衛星コンステレーションによるコミュニケーション網を提供することを目指していたOneWebは経営破綻して2020年3月に連邦破産法11条による保護を申請していたが、このほど売却手続きが完了した(Twitter投稿)。OneWebを取得したのは英国政府が主導するコンソーシアムであることが判明している。
コンソーシアムはインドのBharti Globalからの資金提供を受けている。同社はインドのビジネス界の有力者であるSunil Mittal(スニル・ミッタル)氏のBharti Enterprisesの一社だ。BharatiはOneWebの衛星ネットワークによる世界的インターネット接続サービスの構築を続行させたいと考えている。一方、英国はブレグジットの結果、2020年1月からEUが運営する衛星ナビゲーションリソースにアクセスできなくなったため、PNT(位置情報、ナビゲーション、計時)サービスのためにOneWebの衛星コンステレーションを利用したいという背景があった。
今回の買収契約ではBharti Globalと英国政府がそれぞれ約540億円(約5兆8000億円)を出資した。英国政府がOneWebの株式の20%を所有し、BhartiはOneWebに今後のビジネス運営に必要な支援を行っていくという。
650基の衛星によるコンステレーションを構築することを計画していたOneWebは74基を打ち上げたところで事業継続に必要な追加資金の調達に失敗し、大規模なレイオフを余儀なくされ、連邦破産法11条申請に追い込まれた。資金調達の失敗では大口出資者であった日本のソフトバンクが経営する非公開企業向けファンドが追加資金の投資をキャンセルしたことが大きかったと報道されている。
BBCの報道によれば、買収契約が米国規制当局の審査で承認を得られば、OneWebはレイオフの撤回を含め従来のオペレーションを復活させる計画だという。将来は既存の設備の一部を英国へ移転する可能性もある。これまでOneWebはAirbusと提携してフロリダ州の施設で衛星を組み立てていた。
OneWebはもともとロンドンに本社を置く企業だ。計画している衛星コンステレーション事業は、地球低軌道を周回する多数のミニ衛星を利用してレイテンシーが低く、大容量のインターネットアクセスを提供するというものだ。これが実現できれば英国民は低価格かつ高品質で全土をカバーするという理想的なインターネット接続サービスを得られる可能性がある。英国のPNTナビゲーションに対応することはOneWebの既存の目標からかけ離れていない。少なくとも理屈の上からはこのサービス拡張は衛星資産の効果的な活用法であり、比較的安上がりに実現できるはずだ。
現在のところ、英国には自分たちで衛星を打ち上げる能力がないが、垂直離陸、水平離陸の双方に対応できるスペースポート構想に取り組んでいる。これによりVirgin OrbitやSkyroraなどのスタートアップが英国内で小型衛星を打ち上げることができるようにするかもしれない。 つまりOneWebの衛星コンステレーションのような宇宙資産の構築、メンテナンスが英国内のリソースを利用して現在よりはるかに安上がりに実現できるわけだ。
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦@Facebook)