TikTok買収はマイクロソフトを押しのけオラクル勝利との報道

エンタープライズサービスの大手であるOracle(オラクル)がTikTokの米国事業を買収する入札に勝ったという情報が入ってきた(Wall Street Journal記事)。いち早く入札に手を挙げていたMicrosoft(マイクロソフト)は負けたことになる。TechCrunchは、TikTok、オラクルの両社に取材しているが、まだコメントを得られていない。

Wall Street Journalの報道によれば、オラクルはまもなくと「TikTokの米国における信頼されるパートナー」となったことを発表するという。 またこの記事によれば、事情に通じた情報源が「おそらくストレートな買収にはならないだろうと述べた」という。

オラクルがTikTokの米国事業を買収したのが事実であれば、同社の将来が不確かだった期間も終わりを告げる。この契約は買収先が決まらない場合、トランプ政権が運営を禁止する期限とした9月20日よりもはるか以前に実現した。

9月13日、マイクロソフトは「TikTokの米国事業を買収する申し出は親会社のByteDanceによって拒絶された」と発表した。

マイクロソフトはこの声明で「我々の提案はTikTokのユーザーにとって最もメリットの大きいものだったはずだと確信している。米国の安全保障を守りつつ、セキュリティ、信頼性、フェイクニュース対策などについて抜本的な修正を行う予定だった」と述べている。

「このサービスが以上のような分野でどのように対処していくのか今後の成り行きに注目している」とマイクロソフトは述べている。

事実、セキュリティに関する懸念はTikTokをめぐる諸問題の中でも最も深刻なものだった。TikTokはインドで「国防と安全保障上の懸念」を理由として他の中国関係アプリ58種類とともに禁止されている。インドはTikTok最大の外国市場だった。マイクロソフトに加えて、Twittter、Google、Walmart(ウォルマート)など有力テクノロジー企業がTikTokの米国事業買収に手を挙げていた。しかしTechCrunchのRon Miller記者が指摘したとおり、 オラクルがTikTokの買収にこれほど熱心になるにはそれなりの理由があった。巨大な市場シェアだ。テクノロジービジネスの分析を手掛ける Constellation ResearchのHolger Mueller(ホルガー・ミュラー)氏がTechCrunchに説明したところによれば、どんなかたちにせよTikTokを確実なユーザーとして確保できれば、オラクルはインフラサービスとして極めて大きな利益を得るのだと言う

「TikTokのシェアはインフラサービスにとって非常に魅力的なものだ。またバイラルの効果が大きいことも見逃せない 。 マイクロソフトがTikTokを買収した場合売上に与える影響は2%から5%だろうが、オラクルの場合は10%のアップになる可能性がある」という。

エンタープライズサービス大手のオラクルが若者に人気のショートビデオプラットフォーム、TikTokを買収するという一見突飛な動きも、実は合理的な理由があったわけだ。しかしドラマティックな展開という印象は変わらない。

画像:Lionel Bonaventure / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

中国政府はTikTokの米国事業を売却せずに潰すかもしれない

世界中で人気を博しているショートムービーアプリTikTokの一部またはすべての事業を米国を拠点とする企業に売却することを強行しようとしていることで、中国のテックユニコーンであるByteDance(バイトダンス)の周辺が騒がしい。米国時間9月11日、中国政府がこの取引に反対する可能性があるとの報道を受け、売却話の先行きが不透明になりつつある。ロイターの報道によると、中国政府はTikTok事業を米国企業に売却するのではなく、米国事業を閉鎖することを望んでいる可能性があるという。

TikTokの売却の可能性は、通常のビジネス取引ではない。ドナルド・トランプ米大統領の執行権限で対外経済政策を指示しているため、この取引は米国政府によって要求されているものだ。トランプ大統領は、自身のビジネスセンスを生かして、最終的な売却価格の一部を政府が受け取れるように要求している。この考え方が合法かどうかは不明である。

米国と中国が経済的にも政治的にも覇権を巡って世界中で争う中、今回の取引は両国の間で企業が入り乱れていることが浮き彫りになっている。ByteDanceは、マイクロソフト、Wallmart(ウォルマート)、実現度の差はあるががOracle(オラクル)などの企業と一緒にこの争いに巻き込まれている。トランプ政権は取引成立のタイムラインを9月中旬に設定しているが、月日が経つにつれ、そのタイムラインに間に合うかどうか暗雲が立ちこめてきた。

ちなみにTikTokの事業売却は、インドが他の数十本の中国ベースのアプリを禁止したあとの話で、中国の影響力を抑制する措置を講じているのは米国だけではない。この取引は、中国の規制の変化からも圧力を受けている。中国の独裁的な指導者が輸出ルールを変更して、TikTokの取引を制限したり、売却を中止したりする内容が含まれる可能性がある。

ByteDanceにとって、この状況は悪夢のようなものだろう。主導権を握るマイクロソフトにとっては、この取引は気の進まないもので、完全に納得できるものではないかもしれない。一方トランプ政権にとっては、パワープレーの試みである。そして、権威主義化が進む中国政府にとっては、この取引は服従のように感じるかもしれない。このため、もし取引がなんとかまとまったとしても、それは予想外というよりも驚きの結果になるだろう。

画像クレジット:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

TikTokがアカウント乗っ取りにつながるAndroidアプリのセキュリティバグを修復

TikTokが、ユーザーアカウントの乗っ取りにつながる可能性があるAndroidアプリの4つのセキュリティバグを修正した。

アプリのセキュリティに関するスタートアップであるOversecuredが発見したその脆弱性は、同じデバイス上の悪意あるアプリが、TikTokアプリの内部からセッショントークンといった機密ファイルを盗むことを可能にしていた可能性がある。セッショントークンは、ユーザーがパスワードを再入力することなくログインするための小さなファイルだ。これのトークンは、攻撃者がパスワードを知らなくてもユーザーのアカウントにアクセスさせることができる。

悪意あるアプリは、その脆弱性を利用して悪意のあるファイルを脆弱なTikTokアプリに注入しなければならない。ユーザーがTikTokアプリを開くと、その悪質なファイルが起動し、悪意のあるアプリはセッショントークンにアクセスし、それをバックグラウンドで気づかれることなく攻撃者のサーバーに送ることができる。

Oversecuredの創業者であるSergey Toshin(セルゲイ・トーシン)氏がTechCrunchに語ったところによると、その悪意あるアプリはTikTokアプリ権限も乗っ取り、Androidデバイスのカメラやマイク、写真やビデオなどのプライベートデータにアクセスする可能性もあると語った。

Oversecuredのウェブサイトには、このバグに関する技術的な詳細が掲載されている。

TikTokによると、Oversecuredから報告を受けた後、2020年初めにそのバグを修復したという。

「業界で最も安全なプラットフォームを構築するために現在行っている取り組みの一環として、私たちは常にサードパーティと協力してバグの発見と修復に努めている。問題のバグはユーザーが悪質なアプリを自分のAndroidデバイスにダウンロードしなければ無害だが、私たちはそのようなバグも修復した。この問題を私たちに報告し、私たちが修復できるようにしてくれた研究者に感謝するとともに、すべてのユーザーにアプリの最新バージョンをダウンロードするようお勧めする」とTikTokの広報担当者であるHilary McQuaide(ヒラリー・マッケイド)氏は述べている。

バグのニュースは、数日後に予想されていたTikTokの禁止が発効する直前に入ってきた。トランプ政権は2020年初めにこのビデオ共有アプリを、中国との関係を理由に国のセキュリティへの脅威であると宣言していた

TikTokの親会社で北京にあるByteDanceはその主張を否定し、連邦政府を訴えてその申し立てに対抗している。

中国でアクセスできないTikTokは、「ユーザーデータを中国政府に提供したことはないし、求められてもそれはしない」と語っている。

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カテゴリー:セキュリティ

タグ:TikTok Android ByteDance

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TikTokの米事業売却の期限延長はない、とトランプ大統領が釘を刺す

Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領は米国時間9月10日、中国企業ByteDance(バイトダンス)がTikTok(ティクトク)を売却する2020年9月20日という期限は延長しない、と述べた。交渉に圧力をかける発言だが、買い手と合意に至らなければTikTokは米国で使用できなくなる。

「どういう結果になるか直にわかる。閉鎖するか、売却するかだ」とトランプ大統領はアンドルーズ空軍基地で大統領専用機に搭乗する前に語った(CNN記事)。売却が複雑であることを受けて、一部のアナリストは売却期限が延長されるのではないか、との見方を示していた(BARRON’S記事)。

トランプ大統領は2020年8月、ByteDanceが「米国の国家安全を脅かす動きをとるかもしれない」という「信頼できる証拠」があると主張して大統領令に署名した。ByteDanceはTikTok売却でMicrosoft(マイクロソフト)と交渉した。他のいくつかの米テック大企業も、人気ビデオ共有アプリを所有するByteDanceと交渉に入ったと報道された。しかし売却を妨げるかもしれない要素も浮上した。

Z世代で最も人気のあるソーシャルメディアアプリの1つとしてTikTokは大きなユーザーベースと価値を有しているにも関わらず、買い手にとってその魅力を損なうようないくつかの問題がある。

例えば、TikTokを含むByteDanceのアプリで使用されているソフトウェアコードは、北京にあるByteDanceの本社でエンジニアやデベロッパーによって開発されている。これにより、ByteDanceからTikTokの切り離しは技術面でかなり複雑なものになっている。もう1つの問題は、中国政府が2週間前に改定し、人工知能技術にも適用されるようになった輸出規制法だ。TikTokでは、AIベースのアルゴリズムによってユーザーの関心や閲覧履歴に基づいて新たなコンテンツを表示する。これがTikTokの価値ある部分であり、成功の秘訣だ。中国商務部が輸出規制法の改定を行った後、ByteDanceは新規制を「厳密に守る」と述べたが、これはTikTokのパーソナライズしたレコメンデーションとAIベースのテクノロジーを事業売却に含めることができなくなる可能性があることを意味し、そうなると買い手にとっては魅力が薄れる。

マイクロソフトに加えて、TikTokの買収にはTwitter(The Wall Street Journal記事)やGoogle(The Wall Street Journal)、Oracle(CNBC記事)といった大手企業が名乗りを上げている。Walmart(ウォルマート)すらもマイクロソフトとの提携という形での買い手候補だ

TikTokのセキュリティも、いくつかの国で調査対象となっている。例えばTikTokは「国家安全・防衛上の懸念」があるとしてインドで禁止された一連の中国企業アプリの1つであり、フランスのデータセキュリティ監視当局CNILによる査察も行われている

TikTokはそうした主張に対抗している。2020年8月に同社はトランプ政権を提訴し、8月24日付の声明で「TikTokが国家安全上の脅威だという政権の姿勢に強く反対する」と述べた。

声明の中でTikTokは、データを米国とシンガポールに保存し、またTikTokの米国ユーザーのデータとDouyinのようなその他のByteDanceのプロダクトのデータを分けることで「TikTokユーザーのデータのプライバシーと安全を守るための並々ならぬ対策をとってきた」と述べた。

ByteDanceのDouyinアプリの海外版であるTikTokは2017年以来、インターネットカルチャー、特にZ世代の間で確固たる地位を築いた。米国だけでユーザー1億人を抱え、1500人を雇用している。

Instagram(インスタグラム)を含むいくつかのアプリは似たようなショートビデオ共有機能でTikTokの代わりになろうとしているが、リードするようなサービスはまだ出てきていない。実際、分析会社Sensor Towerの新たなレポートは、TikTokが2020年8月に非ゲームアプリとして世界で最も多くダウンロードされ、6330万回以上インストールされたと指摘している。TikTokユーザーはかなりこのアプリにはまっており、VPNプロバイダーのExpressVPNでは、米政府が2020年7月にTikTok禁止を検討していることを明らかにしてからトラフィックが急増した。

一部のサイバーセキュリティ専門家は、TikTokのデータ収集プラクティスは広告収入に頼っている他のソーシャルメディアアプリと似ている、と話す。しかし、中国企業が所有しているがゆえに、中国政府のデータ要求に屈することを余儀なくされえるかもしれない、ということが大きな懸念となっている。中国のサイバーセキュリティ法はByteDanceのような中国企業に政府のユーザーデータ要求に従うことを求めている。ByteDanceは中国政府がTikTokユーザーデータにアクセスすることに抵抗する、と述べていた。

TikTokに関するセキュリティの懸念はまた、ウォールストリートジャーナル紙の8月の報道後に高まった。その内容は、MACアドレスと呼ばれる識別番号を含め、アプリがユーザーから収集できるデータの量を制限するためのAndroidオペレーティングシステム機能を回避しているというものだ。同紙によると、TikTokは11月に識別番号の収集をやめたが、調査によりTikTokのユーザープライバシー保護に関する疑念が出てきた。同紙へのコメントで、TikTokは「他の同種のアプリ同様、当社は絶えず出てくるセキュリティの問題に対応するために常にアプリをアップデートしている」と述べた。

反TikTokの姿勢をとっているのは共和党員だけではない。報じられたところによると、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏の選挙陣営は2020年7月、スタッフに仕事用とプライベート用のデバイスからTikTokを削除するよう求めた。

米政府がTikTok調査に本腰を入れたのは、Charles Schumer(チャック・シューマー)上院議員(民主党、ニューヨーク州選出)と、Tom Cotton(トム・コットン)上院議員(共和党、アーカンソー州選出)が当時のJoseph Maguire(ジョセフ・マグワイア)米国家情報長官にTikTokが米国のユーザーのデータを中国当局に提出することを強制されるかどうかを調べるよう求めたことに端を発している。

TikTokの広報担当はTechCrunchに電子メールで送られてきた声明の中で、「当社はエンターテインメント、自己表現、コネクションのホームであるがゆえに1億人もの米国の人から愛されている。当社はあらゆる家庭に喜びを、当社のプラットフォームで制作する人に将来にわたって意義あるキャリアを引き続き提供することを約束する」と述べた。

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カテゴリー:セキュリティ

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画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

TikTokは今ユーザーの「レコメンド」ページから悪質なビデオを排除中

自殺をしようとしている男の、おぞましいビデオが今週初めにTikTokで拡散し、同社は現在もその削除に追われている。最初はFacebook Liveに投稿されたその動画は、週末にかけてTikTokにアップロードされ、ユーザーレコメンデーションのアルゴリズムに根を下ろし始めた。

このビデオはFacebook(フェイスブック)から飛び出したが、その後一部のTikTokユーザーが互いに関連のない複数のビデオに分割し、「For You(レコメンド)」のページにたまたま現れたのを見てしまう人が出てくるようになった。TikTokでは「For You」ページがアプリを立ち上げると最小に表示され、各ユーザーのためにアルゴリズムが選んだコンテンツが掲載される。

「米国時間9月6日の夜に、最初はFacebook上でライブでストリーミングされたクリップが、TikTokなど他のプラットフォームに広まった。弊社のシステムおよびモデレーションチームは、自殺を表示、賛美、賞賛、あるいは宣伝しているコンテンツに対する弊社のポリシーに違反しているとして、これらのクリップを検出し削除してきた」とTikTokの広報担当者は声明で述べている。

TikTokは今後、そのクリップを複数回、アップロードしようしたすべてのアカウントも停止する。同社は、報告してくれたコミュニティメンバーに謝意を表明し、TikTokのアプリ内と同社の安全性ハブ(TikTokリリース)でメンタルヘルスのホットラインを利用できることを広く宣伝した。過激な動画を目にしたために、実際にメンタルヘルスの問題を抱えてしまうユーザーも年齢を問わず存在している。今回は特に悪質だ。

リアルに行われている生々しい暴力シーンがライブ配信されることに、ソーシャルネットワークは何年も前から悩まされてきたが、未だにそれらを利用者の目に触れないようにする有効な対策はない。2019年にニュージーランドのモスクで大量銃撃が配信された(未訳記事)後、フェイスブックはルールに違反した者たちにFacebook Liveの使用を禁じた(Reuters記事)。しかしそのルール変更は、自らの自殺をライブ配信する者を止めることができなかった。

TikTokのコミュニティは動画の拡散を取り締まろうと、フォロワーたちにその動画に対する警告を行った(TikTok投稿)。動画冒頭には、デスクに向かってスマホを持って座ってる長髪でヒゲのある男(Twitter投稿)が映し出される。TikTokによるその動画の排除が完了するまでは、知らないユーザーの動画は観ないほうがいいだろう。

あなたや友だちが心の悩みで助けを求めているときは、National Suicide Prevention Lifeline at 800-273-TALK (8255)(全国自殺防止相談センター)に電話またはCrisis Text Line at 741-741(緊急テキストライン)にテキストメッセージをしよう。日本在住の方はこころの健康相談(0570-064-556)に電話しよう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SnapchatがTikTok不安に乗じて8月絶好調、当月だけで2850万回インストール

TikTok(ティクトック)の将来に関する長引く不安が、8月のSnapchat(スナップチャット)に大きな恩恵をもたらしたかもしれない。あるいはバイラルに広がった、目をディズニー風に変えるフィルター(PopSugar記事)のおかげなのか。いずれにせよ、アプリストア調査会社のSensor Tower(センサータワー)の暫定データによると、SnapchatのモバイルアプリはiOSとAndroidを合わせて8月だけで2850万回インストールされた。これは2019年5月に4120万回インストールされて以来の月間記録だ。

ただし、2019年5月はSnapchatの歴史では例外的だった。2019年5月以外に今年8月の月間ダウンロード数を超えたのは2016年12月だけだったことをSensor Towerのデータは示している。

同社の調査によると、Snapchatのダウンロード数は2020年8月に対前年比29%増を記録し、前月比も9%増だった。どんなトレンドの組み合わせがSnapchatに先月のダウンロード数をもたらしたのかはよくわからない。

しかし、今ソーシャルアプリ業界の関心が集中しているひとつの話題は、米国でのTikTok禁止の可能性にまつわるニュースだ。禁止に関するニュース報道はすでにここ数週間のアプリストアランキングに明白な影響を与えている。8月にTikTokの直接の競合アプリである、Likee、Byte、Dubsmash、Trillerなどの米国の週間アクティブユーザーは明らかな増加を見せた。しかし、トランプ氏の大統領令で中国製ビデオアプリが実際に米国から追放されたとき、はっきりとTikTokに取って代わるであろう製品は出てきていない。

TikTokの直接ライバルではないSnapchatも、短尺ビデオアプリを好む同じ若者層を引きつけようとしている。今月Snapchatは、TikTokユーザーへのアピールを狙う新しい音楽機能をスタートさせる計画を発表した。今秋開始予定の同機能を使うと、ユーザーはTikTokと同じように動画に音楽を付加できるようになる。Snapは、Warner Music Group、Warner Chappell、Univerasal Music Publishing Group、NMPAメンバーのMerlinなどといった音楽業界のトップパートナーと各社のコンテンツをSnapchatアプリで使用するライセンス契約を結んだことを発表した。

画像クレジット:TechCrunch(App Storeのスクリーンショット)

Snapchatは7月にも新機能の「Minis」を公開(未訳記事)した。これはSnapchatのチャット画面で動作する一連のミニアプリだ。HTMLを使ってつくられたアプリは、チケット購入やHeadspaceを使った瞑想、友だちとのコラボレーションなどをアプリを離れることなく行える。

SnapchatはApp Storeの目立った位置にいることの恩恵も受けている。アップルは今、App Storeの「App」画面に「New to iPhone?」と名付けた編集者の集めたお勧めアプリを掲載している。ここでは初めてのiPhoneユーザーがダウンロードしたがるお勧めアプリの一覧を、スクロールダウンすることなく見ることができる。

ダウンロード数増加の理由としてほかに考えられるのが宣伝費の増加で、大型アプリの提供元ではよくあることだ。ただしSnapchatは8月に何を変えたかについて具体的にコメントしていない。

さらに言ってしまえば、 #disneyfilterのタグを付けられた6640万本のTikTokビデオが、8月のSnapchatに幸運をもたらしただけかもしれない。

Sensor Towerの最新Snapchatデータは暫定値とされており、これは8月26日までのデータしか対象になっていないためだ。8月の残りの日々が算入されれば結果は多少変わるかもしれないが、あってもごくわずかだろう。

なお上記の数値は当初Sensort Towerのフィナンシェサービスユーザーの1社がアナリストノートの中で報告したもの(Benzinga記事)で、Sensor Towerのデータレポーティングチームは公表していない。しかし、同社はTechCrunchにデータは正確であると確認した。

Snapchatは7月のQ2決算時点で、1日当たりアクティブユーザー数2億3800万人で4月の2億2900万人から4%近く増加したことを報告(CNBC記事)した。新規ダウンロード数についてはコメントしていない。

画像クレジット:Denis Charlet / AFP / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokの親会社ByteDanceは中国の輸出管理規制に「厳密に従う」と表明

中国政府は、Huawei(ファーウェイ)に対する米国政府のプレッシャーに繰り返し声高に反対している一方で、TikTok(ティクトック)がこのところ米国で困難な状況に陥っていることについては比較的静観している。しかし人気のビデオアプリTikTokの米国事業売却が近づき、中国当局は売却をより複雑なものにする予想外の動きに出た。

米国時間8月28日夜、中国商務部は安全保障貿易管理に人工知能(AI)テクノロジーを含めるためにカテゴリーをアップデートした(中国商務部リリース)。AIはTikTokを含むByteDance(バイトダンス)のプロダクトの要だ。TikTokはカスタマイズされたコンテンツが機械的に表示されることで人気を高めてきた。8月29日、中国国営通信社の新華社通信は、アップデートされたルールはByteDanceに適用されうるという学者Cui Fan(クウィー・ファン)氏の言葉を引用した(新華社通信記事)。クウィー氏は進行中の取引を抱えている企業に対し、「関連する手順を伴う交渉と取引を中止する」ことをアドバイスした。

8月29日夜、TikTokの親会社ByteDanceは新たなテクノロジー輸出ルールに「厳密に従い」、「関連する輸出事業」を管理するという声明を出した。

新たなルールはTikTokのディールを明確にターゲットにしているわけではないが、このタイミングは興味深い。ByteDanceが中国外で最大のマーケットから追い出される期限のわずか数週間前だ。中国の大学で国際ビジネス・経済学の教授であるクウィー氏によると、パーソナライズされたレコメンデーションやAIで動くインターフェーステクノロジーの輸出が新ルールで規制されているため、ByteDanceが進めているTikTok売却は障壁にぶつかる可能性がある。

TikTokの売却は、中国の通商規制の前から技術的な面ですでに複雑なものになっている。The Informationが指摘したように、北京を拠点とするByteDanceのエンジニアやデベロッパーは、TikTokを含む傘下のアプリの全ソフトウェアコードを提供している。これは中国のテック部門で「中央プラットフォーム」として知られる戦略だ。生産性を高め、また余剰のリソースを最小限にするとされていて、Alibaba(アリババ)やTencent(テンセント)の多くの事業の基盤を支えている。そのため、中国の親会社からTikTokを切り離すことでアプリのオペレーションが短期的にはほぼ崩壊する恐れがある。

多くの中国人ネットユーザーが、米国のプレッシャーに降参しているとしてByteDanceのCEO、Zhang Yiming(張一鳴、チャン・イーミン)氏を厳しく非難してきた。米国は国家安全保障上の脅威だとしてTikTok売却を命じた。一部の人は世界で最も価値の大きなスタートアップであるByteDanceの最高責任者を「裏切り者」呼ばわりさえしている。そうした人々はチャン氏をHuaweiの最高責任者Ren Zhengfei(任正非、レン・ジェンフェイ)氏と比較する。任氏の米国による制裁への対応はより攻撃的だった。

中国政府がTikTokの交渉にさらに介入するのかは不透明だ。米国の業界ウォッチャーは、今回のケースがHuaweiのものとは異なると指摘している。Huaweiの5Gテクノロジーは中国が米国と展開する競争の焦点であり、Huaweiは中国国内の製造業で直接・非直接的に多くの雇用を創出してきた。欧米のインターネットにかなり浸透しているとはいえ、ByteDanceは置き換えが可能で、狭いレンジのエリート人材に頼っているソフトウェアを開発している。

TikTokアプリのダメージは、このアプリによって生計を立てているマーケッターからの苦情につながるかもしれない。しかし、トランプ大統領のWeChatとの取引禁止命令で見られる企業抵抗のようなレベルとはおそらくならないだろう。WeChatの件では、Apple(アップル)、Walmart(ウォルマート)、Disney(ディズニー)がホワイトハウスと協議している。

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カテゴリー:ネットサービス

タグ:TikTok ByteDance

画像クレジット:Zhang Yiming, founder of Beijing ByteDance Technology Co. Photographer: Giulia Marchi/Bloomberg via Getty Image

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(翻訳:Mizoguchi

TikTok買収はマイクロソフトにTwitter、ウォルマート、オラクル、Trillerまで参戦してバトルロイヤル状態

TikTok(ティックトック)に差し迫る運命について洪水のように流れる報道についていけないと思うなら、私からアドバイスがある。ついていく必要などまったくない。ごらんの通り投資史上まれに見るドタバタ劇なのだからありのままを楽しめばいい。

安売りで知られるWalmart(ウォルマート)が参戦したのも面白いが、Oracle(オラクル)はB2Bの本業とTikTokの買収にどのようなシナジーを考えているのやら。Z世代をエンタープライズソフトウェアに惹き付けようという戦略だろうか?Trillerの参戦は(はてTrillerってどんな会社だっけ?、辺境の氷の惑星ホスに所在するらしい)アセットマネージメント企業をバックにしている(Bloombrg記事)という。ともかくBloombergの記事によればCentricustという会社だそうだがTikTokは断ったらしい(Nasdaq記事)。Twitterも手を挙げているという。Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏はソーシャルネットワークの拡大に関する戦略的助言を(ヨットクルーズ仲間の)ビヨンセから得ているのだろう(Vulture記事)。

ソフトバンクが買収を考えているのは間違いない(The Information記事)。同社はグループのモバイルネットワーク事業の株式、140億ドルを売却すると発表(Wall Street Journal記事)として人々を驚かせた。同グループにとって幸いな点は、TikTokの株価下落(少なくともその大部分)は投資する前に起きたことだ。

すべてて意味不明な話だが、そういうならTikTok自体が意味不明だ。TikTokに流れているビデオも会社の急成長ぶりも、確固たる理由がわからない。大統領がいきなり設定した売却期限の根拠もよくわからない。どういう手続なのかも不明だ。TikTokのような大企業を45日のうちに売るなどできっこない。 新型コロナウイルスの感染蔓延で安売りの石鹸が必要な消費者が多くなれば別だろうが、ウォルマートはニューヨーク市に嫌われており、いまだに出店ができずにいる。

私は2週間ほど前に TikTok買収関連の噂を煽っているのは投資銀行(未訳記事)だと指摘した。これは今でも正しいと思っている。我々はM&A銀河系の外れまでやってきており、TikTokの価値下落で痛手を被った投資銀行は躍起になって買収金額を釣り上げようとしているからだ(本艦はまもなくCentricus惑星系に突入する!)。

こういう次第なので、ここ1週間ほどはアナリストの帽子を脱ぎ道化師の衣装を着たほうがいい。TikTokの株式を持っていたり買収によってひと儲けを狙っていたりするのでなければこの一幕は大いに楽しめるはずだ。

新型コロナウイルスの感染蔓延も都市における社会的正義の実現も重大な問題だ。大統領選挙も11月に迫っている。映画「ブラックパンサー」でトゥチャラ王を主演したChadwick Boseman(チャドウィック・ボーズマン)氏の訃報が伝えられた。ハリケーンの「ローラ」がメキシコ湾を北上している。戦後日本で在職機関の最長記録を作った安倍首相が健康上の問題から辞職すると発表した。こうしたニュースのほうがTikTokをめぐるから騒ぎよりはるか大きな重要性がある。

TikTok問題については経済面をざっと眺めてあーなるほどと思う程度で十分だ。

一連の騒動は後日、もしかするとこの物語全体が次の偉大なビジネス書「Barbarians at the Gate」(門前の野蛮人)になるかもしれない。しかし、少なくともこの「野蛮人」は、適切なレベルの負債レバレッジで会社を破壊する方法を知っていた。そこにあるのは、ある案内係がもたらしてくれた会社が入札している、以前くすぶっていた事業の残骸を見ることができる。

どういう結果になろうと、順当にいけばマイクロソフトが買収に成功するだろうが、TikTokに流れている何百万というティーンエージャーの不器用なダンスのショートビデオと市場のアナリストの貪欲かつこの上なく真剣な目つきの対照は今の多難な時期にあたって思わず笑いをさそう光景だ。こういう息抜きを提供してくれた点については多いに感謝している。

画像:Jose A. Bernat Bacete / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米小売大手のウォルマートがマイクロソフトと組んでTikTok買収に参戦

ショートムービープラットフォームのTikTokに関するニュースの洪水は止む気配がない。

まず、100日前にTikTokにやってきたばかりの元ディズニー幹部のKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏がCEOを辞任したというニュースが飛び込んできた。

すでに売却をめぐるニュースは数多く報道されているがさらに米小売大手のWalmart(ウォルマート)もTikTok買収に参戦したことが判明した。 同社は複数のメディアの取材に対してMicrosoft(マイクロソフト)とチームを組んで買収を目指している(CNBC記事)ことを明らかにした。一方エンターテインメント関係ニュースのサイトでるThe Wrapは、Oracle(オラクル)がTikTok買収に200億ドル(約2兆1300億円)前後を提示したと報じている。

トランプ政権がTikTokを米国の安全保障に対する脅威として売却を命じて以後、同社はメディアの注目を一身に集めることになった。米国時間8月6日、トランプ大統領はTikTokの親会社である北京のByteDanceに対し「米国におけるTikTok事業の閉鎖を免れるためには45日以内に同社を売却する必要がある」とする大統領行政命令に署名した。この期限は後に11月中旬にまで延長された(The Verge記事)。

この命令はテクノロジー分野以外でも米中関係の緊張が大きく高まっている中で発せられた。対中国関係を悪化させた要因は、中国が治安維持を理由として香港に国家安全法を適用したこと ウイグルにおける数百万のムスリム住民の強制収容(New York Times記事)、関税、軍拡、南シナ海における領有権主張(ABC News記事)、さらには新型コロナウイルスの感染蔓延が中国発であることを否定したことなど数多い。

テクノロジー企業はこの2つのスーパーパワーの対立に巻き込まれた。TikTok問題の前にも米国政府は中国のファーウェイに対する制限を一段と強めていた(ロイター記事)。

大統領行政命令に対しTikTokは「命令には根拠がない」として裁判所に差し止めを申し立てるなど全力で反撃を始めている。一方米国のテクノロジー企業数社が買収に関してTiktokと話し合っていると報じられた。これにはマイクロソフトを筆頭に(未訳記事)、Twitter(Wall Street Journal記事)、Google(Wall Street Journal記事)、オラクル(未訳記事)が続いた。そして最新の参戦がウォルマート(CNBC記事)というわけだ。オラクルは8月27日午前中に「買収にあたって現金10億ドル(1060億円)とオラクル株式10億ドルぶんを用意し、買収後は同社の利益の半額を親会社のByteDanceに送金するという条件でホワイトハウスの了解を得られる見込みだ」(The Wrap記事)と報じられた。

TikTokアプリが米国の安全保障にとってどれほどの脅威になっているのか実際のところはまだ不明だ。行政命令はこの中国製のアプリが「合衆国の国家安全保障、外交政策及び経済活動に対する脅威」となっていると述べている。その根拠としてアプリが位置情報、インターネット閲覧履歴、検索履歴を含む米国市民の個人情報を収集していることを挙げている。批判者はTikTokは中国共産党による米民の個人情報の収集だけでなく、プロパガンダと検閲のツールとしても役立っていると指摘する。

TikTokアプリは最近米国で急成長を遂げ、ショートムービーの分野で驚くべきシェアを集めている。これは、例えば7月の下院司法委員会の反トラスト法公聴会でCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が「Facebook は独占ではない」と主張したが、その根拠としてTikTokを挙げたほどだ。

アプリ情報の分析会社のSensor Towerによれば、TikTokは米国だけで19400万回近くダウンロードされている。これは中国版の抖音(Douyin)を含めて世界におけるダウンロード数の8.2%にあたる。また8億4000万ドルの総収入のうち米国は13%、1億1100万ドル占めているという。

同じくアプリ情報分析会社のApp Annieのデータによれば、TikTokは8月9日から15日までの1週間のアクティブユーザー数は5200万人だったという。アクティブユーザー数は上昇中で、7月15日から25日の週は2020年初めの数字と比較して75%もアップしていた。実際にTikTokはApp Storeの第2四半期で世界ベースで最大収入を得たアプリとなっている。利用時間の急増には新型コロナウイルスの感染蔓延で多くのユーザーが外出を制限されことが大きな影響を与えているのだろう。App StoreでもGoogle  PlayストアでもTikTokは常に5位以内を占めてきた。

アプリの利用時間も間違いなくアップしている 。2018年8月の月間利用時間が5時間4分だったのに対し、2019年12月には16時間20分へと急増している。

こうした大成功にもかかわらず当社の今後は予測しにくい。同社は訴訟に注力する必要があるし、同時に買収にあたって米国の規制当局から承認を得なければならない。また大統領選挙が激しく戦われている時期にあたってユーザーからの信頼を繋ぎ止めるのも重要だろう。TechCrunchでも新しい情報が得られ次第、記事をアップデートしていく。

画像:Lionel Bonaventure / AFP/ Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

TikTokのCEO・ケビン・メイヤー氏が就任100日余りで辞任

TikTok(ティクトック)のCEOを務めていたKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏が8月26日に辞任を表明した。元ディズニーの幹部が世界最大の短編ビデオアプリに加わった5月中旬(未訳記事)から100日余りしか過ぎていない。

このニュースは、TikTokが来たるべき禁止令を巡り米国政府を訴訟した直後に報じられた。中国の新興インターネット企業であるByteDance(バイトダンス)傘下のTikTokは、同アプリが米国の国家安全に脅威をもたらすと主張する米国政府の中国政府との緊張の真っ只中にいる。

8月6日にドナルド・トランプ米大統領は「もしByteDanceがアプリの米国内事業を売却しなけれはTikTokを閉鎖する」という大統領令発動に署名した。TikTok事業の売却は11月中旬まで猶予がある。

「過去数カ月の政治力学がメイヤー氏の役割の範囲を大きく変えたことを認識しており、会社は同氏の決断を全面的に尊重する。同社でともに過ごした時間に感謝するとともに今後の活躍を祈る」とTikTok広報担当者がTechCrunch宛ての声明で語った。

New York Timesによると、メイヤー氏は従業員に宛てたメモで自身の決断を発表し、TikTokの中国とのつながりに関してトランプ政権から圧力を受けてきたことを伝えた。「TikTokが中国と米国の緊張にここまで巻き込まれるとは予想していなかった」と情報筋はFinancial Times(フィナンシャル・タイムズ)に語った。

報道によると、TikTokの現ゼネラルマネージャーであるVanessa Pappas(ヴァネッサ・パパス)氏が暫定CEOに就任する。

迫りくるTikTok売却の噂は世界中の投資家の関心を誘い、Microsoft(マイクロソフト)が買収の意志を表明しているほか、予想外なところではOracle(オラクル)も名乗りを上げている。

画像クレジット:Photo by Jesse Grant/Getty Images for Disney

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokのライバル「Triller」が音楽ストリーミングサービスのJioSaavnと提携してインドに積極進出

TikTok(ティクトック)と同様の機能をもつアプリ、Triller(トゥリラー)は、インド最大の富豪が所有するプラットフォームと戦略的提携契約を結び、中国製アプリが禁止された最大の海外市場でひと儲けを目論む。

米国時間8月24日にロサンゼルスを拠点とするTrillerは、Reliance(リライアンス)傘下でインド最大の音楽アプリであるJioiSaavnと提携し、アプリのセンター位置にTrillerビデオを据える。

Trillerがいうところの「デジタルの大手2社による多くの発表の第1弾」の一環として、JioSaavnアプリはTrillerのビデオを作成できる「prominent」ボタンをメイン画面に設置すると同社は語った。

この発表は、インド政府がTikTokなど59の中国製アプリを禁止したことで生まれた空隙を埋めようと殺到する多数の地元スタートアップの動きに続くものだ。インド政府は2020年6月末に起きたサイバーセキュリティー問題を懸念して禁止を決めた。

TikTokの不在に乗じて稼ごうとする地元企業には、オンデマンドビデオストリーミングサービスのZee5、ニュース集約アプリのDailyHunt、Times Internetの音楽ストリーミングサービス、GaanaとビデオストリーミングのMX Playerなどがある。

インドの億万長者であるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏の所有するJioSaavnは、インド最大の音楽ストリーミングサービス(未訳記事)であり、ユーザー作成ビデオがもはや馬鹿げたアイデアではないことを示している。

Trillerは、JioSaavnにはインドで3億人以上のユーザーがいるといっている。私はそう思わない。2020年8月に同サービスのAndroidアプリは週間アクティブユーザーが3000万人に満たなかったと、インド有数のモバイル調査会社はいう。そしてJioSaavnのウェブサイトに掲載されている2カ月前のプレスリリースには、月間アクティブユーザー1億400万人と書かれている。

しかし、それよりも興味深いのはこの提携そのものだ。2020年8月初めに通信の巨人であるJio Platformsを運営するReliance Industriesは、TikTokのインドでの事業への投資についてByteDanceと検討を始めたJio Platformsは2020年に、Facebook(フェイスブック)をはじめとする10社ほどの投資家から200億ドル(約2兆1190億円)を調達し、JioTV、JioCinemaおよびHaptikなどのデジタルサービスを運営している。

JioSaavnの共同ファウンダーでCEOであるRishi Malhotra(リシ・マルホトラ)氏は、Trillerとの提携は「アーティストが最も革新的な方法で我々のカルチャーを作り、表現することを可能にする。我々はこの提携によって両社が飛躍的に成長すると信じている」と語った。

TrillerのエグゼクティブチェアマンであるBobby Sarnevesht(ボビー・サーネベシュ)氏も、この提携を喜んでいると声明で語っている。

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TikTokは来たるべき禁止令をめぐって米国政府を提訴する

TikTok(ティックトック)は、米国市場で同社の事業を禁止するというトランプ政権の判断を巡って、米連邦裁判所に提訴する構えだ。この禁止令に対して、TikTokは間もなく法的な異議を申し立てるとの報道は、米国時間8月24日の同社ブログにおける正式な訴訟の発表(TikTokリリース)を待つことなく、すでに先週末に駆けめぐっていた(CNBC記事)。TikTokは、証拠もなく適正な手続きも経ずに発行されたことを理由に、Donald Trump(ドナルド・トランプ)氏の大統領令に対抗する考えだ。

「TikTokが国家の安全保障上の脅威であるとする政権の立場に、私たちは強く反対します。こうした反対意見は以前から訴えてきたものです」とブログ記事には書かれている。

この懸念に関して、これまで重ねてきた努力をトランプ政権は無視しているとTikTokは訴える。事実、トランプ氏は同アプリが中国政府とつながっているため国家安全保障上の脅威だと公言している。

TikTokはさらに、米国ユーザーのデータは、中国国外である米国とシンガポールのサーバーに保管して守っていると主張している。ソフトウェアによる障壁を設け、TikTokの中国の親会社であるByteDance(字節跳動、バイトダンス)が運営する製品とは確実にデータを分離しているとも話している。

この訴訟ではまた、2007年にByteDanceが後にTikTokとなるMusical.ly(ミュージカリー)を買収した際に実行されたCFIUS(対米外国投資委員会)による国家安全保障審査を通じて、すでに米国政府はTikTokの活動を把握しているとも指摘している。その審査の一環として、米国政府はTikTokが書類で示した安全保障対策を調査し、取引の推進を許可する結論を出している。

しかし目下の問題は、TikTokが主張していることではない。たとえTikTokがデータの保管場所などを示したとしても、それだけでは十分ではないと評論家たちはいう。懸念は、中国がByteDanceなどのテック企業に対して要請があればすべてのデータを中国政府に引き渡すよう命じた中国のサイバーセキュリティー法(Vox記事)に関するものだ。事実これは、党派を超えて米国議会が危惧する問題(Vox記事)でもある。1つ例を挙げるならば、Joseph Biden(ジョー・バイデン)氏の選挙事務所では、スマートフォンからTikTokを削除するようスタッフに求めた(CNN記事)。

TikTokはその懸念に対して、経営幹部は中国の法律が及ばない米国人で固めていると指摘し反論している。幹部にはCEOのKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏、グローバル最高セキュリティー責任者(TikTok News記事)のRoland Cloutier(ローランド・クルーティエ)氏、そして相談役(PR Newsroom記事)であるErich Andersen(エリック・アンダーセン)氏らが名を連ねる。しかも、同社の米国向けコンテンツのモデレーションは、中国から独立した米国独自のチームで行われていると同社は強調している。

大統領令に対する異議申立においてTikTokは、トランプ氏の大統領令は米国際緊急経済権限法(IEEPA)の要件を満たしていないと訴えている。この法律は米国政府は「異例で重大な脅威」と認められた活動の禁止を許可するものだ。

(事前、事後に関わらず)いかなる通知も聴取の機会もなくTikTokを禁止すれば、この大統領令は、法の適正な過程を求めた米国憲法修正第5条に違反します。真正な国家安全保障を根拠としておらず、「異例で重大な脅威」を示していない活動の禁止を許可するという点において、この大統領令は権限踰越となります。

またTikTokは米国政府に対して、禁止されたなら、同社が米国に創出してきた1万件(Reuters記事)、さらに今後3年間に拡大される雇用が失われると訴えている。TikTokの従業員たちも、この禁止令への独自の異議申立(CBS News記事)を行う計画であるとも伝えられている。

この数日、同動画アプリのメーカーは、禁止令に対抗するためにさまざまな方面で対策をとっている。

先日、TikTokは一般向けに情報発信ハブを立ち上げた(未訳記事)。そこでは、アプリやデータのプライバシーに関する質問に答えている。これは「記録を修正する」ための取り組みだと同社は話している。だが、こうした努力とは裏腹に、TikTokは米国ユーザーのデータを提出せよと中国政府に要請された場合、本当に断れるのかという不安が、まだある程度残されている。TikTokを米国に留らせるなら米国での事業を完全に取り上げるべきだと、禁止令を支持する人たちが主張するのはそのためだ。

さらに最近の報道は、TikTokが表明した約束に対して疑問を抱く理由を米国に与えている。例えばThe New York Timesの記事は、内部資料によると同アプリのユーザーの3分の1は14歳以下であると伝えている。これは児童オンラインプライバシー保護法が定めたガイドラインに、同社はどうやって準拠してきたのかという疑問を抱かせる。この法律により、TikTokは2018年に570万ドル(約6億円)の罰金を課せられている。児童のオンラインプライバシーに関して責任ある行動が取れないならば、他の問題にどう対処できるのかと同紙は疑問を投げかけた。

だがTikTok自身、現実にこの異議申立に実際に勝利しなくても、事業の存続は可能だとも考えている。2020年11月の大統領選挙でトランプ氏が敗れれば、新政権はTikTok問題に関して別の戦略を打ち出してくる可能性がある。大統領令の廃止すら夢ではない。

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(翻訳:金井哲夫)

マイクロソフトやオラクルはTikTokを買収して何がしたいのか

トランプ政権からの圧力を受けて、TikTokのオーナーであるByteDanceがこのショートムービーアプリを売りに出しているという話はすでに何度も聞いたことがあるだろう。そして、驚くべきことにいくつかの大手エンタープライズ企業が買収に興味を示している。これらの企業は一般的なTikTokユーザーを泣かせるような技術を持つことで知られている。マイクロソフトやオラクルが、TikTokを嗅ぎまわっているという話が続いているのだ。

TechCrunch記者のDanny Crichton(ダニー・クリクトン)が先週指摘したように、TikTokの買収価格を押し上げるために、この売却に関与する銀行家たちはメディアにさまざまな噂を流す動機がある。すべてが真実ではないかもしれないが、噂は消えない。なぜオラクルやマイクロソフトのような企業がTikTokの資産に興味を持つのだろうか?

まず第一に、オラクルはデータベースの会社として知られているが、最近ではマーケティングオートメーションやクラウドインフラストラクチャサービスなどさまざまな事業を手掛けている。新型コロナウイルスの感染爆発は始まったばかりの4月に、オラクルのクラウド部門がZoomとの提携を発表したときは皆を驚かせた。

オラクルは、クラウド・インフラストラクチャの市場シェアでは、ライバルのAWS、マイクロソフト、グーグル、アリババ、IBMの後塵を拝しており市場シェアに1桁台に落ち込んでいる。オラクルはTikTok買収により、この市場でより大きなプレーヤーになりたいと考えているのだ。

一方のマイクロソフトは、ほかの企業と同様にクラウドへの移行には成功しているが、クラウドインフラ市場ではAWSに大きく後れを取っている。AWSとの差を縮めたいと考えており、TikTokを所有することで、より早くその目標に近づける可能性がある。

調査会社のConstellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏によると「簡単に言えば、オラクルがZoomとTikTokを自社に取り込めば、2つの優れたサービスを手に入れることができます」とのこと。有名なショッピングモールがディスカウントチェーン大手のTargetとデパートチェーン大手のNordstromを誘致するのと同様に、Oracleも自社のクラウドサービス2つの人気サービスを取り込もうとしている。

「TikTokは、各社のインフラサービスの利用率を押し上げるだろう。それこそが各社が望んでいることだ。もしマイクロソフトがTikTokを獲得すれば同社サービスの利用率は2%から5%増加する可能性があるが、オラクルなら10%増加する可能性がある」とミューラー氏。同氏によると、オラクルのユーザーベースは今ではずっと少なくなっているので、そのぶん利用率が上がるだろうという想定だ。

同氏が指摘するように、政府がTikTokの運営者であるBytedanceに事業売却を強く要請しているため、オラクルやマイクロソフトのような企業にとっては大きなチャンスだ。そのためこういった噂がたくさん出てくるのだ。「クラウドビジネスの観点からも、そして米国政府が作成したビジネス機会の観点からも買収は妥当だ」とミューラー氏は説明する。

顧客関係管理を事業とするCRM Essentialsの創業者でありプリンシパルアナリストであるBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、米国の大手テック企業がTikTokを買収することで、マイクロソフトやオラクルが獲得したいと考えているユーザーにとっては魅力が薄れる可能性があると指摘する。

「老舗エンタープライズ企業が買収すると、現在のユーザーのTiktokへの魅力が薄れてしまう可能性があります。若い人たちは、中高年の利用者が多いFacebookからすでに離れています」と同氏。そしてこの事実は、現在のプラットフォーム人気を支えている若いユーザーは、次の大きな社会現象にすぐに飛びつくことを意味する。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、米国時間8月19日にトランプ大統領がオラクルへの支持を示したことは注目に値する。WSJによると、オラクルの創業者で億万長者であるLarry Ellison(ラリー・エリソン)氏は、今年の初めに自宅で再選のための資金調達パーティーを開くなど、大統領の大物支持者だ。オラクルCEOのSafra Catz(サフラ・カッツ)氏も2016年に政権移行チームの一員として活躍し、政権とのつながりを持っている。

これらの企業が本当に関心を持っているかどうかは不明だが、一般的な感覚では、誰かがサービスを買おうとしており、誰が買おうと各社の保有資金の何%かを使用するだけで、ユーザー数の大幅なブーストを図ることができる。Twitterも買収に関心を持っている企業に上がっており、TwitterとTiktokという2大ソーシャルプラットフォームを統合にすることで、Facebookに直接的に競合するメガプラットフォームができるかもしれない。

IBMやグーグルのように、クラウドインフラの利用率を高めようとしているほかの大企業が参入してくるかもしれない。 もしかすると、アマゾンでさえ、そのリードを確固たるものにするためにオファーを出すかもしれない。ただし、この取引が米政府の承認を得なければならない場合、アマゾンCEOのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)とトランプ大統領との間の緊張した関係性により、アマゾンが買収する可能性は低くなるだろう。アマゾンは国防総省のJEDIクラウド契約で米政府と揉めたからだ。

アップルは、どの企業よりも多くの1930億ドル(約20兆4600億円)以上の現金を持っているにもかかわらず、TikTokの買収には明らかに興味を持っていない。アップル自体はそうかもしれないが、どこかの企業が興味持っていることは確かであり、中にはTikTokの資産を所有することを我々が想像できない企業もあるだろう。

画像クレジット:CHRIS DELMAS / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

FacebookがTikTokスタイルの動画フォーマットをインドでテスト中

Facebookはショートムービーに全面的に向き合っている。同社は、一部の市場でテストしたTikTokクローンのLasso(未訳記事)のアイデアに興味を持ち、最近ではInstagramにReelsと呼ばれる同様の機能を追加するなど、TikTok風のサービスを定着を狙っている。

同社はTechCrunchに、ユーザー数が最大の市場であるインドのFacebookアプリでショートムービーをテストしていることを明らかにした。現在は「Short Videos」はニュースフィード内に専用セクションに用意されている。その上には「Create」ボタンがあり、タップするとFacebookカメラが起動してユーザーはスワイプしてビデオを見ることができる。

Facebookの広報担当者はTechCrunchに「我々は常に新しいクリエイティブツールをテストしているので、人々がどのように自分自身を表現したいかを学ぶことができます。ショートムービーは非常に人気があり、我々は人々がFacebook上で、ショートムービーを作成・共有するためのサービスを提供するための新しい方法を探しています」と語る。

ソーシャルメディアコンサルタントのMatt Navarra(マット・ナバラ)氏が、新しいテストの存在を最初に発見した。

今回のテストは、ByteDance(バイトダンス)が所有するTikTokが6月末にインドでは使用禁止されている最中に行われた。FacebookはReelsをインドで先月ローンチ(未訳記事)、数週間後にはさらに数十の市場にローンチした。情報筋によると、インドでTikTokが禁止されて以来、インドでのFacebookのデイリーでのサービス利用率は25%以上増加したという。

Twitterの支援を受けているShareChatやTimes InternetのGaana、MX Playerのストリーミングサービスなど、インドの多数のスタートアップが、スタンドアロンアプリや統合機能をローンチし、ここ数週間でユーザーにさまざまなサービスを提供している。あるローカルアプリは、期間中に数千万人の新規ユーザーを獲得したと主張している。

まだテスト段階だが、YouTubeも同様の機能をここ数週間でインドのより多くのユーザーに展開している。

画像クレジット:TechCrunch

TikTokが市場に再参入する方法を模索している中、Facebookは同社のショートムービー機能をユーザーに可及的速やかに普及させることを狙っている。なぜならByteDanceは、インドのコングロマリットであるReliance Industriesと提携してTikTokのローカルビジネスの株式を売却する計画があるからだ。

画像クレジット: MANJUNATH KIRAN / AFP / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

インドで禁止中のTikTokについてByteDanceがインドのトップ企業Relianceと投資交渉中

ByteDance(バイトダンス)はTikTok(ティクトック)のインドでのビジネス支援に関して、Reliance Industries Limited(リライアンス・インダストリーズ)と交渉している。ユーザー数最大の市場で人気ショートムービーアプリを消滅する運命から救うための行動だ。本件に詳しい情報筋2名がTechCrunchに伝えた。

TikTokはインドで6月29日から禁止されている。中国との地政学的緊張を受け、インド政府は国家安全とプラバシーの懸念から他の中国製アプリ58本とともに同アプリを禁止した。

インドはTikTokの中国以外で最大の市場であり、2億人以上のユーザー(未訳記事)がいた。ByteDanceはインド国内で2000人を雇用しており、彼らの運命は会社が運用再開できるよう政府を説得するか、会社が身売りするかにかかっている。

「RelianceとByteDanceは先月終わりに交渉を始めまだ合意に至っていない」と匿名を条件に情報筋が話した。TikTokのインドでビジネスは30億ドル(約3200億円)以上の価値があるという。

ByteDanceはTechCrunchのコメント要求に返答しなかった。Relianceの広報担当者はコメントを拒んだ。

TikTokへの投資は、石油事業最大手でインド最大の企業であるReliacneが消費者との結びつきを強めるきっかけになる可能性がある。インドの巨人であるReliacneは、国内最大の通信事業者であるJio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)も傘下にもつ。しかし、Jio Platformsはインドで4年以内に4億人近くの登録者を集めているものの、消費者向けアプリではそこまでの存在感を示していない。

今年4月後半以来、Jioは約200億ドルの資金をFacebook、グーグルを始めとする著名投資家から調達している。グーグルは、Jio Platformsと共同でAndroidのカスタマイズ版を開発し、低コストスマートフォンに搭載することを発表してる。Facebookは、Relianceと協力してインドの6000万社にのぼる企業をデジタル化すると語った。

両社の交渉は、ByteDanceがインドで重要な社員の維持に苦労していたことがきっかけで始まった。 「同社のポリシー責任者で傘下のHeloアプリのインド事業を指揮するRohan Mishra(ロハン・ミシュラ)氏が先週会社を離れた」と本件に詳しい筋が教えてくれた。同氏はTechCrunchのコメント要求に返信していない。

ByteDanceは従業員に対して、インド政府と問題解決に向けて話をしており、この国の従業員を解雇する予定はないと約束した。同社はこれとは別に、TikTokの米国を含む海外事業の一部をマイクロソフトに売却する交渉を進めていることを、今月始めにマイクロソフトが認めた。Financial Times(ファイナンシャル・タイムズ)は先週、両者が契約の範囲を他の海外市場のTikTokビジネスにも広げたと報じ、ヨーロッパとインドもそこに入っていた。

Relianceのオーナーは、インド一の富豪でNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相と親しいMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏であることから、この会社と何らかのつながりを作ることは、ByteDanceがインド政府に関わる懸念を軽減するのに役立つだろう。

Twitterが支援するShareChatやTimes InternetのGaanaとMX Playerなど、数多くの地元スタートアップがスタンドアロンアプリや統合機能などでTIkTokが提供しているソーシャル体験を再現しようとしている。国内アプリはこの時期に数千万の新規ユーザーを獲得したと主張している。

先月インドでInstagramのReelsを公開(未訳記事)したFacebookは「TikTokがインドで禁止されて以来、傘下サービスの毎日の利用者数が25%以上伸びた」と情報筋は明かした。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トランプ大統領のTikTok発言ネタで人気のサラ・クーパー氏がNetflixにも登場へ

ライターでコメディアンのSarah Cooper(サラ・クーパー)氏にとって、新型コロナウイルスのパンデミックは悪いことばかりではない。悲惨な状況の中で最良の結果を得るために、TikTokカウントを開設し、在宅を維持しながら、トランプ大統領のしばしば奇怪な発言を吹き替えして、そのバカバカしさを強調している。トランプの発言を見て「私の見ていることは現実なのか?」と感じることの多いこの国のはけ口になっている。

そして、3月以来数百万人のフォロワーを集めたことに加えて、ジャマイカ系米国人でかつてGoogle(グーグル)で働いたこともあるクーパー氏は、このたびNetflix(ネットフリックス)のコメディースペシャルに登場することになった。

「Sarah Cooper: Everything’s Fine」(サラ・クーパー:すべて順調)という題されたその番組は、ライターでプロデューサーのNatasha Lyonne(ナターシャ・リオン)が制作を指揮し、サタデー・ナイト・ライブでカマラ・ハリス上院議員を演じるのに忙しい(Entertainmennt記事)がコメディアンのマーヤ・ルドルフが統括責任者を務める。

これはクーパー氏にとって、新たな名声の1つにすぎない。ニューヨークで一緒に暮らすソフトウェアエンジニアの夫について、自分のトランプネタに我慢の限界が来ていそうだ、と笑う。「ドナルド・トランプの声を何度も何度も聞かなくてはならないから」とこの夏Vanity Fair(ヴァニティ・フェア)に語った。「いつか窓から飛び出すんじゃないかと思う」。

さらにクーパー氏は、タレント事務所のWMEと最近契約し、6月にJimmy Fallon(ジミー・ファロン)氏と「The Tonight Show」(ザ・トゥナイト・ショウ)に出演、Jimmy Kimmel Live(ジミー・キンメル・ライブ)ではゲスト・ホスト(@sarahcpr投稿)まで務めた。

Vanity Fairのインタビューによると、クーパー氏はほかにもテレビでの挑戦として「あちこちで失敗を繰り返した挙げ句、なぜかまた何かしでかす」自信過剰な上司を描いた脚本を書いている。

このNetflixのスペシャルがどこまで追求するのかわからないが、トランプ嫌いの多くの人やいく人かの支持者が番組の内容に注目していることは間違いない。Netflixは詳細について多くを明かさなかったが、政治、人種、性別、階級などの問題やその他の軽い話題についてさまざまな短編を集めたバラエティースペシャルになると語った。

ちなみに下のビデオでは、以前の勤め先を冗談めかしく批判している。

「誰もが私に、Googleで働くことは楽しかったと尋ねるが、実際それは楽し〈かった〉。楽しかったのは、四半期ごとにどれだけ楽しむべきかを言われ続けたからだと私は知っている。そうしないとクビになるから」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokのユーザーデータ取り扱いについてフランスの監視当局が調査開始

TikTokに新たな心配のタネができた。TechCrunchは、欧州の監視当局が今流行のソーシャルアプリの調査を開始したことを確認した。欧州の監視当局は2019年にGoogle(グーグル)に対して5700万ドル(約61億円)の罰金を課すなど、これまでテック大企業に最大の打撃を与えている。

フランスのデータ保護監督当局であるCNILの広報担当はTechCrunchに対して、ビデオの削除依頼に関連する苦情を受け、TikTokが2020年5月にユーザーデータをどのように扱ったのか調査を開始したと述べた。ビデオ共有プラットフォームTikTokの調査は最初にPolitico(ポリティコ)が報じた。

EUのデータ保護フレームワーク下では、データ処理に同意した市民は引き続き情報のコピーや削除を依頼したり、ポータブルなフォームでデータを求めることもできるなど、様々な権利を有する。

EUのGDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)での追加の必須要件として、フレームワークに対応する責任を明確にする透明性の確保が義務づけられている。つまり、データを扱う企業はデータ処理の目的について情報を明らかにするなどデータ主体を示す必要があることを意味する。

ここにはデータ処理にかかる法的に有効な同意を得ることも含まれる。

CNILの広報担当は、苦情をきっかけに始まったTikTokの調査は、ユーザーのデータアクセス権利、EU外へのユーザーデータの転送、未成年のデータが十分に保護されることを確かなものにするために同プラットフォームが取っている措置など、ユーザーデータをいかに処理しているのか透明性が求められる要件に関するさまざまな問題へと広がったと述べた。未成年のデータに関しては、TikTokがティーンエイジャーに人気であることを考えれば重要な問題だ。

フランスのデータ保護法では、15才以上にTikTokのようなソーシャルサービスに自らのデータの処理について同意させている(15才以下は親の同意となる)。

元々の苦情に関してCNILの広報担当は、苦情を申し立てた人物が「GDPRに基づいてTikTokに対し権利を行使するよう招待された。人物は以前にそうした権利を行使したことはない」と説明した(Google Translate経由)。

TechCrunchはCNILの調査についてTikTokにコメントを求めている。

疑問もある。フランスの監視当局がTikTok調査に関して結論をみることができるのかどうか、はっきりしない。

CNILの広報担当は電子メールで、TikTokがアイルランドのData Protection Commission(DPC、データ保護委員会)を欧州における主要当局と選定することを模索していると説明した(関連:先週TikTokは欧州に初のデータセンターを設置する計画を発表したが、設置場所はアイルランドだ。このデータセンターがゆくゆくは全EUユーザーのデータを保管する)。

もしTikTokが法的条件を満たせば、GDPRの調査をDPCに移すことができるかもしれない。複雑なクロスボーダーGDPR案件を調べるのは、恐ろしく時間がかかることで知られている。

「(TikTokの)調査は最終的にアイルランドの保護当局が責任を負うことになるかもしれない。他の欧州のデータ保護当局の協力を得ながらこのケースに対応する必要があるだろう」と広報担当は述べた。そしてクリアすべき立証基準があることも強調した。

「アイルランド当局単独の管轄になるために、TikTokはアイルランド拠点がGDPRでの解釈内で『主要な拠点』の状態であることを証明しなければならない」。

欧州のGDPRフレームワークでは、各国のデータ保護当局は企業にグローバル年間売上高の最大4%の罰金を課すことができ、また侵害的なデータ処理の停止を命じることもできる。しかしそうするにはまず調査して、決定を下すプロセスを経る必要がある。複数の国の監視当局が関心を寄せるクロスボーダー案件の場合は、決定に関して意見の一致を確かめるために他の国当局と連絡をとる必要がある。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

TikTok禁止を予期して世界中でVPNの人気が急上昇

世界の国々がTikTokを禁止あるいは制限するなか、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)への関心が急速に高まっている。

VPNを使うことによってユーザーは暗号化されたトンネルを通じてオンラインサービスを利用できるようになり、アプリのブロックを回避できる。「ますます多くの国で、国民のアクセスできる情報を政府が制御しようとしている」と世界94カ国で3000以上のサービスを展開しているExpressVPN(エクスプレスVPN)のHarold Li副社長は言う。「このためVPNは多くの国で禁止されたサイトをアクセスするために利用されている」

実際、ExpressVPNのウェブサイトでは米国政府がTikTok禁止の可能性を表明して以来、トラフィックが前週比10%増加している。同サービスは日本とオーストラリアでも同様の傾向を示しており、政府がTikTokをブロックする可能性を示唆して以来、それぞれ前週比19%と41%トラフィックが増えた。

インドがTikTokを正式に禁止した時、ExpressVPNのウェブトラフィックは前週比22%伸びた。国のセキュリティー法が制定されて以来TikTokが 自主的に撤退したホンコンでは、10%のトラフィック増だった。

「万能薬」ではない

VPNは、検閲やアプリの禁止といったインターネットの制約を回避する方法として長年人気が高い。本誌は香港の住民が検閲の強化を予測してVPNServiceに群がったことを報じたが、VPNが万能ではないことを香港メディアの有識者が警告している。

政府は現地のアプリストアからVPNを削除することで、一般ユーザーが利用するのを困難にすることができる。ユーザーは他国のアプリストアに登録しなくてはならなくなるが、現地のクレジットカードが必要になるなど障壁は高い。国によってはVPNの使用を違法化することさえあり、 ユーザーに罰金課したり、VPNメーカーを投獄することさえある。中国のように。

アプリが実際どのようにブロックされているかによって、VPNに解決できない問題への取り組み方法があるかもしれない。禁止がどのように実施されるのかまだ分かっていないが、VPNを使用したうえで、SIMカードを抜くなどの方法で抜け道を通る必要があるかもしれない、とLi氏は語った。

ユーザーは禁止されたアプリの代わりを探すこともできるが、サービスを乗り換えるコストは高く、ネットワーク効果の高いサービスなら特にそうだ。たとえばTikTokはネットワーク効果を大いに享受しており、ライバルがユーザー体験で対抗することを困難にしている、とかつての同僚であるJosh Constine氏が指摘していた

同様に、WeChatが米国で禁止されることを心配する人たちにとっても、このユーザー数10億人以上の中国製メッセンジャーに有力な代替品はない。米国に住む離散中国人にとって、中国の支配的チャットアプリであるWeChatは、欧米の主要ソーシャルネットワークが利用できない中国の家族や友達とつながる唯一の方法だ。

小さなアプリは当局のレーダーをかいくぐるように飛んでいる。SignalはライバルのTelegramやWhatsappと異なり、今でも中国で利用可能であり、iOSの中国におけるソーシャルアプリランキングで8月7〜9日の間に順位を51位上げ、現在36位にいる。これも禁止されていないiMessengerを使って米国内と連絡をとっている人たちもいるが、この選択肢はiPhoneユーザーに限られる。

 全世界の個人も企業も、サービスの閉鎖に順応できなければ、無料でオープンなインターネットの利用手段が絶たれてしまう。Telegramのファウンダー、Pavel Durov氏が嘆くように、「米国のTikTokに対する行為は、究極的に真のグローバルネットワークとしてのインターネットを壊しかねない危険な前例をつくろうとしている」

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米政府のTikTok、WeChatの排除命令の全文とその背景

トランプ米大統領が署名した、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)と、米国人・米国企業との取引を禁じる大統領行政命令(米政府リリース)、WeChatに関するほぼ同様の命令(米政府リリース)が公開されている。ホワイトハウスではTencent(テンセント)が運営する中国で広く利用されているチャットサービスのWeChatとの取引も禁じたと発表している。ただし米国ではTikTokに比べてWeChatの利用は極めて少なく、在住中国人コミュニティが中心だ。

これらの大統領行政命令は45日後に発効するが、最大の問題は文言が不明確なことだ。伝えられるところによれば、どのような行為が禁止の対象になるのかについてウィルバー・ロス商務長官でさえ現在は答えられず、今後45日間で検討するという。さらにこれらの命令が米国におけるTikTok、WeChatおよびTencent製アプリなどの中国系アプリの運営そのものに与える影響も明瞭でない。

命令の文言自体はTikTok、WeChatの運営そのものを直接に禁じていないが、政府はこれらを他の方法で間接的に禁じることができる。トランプ大統領は8月6日に「中国の信頼できないサービスを追放する」と発表した。 このクリーン・ネットワーク・プログラムはWeChatとTikTokの禁止が含まれるものと考えねばならない。

Tencentの広報担当者は「影響を判断するために大統領行政命令の検討しているところだ」と述べた。

TikTokは「この命令の根拠は誤っており、デュープロセス(適正な手続き)を欠いている。これは世界のビジネスに対し米国が法治主義であることを疑わせる危険がある」と反論している。

大統領行政命令は冒頭で国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)と国家非常事態法(National Emergencies Act)を根拠として挙げている。ここで「合衆国におけるアプリの運営」を安全保障上の脅威と認定しているのは極めて異例で、おそらくは適法性を巡って訴訟が予想される。ByteDanceはインド政府による禁止を解除させる努力(未訳記事)を続けている。インドは7月にTikTokと59のアプリを一括して禁止した。米国同様、インドもこれらアプリによる個人データの収集が国家安全保障に脅威となるとしている。

一方、Microsoft(マイクロソフト)はTikTok事業をByteDanceから買い取る交渉を進めていると発表した。交渉の期限は9月15日だ。大統領命令が発効するのはマイクロソフトが発表した交渉期限の直後だ。ByteDanceはTikTokの所有権をマイクロソフトに引き渡すことに原則的に同意している(ロイター記事)と報じられた。ただし少数株主の地位を求めているようだ。.

ByteDanceに関する大統領命令は「中華人民共和国の企業によって製造、所有されるモバイルアプリ利用の拡大は、米国の安全保障、外交政策および経済をは脅かしている。現時点では、これらのモバイルアプリ、特にTikTokによる脅威に対する措置が必要と認められる」と述べている。

これに続いて行政命令は、発表から45日以降、 米国の司法権がおよぶいかなる人物あるいは組織もByteDanceおよび一切の子会社と取引が禁じられるとしている。ただし「関連ある放棄によって特に許される場合」は除かれる。命令はTikTokの位置情報、閲覧履歴、検索履歴を含むよるユーザーデータへのアクセスについて「中国共産党による米国人の個人データおよび知的所有権を持つデータへのアクセスを許し、連邦政府職員並びに契約諸機関の位置情報ならびに個人に対する詳細情報を取得させ、 こうしたデータが脅迫、産業スパイ行為のために利用される危険がある」と認定している。

トランプ大統領は先月末、行政命令によって Tiktok の利用を禁止するつもりだと述べた。大統領とマイケル・ポンペオ国務長官を含む政府高官はこの数週間、TikTok が米国の安全保障に対する脅威であることで次第に強い表現を使っていた。TikTokは北京に本拠を置く企業、ByteDanceが開発、所有しており、Tiktok の中国版であるアプリ(Douyin)も運営している。これに対しByteDanceはikTokの運営をできるかぎり中国から遠ざけようと努力し、そのデータも中国国外に保存されているとした。

Tencentのアプリも全面禁止の可能性

トランプ大統領のWeChatを禁止命令は、 TikTok 禁止に比べればやや意外だったが、完全に驚きというわけではなかった。ポンペオ国務長官が今週大統領は近くTikTokに対して措置を取るとした発表の中で、対象としてWeChatその他の中国製アプリも挙げているからだ。 ByteDanceの場合と同様大統領はWeChatのデータ収集は中国共産党にユーザーデータへのアクセスを許す危険性があり米国の安全保障にとって脅威であると述べている。またこの命令の中でWeChat は中国政府にとって政治的に問題のあるコンテンツを検閲しているとも述べている。

命令の禁止範囲はWeChatだけにとどまらず、米企業に対してがTencent Holdingおよびその子会社との取引を全面的に禁ずるものとなっている。

商務長官が今後45日の間にどのようにして禁止される取引の具体的な範囲を決定できるのも大きな疑問の一つだ。Tencentが米国のテクノロジー企業、エンタテインメント企業に対して行っている投資を考えると、行政命令は結果としてこれらのビジネスに多大な不利益を与えるおそれがある。Tencentの米国における投資は広汎さや巨額さでソフトバンクの投資と比較されることがある。過半数株主は株式への配当以外にも取締役への特別ボーナスなど様々な方法で利益の還元を得ることが可能だ。

例えばTencentは長年、Spotify、Snap、Reddit, Tesla, Warner Music、Universal Music、reddit、Teslaなどの大企業を始め、Fortniteの開発元のEpic GamesやLeague of LegendsのRiot Gamesのような高収益のゲーム企業にも投資を続けてきた。

この点に関してLos Angeles Timesは、ホワイトハウス高官が「行政命令による禁止はWeChat に関連する取引のみに限定され、他のTencent Holdingsとの取引には関連しない」と説明(Los Angeles Times記事)したと報じている(。しかし命令の文言からこのように読み取れるかどうは不明だ。

TechCrunchの取材に対してマイクロソフトはコメントを避けた。TechCrunchはホワイトハウスにも取材を続けている。

画像:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

TikTok事業売却を控えByteDanceの評価額に強い下げ圧力

TikTokの親会社、ByteDance(字節跳動)はこの5月に未公開株市場で1000億ドル(10兆6000億円)の会社評価を得て史上最高額のスタートアップという地位を確立した。ByteDanceの国外での大成功は中国のテクノロジー企業の羨望と賞賛の的となっている。

しかし複数の投資家筋がTechCrunchに述べたところによれば、最も価値のある事業であるTikTokを売却しなければならなくなったことにより同社の会社評価書には現在強烈な下げ圧力がかかっている。

事情に通じた投資家によれば、ByteDanceの昨年の収入は1200億人民元(1兆8000億円)で、うち 67%はTikTokの中国版「Douyin」(抖音)、人気のニュースプラットフォーム「Toutiao」(今日頭條)の広告によるものだ。Douyinのユーザーを対象としたライブストリーミングアプリからの収入が17%を占めている。残る17%は初期段階のビジネス、ゲーム、通販、Douyinの海外版TikTokなどからの収入だ。

この投資家によれば、同社では2020年の収入2000億人民元(3兆円)のうち、TikTok等の初期段階のビジネスの売上が15%を占めるという。これまでのReuters(ロイター)とBloomberg(ブルームバーグ)の報道も概ね同様の数字を上げている。

ByteDance全体の収入に対してTikTokの寄与は低いままだが、このサービスが展開できる可能性があるマーケットは非常に大きい。 投資家によれば「国外で60億人のユーザーを獲得できる可能性がある。中国国内ではDouyin、Toutiaoともに普及は飽和点に近づいている」という。

さらに重要な点としてTikTokは巨大なユーザーベースを収益化し始めたばかりだ。このアプリは指数関数的に急増中だ。パンデミックの影響で人々が家に閉じ込められたことにより今年は20億ダウンロードを記録(Senser Towerレポート)している。しかし社会生活が正常に戻れば果たして利用時間がどれほどになるのかはまだわからない。 このアプリは国外マーケットの3分の1を占めて最大だったインドを既に失っている。ただしインドにおける売上は比較的小さかったようだ。

ByteDanceコメントを求めているが今のところ回答がない。

ByteDanceに残る資産は?

創立8年になるByteDanceが直面しているのは極めて競争の激しい中国の国内市場だ。ショートビデオではTencentが支援するKuaishou(快手)は毎日3億人が利用しているという。これに対して現在のDouyinのDAU(1日あたりアクティブユーザー)は4億人(未訳記事)だ。 Toutiaoも多方面から激しい競争を仕掛けられている。 マイクロブログでは微博がベテランだし WeChatのアプリ内ニュース機能も強敵だ。

同社は次々に新しいサービスを繰り出す能力で知られており、「アプリ工場」の異名がある。これは同社が テクノロジー、特にプロダクト開発をメインとしユーザー獲得、収益化など機能別の組織構造をとっていることによるものだ。

同社の現在の目立った取り組みにはモバイルゲーム(未訳記事)がある。インターネット事業として極めて収益性の高い分野だが同時にテンセントと正面から激突することになる。 中国でブームとなりつつあるリモート教育の波(South China Mornig Post記事)に乗ってオンライン教育にも進出している。エンタープライズソフトウェアの分野では共同作業のプラットフォームとしてLarkを推進している。

しかしこうした事業はユーザー数でも収益化でもTikTok、Douyin、Toutiaoという主要事業の成功にはるかに及ばない状態だ。中国のアプリビジネスの世界展開の代表のByteDanceだが、同社が今後ともこの地位を守り抜けるの注意深く見守っていく必要がある。1つだけ確かなのは、国際展開でつまずいても、創業者兼CEOの張一鳴(Zhang Yiming) は、ByteDanceの国際展開を諦めたり規模が縮小するままに座視したりしないだろうという点だろう。

画像:NOEL CELIS/AFP / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook