ハイパースペクトル衛星画像提供するPixxel、衛星コンステレーションの打ち上げに向けて約31億円調達

軌道上から撮影する人工衛星画像は、新しい宇宙産業で注目されている分野の1つだが、それには(人間の)目に見えるもの以上のものがある。Pixxel(ピクセル)は、地球のハイパースペクトル画像を提供する衛星コンステレーションの打ち上げに向け2500万ドル(約31億円)を調達した。ハイパースペクトル画像は、通常のカメラでは見えないあらゆる種の細部を明らかにすることができる、より広いスライスの電磁スペクトルだ。

基本的に、地球を数キロ上空から見下ろすことができるということは、あらゆる可能性を提供する。しかし、研究室では基本的なデジタルカメラ以上のものが必要なのと同じように、軌道上の画像もまた基本的なもの以上が必要だ。

研究室でよく見かける別のツールが分光器だ。これは、物体や物質に放射線を当て、どの周波数がどれだけ吸収されたか、あるいは反射されたかを記録するものだ。すべての物には異なるスペクトルの特徴があり、例えば同じ鉱物の2つのタイプなど、密接に関連した物質であっても互いに区別することができる。

ハイパースペクトル画像は、これと同様の処理をカメラで行ったもので、宇宙からこれを行うことで、1枚の画像から地域全体のスペクトルの特徴を見つけることができる。米航空宇宙局(NASA)などの機関は、惑星観測のためにハイパースペクトルを使用しているが、Pixxelはこれまでの研究を基に、ハイパースペクトルをオンデマンドで提供する人工衛星コンステレーションを打ち上げようとしている。

Pixxelの衛星のCGレンダリング画像

創業者でCEOのAwais Ahmed(アウェイス・アーメッド)氏は、他の新興の宇宙産業と同様、小型化の技術力と頻繁かつ安価な打ち上げの組み合わせが、このビジネスを可能にしたと語る。アーメッド氏は、NASAのおかげであることを率直に認めたが、Pixxelは税金で開発された技術を単に再利用しているわけではない。EO-1ミッションとHyperionハイパースペクトルデータセットを初期の市場調査だと考えてもいい。

「Hyperionの解像度は約30メートル(1ピクセルあたり)ほどで、科学的な目的には最適です。しかし、5メートル程度まで下げないと、私たちがやっていることには意味がありません」とアーメッド氏は説明した。

Pixxelの衛星コンステレーションは、2022年後半の打ち上げ時には6機と決して多くはないが、約48時間ごとに地球の大部分で5メートルの解像度を提供できるようになる。すでに試験衛星がサンプル画像を送っており、来月には第2世代の衛星が打ち上げられる予定だ。量産型はより大きく、撮影画像の質と量を向上させるべくより多くの機器が内蔵されている。

アーメッド氏によると、テスト衛星から送られてくる画像だけでなく、最終的に提供されるデータに対して、すでに数十の顧客を抱えているとのことだ。これらの企業は、農業、鉱業、石油・ガス産業など、広大な土地の定期的な調査が事業にとって重要である場合が多い。

5メートルの解像度は、小さなスケールでは失われたり平均化されたりしてしまうような地形を捉えるのに有効だ。大陸をマッピングするのであれば、30メートルの解像度はやりすぎだが、湖の縁に有害な化学物質がないか、田畑が乾燥状態かどうかをチェックするのであれば、できる限り正確に把握したいと考えるだろう。

画像クレジット:Pixxel

ハイパースペクトル画像では、可視光線がメタンなどの排出物を通過したり、まったく異なる物質が同じような色に見えることから、より多くのことを明らかにすることができる。湖の端が黒く変色している場合、それは藻類か水面下の棚かそれとも工業製品の流出か、「青」と「紺」だけだと判断が難しい。しかし、ハイパースペクトル画像は、はるかに多くのスペクトルをカバーしていて、人間には直感的に理解しがたい豊かな画像を生成する。鳥や蜂が紫外線を見ることで世界の見え方が変わるように、1900ナノメートルの波長を見ることができれば、世界がどのように見えるのか、我々には想像するのは難しい。

このスケールを示す簡単な例として、NASAが提供するこのチャートは、3つの鉱物の波長0〜3000ナノメートルのスペクトルの特徴を示している。

Robert Simmon / NASA

見てわかるとおり、テーブルはたくさんのことを意味している。

「何百もの色を使って遊ぶことができるのです。特定の栄養素を含む土壌で、それが飽和状態なのか、そうでないのか見るのに役立ちます。ハイパースペクトル画像では、こうしたことが滑らかなスペクトルのわずかな変化として表れます。しかし、RGBでは目に見えません」とアーメッド氏は話した。

Pixxelのセンサーは、通常のカメラが赤、青、緑の3色しかとらえられないスペクトルを、数百の「スライス」として収集する。衛星はさらに有用なスライスをいくつか持っており、マルチスペクトル画像と呼ばれるものを作成している。しかし、何十、何百ものスライスを組み合わせると、より複雑で特性を伝える画像を得ることができる。上のチャートでは、スライスの数が多いほど、カーブの精度が高くなり、より正確である可能性が高いことを意味する。

軌道からのハイパースペクトル画像を追求している企業は他にもあるが、現在データを送信している稼働中の衛星を打ち上げた企業はなく、Pixxelが行っている5メートルの解像度とスペクトルスライスの範囲を達成した企業もない。そのため、この分野ではいずれ競争が起こるだろうが、Pixxelのコンステレーションは先陣を切ることになりそうだ。

「当社のデータの質は最高です。しかも、より安価な方法でそれを実現しています」とアーメッド氏は話す。「最初のコンステレーションを通じて資金を完全に調達しています」。

2500万ドルのシリーズAはRadical Venturesがリードし、Jordan Noone、Seraphim Space Investment Trust Plc、Lightspeed Partners、Blume Ventures、Sparta LLCが参加した。

調達した資金はもちろん衛星の製作と打ち上げに使われるが、顧客がゼロからハイパースペクトル分析スタックを構築する必要がないよう、Pixxelはソフトウェアプラットフォームにも取り組んでいる。今あるものを再利用するだけではダメだ。このようなデータは文字通りこれまでなかったものだ。そこでPixxelは「モデルや分析を組み込んだ汎用的なプラットフォーム」を構築しているのだと、アーメッド氏は語った。しかし、まだ公にできる段階ではない。

宇宙関連に付き物の不確実性にもよるが、Pixxelは2023年の第1四半期か第2四半期の運用開始が見込まれている。

画像クレジット:Pixxel

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

空中水平発射のVirgin VOX Spaceが米宇宙軍の契約獲得、最終テストへ

Virginグループの政府機関向け宇宙企業、VOX Spaceは米国が新設した宇宙軍から契約を得るという重要な成果を挙げたと発表した。米国時間4月10日の発表によれば、同社は実際の打ち上げを向けて最終テストに進むという。

米宇宙軍との契約は総額3500万ドル(約38億円)で3回の衛星打ち上げのためのものだ。 プログラムS28と呼ばれる米国防省の低軌道を周回するテクノロジー実証衛星のための打ち上げを行う。衛星総数は36基が予定されており、「宇宙における識別と通信の進歩を図り、宇宙軍の将来の発展の基礎を構築する」ものとなるという。

米宇宙軍および英国政府イスラエル政府向けの同種の打ち上げはスケジュールとして必ずしも差し迫ったものではない。VOXはまだテスト段階にあり、衛星打ち上げは2021年となる予定だ(詳細についてさらに取材中なので新たな情報が得られればアップデートしたい)。

Virginグループの宇宙企業、VOX SpaceVirgin Orbitは、他の衛星企業とは異なり、ロケットをボーイング747に吊り下げて上空に運ぶ。この発射方式はまだ実証されていないが、地上施設としては発射台を必要とせず747が離陸できる滑走路さえあればよい。打ち上げスケジュールの柔軟性、迅速性に優れている有望なテクノロジーだ。

長年にわたる開発とテストの後、Cosmic Girl(発射母機)とLauncherOne(ロケット)はほぼすべての準備を完了させた。

Voxは極低温搭載吊り下げ飛行という最後のリハーサルを計画している。 この飛行ではロケットのタンクに極低温の液体酸素が搭載されるなどほぼすべてが実際の打ち上げ時と同様となる。エンジンに点火し実際に衛星を打ち上げるテストは2020年後半に予定されている。

もちろん世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、Vox Spaceにも影響を与えている。同社は、次のテストの準備が完了したことを発表するブログ記事でこの点についても説明している。

他のビジネス同様、Vox Spaceの計画も大幅に混乱させられており、スケジュールには未定部分が多くなっている。しかしVOXの最終テストと最初の商用打ち上げの具体的なスケジュールも近く発表されるはずだ。

画像クレジット:Virgin Orbit

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米空軍の衛星打上選定はフェーズ2に、SpaceXがULAに先行

米国空軍は2022年から 2026年にかけて打ち上げられる安全保障用衛星の打ち上げ企業2社を選定する作業を進めている。現在この調達プロセスは「フェーズ2」に入り、SpaceX、Blue Origin、ULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)など米国を代表する民間宇宙企業のすべてが入札への参加を表明している。

この中で、Blue OriginとNorthrop Grummanは政府の衛星打上事業の分野では新顔だ。ロッキード・マーティンとボーイングの合弁事業であるULAと、イーロン・マスクのSpaceXは民間宇宙企業のトップであるだけでなく、安全保障衛星の打ち上げでも実績を積んでいる。両者を比べるとわずかだがSpaceXはULAに先行している。SpaceXのFalconが多数の衛星打上に成功している既存のロケットシステムであるのに対して、ULAが提案しているVulcan Centaurはまったく新しいシステムでそれぞれの打ち上げにテーラーメイドで対応できるが、認定も受けておらず打上実績がない。他社のシステムも認定を受ける段階に来ていない。

我々の取材に対し、SpaceXの社長で最高業務責任者(COO)であるGwynne Shotwell(グウェイン・ショットウェル)氏はメールで次のようにコメントしている。

SpaceX は衛星打上能力を長期的に提供するという点で空軍の期待に十分応えられると信じている。SpaceXのシステムはすでに認定を受け、現に稼働中のシステムであり、国家安全保障上必要とされるあらゆるミッションに対応した衛星打上が可能だ。

SpaceXは、Falconロケットが現在米空軍の衛星を打ち上げていることをライバルに対する優位性を確保するカギと見ている。同社は「(SpaceXを選定することが)米政府にとって打上の成功、コストなどを総合して最小のリスクとなる」と説明している。

米空軍が選定作業を完了し、2社を選定するのは2020年中の予定だ。

画像:Public Domain

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Virgin Orbitがボーイング747からのLauncherOneロケット空中投下テストに成功

リチャード・ブランソン氏が率いる宇宙企業であるVirgin Orbitが、商用衛星打ち上げに向けて大きく一歩前進した。同社はコスミックガールと命名されたボーイング747からLauncherOneロケットを切り離して投下するテストに成功した。これは衛星の空中発射に必須のステップだった。

LauncherOneの切り離しは実際の打ち上げ同様、高度は3万5000フィート(約1万m)で実施されたが、これは商用旅客機の通常の巡航高度だ。これ以前にVirgin Orbitでは打ち上げをシミュレーションしてボーイング747にロケットを吊り下げてこの高度を飛ぶテストを行っていた。空中発射はSpaceX などの地上発射に比べてエンジン推力と燃料を節約でき、打ち上げコストの低減に役立つことが期待されている。

今回のテストではLauncherOneロケットのエンジンには点火されなかった。実は用いられたのは空力と重量を同一にしたダミーでボーイング747から投下された後、弾道飛行してモハーベ砂漠のエドワーズ空軍基地の定められた地点に落下した。

今回のテストの主眼はロケットが予定どおり母機の翼から安全に切り離せることの確認だった。またダミーに設置された多数のセンサーにより、自由落下中のダミーの飛行の挙動の詳細なデータも得られたという。

Virgin OrbitはVirgin Galactic と並ぶVirginグループの宇宙企業の1つで、Virgin Galacticが有人宇宙旅行の実現を目的とするのに対してOrbitは低コストで小型の商用衛星を打ち上げようとしている。Galacticは今週、上場を目指していることを明らかにした。小型衛星の打ち上げはRocket Labのプロジェクトがライバルとなるだろう。こちらは伝統的な地上発射モデルだ。

Virgin Orbitではこの後、実際の衛星打ち上げに用いるロケットを組み立てる。最初の空中発射は今年中に予定されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

イーロン・マスクのStarlinkが成功すれば世界のインターネット接続は一変

5月末にSpaceXがStarlink衛星最初の打ち上げに成功したことで、インターネット接続は新しい時代に向かって大きく一歩進んだ。 小型通信衛星60基はSpaceXとして過去最大のペイロードだった。このマイクロ通信衛星はやがて地球全体を覆い、どんな場所にもインターネット接続をもたらす通信衛星群を構成する最初の一波だという。同社は打ち上げ成功後、謎に包まれたStarlink構想に関していくつかの新しい情報を公開した。

SpaceX とCEOであるイーロン・マスク氏はStarlink構想に関してこれまでいくつかのヒントは出してきたものの、具体的内容については非常にガードが固かった。

配布されたプレスキットで、衛星は225kg程度、カーゴベイへの充填率を最大化するためフラットパネル型であり、Startrackerと呼ばれるナビゲーションシシテムを備えてくることなどはわかっていた。

しかし打ち上げ成功後にスタートしたStarlinkのサイトではもう少し詳しい情報が公開されている。イラストではあるが細部がはっきりわかる画像も掲載されていた。このCGで衛星の仕組みの概略がわかったので簡単に紹介してみよう。

Starlinkでは地上と通信するだけでなく、相互にも通信可能な数千の衛星が常時ある地域の上空にあってインターネット接続を提供する。衛星の数、被覆地域の広さ、提供できるトラフィックの量など詳しいことは不明だ。それでも上のGIF画像でだいたい仕組みは分かる。

4基の衛星が一組となってフェーズドアレイ・アレイ・アンテナを構成する。これにより打ち上げ時にはコンパクトでフラットだが、展開されると大口径のアンテナが実現できる。またカバー方向を変更するために通常のレーダーのように大きなパラボラアンテナの方向を変える必要がない。もちろんフェーズド・アレイ・アンテナは高価だが、衛星はできるだけ小型軽量で可動部分が少ないほうがいいに決まっている。

個々のStarlink衛星は太陽電池パネルを一枚だけ備える。パネルは紙の地図のように折り畳まれており、軌道上で展開される。上の図では衛星本体の右側に展開された一部が示されている。多くの衛星と異なり、太陽電池パネルを1枚しか備えていないのは機構の単純化、コストの削減が目的らしい。Starlinkのように数千個の衛星がシステムとして協調動作し、かつ寿命も数年と想定される場合、個々の衛星の信頼度さほど必要ない。いずれにせよ太陽電池パネルは枯れたパーツでもともと信頼性は高い。

クリプトン・ガスを利用するイオン・スラスターが姿勢制御を担当する。名前を聞くとSFっぽいがイオン推進は数十年前に実用化されている。陽電荷をもつプラズマを放出し負極が電磁力で吸引すると、反作用で推進力を得られる。長時間にわたって推進が可能であり精度も高いが推力自体は微小だ。

陽イオン源としてキセノンが使われることが多いが、Starlink衛星では推進剤にクリプトンが選ばれている。その理由は説明がやっかいだが、ひとつは同じ希ガスでもクリプトンのほうがやや入手しやすい点だ。現在稼働しているイオンエンジンの数は多くない。しかし数千個を動かす予定ならほんのわずかのコスト差でも収益に大きく影響する。

衛星には天体を観測して自機の姿勢を制御するStartrackerと他の衛星と衝突を防ぐシステムも搭載されている。この部分はSpaceXから具体的な説明がないのわれわれの側で推測するしかない。星を観測し、自国や地表との相対的位置をベースに位置、姿勢を計算するのだろう。このデータと政府のデータベースに掲載されている他の衛星や既知の宇宙デブリのデータと照合すれば衝突防止が可能になる。

Starlinkサイトには直交する5枚の円板の画像があった。これはリアクション・ホイールだろう。それぞれのホイールは一定速度で回転することで運動エネルギーを蓄えており、加速、減速によって反作用を生じさせて衛星の姿勢を制御する。きわめて巧妙なしくみだが、これも現在の衛星で標準的に用いられている。リアクション・ホイールとイオン・エンジンによって衛星の姿勢、相互の位置関係を精密に制御し、またデブリとの衝突を回避するわけだ。

SpaceXは私の取材に対して「われわれのデブリ・トラッカーはアメリカ空軍の統合宇宙運用センター(Combined Space Operations Center)に接続されており、あらゆるデブリの軌道を取得できる」と答えた。デブリの軌道データとStarlink衛星の軌道データを照合し、衝突の可能性が発見されれば衛星軌道が変更される。イオン・エンジンの推力は微小なため、充分な時間の余裕が必要だ。ボールが飛んでくるのを見てから避けるような動作ではなく、航空管制官が衝突を防止して旅客機を運航するのに似ている。

しかしStarlinkについてはまだ分からないことが多い。たとえば地上局はどうなっているのだろう? Ubiquitilink構想とは異なり、Starlinkの電波は微弱でユーザーのスマートフォンで直接受信することはできない。 そこで地上局が必要になるわけだが、マスク氏は以前、「ピザの箱程度のサイズにする」と述べていた。しかしピザといってもS、M、L、XLいろいろなサイズがある。どこに、誰が設置するのか? コストは?

先週のメディア向けブリーフィングでマスク紙はもう少し詳しく説明した。「地上受信設備は円盤型だ。しかしDirecTVなど静止衛星を利用した宇宙放送の地上アンテナとは異なり、特定の方向に向ける必要がない。Starlinkのディッシュは空に向いてさえいればいい」という。

また通信システム自体にもまだ謎が多い。たとえばアメリカのユーザーがStarlinkを利用してクロアチアのサイトを開こうとしたとしよう。なんらかのアップリンクで信号はStarlink衛星に到達する。衛星から衛星へ中継され、サイトの最寄りの衛星から地上に戻るのだろう。このダウンリンクは目的の地域のインターネットの基幹回線に接続するのだろうか? 最後の1マイルが光回線になるかどうかはテキストや音声通話などの場合ほとんど問題にならない。しかし最近急速に成長してきた動画ストリーミング・サービスにとっては大きな障害となり得る。

そして、ここが最大の問題かもしれないが、コストはどうなるのだろうか? SpaceXではこのサービスを地上の接続サービスと競争できる料金にするとしている。都市部における光ファイバーの普及度合いを考えるとこれが実現できるかはやや疑問だ。しかしテレコム各社は人口密度の低い遠隔地に光回線を設置したがらず、昔ながらのDSLに頼っている。こうした地域ではStarlinkは非常に高い競争力がありそうだ。

しかし実際の運用が始まるのはまだかなり先だ。今回打ち上げられた60基の衛星は第一陣に過ぎない。構想どおりに作動するかどうかを試すフィージビリティ・スタディーだ。テストが成功すればさらに数百機が打ち上げられテストは次の段階に進む。こうなれば一部の地域でごく初歩的なサービスが提供されるようになるかもしれない。とはいえ、SpaceXは計画の推進を急いでおり、早ければ年内にもこの段階に達するという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

スカパーJSATとパスコが宇宙事業に関する業務提携を締結、新たな衛星データ利活用サービスの開発へ

衛星多チャンネル放送局「スカパー!」などを提供するスカパーJSATは3月28日、人工衛星や航空機などから地理空間情報(GIS/航空測量)を取得するサービスを提供するパスコとの業務提携を発表した。今回の業務提携を通じて、両社がともに展開する低軌道周回衛星に関するサービスの効率化と市場拡大を図る。

スカパーJSATは、スカパー!で知られるメディア事業のほかに、同社が保有する17機の衛星を利用した宇宙事業を展開している。災害に強い衛星IPネットワークサービスを導入できるサービスや、海の上でも繋がる「海洋ブロードバンドサービス」などを提供中だ。

一方のパスコは、人工衛星や航空機、ドローン、専用車両、船舶などに各種センサー(光、レーザー、マイクロ波)などを搭載することで地理空間情報を収集する事業を展開している。

両社は今回の業務提携により、国内外の低軌道周回衛星を利用した地球観測あるいは通信事業者向けに、衛星地上局を用いたデータ送受信サービスを提供する。また、共同で、新たな衛星データ利活用サービスの開発や、両社のサービスや販売チャネルを相互に活用できる新たなビジネスモデルの創出にも着手していくという。

SpaceX、スカパーJSAT放送衛星打上とブースターロケットの洋上回収に再び成功

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今日(米国時間8/14)、東部時間1:26am、SpaceXはケープカナベラルからFalcon 9ロケットを打ち上げ、第一段ロケットを海上を航行するドローン艀に着陸させることに成功した。さらに重要なことだが、SpaceXは今回の打ち上げの本来の任務であるJCSAT-16衛星を静止トランスファ軌道(Geostationary Transfer Orbit=GTO)に乗せることにも成功している。

SpaceX JCSAT mission patch

ブースター・ロケットを洋上のドローンに着陸させるたのは、衛星を静止軌道という非常に高い高度に投入する必要があったためだ。静止トランスファ軌道に乗せるためには多量の燃料を必要とするので、ブースターを地上基地に帰還させることはできなかった。これまでのところ、SpaceXが地上基地にブースターを帰還させたのはペイロードとなる衛星が低高度の場合だけだった。

今回打ち上げられたJCSAT-16は大型の商用放送衛星で、日本のスカパーJSAT株式会社のためにSpace Systems Loralが製造したものだ。この衛星はスカパーJSATが運用する16基の衛星ネットワークに追加され、アジア太平洋地区における衛星放送と衛星データ通信の役割を担う。

SpaceXでは今回を含めてブースターの回収を合計11回試みており、うち6回が成功している。2回は地上回収、ドローン艀への回収に成功したのは今回を含めて4回となった。
航行する艀への洋上回収は地上回収に比べて困難度が高いと考えられているが、SpaceXの打ち上げミッションによってはドローン艀への回収が最良ないし唯一のオプションとなる。

この1年に繰り返されてきた回収の試みでSpaceXは非常に多くの経験を積んだ。ある場合には温度が高すぎ、操縦をコントロールする液圧装置の作動流体が十分残っていない、安定脚がロックされずに転倒したことなどもあった。

しかしこの4月以降、イーロン・マスクの宇宙企業はブースター回収を6回試みて5回生功させている。

ただしこれまでのところ、回収されたブースターの再利用は行われていない。しかし先月、回収されたブースターの1基を用いて燃焼試験が実施された。この実験のは有意義だったはずだが、宇宙に飛び立ったわけではなかった。衛星打ち上げへの再利用に最初に使われるのは この5月に国際宇宙ステーションへの物資補給に用いられたブースターとなるはずだ。打ち上げスケジュールなどはまだ決まっていない。

今日のミッションはSpaceXにとって今年8回めの打ち上げとなった。打ち上げ回数を18回と昨年の3倍にアップするう野心的な目標を実現するなら、今年後半にかけてさらにペースを上げる必要がある。次回の打ち上げはわずか3週間後に予定されており、SpaceXはその準備に全力を挙げている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

宇宙から定点観測、NASAが地球の1年間を映す動画を公開

epic-storms-pacific-ocean1

去年の今頃、NASAはDSCOVR衛星に搭載されるEPICカメラで撮影した画像を初めて公表した。そのカメラは、それ以降も地球よりおよそ100万マイル離れたLagrange Point 1と呼ばれる場所から撮影を続けていた。

3000枚以上の画像をまとめ、NASAは太陽が照らす地球の1年間の様子が分かる動画を制作した。

EPICは2時間毎に少なくとも1セット分の画像を撮影する。地球を散発的にしか撮影していないが、それでもEPICの記録は雲の動きや空に駆け巡る大きな天候パターンを明らかにする。1セットの画像では10の異なる波長を記録している。赤、緑、青の波長を組み合わせることで動画で見える地球の色を再現している。

たった1年の短い期間だが、EPICはすでにいくつか興味深い天体イベントを記録した。

皆既日食

Series of EPIC images showing the moon’s shadow move across the Earth during a total solar eclipse / Images courtesy of NASA/NOA

EPICの画像から、皆既日食の過程で月の影が地上を移動している様子が分かる:NASA/NOAの画像

3月、EPICは皆既日食で地球の上を月の影が移動している様子を捉えた。地表で月の移動経路に当たる場所にいた人たちは、皆既日食を見ることができた。

皆既日食の間、月は地球と太陽の間を通過する。地上で空を見上げると、短い間太陽が暗い丸い影に変わって日食を見ることができる。

月の移動

Series of EPIC images showing the lunar transit that took place in July, 2015 / Images courtesy of NASA/NOAA

2015年7月にEPICが捉えた月の移動の様子:NASA/NOAAの画像

DSCOVRの特異な地点からは、毎年1回か2回、月が移動している様子を見ることができる。

DSCOVRは常に地球と太陽の間に位置していて、月は地球の周りを回っているのだから、DSCOVRからは常に月が見えるだろうと感覚的に思うかもしれない。しかし、EPICが捉えられる範囲は狭いこと、地球と月は相当離れていること、さらに月の軌道は5度ほど傾いていることから、月はEPICの撮影範囲からは大抵の場合外れているのだ。

Earth/Moon to scale / Screenshot from BuzzFeed video “209 Seconds That Will Make You Question Your Entire Existence”

地球から月までの距離を表した画像:BuzzFeedの動画「209 Seconds That Will Make You Question Your Entire Existence」のスクリーンショット

最初の月の移動が目撃されたのは2015年7月16日で、2回目の写り込み は今年の7月4日に起きた。

Series of EPIC images showing the second lunar transit that took place July, 2016 / Images courtesy of NASA/NOAA

2016年7月、2回目の月の移動が確認されたEPICの画像:NASA/NOAAの画像

天候と北極、南極

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  2. epic-smoke-from-forest-fires.png

  3. epic-north-pole.png

  4. epic-south-pole.png

皆既日食と月の移動に加え、EPICは太平洋を進む3つの大型ストーム(最初の画像)、東南アジアで発生した山火事(2枚目の写真)、そして北極、南極の様子(3つ目と4つ目の写真)も捉えている。

EPICが1年の間で北極と南極のどちらの様子も捉えられるのは、1年に季節があるのと同じ理由で、地球が傾いているからだ。

北極がEPICの方に傾いている時、太陽の方に傾いていることを意味するため、北半球は夏であることを示す。同様に南極がEPICの方に傾いている時、南半球は夏だ。

EPIC Science 観測装置

EPICはアメリカ海洋大気庁が2015年2月にローンチしたDSCOVR衛星に搭載されているEarth Scienceのための観測装置だ。この衛星は常に太陽と地球の間にある特別な重力均衡地点「Lagrange Point 1」と呼ばれる場所に位置する。地球と太陽の間にDSCOVRは常に「駐車」しているため、継続的に太陽を向いている地球(太陽が照らす地球)を観測することができる。

DSCOVR location in relation to the Earth and sun / Image courtesy of NOAA

地球と太陽とDSCOVRの位置:NOAAの画像

DSCOVRの観測地点から、科学者は1年を通しての雲の範囲や天候パターンを研究することができる。EPICの光学画像からオゾンやエーロゾルの量、雲の高さや移り変わり、植物の生息地域、火山のあるホットスポット地域、地表に降り注ぐ紫外線量などを計測することが可能になる。

EPICはこれまでになかった地球の定常的な観察画像を提供している。DSCOVRのミッションは5年がかりのもので、私たちは少なくとも次の数年間、EPICが撮影する太陽が照らす地球の画像を見ることができるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website