メルペイは9月4日、報道関係者に向けて「メルペイ信用サービス勉強会」を開催した。9月18日に完全招待制で実施される「MERPAY CONFERENCE 2019_SEP.」を前に、同社の信用サービス、つまり「メルペイあと払い」についての理解を深めてもらう目的で企画された会だ。
メルペイあと払いとは、iDもしくはQR/バーコードが利用できるメルペイでの決済額を、1カ月ぶんまとめて後払いできる機能だ。
決済手数料は、金融機関の口座からメルペイにチャージしたいわゆる「メルペイ残高」で支払う場合は無料、指定の銀行口座からの口座引き落としやセブン銀行ATM、コンビニのレジでの返済は300円がかかる。手数料が月額300円かかった場合、単純計算の月利は、1000円利用で30%、1万円利用で3%、10万円利用で0.3%。
メルペイのガイドによると支払いが遅れた場合は、清算が完了するまでメルペイあと払いを利用できなくなるほか、メルカリ売上金を未払い金額に充当という処置が採られる。メルカリ売上金で充当できず、長期にわたって返済できない場合は、メルカリやメルペイの一部機能の利用を制限、未払いあと払い債権や手数料などの回収を第三者に委託、年率14.6%の遅延損害金を請求、電話または書面で清算を案内といった対応になることがある。
とはいえ毎月きちんと返済できるなら、クレジットカードを持てない、持ちたくない人のクレジットカード代わりとして有効な決済手段だ。もちろん、キャッシングするよりもずっと低い金利(メルペイの場合は金利ではなく手数料)で資金を前借りできるケースもある。
しかも前述のようにメルペイ残高からの返済なら手数料は無料なので、金利手数料がないクレジットカードの翌月1回払いと同じ感覚で使える。定期的に実施されるメルペイの還元キャンペーンを活用すれば、クレジットカードのポイント還元よりも有利になるはずだ。
メルペイ執行役員CBO(Chief Business Officer)を務める山本真人氏
勉強会では、このメルペイあと払いの限度額をどのように設定しているかについて説明があった。メルペイ執行役員CBO(Chief Business Officer)を務める山本真人氏はまず、メルカリとメルペイの月間アクティブユーザーは1357万人で、メルカリの売上金とポイントの年間総計は5000億円相当であることを公表。
この多数かつ多額の取引をメルカリ/メルペイの独自AIが解析することで、あと払いの限度額を利用者ごとに適切に設定しているそうだ。セキュリティの観点から詳細は明らかにされなかったが、メルカリの出品や購入、評価などのデータ、本人確認の有無などで利用者の信用度をランク付けしている。
当然ながら、ランク付けのアルゴリズムについてもセキュリティの観点から明らかにされなかった。山本氏によると、2017年6月から開始していたメルペイの「月イチ払い」の利用者データもAIが解析しており、利用者の傾向を把握したうえでメルペイあと払いの上限金額の設定に反映しているそうだ。
しかし、タイトルにあるように私の場合はeKYCによる本人確認と金融機関の口座の登録は済ませているものの、メルカリでは一度も売買をしたことはなく、メルペイは4月から毎月2000円程度を使っている状態なのに、あと払い上限が15万円に設定されている。
メルペイあと払いの上限額は、サービス開始当初が2000円、そのあとの少し記憶が曖昧だが5月に6000円程度に拡大し、7月からいきなり15万円に跳ね上がった。もちろん、通常のキャッシングやクレジットカードの審査で40代のビジネスパーソンに付与する上限額として15万円は妥当というより少し少ないが、審査には勤務先や勤続年数、年収、他社借り入れ額などのデータが必要だ。そういったデータを収集せずに15万円を付与するメルカリ/メルペイのAIはいったい何を見ているのだろうか。
山本氏に、メルカリやメルペイをたいして利用していないのに高額なメルペイあと払い上限が設定される可能性について質問したことろ「メルカリでは売買のほか閲覧履歴なども分析しており、同様の傾向を示しているヘビーユーザーがいれば、それを参考にしてあと払い上限を設定する『可能性はある』」とのこと。あくまでもAIが算出している数値なので、なぜAIがそう判断したのかを説明するのは難しいだろう。
ここからは個人的な憶測でしかないが、メルカリ/メルペイが開発したAIは、利用者が登録・利用許可した個人情報を含めてさまざまな解析をしているのではないか。
本人認証などを済ませると、メルカリ/メルペイの利用実績だけでなく、性別や生年月日、居住地などのデータも組み合わせられる。年代や住んでいる場所、一軒家かマンション住まいか、賃貸が持ち家かなどはネット上の公開情報を調べれば容易に判明する。単なる偶然の可能性もあるが、メルカリやメルペイの利用実績に乏しい利用者に15万円のあと払い枠を設定できるということは、これらの情報を基にしている可能性がある。
メルペイのクレジットデザインチームでプロダクト責任者を務める石川祐樹氏
同社クレジットデザインチームでプロダクト責任者を務める石川祐樹氏は、詳しい数字を明らかにしなかったものの、5月からの各種キャンペーンでメルペイの利用者が着実に伸びていることを説明した。
メルペイの利用者の年代分布では、20代が36.3%と最も多く、30代、40代、50代以上、10代と続く。10代が最も低いのは、メルペイを利用できるのは18歳以上で、20歳未満の場合はメルペイあと払いの上限金額が1万円に制限されるほか、メルペイの利用には親の承諾が必要になるからだろう。height=”768″ />男女比率では、女性が55.8%と過半数を占める。
石川氏にメルペイあと払いの決済金額を期日までに支払わなかった場合にどうなるか聞いたところ、まずはメルカリアプリの通知機能を利用して支払い(返済)の催促を数回に分けて利用者に知らせるのだという。「利用者が単純に返済を忘れているだけのこともあるので、過去の支払い状況などを考慮してAIが通知のタイミングや回数、強さを利用者ごとに細かく判断する」と石川氏。
また石川氏は、メルペイあと払いの分割払いの導入について「可能性はあるが、ここで発表できることはない」とコメント。さらに、メルカリやメルペイの月別の利用実績によってメルペイあと払い上限を柔軟に変更する可能性について聞いたところ「社内でも一時的に上限額を拡大してもいいのではという意見もあるが、上限額が上下することが果たして利用者にとって本当に使いやすいか検討する必要がある」とのこと。
このように、現在のメルカリ/メルペイの利用実績や周辺情報だけでなく、2年間のあと後払い(当初は月イチ払い)のデータを蓄積・分析したメルカリ/メルペイのAIがはじき出す信用度は、結構正確なのかもしれない。今後、メルペイあと払いに分割払いやボーナス払いなどの支払い方法が加われば、メルペイが掲げる「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションにさらに近づくだろう。