプリを禁止したあとの話で、中国の影響力を抑制する措置を講じているのは米国だけではない。この取引は、中国の規制の変化からも圧力を受けている。中国の独裁的な指導者が輸出ルールを変更して、TikTokの取引を制限したり、売却を中止したりする内容が含まれる可能性がある。

ByteDanceにとって、この状況は悪夢のようなものだろう。主導権を握るマイクロソフトにとっては、この取引は気の進まないもので、完全に納得できるものではないかもしれない。一方トランプ政権にとっては、パワープレーの試みである。そして、権威主義化が進む中国政府にとっては、この取引は服従のように感じるかもしれない。このため、もし取引がなんとかまとまったとしても、それは予想外というよりも驚きの結果になるだろう。

画像クレジット:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

TikTokの米事業売却の期限延長はない、とトランプ大統領が釘を刺す

Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領は米国時間9月10日、中国企業ByteDance(バイトダンス)がTikTok(ティクトク)を売却する2020年9月20日という期限は延長しない、と述べた。交渉に圧力をかける発言だが、買い手と合意に至らなければTikTokは米国で使用できなくなる。

「どういう結果になるか直にわかる。閉鎖するか、売却するかだ」とトランプ大統領はアンドルーズ空軍基地で大統領専用機に搭乗する前に語った(CNN記事)。売却が複雑であることを受けて、一部のアナリストは売却期限が延長されるのではないか、との見方を示していた(BARRON’S記事)。

トランプ大統領は2020年8月、ByteDanceが「米国の国家安全を脅かす動きをとるかもしれない」という「信頼できる証拠」があると主張して大統領令に署名した。ByteDanceはTikTok売却でMicrosoft(マイクロソフト)と交渉した。他のいくつかの米テック大企業も、人気ビデオ共有アプリを所有するByteDanceと交渉に入ったと報道された。しかし売却を妨げるかもしれない要素も浮上した。

Z世代で最も人気のあるソーシャルメディアアプリの1つとしてTikTokは大きなユーザーベースと価値を有しているにも関わらず、買い手にとってその魅力を損なうようないくつかの問題がある。

例えば、TikTokを含むByteDanceのアプリで使用されているソフトウェアコードは、北京にあるByteDanceの本社でエンジニアやデベロッパーによって開発されている。これにより、ByteDanceからTikTokの切り離しは技術面でかなり複雑なものになっている。もう1つの問題は、中国政府が2週間前に改定し、人工知能技術にも適用されるようになった輸出規制法だ。TikTokでは、AIベースのアルゴリズムによってユーザーの関心や閲覧履歴に基づいて新たなコンテンツを表示する。これがTikTokの価値ある部分であり、成功の秘訣だ。中国商務部が輸出規制法の改定を行った後、ByteDanceは新規制を「厳密に守る」と述べたが、これはTikTokのパーソナライズしたレコメンデーションとAIベースのテクノロジーを事業売却に含めることができなくなる可能性があることを意味し、そうなると買い手にとっては魅力が薄れる。

マイクロソフトに加えて、TikTokの買収にはTwitter(The Wall Street Journal記事)やGoogle(The Wall Street Journal)、Oracle(CNBC記事)といった大手企業が名乗りを上げている。Walmart(ウォルマート)すらもマイクロソフトとの提携という形での買い手候補だ

TikTokのセキュリティも、いくつかの国で調査対象となっている。例えばTikTokは「国家安全・防衛上の懸念」があるとしてインドで禁止された一連の中国企業アプリの1つであり、フランスのデータセキュリティ監視当局CNILによる査察も行われている

TikTokはそうした主張に対抗している。2020年8月に同社はトランプ政権を提訴し、8月24日付の声明で「TikTokが国家安全上の脅威だという政権の姿勢に強く反対する」と述べた。

声明の中でTikTokは、データを米国とシンガポールに保存し、またTikTokの米国ユーザーのデータとDouyinのようなその他のByteDanceのプロダクトのデータを分けることで「TikTokユーザーのデータのプライバシーと安全を守るための並々ならぬ対策をとってきた」と述べた。

ByteDanceのDouyinアプリの海外版であるTikTokは2017年以来、インターネットカルチャー、特にZ世代の間で確固たる地位を築いた。米国だけでユーザー1億人を抱え、1500人を雇用している。

Instagram(インスタグラム)を含むいくつかのアプリは似たようなショートビデオ共有機能でTikTokの代わりになろうとしているが、リードするようなサービスはまだ出てきていない。実際、分析会社Sensor Towerの新たなレポートは、TikTokが2020年8月に非ゲームアプリとして世界で最も多くダウンロードされ、6330万回以上インストールされたと指摘している。TikTokユーザーはかなりこのアプリにはまっており、VPNプロバイダーのExpressVPNでは、米政府が2020年7月にTikTok禁止を検討していることを明らかにしてからトラフィックが急増した。

一部のサイバーセキュリティ専門家は、TikTokのデータ収集プラクティスは広告収入に頼っている他のソーシャルメディアアプリと似ている、と話す。しかし、中国企業が所有しているがゆえに、中国政府のデータ要求に屈することを余儀なくされえるかもしれない、ということが大きな懸念となっている。中国のサイバーセキュリティ法はByteDanceのような中国企業に政府のユーザーデータ要求に従うことを求めている。ByteDanceは中国政府がTikTokユーザーデータにアクセスすることに抵抗する、と述べていた。

TikTokに関するセキュリティの懸念はまた、ウォールストリートジャーナル紙の8月の報道後に高まった。その内容は、MACアドレスと呼ばれる識別番号を含め、アプリがユーザーから収集できるデータの量を制限するためのAndroidオペレーティングシステム機能を回避しているというものだ。同紙によると、TikTokは11月に識別番号の収集をやめたが、調査によりTikTokのユーザープライバシー保護に関する疑念が出てきた。同紙へのコメントで、TikTokは「他の同種のアプリ同様、当社は絶えず出てくるセキュリティの問題に対応するために常にアプリをアップデートしている」と述べた。

反TikTokの姿勢をとっているのは共和党員だけではない。報じられたところによると、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏の選挙陣営は2020年7月、スタッフに仕事用とプライベート用のデバイスからTikTokを削除するよう求めた。

米政府がTikTok調査に本腰を入れたのは、Charles Schumer(チャック・シューマー)上院議員(民主党、ニューヨーク州選出)と、Tom Cotton(トム・コットン)上院議員(共和党、アーカンソー州選出)が当時のJoseph Maguire(ジョセフ・マグワイア)米国家情報長官にTikTokが米国のユーザーのデータを中国当局に提出することを強制されるかどうかを調べるよう求めたことに端を発している。

TikTokの広報担当はTechCrunchに電子メールで送られてきた声明の中で、「当社はエンターテインメント、自己表現、コネクションのホームであるがゆえに1億人もの米国の人から愛されている。当社はあらゆる家庭に喜びを、当社のプラットフォームで制作する人に将来にわたって意義あるキャリアを引き続き提供することを約束する」と述べた。

関連記事
米小売大手のウォルマートがマイクロソフトと組んでTikTok買収に参戦
TikTokのユーザーデータ取り扱いについてフランスの監視当局が調査開始
TikTokが昨年末までAndroidユーザーのMACアドレスを追跡していた

カテゴリー:セキュリティ

タグ:ドナルド・トランプ ByteDance TikTok SNS 中国

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

米政府がAIと量子コンピューティングに1000億円超の投資を発表

ホワイトハウスは、これまでの公約をさらに発展させ、テクノロジーの最も有望な分野であるAIと量子コンピューティングに10億ドル約(1060億円)の投資を行うことを発表した。

昨年トランプ政権は、AIに関する大統領令を出し、この分野での米国の優位性をさらに強化する計画を宣言した。当時は具体的な支援額などをは明らかにされてなかったが、今年2月にトランプ政権は2022年までに20億ドル(2120億円)以上を非防衛AIと量子研究に投資するよう求めていた

トランプ政権の新しい取り組みは、連邦政府機関と連携した一連の学術・民間部門の研究開発ハブに資金を提供し、基礎的な問題に取り組み、量子コンピューティング、機械学習、コンピュータビジョンなどに分野にまたがって「変革的な進歩を追求する」としている。

