パンデミック時代に適合し動画制作方法を作り変えるVidMob

マーケターと動画制作者を結ぶマーケットプレイスとしてスタートしたVidMob(ビドモブ)は、今では自らを「クリエイティブテクノロジープラットフォーム」と位置づけている。現在もマーケットプレイスは残っているが、それは動画制作管理と、動画をオンライン広告に仕上げるための膨大なツール群の一部に収まっている。

VidMobは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下でも進化を続けてきた。この数カ月間でプラットフォームの使われ方が大きく変化した、と創設者でCEOのAlex Collmer(アレックス・コルマー)氏は私に話した。例えばそのプラットフォームの「最も上手な使い方」は、既存の映像を利用することだ彼はいう。テレビCM用に撮影されたものも含む映像資産を利用してソーシャルメディア用の広告を作ることだ。しかしご案内のとおり、「この数カ月間、実際の撮影はキャンセル」されている。

さらにコルマー氏は、企業はVidMobを単にソーシャルメディア用の広告ツールとしてではなく、動画の遠隔制作のための手段として使うようになってきたと話す。その結果、同社の「ロゴグロース」(つまり新規顧客)数が第1四半期で前年比100パーセントの伸びを記録し、第2四半期もさらに50パーセント伸びた。

「ここで起きているのは、企業のデジタル変革の加速化です」と彼はいう。「私たちのクライアントのほとんど、私たちが話を聞いたマーケーターの全員が、自分たちのクリエイティブな業務を、なんらかのソフトウェアプラットフォームに統合する方法を真剣に模索しています。今後もリモートで作業しなければならない状態が続いたとしても、安心できるようにです。また既存メディアをより効率化するためでもあります」。

そんなクライアントのひとつにCiti(シティ)がある。企業間コミュニケーション副社長Megan Corbett(ミーガン・コーベット)氏は、2019年からVidMobを利用していると私に話してくれた。パンデミックの結果、多くのマーケターがそうであるように、「プログラムの変更や規模の調整などを、本当の意味で迅速に柔軟に行う必要に迫られました」。

例えば「#InItTogether(一緒に頑張ろう)」ハッシュタグへの対応で、CitiはVidMobを使って従業員の活動を紹介し、人々の気持ちを鼓舞する動画シリーズを制作した。地域コミュニティーのために防護具を3DプリントしているMihir(ミハイア)を紹介した上の動画もその1つだ。

「どのような話を伝えたらよいかを考えたとき、大活躍するヒーローが自分たちの同僚の中にもいるということに気づいたのです」とコーベット氏は話す。

Citiによれば、2020年5月初めにキャンペーンを開始して以来、動画は25万回も視聴されたという。そのうちの80パーセントがLinkdin(リンクトイン)で再生されている。

パンデミックとシャットダウンが始まった当初でさえ対応がとても厳しかったが、人種差別への抗議運動や新型コロナウイルスの第2波や企業倒産などなど、ニュースは絶え間なく届く。

「当面の間、私たちは不安定な時代を生きていかなければなりませんが、正直言って、私はこれを好機と見ています」とコーベット氏。「消費者が何を求めているかを理解しているブランド、文化的時代精神に波長を合わせているブランド、ビジネスの主要業績評価指標を重視、連動し、そこから力を得るブランド……それが未来の勝利を手にします」。

同じくコルマー氏も、この不安定な時代に関して、ブランドはただ黙っているのではなく、より迅速に対応する必要があると話す。「何も言わず逃げていては、自分の立場を確立できません」。

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画像クレジット:scyther5 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

YouTubeがスモールビジネス向けの短い動画広告制作用DIYツールを無料公開

YouTubeは、単発で低コストな動画を制作したいスモールビジネスのための新しいツールを米国時間4月14日に公開した。このツールを使えば、クリエイティブ分野での経験や技術的なノウハウがなくても誰でも簡単に制作することができる。その名もシンプルなYouTube Video Builder(ビデオビルダー)は、この数カ月間、少数の顧客企業がテストを続けていたのだが、新型コロナウイルス(COVID0-19)パンデミックの影響で、急遽一般向けにローンチされることになった。対面して動画を撮影することは不可能になり、スモールビジネスは何より資金繰りに窮している。

「特に顧客へのメッセージを迅速かつ簡単にアップデートする必要に迫られている事業者の声を多く聞く現在、Video Builderは動画を必要とするあらゆる規模の事業を支援します」とYouTube Adsの製品管理ディレクターであるAli Miller(アリ・ミラー)氏は言う。

ツールの使用に必要なものは、GmailやYouTubeといったGoogleのサービスにログインできるGoogleアカウントだけ。アカウントを持っていなくても、Google以外のメールアドレスをGoogleアカウントにリンクさせることも可能だ。動画の保存と配信には、自身のYouTubeチャンネルが必要になる。

使い方は非常にわかりやすい。Video Builderのベータ版では、会社の静止素材(画像、テキスト、写真など)をアニメーションさせて、YouTubeの無料オーディオライブラリの音楽と組み合わせることができる。また、メッセージの内容や目的に応じて、さまざまなレイアウトを選ぶこともできるとYouTubeは説明している。レイアウトの色やフォントの変更も可能で、6秒または15秒の動画が即座に作れてしまう。

動画が完成したら、自社のYouTubeチャンネルにUnlisted(限定公開)としてアプロードする。これは、チャンネルを来た一般の人たち全員に公開したくない場合だ。公開したければプライバシー設定を変更すればよい。制作した動画はウェブサイトに埋め込んだり、どこかのソーシャルメディアで共有したり、目的に応じてさまざまな形で公開することができる。望むなら、Google広告として動画を配信することも可能だ。

オリジナルの動画広告をDIYしたい事業者のためのツールは、既に市場に数多く出回っている。例えばVimeoは、スモールビジネスがプロフェッショナルなソーシャル動画を制作できるアプリを2月に公開した。2019年秋には、Facetuneを作ったLightricks(ライトリックス)が、スモールビジネスがソーシャルメディアの広告キャンペーンに使えるアプリ一式を公開した。さらに、動画編集ツールではAdobeやAppleといった老舗の他、Magisto(マジスト)、Canva(キャンバ)、PicsArt(ピクスアート)などといったメーカーの製品も多い。そのほとんどがテンプレート、簡単に使える編集ツール、ストック素材、クリックひとつで複数のプラットフォームで公開できるといった機能を備え、スモールビジネスの事業主をターゲットにしている。

YouTubeのVideo Builderの場合は、YouTubeの視聴に最適化された動画の制作が可能で、Google広告と統合できる点で有利になっている。

昨日までVideo Builderは、インテリアデザイン会社Havenlyやサンドウィッチ店Which Wichといった数百人規模の企業から、食品スーパーチェーンCentral Marketのような数千人規模の企業まで、幅広い事業者の協力でテストを重ねてきた。営業時間の変更や集荷、配達などの新サービスの告知に利用するケースもあれば、ブランドや代理店が補完的な動画の制作や新コンセプトの実験などに利用するケースもあった。

今回の一般公開により、希望者はベータアクセスを行ってから、デスクトップで利用ができるようになる。ツールは英語版のみだが、動画はどんな言語で制作しても構わない。登録したすべての人が楽に利用できることを確信しているとYouTubeはいう。

ミラー氏によれば、このツールは当初、YouTubeの動画広告を素早く簡単に作れる事業者向けのツールとして開発されたとのことだ。

「私たちは、事業者が顧客とのつながりを保てるようにするツールの開発を急いでいました。人々が自宅に待機するようになっても、Video Builderは新規顧客へのリーチを広げるためにYouTubeで動画制作を始めたい人々の、大きな助けになるものと信じています」と彼女は言い加えた。

この新ツールは、YouTubeがここ数カ月で公開してきた複数のビジネス向けサービスのひとつとして加わることになった。スタートは、2019年5月に公開された機械学習を使って複数の動画を短い6秒のクリップに簡単にまとめるBumper Machine(バンパー・マシン)だった。さらに最近では、低コストの動画編集などさまざまなサービスを提供するYouTube Creative Directory(クリエイティブ・ディレクトリー)に、新たなパートナーがいくつも加わっている

YouTube Video Builderは、ここで登録をすれば無料で利用することができる。

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(翻訳:金井哲夫)

知識なしでも最短1分で動画作成、「RICHKA」が2.1億円を調達

SaaS型の動画生成ツール「RICHKA(リチカ)」を運営するカクテルメイクは5月14日、ベンチャーキャピタルのNOWなど6社を引受先とする第三者割当増資により総額で2.1億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達はカクテルメイクにとって昨年9月にNOWや佐藤裕介氏などから5000万円を調達して以来のラウンドで、シリーズAに該当するもの。需要が高まっている動画広告用途を軸に、5G時代到来に向けてプロダクトの機能拡充やパートナー企業との連携、人材採用など組織基盤の強化を通じてさらなる事業拡大を目指す。

なおシリーズAに参加した投資家陣は以下の通りだ。

  • NOW
  • みずほキャピタル
  • 新生企業投資
  • ドリームインキュベータ
  • マネックスベンチャーズ
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ

素材とテキストのみでサクッと動画生成

RICHKAは専門知識がないユーザーでもパフォーマンスの高い動画を作れる動画生成サービスだ。

必要なのはシーンに合わせて素材(動画や画像)とテキストを入れるだけ。動画の制作経験がなくても、ドラッグ&ドロップで用意した素材を配置して、表示させたいテキストを入力すればブラウザ上でスピーディーに動画が完成する。

素材についてはRICHKA上にある100万点以上の動画や画像素材を使うことも可能。素材を選択すると画像認識システムを通じて最適な切り抜き位置を判定するなど、AIを用いた制作サポート機能も搭載されている。

細かいポイントはいろいろとあれど、RICHKAの大きな特徴となっているのがバラエティに富んだ動画フォーマットだ。

約100人のクリエイターが毎月100種類以上の動画フォーマットを作成していて、ユーザーはその中から目的や業種、配信先などに合わせて最適なものを選び動画を作る。

現在用意されているフォーマットはだいたい1000種類ほど。RICHKAで蓄積されたナレッジを反映してどんどん新しいものが追加される仕組みが構築されていて、これが高いパフォーマンスを実現することにも繋がっているという。

この領域では昨年9月にリリースされた「VIDEO BRAIN」のように動画制作をAIで自動化するようなプロダクトも登場してきているが、今のところRICHKAではユーザーがツールを活用して自身で動画を作成する。AIは一部の工程を補助する位置付けだ。

この点についてカクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏に話を聞いてみたところ「自分たちもAIで全自動化するような実験にも取り組んでみたが(現段階では)多様なニーズをAIだけで捌くのは難しいと判断した」結果、今の仕組みで提供しているという。

「ユーザーの視聴態度はSNSや年齢層によっても異なり、ものすごく細分化される。ただ広告という数秒〜長くても30秒くらいの尺の中で、かつ業種業態が限られているという条件下であれば自動化できる余地はある。それも見据えて今はフォーマットの種類を増やしている段階。トレンド自体は人が作るものなので、そこはクリエイターに担ってもらうことは変わらない」(松尾氏)

今後はフォーマットのレコメンドなどにも力を入れていく計画。サービスのサービスの業種業態や特徴を入れたら適切なものを推薦したり、もう一歩進んで出来上がりの状態まで提示するような仕組みも検討しているという。

動画広告用途を中心に累計200社以上が導入

松尾氏によると、RICHKAはこれまでで累計200社以上に導入され月間の動画生成数は5000本を突破。トータルで生成された動画数は10万本を超えたそうだ。

2018年9月の調達時に話を聞いた際は「動画広告用のクリエイティブ、Webメディアやプラットフォームでの利用、その他の用途がそれぞれ3分の1ずつ」ということだったけれど、直近では動画広告用途が増加。現在は全体の約7割を占める。

「広告事業者や事業会社において高速で(動画クリエイティブ作成の)PDCAサイクルを回したいという声がものすごく増えてきている。特に以前に比べて広告代理店からの引き合いが強くなってきた。クライアントからの動画広告のニーズを無視できない状況である一方で、制作会社に頼るとコスト感が合わなかったり、PDCAを回すスピードが遅くなってしまったりする」(松尾氏)

そこでRICHKAの登場というわけだ。RICHKAの場合は動画制作経験のない広告運用者でも手軽に動画を作ることが可能。料金も月額10万円からの定額モデルのため、コストを抑えながら何本もの動画を試すこともできる。

実際RICHKAのユーザーの9割ほどは動画を作ったことが一度もないような人たちだが、上述した機能とフォーマットの助けを借りることで、成果を出しているケースも多いようだ。

「フォーマットを介して各業界や用途ごとに今の動画のトレンドを知れるのも特徴。(各フォーマットの)パフォーマンスなどを把握した上で動画を作れるため、ゼロから自分でナレッジを貯めていくよりも効率が良い」(松尾氏)

2月には広告代理店向けの「RICHKA for Agency」をリリース。サービス上の動画フォーマットを営業資料として持ち歩き、自社のオリジナルWebカタログ(自社のロゴを入れることが可能)として使えるような仕組みも整えた。

カクテルメイクでは今回調達した資金を用いてRICHKAのさらなる機能拡張やマーケティングの強化、人材採用などを進めていく計画。培ってきたノウハウやデータを活かしながら、5Gの本格的な商用化が見込まれる2020年末までに、ハイクオリティでリッチな動画を100万本生成することを目指すという。

デビッド・ベッカムの「ディープフェイク」ビデオを作ったスタートアップが3.3億円超を調達

マラリアの生存者たちが、Malaria Must Die(マラリア撲滅)運動への認識を高めるために、デビッド・ベッカム氏の口を通して行った世界的キャンペーンは、多くの人を驚かせた。

すでにキャンペーンは、世界で4億インプレッションを超えている。

だが、この動画がどのような撮影されたのかを解説する舞台裏の動画も公開されている。

このキャンペーンは、RG/A、Ridley Scott Associates、そして気の利いた動画スタートアップのSynthesiaが、NPO法人Malaria No Moreのために共同で行ったものだ。

そして、このクールなテクノロジーには大きな商業的需要があることが明らかになった。

現在の動画制作は非常に規模が大きい。それは多くのカメラ、多くのスタジオ、そして多くの俳優が関わる物理的なプロセスである。マーケティング、プロダクト、またはエンターテイメントビデオが一度撮影されてしまうと、素早く手頃なコストで作品を編集したり、さまざまな言語に翻訳したりすることは非常に難しい。

共同創業者のビクター・リパーベル・ラスムッセン(Victor Riparbelli Rasmussen)氏は私に対して以下のように語っている。「私たちは、半ばもしくは完全に、人工的に動画を生成してしまう方がずっと効率的だと考えているのです。こうしたデジタル制作プロセスは、静止画では既に、PhotoShopのようなアプリケーションを介して扱うやり方が業界標準です。私たちは同じことを動画に対しても行おうとしているのです」。

Synthesiaは、動画コンテンツを制作するために実際のセットを使う必要性を、減らすことができると言う。新しい動画を撮影する代わりに、既存の資産を編集して、派生的な国際化動画やパーソナライズされた動画を作成することができるのだ。

ラスムッセン氏は次のように述べている「私たちのソリューションによって、企業は従来の制作方式に比べて、10倍の動画成果物を10分の1のコストで作成できるようになるでしょう。シンプルなインタビュー形式の動画でも、多くの人が関わって、組織を横断した多額の制作コストがかかりがちです。当社のソリューションをお使いいただくことで、広告代理店、Fortune 1000企業、もしくは小規模企業のマーケティング担当の皆さまが、既存のものから新しい動画を制作なさり、48時間以内にそれを再び配信なさることが可能になります」。

この英国を拠点とするスタートアップが今回調達したのは310万ドルである。主導したのはLDV Capitalと初期投資家のマーク・キューバン(Mark Cuban)氏である。そして新しい投資家として、MMC VenturesSeedcamp、Martin Varsavsky氏のVAS Venture、TransferWise共同創業者のTaavet Hinrikus氏、Tiny VC、そして広告担当役員のニーゲル・モリス(Nigel Morris)氏が加わっている。

「動画制作は急激に増加していますが、広告、マーケティング、そしてeラーニングの動画をカルチャーを横断して簡単に国際化したりパーソナライズしたりすることは、とても困難なことなのです」と、LDV Capitalのゼネラルパートナーであるエバン・ニセルソン(Evan Nisselson)氏は語っている。「Synthesiaは、コンピュータビジョンと人工知能を活用して、ブランドや制作者のために、動画制作に革命をもたらしました」。

Synthesiaは、ユニバーシティカレッジロンドン、スタンフォード、ミュンヘン工科大学、そしてFoundryの研究者ならびに起業家のチームによって創業された。特に、同社の共同創業者の1人であるマシアス・ニースナー(Matthias Nießner)教授は、世間でよく知られた研究プロジェクトであるDeep Video PortraitsFace2Faceを支えている人物だ。

ロンドンを拠点とするこのスタートアップは2018年にそのベールを脱ぎ、その最初の公開デモをBBCで放映した。それは、ニュースキャスターのマシュー・アムロリワラ(Matthew Amroliwala)氏に、3つの異なる言語を話させることを通して、Synthesiaの技術を紹介するものだった。

彼らの顧客にはすでにAccenture、McCann Worldgroup、Dallas Mavericks、そしてAxiata Groupのようなグローバルブランドが含まれている。

しかし、ディープフェイクや虚報に使われる可能性はどうだろうか。

Synthesiaによれば、同社には強力な倫理的ガイドラインがあり、さらに全てのコンテンツが合意のもとで制作されたものであり、かつ俳優たちも自分たちの類似性を把握していることが確実であるようにしたいということだ。

ということで、これはあなたがウェブから気軽にダウンロードして、バーニー・サンダース(Bernie Saunder)氏の顔に適用できるようなソフトウェアではない。

ラスムッセン氏によれば、同社は政府やメディア組織と積極的に協力しながら、一般の認知を高めつつ、社会がその恩恵を受けて、合成メディア技術からの潜在的な悪影響を軽減できることが確実になるように、技術的セキュリティメカニズムを開発しているという。

さて、そう願いたいものだ。

[原文へ]

(翻訳:sako)

次世代を担う動画プラットフォームの5原則

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【編集部注】本記事はMichael SegalEthan Kurzweilによって共同執筆された。Michael Segalは、Bessemer Venture Partnersのシニア・アソシエイトとして、コンシューマービデオやSaaS、EC業界のアーリーステージにある企業への投資を行っている。さらに彼はこれまで、Skylight FrameやCurio Roadなどのコンシューマー製品を扱うスタートアップを共同設立してきた。もう一人の執筆者であるEthan Kurzweilは、Bessemer Venture Partnersのパートナーを務め、動画やコンシューマーテクノロジー、ディベロッパー向けプラットフォームへの投資を行っている。

動画がインターネットを支配しようとしている。現在インターネットトラフィックの約75%が動画に費やされており、アメリカ人は毎日1時間以上(2011年と比べると3倍以上)オンライン動画を視聴している。

YouTubeやNetflixといった大手プラットフォームがトラフィックの大部分を占めているが、そのほかにもたくさんの新しいプレイヤーが、オンライン動画の世界でチャンスを掴もうと競いあっている。Snapchat、Instagram、Facebookはこれまで写真中心のプラットフォームだったが、現在熱心に動画コンテンツを増やそうとしているほか、TwitchMusical.lyといった新しいタイプの動画プラットフォームが急激な成長を見せている。

私たちは投資家として、常に将来のチャンスに繋がるようなトレンドを探し求めている。動画コンテンツの需要が増加する中で、BessemerもTwitch、SmulePeriscopeといった素晴らしい企業に投資してきた。動画業界が成長し続ける限り、私たちも投資を続けていくつもりだ。そして次のチャンスがどこに転がっているか理解する上で、ある問いが浮かんでくる。斬新な動画プラットフォームに共通している原則とは一体何なのだろうか?

最近私たちは、この問い(その他の問いも併せて)の答えをみつけるに、オンライン動画界のリーダーが一堂に会する、Spotlight: Videoというイベントを開催した。そして彼らの見解や、新進気鋭の動画スタートアップとの会話を通じて、私たちはこの業界で成功する上で大切な5つの原則を割り出した。

このようなリストはどう頑張っても包括的にはなりえないし、どのルールにも例外はある一方で、動画というメディアの未来に関する議論に、私たちが貢献できることを嬉しく思っている。

もしもビジネスモデルがユーザー生成コンテンツ(UGC)に依存しているなら、動画作成は数分ではなく数秒で完了できるようにする

各スタートアップは、それぞれの方法で人を引き付け、何百万人もの消費者が動画を作って共有するようなプラットフォームを立ち上げようとしている。しかしそのほとんどは、たったひとつの理由で目標に到達できないでいる。その理由とは、人目を引くようなコンテンツを短時間で作るのは、とてつもなく難しいということだ。

たとえクリエイティブな表現ができるように膨大な数の機能が備わっていたとしても、平均的なユーザーが面白い動画を30秒以内(理想的にはもっと短時間)に作れないとすれば、そのプラットフォームは全く利用されない可能性が高い。何万種類におよぶアプリが消費者の注意をひこうと競い合う中、”タイムトゥーバリュー”(例:素晴らしいモノを生み出すのに必要な時間)を減らすことが何より重要なのだ。

例えばSnapchatであれば、簡単に録画・編集ができ、フィルターやメッセージを追加すれば、数秒と数タップで複雑なコンテンツをつくりだすことができる。以下の、DJ Khaledが海で迷ったときの動画がその好例だ。


Source: DJ Khaled/Snapchat

動画制作者は人目を気にしている

良いプラットフォームは、社会的な圧力を最小化して、動画制作のハードルを下げている。動画制作とはストレスのかかる困難なプロセスなのだ。そして誰もつまらない動画や恥ずかしい動画を作ろうとは思っていない。

TwitchやMusical.lyは上手く動画制作のハードルを下げている。ユーザーが尻込みしてしまうような黒い動画キャンバスの代わりに、彼らはユーザーに「好きなゲームで遊んでいる様子を録画してみよう」もしくは「好きな曲を口パクで歌ってみよう」といったシンプルなお題を与え、楽しくて共有しやすいコンテンツを簡単に作れるような環境を提供しているのだ。成功している動画プラットフォームは全て、人の目が気にならないような対策を立てている。

さらに、フィルターやステッカー、マスクといった楽しい機能を盛り込むことで、面白いコンテンツが簡単に作れるようになっている。他にも、撮影後に仕上げる必要のない”瞬間的”なコンテンツをやりとりするプラットフォームも存在する。

via GIPHY / Giphy Credit: Jimmy Fallon fallontonight.tumblr.com

全てのプラットフォームがUGCで成り立っているわけではない

もしもあなたのビジネスモデルが、パワークリエイター(動画制作に真剣に取り組んでいるユーザー)から成り立っているなら、彼らのためのプラットフォームを構築しなければいけない。前述の2原則はUGCプラットフォーム向けのもので、UGCモデルが成功するには、膨大な数のユーザーがコンテンツを制作し共有していることが前提となる。しかし全てのプラットフォームがこのモデルを採用しているわけではない。中には、少数のパワークリエイターが時間と労力をかけて作り上げたコンテンツを、残りのユーザーが視聴して楽しむという形式のプラットフォームも存在する。

パワークリエイターを中心に据えたプラットフォームを構築するための第一歩が、その目的を認識するということだ。もしもこのようなプラットフォームがUGCに手を出そうとしても、普通の消費者がプラットフォームを使いこなせず失敗に終わる可能性がある。

その次に、プラットフォームの立ち上げ時から、パワークリエイター集めに注力することも重要だ。そのためには、パワークリエイターが大規模なファン層を築き、管理し、ファンと交流できるような環境を与え、実際に彼らがそうするように促していかなければならない。著名なクリエイターは自分の好きなプラットフォームを選ぶことができる上、彼らはどのプラットフォームに力を入れるかということをよく考えている。そのため、新しいプラットフォームはこれまでにない方法で既存のファン層を取り込み、クリエイターがファンと直接交流できるような機会を与え、さらには新しいファンを獲得できるような環境を提供しなければならない。このような要素がなければ、大物クリエイターはわざわざリスクをとって、新しいプラットフォームを試そうとは思わないだろうし、彼らのコンテンツ無しではそのプラットフォームが成功をおさめることもないだろう。

その好例がVineだった。まず6秒間の動画を面白くするのはとても難しい。しかし、中には1600万人以上のフォロワーを持つKing Bachのようにそれをやってのけてしまう人も存在し、Vineはとても上手く、彼のようなパワークリエイターをプラットフォーム上に呼び込むことが出来た。

Video credit: King Bach, “The Blind Hitman” with Christian DelGrosso , Logan Paul and George Janko

水漏れしているバケツに水を足さない

新しいユーザーの獲得を目指す前に、ユーザーを留めておけるようなプラットフォームを構築しなければならない。上手く出来たバイラルな仕組みを利用して、一時的にはトラフィックが爆発的に増加するが、その数週間・数ヶ月後には、トラフィックが元通りまたは以前よりも減少するといった動きを見せるプラットフォームを、私たちは投資家としてこれまでにいくつも見てきた。このパターンの問題はシンプルで、彼らはそもそも長期的に見てユーザーを留める力のあるようなプラットフォームを築けておらず、単に成長エンジン(もしくは彼らを成長モードに突入させるようなサプライズの販促手段)のスイッチを入れているだけなのだ。

ユーザーが離れていくこと自体が本質的に悪いわけではない。主要プラットフォームの中には、たくさんの人が試して二度と戻ってこなかったものも存在する。しかし、主要プラットフォームが違うのは、彼らの定着率はすぐに落ち着つくということだ。少なくともユーザーの20%が長期間におよんで毎週もしくは毎月彼らのサービスを利用している一方、”水漏れバケツ”型のプラットフォームは、最初の数ヶ月で定着率が5%以下に落ち込むことが多い。

長期的な定着率への取り組みは、難しいばかりか時間もかかり、永遠に終わることがない。しかし、設立初日から定着率の向上に取り組んでいないプラットフォームは、突然消えてなくなってしまうこともある。彼らは素晴らしい成長率を残し、多額の資金調達さえ成し遂げてしまうかもしれないが、長い期間生きていくことはできないのだ。

Musical.lyが良い例で、同社はリップシンク(口パク)動画のための素晴らしいプラットフォームを作り上げた。もしもMusical.lyがそこで歩みを止めていたとすれば、同社の成功は一瞬だけのものだっただろう。その代わりに彼らは最初から定着率を気にかけ、毎日ユーザーが戻ってくるようにさまざまな機能をリリースすることで、一発屋候補から長く続くプラットフォームへと進化を遂げた。

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A video posted by musical.ly (@musical.ly) on Jul 14, 2016 at 5:31pm PDT

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Video credit: @officialjoshprice on Musical.ly

動画プラットフォームの多くはもともとクリエイター向けのツールだった

長生きするプラットフォームは、短い期間で制作の場からコンテンツを提供する場やソーシャルネットワークへと変化していく。動画プラットフォームには、新しいタイプの動画を制作するための単なるツールとしてスタートするケースがよくある。成功するプラットフォームは、単なるツールではユーザーを定着させるには不十分だと理解し、すぐにこの段階を超えてコンテンツ発見システム、もしくはソーシャルグラフ(ときには両方とも)という新たな機能を担うようになる。

友人やインフルエンサーをフォローしたり、動画を作る気がしないときでも他の人が作った面白いコンテンツを視聴したりできるような仕組みは、ユーザーが動画プラットフォームを毎日、もしくはほぼ毎日利用するようになる上で欠かせない要素だ。

実際にコンテンツを効率的にみつける仕組みや、ソーシャルグラフの要素を新しいプラットフォームに盛り込むのは大変なプロセスだが、それを実現した企業は、インターネット上で最も価値あるプラットフォームの仲間入りを果たせる可能性が高い。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

クラウドソーシングでアニメ動画を制作するCrevo、実写映像にも対応——独自の管理ツールで差別化を図る

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

Crevo代表取締役の柴田憲佑氏

クラウド動画制作プラットフォームのCrevoは9月5日、実写映像制作サービスの提供を開始した。

Crevoは2014年3月にサービスを開始して以来、アニメーションに特化したクラウド動画制作プラットフォームを提供してきた。これまでに500社が利用。登録クリエイターは3000人以上にのぼる。

今後はこのプラットフォーム上で実写映像制作サービスを提供する。顧客の顔や現場の雰囲気を直接伝えることができるインタビュー動画や店舗紹介動画など、実写撮影が必要である映像制作の需要に応えるため、サービスプランの拡充、システムの改善を進める。

映像制作全般をシステムで効率化

Crevo(当時の社名はPurpleCow)の設立は2012年6月。は2014年3月に「動画制作に特化したクラウドソーシング」とうたってサービスを開始した。2015年2月には1億円の調達を実施し、サービス名にあわせるかたちで社名をCrevoに変更した。2015年8月にはクラウドでの動画制作支援システム「Crevo Basecamp」の提供を開始し、動画制作を依頼するクライアントと動画を制作するクリエイターの間で発生する作業の工数削減を促進してきた。アニメーション動画制作の効率化、工数削減にはすでに成功し、安価なパッケージプランの提供が可能となっている。

一方で、クライアントからの需要が高いと感じていた実写映像制作のパッケージ化も2015年秋頃より着手。パッケージプラン、動画制作支援システムの最適化を行い、今後はアニメーション動画、実写映像の二軸でクライアントの需要に応えていくことになる。

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

Crevo Basecamp上では声優オーディションも行うことができる

ディレクターの負担を激減

実写映像制作は通常、企画完成後、スタッフ集めや機材準備、撮影地の確保からキャスティングまで、すべてをディレクターが担当する。手配が完了した後、撮影を実施、映像の納品を完了する。Crevoの実写映像制作サービスでは、ディレクターが属人的に行う工程をツール上のシステムで解決し、効率化していくことを目指すという。

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

映像のフィードバックを画面を共有しながら行うことができる

従来は試写会や対面でのコミュニケーションを通じて行うことが多かった制作中の映像へのフィードバックを、システムでオンライン化。さらに、ロケーション探しの工数、負担を減らすためにレンタルスペースを運営するYuinchuと事業提携を実施。Crevoでの実写映像制作時にはYuinchuが運営するレンタルスペースをディスカウント料金、特別な支払いサイクルで利用することができる。

「従来の実写映像制作では、スタッフィング(カメラマンなどのスタッフ集め)、ロケーション決め(撮影地の確保)、キャスティング(モデル、出演者確保)は、ディレクターが検索して確保する。もしくは知り合いを通じて見つけるなど、かなりアナログな方法で作業をしている部分が多いことが分かった。そのアナログな工程を効率化できればと思っている」(Crevo広報)

2016年秋には、ディレクターが担当することが多いストーリー構成もテンプレート化するなど、実写映像制作の工程もアニメーションと同様、効率化を図っていく予定だという。

少人数の制作チームでスケールを目指す

今後も動画制作事業を中心に事業を展開していく。だが一方で「普通の制作会社」にならないよう、動画制作支援システムの開発に力を入れてきたというCrevo。インターン、バイトを入れて25人いる従業員のうち、制作チームは半数以下。営業とエンジニアの採用は強化していく一方で、制作チームは業務効率化を進めることで、少人数体制のままでのスケールを目指していくという。

「企業から受けている映像制作案件は1年前に比べるとかなり増えているが、制作チームの人数はほとんど変わっていない。通常の映像制作会社の場合は従業員の大半が制作担当者。我々はインターネット企業としての立場を大切にして、働き方やツールでの効率化も大切にして、成長していきたいと考えている」(Crevo広報)