SpaceXが3月に使用したFalcon 9の再打ち上げと回収に成功

米国時間6月12日、SpaceX(スペースX)によるカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地からの打ち上げが実施され、カナダ政府による観測衛星コンステレーション「RADARSAT」を構成する3基の人工衛星を打ち上げた。

今回の打ち上げで利用されたFalcon 9の第1段は、わずか数カ月前の3月に、スペースXのCrew Dragon宇宙船の無人テスト打ち上げで使用されたものだ。第1段は整備されれた後に再打ち上げされ、スペースXの再使用可能なロケットの飛行間隔を短くするという目標にさらに一歩近づいた。

なお、ロケットの第1段はヴァンデンバーグのLZ-4着陸地点へと降下し、回収されている。今回SpaceXは、より大きなFalcon Heavyを打ち上げた時に最大3基のブースターを同時に着陸させる能力を実証した。

SpaceXのロケットは3基のペイロードを目標軌道へと分離しており、ミッションの成否については今後記事をアップデートする予定だ。

SpaceXXの次の打ち上げは6月24日に予定されているFalcon Heavyのミッションで、これは3回目のFalcon Heavyの打ち上げかつ米空軍のミッションだ。ペイロードとしては複数の小型実験衛星を含む米空軍のSpace Test Program Flight 2と、NASAの研究プロジェクトが含まれる。

アップデート:3基の人工衛星の投入はすべて成功した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

スペースXのドラゴン補給船がISS補給ミッションから帰還

SpaceX(スペースX)のドラゴン補給船が国際宇宙ステーション(ISS)からの帰還を果たし、民間企業によるISSへの17回目の補給ミッションを完了させた。

Commercial Resupply Services mission 17(CRS-17)は、一度打ち上げを延期した後の最初のバックアップウィンドウにて、米国時間5月4日に打ち上げられた。ドラゴン補給船はISSへと滞在する宇宙飛行士への補給品と、科学実験のための試料を5500ポンド(約2.5トン)搭載していた。

ドラゴン補給船は約1ヶ月間ISSへと係留され、宇宙飛行士は中の貨物を取り出し、そして6月3日に地球大気圏への再突入を開始した。そして同日の午後、太平洋へと着水したのだ。

打ち上げミッションの様子は、下の動画で確認できる。なお動画には、Falcon9ロケットの第1段がドローン船「Of Course I Still Love You」へと着陸する様子を赤外線で捉えたシーンも含まれている。

 

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

イーロン・マスクのStarlinkが成功すれば世界のインターネット接続は一変

5月末にSpaceXがStarlink衛星最初の打ち上げに成功したことで、インターネット接続は新しい時代に向かって大きく一歩進んだ。 小型通信衛星60基はSpaceXとして過去最大のペイロードだった。このマイクロ通信衛星はやがて地球全体を覆い、どんな場所にもインターネット接続をもたらす通信衛星群を構成する最初の一波だという。同社は打ち上げ成功後、謎に包まれたStarlink構想に関していくつかの新しい情報を公開した。

SpaceX とCEOであるイーロン・マスク氏はStarlink構想に関してこれまでいくつかのヒントは出してきたものの、具体的内容については非常にガードが固かった。

配布されたプレスキットで、衛星は225kg程度、カーゴベイへの充填率を最大化するためフラットパネル型であり、Startrackerと呼ばれるナビゲーションシシテムを備えてくることなどはわかっていた。

しかし打ち上げ成功後にスタートしたStarlinkのサイトではもう少し詳しい情報が公開されている。イラストではあるが細部がはっきりわかる画像も掲載されていた。このCGで衛星の仕組みの概略がわかったので簡単に紹介してみよう。

Starlinkでは地上と通信するだけでなく、相互にも通信可能な数千の衛星が常時ある地域の上空にあってインターネット接続を提供する。衛星の数、被覆地域の広さ、提供できるトラフィックの量など詳しいことは不明だ。それでも上のGIF画像でだいたい仕組みは分かる。

4基の衛星が一組となってフェーズドアレイ・アレイ・アンテナを構成する。これにより打ち上げ時にはコンパクトでフラットだが、展開されると大口径のアンテナが実現できる。またカバー方向を変更するために通常のレーダーのように大きなパラボラアンテナの方向を変える必要がない。もちろんフェーズド・アレイ・アンテナは高価だが、衛星はできるだけ小型軽量で可動部分が少ないほうがいいに決まっている。

個々のStarlink衛星は太陽電池パネルを一枚だけ備える。パネルは紙の地図のように折り畳まれており、軌道上で展開される。上の図では衛星本体の右側に展開された一部が示されている。多くの衛星と異なり、太陽電池パネルを1枚しか備えていないのは機構の単純化、コストの削減が目的らしい。Starlinkのように数千個の衛星がシステムとして協調動作し、かつ寿命も数年と想定される場合、個々の衛星の信頼度さほど必要ない。いずれにせよ太陽電池パネルは枯れたパーツでもともと信頼性は高い。

クリプトン・ガスを利用するイオン・スラスターが姿勢制御を担当する。名前を聞くとSFっぽいがイオン推進は数十年前に実用化されている。陽電荷をもつプラズマを放出し負極が電磁力で吸引すると、反作用で推進力を得られる。長時間にわたって推進が可能であり精度も高いが推力自体は微小だ。

陽イオン源としてキセノンが使われることが多いが、Starlink衛星では推進剤にクリプトンが選ばれている。その理由は説明がやっかいだが、ひとつは同じ希ガスでもクリプトンのほうがやや入手しやすい点だ。現在稼働しているイオンエンジンの数は多くない。しかし数千個を動かす予定ならほんのわずかのコスト差でも収益に大きく影響する。

衛星には天体を観測して自機の姿勢を制御するStartrackerと他の衛星と衝突を防ぐシステムも搭載されている。この部分はSpaceXから具体的な説明がないのわれわれの側で推測するしかない。星を観測し、自国や地表との相対的位置をベースに位置、姿勢を計算するのだろう。このデータと政府のデータベースに掲載されている他の衛星や既知の宇宙デブリのデータと照合すれば衝突防止が可能になる。

Starlinkサイトには直交する5枚の円板の画像があった。これはリアクション・ホイールだろう。それぞれのホイールは一定速度で回転することで運動エネルギーを蓄えており、加速、減速によって反作用を生じさせて衛星の姿勢を制御する。きわめて巧妙なしくみだが、これも現在の衛星で標準的に用いられている。リアクション・ホイールとイオン・エンジンによって衛星の姿勢、相互の位置関係を精密に制御し、またデブリとの衝突を回避するわけだ。

SpaceXは私の取材に対して「われわれのデブリ・トラッカーはアメリカ空軍の統合宇宙運用センター(Combined Space Operations Center)に接続されており、あらゆるデブリの軌道を取得できる」と答えた。デブリの軌道データとStarlink衛星の軌道データを照合し、衝突の可能性が発見されれば衛星軌道が変更される。イオン・エンジンの推力は微小なため、充分な時間の余裕が必要だ。ボールが飛んでくるのを見てから避けるような動作ではなく、航空管制官が衝突を防止して旅客機を運航するのに似ている。

しかしStarlinkについてはまだ分からないことが多い。たとえば地上局はどうなっているのだろう? Ubiquitilink構想とは異なり、Starlinkの電波は微弱でユーザーのスマートフォンで直接受信することはできない。 そこで地上局が必要になるわけだが、マスク氏は以前、「ピザの箱程度のサイズにする」と述べていた。しかしピザといってもS、M、L、XLいろいろなサイズがある。どこに、誰が設置するのか? コストは?

