中国初の探査車が天問1号ロケットの打ち上げ成功で火星に向かう

中国は今日(米国時間7月23日)午前、火星探査機の打ち上げに成功した。東海岸時刻午前12時41分、海南島(Hainan Island)の文昌衛星発射場(Wenchang Satellite Launch Center)から長征5号(Long March 5)ロケットを使って発射された。搭載された天問1号(Tianwen-1)探査車(ローバー)は、2011年に地球軌道の脱出に失敗した火星探査機蛍火1号(Yinghuo-1)を受け、中国初の本格的探査ミッションを担う。

これは中国だけでなく、地球外惑星探査全般にとって大きな取り組みである。一つのミッションで、軌道周回機と探査車の両方を組み合わせ、惑星に着陸させた探査車が火星軌道上の周回機と連絡を取り合う新しい試みだ。

天問1号は今年離陸した2番目の火星ミッションであり、今週UAE(アラブ首長国連邦)は、日本の三菱重工(MHI)のロケットで火星探査機を打ち上げた。そのミッション “Hope”は火星大気を測定する着陸機を搭載している。

中国のミッションでは、送り込んだソーラー電力探査車による90日間の火星表面探査が計画されており、搭載したさまざまな機器を使って標本採取やマルチスペクトル写真撮影、表面組成、天候、磁界情報などの測定を行う。軌道周回機も自身のカメラと測定機器を使って、分光計、レーダー、写真などの情報を収集するほか、探査車から送られてきたデータを地球に送るリレーステーションの役目も果たす。

今年の火星大接近(地球と火星それぞれの太陽周回軌道が最接近する時期)が終わる前に、もうひとつ火星に向かうミッションがある。NASAの火星探査車 “Perseverance”(忍耐)の打ち上げだ。天候が許せば7月30日に離陸する予定だ。PerseveranceはNASAの探査車、Curiosityの後継機で、標本を採取して地球に文字通り持ち帰る。小型自走ヘリコプターも搭載しており、成功すれば火星表面から離陸した初めての動力航空機になる。

天問1号は来年2月に火星に到着する予定で、数ヶ月にわたる旅は両惑星の相対距離に基づく最短移動時間だ。

画像クレジット:China National Space Administration

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国政府による香港への国安法適用に対するテクノロジー企業たちのそれぞれの対応

中国ラウンドアップでは中国のテクノロジー関連ニュースと世界への影響を紹介してきたが、今回は中国政府が香港に国家安全法を適用するという事態が香港の人々の生活とジネスに与えている影響を紹介する。

国家安全法の香港への適用はシリコンバレーのテクノロジー企業にとって中国に対する態度を決めるリトマス試験紙のような役割を果たしている。Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Telegram、Zoom、Redditを含め多数の企業が明確に態度を表明した。

抗議、遵守、離脱

中国政府が7月1日に香港に国家安全法を施行したのは、香港に対する統制を大きく強化するためだった。国安法の条項にはすでに私が書いたように(未訳記事)、インターネット接続プロバイダーに情報を削除しあるいは警察に情報を提供することを直接要求するものが含まれている。 これに対して米国、中国の主要テクノロジー企業の態度は以下のとおりだ。

Facebook:国安法の条項をさらに検討する間、香港当局からの情報提供の要求に応じることを停止したことを確認した。この検討には「人権に関する正規のデューデリジェンス及び人権専門家との協議が含まれる」という。広報担当者は「表現の自由は基本的な人権であり、人々が身の安全その他の有害な影響を恐れることなく表現を行う権利をフェイスブックは支持する」と述べた。

データ引渡しの停止はフェイスブック本体に加えてグループ企業のWhatsAppにも及ぶ。

Twitter:国安法施行と同時に香港当局の要求の応じてユーザーデータを転送することを停止したと述べた。 同社では「特にこの法律の一部は意味があいまいで明確な定義がなされていないため」だとしている。また「この法の適用決定の過程とその意図に関して重大な懸念がある」と述べている。

Google:香港当局からのデータ要求の処理を一時停止したと述べた。またユーザー作成コンテンツをサービスから削除することを求める政府の要求に対しては引き続き個別に検討すると付け加えた。

Zoom:香港当局のデータ引渡し要求に応じることを停止したと発表。「Zoomは自由でオープンな思想、意見の交換を支持する。我々は米国政府が今後発する可能性があるガイドラインを含め、香港の特別行政区(SAR)としての現状を注意深くモニターしている。Zoomは香港の特別行政区からの、またこれに関連するデータ引渡要求の処理を一時停止した」と述べている。

LinkedIn:Microsoft(マイクロソフト)が所有する同社は、中国本土に中国法に従う法人を運営しているが「現地当局のデータ引渡要求について、新法の内容の検討を終えるまで一時停止した」と発表。

Telegram:メッセージアプリであるテレグラムの広報担当者は「香港のユーザーに関連する当局からのデータ要求は、香港の政治的地位の改変に関して国際的なコンセンサスが得られるまで一切処理しない」と述べた。また過去にも香港当局にいかなるデータも開示したことはないとしている。

Signal:データ暗号化でテレグラムと競争しているシグナルは「我々も(Telegramと同様に)データ引渡しを停止したといいたいところだが、そもそも我々は香港警察にデータを引渡したことがない。また、そもそも我々は引き渡すべきユーザーデータを保持していない」と皮肉を込めて述べている。

TikTok:中国企業によって運営されている同社はジレンマに陥っている。中国企業である以上、中国当局の要求を無視することはできない。一方で同社が中国の巨大な検閲システムの一環をなすという主張にさらに根拠を与えたくない。当初、他の外国企業同様、データ引渡要求を拒否する姿勢を見せたものの、これは北京の指示に反する姿勢となる。同社は香港におけるショートビデオサービスを中止し撤退した。香港はTikTokのビジネスのごく小さい部分を占めるだけなのでこの決定は容易なものだったはずだ。運営会社のByteDanceがTikTokの検閲済みバージョンであるDouyin(抖音)を導入するか、人口700万の香港を完全に見捨てるかは不明だ。

Apple:中国本土で大規模なビジネスを展開しており、政府との親密な関係についても長年にわたって批判されてきたApple(アップル)は、2019年に香港で民主主義を支持する抗議活動が行われている場所を示すアプリを削除した

国安法の導入に伴ってアップルは「新法について詳細を評価中だ。ユーザー生成コンテンツについて香港当局から直接(引渡)要求を受けていない」とした。同時に米国と香港の法律共助協定に基づき企業は(香港当局に)協力の義務があると述べた。

【Japan編集部追記:トランプ大統領は7月15日に香港への各種優遇措置を撤廃する大統領令に署名している】

Reddit大手中国テクノロジー企業のTencentが出資している(未訳記事)ものの、「ユーザーデータの取り扱いに関する方針は株主とは別だとして、「ユーザーのプライバシーはRedditが本質的に重視している価値だ。我々は香港当局からユーザー情報引渡の要求を受けていない。しかし当社の方針としてRedditは基本的人権を損なうおそれがある場合、政府からの要求に従わない。この方針は新法の適用によっても変わるものではない。ユーザー情報を守るというRedditの方針は我が社に対する投資家によっていささかも影響されない。(影響を受けるとする)示唆はすべて誤りだ」と発表した。

上のリストはいかなる意味でも網羅的なものではないし、国安法の内容、適用の詳細に関してもまだ充分な説明されていない。TechCrunchは他のテクノロジー企業の動向にも注意を払い、報道を続ける。

関連記事:The tech industry comes to grips with Hong Kong’s national security law(未訳記事)

中国外務省のZhao Lijian(趙立堅)副報道局長は香港の警察当局へのデータ引渡の停止について次のような声明を発表し、懸念に理由がないと主張した。

1982年に香港が祖国に返還されたときMargaret Thatcher(マーガレット・サッチャー)首相と会見したDeng Xiaoping(鄧小平)が次のように述べたことを想起される。「競馬は続く。株式も盛んに取引される。ダンサーはダンスを続ける。法律が定めるとおり、一国二制度は確固たる基盤に上にあり、さらに強化されると我々は強く信じる。香港の住民の基本的な利益と繁栄は適切に保護され、社会の安定と調和がいっそう確実なものになる。馬はさらに速く速く走り、株価はさらに上昇し、ダンサーの踊りはさらに魅力的になる」。我々は香港の将来に確たる自信がある。

さらに世界では……

画像クレジット: DuKai photographer / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルが中国・北京に巨大ストアをリニューアルオープン、米中関係の悪化や米司法長官の非難の最中

米国時間7月17日にApple(アップル)は、中国に新しい超大型店をオープンしてその力を誇示している。場所は北京のショッピング街である三里屯(さんりとん)で、前からそこにあった中国初のアップルストアの巨大リフォームだ。最初のストアは2008年に、開店直後から一大センセーションを巻き起こし(Wall Street Journal事)たが、リニューアルした店舗は元の倍以上の広さだ。

このランドマーク的な建物は、ハードウェアの超大手であるアップルと中国との関係が米国で問題視されている最中に再オープンした。7月16日のスピーチで司法長官のWilliam Barr(ウィリアム・バー)氏は、アップルを含む米国の多くのテクノロジー企業を槍玉に挙げ、中国のルールでプレーしていると批判した。特にアップルに関しては「中国のコミュニストたちの言いなりになっている」と指摘した。

アップルは長年、製造のパートナーとしてだけでなく、ゲームなどApp Storeでの売上とiPhoneの全国的売上で中国に依存している。しかしそれでも近年は、6月にこれまでで最大のストアを開いたHuawei(ファーウェイ)をはじめ、中国のスマートフォンメーカーが、中国におけるアップルのマーケットシェアを徐々に奪ってきた。Counterpointの調査によると、アップルのシェアは約10%で、順位は5位だ。

バー氏がアップルを厳しく非難したのは、同社が中国政府のためにアプリを間引いているからだ。アプリを禁止する動機は、香港の抗議活動で使われた地図の場合のように政治的に問題のあるサービスを抑えるためだったり、規制の抜け穴を閉じるためなど、さまざまだ。ちなみに後者では、中国で許可されていない数千本のゲームが削除された

新しい店舗には中国の小売店では初めての屋根と一体化されたソーラーパネルがあり、世界中の再生可能エネルギーだけを使っているアップルの他の施設と同様に、その下のストアに電力を供給する。同社によると、それが中国で1年間にサポートするクリーンエネルギーの量は、45万世帯の家庭が使用する電力に等しい。

これまでの12年間で三里屯の店舗はスタッフが52名から185名に増え、2200万人以上のビジターを迎えた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルが中国・北京に巨大ストアをリニューアルオープン、米中関係の悪化や米司法長官の非難の最中

米国時間7月17日にApple(アップル)は、中国に新しい超大型店をオープンしてその力を誇示している。場所は北京のショッピング街である三里屯(さんりとん)で、前からそこにあった中国初のアップルストアの巨大リフォームだ。最初のストアは2008年に、開店直後から一大センセーションを巻き起こし(Wall Street Journal事)たが、リニューアルした店舗は元の倍以上の広さだ。

このランドマーク的な建物は、ハードウェアの超大手であるアップルと中国との関係が米国で問題視されている最中に再オープンした。7月16日のスピーチで司法長官のWilliam Barr(ウィリアム・バー)氏は、アップルを含む米国の多くのテクノロジー企業を槍玉に挙げ、中国のルールでプレーしていると批判した。特にアップルに関しては「中国のコミュニストたちの言いなりになっている」と指摘した。

アップルは長年、製造のパートナーとしてだけでなく、ゲームなどApp Storeでの売上とiPhoneの全国的売上で中国に依存している。しかしそれでも近年は、6月にこれまでで最大のストアを開いたHuawei(ファーウェイ)をはじめ、中国のスマートフォンメーカーが、中国におけるアップルのマーケットシェアを徐々に奪ってきた。Counterpointの調査によると、アップルのシェアは約10%で、順位は5位だ。

バー氏がアップルを厳しく非難したのは、同社が中国政府のためにアプリを間引いているからだ。アプリを禁止する動機は、香港の抗議活動で使われた地図の場合のように政治的に問題のあるサービスを抑えるためだったり、規制の抜け穴を閉じるためなど、さまざまだ。ちなみに後者では、中国で許可されていない数千本のゲームが削除された

新しい店舗には中国の小売店では初めての屋根と一体化されたソーラーパネルがあり、世界中の再生可能エネルギーだけを使っているアップルの他の施設と同様に、その下のストアに電力を供給する。同社によると、それが中国で1年間にサポートするクリーンエネルギーの量は、45万世帯の家庭が使用する電力に等しい。

これまでの12年間で三里屯の店舗はスタッフが52名から185名に増え、2200万人以上のビジターを迎えた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

7月第1週に2500本超のiOS用ゲームが中国App Storeから削除される

7月の第1週に2500本超のモバイルゲームが中国のApp Store(アップストア)から削除された。アプリストア調査会社であるSensor Towerの最新レポートで明らかになった。ライセンスのないゲームに対する計画通りの取り締まりで削除は予想されていた。しかしこれはアプリ経済への影響を示すデータとしては初めてのものとなる。

比較材料として、7月に削除されたアプリの数は4月第1週の4倍、5月第1週の5倍、6月第1週の4倍超だ。アプリ削除は、中国のゲーミング規則へのApple(アップル)の新たなコンプライアンスと関係がある。

今年初め、アップルはアプリのデベロッパーに6月30日までにモバイルゲームに関する中国の法律に則るよう案内した。2016年に施行されたこの法律では、有料ゲームとアプリ内課金のゲームを提供しているゲームデベロッパーに、中国の検閲団体の1つ、広報出版総局からライセンスを取得することを義務付けている。

何年もの間、iPhoneゲームデベロッパーは、ゲームをリリースした後にライセンス承認を待つことで法律を回避してきた。ライセンス承認は時間がかかる退屈なプロセスで、2018年にあったように審査作業の一時停止があれば数カ月以上もかかる。中国当局がポルノやギャンブル、暴力、その他の政府が不適切とみなすコンテンツを含んでいるゲームをさらに取り締まるために業務を見直した時、ライセンス発行が9カ月間止まった。

メジャーなAndroidアプリストアはすでに2016年ルールを適用していたが、アップルでは抜け道があり、モバイルゲーム業界は中国のiPhoneプラットフォームで何年も生き延びていた。

画像クレジット:Sensor Tower

アップルの対応から、App Storeで何千ものゲーム削除が7月に始まることが予想されていた(Engadget記事)。Sensor Towerのデータはそのときがきたことを示している。しかしSensor Towerのデータは、サブカテゴリーチャートを含むApp Storeのチャートにランクインするほどダウンロードが多かったゲームのみをとらえている。

削除された2500本あまりのゲームのうち、2000本のゲーム(80%)は2012年以来のダウンロードが1万回以下だったとSensor Towerは推定している。それらのゲーム合わせて計1億3340万回のダウンロードがあった。削除されたゲームの総売上高は合計で3470万ドル(約37億円)で、うち1つのゲームが1000万ドル(約11億円)超、そして100万ドル(約1億1000万円)超を売り上げたゲームは6つあった。

削除されたゲームの中で有名なものには、GluのContract Killer Zombies 2、ZyngaのSolitaire、Crazy LabsのASMR Slicing、FlaregamesのNonstop Chuck Norrisがある。直近では、SupercellのHay Dayも削除された。

ゲームマーケットへの変更、そしてアプリ経済への新型コロナウイルスの影響により、第2四半期におけるiOS消費者の消費額においては米国が再びトップとなっている。App Annieによると、第2四半期の米国iOS消費者の消費額は前年同期比30%増だった。

中国は世界で最も儲かるモバイルゲームマーケットだっただけに「ゲーム削除による長期的な影響がアップルの収支に表れるかもしれない」とSensor Towerは指摘した。2019年に中国のApp Storeのゲームは推定126億ドル(約1超3500億円)を売り上げた。これはアップルのマーケットプレイスでの昨年のグローバルゲーム支出の33.2%を占めるという。

画像クレジット: Sensor Tower

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(翻訳:Mizoguchi

制裁とパンデミックの中、ファーウェイの2020年上半期の売上は13.1%増

Huawei(ファーウェイ)は、同社の2020年上半期における売上は、世界中の国々が同社製品への禁制を継続しパンデミックの最中にスマートフォンの売上が縮小している中(未訳記事)において前年比で13.1%増加した、と米国時間7月13日に発表した文書(Huaweiリリース)で述べている。

同期の売上は4540億元(約6兆9500億円)に達し、総売上高に対してキャリア事業が35%、エンタープライズ事業が8%、コンシューマー事業56%を占めた。純利益率は9.2%で、2019年の同期の8.7%(Huaweiリリース)からわずかに増加している。

非上場企業である同社は、上半期の成長要因について明かしていないが、リリースでは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック中、同社の主要事業である「情報通信技術」が「ウイルスと戦うための重要なツールになっただけでなく、経済の回復のためのエンジンにもなった」と述べている。

この成長は、米国が同盟国のネットワークインフラストラクチャからファーウェイを排除するよう取り除くように勧めていた中でのものだ。The Telegraphによれば、英国は早ければ2020年中にも、段階的に同国の5Gネットワークからファーウェイ製品を撤去する予定だという。この計画に対しては、ネットワークの停止やその他のセキュリティリスクの可能性がある(未訳記事)という批判もある。

ファーウェイは地域別の売り上げも発表していないが、海外で窮状にある今、中国が成長を支える基盤となっていると予想するのは妥当なところだろう。同社と同社の中国内における競合他社であるZTEの2社が、中国の主なキャリアからの5G基地局の契約の大半を分担している(Caixin記事)。ZTEもまた、米商務省の貿易ブラックリストにファーウェイと並んで載っているキャリアたちは5Gスマートフォンもファーウェイから調達することで合意(Tencent記事)しており、これによって当然、同社の売り上げは伸びるだろう。

画像クレジット:VCG / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

グーグルが中国などを対象としたクラウドのプロジェクトを中止

グーグルは1年半にわたって中国やその他の国に向けたクラウドサービスに取り組んできたようだが、5月に同社は「Isolated Region」というプロジェクトを中止した。Bloomberg(ブルームバーグ)の記事によれば、5月に中止されたIsolated Regionによって、国内にデータをとどめて管理したい国でクラウドサービスを提供するはずだったという。

2人のグーグル従業員がブルームバーグに語ったところによると、このプロジェクトはグーグルの他のネットワークから完全に切り離されたデータと処理のインフラストラクチャを構成する「Sharded Google」という大きな取り組みの一部だった。Isolated Regionは2018年前半に始まった。中国に進出したい海外のテック企業は、ユーザーのデータを管理できるよう現地企業とジョイントベンチャーを形成しなくてはならないという中国の規制に対応するためだ。Isolated Regionは、中国やその他の国におけるこのような要件を満たすためのものではあったが、同時に米国の安全保障上の懸念を解消するためでもあった。

ブルームバーグの情報源によると、このプロジェクトは中国に関しては2019年1月に停止し、対象をヨーロッパ、中東、アフリカに切り替えた。その後、2020年5月にIsolated Regionは完全に中止されたが、同社は中国でGoogle Cloud Platformの小規模版を提供することを検討していた。

ブルームバーグの記事で中止の理由は地政学的およびパンデミックに関する懸念だと報じられた後、グーグルの担当者はブルームバーグに対し、Isolated Regionはそうした理由で終了したのではなく、また同社は「中国国内でクラウドプラットフォームのサービスを現在提供していないし提供したことはない」と伝えた。

グーグルの担当者はIsolated Regionを中止した理由を「我々が積極的に進めていた他のアプローチで、これよりも良い結果を得られた。データのガバナンス、運用、ソフトウェアのサバイバビリティに関する要件を満たすために、我々は包括的にアプローチしている。Isolated Regionは我々がこうした要件を満たすために探ってきた道筋のひとつにすぎなかった」と述べた。

グーグルの親会社であるAlphabet(アルファベット)は、2月に公開した第4四半期および通年の収益報告書で、Google Cloudを品目として初めて計上した。それによると、Google Cloudの2019年のランレートは53.6%で100億ドル(約1兆730億円)を超えると公表され、競合のAmazon(アマゾン)やMicrosoft(マイクロソフト)にとってさらに手強いライバルになっている。

グーグルがメディアに対して出した声明は以下のとおり。

「世界各地のお客様や規制機関から、クラウドテクノロジーの採用に関して新たな要件が出てきています。データのガバナンス、運用、ソフトウェアのサバイバビリティに関する要件を満たすために、我々は包括的なアプローチを進めています。Isolated Regionは我々がこうした要件を満たすために探ってきた道筋のひとつにすぎませんでした。お客様との話し合いやヨーロッパなどの政府関係者から得た情報により、我々が積極的に進めていた他のアプローチの方が良い結果を得られることがわかりました。Isolated Regionは地政学やパンデミックの懸念を理由に終了したのではありません。グーグルは中国国内でクラウドプラットフォームのサービスを現在提供していないし提供したことはありません。Google Cloudは中国でGoogle Cloud Platformを提供する選択肢を検討していません」。

関連記事:Alphabetの2019年純利益は広告が好調で1.2兆円

画像:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

TikTokは米国での禁止に直面し、中国政府の統制が強まる香港からの撤退を発表

世界で最も人気のあるショートビデオアプリが、世界中の政治家たちの標的になっている。

米国時間7月6日の夜、米国務長官のMike Pompeo(マイク・ポンペオ)氏はFox Newsに対して、北京政府による監視やプロパガンダの道具として使われる懸念があるため米国政府はTikTokの禁止を「確かに検討している」と述べた

米国での禁止が本当になったならば、最近、最大の市場であるインドをを失ったTikTokにとって、それに劣らぬ大きな打撃となるだろう。

ポンペオ氏の声明に続いて今度はTikTokが、国家安全保障法の公布により、北京政府から前代未聞の統制の波にさらされている香港から撤退すると発表した。

TikTokのスポークスパーソンは「最近の一連の出来事を踏まえて、私たちは香港におけるTikTokアプリの運営を止めることに決めた」と述べている。その後同社から、この決定に関するさらなるコメントはない。

声明は曖昧ため、多くの疑問が残る。ByteDanceは検閲を通ったバージョンのアプリを香港でローンチするのか、おそらくByteDanceの中国チームが運営している姉妹アプリであるDouyinに置き換わ置き換わるのではないかと考える必要がある。

中国の連続起業家であるZhang Yiming(張一鳴)氏が創業したByteDanceは、TikTokを中国人の所有権切り離し、北京の検閲とは無縁なものにしようと努めてきた。その努力の中には、TikTok用のデータセンターを海外に置いて中国当局の手が及ばないようにしたり、モデレーションのチェック過程に外部専門家を参加させたり(未訳記事)、アプリの新しいグローバルな顔としてディズニーのKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏を起用したり(未訳記事)といったことがある。

しかし香港の情況に対する同社の対応は、今やこのアプリを率いるトップであるメイヤー氏によってなされたと思われるが、欧米のテクノロジー大手の決定とは対照的である。Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)、Twitter(ツイッター)そしてTelegramなどは今週口を揃えて、香港政府からのデータ検査のリクエストを拒否または保留にするとしている。

彼らの態度は中国政府による検閲や監視に対する断固たる拒否と見られているが、香港における次のステップを考えるための時間稼ぎとも見られている。香港からの自発的撤退か、禁じられるまで現状続行か、あるいはこれは最もありそうにないが北京政府のルールに従うか。

TikTokによると、同社の香港のユーザー数は2019年9月現在で15万人であり、2020年4月に全世界で20億回ダウンロードされたアプリにとってはほぼ無視することができる数だ。TechCrunchはこのアプリが香港でとても小さなチームが運営していると理解しており、香港を去ることのスタッフに与える影響は、同社全体から見れば限定的であるようだ。

画像クレジット:JOEL SAGET/AFP / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インド政府による禁止措置を受けてTikTokがインドでアクセス不可に

インド政府がセキュリティとプライバシーの懸念を理由に、人気のショートビデオアプリTikTokやその他の58のアプリを世界で2番目に大きいインドのインターネットマーケットで禁止したことを受け、ユーザーがTikTokにアクセスするのをブロックするインターネットサービスプロバイダーが増えている。

AirtelやVodafone、その他のサービスプロバイダーの多くのユーザーが、インド時間6月30日午後に「スマホからTikTokアプリにアクセスできない」と報告した。ユーザーがいうには、TikTokアプリを開くと「インターネットにつながっていない」と表示された。(アップデート:インターネットサービスプロバイダーは、自分たちがTikTokをブロックしているのではなく、アプリそのものがインドでアクセスできなくなっていると述べた。インドの電気通信局はインターネットサービスプロバイダーに「すぐさま」TikTokをブロックするよう命じていた[ETTelecom.com記事])。

TikTokアプリを開くと、このアプリはインド政府の命令に従ってサービスを提供できないというメッセージが表示される。インドでTikTokのウェブサイトを開くと、同様のメッセージが出てくる。

6月30日にインドのApple(アップル)のApp StoreとGoogle(グーグル)のPlay StoreでTikTokアプリをダウンロードできなくなった。この件に詳しい2人の人物がTechCrunchに語ったところによると、TikTokを開発したByteDanceが自らアプリをストアから引っ込めたという。

Alibaba GroupのUC BrowserとUC News、eコマースサービスのClub Factoryなどを含め、インド政府が6月29日夜に禁止した他のアプリのほとんどがまだアプリストアでダウンロードできる。これはグーグルとアップルがまだインド政府の決定に従っていないことをうかがわせる。

インドに2億人超のユーザーを抱えるTikTokは、アジアで3番目に大きな経済のインドを、同社にとって最大の海外マーケットととらえている。インドにおけるTikTokのオペレーションを監督するNikhil Gandhi(ニクヒル・ガンディー)氏は、同社がインド政府の命令に従っている「最中」であり、インド政府の懸念を和らげるために議員たちに協力したいと話した。

モバイル調査会社のSensor Towerによると、TikTokアプリはグローバルで約20億回インストールされ、そのうちインドでのダウンロードは6億1100万回だ。2020年6月末までの四半期でインド政府が禁止を命じた59アプリは計3億3000万回インストールされた。これらのアプリの2020年5月におけるマンスリーアクティブユーザーベースは、App Annieの幹部がTechCrunchに示したデータによると計5億500万人だった。

人口13億人の半分近くがネットを使用する世界第2位のインターネットマーケットであるインドがこれほど多くの外国アプリの禁止を命じたのは初めてのことだ。インド政府は「多くの『治安問題に影響を与えるデータセキュリティとプライバシーの流出について市民からの抗議』がコンピューター緊急対応チームに寄せられていた。こうしたデータの編集では、インドの国家安全と防衛にとって敵対的な要素を持ってマイニングとプロファイリングが行われている」と述べた。

今回の驚くべき発表は、インド政府がこれらのサービスをどのように「禁止」するのか混乱を生じさせた。しかしそれは現在、明らかになりつつある。

TikTokは2019年にインドで1週間禁止されたが、すでにアプリをダウンロードしていたユーザーは利用できた。その際、裁判所に提出した書類の中で、1日あたり50万ドル(約5400万円)失っていると述べた。ロイターは6月30日、ByteDanceがTikTokをさらに浸透させるためにインドに10億ドル(約1080億円)を投資する計画だったと報じたが、今となってはその計画は立ち消えたようだ。

中国外務省の報道官であるZhao Lijian(趙立堅)氏は6月30日の記者会見で、中国はインドの動きを懸念しており、インドは「中国の投資家を含め海外の投資家の法律上の権利を維持する責任を負う」と述べた。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

香港国家安全維持方法可決を受けて米国が香港への機密テックの輸出を停止

米国政府は米国時間6月29日、これまで香港に認めてきた優遇措置の停止に踏み切った。1カ月前にMichael Pompeo(マイケル・ポンペオ)国務長官は、もはや香港には中国から独立した自治が認められないと議会に語っていた(CNBC記事)。優遇措置の停止には、米国の機密テクノロジー輸出許可例外の一時停止、香港への防衛装備品輸出の終了が含まれる。米国の商務省(商務省リリース)と国務省(国務省リリース)とともに、さらなる制限を検討していると述べた。

米国政府の発表は、中国が新しい香港国家安全維持法を導入したというニュースが流れる数時間前に出された。新国家安全維持法では中国が香港の統制を強めることになる。South China Morning Postによると、7月1日に施行される見込みだ

米国の優遇停止措置で影響を受けるテクノロジー関係の輸出には、コンピューターのチップそして衛星や火器に使用される望遠鏡レンズなどのデュアルユーステクノロジー(民事、軍事の両方に応用されるもの)が含まれる(The Wall Street Journal記事)。

英国が1997年に香港を中国に返還したときに「1国2制度」が導入され、「優遇」という言葉はその制度の下に香港と中国本土を別扱いすることを意味する。この別扱いには、輸出規制や移民政策、関税などが含まれる。しかしこれらの優遇措置は、中国が新たな国家安全維持法を提案した後は危険なものとみなされるようになった。新国家安全維持法では、多くの香港住民が中国本土からの司法の独立の終わりを恐れた(BBC記事)。

米国の商務省と国務省はそれぞれ声明を出し、香港に適用する新たな規制の詳細を明らかにした。商務省長官のWilbur Ross(ウィルバー・ロス)氏は、商務省が機密扱いの米国のテクノロジーに適用していた輸出許可例外を停止し、「優遇措置を終わらせるさらなる対応が検討されている」と述べた。

国務省は防衛装備品の輸出を終了し、「中国に対して取っている防衛装備品とデュアルユーステクノロジーの輸出制限を香港にも適用する」と明らかにした。

ロイターへの声明で、米国の前香港総領事であるKurt Tong(カート・トン)氏は、今日の米政府の決定は、香港がメジャーな製造センターではなく、香港の経済はほとんどがサービスによるものであることなどから、米国と香港の貿易にそれほど大きな影響は及ぼさないだろうと述べた。

米通商代表部の統計によると、2018年の米国の輸出における香港の割合は2.2%で、額にして373億ドル(約4兆円)だった。主な輸出カテゴリーは電気機械、貴金属や貴石、アートやアンティーク、牛肉だ。しかし新規制では、米国の半導体や他のテック企業は香港のクライアントと取引するのが難しくなるかもしれない。

米国が検討する他の規制には、香港との犯罪人引き渡し協定の終了(The New York Times記事)が含まれる。

国務省、商務省ともに規制は国家の安全を理由に導入されると説明した。「統制品目の香港への輸出と中国への輸出を区別することができない」とポペオ氏は書いている。「こうした統制品目が、中国共産党の独裁を支える人民解放軍の手に落ちるというリスクを取ることはどんなことがあってもできない」。

ロス氏は「中国共産党の香港への新たな保安措置の適用では、香港の自治が損なわれる一方で、機密扱いの米国のテクノロジーが人民解放軍や中国国家安全部に渡るリスクが増す」と声明で述べた。

画像クレジット:Xuanyu Han / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

中国のGPS代替システム「北斗」が最後の測位衛星を打ち上げ

数十年にわたり米国は位置情報、ナビゲーション、時間測定などで独占的地位を維持してきた。軍が運用する通信衛星群を利用した全地球測位システム(GPS)は、全世界で数十億台のデバイスに位置情報を提供する基幹システムである。

このテクノロジーが軍事目的だけでなく、近代経済の根幹をなすようになるにつれ、世界中の政府が米国中心システムから脱皮する方法を探ってきた。ロシア、日本、インド、英国、EUのいずれもが、GPSの代替手段の開発に手を染め、カバー範囲を広げるために追加の衛星を打ち上げてGPSシステムを強化しようとしている。

しかし、GPS代替システムとしてBeidou(ベイドゥ、北斗)ほどの投資をした国は中国以外にまずいない。過去20年間に同国は数十億ドルを費やし、30基近い衛星を打ち上げてまったく新しい位置情報システムを作ろうとしてきた。中国国営メディアによると、中国の端末の70%近くがBeidou衛星からの信号を処理できるという。

そしてパズルの最後のピース、Beidou星座最後の衛星が6月23日午前、軌道に向けて打ち上げられたことをPeople’s Daily(人民日報)が伝えた。

これは,市場参入や人権に対する考えの相違を巡って関係の悪化している米国、中国に続いている数々の分離の一環に過ぎない。2国間の貿易交渉は行き詰まり、トランプ政権の上級顧問の1人は全面中止を主張(NewYork Times記事)している。H-1Bビサの新規発給一時停止の発表もそのひとつで、米国移民局(USCIS)によると中国はH-1Bビザ申請数世界第2位である。

Beidouの現行計画の完了は、この基幹技術の新たな柔軟性と回復力を中国政府にもたらすが、究極的測位テクノロジーというのは本来敵対関係を生むものではない。衛星が増えれば全ユーザーにとって冗長度が上がり、この種の技術の多くは相互に協力することで端末メーカーの柔軟性を高める可能性を持っている。

とはいえ、GPSのなりすましや測位技術のハッキング全般が深刻な脅威(MIT Technology Review記事)であることに変わりはない。今年トランプ政権は、GPS信号をハッキングから守るためのより強固なツールの開発を政府機関に強制する大統領令を発出した。

世界の物流と日々の我々の生活がどれほどこの技術に支配されているかを踏まえると、この最重要な資産を守るために国際協力を強化する必要がある。中国が完全に稼働するシステムを手に入れた今、米国がGPSと測位システムをさらに広く提供し最大限の信頼性を追求するのと同じくらい、中国には自らの基盤を保護する動機がある。

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中国のBYDが「電気自動車のCPU」とも呼ばれるIGBTの生産で120億円相当を調達

米国の投資家であるWarren Buffett(ウォーレン・バフィット)氏が投資している中国の自動車大手BYD(比亜迪)は、電気自動車の生産で中国を自給自足にさせようと急いでいる。米国時間6月15日、同社は投資公告書面で半導体部門のBYD Semiconductorが8億元(約120億円)のシリーズA+を確保したことを発表した(BYDリリース)。

BYD Semiconductorの中核的製品である絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)は、EVの電力管理システムにシリコンコンポーネントで、その開発競争が問題となっている。この電子スイッチは電力損失の低減しと信頼性向上させるため業界の専門家たちは「電気自動車のCPU」と呼んでいる(蔚来記事)。EVの部品の中でバッテリーに次いで2番目に高価な部品で、市場調査によると総コストの7〜10%を占めている(CCF-GAIR2020記事)。

BYDはドイツの半導体大手であるInfineon Technologies AGと激しく争っており、2019年時点で中国の電気自動車で使用されるIGBTの58%がInfineonの製品だった。この年のBYDのシェアは、Citic Securitiesの記事によると18%だった

IGBTの生産には明るい未来があり、現在ブームになっているEVだけでなく、エアコンや冷蔵庫、高速列車など、その他の高エネルギー用途でも広く利用されている。IGBTの世界市場は2020年で100億元(約1520億円)近いと推計されている。同じくCiticの記事によると、2025年にはその4倍の400億元(約6070億円)になる。

この特大サイズの投資のわずか2カ月前には、深圳で上場しているBYDがそのチップ部門を分離し、独立の企業として上場した。投資家たちからの応募超過のため、この新子会社は19億元(約290億円)のシリーズAの直後に新たにA+のラウンドを調達した。

2回のラウンドの結果、親会社のBYDがBYD Semiconductor株の72.3%を所有することになり、同社の時価総額は102億元(約1550億円)となった。

IGBTを独自に開発できる唯一の中国企業である同社は、多方面から有力な投資家を集めている(CHINA SECURITIESリリース)。A+ラウンドにおける同社の投資家はSequoia Chinaを筆頭にシリーズAに参加した国営のCICC Capital、韓国の複合企業SK Group、スマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ)、Lenovo Group、ARM、中国最大の半導体ファウンドリSMIC、中国の自動車メーカーの共同投資となったSAICとBAICなどとなる。

BYDが電子部品の製造を始めたのは1995年で、主に自動車と再生可能エネルギーの分野に拡張してきた。本社は深圳にあり、同市の電動バスとタクシーのすべてに電力を提供している。同社はまた、電気自動車に対する政府補助の衰退にともない、海外市場への拡張も目指している。

画像クレジット:BYD’s new design center

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中国ラウンドアップ:アリババがクラウド部門で5000人採用へ

中国テック業界の最新の動きダイジェスト版、TechCrunchの中国ラウンドアップへようこそ。今週はAlibaba(アリババ)の急成長中のクラウドコンピューティング部門の動き、Apple(アップル)が中国のApp Storeからのポッドキャストアプリ2つを削除したニュースなどを紹介する。

中国企業の海外での動き

TikTokを取り巻くライバル

2020年5月にリリースされてからわずか数週間でダウンロードチャートのトップに躍り出たTikTokのライバルZynnが今週、盗作の疑いでGoogle Playから削除された。TikTok中国版のDouyin(抖音)の手強いライバルKuaishou(快手)が開発したZynnは、国際マーケットをたちまち魅了したTikTokに続く中国産のアプリだ。

今週初めに発表された声明文の中で、Kuaishouは他のプラットフォームからの盗作で、ユーザーが作ったビデオについての1件の苦情によってアプリが削除されたと述べた。ベンチャーキャピタリストのTurner Novak(ターナー・ノバック)氏はZynnの初期のコンテンツは、TikTokから抽出されたもののようだ(ターナー氏ブログ)との見方を示した。

しかしZynnの人気の主な要因は、報奨制度だ。Zynnは同アプリを使用したり促進したりするユーザーに金を払う。中国の地方や人口の少ない町で人気を集める戦略だ。 Nasdaq(ナスダック)に上場しているコンテンツアグリゲータのQutoutiao(趣頭条)も成長するために同じ戦略をとった(未訳記事)。従量支払いの戦略が持続可能かどうかはまだわからない。Zynnは、コンテンツを充実させるために「セレブリティレベル」のクリエイターと話せる、とうたうなど、明らかに他の手段を通じてユーザーをつなぎ留めようとしている。

Alibabaは販促目的でグローバルインフルエンサーをハント中 (未訳記事)

インフルエンサーはこのところ引っ張りだこだ。インフルエンサーのライブプロモーションを通じてeコマースの販売を促進しようという戦略を展開した後、Alibabaはこのモデルを中国外マーケットにも持ってくることを決めた。そうして同社の国際マーケットプレイスであるAliExpressで販売されているプロダクトの販促を手伝う最大10万人のコンテンツクリエイターを募集する案内を出した。

中国と南アジアをつなげるデータセンターをチベットに

中国が国内で最も貧しい省の1つ貴州省を、Apple中国を含む(未訳記事)多くのクラウドサービスを集めたテックハブにしたことを多くの人が知っているだろう。そして現在、中国はチベットをもう1つのクラウドコンピューティングセンターに変えている。主要プロジェクトの1つは、中国・南アジア間のデータ交換に対応する広さ64万5000平方メートルものデータ施設だ。

中国国内での動き

OSとしてのDingtalk

今週開かれた年次サミットで、Alibaba CloudはSlackに酷似のAlibabaの作業コラボアプリDingtalkにクラウドを搭載するための最新戦略を繰り返した。スローガンから察せられるAlibabaがDingtalkに期待している戦略的役割は、Alibaba Cloud上でのOS構築だ。Alibaba CloudはAmazon(アマゾン)とMicrosoft(マイクロソフト)に続いて世界で3番目に大きいサービスとしてのインフラだ(Alibaba Cloudリリース)。Microsoft 365とAzureのような互いを反映し合う関係だ、とAlibaba Cloudの社長であるZhang Jianfeng(張建峰)氏は以前インタビューで述べた。

しかし当初法人向けだったDingtalkは仕事や教育、政府サービス向けに作られた数多くのサードパーティのオールインワンプラットフォームに発展した。例えば、文部科学省はDingtalkを通じて簡単に生徒や保護者にアンケートをとることができる。Dingtalkはいまや1500万もの組織と個人ユーザー3億人にサービスを提供している。

Dingtalkの統合に加え、Alibaba Cloudはネットワークやデータベース、人工知能などの分野で成長するために、今会計年度にエンジニア5000人を採用すると話した。

この新規採用は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックを事業者が受け入れるにつれビデオ会議やライブストリーミングのようなサービスに対する需要が増大するなかで、データインフラをさらに構築するために今後3年間で2000億元(約3兆円)を注入するとAlibabaが2020年4月に明らかにした後に発表された。

Appleがポッドキャストアプリを削除

ポッドキャストが中国で普及する中で、独立したコンテンツクリエイターに人気の海外ポッドキャストアプリがAppleのApp Storeから削除された。2019年6月頃に、Appleポッドキャストプラットフォームで中国語のポッドキャストを対象に実施された取り締まりを反映している。

投資家のお気に入りアプリが復活

アプリの削除といえば、今週、中国の多くのベンチャーキャピタリストやプロダクトマネジャーがJike (即刻)の復活を祝った。中国のテック関係者の間で愛用者が多いソーシャルメディアのJikeは1年ほど前にアプリストアから姿を消した。はっきりとした理由は示されなかったが、多くの人が検閲によるものと推測している。

JikeはReddit(レディット)とTwitter(ツイッター)を掛け合わせたようなアプリで、ユーザーは関心や話題性に基づいてコンテンツを発見したり、コネクトしたりできる。多くのVCやインターネット企業の従業員がゴシップを交換したり、ホットな話題を共有したりするのに使っている。このアプリの死活は中国で操業しているテック企業が直面している厳しい監視の不確実さを思わせるものだ。

香港上場の動き

中国と米国の政府が論争を繰り広げる中、米国に上場している最大の中国企業の2社が、香港で二次上場した。Tencent(テンセント)に次ぐ世界第2位のゲーム企業NetEase(ネットイーズ)は上場初日、公募価格から6%増の130ドル(約1万3960円)をつけた(South China Morning Post記事)。Alibabaの最大のライバルであるJD.comは公募価格を1株あたり226ドル(約2万4270円)にしたようだ。

半導体メーカーEswinが2.8億ドル(約305億円)を調達

中国の大手ディスプレイテック企業BOE Technologyのトップが創業した半導体企業Eswin(エスウィン)は、中国政府がチップ国内生産を推奨する中、かなりの額の資金を調達した。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

検閲により中国のApple App Storeから2つのポッドキャストアプリが消える

毎年6月前になると、中国政府が天安門事件を記念する動きにつながる情報へのアクセスを取り締まるため、中国のコンテンツやメディアのプラットフォームは新な検閲を懸念する。

2020年、中国のユーザーは2つのポッドキャストアプリが使えなくなった。Pocket CastsとCastro Podcastsだ。この記事執筆時点で、Apple(アップル)の中国App Storeで検索してもどちらも出てこない。

2018年に米国の大衆ラジオ企業グループに買収されたPocket Casts(未訳記事)は、中国のインターネット監視当局である「国家インターネット情報弁公室(CAC)からの要求に基づき、アップルが中国App Storeから削除した」とツイート(未訳記事)した。

Pocket Castsが説明を求めると、アップルのアプリレビューチームはCACに直接連絡するよう案内した。TechCrunchが確認したメールにそう書かれていた。

「我々にはアプリ削除を阻止する手立てはなく、唯一の解決策はアプリの復活だが、詳細を求めてCACにコンタクトを取るつもりだ。問題視され、そして中国App Storeから完全に削除されるまでの間、ほとんど警告が与えられていないというのは問題だ」とPocket Castsの広報担当はTechCrunchに語った。「我々に削除させたかったものは特定のポッドキャストと、我々が投稿した一部のBlack Lives Matterコンテンツかもしれないと想像している」。

2018年にDribbble(未訳記事)のオーナーTinyに買収されたCastro Podcasts(9to5Mac記事)は、中国での削除について説明はないが、「抗議者のサポート」が削除につながったのかもしれない、とツイートで述べた。

アップルにコメントを求めようとしたが、すぐには連絡がつかなかった。

2つのポッドキャストアプリの削除は、2019年のこの時期にあったアップルによる中国語ポッドキャスト締め付け(未訳記事)を思い出させる。中国の独立した多くのポッドキャストクリエイターにとって、表現の自由の終焉の始まりだった。国内のポッドキャストプラットフォームが自己検閲するという政府のルールに則っている一方で、Apple Podcastのような中国外のプラットフォームには締め付けがある。

サービスを主催するというより、RSSフィードとして機能するアップルのアプリは、オーディオコンテンツに対しどちらかというとハンズオフアプローチを取っている(未訳記事)ために当局をイラつかせてきた。公開するためにコンテンツすべてをチェックしている中国における同様のサービスとは対照的な点だ。アップルはコンテンツを配信するだけだが、中国のポッドキャスト企業であるJustPodのブログ投稿にあるように、アップルが競合する中国企業は、同国の規制と何年もの商業開発の結果、コンテンツホストとコンテンツ配信、ユーザーリスニングを組み合わせている。

中国では、海外のポッドキャストのほとんどがアップルで利用できない。コンテンツを精査する政府認証のホスティングパートナーを欠いた中国番組をアップルが淘汰し始めたとき、多くの人が法を遵守する動きと見せかけている検閲をアップルが肯定したととらえた。

同社の株主たちは抗議し、同社が検閲に関する中国政府の要求にいかに対応しているか、より透明性を確保しなければならないという提案(Appleリリース)に40%が賛同した(Financial Time記事)。

Pocket CastsとCastro Podcastsは検閲がなく、2019年の粛清以来、多くの中国のポッドキャストクリエイターが利用してきた。Pocket Castsは、中国が世界で7番目の急成長中のマーケットになっていると述べた。しかしこれらの選択肢はもうない。

最近の動きは、アップルがマーケットに残るために中国政府の圧力に屈しつつあるのかもしれない、ということをうかがわせる。2020年2月に同社は大ヒットとなったシミュレーションゲームのPlagueを削除した。「CACが定めた中国では違法となるコンテンツ」が含まれていた、とされた。また2017年にアップルは、中国本土のユーザーがウェブサイトにアクセスするのに使う何百ものVPN(仮想プライベートネットワーク)を削除した際(未訳記事)にかなりの議論を巻き起こした。

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(翻訳:Mizoguchi

グーグルがインドで人気の「Remove China Apps」をPlay Storeから取り去る

Remove China Appsは、ここ数週間でインドの人気アプリになった。しかし、その名のとおりのことをするこのアプリがGoogle Play Storeから取り去られた。

このインドで人気上位のアプリは5月の終わりごろから現在まで500万回以上もダウンロードされ、中国の企業が開発したアプリを容易に見つけて消せるが、Google Play StoreのDeceptive Behaviour Policy(虚偽の振る舞いに関するポリシー)に違反しているとして、このほどAndroidのメインのアプリストアから取り去られたようだ。

このポリシーでは、Google Play Store上のアプリは、ユーザーの事前の知識と同意なくユーザーのデバイスの設定やアプリの外部の機能を変えてはならない。またサードパーティアプリの削除や無効化をユーザーにそそのかしてはならない。

インド人の反中国感情は、最近のヒマラヤ方面の国境紛争を契機として肥大している。そこでインドのOneTouch AppLabsが開発したこのアプリがインドで人気になった。なにしろ両国は人口が世界で1位と2位なのでアプリの市場としても大きい。

インドのセレブたちの一部は最近、中国製のアプリを削除することを肯定している。ヨガのグルであるBaba Ramdev(ババ・ラムデフ)氏は週末のビデオによるツイートで、中国起源のアプリ数本を自分が削除するところを見せた。

自分のスマートフォンからTikTokを削除したインドの俳優のツイートに応えて与党BJP(インド人民党)のスポークスパーソンのNupur Sharma(ヌプール・シャルマ)氏は、「問題に関心のある一般市民が自ら模範を示したことを見るのはすばらしい。被害の大きいアプリは削除して当然である」と述べた。

中国の国営紙のGlobal Timesは米国時間6月2日に、業界のソースを引用しながら「インド政府が不合理な対中感情の継続を許すならば、両国関係が北京からの報復の連鎖を惹き起こす危機に陥るだろう」と報じた。

同紙の記事は「中国の一部のユーザーはRemove China Appsを笑いものにしており、インド人に自分のスマートフォンを捨てるように勧めている」と報じている。インドのスマートフォン市場では中国製が支配的であることを、当てこすっているのだ。

インドからのこのような対中感情が今後も持続するなら、インドを最大の海外市場としている中国のByteDanceやUC Browserにとって都合の悪いことになるだろう。数週間前にインドのコンテンツモデレーション努力に対して苦情を表明したTikTokは、週末にまた新たな議論を巻き起こした。人気クリエイターの1人が「TikTokにポストしたビデオが中国企業であるTikTokによって取り去られた」と主張したからだ。

「そのビデオは中国政府を批判している」と彼女。TikTokのスポークスパーソンはTechCrunch宛ての声明で「当プラットホームはユーザーと見解の多様性を歓迎する、レビュープロセスをより厳格化し、そのビデオを復帰した」と述べた。

4月にインドは海外直接投資のポリシーを修正し、世界で2番目に大きいインドのインターネット企業に投資しようとする中国の投資家に対し、従来よりも厳しい審査を行うとした。インド政府は他の近隣諸国からの投資に対しても同様の立場を取っており、「この措置が導入されたのはグローバルなパンデミックで苦しんでいるインド企業に対する『弱みに取り入るような企業買収』を抑止するためだ」と説明している。

インドのモディ首相は海外製品の排除と国産愛用運動の振興に非常に熱心であり「インドを自立的な国にして経済を活性化するためにも13億人のインド国民は国内製品に目を向けるべきである」と主張している。インドの内務大臣でモディ首相の親友の1人であるAmit Shah(アミット・シャー)氏は今週初めに、この国の強みは13億人の市民であり、彼らが「外国製品を買わないと決心すればインド経済は飛躍的に好転する」と述べた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

中華アプリを検出する「Remove China Apps」がインドで大流行、Androidツールアプリ部門で第5位に

アプリの名前がすべてを物語っている「Remove China Apps」(中国アプリを削除)。

インドのスタートアップを自称するOneTouch AppLabsが開発したこのアプリは、5月に公開されて以来10日間で100万回のダウンロードを超えた。突然の成功はヒマラヤ山脈の国境を巡る激化する中国とインドの抗争が背景にある。

アプリのインストール先はほとんどがインド国内だが、アプリ調査会社のApp Annieの分析データによると、ここ数日オーストラリアでも勢いを増していてAndroidのツールアプリ部門で第5位に上昇した。

使い方は単純で「scan」をタップすると、中国アプリがなければ祝福メッセージが、TikTokなどの中国由来アプリがあれば、それらのアプリのリストが表示される。

インドは中国テック企業の海外進出先として世界のトップクラスにある。Xiaomi(シャオミ)とOppo(オッポ)は一時期当地の携帯電話市場を支配(Counterpoint記事)していたし、インドの有力Androidアプリのかなりの数を中国企業が開発したことは、TechCrunchのJon Russell(ジョン・ラッセル)が強調していた。しかしムードは一気に反中国に変わりつつあり、政府はスタートアップに対して中国投資家を通じて調達した資金は厳しい監視を受けると伝えた。

Google PlayでのRemove China Appsの評価は、約18万件のレビューで星5つ中の4.9と満点に近い。アプリの出自は市場調査に基づいて決めることができると開発元は述べているが、結果の正確性は保証していない。印のついたアプリを削除するかどうかはユーザーの判断に任されており、非商業的利用のためのサービスだと説明している。

急激な人気の一方、アプリの背景は謎めいている。会社のウェブサイトはWord Pressベースのシンプルなもので、Remove China Appsは同社初の製品とのこと。これは「モバイルおよびウェブアプリケーションのデザイン、開発、管理で8年以上の経験をもつ」としている壮大な宣言と比べてずいぶんと迫力にかける実績だ。

開発者が何をもって「中国アプリ」とするかの定義もはっきりしない。例えば、国外の中国人が開発したアプリは警報を発するのか?中国企業の海外で完全現地化している子会社は?ユーザーが試したところ米国のビデオ会議の巨人であるZoomに印をつけた。創業者のEric Yuan(エリック・ヤン)氏が中国生まれの米国市民であるという事実によって、Zoomが「中国アプリ」になったのだろうか?一方で、スマートフォンに標準搭載されている中国アプリのように明らかな標的を見つけ損なっている。

本稿執筆時点で「中国アプリ」を見つける手法に関して会社から返答はない。ただし、ユーザーからどんな情報を収集しているかは、端末の機種、言語設定、製造元、アプリのバージョンやパッケージ名などオンラインで公表している。

アプリは国際市場をターゲットにしている中国の開発者の間で白熱した論争を呼んだ。Baising誌や中国のアプリ輸出業者の人気オンラインコミュニティーであるBeluga Whaleは、Remove China Appsは「一種の市場破壊」であると報じ(白鲸出海記事)、中国の開発者はこのアプリをGoogleに通報するよう呼びかけている。

海外で高まる反中国感情を心配する向きは多い。あるアプリ輸出業者の創業者は私に「インドで起きていることは将来他の国でも起きると思っているので、これは中国デベロッパーを評価する際考慮に入れるべき長期的な影響因子だ」と語った。

中国デベロッパーには安心材料もありそうだ。検出アプリのユーザーたちはその使命を称賛しながらも、特定の中国アプリに代わるアプリがないことに対する不満は少ない。ちなみに、ユーザーの間で代わりとして推奨されているインド原産のトップ企業にJio Platformsがある。豊富な資金をもつRelianceの子会社(未訳記事)でさまざまなモバイルアプリを運用している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

カナダ裁判所はファーウェイCFOの米国への引き渡し審理の継続を決定

5月27日、カナダのブリティッシュコロンビア州最高裁判所は世界的に注目を集めていた事案に関して決定を下した。中国最大の電子機器メーカー、Huawei Technologies(ファーウェイ・テクノロジーズ)のCFO(最高財務責任者)である孟晩舟(モウ・バンシュウ)氏に対する米国の身柄引渡し要請に対し、「米国、カナダ両国で罪に相当する容疑」と認定した。これにより裁判所は引き渡しの可否をめぐる実体審理に入る。米国はこれまでにも繰り返しファーウェイに対して厳しい措置を取っている。

この決定(ブリティッシュコロンビア州最高裁判所へのリンク)裁判所は「双罰性」を認定し、引渡しに関する審理は続行されることとなった。ファーウェイ側は引き渡し要請自体が不適法なものとし審理を打ち切らせ、孟氏を中国に取り戻そうと努力してきたため、この決定は大きな打撃だ。

ファーウェイと孟氏を巡って長く続いてきたドラマにおいてこれは決定的な意味を持つ。孟氏はは米捜査当局の要請により、2018年12月1日にバンクーバー国際空港で逮捕された(CBC記事)。引き渡し要請の根拠はファーウェイ自体の詐欺容疑(米司法省のプレスリリース)だった。

米司法省はファーウェイに対する捜査(ロイター記事)の結果、同社が香港拠点のSkycom Tech(スカイコム・テック)をはじめとする多数の企業を支配下においていたことが発見されたとしている。Skycomは米国のテクノロジーを利用した通信機器をイランに販売(ロイター記事)し、経済制裁に違反したという。これに対しファーウェイが制裁違反企業を支配していたことを否定したことが詐欺を構成すると米捜査当局は考えている。

カナダの裁判所が審理を続ける間、孟氏は保釈され、ほぼ1年半にわたってバンクーバーで居宅に拘禁されている。この事件は米国と中国の貿易戦争の激化の象徴となっていた。

カナダの司法体系では国外への身柄引き渡しには「双罰性」を必要とする。つまりカナダと引き渡しを求める国の双方で可罰的行為でなければならない。裁判所は通常の事件では引き渡しの可否を一括審理するが、ブリティッシュ・コロンビア州最高裁副長官のヘザー・ホームズ判事は審理を分割することを決定した。1月の審問は「双罰性」を満たすものであるかに限って行われた。もし双罰性が認められなければ、米国の身柄引き渡し要請は直ちに退けられることになっただろう。

1月20日 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー:裁判所を出て昼食に向かう.孟晩舟ファーウェイCFO(撮影 Jeff Vinnick/Getty Images)

孟氏はファーウェイの創業でCEO(最高経営責任者)の任正飛(ジン・セイヒ)氏の娘だが、今回の決定はファーウェイがここ数カ月で直面しているさまざまな問題の1つに過ぎない。

西欧でのビジネスにも新たな打撃があった。英国は熱心な支持者ではないまでも、次世代の5Gネットワーク構築でファーウェイの機器を使用することを以前から決めていた。ところが先週、英国はこの決定を取り消すことを発表した。また現在使用中のファーウェイのネットワーク機器も数年かけて除々に退役させるという。

一方、米国では、トランプ政権が中国との貿易関係における力関係を逆転させるため、ファーウェイをテコとして利用しようと考えている。2週間前にトランプ政権はファーウェイに対する技術輸出規制を延長した。これにより同社のICチップやスマートフォンの生産能力が脅かされている。世界最大の半導体受託製造工場である台湾拠点のTSMCはこの規制措置にともないファーウェイから新規の受注を停止したと述べた。同時にTSMCは米政府の支援を受けて120億ドル(1.3兆円)を投じてアリゾナに巨大な半導体製造工場を建設する計画を発表している。

トランプ政権はファーウェイとの経済的な戦いを政策の優先事項としているが、その戦略は政府全体には支持されておらず、国防総省などの省庁は、輸出ライセンスの制限が最終的に米国の産業競争力に悪影響を及ぼすことを懸念している。

実際に、ファーウェイが米国との関係が続いていることを考えると、米国の輸出規制を回避し、その制約から抜け出して、完全に中国国内の部品を使用して機器を製造することが、同社自身の最も重要な使命の1つだろう。これを支援しているのが中国政府であり、中国政府は国内のチップ製造能力を強化するために数十億ドルの資金を新たに投入している。

これは複雑な状況で、欧米の政策立案者が統一的なアプローチを採るのに苦労している。数週間前にTechCrunchライターのScott Bade(スコット・ベイド)が指摘(未訳記事)したように、オーストラリア、英国、米国などは、ファーウェイと中国の技術進出全般について合意に達するのに苦労している。各国が独自の視点と中国本土との関わり方のレベルの違いからこの問題に取り組んでいるのだ。

孟事件は、現在進行中の中国の戦いにおける最新の一撃に過ぎないが、今後はさらなる小競り合いが予想される。

画像:Bloomberg /Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook