ソフトバンクが「Vision Fundは1.8兆円の損失」と予測、本体もWeWorkとOneWeb投資が痛手

日本の巨大テクノロジー企業グループ、ソフトバンクは2019年度の損益見通しを発表した。これによれば、Vision Fundの損失は1.8兆円という巨額に上るという。

またソフトバンク本体の投資でも、シェアリングエコノミーのブームを代表したオフィススペース賃貸のWeWork、衛星通信のOneWebに対する投資の失敗が痛手となった。 投資先のテクノロジースタートアップのビジネスの失敗により、グループ全体での損失も7500億円となる予想だ。

この2年間、ソフトバンクとファウンダーの孫正義氏は、Vision Fundの数十億ドルの資金(大半は外部投資家のカネだったが)をスタートアップに投じてきた。機械学習、ロボティクス、次世代テレコムへの投資はやがて数千億ドルの利益を生むという見通しに賭けたものだった。

ともかく孫氏が投資家に売り込んだビジョンはそうだった。しかし実態は、WeWork、OpenDoor、Compassなどへの数十億ドルは要するに不動産投資だった。消費者向けビジネスではBrandlessは事業閉鎖 犬を散歩させるWagでは持ち分売却を余儀なくされた。食品配達のDoorDashへの投資も成功とはいえないだろう。これに加えて大口の投資を行ったホテルチェーンのOyoが苦境に陥っていることでVision Fundの「先見の明」に大きな疑問符がついている。

2019年はこうした投資先がいくつも暗礁に乗り上げた。見事なまでの崩壊をみせたのは、我々も繰り返し報じてきたがWeWorkだ。会社評価額は一時の400億ドル(約4兆3000億円)以上から約80億ドル(約8600億円)に急落した。

Brandlessは2020年初めに廃業した。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの発生により、ホテルのOyoに加えて不動産投資ではCompassも打撃を受けている。

もっともソフトバンクのVision Fundの投資先に失敗企業が続出しているのは事実だが、失敗の多くは経済全体に逆風が吹いている結果だ。またすべての投資が行き詰まっているわけではない。例えばVision Fundは上場前のSlackに巨額の投資をしている。しかも新型コロナウイルスによる否応ないリモートワーク化はSlackの強い追い風となっている。

ソフトバンクの投資の中で最も遠大なビジョンがあったのは(皮肉にもこれはVision Fundからの投資ではなかったが)衛星ネットワークのOneWebだったに違いない。しかし世界のいたるところに高速のインターネット接続サービスを提供するというビジョンは優れていたが、あまりに多額の資本を必要としたためその重みで自壊した。ピザのロボット配達サービス、Zumeも失敗している。

しかしこうしたギャンブルが軒並み失敗に終わってもソフトバンク自体が倒れない理由は、なんといっても大量のアリババ株という金庫を抱えているからだ。またコアビジネスのテレコム事業や傘下の半導体事業も堅調だ。

ソフトバンクは発表で次のように述べている。

「上記に加え、(2019年度比較して2020年度の)税引前利益の減少は、主として営業外損失の計上が予測されることによる。 2019年度における(Vision Fund外の)投資関連の損失総額は8000億円となる。これはAlibaba株式のPVF(プリペイド・バリアブル・フォワード)契約(による売却)から生じる利益によって部分的に相殺される。2019会計年度第1四半期に計上され、Alibaba株保有分の希薄化によって生じた利益は2019年度第3四半期に計上されている。またAlibaba株式関連の投資については対前年比での利益の増大があると予測される」。

結局のところ、孫氏は大胆かつ優れたビジョンを持つ投資家だという神話に自縄自縛となったのではないだろうか。この神話は外部の株主、投資家に損害を与えるものとなったようだ。

4月13日に、Bloombergはop-edコラムで次のように書いている

「(多額の投資をすることで)スタートアップをファウンダーが考えているより早く成長させ、予想以上の収益を上げさせることができる」という孫氏の主張は今や重荷となっている。これはVision Fundやソフトバンク本体への投資家にとって利益より損失を生むリスクをもたらしている。

多額のキャッシュをばらまいたために多数のスタートアップが財政規律を維持することを忘れ、金を使うことに夢中になってしまった。何年もの間、これは賢明な戦略のように見えた。ソフトバンクの投資を受けたスタートアップはライバルよりも多額のキャッシュをユーザー獲得のインセンティブや広告に支出し、、能力の高い人材を惹きつけることができた。これは市場市場シェアを得るために役立った。

現在、ソフトバンクはUber、WeWork、Grab.、Oyoなどの市場リーダーの大株主だ。 しかしナンバーワンになることと、利益を上げることはまったく別の話だ。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクは大赤字のポートフォリオ企業間の衝突に介入していた

ソフトバンクは、ポートフォリオ企業同志が競争して莫大な赤字を積み上げる現状にとうとう業を煮やし、合併の可能性を探ることも含めて密かに介入をしていた。

ともあれ、米国時間1月30日のFinancial Timesの記事によれば、同社は昨年、UberとDoorDashの合併を取りまとめるようと努力していたという。このときは合併交渉はまとまらなかった。両社ともソフトバンク(ソフトバンク・ビジョン・ファンド1号)から多額の投資を受けており、料理の宅配事業で激しく競い合っている。

Uber Eats2019年第3四半期期の純収入3億9200万ドル(約427億円)に対して、同期の調整済み赤字は3億1600万ドル(約344億円)にも上っている。この赤字の大海に比べるとDoorDashが予測している2019年の通年の赤字である4億5000万ドルでさえ穏当な額に見える。両社が合併すれば赤字幅が圧縮できることは間違いない。株式上場維持路線であろうと非公開化して現在の会社評価額を維持する路線であろうと、現在よりはるかに強い立場で臨めるだろう。

Uberが株式公開後、株価維持に苦しんできたことはよく知られている。現在の株価は公開直後の高値に比べて半額だ。DoorDashも人気を集めたものの最近大型資金調達に成功していない。がっぷり四つに組んだまま競争を続けているこの2社が合併することにはメリットがある。両社が同一の大株主を持っていることを考えればなおさらだ。

カオス状態は他にも

UberとDoorDashはSoftBankのVision Fundからのキャッシュを元手に互いにレンガを投げつけてあっている唯一の例ではない。本日のWall Street Journalの報道によれば、ラテンアメリカではいずれもソフトバンクが大株主である企業間の競争が激化しているという。

ラテンアメリカでUberはライバルのRappiや中国の滴滴出行(Didi Chuxing)などの挑戦を受け激しい値下げ競争に巻き込まれている。しかしここに奇妙な現象がある。この競争者グループの最大株主はいずれも同一の会社、日本のソフトバンクグループなのだ。ソフトバンクはトータルで200億ドル(約2兆1800億円)をこれら3社に投じている。

ユニコーン(評価額10億ドルのスタートアップ)が次々に生まれる前の時代には「1つのベンチャーキャピタルは競争関係になり得る複数のスタートアップに投資してはならない」という金言があった。1つの会社に投資して、同じく自分が投資している別の会社を叩くのを助けるのは道理に合わない。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資はこのルールを無視した結果、南北アメリカ大陸でベンチャー投資の大失敗の見本のような状態に陥った。ちなみに、米国で有名なベンチャーキャピタルであるSequoia CapitalもUberと滴滴出行の双方に投資しているのだが。

これがソフトバンクがDoorDashがUberに統合される可能性を探った背景だ。実現すればすくなくとも頭痛のタネが1つ減るわけだ。しかし次に同社はUberと滴滴出行がライドシェアリングという本業でバッティングする現状をどうにかさばかねばならない。またラテンアメリカでUber EatsとRappiが繰り広げている破壊的競争を止めさせる方策を考える必要がある。

ライドシェアリングと料理宅配の各社をすべて合併させ単一の巨大企業とするのがソフトバンクの立場からの理想だろう。もちろんこんな合併はどこの国だろうと反トラスト法による規制にひっかかかる。それでも赤字と収入を一箇所にまとめれば財務書類を大幅にわかりやすくする効果はあるだろう。

画像:Tomohiro Ohsumi (opens in a new window)/ Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクのトラブル続きの2019年の投資を振り返る

勢いある巨大複合企業、そして最も名高い投資ビークルから、空回りしトラブルを抱える象徴に変わってしまった。今、ソフトバンクソフトバンク・ビジョン・ファンドは難しい立場にある。ときおりいい話もあったが、両者にとっては厳しい1年だった。

その日本企業と、世界中から資金を集め重力さえ曲げる規模になったファンドに関して次々に流れる悪いニュースに接していると、問題のあまりの多さに規模感を見失ってしまう。ただ、グループ全体としてみれば、どの投資が急速に悪化したのか容易にわかる。みてみよう。

以下は、昨年の第2四半期に始まったソフトバンクとビジョン・ファンドの最近の問題点に関する半包括的なリストだ。さらに遡ることもできるが、筆者の独断でビジョン・ファンドの多数の賭けが同時に怪しくなり始めた時期から紹介する。

2019年4月:Wagがレイオフ

ビジョン・ファンドの最も奇妙な賭けの1つ、犬の散歩代行サービスのスタートアップであるWag(ワグ)への3億ドル(約330億円)の投資は、Wagが昨年4月にレイオフの第2ラウンドを実行し、厄介なことになった。

2019年5月:UberのIPOが低調

Uber(ウーバー)は仮条件を1株当たり44〜50ドル(約4800〜5500円)に設定後、レンジの押し上げに失敗し、IPO価格は45ドル(約4900円)となった。時価総額は754億6000万ドル(約8兆2000億円)で、同社の期待よりもはるかに低かった。バンカーはそんなものだろうと見積もっていた。上場後に株価は下落、1月7日の終値はわずか31.95ドル(約3500円)、時価総額にして約545億ドル(約5兆9000億円)だ。ソフトバンクが投資した時のUberのバリュエーションは480億ドル(約5兆2000億円)と700億ドル(約7兆6000億円)だった。

2019年6月:Brandlessに新しいCEO

ソフトバンクのもう1つの大きな賭け、Brandlessは3月に「ソフトバンクとの緊張」により前のCEOを失った後、新しいCEOを迎えた。それだけの期間にわたるCEOの不在とそれが示す経営幹部を巡る混乱はBrandlessにとって良いニュースではなかった。ソフトバンクはBrandlessの持ち分40%を2億4000万ドル(約260億円)で取得した。なお、2億4000万ドルは複数回の投資の累計で、TechCrunchは、ビジョン・ファンドも1億ドル(約109億円)を投資したとの情報を得ている。

2019年8月〜10月:WeWorkが上場申請後、空中分解

WeWork(ウィーワーク)が2019年第3四半期と第4四半期に空中分解した。同社の上場申請は大混乱を引き起こし、経営陣は対立、WeWorkという車が崖を越えて水上に飛び出るまで投資家は妙に受け身で、不動産ビジネスは過大評価されていた。 多額の資金も失った。ソフトバンクは、WeWorkのIPOを撤回して巨額の損失を被った後、かつて花形投資先だった同社を救済し、再生に取り組んでいる。

2019年9月:Compassが複数の役員を失う

ソフトバンクの投資先で、これまで10億ドル(約1090億円)以上を調達したスタートアップのCompass(コンパス)が多数の役員を失った。Crunchbase Newsは「ソフトバンクが支援する不動産スタートアップ、Compassの役員が脱出」と要約した。見出しとは対照的に、Compassは採用のペースを上げていると主張した。

2019年10月:Fairがレイオフ

Fair(フェア)がスタッフの40%を解雇したとTechCrunchは10月に報じた。CFOも失った。同社はソフトバンクなどから5億ドル(約550億円)を調達後、12億ドル(約1300億円)のバリュエーションがついていた。

2019年12月:Katerraがレイオフ

ソフトバンクが投資するモジュール式建設のスタートアップであるKaterra(カテラ)は2019年に何度かレイオフを実施したようだが、最も記憶に残っているのは、12月に実施した200人の削減と工場閉鎖の決定だ。工場閉鎖が明らかになったのは、同社がカリフォルニアの工場新設を発表した後だった。

2019年12月:OneConnectのIPOが低調

OneConnect(ワンコネクト)は、中国に拠点を置き、銀行にテクノロジーを提供する会社で、ソフトバンクが投資している。12月のIPOの仮条件は1株あたり12ドルから14ドルだったが、IPO価格は10ドルになった。公開後の時価総額は、37〜38億ドル(約4000〜4100億円)となった。ビジョン・ファンドが巨額投資した際のポストマネーのバリュエーション74億5000万ドル(約8100億円)から大幅に下がった。その後、同社の株価は12ドルをわずかに超えた。

2019年12月:ソフトバンクがWagの持ち分売却

ソフトバンクは持ちぶんをWag自身に売却して損失を計上した。

2020年1月およびそれ以前:OYOの問題

OYO(オヨ)の問題の始まりと終わりを描くのは難しい。指摘するとすれば近の資金調達ラウンドの背後で行われた不自然で怪しげな借り入れだ。または10月のこの件かもしれない。最近はさらに不安な状況になっているようだ。今年初めのNew York Timesの記事は、「インドでのOyoの台頭の少なくとも一部は、ビジネスの健全性について疑問を投げかける慣行に基づいている」と述べている。ソフトはOyoを強力に支援している。

2019年12月:Brandlessの売上が半減

Wall Street Journalによれば、Brandlessの「8月時点の販売量は、前年同期に比べ約半分減少した」。

2020年1月:UberのCEOを変えようとする動き

The Informationの記事によれば、Uberの元関係者の一部が同社のCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏に満足していない。同社の株価は引き続き低迷しており、同社の赤字体質は一部で予想されているよりも長く続きそうだ。

2020年1月:Zume Pizza(ズームピザ)がレイオフ

驚きではなかったが、悲しいことに変わりはない(レイオフは、支払いを抱える労働者に影響する。資本階級には関係ない)。Zumeは、ビジョン・ファンドから3億7500万ドル(約410億円)を調達したにもかかわらず、スタッフの80%を削減する予定だ。おそらく、ロボットのピザ宅配車にしろ、最新のアイデアが何であれ、実現には少し時間がかかるだろう。

2020年1月:ビジョン・ファンドのタームシート違反に注意

最後に、Axiosは最近、ビジョン・ファンドが複数の創業者とのタームシートを破っていると報告した。ベンチャーの世界ではご法度だ。他のベンチャープレイヤーが公開批判する事態を引き起こした。ビジョン・ファンドが熱く、恐れられていた頃には考えられなかったことだ。

それが今朝思い出したことだ。ソフトバンクやビジョン・ファンドの投資にまつわる問題は、最近の例が他にもあると思う。

当初予定していた通りビジョン・ファンド2は実現するのか。しなければ、誰がビジョン・ファンドのユニコーンたちの価値を維持するのか。ビジョン・ファンド2がなくても、価値を支えるのに十分な資金が市場にあるだろうか。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

WeWorkのクラッシュはベンチャーキャリズムが機能している証拠だ

WeWorkをめぐる波乱から我々は何を学ぶべきだろうか?

WeWorkはつい最近までシリコンバレーを代表する急成長スタートアップであり、ここ数年ベンチャー投資家の熱い視線を集めてきた。WeWorkの創業者/CEOは有力メディアのカバーストーリーにたびたび取り上げられ、TechCrunch Disruptを含めてテクノロジーカンファレンスではキーノートに登壇していた。ピーク時に同社の評価額は数百億ドルになった。衛星軌道に入ってGoogleやFacebookと肩を並べる世界的巨大企業になる日も近いかという勢いだった。

ところが文字どおり数日でWeWorkはクラッシュした。

創業者/CEOは事実上解任され、会社評価額75%以上暴落した。大量レイオフも間近だという。当然ながら外部投資家、社員含めて株主の損害は莫大だ。

キャピタリズム、ベンチャーキャリズムにとっては手痛い敗北であり、特に孫正義氏のソフトバンクは大きなダメージを受けただろう。WeWorkにはこれというファンダメンタルズ(基盤)が存在しなかったにも関わらずソフトバンクは同社を偏愛し、投資しすぎ、関与しすぎた。

では最初の疑問に戻ろう。WeWorkのクラッシュからわれわれは何が学べただろうか?ひと言でいえばゼロだ。別に何も学ぶものはない。

ベンチャーキャリズムというのは本質的にハイリスクなギャンブルだ。的中すれば途方もないリターンを手にすることができる。個別企業にせよベンチャーキャピタルのポートフォリオ全体にせよ、評価額の算定にはこのリスクがあらかじめ組み込まれている。ベンチャーキャピタリストは投資、つまりスタートアップの株式を買うにあたって、その会社のリスク要因を推計するだけでなく、ポートフォリオの収益が最大化されるよう全体の組み立てを考えねばならない。

WeWorkの場合、外部資金の大きな部分はソフトバンク・ビジョン・ファンドから出ていた。ソフトバンクはファンドへの大口出資者と争ってまで、WeWorkに繰り返し出資してきたが、その結果はごらんのとおりとなった。

しかしそれが賭けというものだ。

ベンチャーキャピタルの投資のほとんどは失敗に終わる。投資額の一部を失うこともあれば全額をすってしまうこともある。

しかしときおり大当たりを引き当てる。孫氏は中国の無名の通販会社に2000万ドルを投じた。今やソフトバンクが持つAlibaba(アリババ)の株式には1000億ドルの価がある。今年、ソフトバンクが数年前に110億ドルでアリババ株の一部を売却したことが明ららかになったが、それを別にしての話だ。

これがベンチャーキャピタルの数式だ。つまり 1110億÷2000万は5550倍だ。世界中のどんな金融資産を探しても1ドルが数千ドルに化けるような仕組みは存在しない。

WeWorkの失敗はこの数式の基本を変えるものではない。ビジョン・ファンドはオンデマンドで犬の散歩やケアを提供するスタートアップであるWagに3億ドルを投じたものの会社は苦境にある

そもそもどんな投資ポートフォリオであろうと損失は発生する。ベンチャー企業では利益に先立ってまず損失が発生するというJカーブ理論は健在であり、これに当てはまる実例は多い。

それにWeWorkは破たんしたわけではない。手持ち資金は残っているし再建は可能だろう。将来、史上最大の利益をもたらすスタートアップになる可能性もないとはいえない。もちろん清算まっしぐらということだってありえる。ビジョン・ファンドにとっての収支はどうなるだろうか?考慮すべき要因が無数にあり、それはら週、月、年単位で変化していく。

確実なことを予測するには早すぎる。私の見るところ、ビジョン・ファンドが野心を達成できるかどうか判斷するにはあと5年はかかると思う。

念のために断っておくが、私はベンチャーキャリズムを特に擁護しているのではなく、キャピタリズム全般を擁護しようとしている。

左派経済学者のMatt Stoller(マット・ストーラー)氏はWeWorkなどの巨大テクノロジー企業を偽の資本主義の典型と呼んでいる。つまりバズワード、トレンド、創業伝説、でっち上げのグラフなどによって中身のない成長を演出し、ベンチャーキャリズムが独占企業を作り出して競争を封殺するものだというのだ。

しかしこの説は資本主義と資本主義的投資の本質について完全に誤っていると思う。ベンチャーキャピタルが支援していようといまいと、創立の日から利益を上げられる企業など例外中の例外だ。ハイテク企業に限ったことではない。レストランを開業するにはまず店の賃貸契約を結び、設備を購入しなければならない。実際に客が店にやってくるようになるのははるか後だ。ソフトウェア企業も同じことだ。ユーザーが料金を払うようになる前にまずソフトウェアを書かねばならない。

投資はアイデアとその実現の間に架け渡される橋だ。

問題はスタートアップはどのくらいの期間、赤字を出し続けられるかだ。10年、20年前は企業が上場したければ黒字でなければならなかった。これは不合理だ。いったいなぜ上場という特定の時点を選んで成長を減速させるようなキャッシュフローの調整をする必要があるのか?黒字化のタイミングとしては上場前がいいこともあるだろうし、上場後が適していることもあるだろう。

この数年、少なからぬ投資家がキャッシュフローよりも成長速度に重点を置くようになっている。スタートアップが利益を出し始めるまでに数年待つことも珍しくない。言い換えれば、投資家は以前よりはるかに長期的な視点で物事を考えるようになっている。重要なのは最終的に目指すゴールだ。

WeWorkを黒字化する方法はある。最近新たに得た拠点を閉鎖し、大都市圏の物件だけに集中すれば短期間でキャッシュフロー・ポジティブを達成することは可能だろう。もちろんVビジョン・ファンドもこれは十分承知していると思う。しかし世界のオフィス供給を制覇する可能性があるというのに、なぜ目先の利益のために小さく固まらねばならないのか?

我々は大胆な賭けを応援すべきであり、足をひっぱるべきではない。もちろんWeWorkも結局は大失敗に終わる可能性はある。しかしたとえそうなっても「資本主義は機能しない」ということを意味しはしない。実際、その逆だ。キャピタリズム、特にベンチャーキャピタリズムは以前ににも増して未来に、つまり将来の成長に賭ける仕組みとなっているのだ。

画像:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

WeWorkが非公開で上場申請書を提出、推計収入2030億円、赤字は2120億円

WeWorkを運営するThe We Companyは、米国証券取引委員会(SEC)に上場申請書を非公開で提出したという情報をプレスリリースで確認した。

ニューヨークタイムズの報道によれば、同社がSECに最初に書類を提出したのは昨年12月だという。

今年1月までに、WeWorkは株式と借り入れを併用して470億ドルの会社評価額で総額84億ドルの資金を調達している。ユニコーン(10億ドル企業)を多数生んでいるテクノロジー業界でもAdam Neumann氏とMiguel McKelvey氏が2010年に創立したWeWorkのような100億ドル級はさすがに数が少ない。同社への大口投資家はソフトバンク・ビジョン・ファンドで、昨年11月には30億ドルの出資を受けた。最近ソフトバンクは株式の過半数の取得を目指したが、最後の瞬間に見送っている。

WeWorkの収入は2017年の8億8600万ドルから 2018年には18億ドルへと倍増した。同時に純損失も19億ドルという天文学的数字になった。株式上場を目指す会社として魅力を増すような数字ではない。もっともUberも成長が鈍化している中で株式上場のためのロードショーを各地で開催中だ。WeWorkの財務に関する情報を Crunchbaseから拾ってみると次にようになる。

  • 2017年の収入は8億8600万ドル
  • 2017年の純損失は9億3300万ドル
  • 2018年の収入18億2000万ドル(105.4%アップ)
  • 2018年の純損失は19億ドル(103.6%アップ)

つまり収入に対する赤字の率は変わっていない。ただしAxiosによれば、2018年のWeWorkの入居率は90%であり、登録メンバー数も116%アップして40万1000社となっている。

WeWorkはシリコンバレーのスタートアップの価値がインフレ評価される典型としてよく取り上げられる。WeWorkの本質は不動産賃貸業だ。マーケットと出資者に永続可能なハイテク企業であると納得させるためには膨大な額の投資を続ける必要がある。

WeWorkの主要株主はソフトバンク、Benchmark、T. Rowe Price、Fidelity、ゴールドマン・サックスなどだ。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ホテル予約サービスの5600億円企業OYOが日本でソフトバンクとの合弁事業を発足

Airbnbから大型投資を受けたことで話題になったインドの宿泊ネットワーク、OYOが日本に進出することを正式に発表した。これは大株主である、ソフトバンクとの合弁事業となる。昨年のOYOの10億ドルのラウンドはVision Fundがリードした。 OYOは中小規模のホテルを中心とする宿泊施設のレンタルとリースのネットワークをアジア全域で展開している。

合弁事業の財務の詳細は発表されなかった。TechCrunchの取材に対し、OYOは回答を避けた。

OYOはインドでスタートし、当初は地元の格安ホテルの予約サービスだったが、その後、中国、マレーシア、ネパール、英国、アラブ首長国連邦(UAE)、インドネシア、フィリピンに事業を拡張した。中でも中国ではOYOの宿泊ネットワークにはインド本国の2倍の施設をリストアップするという成功を収めている。

同社の成長はこうした地理的なものにとどまらず、格安ホテルのロングテールネットワークから幅広いホスピタリティーサービスへとビジネス自体も進化を遂げている。事業内容は中小ホテル、個人所有の家やアパートのレンタルを中心としているが、特にインドでは結婚式場、ホリデイパッケージ、コワーキングスペースの提供まで幅広いものとなっている。コア事業の宿泊サービスはホテルチェーンの部屋のレンタルと物件のリースのミックスだ。当初格安の部屋を探せることがセールスポイントだったが、現在では出張客にも対応している。

日本での事業は OYOの創業チームの一員というPrasun Choudharyだ。これまでOYOはまず進出先地域の中小の独立系ホテルあるいはホテルチェーンの所有者にアピールしてきた。利用者側からみると、格安から中程度のホスピタリティーを探す国内外の旅行者が主なターゲットとなっている。ホスピタリティーというのはOYOのファウンダー/CEO、Ritesh Agarwal氏(この記事のトップ写真)が宿泊関連サービス全般を指して使っている用語だ。

Agarwal氏はビリオネアで投資家のPeter Thiel氏によるThielフェローの1人に選ばれ、2011年に18歳の若さでOYOをスタートさせた。最初の会社はOravelというAirbnbのクローンだったが、すぐに事業内容をピボットさせて社名もOYOとなった。同社は合計15億ドルの資金調達に成功しており、現在の会社評価額は50億ドル前後だ。

ソフトバンクはこれまでもビジョン・ファンドの投資先企業の日本上陸を助けてきた。これにはコワーキングスペースのWeWork、中国のタクシー配車サービスの滴滴出行(Didi Chuxing)、インドのオンライン支払サービスのPaytmなどが含まれる。

【訳注】今回発表された事業はOYO Hotels Japanだが、TechCrunch Japanでは3月末にOYO Life Japanの短期賃貸事業について報じている。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

国際物流支援のFlexport、SoftbankのVision Fund等から10億ドル調達

サンフランシスコに本拠を置く物流支援のスタートアップ、FlexportはSoftBankのVision Fundがリードするラウンドで10億ドルを調達したことを発表した。同社は5年半前に設立されたスタートアップで、海上、航空双方の分野で国際的物流を助けるフルサービスのフォワーダーだ。

Founders Fund、DST Global、Cherubic Ventures、Susa Ventures、SF Expressなど当初からの投資者はすべて今回のラウンドにも参加している。同社のポストマネー会社評価額は32億ドルとなったという。

最初に記事を掲載したForbesによれば、Flexportには昨年4億71700万ドルの収入があった。これは2017年の2億4480万ドルから大きくアップしている。 同社はこの原因の一つとして、一部の顧客が国際的サプライチェーンを維持するために年間1000万ドル以上をFlexportに支払ったことを挙げている。

Flexportは急激に成長しており、会社概要のアップデートが追いついていないようだ。同社のサイトの会社概要では社員は600人とされているが、CEOのRyan Petersenは、Forbesのインタビューに対して「世界各地の11箇所のオフィスと4箇所の倉庫で合計1066人が働いている」と述べている。

先週、AxiosはFlexportがSoftBankがリードするラウンドで会社評価額30億ドル程度の資金調達を行う交渉を進めていると報じた。

Crunchbaseによると、直近のラウンドは 2018年の4月に実施されており、過去5回のラウンドで3億500万ドルを調達している。

Flexportの当面のライバルは多数のオンライン・フォワーダーだ。これらのマーケットプレイスでは簡単に最安の運送手段を発見でき、運送の予約や追跡をモニターするサービスも提供している。しかしFlexportの本当の目標は、単なるフォワーダーに留まらず、DHL、FedEx、UPSのような巨大ロジスティクス企業と直接対決できるようになることにあるようだ。たとえば2017年末、同社は航空機をチャーターして独自の空輸サービスを開始したことを発表している。Forbesの記事でPetersenが世界4個所で独自の倉庫を保有していることを明かしたのも興味深い。

画像:anucha sirivisansuwan / Getty Images

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

SoftBankとアブダビMubadala、新ファンド組成でさらに関係緊密化

日本のテクノロジー・コングロマリット、SoftBankとアブダビの国営ファンド、Mubadalaの関係は以前から密接かつ入り組んだものだったが、これがさらに強化されるようだ。

Financial Timesによれば、 Mubadalaがヨーロッパのスタートアップを支援するために立ち上げた4億ドルのファンドの半額についてSoftBankが出資にコミットしたという。

ベンチャーに投資に関心を持つ読者なら2017年にSoftBankが組成した巨大なVision FundにMubadalaが150億ドルの出資をコミットしたことを思い出すかもしれない。その直後、 Mubadalaはサンフランシスコにオフィスを開設し、同時に初期段階のスタートアップに投資する目的の4億ドルのファンドを組成した。SoftBankはこのファンドにも出資している。

この協力関係は合理的と見られていた。少なくとも理論的には、MubadalaのファンドはSoftBankが通常気付くくより早くシリコンバレーのスタートアップ業界で何が起きているかについて知り、その情報をSoftBankに提供できるはずだ。この動きはまた、MubadalaがVision Fundに投資した資金の動きを監視するにも好都合だ。

しかし今回の欧州向け新ファンドはいくつかの懸念を招いている。Finacial Timesは新ファンドが組成されたタイミングを「異例」と書いている。これはSoftBankの負債が1540億ドルに上る現状を指している。またFTの情報源は新ファンドは「SoftBankのテクノロジー投資が増大することによってMubadalaのVision Fundへの影響力も増大する仕組みであることをはっきりさせた」と述べている。

そうではあってもSoftBankにはアブダビとの関係をますます深める以外選択肢はなかったようだ。SoftBankの孫正義CEOは、今月これに先立って、「Vision Fundは990億ドルの資金のうち500億ドルをすでに投資している」と述べた。現在までの投資ペースからすると(先週には10億ドルをたった1社に投じている)、残る資金は2020年末までもたないことになる。

一方その一方で、Vision Fundに450億ドルをコミットして最大の投資家となっているサウジアラビアとSoftBankとの関係がかつてのように良好なものであるかどうかは明らかでない。SoftBankはVison Fund 2においてもサウジに最大の投資家となることを期待していた

昨年の10月3日にBloombergの記者がサウジのモハメド・ビン・サルマン皇太子(通称MBS)にインタビューしたとき、MBSは「Vision Fundにさらに450億ドルをコミットする用意がある」と述べていた。しかしインタビューの5日前にサウジ国籍の反体制派活動家、ジャマル・カショーギがイスタンブールのサウジ領事館に入ったのを最後に消息を断っていた。この後、カショーギの失踪とMBSの関与に国際的な注目が集中することになる。ビジネスリーダーの多くはサウジが10月中旬にリヤドで開催を予定していたカンファレンスへの参加をキャンセルした。孫正義CEOもその1人だったが、ファンドへの影響を考えたのか、イベンドの前日にリヤドを訪問して密かにMBSと会談している。

このキャンセルがMBSを怒らせたかどうかは不明だ。 その後CIAがカショーギの殺害を命じたのがMBSだと結論したこと、またこれに伴って国際的な非難がサウジに向けられたこと、などがSoftBankの資金集めにどんな影響を与えたかも分かっていない。

孫CEOは「さらにサウジから資金を得るつもりがあるかどうか?」という問題に答えることを避けた

その頃、SoftBankはMubadalaと協力してヨーロッパのスタートアップに500万ドルから3000万ドルの投資をするためのファンドを組成しようとしていると報じられた。

前述のサンフランシスコ・チームの役割と同様、新ファンドはVision Fundの資金をヨーロッパに流すパイプの役割を果たし、Mubadalaのチームが有望なポートフォリオを発見することが期待されている。

Mubadalaのヨーロッパ・ファンドはロンドン・オフィスをベースとして運営されるはずだ。Vision Fundは現在ロンドンに本社を置いておりサンフランシスコにもオフィスがある。近く上海、北京、香港にもおフォスをオープンさせる予定だ。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

SoftBank Corpの株価は初日に14%下げたが過去最大のIPOのひとつであることは揺るがず

SoftBank CorpのIPOは快調に始まったが尻すぼみとなり、東京証券取引所の初日に株価は14.5%落ち込んだ。

同社はコングロマリットSoftBank Groupのモバイル部門で、Groupの保有資産にはSprintと1000億ドルのVision Fundが含まれる。

SoftBank Corpの株価はIPO設定プライス(レンジではなく)1500円を下回る1463円で始まり、1282円で引けた。提供された1億6000万株は、親会社SoftBank Groupが保有するトータルの約1/3である。多難な出足ではあったが、それでもSoftBank Corpは総額で2.65兆円(約235億ドル)を調達して日本最大のIPOとなり、Alibabaが2014年にニューヨーク証券取引所で達成した記録、250億ドルに次ぐ額になった(SoftBank GroupはAlibabaの大株主でもある)。

Bloombergによると、SoftBank Corpの株を1500円の開始価格で買った投資家の90%は個人であり、同社は彼らを異例なほどのマーケティングキャンペーンによりターゲットとしてねらった。

投資家の熱気を冷ましたかもしれない要因には、ソフトウェアの証明の期限切れによって生じたEricsspnの機器のシャットダウンによって今月初めに起きた、ネットワークのサービス停止も含まれる(イギリスのO2の顧客も被害を被った)。

そのサービス停止は、SoftBank Corpの通信インフラストラクチャに関するその他(ほか)の懸念も浮き彫りにした。先週の日経の記事によると、同社はセキュリティの懸念によりHuawei Technologiesのハードウェアの使用を停止し、これから数年をかけてそれらの機器をEricssonとNokia製に置き換えるという。

同社によると、ハードウェアの入れ替えは大きな経費にはならないというが、しかし来年同社はより厳しい競争に直面することになるだろう。SoftBank Corpの現在のライバルはNTT DoCoMoとKDDIだが、2019年10月には楽天が携帯電話サービスを立ち上げる。これにより楽天は、日本で4番目のモバイルネットワーク事業者になる

さらにまたSoftBank Groupは、9月末現在で、総額18兆円の大きな負債を抱えている。それは、同社の営業収入の6倍以上である。したがってVision Fundはサウジアラビアの政府系ファンドにとくに大きく依存することになり、それは480億ドルの投資額により、このファンドの最大の投資家になっている。

サウジアラビアの政府系ファンドはPublic Investment Fundと呼ばれ、サウジのMohammed bin Salman皇太子が運用しているが、彼はジャーナリストJamal Khashoggiの殺害を計画したとしてトルコ当局とアメリカの中央情報局から、犯罪への関与を疑われている。皇太子bin Salmanは殺害への関与を否定したが、現在の状況はSoftBankへのサウジアラビアの関与に疑問符を投じている。しかも皇太子bin Salmanは10月に、サウジアラビアは第二Vision Fundに450億ドルを投資する計画だ、と発表したばかりだ。

画像クレジット: Bloomberg/Getty Images

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ソフトバンク孫氏、サウジ投資会議での講演をキャンセル

ジャーナリストJamal Khashoggi氏殺害で世界からの非難の高まりを受け、サウジアラビアで開かれる投資会議を欠席するビジネスリーダーが相次ぐ中、ソフトバンクグループが最新のドロップアウトとなった。

Wall Street Journalは今日から3日間にわたってリヤドで開かれるフューチャー・インベストメント・イニシアチブ会議における孫氏の講演の土壇場での取りやめを報じている。

我々はソフトバンクにコメントを求めている。

会議への出席について先週ソフトバンクにたずねたとき、“今後どうなるのか成り行きを見守っている”とのことだった。

先週、サウジ側はようやくKhashoggi氏がイスタンブールにある総領事館の中で死亡したことを認めたーしかしながらKhashoggi氏がどのように死に至ったのかについての彼らの説明には世界から疑惑の目が向けられている。と同時に、トルコ当局からの露骨なリークでは、殺害は入念に準備され、極めておぞましいものだったとされている。

孫氏はサウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と親しい関係にあり、孫氏の巨大なSoftBank Vision Fundはサウジから何十億ドルもの投資を受けている。同ファンドは1年前に930億ドルで発足した。

以来、複数の1000億ドル規模のファンド立ち上げに強気な姿勢を見せていた。しかしジャーナリスト殺害をめぐって地政学的に非難が渦巻く状況に直面し、ソフトバンクはいま今後の展望を控えめにしようとしているようにみえる。

広報担当者は金曜日、CNNに対し「Vision Fund 2は現在のところコンセプトにすぎない。タイミングや規模、詳細は決まっておらず、発表されていない」と語っている。

孫氏の会議辞退は、グループがサウジマネーと距離を置くという考えに傾かせることになる。そして、将来のVision Fundへのサウジからの何十億ドルもの資金注入がなければ、複数の“メガファンド”というソフトバンクの構想は実現から遠ざかる。

Khashoggi氏殺害の件で懸念が強まる中、多くの企業そして政治のリーダーたちが、サウジ投資会議への出席をとりやめた。その中にはUberのCEOも含まれている。この配車サービスは、近年サウジから何十億ドルもの投資を直接的に、そしてソフトバンクのVision Fundを通じて間接的に受けている。

こうした関係が今後どうなるのかは不明だ。

我々が先週報じたように、Khashoggi氏殺害の件は波紋を広げているー投資家たちがもしかすると期待しているかもしれない沈静化の兆しはみえない。

フューチャー・インベストメント会議のウェブサイトは昨日、ハッカーにより一時的に画像が変造された。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

SoftBank Vision Fund、すでに350億ドルを世界のテクノロジー・スタートアップに投資

昨年5月にSoftBankは1000億ドルを目標とするVision Fundになんと930億ドルもの出資を確保して組成を完了した。このニュースはテクノロジー界に大きな衝撃を与えた。しかも日本のテレコムの巨人は第2次の組成の準備を進めている。またSoftBankの発表(PDF)によれば、Vision Fundの総額の3分の1がすでに投資されている。

先月、この投資の大きな部分、77億ドルがライドシェアリングのUberに投じられた(SoftBankも12億ドルを直接投資している)。これに先立って2017年には、45.8億ドルを投資することで中国のDidi(滴滴)と合意している。ただし、この後者の投資はVision Fundの兄弟分でVision Fundの投資先と競合する可能性がある企業への投資を扱う総額60億ドルのDelta fundからとなる。

今朝発表された資料にはVision Fundが275億ドルを投資済みだとあるが、これは2017年12月31を終期とする9ヶ月におけるデータなので最近のUberへの投資は含まれていない。アメリカのライドシェアリングへの投資を加算すると、投資総額は350億ドルとなる。

Uber以外の企業への投資には、ARM、Nvidia、Flipkart、Paytmの親会社One97 Communication、OYO Rooms、Improbableなどが含まれる。最近の投資には犬の散歩アプリ、Wagへの3億ドルドイツの中古車マーケットプレイス、Auto1への5.6億ドルがある。どちらも今年に入ってからの投資であるためSoftBankが発表した資料には含まれていない。

Vision Fundは「 300年間成長し続ける会社」にするというSoftBankの戦略の一部だ。このため各カテゴリーごとに世界市場での勝者を発見し、支援するというコンセプトだ。SoftBankは投資先企業と協調しテレコムとAIに関連するサービスとテクノロジーの発展を目指す。Vision Fundの投資家はApple、Qualcomm、UAE〔アラブ首長国連邦〕のMubadala Investment Company、サウジアラビアのPID上場ファンド、Foxconn、Foxconn傘下のSharpなどだ。

Vision Fundという巨人が登場したことはアメリカにおける後期ステージのベンチャー投資の構図を大きく変えた。Sequoiaなどの有力ベンチャーキャピタルは急ぎ大型ファンドの組成を始め、Vision Fundに対抗しようとしている。

Vision Fundの影響はすでに各方面に感じられている。Wagへの投資の場合、Vision Fundは投資額を3億ドル以上にすべきだと強く主張したため、NEA(New Enterprise Associates)とKleiner Perkinsはラウンドへの参加を断念したという。両社とも当初Wagに強い関心を示していた。結局、Vision Fundは単独で投資を行ったが、他の投資案件でも同様の例が見られるという。

テクノロジー投資の分野では前代未聞の額のファンドだが、もちろん「先んずれば人を制する」ともいう。

Battery Venturesのジェネラル・パートナー、Roger LeeはTechCrunchのインタビューに対して、同社の最新の大型ファンドについて説明する中で、Vision Fundは「投資における優れたパートナーであり、あるカテゴリーのリーダーとなる可能性のある企業にとって(出資者として)重要な候補となる」と述べている。Battery VenturesはWagに当初から投資していた。

Leeはまた「SoftBankが投資しているジャンルには数多くのライバルが活動しており、それぞれ大きな価値を生んでいる。また〔出資者を探す場合も〕SoftBankが唯一のオプションというわけではない。上場を控えた後期ステージのスタートアップへの投資を専門としてきた投資家は多数いる」とも語っている。

SoftBankによれば、Vision Fundはすでに23億ドルの利益を上げているとしている。これは主としてNvidiaの株価上昇によるものだ。1000億ドルのファンド全体が目指すリターンはもちろんはるかに大きいものだろう。

画像:Tomohiro Ohsumi/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

1000億ドルでは足りない、SoftbankがVision Fundの続編続々編を計画中

Softbankが最初の最大1000億ドル規模のVision Fundの後続となるファンドの調達を準備しているようだ。今日、Nikkeiの取材に応じたCEO Masayoshi Sonはこう述べている: “Vision Fundは最初のステップにすぎない。10兆円(880億ドル)では全然足りない。積極的にもっと大きくしていきたい。Vision Funds 2, 3, 4などを2〜3年ごとに設立していきたい”。

Vision Fund 1が発表されたのは2016年10月で、その最初のクローズ(930億ドル)は今年の5月だった。投資の主対象は人工知能と物のインターネット(Internet of Things, IoT)だ。

Sonによると、このファンドの背後には‘人工超知能’の到来が迫っていると彼は確信しているので、急いでいるのだ、という。“それがやってくることは確実だと本当に信じているので、それが急ぐ理由だ。大急ぎでキャッシュをかき集め、投資していきたい”、と2月に語っている。

その巨額な後続ファンドの調達先がどこになるのか、まだ明らかではないが、最初のVision FundのバックにいたのはApple, Qualcomm, Foxconn, アラブ首長国連邦の国家資産ファンド, サウジアラビアの公的投資ファンドなどだ。

次のVision Fundの投資家に関してSoftbankのスポークスマンはこう述べた: “Mr. Sonは彼の投資戦略観について一般的なお話しかしていない。具体的な計画に関するお話はまだない”。

NikkeiへのコメントでSonは、ファンドのサイズに関する予想や、次の10年間における主な投資対象について述べている。

“ファンドの設立能力を10兆円から20兆円、さらに100兆円へと大きくしていける仕組みを今作っている”。そして全体としてそのファンドは、“10年間で少なくとも1000社に投資しているだろう”。

Nikkeiによると、Vision Fundsの主な投資ターゲットはユニコーンである。まだ上場していないが推定時価総額が10億ドルを超えるスタートアップだ。

また、一件の投資案件の規模は、最大で約8億8800万ドル(≒1000億円)である。

本誌TechCrunchは、最初のVision Fundのこれまでの投資先企業のリストを作成している。

また本誌TechCrunchは、Uber-Softbankの契約が“ほぼ確実に”来週締結される、と報じた〔未訳〕。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SoftBankの投資の狙いを推理する

シリコンバレーではSoftBankが1000億ドルのビジョン・ファンドでいったい何を目論んでいるのかいぶかる声が聞かれる。私的な会話では「酔っぱらいのガンマンが四方八方に小切手の弾を撃ちまくっている」という声も陰口も出ている。

しかしSoftBankに近い情報源によれば、一見クレージーなSoftBankの行動にも原則があるのだという。この情報源はSoftBankはビジョン・ファンドの投資によって最低20%の内部利益率(IRR=internal rate of return)を確保することを目標としていると語った。ファンドの投資先は人工知能、機械学習から製薬、ユーティリティー、ライドシェアリングまで多種多様だ。SoftBankはこうした投資から得た情報をさらに無数のチャンスに変えていくという。

情報源によれば、SoftBankの狙いは、KKRのようなファンドよりも大きい利益を上げることだ。KKRの最初の18件の投資ファンドは投資額の2倍の価値を生み、正味IRRが18.9%だった。SoftBankに近い情報源の1人は「[ビジョン・ファンドに]投資していればKKRやBlackstoneに投資するより儲かるはずだ」と語った。

実のところ、20%のIRR(向こう7年間についての予測)というのはSoftBankにとってワーストケース・シナリオだという。「最良のケースではマサ〔孫正義氏〕がこれまで挙げてきた実績なみの収益を期待できる」と情報源は述べた。

18年間の投資でSoftBankは44%のIRRという成績を誇っている。しかし この成績の大半は「SoftBankのファウンダー、孫正義が2000年のAlibabaの設立最初期から投資したことによっている」と批判するものもいる。 孫氏は5800万ドルを投資してAlibabaの株式を取得したが、現在はこれに1300億ドルの価値があり、別の企業を買収するためにその一部を売却しただけでも100億ドルになった。

Higher And Higher

ビジョン・ファンドが目標とするようなIRR(7年にせよ、もっと標準的な10年にせよ)といえば、封筒の裏に走り書きするような簡単な計算でも、ファンドの投資者にとって1300億ドルから4300億ドルの間の金額から当初の投資額、管理費、借り入れ額など合計、440億ドル程度を差し引いた額を意味する。

LP(リミッテッド・パートナー)がこれだけの成績を挙げることをは容易ではないはずだ。いったいどうやって実現するつもりなのか? 情報源によれば、SoftBankはライドシェアリングを重要な柱と考えているという。もっと詳しく言えば、SoftBankは現在のライドシェアリング企業が順調に成長して巨大な自動運転タクシーのネットワークという新しい交通インフラとなることを期待している。

このビジョンにもとづいてSoftBankはすでに数多くの投資を行っている。中国では滴滴出行(Didi Chuxing)、東南アジアではGrabといったライドシェアリングのメジャー企業に多額の出資を」している。インドでこの分野最大の企業、 Olaが昨日20億ドルの資金調達ラウンドを完了したが、これにもSoftBankが加わっていた。

もちろんアメリカのライドシェアリング企業を成長させることもSoftBankの戦略のきわめて重要な部分だ。SoftBankはUberとLyftに関心を持っていることを以前から公言していたが、結局Uberに投資することになった。事情に詳しい情報源によれば、Uberの取締役会は10億ドル分の株式をSoftBankに売却するという案を承認したが、これはSoftBankがLyftに投資することになるのを恐れたために「金を受け取らざるを得なかった」のだという。

UberがSoftBankを恐れていたのか内心軽蔑していたのかは不明だが、SoftBankが投資してくれないと困るという不安はシリコンバレーに広がりつつある。

先月TechCrunch Disrupに登壇したベンチャーキャピタリストのSteve Jurvetsonに私がSoftBankの投資のインパクトを尋ねたところ、Jurvetsonhは「ある種のキングメーカーだ。ある会社に巨額の資金を投資、別の会社にはしない〔ことによって王を指名できる〕」と述べた。

「ただし長期的にみれば、そうした効果はノイズのようなものだ。成功は結局プロダクトやサービスの質にかかってくる。しかし〔大きな投資は〕短期的には競馬の順位を入れ替えるといった〔程度の〕シフトを生み出すかもしれない」とJurvetsonは付け加えた。

【略】

すべての投資が金を生んでいる

巨額の手元資金にもかかわらず、SoftBankはすでに痛い失敗もしている。

たとえば、先週だが、SoftBankがバイオ製薬企業Roivant$11億ドルの投資ラウンドをリードしてわずか1か月後、Roivantの子会社、Axovantが開発しブロックバスターになると期待されていたアルツハイマーの治療薬に効果がないと判定された。

Axovantの株価はたちまち暴落し、同社の最大の株主であるRoivantに大打撃を与えた。

これはSoftBankにとっても最悪のニュースと思われたが、これでSoftBankの投資戦略を判断するのは早計だったらしい。昨日、Roivantは良いニュースを受け取った。Roivantと日本の武田薬品が共同で設立した子会社が開発していた子宮筋腫の治療薬がフェーズ3の治験で好結果が得られたという。

SoftBankに近い情報源は「〔ビジョン・ファンドが〕何か間違った投資をしていたとしても1年半以内にその結果が分かることはない」と語った。

この人物はNvidiaに対する投資を例として指摘した。Nvidiaは公開企業だが、SoftBankはこの5月に40億ドル分の株式を買収した。この時点で株価は137ドルだったが、現在は180ドルに跳ね上がっている。「今のところすべて金を生んでいる」と情報源は述べた。

画像: Tomohiro Ohsumi/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ソフトバンク、滴滴らUberに大型投資へ――会社評価額は700億ドル前後

日本のソフトバンク、アメリカの投資グループ、Dragoneer、中国最大のライドシェア・グループ、Didi Chuxing(滴滴出行)はジョイント・ベンチャーを通じてついにUberへの投資を実施することになるという。

情報源がTechCrunchに語ったところによれば、Uberに対する株式公開買付けの実施は今月末を目標として準備が進められており、 これにはUberへの直接投資に加えて社員、初期投資家の株式の買い上げも含まれるという。

Uberに対する大型投資の提案が取締役会で検討されていることが最初に報じられたのは1月前のNew York Timesの記事だった。TechCrunchが得た情報によれば、この投資は実施される可能性が高いだけでなく、何千人にも上る社員の売却可能な持ち株を買い上げるという株式投資の歴史上、最大となる市場外取引を含むことになりそうだ。

BloombergはUberは$20億ドルから100億ドルに上る投資を受け入れることになるだろうと報じていた。TechCrunchの得た情報では、投資額はこの数字の上限近く、80億ドルから100億ドルになるもようだ。

投資プロジェクトをリードするのはDragoneer、Didi、ソフトバンクだ。ことにソフトバンクはビジョン・ファンドの1000億ドルの資金が利用できる。しかしGeneral Atlanticも参加することになるという情報を得ている。この投資を実施するために特別の組織(special purpose vehicle)が組成されているという。

Uberはこの問題に対するコメントを避けた。

今回の投資ラウンドはきわめて重要なものとなる。投資額そのものも巨大だが、非公開企業であるUberにとってこのラウンドの会社評価額は700億ドル前後になる見込みだからだ。最近のトラブルにより、Uberの企業文化について正式の調査が行われ、その結果、共同ファウンダー、CEOのトラビス・カラニックを含む多数の幹部がUberを離れることとなった。これによりUberの企業評価額は下がるだろうという観測がなされた。しかし現実には大幅にアップしたことになる。

また今回の投資が実現すれば、初期の投資家と多くの社員が持ち株を現金化するチャンスを得る。Uberは長年にわたってこうした持ち株の売却に制限を加えており、社員はストック・オプションなどの形で得た報酬を現金化することが困難だった

Uberのポリシーが厳しい批判を浴びるようになり、今年に入って同社は株式の買い戻しを実施した。情報によれば、Uberは先週、2度目の買い戻しを完了した。対象は持ち株を最大20%まで売却する権利を得ていた数百人の社員だという。

今回報じられた投資が実現すれば、保有株式の現金化(liquidity event)についてUberが受けていた圧力を緩和するのに大いに役立つだろう。新CEOのダラ・コスロシャヒはUber社員に対して「株式上場は18ヶ月から36ヶ月先」だと発言している。

2010年以来、90億ドルを投資してきた株式保有者はこの新たな大型投資の提案を喜ぶはずだ。株式の買い上げが実施されれば紙の上の価値に過ぎなかったものが現金化され、数多くの富豪が誕生するだろう。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ソフトバンク、Lyftなどの株式を保有するFortress Investment Groupを33億ドルで買収

softbank-img

ビジネス戦略およびポートフォリオ投資の拡大を目指し、日本のソフトバンクが新たな買収を発表した。本日、ソフトバンクは33億ドルでFortress Investment Groupを買収すると発表した。Fortless Investment Group(以下Frotress)は、LyftやZestFinance、Xapo、Jawboneなどの株式を保有する投資会社だ。

ソフトバンクとFortressが関わりをもつのはこれで2度目となる。ソフトバンクはこれまでに1000億ドル規模の投資ファンド「Vision Fund」を新たに創設している(Appleも同ファンドに10億ドルを出資)。そして、そのVision Fundを指揮するのが元FortressのRajeev Misra氏なのだ。

この発表の前にも、ソフトバンクによるFortress買収の可能性を伝えるニュースが報じられていた。

この買収は、ソフトバンクの壮大な投資戦略の一部である。同社はこれまでに、Nikesh Arora氏による指揮のもとでテック企業へのアグレッシブな投資戦略を打ち出していた。しかし、Arora氏が同社を離れ、イギリスのARMを240億ドルで買収した後、その投資戦略のスピードは衰えていた。

ソフトバンクCEOの孫正義氏によれば、今後FortressはVision Fundに「寄り添うかたちで」協働していくものの、主要人物であるPete Bringer氏、Wes Edens氏、Randy Nardone氏による指揮のもとでFrotressの独立した経営は維持されるという。

「Fortressの素晴らしいトラックレコードが彼らの優秀さを物語っています。彼らのリーダシップ、幅広い専門知識、ワールドクラスの投資プラットフォームからソフトバンクは恩恵を受けることができるでしょう」と孫氏はプレスリリースの中で語る。「この買収によって、ソフトバンクグループ、そして間もなく確立されるであろうVision Fundプラットフォームのケーパビリティを即座に拡大することが可能です。また、サステイナビリティのある長期的な成長を可能にするための広範かつ統制された投資戦略である『ソフトバンク2.0』を加速させることにもつながるでしょう」。

「ソフトバンクは孫正義氏の指揮のもとで急成長してきた非常に素晴らしい企業です」とFortress共同会長のPete Bringer氏とWes Edsens氏は語る。「シェアホルダーに大きな価値を提供ながら、当社がソフトバンクの一員となって素晴らしい未来を築くという合意に達することができたことに喜びを感じます。私たちはこれから、巨大なスケールとリソースを持ち、パフォーマンスとサービス、そしてイノベーションにフォーカスするという当社の企業文化と同じカルチャーをもつソフトバンクに加わることになります。これは私たちの投資家やビジネスに多大な恩恵を与えるでしょう。当社の先行きをこれほどまでに楽観視できたことは過去にありません」。

ソフトバンクによれば、今回の買収はFortressの特別委員会および取締役会から全会一致で承認されたという。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter