米政府はハイテク企業と協議し新型コロナとの戦いに位置情報を活す作戦を練る

Washington Postの最新報道によると、米国政府関係者は現在、携帯電話からのデータを新型コロナウイルスのパンデミック対策に活かす方法はないか、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)を含む複数のハイテク企業と検討しているという。この会談では、医療の専門家によるパンデミックと伝播を監視する可能性も話し合われている。携帯電話のデータを有効活用する有望な方法として集約し匿名化した位置情報の利用があると、その記事の情報筋は伝えている。

米国人の携帯電話から回収した位置情報は、公衆衛生の専門家が大まかな感染の広がり具合を監視しマッピングするときの役に立つ。専門家グループはすでにそれを理論化しているものの、当然のことながらあらゆる位置情報が追跡されると考えると、人々の反感は避けられない。特にそれが大規模に実施され、政府と業務提携をしている民間企業のみならず、政府の人間も含まれるとなればなおさらだ。

だがこれらの試みは、米疾病予防管理センター(CDC)による感染パターンの概要把握という目的のみに厳格に用途を絞ったもので、個々の携帯電話利用者は対象にしていない。Washington Postの情報筋は、いかなるかたちであれ、そこから政府のデータベースが構築されることはないと強調している。あくまで匿名化され集約されたデータからCOVID-19の伝播と拡散のモデルを知るためだけに限定される。

すでに、新型コロナウイルスのパンデミックに関連する問題で、世界の最大手級のハイテク企業が前例のない共同研究を開始している。情報を広めるための製品を扱う事実上すべての大手ハイテク企業は、3月16日に会合を開き、ウイルスに関するデマや誤情報の拡散に対処するため緊密に連携するとの声明を発表した。

ホワイトハウスも、ウイルスと米国の対応についてハイテク企業に助言をもらってきた。先週、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Facebook、Google、Microsoft(マイクロソフト)、Twitter(ツイッター)が参加した会合もそのひとつだ。AmazonのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)CEOは、現政権と定期的に接触している。Amazonは隔離、社会的距離の確保、収容さらには自宅待機命令に関する実質的な国際的指針に人々が対処する上で中心的な役割を果たし、ますます重要性が高まっているからだ。

今週初めに疫学者、企業幹部、医師、学会関係者が数多く署名した公開書簡が発表されたが、そこでもハイテク企業が貢献できるCOVID-19のパンデミック対策の概要が示された。そのひとつに(特にモバイル用OSを提供するAppleとGoogleに向けられているが)、ウイルス感染者と接触した可能性のある個人のために「本人の了承を得た上で、プライバシーを保護するOSの機能を接触者追跡に役立てる」といった提案がある。

もちろん、乱用を否定する保証があるなしに関わらず、広範に個人情報を収集しようという試みに警戒心を抱くのは自然なことだ。個人の自由か保護かの究極の選択を迫られ、その駆け引きが結果的に暴走するという歴史的な事例を見れば、なおさらそう感じる。New York Timesも今週伝えているが、これまで秘密にされてきたが実在していたイスラエルの携帯電話事業者とその利用者の携帯電話の自撮り写真などの個人情報データベースを使って、ウイルス感染者の位置情報を追跡しようという動きすらある。

それでも、プライバシーを保護しながらハイテク企業が持つ情報を活用する方法を探ろうという考えを、今すぐ止めさせるべきではない相応な理由はある。特に現在実施されている社会的距離を保つ措置による影響を知る上でも、そこには大きな恩恵が得られる可能性があるように思えるからだ。

画像クレジットAmin Yusifov / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

AT&TがTime Warnerの買収を完了…メディア買収が通信大手の生き残る道?

AT&TがTime Warnerの買収手続きをを完了し、ここにメディアとテクノロジーの大型統合がまたひとつ実現した。

その額は854億ドルで債務負担を入れると1080億ドルになるが、最初に発表されたのは2016年の10月で、今週初めに裁判所が認可し、木曜日(米国時間6/14)に完了した

完了まで長くかかったが内容は複雑で、AT&TはTime WarnerだけでなくケーブルテレビのHBPとWarner Brother’sの映画スタジオ、そしてテレビ局Turnerのチャンネルも支配下に置く。これだけあれば複雑な衝突が起きるのも当然で、なにしろこれにより、メディアの配信とコンテンツの制作が同じ親会社の傘下になるのだ。

AT&Tの会長兼CEOのRandall Stephensonは声明でこう述べている: “Warner Bros., HBO, そしてTurnerのコンテンツとクリエイティブの陣容は第一級だ。そのすべてがAT&Tの消費者に直接届く強力な配信網と合体すれば、他に類のない高品質なモバイルファーストのエンターテインメント体験を提供できる。われわれは、メディアとエンターテインメント産業が消費者とコンテンツクリエイターとディストリビューターとアドバタイザーズのために仕事をしていくやり方に、新しいフレッシュなアプローチを導入したい。”。

買収は、AT&Tという企業の生死にかかわっていた。同社によると、“シナジー効果”により25億ドルの費用節約が見込まれ、4年後には売上が成長に転ずると期待される。Time WarnerとTurnerを含むAT&Tの新事業は、昨年の年商が310億ドルだった。

今週の裁判所の決定の前には、政府が反トラスト法により買収をブロックしようとしていた。いわゆる垂直的合併…上流と下流が一体になること…により、価格操作が可能になり、消費者を害する、とされた。この買収は10年前の反トラスト訴訟の亡霊と揶揄され、初めて裁判所が、垂直的合併を単純に悪とする議論に断を下(くだ)した。携帯電話やスマートフォンが発明されたことにより、メディアと配信の業界構造が変わったことを、裁判所は指摘した。

一件落着したことによってAT&T-Time Warnerは、そのほかの大メディア買収に道を拓(ひら)いた。今週はComcastがFoxを650ドルで買収すると名乗りを上げ、12月に524億ドルを提示していたDisney(ディズニー)と戦うことになった。

情報開示: TechCrunchのオーナーであるOath〔旧AOL〕はVerizonのデジタルメディア分野の子会社であり、この親会社は〔通信大手として〕ComcastやAT&Tと競合している。

画像クレジット: KENA BETANCUR/AFP/Getty Images / Getty Images(画像は加工した)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa