Spotifyがラジオ放送をオンデマンドオーディオ化するポッドキャスト技術のWhooshkaa買収

Spotify(スポティファイ)は、ポッドキャストのホスティング、管理、配信、プロモーション、マネタイズ、測定のためのオールインワンプラットフォームであるオーストラリアの会社のWhooshkaa(ウーシャカア)買収し、ポッドキャストへの投資を引き続き継続している。この買収は、Spotifyがポッドキャストテクノロジー市場において、2020年行ったホスティングおよび広告会社のMegaphone(メガフォン)の買収、そして最近ではポッドキャスト発見プラットフォームであるPodz(ポッズ)の買収に続くものだ。

また、現在はSpotify Greenroom(スポティファイ・グリーンルーム)という名のBetty Labs(ベティ・ラボ)のAnchorやライブトークショープラットフォームといったクリエイター向けツールや、Gimlet(ギムレット)、Parcast(パーキャスト)、The Ringer(リンガー)といったポッドキャストスタジオも買収している。

WhooshkaaによってSpotifyは、ラジオ放送局が既存の音声コンテンツをオンデマンドのポッドキャスト番組に簡単に変換できる専門技術という新しいツールを手に入れたことになる。Megaphoneはすでに、ポッドキャスター向けにホスティング、配信、レポート、マネタイズなどの一連のツールを提供しているが、Spotifyが最も関心を持ったのはこの部分だった。Spotifyは、この「ブロードキャスト・トゥ・ポッドキャスト」技術をメガフォンに直接統合するという。

Spotifyは、Wooshkaaのポーティング機能によって、より多くのサードパーティーコンテンツがSpotify Audience Networkに参入でき、広告パートナーへのリーチとインパクトを高めることができると考えている。Spotifyのこの部分のビジネスは、スケールアップしている。同社は2021年に広告収入10億ユーロ(約1280億円)のマイルストーンを通過し、Spotifyは第3四半期に過去最高の広告収入を計上した。

現在、Spotifyの広告主の5人に1人がSpotify Audience Networkを利用しており、加入したMegaphone Podcastのパブリッシャーでは、フィルレートが2桁増になったとSpotifyは述べている。

2016年に立ち上げられたWhooshkaaは、テキスト読み上げ、音声合成、コネクテッドホーム統合、ダイナミック広告挿入技術、エンタープライズグレードのプライベートポッドキャスティングツールなどの分野でもイノベーションを起こしたと、CEOのRob Loewenthal(ロブ・ロウェンサル)氏は同社ブログでの独自の発表で述べている。しかし、Spotifyが月間3億8100万人のリスナーを抱えているため、Whooshkaaはその技術をより多くの人々に提供することができるようになるのだ。

「私たちは、デジタルオーディオの世界的な成長の可能性は、まだほとんど手つかずであると信じています。これらの新しく加えられたツールやそれを支える革新的なチームを通じて、クリエイター、パブリッシャー、広告主がこの機会の価値を実感できるよう支援するという当社のコミットメントを強化します。Whooshkaaとともに、我々はあらゆる種類のオーディオパブリッシャーのポッドキャストビジネスの成長を支援する取り組みを強化し、広告主が視聴者に到達するのを支援する我々の能力を拡大します」。と、Spotifyのコンテンツ&広告ビジネス最高責任者のDawn Ostroff(ドーン・オストロフ)氏は、この取引に関する声明で述べている。

Spotifyは、取引条件の共有を拒否し、Whooshkaaの既存の顧客のための移行計画についてはまだコメントできなかった。この取引の一環として、合計12名がSpotifyに入社する予定だが、彼らは引き続きオーストラリアに拠点を置く予定だ。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Spotify、ポッドキャストにアップルのような5つ星評価システムを導入

ポッドキャストを聴いたことがある人なら、エンドロールでホストが「Apple Podcastにレビューを残してください」というのを聞いたことがあるだろう。これからは「Apple PodcastsとSpotifyにレビューを残してください」という文言に変わるかもしれない。

Spotify(スポティファイ)は米国時間12月16日、ポッドキャストのディスカバリーを向上させようと、Apple(アップル)と同様の5つ星評価システムを導入することを発表した。同社によると、この機能はSpotifyでポッドキャストが配信されているほぼすべての市場で、今後数日のうちに展開される予定だという。

Appleと違い、この機能は現時点では星評価のみをサポートし、番組のレビューを書くことはまだできない、とSpotifyはTechCrunchに説明した。

Spotifyはブログ投稿で、その意図は「リスナーにお気に入りのポッドキャスト番組をサポートする機会を与え、クリエイターとリスナー間の双方向のフィードバックループを可能にすること」だと書いている。しかし、ポッドキャスティングというメディアが出現して以来、5つ星のAppleレビューを求めてきたポッドキャスターたちは、星の評価が実際にどれだけ番組の宣伝に役立つのか慎重だ。

ポッドキャスティングでは、立ち上げから数週間で多くの評価レビューを獲得すれば、Apple Podcastsの注目すべきチャート「New and Noteworthy」にリスト入りする可能性が高まり、番組の成長が加速するというのは、十分に裏付けがある神話だ。それに、プロのポッドキャスターたちは、Apple自身が評価やレビューはチャートに影響を与えないと言っていることを指摘している。

Spotifyの担当者はTechCrunchに「評価はリスナーとなる人が番組の質をすばやくチェックするためのすばらしい方法ですが、現時点では(この機能の初期段階なので)番組の評価はポッドキャストチャートやパーソナライズされたレコメンデーションに織り込まれません」と述べた。

つまり、これはファンがポッドキャストをどう思っているかを示すツールではあるが、今のところ番組がSpotifyのチャートやキュレーションリストに載るためのものではない。

Spotifyが2019年に買収したポッドキャスト作成プラットフォームのAnchor(アンカー)は、ポッドキャスターがリスナーに評価を残すよう促す方法について、ブログ記事で提案している。「この番組は好きですか。Spotifyの番組ページに評価を残して、私たちに教えてください」と、ある例には書かれている。

独立系のポッドキャスティング集団Multitude Productionsのクリエイティブ部門責任者であるEric Silver(エリック・シルバー)氏は「クリエイターとして、これはマーケティングの動きのように感じられます」と述べている。「私はApple Podcastsで評価やレビューをするよう、人々には一切言っていません。なぜなら私が気分良くなること以外に何も起こらないことを知っているからです」。

2021年12月初めにソーシャルメディア上でトレンドとなったSpotify Wrappedと同様のマーケティング戦術だ。自分の音楽やポッドキャストの視聴習慣を友人と共有するのは楽しいが、同時にSpotifyにとっては大きなPRの成功でもある。

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Spotifyの新しい評価システムが配信に影響を与えないとしても、シルバー氏は少なくとも数週間はリスナーがMultitudeの番組をSpotifyで評価するよう促すだろう、と話す。Spotifyは最近、米国のポッドキャストリスナー数でApple Podcastsを上回った。なので、潜在的な視聴者の大部分があなたの番組のページを訪れたときにその評価を見ることになるなら、ファンにあなたの番組を評価するよう求めることは理に適っている。

YouTube、TikTok、その他のクリエイティブなプラットフォームは、潜在的なオーディエンスに、あなたが何人のフォロワーを持っているかをすぐに表示する。しかし、ポッドキャストのダウンロード数や購読者数は、ポッドキャスターが言わない限りわからない。評価やレビューが人気の指標になるとはいえ、この点がポッドキャスティング業界と、ビデオのようなよりアルゴリズムが重視される他のメディアとの違いだ。

「理論的には、アルゴリズムはあなたを助けるはずです。しかし、これはこの時代の技術の話ではないでしょうか」とシルバー氏はいう。「とても複雑です。アルゴリズムがあればもっと発見があるのに……というような話ではなく、YouTubeやTikTokのような問題が発生すると、その逆になってしまいます」。

YouTubeやTikTokといったプラットフォームのクリエイターは、アルゴリズムが好むと思われるコンテンツを作るよう動機付けられていて、おそらく視聴者が好むと思われるものよりも作っている。しかし、メディアであっても、それはアルゴリズムに依存したものではなく、ポッドキャスティングや、Twitchストリーミングのように、固有のバイアスが存在する。2021年初め、Twitchの支払いデータが流出した際、最もギャラの高い女性ストリーマーであるPokimaneは、Twitch全体のギャラの順位で39番目に止まることが明らかになった。ポッドキャスティングも、その多様性という点ではまだまだだ

Spotifyはポッドキャストの評価をアルゴリズムによるレコメンドに使っていないとはいえ、ポッドキャストを見つけやすくするための大きな計画の一部である可能性はある。Spotifyはポッドキャストのディスカバリーを促進しようと、2021年6月にPodzを買収した

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短期的には、Spotifyは評価を通じて番組を良く見せる必要があるため、ポッドキャスターが視聴者にSpotifyを利用するように仕向けるための巧妙な動きといえる。これは本質的に悪いことではないが、SpotifyとAppleがポッドキャスティングのエコシステムでより大きなシェアを獲得しようと競争しているため、クリエイターはより大きな技術競争の渦中に巻き込まれているように感じられるかもしれない。

画像クレジット:Spotify

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

【TC Tokyo 2021レポート】ポッドキャストとVCの表裏一体で活躍するハリー・ステビングス氏は世界中の有望企業に目を向ける

先に開催された「TechCrunch Tokyo 2021」。「海外スタートアップトレンド解説」のセッションには、10万人以上のリスナーを持つ世界最大の独立系VCポッドキャスト「The Twenty Minute VC」の創設者でホストのHarry Stebbings(ハリー・ステビングス)氏が登場した。モデレーターは米国を中心にスタートアップやテクノロジー、VCに関する最新トレンドなどを配信する「Off Topic」を運営している宮武徹郎氏が務めた。

冒頭でステビングス氏を「ポッドキャストのホスト」と紹介した。同氏のポッドキャストには多数のVCや起業家がゲストとして出演し、特に起業家に人気がある。しかし同氏にはポッドキャストのホスト以外にもう1つ、「20VC」というマイクロVCを立ち上げた投資家の顔もある。VCポッドキャストのホストとして人脈を広げ情報を集めて発信し、自身も投資をする同氏は「20VCをメディア性のある一流金融機関に育てたい」と言う。このセッションでは、メディアとVCの両面から同氏に話を聞いた。

VCを目指す道のりは50ドルを投じたポッドキャストから始まった

ステビングス氏は、Facebookの創業を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」でファンドのシーンを見て「VCに一目惚れした」という。18歳の時にロンドンでベンチャー投資家を目指してポッドキャストの「The Twenty Minute VC」を開始。つまりポッドキャスト配信者からVCになったのではなく、VCを目指してポッドキャストを始めたのだ。

ポッドキャストを始める際に投じた金額は50ドル(約5600円)。マイクに40ドル(約4500円)、ドメインに10ドル(約1100円)を支払って配信を始めた。その後7年間で、3000回の配信、ダウンロード数は1億8000万回を超え、月間では2500万回のポッドキャストへと成長した。そしてVCとしては、2021年6月にファンド2社で1億4000万ドル(約159億円)の資金を調達した。

ポッドキャストとVCという戦略について、同氏は次のように語った。「投資家が乱立しているため、優れた投資先の獲得にはブランド戦略が欠かせません。VCは上場株取引とは違います。いい株を選ぶだけではなく、取引に勝つ力が必要です。だからブランド力は欠かせないのです。そして取引では人間関係も重要です。ポッドキャストは親密で深い関係性を築けます。だからこそブランド構築と差別化を念頭に置き、番組を立ち上げて熾烈な競走を勝ち抜こうとしたのです」。

ガイ・カワサキ氏出演で弾みがついた

そうは言っても、いきなりブランド力のあるポッドキャストになるはずはない。宮武氏は「あなたは米国IT業界とのつながりは薄かったはずなのに、初回のGuy Kawasaki(ガイ・カワサキ)氏をはじめとする出演許可はどのように取り付けたのですか?」と尋ねた。

これに対しステビングス氏は「コネはありませんでしたね。VCにもIT起業家にも、知人は皆無でした。そこでガイ氏の本を3冊読んでから、依頼のメールを出しました。『287ページにはどんな意味が? 294ページの具体例は?』と。すると、いい着眼点だと返事が来てぜひ話したいと言われたので『では番組でお話を』と。世間に認められるにはそれで充分でした。それ以降の方々にはガイ氏との実績を上げて出演交渉をしました。うまく弾みがつきましたね。こんなふうに初回にガイ氏をお呼びできてとても嬉しかったです」と答えた。その後はガイ氏をはじめとする出演者に次のゲストを推薦してもらい、人脈を築いている。

人気ポッドキャストの秘訣は品質への意識と念入りな準備

宮武氏が番組の人気を高める苦労を質問すると、ステビングス氏は品質への意識を挙げた。出演の売り込み依頼に応じたことは一度しかなく、収録したものの出来が悪くお蔵入りにした回もあるという。「依頼に応じてもそれで質が上がるとは思えない。ポッドキャストは僕の製品です。出演者と僕自身のためにも最高の番組だけを目指しているのです」(ステビングス氏)。

番組の品質のためにはもちろん準備が必要で、「事前に膨大な調査をしています。関係者にも話を聞きますね。この準備が鋭い質問の礎となり、人脈も深まります。だから念入りに調査をするのが大切です。誰よりも入念にね」と同氏は説明する。

「僕は世界の一流起業家と働くためにメディアを使う」

セッションはこの後、ステビングス氏のベンチャー投資家としての意見に話が及んだ。

ラストワンマイルの食品配達市場について同氏は、欧米では顧客獲得費の高騰、運転手の高額な人件費、注文額の低さという重大な課題があるのに対し、新興国市場ではこうした課題はないとした上で、「この分野では現金が企業を守るため、資金力が潤沢なGopuffが米国を、Getirが英国を制するでしょう」と述べた。

新興国市場の話が出たことから「あなたの投資範囲は世界中に及びますが、強く関心を寄せる地域はありますか?」と宮武氏に問われ、同氏は次のように述べた。

「僕は世界中の優れた起業家に投資します。いま注目すべきは、世界中に人材が分散していることです。勢いはコロナ禍で増している。僕は世界の一流起業家と働くためにメディアを使います。メディアは僕の事業の看板なので極力大きくしたい。番組の力で20VCの存在感を高めるのです。だから地理的な好みはありません。Zoomの世界ではそれがいっそう重要です。これまでは地域による優位性がありましたが、今はZoomで誰にでも会える。ラテンアメリカが良い例です。ラテンアメリカでの出資先獲得競争は激しさを増すばかりです。状況は一変しますよ。業界を根底から革新する、世界の一流企業を支援できます。僕は事業の地域性を重視しませんが、他の方はそうではないようです。事業の成長に地域との関連性を見出して『やはり重要だ』と思うとしても、その関連性を証明する明白な証拠はなく、正解の可能性も、思い違いの可能性もあります。だから僕はただ、世界の一流企業を峻別する転換点に立っていたい。必ずパートナーに選ばれるようにね。頼もしい協力者でありたい。それだけが僕には重要です」。

起業家から雑談を持ちかけられると嬉しい

ステビングス氏のポッドキャストでは一問一答で番組を締める。それにならって宮武氏も、このセッションの最後に短い質問をいくつかした。「助言者から得たアドバイスは?」という質問に対し、ステビングス氏は以下の3つを挙げた。

「交渉において公平さに勝る武器はない。公平でいれば後ろめたさと無縁なので、交渉中も強い自分を保てます」

「限界を人に測らせないこと。限界がわかるのは自分だけです。しかも自分自身でさえ実力を侮りがちだ。粘り強く頑張ること」

「最後の大切な教えは、どんな時も状況はさほど悪くないこと。強く前を見て歩きましょう」

そして「投資家になって良かったと思うこと」については「僕はかなり顔の広い人間だと思います。知り合いが多く、人の話に耳を傾ける。だから夜中に起業家から電話があって雑談を頼まれると嬉しいですね。起業家が僕を頼ってくれる。僕は彼らの戦友だ。そうやって彼らを支えます」と、ポッドキャストとVCの両面で活躍する同氏ならではの答えが返ってきた。

TechCrunch Tokyo 2021は、12月31日までアーカイブ視聴が可能だ。現在、15%オフになるプロモーションコードを配布中だが、数量限定なのでお早めに。プロモーションコード、およびチケット購入ページはこちらのイベント特設ページからアクセス可能だ。

Spotify、ネットフリックスの関連サントラ音楽やポッドキャストを集めた「Netflix Hub」を開始

Netflix(ネットフリックス)のお気に入りの番組のサウンドトラックを探している?拡大されたNetflixとSpotify(スポティファイ)のパートナーシップのおかげで、より簡単に探すことができるようになった。Netflixは米国時間11月23日、アプリ上で、人気番組や映画の公式サウンドトラック、プレイリスト、ポッドキャストを見つけることができる「Netflix Hub(ネットフリックスハブ)」を導入した。

Netflix Hubでは「ストレンジャー・シングス 未知の世界」「ペーパー・ハウス」「ナルコス:メキシコ編」「アウターバンクス」「イカゲーム」「チック、チック…ブーン!」「ブリジャートン家」「カウボーイビバップ」「ヴァージンリバー」「マイ・ブロック」などのサウンドトラックやプレイリストを提供している。

また「Okay, Now Listen」「Netflix Is A Daily Joke」「10/10 Would Recommend」「You Can’t Make This Up」などのNetflixに関連したポッドキャストや「The Crown:The Official Podcast」「Behind the Scenes:Shadow and Bone」などの人気番組を掘り下げたものがある。

他にも、Jay-Zが主導したサウンドトラック制作の舞台裏をファンに提供するNetflixの西部劇「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野」の拡張版アルバムなども、音楽やファンの新しい体験の一部となる。また「ペーパー・ハウス」パート5ボリューム2のコンテンツ・デスティネーションや、BuzzFeedのクイズのような、自分が「ペーパー・ハウス」のキャラクターの誰になるかを当てるゲームができるキャラクターマッチング経験などもある。

画像クレジット:Spotify/Netflix

このHubは、SpotifyとNetflixの既存のパートナーシップの上に成り立っているとSpotifyはTechCrunchに語った。両社はこれまでに多くの公式プレイリストで協力してきた。

Netflixは、Spotifyのアプリでハブを持つためのアクセス権を購入していない。つまり、これは広告商品ではなく、お金のやり取りもない。そのかわり、両社は、重なり合うファン層のために協力することに可能性を感じているのだ。

Spotifyのアプリにテーマ別の「ハブ」を導入する大手企業は、Netflixだけではない。最近では、SpotifyとPeleton(ペロトン)が同様の提携を発表し、Pelotonのインストラクターによるプレイリストを掲載した「Curated by Peloton(キュレイティッド・バイ・ペロトン)」ワークアウトハブを導入した。また、アプリ以外では、2021年初めにSpotifyは、アーティストのGIFを使ってユーザーに音楽を紹介するため、GIPHY(ギフィー)と提携した。

Netflixのコンテンツの一部をSpotify専用にすることは、Netflixにとって意味のあることかもしれない。というのも、音楽やポッドキャストを提供しているもう1つの大企業Apple(Apple MusicおよびApple Podcasts)は、Apple TV+ストリーミングサービスでNetflixの競合相手となっているからだ。Spotifyは、少なくとも現時点では、Netflixの中核市場に進出していないため、パートナーとして適していると言える。

Spotifyは、今後数カ月のうちに、より多くの専用コンテンツをNetflix Hubに展開する予定だという。

Netflix Hubは、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、英国、アイルランド、インドのフリーおよびプレミアムのすべてのユーザーが利用できる。

画像クレジット:Spotify/Netflix

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

Spotifyのポッドキャストサブスクが米国以外のクリエイターに拡大、ただし日本は含まれず

Spotify(スポティファイ)は2021年8月に米国のクリエイターを対象にポッドキャストのサブスクリプションを公開したが、米国時間11月17日から対象を米国以外のクリエイターにも拡大する。同社によれば、クリエイターが「サブスク利用者限定」コンテンツを作れるこのサービスは、新たに33のマーケットで利用できるようになる。

ポッドキャストのサブスクが米国で正式に公開された際、Spotifyはサービスに関していくつか重要な変更を実施した。それ以前は、クリエイターは有料番組の価格を3通りからしか選べなかった。しかし同社はクリエイターがもっと柔軟な価格設定を望んでいることを把握し、0.49ドルから150ドル(約55円から1万7000円)まで20通りの価格を用意した。

また、同社はクリエイターが自分の番組をサブスクで利用しているリスナーの連絡先情報をダウンロードできるようにした。これを活用してクリエイターはリスナーと直接的な関係をさらに深めることができる。

今回のグローバル展開にあたり、Spotifyは新機能の追加はしていない。同社は今回の拡大について、ポッドキャストのサブスクをより多くの人に利用してもらうためとしている。

ポッドキャストのサブスクプラットフォームはSpotifyだけではない。Appleもサブスクを提供しているが、Appleはクリエイターの売上30%を徴収し、2年目には15%になる。これは他のサブスクアプリと同様だ。一方のSpotifyは、最初の2年間は売上からの徴収をしないことにより、サービスを成長させようとしている。徴収なしの期間が終了すると、Appleよりずっと少なく、たった5%を徴収する計画だ。

Spotifyのサブスクポッドキャストサービスは、同社のポッドキャスト制作プラットフォームであるAnchorを通じて提供される。AnchorではiOSとAndroidの両方ですでに29のマーケットでサブスクを利用でき、残る4つのマーケットでは来週(11月22日の週)から利用できるようになる。

すでに提供開始しているマーケットは、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポール、ベルギー、ブルガリア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国。来週にはカナダ、ドイツ、オーストリア、フランスでも開始する。

 

他にポッドキャスト関連のニュースとして、SpotifyはBad Robot Audioとの複数年の独占契約を発表した。Bad Robot Audioは、プロデューサーのJ.J. Abrams(J・J・エイブラムス)氏が2001年に創業した制作会社であるBad Robotの新しいオーディオ部門だ。

Bad Robotは「LOST」「エイリアス」「FRINGE / フリンジ」「パーソン・オブ・インタレスト 犯罪予知ユニット」「キャッスルロック」「ウエストワールド」などのテレビ番組や「SUPER8 / スーパーエイト」「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」「スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け」などの映画を制作し「スター・トレック」「ミッション:インポッシブル」「クローバーフィールド」の共同制作もしている。

新しい部門を率いるのはAudibleやSpotifyで著名なエグゼクティブだったChristina Choi(クリスティーナ・チョイ)氏で、同氏はBad Robotのポッドキャスト責任者に就任する。Bad RobotはSpotifyで提供する番組について詳細をまだ明らかにしていないが「ノンフィクションとフィクションのポッドキャスト作品」の両方を含むだろうと述べている。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Racketは発見されやすい99秒のマイクロポッドキャスト作成・配信アプリ

誰もが同じポッドキャストを聴いているような気がするとしたら、それはおそらく偶然ではない。音声ベースのエンターテインメントやソーシャルメディアは現在、かつてないほどの人気を博しているが、この媒体はいまだに、どうやってリスナーに見付けてもらうかという問題に悩まされている。ヒットしたポッドキャストが人気を博し、そのメディア帝国を拡大して、有名ブランドとの契約を獲得する一方で、新進気鋭の番組が聴取者を見つけることは難しい。

Racket(ラケット)は、そんな問題を解決したいと考えている。App StoreでiOS版が公開されているこのアプリは、すべて99秒以内の音声作品を、TikTok(ティックトック)のような縦方向のフィードでエンドレスに提供する。誰でも簡単に録音した音声をアプリ内で編集し、関連するタグを組み合わせ、カバー画像を追加して公開することができ、そのプロセスには1分もかからない。

同社はこの度、Greycroft(グレイクロフト)、Foundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)、LightShed Ventures(ライトシェド・ベンチャーズ)などの投資家から、300万ドル(約3億5000万円)のプレシード資金を調達したことを発表した。YouTube(ユーチューブ)チャンネル「LaurDIY」のLauren Riihimaki(ローレン・リヒマキ)氏、Jason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏、Steve Schlafman(スティーブ・シュラフマン)氏などのエンジェル投資家も出資している。Racketはこの資金を、エンジニアの増員、デザインの微調整、信頼性と安全性に関するリソースの拡大に充てる予定だ。

Racketのチームは以前、ソフトウェアレビュー会社のCapiche(カピチェ)で2019年から一緒に働いていた。Capicheが2021年4月にSaaS購入プラットフォームのVendr(ベンダー)に売却された後、チームはそのまま残って音声を使った実験を始め、Racketを作り上げた。

RacketのAustin Petersmith(オースティン・ピータースミス)CEOは、ユーザーが作成する音声コンテンツの未開発の可能性を信じている。TechCrunchとの対談で、ピータースミス氏はポッドキャストを他のジャンルのコンテンツ制作と比較し、「1億人がTikTokで動画を作成しているのに、現時点では100万人しかポッドキャスティングしていないことを考えれば、音声コンテンツの分野はまだまだ成熟していない」と主張した。

Racketのチームは、音声コンテンツには参入障壁があり、それがこのメディアの発展を妨げていると考えている。「音声コンテンツを制作する人がごくごく限られているというこの状況は、不思議な感じがします」とピータースミス氏は語る。「新しいポッドキャストが躍進することは不可能に近いのです」。

Racketでは、フォーマットを短く設定し、編集プロセスを非常にシンプルにして、最初からコンテンツの発見を中心に構築することで、この摩擦を減らすことを目指している。音声作品の長さを99秒以下に制限することによって、より多くの人が、長くてきちんと構成されたオーディオショーを作らなければならないのではないかという心配から解き放たれ、単にジョークを言ったり、最近あったことの話などを共有できるようになることを、このアプリは期待している。

「私たちは、人々が不完全でも豪華な機材を持たなくても大丈夫なんだと、もっと感じられるように、敷居を下げようとしました」と、ピータースミス氏は語り、Racketのフォーマットをポッドキャストのツイート版に例えた。

Racketでは、ユーザーは知り合いを見つけてフォローすることもできるが、ほとんどの場合、自分が探しているとは思わなかったものを偶然見つけるところに楽しさがある。ユーザーは関連タグが付いた「Rackets」を検索したり、あるいは単にサイコロを振って出たコンテンツを聴いてみたりすることができる。「私たちは、他の方法では共有されなかったような、本当に面白い洞察力に富んだことを言っている人たちへの流入を増やすことができると信じています」と、ピータースミス氏は述べている。

他のすべてのソーシャルプラットフォームと同様、Racketの成功は、人々がそこで作るコンテンツに懸かっている。このアプリはまだ公開されたばかりだが、テスト期間中には、このフォーマットに興味を持ったコメディアンたちが、お互いに招待し合うという小さなサブコミュニティの発生が見られたという。ピータースミス氏は、このユニークなフォーマットに興味を持った他のコミュニティが、有機的に広めてくれると期待している。

ポッドキャストは、洗濯中や通勤中など、何かをしながら聴くことが多い。しかし、どんなふうに使いたくなるかという点において、Racketにはもう少し能動的な感じがある。そのあたりはやはり、音声のみではあるがTikTokに似た楽しみ方ができる。積極的にスワイプして気になるコンテンツを探したり、コメント欄を眺めたりもできるが、携帯電話をポケットの中に入れたままにして、何が出てくるかわからないフィードを聴き続けることもできる。今のところ、コンテンツはかなりランダムに感じられるだろうが、しかしポッドキャストが長すぎると感じている人には、新たな楽しみとなるかもしれない。

「私たちは、画面をずっと見ていたいと思わない人たち向けのプラットフォームを提供したいと考えています」と、ピータースミス氏は語っている。

画像クレジット:Racket

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがオリジナルポッドキャストとして実際の犯罪に焦点を当てた「Hooked」配信開始

Apple(アップル)はオリジナルポッドキャストへの投資をさらに強化している。同社は米国時間11月3日、実話の犯罪に焦点を当てた新しいアップルオリジナルポッドキャスト「Hooked(フックド)」を公開した。全9話からなるこのシリーズでは、一流のエンジニアだったTony Hathaway(トニー・ハサウェイ)が、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)への依存が原因で、米国史上最多の銀行強盗を重ねるようになるまでの物語を探っていく。Campside Media(キャンプサイド・メディア)が制作し、同社の共同設立者であるJosh Dean(ジョシュ・ディーン)氏が司会を務めるこのポッドキャストには、ハサウェイや彼の家族、警察官などの関係者に3年間にわたって行ったインタビューが収録されている。

興味深い内容ではあるものの、このポッドキャストの特徴は「Apple TV+ポッドキャスト」と銘打っているにもかかわらず、他のApple TV+シリーズや映画とのタイアップではないことだ(少なくとも、発表されているものはない)。

画像クレジット:Apple

基本的に、Apple TV+の名が付く他のポッドキャストは、動画ストリーミングプラットフォームであるApple TV+のオリジナル番組に関連するポッドキャスト番組として配信されている。その中には、今月後半から配信が始まる戦争ドキュメンタリー番組に関連する「The Line(ザ・ライン)」をはじめ「For All Mankind(フォー・オール・マンカインド)」公式ポッドキャスト「Foundation(ファウンデーション)」公式ポッドキャスト「The Problem With Jon Stewart(ザ・プロブレム・ウィズ・ジョン・スチュワート)」公式ポッドキャストなどがある。

しかしながら、アップルが何らかの形で単独のポッドキャストを実験的に提供するのは、今回が初めてというわけではない。

2020年、アップルが開始した「The Zane Lowe Interview Series(ザ・ゼイン・ロウ・インタビュー・シリーズ)」は、アップルのグローバル・クリエイティブ・ディレクターであるZane Lowe(ゼイン・ロウ)氏が、Billie Eilish(ビリー・エイリッシュ)、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)、Kanye West(カニエ・ウェスト)、Hayley Williams(ヘイリー・ウィリアムス)、Lady Gaga(レディー・ガガ)などの人気アーティストと対談する音楽インタビューポッドキャストだ。

それ以前にも、アップルは、基調講演決算説明会、Apple Storeでのイベントなど、企業のニュースをポッドキャストで配信している。また、Beats 1(ビーツワン)で最初にライブストリーミングを行った「2019年グラミー賞授賞式」をポッドキャスト媒体で配信したこともあった。

この新作ポッドキャスト「Hooked」は、Campside Mediaが制作しているが、Apple TV+のクリエイティブチームを通して展開されるため、ポッドキャストのページには、メディア企業であるCampside Mediaの名前と並んでApple TV+の名称が記載されている。

実際にあった犯罪のような人気が高いジャンルのポッドキャストが、単独で始まったということは、アップルがApple TV+やApple Music(アップル・ミュージック)のような他の取り組みとは必ずしも連動しないオリジナル作品の市場をテストすることに、関心を持っていることの現れかもしれない。

ライバルであるSpotify(スポティファイ)の「Original & Exclusives(オリジナル&エクスクルーシブ)」とは異なり、この番組はApple Podcast(アップル・ポッドキャスト)アプリに固定されない。エピソードはApple PodcastsとRSSの両方で公開されるため、ユーザーは好きなアプリで視聴することができる。

Apple Podcastsは、iPhone、iPad、iPod touch、Mac、Apple Watch、Apple TV、HomePod mini、CarPlay、Windows用iTunes、その他のスマートスピーカーや車載システム経由で、100以上の言語、170以上の国と地域で利用できると、アップルは述べている。

しかし、RSSで配信されるということは、Pocket Casts(ポケット キャスト)、Overcast(オーバーキャスト)、Castbox(キャストボックス)、Podbean(ポッドビーン)などのサードパーティ製ポッドキャストアプリでもストリーミングできることを意味する。

「Hooked」の最初の3つのエピソードは11月3日より公開されている。今後は毎週水曜日に新しいエピソードが配信される予定だ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】ソーシャルオーディオアプリが今行うべき5つの変革

Clubhouse(クラブハウス)、Beams(ビームス)、Pludo(プラード)、Racket(ラケット)、Quest(クエスト)などのソーシャルオーディオアプリがこの1年で人気を集め、より多くのマーケターやプロダクトチーム、そして新進のライバルたちが、この領域でユーザー体験を創造し、破壊する戦略を模索し始めている。

一方で、これらのプロダクトが最初に市場に登場したとき、コンテンツクリエイターは、サインアップ、オーディオルームやショート形式のポッドキャストの作成、放送時間の設定をシンプルに行うことができた。しかし、ユーザーからの否定的なフィードバックがインターネットフォーラムのトップに集まるようになってきた今、ソーシャルオーディオがいかに「ソーシャル」であるべきかを考える良い転機が訪れていると言えよう。

ソーシャルオーディオはYouTube(ユーチューブ)、Twitter(ツイッター)、Facebook(フェイスブック)のユーザー体験を模倣するものではないことは認識されている。しかし、それらを除外した場合、ソーシャルオーディオ企業は戦略を策定する際に何を考慮すべきであろうか。

これまでテレビとマーケティングを担当してきた筆者自身の経験からすると、ソーシャルオーディオが主要な報道機関と同じ戦略を活用する必要があると考えるのは自然なことではないかと思う。

経験に基づいて、ソーシャルオーディオアプリチームがそれを行う上で最も手軽に利用できる方法を、5つ紹介しよう。

インクルージョンに向けた構成

私たちがアプリの設計について考えるとき、一般的に頭に浮かぶのは、ハンバーガースタックの配置、フォントの種類、そしてユーザーが自分のアカウントに簡単に出入りできるかどうかという点だ。

しかし、その設計が障害のあるユーザーをどのようにサポートし、またサポートしないかということについては、あまり考慮されていないように思う。2020年にソーシャルオーディオが普及した際、注目すべき、そして理にかなった懸念として浮上したのは、視覚や聴覚に障害のある人向けのアクセシビリティ機能が不足していることだった。

小さなテキストは、視覚障害のある人がアプリを操作するのを困難にし、キャプションがないことは、聴覚障害のある人が会話を楽しむのを妨げてしまう。

レストランや映画館では、顧客が点字や大きな活字で別のメニューを使用したり、番組を楽しむために追加のサポートが必要な観客のために字幕を提供したりすることが多いことを考えてみよう。ソーシャルオーディオアプリチームと設計者は、開発ロードマップの早い段階でこれらの懸念に対処するために、ワークフローにアクセシビリティチェックポイントを含める必要がある。

最初の1年間はジャーナリストやホストを活用

コンテンツクリエイターにソーシャルオーディオアプリをマーケティングすることは、アーリーアダプターを引き寄せるすばらしい方法ではあるが、ベータ段階で自社のブランドと協力することをいとわない経験豊富なホストやジャーナリストを見つける方が賢明かもしれない。

それはなぜか。最終的にメディア市場の一部を占めるようなアプリを作る際に、信用が鍵になるからである。

コンテンツを作成することと、信用を得ることは、互いに排他的なものとはならない。また、ライブショーの制作や一般からのフィードバックのモデレーションの実績がある経験豊富なジャーナリストやホストによって審査されることで、視聴者の体験を向上させることができる。

いうまでもないことだが、要領を心得ている才能ある人材のラインアップから始めれば、ユーザー教育オファリングに費やす時間を稼ぐことができる。信頼できる名目上のリーダーが対話をリードすることで、後から加わったクリエイターたちがプラットフォームを効果的に利用するための方向性を決めることにもつながるだろう。

大手メディアを模倣する

Spotify(スポティファイ)、Netflix(ネットフリックス)、Hulu(フールー)、Amazon Prime(アマゾン・プライム)、ABC、NBC、CBS、BBCの共通点は何か。それは番組編成に関することにある。

ABCで今夜8時に何が始まるのか知りたい人は、簡単にそれを見つけて番組を見る時間を作ることができる。Netflixでは、視聴者は数カ月前ではないにしても数週間前にラインナップの変更について知ることができる。

自社の才能によって制作されるルームや番組のラインナップを用意することを考えてみよう。そうすることで、ユーザーオーディエンスは、お気に入りのクリエーターの活動が中断されていてもプラットフォームに参加する理由を持つことができる。

確かに一部のコンテンツクリエイターたちは、自分がいつ戻ってくるかをオーディエンスに知らせるだけの十分な機転を持ち合わせているが、一方で、プレゼンスの維持を確保してくれるプロデューサーや経験豊富なチームのサポートを得られずにいる人たちも少なくない。

一見すると、これはアプリチームにとって大きな問題ではないように思われる。なぜなら、コンテンツクリエイターが戻ってきて、彼らのオーディエンスを連れてくることに賭けているからだ。しかし、アプリが実際にエンゲージメントを失っているのはこの部分にある。クリエイターが一貫しておらず、オーディエンスがいつ戻ってくるかわからず、ユーザーが似たようなオーディオルームや番組への提案をすぐに受けられない場合、彼らは興味を失い、戻ってこなくなる。

その後、ユーザーにプラットフォームの利用を中止した理由を尋ねると、その評価は概して、継続的な価値を見出せなかったというネガティブなものとなる。

クリエイターがクレームを受けた場合はすみやかに教育する

エンターテイナーたちが失敗すると、何人かのグループがその懸念を表明するだけで、気づかぬうちに彼らのキャリアは大打撃を受ける。コンテンツクリエイターが悪質な行為をしたことが原因の場合もあれば、純粋なミスや無知によるものもある。

ここで問題なのは、もしクリエイターを早急に排除してしまうと、彼らのキャリアに傷がつくだけでなく、同じような状況で何をすべきか、そして初期の懸念を個人的にも公にも解決するにはどうすればよいかについて、教育コミュニティ内の他の人たちが必要としていたことが失われてしまうことだ。

これらのプラットフォームの生来の性質を考えると、このような混乱は必ず起こるものである。そのため、関係者全員を支援する方法で問題に対処する方法を見つけることが望ましいと言えるだろう。

ここでの提案として、コンテンツクリエイターがプラットフォームに戻る前に完了すべきトレーニングプログラムを作成するか、会社がオンラインまたは対面トレーニングコースと提携し、人種、文化、社会問題などに関連するトピックについて人々を教育することを推奨したいと思う。

筆者はそれを、交通違反で切符を切られ、教習所に通うことになる状況になぞらえている。こうしたアプリチームは、クリエイターたちが公共の目の中にいて、その場で学んでいけるような、似たようなソリューションを考えるべきだろう。すべてのコンテンツクリエイターがジャーナリストとして訓練されているわけではない。もし彼らがマーケティングのターゲットになっているのであれば、ミスが起きた後でさえ、彼らをプラットフォームのアクティブな参加者として維持し続けるための戦略があるべきだろう。

コンテンツ協議会の設置

最後になるが、忘れてはならないのは、会社がベータテストに入ったときに、プラットフォームに現れる可能性のある機密性の領域に対処するために、コンテンツ協議会を設立することが賢明だということだ。

スタートアップが諮問委員会を設置しているのと同じように、ダイバーシティ、エクイティとインクルージョン、身体障害、国際問題、政治、LGBTQIA擁護、人種、医療、社会正義などの分野で業界の専門家とコンテンツ評議会を組織することを検討して欲しい。これにより、社内の従業員は、プラットフォーム上の難しいトピックにどのように対処すればよいかというプレッシャーから解放される。また、社内的にビジネス活動に関与する人材が会社にもたらされることもある。これらの専門家は、注目を集めるトピックに関してプラットフォームが論争に直面した場合に助けになってくれるかもしれない。

ソーシャルオーディオ領域が拡大するにつれ、クリエイターやオーディエンスのプラットフォームへの関わり方も広がっていくだろう。しかしその成長が2021年の終わりまで続くかどうかは定かではない。1つ確かなのは、ソーシャルオーディオ領域は現在の姿よりも大きくなる可能性を秘めており、コンテンツクリエイターとしてもエンドユーザーとしても、この領域にどのようなオポチュニティが生まれるのかを見るのは楽しみであるということだ。

画像クレジット:krisanapong detraphiphat / Getty Images

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(文:Adonica Shaw、翻訳:Dragonfly)

Amazon Music、米国でポッドキャストに「文字起こし」機能を搭載

Amazon Music(アマゾンミュージック)は米国時間11月2日より、米国のユーザーを対象に、一部のポッドキャストで自動生成された同期トランスクリプト(文字起こし)の提供を開始する。iOSおよびAndroidのAmazon Musicアプリの最新版では、Amazon Originals(アマゾンオリジナル)とAmazonが所有するネットワークのWondery(ワンダリー)が提供する一部のポッドキャストの最新エピソードの文字起こしが提供される。また、American Public Media(アメリカンパブリックメディア)、audiochuck(オーディオチャック)、Cadence13(ケイデンス13)、The New York Times(ニューヨークタイムズ)、Stitcher(スティッチャー)、TED(テッド)が提供する「My Favorite Murder(マイフェイバリットマーダー)」「Crime Junkie(クライムジャンキー)」「Modern Love(モダンラブ)」「This American Life(ディスアメリカンライフ)」などの一部の番組でも文字起こしが利用できるようになる。

2020年9月にAmazon Musicにポッドキャストを追加して以降、この文字起こしは同アプリが実装した初めての大きなポッドキャスト機能だ。Spotify(スポティファイ)は、5月にSpotify Exclusive and Original(エクスクルーシブアンドオリジナル)の番組に対して同様の機能をベータテストした。Apple Podcastのクリエイターは、番組ノートに文字起こしを記載することができ、それをアプリ内で検索することができるが、今回のAmazon Musicのように音声と同期していなかった。

画像クレジット:Amazon Music

リスナーはアプリ内でパラグラフ形式の文字起こしを読むことができ、ホストがいう言葉がハイライトされているのをみながら一緒に聞くこともできる。この機能は、ポッドキャストの特定の場所を探すのにも役立つ。カーソルをドラッグすると、ビデオのサムネイルのプレビューを見るように、話されている言葉のプレビューを見ることができる。

音声のみのメディアであるポッドキャストにとって、聴覚に障害のある視聴者にも楽しんでもらうために、文字起こしは不可欠なものだ。多くのポッドキャストは、すでにウェブサイトに文字起こしを掲載しているが、この機能は、番組を体験するための別の方法を提供する。ライブオーディオの場合、ライブキャプションはアクセシビリティに不可欠な機能だ。Twitter Spaces(スペース)はこの機能を提供しているが、Clubhouse(クラブハウス)はまだこの機能を実装していない。

画像クレジット:Amazon Music

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Yuta Kaminishi)

Spotifyは「見て」ももらいたい、ビデオポッドキャスト用ツールを同社傘下Anchorのクリエイターに開放

Spotify(スポティファイ)は、買収、独占契約、その他のパートナーシップの間で、ポッドキャスティングにすでに約10億ドル(約1130億円)を投資している。そして、Spotifyは人々に聴くだけでなく、見てももらいたいと考えている。同社は米国時間10月21日、クリエイターがビデオポッドキャストできるようになる新しいツールを開始することを発表した。このツールは、Spotifyのポッドキャスト制作プラットフォームAnchor(アンカー)が提供するもので、一部のクリエイターのみを対象に、2020年にグローバルで開始したビデオポッドキャストを発展させたものだ。

当時、Spotifyは、ビデオポッドキャストのデビューラインナップには、Spotify Originals and Exclusives(オリジナル&独占)に加え、サードパーティ制作のポッドキャストも含まれていると述べていた。しかし、どんなクリエイターでも動画を配信できるわけではなかった。代わりに、YouTube(ユーチューブ)などの他の動画プラットフォームを利用する必要があった。

この状況が変わる時が来た。Anchorによって、現在のオーディオエピソードの作成・公開するのと同じように、クリエイターが自分のアカウントを使って動画をアップロードできるようになる。公開されたポッドキャストは、Spotifyのモバイルアプリ、デスクトップアプリ、ウェブプレイヤー、そしてほとんどのスマートテレビやゲーム機など、さまざまなプラットフォームで聴くことができる。また、クリエイターは、音声ポッドキャストと同様に、定額制を利用してビデオを収益化することができる。

関連記事:Spotifyのポッドキャストサブスクを米国の全クリエイターが利用可能に

クリエイターは価格を設定し、サブスクリプションに何が含まれるかを決めることができるが、Spotifyは、サブスクリプションによって独占的なビデオコンテンツへのアクセスを提供したり、クリエイターのポッドキャストのビデオ部分をアンロックしたりすることができると提案している。ビデオポッドキャストには、クリエイターの既存の広告パートナーも組み込むことができ、近々、より新しい自動化された広告にも対応する予定だ。

Spotifyは正式にAnchorクリエイターへのアクセスを開始したが、機能は徐々に展開されている。つまり、興味のあるクリエイターは、当面はウェイティングリストに登録する必要がある。ちなみに、Appleはすでに、ビデオポッドキャスティングのホスティングを、すべてのホスティングソリューションを使用するすべてのクリエイターに提供している。

一方、Spotifyのビデオラインナップには、The Ringer(リンガー)のHigher Learning with Van Lathan and Rachel Lindsay(ハイヤーラーニング・ウィズ・ヴァン・レイサン・アンド・レイチェル・リンゼイ)やThe Joe Rogan Experience(ジョー・ローガン・エクスペリエンス)などのオリジナル&独占番組のビデオポッドキャストが含まれている。また、Philip DeFranco(フィリップ・デフランコ)、Jasmine Chiswell(ジャスミン・チズウェル)、The WAN ShowJuicy Scoop with Heather McDonald(ジューシー・スクープ・ウィズ・ヘザー・マクドナルド)など、今後Spotifyで公開される他のビデオクリエーターも含まれる。

Spotifyは過去に、動画への進出を試みては失敗してきた。5年前に行ったオリジナルビデオへの最初の取り組みは大失敗に終わり、同社はしばらくの間、ビデオ計画を棚上げにしていた。しかし最近になって、同社はYouTubeをベースにした動画事業を持つスポーツネットワークのThe Ringerを買収し、動画への復帰の可能性を示唆した。その後も、TikTok(ティックトック)のスターからNetflix(ネットフリックス)の女優になったAddison Rae(アディソン・レイ)との契約など、動画への移行が可能な契約を次々と行っている。

今回のポッドキャストクリエイターへの動画配信の拡大は、YouTubeが自社のポッドキャスティング事業へのさらなる投資を検討しているというニュースに直結している。2021年10月、Bloombergは、YouTubeがポッドキャストに特化した初の幹部を採用すると報じた。実際にアップロードを開始するためのアクセスは、まだウェイティングリストによってブロックされているものの、このニュースを受けて、Spotifyが自社のビデオポッドキャスティングへの取り組みを推進することになったのかもしれない。

現在、Spotifyで動画コンテンツを探すには、見たい番組からエピソードページに移動し、再生ボタンを押してエピソードを開始する必要がある。画面下の再生バーをタップすると、動画がフルスクリーンで表示される。あとは、何をしているかに応じて、聞くか見るかを選ぶことができる。

ただし、動画に対応しているすべてのポッドキャストを簡単に確認する方法はまだない。Spotifyは、サービス開始時にビデオとして利用できるポッドキャストの数については明らかにしていないが、年末までに「数千」のポッドキャストへのアクセスを提供する予定であると述べている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

フェイスブックが米国でポッドキャストやライブオーディオなどを集めた「オーディオ」ハブを公開

Facebook(フェイスブック)はオーディオの取り組みに対する投資を拡大しており、米国でモバイルアプリに新たに「オーディオ」を集めたハブの役割を果たす部分を設けた。ポッドキャスト、Live Audio Rooms(ライブオーディオルーム)、短尺のオーディオと、Facebookで配信されている各種のオーディオフォーマットを1カ所で発見できる。さらに同社によれば、Clubhouse(クラブハウス)のライバルであるLive Audio Roomsをグローバルで利用できるようにし、TikTok(ティックトック)のオーディオ版のような短いオーディオクリップのSoundbites(サウンドバイツ)という新しいプロダクトも公開を開始している。

新しいオーディオハブの初期バージョンは、米国の18歳以上のFacebookユーザーに対してiOSとAndroidで公開がすでに開始されていたが、正式には米国時間10月11日に発表された。Facebookのビデオのハブである「Watch」の上部からアクセスできる。オーディオコンテンツは聴くものであって見るものではないから「Watch」からというのはちょっと違和感がある。

Facebookは、新しいハブを設けたことでクリエイターにとっては自分の番組を見つけてもらいやすくなり、ユーザーにとっては好きなクリエイターのコンテンツを見つけ、知らないコンテンツを発見し、コンテンツを保存して後で聴くこともできるようになるとしている。提供開始時点では、オーディオのセクションにはすでにフォローしているクリエイターのコンテンツの他、パーソナライズされた提案、Facebookで人気のオーディオも表示される。

「オーディオ」ハブは、オーディオコンテンツを聞いたり多くのクリエイターをフォローしたりすることで時間が経つにつれて自分好みにパーソナライズされていくと同社は述べている。

この公開に合わせて、Facebookはオーディオプロダクト全般に関するアップデートも提供する。

2021年春に同社はオーディオの新機能として、ClubhouseのライバルであるLive Audio Rooms、短尺のオーディオプロダクトであるSoundbites、ポッドキャストのサポートを発表した。またSpotify(スポティファイ)との連携で音楽サービスをFacebook上でストリーミングする新しいミニプレイヤーも発表した。

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Live Audio Roomsは2021年6月に米国の著名人やFacebookグループに対して正式に公開された。それ以降、人々がつながり会話を交わす手軽な手段として機能しているとFacebookはいう。Lil Huddy(リルハディ)、Noah(ノア)、Miley Cyrus(マイリー・サイラス)、アメフトのクォーターバックであるRussell Wilson(ラッセル・ウィルソン)、歌手のBecky G(ベッキー・G)、コメディアンのSherry Cola(シェリー・コーラ)、Mereba Music(メレバ・ミュージック)などがこれまでにLive Audio Roomsを利用した。

画像クレジット:Facebook

Live Audio Roomsは米国以外の著名人やクリエイターと、米国以外を拠点とするFacebookグループにも順次公開されているという。iOSに加えてAndroidにもこの機能が導入され、デスクトップでもLive Audioを聴けるようになって、これまで以上に多くの人が利用できる。

一方、短尺オーディオのSoundbitesは2021年6月から注目のクリエイターなどを対象にテストが実施されている。テストには、コメディアンでベストセラー作家のJosh Sundquist(ジョシュ・サンドクイスト)、女優で社会活動に取り組むライフスタイルインフルエンサーのLolo Spencer(ロロ・スペンサー)、デジタルクリエイターのMolly Burke(モリー・バーク)などが参加している。最近になってテストに参加するクリエイターを増やし、Facebookによれば数週間以内にこれまでより多くの米国ユーザーにSoundbitesが公開される予定だという。

Facebookは、2021年前半に発表したポッドキャストのサポートにも引き続き取り組んでいると述べた。2021年夏に米国のユーザーはポッドキャストを利用できるようになった。最近ではポッドキャストの短いクリップをニュースフィードで共有できるようになり、Androidでは字幕に対応した(iOSでは未対応)。ポッドキャスト制作者はデスクトップとモバイルでFacebookページに自分のRSSフィードを追加できるようになった。ただし、ポッドキャストを聴取できるのは当面米国に限られる。

Facebookはオーディオエクスペリエンスの拡張を続けていると語る。Facebook上の有害コンテンツを自動で特定するなど、同社のコミュニティ規定に違反するコンテンツを見つけて対応するツールの開発に取り組んでいる。さらに同社は、規定に違反するオーディオコンテンツを検知して調整するテクノロジーとプロセスの両方を、学習を続けながら対応させていくと述べた。

このところ、Facebookには大変な日々が続いている。これまでで最長のシステム障害が発生し、米国上院では内部告発者がエンゲージメントベースのアルゴリズム、誤情報に対応する能力の欠如、人間よりも利益を優先する企業としての決定といったFacebookプラットフォームによって引き起こされる害悪について証言したニューヨーク・タイムズでは、Facebookの従業員はこの内部告発者の証言に対して意見が割れていると報じられている。同社はオーディオやライブオーディオに深く関わっていこうとしているが、これは節度を保つのが難しい分野だ。オーディオを安全な環境にするのに必要なテクノロジーを構築できなければ、Facebookはこれまで以上に誤情報が広がりやすいプラットフォームになる危険性がある。

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画像クレジット:Facebook

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

デジタルラジオSiriusXMがAudio Upと提携してオリジナルポッドキャスト作品を開発

SiriusXM(シリウスXM)はオーディオエンターテインメント制作スタジオのAudio Up(オーディオアップ)と提携して、創作ポッドキャスト(scripted podcast)作品を新たに開発する。両社はクリエイティブプログラミングおよび戦略的契約を締結し、Audio UpはSiriusXMおよび同社のプラットフォーム、SXMアプリ、Pandora(パンドラ)、およびStitcher(スティッチャー)向けに新たなポッドキャストを制作する。

2020年に設立されたAudio Upは、ポッドキャストコンテンツ制作スタジオとしてオリジナルの台本付きポッドキャストを多数制作し、音楽、ハリウッド、出版界からMachine Gun Kelly(マシン・ガン・ケリー)、Garrett Hedlund(ギャレット・ヘドランド)、SStephen King(スティーブン・キング)などの著名人が参加している。

この契約によってSiriusXMは、Audio Upの新たなオリジナルポッドキャストコンセプトの独占ファーストルック権とSiriusXMのために制作された全ポッドキャストに関連する広告在庫を管理・販売する独占権を得る。Audio Upは、SiriusXMが同社の全チャンネルでオーディオエンターテインメントプログラムを新規開発する際に、あらゆるタイプのアーティスト、レーベル、ブランド、クリエイターと繋がるための新たなクリエイティブパワーとなることが期待されている。

また米国時間10月11日、Audio Upは、1200万ドル(約13億6000万円)のシリーズB調達ラウンドをSiriusXMのリードで完了したことを発表した。これにともないSiriusXMの事業およびプログラミング運営担当上級副社長であるAndrew Moss(アンドリュー・モス)氏がAudio Upの取締役会に加わる。

「Audio Upは音楽、エンターテインメント、および内容豊かな物語を組み合わせることでまったく新しいリスニング体験を作ることで知られています。彼らを大きくなったSiriusXMファミリーに迎えることを大いに喜んでいます」とSiriusXMのプレジデント兼最高クリエイティブ責任者、Scott Greenstein(スコット・グリーンスタイン)氏がプレスリリースで語った。

Audio Upのバックカタログにあるさまざまなオリジナルポッドキャストは、SXMアプリ、Pandora、およびStitcherでも公開され、Halloween in Hell、The Ballad of Uncle Drank、Bedtime Stories of the Ingleside Inn、Sonic Leap、Make It Up as We Goなどの作品が含まれている。

「SiriusXM、Pandora、Stitcherを合わせた多数の幅広いリスナーに届けられることで、当社のオリジナルプログラムにとっての新たな巨大マルチプラットフォームアウトレットだけでなく、SiriusXMという私たちと野心を共有するクリエイティブな味方を得られました」とAudio UpのCEOでファウンダーのJared Gutstadt(ジャレッド・ガスタット)氏が声明で語った。

AudioUpとの契約は、SiriusXMにとって2020年の3億2500万ドル(約368億3000万円)のStitcher買収に続くものだ。今回の契約は、数千本のポッドキャストがSiriusXMのラインアップに加わることを意味しており、これによって同社は音楽、スポーツ、トーク、ポッドキャストを含むデジタルオーディオにおける米国「最大の連絡可能なオーディエンス」を獲得し、1億5000万人のリスナーをカバーすると言っている。さらに同社は、複数の価格プランと、SiriusXMのゲストが参加するPandora Storiesのような独自の番組フォーマットを提供することで、Pandoraをライバルと差別化しようとしている。

SiriusXMのAudio Upとの新たな提携は、同社のポッドキャスティングへの投資を進めるとともに、他の多くの企業もポッドキャストサービスを拡大しようとする中、オーディオ分野でのライバルとの戦いを続けるために一役買うだろう。例えばSpotify(スポティファイ)とiHeartMedia(アイ・ハート・メディア)はオリジナルポッドキャスティングコンテンツを獲得するために大きな買収を行い、ポッドキャスターがビジネス運営するためのツールも揃えている。さらにAppleもポッドキャストに投資しており、最近Apple Podcasts Subscriptions(アップルポッドキャストサブスクリプション)を170を超える国と地域で開始した。

関連記事:アップルが日本を含む170以上の国でApple Podcastサブスクリプションを開始、J-WAVEのチャンネルも

画像クレジット:SiriusXM

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Podcastleはポッドキャストの制作から公開までできるオールインワンのプラットフォーム

最近の主要ポッドキャスト制作プラットフォームとしてはAnchorとDescriptが有名だが、バックミラーにはPodcastleが見え始めている。Podcastleは録音、制作、公開をすべてカバーするオールインワンのプラットフォームだ。

PodcastleはRTP GlobalとPoint Nine Capitalが共同で主導したアーリーステージのラウンドで700万ドル(約7億8000万円)を調達した。S16 VCと、以前に投資したSierra VenturesとAI Fundも参加した。

Podcastleは急成長中のクリエイターエコノミーに参入している。あるレポートによるとクリエイターエコノミーの規模はおよそ1042億ドル(約11兆6000億円)と評価され、最近では200万以上のポッドキャストが存在する。

Podcastleによれば、これまでに約15万人のクリエイターが同社を利用し、その数は急速に増えているという。コンシューマクラスのマイクでスタジオ品質のリモートインタビューをする、マルチトラックで録音と編集をする、ポッドキャスト中の話し言葉を切り出して聴きやすくするなど、ポッドキャストクリエイターが簡単に使えるツールを備えているためだ。また、テキストを読み上げて話し言葉にしたり、逆に話し言葉をテキストにしたりして、クリエイターはオーディオをテキスト書類のように編集できる。

以前はPicsartのエンジニアリング担当VPで、現在はPodcastleの創業者でCEOのArtavazd Yeritsyan(アルタヴァズド・イェリツィアン)氏は次のように述べた。「2022年に1日あたりの平均視聴時間は1時間37分になると予想され、ポッドキャスト業界はストーリーを伝える上で最も影響力のあるカテゴリーの1つになります。Podcastleは技術的な障壁をすべて取り除き、クリエイターがほんとうに大切にしなくてはならないこと、つまり人々と共有したいコンテンツの制作と配信に集中できるように努めています」。

同氏は、Descriptは編集ツールだがPodcastleは「創作」プラットフォームに近く、クリエイターはこのプラットフォームでリモートインタビューをしてそのまま編集もできるという。「MicrosoftのドキュメントとGoogleドキュメント、あるいはSketchとFigmaを比較するようなものです。この例えでいうなら、我々はGoogleドキュメントでありFigmaです」と同氏は筆者に語った。

RTP GlobalのマネージングパートナーであるAlexander Pavlov(アレクサンドル・パブロフ)氏は次のように述べた。「ポッドキャスティング市場は2020年に114億6000万ドル(約1兆2700億円)に達し、Podcastleは意欲の強いホストとクリエイターを満足させる統合ソリューションを提供しています。我々はこのプラットフォームには大きな可能性があると見ており、Podcastleのこれからの成功を支援できることをうれしく思っています」。

Point Nine CapitalのパートナーであるLouis Coppey(ルイ・コッペイ)氏は次のように述べた。「Point Nineは近年、パリのPlayPlay、ロンドンのGravitySketch、ブダペストのShapr3Dといったクリエイティブソフトウェアに投資してきました。この3社はビデオ制作やVR、3Dのデザインを徹底的に平易にしています。Podcastleはオーディオコンテンツ制作の民主化への道を開いています」。

Podcastleは4種類の料金プランを用意しており、基本的な機能は無料で利用できる。

画像クレジット:Podcastle team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

Spotifyがポッドキャストに投票およびQ&A機能を追加

Spotify(スポティファイ)は2021年2月に、リスナーの投票やQ&Aを利用してポッドキャストをよりインタラクティブにする新機能のベータテストを開始していた。そして現地時間9月30日、Spotifyはこれらの機能を、同社が提供する音声コンテンツ制作・配信ツール「Anchor(アンカー)」を通じて、すべてのクリエイターが利用できるようになると発表した。

これらの新機能を活用すれば、Anchorを使ってポッドキャストを制作・配信しているクリエイターは、エピソードと一緒に質問や投票を投稿できるようになる。現時点では1つのエピソードに、1つの投票と1つのQ&Aのみを追加することができ、複数の投票やQ&Aは付けられない。

そのポッドキャストがSpotifyで公開されると、Spotifyモバイルアプリでは、ポッドキャストのエピソードページの下部に投票やQ&Aが表示される(iOSとAndroidのどちらも対応。ただしブラウザやデスクトップアプリでは表示されない)。リスナーは、アプリ内のプロンプトに従って、Q&A機能にはテキストで、投票機能ではクリエイターが設定した選択肢の中から該当するものを選んで、質問に回答することができる。

画像クレジット:Spotify

リスナーは投票に参加すると、すぐに他のポッドキャスト視聴者の投票結果を見ることができ、自分と同じ回答がどのくらい支持されているかを確認できる。しかし、Q&Aの回答は、ポッドキャスターのみに非公開で届けられる。ポッドキャスト制作者は、リスナーより届いた回答の中から、質問の下に表示させたい特定の投稿を選び、エピソードに固定表示することもできる。ただし、これらの回答には、リスナーのSpotifyユーザー名が表示されるので、この機能はその点を考慮して使用する必要がある。言い換えれば、この機能はポッドキャストで、ラジオのコールイン(聴取者が電話で参加する)のようなことを可能にするものだ。もっとも、リスナーの生の声や録音された音声ではなく、文字によるものという違いはあるが。

これらの機能は、今回の一般展開に先立ち、1年間にわたって数百人のクリエイターによるテストが行われてきた。その間にクリエイターは、Q&Aを利用して今後のゲストの提案を求めたり、番組に対する感想や意見を得たり、さらにはリスナーの反応を見たホストの発言を聞くためにリスナーの再訪を促すといったゲーミフィケーションの要素を番組に加えたりしてきたと、Spotifyは述べている。

画像クレジット:Spotify

この新機能は、日本を含む世界160の市場で、すべてのAnchorクリエイターとSpotifyユーザーが利用可能になっている。公式ウェブサイトによると、現在Spotifyは世界178の市場で展開されているとのことなので、全世界の市場というわけではない。しかし、大部分を占めている。

リスナーとの相互コミュニケーションは、Spotifyが従来のポッドキャスト体験を刷新するために取り組んできた方法の1つに過ぎない。同社は最近、有料のポッドキャスト配信や、音楽とトークを1つのコンテンツの中で一緒に楽しめる「Music + Talk」フォーマットの導入、そして「ライブ」ショーを開催するための「Spotify Greenroom(スポティファイ・グリーンルーム)」と呼ばれるアプリの展開なども開始している。

画像クレジット:Spotify

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

世界最大の独立系VCポッドキャスト「20VC」ハリー・ステビングスのTC Tokyo2021登壇決定

12月2、3日にオンラインで開催される「TechCrunch Tokyo 2021」。本年度は、期間中、7つのテーマで国内・海外のスピーカーを招いたセッションが行われる。

「海外スタートアップトレンド解説」をテーマにしたセッションでは、10万人以上のリスナーを持つ世界最大の独立系VCポッドキャスト「The Twenty Minute VC(20VC)」の創設者でホストを務めているHarry Stebbings(ハリー・ステビングス)氏が登場する。

世界最大の独立系VCポッドキャスト「The Twenty Minute VC(20VC)」の創設者でホストを務めるハリー・ステビングス氏

同ポッドキャストではAccel、Kleiner、Y Combinator、Benchmark、Indexなど、200以上のベンチャーキャピタルからゲストを招き収録している。またTechCrunchにも寄稿しており、スタートアップやベンチャーキャピタルからの資金調達に関するあらゆる情報を提供している。

関連記事:人気ポッドキャストTwenty Minute VCホストのハリー・ステビングス氏、番組の人気に乗じてマイクロVC設立

モデレーターを担当する宮武徹郎氏

また、本セッションにはモデレーターとして宮武徹郎氏も参加。宮武氏は現在、米国を中心にスタートアップやテクノロジー、VCに関する最新トレンドなどを配信する「Off Topic」を運営、個人では投資支援などを行っている。

すでに参加者チケットは発売中。参加者チケットは2日間の通し券で、他の講演はもちろん新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げるピッチイベント「スタートアップバトル」もオンラインで楽しむことができる。本講演は英語でのセッションとなるが、日本語の字幕が入る。

チケット購入

本記事執筆時点では「超早割チケット」は税込2500円、2021年12月31日までアーカイブ配信も視聴できる「超早割チケット プレミアム」は税込3500円となっている。また、スタートアップ向けのチケット(バーチャルブース+チケット4枚セット)は後日販売予定だ。

オンラインでの開催で場所を問わず参加できるため、気になる基調講演を選んで視聴することもしやすいはず。奮ってご参加いただければ幸いだ。また、10月18日まで「超早割チケット」で安価で購入できるのでオススメだ。

PayPal元COOの「ソーシャルポッドキャスティング」アプリCallin、ライブ録音を保存しポッドキャストに編集可能

ライブオーディオの人気が高まる中、共同創業者のDavid Sacks(デビッド・サックス)氏(PayPalの元COOおよびYammerの元CEO)とAxel Ericsson(アクセル・エリクソン)氏は、ソーシャルオーディオとポッドキャスティングを1つのシームレスなアプリに統合することを目指した。その結果生まれたアプリCallinは先に、Sequoia、Goldcrest、そしてSacksが設立しパートナーを務めるCraft Venturesが共同で主導したシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億2400万円)を調達したことを発表し、iOS上でローンチした。

ClubhouseやTwitter Spaces(Twitterスペース)のようなライブオーディオプラットフォームでは、ルームが終了するとオーディオは消えてしまう。Callinにも似たようなライブオーディオ機能があるが、ユーザーが自分のライブ録音を保存してポッドキャストのエピソードに編集できるという点で他と一線を画している。

「私は何年も前からポッドキャストをやろうと思っていましたが、あまりにも複雑で障壁が高すぎるためにまったく取り組めていませんでした」と、ロックダウンの中でポッドキャスト「All In」を始めたサックス氏は語る。「スタジオにはポッドの全エピソードのポストプロダクションに6時間費やす担当者がおり、私たち全員がマイクとハードウェアを手に入れる必要がありました【略】編成が大変でした」。

Callinは、初めて番組を制作するポッドキャスター志望者の参入障壁を軽減するとともに、ユーザーがアプリ上で作成したコンテンツの所有権を保持できるようにする。録画を開始するには、ユーザーがプライベートまたはパブリックのルームを開くだけで、ゲストを招待して会話に参加させたり、1人で録画したりできる。またライブルームでは、ホストがクラウドを管理しやすくなるよう、オーディエンス参加のためのキューがより簡素化されている。

画像クレジット:Callin

録音後にポッドキャストを編集する場合は、アプリが録音と同じくらいの時間でトランスクリプトを生成する。その後、テキストのブロックをタップするとポッドキャストから切り取ることができる。「um(えーと)」や「uh(うーん)」といったつなぎ言葉も分離可能だ。今のところ、AIが特定したテキストのブロック中の個々の単語やフレーズをカットすることはできないが、アプリの編集システムは引き続き構築されていくとサックス氏は語っている。またCallinは、録音の開始時または終了時に「デッドエア」をカットするプロセスも自動化する。編集が終わると、ホストは録画したものをアプリ上で制作する番組のエピソードとしてアップロードすることができる。ユーザーは自分のオーディオをエクスポートして他のポッドキャストホスト上で共有することも可能で、将来的にはRSSフィード経由でコンテンツをシンジケートできるようになるとサックス氏は述べている。

「ですが、ポッドキャストアプリを介してそのコンテンツを消費することは、Callinでそれを体験することとは異なるでしょう。Callinでは会話が行われたときのルームをインタラクティブに再生できるからです」とサックス氏はいう。「誰が話しているかのアバターを見ることができ、それをクリックしてフォローしたり、プロフィールを閲覧して彼らが他に何に興味を持っているかを見ることができます。それは単なるフラットなオーディオファイルとは異なる体験です」。

画像クレジット:Callin(TechCrunchによるスクリーンショット)

ポッドキャスターたちはまだトランスクリプトを公開できない、つまりほとんどの自動トランスクリプトと同様に100%正確ではない状態ではあるものの、Callinが取り組んでいるこの機能は、Clubhouseに依然として欠けている待望のアクセシビリティを生み出す可能性がある。Clubhouseと同様、Callinはまだライブキャプションをサポートしていない(Twitterスペースはサポートしている)。しかしサックス氏は、ホストがトランスクリプトを共有できるように拡張されれば、ライブキャプションは「ロードマップ上にある」と語る。

「ルームで使えるアプリもあれば、トランスクリプト0を編集できるアプリもありますし、ソーシャル発見やハイライトを行うアプリも存在しますが、これらの要素をすべて1つの体験にまとめたものはありません」とサックス氏。「私たちは、オーディオ番組の制作を考えているすべての人のために、この完全な垂直スタックを作ろうとしています。そのため、その体験のあらゆる側面をイテレートしていくことになるでしょう。ポッドキャスティングスタジオでできることで、私たちのアプリではできないことは何1つないようにしたいのです」。

それでも、App Storeに登場した現在のCallinには、オーディオ録音の品質の編集、効果音や音楽の追加、コンテンツのより正確な編集などを行うツールはない。さらに、iPhoneで録音されたポッドキャストでは、プロが制作した番組や、コンシューマー向けUSBマイクで録音されたホビイストのポッドキャストほどの音質は得られなかった。しかし、ライブオーディオアプリの成功は、リスナーが高品質のポストプロダクションやサウンドデザインを求めているのではなく、単に興味のある話題について話したいと思っていることを示すものだ。Callinとその投資家たちは、人々が事前録音されたClubhouseのルームを聴きたいと思うことに賭けている。

サックス氏は自身のアプリを使って、ソフトウェア企業の創業者向け番組「Sacks on SaaS」や、インターネット上で非常に悩ましい歴史を持つフレーズをタイトルにしたインタビュー番組「Red Pills」などを制作している。アプリ上の他のユーザー作成コンテンツには、NFL、ベルリンのスタートアップ、料理などに関連した番組がある。サックス氏によると、Callinはベータ版の段階で、100を超える番組を創出した「数千人」のユーザーを擁していたという。

コミュニティガイドラインによると、Callinは「人々が発言する場であり、私たちのプラットフォームで発言が制限される場合は常に正当な理由が存在するものとする」。Callinが制限するのは、会場のホストによる制約、AppleやGoogleなどの「基盤となるテクノロジープラットフォーム」による制約、そして「米憲法修正第1条で保護されていない危険な言論」による制約のあるスピーチだけである。

Clubhouseのようなライブオーディオプラットフォームではコンテンツモデレーションが課題となっており、人種差別的で反ユダヤ主義的な発言が報告された後、コンテンツモデレーションの基準の精緻化に苦慮している。Callinのコミュニティガイドラインでは、AppleやGoogleストアからアプリを起動させないユーザー生成コンテンツはすべてCallinがホストすることになっている。最近Parlerが、ソーシャルプラットフォームがコンテンツをモデレートすることを拒否したためにアプリストアから削除された例として注目を集めたが、その後何カ月にもわたって繰り返された末に復活している。

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1200万ドルのシリーズAラウンドで、CallinはAndroid版とウェブ版のアプリをサポートしたいと考えている。最終的にCallinは広告や番組のサブスクリプションを通じて利益を得ることも考えられるが、サックス氏によると、収益化の選択肢を検討する前にまず規模を拡大する計画だという。

「これは、私がこれまで取り組んだ中で最高のプロダクトだと思います」とサックスは語る。「つまり、Yammerよりも優れていますし、PayPalさえも上回ると思います」。

画像クレジット:Callin

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

LinkedIn共同創業者リード・ホフマン氏の新著は起業家精神を見直す10の方法を教えてくれる

激励の言葉が欲しい気分のとき、いつも味方でいてくれる人脈の広い楽観的なメンターほど適切な人物はいない。頼りがいのあるその肩こそ書籍「Masters of Scale(スケールの達人)」が演じようとしている役どころだ。

LinkedIn(リンクトイン)の共同ファウンダーにしてGreylock(グレイロック)のパートナー、Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏の人気ポッドキャストから生まれ、ホフマン氏が彼のポッドキャストの総括責任者であるJune Cohen(ジュン・コーエン)氏、Deron Triff(デロン・トリフ)氏の2人と共同執筆した新著が今週出版された。さまざまなエピソードとすぐに使えるヒントが散りばめられた本書の強みは、登場する起業家たちが実に多様であることだ。テック界のリーダーにとどまらず、本書はSpanx(スパンクス)のファウンダー、Sara Blakely(サラ・ブレイクリー)氏、Starbucks(スターバックス)のファンダー、Howard Schultz(ハワード・シュルツ)氏、およびUnion Square Hospital Group(ユニオンスクエア病院グループ)のCEO、Daniel Meyer(ダニエル・マイヤー)氏からも教訓を学ぶ。どのすぐれたメンターとも同じく、本書は現実的だ。著者はあなたがまだ、Bumble(バンブル)のWhitney Wolfe(ホイットニー・ウルフ)やAirbnb(エアビーアンドビー)のBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)でないとわかっている。それでも、リーダーたちから広く適用できる教訓を引き出し、読者が共感を得られるようにすることができる。

メディアはこの本の主題ではないが、「Master of Scale」は、私がファンダーをインタビューする際の視点をすでに変えている。Tristan Walker(トリスタン・ウォーカー)氏は、私がファウンダーに質問する時、新しいラウンドで調達した資金の使い道よりも、彼ら自身のことや、彼らの最も物議を醸す信念について聞きたくなるように仕向けた。地理学者のAndrés Ruzo(アンドレス・ルゾ)氏の言葉からは、理に適ったスタートアップには読みやすい話にはなるかもしれないが、世界を破壊する大ヒットにはならないかもしれないことを気づかせてくれる。つまり、一見ばかばかしい野望ばかりのスタートアップを追いかけろ、ということだ。なぜなら最高の一歩や物語はそこで起きるから。そして私は、ファウンダーを見分ける最高のリトマス試験紙は、目の前にある苦難について彼らが誠実かつ謙虚に話そうとするかどうかである、という信念を本書で確認した。

心地よい物語を読むたびに、私はパンデミックへの言及を待った。パンデミックがスターアップに与える影響についてのアドバイスは、ピボットの技法に関する一章にほぼまとめられている。パンデミックへの対処方法のアドバイスを、ベンチャーキャピタル、資金調達、市場などさまざまな分野にちりばめる代わりに、本書はこの激変への言及を最小限に絞った。この選択によって、アドバイスの新鮮さは維持されるだろう。とはいえ、スタートアップ世界の醜い部分についてあまり語らない本書の選択には、一種のアンバランスさを感じた。もっと対立問題、たとえばWeWork(ウィワーク)のAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏がビジョナリー・ファウンダーに対する我々の見方をどう変えたのか、あるいはBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏のCoinbase(コインベース)メモとスタートアップカルチャーに与える影響、さらには現在のテック出版の役割などについて直接的に書いてくれていれば、さらに得るものがあっただろう。ただしこの本は、自らジャーナリズム性を謳ったことはなく、演じようとしたのはチアリーディングするメンターであって皮肉なメンターではないということもしれない。

人気ポッドキャストに基づいて本を書くことは、簡単であるとは限らない。オーディオは文字とはまったく異なるメディアであり、音声による会話の強い個性や謙虚さを文字に変換するにはそれなりの手腕が必要だ。実際ホフマン氏と共著者の輝き具合は話によってまちまちで、繰り返し、しかし効果的に使われている物語のアーク(横糸)に強く依存している。問題を紹介し、なるほど!の瞬間を見せ、ソリューションを示して普遍的教訓を伝える、というやり方だ。

私はこの本を週末に読んだ。1冊手に取ろうとしている起業家志願者、技術者、ジャーナリストにも同じやり方をお勧めする。ホフマン氏と共著者が70人以上の起業家の話を見事にまとめた仕事はすばらしい。共鳴したファウンダーを検索するのか、自分のインタビュー・スタイルを変えるのか、はたまた、いつの日かブリッツスケーリングできるアイデアを実現し始めるのか。真のマジックは、読者が物語の合間にひと息ついたときに起きる。

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画像クレジット:Kelly Sullivan/Getty Images for LinkedIn

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アーティストが私生活について語るオーディオ共有プラットフォーム「Mindset」が間もなく正式版をリリース

Mindset(マインドセット)は、レコーディングアーティストの個人的なストーリーを集めたプラットフォームだ。同社は米国時間8月25日、シード資金として870万ドル(約9億5500万円)を調達したと発表した。

K-POPに特化したポッドキャスト制作会社であるDIVE Studios(ダイブ・スタジオズ)の共同設立者として、Brian Nam(ブライアン・ナム)氏、Eric Nam(エリック・ナム)氏、Eddie Nam(エディ・ナム)の3兄弟は、スターが私生活における悩みをどのように処理しているかを語るポッドキャストのエピソードが、同スタジオで最もパフォーマンスの高いコンテンツであることに気づいた。そこでナム兄弟は、DIVE Studiosから派生したMindsetの着想を得た。

「私たちはこのようなコンテンツが、まさに人々からより多く求められているユニークなセールスポイントであることに気づきました。そこで私たちは、この点をさらに強化する方法を考え始めたのです」と、CEOのブライアン・ナム氏は語る。「この価値あるコンテンツを、Z世代やミレニアル世代の若い視聴者にもっと提供するにはどうしたらいいか。私たちは、この種のストーリーテリングに最適なプラットフォームが存在していないと判断し、これらのストーリーをオーディオ形式で共有するための独自のモバイルプラットフォームを開発することに決めたのです」。

画像クレジット:Mindset

Mindsetは現在、Jae(ジェイ)、Tablo(タブロ)、BM、そしてMindsetの共同設立者であり自身もK-POPスターであるエリック・ナムという4人のアーティストによるオーディオコレクションを提供している。それぞれのコレクションには10本のエピソードが揃っており、各エピソードの時間は10分から20分ほど。最初のエピソードは無料だが、各アーティストの残りのエピソードを聴くためには24.99ドル(約2700円)を支払う必要がある。このアプリには無料の「Boosters(ブースターズ)」も用意されている。これは就寝時に聴くための物語や、やる気を起こさせるマントラなど、瞑想アプリ「Calm(カーム)」に似た5分間ほどのクリップだ。

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「これまでミュージシャンにとっての主な収入源は、ツアー、音楽配信、そしてエンドースメント契約でしたが、私たちは4つ目の収入源となるストーリーの収益化を実現することができます」と、ナム氏は述べている。「その価格設定は、チケットの価格設定や商品の販売方法に似ています」。

Mindsetはセラピーアプリではない。「私たちはセラピストの資格を持っているわけではありませんし、そのように振る舞おうともしていません」と、ナム氏はいう。それよりもむしろ、アーティストがファンとより親密な体験を共有することで、音楽の背後にある彼らもまた人間であることを示すための方法なのだという。

Mindsetは、2021年2月にMVP(minimum viable product、必要最小限の機能のみを備えたプロダクト)バージョンとして発表された。そのアクティブユーザー数や売上高については、ナム氏は明らかにしなかったものの、このアプリが十分な人気を獲得できたため、5月にはベンチャー資金を調達したと語っている。今回の870万ドルの資金調達は、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)が主導し、先ごろTaylor Swift(テイラー・スウィフト)の原盤権問題で注目を集めたレコード会社の重役であるScooter Braun(スクーター・ブラウン)氏などが戦略的投資を行った。ブラウン氏はベンチャー投資会社のTQ Ventures(TQベンチャーズ)の共同創立者でもある。その他の出資者には、Twitch(ツイッチ)の共同創業者であるKevin Lin(ケヴィン・リン)氏、Opendoor(オープンドア)の共同創業者であるEric Wu(エリック・ウー)氏などが含まれている。

「スクーター・ブラウン氏は戦略的投資家でした」と、ナム氏はTechCrunchに語った。

ブラウン氏は、Ariana Grande(アリアナ・グランデ)、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)、Demi Lovato(デミ・ロヴァート)などのアーティストとも仕事をしている。

「ブラウン氏のおかげで、私たちが伝統的なK-POPの世界からハリウッドや欧米に進出するための多くの扉が開かれました」と、ナム氏は付け加えた。

Mindsetは今回調達したシード資金を、コンテンツの制作、雇用、製品開発に充てるという。このアプリは現在、iOSAndroid向けに提供されているが、9月14日には正式版がリリースされる予定だ。その後は2週間ごとに、他のアーティストや俳優のオーディオコレクションが、追加されることになっている。これらのアーティストが誰になるのか、ナム氏は具体的な名前を明かすことは避けた。

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画像クレジット:Mindset

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Spotifyのポッドキャストサブスクを米国の全クリエイターが利用可能に

米国時間8月24日、Spotifyはポッドキャストのサブスクリプションを米国の全ポッドキャストクリエイターに公開した。このサービスはテストとして2021年4月に少数のクリエイターを対象に開始されていた。大手から個人まですべてのクリエイターがSpotifyのポッドキャスト制作ツールであるAnchorを利用して特定のエピソードをサブスク利用者限定コンテンツに指定し、Spotifyや他のプラットフォームで配信できる。Spotifyによれば、サービス開始以降、100以上のポッドキャストがサブスクを利用しているという。同社はこのサービスを広く公開することにともない、早期に利用したクリエイターからのフィードバックに基づいて、価格と機能に関していくつか重要な変更を加えている

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これまでクリエイターは月額2.99ドル、4.99ドル、7.99ドル(約330円、550円、880円)のいずれかの価格を選ぶようになっていた。クリエイターは自分のオーディエンスにとって最適と思われる価格を選ぶことができた。

しかしクリエイターがもっと柔軟な価格設定を望んでいることがわかり、価格を20通りから選べるようになった。最低価格は0.49ドル(約55円)で、そこから徐々に上がっていって最高価格は150ドル(約1万6500円)だ。

画像クレジット:Spotify

Spotifyは調査の結果、クリエイターは価格を完全に自由に設定するよりも最初にある程度設定されている方を望むことがわかったと説明している。そのため、現在はクリエイターが価格を自由に入力するようにはなっていない。今後はテストの結果が良かった3通りの価格として0.99ドル、4.99ドル、9.99ドル(約110円、550円、1100円)が先頭に表示され、その下に17通りの価格が表示される。SpotifyはTechCrunchに対し、先頭の3通りのうち4.99ドル(約550円)が最もパフォーマンスが良かったと述べた。

価格設定と、別のポッドキャストアプリを使いたいリスナーが利用できるプライベートRSSフィードへのアクセスに加え、ポッドキャストクリエイターはサブスク利用者の連絡先アドレスのリストをダウンロードできるようになる。クリエイターはサブスク利用者に追加のベネフィットを提供してエンゲージメントを高められるとSpotifyは説明している。クリエイターが自分の顧客との直接的なつながりを構築するチャンスを失うとなれば、有料サブスクのようなサービスを利用するつもりがなかったクリエイターにも訴求するかもしれない。

画像クレジット:Spotify

有料ポッドキャストを提供しているのはSpotifyだけではない。Appleも2021年4月にポッドキャストのサブスクプラットフォームを発表した。しかし今のところ、Spotifyの方がクリエイターに有利だ。Appleは1年目はポッドキャストの売上の30%を徴収し、2年目には15%になる。これは他のサブスクアプリと同様だ。一方のSpotifyは、今後2年間はこのプログラムを無料に据え置く。つまりクリエイターは2023年まで売上の100%を受け取れる。その後はサブスクの売上のたった5%を徴収する計画だ。

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マーケットプレイスモデルに参入する第一歩にあたり、Appleの独占的な振る舞いを厳しく批判するSpotifyが手数料をこれほど小さなパーセンテージにしたことは注目に値する。Spotifyは長年、AppleがSpotifyのサブスクビジネスから手数料を取るのは競争を阻害する行為だと主張してきた。AppleはApple MusicのサブスクによってSpotifyのビジネス上のライバルになっており、今度はポッドキャストのサブスクでもライバルになる。

現在、Spotifyはサブスクベースのポッドキャストを多数配信している。NPRのような大手から、Betches U Up?、Cultivating H.E.R. Space、Mindful in Minutesといった独立系クリエイターまでさまざまだ(NPRはAppleの有料ポッドキャストサービスでも配信されている)。Spotifyで配信するクリエイターは他のプラットフォームを利用してもよい。プライベートRSSフィードを自分の顧客と共有し、Appleのポッドキャストなど他のプラットフォームに配信できる。

Appleのサブスクサービスが出だしでつまづいていることに対してクリエイターの不満の声が高まる中で、Spotifyはサブスクをクリエイターに広く公開することにした。The Vergeの記事には、バグや紛らわしいユーザーインターフェイス、相互運用性の問題などに対するクリエイターの不満が書かれている。これに対してSpotifyは、ポッドキャストのサブスクに関心を持つクリエイターから「数千件」の登録があったと述べている。

Spotifyは米国以外にも利用を広げるとしている。2021年9月15日には米国以外のリスナーもサブスク専用コンテンツを聴けるようになる。その後すぐにクリエイターもポッドキャストのサブスクを利用できるようになる予定だ。

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画像クレジット:stockcam / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

音声プラットフォーム「Voicy」でリスナーから音声配信者への直接課金が月間1000万円を突破

音声プラットフォーム「Voicy」でリスナーから音声配信者への直接課金が月間1000万円を突破

音声配信プラットフォーム「Voicy」(ボイシー。Android版iOS版)を提供するVoicyは8月24日、リスナーから音声配信者(パーソナリティー)への直接課金が、月間1000万円を突破(2021年8月時点)したことを発表した。

リスナーは、有料配信(プレミアム)を行うパーソナリティーに月額料金を支払うことで限定配信が聞ける「プレミアムリスナー」になれるが、直接課金とはその支払いを意味する。現在、プレミアム配信を行っているパーソナリティーは80名以上。月間流通総額は2021年年初から比較すると2倍に延びているという。

Voicyは日本で初めて「ボイスメディア」という音声フォーマットを確立。各分野の専門家、企業経営者、ワーキングマザーなどさまざまな立場の人たちが、気軽に録音して公開できる「音声の大衆化」を実現した。ただし、配信したい人はパーソナリティーとして応募し、審査を受けなければならない。審査通過率は5%と厳しいが、そのおかげで高いクオリティーが保たれているといえる。「プレミアムリスナー」には、「声のプロ」を育成する目的もあるとのこと。

今回の発表は「声のニュースリリース」でも聞くことができる。