Disruptで組み込み金融が未来のフィンテックである理由を学ぶ

フィンテック業界はここ数年、激しい変化の波にもまれてきた。Robinhood(ロビンフッド)、Revolut(レボリュート)、Coinbase(コインベース)などの消費者向けフィンテックスタートアップ各社が大成功を収め、数百万人の顧客を獲得している。それと同時に、法人向け企業は、決済からAPI駆動型統合およびリスク査定まで、金融を真にデジタル化するインフラストラクチャーを構築してきた。

こういった理由から、Disrupt 2020で組み込み金融とフィンテックに特化したパネルを開催できることをうれしく思う。バーチャル・カンファレンスは、日本時間9月15日から19日まで開催予定だ。

この話題を挙げるにあたり、フィンテックのすべてに尽力するベンチャー投資グループであるAnthemis(アンテミス)のパートナー、Ruth Foxe Blader(ルース・フォックス・ブレード)氏を招待した。彼女は、 +Simple.fr(+シンプル.fr)、Axle(アクセル)、そしてFluidly(フルードリー)などのさまざまなフィンテックやインシュアテックのスタートアップ企業に投資をしている。

Anthemis(アンテミス)で勤務する前は、Allianz(アリアンツ)で、インシュアテックのベンチャー向け投資を担当していた。また、デジタル変革を主導するためフォーチュン500の企業の数社とも連携している。

さらに、このパネルには、Hope Cochran(ホープ・コクラン)氏も同席する。彼女は、キャンディークラッシュの開発元であるゲームスタジオ King(キング)でCFOを務め、IPOで会社を先導し、Activision(アクティビジョン)に59憶ドル(約6,233億円)でKing(キング)を買収させるといった大胆な舵取りを行った。

また、彼女のコーポレート・ディレクターとしての功績はこれだけではない。2013年のSprint(スプリント)による Clearwire(クリアワイア)の買収時にClearwire(クリアワイア)CFOとして職務に当たっていた。現在は、Madrona Venture Group(マドロナベンチャーグループ)でマネージング・ディレクターを務めている。

最後に、Accel(アクセル)のパートナーとして企業の成長ファンドに取り組んでいるJohn Locke(ジョン・ロック)氏もお招きする。彼は、数多くの投資の中でも、Braintree/Venmo(ブレインツリー/ベンモ)、GoFundMe(ゴーファンドミー)、Monzo(モンゾ)、WorldRemit(ワールドレミット)、Xero(ゼロ)などと取引を行っている。

ご覧のように、彼は世間が同社らをフィンテックスタートアップ企業と認識する前から、フィンテックスタートアップ企業を入念にフォローしていることで有名だ。

Disrupt 2020では、「ある時点において、テック企業はすべて、組み込み金融製品によってフィンテック企業になるのだろうか」や「組み込み金融製品を提供する新たな巨大テック企業が台頭するのだろうか」といった問いをはじめとする、フィンテック業界の今後についてディスカッションを行う予定だ。カンファレンスは、日本時間9月15日から9月19日まで行われるのでぜひ参加してほしい。

Disrupt Digital Pro Passまたは初期段階の創業者向けのDigital Startup Alley Exhibitor Packageを購入しよう。メインステージでのインタビューの他、実用的なアドバイスが聞けるExtra Crunchステージでのワークショップや、AIを利用したネットワーキングプラットフォームのCrunchMatchなどすべてのプログラムにアクセスできる。Disruptに登録した瞬間からCrunchMatchにアクセスができ、人々と繋がることが可能だ。潜在的な顧客や投資家との1対1のビデオ通話を予定したり、将来の従業員を面接したりして、このツールを最大限に活用しよう。

他の登壇者情報など、イベント詳細は以下の特設ページで確認できる。なお、同ページを経由してチケットを購入すると5%割引が適用されるので、ぜひご活用いただきたい。

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英国のフィンテック「Revolut」が日本でも口座開設をスタート

フィンテックスタートアップのRevolutが日本に進出した。1万ユーザーによるテストを経て、アカウントの開設を一般開放した。同社は2018年に日本の金融庁から事業認可を取得している

アカウント(口座)を開設すると、電子ウォレットとVISAデビットカードが作られる。アカウントにはクレジットカード、バーチャルカード、Apple Pay、Google Payなどから入金できる。Revolutはすぐに利用通知をユーザーに送り、アプリからカードの凍結、再開ができる。

他のRevolutユーザーや銀行口座に送金することもできる。Revolutではアプリ内のお金を他の通貨に変換して送金することが可能で、多くのユーザーがこのサービスを旅行に利用して、為替手数料を節約している。

日本のユーザーは、vault(貯金箱)を作って、購入金額の端数を貯めることができるほか、定期支払いも設定できる。現時点ではそれだけだ。

同サービスはすでに日本でプレミアム会員プランを開始しているが、スタンダード会員と比べて為替手数料が安くなるとカードのデザインが選べること、充実したサポートとLoungeKey Passで利用できる空港ラウンジのチケットを購入できる以外に目立った特典はない。

英国やヨーロッパと異なり、日本では暗号通貨の購入や株取引、保険商品の購入、子供向けRevolut Juniorアカウントの開設などはできない。Revolutは地元英国でスーパーアプリを作るべく、数年をかけて大幅な機能追加を行ってきた。

いずれ全世界で暗号通貨や株取引などの機能を提供すると同社は約束している。しかし、提供時期は明らかにされていないので、今後のサービスの進化を見守るしかない。

現在Revolutは英国、ヨーロッパ、米国、シンガポール、オーストラリアで利用可能で顧客数は1300万人となっている。

画像クレジット:Revolut

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カテゴリー:フィンテック

タグ:Revolut 日本

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

製品のローカライズを簡単にするLokaliseが6億円超を調達

Lokalise(ローカライズ)はラトビアのスタートアップで、アプリやウェブサイト、ゲームなどの翻訳とローカライズを専門にしている。製品内のテキストをさまざまな言語に翻訳するためのワークフローとプロセスを容易にする機能をサービスとしてのソフトウェア(SaaS)のかたちで提供する。

このたび同社は、600万ドル(約6億3700万円)の資金調達ラウンドを完了し、Mike Chalfen(マイク・カルフェン)氏のリードでAndrey Khusid(アンドレイ・クシッド)氏、Nicolas Dessaige(ニコラ・デセイジュ)氏、Des Traynor(デス・トレイナー)氏、Matt Robinson(マット・ロビンソン)氏などが参加した。

アプリのアップデートを出荷しようとした時、翻訳が必要なボタンやテキストがまだ残っていたことに気づいて、多くの会社が無駄な時間を費やす。そのためのプロセスは手作業が多く、さまざまな言語のテキスト文字列の入ったファイルをやり取りすることになる。

「実は、ローカライズで一番よく使われているツールはいまもExcelとGoogleスプレッドシートだ。その次が内部で作ったスクリプトやツール」と共同創業者兼CEOのNick Ustinov(ニック・ウスティノフ)氏は語る。

Localiseはそのプロセスのスピードアップに焦点を当てた。言語ファイルは手動でアップロードするか、GitHubやGitLabに統合すれば自動的に変更部分を探してくれる。

その後はLokalize上で各言語の文を閲覧できる。翻訳チームはLokaliseのインターフェースを使ってテキストを編集する。ウェブベースのサービスなので全員が共通の土台で作業できる。

画像クレジット:Lokalise

他のチームメンバーと共同作業するためのツールもある。コメントやメッセージを送ることもできる。タスク完了時にイベントを起動したりタスクを割り当てることも可能で、例えばレビュー担当者に翻訳が完了したことを伝えることかできる。

作業が完了したら、Lokalise経由で言語ファイルをSDKやAPIを使ってモバイルアプリに送り込むか、オブジェクト・ストレージ・バケットにファイルをアップロードすればアプリが最新の言語ファイルをサーバーから取り出すことができる。

小さな会社で翻訳チームがいない場合、Google翻訳やプロの翻訳者のマーケットプレイスを使うこともできる。翻訳サイトのGengoやLokalise自身の翻訳マーケットプレイスが利用できる。ほかに、内蔵のスペリングや文法をチェックするツールで明らかな間違いを見つけることもできる。

「顧客のほとんどは、社内外の翻訳者や言語サービス・プロバイダー(LSP)と直接やりとりしている」とUstinov氏は言う。「SaaS製品が売上の90%を占めている。翻訳マーケットプレイスの売上は10%にすぎない」

現在同社には1500社の顧客がいて、Revolut、Yelp、Virgin Mobile、Notionなども利用している。年間経常収益は400万ドル。

Lokaliseが解決するのは非常に特殊なニーズだ。おそらくほとんどの会社にとっては過剰なサービスだ。しかし、製品のアップデートが頻繁で、世界中に顧客がいる会社にとっては、プロセスをちょっとスピードアップできるだろう。

画像クレジット:Lokalise

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フランスが12.5兆円の経済刺激策を発表、デジタル分野に8790億円注入

フランス政府は現地時間9月3日、経済回復を促す1000億ユーロ(約12兆5500億円)の景気刺激策を発表した。この額はフランスのGDPの4%に相当する。刺激策の一環として、政府はかなりの額をスタートアップ投資、インフラ投資、デジタルトランスフォーメーションといったデジタル関係に注ぐ。

筆者は詳細を求めてフランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オ)氏にインタビューした。結論からいうと、フランスはデジタル投資に70億ユーロ(約8790億円)を充てる。これは今後2年間の新規投資計画だ。

2020年初めに展開された経済救済計画とは異なるものとなる。経済救済は、経済危機初期の急場しのぎのものだった。

「70億ユーロという額で、デジタル部門は環境部門を除く全部門の中で最も大きな投資を受けるということだ」とセドリック・オ氏は述べた。

フランスのデジタル相であるセドリック・オ氏。画像クレジット:Ludovic Marin / AFP / Getty Images

テックスタートアップへの投資

10年前、フランス政府は科学的研究からR&D支出に至るまで、イノベーションに焦点を当てた投資プログラムを立ち上げた。政府は4回目のプログラムを実施する。

これは110億ユーロ(約1兆4000億円)の投資計画で、多くの事業をカバーする。しかし8億ユーロ(約1000億円)近くは今後数年間のスタートアップへの国庫補助に充てられる。

「かなりの増加だ」とセドリック・オ氏は話した。「(公的投資銀行の)Bpifranceが管理するイノベーション補助をみると、60%増加している。スタートアップはすでにそうしたスキームが本当にいいものだと知っている。すぐさまインパクトが出てくるだろう」。

加えて、イノベーションプログラムの一環として、フランスは今後5年間で25億ユーロ(約3140億円)スタートアップに投資する。Bpifranceが従来のVCファームとして介在する。

直接投資戦略についての詳細は今後明らかになるが、サイバーセキュリティや量子コンピューティング、環境技術などへの垂直的な投資が予想される。

ファンド投資戦略の資金に関しては、最終目標は2つある。シードラウンドやシリーズAラウンドにフォーカスした小規模のVCファンドへの投資の維持と、レートステージファンドでのギャップの解消だ。

「危機はより多くの起業家が絡み、整理統合があり、そして機会がある移行期だ。フランスの企業が、外国企業に買収されるのではなく合併するようにしたい」とセドリック・オ氏は話した。

テックエコシステムへの現金の注入は、フランスのテック大企業がさらに多くの資金を得て中小企業を買収できることを意味する。政府によると、公共投資を通じての比較的大きなスタートアップのサポートは広範に渡ってテックエコシステムに恩恵をもたらしえる。そうでなければ、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)といったテック大企業が将来性のあるフランスのスタートアップを買収するだろう。

テック部門と経済全般のギャップを橋渡し

過去3年間、寛大な政策でフランスのスタートアップをサポートし、その一方で市民の大半が恩恵を受けられていないと多くの人がEmmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領を批判した。だからこそ、今回の刺激策はテックスタートアップだけに焦点を当てたものではない。

「将来のためにかなりの投資をし続けなければならない。しかしそうした投資からみんなが恩恵を受けるものにしなくてはならない」とセドリック・オ氏は述べた。

スタートアップは他の企業よりも多く雇用するが、往々にして探しているのはエンジニアやデータサイエンティスト、顧客サクセスマネジャーだ。多くの人が失業に直面することを考慮し、政府はテック部門の教育に3億ユーロ(約380億円)を充てる。

また、大半のフランス企業がテック企業ではないため、政府は中小企業のデジタルトランスフォーメーションに3億8500万ユーロ(約480億円)を注ぐ計画だ。

デジタルトランスフォーメーションというのは極めて広汎だ。デジタルインボイスの導入から、eコマース店の立ち上げ、工業生産のための最新設備の購入などまで広くカバーする。かなり細分化されたマーケットであり、刺激策で最も困難な部分となりそうだ。

「この計画の運用は我々が体験する大きな課題の1つとなるだろう。フランスには300万もの企業があり、うち半分の150万は中小企業だ。そうした企業にアクセスすることはこれまでは困難だった」とセドリック・オ氏は話した。

中小企業に加え、自動車メーカーと航空業界にはデジタルトランスフォーメーションで2億ユーロ(約250億円)が注がれる。

政府はまた、高齢者のサポートを行う公的機関のデジタルインクルージョンと、管理事務の簡素化に2億5000万ユーロ(約310億円)を充てる。フランスは過去にもデジタルインクルージョンに予算を組んだが、前回の規模はわずか1500万ユーロ(約19億円)だった。

他にインフラへの公的支出がある。ファイバーネットワークへの2億4000万ユーロ(約300億円)、広報システムの近代化に17億ユーロ(約2130億円)などだ。

全体的に刺激策は野心的な内容だ。スタートアップは何かしら新たな国庫補助や投資機会を利用する方法を見つけるだろう。従来の企業も同様に恩恵を受けることを望む。

関連記事:フランスが新型コロナで打撃を受けるスタートアップ救済に約4780億円注入

カテゴリー:ニュース

タグ:フランス

画像クレジット: Ludovic Marin / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

リモートでも同僚との自然発生的な会話やカジュアルなコラボを実現するTeemycoの仮想オフィス

ストックホルムのスタートアップであるTeemycoを紹介しよう。彼らは仮想環境の中でオフィスでのやりとりを再現することを狙っている。部屋をイメージしたインターフェイスを使って、自然発生的な対話や、カジュアルなコラボレーションを促進したいと考えているのだ。それぞれの従業員は、実際のオフィスのように、ある部屋から別の部屋へと移動する。

もし実際のオフィスで仕事をしなくなっているなら、おそらくメール、Slack、Microsoft Teams、Zoom、Google Meetあるいはこれら全部を組み合わせたものに大きく依存しているのではないだろうか。こうしたツールは、果たすべき用途に対しては完璧に機能するものの、多くの企業は大切な情報が失われていると感じている。コーヒーマシンの前で居合わせた同僚に、気軽な質問をするというわけにはいかないからだ。

Teemycoを使用する場合、各ユーザーは仮想部屋で作業を行う。デフォルトでは、ロビーで作業することになる。ロビーは複数の机が置かれたオープンスペースと考えることができる。事前に予定されていてもいなくても、会議を行いたいときには、ロビーから他のユーザーたちを呼び集めて、新しい部屋を作ることができる。

その新しい部屋の中で、音声通話やビデオ通話を始めることができる。画面の隅に同僚たちを表示しながら、自分のドキュメントに集中したり、全画面でビデオ通話を行ったりすることもできる。用事が終わったら部屋を出ていくことができる。

こうしたやり取りは、ビデオ会議サービスで体験するものよりは堅苦しくない。Zoomルームへのリンクを送信する必要はないし、カレンダーを使った招待状を送信する必要もない。ただみんながふらりとやってきたり、ふらりと去っていくだけだ。

もし重要な作業をしている場合には、フォーカスルーム(集中部屋)に移動して、15分ごとに割り込まれたりしないようにすることもできる。他の人が仮想デスクからあなたを引き剥がすことはできない。もしトイレに立つときには、外出中を掲げた部屋に自分を置いておくことができる。そうした部屋はステータス表示として利用することができる。

またTeemycoを使って、お気に入りの同僚の隣で作業することもできる。部屋を作成しトランシーバー機能を使用して、一日中素早くやり取りを続けることができる。そしてもちろん、仕事に関係のない雑談のための休憩室を作ることができる。

Teemycoはまだ若い会社だ。この製品はベータ版のみが提供されている。同社はLuminar Venturesが主導しAntler、Gazella、その他の複数のビジネスエンジェルたちが参加したシードラウンドで100万ドル(約1億1000万円)を調達した。

またこの製品はどんな企業にも役立つわけではない。例えば何百人もの従業員を抱える企業に適しているかどうかはわからない。内向的な人は、リアルタイムコミュニケーションを好まないかもしれない。

リモートファーストの企業であれば、透明性のある文化(未訳記事)を持つことが重要であることを理解しているだろう。書面による情報は、ビデオ会議よりも常に透明性が高い。

それでも企業文化によっては、Teemycoのようなものが役立つ場合があるだろう。それを使うことで、共有ドキュメントや内部コミュニケーションツールに保存されている情報を補強することができる。

これは、物理的なオフィスとリモートチームを比較する避けられない議論が、単なる二元論的な問題ではないことを証明する興味深いプロダクトだ。なお企業は特定のニーズに応じて様々な調整を行うことができる。

カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Teemyco リモートワーク

画像クレジット:Teemyco

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(翻訳:sako)

フランス拠点のKlaxoonが投票やブレスト、サーベイなどビデオ会議用の新インタラクティブ製品を準備中

フランスのスタートアップKlaxoon(クラクスン) は、現在Board(ボード)という名の新製品をテストしている。Boardは、9月後半のある時点でローンチされる予定だ。Boardは、Microsoft Teams、Zoom、Google Meetなどのビデオ会議サービスに直接接続する新しいビジュアルインターフェースである。

Klaxoonという企業は、会議をより魅力的で、退屈の少ないものにしようと取り組んでいるスタートアップ。さまざまなユースケースに合わせて調整された一連のツール(Klaxoonサイト)を提供してきた。たとえば投票およびブレインストーミングモジュール、質問やサーベイなどを通じてフィードバックを収集できる複数の機能などがある。会議の主催者は、フィードバックを集めて、会議の分析を行うこともできる。

Klaxoonはすでに会議室用のインタラクティブホワイトボード(Klaxoonサイト)を提供しているが、おそらく現在実際の会議室にチームが集まれる機会はないだろう。これが、Klaxoonがロックダウンの最中にBoardの作業を開始した理由だ。それはスマートフォン、タブレット、パソコンからアクセスすることができる。

Boardは、一連のインタラクティブツールをビデオ通話の中にまとめたものだ。それは利用者がテキストを書いたり、画像やビデオを挿入するために使用できる空白のキャンバスを与えてくれる。テンプレートから始めて、通話中に記入していくこともできる。通話に参加しているほかの人たちは、いいね、投票、質問を使用して反応することができる。

起動した画面は以下のようなものだ。

Klaxoonがこれまで会議中に使用される付箋やその他のローテクソリューションを置き換えるために一生懸命取り組んできたことを考えると、同社は現在、有利な位置にあるように思える。多くの企業は、近い将来に物理的オフィスを再開する予定はないままだ。

Klaxoonは長い時間をかけて5500万ドル(約58億4000万円) を調達しており、現在の従業員数は240だ。Fortune 500企業の15%がそのサービスを利用している。

画像クレジット:Klaxoon

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(翻訳:sako)

14.7億円超を調達したメキシコのチャレンジャーバンクFondeadoraとは?

メキシコシティを拠点とし、フルスタックのネオバンクを構築しようとしているフィンテックスタートアップであるFondeadora(フォンデアドラ)を紹介しよう。同社は、グーグルのAIに特化したベンチャーファンド「Gradient Ventures」(グラディエント・ベンチャーズ)が主導する1400万ドル(約14億7500万円)のシリーズAラウンドで資金を調達したばかりだ。2018年に設立された同社はすでに15万口座を管理し、毎月2000万ドル(約21億円)の預金を増やしている。

メキシコでは、多くの人々が取引のほとんどをいまだに現金に頼っているため、チャレンジャーバンクにとって大きなチャンスがある。世界各国でカードやデジタル決済への移行が進んでいることを考えると、Fondeadoraを立ち上げるのに適切な時期だったようだ。

なお今回のシリーズA調達ラウンドには、Y Combinator、Sound Ventures、Fintech Collective、Ignia、起業家であり投資家のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏が参加した。

Fondeadoraの共同創業者で共同CEOを務めるNorman Müller (ノーマン・ミュラー)氏は、「我々は約10年前にメキシコで最初のクラウドファンディングプラットフォームを立ち上げました。しかしカード決済の約50%がシステム上のトラブルで失敗しました」と語る。

そのプラットフォームも「Fondeadora」と呼ばれていた。クラウドファンディングプラットフォームのKickstarterとの取引を経て、ミュラー氏とFondeadora共同創業者のRené Serrano(ルネ・セラーノ)氏は初心に戻り、クラウドファンディング・プラットフォームを運営している間に抱えていた問題点を考えた。それが現在のFondeadoraとなり、メキシコの銀行体験を向上させたいと考えているチャレンジャーバンクになったわけだ。

Fondeadoraの設立チームはメキシコ中を旅して、利用できる銀行設立免許を探したそうだ。「手に入れたのは、メキシコのトマト農家のグループが所有していた銀行設立免許でした。20年前、政府は金融包摂(金融サービスへのアクセス増加)を実現するために約10件の銀行設立免許を与えていました」とミュラー氏は振り返る。

同社はこの銀行設立免許を得て、銀行サービスを開始した。支店に行かなくても口座を開設でき、契約者にはMastercardのデビットカードが送られてくる。購入後の通知の受信、カードのロックとロック解除、他のユーザーへの即時振込なども可能だ。月々の利用料は無料で、海外送金手数料もかからない。

次の目標としては、普通預金口座を使いやすくしたいと考えている。「『現金』には素晴らしいUI/UXが備わっています。触ってもいいし、引き出しに入れてもいい。しかし、収入を得るための媒体としてはひどいものです」とミュラー氏は語る。

今後数カ月の間に、Fondeadoraの口座に預けた預金に利息がつくようになる。「私たちは国債に投資しています、それは非常に安全なタイプの金融商品です。メキシコでは5%や6%の金利を得ることができます」とミュラー氏は説明する。このスタートアップのサービスでは、預金のごく一部を中程度のリスク投資にも配分することができる。

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画像クレジット:Fondeadora

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(翻訳:TechCrunch Japan)

フェイスブックがフランスで132億円超の追徴税を支払う

Facebook France(フェイスブック・フランス)は追徴課税約1億2500億ドル(約132億円)を支払う見込みだ。フランスのビジネス誌であるCapitalが最初に報じている。フランス税務当局は2012年にパリのフェイスブック事業所の強制捜査を行い、その後2009年から2018年にわたる未払い税の捜査を開始した(L’Express記事)。

「今年我々は2009年から2018年について税務当局と和解に達し、1億600万ユーロ(約132億円)を支払うことに合意した。我々は納税義務を真摯に受け止めおり、全世界の税務当局と密接に連携し、フランス税務当局との例と同様、あらゆる税法に則り問題を解決することを確約する」とフェイスブックの広報担当者はTechCrunchに語った。

捜査によると、フェイスブックは売上を欧州他国の子会社に付け替えることによって、フランスでの実効税率を最適化しようとした疑いを持たれている。

これはグレイゾーンだ。なぜなら売上を他国に移すことは合法だからだ。しかしフランスに拠点を持ってフランスの顧客に販売する販売員が1人もいないことを証明する必要がある。そうでない契約はフランスでの契約として再区分される。

多くのテック企業が同じ問題でフランスに追徴課税を支払わなくてはならなかった。例えばGoogle(グーグル)は2019年に5億4900万ドル(約581億円)の罰金と5億1000万ドル(約540億円)の追徴課税を支払うことに合意した。同様にApple(アップル)も、5億7200万ドル(約607億円)の追徴課税支払いに合意した

これはフランス当局の新しい戦略だ。企業は税務当局と直接和解することで、公での戦いを避けることができる。そうすることで大衆の反発を軽減し、手続きを迅速化できる。2018年にAmazon(アマゾン)(未訳記事)は、和解した最初の企業となった。

「我々は事業を営むすべての市場で支払うべき税金を納めている。2018年以降、当社は販売構造を変更し、フランスにいるチームが取り扱う広告主による収益はこの国で計上している。2020年に当社はフランスで846万ユーロ(約11億円)の税金を納めており、これは2019年より50%近く多い」とフェイスブックの広報担当者はTechCrunchに語った。

さらに注目すべきなのは、同社のフランスでの売上が2017年の5600万ユーロ(約70億円)から2018年には3億8900万ユーロ(約486億円)へと急増したことであり、1年間に600%近く売り上げを伸ばした。

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カテゴリー:ネットサービス

タグ:Facebook フランス

画像クレジット:Peter Foley/Bloomberg/ Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WordPress.comが社内コミュニケーションツールのP2をリリース

Automatticの1部門であるWordPress.comが「P2」という新しいプロダクトをリリースした。これは非公開グループの内部コミュニケーションを向上させることを目的としたプロダクトだ。リモートで業務をしているAutomatticは、何年にもわたって社内でP2を使って非同期でコミュニケーションをとってきた。P2は長期間共有する投稿やオンボーディング用のドキュメントなどずっと利用される重要な書類を置いておく場所だ。

P2はWordPress上に構築されている。チームメンバー間で考えを共有するというコンセプトに基づいて大幅にカスタマイズされた、チーム向けWordPressのように思える。今や多くの企業が複数の社内コミュニケーションツールを利用している。P2はそうしたツールの一部を置き換えるものになるかもしれないが、コミュニケーションツールを完全に刷新することを目指しているわけではない。

例えばP2はSlackの競合ではない。リアルタイムのチャットには利用できないからだ。しかしP2を重要な通知の共有に使うことはできる。イントラネットのポータルに置いておくような通知のことだ。

画像クレジット:WordPress.com

P2は長期にわたるプロジェクトにも使うことができる。またチーム専用のP2を作ることもできる。この場合、P2はFacebookのWorkplaceやMicrosoftのYammerの直接の競合になる。非同期コミュニケーションの効果を上げるために、P2にはシンプルなWordPressのブログより便利な機能がいくつかある。

例えば、同僚に「@」付きのメンションで通知を送ったり、投稿をフォローして最新情報を受け取ったりすることができる。チェックリストの作成、PDF書類の埋め込み、重要なポストをホームページの最上部に固定、自分が離れていた間の情報のフォローといった機能もある。新規の投稿やコメント、自分宛のメンションを見るための専用メニューもある。

理論的には従来のWordPressのバックエンドにもアクセスできるものの、P2を離れなくても新規投稿を書いたり既存の投稿を編集したりコメントを付けたりすることができる。新しいブロックエディタで見出しやリスト、埋め込みのビデオやメディアを追加して視覚的に編集することができるようになっている。SquarespaceのエディタやNotionにちょっと似ているもので、参照している、あるいはコメントを付けようとしているコンテンツのすぐ横にある新しいエディタを活用するのは大いに理にかなっている。

常に参照できるコンテンツとして、特定の公開日を設けずコメントを付けられないドキュメントを作成する機能もある。このようなドキュメントはカテゴリーで整理され、全社で簡単に共有できる。社内のポリシーやガイドライン、重要な連絡先情報などのドキュメントに利用できるものだ。この種のドキュメントの管理にはGoogleドキュメントやGoogle Driveの共有フォルダを利用している企業が多い。P2はそうした共有フォルダの代替として情報の主要なリポジトリになる可能性がある。

デフォルトではP2のサイトは非公開だが、自社プロダクトの最新情報をクライアントと共有したい場合や、P2を公開イベントに利用したい場合は、サイトを公開することができる。

WordPressのエコシステムをよく知っている人なら、P2というWordPressのテーマをご存じかもしれない。米国時間8月6日に発表されたP2は新しいプロダクトで、以前のP2のアイデアをさらに推し進めたものだ。Automatticはこのコンセプトをイテレーションし、同社の1300人の従業員で912個もの社内P2サイトを利用してきた。

WordPress.comはP2インスタンスをホストして提供する。誰でもP2を無料で作成し、他の人を招待できる。WordPress.comは将来的には有料サブスクリプションで高度な機能を提供する計画だ。つまり、P2をSaaSプロダクトにしようとしている。その一方で、セルフホスティング可能なオープンソース版も引き続き提供される予定だ。

筆者はP2インスタンスをいくつか立てて使ってみた。デフォルトではWordPressの複雑さが隠されていて良いというのが全体の印象だ。目的が明確なすっきりとしたプロダクトで、全社的なメールとSlackの中で行方不明になりがちな通知の間を埋める存在として特に有効だろう。

画像クレジット:WordPress.com

画像クレジット:Dylan Gillis / Unsplash

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(翻訳:Kaori Koyama)

日本進出も果たした英フィンテックスタートアップRevolutが約85億円調達、サブスク管理ツールなどの導入も計画

フィンテックスタートアップのRevolut(レボリュート)が、2020年2月に発表したシリーズDラウンドの一環として8000万ドル(約85億円)を調達したと発表した。新たな資金はTSG Consumer Partnersからのものだ。

同社は2020年2月、TCVを筆頭にして5億ドル(約530億円)を調達し評価額が55億ドル(約5840億円)に達した。本日の新たな資金調達は、その資金調達ラウンドを5億8000万ドル(約620億円)に拡大した。なお、同社は自社の評価額は変わらないと述べている。

Revolutをよく知らない人のために説明すると、同社は従来の銀行に代わる金融サービスを構築している。アプリから数分でアカウントを開設でき、アプリからお金を受け取ったり、送ったり、使ったりできる。またデビットカードも使えて、通貨を交換することもできる。

さらにRevolutは機能セットを拡大し、今や金融ハブ、お金に関連するすべてのもののためのスーパーアプリになろうとしている。例えば携帯電話に保険をかけたり、旅行用医療保険に加入したり、仮想通貨を購入したり、株式を購入したり、慈善団体に寄付してRevolutで節約もできる。

Revolutによると、今回の投資では米国向けに新機能を追加し、またヨーロッパ全域での銀行業務の展開に使われるという。Revolutは最終的にはヨーロッパ全域でクレジット商品を提供する予定だ。

Revolutはサブスクリプション管理ツールにも取り組んでいる。これを使えばユーザーはアクティブなサブスクリプションをすべて確認したり、Revolutから解約したり、無料トライアルが終了した際にアラートを受け取ることができる。

現在、Revolutには1200万人の登録ユーザーがいる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

衝突も検知するプレミアム電動自転車開発のCowboyが約28億円を調達

Cowboy(カウボーイ)は、Exor Seeds、HCV、Isomer Capital、Future Positive Capital、Index VenturesからシリーズBラウンドで2300万ユーロ(約29億円)を調達した。このスタートアップはプレミアム電動自転車を製造し、ヨーロッパの消費者に直接販売している。

同社は最近、フラッグシップ電動自転車の第3世代モデルを発表したが、これは既存製品の改良にとどまっている。製品は三角形のアルミフレームに、円筒形のライトが組み込まれているのが特徴だ。

車体はシンプルさを重視し、モーターアシストを制御するギアやボタンは搭載されない。ペダルをこぎ始めると、モーターが自動的に作動する。主要な特徴は、カーボンベルト、パンク防止層を備えたカスタムタイヤ、取り外し可能なバッテリーだ。

さらに同製品はコネクテッドバイクに相当し、自転車を使っていないときには車体をロックできる。同社は現在、Bluetooth Low Energyを利用してスマートフォンを検知したときの自動アンロック機能をテストしている。さらに加速度計や自転車の速度、ペダルの踏力からのデータを組み合わせることで衝突を自動的に検知し、緊急連絡先を知らせることもできる。

Cowboyは自転車のデザインだけでなく、サービスも提供する。同社は修理パートナーのネットワークを構築し、潜在的な顧客に試乗体験を提供している。これは現在、ヨーロッパの数十都市で利用できる。

同社はQoverとの提携により、保険商品も提供している。盗難保険に加入していれば、月額8ユーロ(約1000円)で誰かが自転車を盗もうとしているときにリアルタイムで通知を受け取ることができる。月額10ユーロ(約1200円)なら、損害保険にも加入できる。

本日の資金調達ラウンドで、同社は今後6カ月間に30人以上を雇用しつつ試乗会のネットワークを拡大し、Flexにより生産オペレーションをスケールアップする計画だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ノーコードで誰でもモバイルアプリをテストできる「Waldo」

Waldo(ウォルドー)を紹介しよう。素早く簡単に、開発中のモバイル用アプリのテストが可能なソフトウェア製品だ。ニューヨークを拠点とするこのスタートアップのアプリを使えば、いつも使っているブラウザー上で、普段どおりに開発中のアプリを操作できる。新しいビルドをコンパイルするごとにWaldoは、前回複数のソフトウェアやハードウェアで記録したものと同じテストを実行し、問題なく動作するかどうかを教えてくれる。

アプリ開発者なら、今は次の2つのいずれかの問題に悩まされているはずだ。いくつものスマートフォンをそろえて、それぞれで新しいビルドを実行して検証するのは大変な時間がかかる。アプリの中核的機能を実証するためのテスト用スクリプトを記述するという方法もあるが、そのための新たな苦労が発生し、頭痛の種が増える。

「素晴らしいユーザーエクスペリエンスを生み出しても、そのアプリをテストする方法が時代遅れというのは困ったことです」とCEOのAmine Bellakrid(アミン・ベラクリド)氏は話す。

Waldoは、モバイルアプリ開発の参入のハードルを下げ、小さな開発チームでも、機能やユーザーインターフェイスが自動的にテストできる恩恵が受けられるようにと考えた。これは、技術的なスキルを必要としない「ノーコード」スタートアップという大きなトレンドに沿うものだ。

同社は、Josh Kopelman(ジョシュ・コペルマン)氏が創設したFirst Round Capital主導による投資ラウンドで650万ドル(約7億円)を調達した。このラウンドには以前からの支援者であるMatrix Partnersと、複数のビジネスエンジェルも参加している。

Waldoのテスト方法はきわめてわかりやすい。開発中のアプリ(.app、.ipa、.apk)を直接実行できるため、プラットフォームに合わせたバージョンをわざわざ作る必要がない。

アプリをWaldoにアップロードすると、ブラウザーのウィンドウにアプリの操作画面が表示される。Waldoは、すべての画面とすべての操作を記録する。例えば、サインアップの手順や、コンテンツをアップロードする機能などだ。

画像クレジット:Waldo

Waldoは、テストの記録を将来のバージョンのために保管しておく。それにより、そのモバイルアプリの新しいビルドができるごとに前回行ったものと同じテストを、画面サイズ、OSのバージョン、言語が異なるいくつものデバイスで実行できるわけだ。

問題が見つかると、その旨が通知される。ユーザーはテストのリプレイを見ることができる。はっきりと原因がわかるため、問題のあるステップを簡単に特定できる。

Waldoは、ひとたびセットアップしたならあとはバックグラウンドで実行させておける。Fastlane、Bitrise、CircleCIといった標準的な継続的インテグレーション・ツール(CI)に統合できるため、問題発生の通知をSlackで受け取ったり、テストの状況をGitHubで直接見たりすることもできる。

「私たちの顧客には、毎週500回ものテストを同時に実行しているところや、1日に10回から15回のテストを何回も行っているところもあります」とベラクリド氏は言う。

Waldoは、本日お試し用の無料プランをローンチした。もっと多様なテストを実施したい場合は、有料サブスクリプションを利用することになる。すでにWaldoを使い始めている企業もある。AllTrails(オールトレイルズ)、Jumprope(ジャンプロープ)、KeepSafe(キープセーフ)、Elevate(エレベート)などだ。現在はiOSのみの対応だが、将来のAndroidの対応に向けた開発もすでに着手している。

画像クレジット:Waldo

画像クレジット:Obi Onyeador / Unsplash

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(翻訳:金井哲夫)

ライティングアプリUlyssesがアップデート、ダッシュボードや文法チェック機能を搭載

Mac、iPhone、iPad用の人気ライティングアプリでありUlyssesがアップデートされ、新機能がいくつか加わった。ユーザーインターフェイスが若干変更され、新たに右側のコラムがダッシュボードになった。文法とスタイルのチェックも追加され、Apple(アップル)のプラットフォームで提供されている機能よりも進化した。

ダッシュボードから見てみよう。これまでにもあった要素が新しいコラムにきちんとまとめられている。これまでは、ボタンをクリックして文書の統計情報を表示し、別のボタンをクリックして文書のアウトラインを表示し、さらにクリップの形のボタンをクリックして添付ファイルやメモ、タグ、目標にアクセスしていた。

統計情報を目標と一緒に見られないのは、ちょっと不便だった。また、ポップオーバーメニューをドラッグすると自動で閉じないことを知らなければ、アウトラインをドキュメントと並べて表示しておくこともできなかった。

新バージョンでは、すべてが3つのボタンにまとめられている。「共有」「マークアップメニュー」「ダッシュボード」だ。ダッシュボードには複数のタブがあり、ほとんどのタブでウィジェットをカスタマイズすることができる。

例えば、右コラムのアウトラインと文書を並べておけるのは、これまでよりずっと便利だ。見出しや小見出しをクリックして、その箇所にジャンプできる。脚注や画像、リンクの一覧も表示できる。新しいダッシュボードは、iPadやiPhoneでも利用できる。

画像クレジット:Ulysses

スペルチェックに関してはUlyssesはずっとアップルのネイティブの機能を利用していて、スペルミスがあると赤い下線で示される。

しかしUlyssesはLanguageTool Plusと統合することで、アップルのデフォルトの機能を超えた。LanguageTool Plusはブラウザで動作し、他社の開発者向けにAPIを公開している校正サービスだ。この新機能により、Ulyssesから書き出さなくても文章を確認できるようになった。

LanguageTool Plusはフリーミアムの製品で、2500文字以上のチェックには有料のサブスクリプションが必要だ。例えばこの記事の原文である英文記事は2500文字より少し多く、2500文字という制限はすぐに超えてしまいがちだということがわかる。Ulyssesユーザーなら、文法とスタイルのチェックはサブスクリプションに含まれている。

この機能ではスペルミスだけでなく、句読点の誤り、冗長な表現、タイポグラフィ、スタイルなども分析される。Grammarlyとの比較でいうと、LanguageTool Plusは20以上の言語に対応している。指摘を受け入れるか無視するかを1つひとつ判断したり、ダッシュボードでカテゴリーごとに見たりすることができる。

文法とスタイルのチェックは現時点ではMac版でのみ利用でき、iPhoneとiPadでは年内に利用できるようになる予定だ。

画像クレジット:Ulysses

画像クレジット:Ulysses

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(翻訳:Kaori Koyama)

アップルがiOS 14、iPadOS 14の公開ベータをリリース

アップルはiPhoneとiPadのOSについて今秋のメジャーアップデートを予定しているが、そのiOS 14とiPadOS 14の最初の公開ベータ版がリリースされた。これはiOS、iPadOSがこれからどうなるのか知るいい機会だ。

デベロッパー向けベータ版とは異なり、99ドルが必要なデベロッパーアカウントを持っていなくても誰でも今回のベータ版をダウンロードできる。しかしベータ版だということは忘れないほうがいいだろう。

iOSおよびiPadOS 14.0の製品版のリリースはあくまでこの秋だが、同社は今後数週間ごとに新しいベータをリリースする。 これはできるかぎり多数のバグを修正すると同時に、ユーザーから大規模にフィードバックを得るためだ。

これまで同様、アップルの公開ベータはデベロッパー向けベータのリリースサイクルに連動している。同社は今週初め、iOSとiPadOS 14の2番目のデベロッパーベータをリリースしている。両者を比較すると、公開ベータはデベロッパーベータのバージョン2とほぼ同じビルドのようだ。

日々利用しているメインのアップルデバイスにはベータ版をインストールしないほうが安全だ。単なるバグではなく、まったく作動しないアプリや機能もあるし、レアケースではあるが、デバイス自体が反応しなくなる可能性もある。iCloudに保存したデータを失うリスクさえあるかもしれない。利用には充分な注意を払う必要がある。

と、断ったうえで、ダウンロードは次のような手順となる。アップルのベータ版サイトにアクセスして、コンフィギュレーション・プロファイルをダウンロードする。 これは製品版アップデートと同じように、アップデートの通知をiPhoneとiPadに送ってくる小さいプログラムだ。

インストールしたいiOSデバイスのSafariからコンフィギュレーション・プロファイルを直接ダウンロードしてもいいし、ほかのデバイスにダウンロードしてからAirDropを使ってターゲットデバイスに転送してもいい。デバイスを再起動して「設定」を開く。9月にデバイスは自動的にiOSおよびiPadOS 13の最終版に更新される。その後はコンフィギュレーション・プロファイルを削除できる。

すでに説明したように、iOS 14の最大の変更はホーム画面でウィジェットが使えるようになった点だ。これにともない、すべてのアプリを表示するアプリライブラリが導入され、アプリをダウンロードしてインストールせずに一部の機能をその場で実行できるApp Clipsが使えるようになった。

これ以外にも当然広範部分で改良されている。メッセージでは@メンションと返信によるグループ機能に重点が置かれているようだ。翻訳アプリはクラウドにデータを送り返さず、デバイス内で作動する。一部の都市では純正の「マップ」アプリに自転車ルートのナビ機能が加わる。メモ、リマインダー、天気、ホームなどもアップデートされている。

今回リリースされたiOS 14の公開ベータについては別記事(未訳記事)で詳細を紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

複数のクラウドプロバイダ間でデータの取得・処理・保存ができるサーバーレススタートアップKoyeb

長年、Online SAS(Online.net)が展開するパブリッククラウドサービスのScalewayで働いていたYann Léger(ヤン・レジェ)氏、Édouard Bonlieu(エドアール・ボンリュ)氏、Bastien Chatelard(バスティアン・シャトラー)氏が創業したフランスの新しいスタートアップであるKoyeb(コイェブ)を紹介しよう。Koyebはサーバーのインフラにとらわれずにデータをさまざまな方法で操作できるようにするサーバーレスのスタートアップだ。

クラウドサービスプロバイダの競争が激しくなっている中、Koyebはその競争を利用しようとしている。同社のサービスは複数のクラウドサービスプロバイダと統合しており、厄介な作業を任せることができるのだ。

クラウドプロバイダ大手のDigitalOceanが、管理するオブジェクトストレージバケットに大量のビデオを保管しているとしよう。あなたはそのビデオを再エンコードして新しいデバイスに最適化したいと考えるかもしれない。Koyebはバケットからデータをインポートし、ビデオを再エンコードし、新しく作られたファイルをバケットにアップロードすることができる。

しかしKoyebは、複数のサービスとAPIの組み合わせでさらに一歩先へ進んでいる。クラウドのプラットフォームは賢くなり、サーバーを稼働させてデータを保管することだけに止まらないサービスを提供している。

例を挙げれば、Google Cloudの音声認識エンジンであるSpeech-to-Text APIは間違いなくAmazon Transcribeより優れている。Koyebを利用すれば、複数のクラウドを利用するワークフローを手作業でセットアップすることなく、AWSのS3バケットからビデオファイルを取得し、ビデオファイルのオーディオをGoogle Cloudで文字に起こし、その結果をAWSのS3バケットに保存することができる。

S3互換のオブジェクトストレージプロバイダから別のところへデータを毎日コピーして冗長性を持たせることから、APIコールでデータ処理をトリガーすることまで、Koyebのユースケースはたくさんある。あらゆる処理が自動でスケールし、ワークフローが完了すれば稼働時間に対してそれ以上課金されることはない。

データソース(入力と出力)との統合やすぐに使えるAPIがすでにいろいろと用意されている。コマンドラインインターフェイスまたはKoyebのAPIを使って、複数の処理をすべてウェブのインターフェイスで構成できる。

Koyebはステルスから姿を現したばかりで、すでに製品のアップデートに取り組んでいる。例えば将来的にはDockerコンテナやカスタム関数を使えるようになり、さらに多様なワークフローを組めるようになるだろう。滑り出しは上々だ。

画像クレジット:Taylor Vick / Unsplash

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(翻訳:Kaori Koyama)

電動自転車シェアのBoltがパリを皮切りに欧州展開へ

配車サービス企業と同様に、Bolt(ボルト)も新型コロナウイルスによる世界規模のロックダウンや経済低迷に苦しんできた。しかし同社は電動自転車のサービスをパリで立ち上げることで新たな収入源を確保しようとしている。Boltは同様のサービスを今年、欧州諸国の首都で展開する計画だ。

過去数週間、パリで展開された唯一の自転車シェアリングサービスは、ドック設置型の普通自転車と電動自転車を扱う公共サービスVélib’(ヴェリブ)だ。Gobee.bike(ゴービーバイク)やObike(オーバイク)、Ofo(オフォ)、Mobike(モバイク)など多くの民間企業もVélib’と競おうと試みたが、これまでのところいずれも失敗に終わっている。

直近の失敗例は、Uber(ウーバー)のマイクロモビリティ子会社Jump(ジャンプ)だ。Limeとの売買取引で、Jumpはパリ、ロンドン、ローマ、ブリュッセル、その他の都市の路上から全ての自転車を撤去した。そうした電動自転車はいまLimeが所有しているが、同社はまだサービスを立ち上げていない(もしリローンチされるならの話だ)。

しかし自転車の人気がないというわけではない。パリの公共の自転車シェアリングサービスはこのところ絶好調で、利用は過去最多に達する勢いだ。人々がBoltの電動自転車を喜んで試そうとするか、様子をみることにしよう。

配車サービスとスクーターに加え、ユーザーは同じBoltアプリから自転車シェアリングサービスにもアクセスできるようになる。他の自転車シェアリングと同じように、ユーザーはQRコードをスキャンして自転車のロックを解錠できる。

値段はというと、Boltは最初のユーザーを引きつけるために可能な限り安く設定しようとしている。ロック解錠料金は設けず、使用1分あたり0.1ユーロ(約12円)とする。

ただ、値段設定に関しては、Vélib’のほうがもっと魅力的だ。電動自転車の30分のレンタルが2ユーロ(約240円)、1カ月乗り放題が8.3ユーロ(約1000円)だ。Boltの場合、20分の利用で2ユーロ。これは解錠代なしでの料金だ。

Boltは35カ国にユーザー3000万人を抱え、欧州の21都市でスクーターサービスを提供している。

画像クレジット: Bolt

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(翻訳:Mizoguchi

アップルの次期「マップ」ではビルの形状をiPhoneでスキャンして場所を絞り込める

iOS 14でApple(アップル)は、純正の「マップ」アプリに重要な新機能を加える予定だ。例えば、自転車のための経路指示、電気自動車(EV)のための経路案内、そしてキュレーションガイドといったものが含まれる。だがアプリにはさらに賢い機能も追加される。

正確な位置を取得できない密集した地域で「マップ」アプリは、ユーザーにiPhoneで通りの向こうのビルをカメラでスキャンするように促す。これにより現在地をより詳細に特定するのだ。

ご想像のとおり、この機能はGoogleストリートビューにインスパイアされた「マップ」アプリの機能である、Look Around(ルックアラウンド)に基づいている。Look Aroundは、通りを歩いていく際に、周囲の景色を見せてくれる機能だ。すべてが3Dで前景と背景を区別できるので、「マップ」アプリはストリートビューよりも多少洗練されている。

Look Aroundは現在のところ、サンフランシスコ、ニューヨーク、シカゴ、ワシントンDC、ラスベガスなど、ごく一部の米国の都市でのみ利用できる。だがアップルは今でも拡張を続けていて、6月29日にはシアトルへ、そして今秋には日本の主要都市への拡大が予定されている。徒歩でのみアクセスできるエリアの一部も、将来的には利用可能になる。ビルの形をスキャンして位置を調整しても、アップルはもちろんサーバーにデータを送信しない。マッチングはデバイス上で行われる。

キュレーションガイド機能に関しては同社は、AllTrails、Lonely Planet、The Infatuation、Washington Post、Louis Vuittonなどと提携して、キュレーションされた場所のリストをアプリに追加している。

検索バーをタップして検索カードを下にスクロールすると、近隣の場所に関するガイドが表示される。ガイドを開くと、地図上ですべての場所を表示したり、ガイド自体の中でそれらの場所をリストビューで表示したりすることができる。場所を共有してユーザー自身が作成したガイドに保存することも可能だ。同社は現在のバージョンの「マップ」ではそうした自作ガイドをコレクションと呼んでいる。

頻繁にチェックしたい場合には、キュレートされたガイドもまとめて保存しておくことができる。場所は自動的に更新される。

画像クレジット:Apple

EV経路案内については、ユーザーは「マップ」に自分の車のを追加し、名前をつけて、充電装置のタイプを選ぶことができる。現段階ではBMWならびにフォードと提携している。ルートを計画する際に、利用する車を選択できるようになった。電気自動車を選択すれば、「マップ」が途中の充電スポットを追加する。スポットをタップすれば、それが無料か有料かやコネクタのタイプを確認できる。

またWazeユーザーは、制限速度を超えている場合に「マップ」が警告できるようになることを知って喜んでいる。地図上に速度監視カメラと赤信号監視カメラの場所を表示することもできる。

渋滞ゾーンとナンバープレートによるアクセス規制がある一部の都市では、ナンバープレートを追加することができる。情報はデバイス上に保持される。そうした都市向けの経路指示も調整される。

画像クレジット:Apple

最後になるが、私のお気に入りの新機能は自転車向け経路指示だ。当初は、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、上海、北京でのみ利用できるようになる。アップルは、サイクリングパスや標高差といった、すべての適切なパラメーターを考慮に入れている。分岐点ごとの経路指示は、運転用の経路指示と比べるとフレーミングやより縦長のビューという点が異なっている。

Googleマップにも自転車用ルートが表示されるが、これは使い物にならない。「マップ」の自転車向け経路指示が実際に使い物になるのかどうかを試す日が待ち遠しい。「マップ」の新しいバージョンは今秋にiOS 14とともに出荷される。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:sako)

Chromeなどのウェブ拡張機能のSafariへの移植が容易に、アップルが開発環境を整備

Apple(アップル)は米国6月22日にmacOS 11 Big Surを発表し、Safariに加える改良についても言及した。ネイティブ拡張に加え、同社はウェブ拡張機能のサポートも追加する。Chrome、Firefox、Edgeブラウザの拡張機能を簡単に移植できるようになる見込みだ。

それがどのように機能するのか、アップルはWWDCセッションの中で詳細を明らかにした。Safariはすでに拡張機能をサポートしているが、もしあなたがSafariユーザーなら、それほど多くには対応していないことを知っているだろう。

iOSとmacOSでは、コンテンツブロッカーやシェア拡張機能に対応するアプリをインストールできる。コンテンツブロッカーでは、ウェブページが読み込まれる際に、トラッカーや広告などのブロックすべきコンテンツのリスト作成をできる。

シェア拡張機能では、Safariの共有メニューで機能を追加できる。例えば、「あとで読む」系のPocketやInstapaperはウェブページ上でJavaScriptを実行するためにシェア拡張機能を活用し、その結果をアプリに戻すといった具合だ。

macOSでは、デベロッパーはアプリ拡張機能も利用できる。パスワード管理ツールの1PasswordはSafariと統合するためにこの拡張機能を使っている。

「もしあなたが、すでにSwiftやObjective-Cになじんでいるネイティブアプリのデベロッパーなら、アプリ拡張機能かなり素晴らしいものです」とSafariエンジニアのEllie Epskamp-Hunt(エリー・エプスカンプ-ハント)氏は話した。

Safari以外のブラウザは異なるアプローチで各種機能を拡張している。具体的には、 JavaScript、HTML、そしてCSSのようなウェブ技術を活用してきた。だからこそアップルは、Safariのウェブ拡張機能に別のタイプの拡張機能を追加している。

ほかのSafari拡張機能のように、Safari用のウェブ拡張機能にはネイティブアプリが詰め込まれている。つまりこれは、デベロッパーがApp Store上で拡張機能を提供可能になることを意味する。ユーザーは拡張機能付きのアプリをダウンロードすることになるわけだ。

同社は、拡張機能を素早く移植できる拡張機能コンバーターも用意している。これを活用すると、予想したとおりにすべてが順調にいくかどうかが示される。その後、Xcodeプロジェクトに詰め込んでで署名したあとApp Storeに提出することができる。

一部の拡張機能はかなりの数のパーミッションを要する。これらはアクセスするすべてのウェブページを閲覧できる。だからこそアップルは一部のウェブサイトやアクティブなタブへの拡張機能を制限しているのだ。ユーザーはまた、ずっとではなく1日だけ拡張機能を起動させることも選べる。

拡張機能が初めてサイトにアクセスしようとすると警告が表示され、ユーザーのすべてのブラウジングデータにアクセスできる拡張機能がアクティベートされる前にはSafariの設定に大きな警告のバナーが表示される。

この変更は、将来多くのSafari用拡張機能が登場するかもしれないことを意味する。多くのChromeユーザーはChromeを離れたくない。同じような拡張機能がほかに見つからないからだ。もしデベロッパーが拡張機能をSafariに移植することを選べば、アップルはより多くのユーザーをSafariに引き込めるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi

アップルのARMベースMacは旧アプリをエミュレート、iOSアプリも動かせる

Apple(アップル)はMacの大きな方向転換を発表した。同社は将来、Intel製CPUをARMアーキテクチャーに基づくアップル独自のチップに置き換える。デベロッパーや特殊なエンタープライズアプリを動かしている人なら、今後どうなっていくのか気になることがたくさんあるだろう。

まず、アプリはIntelベースのMacとARMベースのMacの両方で動作するようにコンパイルできる。その両方の実行可能コードを含むアプリは、Universal 2と呼ばれる新しいフォーマットを使って配布される。Macをしばらく使っている人なら、アップルがPowerPC CPUからIntel CPUに切り替えた時にも同じ方式をとったことを覚えているだろう。1つのアプリに2つの実行ファイルが入る。

最適化されないソフトウェアもそのまま動作可能だが、性能はARM対応のネイティブアプリより劣る。アップルは、新しいMacで旧アプリを動かすためのエミュレーションレイヤーであるRosetta 2(ロゼッタ2)を提供する。

ARMベースのMacに古いアプリをインストールすると、システムがアプリを調べてARMプロセッサーに最適化しようと試みる。こうしてユーザーがアプリを開く前からある程度の最適化が行われる。

しかし、ウェブブラウザーや複雑なアプリなど実行時コンパイルする場合はどうなるのか?Rosetta 2は、アプリの実行時にもx86の命令をARMの命令へとリアルタイム変換する。

そして、サーバー上で動くコードを作っているデベロッパーのために、アップルはバーチャル化ツールも準備している。LinuxとDockerをARM Macで動かせる。

おまけとして、Macユーザーはこれまでになく大きなアプリライブラリーを利用できるようになる。「Macユーザーは初めて、iOSとiPadOSのアプリをMacで動かせるようになる」とアップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は語った。

詳しくは語られなかったが、iOSアプリのmacOSへの移植を容易にするアップル自身のフレームワークであるCatalystを使うことで、デベロッパーがmacOS向けに最適化していないアプリでもユーザーはダウンロードして実行できる。

移行には時間がかかり、おそらく2年程度は必要だろう。最初のARMベースMacは2020年末に出荷される予定だ。ARM Macへのアプリ移植に興味のあるデベロッパー向けに、クイックスタートプログラムが用意される。ドキュメントとプライベートフォーラムに加えて、アップルはA12Zシステムオンチップ搭載のカスタム版Mac Miniを提供する。こうしてデベロッパーは実際にARMチップが載ったMacで自分のアプリをテストできる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

iOS 14はホーム画面にウィジェットが来るなど大幅アップデート

オンライン・オンリーで開催されたWWDCのキーノートで、Appleは今年後半にリリースされる予定のiOSのメジャーバージョンアップ、iOS 14について初めて公式に詳細を発表した。ビジュアルでいちばん目立つ変化は、ホーム画面にウィジェットが追加されることだ。

Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長、クレイグ・フェデリギ(Craig Federighi)氏は「今年は、iPhoneの視覚的体験を再構築することに集中した。AppleはiOSのコアとなる要素のいくつかを再考した」と述べた。

周知のように、iOSにはすでに「今日」のビューでウィジェットを使っている。ウィジェットにアクセスするには、ホーム画面を左にスワイプすればよい。こうしたウィジェットは完全に新しく設計されており、 ディスプレイの全幅を使うものもあるし小さな正方形に制限できるものもある。ウィジェットは2列に表示できる。

しかしiOS 14ではウィジェットは「今日」のページに限定されない。「今日」からドラッグして、ホーム画面にドロップすることができる。 ホーム画面でアイコンを移動するときに新しく設けられたウィジェットギャラリーからウィジェットを追加できる。

 

ホーム画面の整理する場合、多くのユーザーが無数のアイコンを表示してしまうためかえってホーム画面を使いにくくしていることにAppleは気づいていた。そこでいくつかのスマートな整理機能が追加された。

フェデリギ氏は「今日のホーム画面の機能は素晴らしいが、アプリを追加するとすべて表示される。そのためページも増えていく」と述べている。

ホーム画面の最後にApp Libraryと呼ばれる新しいページが追加された。 ホーム画面に配置されないアプリはApple Arcadeなど、自動的にカテゴリ分類されてここに置かれる。

マルチタスクとホーム画面に関連する新機能のひとつは、iPadと同じようにiPhoneでピクチャーインピクチャーを使用できるようになった点だ。画面の隅にビデオを表示したままiPhoneで別の処理を行うことができる。

 

メッセージのグループ会話が改良された

Appleのメッセージは、WhatsApp、Telegramなど人気あるメッセージングアプリと競争するためにアップデートが必要だと以前からみられていた。今回、メッセージ・アプリを画面上部に固定して簡単にアクセスできるようになった。

会話機能そのもののアップデートとしては、個別のメッセージに返信できるようになった。また返信をタップして、会話を別のスレッドにすることができる。ユーザーは別のユーザーをメンションできるようになったので、「自分がメンションされたメッセージ」のみをフィルターして通知を受け取ることができる。

会話自体もさらにリッチ化され、写真や絵文字を挿入できるようになった。また、特定の連絡相手はアイコン表示される。メッセージに最も頻繁に現れる相手は大きなアイコンで表示される。

Appleの「ミー文字」には、新しい髪型、年齢、各種フェイスカバーなどの新しいオプションが追加された。 ハグする、こぶしバンプ、頬を赤らめるなどの新しい絵文字ステッカーも提供された。

マップなどのアプリ

Appleは地図アプリにも新機能を追加した。アメリカのマップは新データに更新されたが、他の国も独自データに基づくさらに優れたマップを展開する計画だという。イギリス、アイルランド、カナダでは新しくさらに詳細な地図が表示されるようになる。Appleは新しいデータセットによって新たな可能性を切り開く予定であり「これは最初のステップにすぎない」という。

バーチャル・カンファレンスにはマップのデザイン担当ディレクター、メグ・フロスト(Meg Frost)氏が登場し「iOS 14では、マップチームが信頼性の高いブランドと協力して各種のガイドを提供する予定だと述べた。フロスト氏にyろえばAppleマップは近々、AllTrailsやZagatなどの有名なソースからの情報をリアルタイムで見ることができるようになるという。

一部の都市では、Appleは移動手段に自転車を取り入れる予定だ。移動時間の推定には現地の標高も考慮される。自転車移動はまずニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、上海、北京に導入される。徒歩の経路案内では階段や急な坂道を避けるように設定することができる。

自動車のドライバー向けについてもEV向けルート設定や市街地の自動車進入制限情報の提供など機能が強化されている。自動車がCarPlayをサポートしている場合、駐車アプリ、EV充電アプリ、食品注文アプリなど、今後さらに多くのアプリが登場するはずだ。

iPhoneを車のキーとして使える機能を提供する自動車メーカーも出る。これには最新のiPhoneモデルのU1チップが利用される。iMessageを通じてこうした車のキーを送信し、自動車を友達と共有することができるようになるのは興味深い。

 

Siriと翻訳機能もリニューアル

Siriの精度にはややむらがあるが、Appleはこの音声アシスタントの改良を続けている。 Siriは起動時に画面全体を占有しなくなる。画面の下部にある小さなバブルで表示されるので画面の他の部分を隠さない。作動の結果は画面の上部に通知として表示される。

またSiriにiMessageでボイスメッセージを送るよう命令できるようになった。実は私自身はボイスメッセージが好きではないが、ディクテーションによるテキスト化が改善されている。音声の処理はローカルデバイス上で実行されるようになったのでスピードが改善されたはずだ。

Siriにはすでに単語の翻訳機能があるが、Appleはこれを一歩進めて翻訳アプリをリリースする。Google翻訳と同様、2言語で双方向の会話ができるようになる。音声からテキスト化し、翻訳語さらにテキストから音声化できる。iPhoneを横向きモードで使えばそれぞれが画面の片側を使える。

アプリ疲れ

これは多くの読者が感じているだろうと思う。 友達からなにか新しいアプリのダウンロードを求められてもApp Storeに行くのに乗り気になれない。そこでAppleはApp Clipsを発表した。これはアプリをインストールせずに起動できる一種のミニアプリだ。これはアプリの一部を切り出して簡単に共有できるようにしたものだ。

App Clipsはさまざまな方法で共有できる。ウェブサイト上やメッセージからはもちろん、マップ、NFCタグ、QRコードからも起動できる。 カフェでの注文、キックスクーターのレンタル、ミュージアムで説明を見る、などさまざまな場面で活用できそうだ。コードをスキャンしたりスマートフォンをタップしたりすると、アプリの機能の一部がすぐに利用できる。全機能を利用したければライブラリからアプリ全体をダウンロードしてインストールすればよい。

いつものように、iOS 14は夏にテストが行われ、9月に一般公開されるというスケジュールが予定されている。

 

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カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Apple  WWDC

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滑川海彦@Facebook