「量子アニーリング」で計算困難な産業課題の最適化を図るJijが2億円を調達、目指すは世界の最適化

AIスタートアップのJijは8月27日、約2億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先はリード投資家を務めたANRIとDEEPCORE、みらい創造機構の3社。

Jijはイジングマシンや量子アニーリングをはじめとした最先端のハードウェア・研究手法を研究しているAIスタートアップ。従来の計算手法では計算困難な​産業課題の解決を図る技術開発を進めている。今回調達した資金は、企業向け最適化クラウド「Jij-Cloud」の開発強化、スマートシティの実現に求められる最適オペレーション計算のための新たなプラットフォームを構築の構築に投下するという。

まずは、おそらく多く読者が聞き慣れない「イジングマシン」「量子アニーリング」について簡単に説明しておこう。イジングマシンとは、質、量ともに膨大となった予想データや制約条件の中でに最適な判断を下す計算を実現するため、量子技術をベースにした計算手法のこと。量子アニーリングとは、その骨子となる、量子力学を使用した組合せ最適化向けのアルゴリズムを指す。と説明しても難解なのだが、同社は量子力学を活用して、これまではかなりの時間がかかったり、答えが出せなかった問題を解決するための技術を擁しているスタートアップだ。

同社はこれらの技術を使い、人の行動パターンの予測し、そこから生まれるであろう移動ニーズやエネルギー需給変動に対する新たなサービスなどを、従来以上に最適化することを狙っている。

Jij-Cloudは、事業会社向けのミドルウェアで、イジングマシンや量子アルゴリズムの専門知識を必要とせずに、簡単に最先端の量子最適化技術を扱えることを可能にする。2019年より一部アルゴリズムのライブラリは「Open Jij」としてオープンソースで公開している。また各種イジングマシンに対応するべく、NEC、日立、D-Wave、マイクロソフトなどとも提携を進めている。2020年5月当時、Jij はマイクロソフト開発のAzure QIOの利用を日本で唯一許諾された実績もある。

写真に向かって上段左から2人目がJijiの代表取締役社長を務める山城 悠氏、3人目がCTOの西村光嗣氏

このほか、各事業会社に対してコンサルティングや共同研究も進めている。例えば、ネットワークの安定化、電気ガスの供給安定化、生命保険のポートフォリオ最適化などの領域で同社の技術が使われているそうだ。直近では、豊田通商と「交通信号制御の最適化」をテーマとした共同研究も発表、信号機の点滅スケジュール制御によって自動車の待ち時間を20%削減 する試算を発表(Qmedia記事)した。

米政府がAIと量子コンピューティングに1000億円超の投資を発表

ホワイトハウスは、これまでの公約をさらに発展させ、テクノロジーの最も有望な分野であるAIと量子コンピューティングに10億ドル約(1060億円)の投資を行うことを発表した。

昨年トランプ政権は、AIに関する大統領令を出し、この分野での米国の優位性をさらに強化する計画を宣言した。当時は具体的な支援額などをは明らかにされてなかったが、今年2月にトランプ政権は2022年までに20億ドル(2120億円)以上を非防衛AIと量子研究に投資するよう求めていた

トランプ政権の新しい取り組みは、連邦政府機関と連携した一連の学術・民間部門の研究開発ハブに資金を提供し、基礎的な問題に取り組み、量子コンピューティング、機械学習、コンピュータビジョンなどに分野にまたがって「変革的な進歩を追求する」としている。

大統領補佐官での米国の最高技術責任者(CTO)を務めるMichael Kratsios(マイケル・クラツィオス)氏は声明で「これらの研究機関を米国のイノベーションを加速し、21世紀の米国の労働力を構築するための世界クラスのハブ」と呼んでいる。

米国農務省(USDA)と提携している2つの研究機関を含む全米科学財団(NSF)傘下の5つのAI研究機関には、それぞれ2000万ドル(約21億円)が支給される。またAIセンターが新設され、コロラド大学、テキサス大学、オクラホマ大学、マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア大学デービス校、イリノイ大学の2つの異なるチームの既存の学術研究グループと連携する。

量子情報科学を専門とする5つの新しいエネルギー省関連センターは、5年間で新たに6億2500万ドル(約664億円)の資金提供を受ける。

米政府の今回の取り組みについて電話取材で米科学次官補のPaul Dabbar(ポール・ダバー)氏は「量子科学は米国の国益にとってAIよりもさらにインパクトのあるものであると証明できる可能性がある」と語り、「我々は、アポロ計画やヒトゲノム計画と同じくらいの成功を収めることができると確信している」と続ける。

DOE(米エネルギー省)の新しい量子センターは、ブルックヘブン、アルゴンヌ、フェルミ、ローレンス・バークレー、オークリッジの国立研究所に設置される。ダバー氏によると、DOEが割り当てた6億2500万ドルは民間企業の技術リーダーからの関心も集めているとのこと。パートナーの中には、マイクロソフトやインテルも含まれており、新しい研究所の設立を支援するためにスタッフと設備を提供しているとのことだ。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

機械学習のモデルの履歴を辿れて最新データで実動試験もできるVertaが10億円を調達

Vertaの創業者でCEOのManasi Vartak(マナシ・バルタク)氏は、MITの大学院在籍時に、機械学習のモデルのバージョン履歴を追跡するオープンソースのデータベースプロジェクトであるModelDBを構想した。卒業後、彼女はそのビジョンをさらに拡張して、モデルのバージョンを追うだけでなく、それらを実際に使用できる方法を提供したいと考え、Vertaが誕生する。

米国時間8月25日、Vertaはステルスを脱し、Intel Capitalが率いるシリーズAのラウンドで1000万ドル(約10億6000万円)を調達した。参加したGeneral Catalystは、同社の170万ドル(約1億8000万円)のシードラウンドをリードしている。

バルタク氏はModelDBでモデルのバージョン履歴を提供するだけでなく、多くの企業にとって難しいことだった、データサイエンティストたちがこれらのモデルをプロダクション(本番使用)へデプロイするためのプラットフォームを作りたかった。さらに彼女はプロダクションであるからには、対象データが過去のものでなく、現在のデータを正確に反映していることも望んだ。

「Vertaはモデルが今でも有効か調べることができ、モデルのパフォーマンスが急に変化したら警告を出す」と同社は説明している。

画像クレジット:Verta

バルタク氏によると、オープンソースのプロジェクトにしたため、会社を早期に投資家たちに売り込むことができ、多くの顧客を惹きつけるという期待感を彼らに持たせることができたという。「シードラウンドも、私が単独かつ初めて起業し、しかも学校を出たばかりの創業者として調達した。これは一般的な資金調達とはまったく違っていたが、それに関してもオープンソースのプロジェクトであることが有利に働いた」と彼女は語る。

確かに、今回のリード投資家であるIntel Capitalの副社長で専務取締役のMark Rostick(マーク・ロスティック)氏は、Vertaが機械学習のモデル制作における基本的な問題を解こうとしていることを理解していた。「Vertaは、企業がAIを採用するときに直面する重要な問題の1つに取り組んでいる。その問題とは、データサイエンティストとデベロッパーの間にあるギャップを橋渡しして、機械学習のモデルのデプロイメントを加速することだ」とロスティック氏はいう。

バルタク氏は、現在の初期的段階で何社の顧客がいるかなどについて語ろうとしなかったが、このプラットフォームを利用している企業はモデルのプロダクションへの移行をかなり速く行えると述べた。

現在、同社社員は9名だが、この早い段階から彼女はダイバーシティに真剣に取り組んでいる。社員構成はインド人4名、白人3名、ラテンアメリカ系1名、アジア系1名だ。すでにかなり多様である。今後、会社が成長していくときも、このような多様性を維持したいと彼女はいう。2020年はさらに15名を採用し、2021年は倍増を予定している。

バルタク氏は、ジェンダーに関しても半々であることを望んでいる。MITの学生時代は、さまざまなプロジェクトでそれを達成できたため、自分の会社でもそうしたいという。雇用の多様化のために、サードパーティであるSweat Equity Venturesの協力を求めている。

彼女によるとプラットフォームの構築は一気にではなく、いろんな機能を実験しながら段階的にやりたい、小さなチームのときからそうしたいという。現時点では、そんなやり方のためにさまざまな既存の機械学習ツールとの相互運用性を試している。例えばオープンソースの機械学習パイプラインツールであるAmazon SageMakerやKubeflowなどだ。

「顧客の成熟度のレベルに合った仕事をすることが重要だ。そこで最近の2つの四半期では、相互運用性のあるシステムの構築に力を入れてきた。それにより、まるでLogoのブロックのようにコンポーネントを選んで拾い上げ、エンドツーエンドまでシームレスに動くシステムを作れる」とバルタク氏は語った。

画像クレジット: Verta

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

不動産テックサービス開発・運営のエステートテクノロジーズが1.5億円を調達

不動産テックサービス開発・運営のエステートテクノロジーズが1.5億円を調達

不動産テックサービス開発・運営のエステートテクノロジーズは8月25日、1.5億円の資金調達を完了したと発表した。引受先は伊藤忠テクノロジーベンチャーズ。

調達した資金は、価格に加えて暮らしの情報、リスクの情報など、より網羅的で複層的な視点から不動産の「価値」を自動算定する仕組みに活用。また、伊藤忠テクノロジーベンチャーズはハンズオンで経営や事業開発を支援し、今後伊藤忠グループの持つリソースも活用しながら業容拡大に向け協力する。

両社の協力体制のもと、不動産業界における透明・公平な取引環境を実現し、不動産取引の「ニューノーマル」を創造するとしている。

2019年3月設立のエステートテクノロジーズは、AIにより解析された1000万件以上の不動産ビッグデータを基に、不動産の価格・暮らし・リスク情報を可視化し、消費者に無償提供するサービスを開発。

データジャケット手法という独自のAIビッグデータ解析支援技術などを用い、不動産取引にまつわる情報の透明化と公平化を実現している。

消費者ニーズを満たす物件を365日24時間自動で探索し提案するサービス「Dr. Asset レコメンダー」を第1弾とし、完全非営業・非対面で、マーケットに照らした精緻な取引価格を見立てることが可能なAI価格査定サービス「Dr. Asset チェッカー」を今春ローンチした。

また、法人向けデータ提供サービス「Dr. Asset データバンク」、不動産仕入れ業者向けサービス「Dr. Asset バイヤー」、金融商品特化型サービス「Dr. Asset ファイナンス」などラインナップを拡充していくという。

日本ディープラーニング協会が高専生対象コンテスト開催、最優秀賞の東京高専チームが企業評価額5億円を獲得

日本ディープラーニング協会が高専生対象「ディープラーニングコンテスト」開催、最優秀賞の東京高専が企業評価額5億円を獲得

東京大学大学院工学系研究科 松尾豊教授が理事長を務める日本ディープラーニング協会(JDLA)は8月24日、「第1回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2020」(DCON2020)本戦を8月22日に開催したと発表した。最優秀賞を「東京工業高等専門学校 プロコンゼミ点字研究会」が獲得した。同校は企業評価額5億円、投資総額1億円という評価を受け、副賞の起業資金100万円と日本ディープラーニング協会若手奨励賞も同時に授与された。本戦の模様は、NHK教育テレビジョン(NHK E)の番組「サイエンスZERO」において、9月6日23:30と9月13日23:30の2回にわたり放送される予定。

日本ディープラーニング協会が高専生対象「ディープラーニングコンテスト」開催、最優秀賞の東京高専が企業評価額5億円を獲得

JDLAは、ディープラーニングを事業の核とする企業が中心となり、ディープラーニング技術を日本の産業競争力につなげるという意図のもと設立。

DCON2020は、高専生が日頃培った「ものづくりの技術」と「ディープラーニング」を活用した作品を制作し、その作品によって生み出される「事業性」を企業評価額で競うコンテスト。審査では、実際にスタートアップ企業の評価時と同じ基準で評価を行い、技術価値を企業評価額と投資金額でジャッジする点が、他のコンテストと違うDCONの大きな意義という。新たなビジネスにどの程度の価値があるのかを、売上や利益に加えて、事業の意義・市場の大きさ・経営者とメンバーの資質などから判断する。

最優秀賞は「東京工業高等専門学校 プロコンゼミ点字研究会」の「:::doc」(てんどっく)が獲得。印刷された文字と点字の相互自動翻訳を視覚障がい者自身で行えるシステムで、テクノロジーを使って情報アクセス不平等をなくす、社会的意義の高い取り組みが評価された。

日本ディープラーニング協会が高専生対象「ディープラーニングコンテスト」開催、最優秀賞の東京高専が企業評価額5億円を獲得

また最優秀賞のほか、各協賛企業が表彰する企業賞が授与された。

日本ディープラーニング協会が高専生対象「ディープラーニングコンテスト」開催、最優秀賞の東京高専が企業評価額5億円を獲得

JDLAおよびDCON実行委員会は、今後もDCONの継続的な開催によりディープラーニングの産業活用を促進する若手人材の輩出を目指し、引き続き同コンテストを運営。「DCON2021」開催が決定済みで、エントリー締め切りを10月30日までとして、受付開始を開始している。

例年DCONでは、課題解決策を事業案として提出する一次審査、プロトタイプを制作し技術面での実現性を審査する二次審査を経て、本選出場チームが決定される。本選出場チームは、高専出身者を含む事業経験豊富な起業家有志が各1名ずつメンターとして参画。開発作品の「事業性」を磨き、本選審査員のベンチャーキャピタリスト陣から企業評価額を勝ち取るためのプレゼンテーションを行う。

最優秀賞(1チーム)には、賞状、副賞の企業資金100万円を授与。また日本ディープラーニング協会若手奨励賞(1チーム)が用意されているほか、優秀賞なども表彰予定。

パンデミックで生じたサプライチェーンの混乱にインテリジェンスを持ち込むCraftが10.6億円を調達

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで、サプライチェーンににわかに日が当たった。それは、誰も想像しなかったことだ。防護着や人工呼吸器、それに食料のようなありふれた物でさえ奪い合いになり、未だに大きな問題になっている。しかし、おそらくもうすぐ「サプライチェーンソフトウェア」という言葉に新しい意味が与えられるだろう。多くのプラットフォームが「空の状態」で立ち上がり、クライアントが自分のデータで満たすのを待つ。そんなユーザーインタフェイスは時代遅れになるだろうが、マニュアルの参照や手作業で苦労する部分はなくならない。そこで、そんな状態と戦おうとするスタートアップが現在、投資家たちの注目を集めている。

米国時間8月21日、エンタープライズインテリジェンスのCraftが「サプライチェーンインテリジェンスプラットフォーム」の構築のため、シリーズAで1000万ドル(約10億6000万円)を調達したことを発表した。同社はその資金でサンフランシスコとロンドン、ベラルーシの首都であるミンスクのオフィスを拡張し、北米とヨーロッパではエンジニア、営業、マーケティング、オペレーションもすべてリモート化する。

この分野にはDun & BradstreetやBureau van Dijk、Thomson Reutersといった先行する大手企業が存在している。以前より彼らは、公開企業に関する財務データを主に提供しているが、データソースからのリアルタイムのデータ、生産や販売の現状データや人的資本、リスクの予想値などは得意でない。

Craftの考え方は、企業が自らのサプライチェーンとエンタープライズシステムをモニターし、最適化できるようにすることだ。今回の資金調達はHigh Alpha Capitalがリードし、Greycroftが協力した。その他の気前の良いエンジェル投資家はDeloitte Consultingの元CEOであるSam Palmisano(サム・パルミサーノ)氏、Oktaの執行副会長で共同創業者であるFrederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)氏、そしてシードラウンドを担当したUncork Capitalなどだ。High AlphaのパートナーであるKristian Andersen(クリスチャン・アンデルセン)氏が、Craftの取締役会に加わる。

Craftが解決する問題は、複雑なグローバルサプライチェーンの可視性の欠如だ。当然ながら新型コロナウイルスはグローバルなサプライチェーンを混乱させ、多くのリスク、業界全体の構造的な弱点、そしれそれらがどのように関係しているのかということに対するインテリジェンスの欠如を明らかにする傾向があった。Craftのソリューションは、既存のエンタープライズワークフローに統合する独自のデータプラットフォームとAPI、ポータルだ。

ビジネスインテリジェンのプロダクトにはクライアントが自らのデータを用意しなければならないものが多いが、Craftのデータプラットフォームは機械学習と人による検証で更新される300以上のデータポイントなど、何千もの金融および代替ソースからのデータで事前に用意されている。公開された企業プロファイルは、5000万件の検索結果に表示されている。

Craftの共同創業者でCEOのIlya Levtov(イリヤ・レフトフ)氏は声明で「私たちは、エンタープライズのサプライチェーンに強力な追跡機能と可視性を導入することにフォーカスしている。私たちの究極のビジョンは、エンタープライズのテクノロジースタックにインテリジェンスのレイヤーを築くことだ」と述べている。

High Alphaのパートナーであるクリスチャン・アンデルセン氏は「エンタープライズソフトウェアの中で十分な投資がされておらず、サプライチェーンの管理に関する分野のイノベーションが遅れている」という。

Craftは2020年前半に売上が3倍近くにまで成長したと報告している。主な顧客はFortune 100社や政府および軍部機関、そして多くの中小企業だ。

カテゴリー:人工知能・AI

タグ:Craft 資金調達

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

二酸化炭素排出が多い企業の排出量をAIを使い測定するCarbonChain

最後に背中を押したのはオーストラリアの山火事だった。

Adam Hearne(アダム・ハーン)氏は温室効果ガス排出量が世界で最も多いいくつかの企業で12年間働いた。まず、最大の鉱業会社の1つであるRio Tinto(リオ・ティント)。その後Amazon(アマゾン)では欧州のインバウンド配達オペレーションを指揮した。アマゾンのオペレーションでは何百万トンもの二酸化炭素を大気中に排出するが、ハーン氏はそこで物流が滞ることのないようにする役を担った。

アマゾンの事業では、2019年に5117万トンの二酸化炭素を排出された。同社のレポートによると、これは石炭火力発電所13基分に相当する。

そして、ハーン氏の母国で山火事が起こった。

2019年の山火事では、4600万エーカー(約18万6000平方キロメートル)が炎に包まれ、9000戸超の家屋が破壊された。そして400人余りが亡くなり、無数の動物も犠牲になった。絶滅の危機に陥っている生物もある。

ハーン氏は同年、ビジネススクール時代に一緒にラグビーで汗を流した古い友人であるRoheet Shah(
ロヒート・シャー)氏と、インペリアル・カレッジ・オブ・ロンドンのコンピューターサイエンスと機械学習の専門家であるYuri Oparin(ユーリ・オパリン)氏、Jeremiah Smith(エレミヤ・スミス)氏らと共にCarbonChain(カーボンチェーン)を立ち上げた。いまY Combinatorを卒業しようとしている同社は、汎用品の産業が排出するガスを正確に測定するサービスを売り込んでいる。汎用品の産業による排出ガスは世界の温室効果ガス排出量の50%を占める。

同社のサービスの登場は時宜を得ている。世界中の国々が二酸化炭素や温室効果ガスに対してこれまでよりも厳しい規制を導入しようとしている。EUは、地域のローカル経済を反映した気候変動に関する新たな規制導入に向けて緩やかに動いている。ロシアのような石油国家ですら新たな気候規制を制定しようとしている(少なくともロシアの当局者によるとそうだ)。

こうした動きで欠けているものは、企業が正確にガス排出量を追跡する手段と、排出量の相殺がどれくらいうまくいっているのかしっかりとモニターできるテクノロジーだ。

CarbonChainは温室効果ガス排出のかなりの部分を占める部門に目を向けることでこの問題に取り組む、とハーン氏はいう。

「世界は、どの企業がどれくらいのガスを排出しているのか正確に把握する必要がある」と7月のインタビューでハーン氏は述べた。

同氏によると、ガス排出の削減と規制が機能していることを確かめるために、当局は石油・ガス、そしてコモディティ、資源開発の部門をウォッチする必要がある。「そうした部門はそろって二酸化炭素をかなり排出し、ゆえにそれを数値で表す必要がある」

CarbonChainはこうした産業のサプライチェーンにおけるあらゆるアセット用モデルを構築したという。同社は重産業で使用されている各種設備のデジタルツインを作った。企業が使用している設備についての情報が得られなければ、そうした企業のための設備をつくっているエンジニアリング会社をあたる。

「明かされない数字を入手するために、我々はすぐ隣に発電所があるアルミ精錬所まで行かなければならない」とハーン氏は話した。「排出の90%は電気の使用によるものだ」。

同氏によると、CarbonChainのシステムは1杯のコーヒーやワインを生み出すためにどれくらいの二酸化炭素排出をともなうかがわかるほど正確だ(ちなみに、輸入ワインの場合2ポンド、約900グラムの二酸化炭素排出される)。

CarbonChainは、生産者や既存の炭素取引の枠組みで活動している炭素トレーダーにサービスをすでに販売している。

これまでのところ、同社は英国政府からおおよそ50万ドル(約5300万円)、そして顧客(非公表)の1社から投資を受けた。

同社のテクノロジーは、排出モニターを行っていると主張する他のどの企業よりも確固とした方法論を備えているようだ。炭素排出データを企業に提供していると称する他のスタートアップには、350万ドル(約3億7000万円)を調達したPersefoni、Y Combinato卒業生のSINAI Technologiesがある。

もしCarbonChainが本当に鉄筋1つに至るまで材料にともなうガス排出量を測定できるのなら、業界にとって重大な帰結をもたらす可能性がある。

同社はまた、機械学習を用いた膨大なデータセットの収集に基づく垂直的なソリューションを構築するかなりの業界経験で起業の潮流にうまく乗っている。

カテゴリー:人工知能・AI

タグ:CarbonChain 二酸化炭素

画像クレジット:shico3000 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

農業スタートアップのiFarmが4.2億円調達、画像認識と機械学習で約120種類の栽培を屋内垂直農園で自動化

垂直農法技術を提供するiFarmは、既存投資家であるGagarin Capitalが主導する400万ドル(約4億2300万円)のシードラウンドで資金を調達した。このラウンドのほかの投資家として、Matrix Capital、Impulse VC、IMI.VC、複数のエンジェル投資家が含まれている。

iFarmはフィンランド拠点のスタートアップで、食品加工会社や日用消費財大手、農家、大学の研究センター、さらには大規模なオフィスを運営しているためにケータリングのニーズがある大企業などをターゲットに、垂直農業を実行できるようにするソフトウェアを提供することに注力している。

同社のSaaSはサラダ菜、チェリートマト、ベリー類など、その名のとおり垂直に積み重ねて栽培された植物の管理を自動化する。「このシステムには、画像認識(コンピュータビジョン)と機械学習を適用し、農場の分散ネットワークから収集した「何千もの」植物のデータを利用して、作物のケアを監視し、自動化するためのさまざまな技術が含まれている」とiFarmは説明する。

現段階では、ヨーロッパと中東の約50件のプロジェクトに技術を提供しており、合計1万1000平方メートルの農場をカバーしている。iFarmのプラットフォームは現在、約120種類の植物の世話を自動化でき、2025年までに500種類に増やすことを目標としている。同社によると、毎月10種類の新品種が追加されているとのこと。

「iFarmは3年前に3人の創業者でスタートしました。iFarmは3年前に3人の創業者でスタートしました。「目標は、私たちがすでに食べているおいしくて健康的な食品を育てるための技術を構築することです」と共同創業者でCEOのMax Chizhov(マックス・チゾフ)氏は語る。

「私たちは温室からスタートしました。最初の年はサービスの基盤となる技術を開発していました。そして1年間の実験の後、いくつかのパイロット実験を経て、現在では屋内農業の垂直農業に焦点を当てています。垂直農法とは、高度に管理された屋内環境で植物を密に積み重ね、太陽光の代わりにLED照明を使用して1年中農業を行う都市型農業の技術だ。

さらにiFarmの完全に自動化されたアプローチは、食用の野菜、ハーブ、果物、花、野菜などを栽培するために農薬を使う必要がない点もポイントだ。一方、背の高い植物や木を積み重ねて栽培することはできない。深く根を張る野菜の栽培にも適していないが、iFarmはベビーキャロットを製品ポートフォリオの中に入れている。

「私たちは収益性の高い製品に焦点を当てています」とチゾフ氏。「小さな作物、非常に成長の早い作物、灌漑が簡単で何層にも分けて栽培しやすいもの。多層栽培は屋内農園の利点です」と続ける。

画像クレジット:iFarm

現在、スーパーやその他の食品小売店に供給するなど、自分たちが育てた食用の農産物を販売することをビジネスモデルとする垂直農業の新興企業は何百社もあるが、iFarmは屋内農業の自動化をサポートする技術の開発に純粋に焦点を当てている。垂直農業の最適化技術の潜在的な顧客としては、Infarm、Bowery、Plentyなどを挙げることができるかもしれない。

同社のシステムは、20~2万平方mの垂直農園に適用でき、拡張性も備えているという。「iFarmの主な利点は、各野菜の栽培方法を熟知していることであり、栽培方法を知るための特別な技術は必要ありません。当社のアルゴリズムやデータはすべて当社のソフトウェアに基づいています」とチゾフ氏と説明し、ソフトウェアはハードウェアに依存しないことを強調した。つまり、顧客はiFarmのハードウェアキットを必ずしも使う必要はなく、そのソフトウェアをセットアップするだけいいのだ。

チゾフ氏によると同社は、肥料ユニットやLED照明などを同社が供給するだけでなく、顧客と共同開発するためのハードウェアを設計している。しかし、SaaSの使用は特定のキットに限定されないのだ。

「ソフトウェアの主な機能としては、湿度、温度、CO2などの最適化システム。そして、なぜ、どのように、いつから栽培を始めるのか、どの顧客が使うのかというビジネス面での機能です。これはCRM(顧客関係管理)に加えて、すべてのパラメータを制御するERP(企業資源計画)システムのようなものです」と説明する。

「このシステムでは、コンピュータビジョンを使用しています。栽培作物の味を向上や収穫量を上げるためにAIを活用しています。また、農場内を飛行するドローンを使用して、すべての野菜や植物を観察しています。私たちは、ソフトウェアとそのソフトウェアを利用するいくつかのハードウェアを駆使して、農場内のすべてのプロセスを最適化しています」とのこと。

チゾフ氏は今回のシード資金を、2年後の米国市場進出も視野に入れ、徐々に新しい地域へと事業を拡大していくために使う予定だ。現在の主な優先事項は、さらなるソフトウェアの改良だという。具体的には「主な目標は、新しいタイプの作物の追加です。研究、開発、新製品です」とのこと。

競争力の面でiFarmは、急成長する垂直農業部門に販売しようとしている唯一の技術プロバイダーではない。チゾフ氏によると、同様の農業技術を持つスタートアップは10~15社ほどあるという。しかし同社の技術とアプローチは、英国を拠点とするIntelligent Growth Solutions、ベルギーを拠点とするUrban Crop Solutions、スイスを拠点とするGrowcer、米国を拠点とする「コンテナファーム」プロバイダーのFreight Farms、中国を拠点とするAlesca Lifeなどの同業者のサービスに勝ると主張する。同分野の他のプレイヤーを一握り挙げることができると主張する。

「この市場には、ソリューションを提供している企業もありますが、最適化されておらず、ソフトウェアの価値も低く、製品構成や製品ラインが少ないです。iFarmとの主な違いは、栽培できる作物の種類と提供するソフトウェアです。顧客側では栽培方法を知る必要やスペシャリストになる必要はなく、ボタンを押すだけでいいのです。私たちは、設計から設置、運用、最終製品の販売支援まで、顧客に優れたサービスを提供しています」と語る。

チゾフ氏はまた、iFarmがその技術の一部を保護するために特許を申請していることにも言及した。

iFarmのシードラウンドの主な投資家であるGagarin Capitalのジェネラル・パートナーであるMikhail Taver(ミハイル・テイバー)氏は、「iFarmはこの分野での競争上の優位性を持っているという理由で際立っていた」と述べている。また、Gagarin Capitalの農業技術戦略は、屋外が主流ではなく屋内を焦点を当てており、これもまたiFarmとの相性のよさを物語っている。

「世界的な人口増加に伴い、垂直農業分野に大きな可能性があると考えています。私たちは食料の需要が増加していることを目の当たりにしているし、それは今後も続くでしょう。私たちは地球温暖化と一般的な持続可能性の問題を注視しています。iFarmはそのほとんどを解決できそうだ」とテイバー氏はTechCrunchに語った。

「私は、緑色野菜以外のものを栽培できる競合他社をあまり見たことがありません」と同氏は付け加え、iFarmの競争優位性の主張を詳しく説明した。「普通、垂直農場で栽培されたトマトや食用の花などは手に入りません。せいぜい2〜3種類の葉物が中心です」。

チゾフ氏は「競合他社の多くは、実際の農家との競争に重点を置いていますが、私たちは農家自体を強化しようとしています。彼らを市場から強制的に追い出そうとはしていません。これまでとはまったく違うアプローチで、もっとうまくいくはずです。少なくとも私はそう信じています」と締めくくった。

関連記事:野菜収穫ロボのRoot AIが7.7億円調達、新型コロナ需要により米国とカナダで配備数拡大へ

カテゴリー:人工知能・AI

タグ:iFarm AgTech 資金調達

画像クレジット:iFarm

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(翻訳:TechCrunch Japan)

自身も視覚障がいを持つ開発者がMicrosoft Seeing AIによるアクセシビリティ改善について語る

マイクロソフトのCEOを務めるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は2016年のBUILDカンファレンスでエンジニアのSaqib Shaikh(シャキブ・シェイク)氏を紹介し、彼の情熱と思いやりが「世界を変えるだろう」と述べた。

この予言は正しかった。シェイク氏はその後、目が見えないあるいは視覚障がいのあるユーザー向けのスマートフォンアプリ「Seeing AI」を共同開発し市場に送り出した。このアプリは AI の応用がアクセシビリティの改善にどれほど役立つかをよく示すケースとなっている。Seeing AIはスマートフォンカメラを利用し その場の情景を認識して描写してくれる。

例えば、人物の人数、性別、表情などを音声で告げる。また手書きのものを含め文章を撮影すると読み上げてくれる。紙幣であれば額面を対象物の色も分かる。アプリの最新バージョンではハプティック・テクノロジーを利用しておりユーザーは人物などの対象の位置を振動で知ることができる。このアプリは3年前の発表以来2000万回利用されている。現在のバージョンは日本語を含む8カ国語がサポートされている。

視覚障がい者のアクセシビリティを改善するテクノロジーをテーマとするオンライン・カンファレンス「Sight Tech Global」でシェイク氏が講演することになったのはうれしいニュースだ。シェイク氏はAIテクノロジーの急速な進歩がいか視覚障がい者の生活の質を改善しつつあるかを解説する。TechCrunchなどがメインスポンサーを務めるSight Tech Globalは、視覚障がい者を支援する活動を75年以上続けてきたVista Centerが主催する。このオンライン・カンファファレンスは最近TechCrunchで開催の詳細を発表した(未訳記事)。

シェイク氏は7歳の時に視力を失い、盲学校で学んだ。ここで視覚障がい者に「話しかける」ことができるコンピューターに魅了された。その後、英国のサセックス大学でコンピュータ科学を学んだ。シェイク氏によれば「大学卒業後常に夢見ていたのはいついかなる時でも自分の身の回りに誰がいて何が起きているのかを教えてくれるようなテクノロジーだった」という。同氏はこの夢の実現に向かって歩み続けた。

2006年にマイクロソフトに入社し、2014年と2015年の一週間に及ぶ定例ハッカソンでAIを視覚障がいのあるユーザーのためのソフトウェアの開発を試みた。その後間もなくSeeing AIは同社の公式プロジェクトとなり、 シェイク氏のフルタイムの業務となった。開発には同社のCognitive Services APIが決定的な役割を果たしたという。現在同氏は視覚障がい者のためにAIを役立てるチームのリーダーとして活動している。

シェイク氏は「AI について言えば障がいを持つユーザーは最も有望なアーリーアダプターだと思う。視覚障がい者は何年も前から本を音声録音によって利用してきた。人間の読み上げに代わるものとしてOCRやテキスト読み上げのテクノロジーなどが開発された。これらは初期のAIの応用といえる。現代ではコンピューターは高度な AI を利用して視覚的認識によって、文章化して読み上げることができる。このテクノロジーには数多くのユースケースが見出されている。しかし最も有望な分野は視覚障がい者に対して周囲の状況を認識し音声で教えるものだ。これは視覚障がい者の能力を信じがたいほどアップさせる」と説明する。下のビデオはマイクロソフトが2016年にリリースしたものでシェイク氏とSeeing AIプロジェクトをフィーチャーしている。

Seeing AI はAI テクノロジーがほとんど知性を持つように振る舞うツールを実現できるという例のパイオニアだろう。 このアプリは単に文書を読み上げるだけではなく、文章を正しく読み取れるようにするためにスマートフォンをどちらに動かせば良いかユーザーに教えてくれる。また目の前に誰かがいることを教えてくれるだけでなく(事前に名づけていれば)名前や簡単な見た目も教えてくれる。

Sight Tech Globalでシェイク氏はSeeing AIの将来に加えてクラウド・コンピューティングの発達、ネットワーク遅延の低下などによるアクセシビリティの改善、AIアルゴリズムによる高度なデータセットの利用などについてビジョンを語る予定だ。

Sight Tech Globalは、12月2日〜3日に開催される。参加は無料だが、事前登録がこちら必要だ。公式Twitterは@Globalsightとなる。カンファファレンスではスポンサーを募集中で、さまざまな支援の道がある。関心を持った企業は、運営事務局のメールにぜひ問い合わせてほしい。

画像クレジット:Saqib Shaikh

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

台湾拠点のAIエンゲージメントプラットフォーム「iKala」が約18億円調達、東南アジアへ進出

AIベースの顧客獲得・エンゲージメントプラットフォームを提供する台湾のスタートアップのiKalaは、シリーズBで1700万ドル(約18億円)を調達し、新たに東南アジア市場に進出する。このラウンドを主導したのは電子機器メーカーの子会社であるWistron Digital Technology Holding Companyで、これまでにも投資していたHotung Investment HoldingsとPacific Venture Partnersが参加した。iKalaの合計調達金額は3030万ドル(約21億1200万円)になった。

iKalaは新たに調達した資金でインドネシアとマレーシアで事業を開始する。また、すでに事業を展開しているシンガポール、タイ、香港、フィリピン、ベトナム、日本の市場を拡大する。ビッグデータ分析を提供しているWistron Digital Technology Holding Companyは戦略的投資家となり、iKalaの東南アジア進出を支援する。

iKalaのプロダクトはeコマース企業をターゲットにしており、インフルエンサーマーケティングのKOL Radarや、東南アジア市場を対象としたソーシャルコマースサービスのShoplusなどがある。

資金調達の発表の中で、iKala取締役でGoogle TaiwanのマネージングディレクターだったLee-feng Chien(リー・フェン・チェン)氏は「台湾は、この地域のハードウェアとソフトウェアの両方で最高のハイテク人材を抱えているとの評判が高い。iKalaはWistronを戦略的パートナーとして、台湾をアジアにおけるAI業界および人材のハブに変革するための主要な推進力となることができる」と述べている。

台湾のテック産業ではハードウェア、特にフォックスコンやTSMCといった半導体メーカーがよく知られているが、AIについても優れているとの評価に新しいスタートアップが一役買っている(Taiwan Business TOPICS記事)。

こうしたスタートアップには、iKalaのほか、顧客分析のAppier、エンタープライズ向け翻訳プラットフォームのWritePathなどがある。AmazonやGoogle、Microsoftといった米国のテック大手もAIに特化したR&Dセンターを台湾に開設し、台湾のエンジニアリングの人材や政府のプログラムを活用している。

画像クレジット:iKala

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(翻訳:Kaori Koyama)

AI英会話アプリとオンライン英語コーチング運営のスピークバディが総額3億円を調達

AI英会話アプリとオンライン英語コーチング運営のスピークバディが総額3億円を調達

AI英会話アプリ「スピークバディ」(iOS版Android版)の開発・運営、オンライン英語コーチング「スパルタバディ」運営のスピークバディ(旧社名: appArray)は8月20日、シリーズBラウンドの第三者割当増資として、総額3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はグローバル・ブレイン、31VENTURES Global Innovation Fund。

2013年5月設立のスピークバディは、「マルチリンガルになれる時代を創る」をミッションに掲げ、最新のAI技術を活かした言語学習サービスを開発・提供。調達した資金は、スピークバディの機能・コンテンツの拡充およい新規ユーザー獲得、スパルタバディのコーチ増員・カリキュラム改善に利用する。

スピークバディは、音声認識、会話AI、デジタル音声等の技術を活用した英会話レッスンを行えるAI英会話アプリ。2020年8月現在、累計90万ダウンロードを突破。従来の人との対話ではなく、感情豊かなAIキャラクターと対話をしながら発音やフレーズ、単語、イディオムなどを学べるという。「第二言語習得理論」に基づいた学習モードで英会話の習得をサポートするほか、機械学習や自然言語処理、ディープラーニングによって、発音を採点する。

AI英会話アプリとオンライン英語コーチング運営のスピークバディが総額3億円を調達

スパルタバディは、TOEIC900点以上の厳選された専属英語のコーチのもと、12週間、1日1時間のトレーニングメソッドで英語学習をサポートするオンライン英語コーチングサービス。コーチがユーザーのレベルにあわせてカリキュラムを作成。完全オンライン化により、忙しい方でも隙間時間を活かしながらの学習が可能。

実在する人物のAIで合成キャラクターを作る技術のHour Oneが5億3000万円を調達

上の写真に写っている人たちは実在の人物だが、本当の姿ではなく合成によって生成された画像だ。プログラムすれば、何でも話すことができる。技術系未来学者はAIを使った本物そっくりの人物画像が人間に置き換わり、マシンと人間との区別がつかなくなる危険性をずっと警告し続けてきた。実際、「ディープフェイク」関する本も新しく出版されている。

しかし、未来はHour One(アワー・ワン)の本日のニュースによってまた一歩近づいた。実際の人物をベースにAIが生成した合成キャラクターで、同社は500万ドル(約5億3000万円)のシードラウンドをクローズした。主導したのはGalaxy Interactive(同Galaxy EOS VC Fundを通じて)、Remagine VenturesKindred VenturesAmaranthineも参加)だ。

Hour Oneは、この資金を使ってAI駆動のクラウドプラットフォームを拡大し、「数千」の新キャラクターを揃え、商業活動の幅を広げる予定だ。

2019年に創設されたHour Oneは、実際の人をベースに高品質なデジタルキャラクターを生成する技術を開発した。制作会社の使用に耐えるレベルの動画用キャラクターを、大規模に費用対効果の高い形で提供するのが狙いだ。本物の人に見えるキャラクターが、どんな製品であれ話題であれ、際限なく語ることができるという点が売りになっている。

Hour Oneの創設者でCEOのOren Aharon(オーレン・アーロン)氏は、声明でこう話している。「実際の人物の合成キャラクターは、私たちの日常の一部になると私は信じています。私たちの将来展望は、Hour Oneが合成キャラクターの利用を推し進め、市場全体とさまざまな使用事例において、事業者と人々との間のコミュニケーションの質を高めることです。私たちの拡張性のあるクラウドプラットフォームを使って、すべての人が自分のキャラクターを作れるようになれば、私たちは次世代の事業者と人との遠隔対話のさまざまなソリューションを提供できるようになります」。

Hour Oneは現在、eコマース、教育、自動車、コミュニケーション、そしてさまざまな業界と協力し、2020年の間に業務向けの応用法を広げたいと考えている。

CES 2020では、「本物か合成か」というそっくりテストが行われていた。人々に本物とAIが生成した合成キャラクターとの区別が付くかどうかを試してもらう催しだ。

だが問題は、このテクノロジーを悪用されずに展開できるかどうかだ。

共同創設者でCTOのLior Hakim(リオー・ハキム)氏によれば、その問題は暗号化技術で対処されるという。キャラクターの使用と権利を保護することで、誰もが「私たちの動画であることを特定でき、改変された場合は視聴者にわかる印が表示される」とのことだ。また同社は、そのテクノロジーの使用に関する倫理規約が設けられているという。

Galaxy Interactive(ギャラクシー・インタラクティブ)の共同創設者で業務執行取締役のSam Englebardt(サム・エングルバート)氏は、このスタートアップは「合成動画制作における倫理駆動のアプローチ」が鍵であり、「生身の俳優を使った撮影が新型コロナウイルスによって困難になった今、Hour Oneの合成キャラクターは、規模の大小に関わらず、あらゆるコンテンツ事業にとってパーフェクトなタイミング」だと話している。

これが合成キャラクターの生成コストを下げるのは明らかであり、文字だけのコンテンツは「文字を読んで視聴者に語りかける人物による実写映像に自動的に変換」できるようになると、Remagine Ventures(リマジン・ベンチャーズ)のEze Vidra(エゼ・ビドラ)氏はいう。

Hour Oneのビジネス戦略責任者Natalie Monbiot(ナタリー・モンバイオット)氏がTechCrunchに話したところによると、同社には「基本的にあらゆる人間を合成キャラクターに変換し、その人の生きているかのようなレプリカを作る」ユニークな能力を提供するという。「これはアバターでも、その人の別バージョンでもありません。本人にそっくりで、本人と同じように振る舞います。基本的に文章をアップロードしさえすれば、新しいコンテンツが生成されるのです。そのため、例えばeコマースでは、キャラクターを選んで製品を紹介させたり、製品の説明をさせたりが可能です。つまりあらゆるSKUの製品に、個別の紹介動画が作れるということです」。

カテゴリー:人工知能・AI

タグ:Hour One

画像クレジット:Hour One

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(翻訳:金井哲夫)

クラウド営業支援「Senses」がAIによる営業受注・失注リスク予測機能を提供開始

クラウド営業支援「Senses」がAIによる営業受注・失注リスク予測機能「Senses Insight」を提供開始

クラウド営業支援ツール「Senses」(センシーズ)提供のマツリカは8月17日、AIによる営業案件の受注予測機能「Senses Insight」の提供を開始した。

Sensesとは、カード形式で感覚的に案件管理ができるSFA(Sales Force Automation。営業支援システム)。蓄積した情報からAIが営業の成功・失敗事例を解析して、いつ・誰に・何を・どのように行うかを支援する。データ入力負荷が低い点や、フェーズ別に個人の強み・弱み分析が可能といった特徴を用いて、情報蓄積の文化醸成やデータを活用した人材育成など、営業チーム変革へのアプローチを可能にする。

新機能のSenses Insightは、Sensesに蓄積された営業データから、各案件ごとの受注(成約)確率を予測・提示する機能。日々の営業活動を入力することでAIが利用企業ごとの最新データを学習し続け、より精度の高い案件の見極めや、リスク検知が可能になる。これにより、オンラインの営業下でも、ロジカルかつ持続的な営業戦略の構築やコミュニケーションが実現できるとしている。先行導入を行ったサカエでは、AI予測の正答率が80%という結果になったという。

クラウド営業支援「Senses」がAIによる営業受注・失注リスク予測機能「Senses Insight」を提供開始

昨今の新型コロナウイルス対策として急増するテレワークによる営業活動では、対外的な商談などに限らず、対内のコミュニケーションに関しても、オンラインベースの新しい手法の確立が求められている。

まだ正解がないオンラインの営業活動では、対面ベースのコミュニケーション方法を変える必要があるとし、自分たちで学び、検証・改善の施策を打っていくための「データ」が非常に重要という。組織内でデータを蓄積していくことで、場所・時間にとらわれず、部署内でのフィードバック、属人化の解消、チーム全体での情報・ナレッジの共有が可能になるとしている。

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物議を醸したClearview AIがまたまた米政府機関と顔認識ソフトウェアで契約

物議を醸し出している顔認識ソフトウェアのメーカーであるClearview AIが、こちらも物議を醸し出している米国の政府機関ICE(移民・関税執行局)と新たな契約を結んだ。Clearviewはトランプ政権における厳しい移民政策の実施で強く批判されている国土安全保障省の下部組織に協力していることですでに知られている。新しい契約は両者の関係が継続していることを明確にしており、同社は、テクノロジー企業が連邦政府との契約を獲得するための収益性の高い取り組みに、一役買っているだけではない。

テクノロジー業界の監視役を自称するTech Inquiryが最初に見つけたその契約(Twitter投稿)は総額22万4000ドル(約2400万円)に上るが、契約内容は「Clearviewのライセンス」としか書かれていない。同社のソフトウェアサービスにアクセスするという意味だろう。同社の落札通知(米国総務局リリース)によると、資金の出どころはHomeland Security Investigations(HSI、国家安全保障捜査)となっているが、これはICE内部の部局でドラッグや人身売買を含む「国境を越えた犯罪行動」にフォーカスしている。入札に参加したのは4社だ。

関連記事:セキュリティーの欠如で顔認識スタートアップClearviewのソースコードがすべて漏洩

Clearviewは論争の的になっている。同社の謎めいた顔認識技術(The New York Times記事)では、クライアントが誰かの写真をアップロードすると、ソーシャルネットワークを含むオンラインソースからかき集めた大規模な写真データベースと照合する。人権グループは、Clearviewの技術をプライバシーの悪夢と呼んでいるが、人を調べることが仕事である法執行機関にとっては夢のような技術だ。

それまで無名に近かったClearviewは、2020年1月に全国紙の記事になって(The New York Times記事)からは、プライバシー保護団体や大手テクノロジー企業から絶えず批判されている。Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)、Linkedin、Twitter(ツイッター)それにYouTubeなどは揃ってClearviewを批判し(Gizmodo記事)、自分たちのプラットフォームからデータを勝手に流用していることを非難した。一部の企業は、利用規約に違反しているとして停止命令の書簡を送った。

2020年5月にACLU(アメリカ自由人権協会)は、プライバシー侵害でClearviewを訴えていると発表した。訴訟ではイリノイ州のBiometric Information Privacy Act(生体認証情報私権法、BIPA)を同社に適用しているが、以前にはこの同じ法律で、イリノイ州住民がフェイスブックとの5億5000万ドル(約586億2500万円)の和解を引き出したこともある。

ACLUの上級常勤弁護士であるNathan Freed Wessler(ネイサン・フリード・ウェスラー)氏は、その訴訟について「Clearview AIのような企業は私たちのプライバシーをなきものにしてしまうため、止めさせなければならない」と述べている。

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カテゴリー:人工知能・AI

タグ:人工知能 Clearview AI プライバシー

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

発言者ごとの文字起こし・議事録作成可能な「Sloos」がマイクロソフトの法人向けアプリストアで提供開始

発言者ごとの文字起こし・議事録作成が可能な「Sloos」がマイクロソフトの法人向けアプリストアで提供開始

QuantumCore(クアンタムコア)は8月14日、マイクロソフト運営の法人向けアプリストア「AppSource」において、発言者ごとの文字起こしが可能なサービス「Sloos」(スルース)の提供を開始したと発表した。AppSourceからSloos試用版の申し込みが行える。

Sloosは、汎用的なマイク1台で最大10名までの話者を識別し、発言内容をリアルタイムで文字起こし可能。すでに試用含む350社以上が利用しており、Microsoft Teams、Zoomなどのウェブ会議システムとの併用も行える。

発言者ごとの文字起こし・議事録作成が可能な「Sloos」がマイクロソフトの法人向けアプリストアで提供開始

またSloosは、開発者・システム管理者など向けマーケットプレイス「Azure Marketplace」ではすでに提供済みとなっている。数ヵ月以内に機能・デザインを全面的にリニューアルした正式版の提供も予定しており、さらなるサービス拡充やマイクロソフトとの連携を図るという。計画中のリニューアル版追加機能としては、以下が挙げられている。

  • Speech Serviceによる書き起こし精度向上
  • 話者の事後登録・リアルタイムテキスト編集
  • テキスト形式の文字起こし出力
  • 各種ブラウザ・スマートフォン対応
  • ルーム参加の承諾機能
  • Azure Active Directoryによるアカウント認証

なおQuantumCoreは2020年7月、マイクロソフトのスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」で採択されており、以下を今後の取り組み企画例として挙げていた。

  • Azureの音声認識エンジンの活用
  • TeamsとのAPI連携によるリアルタイム話者認識
  • OneDriveやSharePointへ書き起こし結果の保存
  • Outlookの連絡先へ発言者毎に内容の記録やオリジナル辞書の作成
  • マイクロソフト製品を利用する企業への利用提案

2018年4月設立のQuantumCoreは、RNN(再起型ニューラルネットワーク)の学習法のひとつレザバーコンピューティング(Reservoir Computing)を基にした、「少量データ」を「エッジ上」で「リアルタイム学習」できる多変量時系列処理ソリューション「Qore」を提供。複雑系力学分野で研究されてきたレザバーコンピューティングは、 複雑な時系列処理などの深層学習と同じタスクについて、量子コンピューターなど特殊なハードウェアをもちいることなく、 約1/100オーダーのわずかな学習データで、約100倍近く高速に解けるとしている。

同社は、Qoreにより、ビックデータによる作りきりのモデルではなく、個人や環境へ柔軟に対応し、人に寄り添う技術の提供を実現させるとしている。

AI医療機器スタートアップのアイリスが資金調達を実施、累計調達額が約29億円に

アイリス

AI医療機器スタートアップのアイリスは8月6日、資金調達を実施し、2017年11月創業からの累計資金調達額が約29億円となったと発表した。引受先は、トヨタ自動車を主な出資者として、スパークス・グループ運営の「未来創生2号ファンド」、CYBERDYNEと同社子会社運営のCEJファンド(サイバニクス・エクセレンス・ジャパン 1号投資事業有限責任組合)。

調達した資金は、AI医療機器のさらなる研究開発の加速とグローバル展開に向けた準備、優秀な人材の獲得に利用する。

アイリスは、AI技術を用いた高精度・早期診断対応のインフルエンザ検査法の開発を進行。2019年4月には第一種医療機器製造販売業を取得、2019年5月には塩野義製薬とBeyond Next Venturesを引受先とする12.5億円の資金調達を実施。冬季には大規模な臨床試験を実現し1万人以上のデータを収集するなど成長を続けてきた。

2020年6月にはPreferred Networksとの取り組みを開始し、同社が開発するAI医療機器の上市に向けた支援を実施している。

アイリスは、技術開発と事業のさらなるスピードアップを目指しており、また、開発する機器や技術は広く世界に向けて提供できると考えているという。こうした背景から今回、知能化技術への投資に注力する「未来創生2号ファンド」および医療機器の豊富な海外展開実績を有するCYBERDYNEからの資金調達を実施した。

今後もインフルエンザAI診断支援機器だけでなく、他疾患への展開など、アイリスがミッションとして描く「すべての医師が匠の医療技術を共有し育てることのできる社会の実現」を目指すとしている。

なおアイリスは8月4日、AIエンジニアの吉原浩之氏が所属するチームが、世界的AIコンペティションプラットフォームKaggleの「Prostate cANcer graDe Assessment (PANDA) Challenge」(PANDA Challenge)においてGoldメダルを受賞したことを発表している。また吉原氏は、これまでに獲得していた3つのSilverメダルとこの受賞で、Kaggle Masterの称号を獲得した。同社は、吉原氏が参加したPANDA Challengeは前立腺癌の生体組織診断という医療分野コンペティションにあたり、参加によって得られた技術はアイリスのAI医療機器開発にも大いに活かされるとしている。

東京大学とソフトバンクなどが「Beyond AI 研究推進機構」設立、10年間で最大200億円を拠出

Beyond AI 研究推進機構

東京大学、ソフトバンク、ソフトバンクグループ、ヤフーは8月6日、世界最高レベルのAI(人工知能)研究機関として「Beyond AI 研究推進機構」(旧:(仮称)「Beyond AI 研究所」)を設立し、2020年7月30日に共同研究を開始したと発表した。

ソフトバンク、ソフトバンクグループおよびヤフーから10年間で最大200億円を拠出。日本が世界をリードするための研究・事業活動を大胆に推進することで、AIを超える学術分野の開拓を目指す。

Beyond AI 研究推進機構は、共同研究開始にあたり、AI自体の進化や他分野との融合など、最先端AIを追究する中長期の研究テーマ10件および研究リーダーとして、東京大学が誇る各学術領域のトップクラスの研究リーダー10人が参加する。

Beyond AI 研究推進機構

また研究成果を基に、10年間で10件の事業化、3件の新学術分野の創造を目指すなど具体的な数値目標を設定するとともに、ソフトバンクが組成する50人規模の事業化推進チームとの連携により、初期段階から、データ分析やAI開発、戦略策定などの観点で中長期研究をサポートし、事業化を見据えた研究を効率的に推進する。

また、AIで共通利用される基盤技術に着目し、下記4領域で既存のAIを超える研究を推進する。

  • デバイス領域(AI自体の進化): 集積回路の物理的限界を突破し、微細化・高速化・省エネルギー化のブレイクスルーを図る
  • インテリジェンス領域(脳科学とAIの融合): 特定課題のみに対応する従来のAIから、人間の脳のように複合的・想像的活動を実現するAIを目指す
  • データ領域(物理とAIの融合): データクレンジングや教師データ作成などのコスト問題の解決に向けて、限られた教師データによるモデル構築など機械学習システム自体の変革を目指す
  • サービス領域(AIと社会): AIなどのデジタル技術がもたらす倫理や差別などの社会課題を横断的に研究

Beyond AI 研究推進機構

同研究推進機構は、東京大学の学内および海外の有力大学の研究者による最先端のAI研究を行う中長期研究と、研究成果を基に事業化を目指すハイサイクル研究という2方向で研究を行い、事業によって得たリターン(事業化益)をさらなる研究活動、次世代AI人材育成のための教育活動に充てることでエコシステムの構築を目指すことが特徴となっている。

Beyond AI 研究推進機構

また、今年度中にハイサイクル研究拠点を設置し研究を開始する予定で、中長期研究によって生まれた成果や知財を生かし、医療・ヘルスケアやスマートシティー、MaaSなどの分野において、CIP制度を活用した迅速な事業化に取り組むとしている。CIP制度とは、経済産業省が制定した研究促進制度で、大学・企業などが共同で素早く研究開発組織を立ち上げ、研究成果を基に設立したジョイントベンチャーを株式会社として事業化できる制度。

着実にリターンを創出する拠点としての役割を担うことで、エコシステム構築を加速し、AIが社会や人々の幸せに貢献することを目指していく。

NVIDIAのGPUで新型コロナ研究中のAIスタートアップElixがアステラス製薬と共同研究開始

AIスタートアップのElixは8月6日、アステラス製薬との共同研究を7月から進めていることを明らかにした。

両社の共同研究は、AIを活用した化合物の薬理活性やその他の特性(ADME、物性、毒性など)の予測、化合物構造の生成、化合物の逆合成解析を目的とするもの。創薬は、さまざまな組み合わせから有効な化合物構造を創り出す必要があるため、時間とコストが非常にかかる事業であり、AIの活用に注目が集まっている分野だ。しかし、特性予測や化合物構造生成のAI研究が進む一方で、化合物の合成可能性についてはまだあまり考慮されていない状況にあるという。

そこで、AIによる特性予測と化合物構造生成に加えて逆合成解析に注力し、合成可能性の高い化合物構造の生成や、より効率の良い合成経路探索に重きを置いて研究を進めていく。Elixによると、2019年10月に創薬・医療系ベンチャーに特化した育成支援プログラムである「Blockbuster Tokyo」に参加したことをきっかけとして、AIを創薬領域に活用する事業に参入を決めたとのこと。

Elixは、AI創薬のほか、マテリアルズ・インフォマティクスとコンピュータービジョン(画像認識)を主力領域として事業を展開しており、新型コロナウイルスの治療薬探索に関する研究(NVIDAブログ記事)なども実施している。同社は、NVIDIA(エヌビディア)がスタートアップの市場参入を支援するプログラム「NVIDIA Inception」のメンバーで、ディープラーニングアルゴリズムの学習と推論に「NVIDIA DGX Station 」を活用している。

東大・仏国立研究所発スタートアップのコーピー、AI運用・品質管理プラットフォーム「CONFIDE」をプレローンチ

東京大学・フランス国立情報学自動制御研究所(Inria)発のAIスタートアップであるコーピーは8月6日​、ドメイン特化AIの運用・品質管理を簡単に実現可能にするサービス「CONFIDE」(コンファイド)をプレローンチした。あわせて最先端技術を用いた包括的なAI開発・運用コンサルティングの提供も開始しる。さらに、DEEPCORE、Deep30、その他の金融機関から合計1億円強の資金調達も発表した。今回調達した資金は、人材強化と「CONFIDE」の正式版ローンチ、事業者への導入のために投下する計画だ。

CONFIDEは、製造業における外観検査AIや、自動走行における物体検知AIなどの領域(ドメイン)に特化したAI。12月に正式版をローンチ予定で、現在CONFIDEを用いたAIの運用・品質管理を試してみたい企業やCONFIDEを用いたサービスの共同開発を希望するパートナー企業を募集中だ。

特徴は、同社が研究を続けてきたXAI/QAAI技術を導入して精度を高めている点。なお、XAI(eXplainable AI)とはAIの判断根拠を説明可能にする技術の総称、QAAI(Quality Assurable AI)はAI​システムに特化した品質検証技術と品質保証プロセスを指す。同社は、AI品質保証研究を専門とする国立情報学研究所のの石川冬樹氏とXAI研究の第一人者である原 聡氏を技術顧問に迎えている。

新たに開始するコンサルティング業務は、すでに運用しているAIシステムや予算をかけて開発したもののPoCで終わってしまっていたAIシステムなどに対する品質検証サービス。QAAI技術を用いて網羅的に品質検証を行うことで、どこに品質的な課題があるのかあぶり出し、どのように改善していけばいいか提案する。

同社は「現在本格的に導入されているAIシステムは、リコメンデーションやOCRのような特定領域や特定技術、非ミッションクリティカルな領域や機械学習による不確かさの影響が少ない領域や技術に限られており、ほとんどのケースでは、PoCより先に進んでいない」と感じており、「特にシステムの判断ミスが人命を脅かす危機に直結する領域や、社会的、経営的危機に直結する領域においては、機械学習を含むAIシステムがほとんど本導入に至っていないのが現状」との認識から、同社のXAI/QAAI技術を用いてこれらを解決することを目指している。なお、XAI/QAAI技術の詳細については同社の技術顧問を務める石川氏が公開している資料を参照してほしい。

マイクロソフトやアマゾンが音声認識チップの新興メーカーSyntiantに出資

Microsoft(マイクロソフト)のベンチャーキャピタルであるM12が南カリフォルニアのアーバインに本拠を置く音声認識のチップメーカーであるSyntiantの資金調達ラウンドをリードした。参加した投資家には著名なベンチャーキャピタルが多数含まれている。Syntiantは音声認識の半導体の新興メーカーだ。

SyntiantのCEOであるKurt Busch(カート・ブッシュ)氏は「我々は機械学習を利用した専用プロセッサーを作っている。最初に出荷したのはバッテリー駆動で常時動作するデバイス向けの音声認識チップだ」と述べた。

ブッシュ氏によれば、こうしたチップのデザインには従来とは異なるアプローチが必要だという。伝統的なコンピューティングはロジック処理を中心とするが。深層学習ではメモリアクセスが重要となる。また伝統的なチップのデザインはメモリへの並列的アクセスにあまり向いていない。

またブッシュ氏によれば、Syntiantの新しいチップは従来の製品に比べて二桁以上効率性が高い。これは深層学習学習に特化したデータフローアーキテクチャを採用しているためだという。

この効率性の高さがマイクロソフトのM12を含む多数の有力ベンチャーファンドの関心を引くことになった。今回のラウンド参加したベンチャーキャピタルにはAmazonのAlexa Fund、Applied MaterialsのApplied Ventures、Intel Capital、Motorola Solutions Venture Capital、Robert Bosch Venture Capitalなどが含まれる。

今回の投資家には米国のテクノロジー産業を代表するチップメーカーやソフトウェアの開発企業が含まれている。これらの大企業が力を結集して南カリフォルニアの新興チップメーカーを支援することになったわけだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

AmazonのAlexa FundのディレクターであるPaul Bernard(ポール・バーナード)氏は次のように述べている。

Syntiantは音声テクノロジーを利用してイノベーションを推進していこうとする企業の努力に理想的にマッチする。同社のテクノロジーはAlexa、特にバッテリー駆動のデバイスでのAlexaのアプリケーションをさらに進化させるために膨大な可能性を秘めている。Amazonは音声認識テクノロジーのデバイスと環境を整備するために今後Syntiantとの提携を強化していく。

Syntiantがリリースした最初の製品は1.4×1.8ミリのマイクロチップで消費電力は140マイクロワットだ。このチップはアプリケーションによってはボタン電池1個で1年以上作動するという。

一方、Applied MaterialsのApplied VenturesのプリンシパルであるMichael Stewart(マイケル・スチュワート)氏は次のように述べている。

Syntiantのニューラルネットワークを利用したメモリー処理はApplied Materialsの中心的テクノロジーに極めて適合する。これはメモリー製品において根本的な飛躍をもたらし、デバイスのパフォーマンスを高め、新素材を利用したチップの可能性を広げる。またニューラル意思決定プロセスを利用したチップは非常に低消費電力であり、この種のチップのマーケットを大きく拡大する可能性がある。音声とビデオに対するニーズが大きく高まっている現在、同社の製品はソリューションは非常に有望だ。

現在Syntiantの製品をプロダクトに組み込もうとしている顧客は80社ある。十数社はすでに具体的なデザイン段階にありスマートフォン、スマートスピーカーのリモートコントロール、補聴器、スマートモニターなどのデバイスに音声認識チップを統合する計画だ。Syntiantは音声認識チップの最初のバージョンを既に100万個出荷している。

Syntiantのブッシュ氏は「今年中に会社の規模を10倍にする計画だ」と述べた。

Syntiantのチップセットはデバイスの起動、各種の命令の認識に対応している。ブッシュ氏によれば同社のチップセットはユーザーが自分の声に合わせて認識精度を改良したり独自のコマンドを設定したりすることができるという。

SyntiantはAtlantic Bridge、 Miramar aAlpha Edisonといった欧米のベンチャーキャピタルの支援を受けて2017年10月に資金調達ラウンドを成功させている。ブッシュ氏によれば同社は現在までに総額で6500万ドル(約68億7000万円)の資金を調達している。

Microsoft M12の投資を機に同社のSamir Kumar(サミル・クマル)氏がSyntiantの取締役に就任した。クマル氏は「Syntiantのアーキテクチャは現代のコンピューテーションを特徴づける並列処理と深層学習ネットワークによく適合しており、人工知能やIoT の分野でブレークスルーをもたらす可能性があると考えている」と述べている。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook