アップルが独自のブッククラブ「Strombo’s Lit」を米国などのApple Booksアプリ内に立ち上げ

Oprah、そしてReese、では次はAppleか?iPhoneのメーカーがこのほど、そのApple Booksアプリの中に直接、独自のブッククラブを立ち上げた。米国とカナダと英国とオーストラリアの読者に、Appleが選んだフィクションやノンフィクションが提供される。ただしApple PodcastsやApp StoreにあるAppleのその他の編集者的サービスと違って、無名の編集者たちが本を選ぶのではなく、カナダ人のメディアパーソナリティでApple Music HitsのホストであるGeorge “Strombo” Stroumboulopoulos(ジョージ・ストロンボロ・ストロンボロポロス)氏が選ぶ。

そのため実はこのブッククラブは「Strombo’s Lit」と呼ばれている。

ストロンボロポロス氏はApple Musicのチームにいるが、ブッククラブは音楽関連の本を優先しない。むしろStrombo’s Litのテーマはかなり幅広くて、世界をもっとよく見るためのレンズを提供する、とApple(アップル)はいう。読者層の定義は漠然としており、世界の最良の著者のコンテンツを読んで勉強したいと思っている人なら誰でもとなっている。

画像クレジット:Apple

ネット上のブロードキャストとラジオを長年やってきたストロンボロポロス氏は、パンデミックの最中の2020年8月にAppleに入った。彼は今、ライブのApple Music Hitsの「Strombo」という番組で、アーティストとリスナーをつなごうとしている。米国時間2月8日に放送された最近の番組で彼は、Strombo’s Litのローンチを発表した。

このブッククラブは、生涯の本好きであるストロンボロポロス氏が新型コロナウイルスの蔓延によるロックダウンの間に大量の本を読み、好きな本のことを友だちに話したくなって始めたものだという。もちろんクラブでは、彼が個人的に選んだ本にもっと多くの読者がアクセスできる。この新しいブッククラブに関心がある人は、iPhoneやiPadやiPodタッチ、Apple WatchなどのApple Booksアプリで見つけるか、ユーザーネーム@stromboで彼自身のソーシャルチャンネルからジョージをフォローするとよい。クラブでは、彼が選んだ本にアクセスできるだけでなく、インタビューなど、その他のコンテンツもあり、その一部をソーシャルメディア上で共有もできる。

やあ、みなさん、元気かな。すごいことがあるんだ。これから、ブッククラブでお友だちを作るのさ。会話もある。つながりができる。プレゼントもある。ぜひ、来て見てちょうだい。最初の本はNeal Stephensonの「Termination Shock」です。

最初の「Strombo’s Lit」のおすすめは、Neal StephensonのSFスリラー「Termination Shock」だ。彼はベストセラーの「Seveneves」や「Anathem」「Reamde」などを書いてる。これらは、Apple Booksにもある。

Appleは新しいブッククラブによって、今あるApple Booksの本の選択がなくなるわけではない、と明言している。Apple Booksの編集者たちは本の選択を続行し、それらをApple Booksアプリの「Book Store」タブにある多様なコレクションに収める。クラブの方は、ストロンボロ氏が個人的に選んだ本が単純に提供される。

しかし、Appleがなぜ、こんなブッククラブを立ち上げるのだろう?それは、ブッククラブの成功が個人の人気や個人崇拝に基づいていることが多いからだ。そんな個人とは、たとえばOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)氏やJenna Bush Hager(ジェンナ・ブッシュ)氏だ。ストロンボロ氏はオンラインのフォロワーが多く、Twitterのフォロワーは86万人いる。彼は、誰もが知っているというタイプのキャラクターではない。しかしそれでも、Appleのような巨大テクノロジー企業がブッククラブをやる例は他にもある。Netflixは10月に、は連続ドラマや映画の原作になった本を紹介するためのブッククラブを発表している。

画像クレジット:egal/iStock

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【レビュー】Amazon Glow、本当に会話相手の存在を感じる小型プロジェクターは楽しいがまだ粗削り

私が困っているのは、テーブルの上のその黒い魔法の箱がときどき私の手を見失うことだ。

しかし、うちの三歳児はまったく平気だ。彼は、300km先にいる祖母がテーブルに置いた恐竜を何度も掃除機で吸い上げながら、息ができなくなるほど激しく笑い転げている。

とい何のことだかわからないだろうから、初めからお話しよう。

私たちは今、Amazon Glowで遊んでいる。新しいやつだ。わずか2年前にAmazon(アマゾン)が「Glow」と名づけたあれではない。

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タッチスクリーンが自立し、それにプロジェクターをくっつけた。それが乗るテーブルに、画像が投射される。カメラは2つ搭載され、1つは目の前にいる人を写し、もう1つはテーブルにあるその人の手の位置を追う。これにより、テーブルに投射される画像がタッチスクリーンになる。これがGlowだ。

画像クレジット:Amazon

Glowは子どもたちを遊ばせ、絵本を読ませ、遠くの家族や友だちなど限られた人たちとビデオチャットをさせるものだ。その際、スクリーンにはチャット相手が映っている。祖母などは、テーブル上の画像を自分のタブレットでそれを見る。祖母が彼女の本のページをめくると、子どもの本のページもめくられる。一方が何かを描くと、相手もそれが見られる。なお、Amazonは推奨年齢を「3歳以上」としているが、今の状態であれば、私なら「3歳から8歳まで」というだろう。

すべてが、Amazon Kids+を軸に構成されている。それはプライムとは別の有料サブスクリプションで、子どもの本やゲーム、映画、テレビ番組などを収集している。ただしGlowで観られる / 遊べるのは本と一部のゲームだけだ。それは正解だろう。動画を観ることができたら、うちの子は1日中BlippiのYouTubeを観ているだろう。Glowを買うと1年間Kids+が無料になる。その後はプライム会員なら月額3ドル(約340円)もしくは5ドル(約570円)となる。

本のチョイスはいい感じで、特に幼児向けが充実している。ゲームは神経衰弱やチェス、卓球ゲームのポンといったアーケードゲームなど、いずれも簡単な複数プレイができるものだ、お絵描きアプリは、自分が父のコンピューターの前に長時間座ってKid Pixで絵を描いていた頃のことを、強烈に思い出させる。今回それはディスプレイではなくテーブル上だが、我が子は遠く離れた州にいる祖母と一緒に絵を描いている。祖母が恐竜のステッカーをスクリーンに置くと、子どもは掃除機ツール(消しゴム)でそれを飲み込む。そして2人が笑う。そうやってスクリーンの掃除を100万回繰り返す。

子どもが話せる相手は、完全に親が決める。親もAmazonのアカウントが必要だ。そのセットアップには、相手によっては時間がかかるかもしれない。しかし、一度行えば二度やる必要はない。このような、ホワイトリスト方式は良いものだ。子どもが偶然、知らない人と話をすることがない。

確かにGlowは、パンデミックの申し子のようなデバイスだ。家族と直接会えないことが購入動機になるだろう。特に高齢者にとっては、人とリアルに会うことが今や自分の生死に関わることもある。

「でも、おばあちゃんとリモートで話したいだけなら読書アプリとFaceTimeで十分では?」と、思うかもしれない。

もちろん、そうだけど、しかしそれでも……。

Glowには、少々異なるとことがある。うちの子にとってそれは、FaceTimeやZoomなどとはまったく違うものだった。私も、そう感じる。

像クレジット:Greg Kumparak

その違いが、会話している相手の存在感を生み出しているのだろうか。Glowは通話中に、デバイス本体をあちこち動かさないためバッテリーがなく、壁からプラグを抜けば電源はオフになる。同じテーブルに座ってる誰かと話をしていて、ふと顔を上げると目の前にその人がスクリーンに映っている。お互いに相手の目と目、顔と顔を合わせているような感覚がある。コンピューターのディスプレイを見つめている感覚ではなく、むしろテーブルに座って一緒にボードゲームをしているような感じだ。

いずれにせよ、不思議なほど効果的だ。うちの子は通常、FaceTimeを使って5分ほど祖母と過ごす。自分のおもちゃを披露したりするが、急に違うことを始めたりする。今では、祖母と話したいかいと尋ねると彼は明確に「Glowしたい」という。「glow」を動詞として使う。彼は自ら喜んでGlowの前に座り、たっぷり1時間祖母と遊んだり本を読んだりする。バグなんか、気にしない。

そう。問題はバグだ。

Glowは、発売されたような、されてないような、ちょっと不思議な製品だ。Glowは、Amazonの「Day 1 Editions」プログラムの一部で、「まだベータ版のときに買うプロダクト」という意味の、より市場性の高い言い回しになっている。「invite(招待)」を申し込むと、Amazonはそれを購入する人を選び、選ばれた人は、Amazonが調整している間、少し早く使うことができる。Day 1プログラムの一環として購入する場合は250ドル(約2万8600円)で、それ以降は299ドル(約3万4200円)だ。

このような事業では、バグも主役だ。そして2021年末現在のGlowにも、バグはある。タッチが検出されないいことが頻繁にある。子どもが長袖を着ていると、余計ひどいようだ。混乱すると「KLONK」という音がしてエラーを吐く。誰に対しても! 本やゲームはロードできないことがときどきある。ランダムにリセットが起きる。

このようなプログラムでは、バグはつきものだ。2021年末に発売される「Glow」にも、そのようなバグがある。タッチの検出に失敗することがやや多く(子供が長袖を着ているときは特に)、混乱すると「KLONK」という音を出してエラーになる(どちらのユーザーも!)。本やゲームの読み込みに失敗することもある。そしてときどきランダムにリセットされる。

また、バグというよりもただ粗削りな部分もある。例えば、こんな感じだ。

  • Glowのスクリーンに映る通話相手は、なぜか上の写真のように顔半分が切れてしまうことが多い。これは、グローの画面がポートレート(縦長)モードであるのに対し、通話相手は一般的にランドスケープ(横長)モードであるためと思われる。一方、通話をしてきた人は、自分の顔はほとんど見えず、子供の顔と、子供が見ているものが映し出されるだけなので、それが起きていることに気づかない。最初は、その人がタブレットの置き方を知らないだけだと思っていた。その後、別の人でも同じことが起こった。別の部屋から子供をGlowで呼び出したら、3分くらいで顔が切れてしまって、妻に笑われてしまった。Amazonは、このような事態を想定して、「センターフレーム」のような顔追従機能を組み込むべきだろう。
  • Amazon Kid’sのライブラリーには、文字が小さすぎて読みにくい本がたくさんある。Bubble(バブル)モードというのがあり、これは自動的に文字を拡大して読みやすくしようとするが、邪魔になることも多い。また、このモードが勝手に切り替わることもあり、初めて目にしたユーザーはとまどってしまうだろう。
  • UIは全体的に遅かったり、フォーマットがおかしい。。

いずれも簡単に修正できそうなものなので、Amazonには期待したい。もっとブラッシュアップして、今後コンテンツが増えれば、Glowは本当にすてきでかわいいデバイスだ。しかし現状では、どれだけ愛されるだろうか。我が家で数週間使ってみたが、その間にパッチはあったのだろうか。よくわからない。

しかしそれでも、愛すべき点は多い。プロジェクターでテーブルに映し出されるスクリーンは明るくてきれいだ。白いマットが巻かれた状態で同梱されており、それを使うと明るさと手触りがさらに良くなる。これを使うために部屋の灯りを調節したことはない。セットアップはとても早くすぐに使えるし、手早くしまえる。箱は、良くできた耐久性の高いケースにもなる。Amazonはこういったポイントもしっかり考えたのだろう。未使用時のための、プライバシー保護用の物理的なカメラカバーもある。壊れたときの修理は最初の2年間無料だ。子どもはモノを壊す動物だから、このポリシーもいい。

しかし、これらはどれも子どもには関係ないことだ。彼らは掃除機でもっとたくさんの恐竜を吸い込みたいだけだ。

私のこのレビューを、簡単な問いで終えよう。このレビュー機をAmazonに返却後、果たして私はGlowを買うだろうか?今回の場合、すでに買ってしまった(詳しくいうと、購入の招待状をリクエストした)。「おばあちゃんとglowできなくなる」と子どもはすごく落ち込むだろう。そして、彼が祖父母と話をしているときの、Glow独特の話し相手の「存在感」が気に入った。

あなたはどうだろう?あなたの子どもがすでに祖父母とのFaceTimeで満足しているなら、買わなくてもよいかもしれない。本やお絵描きや簡単なゲームに関心を示さないなら、やはりいらないだろう。この製品の、そしてAmazonの製品開発努力を手伝い、いくつかのバグを我慢する気がないのであればやはり難しいだろう。しかしAmazon Glowは、おもしろそう、良さそうと感じた人にとっては、とても楽しい製品だ。

画像クレジット:Amazon

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

データサイエンスでストーリーを分析・編集し人気作品を生み出す自費出版プラットフォームの独Inkitt

パンデミック渦、本の売り上げが上昇した。それにともない人々の読書量も増えているInkitt(インキット)は誰もがストーリーを書いて公開できる同名の無料プラットフォームを運営しているスタートアップだ。同社はさらにデータサイエンスを用いてそこに掲載されたストーリーを分析し、選ばれたストーリーを別の有料アプリGalatea(ガラテア)で長編作品として発表するという仕組みをとっている。この絶好の時期を捉え、同社は5900万ドル(約66億円)の資金調達を達成した。シリーズBでの評価額は公表されていないが、筆者が信頼できる情報源から得た情報によると、3億9000万ドル(約436億円)程度だという。

ベルリンを拠点とするInkitt。今回の資金調達はアルゴリズムとテクノロジーの構築を継続するために使用される予定だ。無料アプリから有料アプリに飛躍させる長編作品の選択、ストーリーの方向性のバリエーションのA/Bテストを行う「編集者」としての役割など、ストーリーのキュレーションは人間ではなくすべてアルゴリズムによって行われるため、アルゴリズムとテクノロジーの構築はとても重要な要素になる。また今回の資金は、特に北米市場へのさらなる進出に向けたより多くの人材雇用のために使用される予定だという。さらに、長期的にプラットフォームを拡張する方法についても検討をすすめている。そのためには読書以外のフォーマットも含まれる可能性があり(例えば現在オーディオにも着手し始めている)、またAPIやSDKを構築し、他の出版社などがこのツールを使って書籍化の可能性のある短編作品をテストできるようにするというようなことも考えている。

Inkittはここ数年間著しい成長を続けている。同社は現在700万人のユーザー(つまり読者)と30万人のライターのコミュニティを抱えており、筆者が前回の資金調達ラウンドを取材した2019年の時点では、160万人の読者と11万人のライターだったので、約3倍に増えていることになる。一方、有料のGalateaアプリのランレートも3800万ドル(約42億5000万円)を超えている。2年前はわずか600万ドル(約6億7000万円)だったため、この数字は6倍以上である。

同スタートアップは出版業界のさまざまな企業からも注目されており、今回のラウンドに投資する企業の顔ぶれがそれを物語っている。

NEAのマネージングジェネラルパートナーであるScott Sandell(スコット・サンデル)氏と、ドイツの出版大手Axel Springer(アクセル・シュプリンガー)が今回の投資を共同で主導。これまでにPenguin Books(ペンギン・ブックス)のCEOを務め、Disney Publishing(ディズニー・パブリッシング)を立ち上げたこともあるDisney(ディズニー)の元上級幹部で現在Snap(スナップ)の会長であるMichael Lynton(マイケル・リントン)氏の他、Macmillan(マクミラン出版社)などを所有し、自身の名を冠した出版大手の会長を務めるStefan von Holtzbrinck(ステファン・フォン・ホルツブリンク)氏、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)、HV Capital(HVキャピタル)、Redalpine(レッドアルピン)、Speedinvest(スピードインベスト)などが参加している。ちなみにKleinerはInkittのシリーズAを主導している。

このプラットフォームに参加している作家(少なくとも最初の章がInkittのアルゴリズムに合致し、それを読者に響くような長編作品に仕上げた作家)も、かなり大きな数字を達成しており、その中にはおとぎ話のようなサクセスストーリーもいくつか含まれている。

インドの中でも貧しい州の1つであるオディシャ州出身のSeemran Sahoo(シームラン・サフー)氏は、スマートフォンのみを使用してInkittに発表した小説「The Arrangement」でこれまでに270万ドル(約3億円)を稼いでいる。イスラエルのSapir Englard(サピア・エングラード)氏は、当初Inkittで発刊した「The Millennium Wolves」の収益を、ボストンのバークリー音楽院の学費に充てたいと考えていた。米国の高等教育機関の学費は高いものの、それでも彼女はその目標には十分すぎるほどの額を達成、これまでに小説で800万ドル(約9億円)を稼いだという(注:いずれもInkittの前回の資金調達ラウンドの前に出版されたものであり、彼らはその後も売り上げを上げ続けている)。

この2人は異例の成功だが、Inkittの創業者兼CEOのAli Albazaz(アリ・アルバザズ)氏(下記写真)は、Galateaに選ばれた人のほとんどが、他の出版環境に比べて非常にうまくいっていると話している。

「Galateaの作家の大半は10万ドル(約1100万円)以上の売り上げを記録しています」と同氏はいう。しかし、今は書籍、それも特に超大作がInkittの活動の中心にあるわけだが、同社の今後の大きなビジョンは単なる読書に留まらないとアルバザズ氏は話している。同社はオーディオブックの開発にも着手し始めており、映画、テレビ番組、マーチャンダイジング、ゲーム、さらにはテーマパークの開発も計画しているという。「21世紀のディズニー」というのは同氏の言葉である。

Inkittの創業者兼CEOのAli Albazaz(アリ・アルバザズ)氏(画像クレジット:Inkitt)

同社の道のりは一貫して順調だが、猛スピードでことが進んでいるわけでもない。これはアルバザズ氏が2019年に語ってくれた通りのシナリオである(しかし当初のプランから変わってきたものもいくつかある。例えば当初Galateaのユニークなセールスポイントには、本に付加する一連の「エフェクト」、つまり読書体験をより没入的にするための音や揺れがあった。これらエフェクトは今でも存在はするが、もはやすべての中核的な存在ではないようで、今回の我々の会話の中でアルバザズ氏もエフェクトについては後付けの要素としか言わなかった)。

なぜディズニーのビジョンがまだ実現されていないのかというと、パンデミックがあったから、というのが公平な言い分である。それに「Move fast and break things(すばやく行動し破壊せよ)」という考えがいつも正解なわけではない。

アルバザズ氏によると、同社には「テレビや映画、制作会社からGalatea / Inkittの本に対するコンテンツベースの依頼が毎週2〜4件きている」とのことだが(出版社であるInkittは映画化などの権利を保有している)、まだどれも契約には至っていない。その理由の1つはこのディズニーのアイデアにある。Inkittは次なるステージでも大きな役割を果たしたいと考えているからだ。

「何がベストなのかを検討中です。我々はGalateaに動画を設置するという選択肢を残しておきたいのです」と同氏。ちなみに、Sony Pictures Entertainment(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)のCEOを務めたこともあるマイケル・リントン氏がこの分野でも力を発揮してくれそうだ。

2021年初めに韓国のNaver(ネイバー)に約6億ドル(約671億円)で買収されたWattpad(ワットパッド)のような他の自費出版プラットフォームと同様に(Wattpadも彼らなりの「ディズニー」ビジョンを持っており、プラットフォームで芽を出した作品から、動画などさまざまなコンテンツを生み出していた)、Inkittは文章で生計を立てたいと夢見ているクリエイティブな人々や、自分の作品を世に送り出したいと思っている人々のために市場への新しいルートを開拓した。もちろん、FanFiction(ファンフィクション)のようなサイトからAmazon(アマゾン)やその他あらゆるサイトまで、同様のことができる場所はすでにたくさん存在する。

後者についてアルバザズ氏は、書籍の「マージンをすべて奪い、利益を押し下げ」、Kindle(キンドル)によって読書体験を台無しにした巨大eコマースサイトへの嫌悪感を露わにしている。この気持ちが、Inkittに加えてGalateaを作った理由だと同氏はいう。以前は、Inkittアプリの短編フォーマットを超えた書籍をAmazonに移行させていたからだ。しかし、Inkittには皆が必ずしも納得するわけではない独自のひねりがあることも指摘しておきたい。

ある著名な作家(名前は非公表)は、新作がInkittマシンでどのように評価されるかに興味を持ち、そこに掲載するための章を提出した。

Inkittのデータサイエンスエンジンは誰が書いているかには無頓着で、何が「うまくいくか」だけを重視する。結果その本は「読者はこのストーリーに興味を持たず、すぐに読むのをやめてしまう」と測定されてしまったのだ。

アルバザズ氏によると、その著者は「激怒」し、著者の出版社も激怒したという。著者が「彼らの」本に対して勝手にそんなことをしたから尚更である。著者はフィードバックを無視して著者が書いたとおりの本を出版した(その章が提出されたときにはすでに本全体が書き終えられていた)。結局この本は100万部の販売を達成。まずまずの結果だが、著者のこれまでの大ヒット作には到底及ばない。

「その100万人は、作者の名前を見て買っただけです」とアルバズ氏は断言する。

長期的に見て、Inkittが今の成長を維持できるかどうかだけでなく、より大きなメディアプレーに活用していけるかどうかが見どころである。おそらく、Inkittの今後の実行方法だけでなく、より広い市場で何が起こるかにもかかっているのだろう。

読んだ記事から他のコンテンツのアイデアが生まれることが多いため、AmazonやByteDance(出版業界の一部ではすでに話題になっている)のような企業も今後この分野を掘り下げていきたいと考えていることは間違いない。Amazonは事業の他の部分にも広範なA/Bテストを行っており、またデータサイエンスとAIの強力な武器を事業のあらゆる部分で活用している。しかしこれまでのところ、これらすべてを自費出版の取り組みに活かせるような大きな進展は起きていない。

しかしポジティブに捉えれば、これは投資家が好きなビッグチャンスと現在の牽引力を表しているのではないだろうか。

スコット・サンデル氏は声明の中で次のように述べている。「Inkittには、ストーリーテリングの未来を担うための体勢が整っています。すでに従来のコンテンツ形式を超え、何百万人もの読者にとって革新的で魅力的な新形式に移行しています。人々の物語の消費方法に重要な変化が起きており、Inkittはそれをきちんと理解しています。アリ氏をはじめとするInkittの役員と緊密に連携し、エキサイティングで飛躍的な成長を遂げるであろうこの時期を後押しできることを大変うれしく思います」。

「Inkittの技術は並外れており、同社の成功はストーリーテリングの未来を如実に描いています。Inkittの多くの作家たちが商業的にここまで大きな成功を収めていることを見れば、同社が人々の本の消費方法をいかに深く変革しているのかがよくわかります。私たちは彼らのさらなる発展の一翼を担い、彼らの旅路をともに歩んでいけることに胸を躍らせています」とデフナー氏(Axel SpringerのCEO)は話している。

更新:Inkittは匿名の著者に別のプロットラインを提案しておらず、そのままでは読者の興味を引くことができないと著者に伝えただけである。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

5〜15歳対象のオンライン読書教育「ヨンデミーオンライン」のYondemyが1億円調達、教材拡充・保護者向けアプリを開発

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児童向けオンライン読書教育の習い事サービス「ヨンデミーオンライン」を提供するYondemyは11月9日、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はXTech Ventures、D4V、W ventures、F Ventures。

調達した資金は、ヨンデミーオンラインへの開発投資と人材採用にあて、児童UX・保護者UXそれぞれの改善と組織体制の強化へと活用する予定。具体的には、児童向けウェブアプリにおける新機能開発や動画コンテンツなどの教材拡充、保護者向けウェブアプリの開発、今後の組織拡大を見据えた人材採用などへと投資し、事業基盤・経営基盤を強化することで、中長期的な成長を加速する。

ヨンデミーオンラインは、5~15歳を対象とした月額定額制のオンライン読書教育の習い事サービス。「児童それぞれの興味・読む力に寄り添った選書指導」「『本の楽しみ方』などが学べるチャット形式の対話型学習コンテンツ」「ゲーミフィケーションやコミュニティを活かしたモチベーション設計」の3点を特徴とする。

また同サービスの「AI司書ヨンデミー先生」では、好み・興味に合わせるだけではなく自然にステップアップしていけるように本を薦めるという。独自分析した1000冊以上の児童書データについて、ヨンデミー講師の選書ノウハウを再現した独自開発アルゴリズムにより活用しているそうだ。これにより、読む前の本を手に取るきっかけ作りから、読んだ後のコミュニティでの感想シェアや親子の会話まで、児童の読書体験サイクルを一気通貫で支え、習慣化をサポートする。

さらに、学校では教わることのない本の楽しみ方や感想の書き方を学べるレッスンを提供。レッスンは選択式のクイズ形式になっており、文字入力の必要がない上24時間いつでも受講可能。読書をより楽しくするため、読んだ本の表紙や獲得したバッジを蓄積することで読書へのモチベーションを高めるゲーミフィケーション要素も備える。ヨンデミー生同士による感想シェアにより、読書意欲を刺激すると同時に、新たな本との出会いも生み出すとしている。

2020年4月設立のYondemyは、「日本中の子どもたちへ豊かな読書体験を届ける」というミッションを掲げる、現役東大生によるスタートアップ。「読書を習う」という新しい文化を広めるとしている。習い事の選択肢として「読書」が当たり前にある社会を作ることで、読書教育を通じて日本中の児童を「自立した読み手」へと育て、1人1人の一生にとって読書がかけがえのない武器となることを目指す。

地元の独立系書店を支えるBookshop.orgでの売上好調、Amazonとの競う未来を見据える

もしグーテンベルクが生きていたら、多忙なエンジェル投資家になっていただろう。

2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)によるロックダウンの最中に書籍の売り上げが急増したことを受けて、この控えめな書き言葉が突如としてVCや創業者たちの間で脚光を浴びるようになった。アルゴリズムを使ったレコメンデーションエンジンのBingeBooks、ブッククラブスタートアップLiteratiやその名のとおりのBookClub、ストリーミングサービスのLitnerdなど、新規プロダクトや資金調達の途切れのない華麗な行進を私たちは目にしてきた。またGloseLitChartsEpicなども、イグジットを果たしたか、そのポテンシャルを有している。

しかし、多くの読者の想像力を捉えたのはBookshop.orgであり、オンラインストアを構築してAmazonのジャガーノート(絶対的な力)に対抗するための、地元の独立系書店にとって頼りになるプラットフォームとなっている。新型コロナのパンデミックが広がり始めた2020年1月にデビューを果たした同社は、読書エコシステムに深い愛情を持つ勤勉なパブリッシャーである創業者のAndy Hunter(アンディ・ハンター)氏のヘッドラインとプロフィールを急速に蓄積していった。

1年半が過ぎた今、状況はどうなっているだろうか。幸いなことに、書店を含む小売店に顧客が戻ってきているにもかかわらず、Bookshopは低迷していない。ハンター氏によると、8月の売り上げは7月に比べて10%増加しており、2021年は2020年と同程度の売り上げを達成する見込みだという。同氏は5月のBookshopの売り上げが前年同月比で130%増加していることを挙げ、その予測値を説明した。「当社の売り上げは加法的であることが示されています」と同氏は述べている。

Bookshopのプラットフォーム上には現在1100のストアがあり、3万以上のアフィリエイトが本のレコメンデーションをキュレートしている。これらのリストはBookshopのオファリングの中心となっている。「こうしたレコメンデーションリストは、書店だけでなく、文学雑誌、文学団体、本愛好家、図書館員などからも得られています」とハンター氏はいう。

公益法人であるBookshopは、すべてのeコマース事業と同様、在庫を移動することで収益を上げている。しかし差別化要因として、アフィリエイトやプラットフォームセラープログラムに参加している書店への支払いがかなりリベラルであることが挙げられる。アフィリエイトには売り上げの10%が支払われ、書店自身はプラットフォームを通じて得た売り上げからカバー価格の30%を受け取る。さらに、Bookshopのアフィリエイトと直販の10%が利益分配プールに入れられ、それが加盟書店と共有される。同社のウェブサイトによると、Bookshopはローンチ以来、書店に1580万ドル(約17億2700万円)を支払っている。

同社は最初の1年半で多くの開発を行ってきたが、次の展開はどのようなものになるのだろうか。ハンター氏にとって鍵となるのは、可能な限りシンプルな方法で顧客と書店の両方を魅了し続けるプロダクトを構築することだ。「オッカムの剃刀(『必要なしに多くのものを定立してはならない』という原則)を堅持します」と同氏は自身のプロダクト哲学について語っている。すべての機能について「エクスペリエンスへの付加が行われますが、顧客を混乱させることはありません」。

もちろん、言うは易く行うは難しではある。「私にとって目下の課題は、顧客に対して圧倒的な魅力を放ちながら、書店が当社に求めていることすべてを実現するようなプラットフォームを作り、最高のオンライン書籍購入および販売エクスペリエンスを創出することです」とハンター氏。このことが実際的に意味するものとしては、(書店での買い物のような)プロダクトの「人間味」を維持しつつ、書店がオンライン上での優位性を最大化するのを支援する、というものであろう。

Bookshop.orgのCEOで創業者のアンディ・ハンター氏(画像クレジット:Idris Solomon)

例えば、同社は書店と協力して、検索エンジン発見のためのレコメンデーションリストの最適化に努めているとハンター氏は説明する。SEOは、従来の小売業界で身につけるようなスキルではないが、オンラインで競争力を維持する上では欠かせないものだ。「Googleで第1位にランクインするような本のレコメンデーションを生み出すブックリストを当社のストアたちはいまや有しています」と同氏はいう。「2年前であれば、こうしたリンクはすべてAmazonのリンクだったでしょう」。ハンター氏によると、同社はEメールマーケティング、顧客とのコミュニケーション、そしてプラットフォーム上でのコンバージョン率の最適化に関するベストプラクティスも積み重ねているという。

Bookshop.orgは何万ものリストを提供しており、アルゴリズムによるレコメンデーションよりも「人間的」なアプローチで本を探すことができる

顧客に向けては、Bookshopは今後、シリコンバレーのトップ企業の間で人気のアルゴリズムによるレコメンデーションモデルを避け、それよりもはるかに人間味のあるキュレーションのエクスペリエンスを提供しようとしている。何万ものアフィリエイトを擁していることから「活気あふれるミツバチの巣のような一大拠点です【略】本を取り巻く多様なエコシステムを構成する機関や小売業者も存在しています」とハンター氏。「彼らは皆それぞれの個性を持ってますので、それを発揮してもらいたいと考えています」。

やるべきことはたくさんあるが、暗い雲が地平線を脅かさないということでもない。

Amazonはもちろん、同社にとって最大の課題だ。Kindleデバイスの人気は非常に高く、これによりAmazonは物理的な販売では得られない強固な囲い込みを手に入れたとハンター氏は指摘する。「DRMおよびパブリッシャーとの契約がありますので、電子書籍を販売してそれをKindleで読めるようにすることは非常に困難です」と同氏は述べ、その結びつきをMicrosoftがWindowsにInternet Explorerをバンドルしたことになぞらえた。「法廷に持ち込まれることになるでしょう」。人々がKindleを好んでいることは事実だが「Amazonを気に入っているとしても【略】健康的ではないことを認識する必要があると思います」。

著者はハンター氏に、本の分野で資金提供を受けるスタートアップの数や、その資金がBookshopを締め出す可能性について懸念しているかどうかを尋ねた。「ブッククラブスタートアップは、本、そして本に関する会話を最大のオーディエンスの前に置くことで成功を収める」とハンター氏は考えている。「そうすれば誰もが成功するでしょう」。しかし「破壊」へのフォーカスに憂慮を示し「既存の独立系書店やコミュニティのメンバーと提携する形で成功することを願っています」と語った。

結局のところ、ハンター氏の戦略的な懸案事項は競合他社に向けられたものではなく、本が廃れているかどうか(廃れてはいない)という問題でもない。より具体的な課題は、現在のパブリッシングエコシステムが、一握りの本だけが成功することを保証しているという点にある。

「ミッドリスト問題」とも呼ばれるが、ハンター氏は最近の本の大ベストセラー体質を案じている。「1冊の本がほとんどの酸素を吸い取り、話題やトップ20の本の大半を吸い上げてしまう一方、若い作家や多様性のある声による優れた革新的な作品は、それに値する注目を集めることができません」と同氏は述べている。常に読者を最大の勝者に押しつけるレコメンデーションアルゴリズムではなく、リストによる人間的なキュレーションがより活気ある本のエコシステムの維持に役立つことを、Bookshopは期待している。

Bookshopが創業3年目を迎えるにあたり、人間に焦点を当て、店舗での豊富なブラウジングエクスペリエンスをオンラインの世界にもたらしていきたいと、ハンター氏は考えている。究極的には、それは志向性に関するものである。「どこで、どのように買い物をするかについての小さな決断のすべてを伴いながら、私たちは自分たちが生きる未来を創造しているのだということ、そしてそうした決断をどのように熟考するかについて、強く意識し続けるべきだということを、人々に理解してもらいたいと心から願っています」と同氏は語る。「Bookshopが単なる市民的な義務を果たす場所ではなく、楽しく買い物ができる場所であることを私は望んでいます」。

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

スマートニュース子会社スローニュースがノンフィクション特化のサブスク型サービス「SlowNews」で立花隆作品配信

スマートニュース子会社スローニュースがノンフィクション特化のサブスク型サービス「SlowNews」で立花隆作品配信

スマートニュースの子会社スローニュースは8月16日、ノンフィクションや調査報道に特化したサブスクリプション型サービス「SlowNews」において、2021年4月に亡くなった作家、立花隆の講談社文庫収録作品の配信を開始したことを発表した。配信作品は「田中角栄研究全記録」(上・下)、「日本共産党の研究」(一〜三)、「中核vs革マル」(上・下)、「青春漂流」の計4作品。

スマートニュース子会社スローニュースがノンフィクション特化のサブスク型サービス「SlowNews」で立花隆作品配信

SlowNewsは、国内外のノンフィクションを中心とした作品が月額1650円(税込)のサブスクリプションで読み放題になるサービス。岩波書店、KADOKAWA、講談社、光文社、新潮社、東洋経済新報社、文藝春秋の7社の書籍、270冊以上が読める。この他、The New York Times、ProPublica、The Guardianなどの海外メディアの調査報道や翻訳記事、さらに「調査報道に取り組むジャーナリストへ取材費用の支援などを行う『調査報道支援プログラム』の参加者が提供する記事」もオリジナルコンテンツとして配信されている。このサービスの一部は「調査報道支援プログラム」に使われている。

配信される立花隆作品

  • 田中角栄研究全記録(上)田中角栄研究全記録(下):「文藝春秋」昭和49年(1974年)11月号掲載の「田中角栄研究──その金脈と人脈」から「ロッキード事件」までを収録。首相の座が金で買われ、政治が金で動かされていった戦後保守支配体制下最大の構造的腐敗の暗部を、厖大な取材データの分析で実証する著者執念の記録
  • 日本共産党の研究(一)日本共産党の研究(二)日本共産党の研究(三):戦前の共産党の実態から戦時下の弾圧による党崩壊までの記録した、生きた人間研究としての初の本格的な通史。戦前の共産党の実態はどうだったか。その成立のいきさつ、コミンテルンによる支配、資金の出所、組織、相次ぐ転向者など、戦時下の弾圧による党崩壊までの激動の歴史を実証的に追い、当時の関係者の証言を記録
  • 中核vs革マル(上)中核vs革マル(下):高い理想を掲げた「革命」運動が、両党派間の内ゲバ殺人に転化していった悲惨な歴史のドキュメント
  • 青春漂流:11人の若者と夜を徹して人生について語り合った人間ドキュメント

スローニュースは2019年2月、スマートニュースの子会社として設立。ジャーナリズムの最も重要な役割を担う「調査報道」を次の時代にどのように残すのか、この難題に取り組むべく始動したという。調査報道を継続的に生み出すエコシステムの創出を目指し、SlowNewsを2021年2月にスタートした。

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タグ:サブスクリプション(用語)スマートニュース / SmartNews(企業・サービス)スローニュース(企業・サービス)電子書籍(用語)読書 / 本(用語)日本(国・地域)

【レビュー】大型化し手書きメモもできる電子書籍リーダー「Kobo Elipsa」

Kobo ElipsaはAmazonのライバルである電子書籍リーダーの最新モデルで、大型の製品だ。iPadに匹敵する大きさの10.3インチ電子ペーパーディスプレイが採用され、reMarkableやBooxの直接の競合となる。Elipsaは読書がしやすく、メモをとったり絵を描いたりすることができるが、汎用性にはやや欠ける。

Koboはここ数年、高価格帯の市場に少しずつ進出してきた。筆者は低価格のClara HD(税込1万5180円、以下カッコ内は日本での販売価格)が今もおすすめだと考えているが、Forma(税込3万4980円)やLibra H2O(税込2万5080円)はKindleのラインナップのライバルと言える。400ドル(税込4万6990円)のElipsaはサイズ、機能、価格が大きくアップしていて、いずれも妥当だ。ただし気をつけなくてはならない点がいくつかある。

Elipsaはよくできているが派手さはない。FormaとLibraは筐体の1辺のベゼルだけ幅と厚みがあるが、Elipsaでは1辺だけ幅が広く厚みは変わらない。1辺だけが広いデザインは筆者はあまり気にならないし、競合製品の多くも非対称だ(ちなみに筆者のお気に入りはBooxの超小型デバイスでフロントライト付きのPoke 3だ)。

10.3インチディスプレイの解像度は1404×1872で、227dpiだ。300dpiのClaraやFormaよりは低く、注意深く見れば文字のギザギザがわかる。しかしそれがわかるほど近づいて見ることはないだろう。Elipsaはデバイスが大きいので目から離して見るし、おそらく文字サイズも大きくして読むと思われるからだ。筆者は申し分なく読みやすいと感じた。227dpiは最高ではないが、悪くない。

フロントライト内蔵で、画面左側で指先を上下にスライドして簡単に調整できる。しかしKoboの他のデバイスとは異なり、色温度を変えることはできない。筆者は色温度を変えられるデバイスにすっかり慣れて、以前に長年付き合ってきたデフォルトのクールグレイでは快適に感じられなくなってしまった。周囲が暖色系の照明のときは特にそうだ。重要なのは画面全体の明るさが一貫していることと暗く調整できることで、筆者の目はそれで大いに助かっている。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

Elipsaにはアクセサリがいくつか付属していて、それがない状態はちょっと考えづらい。実際「スリープカバー」とスタイラスペンなしでElipsaだけを購入することはできない。カバーとペンが揃って完全なパッケージとなる。かなり重くてかさばるが。Elipsaだけなら標準的なiPadより軽く小さく感じるが、カバーを装着し、驚くほど重いスタイラスペンを収納すると、重くて大きなものになる。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

カバーは、少し硬いかもしれないが良いデザインで、デバイスが壊れないように確実に保護されるだろう。カバーは本体下部に磁石で取り付け、ノートのページをめくるようにデバイスの背面にもっていくと反対側の端も磁石で固定される。カバーの途中の部分を2カ所折ると、折ったところも磁石で固定され、低くてしっかりとした使いやすいスタンドになる。カバーの外側は滑りにくいフェイクレザーで、内側は柔らかいマイクロファイバーになっている。

カバーを開けるとデバイスの電源がオンになり、閉じるとオフになるが、ここでちょっとした問題がある。電源ボタン、充電ポート、幅の広いベゼルがどうしても右側になってしまうのだ。Elipsaからカバーをはずせば、1辺が厚いタイプと同様に好きな向きで置くことができ、コンテンツはそれに応じて即座に回転する。しかしカバーを取り付けるとほぼ右利きモードに固定されてしまう。これが気になることかどうかはわからないが、念のためお伝えしておく。

左がForma、中央がElipsa、右がreMarkable 2(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

上述の点以外は、読書の使い心地はKoboの他のデバイスとほぼ同じだ。最近利用したコンテンツが表示される比較的すっきりとしたインターフェイスでとまどうことはないが、広告は依然としてうんざりするほど多数表示される(「次に読むすばらしい本を見つけよう」のような)。無料や有料の電子書籍がよく表示されるが、そのようなものを大きな画面で読むのはまったく筆者の好みではない。筆者は、画面の大きい電子書籍リーダーは横向きに置いてページを見開き表示できるようにして欲しいと心から願っている。そのほうが本っぽいでしょう?

Pocket経由で同期したウェブの記事は見やすく、この形で読むのは楽しい。オンライン版で読むのに適した雑誌のページのようだ。シンプルで見やすく、よく統合されている。

Kobo初の手書きメモ機能

新機能は「ノート」だ。箇条書き、落書き、授業のメモなどのノートブックを作成し、スタイラスペンを使って書く。

書き心地は十分満足できる。筆者が使い慣れているreMarkable 2はタイムラグの短さと高い精度を誇り、表現力も豊かだ。KoboはreMarkable 2にはまだ届かず、機能は基本的なものでタイムラグが気になるが、精度は高い。

ペン先、線の幅、線の濃さがそれぞれ5種類ずつあり、どれも使いやすい。スタイラスペンは適度な重さがあるが、もっとグリップ感のある素材だと良いと思う。ペンにボタンが2つあり、現在のペンと、ハイライトまたは消しゴムをすばやく切り替えることができる。消しゴムはストロークを消すか、ブラシモードがある。通常のノートには方眼、点線、罫線、無地があり、ページ数は無制限だが、拡大や縮小はできない(絵を描く人には向いていないだろう)。

手書き文字認識などの機能を利用したい場合は「多機能ノート」を作成する。多機能ノートに引かれているガイドラインに従って書き、ダブルタップすると即座にテキストして認識される。多機能ノートの所定のエリアに図を描いたり数式を書いて計算したりすることもできる。

手書きのアップ(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

手書き文字認識は高速でざっと書き留めるには十分だが、そのまま他の人に送れるほどではない。図形のツールも同様で、手書きの図形やラベルをフローチャートのような図に仕上げることができるが、ガタガタした図よりはましではあるもののラフな下書き程度のものだ。よく考えられたショートカットやジェスチャーで余白の追加や削除など頻繁に使う操作ができるようになっていて、Elipsaを使ううちにすぐに慣れることができるだろう。

「スマート」なノートブック上でのページの移動や上下の動きはきびきびとしていているが、iPadのデザインソフトやアート用ソフトの流れるような動きではない。しかしでしゃばった動作ではなく、パームブロッキングも効いていて、アクションは快適だ。書くときのタイムラグは確かに弱点だが、書いた結果が多少雑になっても気にしないのであれば慣れると思う。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

電子書籍をマークアップすることもできる。ハイライトは便利だが、単にテキストを選択するよりもはるかに優れているというわけではない。またスタイラスペンの制限により、周囲の余白には書けない。

メモの書き出しには、DropboxのアカウントをリンクするかUSB接続を利用する。ここでもreMarkableのほうが優位だ。アプリに若干の制限はあるもののリアルタイムで同期されるので、reMarkableのシステム内にある限りはバージョンの違いを気にする必要がない。Koboのほうが方式が古い。

reMarkableとは異なりKoboは日々の読書が簡単にできるプラットフォームなので、読書がメインで落書きやメモをオプションとして考えている人にとっては良い選択だ。一方、スタイラスペンを重視するタブレットでもっと良いものをと考えているなら、他の製品を探した方がいい。文字や図を書くことについては、市場にある他の製品よりもreMarkableのほうが優れている。そしてBooxのタブレットなどと比べると、Elipsaのほうがシンプルで焦点が絞られているが、Androidのアプリやゲームを追加することはできない。

400ドル(税込4万6990円)という価格は、カバーとスタイラスペンがセットになった価格であるとはいえ結構な投資で、間違いなく汎用性が高いデバイスであるiPadとあまり変わらない。しかし筆者はiPadでは記事や書籍をあまり楽しめず、メモをとるときもシンプルな電子書籍リーダーの方が集中できる。電子書籍リーダーは違う目的を持つ違うデバイスであり、万人向けではない。

しかし複雑で高価なオプションもある「大型電子書籍リーダー」の沼に足を踏み入れるなら、現時点ではおそらくElipsaが最適だろう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:レビューKobo読書電子書籍電子書籍リーダー電子ペーパー楽天

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Kaori Koyama)

アマゾンがAlexaで利用できる子供向けの「読書仲間」と音声プロフィールを公開

米国時間6月29日、Amazon(アマゾン)はAlexaを子どもの読書仲間にする新機能と、家中の全Echoデバイスで子どものAlexaエクスペリエンスをパーソナライズする音声プロフィールのサポートを発表した。この2つの機能は連携して動作する。音声プロフィールによってAlexaは話者を特定するので、デバイスは「Alexa、読書をしよう」というようなリクエストに適切に対応できるようになるのだ。Alexaはリクエストを受けて、Amazonが「Reading Sidekick」と呼んでいる読書仲間エクスペリエンスを開始する。

この機能はAmazon Kids+サブスクリプションが必要であるため、Alexaデバイスの全ユーザーが利用できるわけではない、このサブスクリプションサービスは月額2.99ドル(約330円)で、多くの子ども向けの本、テレビ番組、映画、教育アプリ、ゲームの他、広告なしのラジオステーションとプレイリスト、Audibleのブック、限定のAlexaスキルといったEchoデバイス向けプレミアムコンテンツも利用できる(Amazon Kids+は、日本ではプライム会員は月額480円、一般会員は月額980円。ただしFireやKindleのキッズモデルを購入すると1年間無料)。

画像クレジット:Amazon

サブスクリプションを購入したら、子どもはAlexaに一緒に読書をしようと話しかけ、互換性のある紙の書籍または電子書籍を選んで読み始める。Alexaは何の本を読んでいるかを尋ねる。また、たくさん読みたいか、少しだけか、順番に読むかも尋ねる。この機能を使えるのはAmazon Kids+サブスクリプションに含まれる6〜9歳向けの数百冊の書籍で、紙の書籍も電子書籍も対象となっている。子どもが読む番になったらAlexaはそれを聞いて、上手く読めていればほめ、つまづいたら助ける。

子ども向けAlexa音声プロフィールも米国時間6月29日から公開が開始される。この機能をオンにすると、保護者は家族内の子ども、最大4人の音声プロフィールをそれぞれ作成でき、Alexaのエクスペリエンスが各人に応じてパーソナライズされる。つまり、Alexaはあらかじめ構成された適切なペアレンタルコントロールを自動で適用して、不適切な音楽を自動でフィルタリングし、通話やメッセージの送信先を承認された連絡先のみに制限し、保護者が前もって承認したAlexaスキルしか使えないようにする。また、子ども向けのゲーム、スキル、音楽、動画が利用できるようになり、子どもからの問いかけにはそれに応じた対応をする。

このような機能によりAlexaのエクスペリエンスは家族にとってこれまで以上に楽しく便利になるが、その一方で保護者は子どもの声が録音され、分析され、一定の期間保管されることを考慮しなくてはならない。現在、Amazonは子どもの質問やリクエストに対するAlexaの理解を向上させるために、子どもの声の録音を使って音声認識と自然言語理解システムをトレーニングしている。録音を人間が検討することもある。このように使われたくない保護者は、Alexaアプリの設定から子どもの履歴に関連する録音を1つずつ、または全部いっぺんに削除できる。3カ月または18カ月で録音を自動で削除する設定にしたり、音声によるリクエストで録音を削除したりすることもできる。

ただし、保護者が子どもの声の録音を保存しない設定にした場合、ペアレントダッシュボードから子どもがこれまでにリクエストした内容の履歴をたどることはできない。

Reading Sidekickや音声プロフィールなどの機能を有効にする前に、あるいはもっと広く考えるとスマートスピーカーのようなものを家庭に持ち込むかどうかについて、保護者は自分の家庭に適した判断を下す必要がある。

Amazonによれば、子ども向けAlexa音声プロフィールは7月2日(金)までにAmazonの全顧客に提供されるという。Reading Sidekickは米国時間6月29日から提供が開始されている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AmazonAlexa子ども音声認識音声操作読書

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

EdTech大手Course Heroが古典文学の要約サービス「LitCharts」を買収

実は、英語の授業で私を含むクラスの半分が、実際に原文を読まずにSparkNotesを使ってシェイクスピアの「Twelfth Night(十二夜)」を読んでいた、と先生に告げ口したのはこの私だ。そのサイトは本の各章の要約を教えてくれるので、テストの前に長編小説などを復習するのにとても便利だった。あるいは、多くの本が積ん読状態で、その本を開いたことさえないようなときの土壇場の救世主でもある。

そんな歴史を考えると、誰もが愛する読書先延ばしツールSparkNotesの開発者たちが、EdTechのユニコーンの目に留まったのも当然だ。米国時間6月10日、SparkNotesの子孫であるLitChartsが、新進のEdTechユニコーンCourse Heroに買収された。その価額は公表されていない。しかしCourse Heroは2020年8月のシリーズBで8000万ドル(約87億7000万円)を調達しているため、その一部が今回の買収に投じられたことは確かだろう。

SparkNotesを開発したBen Florman(ベン・フローマン)氏とJustin Kestler(ジャスティン・ケストラー)氏が作ったLitChartsは、彼らの成功作の延長線上にある。LitChartsは2000あまりの文学作品の原文の注記や定義、そして翻訳を提供する。SparkNotesと同じくLitChartsも、複雑な章句を簡略化する。Course Heroを創業したAndrew Grauer(アンドリュー・グラウアー)氏の推定によると、LitChartsの会員の約30%は教師や教育者だ。

グラウアー氏はCourse Heroの長期展望について次ぎのように語る。「私たちは特定分野のベストソリューションを正しいTPOで提供したいと考えています。学習者であるユーザーの役に立つ良質なツールの、信頼できる推奨者でもありたいのです」。生徒をあるリソースから別のリソースに結びつける、こういったネットワーキングは、バーチャル教育の利点の1つだ。なぜなら、1つのエラーにも、これまでの生徒たちが犯してきたさまざまなつまづきの履歴があるのだから。

グラウアー氏によると、Course Heroの中核は、生徒1人ひとりの特異性をぎりぎりまで重視する質疑応答のプラットフォームだ。有料会員である生徒は、学習と教授のためのすべてのコンテンツにアクセスでき、その中には教師と発行者が作ったコースの教材もある。当然ながらCourse Heroの戦略の大きな部分は、生徒が苦戦している共通の主題に関する教材を提供することだ。英語も、そんな教材の1つだ。

「私たちのプラットフォーム上のデータをよく見れば、生徒が最も行き詰まっている箇所や助けを必要としている箇所、多くの質問が集中する箇所などがわかります。そんな情報が役に立つのです」とグラウアー氏はいう。

同社はこれまでの5〜6年間、自力で文学ライブラリを構築してきた。LitChartsを手中に収めたことにより同社は、その文学ライブラリと、そこにある膨大な量のビデオやイラストレーション、注記、そしてテキストに大きな投資をしたことになる。

これはCourse Heroにとって、8カ月ぶりの買収だ。同社は2020年10月に、人工知能を利用する計算アプリSymbolabを買収している。これは生徒が複雑な数学の問題を解いたり理解するのに役に立つ。その買収でCourse Heroの数学の部分が強化され、そして今日の買収では文学のリソースが充実した。どちらのブランドも独立した運用を続けるが、それはグラウアー氏の「起業家たちを分散状態で強くしていく」という哲学の表れだ。

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「すべてを一元化すれば、同じように見えるので力を発揮するかもしれませんが、実際には、あまりにも多くの小さな特定のユースケースに最適化しているため、動きが遅くなり、迅速な意思決定や目標への前進ができなくなります」とグラウアー氏はいう。Course Heroが最近買収した2つのスタートアップは、10年以上の歴史があり、その規模とブランド力は、無理に包括的なブランドにするのではなく、そのままにしておく価値があると同氏は考えている。

さまざまなプラットフォームを抱えるCourse Heroは、現在の有料会員数が推定200万〜300万人で、1年前の100万から大きく増加している。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Course Hero買収

画像クレジット:PM Images/Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NBAスターやノーベル受賞者がキュレーターのブッククラブ、Literatiが約41.7億円を調達

Literatiは一風変わったスタートアップの機会を追求するために、4000万ドル(約41億7000万円)のシリーズB資金を調達した。それは、ブッククラブである。

創業者兼CEOのJessica Ewing(ジェシカ・ユーイング)氏(元Googleのプロダクトマネージャー)によると、テキサス州オースティンを拠点とする同社は子供向けのブッククラブからスタートし、昨年大人向けのブッククラブ「Luminary」ブランドを立ち上げたという。Luminary(啓発者という意味がある)クラブはその名に負けていない。活動家でノーベル平和賞受賞者のMalala Yousafzai(マララ・ユスフザイ)氏、NBAスターのStephen Curry(ステフィン・カリー)氏、起業家で慈善家のSir Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏、ジャーナリストのSusan Orlean(スーザン・オーリーン)氏、Joseph Campbell Foundation(ジョーゼフ・キャンベル財団)などの著名人・団体がキュレーションを担当している。

Literatiブッククラブに登録すると、毎月のセレクションを印刷した冊子とキュレーターからのメッセージが送られてくる。また、他の読者とその本について語り合うことができるLiteratiアプリにアクセスすることができ、そこではキュレーターが著者との会話を主催することもある。たとえば、カリー氏は「期待を超える」人々についてのノンフィクションに焦点を当てたブッククラブを主宰しており(彼はLiteratiに出資してもいる)、ユスフザイ氏は「世界中の大胆なアイデアを持った」女性による本を選んでいる

ユーイング氏は筆者に、25年前にアマゾンが起業されて以来初めての「新しい革新的な書店」を作ろうとしていると話してくれた。そして、彼女はキュレーションに焦点を当てることで、それを実現しようとしているとも。

同氏は「選択肢が多すぎて、リストが多すぎて、ほとんどの人は完全に圧倒されています」という。彼女は、キュレーションを行うために著名人やその他の大物を雇うことが助けになると主張している。「本は向上心に訴えるものです。誰ももっとビデオゲームをしようとは目指しませんが、人々はもっと本を読みたいと憧れています。そして自分よりも少し賢い人が勧める本を読みたいと思っています」。

Literati CEO Jessica Ewing

ユーイング氏がLiteratiに望むのは、「次の偉大な文学ソーシャルネットワーク」を作ることであり、Oprah’s Book Club(オプラズ・ブッククラブ)や女優Reese Witherspoon(リース・ウィザースプーン)によるReese’s Book Clubのような有名人主導のオススメ本リストと、彼女が「ワインとチーズを持ち寄るような超親密モデル」と表現するものとの間のギャップを埋めることである。

「新型コロナの環境から抜け出したら、ぜひ直接会うクラブも実現するといいなと思います」と彼女は付け加えた。「でも、その中間にもいろいろあると思います。今は(アプリ内で)スレッドによるディスカッションを可能にしていますが、本についての非同期の会話ができるのは素晴らしいことです」とも。

また、子どもの本の面でも、Literatiは、それぞれの子どもに最適な本を推薦するためのパーソナライゼーションツールの構築に取り組んでいる。

「私にとって、これは最もエキサイティングな技術の応用の一つです。適切な本とペアリングすることで、この世代の子供たちに、どうやって読書を好きになってもらうのか」とユーイング氏は語った。

Crunchbaseによると、Literatiは以前、Shasta Venturesなどから1200万ドル(約12億5000万円)の資金調達を行っていた。新しいラウンドは、Felicis VenturesのAydin Senkut(アイディン・センクト)氏が主導し、元TwitterのCEOであるDick Costolo(ディック・コストロ)氏、元TwitterのCOOである01 AdvisorsのAdam Bain(アダム・ベイン)氏、Founders Fund、General Catalyst、Shasta、Silverton Partners、Springdale Ventures、そして前述の通りステフィン・カリー氏が参加している。

「Literatiと一緒に自分のブッククラブを始めたいと思ったのは、読書を通じて世界をより良くするという彼らの使命が、起業家として、また父親としての私の価値観と自然に一致していたからです」とカリー氏は声明で述べている。「私は投資家になる前からファンだったので、一冊ずつ本を読んで人々の生活を向上させる会社の一員であることをとても誇りに思っています」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:資金調達 読書

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nakazato)

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ビジネス書の要約サービス「flier」(フライヤー)を手がけるフライヤーは1月18日、第三者割当増資による総額2億円の資金調達を発表した。引受先は、マイナビ、VOYAGE VENTURES(ボヤージュベンチャーズ)、社会人向け研修サービス大手のインソース(東京・千代田)の3社。累積資金調達額は約4億7000万円となった。

調達した資金は、法人向けSaaSビジネスを強化するため人材確保やサービス開発、広告宣伝にあてる。また、目標に掲げる2022年内の会員数120万人達成に向けてアクセルを踏むとともに、事業提携を進める。累計契約社数は200社超まで伸びており、今後は法人営業部隊を増員しながら、2022年に同契約社数を500社まで引き上げるという目標も掲げている。

また今後、引受先との間で人材育成領域やデジタルマーケティング領域などにおける事業提携を進め、事業基盤をより強固かつ柔軟なものに進化させる。今回の資金調達ラウンドで事業拡大に弾みをつけたい考えで、以降もさらなる資金調達を検討しているとした。

2300冊(2020年12月時点)のビジネス書の要約が読めるflierは、これまでの一般利用に加えて、企業の人事部や教育研修部から「人材育成に役立つ」との評価を得ており、需要が拡大しているという。個人と法人を含む累計会員数は75万人(2020年12月時点)を突破、法人プランの契約社数は2年前の3倍強の増加率となっており、急成長しているそうだ。

flier法人版」は、SaaSの事業モデルを採用した月額の継続課金サービス。調達した資金は主に、flier法人版の新サービス開発と、それに伴うエンジニアの確保、CMなど広告宣伝にあてるという。またサービスでは、各企業や個人に最適な学習を提供するための、書籍のレコメンド機能を開発し、学びを効率化する。

人事とテクノロジーを掛け合わせたHRテック領域において今後、一層高まるであろうオンラインかつ個人に最適化した学習・研修ニーズに応えられるようサービス強化を図るとしている。

同社は、好調の背景に、人材育成の「非対面化」があると指摘。テレワークが浸透する中、対面での職場内訓練(OJT)が難しくなり、各社の人事部や教育研修部は対応を迫られているという。本質的な人材育成につながる読書をネット上で提供できる手段として、企業からの関心が高まっているとした。また導入企業の傾向として、メガバンクを含む金融系や生命保険大手からの引き合いが特に強く、大口契約が増えているという。

2013年6月設立のフライヤーは、flierを運営するITベンチャー。2016年11月に電子書籍取次大手メディアドゥの子会社になり、経営基盤を固めて事業を拡大してきた。

flierには、新刊(掲載書籍の9割)を中心に、毎日1冊の要約文をアップ。要約記事は自社の編集者に加えて、経験豊富な外部ライター約50人が作成している。要約の文字量は4000字ほどで、10分程度で読めるよう工夫しているという。

flierの特徴は「書評」(レビュー)ではなく「要約」である点という。書き手の主観が入る書評とは異なり、著者の主張や論理(重要ポイントや全体像)を忠実にまとめ、読者に伝えるとしている。また書評でないため、出版社と著者から要約の許可を得る必要があり、要約した原稿にも目を通してもらうことで、高品質なサービスを提供しているとした。

AIの音声読み上げ機能や、ユーザー同士で要約から得た学びを情報交換(シェア)するSNSサービスなども実施しているという。

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