ソフトバンクが投資を止め破産申請中の通信衛星OneWebを英政府とインドのBharti Globalが買収し再建へ

衛星コンステレーションによるコミュニケーション網を提供することを目指していたOneWebは経営破綻して2020年3月に連邦破産法11条による保護を申請していたが、このほど売却手続きが完了した(Twitter投稿)。OneWebを取得したのは英国政府が主導するコンソーシアムであることが判明している。

コンソーシアムはインドのBharti Globalからの資金提供を受けている。同社はインドのビジネス界の有力者であるSunil Mittal(スニル・ミッタル)氏のBharti Enterprisesの一社だ。BharatiはOneWebの衛星ネットワークによる世界的インターネット接続サービスの構築を続行させたいと考えている。一方、英国はブレグジットの結果、2020年1月からEUが運営する衛星ナビゲーションリソースにアクセスできなくなったため、PNT(位置情報、ナビゲーション、計時)サービスのためにOneWebの衛星コンステレーションを利用したいという背景があった。

今回の買収契約ではBharti Globalと英国政府がそれぞれ約540億円(約5兆8000億円)を出資した。英国政府がOneWebの株式の20%を所有し、BhartiはOneWebに今後のビジネス運営に必要な支援を行っていくという。

650基の衛星によるコンステレーションを構築することを計画していたOneWebは74基を打ち上げたところで事業継続に必要な追加資金の調達に失敗し、大規模なレイオフを余儀なくされ、連邦破産法11条申請に追い込まれた。資金調達の失敗では大口出資者であった日本のソフトバンクが経営する非公開企業向けファンドが追加資金の投資をキャンセルしたことが大きかったと報道されている。

BBCの報道によれば、買収契約が米国規制当局の審査で承認を得られば、OneWebはレイオフの撤回を含め従来のオペレーションを復活させる計画だという。将来は既存の設備の一部を英国へ移転する可能性もある。これまでOneWebはAirbusと提携してフロリダ州の施設で衛星を組み立てていた。

OneWebはもともとロンドンに本社を置く企業だ。計画している衛星コンステレーション事業は、地球低軌道を周回する多数のミニ衛星を利用してレイテンシーが低く、大容量のインターネットアクセスを提供するというものだ。これが実現できれば英国民は低価格かつ高品質で全土をカバーするという理想的なインターネット接続サービスを得られる可能性がある。英国のPNTナビゲーションに対応することはOneWebの既存の目標からかけ離れていない。少なくとも理屈の上からはこのサービス拡張は衛星資産の効果的な活用法であり、比較的安上がりに実現できるはずだ。

現在のところ、英国には自分たちで衛星を打ち上げる能力がないが、垂直離陸、水平離陸の双方に対応できるスペースポート構想に取り組んでいる。これによりVirgin OrbitSkyroraなどのスタートアップが英国内で小型衛星を打ち上げることができるようにするかもしれない。 つまりOneWebの衛星コンステレーションのような宇宙資産の構築、メンテナンスが英国内のリソースを利用して現在よりはるかに安上がりに実現できるわけだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクが「Vision Fundは1.8兆円の損失」と予測、本体もWeWorkとOneWeb投資が痛手

日本の巨大テクノロジー企業グループ、ソフトバンクは2019年度の損益見通しを発表した。これによれば、Vision Fundの損失は1.8兆円という巨額に上るという。

またソフトバンク本体の投資でも、シェアリングエコノミーのブームを代表したオフィススペース賃貸のWeWork、衛星通信のOneWebに対する投資の失敗が痛手となった。 投資先のテクノロジースタートアップのビジネスの失敗により、グループ全体での損失も7500億円となる予想だ。

この2年間、ソフトバンクとファウンダーの孫正義氏は、Vision Fundの数十億ドルの資金(大半は外部投資家のカネだったが)をスタートアップに投じてきた。機械学習、ロボティクス、次世代テレコムへの投資はやがて数千億ドルの利益を生むという見通しに賭けたものだった。

ともかく孫氏が投資家に売り込んだビジョンはそうだった。しかし実態は、WeWork、OpenDoor、Compassなどへの数十億ドルは要するに不動産投資だった。消費者向けビジネスではBrandlessは事業閉鎖 犬を散歩させるWagでは持ち分売却を余儀なくされた。食品配達のDoorDashへの投資も成功とはいえないだろう。これに加えて大口の投資を行ったホテルチェーンのOyoが苦境に陥っていることでVision Fundの「先見の明」に大きな疑問符がついている。

2019年はこうした投資先がいくつも暗礁に乗り上げた。見事なまでの崩壊をみせたのは、我々も繰り返し報じてきたがWeWorkだ。会社評価額は一時の400億ドル(約4兆3000億円)以上から約80億ドル(約8600億円)に急落した。

Brandlessは2020年初めに廃業した。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの発生により、ホテルのOyoに加えて不動産投資ではCompassも打撃を受けている。

もっともソフトバンクのVision Fundの投資先に失敗企業が続出しているのは事実だが、失敗の多くは経済全体に逆風が吹いている結果だ。またすべての投資が行き詰まっているわけではない。例えばVision Fundは上場前のSlackに巨額の投資をしている。しかも新型コロナウイルスによる否応ないリモートワーク化はSlackの強い追い風となっている。

ソフトバンクの投資の中で最も遠大なビジョンがあったのは(皮肉にもこれはVision Fundからの投資ではなかったが)衛星ネットワークのOneWebだったに違いない。しかし世界のいたるところに高速のインターネット接続サービスを提供するというビジョンは優れていたが、あまりに多額の資本を必要としたためその重みで自壊した。ピザのロボット配達サービス、Zumeも失敗している。

しかしこうしたギャンブルが軒並み失敗に終わってもソフトバンク自体が倒れない理由は、なんといっても大量のアリババ株という金庫を抱えているからだ。またコアビジネスのテレコム事業や傘下の半導体事業も堅調だ。

ソフトバンクは発表で次のように述べている。

「上記に加え、(2019年度比較して2020年度の)税引前利益の減少は、主として営業外損失の計上が予測されることによる。 2019年度における(Vision Fund外の)投資関連の損失総額は8000億円となる。これはAlibaba株式のPVF(プリペイド・バリアブル・フォワード)契約(による売却)から生じる利益によって部分的に相殺される。2019会計年度第1四半期に計上され、Alibaba株保有分の希薄化によって生じた利益は2019年度第3四半期に計上されている。またAlibaba株式関連の投資については対前年比での利益の増大があると予測される」。

結局のところ、孫氏は大胆かつ優れたビジョンを持つ投資家だという神話に自縄自縛となったのではないだろうか。この神話は外部の株主、投資家に損害を与えるものとなったようだ。

4月13日に、Bloombergはop-edコラムで次のように書いている

「(多額の投資をすることで)スタートアップをファウンダーが考えているより早く成長させ、予想以上の収益を上げさせることができる」という孫氏の主張は今や重荷となっている。これはVision Fundやソフトバンク本体への投資家にとって利益より損失を生むリスクをもたらしている。

多額のキャッシュをばらまいたために多数のスタートアップが財政規律を維持することを忘れ、金を使うことに夢中になってしまった。何年もの間、これは賢明な戦略のように見えた。ソフトバンクの投資を受けたスタートアップはライバルよりも多額のキャッシュをユーザー獲得のインセンティブや広告に支出し、、能力の高い人材を惹きつけることができた。これは市場市場シェアを得るために役立った。

現在、ソフトバンクはUber、WeWork、Grab.、Oyoなどの市場リーダーの大株主だ。 しかしナンバーワンになることと、利益を上げることはまったく別の話だ。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクなどからの追加資金を確保できずOneWebが破産を申請

TechCrunchが得た情報によると、衛星コンステレーションによるブロードバンド事業者のOneWebは、米国時間3月27日にも、米国で破産保護の申請を行うことになる。既存の投資家であるソフトバンクからも含めて、新たな資金の確保に失敗した結果だ。Financial Timesも、独自の複数の情報源に基づき、同社が資金確保に失敗したことを、同日レポートしている。TechCrunchの情報源によれば、OneWebは、ほとんどの社員をレイオフすることにしており、1つのチームだけを残して、すでに打ち上げて宇宙空間にある衛星の運用を続けるという。

OneWebは、今回の報道についてプレスリリースで認めた。それによると「COVID-19の拡散による市場の混乱」が、資金確保失敗の原因だったという。「私たちは、あらゆる場所であらゆる人たちをつなぐという私たちの使命の、社会的および経済的な価値を確信し続けています」と同社CEOのAdrian Steckel(エイドリアン・ステッケル)氏は述べている。

OneWebは、2012年にWorldVu Satellitesという名前で創立。ブロードバンドインターネットを実現する低軌道衛星コンステレーションの構築を目指していた。それにより、現状の地上のネットワークではカバーしきれないような遠隔地や、アクセスが難しい地域も含めて、地上のユーザーに安価なインターネット接続を提供しようというものだった。

2020年3月初め、BloombergはOneWebが他の選択肢も検討しつつ、破産保護の申請を検討していることをレポートしていた。他の選択肢の1つというのは、新たな資金調達ラウンドのことだ。およそ20億ドル(約2158億円)の確保を目標としていた。同社はこれまでに、複数のラウンドを通して合計30億ドル(約3237億円)を調達している。2019年と2016年に、それぞれ13億ドル(約1403億円)と12億ドル(約1295億円)のラウンドを実現していた。どちらも主要な投資家はソフトバンクグループだった。

OneWebは、3月の初めに打ち上げを成功させ、軌道上にある衛星の総数を74としていた。その後同社は、先週のTechCrunchの記事でレポートしているように、レイオフによって人員の数を10%ほど削減していた。

この最新の動きは、OneWebが現金を確保し続けるために、他のすべてのオプションを使い尽くしてしまったことを基本的に示すものだ。実際、計画していたような頻繁な打ち上げペースを維持するには、相当な準備金を必要としていた。その計画では最終的に650以上の衛星を打ち上げて、地球全域をカバーできるサービスを提供することになっていた。ソフトバンクが投資家として身を引くと、埋め合わせが難しい大きな穴を残してしまうことになる。WeWorkなど巨額の投資額に対して得られるリターンが少なく同社に苦境をもたらしている案件もあるため、ソフトバンクは実際に、いくつかの注目度の高い投資から身を引こうとしている。

OneWebの資金繰りの厳しさに、進行中の新型コロナウイルスのパンデミックに揺れる世界情勢が追い打ちをかけた形だ。複数のレポートによると、少なくとも一部の投資家は、より保守的なアプローチをとっているという。伝統的な手段によって、より多くの投資を確保することは、これまでよりもずっと実現困難になっているという指摘もある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ソフトバンクが出資するOneWebが新型コロナで苦境に立ちレイオフ実施を確認

今週に入って、TechCrunchは、衛星通信を提供するOneWebが社員を最大で10%削減したという情報を得た。

同社はTechCrunchの取材に対し、現在の運営状況を説明し、レイオフによって人員削減を実施していることを確認した。 ただしレイオフの総人数は明らかにされなかった。声明はこのコスト削減の理由として、新型コロナウイルスのパンデミックによる混乱が世界経済におよぼす影響を挙げている。

以下はOneWebの広報担当者がTechcrunchに提供した声明の全文だ。

「OneWebの衛星打ち上げは3月21日土曜日に予定されており、その後2020年中にさらに打ち上げが続く。しかしながら、他社同様、我々も世界的な健康および経済に関する危機の影響を受けており、社員数もこれに応じて弾力的に調整する必要が生じた。世界的な輸送制限の強化とサプライチェーンの混乱により、衛星の打ち上げならびに衛星製造のスケジュールに遅れが出ることは残念ながら避けられない見通しとなった。このため主要事業に注力するために、いくつかの付帯的事業の運営を断念するという困難な決定を余儀なくされた。この措置を取らざるを得なかったことを遺憾に思っており、影響を受けた人々をサポートするためにできる限りのことを行っているところだ」

3月19日に、BloombergはOneWebが財政的苦境に対する1つの方法として破産申請を検討しているという記事を発表し、ソフトバンクが過去2回のラウンドで30億ドル(約3329億円)近くをOneWebに投じていると付け加えた。2019年に、TechCrunchもOneWeに対するSoftBankの大型投資を報じている。

ソフトバンクが出資する大型スタートアップのいくつかは最近、大きな困難に直面している。この苦境をもたらした大きな原因のひとつはコワーキングスペースのWeWorkが派手な転倒を演じたことだろう。OneWebは報じられた破産の検討についてはコメントしなかった。

Bloombergの記事はOneWebは運営を継続するために破産申請以外の選択肢も検討しているとしている。 しかし同社が運用コストをまかなう資金の調達で大きな課題に直面しているのは事実だ。引用したの声明にもあるとおり、OneWebは3月21日にカザフスタンからソユーズロケットで衛星34基の打ち上げを予定している。これにより、2020年初めに打ち上げられた34基と、2019年3月に打ち上げた6基を合計して74基の衛星群を運用することになる。

OneWebは、低軌道を周回する衛星を使用して広帯域幅通信サービスを提供することを目的としており、農村部その他、地上ネットワークではアクセスが困難な地域をカバーすることに重点を置いていまる。SpaceXなどが主要なライバルだ。SpaceXはすでにStarlinkでミニ衛星302基を打ち上げている。まだ実機を打ち上げていないものの、AmazonにもProject Kuiperという同様の計画がある。

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滑川海彦@Facebook

OneWebが34機のブロードバンド通信衛星の打ち上げをライブ配信

地球規模のブロードバンドインターネット衛星コンステレーションの配備を検討しているさまざまな企業のうちの1つが、宇宙における既存事業に34機の衛星を追加する。OneWeb(ワンウェブ)は米国東部標準時間の2月6日午後4時42分(日本時間の2月7日午前6時42分)、Soyuzロケットで衛星を打ち上げる。この新しい衛星は、昨年2月に軌道に投入された6機の衛星に加わる。

OneWebは、最終的には少なくとも650機の衛星を低軌道で運用したいと考えており、これにより地上の顧客にインターネットサービスを提供する。打ち上げサービスを提供するArianespace(アリアンサービス)は、OneWebのために2021年末までに最大19回のミッションを遂行し、今年中にもパイロットテスト用の接続サービスが開始され、来年には本格的な商用サービスを開始する予定だ。

OneWebは昨年、12億5000万ドル(約1400億円)の資金調達を行い、その総調達額を34億ドル(約3700億円)に引き上げ、大量生産と導入フェーズのコストをカバーする。なお、資金の大部分はソフトバンクから調達している。今回の打ち上げは年内の最初のテストを開始するのに大いに役立つだろうが、一方でSpaceX(スペースX)はすでに独自のStarlinkプロジェクトのために240機の衛星を打ち上げており、さらに60機の衛星を次々と打ち上げることから、衛星ブロードバンドインターネットサービスの競争は激化している。もちろん、SpaceXは独自の打ち上げ能力を所有しており、その展開を有利にしている。

一方、Amazon(アマゾン)は現在「Kuiper」という開発コードで同様のプロジェクトを進めているが、衛星の軌道投入はまだ始まっていない。OneWebは、海運、航空、企業、政府機関の顧客をターゲットにしており、Swarm TechnologiesやKeplerのような他の小さなスタートアップ企業も同様だ。これらの事業者がサービスを始める際には、市場投入のスピードが重要な要素となるが、潜在的な市場は巨大であり、複数の業界にまたがっているため、最終的に複数の勝者が生まれる可能性が高い。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

小型衛星群でブロードバンド接続を提供するKuiperプロジェクトにアマゾンが本腰

Amazonは、目下開発中の人工衛星星群による高速インターネットサービスであるKuiperのプロジェクトに、専用の本社オフィスとR&Dセンターを用意した。このプロジェクトでは小さな衛星の集団を低地球軌道に乗せてインターネットへの接続を提供し、世界中のどんな僻地でも良質な通信を可能にする。

ご存知の方も多いと思うが、このようなプロジェクトはほかにもいろいろある。例えばSpaceXは、そのStarlinkコンステレーションのための衛星の打ち上げをすでに始めている。そのサービスは最初は北米地区、そして最終的には地球全域で供用される。ソフトバンクなどがパートナーになっている。OneWebもやはり、衛星群を打ち上げて1月の供用開始を目指している。そしてGoogle、というか親会社のAlphabetは、上層大気気球のLoonによって、接続困難地域への接続を提供しようとしている。

Amazon Kuiperは、何千もの衛星を複数年にわたり何回にも分けて低地球軌道へ打ち上げる方式だ。複数の小さな衛星を使うやり方は、従来一般的だった1つまたは少数の静止衛星を打ち上げる方式に比べて、サービスの質がいい、リーチが広い、最終的にローコストであるなどの利点がある。

今度のオフィス施設や研究開発施設はシアトルのAmazon本社に近いワシントン州レドモンドに置かれ、まだ何もタイムラインが発表されていないKuiperプロジェクトに対してAmazonが本腰であることを示している。施設の総面積は約2万平米で、2つの建物にR&Dのラボとオフィス、そして衛星ハードウェアのプロトタイピングを行う製造施設まで置かれる。 Kuiperチームの引っ越しは来年のようだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

高く舞い上がる宇宙開発ベンチャー

宇宙開発ベンチャーへの投資額は、近年成層圏にも届きそうな勢いで跳ね上がっている。しかも、この分野の投資家たちは、まだまだ高まるばかりだと踏んでいる。

資金調達額が急上昇した最新の例としては、衛星インターネットのスタートアップOneWebを挙げることができる。打ち上げの成功を受けて、銀河規模とも言える12億5000万ドル(約1375億円)のベンチャー資金ラウンドの調達成功を発表した。今回の資金調達には、気前の良さで知られるソフトバンクをはじめとする多くの投資家が名を連ねている。その結果、このバージニア州アーリントンにあるOneWebは、これまでの合計で巨額の34億ドル(約3740億円)の投資を獲得した。

しかし当然ながら、OneWebが最近の大規模な投資を引き出した唯一の宇宙開発関連企業というわけではない。この分野への大規模な投資をまとめたCrunchbase Newsは、ベンチャーキャピタルからの注目を集め、巨額の資金も引き出した企業のリストを掘り起こしている。その中には、2018年以降に5000万ドル(約55億円)以上の資金を確保した、五指に余る会社が含まれている。

魅力はどこにあるのか? しばしば繰り返される話だが、初期段階だった企業が成熟するにつれて、スタートアップ投資担当部門による査定額が上昇していることが大きく影響している。これは、投資家グループSpace AngelsのCEO、Chad Anderson氏の意見だ。

「参入に対する抵抗は、2009年に消えました。それはSpaceXが、低コストかつ透明な費用による打ち上げを何度も成功させたからです」と、Anderson氏は言う。「Planet(※以前のPlanet Labs)のような真に草分け的な企業が、2013年以降、新たな宇宙へのアクセスを活用できるようになったこともあります」。

今では、5〜6年前に立ち上げられた宇宙開発関連の企業は、スタートアップの基準からすれば中堅企業となり、より大きな、後半の投資ラウンドの時機が熟している。

近年、衛星の設計と打ち上げに関する費用の経済性が向上したことも、投資家に対する大きな説得力となっているのは確かだ。衛星は、設計、製造、打ち上げのための費用として、以前は数億(または数十億)ドル(数百億〜数千億円)もかかっていた。今日では、小型衛星なら数万ドル(数百万円)で製造し、数十万ドル(数千万円)で打ち上げることができるようになった、とAnderson氏は説明する。

ベンチャー投資家は、そうした計算を好むものだ。Space Angelsの見積もりによれば、ベンチャー投資家のファンドは、過去10年間で宇宙産業に約42億ドル(約4620億円)投資した。そのうちの70%は、ここ3年間に集中しているのだ。

そしてさらに多くの投資会社が、この分野に参入しつつある。Anderson氏の計算によれば、上位100社のベンチャーキャピタルのうち40%強の会社が、少なくとも1件以上の宇宙関連投資を行っていることになる。こうした投資は、2つの領域に集中している。衛星と打ち上げ技術だ。特に小型衛星をターゲットにしたものが多い。

資金がどこに向かっているのかを確認するため、昨年以降に大きな資金調達を達成した宇宙開発関連企業を、以下の表にまとめてみた。

宇宙開発企業が多大なベンチャー投資を生み出している一方で、それほど多くのスタートアップがエグジットを達成しているわけではない。それもまったく驚くに値することではないだろう。典型的なベンチャーのスタートアップからエグジットまでのタイムラインを当てはめて考えてみれば、それも納得できるはずだ。仮に、投資を受けたスタートアップが、2013年ごろに創立されたものとすれば、これから数年後には、いくつかエグジットが期待できるだろう。

しかし、ベンチャーキャピタルからの支援を受けた宇宙開発関連企業の中で、最も有名、かつ先駆的な役割を果たしているイーロン・マスク氏のSpaceXは、まだ株式を公開していない。これは注目に値する。もちろん、Spacexの知名度、業績を考えれば、ブロックバスター的なIPOを実現しても不思議ではない。

それでもAnderson氏は、それはありそうにないことだと主張している。この先だいぶ時間が経ってもだ。1つには、マスク氏が考える会社の究極の目標が、火星を植民地化すること、という事実がある。それは、株式を公開している一般的な会社の責務とはうまく合致しない。つまり、四半期ごとに会計の帳尻を合わせるといったことは難しい。さらにマスク氏が、テスラでのやり方に関して、すでに規制当局との関係をこじらせていることも、プラスには働かない。

それでもSpaceXは、その壮大な野心を追求する過程で、他の多くの宇宙開発起業家の発射台としても機能してきた。ここに、SpaceXの卒業生を創立者、またはコアメンバーに持つ9つのスタートアップをリストアップしてみた。

火星の植民地化というのは、リスクの高い賭けには違いないが、地球上で宇宙開発関連企業がエグジットを果たす可能性は、より高いものになってきている。

※PlanetとSpaceXは、Space Angelsのポートフォリオ会社

画像クレジット:John Devolle

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

衛星打ち上げ成功でOneWebが約1400億円を調達、宇宙ネット構築へ大きく前進

宇宙インターネットのスタートアップ、OneWebは12.5億ドル(約1400億円)のベンチャー資金を調達することに成功した。先ごろ同社は衛星6基の打ち上げに成功し、いよいよミニ衛星の大量生産に乗り出すことが可能となった。OneWebは世界規模でまったく新しいインターネット接続レイヤーを構築する野心的な計画を進めている。

OneWebは第1陣として650基前後のミニ衛星を利用して全世界をカバーする新しいインターネット網を建設しようとしている。さらにその後数百基を打ち上げてカバー範囲と通信容量を拡大する。当初のスケジュールからはだいぶ遅れているが、これは宇宙関連の事業では珍しくない。しかし2月末の衛星打ち上げの成功により、衛星の大量生産とその運営という次の事業段階に進む準備が整った。

CEOのAdrian Steckel氏はプレスリリースでこう述べている。

最初の6機の衛星の打ち上げが成功し、Airbus(エアバス)と共同で建設中の画期的な衛星製造施設も完成に近づいている。ITUでも電波帯域の優先割り当ての確保が間近だ。また最初の顧客確保にも成功しつつある。OneWebは計画と開発の段階から実施、運用の段階へと大きく進んだ。

しかし、低軌道であっても大量の衛星を投入するには巨額の資金が必要となる。OneWebの衛星は1基あたり約100万だ。これに打ち上げ費、運用費、人件費などを加えれば10億ドル級のラウンドでもすぐにコストをカバーできなくなるのははっきりしている(同社の調達総額は現在34億ドル)。

もちろんAirbusが開発した独自の効率的な生産システムに移行すれば衛星のコストは下がるだろう。今回のラウンドで調達された資金の一部は衛星製造システムの仕上げにも投資されるはずだ。

現在の計画では、まず十分な数の衛星を打ち上げ(毎月の30基程度が必要)て、来年接続をデモするという。続いて2021年には限定的な商用サービスを開始する。OneWebはすでに最初の顧客としてTaliaを得ている。同社はアフリカと中東をカバーするテレコム企業だ。

もちろん、OneWebには多数のライバルが存在する。一番よく知られているのはSpace Xだろう。同社は数千のミニ衛星で世界をカバーすることを計画している。しかし実際に軌道を周回しているのは少数のプロトタイプだけでスケジュールは大きく遅れている。しかも惑星間飛行や火星植民地化といった壮大な計画をあくまで追求するならミニ衛星打ち上げのためにさほど大きなリソースを割り当てることはできないかもしれない。

Swarm Technologiesは超低コストのソリューションを目指しており、Ubiquitilinkは新しい端末技術に注目して既存のスマートフォンに衛星を直接接続できるようにしようと考えている。これは他の衛星通信や地上通信と共存できる可能性がある。宇宙事業には不確定の要素が多々あり、今後どうなるか誰にも分からない。

とはいえ、OneWebは優秀なエンジニアのチームを持ち、競争でもライバルにリードを保っているため、業界には同社に賭ける強力な企業が多数ある。今回の12億5000万ドルのラウンドはローンチ当初からの投資家であるSoftBankがリードし、Grupo Salinas、Qualcommに加えてルワンダ政府が参加している。

(翻訳:原文へ

滑川海彦@Facebook

OneWebのインターネット衛星、最初の6機が打ち上げ成功

アップデート:打ち上げと衛星の軌道投入は成功

4年の年月と20億ドル(約2200億円)の投資の後、OneWebはようやく全世界にインターネットを提供する650機の衛星コンステレーションのうち、最初の6機を打ち上げた。アリアンスペースによって運用されるソユーズロケットは、太平洋時間の1時37分にギアナ宇宙センターから打ち上げられた。

OneWebは数百〜数千機の人工衛星による衛星コンステレーションを目指している会社のうちの1社。ソフトバンクが最大の出資主となっており、その他にもヴァージン・グループやコカ・コーラ、Bhartiグループ、クアルコム、そしてエアバスが出資を行っている。

OneWebの計画では、合計で900機(最初に650機)の人口衛星を高度約1100kmの地球低軌道に打ち上げる。そして、ベースステーションを利用すれば地球のあらゆる場所でブロードバンド通信が利用できる予定だ。既存の衛星インターネットよりもずっと安くて高速なのが、その特徴となる。

もしかしたら、SpaceXによる類似プロジェクト「Starlink」を聞いたことがあるかもしれない。Starlinkはより多数の人工衛星を利用する計画で、またSwarmはより小さな衛星コンステレーションによる廉価なサービスを目指している。さらに先日、Ubiquitilinkはベースステーションを必要としない通常の携帯電話と人工衛星を直接つなぐ、ユニークな技術を案内した。そして、前述のすべての会社はすでに人工衛星を打ち上げている。

OneWebの計画は大きく遅れており、本来衛星コンステレーションを2019年末までに構築する予定だった。しかし、それは今となっては不可能だ。遅延は宇宙開発業界では当たり前ではあるが、OneWebは計画が遅れる間にも、量産計画と資金の募集、そして人工衛星の改良を進めていた。ミッション概要で明かされた最新の計画では、OneWebは2020年に消費者向けのデモを開始し、2021年に全世界で24時間のサービスを提供すると明かしている。

衛星1機あたりのコストは約100万ドル(約1億1000万円)ー2015年の計画から倍増しているがーで、衛星コンステレーションの構築とテスト費用は10億ドル(約1100万円)に達するとみられているが、これは打ち上げコストを含んできない。打ち上げは勿論安価ではなく、むしろおそらくは極めて高価になることだろう。CEOのAdrián Steckel氏がFinancial Timesに先月伝えたところによれば、そのためにソフトバンクや他の出資主はより多くの資金集めに取り組んでいる、ということだ。

さらに、OneWebは通信会社との最初の大きな提携を発表した。アフリカと中東地域に通信サービスを提供しているTaliaは、2021年からOneWebのサービスを利用することで合意している。

ソユーズは30機以上の人工衛星の打ち上げ能力があり、衛星コンステレーションの完成にはあと最低20回の打ち上げが必要だ。最初の打ち上げは6機のみで、その他にはダミーペイロードが搭載され、打ち上げの様子をシミュレートした。

OneWebの代表は、今回の打ち上げは「衛星デザインと通信システムの実証」が目的だとしている。OneWebは今後6機の人工衛星を数ヶ月にわたりテストしつつ追跡し、地上局との通信など全体システムの動作を実証する予定だ。

人工衛星をフルに搭載した打ち上げは、フロリダのケネディ宇宙センター近郊にて建築されている量産施設が完成した後となる、今秋から始まる予定だ。

(文/塚本直樹 Twitter

衛星インターネットのOneWebがソフトバンクなどから12億ドルを調達

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衛星を利用したインターネットをめぐる闘いが激しさを増している。Teslaが何千もの衛星を利用したインターネットサービスを開始するための許可を米国政府に求めたと報じられてから約1週間後、そのライバルのOneWebが新たに12億ドルを調達したことを発表した。同社は2019年までにサービス開始を目指す。

今後数年間のうちに衛星インターネットを利用できる人は限られているだろうが、すでにこの分野には多額の資金が流れ込んでいる。OneWebはこれまでに、Airbus、Qualcomm、Virgin、Boeing、Coca Colaなどから5億ドルを調達している。今回の調達ラウンドをリードしたのは日本のソフトバンクで、同社からの出資金額は10億ドルだ。

今回調達した資金は、今年初めに発表されたフロリダにある衛星製造工場の「サポート」に利用される。このプロジェクトでは1週間に15機もの衛星を製造することを目指しており、その開発コストは「他社が衛星を製造するのにかかるコストの、何分の1にも満たないコスト」だとOneWebは話す。フロリダの製造工場が完成するのは2018年を予定しており、これにより今後4年間で3000人の雇用が創出されるという。

先日、ソフトバンクはアメリカに資金を投入して雇用を創出すると約束している。今回の出資によって同社はその約束を果たしたと言えるだろう。ドナルド・トランプ次期大統領との会見後、ソフトバンク CEOの孫正義氏は米国のスタートアップに500億ドルを投資し、アメリカ国内に5万人の雇用を創出すると約束しているのだ。その資金はソフトバンク本体から出資されるだけでなく、サウジアラビア政府が出資するPIFと共同で設立した1000億ドル規模のVision Fundを通して行なわれる予定だ。

「私は今月初めにトランプ次期大統領と会見し、アメリカへの投資と雇用の創出という私のコミットメントを共有しました」と孫氏は話す。「この出資はそのコミットメントの第一ステップです。アメリカは常にイノベーションとテクノロジー開発の中心地であり、当社が真のグローバル・エコシステムの創出に参加し、アメリカの成長に寄与できることを大変嬉しく思います」。

OneWebの長期的な目標は、衛星を利用して世界中に安価なインターネットを提供することだ。これにより、既存のインターネットがもつカバレッジを低いコストで広げることができ、現状のネットワークではカバーされていない国や地域でもインターネットを利用することができる。OneWebが掲げる高尚な目標は様々あるなかで、同社は2020年までにすべての学校へインターネットアクセスを提供することを目指している。また、OneWebのインターネットはIoTやコネクテッドカーなど、誕生したばかりのテクノロジーを普及させることにも役立つだろうと同社は話す。

OneWebの創業者兼会長のGreg Wylerは、同社のWebサイト上でこのように語る。「今回調達した資金、そして昨年に大きく進展した技術開発の進捗度を踏まえ、私たちがこれまでに掲げてきたものよりも大きな目標をここで発表したいと思います:当社は2027年までに情報格差をこの世から無くし、すべての人々に安価なインターネットアクセスを提供します」。

同社は2018年初めに10機の衛星を打ち上げてテストを行ったあと、その6ヶ月後には72機の低軌道衛星を打ち上げる予定だ。すべてが上手くいけば、2019年にはOneWebが提供する遅延の少ないインターネットが利用できるようになる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter