スマホカメラとAIを利用して自動車事故の損傷を査定するTractable、最大の市場は日本

保険業界も21世紀の生活に合わせて進化しているようだ。コンピュータビジョンを利用して遠隔地から損傷を鑑定できるツールを開発したAIスタートアップが、多額の成長資金を獲得したことを発表した。

Tractable(トラクタブル)は、自動車保険会社と提携し、ユーザーがぶつけたクルマの写真を撮影して送信すると、その損傷具合を「読み取って」査定するサービスを提供している。同社はシリーズDラウンドで6000万ドル(約66億1000万円)の資金を調達したと発表、その評価額は10億ドル(1102億円)に達したという。

Tractableは、世界の自動車保険会社トップ100のうち20社以上と提携しており、過去24カ月間で収益は600%増加したという。Alex Dalyac(アレックス・ダルヤック)CEOによると「年間売上高は8桁ドル(数十億円)に達する」とのこと。「新型コロナウイルス感染拡大がなかったら、もっと早く成長していただろう」と、同氏は語っている。人々が自宅から出なくなるということは、クルマで路上を走る人の数が格段に減り、事故も減るからだ。

現在のTractableのビジネスは、主に交通事故の損害請求に関わるものが中心となっている。ユーザーは事故で損傷したクルマの写真をスマートフォンのカメラで撮影し、(通常のアプリではなく)モバイルサイトを介して写真をアップロードする。

しかし、同社は今回の資金調達の一部を利用して、自然災害の復旧(特に物的損害の鑑定)や、中古車の査定といった、隣接する分野へのさらなる事業拡大も計画している。また、スマートフォンで撮影された(サイズの小さな)写真を処理・解析するためのAIベースの技術を、より優れたものにするためにも、この資金は使われる。

今回の投資ラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)とGeorgian Partners(ジョージアン・パートナーズ)が共同で主導した。これにより、同社の累計調達額は1億1500万ドル(約127億円)に達した。

深層学習の研究者であり、Razvan Ranca(ラズバン・ランカ)氏やAdrien Cohen(エイドリアン・コーヘン)氏とともにTractableを設立したダルヤック氏によれば、同社が特定し解決する「機会」(「事故」と言い換えることもできるだろう)では、自分のクルマに起きた問題として対処する場合、保険会社とのやり取りには時間がかかりストレスになっているという。

最近では、そんな問題により近代的なプロセスを導入する新世代の「インシュアテック」スタートアップが登場しているものの、Tractableがターゲットとする既存の大手保険会社には、そのプロセスを改善する技術が不足していた。

それは、フィンテックを推進するネオバンクと、時代に追いつくためにさらなるテクノロジーへの投資に躍起になっている既存の銀行との間に見られる緊張関係と似ている。

「事故に遭うと、面倒なことからトラウマになることまでさまざまな負担を受けます」とダルヤック氏はいう。「壊滅的なダメージを受け、立ち直るまでにはかなりの時間がかかります。保険会社とのやりとりも多いし、多くの人がやって来て何度も確認しなければなりません。いつになったら本当に元通りになるのかを把握するのは困難です。私達は、画像分類の飛躍的な進歩により、そのプロセス全体が10倍速くなると確信しています」。

このプロセスは現在、保険金請求のための写真撮影に留まらず、Tractableのコンピュータビジョン技術を使って、車両が修理不能になった場合に、どの部品をリサイクルして他の場所で再利用できるかを判断するのにも役立っている。ダルヤック氏によれば、2020年はこのサービスが人気を博し「2019年にTesla(テスラ)が販売した新車台数」と同じ数のクルマのリサイクルを支援したという。

これまでTractableと契約を結んだ顧客企業には、米国のGeico(ガイコ)をはじめ、日本では東京海上日動、三井住友、あいおいニッセイ同和損保など、多くの保険会社が含まれている。また、フランス最大の自動車保険会社であるCovéa(コベア)、英国Admiral Group(アドミラル・グループ)のスペイン法人であるAdmiral Seguros(アドミラル・セグロス)、英国の大手保険会社であるAgeas(エイジアス)も同社の顧客となっている。

現在、日本は同社の最大の市場であるとダルヤック氏はいう。その理由は、高齢化が進んでいることと、その一方で携帯電話の利用率が非常に高いことという2つの条件が揃っているためだという。そのため「自動化は単なる付加価値ではなく、必要不可欠なものとなる」とダルヤック氏は述べている。だが、近い将来には米国が日本を抜いてTractableの最大の市場になるだろうと、同氏は付け加えた。

物的資産や中古車への応用などの新たな方向性は、保険会社との提携だけに留まらず、より幅広いユースケースへの扉を開くことになるだろう。それによってTractableが新たな競争環境に入る可能性もある。同じようなビジネスチャンスを狙っている企業は他にもあるからだ。

例えば、一般的なスマートフォンのカメラを使って住宅の3D画像を作成する方法を確立したHover(ホバー)は、元々は住宅の修理の見積もりをするために開発された技術を、保険会社に販売する方法を検討している。

しかし今のところ、このような商機は十分に大きく、競合他社に勝つことよりも、需要を満たすことの方が重要だと考えられる。

Insight PartnersのMDであり、Tractableの取締役でもあるLonne Jaffe(ロン・ジャフィ)氏は、声明の中で次のように述べている。「Tractableの大規模な加速度的成長は、同社の応用機械学習システムの力と差別化を証明するものであり、それはますます多くの企業に採用されることで改善を続けています。何億人もの生活に影響を与える事故や災害から、世界がより早く回復することを支援するために活動しているTractableとのパートナーシップを、二倍に強化できることを我々はうれしく思います」。

Georgian PartnersのパートナーであるEmily Walsh(エミリー・ウォルシュ)氏は、次のように述べている。「Tractableの業界をリードするコンピュータビジョン機能は、顧客の投資利益率と同社の成長を驚異的なペースで促進し続けています。TractableがそのAI能力を、中古車業界や自然災害復旧という数十億ドル規模の新たな市場機会に適用するために、引き続きパートナーとして協力できることをうれしく思います」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Tractable資金調達自動車事故深層学習画像認識機械学習保険

画像クレジット:Tractable

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

デジタルギフトカードや航空券、ゲームなどのオンライン取引での詐欺を防ぐイスラエルのnSure AI

詐欺防止プラットフォームを手がけるスタートアップ企業のnSure AI(エヌシュアAI)は、DisruptiveAI(ディスラプティブAI)、Phoenix Insurance(フェニックス・インシュアランス)、AXA(アクサ)が支援するベンチャービルダーのKamet(カメット)、Moneta Seeds(モネタ・シーズ)、および複数の個人投資家から、シード資金として680万ドル(約7億5000万円)を調達した。

今回の投資ラウンドで得た資金は、nSure AIによる「世界初」の詐欺防止プラットフォームを支える予測型AIと機械学習アルゴリズムを強化するために使われる予定だ。このラウンドに先立ち、同社は2019年3月にKametからプレシード資金として55万ドル(約6000万円)を調達している。

テルアビブに本社を置くこのスタートアップは、現在16名の従業員を擁し、デジタルギフトカード、航空券、ソフトウェア、ゲームなど、リスクの高いデジタル商品を販売する小売業者に不正検知機能を提供している。ほとんどの不正検知ツールは、それぞれのオンライン取引ごとに分析を行い、どの購入を承認してどの購入を拒否するかを決定しようとするが、nSure AIのリスクエンジンは、深層学習技術を活用し、不正取引を正確に特定する。

保険会社のAXAが支援するnSure AIは、購入時の平均承認率が98%と、業界平均の80%に比べてかなり高いため、小売業者はこれまで正当な顧客を減少させることで失われていた年間1000億ドル(約11兆円)近い収益を取り戻すことができると述べている。同社は自社の技術に自信を持っており、そのプラットフォームで承認されてしまった不正取引については、すべて責任を負うとしている。

nSure AIの創業者であるAlex Zeltcer(アレックス・ゼルサー)氏とZiv Isaiah(ジブ・アイザイア)氏は、デジタル資産の小売業者が直面する独特の問題を経験した後、同社を起ち上げた。彼らのオンラインギフトカード事業は、最初の週に売上の40%が不正取引で、チャージバックが発生することが判明した。しかし、他の不正検知サービスではニーズを満たすものがなかったため、創業者たちはリスクの高いデジタル商品の販売をサポートする独自のプラットフォームの開発に着手した。

同社の共同創業者で最高経営責任者を務めるゼルサー氏は、今回の資金調達によって「詐欺を事業に不可避​なものとして受け入れることなく、よりリスクの高いデジタル商品を安心して販売できる数千の新規加盟店を登録することができる」と述べている。

現在、毎月数百万件の取引を監視・管理しているnSure AIは、2019年に稼働して以来、総額10億ドル(約1100億円)近い取引を承認してきた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:nSure AI詐欺人工知能機械学習深層学習資金調達eコマースイスラエル

画像クレジット:Jason Alden / Bloomberg / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始システム・IoTデバイス・AI・ロボティクスなどの技術導入のコンサルティング、開発から量産までを行うASTINA(アスティナ)は6月2日、AIを活用した外観検査装置の提供を開始した。化粧品などの不規則な模様のある製品でも傷の有無を確認できる。

2017年創業のASTINAは、作業現場の自動化のための装置開発・設置・運用・保守までを一貫してサポートする自動化パッケージ「OKIKAE」(オキカエ)を提供している。これまで同社は、中小工場向けDXサービス「自動バラ積みロボットOKIKAE」、工場のケーブルやコネクターの挿入を自動化する「OKIKAE for ケーブル挿入作業」をリリースしており、第3弾として「OKIKAE for AI外観検査」という外観検査の自動化を行うパッケージを用意した。

製造現場における製品の不良品を検出する外観検査は、作業時間がかかり、高度な知見が要求される作業だが、人員不足が問題になっている。画像認識による外観検査の自動化は以前から行われてきたが、ラベルの有無など、あらかじめ設定された対象物を判別するものがほとんどで、「傷、髪の毛、糸くずなどのランダム性があるもの」の検査は自動化が困難だった。また、「ランダムな模様に対応しきれず、正常な模様でも傷や異物と判断してしまう」問題もあったという。ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始

「OKIKAE for AI外観検査」は、AIを活用することで、ランダムな模様に惑わされることのない、傷や穴や欠けなどの検出を可能にした。たとえば、化粧品のグラデーションの生地にある傷の判別や、ラメ入りや多くの色が混じる製品での異物検出、さらに360度全方位の検査も行える。「ランダム性のあるベース+傷や髪の毛などのランダム性のある異物」も見逃さないとのことだ。もちろん、検査対象は化粧品に限らない。

「OKIKAE for AI外観検査」の特徴として、ASTINAは次の5つを揚げている。

  • 加工装置や組立て装置とともにAI外観検査を組み込める
  • AIで種別判定可能なので、種類別の排出が可能に
  • 多種多様な業界の顧客のワークに対応
  • 現状の設備にAI外観検査、NG機構を設けることが可能
  • 多品種少量生産に適したシステムの設定が可能

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:ASTINA(企業)AI / 人工知能(用語)画像認識(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)ロボット(用語)日本(国・地域)

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供

ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供開始システム・IoTデバイス・AI・ロボティクスなどの技術導入のコンサルティング、開発から量産までを行うASTINA(アスティナ)は6月2日、AIを活用した外観検査装置の提供を開始した。化粧品などの不規則な模様のある製品でも傷の有無を確認できる。

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「OKIKAE for AI外観検査」は、AIを活用することで、ランダムな模様に惑わされることのない、傷や穴や欠けなどの検出を可能にした。たとえば、化粧品のグラデーションの生地にある傷の判別や、ラメ入りや多くの色が混じる製品での異物検出、さらに360度全方位の検査も行える。「ランダム性のあるベース+傷や髪の毛などのランダム性のある異物」も見逃さないとのことだ。もちろん、検査対象は化粧品に限らない。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:ASTINA(企業)AI / 人工知能(用語)画像認識(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)ロボット(用語)日本(国・地域)

既存防犯カメラで来店客の店内行動を解析可能なエッジAI端末を提供する「AWL」が20億円調達

エッジAIカメラで来店客の店内行動を安価に解析する北海道大学発スタートアップ「AWL」が20億円調達

実店舗での客や従業員の動きを分析し、生産性の向上と業務の効率化に寄与するエッジAIソリューションを提供するAWL(アウル)は6月2日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による総額20億円の資金調達を発表した。引受先は、楽天キャピタル(楽天グループCVC)をリード投資家に、i-Lab4号投資事業有限責任組合、サツドラホールディングス、中国電力。累計調達額は26億6000万円となった。

AWLのエッジAIカメラソリューションは、画像処理端末「AWLBOX」を中心に構成されている。エッジAIとは、クラウドサーバーではなく端末の近くでAI処理を行うシステムのこと。AWLBOXの場合であれば、大容量になりがちな店舗内の撮影映像データをクライド側に送る必要がなく、クラウド側には個人を特定しない形で年齢・性別などの匿名化データのみが保存される。またこれにより、来店客のプライバシーを守ると同時に、個人情報を不用意に設置企業側社内に置くことがなくなる。AWLBOXは、来店客の属性分析、売り場や商品棚への立ち寄り、商品接触などの店内行動、さらに従業員の業務や働き方を可視化して分析することで、生産性と効率性の向上に役立てることができる。

AWLBOXは、店舗にすでに設置されている防犯カメラなどを利用して画像処理を行えるので、カメラを新設する必要がほとんどない。対応するカメラは2021年5月末時点で1万500種類。同社によれば「類似サービスと比較して1/10程度の費用感での導入が可能」だという。

現在、「数百店、数千店舗を展開するチェーンストア数社」も導入を検討しているとのこと。また、宿泊施設、交通機関、工場、建設現場といったさまざまな空間でのAI解析による可視化サービスも本格的に着手している。

AWLは、2016年に設立された(当時の社名はエーアイ・トウキョウ・ラボ)、北海道大学発のスタートアップ企業。世界17カ国から映像解析、機械学習、SaaSビジネスなどに優れた人材を集め、その多様性と技術力でAIの社会実装を目指している。今回調達した資金は、AWLBOXシステムと、小規模店舗向けのAWL Lite(ライト)の新機能開発、映像解析および機械学習技術に関する研究体制の拡充強化に使われる。また、事業拡大に向けた人材採用、大規模導入に対応するオペレーション・サポート体制の強化、映像解析技術を応用した新規事業開発も進めてゆくという。

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ディープフェイクのビジネス活用、技術の悪用防止をめぐる戦い

ディープフェイクのビジネス活用と悪用防止をめぐる戦い

アフロ

編集部注:この原稿は、MIN SUN(ミン・スン)氏による寄稿である。同氏は、AppierのチーフAIサイエンティストを務めている。Appierは、AI(人工知能)テクノロジー企業として、企業や組織の事業課題を解決するためのAIプラットフォームを提供している。

顔認識技術を用いて動画内の人物の顔に、画像データの人物の顔を当て込むディープフェイクという技術がある。近年、注目度が高まっている技術のひとつだが、ディープフェイクと聞いてどのようなイメージが湧いてくるだろうか?

おそらく多くの人がネガティブなイメージを思い浮かべるだろう。著名人の顔をアダルトコンテンツにはめ込んだ動画や政治家が問題発言をしている動画が拡散、流通した事件はまだ記憶に新しい。

技術の悪用がメディアに大々的に取り沙汰され、悪評を得てしまったディープフェイクだが、この技術はどんな目的で開発されたのだろうか。

本寄稿では、ディープフェイクの誕生から社会に広まっていく過程、ビジネスにおいて期待されている活用策について、ディープラーニング技術の社会実装を目指す研究者としての立場から考察していく。

ディープフェイクとは?

「ディープフェイク」という単語自体は、ディープラーニングを活用したフェイク画像あるいは動画のことを指し、2017年にRedditに複数のフェイク動画を投稿したユーザーのID「deepfakes」に由来する。この辺りの経緯は、プレプリント含め様々な論文を保存・公開しているarXivにある「Deepfakes Generation and Detection: State-of-the-art, open challenges, countermeasures, and way forward」が詳しい。

近年、大きな注目を集めているディープフェイクだが、実は約20年前に開発された「Synthesis Human Technology」(人物画像合成技術)が技術の根幹を成しており、これら技術そのものは映画業界を中心に以前から盛んに活用されていた。

たとえば、2009年に公開された映画「アバター」は、俳優の表情や体全体の動作を捉え、CGキャラクターを重ねる形で制作されている。しかし、この作業は専用の機材が必要なため、莫大な制作費が発生してしまうという難点があった。

この難点の解決につながるきっかけとなったのが、2012年だ。2012年の画像分類コンテストにおいて、「AlexNet」が活用しているディープラーニング(深層学習)が注目を浴び、第三次AIブームへの期待値が高まり始めた(総務省 平成28年版 情報通信白書「人工知能(AI)研究の歴史」)。そして2015年前後にはAIの社会実装に向けた様々なコンセプトが起草された。

2015年、ワシントン大学のSteve Seitz(スティーブ・セイツ)教授らによって、高価な機材を使うスタジオで撮影を行わずとも表情を重ね合わせられるようになる技術が開発された。

さらに、2016年にはミュンヘン工科大学のMatthias Niessner(マティアス・ニースナー)教授が発表した「Face2Face: Real-time Face Capture and Reenactment of RGB Videos」で技術はさらに進歩をとげ、ノートPCのカメラを使用して3Dの顔をリアルタイムで操作できるようになった。

これらの技術進歩の過程を経て、2017年、「GAN」(敵対的生成ネットワーク。Generative Adversarial Networks)と呼ばれる画像生成技術と上記の技術などを組み合わせた「ディープフェイク」および関連オープンソースソフトウェアが登場するに至った。

これらディープフェイク関連ソフトウェアの登場により、PCにインストールし、動画と画像データを集めるだけでフェイク動画を生成できるようになった。ディープラーニングに関する深い知見を持たずとも利用できるソフトウェアということも相まり、一般人によりフェイク動画が数多く生成されていった。

当初はいたずら感覚で政治家や芸能人が普通であればしないような動きや発言をするフェイク動画が作られていたのだが、活用は悪意ある方向に少しずつエスカレートし、フェイク動画の流通がメディアで大々的に取り上げられ、逮捕者が出るまでに至ってしまったのだ。

ビジネスにおけるディープフェイク活用

ディープフェイクが意図しない形で悪用されているという事実がある一方、ビジネスにおける前向きな活用も進められている。

エンターテインメント領域では、映画制作への活用はもとより、スマートフォンアプリのような個人が利用するサービスとしてもディープフェイクの技術は盛んに活用されている。たとえば、Snapが提供するSnapChatのFace Swap機能では、2人以上が写真に写っている場合、顔をスワップすることが可能だ。また、自身の顔のパーツを有名人のものとスワップすることもできる。

広告分野では、スタントマンの動作にGANで生成した架空の顔を重ね合わせ、仮想モデルのCMを作る取り組みなどが進んでいる。これにより、有名人を起用するコストを抑えることができる。また、仮想モデルは現実には存在しないため、スキャンダルや不祥事によるブランドイメージの毀損リスクを排除することにもつながる。

こうしたビジネス活用の例から分かる通り、ディープフェイクは悪評が先行しているだけで、必ずしも悪い技術ではないということだ。

悪意に対するカウンター

ただ、ディープフェイクを用いた有益なビジネスが生まれているからといってこれまでに根付いてしまった悪評が自然消滅するわけではない。

そのため、近年ではディープフェイクの悪用を検知するための取り組みが産学を中心に進められている。

アカデミックの世界では、ディープフェイクを検知する技術が確立されつつある。2019年ICCV(International Conference of Computer Vision)というコンピュータービジョン領域の国際会議では、90%以上の精度でディープフェイクの動画を検知する技術の開発に成功したとの発表があった(「FaceForensics++: Learning to Detect Manipulated Facial Images」)。

そして、現代における情報拡散の中心であるソーシャルメディアを運営する企業でもディープフェイクの悪用を防止するための検証が動き出している。ソーシャルメディアの代表格であるFacebook(フェイスブック)では、AIを用いてディープフェイクを検知するプロジェクト「Deepfake Detection Challenge」(DFDC)が立ち上がっており、ディープフェイクの検知にAIが有効だという報告も上がっている。このプロジェクトの最終的な結果によっては、フェイスブック上で拡散されている動画がフェイクの可能性があるときに「この動画はフェイクかもしれない」というようなメッセージをユーザーに自動で発信できるようになる。

余談となるが、産学でディープフェイクの検知に関する成果が上がりつつある一方、テキストベースのフェイクニュースに効果的な技術はまだ確立されていない。ディープフェイクには、コンピューターにより検知できる特徴的なシグナルがある。しかし、テキストベースのフェイクニュースの場合、膨大なデータソースから情報を収集し、内容の真偽を総合的に判断しなければならないため、AIによる自動検知が難しいというわけだ。

ディープフェイクの検知技術は年々向上している。しかし、100%の精度で偽物を見破れるわけではない。テキストや画像などの情報媒体も含め、社会に生きる全員が意識的に情報の真偽を判断するためのリテラシーを身に着けていくことが悪意ある情報を駆逐する近道なのかもしれない。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)ディープフェイク(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)

AIチャットボット「りんな」を手がけるrinnaが日本語特化のGPT-2大規模言語モデルをオープンソース化

AIチャットボット「りんな」を手がけるrinnaが日本語特化のGPT-2大規模言語モデルをオープンソース化

AIチャットボット「りんな」などを手がけるrinna(リンナ)は4月7日、日本語に特化したGPT-2の大規模言語モデルを構築し、GitHubおよびNLPモデルライブラリー「HuggingFace」において、トレーニングコードと言語モデルをオープンソースソフトウェアとして公開した。

また今回公開したモデルは、GPT2-mediumと定義される中規模サイズのものという。今後、パフォーマンスとコストのトレードオフに基づいてユーザーおよび研究者が最善の選択を行えるよう、異なるサイズのモデルも公開する予定。異なるデータでトレーニングした新しいモデルの公開も計画している。

rinnaの研究チームが開発している大規模な言語モデルは、すでに同社プロダクトに広く使用されているという。同社は今後も、異なるテキストスタイルや異なるデータ量を含む、より高精度でより大規模な言語モデルの研究開発を続け、AIチャットボットの能力を高めるとしている。また、日本語の研究コミュニティのために、これらのモデルのオープンソース化を行う。

日本語GPT-2モデルの機能

言語モデルとは、言語データの機械学習を基に、会話や文章の「人間が使う言葉らしさ」を確率としてモデル化したもの。GPT-2の場合は、単語レベルの確率の組み合わせから文の確率を計算する言語モデル(自己回帰言語モデル)を採用している。

例えば、「確率(吾輩は猫である) = 確率(吾輩) × 確率(は|吾輩) x 確率(猫|吾輩,は) × 確率(で|吾輩,は,猫) × 確率(ある|吾輩,は,猫,で)」のような方法で推定を行う。この能力を使って、GPT-2は「吾輩は猫で」という接頭辞(Prefix)を与えられたとき、確率の推定から次にくる単語として「ある」を選択し、文章を自動生成する。

今回rinnaが公開した日本語GPT-2モデルは、一般的な日本語テキストの特徴を有した高度な日本語文章を自動生成できる。ユーザーおよび研究者は、特定のテキストデータを微調整して、このモデルから独自のモデルを作成することも可能としている。

例えば、Prefixとして「誰も到達していない人工知能の高みへ、ともに」という文章が与えられたとき、特定のコンテキスト(デモ1:講演の感想、デモ2:書籍の紹介)で応答文を生成するように、微調整できるという(掲載した画像のデモは生成する文章の文字数上限を設定しており、実際に生成される全文ではない)。

デモ1:講演の感想のコンテキストで文章生成

デモ1:講演の感想のコンテキストで文章生成

デモ2:書籍の紹介のコンテキストで文章生成

デモ2:書籍の紹介のコンテキストで文章生成

rinnaの日本語GPT-2モデルの特徴

rinnaの日本語GPT-2モデルは、トレーニングデータとしてCC-100のオープンソースデータを使用しているという。

またNVIDIA「Tesla V100 GPU」を用いて、70ギガバイトの日本語テキストを約1カ月の長期間にわたってトレーニングしたそうだ。その結果同モデルは、約18 perplexityという性能を達成した。この「18perplexity」は、GPT-2モデルが前に与えられた単語から次の単語を予測するときに、正しいものを含む18のオプションだけを残せるという性能を意味するという。モデルは十分にトレーニングされており、汎用性があるとしている。

rinnaは、Microsoft(マイクロソフト)のAI&リサーチ部門でAIチャットボットの研究を行っていたチームがスピンアウトして2020年6月に設立したAI開発企業。ディープラーニング技術を活用し、AIが文脈に応じた会話文を自動生成して人間と自然に会話する「共感チャットモデル」、AIが話し声や歌声で豊かな感情表現を可能にする「音声合成システム」などの技術を発表している。

これらの最新技術は、同社運営のAIチャットボット「りんな」や、会話内容や音声表現をカスタマイズしてキャラクター性を持たせたAIチャットボット「AIキャラクター」の開発に応用しており、企業のマーケティングなどに採用されているという。

同社は、製品開発のための自然言語処理(NLP)の実験過程で、日本語に特化したGPT-2の大規模言語モデルを構築。日本語のNLP研究コミュニティに貢献するために、開発した言語モデルと、研究者が自分のマシンで実験結果を再現するためのトレーニングコードを、GitHub、およびNLPモデルライブラリHuggingFaceで、オープンソースとして公開した。

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カテゴリー:人工知能・AI
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任天堂子会社NERDが「スーパーマリオ 3Dコレクション」で採用したエミュレーション技術など公表

任天堂子会社NERDが「スーパーマリオ 3Dコレクション」で採用したエミュレーション技術やディープラーニング紹介

Nintendo

スーパーマリオ35周年記念の1つとして発売された「スーパーマリオ 3Dコレクション」は、NINTENDO 64向け「スーパーマリオ64」、ニンテンドー ゲームキューブ専用の「スーパーマリオサンシャイン」、Wiiで発売された「スーパーマリオギャラクシー」の3世代マリオが1本に詰め合わされています。

これらをNintendo Switchに移植する上で影ながら貢献していたのが、任天堂の子会社でソフトウェアやミドルウェア開発に特化したフランスのNERD(Nintendo European Research and Development)でした。3本のマリオを任天堂の最新ハード上に再現するため、NERDがどのような技術を駆使したかが公式サイトで語られています。

NERDは任天堂のヨーロッパ研究開発部門として知られており、長年にわたって数々のプロジェクトを支えてきた存在です。Wii UのニンテンドーDSバーチャルコンソールやNewニンテンドー3DSの「3D立体視の調節機能」しかり、ミニファミコンやミニスーファミも元々はNERD開発チームが関わっていたプロジェクトが商品化したかっこうです。

さて今作でNERDによる主な貢献は3つ。まず独自のゲームキューブエミュレーション技術であり、「スーパーマリオサンシャイン」を動かすのに使われています。最大の課題の1つは、スイッチのカスタムプロセッサ上でGC(略称)の古いとはいえ強力なMPU(マイクロプロセッサ)をエミュレートすることで、ゲームをフル速度で実行するには多くの最適化トリックが必要だったと語られています。

2つ目が、「スーパーマリオサンシャイン」開発チームと協力して現代的な機能を追加したこと。これには16:9のHDレンダリングやJoy-Conによる新たな操作が含まれているとのことです。またゲーム内の画像は、NERD独自のディープラーニングエンジンによりHDにアップグレードされたと述べられています。

最後に「スーパーマリオサンシャイン」については、GCとWiiのハードウェアアーキテクチャが似通っていることを活用し、「グラフィックスとオーディオエミュレーション技術」を提供して移植を支援したとのことです。

現代のゲーム専用機は過去と比べれば強力になっているとはいえ、普及を前提とした価格からプロセッサや搭載RAMも抑えめとなり、レトロゲーム機といえども丸ごと仮想マシンとして再現するエミュレーションは荷が重いと思われます。そうした強力とは言い難いハード上で快適にゲームを動かすために培われた技術が、噂されているNintendo Switch Pro(仮)にも活かされるのかもしれません。

(Source:Nintendo European Research & Development(NERD)、via:Nintendo EverythingEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:アニメーション(用語)スーパーマリオ(製品・サービス)ディープラーニング / 深層学習(用語)任天堂 / Nintendo(企業)Nintendo Switch / ニンテンドースイッチ(製品・サービス)

外骨格と義肢の環境適応をカメラとAIで支援する研究

カナダのWaterloo(ウォータールー)大学の研究者たちは、カメラとAI(人工知能)を活用して、より自然な人間の動きを実現する義肢と外骨格の研究を紹介している。ExoNetプロジェクトでは、ウェアラブルカメラで撮影した映像をディープラーニングAIで処理することで、人間が環境に適応して動きを調整する能力を模倣する。

このプロジェクトは、現在のスマートフォンのアプリやその他の外部コントローラを備えたシステムでは提供できないより自然な動きをその場で実現しようとする試みだ。

「それは不便で認知的に難しいケースがあります。新しい運動をしたいときには停止してスマートフォンを取り出し、希望のモードを選択しなければなりません」と、ウォータールー大学の号取得者であるBrocoslaw Laschowski(ブロコスロー・ラショフスキー)博士は研究に関連したリリースで述べている。

今回の研究では、主にロボットの外骨格に焦点を当てている。ロボット外骨格は、運動機能が低下した人を支援するためにさまざまな企業が開発している。ExoNetのシステムはより自然な運動を実現するために、最終的には装着者による外部制御の必要性を排除することが期待されている。

もちろん、まだやるべきことはたくさんある。当然のことながら、システムは平坦な地形でのナビゲーションは容易だ。次のステップでは階段や障害物など、移動が制限されている環境に適応する。システムの最終バージョンはそのような環境を予測し、適応できるシステムにしたいと考えている。

「私たちの制御アプローチは、必ずしも人間の思考を必要としません」とラショフスキー氏は付け加えた。「自律走行車のように、私たちは自力で歩く自律外骨格を設計しています」。

課題は他にもある。1つはバッテリーの問題だ。研究チームは、装着者の動きにより充電できるシステムを実験することで、駆動時間の向上を目指している。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:外骨格ディープラーニング

画像クレジット:Bloomberg/ Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Preferred NetworksがCrypkoを含む深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

 

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

Crypkoで自動生成したキャラクターの例

Preferred Networks(プリファードネットワークス。PFN)は3月10日、クリエイティブ産業向けとして、好みのキャラクターや高精細な3Dモデルを生成できるデジタル素材生成システムを発表した。

また同システムを利用した映像作品の第1弾として、PFNは、バーチャルシンガーHACHI(RK Music所属)の楽曲「20」をフィーチャーした短編動画(企画・制作:PFN、キングレコード、ポリゴン・ピクチュアズ)を公開した。

キャラクターの自動生成を行う「Crypko」(クリプコ)

同デジタル素材自動生成システムは、キャラクターの自動生成を行うプラットフォーム「Crypko」(クリプコ)、「高精細3Dモデル生成」の2機能で構成している。

Crypkoは深層学習を利用し、制作者が定義した顔のパーツ、表情、髪の色などに合ったキャラクターのCG(立ち絵)を自動生成可能。これまでCrypkoは顔を生成対象としていたが、より高い解像度で上半身まで生成可能となった。

高精細3Dモデル生成

高精細3Dモデル生成機能では、実物のアイテムを専用3Dスキャナーに配置し撮影するだけで、高精細な3Dモデルを自動生成できる。様々な材質や大きさの被写体に対応しており、小型アイテムであれば、約6時間の撮影作業で当日中に200点以上の3Dモデル化が可能という。生成した高精細3Dモデルは市販の編集ソフトで自由に加工・複製し、映像作品やゲームなどで使用できる。

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

実物の写真

 

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

3Dスキャンで生成した高精細モデル

 

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

回転させた3Dモデル(低解像度)

 

3Dモデルのメッシュ構造

3Dモデルのメッシュ構造

映像作品の第1弾で、主人公キャラクターやアイテム類の制作に利用

PFNが公開した短編動画では、キャラクター自動生成システムが生成したキャラクターを基に主人公のデザインを行ったほか、スマートフォンや背景の文房具などのアイテムは高精細3Dモデル生成機能を用いて実物から生成したデータを基にしているという。

また、動画に登場するギターのCG制作過程では細部の質を上げるため外部クリエイターと共同作業しており、精細なデジタル素材を作成できたとしている。

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

短編動画で使われたギターと家具の3D CG

なお、同デジタル素材自動生成システムは、経済産業省の令和元年度補正予算「コンテンツグローバル需要創出促進・基盤整備事業費補助金」(J-LOD)第4弾の採択事業として開発したもの。

同システムをはじめとして、PFNは今後もクリエイティブ産業向けに先端技術を活用した制作手法を提案し、新しい表現・体験の実現を目指すとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:アニメーション(用語)AI / 人工知能(用語)Crypko(製品・サービス)ディープラーニング / 深層学習(用語)Preferred Networks(企業)
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AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を手がけるリッジアイが7.8億円を調達

AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を手がけるリッジアイが7.8億円を調達

AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を行うリッジアイ(Ridge-i)は2月1日、第三者割当増資による7億8000万円の資金調達を発表した。引受先は、オリックスと、グローバル・ブレイン、スパークス・グループ(スパークス)。累積資金調達額は約15億3000万円となった。

同社は、今回の資金調達は、これまで培ってきたAI技術と導入知見を、より多くのニーズへ届けられるように、プロダクト・AIエンジンの開発体制の強化およびその販売体制を構築するための事業戦略ラウンドと位置づけ。また、社会課題・SDGsに対する宇宙開発・衛星解析事業は投資フェーズであり、今回の調達により財務基盤を強化することで、より積極的な発信と研究開発を加速し、ニーズの創出を狙う。

調達した資金の投資先

  • 高度なカスタムAIの開発・提供の加速化:AIプロダクトの開発体制の拡充、販売展開の強化、計算資源の強化、少数データによる精度向上技術などAIのコア技術の研究開発、パートナー企業との強みを活かしたAI×αの共同ソリューション開発
  • 社会課題解決に向けた、衛星画像解析AIを中心とした技術・サービスの開発:衛星画像を使ったAI解析のポータルサービスの提供、土砂崩れや海の汚染など自然災害リスクに対する環境モニタリングAIの開発、人流動向や行動分析など社会活動モニタリングAIの開発、衛星画像解析に特化した、画像処理・信号処理技術の研究、衛星とドローンを組み合わせた、統合的な画像解析ビジネスの展開
  • 優秀な人材採用による組織力強化およびR&D研究の推進:採用活動の強化、点群データ処理、マルチモーダル技術など、AIの次を見据えた新たな研究開発の加速、大学との共同研究(東京大学と建築情報学について連携)

リッジアイは、AI・ディープラーニング領域において、社会課題・顧客課題に向き合い、最先端の技術を駆使して解決し、新しい社会を創造するテックイノベーションファーム。

特に、画像やセンサーデータの解析について、様々な技術とディープラーニングを始めとするAIを組み合わせた開発能力に強みを持ち、投資対効果が高く技術面において最適化されたソリューションの提供により、課題解決に取り組んでいる。

顧客課題だけでなく、多くの社会課題に取り組み、JAXAより受託した土砂崩れ解析ディープラーニングでは第4回宇宙開発利用大賞 経済産業大臣賞を受賞。今後も技術の実用と研究の両立を追求し、社会・顧客が持続的に効果を実感できる最高のソリューションを提供するとしている。

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タグ:資金調達(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)リッジアイ日本(国・地域)

AI作成支援プラットフォーム「harBest」運営のAPTOが約6000万円を調達

AI作成支援プラットフォーム「harBest」運営のAPTOが約6000万円を調達

AI作成支援プラットフォーム「harBest」(ハーベスト)運営のAPTO(アプト)は12月22日、約6000万円の資金調達を発表した。引受先は、三井住友海上キャピタル(MSIVC2020V投資事業有限責任組合)、ANOBAKA(旧社名:KVP)、村口和孝氏(日本テクノロジーベンチャーパートナーズ 代表)など。

同社では、企業のデータ、AI活用を推進していくため、データの管理およびデータ作成のプラットフォームとしてharBestを提供。調達した資金は、harBestへの開発投資、認知拡大へ向けたマーケティング投資を行っていく。

harBestは、スマホアプリでAI学習データを簡単に作成(アノテーションデータ)できる上、独自のデータ品質チェックシステムを採用することで高品質なデータ提供が可能としている。初期費用不要で手頃な月額料金で利用できる。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:APTO資金調達(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)harBest日本(国・地域)

東大・松尾研発のAIスタートアップACESが3.2億円調達、IGPI川上登福氏が取締役に就任

東大・松尾研発のAIスタートアップACESが3.2億円調達、IGPI川上登福氏が取締役に就任

画像・映像認識AIアルゴリズムの力でリアル産業のDXを目指す東大松尾研発のAIスタートアップACESは12月3日、総額約3.2億円の資金調達を発表した。引受先は、経営共創基盤(IGPI)とVCファンド「Deep30投資事業有限責任組合」。また取締役として、川上登福氏(経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター、一般社団法人日本ディープラーニング協会 理事)の就任が決定したと明らかにした。

ACESは、「アルゴリズムで、社会をもっとシンプルに。」というミッションのもと、人の知見を数式化することで、人とデジタルが接続された「なめらかかつ構造的な社会」の実現を目指しアルゴリズム事業に取り組むスタートアップ企業。

2017年11月の設立以降、スポーツ、小売、建設、自動車をはじめ、数多くの産業現場における共同DX事業を実施。2020年9月には、陸上自衛隊のAI活用・デジタル化推進への協力や、国土交通省の革新的技術の導入・活用に関するプロジェクトにおいて最高評価を獲得するなど、官民問わずDXの推進に尽力しているという。様々な業界のデジタル化ニーズが高まる中、さらなるアルゴリズムのライセンス領域の拡大、ソフトウェア化による事業拡大を加速すべく資金調達を実施した。

また今回、IGPIにおいてAI・IoT戦略立案・実行などの案件を統括し、ビッグデータ解析・DX支援を行うIGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンスの代表取締役CEOを務め、ACESの顧問としても事業、経営戦略立案に尽力してきた川上登福氏の取締役就任が決定。今回の資金調達と川上氏の参画を機に、業界のサプライ/バリューチェーンのデジタル化を加速するとしている。

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日本ディープラーニング協会がビジネス活用人材向けG検定で7250名受験・累計合格者数3万人突破と発表

東京大学大学院工学系研究科 松尾豊教授が理事長を務める日本ディープラーニング協会(JDLA)は11月19日、「2020年 第3回G検定」(ジェネラリスト検定)を11月7日に実施したところ、7250名が受験し、4318名の合格者が誕生したと発表した。合格率は59.56%。ディープラーニングをビジネスへ活用する人材であるG検定の合格者は、累計3万1695名となった。

日本ディープラーニング協会がビジネス活用人材向けG検定で7250名受験・累計合格者数3万人突破と発表

  • 名称:2020年 第3回 G検定(ジェネラリスト検定、JDLA Deep Learning for GENERAL 2020 #3)
  • 概要:ディープラーニングを事業に活かすための知識を有しているかを検定する
  • 受験資格:制限なし
  • 試験概要:120分、小問191問、オンライン実施(自宅受験)
  • 出題範囲:シラバスより出題
  • 受験料(税抜):一般1万2000円、学生5000円
  • 試験日:2020年11月7日13:00より120分

JDLAでは、ディープラーニングの知識を有し、「事業活用する人材」(ジェネラリスト)と、「ディープラーニングを実装する人材」(エンジニア)の育成を推進。JDLA資格試験の合格者には認定ロゴと合格証の配付のほか、合格者コミュニティ「CDLE」(Community of Deep Learning Evangelists)に招待している。

ジェネラリストについては、「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して事業応用する能力を持つ人材」と定義し、2020年までに10万人規模で輩出することを目指し、知識面から育成を支援する活動に取り組んでいる。

エンジニアは、「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力を持つ人材」と定義し、2020年までに3万人の輩出を目指している。

AI(人工知能)分野の中でも特に成果を出しているディープラーニング技術の産業応用が進み、日本の産業競争力が向上することを目指し、JDLAではより多くのビジネスパーソンが学べるよう、引き続きジェネラリスト人材の育成に取り組むという。

JDLAは、ディープラーニングを事業の核とする企業が中心となり、ディープラーニング技術を日本の産業競争力につなげていこうという意図のもとに設立。ディープラーニングを事業の核とする企業および有識者が中心となって、産業活用促進、人材育成、公的機関や産業への提言、国際連携、社会との対話など、産業の健全な発展のために必要な活動を行っている。

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カテゴリー:人工知能・AI
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高度なAIでウェブ検索時のCtrl-F(もしくはCommand-F)を本当に便利にするHebbia

ここ数年、ディープラーニングが大きく進化している。GPT-3のような新しいシステムとモデルが、人の言語の解釈で高い性能を発揮するようになり、それをさまざまな形で応用するよう開発者たちを奮い起こさせている。文章を読み上げるボイスレコーダーや翻訳アプリなどでその結果が見られるが、最近の性能の進歩にはビックリさせられる。

では、このAIインフラが引き出す次なる機能の波は何だろう?Hebbia(ヘビア)はそこを探ろうとしている。

Hebbiaは、現在ではスタートアップだが、そもそもはプロダクトスタジオだった。スタンフォード大学博士課程に在籍し、現在休学中のGeorge Sivulka(ジョージ・シバルカ)氏と、その他3人のスタンフォード大学のAI研究者とエンジニアからなる混合部隊が創設した、いわばAIに関するアイデア帳のような存在だ。彼らは現在使える最新のディープラーニング技術とモデルを使い、知識グラフ、意味解析、AIが最終的に人の生産性に役立つことの限界を押し広げようとしている。

シバルカ氏は、知識経済で働いていた友人の経験を知って刺激を受け、この分野に焦点を当てようと思い立った。「多くの仲間が……、全員が一日中机に向かって膨大な量の情報を読むだけというホワイトカラーの職種に進みます」とシバルカ氏は話す。「金融アナリストになった人たちは、1行か2行の情報を得るために米国証券取引委員会の報告フォームを徹底的に読み込みます。またはロースクールに進んだり法律家になった人たちも、同じことをしています。……文章の壁に挟まれ身動きが取れない状態で、情報の雪崩の中から意味を読み取ることなど不可能です」。

(おっしゃるとおり)

彼自身とその仲間たちが目指しているのは、個々人の知識のパーソナルユニバースの解明を助ける検索と分析と要約のツールを開発して、人の生産性をパワーアップさせることだ。「人々の仕事のやり方を強化するとの方針に従って、Hebbiaがそうした思考のための生産性向上ツールを作るというのが私たちの目標です。具体的にそれは、みなさんが毎日処理している情報のインプットとアウトプットを管理するものです」とシバルカ氏はいう。

野心的なビジョンだ。そのため彼らは、どこかでスタートを切る必要があった。そんな同社の最初の製品が、そのビジョンに私が興奮を覚えたこのChrome(クローム)のプラグインだ。しばらくプライベートなベータテストを行った後、米国時間10月29日、世界に向けてリリースされる。これはChromeの検索機能をアップグレードして、単なるテキストパターンのマッチングを超え、入力されたテキストから、実際に何を知りたいのか、どう答えるべきかを考える。下の動画は、TechCrunchのサイトでこのプラグインを試したところだ。

HebbiaのCtrl-FをTechCrunchのサイトで使っているところ(画像クレジット:Hebbia)

例えばWikipediaのページでCtrl-Fを使い「この人はどこに住んでいた?」と質問すると、プラグインはこの文章は場所を聞いているのだと判断し、そのページで関連情報を含む文章をハイライトする。もちろんこれはAIで、しかも現時点ではまったくのベータ版AIなので、その答えに一貫性がないことも現在のところあり得る。しかし、Hebbiaがこのモデルの精度を高めてテキストの読解力を改善すれば、ブラウザーでの検索は完全にこちらに移行し、生産性が大幅にアップすることが期待できる。

シバルカ氏は、いわゆる神童だった。十代のころからNASAで働き始め、スタンフォード大学の学部を2年半で卒業。その後、修士号を1年ちょっとで取得し、Hebbiaに寄り道をする前に博士課程に進んだ。

Hebbiaのアイデアは、創設から数カ月以内にベンチャー投資家の関心を惹きつけた。Floodgate(フラッドゲート)のAnn Miura-Ko(アン・ミウラ=コー)氏は110万ドル(約1億1500万円)のプレシードラウンドを主導し、Naval Ravikant(ナバル・ラビカント)氏、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏、Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏、Michael Fertik(マイケル・フェルティク)氏、Cory Levy(コリー・レビー)氏がそれに参加した。

Ctrl-Fは、現在Hebbiaの最重要製品であり、知識グラフと個人の生産性がもたらす大きな可能性への入口の役割を果たしていると、シバルカ氏は話す。「これは、コンピューターにできることの最後のフロンティアなのです」とシバルカ氏。コンピューターは、データをデジタル化して処理しやすくすることで、すでに数多くの分野に革命をもたらしたと彼は指摘する。Ctrl-Fに関してはこう話す。「これは基本テクノロジーなので、(私たちは)これを使ってできることの、ほんの上面を引っ掻いているに過ぎないのです」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Hebbiaディープラーニング検索

画像クレジット:RapidEye / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

超低消費電力AI推論アクセラレーターIPのLeapMindがパートナープログラム開始

超低消費電力AI推論アクセラレーターIPのLeapMindがパートナープログラム開始

ディープラーニング技術を活用する企業に向けソリューションを提供するLeapMindは10月15日、エッジAIの社会実装に向けた「Efficiera(エフィシエラ) FPGAパートナープログラム」の提供を開始したと発表した。

パートナー企業とともに、顧客課題を解決できるAI搭載製品、ソリューションの開発を共創し、エッジAI領域の市場拡大と機械学習の社会実装の実現を加速する。第1弾の認定パートナーとしては、マクニカ アルティマ カンパニーPALTEKジーニックが参画している。

LeapMind開発の「Efficiera」とは、FPGAデバイス上もしくはASICデバイス上の回路として動作する、CNNの推論演算処理に特化した超低消費電力AI推論アクセラレーターIP(今秋正式リリース予定)。量子化ビット数を1~2bitまで最小化する「極小量子化」技術によって、推論処理の大部分を占めるコンボリューションの電力効率と面積効率を最大化する。このため、最先端の半導体製造プロセスや特別なセルライブラリーを使用する必要がないという。

極小量子化技術では、推論モデルを構成するパラメータを、通常用いられる単精度浮動小数点数(32bit)から1bitまたは2bitに置き換えることで、軽量化を達成。一般には、性能の劣化を起こさない限界は8bitまでとされているが、LeapMindは、8bitを大きく下回る1bitのWeight(重み係数)、2bitのActivation(入力)という組み合せでも性能をほとんど劣化させないことに成功した。

超低消費電力AI推論アクセラレーターIPのLeapMindがパートナープログラム開始

超低消費電力AI推論アクセラレーターIPのLeapMindがパートナープログラム開始

また、モジュールやデバイスではなく回路情報をライセンス提供するため、他の回路と同一デバイス上にEfficieraを集積でき、ディープラーニング機能を搭載した量産製品のBoMコスト削減に貢献できるという。同製品を利用することで、家電製品などの民生機器、建設機械などの産業機器、監視カメラ、放送機器をはじめ、従来は技術的に困難であった電力とコスト、放熱に制約のある小型機械やロボットなど、様々なエッジデバイスへディープラーニング機能を組み込めるとしている。

超低消費電力AI推論アクセラレーターIPのLeapMindがパートナープログラム開始

Efficiera FPGAパートナープログラムは、「顧客課題を解決可能なAI搭載製品・ソリューションの共創」を目的とするプログラムとなっている。

同プログラムに参画することで、自社製品・サービスとEfficieraを組み合わせて顧客の要望に応じたサービスやシステムの開発・提供や、Efficieraに付加価値をつけたパッケージサービスの開発が可能としている。

LeapMindは、「機械学習を使った新たなデバイスを、あまねく世に広める」を企業理念に2012年創業したスタートアップ企業。累計調達額は49.9億円に達しているという。ディープラーニングをコンパクト化する極小量子化技術に強みを持ち、自動車産業など製造業中心に150社を超える実績を保有。ソフトウェアとハードウェア両面の開発ノウハウを元に、半導体IPEfficieraを開発している。

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カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: EfficieraFPGAディープラーニング / 深層学習LeapMind日本

AIナビアプリ開発のAILLが九州経済連合会と協業、9月18日より「婚期創出事業」での導入開始へ

AIと深層学習でチャットの内容を解析して恋人候補同時の円滑なコミニュケーションを支援する「Aill」(エール)を開発するAILLは9月17日、一般社団法人九州経済連合会との協業を発表した。AILLは、TechCrunch Japanが昨年開催した「TechCrunch Tokyo 2019」のピッチイベント「スタートアップバトル」のファイナリスト。120社以上の応募スタートアップの中から選ばれた20社のうちの1社だ。

九州経済連合会は、九州地域の経済活性化を目的とした団体で九州・山口地域に事業所を有する法人企業等約1000社が加入している。具体的には同連合会が、9月18日よりAillを活用して加盟企業間で社外の独身社員の出会いの場をアプリで提供する。加盟企業の福利厚生として導入を進めていくという。

九州経済連合会によると「近年、日本の人口減少は大きな社会問題となっており、。特に地方圏では、若者の都心への移住(社会減少)と未婚者の増加(自然減少)による人口減少で地方経済は後退し、雇用も減少するという負のループに陥っているという。九州地方でも福岡県を含めた7県すべてが人口減少県となり、地域衰退の懸念が増している。

これらの問題を解決するために「Aill」導入し「婚期創出事業」を発足。本事業を通して、九州と山口県を魅力的な働き口として加盟企業が率先してアピールをしていくという。さらに、加盟企業が安 心・安全な出会いの場を提供することで、人口減少や地域経済の後退を抑止する姿勢を示していきたいとのこと。

九州経済連合会の観光・サービス産業部の升本喜之部長は「これまでも九州地域で婚活パーティーなどの開催などを手掛けてきたが、時間や場所の制約もあり、なかなかうまく進まない面もあった。もちろん、こういった事業を否定するわけではないが、なにか違う方法で未婚者の増加を食い止めることはできないかと模索しているときに、すでに大手企業で導入が進んでいるAILLさんと出合い、協業することになった」と語る。「現在ではネット上のやり取りは一般的になっている点と、Aillでは九州経済連合会の加盟企業の独身男女だけが参加できるという安全性も評価した」と続ける。

升本氏の発言のように、九州経済連合会がAillを導入した理由としては、加盟企業の社員という身元がしっかりした独身男女しか登録できないプラットフォームである点だ。また、同じ社会的レイヤーの企業の社員と出逢えることで、価値観・ライフプラン・キャリアプランが合いやすく、共働き夫婦増加の後押しなることも期待している。さらには、新型コロナウイルスの感染拡大によるリモートワークの推進などの、人と人の出会いの場が減っている現状も、Aillを利用すればある程度解消できる。

Aillは、「安心して恋愛をしたい」「信頼できる人に会いたい」「仕事だけで なく私生活(恋愛)も充実させたい」という想いを実現すべく開発されたAIナビゲースンシステム。紹介、会話、好感度という3つのナビゲーションを利用者に提供することで、男女のコミュニケーションのすれ違いを緩和、出会った後の関係進展をサポートする。実際の二人のやり取りも深層学習で解析され、ナビゲーションの精度が高まる仕組みだ。

Aillの開発は、ナビゲートエンジン開発を担当する北海道大学情報科学研究科・川村秀憲教授、AIシステム設計を担当する東京大学システム情報科学部・松原仁教授、感情と数値化を担当する東京大学 工学系研究科システム創成学専攻・鳥海不二夫准教授の3人の研究者が加わっている。

写真に向かって左から、AILL代表取締役の豊嶋千奈氏、北海道大学の川村秀憲教授、東京大学の鳥海不二夫准教授、東京大学の松原仁教授

川村教授は「ひと昔前で一般的だった、お見合いおばちゃんをAI化することを目的としている」とのこと。現在は社会構造の変化などにより、人を介してのお見合いというのはなかなか難しくなっているが、その一方で初対面の二人の円滑なコミュニケーションはなかなか難しいという現状もある。「これまでのお見合いおばちゃんは、二人の最初のコミュニケーションから、見合い後に問題が起こらないようにさまざまなノウハウやテクニックを駆使してきました。こういったノウハウやテクニックをAIに導入して社会課題の解決に結びつけたい」と川村氏は語る。

ディープフェイクテキストが国家の危機を増幅する

編集部注:本稿はJinyan Zang氏、Latanya Sweeney氏、Max Weiss氏による寄稿記事である。Zang氏はハーバード大学のData Privacy Labの研究者、Sweeney氏はハーバード大学で「政府とテクノロジー」を専門にする教授、Weiss氏は今回のディープフェイクテキスト実験を実施したハーバード大学の学生だ。

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米国の連邦政府機関は国内における新型コロナウイルスのパンデミック拡大を阻止しようとさまざまな措置を講じており、その厳しさは増すばかりだ。連邦政府により策定される規則の影響を受ける米国民と企業は、自分たちの意見や経験をどのように政府に伝えることができるのだろうか。移動の制限監視の強化などをはじめとする新たな規則の多くは、施行に際して連邦政府の権限を平時よりも拡大する必要がある。このような場合、米国の法律では、連邦政府が規則案を一般に公開し、国民がオンラインで意見を投稿できるようにすることが義務付けられている。しかし、米国の民主主義にとって不可欠な仕組みである連邦政府のパブリックコメントウェブサイトは、今回のような危機に際して安全に機能するのだろうか。ボットによる攻撃に対して脆弱ではないだろうか。

2019年12月、筆者らは、自動化された攻撃に対するパブリックコメントプロセスの脆弱性に関する実調査についてまとめた新しい研究論文を発表した。この調査では、誰でも利用できる人工知能を使用してディープフェイクテキスト(コンピュータが深層学習により人間の発言を模倣して生成するテキスト)によるコメントを1001件生成し、それを実際にアイダホ州のメディケイド被保険者に就業状況報告を義務付ける連邦規則案に関するパブリックコメントを募集するためにCenters for Medicare & Medicaid Services(メディケア・メディケイド・サービス・センター、CMS)が開設したウェブサイトに投稿するという実験を行った。

ディープフェイクテキストを使用して作成したコメントは連邦パブリックコメント期間中に投稿されたコメント総数1810件の55%以上を占めた。筆者らは、その後の追跡調査で、これらのコメントがボットによるものだと思うか、実際に人が書いたものだと思うかを尋ねるアンケートを実施した。回答者の正答率は50%、当てずっぽうで答えたときの確率と同じだった。

Image Credits: Zang/Weiss/Sweeney

上記はボットによって生成されたディープフェイクテキストの例だ。アンケート回答者全員がこのテキストは人が書いたものと判断した。

筆者らは実験終了後、ディープフェイクコメントを投稿したことをCMSに通知し、それらのコメントを投稿履歴から削除したが、悪意のある攻撃者がそれと同じことをするとは思えない。

連邦ウェブサイトに対する大規模なフェイクコメント攻撃は過去にもあった。例えば、2017年、ネット中立性規制を撤廃する規則案について、連邦通信委員会(FCC)のウェブサイトに対してフェイクコメント攻撃が行われたことがある。

ネット中立性規則に関するパブリックコメント期間中、通信業界団体のBroadband for America(ブロードバンド・フォー・アメリカ)に雇われた複数の企業が、ボットを利用してネット中立性規則の撤廃を支持するコメントを作成したのだ。こうして投稿された数百万件のコメント(中にはすでに亡くなっている有権者や架空の人物になりすましたものもあった)によって、世論がねじ曲げられたのである。

ネット中立性に関するコメントを事後にテキスト解析したみたところ、FCCのネット中立性撤廃案に対する2200万件を超えるコメントのうち実に96~97%がボットを使ったコメント操作だった可能性が高いことがわかった。このコメント操作では比較的単純で目立つ検索・置換方式が使われていたため、FCCのように膨大な数のコメントが投稿された場合でも容易に検出できたはずだ。しかし、調査の結果、簡単な検索・置換方式で作成された不正なコメントであることが判明した後も、FCCはそれらのコメントを正当なパブリックコメントとして受理していた。

このように、比較的単純な方法でも連邦政府の政策決定に影響を与えることができたという前例がある。しかし、ボットによるディープフェイクテキスト投稿がもたらす脅威について筆者らが行った実験から、今後の攻撃はより高度で検出困難になる可能性が明らかになった。

パブリックコメントに関する法律と政策

はっきりさせておこう。自分たちの要求を伝えそれを検討してもらうことができる仕組みは民主主義モデルの根幹である。憲法に明記され、人権擁護団体によって厳密に保護されているとおり、すべての米国民は、投票、自己表現、異議申し立てなどにより、政府に参加する役割を保証されている。

Image Credits: Zang/Weiss/Sweeney

連邦政府機関が全米市民に影響を与える新しい規則を策定する際には、規則案によって最も影響を受ける一般市民、権利擁護団体や企業が連邦機関に対して懸念を表明できるようにパブリックコメント期間を設け、その規則について最終決定を行う前にそれらのコメントを検討することが法律で義務付けられている。このようなパブリックコメントの義務化は、1946年の行政手続法の成立により導入され、2002年には電子政府法により、連邦政府はパブリックコメントを受信するオンラインツールを作成することを求められるようになった。それ以来、投稿されたコメントを実際に調査したことを証明すること、およびパブリックコメントに基づいて下した決定に関連する分析結果や決定の正当性を示すものを開示することを連邦政府に要求する判決がいくつも下されている[Overton Park保護団体対Volpe 401 U. S. 402, 416(1971)Home Box Office対FCC 567 F.2d at 36(1977)Thompson対Clark 741 F. 2d 401, 408(CADC 1984)を参照のこと]。

実は、筆者らがCMSのパブリックコメントサイトでディープフェイクテキスト投稿に対する脆弱性をテストしたのは、2019年6月、米国最高裁が7対1で「CMSは、州内でのメディケイド資格取得規則に就業状況報告義務を追加するという州政府の提案を検討する際に、行政手続法のパブリックコメント検討義務を省略することはできない」という判決を下したからだ。

政治学者の研究によると、パブリックコメントは連邦政府機関による最終決定に大きな影響を及ぼす可能性がある。例えば、ハーバード大学が2018年に行った調査によると、連邦準備制度が定めるドッド-フランク法関連規則についてコメントを投稿した銀行は、コメントしなかった銀行よりも70億ドル(約7600億円)多い超過リターンを獲得していたことが判明した。さらに、同調査においてボルカー規則とデビッドカード交換規則について投稿されたコメントを分析した結果、さまざまな銀行から投稿されたコメントが、初期草案から最終案に至る「不透明なプロセス」に重大な影響を与えたことがわかった。

2017年のネット中立性撤廃規則では、業界団体のブロードバンド・フォー・アメリカが、正式な社名を使って直接コメントするだけでなく、ネット中立性撤廃を支持する数百万件のフェイクコメントを投稿することで、FCCの規則案が米国市民によって広範に支持されているという誤った認識を作り上げた。

ディープフェイクテキストによるパブリックコメントへの投稿を阻止するテクノロジー

筆者らの研究はディープフェイクテキストの脅威がパブリックコメントウェブサイトに混乱をもたらすことを示しているが、これは、長年にわたり米国の民主主義を支えてきたパブリックコメントウェブサイトという仕組みを終わらせるべきだということではない。テクノロジーを活用して、人間が書いたパブリックコメントのみを受け入れ、ボットによるディープフェイクテキストは拒否する革新的なソリューションを実現する方法を見つける必要がある。

パブリックコメントプロセスには、コメントの投稿とコメントの受理という2つの段階があり、どちらの段階でもテクノロジーを活用して問題を解決できる可能性がある。

まず、コメントの投稿という最初の段階にテクノロジーを利用することで、そもそもボットがディープフェイクコメントを投稿するのを阻止できる。そうなると、攻撃者はボットの代わりに大勢の人を使わざるを得なくなり、コストが高くなって攻撃自体が割に合わなくなる。すでに広く浸透しているソリューションの1つにCAPTCHAボックスがある。インターネット上の入力フォームの末尾で、ある単語を視覚的に判読するか音声で判別するように求め、正解した場合にのみ送信をクリックできるようにする仕組みだ。CAPTCHAでは余分な手順の追加によりボットによる送信実行が困難になる。こうしたツールは、障がい者でも使えるように改善する余地はあるものの、正しい方向への一歩といえるだろう。

ただし、海外の安い労働力を使ってCAPTCHAの入力を行わせディープフェイクコメントを投稿するという手段を取られたら、CAPTCHAでは攻撃を阻止できない。これに対抗する1つの方法として、コメントを投稿するたびに毎回厳密な個人情報の入力を求めるという方法が考えられるが、その方法だと、CMSやFDA(食品医薬品局)によって現在行われている匿名コメントの受け付けが不可能になる。匿名コメントは、ヘルスケアなどのデリケートな問題に関する規則案によって多大な影響を被る可能性のある個人がプライバシーを守りつつコメントする方法として有用だ。したがって、ユーザーの認証手順とコメントの投稿手順を切り離して、認証された個人だけがコメントを匿名で投稿できるようにすることが技術的な課題となるだろう。

最後に、第2段階のコメントの受理においては、より高度なテクノロジーによって、ディープフェイクテキストと人間による投稿を識別できる。筆者らの研究では100人を超える調査対象者がディープフェイクテキストの例をフェイクとして判別できなかったが、より高度なスパム検出アルゴリズムが登場すれば、判別率は向上するだろう。今後、機械学習による手法が進歩するにつれ、ディープフェイクテキストの生成アルゴリズム開発と判別アルゴリズム開発がせめぎ合うようになるかもしれない。

当面の課題

将来、テクノロジーの進歩によってさらに包括的なソリューションが可能になるとはいえ、ディープフェイクテキストが米国の民主主義に及ぼす影響は現在進行中の脅威である。そのため、連邦政府のすべてのパブリックコメントウェブサイトで、当面のセキュリティ措置として最新のCAPTCHAを採用することを推奨したい。この方針は、米国上院調査委員会のReport on Abuses of the Federal Notice-and-Comment Rulemaking Process(連邦告知とコメント規則策定プロセスの乱用に関する報告)でも支持されている。

加えて、より優れたテクノロジーソリューションを開発するために、政府、研究者、民間のイノベーターという産学官の連携を確立する必要がある。ハーバード大学が、他の20の教育機関およびニューアメリカ財団、フォード財団、ヒューレット財団と共にPublic Interest Technology University Network(パブリックインタレストテクノロジー大学ネットワーク)に参加したのもそのためだ。このネットワークは、公益に資することを目指す新世代の技術者や政策担当者を支援することに専念している。さまざまなカリキュラム、研究および実験的な学習プログラムを通して、パブリックインタレストテクノロジーという分野を構築するのが目的だ。将来的には、最初から公共の利益を考えてテクノロジーの開発と規制が行われるようになることを目指している。

新型コロナウイルスによって米国社会のさまざまな部分が大きな打撃を受けたが、トランプ政権下の連邦機関が規制緩和規則を提案する動きは弱まっておらず、それらの緩和規則が及ぼす影響は現在のパンデミック収束後も長く続くだろう。例えば、2020年5月18日に環境保護庁(EPA)が、EPAによる規制の支持に使用できる研究調査の制限に関して新しい規則を提案したが、この規制案には2020年4月6日時点で61万件のコメントが寄せられている。また、2020年4月2日には、教育省がオンライン教育と遠隔教育に関する規制を恒久的に緩和する新しい規則を提案した。さらに、2017年に2200万件ものボット生成コメントが投稿されたFCCのネット中立性規則に関するパブリックコメントは、「FCCはネット中立性規則の廃止が公共の安全と低所得者向け携帯電話アクセスプログラムに及ぼす影響を無視した」という連邦裁判所の判決をうけて、2020年2月19日にコメント募集が再開された。

連邦機関のパブリックコメントサイトは、規則の最終案が決定される前に米国の市民と団体が連邦機関に対して懸念を表明する唯一の手段だ。より高度なテクノロジーを活用して不正防止を図ることにより、国家の危機の際に米国の民主主義がディープフェイクテキストによってさらなる脅威にさらされるという事態を防ぐ必要がある。

“新型コロナウイルス

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Category:パブリック 人工知能・AI

Tag:ディープフェイク ディープラーニング

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(翻訳:Dragonfly)