ビル・ゲイツ氏が米国が気候変動対策のリーダーになるための案を公表し3630億円規模の予算を提言

Microsoft(マイクロソフト)の共同創設者で世界有数の富豪であり、世界有数の貢献を果たした慈善事業家であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏は、自身のブログで気候変動との戦いで米国がリーダーシップを取るための広範な新提案を公表した

「私たちは世界の物理経済を変革しなければならず、それが、他のさまざまな物事と相まって、創意工夫、資金、連邦政府の関心を強力に呼び込みます。必要な研究を推進できる資源を持つ国は、この国以外にはありません」とゲイツ氏は書いている。

Joe Biden(ジョー・バイデン)新政権が政府を引き継ごうというこの時期は、ゲイツ氏が提言を行うには絶好のタイミングだった。引退間際のDonald Trump(ドナルド・トランプ)政権は、ことさら気候変動対策に抵抗して規制を緩和し、気候変動対策を目的とした国際協定からも脱退(未訳記事)し、人為的な気候変動の脅威を認めれば多くのものを失う産業界のまことしやかな論拠に傾倒し、科学を一蹴してしまった。

ゲイツ氏は、クリーンエネルギー研究のための支出を25億ドル(約2600億円)と大幅に増やして、政府の医療向け支出と並ぶ35億ドル(約3630億円)に引き上げるよう訴えている。それによりクリーンエネルギー化計画を進めつつ、37万件以上の雇用を創出(Breakthrough Energy記事)できるとゲイツ氏は指摘する。

ゲイツ氏によれば、米国人は政府が気候変動関連の研究に充てている予算よりも多くの金額を、わずか1カ月で消費しているという。

単に研究予算を増やせというだけでなく、マイクロソフトで身を立てたこの大富豪は、「エネルギー改革のための国立研究所」のネットワーク構築も呼びかけた。

「気候変動解消のためのイノベーションを導く上で米国が世界に貢献できることの中で、これがもっとも重要」だとゲイツ氏は書いている。

世界のバイオ医療研究に最も多く出資しているゲイツ氏は、米国立衛生研究所をモデルにした特定分野の個別の研究所をとりまとめるエネルギーイノベーション研究所の設立を提言した。1つは輸送の脱酸素化研究所が想定されるが、その他にも、エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー、二酸化炭素の回収と管理などが考えられるとゲイツ氏。

さらに同氏は、各団体は研究所から生まれたイノベーションの商品化を推進すべきだと話す。「研究所の中で電気の新しい貯蔵方法を開発するだけでは不十分です。何らかのインパクトをもたらすためには、現実社会で実用性のある手に入れやすいものでなければなりません。それを確かなものにする最良の方法は、研究者たちに、エンドユーザーを念頭に置いて研究を開始するように促すことです」。

そして、こうした研究所を国中に作るようゲイツ氏は求めている。それはちょうど、米エネルギー省やNASAが、米国各地に研究施設を分散させているのと同じだ。

研究施設の設立と予算の倍増に加え、ゲイツ氏は税制優遇措置と、より多くのクリーンエネルギーのためのツールの市場を創設できるエネルギー基準作りも提案している。

現在すでに、Clean Energy Innovation and Jobs Act(クリーンエネルギー改革および雇用法、Breakthrough Energy記事)やAmerican Energy Innovation Act(アメリカエネルギーイノベーション法)(Breakthrough Energy記事)が米国議会で成立されようとしている。これらは米国連邦政府を、より集中的な対策へ迅速に向かわせる助けとなるとゲイツ氏は考えている。しかし、この2つの法案はどちらも膠着状態にある。

ゲイツ氏の気候変動対策の提言書には、米国の大手企業40社も署名し、より強力に気候変動対策をとるよう訴える次期バイデン政権への公開書簡も添えられている(Breakthrough Energy記事)。

「私たちのコミュニティも、私たちの経済も、破壊的なパンデミックのみならず気候変動によるコスト上昇を耐え忍んでいます」と署名した企業は訴える。「前代未聞の山火事、洪水、ハリケーンなどの異常気象は、命と生活に深刻な影響を与えています。今行動しなければ、未来の世代は、環境、経済、健康の面でさらに大きな損害を被るこになると科学が証明しています」。

米国時間12月3日、医学雑誌The Lancet(ザ・ランセット)は、環境激変、公害、気候変動に関連する健康被害の大規模調査の報告書を公開した。

熱波、大気汚染、異常気象は人間の健康被害を増大させていると報告書は伝えている。National Public Radio(npr記事)も伝えていたが、同報告書では死亡、疾病、化石燃料の燃焼との間に明確な因果関係があることを示している。

「炭素を排出する活動や政策は大気汚染、食品の品質低下、住宅の質の低下を招き、それが恵まれない人々に特に過大な健康被害を与えている」とThe Lancetの報告書の著者は分析している。

分断された政府であっても、米国の温室効果ガス排出量削減に向けてバイデン政権にできることは多い。

TechCrunchでもお伝えした(未訳記事)が、インフラ関連の刺激策には、そのすべてにおいて、気候変動緩和関連テクノロジー導入のための予算を大きく取ることが可能だ。

「短期的に発生が予想される大量の深刻な気候関連の問題に【略】実際には再生可能エネルギーは影響しません」と、次期大統領のアドバイザーは話している。

だが、2021年1月、ジョージア州の決選投票の結果、現在は共和党優位の上院で、民主党が与党の座を奪取できたなら、強力な気候変動対策(ゲイツ氏の提言も含まれる可能性がある)が議題にのぼることが期待される。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Bill Gates気候変動ジョー・バイデン

画像クレジット:Mark Lennihan / AP

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(翻訳:金井哲夫)

気候問題にフォーカスしたスウェーデンのアーリーステージファンド「Pale Blue Dot」がデビュー

スウェーデンのマルメに拠点を置く「気候限定」の新ベンチャーキャピタル会社であるPale Blue Dot(ペール・ブルー・ドット)が6月16日正式にデビューし、初のファンド5300万ユーロ(約64億円)をクローズした。差し当たっては欧州拠点のプレシード期またはシード期のスタートアップを対象とし、気候問題を解決するのにテクノロジーを使っている企業を支援する計画だ。最初のファンドから最大40社を支援することを目標としていて、出資額のレンジは20万〜200万ユーロ(約2400万〜2億4000万円)だ。

このファンドは他のファンドが特化していないところに目を向けており、気候に大きな好影響をもたらすソフトウェアやテクノロジーへの投資を検討する。現在フォーカスしているのは、食糧・農業、産業、ファッション・アパレル、エネルギー、輸送の分野だ。

「我々は、気候への貢献を拡張できるスタートアップを求めている。気候への貢献の拡張というのは往々にして、多くのインターネット企業がそうであるようにソフトウェア、データ、ネットワークの効果で達成できるものを意味する」と Pale Blue Dotの創業パートナーであるJoel Larsson(ジョエル・ラーソン)氏はTechCrunchに語った。「こうした企業がどんどんデジタル化している。我々や他のベンチャーファンドも自然豊かな世界への変化を加速するためにそうした企業に投資できることを期待している」。

Pale Blue Dotの3人の創業パートナーであるHampus Jakobsson(ハンパス・ヤコブソン)氏、Heidi Lindvall(ハイディ・リンドヴァル)氏、そしてラーソン氏は北欧のテックエコシステムでは比較的よく知られている。

ヤコブソン氏は2012年にBlackberry(ブラックベリー)に売却されたTAT(The Astonishing Tribe)を共同創業し、北欧では主要なエンジェル投資家のひとりだ。直近ではBlueYard Capitalでベンチャーパートナーを務めている。

リンドヴァル氏はFast Track Malmöのアクセラレーター・投資のチームの前責任者で、人権とメディアを専門としてきた経歴を持つ。

そしてラーソン氏はFast Track Malmöの前マネージングディレクターで、テックを専門とし、ファンドマネージメントの経験がある。

特筆すべきは、Pale Blue Dotは専門分野を持つ数ある新たな欧州VCの1つであるということだ。これは北欧の成熟したエコシステムを証明するものだろう。つまり、多数の一般VCも程度の違いはあるが明らかに気候テックに賭けている。

「すべてのファンドは『地球に優しく』、より良い世界のためになるものであるべきだと考えている。しかしこのフォーカスが主流となるには時間を要する」と「気候限定」VCの必要性についてリンドヴァル氏は語る。「それでも、大半のファンドは評価の後期にポジティブな影響の可能性を調べ、スタートアップが世界をよい方向へと大胆に導くようでなかったとしてもディールを断らない」。

「素晴らしいLP(リミテッッドパートナー)たちを獲得できて幸運だった。新型コロナ禍中での資金調達だったために、彼らの多くが我々と実際に顔を合わせていなかった」とヤコブソン氏は付け加えた。「資金の50%弱がスウェーデンからで、主要なLPはスウェーデンのVCであるSaminvestだ。また素晴らしい起業家と投資家のリストも手にしている」。

リストにはSupercell、Zendesk、Navision、Unityといったユニコーン企業の創業者や前従業員のファミリーオフィス、Albert Wenger (USV)、Staffan Helgesson (Creandum)、VC fund Atomicoといった投資家が含まれるようだ。

Pale Blue Dotはすでに3件に投資した。ロンドンに本部を置く会社で計算生物学と合成生物学を活用して新たな作物を生み出すPhytoform、サンフランシスコ拠点で従来型と最新の「炭素除去」手法に融資するカーボンオフセットプラットフォームのPatch、アムステルダム拠点のスタートアップで、森林火災や停電のリスクを抑制するのに役立つ樹木の理解に機械学習と衛星データを活用している20tree.aiだ。

画像クレジット:Pale Blue Dot

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(翻訳:Mizoguchi

今年のCO2排出量は過去最高に、まだ望みはある?

画像クレジット:Vibro1/Getty Images

異常気象や海面の上昇、さらには数百人の米国人を殺し、数十億ドルの損害をもたらした気候変動の主要な要因、二酸化炭素の排出量は、2019年に過去最高を記録することになる。

これは、グローバルカーボンプロジェクト(Global Carbon Project)のデータによる。同プロジェクトは、世界中の研究者のイニシアチブとして、スタンフォード大学の科学者であRob Jackson(ロブ・ジャクソン)教授が率いている。

グローバルカーボンプロジェクトによる予測は、「地球システム科学的データ」(Earth System Science Data)、「環境研究論文集」(Environmental Research Letters)、「自然の気候変動」(Nature Climate Change)と題された3つの論文や記事として発行されている。

これは良くない知らせだ。しかし、楽観的な見方を好む人に対しては、良い知らせもある。二酸化炭素の増加率は、過去2年に比べれば劇的に下がっているのだ。とはいえ、ジャクソン教授の声明によれば、地球上の国々が、エネルギー、輸送、産業に対するアプローチを変えるために大胆な行動を起こさない限り、排出量は今後の10年も増加し続ける可能性がある、と研究者たちが警告しているという。

「昨年よりも排出量の増加が鈍ったというのは確かに良い知らせですが、それで気を抜くわけにはいきません」と、スタンフォード大学の地球、エネルギーおよび環境科学研究所(Stanford Earth)の地球システム科学のジャクソン教授は声明の中で述べている。「排出量は、いつになったら減少し始めるのでしょうか?」とも。

世界的には、化石燃料からの二酸化炭素排出量(これが全排出量の90%以上を占める)については、今年は2018年の排出量より0.6%増加すると予想されている。2018年は、2017年から2.1%も増加していた。また2017は、2016年の排出量と比べて1.5%の増加だった。

研究者によると、石炭の使用量は世界中で劇的に減少しているのに対し、天然ガスと石油の使用は増加している。また豊かな国々での一人当たりの排出量が依然として高いことは、開発途上国からの排出量を相殺するのに十分な削減はできていないのを意味している。途上国では、エネルギーと輸送手段を、天然ガスとガソリンに頼っているのだ。

「豊かな国における排出量の削減幅は、依然としてエネルギーへの依存度が高い貧しい国における増加幅を上回らなければなりません」と、エクセター(Exeter)大学の数学教授であり、グローバルカーボンバジェット(Global Carbon Budget)の論文「地球システム科学的データ」の主筆、ピエール・フリードリンシュタイン(Pierre Friedlingstein)教授も声明で述べている。

進展が見られる国もある。英国とデンマークでは、ともに二酸化炭素排出量を削減しながら、経済成長を達成することができた。The Economistが引用した報告書によると、英国では史上初めて、今年の第3四半期に、国内の家庭や企業に供給された電力量で、再生可能エネルギーによるものが、化石燃料によるものを上回った。

データと画像はThe Economistによる

今年初めの国際通貨基金(IMF)の調査によると、風力と太陽光発電のコストが劇的に低下しているため、豊かな国でも天然ガスに対してコストで競合できるようになり、もはや石炭より安価になったという。

それでも、米国、EU諸国、および中国の合計で、二酸化炭素の全排出量の半分以上を占めている。米国における排出量は、前年比で減少し、1.7%減少すると予測されている。ただしそれだけでは、中国などの国々からの需要の増加を埋め合わせるには十分ではない。中国における排出量は、2.6%増加すると予想されているのだ。

そして米国は、安いガソリンや大型車への依存症を断ち切る方法をまだ見つけていない。米国が、気候変動の拡大を緩和できるはずの乗用車による排出規制を放棄したことも、悪い方に働いている。それはそうとして、米国の現在の自家用車の所有率が世界に与える影響を考えれば、交通手段を根本的に改革する必要に迫られている。

前出の報告によれば、米国の一人当たりの石油消費量はインドの16倍、中国の6倍となっている。また米国には、ほぼ一人あたり1台の車があるが、その数字はインドでは40人に1台、中国では6台に1台だ。どちらの国でも、もし所有率が米国と同様のレベルに上昇すると、いずれも10億台の車が走り回ることになる。

グローバルカーボンプロジェクトが報告したスタンフォード大学の声明によれば、世界の二酸化炭素排出量の約40%は石炭、34%が石油、20%が天然ガスによるもので、残りの6%はセメントの製造など、他の発生源に起因するものだという。

「米国やヨーロッパで、石炭の使用量を削減すれば、二酸化炭素の排出量を減らし、雇用を創出し、空気をきれいにすることで人命を救うことにもつながります」と、スタンフォード・ウッズ環境研究所(Stanford Woods Institute for the Environment)、およびプリコート・エネルギー研究所(Precourt Institute for Energy)の上級研究員でもあるジャクソン教授は、声明の中で述べている。「より多くの消費者が、太陽光や風力など、より安価な代替エネルギーを求めているのです」。

政策、技術、社会的習慣の変化などの組み合わせによって、まだ行程を逆戻りさせることができるという希望はある。新しい低排出車の導入、新たなエネルギー貯蔵技術の開発、新しい応用分野におけるエネルギー効率と再生可能電力の継続的な進歩には、それなりの明るい希望もある。そして、排出量の多い牧畜や作物栽培に対する代替手段への社会的な取り組みも有望だ。

「気候変動に対して、あらゆる対策を講じることが必要です」と、ジャクソン教授は声明で述べている。「そこには、より厳しい燃料効率基準、再生可能エネルギーに対するより強力な政策的インセンティブ、さらには食事の変革、炭素の回収と貯蔵技術、などが含まれます」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

海洋ドローンのSofarは海のDJIになれるのか?

暗い深海の下には何が潜んでいるのだろう? SolarCityの共同創業者であるPeter Rive氏は、一般の人や科学コミュニティによる探索を手助けしたいと願っている。彼は、新しいスタートアップSofar Ocean Technologiesに対する700万ドル(約7億7000万円)のシリーズAの資金調達を主導した。同社は水中ドローンメーカーOpenROVと、海中センサーを開発するSpoondriftとの合弁によって誕生した。その合併を仕組んだのも彼だ。彼らは協力して、1080pでの撮影が可能なTridentドローンと、太陽電池で動作するSpotterセンサーを組み合わせ、海中および海面上のデータを収集できるようにした。それらを使えば、素晴らしいビデオ映像を撮ったり、波動と天候の変化を追跡したり、釣りやダイビングに適したスポットを見つけたり、船舶やインフラの損傷を調べたり、海洋牧場の様子を監視したり、場合によっては密輸業者を捕まえるのに役立つこともあるだろう。

SofarのTridentドローン(左)とSpotterセンサー(右)

「空を飛ぶドローンは、私たちがよく知っているものを、異なった視点で見せてくれます。海洋ドローンは、私たちが本当にまったく知らないものを見せてくれるのです」と、元Spoondriftの、そして今はSofarのCEO、Tim Janssen氏は語った。「Tridentドローンは、科学者がフィールドワークに使用するために設計されたものですが、今では誰でも使えます。これによって、未知の領域に踏み込むことが可能となります」。

Rive氏は、DIY的な海洋探査が生態系におよぼす影響を心配しているものの、すでに海には競合するドローンがひしめいている。たとえば、プロの研究調査用として開発された、ずっと高価なSaildrone、DeepTrekker、SeaOtter-2などのデバイスや、コンシューマー用としても800ドル(約8万8000円)のRobosea Biki、1000ドル(約11万円)のFathom ONE、5000ドル(約55万円)のiBubbleなどがある。1700ドル(19万円弱)のSofar Tridentは、海上に浮かんだブイにケーブルで接続して電源を供給する必要があるが、3時間の潜水時間と毎秒2mという潜行速度を実現している。価格的にはちょうど中間あたりに位置する。しかし、Sofarの共同創立者、David Lang氏に言わせれば、Tridentはシンプルで頑丈、耐久性の点で、他よりも優れている。問題は、Sofarが水のDJIになることができるかどうかだ。この分野のリーダーになれるのかどうか。それとも、単なる一種のコモディティ化されたハードウェアメーカーとして、模造品の中に溺れてしまうのか。

左から、Peter Rive(Sofarの会長)、David Lang(OpenROVの共同創立者)、Tim Janssen(Sofarの共同創立者兼CEO)

Spoondriftは2016年に創立され、気象データを追跡することのできる手軽な価格のセンサーを開発するとして、35万ドル(約3850万円)を調達した。「このブイがSpottersです。驚くほど簡単に設置でき、非常に軽く、扱いも楽です。釣り糸を使って、手で水中に潜らせることもできます。それにより、ほとんどどんな状態でも設置することが可能になります」と、MetOcean SolutionsのAitanaForcén-Vázquez博士は説明した。

OpenROV(ROVは、Removable Operated Vehicleの略)は7年前に設立され、True VenturesとNational Geographicから、130万ドル(約1億4300万円)の資金を調達した。「船を持っている人なら、みんな船体検査に使える水中ドローンを持つべきでしょう。そして、すべてのドックは、風と天候のセンサーを備えた自前の測候所を設けるべきです」と、Sofarの新しい会長、Rive氏は主張している。

Spotterは海洋に関する大規模なデータ収集の道を切り開く

Sofarは、Rive氏の使命を達成するためにも成長する必要がある。その使命とは、気候変動の進行や、その他の生態系の問題に関して、より多くのデータを収集するのに十分なセンサーを海洋に設置するというもの。「私たちには、この海について、わずかな知識しかありません。データが足りないからです。大げさなシステムを海に配置するのは、非常に高く付きます。センサーと船舶だけで、数百万ドル(数億円)はかかるでしょう」と、彼は訴える。みんなにGPSセンサー付きのカメラを持たせれば、より良い地図が手に入る。低コストのセンサーを民家の屋上に設置することができれば、大量の気象予報データが得られる。同じことがSpotterで可能になる。一般的な海洋センサーが10万ドル(約1100万円)もするのに対し、たった4900ドル(約54万円)で済むからだ。

Sofarのハードウェアを購入した人は、必ずしも同社とデータを共有する必要はない。しかしRive氏によれば、多くのオーナーが進んでそうしているという。仲間の研究者と共有できるように、データの可搬性の向上をずっと求めていたのだ。同社は、将来的にはそうしたデータを収益化につなげることができると考えている。それが、Riva氏本人や、その他の投資家、つまりTrue VenturesとDavid Sacks氏のCraft Venturesからの資金を得ることができた要因の一つだ。その資金によって、データビジネスを構築することになるだろう。また、Tridentドローンが、行くべきでない場所に行かないようにするための保護機能をSofarが開発することも可能になる。ロンドンのGatwick空港が、不法侵入したドローンのために閉鎖されたことを思い出せば、その重要性は明白だろう。

Spotterが収集した天候や、その他の気候データは、スマホに転送できる

「当社の究極の使命は、人類と海を結びつけることです。私たちは心からの自然保護主義者なのです」と、Rive氏は締めくくる。「商業化がさらに進み、多くのビジネスが参入してきたら、そうした活動が海にとっての利益につながるのかどうか、話し合う必要が出てくるでしょう。地球を守るためには、モラルの羅針盤を正しい方向に向けておくことが重要になるはずです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

気候変動が海上の雲を壊して温暖化を加速、最新シミューレーション結果で判明

気候変動が世界中の天気やエコシステムに影響を与えていることは周知の事実だが、正確に何がどのように起きているかは今も学者たちが真剣に研究しているところだ。超高速コンピュータで可能になった最新シミュレーションによると、二酸化炭素が一定濃度に達すると、海上の雲が消滅し、温暖化が加速して悪循環に陥る可能性がある。

Natureで公開された論文には、最新のシミュレーションによる雲の形成および太陽光の与える影響が詳しく書かれている。カリフォルニア工科大学の研究者らは、従来のシミュレーション技術の精度ではメートル単位での影響を調べることはできかったと説明した。

従来のモデルでは海上に浮遊する層積雲の予測が特に苦手で、それが大きな問題だった、と彼らは書いている。

層積雲が熱帯海洋の20%を覆い、地球のエネルギーバランス(短波放射の30~60%を反射して宇宙に戻している)に著しい影響を与えるにつれ、その気候変動のシミュレーション結果は地球全体の気候応答を示している。

気温の変化と温室効果ガスの濃度がどのように影響を与えているかを知るためには、雲のより精密なシミュレーションが必要になる。テクノロジーはそれに貢献できる。

高速コンピューターと雲のラージエディーシミュレーション(LES)が進化したおかげで、研究者は「限定された領域内の積層雲をかぶった境界層の統計的に安定した状態を正確に計算できる。ここで『限定された領域』というのは、詳しくシミュレーションされている5 km四方の領域のことだ。

改善されたシミューレーション結果は不安を誘うものだった。二酸化炭素濃度が1200 ppmに達すると、増加した入射電磁波によって雲の上端の冷却が妨害され雲の形成が突然破壊される。その結果雲は容易に作られなくなり、太陽光の入射が増えて温暖化問題が悪化する。このプロセスは亜熱帯地方の温暖化を8~10度上昇させる可能性がある。

もちろんまだ抜けている点はある。シミューレーションはシミューレーションにすぎない。ただしこのシミューレーションは今日の状況をよく予言しており、雲系の中で起きているさまざまなプロセスを正確に反映しているようだ(しかも起きうる誤差は悪い方に働くかもしれない)。現在の世界は1200 PPMにはまだ遠く、NOAAの現行測定値は411だが、一貫して増加している。

これが起きるまでには数十年かるだろうが、一度おきてしまえば被害は壊滅的でおそらく戻すことはできない。

なお、火山噴火などの大きな気象イベントによって、こうした数字が一時的だが劇的に変わることがある。過去に地球は気温や二酸化炭素濃度の急激な変化を経験しており、雲の消失とその結果起きる温暖化のフィードバックループがそれを説明している。(Quantaの記事に現状と背景が詳しく書かれているので興味のある方には一読をおすすめする)。

積層雲の不安定化の可能性についてはさらに調査を重ねて、現在モデルで推測している部分を埋めるデータを得る必要がある。多くの頭脳(とGPUクラスター)が参加するほど、気候変動が今回のような特定の気象系に与える影響についてよいアイデアが見つかるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

カリフォルニアのバス、2040年までにガス排出ゼロへ

気候変動とそれによる破壊的な影響についてまとめている重大な米政府のレポートが先月発表されたのを受け、多くの都市や州が、大気質を脅かし、また経済への影響ももたらす温室効果ガスの排出を抑制する方策を模索している。

よくあることだが、カリフォルニアは変革においては主導的な存在であり、大量輸送交通機関に2029年から電動バスのみを購入することを命じる初の州となった。公共路線バスは2040年までにすべて電動バスとなる。

この新ルールに伴い、新たに1万4000台のガス排出ゼロのバスの製造・購入が見込まれる。

そうした取り組みを行う初の州となるのを満場一致で決めたカリフォルニア州大気資源局(CARB)の局長Mary Nicholsは今月初めにTrucks.comに対し、カリフォルニア州は喘息や心疾患に関係している慢性的な空気汚染の問題を抱えているため、政府よりも“より先進的な基準を推進しなければならない”と述べている。

この取り組みは、CARBが産業グループ、公衆衛生グループとともに数年かけて行なった調査に基づくものだ。まとめられた調査結果は、トランプ政権が燃費性能基準を低く設定し、化石燃料の使用を促進するという動きをものともしない内容となっている。

実際、トランプ政権は米国がガス排出抑制にどれくらい責任があるのかと初めから疑問符をつけ、最新の政府レポートでも大統領は考えを変えていない。地球温暖化が米国経済に甚大な影響を及ぼすと指摘した政府のレポートについて先月尋ねられた際、大統領は「私は信じない」と答えた。そうしてこうも付け加えた:私を含め、人々は高度な知性を備えているが、我々は必ずしもそうした考えを信じているわけではない。

政権が考えを改めるのを待つ代わり、カリフォルニアの新たなInnovative Clean Transit(革新的クリーン交通)ルールはカリフォルニアの公共バスにーこれらの多くが現在は天然ガスやディーゼル燃料で運行されているー電動か水素燃料電池への移行を促す。

こうした動きは、設立14年、カリフォルニア・バーリンゲーム拠点のProterraのような電動バス会社に恩恵をもたらすことになりそうだ。Proterraは排ガスゼロの電気バッテリーで動くバス製造のためにこれまでおおよそ5億ドルを投資家から調達している。また、中国の大手自動車メーカーBYDも恩恵を受けることになるかもしれない。TechCrunchもこれまで報道してきたが、BYDは公共交通機関システムの電動化で中国各地の都市とものすごい勢いで提携していて、その取り組みをいまグローバル展開しつつある。

カリフォルニアが導入しようとしているのは今回の新ルールだけではない。今年初めにThe Hillが報道したように、カリフォルニアは新築住宅にソーラーパネル設置を義務付ける初の州となった。9月には、カリフォルニア州知事Jerry Brownは、2045年までに州内の全電力を再生エネルギー電力にするとした法案に署名した。

CARBはまた、米環境保護庁(EPA)にアドバイスもしている。EPAは先月、Cleaner Trucks Initiative(よりクリーンなトラックイニシアチブ)を発表した。EPA当局は、このイニシアチブを通して窒素酸化物の排出を抑制し、業界が経済的に負担だと感じている要件を廃止する方向でトラック公害基準を改訂する計画だ、と述べている。

L.A. Timesが報道で指摘しているが、そうした発表はあったものの、EPAがより厳しいガス排出制限や、CARBが健康を害しないようスモッグをなくすために必要と言っている窒素酸化物90%減といった厳しい制限の導入を計画しているのかはまだ明らかではない。

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(翻訳:Mizoguchi)

アメリカ政府の最新報告書によると気候変動の被害額は今世紀中に年間$500Bに達する

【抄訳】
気候変動の社会的影響に関するアメリカ政府の新しい報告書は、何も対策が為されなかった場合、さまざまな気候学的事象がこの国にもたらす被害額は2090年までに年間5000億ドル近くになる、と指摘している。

議会が作成している全米気候評価報告書(National Climate Assessment、NCA)は、気候変動の影響に関する報告書で、10あまりの省庁にまたがるおよそ300名の著述で構成されている。その1000ページにわたる報告書は、アメリカの農業や労働、地勢、そして健康に及ぼす気候変動の影響を取り上げている。

報告書の第二巻は、国の政策立案者に向けた、地球温暖化がアメリカに及ぼす影響を詳述している。

それが公開された現時点は、国の現在の政権が、自らの省庁が挙げている増大して止(や)まない証拠をあらゆる手段を駆使して反駁し、グローバルな気候変動の影響を抑えるべき国内的および国際的な責任から逃れようとしている

報告書は、対策が取られなかった場合のアメリカの厳しい状況を詳しく描写しており、気候変動が国にもたらす多くの変化の中には、不可逆的(回復不能)なものも多い、と述べている。

【後略】
〔以下、報告書原文と解説。報告書第I巻は2017年に公開され、ネット上の各所で共有されている。この記事が取り上げている、最近公開されたばかりの第II巻は、まだネット上で共有されていないようだ(11月24日現在)…担当部門のページ上でもcoming soonになっている。〕

〔関連記事: Y Combinatorが気候変動対策スタートアップを募集(未訳)〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

いつになったら我々は地球工学しか方法はないと認めるのだろう

1883年、クラカタウ火山の噴火で、火山灰と火山性ガスが成層圏にまで立ち上った。それにより雲の反射率が高まり、その年、地球全体の気温がおよそ摂氏1度低下した。2018年、人間の活動により地球の気温は摂氏1度上昇したと国連が発表した。今すぐ思い切った手を打たなければ、破滅的な結果につながるという。

最適な解決策が私たちの顔を睨みつけている。言うまでもなく、二酸化炭素排出量の削減だ。しかし残念なことに、この最適の解決策は政治的な支持を得られず、しかも莫大な費用がかかる。10年前、McKinseyの見積もりでは、二酸化炭素排出量を抑えるだけで1兆ドル(現在の相場で約112兆円)かかるという。しかもインドに限った話だ。それでも、何もしないよりは安いものだろう。Natureの見積もりでは、人的被害額を含まず20兆ドル(約2241兆円)だが、これだけの額になると、政治的判断はできなくなってしまう。

アナリストたちは……これは人間の性であり、変えることができないため、手っ取り早く、ちゃちな技巧的修正に走ったと結論付けた。
ニール・スティーブンソン『スノウ・クラッシュ』より

別の選択肢もある。本来の問題は、二酸化炭素濃度ではなく、気温の上昇だ。海の酸性化などその他の弊害はあるものの、二酸化炭素よりは気温の問題のほうが大きい。じつは我々は、二酸化炭素を減らさなくても地球の気温を下げる方法を、すでに知っていたのだ。あまりにも単純で、笑ってしまいそうになるが、雲の反射率を少し高めるというものだ。そうすれば、雲が太陽光を反射して気温が下がる。クラカタウなどの火山は、つねにそれをやっている。

インドネシアのタンボラ火山が1815年に噴火し、二酸化硫黄を成層圏に撒き散らした。ニューイングランドの農家はその寒い夏のことを記録している。畑には7月に霜が下りたという。1991年に噴火したフィリピンのピナツボ火山は、その後数年間、地球の気温を摂氏0.5度下げた。噴出した硫黄エアロゾルは二酸化硫黄となり、その量は4年ごとにピナツボ火山がひとつ作れるほどだった。エアロゾル計画は経費も少なくて済む。これまでの気候変動の緩和に関する分析を、完全にひっくり返すほど安価だ。

では、それは良いアイデアなのだろうか? おそらく違う。二酸化硫黄となると、絶対に違う。それは酸性雨となって戻ってくる。だがそんなことは、この解決策の年間10億ドル(1120億円)以下という(比較的)安い費用のことを思えばなんでもない。ひとつの国でも、いやもしかしたら個人でも実現可能だ(Jeff BezosがBlue Originに毎年使っている額よりも少ない)。その典型例が、海抜が低く人口密度が高いバングラデッシュだ。ある時点で、気候変動のために支払う金額よりも、独力で二酸化硫黄を使って世界を冷やすほうが安くなる。彼らはなぜ、その方法を選ばないのだろう?

もっと優れた地球工学的な方法がある。海水を使えば、少々費用は高くなるが、海にかかる雲を明るくすることができ、同じ効果を発揮させることが可能だ。だが一般的に、地球工学というものは、考え方として正しいのか? これも、おそらく間違っている。人工雲の提案者は、地球の気温を簡単に「正常値」に戻せると言っているが、気候モデルを盾に取る懐疑派は、そんなに単純な話ではないと反論する。大気のシステムはカオスであり、成果は局部に集中し、地域によって変化し、破壊的な結果をもたらすという。

(鉄肥沃化を利用してプランクトンを大量発生させ、大気中の二酸化炭素を吸い取るという方法も提案されたが、海洋生態系を地球規模で乱すことは避けられない。創発現象が引き起こされる程度なら、まだいいほうだろう)

まったく何もしないよりは、人工雲のほうがましだと妥協する人は多い。そうすれば、(激しく手を振りながら)バイオテクノロジーでなんかしらの二酸化炭素吸収源を作るまでの25年間かそこらは持つだろう。ただし、人工雲をひとたび発生させると、もう止めるこはできない。なぜなら、もし止めたなら、避けられていた地球温暖化が、ものすごい勢いで戻ってくるからだ。「10年で摂氏4度や、現在よりも20パーセント早く」といった数字が飛び交うようになる。大混乱になることは、言うまでもない。もし地球工学を始めてしまったなら、止めてはいけなのだ。

それでも、知的で思慮深い人たちですら、もう選択の余地はなく不可避であると話している。Matt OckoMatt Bruenigその他のMattではない人たちだ。この問題についてDave LevitanがGizmodeに書いた素晴らしいコラムを、ぜひ読んで欲しい。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新の報告には、2030年までに世界の気温は摂氏1.5度上昇する可能性があると書かれている。このレベルを超えて世界が大災害に飲み込まれないようにするには「社会のあらゆる側面で、早急で広範囲にわたる前例のない変革が求められる」としている。これまで私たちが見てきたことを思うと、人類は何もしてこなかったかのように聞こえないだろうか? Mark Zuckerbergの仮想対談から言葉を拝借するのは気が引けるが、気候変動を止めようと思っていたなら、止められていたはずだ。

彼の言うとおりだ。何もしないという選択肢はない。少なくとも、バングラデッシュのような国には迷っている時間はない。種として正しいことをするというのも、適切な選択肢には思えない。となると、あの忌まわしいハッキングしか残されなくなる。残念だ。世界のエンジニアを代表して謝りたい。だが、上司から選択肢を奪われるのは、よくあることだ。

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(翻訳:金井哲夫)

差し迫った環境問題を指摘する政権のレポートに「No」と言うトランプ

現在の米政権の気候変動に対するアプローチは一文に要約できる。その文とは「休憩しよう」だ。

政権の予測では、このままいけば(もし世界各国が気候変動にいま以上取り組まなければ)21世紀末までに世界の気温は7度上昇する。ツイッターコメンテーターが指摘したように、これは気候変動が現実のものであるということだけでなく破滅的なものであることを意味している…これへの対応はというと、どうやったところでダメなのだからより多くの炭素を燃やすだけ、というのものだ。

世界の気温が7度上昇するとアメリカの沿岸の多くは海に浸かる。海の酸性化で珊瑚礁が消え、そして世界中で今よりも強力で破壊的な嵐、深刻な干ばつや熱波が予想される。

しかしながら、Washington Postが報じたように、世界気候の現況の悲惨なアセスメントは、この問題の解決策を模索する意図で実施されたのではなく、地球がすでに破滅状態にあることを浮かび上がらせるために行われたのにすぎない。

地球の運命がどうなるか明らかになったが、これは米国運輸省道路交通安全局が実施した調査をまとめた500ページにも及ぶレポートで葬られた。そのレポートでは、2020年以降に製造される車やトラックの燃費基準を緩和するというトランプ大統領の決定の正当化が意図されている。

政権内の議論はこうだ。もし気候変動に誰もが真剣に取り組まなければ世界はいずれにせよ破壊される、だから気候変動に取り組むなんて無駄だ。

このロジック(不足)は、なぜ政権が、メタン(オイルやガスの生産や畜産で排出される)、二酸化炭素(石炭火力発電プラントから排出)、そして代替フロン(冷蔵庫やエアコンに使用されている)の排出規制を廃止したのかにもあてはまる。

運輸省道路交通安全局は、燃費基準のルールを適用するかしないかに関係なく、世界の気温は気候変動の影響がみられるようになる前(1986〜2005年)の平均気温に比べおおよそ3.5度上昇するだろうと予測している。

物事が現在示す範囲において、当局はアセスメントで何も間違っていない。しかし、どのような状態であれ現況が将来を反映していると仮定している点では間違っている。

分析で述べられているように、災害を起こしうる温暖化のシナリオを避けるために、世界は大幅に炭素を減らさなければならない。しかしながら、排ガスの削減は“今日よりもテクノロジーイノベーションのかなりの増大とその導入を要し、経済や乗り物が化石燃料使用と縁を切ることが求められ、現在のテクノロジーや経済にとってそれは現実的ではない”という、分析が至った仮説(Washington Postに引用されているように)は見当違いのように思われる。

分析にはまた大統領の、気候変動はでっちあげだ、という主張も持ち込まれている。

気候変動があることを認め、それを抑止するためには何もできないと言うことで、この新たなレポートは保守系議員や閣僚が産業コストをカットするためにとってきた方策を正当化する。

一方で、ノースカロライナ州はハリケーン、フローレンスがもたらした洪水でまだ浸水したままでここに寄付の方法がある)、西部においては森林火災のリスクが増大する一方だ。

それで構わない。

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(翻訳:Mizoguchi)

Apple、カーボンフリーのアルミニウム精錬に1000万ドルを投資

カナダのジャスティン・トルドー大統領とケベック州のフィリップ・クイヤール首相は、Appleならびに製造大手AlcoaおよびRio Tintoの主要役員らと共に、温室効果ガスを出さない新しいアルミニウム精錬法を発表した。

AlcoaとRio Tintoはモントリオール拠点のジョイントベンチャー、Elysisを設立してこのプロセスを推進し2024年の商用化を目指す。製造工程で発生する炭素を酸素で置き換えることに加え、新技術はコストを15%程度引き下げることも期待されている。

Appleがこの技術に飛びつき、ジョイントベンチャーに1300万カナダドル(1000万米ドル)を投資する理由は明白だ。同社は過去数年間、あらゆる分野で炭素排出量削減を強く押し進めてきた。つい先月Appleは、全世界の自社施設を100%クリーンエネルギー化したことを発表した。

「Appleは地球にとって良い技術、今後何世代にもわたって地球を保護するのに役立つ技術を前進させることに取り組んでいます。私たちは、この野心的な新プロジェクトの一翼を担うことに誇りを持っており、将来的に温室効果ガスの直接排出を伴わない製法で作られたアルミニウムを私たちの製品の製造に使うことができるようになることを期待しています」とTim Cookはリリース文で述べている。

関係各社とカナダおよびケベック州政府は、この先見的取組みに合計1.88億カナダドルを投資した。新事業の拠点はモントリオールに置かれるが、米国製造業界も分け前にあずかる。Alcoaはこの工程を用いた小規模な精錬をピッツバーグ郊外で2009年から行っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Apple、クリーンパワー計画撤廃案に反対表明

クリーンパワー計画は、オバマ前大統領政権時の政策をトランプ政権が潰そうとする最新事例だ。実際、環境保護庁(EPA)のスコット・プルート長官は、温室効果ガスの削減計画を廃止する意向を公言してはばからない。

Appleは、この件に反対の声を上げた最初の —— そしておそらく最後ではない —— 企業だ。今週同社はEPAに対して、計画撤廃が引き起こす結果への懸念を指摘する声明を提出した。声明は、環境面だけでなく、おそらく政権にとってもっと重要であろう経済面への影響にも言及している

Appleが指摘するように、すでに同社はクリーンエネルギーに多大な投資をしており、米国内での100%再生可能エネルギーを推進し、海外でも同様の約束をしている。環境に対する明確な悪影響に加え、気候変動に関する政策の変更がAppleの収支にもたらす影響は容易に想像できる。

「電気の大規模消費者であり、クリーンエネルギー戦略の推進に成功している企業として、Appleはクリーンパワー計画が電力市場を体系化し長期的傾向にプラスの影響を与えると信じている」とAppleグローバルエネルギー責任者のRobert Redlingerが声明で述べた。「クリーンパワー計画は、再生可能発電資源と伝統的発電技術を総合的に使うことによって、信頼性と回復力の高い電力網の設置を可能にするためのフレームワークを提供する」

プルート長官は、クリーンパワー計画は前任者らが無理をした計画であり、トランプ政権は石炭、石油および天然ガスを優先していくと、独自の弁舌を振るった。Appleの声明は承認プロセスでEPAによってレビューされる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ドローンとマルチスペクトル画像で森林の健康状態を観測するUCバークレーのテストプロジェクト

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干ばつ、気候変動、森林破壊により世界中の森林がリスクにさらされている。これまで以上に森林のエコシステムについて研究することが重要だ。しかし、シエラネバダ山脈のエコシステムを研究するのに、すべての木に登って調査するのは骨が折れる。ドローンと先進の画像技術を使うことは、木を登るよりはるかに実用的な方法であるとカリフォルニア大学バークレー校のプロジェクトは示している。

カリフォルニア大学バークレー校の生態学者Todd Dawsonは木に登って枝を測ったり、成長具合を確かめるのに多くの時間を費やしている。読者が想像するように、これは時間がかかり、危険で大変な仕事だ。そのため、ドローンメーカーのParrotと画像テテクノロジー企業Pix4Dのコラボレーションは魅力的に映った。

「これまで5人から7人のチームが1週間かそれ以上の時間をかけ、1本の木に登ってその木のデータを集めます。ドローンを使えば、2分の飛行で同じことができます。木の周りを飛ばすことで、葉の位置を把握します。キャノピーの中で画像処理を少し行えば、木の全体像を1日で把握することができます」と Dawsonはバークレーのニュースリリースで説明している。

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ドローンは、もちろん林業や農業で広く使われているが、ここで用いている設定は素早く、反復的に個別の木の特徴を捉えるために特化しているという。Pix4Dの「Sequoia」カメラは、複数の波長帯を観測するマルチスペクトル画像処理という賢い技術を活用している。また、それと同時にLIDARを使用し、木の詳細な3Dポイントクラウドを生成する。これらの方法で得たデータを見ることで、木の健康状態や成長具合が分かるという。週次や月次でデータを集めることで、木の変化の経過を見ることも可能だ。

データの処理や保存も大きな問題ではなくなってきている。Pix4Dが開発したソフトウェアはデータを素早く処理し、この特定の用途のためにすぐに活用できるという。集めたデータは他の予測モデルを構築するのに用いていることも可能だ。例えば、葉の分布から炭素交換を予測したり、あるいは気候学や人類学の研究のために木の成長や健康状態のデータを使用したりすることができる。

Dawsonの研究はパイロットプロジェクトだ。ParrotとPix4Dはこの他に、気候変動軽減のためのイノベーションを援助する「Climate innovation grant」をローンチし、研究者が彼らのドローンや画像技術ハードウェアを利用できるようにする。研究テーマは「気候変動の影響を軽減するための理解とイノベーションを促進する」ものであるなら、「考古学から動物学」まで幅広く対応するという。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website