インドのオンライン家具販売サイトPepperfryが3100万ドルを調達

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インドの急速に成長する経済を背景に、都市部に移り住んで住居を構えはじめる人が増加している。その結果、持ち家や貸し家に家具を提供するためのネットサービスを運営する企業が誕生した。Pepperfryは、そのような企業のひとつで、本日(米国時間9月22日)インド中にビジネスを展開するために3100万ドルの資金調達を行ったと発表した。

設立から4年の同社は、元eBay幹部のAmbareesh Murty(Pepperfry CEO)とAshish Shah (同COO)によって設立された。彼らは、同社設立直前に「起業家となり、インドに秘められたECの可能性を最大限利用することに決めた」とMurtyはTechCrunchとのインタビューで語った。

Murtyは、インドのインテリアデザイン市場は、売上げ額にして300〜400億ドルの規模だとふんでおり、同業界にはそろそろディスラプションが必要だと考えている。

「インドには、きちんと整備された小売業界が成立しておらず、家具市場は極めて分散しています。その証拠に、業界トップ5のブランドを合わせても、全体の売り上げの4%しか占めていません」と彼は付け加えた。

Ppperfryは、これまでに1億6000万ドル近くの資金を投資家から調達しており、今回は、以前から同社に投資しているGoldman Sachs、Bertelsmann India Investments、Norwest Venture Partners、そしてZodius Technology Fundがラウンドを率いた。なお、Goldman Sachsは、昨年の夏に行われた1億ドルのシリーズDラウンドでもリードインベスターを務めていた

Pepperfryは、自社ブランドを含む、1万以上のパートナーの製品を販売していると公表しており、家具からデコレーション、キッチン・ダイニング用品、ペット用品までさまざまな製品を取り揃えている。オンラインでの販売以外にも、同社はいくつものエクスペリエンスセンターを運営しており、インテリアデザインの専門家が、家のデコレーションに関するアイディアを求める顧客にアドバイスを提供している。Murtyによれば、Pepperfryは現在10軒あるエクスペリエンスセンターの数を30軒にまで増やし、インドの第2、第3階層の都市へも進出していく計画だ。

さらに同社は、物流拠点の拡大も目論んでいる。Murtyによれば、現在Pepperfryはインド国内の500都市へ製品を届けることができるが、物流ネットワークへの投資を行い、今年中にはこの数を1000都市まで伸ばしたいと考えている。Pepperfryは、ユーザーへ最終的に製品を届ける部分を含む、物流システム全体を独自で確立しており、彼はその理由について、「Pepperfryが誕生するまで、インドには大きな箱を消費者まで届けることができる企業がいなかったんです」と説明する。今では同社は、17箇所のフルフィルメントハブと400台以上もの輸送車を保有している。

それと並行して、Pepperfryはテクノロジーへの投資も倍増させ、エンジニアの数を現在の50人から100人まで増やそうとしている。既に同社のアプリはARをサポートしており、ユーザーは携帯電話のカメラを、家具を設置するつもりの場所に向けるだけで、例えば、購入予定のソファーの様子を確認することができる。しかし、Pepperfryは、さらなるVRテクノロジーを同社のアプリに組み込む予定で、エクスペリエンスセンターにVR機能が備えられる可能性もある。

経済力が限られている若者にアピールするため、Rentomojoのようなレンタルモデルを提供することを検討しているかMurtyに尋ねたところ、彼は、長期的に見ると、レンタルよりも家具を購入するニーズの方があると考えていると説明してくれた。

「私たちは、レンタルの段階というのは、消費者が自分で家具を購入し始めるまでの3、4年間しか続かないと考えています。もしも、Pepperfryが企業努力を重ね、顧客が家具を購入する際に素晴らしい価値を提供できるとすれば、レンタルの必要性はないでしょう」と彼は主張する。

同様に、Pepperfryの郊外への進出計画からも分かる通り、同社は、現時点でインド国外への進出は予定していない。

「インドはまだ若い国家で、その購買力は急速に増大しています。今後数年の間はインド市場に集中し、その後どうするか改めて考えようと思っています」とMurtyは付け加えた。

しかし、利益については明確な計画が立てられている。

Murtyは、今回のラウンドがPepperfryにとって最後の資金調達になると予測しており、今後半年の間で、販管費を除いた黒字化を目指していると話す。そして、それが計画通りいけば、向こう2年内に”完全な損益分岐点”に達する可能性があると彼は考えている。

「私たちは幸運にも、長期的な視点で物事を考え、そして実行できる論理的な投資家を迎えることができています」と彼は語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

新たなスタートアップDoorkeysがインドの不動産市場を電子化

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ようやくテクノロジーが欧米の不動産ビジネスを変えようとしているが、新興市場の方が住宅の購入や賃貸に関し深刻な問題を抱えている。世界各地で不動産に関する情報が不足している中、利用できる情報もでたらめにまとめられている上、さまざまな関係者が自分の利益を追求しながらこの業界に深く関わっているため、そのうち誰かを飛び越えてビジネスを行うこともできないでいる。

インドで誕生した新たなスタートアップのDoorkeysは、業界の透明性や効率性を高めるため、住宅売買のプロセスをオンライン化しようとしている。

Rising Straits Capitalの会長を務め、不動産業界での豊富な経験を持つSubhash Bediと、サービスマーケットプレイスMydala.comの共同ファウンダーであり実業家のArjun Basuによって設立されたDoorkeysは、200万ドルの資本金とともに9月1日にローンチした。

不動産取引のオンライン化

同社のプラットフォームは、基本的には売り手と買い手を結びつけるマーケットプレイスとして機能している。仲介業者を全て排除するNoBrokerのような競合サービスとは違い、Doorkeysは仲介業者の存在を認めている。同サービスは、言うならば既存のシステムや関係者に変更を加えず、全体をそっくりそのままデジタル化しようとしているのだ。

「アメリカでさえ仲介業者を取り除くことができていないのに、インドのような透明性が極めて低い市場でそれが実現すると思いますか?」とBediはTechCrunchとのインタビューで話していた。「仲介業者を考慮しないコンセプトは現実離れしているように感じます。私たちは、Doorkeysを仲介業者用のオンラインCRMシステムのようにとらえようとしているんです」

ユーザーはDoorkeys上で、地域や価格といった条件をもとに候補となる物件を探すことができます。さらに全ての売り手(=仲介業者)はレート付けされているため、内覧やその後の契約をアレンジする業者を選ぶ際に、買い手は高いレーティングの業者を探しだしたり、彼らの過去のパフォーマンスに基づくコメントを確認することができるのだ。つまり、Doorkeysは仲介業者が買い手の利益を1番に考えるという、現在のインドの仲介業者にはあまり意識されていない考え方に対するインセンティブを生み出そうとしているのだ。

「インドには50万以上の不動産仲介業者が存在します。不動産市場はとても細かく分散しているものの、私たちは仲介業者にツールを提供しつつ、街や近隣地域に関する彼らの知識を利用することで、この規制の行き届いていない分野のフレームワークを構築しようとしているのです」とBasuは付け加え、さまざまなオフラインのプロセスにも仲介業者の力が必要であると説明した。

Doorkeysは、売り手・買い手のどちらからも利用料を受け取っておらず、その代わりに契約時のコミッション(詳細非公表)を通じて収益をあげている。既に同社は、向こう2年間のうちに年間純利益7000万ドルを達成するという野心的な目標を掲げている。

「私たちは、既にいくつかの国内最大級の仲介業者ネットワークに入り込んでおり、Doorkeysの付加価値についても彼らに理解してもらっています。仲介業者は物件の引き合いに関する情報(旧来の広告業界で言えば虚偽の引き合い情報)に対して、そこまでの大金は支払っていません」とBasuは語る。

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ローカル市場へのフォーカス

Bediは、以前不動産テクノロジー企業に対する投資環境の偵察のためにインドを訪れたが、その結果にがっかりしたところで、BasuとDoorkeysのアイディアについて話しはじめたと説明する。

BediとBasuによれば、当分の間Doorkeysはニューデリー市場に注力し、急速な拡大路線をとることはない。

「最初にニューデリーというローカル市場でサービスを開始するのはとても重要なことです」とBasuは説明する。「私たちはまず、ローカルレベルでユニットエコノミクスを成立させなければいけません」

インドの上位8都市前後が国全体の不動産取引の約80%を占めていることから、今後の目標は、インドの全ての地域を攻めるのではなく、大きなボリュームを占める中核都市に進出することだと彼は語った。

彼らのモデルが正しいことを証明するための上記のような計画を踏まえ、Doorkeysはコスト面も”締めて”いきたいと考えている。現在同社は40人の社員を抱えており、今年の終わりまでにはその数を倍に増やす計画だ。

「創設メンバーは今後もこのサービスに資金を投入していくほか、さらに今後数ヶ月間のうちに、不動産業界に大きな影響力を持つ企業や投資家からのシードマネーの受け入れも予定しています。そして、最終的に私たちは”A級”投資家の獲得を狙っています。そうは言っても、Doorkeysは多くのアセットを必要としないモデルのため、重要なのは現金燃焼率を抑え、サービスの普及を待つということです」とBediは語る。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

インドの家具・家電レンタルサービスRentomojoが500万ドル調達

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インドで家具を揃えるための革新的な方法を考案したスタートアップのRentomojoが、さらなる事業の拡大を目的とし、500万ドルの資金を新たに調達した。今回投資を行ったAccelとIDG Venturesは、昨年11月に同社が行った200万ドルの調達でも資金を提供していた。

設立から18ヶ月が経ったRentomojoは、インドに住む多くの人にとって、自分たちの家用に家具や家電を購入するのは意味がないとシンプルに主張する。その代わりにRentomojoは、人々を家具の所有に伴う重荷やお金の問題から解放し、必要なものをレンタルできるようにしようとしているのだ。

レンタルの仕組みは、家具という商品カテゴリーでは一般的ではないものの、その安さや家具の保有に伴う責任がなくなるという利点から、インドで注目を集めるトレンドを後押ししていると、Rentomojoの設立者兼CEOのGeetansh Bamania氏はインタビューの中で語った。

彼の説明によれば、インド人労働者の平均的な可処分所得は少額(6000〜7000ルピー=約105ドル)のため、高価な商品を買うのは難しい。さらに、彼らは定期的に引っ越しを繰り返す可能性が高く、一般的に若い労働者は2、3年おきに住居を変えるとのこと。そのため、ものを所有しても、引越し時に新しい住居へ運びこむか、引越前に中古品として売るかという選択を迫られることになっててしまい、実用的ではない。

しかし、Rentomojoのサービスを使えば、消費者は借りた家具や家電を返却し、事前に合意したレンタル契約の残りの事項に従うだけでいい。契約上の平均的な支払期間は8ヶ月に設定されており、Bamania氏によれば、一般的な顧客はレンタル品に対して月々30ドルを支払っているとのこと。

Rentomojoは、国内6都市に合計1万人のアクティブユーザーがいると発表している。Bamania氏は、来年の終わりまでにレンタルアパートの数を1000万戸(つまり、合計1000万世帯にレンタル家具を提供する)に到達させようとしている。

Rentomojoが解決しようとしている問題以外に、この企業に関してほぼ間違いなく一番興味をそそられるのが、多額の資金が必要な可能性のある商品の仕入をどのように行っているかという点だ。当初Rentomojoは自社で在庫を購入し管理していたが、途中で心変わりし、商品を投資として扱えないかと考え始めたと、Bamania氏は語った。

その後Rentomojoは、自社のビジネスモデルを根本から覆すアイディアを基に、銀行と資産金融に関して手を組み始めた。つまり、銀行が在庫仕入時に支払を行い、ひとつひとつの商品が生み出すレンタル料金の一部を返済にあてるというモデルを確立したのだ。平均して、100ドルの投資が月に10ドルの売上を生み出しており、そこから一定の割合(具体的な数字は明らかにされていない)を銀行に支払い、残りがRentomojoの売上になっている。

「サブスクリプションモデルでのレンタルには多額の資金が必要だったため、私たちは設備投資を運営費用に転換し、フィンテックモデルを作り上げました」とBamania氏は説明した。「このモデルを利用すれば、資産の保有者と借り主の間でwin-winな関係が成り立ちます」

さらに、今回調達した資金は、資産金融と商品の管理を行うRentomojoのテクノロジープラットフォームの強化や、ほとんどが現場に出ている現在160名のチームの拡大に使われる予定だとBamania氏は付け加えた。

また、彼は「この業界では、資金力はそこまで必要とされず、私たちは必要のない資金を調達したくありませんでした」と説明した。

財務状況について、Rentomojoは「単位経済あたりでポジティブ」、つまり各商品のレンタルで赤字を出していない状態にあり、「すぐに」年間の売上ランレートを1200万ドルに到達させたいとBamania氏は語った。また、現在の年間売上ランレートは300万ドル程とのこと。売上はプラットフォームの全面的な見直しに使われ、ランレートにはパートナー企業への支払分も含まれている。

「(私たちが直面している)一番大きな障壁が、消費者の意識です」とBamania氏は同社の課題について付け加えた。「ディスラプションが起きる前に、まず消費者の意識を変える必要があります。サブスクリプションモデルが売り買いに基づいたモデルを代替し、そのうち購入という概念を塗り替えることになるでしょう」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Netflix、インドで初のオリジナル連続ドラマを制作

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Netflixは、今年1月に100か国を超える新しい国々でサービスを開始して以来、新しい世界戦略を強調している。そのアプローチとは、単に世界中で利用可能にするだけではなく、国際的な視聴者のためにローカライズされた番組も含まれる。その流れで、初のオリジナル連続ドラマをインドで制作する計画が発表された

Netflixは、190か国に8100万人の有料会員を抱え、インドでは1月に利用可能になった。インドのユーザー数は明らかにされていない。Netflixの料金は同国内の競合サービスと比べて高価だが、人口が10億人を超えるインドに大きな商機があるのは明らかであるほか、世界中に1600万人いるとされる海外移民の存在も見過ごせない。

インドでの制作第一弾となるのが、Vikram Chandraがインドの犯罪地下組織を描いてベストセラーとなった2006年の小説「Sacred Games」の映像化だ。Netflixは、インド企業のPhantom Filmsと提携して現地で撮影を進めるとしている。配信日については未発表だが、米国の配信大手であるNetflixは、リリース後は世界中のNetflixユーザーが視聴可能であることを明らかにした。

「ここ数年、私はNetflixが革新的でジャンルの垣根を超えた番組によってテレビの世界を変えていくのを大きな驚きと喜びをもって見守ってきました」と、Chandra氏は言う。「私がこれまで思い描いてきた世界の色彩や活気や音楽が、Netflixが提供する広大なキャンバスの上に余さず描き出されることを確信しています」

Netflixの国際オリジナルシリーズ担当副社長のErik Barmackも「気鋭の制作会社Phantom Filmsと提携して、考えうる最高のインドおよび世界の映画制作陣とVikram Chandraの大ヒット小説を映像化できることをうれしく思っています」とコメントしている。


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(翻訳:Nakabayashi)

アップルがiOSアプリのデペロッパー支援センターをインドに開設予定

CUPERTINO, CA - SEPTEMBER 09:  Apple CEO Tim Cook models the new iPhone 6 and the Apple Watch during an Apple special event at the Flint Center for the Performing Arts on September 9, 2014 in Cupertino, California. Apple unveiled the Apple Watch wearable tech and two new iPhones, the iPhone 6 and iPhone 6 Plus.  (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

アップルはインド国内初のデペロッパーセンターを開設する計画について発表(米国時間5月17日)し、インドの重要度を上げている。その新しい「iOS App Design and Development Accelerator」はバンガロール(ベンガルールという名前でも知られている)に位置することになる。2017年早くに開設予定だ。

そのセンターはインド国内でアプリを開発するデペロッパー向けの支援を提供するためのものだ。センターは「デペロッパーをインスパイアし、ベスト・プラクティス(最善の実践方法)を教えます。デペロッパーがスキルを磨けるように支援したり、彼らが開発しているiOSプラットフォームのアプリのデザイン、クオリティー、パフォーマンスを変革できるように支援します」とアップルは言う。

アップルは自社で選抜したiOSアプリのデペロッパーと綿密に取り組んでいる。しかし、センターはインドのデペロッパーコミュニティー内のより多くのデベロッパーにリーチするために設計された。最高のアプリのエコシステムを築くことは、アップルがスマートフォン市場の消費者に対してアピールする1つの方法なのだ。

「インドは世界で最も活気があり起業家精神あふれるiOSデベロップメント・コミュニティー拠点の1つです。バンガロールに新しい施設をオープンすることで、デベロッパーは世界中にいる消費者向けの革新的なアプリ開発を支援するツールが利用できるようになります」と声明においてアップルCEOのティム・クック氏は伝える。

米国の会社は近年インドに注目し続けてきた。その理由はインドのスマートフォン市場が顕著な成長の可能性を示していること、そして売上における中国への依存をいくらか相殺するためだ。

インドは米国を追い抜き、推定2億2000万ものスマートフォンユーザーが存在する世界で2番目のスマートフォン市場となった。それは12億ある人口の一部でしかない。さらに成長する余地があるのだ。米国、欧州、中国のような市場においては売上は停滞しているが、 市場調査会社のGartnerはインドでは少なくともこれから2年間は2桁の成長をとげると見ている。

けれども、アップルの市場シェアは依然として小さい。 最近のレポートによると、平均的な価格より高いアップルのデバイスを買う購買力を持った消費者が多く住む都市部におけるアップルの市場シェアは約5.8%とのことだ。Kantarのデータでは中国におけるスマートフォン売上の約22%をアップルが占めていて、それに比べるとインドの数字は遠く及ばない。

アップルの中国での成功は問題も引き起こしている。アップルが政府からの圧力を受けていることは多くの人に認知されているだろう。中国政府は海外のテクノロジー企業を締め付けていて、アップルが中国のUberのライバルであるDidi Chuxingに10億ドルを投資した背景には、その圧力を緩和したいという考えがあったのかもしれない。また、中国のスマートフォン市場の減速が、アップルの前期純利益のへの失望を招いた主な原因といえる。インドにおけるスマートフォンの市場とスマートフォンの売上シェアを伸ばすことがアップルの主な目的といえる。そして、この新しいデペロッパーセンターはその戦略に適したものである。

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(翻訳:Morimoto Shinya)

Spotify、音楽ストリーミングのアジア拡大を再開—今月末にインドネシア、次は日本

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Spotifyはしばらくぶりにアジアで市場拡大モードに入ったようだ。アジアに最初に進出したのは4年前だったが、2年前からこの地域の新しい国でサービスを開始していなかった。Spotifyは今月の末までにインドネシアで音楽ストリーミングを開始すると正式に発表した。

インドネシアはSpotifyにとってきわめて大きな重要性を持つ可能性を持った市場だ。世界第4位の巨大な人口があり、スマートフォンの販売はここしばらく毎年20%の伸びが予想されている。2億5000万の国民は次第に豊かになり、テクノロジーによってコミュニケーションすることを強く求めるようになった。

昨年10月、われわれは 「Spotifyの日本とインドネシアでのサービス開始が迫っている」という記事を書いた。事実、東京ではオフィスが開設され、静かに営業がスタートしている。日本のメッセージ・サービスのトップブランド、Lineと提携したのはSpotifyの本気度を示すもう一つのサインだろう。LineはFacebookとも同様の提携をしているが、ユーザーはLineアプリからSpotifyの楽曲を共有できるという仕組みだ。

しかし提携はそれとして、実際に運用できるのはSpotifyのサービスがスタートしている地域となる(現在日本ではまだ開始されていない)。ただしサービス開始が迫っていることを示すもうひとつのサインは、Spotifyが日本で12人の人材を募集していることだ。これには消費者向けマーケティングの責任者コミュニケーション責任者ソーシャルメディア・マーケティングのマネージャーなどが含まれる。要するに東京オフィスでの業務の中心となるチームだ。

10月のわれわれの記事でも触れたとおり、日本での音楽ストリーミングの環境は厳しい。日本ではまだCDが音楽市場の主流だ。これがSpotifyの日本でのサービスのスタートを遅らせてきたのだろう。しかしAppleと(友でもありライバルでもある)Lineはすでに音楽サービスを開始している。Spotifyが追いつくためには急ぐ必要があった。

インドネシアでサービスをスタートさせる発表を別にすると、SpotifyはTechCrunchの取材に対してアジア戦略を明らかにすることを避けた。しかしわれわれは同社に近い筋からインド市場参入を考えているという情報を得ている。

もちろんインド市場への関心はまだ実験的段階だが、Spotifyが実際にインドに入るとなれば激しい競争を覚悟する必要がある。昨年夏、Apple Musicが世界的にスタートしたとき、インドでもサービスが開始されている。しかし地元発のサービスとしてTiger Globalが支援するSaavnTimes InternetのGaanaがモバイルでの音楽市場をリードしているようだ。Apple Musicのインドでの現状についてわれわれにはあまり情報がない。しかしSpotifyの方が無料バージョンを持っている分、インド市場には適合しているかもしれない。またAndroidアプリもAppleより安定している。どちらもインド市場では不可欠の要素だ。

最近、有料ユーザーが3000万を突破したSpotifyにとって、アジア市場は重要なものとなってくるだろう。この地域の大部分はモバイル・ファーストであるか、それともデジタル・コンテンツにアクセスする手段がそもそもモバイルしかないか、どちらかだ。消費者はエンタテインメントをほぼすべて携帯電話に頼っている。モバイル音楽サービスにとってユーザーの獲得には理想的な条件だが、収益化の方法となると発見が非常に難しい。なんといってまだアジアの多くの地域は発展途上だし、デジタル・コンテンツの海賊行為が猛威を振るっている。

Spotifyが最初にアジアに進出したのは、比較的小さく、また欧米文化の影響を強く受けている地域、つまり香港とシンガポールだった。これらの国では比較的うまくやれそうなSpotifyだが、このスウェーデンの音楽サービスの巨人ははるかの大きな課題に挑戦しようとしているようだ。その手始めがインドネシアということだろう。

画像: Denys Prykhodov/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+