大統領補佐官での米国の最高技術責任者(CTO)を務めるMichael Kratsios(マイケル・クラツィオス)氏は声明で「これらの研究機関を米国のイノベーションを加速し、21世紀の米国の労働力を構築するための世界クラスのハブ」と呼んでいる。

米国農務省(USDA)と提携している2つの研究機関を含む全米科学財団(NSF)傘下の5つのAI研究機関には、それぞれ2000万ドル(約21億円)が支給される。またAIセンターが新設され、コロラド大学、テキサス大学、オクラホマ大学、マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア大学デービス校、イリノイ大学の2つの異なるチームの既存の学術研究グループと連携する。

量子情報科学を専門とする5つの新しいエネルギー省関連センターは、5年間で新たに6億2500万ドル(約664億円)の資金提供を受ける。

米政府の今回の取り組みについて電話取材で米科学次官補のPaul Dabbar(ポール・ダバー)氏は「量子科学は米国の国益にとってAIよりもさらにインパクトのあるものであると証明できる可能性がある」と語り、「我々は、アポロ計画やヒトゲノム計画と同じくらいの成功を収めることができると確信している」と続ける。

DOE(米エネルギー省)の新しい量子センターは、ブルックヘブン、アルゴンヌ、フェルミ、ローレンス・バークレー、オークリッジの国立研究所に設置される。ダバー氏によると、DOEが割り当てた6億2500万ドルは民間企業の技術リーダーからの関心も集めているとのこと。パートナーの中には、マイクロソフトやインテルも含まれており、新しい研究所の設立を支援するためにスタッフと設備を提供しているとのことだ。

画像クレジット:

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

TikTokは来たるべき禁止令をめぐって米国政府を提訴する

TikTok(ティックトック)は、米国市場で同社の事業を禁止するというトランプ政権の判断を巡って、米連邦裁判所に提訴する構えだ。この禁止令に対して、TikTokは間もなく法的な異議を申し立てるとの報道は、米国時間8月24日の同社ブログにおける正式な訴訟の発表(TikTokリリース)を待つことなく、すでに先週末に駆けめぐっていた(CNBC記事)。TikTokは、証拠もなく適正な手続きも経ずに発行されたことを理由に、Donald Trump(ドナルド・トランプ)氏の大統領令に対抗する考えだ。

「TikTokが国家の安全保障上の脅威であるとする政権の立場に、私たちは強く反対します。こうした反対意見は以前から訴えてきたものです」とブログ記事には書かれている。

この懸念に関して、これまで重ねてきた努力をトランプ政権は無視しているとTikTokは訴える。事実、トランプ氏は同アプリが中国政府とつながっているため国家安全保障上の脅威だと公言している。

TikTokはさらに、米国ユーザーのデータは、中国国外である米国とシンガポールのサーバーに保管して守っていると主張している。ソフトウェアによる障壁を設け、TikTokの中国の親会社であるByteDance(字節跳動、バイトダンス)が運営する製品とは確実にデータを分離しているとも話している。

この訴訟ではまた、2007年にByteDanceが後にTikTokとなるMusical.ly(ミュージカリー)を買収した際に実行されたCFIUS(対米外国投資委員会)による国家安全保障審査を通じて、すでに米国政府はTikTokの活動を把握しているとも指摘している。その審査の一環として、米国政府はTikTokが書類で示した安全保障対策を調査し、取引の推進を許可する結論を出している。

しかし目下の問題は、TikTokが主張していることではない。たとえTikTokがデータの保管場所などを示したとしても、それだけでは十分ではないと評論家たちはいう。懸念は、中国がByteDanceなどのテック企業に対して要請があればすべてのデータを中国政府に引き渡すよう命じた中国のサイバーセキュリティー法(Vox記事)に関するものだ。事実これは、党派を超えて米国議会が危惧する問題(Vox記事)でもある。1つ例を挙げるならば、Joseph Biden(ジョー・バイデン)氏の選挙事務所では、スマートフォンからTikTokを削除するようスタッフに求めた(CNN記事)。

TikTokはその懸念に対して、経営幹部は中国の法律が及ばない米国人で固めていると指摘し反論している。幹部にはCEOのKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏、グローバル最高セキュリティー責任者(TikTok News記事)のRoland Cloutier(ローランド・クルーティエ)氏、そして相談役(PR Newsroom記事)であるErich Andersen(エリック・アンダーセン)氏らが名を連ねる。しかも、同社の米国向けコンテンツのモデレーションは、中国から独立した米国独自のチームで行われていると同社は強調している。

大統領令に対する異議申立においてTikTokは、トランプ氏の大統領令は米国際緊急経済権限法(IEEPA)の要件を満たしていないと訴えている。この法律は米国政府は「異例で重大な脅威」と認められた活動の禁止を許可するものだ。

(事前、事後に関わらず)いかなる通知も聴取の機会もなくTikTokを禁止すれば、この大統領令は、法の適正な過程を求めた米国憲法修正第5条に違反します。真正な国家安全保障を根拠としておらず、「異例で重大な脅威」を示していない活動の禁止を許可するという点において、この大統領令は権限踰越となります。

またTikTokは米国政府に対して、禁止されたなら、同社が米国に創出してきた1万件(Reuters記事)、さらに今後3年間に拡大される雇用が失われると訴えている。TikTokの従業員たちも、この禁止令への独自の異議申立(CBS News記事)を行う計画であるとも伝えられている。

この数日、同動画アプリのメーカーは、禁止令に対抗するためにさまざまな方面で対策をとっている。

先日、TikTokは一般向けに情報発信ハブを立ち上げた(未訳記事)。そこでは、アプリやデータのプライバシーに関する質問に答えている。これは「記録を修正する」ための取り組みだと同社は話している。だが、こうした努力とは裏腹に、TikTokは米国ユーザーのデータを提出せよと中国政府に要請された場合、本当に断れるのかという不安が、まだある程度残されている。TikTokを米国に留らせるなら米国での事業を完全に取り上げるべきだと、禁止令を支持する人たちが主張するのはそのためだ。

さらに最近の報道は、TikTokが表明した約束に対して疑問を抱く理由を米国に与えている。例えばThe New York Timesの記事は、内部資料によると同アプリのユーザーの3分の1は14歳以下であると伝えている。これは児童オンラインプライバシー保護法が定めたガイドラインに、同社はどうやって準拠してきたのかという疑問を抱かせる。この法律により、TikTokは2018年に570万ドル(約6億円)の罰金を課せられている。児童のオンラインプライバシーに関して責任ある行動が取れないならば、他の問題にどう対処できるのかと同紙は疑問を投げかけた。

だがTikTok自身、現実にこの異議申立に実際に勝利しなくても、事業の存続は可能だとも考えている。2020年11月の大統領選挙でトランプ氏が敗れれば、新政権はTikTok問題に関して別の戦略を打ち出してくる可能性がある。大統領令の廃止すら夢ではない。

関連記事
米政府のTikTok、WeChatの排除命令の全文とその背景
TikTokはトランプ政権の使用禁止大統領令の提訴を準備

カテゴリー:ネットサービス

タグ:TikTok ドナルド・トランプ / Donald Trump

画像クレジット:CHRIS DELMAS/AFP / Getty Images

原文へ
(翻訳:金井哲夫)

Twitterがトランプ大統領のツイートを非表示した理由を発表、人々の投票意欲を削ぐ可能性がある

Twitter(ツイッター)は米国時間8月17日にドナルド・トランプ大統領のツイートの1つにフラグを立てた。具体的には、トランプ大統領のツイートが、ユーザーに投票を思いとどまらせることを禁じるTwitterのプラットフォーム規則に違反していることを警告するメッセージを表示した。

8月17日に投稿されたツイートの中で、トランプ氏は郵便受けが「有権者の安全保障上の災害」であると主張し、「新型コロナウイルスに対して消毒されていない」とも述べている。Twitterの通知によると、このツイートは市民と選挙の整合性に関する同社のルールに違反しているが、「アクセス可能なままにしておくことが公共の利益になる可能性があると判断した」としている。ユーザーはコメント付きでリツイートできるほか、単独でリツイートしたり、リツイートしたりすることも禁止されていない。

同社はTwitterのSafetyアカウントを通じて「このツイートが「誤解を招くような健康被害を訴えており、投票への参加を妨げる可能性がある」という理由でフラグを立てられた」という詳細を明らかにした。また、同社の市民の清廉性に関するポリシー(Civic Integrity Policy)の一節を引用し、ユーザーが大統領選挙への参加を「誤解を招く可能性のある手続きや技術について主張をすることは禁じている」という1行を強調している。

新型コロナウイルスの感染蔓延を受けて、各州で広く使用されると予想される郵送投票(BROOKINGS記事)は、11月の大統領選挙に向けて党派的な問題となっている。トランプ氏がツイートで述べたこととは裏腹に、専門家は郵送投票と不在者投票の両方が安全であるとしている(CNN記事)。さらに、米疾病管理予防センター(CDC)は「新型コロナウイルスはほとんどの場合、人から人への密接な接触によって拡散する」(CDCプレスリリース)としている。新型コロナウイルスは、ウイルスが付着している表面や物体に触れ、口や鼻、目に触れることで感染する可能性があるが、CDCによるとこれは「ウイルスが拡散する主な方法ではないと考えられている」とのことだ。

誤解を招く、虚偽、または扇動的な文が含まれている大統領のツイートに対処する方法についての長年の論争(未訳記事)を経て、Twitter は最近、トランプ氏のアカウントに厳しい姿勢を取り始めている。5月には、Twitterはトランプ氏のツイートのうち2つに郵送投票に関する事実確認ラベルを適用した。

数日後、トランプ氏は通信品位法(Communications Decency Act)の第230条を標的にした執行命令に署名した。通信品位法では、インターネット企業に法的保護を与え、ユーザーが作成したコンテンツに対する責任を回避すると同時にその内容についてモデレート(節度)の決定権を与えるというものだ。この執行命令は、Twitterがトランプ大統領のツイートに事実確認ラベルを適用したように、コンテンツをモデレートしたプラットフォームは法的保護の権利を失うという内容だ。

トランプ氏の執行命令が法的に可能であるかどうかは明らかではないが、いくつかのプラットフォームを威圧するのに役立つかもしれない。Twitterはこの命令を「画期的な法律に対する反動的で政治的なアプローチ」と呼び、トランプ氏のツイートに対する同社の反応は、同社が執行命令を脅威と見なしていないことを示しているのかもしれない。

TechCrunchはホワイトハウスとTwitterにコメントを求めて連絡中だ。

Image Credits: Josh Edelson / Getty Images</small>

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

Facebookが大統領選挙に向け米国ユーザーに正確な情報を提供する投票情報ハブを開設

Facebookは、2016年の大統領選で誤った情報を広めたという惨憺たる役割を繰り返さないために、いくつかの対策を講じ始めた。今夏の初めに同社は投票情報ハブの立ち上げを発表(Facebookリリース)した。米国民のために選挙情報を集約し、誤情報の蔓延を回避することを目指す。

投票情報ハブは、FacebookとInstagramの両方からアクセスできる。例えば、場所と年齢に基づいて自分の州での投票に関する関連情報を表示される。情報センターでは、州ごとの投票方法の確認、郵送投票のリクエスト、投票関連の期限なども確認できる。

Facebook選挙情報センター(画像クレジット:Facebook)

Facebookはまた、政治家による投稿に検証済みの選挙情報を添付するために使用するラベル(未訳記事)を拡大している。ラベルは今後、FacebookとInstagramのすべてのユーザーの投票関連の投稿に表示される。

他社の選挙前の動きと同様にFacebookは、以前に発表した「投票アラート」機能を公開する予定だ。Facebookの製品管理および社会問題解決を担当するバイスプレジデントを務めるNaomi Gleit(ナオミ・グレイト)氏は同機能に関するブログ投稿で「有権者に影響を与える可能性のある投票プロセスの変更が遅れる可能性があるため、投票アラート機能は選挙が近づくにつれてますます重要になるだろう」と述べた。同社によると、投票通知は政府のアカウントでのみ利用可能で、州や地方の選挙管理者の個人ページでは利用できないという。

同社は、新型コロナウイルスの感染蔓延の真っ只中で州選挙を行うことの難しさを選挙情報ハブの立ち上げの理由に挙げている。同ハブは、同社が以前立ち上げた新型コロナウイルス情報ハブをモデルにしている。なお、新型コロナウイルス情報ハブは当初、ユーザーのFacebookフィードのトップに表示されていたが、今ではウイルスに関連する検索でのみ表示されるようになっている。

選挙の夜の悪夢

Facebookは、選挙情報ハブの立ち上げによって自らが選挙の夜の「真実の権威者」(Axios記事)になる可能性が十分にあり、居心地が悪さも認識しているようだ。2020年の大統領選挙は記録的な数の投票が郵送される前例のないものになる。その結果、選挙結果が遅れたり混乱したりする可能性がある。クリアな結果が得られなければ、陰謀説や日和見主義などの誤った情報がソーシャルプラットフォーム上で爆発する確率が高い。これこそが、ソーシャルネットワークが先手を打って防ごうとしている悪夢のシナリオだ。

「長引く投票プロセスは、選挙結果に不信感を植え付けるために悪用される可能性がある」とグレイトはFacebookの投稿で選挙ツールの詳細を書いている。

同社は米国時間8月12日に米政府関係者と面会し、選挙日前後のプラットフォーム上での誤報に関する懸念事項をどのように処理するかを議論したテック企業9社のうちの1社だ(Wall Street Journal記事)。

この企業グループには現在、Facebook、Google、Reddit、Twitter、Microsoft、Pinterest、Verizon Media、LinkedIn、Wikimedia Foundationが含まれている。同グループのメンバーには、米国の選挙を前にした取り組みについて議論するために以前にも会合を開いていた企業もあるが、米国の選挙に向けて正式に政府関係者と協力する大規模な企業連合は新しい枠組みだ。

関連記事:「子供は新型コロナに免疫」というトランプ大統領の投稿をFacebookが削除
画像クレジット:Diane555 / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

TikTokはトランプ政権の使用禁止大統領令の提訴を準備

米国と中国の経済紛争の主役に踊り出た動画共有アプリTikTok(ティックトック)は、ドナルド・トランプ大統領が発効した大統領令、TikTokなどに事業の売却を強制し、従わなければ米国内でのサービスを禁止するというものに異議を申し立てる構えを見せている。

米国の公共ラジオ放送National Public Radio(ナショナル・パブリック・ラジオ、NPR)は米国時間8月8日、TikTokは早ければ8月11日にも異議申し立ての連邦訴訟を起こす可能性があると報じた。この訴訟は、TikTokの米本社がある米カリフォルニア南部地区連邦地裁に起こされる見通しだ。

NPRによると、TikTokは、この大統領令による禁止と、その根拠としている動画共有サービスが国家安全保障上の脅威になるという主張の合憲性を問うことになるという。

この放送の直後にTikTokにコメントを求めたが、返事はない。

8月6日に大統領は、TikTokの親会社であるBytedance(バイトダンス)と、中国の巨大テック企業Tencent(テンセント)が所有するメッセージングアプリWeChat(ウィチャット)との業務提携を45日の期限を設けて解消するようアメリカ企業に命令(未訳記事)する大統領令に署名した。

TikTokは、大統領令に大統領が署名したという最初のニュースが届いた時点で、すでに反対の態度を示していた。

既報のとおり、この命令は「適正な過程を経ずに発効された」とTikTokは主張している。そのため「グローバル企業が米国政府の法規範に不審を抱く」危険を招きかねないという。ホワイトハウスがアプリ禁止の拠り所としているものに、International Emergency Economic Powers Act(国際緊急経済権限法)とNational Emergencies Act(国際緊急法)とがある。だが、海外企業の子会社が米国内で事業を行うことを国家の緊急事態だとする理屈は、まったくもって前代未聞だ。

1976年に発生したイラン人質事件の際に成立した国際緊急経済権限法の下では、大統領は、関税を課す権限と外国企業との経済的関係を停止させる権限を全面的に有する(NPR記事)。

TikTokの親会社であるByteDanceは、売却により米国での問題を緩和して事業を続けたいと考えているため、大統領命令を訴えるのなら急ぐ必要がある。

この大統領令が発表された後、Microsoft(マイクロソフト)は声明を出し(Microsoftブログ)、TikTokの買収についてByteDanceと協議中であると話した。

マイクロソフトはこう話している。

CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)とドナルド・J・トランプ大統領との対話を受け、マイクロソフトでは、TikTokの米国での買収の可能性を探る協議継続の準備を整えていました。マイクロソフトは、大統領の懸念に対処する重要性を十分に理解しています。完全なる安全保障上の監視の下で、米国債も含め米国に相応の利益をもたらすよう、弊社はTikTokの買収に尽力します。

アナリストや銀行は、米国で1億人を超える顧客を有するユーザーベースのお陰で、TikTokの米国での事業価値は200億ドルから500億ドル(約2兆円から5兆3000億円)と目算しているとフォーチュンは伝えている

TikTokの米国での事業には、別の交渉人も現れている。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、TikTokはTwitter(ツイッター)と提携の可能性に関して予備的な話し合いを開始したとのことだ。

関連記事:マイクロソフトが9月15日までにTikTok買収へ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの事業が対象
画像クレジット: TechCrunch

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Twitterがトランプ陣営のアカウントを凍結、新型コロナの偽情報シェアを理由に

Twitter(ツイッター)は米国時間8月5日、トランプ大統領の公式選挙キャンペーンのTwitterアカウントに対して行動に出た。新型コロナウイルスに関する誤解を招くトランプ大統領の発言を含む動画を投稿した@TeamTrumpが、そのツイート削除するまでツイートができないよう凍結したのだ。問題の動画は、8月5日の朝のFox Newsのインタビュー(CNN記事)から転載されたもので、その中で大統領は、子供たちは新型コロナウイルスに「ほとんど感染しない」という事実無根の言説を弄している。

「子供を見てくれ。子供はほとんど……、間違いなくと言ってもいいぐらいだが……、この病気にほとんど感染しない」と大統領。「子供は大丈夫だ。子供たちは平気なんだ」

トランプ大統領のメインのアカウントである@realDonaldTrumpは、この規約違反のツイートを投稿した@TeamTrumpにリンクを張っているが、直接シェアをしているわけではない。トランプ大統領自身のアカウントが凍結されたという誤った報道もあったが、現時点では彼のアカウントは、トランプ氏の選挙キャンペーンアカウントと同様の処置の対象にはなっていない。

キャンペーンアカウントも、米太平洋時間の午後6時ごろには再びツイートできるようになっている。

「ご指摘の@TeamTrumpのツイートは、新型コロナウイルス関連偽情報に関するTwitter規約に違反しています」と、Twitterの広報担当者Aly Pavela(アリー・パベラ)氏は、TechCrunchに提示した声明の中で述べている。「このアカウントの所有者は、このツイートを削除するまで、ツイートを再開できません」。

Facebook(フェイスブック)も8月5日の夜に、トランプ大統領のアカウントに対して前例のない独自の行動に出た。特定のグループはウイルスに免疫があるという、人を傷つける虚偽の主張を禁じた同社の規約に違反するすべての投稿を削除したのだ。

大統領の誤った主張は、学校は秋に再開させるべきという自身の信念を裏付けようと発せられたものだ。6月、米教育長官Betsy DeVos(ベッツィ・デボス)氏も、「子供たちは病気のストッパーになる」(Washington Post記事)との同様の非科学的な主張を行っている。

実際には、子供と新型コロナウイルスとの関連性は、まだよくわかっていない。年少の子供は重症化しにくい傾向にあるようにも見えるが、子供たちがどの程度感染し、どれほどウイルスを拡散するかはいまだ不明だ。ジョージア州の子供キャンプの感染率を調査した米疾病管理予防センターの新しい報告(CDCレポート)では、「あらゆる年代の子供は新型コロナウイルスに感染しやすく、初期の報告とは裏腹に、感染拡大に大きな役割を果たす恐れがある」との見解が示されている。

関連記事:「子供は新型コロナに免疫」というトランプ大統領の投稿をFacebookが削除

画像クレジット:Photo by Michael Ciaglo/Getty Images / Getty Images
[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

マイクロソフトがTikTok買収に対する米政府への「支払い」と引き換えに要求すべきこと

これは狂気のニュースの1つである。米国時間8月3日、ドナルド・トランプ大統領はメディア向けのイベントで、米国政府がMicrosoft(マイクロソフト)とTikTokの水面下での取引を承認するには「その買収額のかなりの部分が米政府に入ってこなければならないだろう」と発言した。

企業が契約書に署名してもらうために米国政府に賄賂を贈ったりはしないので、実際には実現不可能に近いと思われるが、これをあえて額面通りに受け止めてみよう。マイクロソフトは支払うべきか。支払うとしたら、米国政府との交渉で何を要求すべきか。

まず、いくつかの背景を説明しておく。TikTokの親会社であるByteDanceは、1000億ドル(約10兆6000億円)以上の企業価値がある。ByteDanceは、TikTokの中国版で非常に人気の高い姉妹アプリ「Douyin」や、大成功を収めているニュースリーダーの「Toutiao」など一連の著名アプリを所有しているため、TikTokの評価額を単独で推測するのは難しい。取引規制上の混乱や、Facebookなどの資金力のある企業による買収の多くは、独占禁止法違反の疑いがあるという事実が、さらに事態をややこしくしている。

実際の買収価格が数百億ドルではないにしても、少なくとも100億ドル(約1兆600億円)だと仮定すると、同社は政府との交渉をどのように考えるべきだろうか。

最も重要な目的は、マイクロソフトの買収後に規制上の頭痛の種を減らすことにある。TikTokには、規制が非常に敏感な分野である、十代の若者をも巻き込んだプライバシー問題が取り沙汰されている。Facebookがプライバシーの問題に直面した際は、最終的に米連邦取引委員会(FTC)との50億ドル(約5300億円)の和解金を支払うことで昨年合意し、すべての懸念事案に答えを出した。また、コンプライアンスを確保するために、監視メカニズムだけでなく、一連の制限事項にも合意している。なおTikTok(旧Musical.ly)は昨年、実際にFTCのプライバシーに関する570万ドル(約6億円)の和解に合意している。

プライバシーに加えて、財務省からの輸出ライセンス問題、米議会からの中国製アプリのデータ保護に関する懸念、司法省からの反トラスト問題などが出る可能性もある。

この取り引きは、いまがまとめの時期だ。マイクロソフトがTikTok事業を買収する前に、プライバシー、貿易、独占禁止法規制に関するすべての請求に対する免責と引き換えに、最終的な買収価格に応じておそらく数十億ドルという高額な金額を米国政府に「和解金」として提示する必要があるだろう。おそらくマイクロソフトは、買収後180日間でプライバシー問題をクリアし、データを米国の独自のAzureクラウドに移動させ、TikTokが過去数カ月で導入しているペアレンタルコントロールよりもさらに優れた制御機能を実装することも計画しているだろう。

これは悪い選択肢ではないはずだ。なぜなら、マイクロソフトの長期的な負債を大幅に制限することができるからだ。また、買収者が将来の訴訟で多額の費用を負担しないように、買収価格を全額前払いすることはない大規模なM&A案件で発生する典型的なエスクロー(第三者預託)とホールドバック(一部留保)も回避できる。

このような問題に大統領自身が直接的かつ不明確な方法で関与するのは恐ろしいことだ。自らが扉を開けてしまったいまとなっては、実はそれほど悪い方向には進んでいないのかもしれない。トランプ大統領には省庁間を調整して、すべての政府関係者を集め「罰金」と引き換えに免責レベルを受け入れる力があるのだ。

ただし、和解によってすべての問題を解決することはできない。TikTokは米国の他のインターネットアプリと同様に、連邦法だけでなく、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)のようなプライバシーに関する州法にも従う必要がある。連邦政府との和解により、関連する州法に抵触する可能性があるのだ。さらに、選挙シーズンの真っ只中に多額の支払いに同意することは、議席の両サイドでも議論を呼ぶことになるかもしれない。

にもかかわらず、この取引は決して典型的なものではなく、典型的なM&Aのプロセスがあるとは考えるべきではないだろう。路上強盗のような奇妙な契約形態について、連邦政府の関与を勧める弁護士はほとんどいないと思われるが、今回の交渉は通行料を払って何らかの法的保護を得て先に進むだけの正当な理由はある。

画像クレジット:NICHOLAS KAMM/AFP / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

トランプ大統領がTikTokは「ホットなブランド」、買収金額の一部は米国政府に入るべきと発言

米国時間8月3日、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領は、Microsoft(マイクロソフト)によるTikTok買収交渉開始を祝福し、契約の可能性に関する態度を変化させた。米国時間7月30日に、TikTokは米国拠点企業に売却されるよりも禁止される方がいいと発言した後、トランプ大統領は週末にかけて意見を変えた。TikTokは中国拠点企業で様々なアプリやサービスを所有しているByteDanceの傘下にある。

マイクロソフトのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏と週末に話した電話が大統領の考えを変えたようで、マイクロソフトは買収交渉の継続を1日に公表する運びとなった。

そして本日、トランプ大統領はTikTokを巡る米国企業とByteDanceの契約を支持することを表明(C-SPAN動画)し、買収金額の一部が米国政府を潤すこと期待していると語った。

大統領は以前から経済の基本概念の理解に苦しんできた。例えば、誰が関税を払うか(The New York Times記事)についてなどだ。それにしても、トランプ氏が事実上推奨している民間企業2社間の契約で、金額の一部を受け取ることを期待していると発言するのは現実離れしている。

彼の考えをもっと深く理解するべく、本誌は大統領がマイクロソフトのナデラ氏と電話で話したことに関する質問に答えた今朝の説明の要点(C-SPAN動画)を書き起こした。

実りある会話だった、彼から電話があり、私がどちらなのか、いやどう思っているかを尋ねられた。そして私はそう、安全保障上、中国にコントロールされるわけにはいかない。あまりにも重要であり、侵略的すぎる。絶対にいけない。そしてこう言った。マイクロソフトかどうか、私は気にしない。大企業、安全な企業、非常に米国らしい企業が買うべきだ。

おそらく全部を買う方が30%買うより簡単だろう。なぜなら、30%で何ができるのか?誰が名前を手に入れるのか?この名前はホットだ、ブランドとしてホットだ。それで誰が名前を取るのか?2つの会社が所有していたら、どうやってそれができるのか?だから私の個人的意見は、30%を買うより会社全体を買う方がいい。30%を買うのは複雑だと思う。

それで、えー、彼にはゴーサインを出した。やってみていいと。そして日付を決めた。私が決めた。9月15日頃、その頃彼らは米国で廃業しているだろう。しかし誰かが、マイクロソフトでも他の会社でも、彼らを買えばそれはおもろいことになる。

もし買うなら、価格がいくらであっても金は会社の所有者にいく。重要なのは、事実上、それは中国だということであり、だから金額のかなりの部分は合衆国財務省にいくべきだと私は言った。この契約を実現させようとしているのは我々だからだ。たった今、我々が与えない限り、彼らはなんの権利も持っていない。だから、もし我々が彼らに権利を与えるのなら、金はこの国に入らなくてはならない。

これは、大家とテナントの関係に少し似ている。そう、賃貸契約がなければテナントには何もない。だから、いわゆる「権利金」か何かを支払う。しかし合衆国はかなりの金額を払い戻されるべきだ。合衆国がなければ、先方は何も得られなかったからだ。少なくとも30%に関わる部分については。

だから、彼にこう言った。我々は契約を、えーおそらく契約が結ばれることになると思う、これは大切な財産、これは大切な財産だ。しかし、合衆国の承認を受けない限り、それは大切な財産ではない。

そういうわけで、マイクロソフトまたは他の誰かが会社を買収しない限り、適正な契約を結ばない限り、TikTokは9月15日に閉鎖されることになる。その場合、財務省がそう合衆国財務省が、多額の金を得る必要がある。多額の金を。

画像クレジット:Doug Mills-Pool(opens in a new window) Getty Images

原文へ
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ポンペオ米国務長官が「米国はTikTokと他の中国のハイテク企業に対してまもなく行動を起こす可能性がある」と発言

ドナルド・トランプ大統領がTikTokを米国から追放するために執行命令を使う可能性があると発表した数日後、Michael Pompeo(マイケル・ポンペオ)国務長官は、トランプ政権は「解決策に近づいており、まもなく大統領の発表があるだろう」と述べた。

ポンペオ氏は、Fox News(フォックス・ニュース)の「Sunday Morning Futures」ホストのMaria Bartiromo(マリア・バーティロモ)氏のインタビューで、トランプ政権が米国でビジネスを展開しているほかの中国のテック企業に対しても行動を起こす可能性があると述べ、一部の企業が「中国共産党に直接データを供給している」と主張した。

TikTokの運営元である中国・北京拠点のByteDanceは現在、米国および他の数カ国でのTikTok事業を売却するためにマイクロソフトと交渉中だ。トランプ政権が人気アプリに関する発言をエスカレートさせていることから、この交渉はここ2週間でさらに緊急性を増している。

マイクロソフトは米国時間8月2日、9月15日までに米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのTikTokの事業を買収するための協議を行っていると述べ、同社の最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏がトランプ大統領の安全保障上の懸念についてトランプ氏と話し合ったと述べた。

ロイター通信は先週、ByteDanceが米国のTikTok事業の少数株を保持することを希望していたが、完全にマイクロソフトに支配権を譲ると報じた。

特に注目すべきは、マイクロソフトは声明の中でインドについて言及していないことである。Steven Mnuchin(スティーブン・ムニューシン)財務長官は米国時間7月29日、TikTokが米国外国投資委員会(CFIUS)の審査中であることを明らかにした。CFIUSは現在、ByteDanceが2018年買収したMusical.lyとTikTokとサービス合併が国家安全保障上の脅威に該当するかどうかを調査している。

売却すれば米政府をなだめるのに十分なのかと、ホストのバーティロモ氏に質問されたポンペオ氏は、トランプ政権は「我々が行ってきたすべてのことが、米国民のリスクをゼロに近い状態に追い込むようにする」と述べた。

しかし、共和党議員の中には「売却だけでは十分ではない」という意見もある。上院情報委員会の委員長であるMarc Rubio(マーク・ルビオ)氏は先週、フィナンシャル・タイムズ紙に対して「TikTokはデータがどこに保存されているか、どのように保護されているかについて、まだ質問に答える必要がある」と語っていた。

「TikTokの所有者が誰であろうと、これらの基本的な質問に答え、話をはっきりさせるまでは、私は会社の活動と報告されている中国との結びつきを懸念し続けている」とルビオ氏はコメントしている。

TikTokを超えて

ポンペオ氏のFox Newsのインタビューの前日、ホワイトハウスの貿易顧問を務めるPeter Navarro(ピーター・ナバロ)氏はFox Newsに対し、トランプ政権は「『米国人の情報を中国のサーバーに送り返すあらゆる種類のソフトウェア』も検討している」と語った。

ポンペオ氏はまた、米国政府がより多くの中国のテクノロジー企業に対して行動を起こす可能性があることを示唆した。

「ピーター・ナバロが言ったように、米国でビジネスをしているこれらの中国のソフトウェア企業は、TikTokやWeChatなど数え切れないほどあり、顔認識パターンや居住地、電話番号、友人などの情報を中国共産党や国家安全保障装置に直接供給している」と彼は主張した。

ポンペオ氏は、トランプ氏が「中国共産党に接続されたソフトウェアによって提示される国家安全保障上のリスクの広範な配列に関して、今後数日間で行動を起こす」と付け加えたが、それが何を意味するか、またはどのような企業が影響を受ける可能性があるかについては詳しく説明しなかった。

しかし、その中にはTencent(テンセント)が所有するWeChatも含まれているかもしれない。米政府は先月、米国で利用可能なWeChatのバージョンは中国のものよりも機能が限られているにもかかわらず、米国でWeChatを制限する可能性があると述べた。

中国ではWeChatはユビキタスな存在だが、米国でのユーザー数は中国に比べるとはるかに少なく、主に米国の中国コミュニティのメンバーや、中国で事業を展開している、または中国に関係のある外国企業が利用している。

画像クレジット:JIM LO SCALZO/AFP / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

マイクロソフトが9月15日までにTikTok買収へ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの事業が対象

米国時間8月2日、マイクロソフトは同社のコーポレートブログに、米国でのTikTok買収の可能性についての議論を継続する声明を掲載した。声明の中には「米国の投資家」を少数派で参加させる可能性があるという記載もある。

今回の声明は、同社CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏とトランプ大統領との会話の結果だという。これまでの報道やTechCrunchの調査では、状況は完全にホワイトハウスの手に委ねられていると指摘されていた。同社は買収に意欲的だが、大統領の感情という障害物を抱えている。もし、ナデラCEOがトランプ大統領に直接接触したのであれば、TikTok米国事業の行く末は明るいものになるかもしれない。

声明には「ナデラCEOとトランプ大統領の直接交渉に続いて同社は、米国でのTikTok事業の買収を探索するための議論を継続する準備ができている」と書かれている。「マイクロソフトは、大統領の懸念に対応する重要性を十分に認識しています。完全なセキュリティ審査を受け、米国財務省を含む米国に適切な経済的利益を提供することを条件に、TikTokの米国事業を買収することを約束しています」ともある。

同社はいずれにしてもByteDanceからの買収に関する協議を2020年9月15日までに完了するとしており、大統領や米国政府との協議を継続する。今回の買収は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでのTikTokの事業を対象としており、これらの市場ではマイクロソフトが所有・運営することになる。

声明には「他の手段の中で、マイクロソフトはTikTokの米国ユーザーのすべてのプライベートデータを米国内に転送したうえで米国内に残すことを保証します。これらのデータが米国外に保存またはバックアップされている場合、データが転送された後に国外のサーバからそのデータを削除することを保証します」とも記載されている。

ここでの歴史的経緯は、マイクロソフトが今回のアクションを起こしているのは、ByteDanceの最大市場の1つである米国でTikTok事業を継続するには事業売却の必要があるからだ。事の発端は、中国企業が運営するネットサービスでのデータの扱いについてホワイトハウスが強い懸念を示したこと。FacebookやTwitter、Googleなどのなどを含む多くのネットサービスが、グローバルでさまざまユーザーデータを集計・分析しているにもかかわらず、反中国の旗を掲げて、米国市民の膨大な量の行動データにアクセスできることが間違いないアプリ、つまりわかりやすいターゲットを狙う機会を得たわけだ。

一方でTwitter界隈では、トランプ大統領がTikTok上で彼をからかうことで人気を博したコメディアンに腹を立てただけだという説(Vouge記事)もあるが。

いずれにせよ、今回のことでTikTokの刻みの時計の中にもう1つの「トック」が増えた。関係者には手を差し伸べるが、この件に関しては先週末のバタバタしたニュースの最終的な結果になりそうだ。

情報に更新があれば記事をアップデートする。

トランプ大統領がTikTok米国事業を禁止する執行権を行使すると記者団に語る

ドナルド・トランプ大統領は、世界で最も人気のあるショートビデオアプリ「TikTok」を米国で禁止するため「早ければ米国時間8月1日にも行動する可能性がある」と語った(The Hill記事)。

大統領は、7月31日にエアフォースワンの機内で記者団に、TikTokを米国から追放するために「緊急経済権限または執行命令」を行使できると話した。

このニュースは、マイクロソフトがTikTokを買収するために協議中であるとの報道が出てから数時間後に発表された。投資家は3年前のTikTokの価値を500億ドル(約5兆3000億円)と評価していると報じられている(Reuters記事)。トランプ大統領の7月31日の発言では、米企業がTikTokを買収することを支持していないことも示唆している。

同日、トランプ大統領がByteDanceにTikTokの所有権の売却を命じる可能性があると報じられた(Bloomberg記事)。大統領の決定を受けてTikTokはいつものように、アプリを維持することが米国の利益になり、国家安全保障上の脅威にはならないと主張しようとした。

1億人の米国人、特に新型コロナウイルスの感染拡大の時期には、エンターテイメントや人との繋がりを求めてTikTokに来ています。今年だけでByteDanceは1000人近くのスタッフを米国チームに採用し、さらに1万人の従業員を全米の企業の中でも厚待遇で採用できたことを誇りに思っています。当社が設立した10億ドル(約1050億円)のクリエイターファンドは、当社のプラットフォームで生計を立てている米国のクリエイターをサポートしています。TikTok USのユーザーデータは米国内に保管され、従業員のアクセスは厳重に管理されています。そして、TikTokの最大の出資をしているのは米国の投資家です。私たちは、私たちのプラットフォームで創作する人たちに家族の喜びと有意義なキャリアをもたらすために活動を続けているので、ユーザーのプライバシーと安全性の保護に努めています。

トランプ大統領の発表は、米国規制当局が米国の十代の若者たちの間で絶大な人気を誇るTikTokを、北京のスパイツールになる可能性があるという懸念からブロックすることを計画したという、数週間にわたる憶測を裏付けるものだった。

問題は、TikTokの売却や禁止がどのようにかたちになるかということだ。TikTokは北京に拠点を置く中国企業のByteDanceが所有しており、最近では中国で最も有望なテック系スタートアップとして浮上。その評価額は1000億ドル(約11兆円)と言われている。ちなみに同社は、TikTokの中国語版にあたるDouyinを中国のユーザー向けに別途運営している。

ByteDanceは、TikTokを中国の関連団体から遠ざけるために、さまざまな方法を模索してきた。ここ数カ月を見ると、ディズニーの元幹部であるKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏をTikTokのCEOに任命(未訳記事)したほか、アプリのデータを米国内に保存されていると主張するために、米国で1万人の雇用を創出(未訳記事)すると約束するなど多岐に渡っている。

TikTokの通信チームはまた、親会社であるByteDanceの5つの取締役会のうち4つの席が「世界で最も尊敬される世界的な投資家によって占められている」ことを繰り返すことで懸念を和らげようとしている。その中には、Susquehanna International GroupのマネージングディレクターであるArthur Dantchik(アーサー・ダンチク)氏、、General AtlanticのCEOであるWilliam Ford(ウィリアム・フォード)氏、Coatue Managementの創設者であるPhilippe Laffont(フィリップ・ラフフォント)氏、Sequoia ChinaのボスであるNeil Shen(ニール・シェン)氏などが含まれる。ByteDanceの創業者でCEOのZhang Yiming(チャン・イーミン、張一鳴)氏は取締役会の会長を務めている。

注目すべきは、Musical.lyとTikTokの合併が米国に対する国家安全保障上の脅威となるかどうかについての決定(未訳記事)を、対米外国投資委員会(CFIUS)がまだ発表していない(CFIUSリポート)ことだ。TikTokにMusical.lyの売却を命じたとしても、実際にどのように売却が行われるかは不明だ。ByteDanceが2018年にこの2つのアプリを合併した際、同社はMusical.lyの既存ユーザーにTikTokアプリのダウンロードを提案(Digital Music News記事)したが、すでにTikTokのユーザーがいたため、TikTokの現在のユーザーはすべて、厳密にはTikTokのユーザーである。

もし今回の売却がTikTokを対象としたものであれば、ByteDanceは国際的な資産をすべて売却せざるを得なくなるのだろうか。TikTokは米国外にも相当なユーザーがいる。インドが国家安全保障上の懸念を理由にTikTokを禁止する前は、多くの米国政治家の間で批判の的となっていたが、インドはアプリの最大の海外市場であった。

イーミン氏の最悪の悪夢が起こる可能性が高くなってきている。同氏は当初から国際市場を制覇することを目標としてきたが、今では彼のスタートアップが米中関係の格好の標的となっている。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

米国TikTok事業の売却でByteDanceとマイクロソフトが合意、米国内ではマイクロソフト以外の企業が運営か

ロイターの報道によると、中国のByteDance(バイトダンス)が米国でのTikTok(ティックトック)事業を売却することで合意したという。この取引では、Microsoft(マイクロソフト)は米国に拠点を置くユーザーのデータの管理を引き継ぐことになる。またこの契約により、マイクロソフト以外の別の会社が米国でTikTokを運営することが可能になる。これによりTikTokは、トランプ大統領が脅したとされる執行命令の疑惑を回避し、米国内でのサービス運営を継続することができるようになる。

執行命令の疑惑とは、ByteDanceは以前に同社の少数株主を維持できるような取引を模索していたこと。結局はホワイトハウスがこの提案を却下したため、この計画は最近になって頓挫したようだ。

今回の新しい取引のもとでは、マイクロソフトは米国に拠点を置くユーザーのデータ保護を担当し、米国に拠点を置く別の会社がTikTok の運営を許可されることになる。ただし、この契約でTikTokが米国内での運営を継続することができるかどうかは不明だ。

マイクロソフトとホワイトハウスにコメントを求めたが現在のところ得られていない。

このニュースは、トランプ大統領が中国系アプリの米国内での運営を禁止する執行命令に署名(未訳記事)すると記者団に語った数時間後に発表された。これを受けてByteDanceは以下の声明を発表した。

1億人の米国人、特に新型コロナウイルスの感染拡大の時期には、エンターテイメントや人との繋がりを求めてTikTokに来ています。今年だけでByteDanceは1000人近くのスタッフを米国チームに採用し、さらに1万人の従業員を全米の企業の中でも厚待遇で採用できたことを誇りに思っています。当社が設立した10億ドル(約1050億円)のクリエイターファンドは、当社のプラットフォームで生計を立てている米国のクリエイターをサポートしています。TikTok USのユーザーデータは米国内に保管され、従業員のアクセスは厳重に管理されています。TikTokの最大の投資家は米国から来ています。TikTokの広報担当者は「私たちは、私たちのプラットフォームで創作する人たちに家族の喜びと有意義なキャリアをもたらすために活動を続けているので、ユーザーのプライバシーと安全性の保護に努めています。

画像クレジット:Lionel Bonaventure / AFP (opens in a new window)/ Getty Images

ツイッターがトランプ大統領息子のアカウントを制限、新型コロナ誤情報の共有で

Twitter(ツイッター)は、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領の息子であるDonald Trump Jr.(ドナルド・トランプ・ジュニア)氏が偽りの内容を含むビデオと、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックについて命を脅かす可能性のある主張を共有したとして、同氏のアカウントを一時的に制限した。

「これは見るべき!!!みんなが同調しているものとだいぶ異なる」とツイートしてバイラルビデオへのリンクをシェアした後、トランプJr氏のアカウントは米国時間7月28日朝に制限がかかった。

「件のツイートは当社のCOVID-19誤情報ポリシーに反する」とツイッターの広報担当はTechCrunchに語った。同社はトランプJr氏のツイートがCOVID-19誤情報についてのルールを破り、削除する必要があったと述べた。同氏のアカウントは一時停止ではないが、利用できる機能が12時間制限される。

ビデオはBreitbart Newsによって広範に宣伝されていて、白衣に身を包んだ多くの自称「米国の最前線医師」を特集している。ビデオの中で、そうした人たちは様々な嘘や危険な主張を展開している。そこにはマスクはウイルス拡散を防がないという主張や、新型コロナウイルスへの効果が確認されていない薬剤ヒドロキシクロロキンの擁護が含まれる。

ビデオの中心人物の1人であるStella Immanuel(ステラ・イマニュエル)氏は過去に奇妙な非科学的主張を展開しているとDaily BeastのWill Sommer(ウィマー・ソマー)記者は報じている。主張には「エイリアンのDNA」がいくつかの治療に現在使用されている、一部の婦人科問題は悪魔のような「魂を持った夫と妻」がセックスしている結果だ、というものがある。

トランプ大統領は7月27日の夜、ツイートの中で複数回ビデオをシェアした。それらのツイートは現在、大統領のタイムラインで「no longer available(利用できません)」となっている。削除されたツイートは、ヒドロキシクロロキンを「ゴールドスタンダード」「ゲームチェンジャー」と擁護するまだ残っている多くのツイートの間に割り込んでいる。リツイートはまた、ホワイトハウスのパンデミックアドバイザーであるAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)博士の信用性を攻撃している。

Facebook(フェイスブック)とYouTube(ユーチューブ)もバイラルビデオを含むコンテンツの洗い出しに取り組んでいる。バイラルビデオはフェイスブック上で1400万回超閲覧され、同社が削除という行動に出る前、同プラットフォームで最も人気の投稿の1つになった。

関連記事:新型コロナ偽情報の動画「Plandemic」にYouTubeやTwitter、Facebookなどが緊急対応

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

原文へ
(翻訳:Mizoguchi

ハーバード、MITなどの訴えを受け米移民税関捜査局が留学ビザの規則変更を撤回

トランプ政権は、米国で学ぶ海外留学生の通う大学が新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックのために今秋から授業を完全オンライン化した場合に、留学ビザを取り消す計画を撤回した。

この変更は、数十校に上る大学が政権の命令に対して法的手段に訴えることを示唆した結果だ。この多面的な行動は、ワシントンDCを含む17の州の司法長官が支持しており、マサチューセッツ州のMaura Healey(マウラ・ヒーリー)司法長官が主導いている。

米国時間7月14日のリモート公聴会で、ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)はICE(移民税関捜査局)の規則変更への反対を訴えた。その変更は数百万人の海外留学生の生活を脅かすものだった。そして公聴会の開始から数分後、国土安全保障省は教室で授業を受けている学生のみが国に滞在できるとした当初の計画を撤回することに合意した(Twitter投稿)。

新たなガイドラインは、2020年3月9日のガイドラインに基づくもので、現在在学中の学生のみが恩恵を受ける。このため新入学生や秋に米国にやってくる人たちは取り残されてしまう。

7月6日に発表されたこの規則は、学界で大きな批判を呼んだ。Yale Law School(イェール・ロースクール)のHeather Gerken(ヘザー・ガーケン)学部長は新しい規則に反対する声明を発表した。ある教授は「必要なら雪の降る屋外でも教えるつもりだ」、それで学生が国内に留まれるのなら、と語った。

関連記事:トランプ大統領の突然の留学ビザ制限は米国社会に広く影響する

原文へ
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヘイトに満ちた投稿で停止されていたトランプ大統領のTwitchアカウントが復活

RedditとTwitchが利用約款に違反する政治的投稿だとしていくつかのアカウントを停止してから2週間が経った。この重要な決定ではトランプ大統領のTwitchの公式アカウントも対象となっていた。ただし同社は「(停止は)一時的なもの」だと述べていた。

すでに報道されている(The Verge記事)が、我々の取材に対してTwitchは「大統領のアカウントが復活した」ことを認めた。

同社の広報担当者はこの問題に対する最初の声明を繰り返し「Twitchではヘイトスピーチは禁止されている。利用約款に基づき、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領のチャンネルからのストリーミングは一時的に停止されたが、当該の問題あるコンテンツは削除された」と述べた。

アカウント停止の原因となったのは2つのコンテンツで、1つは大統領選キャンペーンの開幕を告げるコンテンツに含まれていた「メキシコは一番優れた人々は送ってよこさない。……連中はドラッグを持ちこむ。犯罪を引き起こす。強姦魔もいる」という悪名高い部分だ。

もう1つはその後のタルサのキャンペーン集会における発言で「おい、今は明け方の1時で非常に嫌な時間だ(と想像してくれ)。ときどきこの『hombre(スペイン語で男)』という言葉を使うのだが、非常にタチの悪いヤツが夫がセールスマンか何かで出張中の若い女性の家の窓を破って入りこんでいる」というものだ。

Twitchは当時「政治家も他のユーザー同様に、我々の利用規約とコミュニティガイドラインを守る必要がある。政治的価値または報道価値があっても例外は認められない。違反が報告されたコンテンツに対しては(規約に基づく)措置を取る」と述べていた。

Twitterその他のソーシャルメディアと政権の激しい対立の中でこの問題が発生した。逆に共和党議員らは ユーザーコンテンツに関する訴訟からプラットフォーム運営者を免責する通信品位法230条を無効化することを要求している。これについては大統領行政命令も出ている。

選挙集会とオンラインメディアの双方でトランプ陣営の主張がヒートアップしているため、2020年11月の選挙に向けてこうしたトラブルが繰り返される可能性は高い。

画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

Twitchがトランプ大統領のアカウントを停止、Redditも「The_Trump」と関連サブレディットを追放

ソーシャルメディアと政治との間で繰り広げられている戦いに関する本日のビッグニュースは2つ。Twitch(ツイッチ)とReddit(レディット)は、サービス規約に違反するとして政治的投稿に対する行動に出た。

Twitchは米国時間6月29日に、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領のアカウントを一時停止したことを認めた。「ヘイトに満ちた振る舞いは、Twitchでは認められない」と、ストリーミング配信の大手である同社はTechCrunchに語った。「ストリームでの発言を受け、私たちのポリシーに従いトランプ大統領のTwitchチャンネルを一時的に停止し、違反コンテンツを削除しました」。

Twitchが特に引き合いに出したのは4年を隔てた2つの選挙集会で、候補者であるトランプが発した2つの問題発言だった。1つ目は選挙戦開始にあたって述べられた、今では侮辱と取られる言葉を含むものだ。

メキシコからメキシコ人が来るとき、一番優秀な人間は送られてこない。あなたのような人は送られてこないのだ。あなたたちのような人は来ない。やって来るのは厄介者だ。彼らがその厄介を持ち込んでくる。彼らはドラッグを持ち込む。犯罪を持ち込む。彼らは強姦魔だ。中には、善良な者もいるかも知れない。しかし、国境警備隊に聞けば、この国に何がもたらされているかがわかる。それでみんなも納得できる。合点がいく。彼らは問題のある人間を送り込んでくるのだ。

2つ目は、今回の大統領選だ。オクラホマ州タルサにて、新型コロナウイルス(COVID-19)によるシャットダウンで外出禁止となり選挙活動ができなかった期間が開け、最初に開かれた集会でのことだ。大統領は次のように述べた。

夜中の1時だよ。かなりタフなやつだ。オンブレと私は折に触れて呼んでいる。行商中のセールスマンだかなんだか、夫が出張中に若い女性の家の窓を破って押し入るオンブレだ。緊急通報をしたが、「この番号はただ今使われておりません」と言われてしまう。そんなケースはいくらでもある。いくらでもいくらでもある。若い女性であっても、高齢の女性であっても、若い男性でも高齢の男性でも寝ているんだから」。訳注:オンブレ(hombre)とはスペイン語で「男」という意味

TwitchがTechCrunchに話したところによると、同社はそのチャンネルが開設されたときにトランプ陣営に対して次のようなガイドラインを提示したという。「他のすべての人たちと同様、Twitchを利用する政治家も、私たちの利用規約とコミュニティーガイドラインに沿っていただく必要があります。政治的コンテンツ、あるいは報道価値のあるコンテンツであれ例外は認めまられせん。私たちのルールに違反していると通報があったコンテンツには、措置を講じます」。

関連記事:Twitterとの戦争へ:トランプはソーシャルメディアの法的保護をなくすと脅迫(未訳記事)

このニュースは79万人以上ものユーザーを擁し、主にトランプ大統領を応援するコンテンツをシェアしていた巨大な「The_Donald」サブレディット(Reddit内コミュニティー)の追放に続くものだ。Redditは、ポリシーの更新がこの追放につながったと話している。トランプ大統領のサブレディットとともに、他の2000のサブレディットも追放されたのだが、その中には、大人気の左翼系コメディーポッドキャスト「Chapo Trap House」を支持するものも含まれていた。

同社は、新ルールを次のように説明している。

  • ルール1では、身元や社会的な弱さを理由にヘイトを増長するコミュニティーまたはユーザーは追放されると明示的に宣言されています。

このルールに違反する内容の詳細は、具体例とともに弊社ヘルプセンターで解説しています。

  • ルール2は、禁止行動に関する弊社のこれまでのルールと、コミュニティーのルールに準拠し事実に基づく個人的な関心に即した投稿のお願いとを結び付けたものです。

討論と創造性は歓迎しますが、他のコミュニティーへの干渉を目的としたスパムや悪意ある試みはその限りではありません。

  • その他のルールも同じ精神に基づいていますが、明確性と包括性を高めるために改正されています。

さらにこう続く。

Reddit上のあらゆるコミュニティーは、弊社のコンテンツポリシーに誠実に準拠しなければなりません。多くの機会が与えられたにも関わらず、これに従わなかったため、私たちは「r/The_Donald」を追放しました。このコミュニティーは、恒常的に平均を超える数の違反コンテンツの掲載、支持を続けており(ルール1)、弊社および他のコミュニティーと敵対し(ルール2、ルール8)、その管理者は私たちの最低限の要望への対応すら拒絶しました。現在まで私たちは、ユーザーのための場として彼らのコミュニティーを存続できるよう警告、モデレーター交代、隔離など数々の手段を通じて、誠意をもって対処して参りました。

さらにRedditは、比較的小さな「Chapo」ボードも「継続的にルール違反コンテンツを掲載し、管理者が同コミュニティーを管理する意志を示さなかった」ことから追放した。

とりわけトランプ大統領は、自らがソーシャルメディアサイトに戦争を仕掛けている。Twitter(ツイッター)が、郵便投票やその他の問題にまつわる問題ツイートのモグラ叩きを展開すると、彼は、ユーザーが投稿した内容で訴えられないようにサイトを保護する法律、通信品位法第230条を標的にした大統領令に署名した。

画像クレジット:Alex Wong / Getty Images

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

「抗議者を脅した」とTwitterが再びトランプ大統領のツイートを非表示に

Twitter(ツイッター)は米国時間6月23日、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領のコンテンツに対して新たなアクションを起こした。脅迫的な要素を含むとして、ツイートを隠し、警告ラベルを貼った。

トランプ氏の最新の攻撃的なツイート(Twitter投稿)は「私が大統領である限り、ワシントンD.C.に『自治区』ができることは決してない。もし自治区設置を試みるものなら、彼らは重大な力に直面することになる!」と宣言した。このツイートは、6月22日夜にホワイトハウス近くのラファイエット広場で抗議者たちと警察当局が衝突したことを受けてのものだ。

ツイッターはトランプ氏の別のツイートが、「悪態」という形で人々に危害を加える脅しを禁止する同社のルールに反したと指摘している。ツイートは削除されないが、「いいね」の表示や返信、コメントなしのリツイートなどユーザーの反応は制限されるとツイッターは説明した。6月22日に同社は、郵送投票に関して偽の主張を行い「RIGGED 2020 ELECTION」と記したトランプ氏の別のツイートに対応することを却下した。問題のツイートは選挙に関するツイッターのルールを明確に破るものではない、という判断だ。

ここ数週間、トランプ氏は抗議者が警察のいないエリアを作ることを許しているシアトル市を頻繁に軽蔑してきた。この対応はトランプ氏の政治に対する恐れや怒りを再びかき立てた。キャピトル・ヒル周辺の駅を警察が見捨てた後、シアトルの抗議者たちはこのエリアに流入し、「自治区」を宣言した。自治区そしてトランプ氏の最新の脅しは、ミネアポリスの警察が2020年5月下旬にGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏を殺害した後に、警察の残忍性や人種差別的な暴力に反対する全国的な公民権運動に発展した。

6月23日のツイートは、ツイッターが同プラットフォームのルールを大統領に適用してきた一連の動きの中で最新例となる。これまで同社は、トランプ氏を含め著名な米国の政治家からのツイートにポリシーを適用することはほとんどなかった(未訳記事)。

2020年5月から同社は政治家を対象としたモデレーションにより積極的なアプローチを取るようになった。5月下旬にツイッターは、カリフォルニアの郵送投票に関して偽の主張を行った大統領のツイート2件にフラッグを立てた。すると、数日後にトランプ氏は報復的な大統領令に署名した。ジョージ・フロイド氏事件の抗議の初期に、ツイッターはトランプ氏の抗議者に対する武力行使に言及した別のツイートも非表示にした。

画像クレジット: Justin Sullivan/Getty Images / Getty Images

関連記事:TwitterのCEOがトランプ大統領のツイートに警告を付けた理由を説明

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi