新型コロナ需要で空前の成長をみせるInstacartが240億円調達

これまでにない成長をみせているInstacart(インスタカート)は、需要に対応するため新たに資金を調達した。サンフランシスコ拠点の同社は米国6月11日、DST GlobalとGeneral Catalystがリードするラウンドで2億2500万ドル(約240億円)を調達したと発表した。本ラウンドには既存投資家のD1 Capital Partnersも参加し、Instacartのバリュエーションは137億ドル(約1兆4600億円)になった。

Instacartの創業者でCEOのApoorva Mehta(アプオルワ・メフタ)氏の声明によると、調達した資金はショッパーとパートナーに投資し、広告事業と法人事業を打ち切る。そして顧客エクスペリエンスに注力する。また、顧客が時間通りにグローサリーを受け取れるよう、技術・オペレーションのインフラにも投資する。グローサリー注文は対前年比500%増となっている。

今回の調達ラウンドは、武器を所持していなかった黒人のGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏が警察に殺害されたことを受けて人種問題の緊張が高まっている最中に行われた。フロイド氏の死亡から間をおかずして多くのテック企業がこの悲劇について意見を表明した。Instacartは「実行可能な変化をサポートするため」内部チームに100万ドル(約1億円)を投資する、とメフタ氏は先週ツイートした。100万ドルのうち50万ドル(約5000万円)は店舗内のショッパーとチームにあてられる。そして残りはEqual Justice Initiativeのような非営利組織に提供する。

Instacartのショッパーで活動家のVanessa Bain(ヴァネッサ・ベイン)氏の上記ツイートで言及されていた1000万ドル(約10億円)という数字は、ショッパーが引き続き独立請負業者と分類されるよう、無記名投票対策にInstacartが費やした総額だ。

消費者のためにグローサリーを買って届けるというサービスを独立請負業者にかなり頼っているInstacartは、ショッパーを250%近く増やす計画を発表した。同社のサービスは米国とカナダの3万店で利用可能だ。

Y Combinator卒業生のInstacartは、米国の世帯の85%、カナダの世帯70%超が同社のサービスを利用できるとしている。

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックでは、同社のサービスは人々にグローサリーを届けるために命をかけて業務を行ったエッセンシャルワーカーによって、重要なものとなった。何百万という家庭がグローサリーストアに行き健康をリスクにさらすことなくグローサリーを入手するのにInstacartのプラットフォームを利用した。その間、同社は需要に対応するため多くのショッパーを雇用している。売上高が増え同社は初の黒字となった、とThe Informationは報道している。しかし急激すぎる成長の中で、多くのショッパーはInstacartとその運営方法に対し納得できずにいる。

ショッパーは何年間も、少なくとも2016年からInstacartに不満を募らせてきた。2016年に独立請負業者はチップ廃止をめぐってInstacartアプリのボイコットを行った。それ以来、独立請負業者と分類されるフルサービスのショッパーは絶えずInstacartに対し声をあげてきた。昨年10月にショッパーは、賃金アップとチップのデフォルト設定を少なくとも10%にするよう求めて抗議活動を行った。新型コロナパンデミック中には、安全を確保するための備品、報酬、疾病手当ポリシー延長を求めて全米でストを行った。これまでにInstacartは一部変更を加えたが、要求の多くはそのままだ。

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(翻訳:Mizoguchi

米アマゾン上でのマスクの価格釣り上げで3Mが悪徳業者を訴訟

Amazon(アマゾン)は、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界的なパンデミックになって以降のサードパーティーによる価格釣り上げを警戒すると約束している。しかしながら同社の取り組みは、同社の巨大なeコマースプラットフォームを利用するベンダーの数があまりにも多いこともありうまくいったとはいえない。今週、カリフォルニアで起こされた訴訟において3M(スリーエム)は、売り手が傷物や偽造品に著しい高価格を付けていたと主張している。

同社によると「被告はその不正なマスクに、3MのN95マスクがつけている定価の20倍以上の価格にしていた、と弊社は申し立てている。アマゾンは、被告がこれらの法外な価格を付けたものの正体を偽り、購入者が3M製でないマスクを受け取ったこと、購入した数よりも少ない数、包装が疑わしい商品、欠陥品や破損品を受け取ったことを知った。アマゾンは同社のプラットフォーム上でそれらのアカウントをブロックした」と主張(3Mリリース)している。

N95は濾過効率がたいへん良いため、現在の危機において最も需要の大きい個人防護具になっている。CDCの推奨によると、外科用マスクよりもこのマスクを推奨(CDCリリース)している。後者は多くの場合、大きな飛沫や液体の遮断に適している。一方、N95マスクは、大小の大気中微粒子の95%以上を遮断できる。そのため多くの団体が、最前線の疾病対応者のためにそのマスクを優先確保することを主張してきた。

関連記事:アマゾンが新型コロナ禍の便乗値上げ禁止の法制化を米議会に求める

アマゾンは、同社がこの訴訟に関わっていることを認め、本誌に対して「アマゾンには偽物を売ったり価格を釣り上げたりするような場所はない。3Mと協力してこれらの悪質な者たちに法的責任を課すことを誇りに思う。アマゾンは長年のポリシーとして偽造品の販売や価格釣り上げに反対してきており、疑わしい製品や言語道断な価格を事前に排除するプロセスもある。弊社のポリシーに違反している悪者を見つけたときには直ちにその製品を排除し、悪者に対してそれにふさわしい処置をとる。それは私たちがかねてから行なってきたことだが、このたび3Mのようなブランドの協力を歓迎する」とのことだ。

同社サイトによると、これまでに排除した製品は50万品目あまりで、価格釣り上げで停止したアカウントは6000件を超えている。一方、3Mのプレスリリースによれば、同社は偽造製品や不正な主張のある3000以上のサイトの削除に関わってきたという。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Twitterが5Gと新型コロナに関するツイートに事実確認ラベルを付与

5Gテクノロジーと新型コロナウイルスを巡る陰謀論がパンデミック初期から流れ始め、今も強まっているようだ。

実際あまりのひどさに、Twitter(ツイッター)は新型コロナウイルス(COVID-19)と5Gに関する一部のツイートにラベルを付け、ウイルスに関して「事実を確認する」ようユーザーに促している。Business Insider(ビジネス・インサイダー)によると、ラベルをクリックすると、主張の誤りを暴く情報源を集めたページに案内され、BBCや(ファクトチェックの)Snopesなどへのリンクが表示される。2020年4月に陰謀論により5G電波塔への放火まで行われてしまった。

Twitterの事実確認ラベルはかなり広い範囲に適用されているようで、ラベルそのものに関するジョークや紹介のツイートにも付けられることがある。

事実確認ラベルの適用対象を5G陰謀論にまで広げたのは、Twitterの高まるプラットフォーム管理の取り組みの一環だ。ラベルはコンテンツの非表示化や完全削除を行う代わりに、ユーザーが自ら結論を下すための追加情報を提供する。穏やかな言い回しであってもラベルによる警告は、少なくとも同プラットフォームの特にだまされやすい(信じやすい)ユーザーが、信用に値しないコンテンツを区別するのには役立つはずだ。

関連記事:新型コロナは5Gが原因との陰謀説がインターネット上を駆け巡る

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米アップルが新型コロナ対策アプリに症状と健康状態を匿名で共有できる機能を追加

Apple(アップル)は自社製の新型コロナウイルス向けのiOS用対策アプリウェブサイトに新機能を追加した。ユーザーの年齢、これまでの健康状態、症状、潜在的な暴露のリスク、居住している州といった情報を匿名で共有できるようになった。同社によれば、こうした情報は個人を特定するいかなるデータとも関連付けられていない。集計情報としてCDC(米疾病管理予防センター)に提供され、同センターが新型コロナウイルス感染症のスクリーニングプロトコルを改善するのに役立てられるという。

またこのアプリは、集計されたデータによって公衆衛生機関とCDCを支援し、新型コロナウイルス感染症に関して、および暴露の内訳と暴露リスクに関して、潜在的なリスク要因についての入手可能なベストな情報を一般に提供できるようにする。

アップルはすでに3月に、コロナウイルスのスクリーニングアプリとウェブサイトを立ち上げていた。検査すべきかどうかのアドバイスをユーザーに提供するためのスクリーニングツールや、手洗いや消毒のベストプラクティスといった予防策に関するヒントも提供してきた。

このアプリとウェブサイトは、アップルとGoogle(グーグル)の共同作業によるCOVID-19 Exposure Notification APIとは別物だ。そのAPIは、公衆衛生機関や、そのパートナーが利用できるデベロッパー向けのツールで、匿名化され、プライバシーに配慮した通知機能を実現するもの。新型コロナウイルス感染症の人と接触した可能性があるか、暴露したかもしれないユーザーに対して警告する。ここで取り上げたアップルのアプリは、情報の提供とスクリーニングのためのツールに過ぎない。とはいえ、今回のアップデートにより、匿名化された集計データの収集を通して、公衆衛生機関とCDCが新型コロナウイルス感染症の広がりを、よりよく理解するためのリソースとしても機能するようになる。

どのように受け取られているかはともかくとして、新型コロナウイルスが登場してから、まだそれほど長くは経っておらず、科学者や研究者も、まだ十分に理解できているとは言えない。感染した集団について、より多くのデータや情報を収集して研究することは、健全なコミュニティとして、新型コロナウイルスに関して多くを学び、その脅威をどのように緩和するのがベストなのか知るための重要な手がかりとなる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

透明な外科手術用マスクに投資家が殺到、スイス拠点のHMCAREが約1.1億円を調達

スイスのÉcole polytechnique fédérale de Lausanne(スイス連邦工科大学ローザンヌ校、EPFL)から生まれたHMCAREが、透明で環境にも優しい透明な外科手術用マスク(EPFLリリース)を開発し、100万スイスフラン(約1億1300万円)の資金を調達した。

創業者は、2015年のエボラ出血熱のアウトブレーク時における医療関係者たちの仕事ぶりや、患者と緊密に働きながらも顔を見せることができない世界中の小児病院の職員に触発された。また、免疫が弱い患者の親や家族たちも、顔の2/3を隠して彼らと人としてのつながり作らなければならないことにも触発されている。

これまでにも透明なマスクは存在していたが、それらは一般的なマスクに透明な窓を付けたもので、その窓はすぐに曇り、通気性がなかった。同社のCEOであるThierry Pelet(ティエリー・ペレ)氏は、医療現場の厳しい要求を満たす透明マスク素材のプロトタイプをEPFLの同僚たちに提案した。それらは空気は通すものの、ウイルスや細菌は通さないというものだった。

チームは、スイスの素材センターであるEmpaと協力して、新しいタイプの繊維を開発した。バイオマス由来の透明繊維を100nm(ナノメートル)間隔でシート状に配置し、それを3層にすることで、柔軟性と通気性がある素材を作った。ほぼ透明に近い、すりガラスのような素材だ。それはHelloMaskと呼ばれている。

この素材は大量生産が可能で、通常の布のようにマスクを作ることができる。コストは高いが、世界は現在マスクを求めており、透明なマスクというアイデアは投資家の目にも止まる。HMCAREはあっさりと100万フラン(約1億1300万円)のシードラウンドを完了し、それまでの研究開発は寄付や補助金でまかなうことができた。

マスクの発売は2021年初頭を予定している。一般消費者向けに販売される可能性もあるが、当初は医療コミュニティ向けとなるだろう。

画像クレジット:EPFL

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

恋愛、仕事、健康ーー新型コロナで加速するポストヒューマニズム

編集部注:本稿はMario Gabriele(マリオ・ガブリエル)氏による寄稿記事だ。同氏はCharge所属の投資家であり、The Generalistの編集者でもある人物。

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1970年代半ば、Fereidoun M. Esfandiary(フェレイドゥン・M・エスファンディアリ)博士は自分の名前を変える決断をした。そのときから彼は、法律上も正式に「FM-2030」と呼ばれるようになった。

「現在の慣習に従った名前は、祖先、民族性、国籍、宗教など、その人の過去を表すものだ。今の私と10年前の私は違う。「2030」という名前は、2030年前後が魔法の年代になるという私の確信を反映したものだ。2030年には、人間は不老になり、すべての人に永遠に生きる十分な機会が与えられるだろう。2030年は夢でありゴールである」とエスファンディアリ博士は説明した

2030年というと100歳になるが、彼はそんなことは気にしなかった。100歳まで生きる確信があったからだ。

改名した当時、すでに40歳を過ぎていたFM(Future Manの略ではないかと推測する人もいる)は、既存の枠には収まらないタイプの人間だった。イラン人外交官の息子だったFMは、11歳までに17か国を転々とした。1948年のオリンピックで母国のバスケットボールチームの代表選手になった後は、学問の道へと進み、カリフォルニア大学バークレー校とUCLAで学んだ後に、ニュースクール大学で最初の未来学の教授の1人となった。FMが「人類の新概念」を提唱し、ポストヒューマン時代への移行に必要なステップについて考察し始めたのはこの頃だ。ポストヒューマン時代はホモ・サピエンスが肉体の限界をテクノロジーによって超越して「超生物有機体」になる画期的な時代だと彼は説明していた。

FM-2030 (Image Credits: Wikimedia Commons under a Flora Schnall license)

人類は、21世紀の大部分を、FMが半世紀前に予言したことを実現しながら、ポストヒューマン時代に向かって突っ走ってきた。FMは未来学の学者として、3Dプリンター(彼はサンタクロースマシンと呼んでいた)の発明を予見し、さらには遠隔治療、遠隔会議、テレショッピング、遺伝子編集の登場も予測した。

こう見ると、現在、FMの予測どおりにポストヒューマン化のプロセスが順調に進んでいるように思える。しかし、後で2020年を振り返ったとき、我々はコロナウイルス危機がポストヒューマン化への大きな転換点になったと感じることだろう。今、人間性の核心をなす事柄に対する考え方が根本的に作り直されている。とりわけ、アイデンティティー、仕事、健康、愛に対する考え方が良い意味で見直されているように思う。つまり、ポストヒューマン時代が本格的に始まりつつあるということだ。

アイデンティティー

閉鎖された空間にいることが日常になった結果、アイデンティティーを物理的な肉体や場所と切り離して考える傾向が強まった。このような時でもコミュニケーションをとり、人と交流し、遊びたいと感じるが、どれも今はデジタル領域でしか行えない。こうした制約があると、新しい形の自己表現が自ずと形成される。例えば、Zoomの背景を使って自分が興味を持つ事柄を表現したりジョークを飛ばしたりもできるし、現実の世界並みに対話機能が充実したメタバースでアバターを使って交流を楽しむという方法もある。任天堂のAnimal Crossing(どうぶつの森シリーズ)では、数百万人が交流し仮想資産を取引し結婚式会議を開いている。Travis Scott(トラヴィス・スコット)がマルチプレイゲームFortniteにて行った超現実的な世界感のバーチャルコンサートは同時ビュー数1230万総動員数は2770万人を記録した。また、これらの仮想プラットフォームは人間の暗い一面も浮き彫りにしている。どうぶつの森では、一部の住人が、「醜い」と感じた村人をいじめたり虐待したりしているのだ。

このような変化はオフィスでも生じている。Pragliのようなツールの登場がその良い例だ。こうしたツールでは、「Tiger King」や「Love Is Blind」などから拝借した画像をZoomの背景に使うことよりもはるかにいろいろなことができる。Pragliでは、同僚とのテレビ会議に飛び込む代わりに、アニメスタイルのキャラクターで表された同僚のアバターとつながることができる。Pragli上でのアバターはオプションで変更可能だ。最新のアップデートでは、男性でも、髪を編んだり、カールさせたり、ポニーテールに結んだりできるようになっている。「楽しい」とか「悲しい」という表情も設定でき、現実の感情をアバターに投影しやすくなっている。

このような自己表現は、今、家の外ではマスクを着用してソーシャルディスタンスを保ち、個性を見せないという、いわば少し人間味に欠ける姿とは対照的だ。マスク着用のように、自分の一部分を「編集」することがスタイルとして確立されつつあるようだ。例えば、G95の「biohoodie」にはフェイスカバーが組み込まれており、クリエイティブスタジオのProduction Clubは、社交用に設計された防護服を発表している。最悪の事態が過ぎた後でも、これまでにない慎重さと暗黙のソーシャルディスタンシングがファッションに現れるようになるかもしれない。

仕事

「仕事は人に存在意義と目的を与えてくれる。仕事なしでは人生は空虚だ」とStephen Hawking(スティーブン・ホーキング)博士は語った。この言葉に同意するかどうかはともかく、確かに人は人生の大半を仕事との関わりの中で生きている。新型コロナウイルス感染症よって人間から仕事が奪われてロボットへシフトする機械化が加速しているが、同時に、人はそのことに感謝もしている。ロボットのおかげで重要なサービスの提供を継続でき、ウイルスとの接触を回避できるからだ。中国の無人小型トラックメーカーNeolixは、パンデミック以降、引き合いが急増しており、食料や医療用品の運搬や市街地の殺菌消毒などの業務を委託されている。AMPUVD、そしてNuro(ニューロ)やStarship(スターシップ)といったサプライヤーでも同様に需要が増大しているが、Harmonic Drive(ハーモニックドライブ)やファナックなどの業界大手の注文状況を見ると、業界全体で需要が増えていることがわかる。今年の第1四半期のファナックの受注量は昨年の第4四半期から7%増加した。

この傾向は肉体労働に限った話ではない。顧客サポート部門やモデレーション部門が閉鎖される中、多くの企業がAIソリューションを積極的に導入している。Facebook(フェイスブック)とGoogle(グーグル)は自動モデレーションを拡大したし、PayPal(ペイパル)は、ここ数週間の顧客からの問い合わせのうち65%をチャットボットで対応した。これは同社の最高記録だ。

幸い仕事を失わずに済んだ人も仕事の環境がこれまでとは一変するかもしれない。ロボットとの協業を強いられ、機械化されたシステムの一部として扱われることが多くなるだろう。Walmart(ウォルマート)では受付係が自動フロア清掃ロボットと並んで仕事をするようになるだろうし、マクドナルドの調理係はキッチンの至るところでロボット副料理長と一緒に仕事をすることになるかもしれない。Amazon(アマゾン)の倉庫係は、Kiva Systems(キヴァシステムズ)買収のおかげでロボットとの協業にはすでに熟練しているが、今後は、温度カメラで温度管理された倉庫内でパレット運搬係と同じように管理されることに慣れる必要があるだろう。これは、世界各国およびあらゆる業界で取り組みが進んでいる広範な監視キャンペーンのごく一部にすぎない。中国では、人の出入りを監視するカメラの設置台数を増やしており、企業は社員を監視するための「tattleware(上司用監視)」ソフトウェアの購入に予算を割いている。こうした傾向の恩恵を受けるのは、分刻みで社員のオンラインでの仕事ぶりを監視するInterGuard(インターガード)などの企業だ。Sneekでは、最大で1分に1回、作業員の写真が撮影される。SneekのCEOは、「sneeksnapコマンドは、同僚が鼻をほじるなど、ちょっとばつの悪いことをしたときに特に便利だ」と冗談を飛ばした。

健康

人は目覚めている時間の大半を、健康のことを考えて過ごしている。自分の弱い部分に対する意識が強くなると、肉体的な限界を引き上げてくれるテクノロジーに注目し始め、まるでお試しソフトを使うかのように、自分の体でいろいろなテクノロジーを試すようになる。ビタミンCや亜鉛などの免疫力向上サプリメントへの関心が高まっており、そのようなサプリメントの売り上げは今、うなぎ登りだ。さらには、インフルエンサーが宣伝しているオゾン注腸療法などのリスクの高い方法も注目を集めている。トランプ大統領やブラジルのJair Bolsonaro(ジャイール・ボルソナーロ)大統領をはじめとする世界のリーダーたちが推奨したことがきっかけで、ヒドロキシクロロキンの需要も急増し、処方回数は5倍増になっている

大統領の意見や問題となっている療法についてどう感じるかはさておき、これらはスピード重視の反復型治療であり、熟考されるFDAの承認プロセスよりもシリコンバレーの合言葉「素早く動き、破壊せよ!」に近い。健康リスクに対して極めて寛容なことで知られるBiohackingコミュニティは、空き時間にオンラインで協力して新型コロナウイルスワクチンの研究開発に取り組んでいる。「Biohackingはかつては似非科学コミュニティだったが、DIYバイオロジー、コミュニティラボ、ハッカースペースなどの領域で、ある意味大ブレークしようとしている」とあるコントリビュータはいう。

直接試すという方法以外にも、想定外の未来にも対応できるように今から肉体の限界を引き上げておくことにも注目が集まっている。自宅隔離が続く今、生殖能力低下への不安を抱えている、あるいは将来が見通せない今の状況では子づくりは難しいと感じる男性が、Legacy(レガシー)などの企業が提供している在宅精子凍結サービスの利用に関心を示しているという。また、Modern Fertility(モダンファティリティ)とSoFi(ソフィー)が1894人の女性を対象に行ったアンケート調査でも同様の結果が出た。このアンケートでは、31%がパンデミックによって妊活プランが影響を受けたと回答し、41%が新型コロナウイルスが原因で子づくりを遅らせるつもりだと回答した。

​恋愛

「問題は私が独身で、これからも独身でいる可能性が高いことではない。私が孤独で、これからも孤独でいる可能性が高いことが問題なのだ」と小説家のCharlotte Brontë(シャーロット・ブロンテ)は書いた。

現在の状況では、彼女が書いたこの悲惨な状態から抜け出す方法があまり見当たらないため、AIコンパニオンに注目する人もいる。2015年に開発されたReplikaは、共感的なテキストメッセージを送ることでデジタルセラピストとしてのサービスを提供するチャットボットである。月間50万人にのぼるアクティブユーザーたちにとって、Replikaはあまりにも魅力的すぎて抵抗できない存在のようだ。アクティブなユーザーの40%がこのチャットボットを恋人だと思っている。新型コロナウイルスは、人とAIパーソナリティの間の関係を深めるのに理想的な触媒として機能するのかもしれない。本当のパートナーよりもAIパートナーのほうに愛情を感じるという兆候がすでに出始めている。マイクロソフトのチャットボット「Xiaoice」に関する研究によると、Xiaoiceとの会話のほうが人間どうしの会話より長続きするという。

生身の人間との愛を見つけることにエネルギーを注いできた人たちにとって、今回のパンデミックは恋人と会うことの意味をいや応なく考え直す機会となった。対話は、チャットやテレビ電話など、ほとんどオンラインで行われるため、相手に求める条件も変わってくる。住んでいる場所は重要ではなくなり、いつでも話せること、答えがすぐに返ってくることが重要になる。触れたいという願望(気持ち悪い言い方をすれば「肌への渇望」)が御しがたくなると、当事者は何とかして実際に会おうとする。その過程で、人はパートナーを潜在的な脅威、つまり、意図は良くても自分を危険にさらす可能性のある肉体の持ち主とみなす。その際、個人を肉体と切り離して見るようになる。肉体は、交渉する必要のある法的責任を保持する独立した存在となる。パンデミックの期間が長くなると、このような恐怖が無意識の嫌悪感と化し、もっと禁欲的な時代に存在していた、肉体に対する嫌悪感がよみがえってくる。このような道徳観を修正するには時間を要する。

今、自己は壊滅的な被害を受けている。ただ、それは悪いことではないかもしれない。アイデンティティーがオンラインに移り、仕事が奪われ、物理的な肉体がOSのように最適化され、愛から肉欲がそぎ落とされるとき、新しい機会が生まれるだろう。人は新しい自己表現方法に意味を見出し、仕事を超えた目的意識を見つけ(または仕事の意味を定義し直し)、「生物学が世界を席巻する」のにともない肉体的な限界が引き上げられ、新しい存在に愛情を見出すようになるだろう。我々は今、シュンペーター学派のいう「創造的破壊」の時代を生きており、それを産業的なレベルではなく人類学的なレベルで感じている。ここから素晴らしいことが起きるかもしれない。

FM-2030にとって、未来とは驚くべき場所であった。そこでは「人々は特定の家族や派閥に属することなく、地球全体を、さらには地球外まで自由に流れるように動き回る。個人が尊重されると同時に全体性も維持される」と彼は考えていた。新型コロナウイルスがもたらした変化は人類に暗い影を落としたが、FMが描いていたビジョンの中には今、実現しているものもある。人類は今まさに世界中で一致団結し、かつてない結束力で共通の敵に立ち向かっている。おそらく、時間が経てば、FMの残りの夢も実現するだろう。

ただし、FM-2030の先見の明をもってしても、1つの予測だけは大きく外れてしまった。2000年に膵臓がんで亡くなったFMは100歳の誕生日を迎えることはできなかった。享年わずか69歳。もし100歳まで生きていたら、今でも未来を創造する役割を担っていただろう。FMの遺体は人体冷凍によりアリゾナ州スコッツデールに保存されている。もしかしたらそこで、彼は世界が自分に追いつくのを待っているのかもしれない。

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Category:人工知能・AI

Tag:コラム

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(翻訳:Dragonfly)

Facebook Messengerにすぐに顧客へ返信できるアカウント切り替え機能追加

Facebook(フェイスブック)はMessengerに新機能を追加し、ビジネスオーナーは友達や家族とのチャットに使っているMessengerアプリを使って顧客からのメッセージに簡単に返信できるようになった。

このアップデートによりビジネス側では顧客とのコミュニケーションを単一のアプリで実行できるようになった。これまでは顧客の問い合わせに回答するためにそのつどメールなど別のアプリにログインする必要があり、この往復はビジネス側担当者の悩みのタネとなっていた。

フェイスブックが実施した調査によると、オーナー、スタッフなどビジネス側担当者の90%以上がすでにMessengerアプリを友達や家族とのチャットに利用しているという。そこでMessengerに顧客とのコミュニケーションに使えるオプションを提供することが理に適っているとフェイスブックは考えた。

MessengerアプリからFacebookページへの問い合わせに回答できるようにすることは2020年5月に予告されていた。米国時間6月9日にこの機能がまずiOS向けにリリースされ、実際に利用できるようになった(Facebookプレスリリース)ことをフェイスブックは発表している。

新機能は外出の制限、自粛によりオンラインショッピングが急拡大したため、ビジネスには顧客からの問い合わせが殺到し、応答に遅れるが生じている状況で登場した。パンデミック以前にHubspotが行った調査、90%の顧客がカスタマーサービスで重要なのは「すぐに返事があること」だと回答している。現在、顧客が企業に対して尋ねたいことは増え、顧客からの質問は以前より急増している。例えば「現在営業しているのか?」「営業時間は変更されたのか?」「これこれの在庫はあるか?」「接触なしの宅配に対応しているか?」などの質問だ。

リリース前ののテストに参加したMatt Volpert(マット・ボルパート)氏は地域のアパレル店のオーナーだが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、顧客からの問い合わせが2.5倍に増えたと語っている。そのためスタッフがメッセージに回答するのが追いつかず、遅れがちになっていたという。

新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウンのためにスタッフの一部をレイオフせざるを得なかった企業、特にスモールビジネスにとって顧客からの問い合わせに迅速に対応することは売上の落ち込みを最小限にするために最重要な課題のひとつだ。

フェイスブックは「ビジネスユーザー向けのMessengerの新しい機能はFacebookページに代わるものではない」と注意し、ページマネージャーアプリにはまったく影響を与えていない述べている。ビジネスユーザーは従来どおり、ページマネージャを使ってフェイスブックへの投稿を管理し、広告を作成し、ページインサイトを表示して統計を見ることができる。またここからメッセージへの回答を行うこともできる。Messengerに追加された新しいインボックスは返信方法のオプションを増やすことによってスモールビジネスのオーナーなどの利便性をアップさせることが主な目的だ。店舗などのオーナーは友人や家族とコミュニケーションするためにMessengerをすでに開いていることが多いが、これが顧客とのコミュニケーションにも使いやすくなったわけだ。

Messengerの新機能を利用するためにビジネスユーザー側で利用方法に変更を加える必要はない。 オーナー、担当者の個人アカウントがFacebookページに連動していれば新機能は自動的に有効になる。店のオーナーなどはメッセージに返信するときに個人またはビジネスのどちらのアカウントで返信するか選択できる。

新機能はパンデミック以降にフェイスブックが行ってきた一連の取り組みのひとつだ。フェイスブックはいち早く新型コロナウイルス対策のコミュニティヘルプ立ち上げ、利用者の安全を守ると同時に地域のビジネスの支援を図った。最近では地域のスモールビジネスに対する助成金提供ギフトカードやバウチャーなど販売ツールといったサービス追加している

Facebook Messengerのビジネス用インボックスは本日からiOSアプリで利用可能だ。数週間以内にAndroid版も公開される予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ディープフェイクテキストが国家の危機を増幅する

編集部注:本稿はJinyan Zang氏、Latanya Sweeney氏、Max Weiss氏による寄稿記事である。Zang氏はハーバード大学のData Privacy Labの研究者、Sweeney氏はハーバード大学で「政府とテクノロジー」を専門にする教授、Weiss氏は今回のディープフェイクテキスト実験を実施したハーバード大学の学生だ。

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米国の連邦政府機関は国内における新型コロナウイルスのパンデミック拡大を阻止しようとさまざまな措置を講じており、その厳しさは増すばかりだ。連邦政府により策定される規則の影響を受ける米国民と企業は、自分たちの意見や経験をどのように政府に伝えることができるのだろうか。移動の制限監視の強化などをはじめとする新たな規則の多くは、施行に際して連邦政府の権限を平時よりも拡大する必要がある。このような場合、米国の法律では、連邦政府が規則案を一般に公開し、国民がオンラインで意見を投稿できるようにすることが義務付けられている。しかし、米国の民主主義にとって不可欠な仕組みである連邦政府のパブリックコメントウェブサイトは、今回のような危機に際して安全に機能するのだろうか。ボットによる攻撃に対して脆弱ではないだろうか。

2019年12月、筆者らは、自動化された攻撃に対するパブリックコメントプロセスの脆弱性に関する実調査についてまとめた新しい研究論文を発表した。この調査では、誰でも利用できる人工知能を使用してディープフェイクテキスト(コンピュータが深層学習により人間の発言を模倣して生成するテキスト)によるコメントを1001件生成し、それを実際にアイダホ州のメディケイド被保険者に就業状況報告を義務付ける連邦規則案に関するパブリックコメントを募集するためにCenters for Medicare & Medicaid Services(メディケア・メディケイド・サービス・センター、CMS)が開設したウェブサイトに投稿するという実験を行った。

ディープフェイクテキストを使用して作成したコメントは連邦パブリックコメント期間中に投稿されたコメント総数1810件の55%以上を占めた。筆者らは、その後の追跡調査で、これらのコメントがボットによるものだと思うか、実際に人が書いたものだと思うかを尋ねるアンケートを実施した。回答者の正答率は50%、当てずっぽうで答えたときの確率と同じだった。

Image Credits: Zang/Weiss/Sweeney

上記はボットによって生成されたディープフェイクテキストの例だ。アンケート回答者全員がこのテキストは人が書いたものと判断した。

筆者らは実験終了後、ディープフェイクコメントを投稿したことをCMSに通知し、それらのコメントを投稿履歴から削除したが、悪意のある攻撃者がそれと同じことをするとは思えない。

連邦ウェブサイトに対する大規模なフェイクコメント攻撃は過去にもあった。例えば、2017年、ネット中立性規制を撤廃する規則案について、連邦通信委員会(FCC)のウェブサイトに対してフェイクコメント攻撃が行われたことがある。

ネット中立性規則に関するパブリックコメント期間中、通信業界団体のBroadband for America(ブロードバンド・フォー・アメリカ)に雇われた複数の企業が、ボットを利用してネット中立性規則の撤廃を支持するコメントを作成したのだ。こうして投稿された数百万件のコメント(中にはすでに亡くなっている有権者や架空の人物になりすましたものもあった)によって、世論がねじ曲げられたのである。

ネット中立性に関するコメントを事後にテキスト解析したみたところ、FCCのネット中立性撤廃案に対する2200万件を超えるコメントのうち実に96~97%がボットを使ったコメント操作だった可能性が高いことがわかった。このコメント操作では比較的単純で目立つ検索・置換方式が使われていたため、FCCのように膨大な数のコメントが投稿された場合でも容易に検出できたはずだ。しかし、調査の結果、簡単な検索・置換方式で作成された不正なコメントであることが判明した後も、FCCはそれらのコメントを正当なパブリックコメントとして受理していた。

このように、比較的単純な方法でも連邦政府の政策決定に影響を与えることができたという前例がある。しかし、ボットによるディープフェイクテキスト投稿がもたらす脅威について筆者らが行った実験から、今後の攻撃はより高度で検出困難になる可能性が明らかになった。

パブリックコメントに関する法律と政策

はっきりさせておこう。自分たちの要求を伝えそれを検討してもらうことができる仕組みは民主主義モデルの根幹である。憲法に明記され、人権擁護団体によって厳密に保護されているとおり、すべての米国民は、投票、自己表現、異議申し立てなどにより、政府に参加する役割を保証されている。

Image Credits: Zang/Weiss/Sweeney

連邦政府機関が全米市民に影響を与える新しい規則を策定する際には、規則案によって最も影響を受ける一般市民、権利擁護団体や企業が連邦機関に対して懸念を表明できるようにパブリックコメント期間を設け、その規則について最終決定を行う前にそれらのコメントを検討することが法律で義務付けられている。このようなパブリックコメントの義務化は、1946年の行政手続法の成立により導入され、2002年には電子政府法により、連邦政府はパブリックコメントを受信するオンラインツールを作成することを求められるようになった。それ以来、投稿されたコメントを実際に調査したことを証明すること、およびパブリックコメントに基づいて下した決定に関連する分析結果や決定の正当性を示すものを開示することを連邦政府に要求する判決がいくつも下されている[Overton Park保護団体対Volpe 401 U. S. 402, 416(1971)Home Box Office対FCC 567 F.2d at 36(1977)Thompson対Clark 741 F. 2d 401, 408(CADC 1984)を参照のこと]。

実は、筆者らがCMSのパブリックコメントサイトでディープフェイクテキスト投稿に対する脆弱性をテストしたのは、2019年6月、米国最高裁が7対1で「CMSは、州内でのメディケイド資格取得規則に就業状況報告義務を追加するという州政府の提案を検討する際に、行政手続法のパブリックコメント検討義務を省略することはできない」という判決を下したからだ。

政治学者の研究によると、パブリックコメントは連邦政府機関による最終決定に大きな影響を及ぼす可能性がある。例えば、ハーバード大学が2018年に行った調査によると、連邦準備制度が定めるドッド-フランク法関連規則についてコメントを投稿した銀行は、コメントしなかった銀行よりも70億ドル(約7600億円)多い超過リターンを獲得していたことが判明した。さらに、同調査においてボルカー規則とデビッドカード交換規則について投稿されたコメントを分析した結果、さまざまな銀行から投稿されたコメントが、初期草案から最終案に至る「不透明なプロセス」に重大な影響を与えたことがわかった。

2017年のネット中立性撤廃規則では、業界団体のブロードバンド・フォー・アメリカが、正式な社名を使って直接コメントするだけでなく、ネット中立性撤廃を支持する数百万件のフェイクコメントを投稿することで、FCCの規則案が米国市民によって広範に支持されているという誤った認識を作り上げた。

ディープフェイクテキストによるパブリックコメントへの投稿を阻止するテクノロジー

筆者らの研究はディープフェイクテキストの脅威がパブリックコメントウェブサイトに混乱をもたらすことを示しているが、これは、長年にわたり米国の民主主義を支えてきたパブリックコメントウェブサイトという仕組みを終わらせるべきだということではない。テクノロジーを活用して、人間が書いたパブリックコメントのみを受け入れ、ボットによるディープフェイクテキストは拒否する革新的なソリューションを実現する方法を見つける必要がある。

パブリックコメントプロセスには、コメントの投稿とコメントの受理という2つの段階があり、どちらの段階でもテクノロジーを活用して問題を解決できる可能性がある。

まず、コメントの投稿という最初の段階にテクノロジーを利用することで、そもそもボットがディープフェイクコメントを投稿するのを阻止できる。そうなると、攻撃者はボットの代わりに大勢の人を使わざるを得なくなり、コストが高くなって攻撃自体が割に合わなくなる。すでに広く浸透しているソリューションの1つにCAPTCHAボックスがある。インターネット上の入力フォームの末尾で、ある単語を視覚的に判読するか音声で判別するように求め、正解した場合にのみ送信をクリックできるようにする仕組みだ。CAPTCHAでは余分な手順の追加によりボットによる送信実行が困難になる。こうしたツールは、障がい者でも使えるように改善する余地はあるものの、正しい方向への一歩といえるだろう。

ただし、海外の安い労働力を使ってCAPTCHAの入力を行わせディープフェイクコメントを投稿するという手段を取られたら、CAPTCHAでは攻撃を阻止できない。これに対抗する1つの方法として、コメントを投稿するたびに毎回厳密な個人情報の入力を求めるという方法が考えられるが、その方法だと、CMSやFDA(食品医薬品局)によって現在行われている匿名コメントの受け付けが不可能になる。匿名コメントは、ヘルスケアなどのデリケートな問題に関する規則案によって多大な影響を被る可能性のある個人がプライバシーを守りつつコメントする方法として有用だ。したがって、ユーザーの認証手順とコメントの投稿手順を切り離して、認証された個人だけがコメントを匿名で投稿できるようにすることが技術的な課題となるだろう。

最後に、第2段階のコメントの受理においては、より高度なテクノロジーによって、ディープフェイクテキストと人間による投稿を識別できる。筆者らの研究では100人を超える調査対象者がディープフェイクテキストの例をフェイクとして判別できなかったが、より高度なスパム検出アルゴリズムが登場すれば、判別率は向上するだろう。今後、機械学習による手法が進歩するにつれ、ディープフェイクテキストの生成アルゴリズム開発と判別アルゴリズム開発がせめぎ合うようになるかもしれない。

当面の課題

将来、テクノロジーの進歩によってさらに包括的なソリューションが可能になるとはいえ、ディープフェイクテキストが米国の民主主義に及ぼす影響は現在進行中の脅威である。そのため、連邦政府のすべてのパブリックコメントウェブサイトで、当面のセキュリティ措置として最新のCAPTCHAを採用することを推奨したい。この方針は、米国上院調査委員会のReport on Abuses of the Federal Notice-and-Comment Rulemaking Process(連邦告知とコメント規則策定プロセスの乱用に関する報告)でも支持されている。

加えて、より優れたテクノロジーソリューションを開発するために、政府、研究者、民間のイノベーターという産学官の連携を確立する必要がある。ハーバード大学が、他の20の教育機関およびニューアメリカ財団、フォード財団、ヒューレット財団と共にPublic Interest Technology University Network(パブリックインタレストテクノロジー大学ネットワーク)に参加したのもそのためだ。このネットワークは、公益に資することを目指す新世代の技術者や政策担当者を支援することに専念している。さまざまなカリキュラム、研究および実験的な学習プログラムを通して、パブリックインタレストテクノロジーという分野を構築するのが目的だ。将来的には、最初から公共の利益を考えてテクノロジーの開発と規制が行われるようになることを目指している。

新型コロナウイルスによって米国社会のさまざまな部分が大きな打撃を受けたが、トランプ政権下の連邦機関が規制緩和規則を提案する動きは弱まっておらず、それらの緩和規則が及ぼす影響は現在のパンデミック収束後も長く続くだろう。例えば、2020年5月18日に環境保護庁(EPA)が、EPAによる規制の支持に使用できる研究調査の制限に関して新しい規則を提案したが、この規制案には2020年4月6日時点で61万件のコメントが寄せられている。また、2020年4月2日には、教育省がオンライン教育と遠隔教育に関する規制を恒久的に緩和する新しい規則を提案した。さらに、2017年に2200万件ものボット生成コメントが投稿されたFCCのネット中立性規則に関するパブリックコメントは、「FCCはネット中立性規則の廃止が公共の安全と低所得者向け携帯電話アクセスプログラムに及ぼす影響を無視した」という連邦裁判所の判決をうけて、2020年2月19日にコメント募集が再開された。

連邦機関のパブリックコメントサイトは、規則の最終案が決定される前に米国の市民と団体が連邦機関に対して懸念を表明する唯一の手段だ。より高度なテクノロジーを活用して不正防止を図ることにより、国家の危機の際に米国の民主主義がディープフェイクテキストによってさらなる脅威にさらされるという事態を防ぐ必要がある。

“新型コロナウイルス

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Category:パブリック 人工知能・AI

Tag:ディープフェイク ディープラーニング

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(翻訳:Dragonfly)

米国のeコマースは2020年に18%成長も小売全体の売上減をカバーできず

eMarketer(eマーケッター)が米国時間6月8日に発表した見通しによると、米国における2020年のeコマース売上高は、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックの影響で18%成長する。しかしオンライン注文の増加があっても米国の小売全体が今年受ける打撃すべてを補えない、と指摘している。自動車や燃料も含めた米国の全小売の売上高は2020年に10.5%減の4兆8940億ドル(約530兆円)になるとアナリストは予測している。2016年以来の低水準だ。

この減少幅は、2009年の景気後退時の8.2%減よりも大きい。

「米国においてここ10年で最も大きな消費支出減だ」とeMarketerのシニア予測アナリストであるCindy Liu(シンディ・リュー)氏はレポートの中で述べた。「3月に人々は外出を控えるようになり、わずか数週間で小売の売上は激減した。第2四半期の売上高は2020年最少を記録し、消費者の行動が通常レベルに戻るのに数年かかるだろう」と予測した。

実際レポートでは、小売の売上は2022年までパンデミック前(2019年レベル)の水準に戻らないと予測している。

長期的には実在店舗が小売全体の足を引っ張る。今年、実在店舗の小売の売上は14%減の4兆1840億ドル(約453兆円)に落ち込む見込みだ。そしてパンデミック前の水準に戻るのに最大5年かかるかもしれない。

一方のeコマースは実在店舗の落ち込みを相殺できるほどに強くはない。落ち込みの深刻さを和らげる程度だ。2020年にeコマースの売上は18%増の7097億8000万ドル(約76兆円)となる見込みで、これは米国の全小売の14.5%を占める。

レポートでは、多くの店舗が再開しているにもかかわらず小売全体の売上が少ないままである理由を掘り下げていない。しかし明らかにこの理由の1つとして、新型コロナが引き金となった景気後退の影響が挙げられるだろう。失業や不安定な雇用は、いずれも消費者の支出抑制につながる。加えて、多くの消費者が実在店舗を避け続けていて、必要なものだけをオンラインで注文している。また消費者の多くがテレワークを続けてる中で、アパレルやアクセサリーの販売は大きな打撃を受けている。

アパレルとアクセサリーの部門は通常、eコマースで2番目に大きい。しかし消費者が必要不可欠ではないものの購入を控え、成長は8.6%にとどまる見込みだ。

一方、食品や飲料、ヘルス、ビューティー、パーソナルケアなどを含む他のeコマースの部門は大きな伸びが予想される。食品や飲料が58.5%増、ヘルス、ビューティー、パーソナルケアは32.4%増となる見込みだ。

「前例のないことがeコマースで起こっている。成長率は世界金融不況のとき以来、最大だ」とeMarketerの主任アナリストAndrew Lipsman(アンドリュー・リップスマン)氏は述べた。「オンライングローサリーショッピングやクリック&コレクトといった特定のeコマース行動は、3、4年かけてみられるところをわずか3、4カ月で飛び越した」と付け加えた。

オンライングローサリーへのシフトは、特にWalmart(ウォルマート)で顕著だ。同社は常々、オンライングローサリーがeコマース全体の売上の成長に寄与しているとしている。eMarketerのレポートではまた、Walmartが初めてeBay(eベイ)を追い抜いて米国のeコマース小売としてはAmazon(アマゾン)に続く2位の座を獲得しそうだ、と指摘している。Walmartのeコマース売上高は2020年に35%超伸びると予想され、これは米国のeコマース市場の5.8%を占める。

Target(ターゲット)、Best Buy(ベストバイ)、Home Depot(ホームデポ)、Costco(コストコ)も売上増が見込まれている。

しかし想像の通り、Amazonの成長は群を抜いている。

「Amazonはeコマース市場におけるシェアを38%に伸ばし、独占を拡大させる」とリップスマン氏は語った。

画像クレジット: Sari Montag / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(翻訳:Mizoguchi

Instacartがショッパーの不満を受けてチップに関するポリシーを変更

Instacart(インスタカート)は米国時間6月5日、増加するショッパー(編集部注:顧客に買い物品を届ける人のこと)を「チップ釣り」から守るために、チップに関するポリシーを変更すると発表した。チップ釣りとは、顧客が多めのチップでショッパーを引きつけ、グローサリーを受け取った後にチップをゼロにするという酷い手法だ。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックで人々が買い物に行けなくなってInstacartの需要が急増したのにともない、このチップ釣りが出てきた。

Instacartは、チップ釣りは稀で配達後のチップ削除はオーダー全体の0.5%に満たない、という。また、新型コロナパンデミックが始まってから、ショッパーへのチップの総額は倍増したとしている。しかしポリシーの変更は、同社のショッパーの待遇改善を示している。外出禁止令で人々が家にこもりグローサリーストアーに行かない間、ショッパーたちは重要な存在だった。

Instacartは現在、配達後にチップを削除する顧客にフィードバックを求めている。頻繁にチップを削除する顧客を利用不可にする、ともしている。加えて、チップ額を変更できる期間を3日から24時間に短縮する、と述べた。

チップ額を変更できる期間の短縮は、ショッパーが最終的なチップを待たなければならない時間を短くすることになる。

チップに関する変更に加え、Instacartは2019年に導入したキャッシュアウト機能をアップデートする。すぐにお金を必要としているショッパーのために、配達を完了した24時間後にチップを引き出せるようにする。同社はまた、Visaカードを使用しているショッパー向けに2020年7月末までキャッシュアウトの手数料を免除する。キャッシュアウト機能はカナダでも使えるようになる。

こうした措置の背景には、Instacartのショッパーたちが不満を募らせていることがある。同社は新型コロナパンデミックと外出禁止令による需要増大を受けて、ショッパーの数を250%近く増やす計画を発表した。そうしたアグレッシブな採用が火に油を注ぎ、アプリのバグやチップ釣り、感染を予防するためのキット配布の欠如など根本的な問題をInstacartは解決していない、と一部のショッパーは指摘する。

2020年3月に、ショッパーは待遇改善を求めてストライキを実行した。その中で、デフォルトのチップ割合を10%に戻すよう要求した。今回のポリシー変更にはチップ割合に関するものは含まれていない。デフォルトのチップ割合は5%だ。

新型コロナ禍において、ギグワーカーは必要不可欠な業務の担い手だ。Instacartがショッパーをそうした存在として扱おうとポリシーを変更するまでにかなり時間がかかった。

画像クレジット:Instacart

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(翻訳:Mizoguchi

ロックダウン解除後も米国のコネクテッドTV視聴は新型コロナ前より高水準

米国では、新型コロナウイルス(COVID-19)によるロックダウン中にテレビの視聴やストリーミングサービスの利用が急増したが、それはニューノーマルのようだ。Nielsen(ニールセン)の新たなデータがそれをうかがわせる。広範囲でロックダウンされていた期間、1週間にコネクテッドTV視聴に費やす時間は、メディア全体の利用とともに10億時間超も増加した。しかし政府による規制や外出禁止令が解除された現在でも、コネクテッドTVの利用は新型コロナ前よりも多いことがNielsenの調査で明らかになった。

スマートTVやインターネット接続のデバイス、ゲームコンソールなどを含むコネクテッドTVでは、ユーザーは従来のテレビやケーブルチャンネルよりも以上にさまざまなエンターテインメントにアクセスできる。コネクテッドTVではまた、インターネット経由のコンテンツ、ストリーミングアプリ、ゲーム、その他のビデオサブスクサービスも利用できる。コンテンツが豊富なため、コネクテッドTVの利用は新型コロナパンデミックの間に増えたが、一方で2020年5月初旬における従来のテレビの利用は2019年の水準を超えなかった。

Nielsenのデータによると、2020年3月時点で米国の世帯の76%が少なくともコネクテッドTVを1台所有していた。しかしそれは必ずしも使用量とは関係しない。コネクテッドデバイスを所有する世帯は2020年1月の1カ月で合計で125億時間視聴した。

ほどなくして米国で新型コロナ感染が拡大し、使用量は増えた。デバイスで視聴した時間は前年比81%増で、1週間あたりのコネクテッドTV使用が40億時間近く増えたこととになる。

家族が一緒に視聴するようになり、いわゆる「コビューイング」で、特にリビングルームでのデバイス使用が増えた。コビューイングが視聴に占める割合は2020年3月初めに62.5%だったが、3月末には64.1%になった。

コネクテッドTV以外では、ブロードキャスト、ケーブル、独立TVのコビューイングも2020年3月初めから5月初めにかけて2ポイント(34%から36%へ)増加した。

ただこのデータで最も注意するべき点は、コネクテッドTV使用の増加傾向が政府によるロックダウン解除の影響を受けていないことだ。家から出てより多くの場所に行けるようになったのにも関わらず、人々は家にこもってテレビを観ることを選んでいる。

2020年3月の第1週にコネクテッドTVの視聴に費やされた時間は27億時間だった。その後、外出制限が強まるにつれ視聴時間は増加し、4月6日〜12日の週は40億時間に達した。ただ5月初めまでに多くの州で外出禁止令は解除されたものの、コネクテッドTVの使用時間は1週あたり35億時間までしか減っていない。この数字はロックダウンが始まる前よりも多い。

こうしたデータは、新型コロナのワクチンが出てこない限り、そして新規感染者の数が増えている限り、消費者が外出に慎重になっているということを表しているのかもしれない。しかしパンデミックが米国の消費者行動に長期的に影響を与えていることを指摘する厳しいデータだ。

「米国の49州が経済を少なくとも一部再開しているにも関わらず、コネクテッドTVの利用が多いのは、消費者がコネクテッドTVで利用できるさまざまなオプションやコネクティビティへの関心の高さを示している」とNielsen述べた。「ゆえにニューノーマルでは、コネクテッドTVとコビューイングは新たなメディア消費方式の大きな部分を占める」としている。

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(翻訳:Mizoguchi

Fitbit開発の低コスト人工呼吸器に米食品医薬品局が緊急使用認可

Fitbit(フィットビット)は、米食品医薬品局(FDA)からFitbit Flow緊急人工呼吸器の緊急使用認可を取得した。この人工呼吸器は低コストで、使用にはトレーニングや専門的な技術をさほど必要としない。そのため、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックでヘルスケアシステムがリソース不足で圧迫された場合のソリューションとなる。

Fitbit人工呼吸器はMITのE-Ventシステムと、英国政府が新型コロナ感染拡大中に同国の病院で使用される人工呼吸器のために提供したスペックをベースとしている。自動蘇生器スタイルの人工呼吸器で、救急隊員や救急救命士が使う手動の蘇生バッグ機能を真似ている。

緊急人工呼吸器はパンデミックで脚光を浴びることになった。というのも、医療機関が通常使用するスタンダードの人工呼吸器よりも比較的安価で実際に入手可能な部品で作られているからだ。Fitbitは同社の人工呼吸器のデザインがかなり効果的だと確信している、と話す。センサーの正しい組み合わせ、自動アラーム、蘇生バッグポンプのオートメーションを補助する患者モニター機能などだ。

緊急使用のための人工呼吸器の需要に向けられていたかなりの注意はここ数週間落ち着いてきているが、需要はまだある。そして数カ月内にやってくる新たな新型コロナ感染の波に伴って需要が再度高まることが予想される。Fitbit Flowのようなプロジェクトは、必要となった場合に選択肢として提供できることを目的としている。そしてFDAの緊急使用許可は、企業がその需要に応えるべく大量生産するために既存の製造パートナーと協業できることを意味する。

Flowのような人工呼吸器は従来使用されてきたものの代替ではない。あくまでも間に合わせであり、患者の処置に必要な呼吸器が入手できなくなった時にのみ使用される。

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(翻訳:Mizoguchi

ニューヨークの地下鉄やバスでの非接触決済の全面導入が新型コロナにより延期

昨年5月にニューヨーク市のMetro Transit Authorityは、初めて非接触型決済システムを一部の地下鉄駅の改札口に設置した。そして地下鉄駅とバスを含む交通網全体への展開は、今年10月に完了することになっていた。しかしその他の事柄と同じように、新型コロナウイルス(COVID-19)が計画を台なしにした。

OMNY(One Metro New York)の計画は遅れており、現時点では12月までに完成する見込みだ。このニュースを最初に報じたThe Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)は、公共交通機関で乗客が物理的な接触を減らすことができる新たな技術が遅れるという、残念なタイミングに言及している。

乗客がこの技術を定期券のように往復で使えるようになるまで、このテクノロジーが採用される可能性は低い。今のところは、スマートフォンとおなじみのMetro Cardを交換することを意味する。もちろん多くのニューヨーカーはここ数カ月、地下鉄をまったく利用していない。電車は主に労働者の領域であり、MTAは毎晩車両の消毒に尽力しているが、それを避けることができる人はリスクを冒す価値はない。

このシステムはApple(アップル)、Google(グーグル)、Samsung(サムスン)、Fitbit(フィットビット)などのモバイルデバイスとスマートウォッチで利用可能な、幅広いモバイル決済機能をサポートしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

レントゲンに代わる低コストのスキャン装置を開発、富士フイルムなどが出資するイスラエル拠点のNanox

医療テクノロジー分野においてはいま、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックとの戦いに役立つツールやイノベーションに多くの注意が注がれている。そして米国6月4日、とあるスタートアップが新型コロナウイルスとその他の病気の臨床評価をよりアクセスしやすいものにする革新的イノベーションのために資金調達したというニュースが入ってきた。

イスラエルのスタートアップNanox(ナノックス)は小型で低コストのスキャンシステムと「サービスとしての医療スクリーニング」を開発した。これは、高価で大型の装置、それらに対応するレントゲンやCAT、PETなど身体画像サービスに使われるソフトウェアに置き換わるものだ。同社は戦略的投資家の韓国通信会社SK Telecomから2000万ドル(約22億円)を調達したと発表した。

出資に伴いSK TelecomはNanoxの技術を搭載したスキャナーと、スキャンした分だけ課金される画像サービスNanox.Cloudの展開、それらを運用するための5Gワイヤレスネットワーク容量をサポートする。Nanoxは現在、自社技術のライセンスを富士フィルムのような画像業界のビッグネームに許可している。Foxconnはまた、ドーナッツ型のNanox.Arcスキャナーを製造している。

今回の資金調達は厳密には、前回シリーズBラウンドの延長だ。2600万ドル(約28億円)をFoxconn(フォックスコン)や富士フイルムなどから調達すると今年初めに発表した。そしていま同ラウンドは5100万ドル(約55億円)でクローズされ、Nanoxによると約10年前の2011年の創業以来の累計調達額は8000万ドル(約87億円)だ。

Nanoxのバリュエーションは公開されていないが、イスラエルのメディアは12月に、Nanoxが考えているオプションの1つがバリュエーション5億ドル(約545億円)でのIPO(GLOBES記事)だと報じた。我々の情報筋によると、バリュエーションはいま1億ドル(約109億円)超だ。

Nanoxのシステムはデジタルレントゲン検査に関連する専用テクノロジーに基づいている。デジタル放射線撮影法は画像の世界では比較的まだ新しいエリアで、画像をとらえて処理するのにX線プレートではなくデジタルスキャンに頼っている。

Nanoxによると、放射線量は70Bq/kgで、これに対し平均的なCTスキャナーの放射線量は2000Bq/kgだ。製作コストはCTスキャナーが100〜300万ドル(約1〜3億円)するのに対し、Nanoxのものは1万ドル(約100万円)ほどだ。

CEOで創業者のRan Poliakine(ラン・ポリアキン)氏によると、小型の装置で安く、画像の処理のほとんどをクラウドで行えるのに加え、Nanoxシステムは1秒の何分の1かのうちに画像を作ることができ、これにより放射線被曝という点において従来の手法よりかなり安全だ。

画像はこのところかなりニュースで取り上げられている。というのも、新型コロナウイルス患者の症状の進行状態や、新型コロナウイルスに罹っているかもしれない人の肺やその他の器官にCOVID-19がどのくらい影響を及ぼしているのかを確認するために画像が今のところ最も正確な手段の1つだからだ。Nanoxの装置の普及はそうしたケースの対応で役割を果たすが、その一方でNanoxの最終目標はそれよりも大きなものだ。

究極的には、同社はかなり多くの人に病気の早期発見や予防のスキャンを行えるよう、装置とクラウドベースのスキャンサービスをユビキタスのものにしたいと考えている。

「現在、癌と闘うベストな方法は何だろうか。早期発見だ。しかし世界の3分の2が画像へのアクセスがなく、スキャンを受けるために数週間、あるいは数カ月も待たなくてはならない」とポリアキン氏は話した。

Nanoxのミッションはこのギャップを埋めるべく、今後数年間で同社の装置1万5000台を届けることだが、パートナーシップを通じてこのミッション達成に近づいている。SK Telecomとの提携に加え、Nanoxは3月にGateway Groupという企業とのパートナーシップでオーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーに装置1000台を配置するための1億7400万ドル(約190億円)の契約書にサイン(Radiology Business記事)したことも明らかにした。

SK Telecomの投資は、通信企業が企業や個人にどのような種類のサービスを再び販売し、提供するかに立ち戻る機会として5Gをいかにとらえているかを強調する興味深いものだ。そしてSK Telecomは中でもヘルスケアを重要な機会として選んだ。

「通信会社は5Gの販売方法をめぐり、機会を模索している」とSK Telecomの会長Ilung Kim(イルウン・キム)氏はインタビューで述べた。「そしていま、5Gデータを使いながら救急車の中で使用されるほどのサイズのスキャナーを思い描くことができる。業界にとってゲームチェンジャーだ」

今後の展望として、Nanoxは同社のハードウェアの納入と、スキャン処理用のクラウドベースのサービスを販売するために提携パートナーを引き続き増やす。しかし、生データから洞察を得るためのテクノロジーの開発は予定していない、とポリアキン氏は述べた。そのため、同社はサードパーティ、現在はAI企業3社と協業していて、今後はこのエコシステムをさらに増やす予定だ。

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(翻訳:Mizoguchi

PDFベースの共同編集・電子署名サービスのAnvilがグーグル系VCから5億円超を調達

リモートワークによってオフィスが必要とするツールは、複数のミーティングを横断する非同期の通信やチャットに変わってきたが、コラボレーションはチャットの簡素な小さな泡の中で完結するものばかりではない。

米国サンフランシスコのスタートアップAnvilは、企業のコラボレーションのかたちをささやかなPDFで変えようとしている。AnvilのオートメーションプラットホームはGoogle Formsをレベルアップして退屈なPDFを動的なフォームでデジタイズし、これまで複数のソフトウェアを使ってアクセスしていた複数のプロセスを統一する。ユーザーはこのプラットホームを利用して、ペンを手に持つことなくドキュメントの作成、共有、書き込み、署名、記入、ダウンロードなどができる。

米国時間6月3日、AnvilはGoogleのGradient Venturesがリードするシードラウンドで500万ドル(約5億4500万円)のシード資金を調達したことを発表した。同社はDocuSignなどと競合するが、AnvilのCEOであるMang-Git Ng(メン-ギット・ウン)氏によると、確かにDocuSignは「ドキュメントの完成と実行の面では優れているが、ドキュメントを実際に作るという部分が弱い」という。AnvilはDocuSignをすでに使っている顧客のニーズに応じて、Anvilのサービスを彼らのワークフローに統合できる。しかしDocuSignのワークフローをAnvilが部分的に再製して、ドキュメントオートメーションのエンドツーエンドのソリューションを構築することもできる。

Anvilは当初、ウェルスマネジメントや銀行を顧客として狙っている。料金は、個々のプロジェクトベース、または月額99ドルから始まるサブスクリプションプランだ。

Anvilのチーム

同社は最近、ある銀行をパートナーとして、新型コロナウイルス関連の中小企業救済事業であるPaycheck Protection Program(PPP)の申請用ポータルを作ったとき、同社サービスの立ち上げてすぐに使える迅速軽快ぶりを自らテストしてみた。ウン氏によると、そのときSunrise Bankの顧客は総額1億2700万ドル(約138億円)のPPPローンを申請し、Anvilがその作業を手伝った。そのときの体験を同氏は「それは私たちにとってあわただしい体験だった。申請内容に関する最初の会話からデプロイまで、6日を要した」、と語っている。

新型コロナウイルスのパンデミックは、確かに紙を使う処理のデジタル化を加速している。ウン氏によると、多くの企業がリモートになっていくにつれて同社への関心も急増し、特に新人研修やコンプライアンス、社内アプリケーションなどの分野ではペーパーワークをもっとコラボレーション可能にしデジタルフレンドリーにしたいという新しいニーズも生じている。

同氏は「今見えている全体的なトレンドとしては、これらの業界の人びとがデジタル化をもっと前向きに考えるようになっているが、しかし一般的に言えば、大企業でこのトレンドの最前線にいる人たちは効率の向上と費用の節約が最大の関心だ。でもロックダウンになってからは、それらをリモートでやる方法を考えなければならないし、リモートで仕事をするためのソリューションが最前線の課題になっている」と説明する。

Anvilのシードラウンドには、Citi Ventures、Menlo Ventures、Financial Venture Studio、および122 Westが参加した。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

英国チャレンジャーバンクのMonzoが最大120名を解雇へ、「経済状況」は未だに困難

英国のチャレンジャーバンク(新興のインターネットバンク)であるMonzo(モンゾ)は、新型コロナウイルス危機による経済低迷を受け、苦しい決断を迫られ続けている。

ラスベガスのカスタマーサポート部門の閉鎖(未訳記事)と、英国内で300名のスタッフを在宅待機としたのに続き、同社は最大120名の英国スタッフが余剰人員となることを社内で発表(Reuters記事)。筆者も独自の情報筋を通じて確認した。

6月3日午後に新CEOであるTS Anil(TS・アニル)氏とMonzoの共同創業者でプレジデントのTom Blomfield(トム・ブロムフィールド)氏が開催した全社会議のあとにアニル氏が書いた社内メモによると「同社は最大120名の余剰人員が発生する。会社は自宅待機と賃金カットがすでに行われたことでそれ以上の解雇は回避できる可能性がある(未訳記事)」と語っていた。それはもはやありえないことのようで、アニル氏は現在の経済状況がすぐに平常状態に戻ることはないと説明している。

私の理解によれば、英国雇用法により、影響を受ける可能性のある社員には十分な相談期間が適用される。さらに同氏は社員に対して、これまでの貢献を認め、解雇によって株式の受給に影響がないように配慮することも伝えた。

解雇予定の発表は、最近続いているMonzoの混乱に続くものだ。他の多くのフィンテック企業と同様、新型コロナによる経済低迷から身を守るべく手を打ってきた。

去る4月に私は、Monzoがラスベガスのカスタマーサポート部門を閉鎖し、 165名の米国スタッフが職を失う(未訳記事)ことを報じた。そのわずか数週間前にも、英国のコロナウイルス雇用維持スキームによって、最大295名の社員を自宅待機にしたこと(未訳記事)をTechCrunchで報じた。さらに、経営チームと取締役会は、25%の自発的減給を行い、プロムフィールド氏は、今後1年間報酬を受け取らないことを決めた。

ほかの銀行やフィンテックと同じく、Monzoは顧客のカード利用が国内も(もちろん)国外も低迷し、交換手数料による売上は著しく減少した。同社は数少ない収益源のひとつである消費者向けプレミアム有料口座の導入も延期した。ほかの収入源はもちろん融資だ。

そして先週、Monzoは7000万~8000万ポンド(約95億6300万〜10億9300万円)の追加資金調達を完了し新型コロナ危機下の延命を図った(Sifted記事)ことが報じられた。しかし、新規投資家や一部の既存投資家の対応は強硬で、同社は前回昨年6月のラウンドで20億ポンド(約2730億円)だった会社評価額を40%減額されることを受け入れざるを得ず、新たな評価額は12.5億ポンドとなった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

CES 2021はベガスでのリアル開催を計画、新型コロナ感染防止対策や関連イベントのオンライン化も進める

今年1月に開催された消費者向けエレクトロニクスのトレードショーであるCESは、新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックの直前という際どいタイミングだった。翌月バルセロナで開催が予定されていたMWCは一時は延期が検討されて、新型コロナウイルスの流行がヨーロッパに拡大したことで結局は開催そのものがキャンセルされた。その後は「ドミノ倒し」のように次々にカンファレンスやトレードショーの開催が中止になった。中には実際の会場ではなくオンラインに場所を移して開催されたイベントもあった。

CESは来年もリアルな会場での開催を計画していることがわかった。米国時間6月2日、CESの運営組織であるCTA(Consumer Technology Association)は「2021年のカンファレンスをラスベガスで開催することを計画している」と発表した。ベルリンで開催されるIFA(未訳記事)で入場者数の制限を計画しているが、CESでは意図的に規模を縮小するような手段を取るつもりはない。しかしCESでもイベントの関連行事の多くをオンライン化して対面開催のリスクを最小限にする努力をするという。

さらにCTAは、来場者の安全を確保するために以下のような一連の対策を採る。

  • 会場全体のスペースを頻繁に清掃・消毒し、各所に来場者向け消毒ステーションを設置
  • 展示エリアでは通路を拡張。講演会場その他参加者が密集する可能性のあるエリアでは席の間隔を広くするなど、ソーシャルディスタンスの確保に努める
  • 参加者、出展者は、マスクを着用する、握手をしないなど、感染の予防、拡大の防止に効果がある手段を採ることを勧める
  • 購入や契約にキャッシュレスシステムを導入するなど、イベント全体で対人接触が必要となる場所を制限
  • 会場の主要な入り口で非接触式サーマルスキャンによる体温測定を行うために各種システムをテスト
  • 会場における救急・医療サービスを強化

ほかの効果的方法についてもラスベガス市その他の地元コミュニティと「緊密に協力している」と主催者は述べた。ラスベガス市長のCarolyn Goodman(キャロリン・グッドマン)氏は、これまでも新型コロナウイルスによるイベントの中止に激しく反対してきたことで知られている。4月中旬にグッドマン市長は感染拡大防止のためのロックダウンを「馬鹿げている」と非難し、内外の旅行者にカジノやその他のビジネスをオープンし続けることによりラスベガスを「コントロールグループ」(比較対象を設定した対照実験の対象)とするよう提案した。困難な情勢が続くいてるが、総工費に1000億円以をかけたLVCC(ラスベガス・コンベンション・センター)のリニューアルは完成に近づいており、CESのような大型イベントを開催を確保する必要性はかつてなく高まっている。

他方、イベント主催の多くは新型コロナウイルスの第2波、第3波を世界中に拡散することになるのを恐れて、引き続き対面開催には慎重だ。パンデミックが起きる以前でも関してコンベンションが風邪やインフルエンザの拡大に大きな役割を果たしてきたことを考えれば、多くの常連企業が参加を中止することになるのは無理ない。また今回の発表でCTAが「計画」という言葉を使っていることに注意すべきだろう。世界が明日どうなるのか分からない時期だ。まして7か月後の状況となると想像することさえ難しい。

画像: ROBYN BECK/AFP/Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ウェアラブル市場の成長はパンデミックにより減速、しかし止まってはいない

ウェアラブル業界の成長は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによって打撃を受けている。しかしスマートフォンやPCなどのほかのハードウェアと比較すると、実際にはそれなりに健闘している。調査会社のABI Researchの新しい予測によると、2020年のデバイス出荷台数は前年比5%増になる見込みだという。

この1桁の成長率は、2018年から2019年の間に見られた23%はいうまでもなく、今年の予測値である17%を大きく下回っている。2020年には2億5400万台のデバイスがメーカーから出荷されると予想されており、これは昨年の2億4100万台から増加している。第1四半期(1月〜3月)の最大の変化は、人々が必需品以外を買わなかったことだ。米国では、このパンデミックにより約4000万人が失業を申請した。

個人的には、すべてのジムが一時的に閉鎖されているなかで、フィットネストラッカーのような製品の購入への関心は低下すると予測している。多くの人は外出し出歩く機会が減ったが、自分自身の個人的な健康への関心の高まりによって、潜在的な低下が防がれている。

Apple WatchやFitbit製品のようなデバイスは、心電図や血中酸素飽和度の読み取り機能のおかげで、ヘルスケア製品としてより真剣に捉えられている。Fitbitはまた、新型コロナウイルスの研究グループとも協力している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Zoomユーザーがリモートワークで前年比354%と急増、売上は前年比169%

「新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでZoomとそのエンタープライズ品質のビデオチャットほどユーザーが増えた企業はほかにないだろう」と思われた。しかしフタを開けてみると、Zoomの成長はすべての予想を上回っていた。

同社の今四半期決算報告では、売上は前年比で169%伸びたが、それは顧客の大幅な増加に支えられている。同社によると現在の顧客は26万5400社で、1社平均のユーザー数は10人以上だ。前年比で顧客数の伸びは354%となっている。Zoom上で年間10万ドル以上を支出した大口顧客も急増し、Q1の前年同期比では90%成長した。

関連記事:Remote work helps Zoom grow 169% in one year, posting $328.2M in Q1 revenue(リモートワークでZoomが成長、Q1売上320億円超は前年比169%、未訳)

このプラットホームの1日のアクティブユーザー数(DAU)と月間アクティブユーザー数(MAU)は、発表されていない。4月に同社は、3億という不正確なデイリーアクティブユーザー数を発表して世間の怒りを買った。Zoomは後日それを訂正し、それはDAUではなく1日のアクティブ参加者数に過ぎないと報告した。例えば、1人のユーザーが1日に複数のミーティングに出ていれば、その数がそのまま数えられる。

いまは多くの企業がZoomのようなサービスを使って、オフィスの閉鎖に伴う在宅のリモートワークをこなそうとしているから、エンタープライズユーザーの大幅な増加も意外ではない。

ZoomのCEOであるEric Yuan(エリック・ユアン)氏は決算報告に伴う声明で「新型コロナウイルスの危機が、Zoomを使用する分散対面型対話とコラボレーションの需要を急増させた。業務と学習と個人生活にZoomを統合する人びとが増え、ユースケースが急速に成長した」とコメントしている。

関連記事: Zoom retracts statement that it has 300M daily active users(Zoomが3億DAUの主張を撤回、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

イスラエル拠点のOurCrowdが新型コロナ対策ソリューション向けファンドを設立

イスラエルのクラウドファンディングベンチャー投資プラットフォームのOurCrowd(アワークラウド)は6月2日、計1億ドル(約108億円)を調達する計画のパンデミック・イノベーションファンド立ち上げを発表した。調達した資金は「グローバルのパンデミックやその他の健康危機による医療、ビジネス、教育、社会の喫緊の需要に応えるテクノロジーソリューション」に投資する。

ワクチンや検査、治療法、リモート監視、デジタルヘルス、個人保護具などの開発を手掛けるスタートアップに資金を注ぐ。加えて、リモートワークや遠隔教育、事業プロセス自動化、在宅エクササイズ、サイバーセキュリティにフォーカスした刷新的なマネジメントに取り組むスタートアップにも目を向けている。ファンドはかなり幅広い対象を抱えるが、これによりパートナーはさまざまな産業に投資することができる。

「新型コロナウイルスの急速な感染拡大は、デジタルでつながった世界がグローバルコミュニケーションと迅速な対応を通じてあらゆる危機を解決するという我々のビジョンが正しかったと証明した」とOurCrowdCEOを務めるJon Medved(ジョン・メドベジ)氏は話した。「世界が元に戻れるようにするために、イノベーションが今すぐ必要だ。今回の危機で生じている問題の多くをテクノロジーを使って解決できる。テックが迅速に対応し物事を直す時だ」

OurCrowdはすでに新規ファンドにうってつけそうな多くの企業に投資してきた。この中には、新型コロナワクチンの開発のために1200万ドル(約13億円)をこのほど調達した(未訳記事)MigVaxやSight Diagnostics、SaNOtizeTytoCareなどが含まれる。

新規ファンドの代表は、ヘルスケアのエグゼクティブとして知られるMorris Laster(モリス・ラスター)博士、OurCrowdベンチャーパートナーで医学顧問委員会の委員長を務めるMorry Blumenfeld(モリー・ブルーメンフェルド)氏、OurCrowdのベンチャーパートナーであるDavid Sokolic(デイビッド・ソコリック)氏だ。

「ともに現在のパンデミックに取り組み、また将来のパンデミックにも備えなければならない。といのも、物語は始まったばかりだからだ。起業家は我々が直面している最も困難な問題に対し、迅速かつ効果的なソリューションを提供するのに比類なく長けている。新規ファンドは我々が必要とするイノベーションと、世界をより良くするのに必要なリソースを提供できる遠くを見据えた投資家の間に橋を渡すことになる」とラスター博士は述べた。

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(翻訳:Mizoguchi