先週のメディア向けブリーフィングでマスク紙はもう少し詳しく説明した。「地上受信設備は円盤型だ。しかしDirecTVなど静止衛星を利用した宇宙放送の地上アンテナとは異なり、特定の方向に向ける必要がない。Starlinkのディッシュは空に向いてさえいればいい」という。

また通信システム自体にもまだ謎が多い。たとえばアメリカのユーザーがStarlinkを利用してクロアチアのサイトを開こうとしたとしよう。なんらかのアップリンクで信号はStarlink衛星に到達する。衛星から衛星へ中継され、サイトの最寄りの衛星から地上に戻るのだろう。このダウンリンクは目的の地域のインターネットの基幹回線に接続するのだろうか? 最後の1マイルが光回線になるかどうかはテキストや音声通話などの場合ほとんど問題にならない。しかし最近急速に成長してきた動画ストリーミング・サービスにとっては大きな障害となり得る。

そして、ここが最大の問題かもしれないが、コストはどうなるのだろうか? SpaceXではこのサービスを地上の接続サービスと競争できる料金にするとしている。都市部における光ファイバーの普及度合いを考えるとこれが実現できるかはやや疑問だ。しかしテレコム各社は人口密度の低い遠隔地に光回線を設置したがらず、昔ながらのDSLに頼っている。こうした地域ではStarlinkは非常に高い競争力がありそうだ。

しかし実際の運用が始まるのはまだかなり先だ。今回打ち上げられた60基の衛星は第一陣に過ぎない。構想どおりに作動するかどうかを試すフィージビリティ・スタディーだ。テストが成功すればさらに数百機が打ち上げられテストは次の段階に進む。こうなれば一部の地域でごく初歩的なサービスが提供されるようになるかもしれない。とはいえ、SpaceXは計画の推進を急いでおり、早ければ年内にもこの段階に達するという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

イーロン・マスクの「小児性愛者だ」発言の名誉毀損訴訟が今秋開始

昨年Tesla(テスラ)とSpace XのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏が英国の洞窟ダイバーを何度も「小児性愛者」と呼んだために起こされた名誉毀損訴訟の裁判が、10月22日に行われると合衆国地裁の裁判官が決定した。

2018年9月に英国の洞窟ダイバーであるVernon Unsworth氏は、カリフォルニア中部の合衆国地方裁判所に名誉毀損の訴状を提出した。それはマスク氏がTwitterという公開メディア上で彼を「小児性愛者」(Pedo guy,、Pedo==Pedophile)と呼び、ほかにもそれをほのめかすようなことを言ったからだ。

今回の裁判所の決定は、The Vergeが最初に報じた

Teslaのスポークスパーソンにコメントを求めようとしたが、即座にはつかまらなかった。

合衆国地裁判事であるStephen V. Wilson氏はこの訴訟を取り下げる申し立てを拒否し、代わりに裁判の日程を決めた。その決定は、Unsworth氏の訴えが裁判を行うほど十分に強力であることを意味している。

マスク氏の弁護士たちは、インターネット上の言明、とりわけTwitterのような調停役のいないフォーラム上のそれは、客観的な事実ではなく意見であると推定されうると主張した。名誉毀損の法律は、意見や無礼に対しては適用されない。しかしWilson判事は、BuzzFeedのRyan Mac記者とマスク氏とのメールによる対話などを理由に、同氏側の主張を退けた。

Wilson判事は決定書の中でこう述べている。「被告の声明の一般的なコンテキストや、その声明の特定のコンテキスト、およびその声明(彼は小児性愛者である)の真偽証明可能性、などの状況を総合的に検討すると、リーズナブルな事実認定者ならば容易に訴状で訴えられている被告の声明は客観的な事実の断定を含意している、と結論できる」(訳注:彼は小児性愛者だ」というTwitter上などの声明が、そうだと思うという意見ではなくて、事実として彼が小児性愛者だと言っているということ)。

訴状は、7月15日から8月30日までにマスク氏はTwitterやメールを使って何度もUnsworth氏に対する嘘のそして名誉毀損的な言いがかりをメディアに投稿した、その中には小児性愛や児童のレイプの言いがかりもあったと主張している。

最初の「小児性愛者だ」攻撃は、Unsworth氏がメディアへの決定的なインタビューでマスク氏の小型潜水艇は「まったく使い物にならない」と言ったときに始まった。潜水のエキスパートはそのインタビューの終わりにマスク氏は「彼の潜水艦を痛いところに貼るべきだ」(役に立つところで使うべき)と述べた。

マスク氏はTwitter上で猛攻撃を開始し、Unsworth氏は小児性愛者だとなじった。のちに彼はその敵対的なツイートを削除し、Twitter上でお詫びのような言葉すら述べて撤回を試みた。そして、事件はそこで終わるはずだった。

ところがマスク氏は元本誌TechCrunchのジャーナリストであるDrew Olanoffとの(またまたTwitter上の)議論ですべてを蒸し返した。Olanoffは「小児性愛者だ」攻撃を、マスク氏が嘘をついている例として取り上げた。

[地裁決定書原文(被告の訴訟取下げ申し立ての棄却)]

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ベゾス、Blue Originの月植民計画と着陸船を公開

今日(米国時間5/9)、ホワイトハウスからほど近いワシントンの会場で、Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスが2024年までに有人月旅行を実現する計画の詳細を発表した。聴衆にはプレス、企業と政府の幹部に加えて大勢の中学生も招かれていた。同時にBlue Moonと呼ばれる月着陸船も公開された。

ベゾスによれば月は資源の宝庫だと言う。ベゾスが私費を投じて運営している宇宙企業、Blue Originは、今年中にNew Shepardロケットで有人宇宙旅行を行う予定だ。

イベントのステージは最初に月を歩いた人間、ニール・アームストロング宇宙飛行士の「人類にとって大きな一歩」という有名な言葉をモチーフにしていた。ここでベゾスは「人口が1兆人に達したとき人類はどこに生存のための資源を求めるべきか?」という非常に深刻な問題に答えようとした(こちらはベゾスの過去のビジョン関係の発言)。

宇宙というユートピアに進出する上で最大のハードルは、巨大通販会社のファウンダーとして熟知している問題、すなわちロジスティクスとインフラのコストを実現可能なレベルに削減する方法だ。

ベゾスは「われわれの世代の役目は宇宙旅行のインフラの構築だ。われわれは宇宙への通路を開かねばならない」と述べた。

アメリカ政府機関と特にNASAの研究によれば宇宙への道は月を経由するという。ベゾスが今日のイベントで月着陸船を披露した)理由の一つはそこにある。

アメリカのペンス副大統領はこの3月、国家宇宙委員会(National Space Council)の総会でNASAに対し、「2024年までにアメリカの有人宇宙船を月周回軌道に乗せ、月の南極に着陸させるためにあらゆる手段を活用する」よう指示した。

南極が目的地として選ばれた理由は氷だ。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「われわれの科学者の調査によれば、4.5億トンの氷が月の南極に存在する」と述べている。

月の自転軸の傾きにより南極には太陽の光が射さない極めて低温の場所がある。南極のクレーター中に摂氏マイナス160度という低温により蒸発を免れた大量の氷が埋まっているとNASAの科学者は推定している。氷はロケットの推進剤に利用することができる。

マイク・ペンス副大統領は3月の国家宇宙委員会総会で大統領のコミットメントが裏付けだとしてこう述べた。

今世紀、われわれは新たな野心を抱いて月に戻る。単にそこに行くだけではなく、永久に日照のない南極のクレーターの底の氷から原子力によって水をつくり、酸素や宇宙ロケットの推進剤を得る。そうした補給があればわれわれの宇宙船は数年ではなく数ヶ月で火星に到達できるだろう。

Y Combinatorが支援するスタートアップ、Momentusは水を推進剤とするロケットを建造中だ。このロケットは原子炉から得られた電力で水を加熱し、水プラズマによって推進力を得る。

しかしこれまでNASAの有人宇宙プロジェクトは予算の削減などにより遅延を重ねてきた。月に戻るというのは非常に高価な事業となる。NASAもアメリカ政府も推定金額がどれほどになるか明らかにしていない。(略)

「アメリカは月に戻る」というのは2017年にトランプ大統領が署名した宇宙政策指令1号(Space Policy Directive 1)に基づくものだが、NASA のプランの具体的内容は不明だ。

これがBlue Originが重要な役割を担って登場した背景だ。

今日披露されたBlue Moon月着陸船に加えて、Blue Originは2種類の宇宙ロケットを開発している。New Shepardロケットは低軌道を短時間飛行して宇宙飛行に関するテクノロジーやノウハウの収集を行うことを目的としている。ペイロードを地球周回軌道に打ち上げるのはNew Glennロケットの任務だ。 2021に最初の打ち上げが予定されており、45トンのペイロードを地球周回低軌道に投入できる。ロケットはどちらも垂直着陸によって回収され、複数回利用される。

先週、Blue OriginのNew Shepardは低軌道を弾道飛行して各種の実験を行うことに成功している。これは11回目のミッショだった。New Shepardは成層圏と宇宙の境界である高度100キロメートルまで上昇してカプセルを切り離した後、逆噴射と垂直着陸によって回収された。カプセルは慣性で上昇を続け、こちらはパラシュートによって無事回収された。

ベゾスはこのカプセルを一般人向け宇宙観光旅行にも利用する計画で、昨年のReutersの記事によれば、チケットは20万ドルから30万ドル程度だという。

一方、イーロン・マスクのSpaceXはこれとは異なるアプローチを採用してきた。SpaceXは大型ロケットを開発し、さらに超大型ロケットの開発に進んでいる。同社として「最新、最大のロケット、Falcon Heavyは63.8トンのペイロードを地球周回軌道に投入できるSpaceXではさらに惑星間飛行を視野に入れた次世代宇宙船、Starshipを開発中だ。こちらは100トンのペイロードを低軌道に乗せることができるという。Starshipの最初の打ち上げは2020年に予定されている。.

これ以外にも活動中の民間宇宙企業は数多い。スタートアップとしてはリチャード・ブランソンのVirgin Galacticを始め、Rocket Lab、Vectorなどが打ち上げプラットフォームの開発に取り組んでいる。スタートアップは現在の衛星打ち上げ事業の主流となっているロシアのソユーズ、アメリカのロッキード・マーティンとボーイングの合弁企業ULA、EUのアリアンスペースといった巨大企業のロケットと競争しなければならない。またロケット以外にも衛星、着陸船、制御システムなどの重要部分を開発、製造するスタートアップも多数現れている。

ベゾスはイベントで「月に戻るときが来た。単に旅行するのではなく、われわれはそこに留まるのだ」と宣言した。

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滑川海彦@Facebook

民間宇宙船で宇宙ステーションへ、SpaceXとボーイングの計画はどこまで進んだのか

SpaceXとボーイングは、NASAと協力して独自の宇宙船を開発している。その狙いは、民間開発の宇宙船による宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)への輸送だ。

宇宙開発の民間企業へと委託の一環として進められているこの計画だが、その道のりは平坦ではない。

民間企業による宇宙船開発のメリットと、その現状を紹介しよう。

ロシアに依存する現状

現在NASAの宇宙飛行士は、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から国際宇宙ステーションへと向かう。これは、ロシアの「ソユーズ」宇宙船を利用するためだ。

以前、国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の輸送には、ソユーズとスペースシャトルが利用されてきた。しかしスペースシャトルが2011年に引退したのにともない、アメリカはロシアに宇宙飛行士の輸送を委託することになる。

現在、アメリカはソユーズの座席をロシアから購入している。この価格は年々上昇しており、アメリカが宇宙開発にてプレゼンスを示せないだけでなく、予算確保という意味でも頭の痛い問題となっている。

輸送計画の民間委託

そこでNASAは、国際宇宙ステーションへの宇宙飛行士の輸送を民間企業に委託する「商業乗員輸送プログラム(CCP)」を表明する。民間企業のコスト感覚とスピードを、宇宙開発に持ち込むのがその狙いだ。

そして商業乗員輸送プログラムに選ばれたのは、SpaceXとボーイングの2社。それぞれがNASAから26億ドル(約2900億円)と42億ドル(約4700億円)の契約を結び、宇宙船を開発することになる。

上の画像は、SpaceXの宇宙船「Crew Dragon」だ。国際宇宙ステーションへの物資補給に利用されていた「Dragon補給船」を発展させたもので、最大7人の乗船が可能だ。また船内には多数のタッチパネルが搭載され、先進的な操縦システムを実現している。

ようやく実現した打ち上げ

SpaceXとボーイングの宇宙船開発は、数度の延期を繰り返した。宇宙飛行士の輸送に利用される宇宙船は高い安全性の基準が設けられており、それをクリアする難しさがうかがえる。

まず、宇宙船の打ち上げにこぎつけたのはSpaceXだ。2019年3月に無人のCrew Dragonを自社のロケット「Falcon 9」にて打ち上げ、軌道投入から国際宇宙ステーションへのドッキング、分離、そして海上への着水と回収という、難しいミッションを1発で成功させた。

宇宙船の内部には、宇宙飛行士を模したダミー人形「リプリー」と、「ゼロGインジケーター」と名付けられた人形が搭載された。宇宙船からの動画配信では、このダミー人形が宇宙空間で浮かび上がる様子も確認されている。

さらに、国際宇宙ステーションにドッキングしたCrew Dragonには、当時の長期滞在クルーだった宇宙飛行士も乗り込み、ゼロGインジケーターを回収している。宇宙船は気密性なども問題なく、SpaceXの技術が非常に高いレベルにあることが実証された。

しかし、今年4月に実施されたエンジンテストにて、Crew Dragonは大きなトラブルに遭遇する。事故の詳細は明かされていないものの、テストの際に宇宙船から煙が上がったのだ。また、非公式ながら爆発の模様を捉えた動画も出回った。

Crew Dragoの側面には、小型エンジン「Super Draco」が搭載されている。これは、宇宙船にトラブルが発生した時に動作し、緊急脱出のために利用されるエンジンだ。例えば、ロケットの打ち上げの最中にトラブルが発生した場合、そこから離脱するといった使用方法が想定される。

宇宙飛行士を輸送する宇宙船にとって、緊急脱出装置は必須の装備となる。つまり、このSuper Dracoの安全性が確認されない限り、Crew Dragonの運用が始まることはない。公式声明は発表されていないものの、このトラブルによりCrew Dragonの計画が遅延する可能性が出てきた。

なお、SpaceXはCrew Dragonに搭乗する宇宙飛行士のために、専用の宇宙服もデザインしている。上の宇宙服は、マーベル映画のコスチュームも手がける「Ironhead Studio」のデザイナーが手がけたものだ。このようなスタイリッシュな宇宙服の登場も、宇宙開発が新たな時代に突入したことを予感させてくれる。

SpaceXの宇宙船に比べて話題に上ることは少ないが、ボーイングも宇宙船「CST-100 Starliner」の開発を進めている。

CST-100 Starlinerは7人乗りの宇宙船で、かつて人を月へと運んだ「アポロ宇宙船」にも似た円錐形となっている。内部には貨物を搭載することもでき、最大10回の再使用が可能。またスペースXと同じく、ボーイングも専用の宇宙服をデザインしている。

先述のようなトラブルや開発の遅れにより、SpaceXとボーイングの計画は常に流動的だ。最新のスケジュールでは、SpaceXのCrew Dragonは7月に有人テスト飛行を実施する。また、ボーイングのCST-100 Starlinerは有人テスト飛行を11月に実施する予定だ。そして、実際の宇宙飛行士の輸送ミッションはその後に実施される。

民間開発の宇宙船で宇宙飛行士を輸送するという野心的な計画には、今後もさまざまな困難を乗り越える必要があるだろう。しかし、それを実現しようとしているアメリカ企業のダイナミズムには、感服せざるを得ない。

(文/塚本直樹 Twitter

イスラエルのBeresheetは月面への降下中に消息を絶つ

イスラエルのSpaceILは、あともう少しで歴史を作るところだったが、米国時間4月11日、Beresheet宇宙船は月面に着陸する寸前、下降中に失敗を喫することになってしまった。イスラエルは、制御された月面着陸を成功させた4番目の国になるチャンスを逃したことになる。しかし、全行程の99パーセントまで到達したことは、民間による宇宙飛行としては並外れた成果と言えるだろう。

Beresheet(Genesis)は、この2月にSpaceXのFalcon 9ロケットの第2ペイロードとして打ち上げられ、螺旋状に軌道を拡げながら1カ月半後に月の周回軌道に入った。これは先週のことだ。今回の最終的な操作は、エンジンの噴射によって月面に対する相対速度を落とし、さらにブレーキをかけて「晴れの海」に軟着陸するというものだった。

すべては最後の瞬間の直前まで完璧に動いていた。宇宙空間ではよくある状況だ。意図した降下開始点に寸分違わずに到達した宇宙船は、すべてのシステムの準備が整っていることを確認し、予定通りの着陸プロセスを開始した。

一瞬テレメトリを失ったので、宇宙船をリセットしてメインエンジンをオンラインに戻す必要が生じた。そして、月面からわずか数キロメートルの地点で、通信は途絶えてしまった。上の「自撮り」写真は、月面から22km上空で、そのわずか数分前に撮影されたもの。そのすぐ後で、宇宙船は消息を絶ったと発表された。

まったくがっかりな結末だが、ワクワクさせてくれるものだった。チームはすぐに落ち着きを取り戻し、「あそこまで到達できたということだけでも絶大な功績であり、誇ってよいことだと思います」と述べている。そして「1回目に失敗したら、何度も挑戦するだけです」と。

このプロジェクトは、10年以上前に発表されたGoogleのLunar Xprizeに応募するものとして始まったのだが、その後このチームが指定された期間内に挑むのは難しすぎることが判明していた。競技の継続とその賞金は諦めざるを得なかったが、イスラエルのSpaceILチームは仕事を続けていた。幸い、航空機産業を統括する国営のIsrael Aerospace Industriesによるサポートを受けることもできた。

Beresheetは、このように政府からかなりの支援を受けていたのは確かだが、一般的な政府主導の大規模なミッションに比べれば、どこからどう見ても「私的な」ミッションであると言って間違いない。チームのメンバーは50人以下で、予算も2億ドル(約220億円)というのは、月着陸に限らず、実際にどんな重大なミッションと比べても、一笑に付されるほどの規模でしかない。

私は、着陸動作に入る前に、Xprizeの創立者兼CEOのPeter Diamandis、Anousheh Ansariの両氏に話を聞いてみた。いずれも非常に興奮していて、このミッションはすでに大成功したものと考えられることを表明していた。

(参考記事日本語版:民間初の月面探査機が木曜夜に打ち上げへ

「ここにいるのは、この奇跡が起こるところをひと目見ようと集まってきた、科学、教育、そして政府関係者の錚々たる面々です」と、Diamandis氏は述べた。「私たちは、今から11年前にこの競技を始め、エンジニアを鼓舞し、教育しました。時間切れになったとは言え、このプロジェクトは目標の100%を達成しました。たとえ完全に無傷で着陸できなかったとしても、すでにかなりの熱狂と興奮を巻き起こしました。15年前のAnsari Xprizeを思い出させるものです」。

こう考えているのは彼だけではない。自身の名前を冠した有名な宇宙飛行Xprizeに資金を提供し、最初のツアーとしての国際宇宙ステーション上空の宇宙飛行を経験したAnsari氏も、共感を示している。

「これは驚くべき瞬間です。とてもたくさんのすばらしい思い出を蘇らせてくれます」と、彼女は私に語った。「私たちがみんなMojaveに赴いて、Spaceship Oneの打ち上げを待っていた時のことを思い出します」。

Ansari氏は、着陸が人類の進歩のように感じられるものであることを力説した。

「過去50年間で、全人類70億人のうちたった500人しか宇宙に行っていないのです。その数は近いうちに数千人にもなるでしょう」と、彼女は言う。「私たちは、この技術分野にはできることがもっとたくさんあると信じています。文明だけでなく人類にも利益をもたらす、本当のビジネスチャンスがまだまだあるのです」。

SpaceILチームが成し遂げたことを祝福したい。そして、次の挑戦では、きっとうまく着陸できることを願っている。

画像クレジット:SpaceIL

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

SpaceXのFalcon Heavyが全ブースターの着陸に初成功

SpaceXのFalcon Heavyによる初の商業ミッションが米国時間4月11日に成功し、通信衛星を投入することで大型ロケットとしての性能を証明した。さらに、3つのロケットコアの地球への自動着陸にも成功している。これらは、すべて再使用が予定されているのだ。

搭載されていた人工衛星「Arabsat-6A」は、予定軌道に投入されてミッションは成功。Falcon Heavyは大型ペイロードが搭載できる他社の競合ロケットと比較し、非常に廉価な打ち上げを可能にする。なによりも、すでに運用が開始されているというアドバンテージがあるのだ。

今回の打ち上げは強風のために1日延期されていた。米国東部時間6時35分にケープ・カナベラルから打ち上げられたFalcon Heavyは2機のブースターを切り離し、それぞれがLZ-1とLZ-2に着陸。そしてセンター・コアはドローン船「Of Course I Still Love You」に着陸した。動画中継が一時途切れるなど不安な場面もあったが、すぐにドローン船にそびえ立つセンター・コアが映し出された。

興奮の瞬間は打ち上げから10分以内(T-0からT+10 min)に集中した。なぜなら、3機のブースターの着陸はこれまでなし得なかったミッションで、かつドローン船への着陸は失敗例もあったからだ。

なお、打ち上げ時にペイロードをカバーするフェアリングの回収が実施されたかどうかについての言及はない。これについても、後に情報がもたらされることだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

もうすぐ月面に着陸するイスラエルのBeresheet

Beresheetは、イスラエルの私的資金で開発され、打ち上げられたミッションで、月面着陸を目指している。今回、1ヶ月半におよぶ飛行の末、月の周回軌道に入ることに成功した。機体は現在、4月11日の着陸に備えて、軌道を調整しているところだ。

この宇宙船は、去る2月21日に、SpaceXのFalcon 9によって打ち上げられた。その後地球の軌道を回りながら、月に向けて加速した。この機体を制作したSpaceILのエンジニアは、その正確な仕事を証明して見せた。Beresheetが最後の噴射を終えて月の楕円軌道に入ったのは、打ち上げ前に予想されていた時刻と9分とずれていなかったのだ。これは、まさにロケットサイエンスのなせる技だ!

この計画の次のステップは、連続的にエンジンを噴射しながら、徐々に月の周回軌道を小さくしていくこと。それがある地点まで達したら、最終的なエンジンの噴射により、月面に向けて降下する。

「月に到達したことは、それ自体歴史的なイベントです。それと同時に、月の周回軌道に入ることのできた7カ国の仲間に、イスラエルも加わることを意味します」と、SpaceILのMorris Kahn氏は声明の中で述べている。「今日から1週間後に、月面着陸という、さらに大きな歴史を作ります。それは、これまでに3つの超大国しか成し得なかったことです」。

ここで言う超大国とは、もちろんアメリカ、ロシア、そして中国のこと。しかも中国は、今年のはじめに月の裏側(「影」の部分ではない)に着陸している。

しかしBeresheetは、月面に軟着陸する最初のプライベートな事業となるはずだ。さらに、単に私的に計画され、資金が集められただけでなく、その開発と打ち上げも、民間企業によって成し遂げられた。これは地球規模の宇宙開発コミュニティの威力を示すもの。費用も1億ドル(約110億円)未満で、非常に安価だ。

すべてがうまくいくと仮定すると、着陸船はMare Serenitatis、つまり「晴れの海」に着陸し、数日間、周辺を探査する。いくらかの実験装置を積んではいるが、着陸船はその後まもなく動作を停止する。着陸後の動作は、それほど重要ではなく、長期的なものでもない。

つまりこのミッションでは、科学は二次的な目標に過ぎないのだ。Beresheetの打ち上げは、まず第1に国家の威信と、イスラエルの宇宙開発コミュニティの発展のため。そしてその目的のためには、すでに成功を収めたことになる。着陸船は、もうすぐ月面に向かって降下を始める。お楽しみに。

画像クレジット:SpaceIL

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

高く舞い上がる宇宙開発ベンチャー

宇宙開発ベンチャーへの投資額は、近年成層圏にも届きそうな勢いで跳ね上がっている。しかも、この分野の投資家たちは、まだまだ高まるばかりだと踏んでいる。

資金調達額が急上昇した最新の例としては、衛星インターネットのスタートアップOneWebを挙げることができる。打ち上げの成功を受けて、銀河規模とも言える12億5000万ドル(約1375億円)のベンチャー資金ラウンドの調達成功を発表した。今回の資金調達には、気前の良さで知られるソフトバンクをはじめとする多くの投資家が名を連ねている。その結果、このバージニア州アーリントンにあるOneWebは、これまでの合計で巨額の34億ドル(約3740億円)の投資を獲得した。

しかし当然ながら、OneWebが最近の大規模な投資を引き出した唯一の宇宙開発関連企業というわけではない。この分野への大規模な投資をまとめたCrunchbase Newsは、ベンチャーキャピタルからの注目を集め、巨額の資金も引き出した企業のリストを掘り起こしている。その中には、2018年以降に5000万ドル(約55億円)以上の資金を確保した、五指に余る会社が含まれている。

魅力はどこにあるのか? しばしば繰り返される話だが、初期段階だった企業が成熟するにつれて、スタートアップ投資担当部門による査定額が上昇していることが大きく影響している。これは、投資家グループSpace AngelsのCEO、Chad Anderson氏の意見だ。

「参入に対する抵抗は、2009年に消えました。それはSpaceXが、低コストかつ透明な費用による打ち上げを何度も成功させたからです」と、Anderson氏は言う。「Planet(※以前のPlanet Labs)のような真に草分け的な企業が、2013年以降、新たな宇宙へのアクセスを活用できるようになったこともあります」。

今では、5〜6年前に立ち上げられた宇宙開発関連の企業は、スタートアップの基準からすれば中堅企業となり、より大きな、後半の投資ラウンドの時機が熟している。

近年、衛星の設計と打ち上げに関する費用の経済性が向上したことも、投資家に対する大きな説得力となっているのは確かだ。衛星は、設計、製造、打ち上げのための費用として、以前は数億(または数十億)ドル(数百億〜数千億円)もかかっていた。今日では、小型衛星なら数万ドル(数百万円)で製造し、数十万ドル(数千万円)で打ち上げることができるようになった、とAnderson氏は説明する。

ベンチャー投資家は、そうした計算を好むものだ。Space Angelsの見積もりによれば、ベンチャー投資家のファンドは、過去10年間で宇宙産業に約42億ドル(約4620億円)投資した。そのうちの70%は、ここ3年間に集中しているのだ。

そしてさらに多くの投資会社が、この分野に参入しつつある。Anderson氏の計算によれば、上位100社のベンチャーキャピタルのうち40%強の会社が、少なくとも1件以上の宇宙関連投資を行っていることになる。こうした投資は、2つの領域に集中している。衛星と打ち上げ技術だ。特に小型衛星をターゲットにしたものが多い。

資金がどこに向かっているのかを確認するため、昨年以降に大きな資金調達を達成した宇宙開発関連企業を、以下の表にまとめてみた。

宇宙開発企業が多大なベンチャー投資を生み出している一方で、それほど多くのスタートアップがエグジットを達成しているわけではない。それもまったく驚くに値することではないだろう。典型的なベンチャーのスタートアップからエグジットまでのタイムラインを当てはめて考えてみれば、それも納得できるはずだ。仮に、投資を受けたスタートアップが、2013年ごろに創立されたものとすれば、これから数年後には、いくつかエグジットが期待できるだろう。

しかし、ベンチャーキャピタルからの支援を受けた宇宙開発関連企業の中で、最も有名、かつ先駆的な役割を果たしているイーロン・マスク氏のSpaceXは、まだ株式を公開していない。これは注目に値する。もちろん、Spacexの知名度、業績を考えれば、ブロックバスター的なIPOを実現しても不思議ではない。

それでもAnderson氏は、それはありそうにないことだと主張している。この先だいぶ時間が経ってもだ。1つには、マスク氏が考える会社の究極の目標が、火星を植民地化すること、という事実がある。それは、株式を公開している一般的な会社の責務とはうまく合致しない。つまり、四半期ごとに会計の帳尻を合わせるといったことは難しい。さらにマスク氏が、テスラでのやり方に関して、すでに規制当局との関係をこじらせていることも、プラスには働かない。

それでもSpaceXは、その壮大な野心を追求する過程で、他の多くの宇宙開発起業家の発射台としても機能してきた。ここに、SpaceXの卒業生を創立者、またはコアメンバーに持つ9つのスタートアップをリストアップしてみた。

火星の植民地化というのは、リスクの高い賭けには違いないが、地球上で宇宙開発関連企業がエグジットを果たす可能性は、より高いものになってきている。

※PlanetとSpaceXは、Space Angelsのポートフォリオ会社

画像クレジット:John Devolle

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

成功すれば宇宙産業を変革 、SpaceXの超大型ロケット「Falcon Heavy」

Falcon Heavyは1年前に飛行テストに成功しているが、米国時間4月7日の日曜に予定されているのは、本番の商用衛星打ち上げだ。ライバルの宇宙企業は固唾をのんで成否を注視している。SpaceXの新ロケットが成功すれば、大重量のペイロードを経済的かつ頻繁に軌道に送り込むことできる時代の幕開けとなる。我々は打ち上げを、(ロケット発射場の)ケープ・カナベラルの現場から報じる予定だ。

来る4月7日(日本時間4月8日の月曜)に予定されているFalcon Heavyの打ち上げは、昨年2月のテスト成功以来、初の飛行となる。テスト飛行のときのペイロードはイーロン・マスク愛用の電気自動車、赤いTeslaロードスターでデビッド・ボウイの曲をBGMにダミー宇宙飛行士のスターマンがハンドルを握っていた。今は火星軌道を過ぎているはずだ。この成功によりSpaceXはローンチ・カスタマーを獲得できた。日曜の打ち上げはロッキード製のArabsat-6A通信衛星を静止軌道に送り込む予定だ。下は昨年、私(Coldeway)と同僚のEtheringtonがFalcon Heavyのテスト打ち上げを取材したときのものだ。

今日の地上テスト噴射も成功しているので天候に問題がなければ打ち上げは予定どおり実施されるはずだ。SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏もツイートしているとおり、今回のFalcon Heavy Block 5(つまり商用バージョン)はオリジナルに比べて推力が10%アップしているという。つまり安全率もそれだけ向上しているとみていいだろう。

なぜFalcon Heavyは宇宙産業にとって非常に重要なのか?アポロ計画の成功以来、何百トンという衛星が地球周回軌道に(あるいはそれを超えて)打ち上げられている。簡単にいえばFalcon Heavyが革命的なのは打ち上げ費用だ。

衛星打ち上げはそれ自身きわめて複雑、困難な仕事であり、重量と軌道高さが増えると難しさは指数関数的に増大する。ロケットの素材、燃料が大きく進歩したことは、中型、小型のシステムに最大限のメリットをもたらした。ミニ衛星、マイクロ衛星はきわめて安価に可能となり、われわれは何千もの小型衛星のネットワークが地球を取り囲む新しい時代の入り口に差し掛かっている。

Rocket LabのElectron(使い捨て)やFalcon 9(再利用)などのシステムは中小型衛星の打ち上げコストをそれまでの何分の1にも引き下げた。

しかし大重量の衛星を高い軌道に打ち上げる能力がある大型システムのコストは依然として極めて高価なままだった。多数の小型衛星10トンぶんを軌道に投入することはスタートアップにも可能になったが、100トンを打ち上げる能力は依然として超大企業に限られる。

Falcon Heavyは大型衛星の打ち上げコストをミニ、マイクロ衛星並みに引き下げられる可能性を初めて示したシステムだ。Falcon Heavyのコストは1億ドル前後と推定されている。これは小銭とはいえないが、ライバルのDelta IVが3.5から5億ドルすると考えられているのに比べれば画期的に安い。

これほどの価格引き下げはあらゆる宇宙事業を根本的に変える。NASAは同じ費用ではるかに多くの惑星探査ミッションを実行できるだろう。もちろんDelta IVの打ち上げ実績は優秀で、過去15年以上にわたって100%の打ち上げ成功率を誇っている。この信頼性がDelta IVのプレミアム価格の理由の一部となっている。しかしFalcon Heavyが実績を積めば状況は変わってくる。

Delta IVの打ち上げ(2016)

大型衛星の打ち上げは(ミニ衛星の場合も同様だが)、 極端にサプライサイド優勢だ。つまり打ち上げ能力が最大の制約要因となっている。政府や巨大企業は衛星(ないし惑星探査機)打ち上げの順番を待つために何年も行列に並んでいるのが現状だ。SpaceXではFalcon Heavyのペイロード・スペースをロケットが製造される端から埋めていくことができる。Flacon Heavyの中央本体は使い捨てだが、両側のブースターは再利用可能だ。これはライバルに比べてはるかに大きな供給能力を約束する。Falcon Heavyが成功すれば巨額のビジネスとなるだけでなく、その影響は宇宙産業全体に及ぶだろう。

低軌道への衛星投入50トン以上というFalcon Heavyの能力には、今のところライバルがほとんどいない。しかしこの閾値の下は競争が激しい。ロッキードとボーイングの共同事業であるULA、EUの宇宙事業、Arianeをはじめ、ロシア、中国、さらにはジェフ・ベゾス氏のBlue Originのようなスタートアップも低価格の次世代衛星打ち上げシステムの開発に全力を挙げている。この宇宙事業の将来も我々にとって重要な課題だが、詳しく論じるのは別の機会に譲りたい。

現時点ではFalcon Heavyは桁外れの打ち上げシステムだ。能力を高めたほか、大きくコストを引き下げ数多くの宇宙事業を手の届くものにするというのは、野心的であるだけでなく歓迎すべきビジョン。現地時間日曜の打ち上げはこの変化が起きる瞬間を目撃するチャンスになるかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXが「Starhopper」の初ホップテストを係留状態にて完了

SpaceXは米国時間4月3日の夜、宇宙船「Starship」のプロトタイプを利用した、初となる係留状態でのジャンプ(ホップ)テストを完了した。

限定的なホップと着陸のテストに用いられる「Starhopper」はテキサスのボカ・チカに設置された射場にて、ロケットエンジンが機体に装着された状態でのはじめての点火試験(スタティック・ファイア・テスト)を実施したことになる。

今回のホップテストは、再使用が可能な商業ロケット「Falcon 9」の開発の経過に類似している。その際にはGrasshopperとF9R Devが使用され、Falcon 9の開発に大いに貢献した。今回のStarhopperのテストも、惑星間を旅するStarshipへと連なるものとなるはずだ。

StarhopperはStarshipの小型版プロトタイプだ。Starshipは2022年までの無人での初飛行を予定している。イーロン・マスク氏によれば、Starshipの有人初飛行はZOZOTOWN率いる前澤氏の月旅行として2023年に実施される。さらに、有人火星飛行を2024年に実施し、2028年には火星基地を建設する予定だ。

Starhopperは今年1月に披露され、それ以来さまざまなコンポーネントがテストされてきた。最新のニュースとしては、宇宙船が大気圏に再突入する際に、圧縮熱から機体を守るヒートシールドのテストの模様が公開されている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ボーイングの商用有人宇宙船Starlinerの初テストは8月に延期

一般人を対象とした商用宇宙旅行計画の進展は我々と宇宙の関係を一変させる可能性があるが、その一番乗りの栄誉はSpaceXが今年中に手にするかもしれない。最大のライバルであるボーイングがStarlinerシステムのテスト飛行を延期したからだ。無人飛行テストの第1回目はこの5月に予定されていたが、8月に延期されたことを米国時間4月2日、ボーイングが確認した。

Starlinerのテスト飛行延期の情報が浮上したのは先月だった。この時点ではボーイングは「Starlinerが利用する打ち上げ施設の日程が立て込んでいる」ことを確認するにとどまった。実際、Starlinerの打ち上げに適する「ウィンドウ」は5月には2日しかない。Starlinerを割り込ませれば国家安全保障上重要なAEHF5軍事通信衛星の打ち上げに支障をきたすおそれがあった。

宇宙事業でのスケジュールの遅れはいやというほど繰り返されてきた。世界の宇宙事業各社が独自の宇宙基地や発射施設を保有ないし建設しようとしているのはこれが理由だ。衛星発射の回数が増えれば発射施設の能力も拡大される必要があるというのは当然だろう。しかし独自基地の建設には莫大なりソースを必要とする。多くの事業者にとって、(米国東部にあるロケットセンター)ケープ・カナベラルの発射施設を利用する以外選択肢がない。

ただし、ボーイングが本当に5月に打ち上げを実施するつもりだったら、打ち上げロケットとStarlinerカプセルは現在よりはるか前にケープ・カナベラルに到着していければならなかったとNASAの宇宙飛行部門が指摘している。テストに必要な機材がケープ・カナベラルに来ていなかったということは打ち上げ延期が決定されたのがかなり以前であることを示唆する。ボーイングとロッキード・マーティンの共同宇宙事業であるUnited Launch Allianceは、すでにテスト発射準備を中止していた。つまり昨日の延期発表は誰もが知っていたことを再確認したにすぎない。

8月の無人テスト飛行が成功すれば、11月には有人テストが可能になるだろう。しかしStarliner計画はすでに何年も遅れており、今回もまた遅れが加算されることとなった。しかもボーイングに比べればはるかに若いライバルがすでに無人宇宙飛行テストに成功していることはさらなる屈辱だ。

SpaceXは有人飛行を7月に予定しているのでボーイングは悔しいかもしれない。しかし実情は、こうした事業は慎重さの上にも慎重さを重ねる必要があり、必要なだけの時間をかけるべきだ。この点、ボーイングの決断は正しい。なるほど一番乗りを逃がせば、会社の評価にとって追い風にはならないかもしれない。しかしそれは今後明らかになるStarlinerの能力、信頼性によって十分取り返せる。

別のプレスリリースでNASAとボーイングはStarlinerには研究、メンテナンスのためのミッションが追加されることを発表した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

衛星打ち上げ成功でOneWebが約1400億円を調達、宇宙ネット構築へ大きく前進

宇宙インターネットのスタートアップ、OneWebは12.5億ドル(約1400億円)のベンチャー資金を調達することに成功した。先ごろ同社は衛星6基の打ち上げに成功し、いよいよミニ衛星の大量生産に乗り出すことが可能となった。OneWebは世界規模でまったく新しいインターネット接続レイヤーを構築する野心的な計画を進めている。

OneWebは第1陣として650基前後のミニ衛星を利用して全世界をカバーする新しいインターネット網を建設しようとしている。さらにその後数百基を打ち上げてカバー範囲と通信容量を拡大する。当初のスケジュールからはだいぶ遅れているが、これは宇宙関連の事業では珍しくない。しかし2月末の衛星打ち上げの成功により、衛星の大量生産とその運営という次の事業段階に進む準備が整った。

CEOのAdrian Steckel氏はプレスリリースでこう述べている。

最初の6機の衛星の打ち上げが成功し、Airbus(エアバス)と共同で建設中の画期的な衛星製造施設も完成に近づいている。ITUでも電波帯域の優先割り当ての確保が間近だ。また最初の顧客確保にも成功しつつある。OneWebは計画と開発の段階から実施、運用の段階へと大きく進んだ。

しかし、低軌道であっても大量の衛星を投入するには巨額の資金が必要となる。OneWebの衛星は1基あたり約100万だ。これに打ち上げ費、運用費、人件費などを加えれば10億ドル級のラウンドでもすぐにコストをカバーできなくなるのははっきりしている(同社の調達総額は現在34億ドル)。

もちろんAirbusが開発した独自の効率的な生産システムに移行すれば衛星のコストは下がるだろう。今回のラウンドで調達された資金の一部は衛星製造システムの仕上げにも投資されるはずだ。

現在の計画では、まず十分な数の衛星を打ち上げ(毎月の30基程度が必要)て、来年接続をデモするという。続いて2021年には限定的な商用サービスを開始する。OneWebはすでに最初の顧客としてTaliaを得ている。同社はアフリカと中東をカバーするテレコム企業だ。

もちろん、OneWebには多数のライバルが存在する。一番よく知られているのはSpace Xだろう。同社は数千のミニ衛星で世界をカバーすることを計画している。しかし実際に軌道を周回しているのは少数のプロトタイプだけでスケジュールは大きく遅れている。しかも惑星間飛行や火星植民地化といった壮大な計画をあくまで追求するならミニ衛星打ち上げのためにさほど大きなリソースを割り当てることはできないかもしれない。

Swarm Technologiesは超低コストのソリューションを目指しており、Ubiquitilinkは新しい端末技術に注目して既存のスマートフォンに衛星を直接接続できるようにしようと考えている。これは他の衛星通信や地上通信と共存できる可能性がある。宇宙事業には不確定の要素が多々あり、今後どうなるか誰にも分からない。

とはいえ、OneWebは優秀なエンジニアのチームを持ち、競争でもライバルにリードを保っているため、業界には同社に賭ける強力な企業が多数ある。今回の12億5000万ドルのラウンドはローンチ当初からの投資家であるSoftBankがリードし、Grupo Salinas、Qualcommに加えてルワンダ政府が参加している。

(翻訳:原文へ

滑川海彦@Facebook

SpaceXが歴史的な民間有人宇宙船のテスト運用に初成功

SpaceXのCrew Dragon宇宙船が大西洋に無事着水し、民間企業による国際宇宙ステーション(ISS)との有人宇宙船のテスト運用に初めて成功した。これはSpaceXが年内に予定してるミッションのうちの一つで、Boeingもそれに続き宇宙船のデモ打ち上げ、そして有人でのテスト打ち上げを実施する。

Demo-1と名付けられたミッションでは、SpaceXはISSとの貨物輸送に定期的に用いられてきたDragon宇宙船の発展形となるCrew Dragonが、宇宙飛行士の輸送の準備ができていることを示した。

3月2日(米国東部時間)、地球を18周したCrew Dragonは最終的にISSへと接近し、新たなドッキング・アダプターへと自律的にドッキングした。400ポンド(約180kg)の物資がISSへと持ち込まれたが、Ripleyと名付けられたクラッシュテスト用のダミー人形は船内に取り残された。

(なお、Crew Dragonを打ち上げたFalcon 9の第1段もドローン船への自動着陸に成功している)

Crew Dragonのドッキングから5日後、宇宙船はISSから分離し、大気圏への再突入を開始。スケジュールどおり、3月8日の8時45分に地球に帰還した。

これはNASAのCommercial Crew Program(商業有人計画)における大きな進展であり、またSpaceXにとっても計画の成功だけでなく、Boeingに先んじたという意味で価値がある。ただしこれはどちらがシェアを獲得するかという話ではなく、2社の健全な競争により、有人宇宙開発がより一般的になることを意味している。

今後、SpaceXとNASAによるミッションの詳細な報告や、宇宙船とダミー人形の検査結果が伝えられることだろう。

(文/塚本直樹 Twitter

SpaceXがCrew Dragon宇宙船を初打ち上げ、有人宇宙飛行の準備進む

SpaceXは米国時間3月2日、「Falcon 9」ロケットと「Crew Dragon」宇宙船の打ち上げという、2つの偉業を成し遂げた。Crew DragonはSpaceX初の、国際宇宙ステーション(ISS)との宇宙飛行士輸送を目的として開発されれた宇宙船だ。今回の宇宙飛行は宇宙船の最終チェックを目的としたもので、打ち上げからISSとのドッキング、回収に向けた大気圏への再突入までがテストされる。

これまで、Crew Dragonの打ち上げは順調に推移しており、宇宙船内部のダミー人形と「ゼロGインジケーター」の様子が確認できる。

そして明日の朝、宇宙船はISSとのドッキングに挑み、その後に大気圏に再突入することとなる。

打ち上げに向け、今週NASAはSpaceXに打ち上げ許可を与えていた。

打ち上げの様子は下の動画でご確認いただきたい。

(文/塚本直樹 Twitter

初の民間月面探査機、SpaceXロケットで打ち上げ成功

Update: 打ち上げは成功。すべてのペイロードは予定軌道に投入された。後は、月への着陸を待つだけ……。

初となる民間による月面着陸ミッションが、ケープカナベラルから始まった。SpaceXのファルコン9ロケットはSpaceILの着陸機「Beresheet」を搭載し、2月22日5時45分(太平洋時間)に打ち上げたのだ。

この打ち上げは、着陸機だけのものではない。実際に着陸機は副ペイロードで、主ペイロードはインドネシアの通信衛星「Nusantara Satu」となり、同国の遠隔地に通信網を提供する。またこれが静止軌道に到達すると、U.S. Air Force Research Labの「S5」実験衛星を分離する。S5は同高度付近の物体やデブリを追跡する。

しかし、これらのペイロードが打ち上げから44分後に分離されているころ、Beresheetはすでにその旅路を開始しているのだ。月へと着陸する遷移軌道に投入されたBeresheetは、4月に着陸を実施する予定だ。

もしこれが成功すれば、Beresheetは民間として初の月面軟着陸に成功することになる。これまでロシアやアメリカ、中国が月面着陸に成功し、他国は月を通過したり周回したりするにとどまったが、Beresheetは月面への軟着陸と写真撮影を達成する予定だ。

もともと、Beresheetの計画はGoogleが資金を提供し、達成チームなしで終わった「Lunar Xprize」のものだった。レースは各チームの準備が整わずに失敗に終わったが、参加チームのいくつかは独自の月探査計画を開始している。

約1億ドル(約110億円)のBeresheetのプロジェクトは史上最も廉価な月面着陸ミッションで、初となる民間開発のロケットにより打ち上げられ、民間企業の仲介により副ペイロードとして搭載され実現した。もし成功すれば、初めてづくしの計画だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceX、ボーイングの有人宇宙飛行計画さらに遅延、当面ソユーズの利用が続く

今後の宇宙関連プロジェクトでもっとも重要なのはSpaceXとボーイングがそれぞれ進めている有人宇宙飛行カプセルの開発であることは間違いない。 しかし、今日(米国時間2/6)のNASAのブログによれば、すでに遅れているスケジュールがさらに遅れることが明らかとなった。

ボーイングのStarlinerとSpaceXのCrew Dragonは ISS(国際宇宙ステーション)にクルーを往復させるために用いられるカプセルだ。有人飛行であるため、現在の物資輸送用カプセルとは比べものにならないくらい厳密なテストが繰り返されてきた。

しかし、これは簡単な開発ではなく、両社とも長い道のりを歩んできた。当初2017年の運用開始が予定されていたが、スケジュールは大幅に遅延している。実際に人間を乗せて飛ぶのがいつになるかはまったく分からない。

今月はCrew Dragonにとって大きなマイルストーンとなるはずで、無人でISSに向かってテスト飛行が実施される計画だった。ボーイングも近く軌道飛行のテストを実行することを計画していた。しかしこれらのテストは双方とも延期されたという。NASAはこう述べている。

NASAではSpaceXのCrew DragonのDemo-1無人フライトテストを3月2日に予定している。 Boeingの無人の軌道フライトテストは4月以降となる。

ハードウェアの開発、テスト、データの確認、NASAや関係機関による結果の評価、乗員、地上要員の訓練などのスケジュールによって日程は調整される。

簡単にいえば、両社ともまだまったく準備が整っていないこということだ。かなり完成に近づいてはいる。しかし有人飛行の場合、「かなり」では十分ではない。

もしこれ以上の深刻な遅れが出ないなら、2019年の開発スケジュールはおおむね以下のようなものになる。

  • SpaceX Demo-1(無人):2019年3月2日
  • Boeing 軌道フライトテスト(無人):2019年4月以後
  • Boeing フライト中止テスト:2019年5月以後
  • SpaceX フライト中止テスト:2019年6月以後
  • SpaceX Demo-2フライトテスト(有人):2019年7月以後
  • Boeing フライトテスト(有人):2019年8月以後

この夏はSpaceX、ボーイングともに有人宇宙飛行を行う予定なので、アメリカの宇宙飛行にとってきわめて重要な時期になる。現在のところ、ISSにクルーを往復させる手段はソユーズしかない。ソユーズは何度も人員輸送を成功させてきたが、すでに登場から40年もたつ古いシスムであり、言うまでもなく、ロシア製だ。21世紀にふさわしいアメリカ製のシステムがかつてなく強く求められている。

画像:NASA

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滑川海彦@Facebook Google+

SpaceXのCrew Dragonカプセル回収の様子はこうなる

宇宙から高速で帰ってくるときは、いくつかの理由により、陸地より水の上に降りる方が安全だ。SpaceXのCrew Dragonカプセルももちろんそうする。そして、地球に帰還して回収船GO Searcherに載せられる様子はこんな感じになる。ただし、実際には英雄たちを歓迎する場面があるはずだ。

GO Searcherを見るのはこれが初めてではない。昨年海上でヘリコプターの着船テストを行ったときにも少しだけ公開された。

ご覧のとおりGO Searcherは、落下した飛行物体を捕獲するためだけの巨大なミットではない。大きくて重いカプセルを海上から回収するだけではなく、乗組員を収容しなくてはならない(医療行為が必要な場合もある)。つまりこれは作業用の船というよりも動く海上基地のようなものだ。

これはフロリダ州ポートカナベラル(もちろんあの有名なケープカナベラルの近く)のドックに船が帰還するところ。おそらく海上で何らかの訓練を行った帰りだろう。

船上にはCrew Dragonカプセル(実際の製品版ではなく実寸大のモックアップかプロトタイプと思われる)が載っているようなので、おそらく海面から拾い上げてソフトに着船させる訓練を行っていたのだろう。

訓練から戻ってくる様子はおそらくこんな感じだろうが、距離やミッションによっては、宇宙飛行士や宇宙旅行者たちをヘリコプターに乗せて急いで帰す可能性もある。けが人がいる場合はもちろん、場所や天候によっては遅い船ではなく空路を使う方が望ましい場合もあるだろう。

いずれにせよ、これからはこの種の船を頻繁に見かけるようになるだろう。SpaceXには、今回の作業の詳細、および同社が予定しているCrew Dragonのテスト飛行との関連について質問している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceX、StarshipプロトタイプはLAではなくテキサスで建造

アップデートCEOのElon MuskはStarshipとRaptor(ロケットエンジン)の開発はホーソーンで引き続き行うが、プロトタイプは現在テキサスで建造中だ、とTwitterで明らかにした。Muskはまた、記事はSpaceXによるミスコミニュケーションから生じたものだ、と述べた。元記事は以下に続く(見出しはアップデートされている)。

SpaceXは、次世代の開発の拠点を本部のあるロサンゼルスエリアではなく、テキサスの施設に据える、と今日明らかにした。少なくとも次世代のStarshipとSuper Heavyのテストバージョンの開発はテキサスで行われる。一方、Falcon 9とDragonの作業はホーソーンにとどまる。L.A. Timesが最初にこのニュースを報じた。

この決定は、SpaceXのこれまでの作業の多くが行われきたカリフォルニア州ホーソーンの施設で働く人にとっては問題だーしかしながら、SpaceXの動きを丹念に追っている人にとってはさほど驚きではないかもしれない。先週、解雇が発表され、その多くがホーソーンにいる社員だったと報道された。これは、SpaceXがFalcon 9の開発から運用とメンテナンスにシフトしているためと論理的に考えられる。

当初の計画では、少なくともいくつかのStarshipとSuper Heavyのキットを L.A.港で建造し、近くのヴァンデンバーグ空軍基地でテストを行う、とされてきた。しかし、今日のニュースだけでなく、実際にテキサスに目を引くステンレス鋼のテスト飛行用ロケットがあることからもわかるように、計画通りとはいかないようだ。

SpaceXは以下のような発表文を出した。

運用を効率化するためにSpaceXはStarshipを南部テキサスの施設で開発中で、そこでテストも行う。この決定は、ホーソーンとヴァンデンバーグ空軍基地現在行われている製造、デザイン、発射のオペレーションには影響しない。加えて、SpaceXは再使用可能なFalconロケットやDragon宇宙船の回収作業を引き続きL.A.港で行う。

これは、彼らが古い(しかしまだかなり重要で実際に作業を行なっている)SpaceXのスタッフはホーソーンに維持するが、その他の卵はテキサスのバスケットで育てる、ということを柔らかく言っている。

アップデート:SpaceXの声明文では、文言としてはテストロケットがテキサスで開発される予定とだけあり、フルスケールのStarshipとSuper Heavyには言及していない。そうはいっても、大掛かりで専門的な機材や人員を要する建造、組み立て、テストをテキサスで行い、その後場所を移すことを想像するのはかなり難しい。また、文言通りであるなら、市議会の議員がそうした動きを「SuperHeavyをLA港から引き揚げる」と表現することはないだろう。

この件について、ホーソーンで続けようとしているStarshipとSuper Heavyに関する作業は具体的にどんなことなのか明確にするよう、SpaceXに問い合わせている。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)