任天堂のPokémon Goが大ヒットしたが、Miitomoは空振りだった。同社は明らかにモバイル界への参入に興味を持っているが、残りの任天堂キャラクターを有効活用するためにはモバイルアプリ界の勝ち組についていかなければならない。この記事ではその方法について考えてみたい。
Pokémon GoはもともとGoogleで生まれたAR MMOのIngressを機能的なモデルとしていたが、同じモデルはマリオやゼルダ、どうぶつの森シリーズのキャラクターには適用できない。投資家は、Pokémon Goを任天堂がモバイルの可能性を開く準備ができたというサインだと見ているが、ワンパターンなアプローチをとるのが一番だという考えに陥いると、誤った動きをとってしまうだろう。その代わりに、マリオやその他のキャラクターを有効利用するための方法を以下の例から探ることが出来る。
1. マリオ:Chameleon Run
スーパーマリオブラザーズはプラットフォームゲーム人気の立役者だが、物理ボタンや十字キー、ジョイスティックを複雑に組合せた操作がときに必要となるゲームを作る上で、問題となる要素がスマートフォンには存在する。
もちろんiOS、Androidの両OS向けにたくさんのプラットフォームゲームが存在するが、大きな成功を収めているものは、単にオリジナルバージョンの操作法をバーチャルなオンスクリーンボタンに反映したような使いづらい設定を超越している。最近で一番良い例となるのがChameleon Runで、動きの早いプラットフォームゲームをワンタッチ(もしくはやりたい動きに応じて、タッチの組合せや長押しなど)で楽しむことが出来る。
任天堂はこれまで、コンソールのパワーや操作性が進化するのに合わせて、マリオシリーズのコアとなる仕組みを変化させることができた。Chameleon Runのようにキャラクターが自動で前方に進み、プレイヤーはジャンプ操作だけ行うという仕組みをそのままコピーする必要はないが、任天堂はモバイル専用のプラットフォームゲームにユーザーが期待するものがどのように変化しているかということに、このような成功例をガイドにしつつ目を向けるべきだ。
2. ゼルダの伝説: Crashlands
長きにわたって、任天堂のキャラクターの中でマリオと肩を並べ、シリアスな雰囲気を持った存在とされるのが、ゼルダの伝説シリーズの主人公であり妖精のような姿をしたリンクだ。ゼルダ姫のために次々と巻き起こるリンクの冒険には、新たなプレイヤーが簡単に理解できるくらいシンプルでありつつ、長年のプレイヤーの想像力をかき立てるほど豊かな世界観や物語が存在する。
任天堂は、これまで成功を収めた企業から何かしらの手がかりを得ることができれば、ゼルダの豊かな世界観を持ち込みつつもアクションRPGのジャンルに入るようなゲームを生み出すことができる。インディーゲームの開発を行うButterscotch Shenanigansの生み出したCrashlandsは、そのDNAのどこか奥深くに、ゼルダの伝説シリーズの痕跡を感じる気がする。
Crashlandsは、強力で中毒性がありながらも、遊び方を簡単に学ぶことができるクラフティングシステムを本当に上手く使っている。実は、来年の発売が予定されているコンソール向けの新たなゼルダの伝説シリーズで、任天堂はCrashlandsと似たようなアイテムの使い方を導入しようとしているようだ。
3. カービー: キャンディークラッシュ
私は、これでもかというくらいBejeweledで遊んでいた。あまりにハマりすぎていて、もはや常軌を逸したレベルに感じられた程だ。そうしている間に、メガヒットとなったキャンディークラッシュのような最近のマッチパズルゲームの動向についていけていなかった。ところで、任天堂のプラットフォームゲーム界で活躍するもう1人のキャラクターであるカービーは、周りにあるものを全て吸い込んでしまうという特徴からマッチパズルゲームとの相性が良い。キャラクター数の多さや、見覚えのあるアイテムなど、実際のゲームづくりに際してインスピレーションとなるものも揃っている。
読者の中には、実は任天堂はかなり昔にマッチパズルゲームを作っていると指摘する人が間違いなくいるだろう。テトリスの影響を受け、1990年に発表されたドクターマリオだ。しかし、このジャンルはそれ以降大きな発展を遂げており、カービーを利用することで、近くにあるものを吸い込んでパワーアップしたり、ゲーム内のアイテムを使うことで一時的にパワーアップしたりと、もっとたくさんの機能を加えることができるだろう。
4. 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ:Marvel オールスターバトル
ヒットした格闘ゲームをモバイルプラットフォーム向けに変換するにあたり、ほぼ完璧な例がひとつ存在するとすれば、それはKabamのMarvel オールスターバトルだろう。さらに、マーベル・コミックのスーパーヒーローシリーズ内の、読者に愛されている既存キャラクターを利用しているというのも参考になるポイントだ。
繰り返しになるが、もともとの素早い操作やコンボをキャラクター作成やシンプルな戦闘システムに置き換える必要があるため、モバイル版の製作は、単純な移植というよりも新たなバージョンを再度製作するということに近い。ただ、このようなゲームでプレイヤーが繰り返し遊ぶようになるためのコアとなる仕組みは、最初は使うことができないキャラクターのロックを解除したり、自分の仲間に加えたりすることにある。そのためこのモデルは、任天堂シリーズの人気キャラクター全員を登場させ、ブランドをまたぐことで生まれる魅力を備えた大乱闘スマッシュブラザーズにはなおピッタリだ。
任天堂はこのジャンルでもやれることがたくさんある。Amiiboと組み合わせれば、プレイヤーが現実世界のコレクター商品を購入することで、ゲーム内のキャラクターを獲得したりアップグレードしたりといったことができるようになる。
5. どうぶつの森: IngressまたはMinecraft: Pocket Edition
どうぶつの森は、任天堂のキャラクターシリーズの中では知名度の低いもののひとつだが、特に若いプレイヤーには未だファンが多い。このゲームは、プライヤーがお互いの町を訪れるなどソーシャルな面を持っている。ちなみに、町はそれぞれのプレイヤーの手によってある程度までつくられ、その後、陽気で愉快なノンプレイヤーキャラクターがそこに住むことになる。
このモデルでは、もしかしたら任天堂が再度ARを採用するのにも意味があるかもしれない。どうぶつの森では、プレイヤーをお互いの家に訪問させる仕組みが上手く築かれており、それが現実世界でのプレイヤー同士の集まりに発展するのは容易に想像できる。そして、どうぶつの森のプレイヤーは、ゲーム内で自分の家の周りに何かを作ったり、カスタマイズしたりすることができるため、ユーザー自身が作ったコンテンツ(Minecraftの縮小版のイメージ)を盛り込むこともできるだろう。
さらにどうぶつの森ではアイテムの収集にも重きがおかれており、Ingressモデルの恩恵を受けることができる別の理由だと考えている。釣りや昆虫採集といったアクティビティには、簡単に現実の位置情報を紐付けることができ、Pokémon Goの中に登場するPokéStopsのワンパターンさとは違った側面を見せることができるだろう。
他社のコピーするのではなくパートナーを信頼する
私は、任天堂が他社のゲームの仕組みをコピーして、自分たちのキャラクターをあてがうことを提案しているわけではない。Pokémon GoでのNianticとの協業からも分かる通り、任天堂は、モバイル界で自分たちよりも優れた技術を持つ企業に製品デザインにおけるリードを取らせる、という賢明な判断を行うことができる。同時に、単純なライセンス契約を避け、任天堂の既存ゲームのアピールポイントを保持するためにどうすればいいかということを考えながら、ゲームの仕組みを変えていくことが重要だ。
任天堂がもっと多くのヒット作をモバイル向けに作るのは簡単ではないが、そこに正しいパートナーと、スマートフォンゲームの特徴についての正しい理解が備われば、私たちは、もっと多くの昔のお気に入り作品が生まれ変わって登場するのを期待することができるだろう。
[原文へ]
(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)