日産が今後5年間でEV開発に2兆円を投資へ、2030年度までに23車種の新型電動車投入

日産自動車は「Nissan Ambition 2030(日産アンビション2030)」と名づけた長期ビジョンの一環として、今後5年間で2兆円を投資し、新型電動車やバッテリー技術を開発することを発表した。同社は2030年度までに合計15車種の新型BEVを発売し、その時点で電動車が車両ラインナップの半分を占めることを目指す。

同社は、今後8年間で合計23車種の電動車を開発し、そのうち20台は今後5年間で開発すると発表した。2030年には、欧州で75%、日本で55%、米国と中国で40%の電動車販売比率(EVとe-Power PHEV / ハイブリッド車)に達することを目標にしている。

それ以外の部分は、内燃機関(ICE)車だと思われる。注目すべきなのは、2021年初頭、日産は「2030年代初頭までに発売するすべての新型車を電動化する」と発表していた点だ。おそらく、ICE車がまだ販売されている場合は、レガシーモデルということになるだろう。

日産は他にも、2028年までに全固体電池(ASSB)を搭載したEVを発売し、早ければ2024年に横浜にパイロット工場を設置すると発表した。この技術は、充電時間の短縮などのメリットを約束するものだが、まだ期待通りに市場に登場していない。また、バッテリーパックのコストを2028年までに1kWhあたり75ドル(約8500円)に引き下げ、さらに先には65ドル(約7400円)に引き下げることを目指している。Bloombergによると、これは2020年のEVバッテリーの価格の約半分に相当する。日産は、2030年までにグローバルな電池生産能力を130GWhへと引き上げる予定だという。

日産は、運転支援技術「プロパイロット」を、2026年までに250万台以上の日産車およびインフィニティ車に拡大する計画であるとも述べている。また、次世代LiDARシステムを「2030年度までにほぼすべての新型車に搭載する」としている。

画像クレジット:Nissan

「Ambition 2030」の一環として、日産は4つの新しいコンセプトカー「Chill-Out」「Surf-Out」「Hang-Out」「Max-Out」を発表した。他のコンセプトカーと同様に、これらは自動運転やインテリアの機能、そして奇抜なデザインなど、日産の未来のテクノロジーを体験するためのものだ。しかし、日産が実車として公開しているのは「Chill-Out」の画像のみで、他の3車種はレンダリング画像だ。

Chill-Out(トップ画像・上)は小型のクロスオーバーで、日産が以前に確認したように、次世代リーフがハッチからクロスオーバースタイルのボディに移行することを示す初期のプレビューかもしれない。アリアのCMF-EVプラットフォームとe-4orce電動駆動4輪制御システムを採用しており、2025年までに登場する予定だ。

画像クレジット:Nissan

一方、Surf-Outは小型の電動シングルキャブピックアップトラックで、そこそこの大きさの荷台と取り外し可能なキャノピーを備えている。デュアルモーターAWDと多様な出力を備え、オフロード性能、ユーティリティー性、広いカーゴスペースを提供する。

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そしてHang-Outは「移動中の新しい過ごし方を提供する」ことをコンセプトにした、小型のキャンピングカー・SUVのようなモデルだ。完全にフラットなフロアと可動式のシアターシートを備え、最近のEVコンセプトにも見られる「移動空間でありながらリビングルームのような快適さ」を提供する。また、e-4orceや先進のプロパイロット機能も搭載している。

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そして最後に、Max-Outは「最高の安定性と快適さ」を提供するオープンスポーツカーだ。ボディロールを抑えることで「ダイナミックなコーナリングとステアリングレスポンス」を実現し、ハンドリングと乗員の快適性を最適化している。また、 軽量・低重心で、先進のe-4orceも搭載しているとのこと。

日産の新計画は、カルロス・ゴーン前CEOの逮捕とその後の逃亡など、社内問題に取り組んできた中で生まれたものだ。同社は短期的には、2020年に発表された「NISSAN NEXT」計画の一環として、3000億円規模の固定費削減と生産能力の20%削減を計画している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Nissan

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

GMがより低コストで航続距離の長いEV用バッテリーの開発施設を建設中

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、ミシガン州ウォーレンのキャンパスに新しい施設を建設している。その目的は、バッテリーのコストを削減しながら航続距離を伸ばす画期的なセル技術を開発することだ。

GMは米国時間10月5日、このWallace Battery Cell Innovation Center(ウォレス・バッテリー・セル・イノベーション・センター)と呼ばれる施設の建設が始まったことを発表した。同社のグローバル・テクニカル・センターの敷地内に建設中のこの新施設は、2022年の半ばに完成する予定だ。敷地面積は約30万平方フィート(約2万7900平方メートル)だが、必要に応じて当初の面積の少なくとも3倍に拡張することを計画しているという。GMはこの施設に「数億ドル(数百億円)」を投資していると述べるだけで、建設費用については明らかにしなかった。

この施設の名前は、2018年に亡くなったGMの取締役で、同社のバッテリー技術に貢献したBill Wallace(ビル・ウォレス)氏から付けられた。同氏は、Chevrolet(シボレー)ブランドから発売されたプラグインハイブリッド車の「Volt(ヴォルト)」の初代および二代目モデル「Malibu Hybrid(マリブ・ハイブリッド)」、そして電気自動車「Bolt EV(ボルトEV)」のバッテリー・システムを開発したチームを率いていた。ウォレス氏はまた、GMとLG Chem(LG化学)R&D(現在のLG Energy Solution)の関係を築いた人物でもある。

すでにGMは、より安価でエネルギー密度の高いバッテリーの開発に取り組んでいるラボや研究開発施設を持っている。この新しいセンターは、同社の化学・材料サブシステム研究開発ラボやバッテリーシステムラボで行われているさまざまな取り組みをすべて結びつける役目を担う。

GMがこの新設で目指しているのは、1リットルあたり最大1200ワット時のエネルギー密度を持ち、コストを少なくとも60%削減したバッテリーを開発することだ。この目標は野心的であり、高尚だともいえるだろう。そしてこれはGMにとって、ラインナップの全車または大部分を電気自動車に切り替えるという計画を発表している他のすべての自動車メーカーと競争するための、重要なステップであるとも考えられる。

現時点において、GMのEVへの転換戦略の基盤となっているのは、Ultium(ウルティウム)プラットフォームとUltiumリチウムイオン電池だ。2020年に公開されたこの新しい電動車アーキテクチャとバッテリーシステムは、コンパクトカー、商用ピックアップトラック、大型高級SUV、パフォーマンスカーなど、GMのさまざまなブランドで幅広い製品に使われる予定だ。

GMは、このUltiumのバッテリーセルを製造するLGエナジーソリューションズとの合弁会社に、50億ドル(約5570億円)を投資する計画を発表している。両社は、オハイオ州北東部のローズタウン地区にバッテーセルの組立工場を設立し、1100人以上の新規雇用を創出するとともに、テネシー州スプリングヒルにも第二の工場の建設を予定している。

Ultiumバッテリーは、レアアースであるコバルトの使用量を減らし、単一の共通セル設計を採用することで、GMの現行バッテリーよりも小さなスペースで高いエネルギー密度を効率的に構成することができると、同社では述べている。

GMのグローバル製品開発・購買・サプライチェーン担当取締役副社長のDoug Parks(ダグ・パークス)氏によると、新設されるウォレスセンターは、将来的により手頃な価格で航続距離が長いEVの基礎となるバッテリーを製造するというGMの計画の重要な部分を占めることになるという。このような画期的な技術は、間もなく市場に投入されるUltiumバッテリーの世代にはまだ見られない。

ウォレスセンターでは、リチウム金属電池、シリコン電池、固体電池など、新技術の開発を加速させることが期待されている。また、このセンターでは、GMがLGと合弁で運営するローズタウンとスプリングヒルの工場をはじめ、米国内ある非公開の拠点を含むGMのバッテリーセル製造工場で用いることができる生産方法の改善にも力を入れていくという。

さらに特筆すべきは、この新施設では、一般的に携帯機器や研究用に使われる小型のリチウム金属電池セルを超えた、自動車に使用できる大型リチウム金属電池セルのプロトタイプを製造できる能力を持つようになるということだ。これらのセルはGM独自の方式で作られ、初期のUltiumバッテリーで使われるパウチセルの約2倍に相当する1000mm程度の大きさになる可能性があるという。

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入

Ford(フォード)とBMWが投資するバッテリー開発企業のSolid Power(ソリッドパワー)は、2022年初めの固体電池パイロット生産の準備のため、コロラド州にある工場を拡張する。

新しい生産施設は、同社の主力製品の1つである硫化物系固体電解質材料の生産に特化し、現在の最大25倍の生産量を見込む。また、この新施設には、商用グレードの100アンペア電池をパイロット生産する最初のラインを設置する。これらのパウチ型電池は、2022年初めにFordやBMWで自動車試験が行われる予定で、2020年代後半の自動車での実用化を目指す。

固体電池は、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきた。TechCrunchのライターであるMark Harris(マーク・ハリス)が説明しているように、固体電池には液体電解質がない。従来のリチウムイオン電池では、液体電解質が正極と負極の間でイオンを移動させる物質だった。固体電池の開発者によれば、この技術によって得られる利益は、エネルギー密度の向上、コストの削減、優れた電池寿命などだ。

また、開発者らによれば、固体電池はより安全だという。GMがChevrolet Bolt(シボレー・ボルト)を3回にわたってリコールしたように、火災の危険性を考慮すると、それは重要なポイントだ。Solid PowerのCEOであるDoug Campbell(ダグ・キャンベル)氏はTechCrunchの取材に対し「熱暴走を引き起こす火種」となるのは電解液であると述べた。「現代自動車とGMが現在直面しているこうした問題は、固体電池で解決できると強く信じています」。

同社は新しい電池のパイロット生産ラインを建設するものの、最終的には電解質材料のみを生産し、OEMや電池メーカーに電池のライセンスを提供する計画だ。

「長期的に見れば、当社は材料メーカーです」とキャンベル氏は話す。「固体電解質材料の業界リーダーになりたいと考えています」。そのため、今回の電池生産への進出は、同社にとって最後のものになるだろうとキャンベル氏はいう。予定しているパイロット生産ラインでは、複数のOEMメーカーに自動車の認定試験用の電池を供給するのに十分な量を生産し、より大規模な生産は自動車メーカーや電池セルメーカーが行う想定だ。

電池を自社で生産するのではなく、パートナーにライセンス供与するという決断は、常識的なアセットライトモデルだと同氏は語る。

「正直なところ、小さなSolid Powerが成長して、パナソニックやLG、CATLのような企業を駆逐する可能性がどれほどあるでしょうか」。スウェーデンのNorthvoltのようにそれに挑む企業もあるが、材料事業の利益率は高く、直接の競争相手となる大手はいない、とキャンベル氏は付け加えた。「資本的には軽いものの、現実的でもあります」。

このスタートアップは2021年6月に、白紙小切手会社であるDecarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの12億ドル(約1320億円)の逆さ合併により株式を公開すると発表した。キャンベル氏によると、この取引で約6億ドル(約660億円)の現金が得られる見込みで、2026年または2027年までの十分な資金となるという。

特に、2027年までに年間10ギガワット時の電池容量を支えるだけの電解質材料の生産を目指しているため、2030年まで乗り切るためには十分な資金が必要となる。そのためには、今回の発表と比べ「桁違い」の電解質生産能力が必要になるとキャンベルはいう(発表の内容自体が桁違いではある)。

Solid Powerは、電解液の生産だけに留まるつもりはない。キャンベル氏は、低コストの正極材の開発にも取り組んでいることを示唆した。この正極材は、電池の原材料の中でも最もコストのかかるニッケルやコバルトを含まないものだ。

「この業界は材料費に支配され、材料費はニッケルとコバルトを含む正極材のコストに支配されることになるでしょう」とキャンベル氏は話す。「2021年の終わりに公開するこの特定の化学物質は非常に低コストで、今日の(ニッケル・マンガン・コバルトの)陰極のコストの20分の1から30分の1になります」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

メルセデス・ベンツが2030年までにEV専門メーカーに、8つのバッテリー工場を建設

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は現地時間7月22日、2030年までに電気自動車(EV)だけを生産する自動車メーカーになるための400億ユーロ(約5兆2000億円)の計画を明らかにした。この計画で同社は垂直統合し、従業員を訓練し、そしてプロダクトを動かすのに必要なバッテリーを確保する。

同社はすでに行動を起こしている。英国拠点の電動モーター会社YASAを買収し、200ギガワットアワー超の年間生産能力が必要と結論づけたことを発表した。そうした需要をまかなうためにメルセデスは電池セル生産でパートナーと8つのバッテリー工場を建設する計画だ。

米国に立地するものも含め、新しいプラントはすでに計画されているバッテリーシステム構築のための9つの工場で構成されるネットワークに追加される。未来のセルとモジュールを開発し、効率的に生産するために欧州の新規パートナーとチームを組む、とメルセデスは述べた。その「欧州のパートナー」の目的は戦略的なもので、欧州が車産業の中心であり続けることを確保するためのものだ。

メルセデスは、次世代バッテリーの改良をサポートするためにシリコンバレーのバッテリー材料スタートアップSila Nanoと提携したと述べた。Sila Nanoは2021年初めに5億9000万ドル(約650億円)を調達した。具体的には、Sila Nanoはアノードにシリコンとカーボンの複合物を使うことでメルセデスがエネルギー密度を高めるのをサポートする。エネルギー密度の向上は航続距離を伸ばし、充電時間の短縮に貢献する。

メルセデスはまた、全固体電池テクノロジーにも注目していて、さらにエネルギー密度が高く安全なバッテリーを開発するためにパートナーと協議中だと述べた。

7月22日に発表された計画は、これまでよりも多くのEVを生産して販売するという以前の目標に則ったものだ。同社は2017年に全ラインナップを2022年までに電動化すると述べた。これはガソリンハイブリッド、プラグインハイブリッド、バッテリー式EVを意味する。そして同社は、2022年までに展開しているすべての部門でバッテリー式EVを提供すると述べた。

EVのみを生産する計画はそこから加速する。2025年までにEV専用の車両アーキテクチャ3種類を新たに導入する。同社は全電動とハイブリッドの車両の全販売に占める割合が以前のガイダンスの25%よりもアップし、50%となると予想する。顧客は同社が生産するあらゆるモデルで全電動のオプションを選ぶことができるようになる。

Daimler AGとMercedes-Benz AGのCEOであるOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏は同社の目標が「完全な資本の再配分」となる、と述べた。多額の投資と内燃機関エンジンからのシフトにもかかわらず、ケレニウス氏は同社の収益性の目標が守られ、そして達成されると強調した。

目標を達成するために、メルセデスはすべての新車両の基礎を形成するEV専用のアーキテクチャ3種を立ち上げる。MB.EAと呼ばれるプラットフォームは中型〜大型の乗用車に使用され、AMG.EAはMercedes-AMG車両を支える。そしてVAN.EAは電動乗用ミニバンと小型商用車向けの​​アーキテクチャだ。同社はすでにMMAとして知られる「電動ファースト」のコンパクトカーのアーキテクチャが2024年までに車両に使われると発表している。

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タグ:Mercedes-Benz電気自動車バッテリー工場全固体電池

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWとフォードが出資する全固体電池デベロッパーSolid PowerがSPAC合併で上場へ

Ford(フォード)とBMWが出資する全固体電池デベロッパーのSolid Power(ソリッドパワー)が上場する。同社は米国時間6月15日、特別買収目的会社Decarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの合併を通じてNASDAQに上場し、取引後の時価総額は12億ドル(約1320億円)になると明らかにした。

取引では現金約6億ドル(約660億円)を獲得する見込みで、ここにはKoch Strategic Platforms、Riverstone Energy Limited、Neuberger Berman、Van Eck Associates Corporationなどの投資家からの1億6500万ドル(約181億円)のPIPE(上場企業の私募増資)が含まれる。Solid Powerは声明文の中で、調達した資金は成長とオペレーションにあてると述べた。

全固体電池はバッテリーテクノロジーにおける待望の次なるブレークスルーだと多くの人は考えている。この名称は、従来のリチウムイオン電池にある陰極と陽極の間をイオンが動くメカニズム、液体電解質を使用していないためだ。これについてはMark Harris氏が2021年初めにExtra Crunch記事で詳しく書いた。この液体の構成要素を取り除くことで、全固体電池はより安全で、エネルギー密度もはるかに優れているとSolid Powerは話す。同社は6月15日の投資家向け説明会で、同社のバッテリーが1回のフル充電で航続距離500マイル(約805km)を提供でき、寿命は従来のバッテリーの8年の2倍超となる見込みだと説明した。

Ford Motor CompanyとBMW AGはSolid Powerの出荷能力について強気の見通しを持っていることを明らかにしてきた。2社はSolid Powerの2021年5月の1億3000万ドル(約143億円)のシリーズBラウンドをリードし、試験的に生産される自動車規模のバッテリーを2022年初めに納品するという共同開発契約を結んだ。

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SPACとの合併は2021年第4四半期に完了する見込みだとSolid Powerは述べた。ニューヨーク証券取引所ではティッカーシンボル「SLDP」で取引される。

Solid Powerは、SPAC経由で上場する最新のバッテリー会社だ。主要ライバルの1社はVolkswagenが出資するQuantumScapeで、同社は2020年9月にSPAC合併経由で上場し、企業価値33億ドル(約3631億円)とした。2021年初めには欧州のバッテリーメーカーFREYRとパワーシステムデベロッパーのMicrovastもいわゆる「白紙小切手」会社との合併を発表した

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

BMWグループならびにFord Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)向けの、20アンペア時(Ah)の全固体電池セルを両手に持つSolid Power(ソリッド・パワー)の製造エンジニア。この全固体電池セルはコロラドにあるSolid Powerの試作ラインで製造された。

固体電池(SSB)システムは、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきたもので、複数のスタートアップが最初の製品化を競い合っている。自動車メーカーたちが、この技術に対するトップ投資家群の一角を占めている。各社とも電気自動車(EV)をより安全に、より速く、そして航続距離を拡大するための突破口を求めている。

そんな中、Ford Motor CompanyとBMWグループが、電池テクノロジー企業Solid Powerへ資金を投入した。

コロラド州ルイスビルを本社とする、SSB開発のSolid Powerは、米国時間5月3日に、その最新のラウンドとなる1億3000万ドル(約142億2000万円)のシリーズBが、FordとBMWによって主導されたと発表した。このことは、その2社がSSBが将来の輸送を支えるものだと考えていることを示している。今回の投資で、FordとBMWは対等な株式所有者となり、両社代表者はSolid Power の取締役会に参加する。

また今回のラウンドで、Solid Powerは米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所からスピンアウトしたベンチャーキャピタルのVolta Energy Technologies(ボルタエナジー・テクノロジーズ)からも追加投資を受けた。

固体電池という名前は電解溶液を使わないことに由来している(Mark Harris記者が年頭のExtra Crunch記事で説明している)。通常の電解溶液は、可燃性で過熱の危険があるため、一般的にSSBは比較的安全だと考えられている。ライバルである電解溶液を使うリチウムイオン電池と比べたときのSSBの真の価値は、そのエネルギー密度だ。Solid Powerは、同社の電池は、既存の充電式電池に比べて50~100%エネルギー密度を向上させるとできるという。理論的には、よりエネルギー密度の高い電池を搭載した電気自動車は、1回の充電でより長い距離を移動することができる。

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この最新の投資ラウンドは、Solid Powerが自社史上最大のアンペア時間(Ah)出力を持つ電池セルを生産するために、製造力を強化するのに役立つ。FordならびにBMWとの個別の共同開発契約に基いて、同社は2022年以降、テストよ車両統合のために100Ahのセルの納入を開始する予定だ。

これまで同社は、2Ahと20Ahの出力を持つセルを製造してきた。Solid Powerはその声明の中で、2020年後半にFordとBMWによって、2Ahバッテリーセル「数百個」が検証されたと語っている。一方、同社は現在、標準リチウムイオン用の機器を使い、20Ahの固体電池をパイロットベースで生産している。

Solid Powerの広報担当者Will McKenna(ウィル・マッケナ)氏はTechCrunchに対して、9×20センチ22層で構成されてる20Ahパイロットセルとは対照的に、100Ahセルは、より大きな底面積とさらに多くの層を持つことになると語った(「レイヤー」とはカソードの数を指していると、マッケナ氏は説明した。20 Ahセルの中には22枚のカソードと22枚のアノードがあり、それぞれの間に全固体電解質セパレータが挟まれていて、すべてが単一のセルの中ににまとめられている)。

Solid Powerの製造法とは異なり、従来のリチウムイオン電池では、製造プロセスで電解質の充填と循環を行う必要がある。Solid Power によると、一般的なGWh規模のリチウムイオン製造施設における設備投資の5%から30%が、そうした追加工程に投入されている。

Solid Powerが自動車メーカーからの投資を受けたのは、今回が初めてではない。2018年に行われた2000万ドル(約21億9000万円)のシリーズAでは、BMWやFordの他、Samsung(サムスン)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volta(ボルタ)などからの資本金を集めた。同社は、OEMたちの注目を集めている新しい企業群の1つなのだ。他の注目すべき例としては、Volkswagen(フォルクスワーゲン)が支援するQuantumscape(クアンタムスケープ)とGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)によるSESへの資金投入がある。

Fordは自身でも先進的な電池技術を研究していて、1億8500万ドル(約202億円)で電池R&Dラボを開設する予定であることを先週発表している

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

QuantumScapeが株式を売却し全固体電池の生産資金調達、市場価値を高める

逆さ合併により上場企業となったわずか数カ月後、QuantumScape(クオンタムスケープ)は、全固体電池のパイロット生産ライン拡張の資金を得るために株式を発行した。

QuantumScapeが規制当局向けの提出書類に記した内容によれば、1300万株の売却(引受人がオプションを行使すれば195万株が上乗せされる)による純利益は、1株あたりの公募価格を59.34ドルと想定した場合、8億9500万ドル(約97兆円)になると思われる。価格は米国時間3月24日に市場が閉じてから確定するとBloombergは伝えている。この資金はQS-0と呼ばれる大規模な予備パイロット生産ラインの建設と、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)との合弁事業の一環として作られる大型生産工場QS-1の建設の一部に使われる。

公募を開始してから数時間は投資家たちの反応は思わしくなく、価格は開始時点から13パーセント以上も下落した。この市場の反応は、公募の突然の発表に動揺してのことと考えられる。ちょうど6カ月前、QuantumScapeは特別買収目的会社(SPAC)のKensington Capital Acquisition Corp(ケンジントン・キャピタル・アクイジション)との合併に合意した。当時QuantumScapeは、合併によって7億ドル(約760億円)以上を調達できると話していたが、これには株式の私募(PIPE)5億ドル(約540億円)が含まれている。この資金調達は、Fidelity Management & Research CompanyとJanus Transactionという機関投資会社に支えられていた。

QuantumScapeは、この数年間、電気自動車の航続距離を飛躍的に伸ばし、高速充電を可能にする次世代技術である全固体電池の開発を密かに行っていた。同社は早くから、Kleiner PerkinsやKhosla Venturesといった高名なベンチャー投資企業の注目と資金を集めていた。Volkswagenがこの絵に乗ってきたのが2012年のことだった。同自動車メーカーはQuantumScapeに、2020年の2億ドル(220億円)を含む合計3億ドル(約325億円)の投資を行っている。この追加資金により、両社の共同開発は加速したと、Volkswagen Group Components(フォルクスワーゲン・グループ・コンポーネンツ)の会長Thomas Schmall(トーマス・シュモール)氏は当時話していた。

VolkswagenとQuantumScapeの提携の核心は、その合弁事業にある。それは2018年に発表された、全固定電池技術の開発と、開発後の商用規模での生産を目指すという内容だ。両社は、全固体電池の産業レベルでの生産ができるパイロットプラントの建設計画を公表した。そしてQuantumScapeは、Volkswagenから2億ドルの投資を受けたわずか4カ月後の2020年9月、Kensington Capital Acquisition Corpとの合併に合意したことを発表した。

QuantumScapeは2021年、カリフォルニアの予備パイロットプラントを20万平方フィート(約1万8600平方メートル)拡張し、生産能力を高め計画があることを発表している。同社の計画がうまくいけば、QS-0と呼ばれる予備パイロット生産ラインは、公表されている2倍以上の生産能力を持つことになる。QS-0の目的は、QuantumScapeが全固体電池の開発、テスト、システム調整、大量生産に向けた生産工程の確立のために使う予定の大量なサンプルを作ることにあると同社は話している。

予備パイロットラインは、Volkswagenとその他の自動車OEMメーカー、さらには他業種の潜在顧客向けに、十分な量の試作品を生産することにもなっている。QuantumScapeは、2021年後半にはQS-0の長期リースを確実にし、2023年には試作品の生産開始を予定している。

QuantumScapeはさらに、Volkswagenとの合弁事業で21GWhのバッテリー生産ラインを構築する計画も立てている。

「この公募による収益は、QS-0の拡張版の建設、QS-0の運営、QS-1 Expansion(エクスパンション)プラント建設の合弁事業経費、合弁事業で想定される負債の補てん、運転資本および一般の企業目的の自己資本割り当てへの、十分な資金供給を目的とするする」と同社は提出書類に記している。

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タグ:QuantumScape全固体電池フォルクスワーゲン

画像クレジット:QuantumScape

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)