“習い事”として注目のプログラミング、「TechAcademy」が子ども向け教室のフランチャイズ事業

2020年から日本国内の小学校でプログラミング教育が必修科目となることはご存知の方も多いだろう。加えてAIを中心としたテクノロジーの発展により、これからはさまざまな産業においてプログラミングの知識やITへの理解が求められていくはずだ。

そのような時代背景もあり、昨今は習い事のひとつとして、プログラミングへの関心が高まってきた。試しにGoogleで検索してみても、子ども向けのプログラミング教室やワークショップがいくつもヒットする(子ども向けに限った話ではないが)。

オンラインプログラミングスクール「TechAcademy」を運営するキラメックスが2018年4月から新たに始める「TechAcademyキッズ」も、このプログラミング教育のニーズに応えるサービス(2月26日より事業者の先行受付を開始)。といってもこれまで同社がやってきたような、学習者向けに直接オンラインレッスンを提供するという形式とは少し異なる。

TechAcademyキッズは「プログラミング教室を始めたい」事業者や個人に向けたフランチャイズパッケージだ。塾やカルチャースクールといった事業者(個人も可能)に対して、オリジナルの学習教材や教室運営に必要なノウハウを提供。事業者はそれを活用して各地で「オフライン」のプログラミングスクールを開講し、小中学生に教えていくというモデルをとっている。

「これまではオンラインだったが、親御さんの安心感なども考慮して教室に足を運んでもらう形を選んだ。子どもたちが集中できるような環境を整え、継続的にモチベートしていく上でもリアルな教室で、先生がサポートをするというのは適している。小学生向けのプログラミング教室を展開していく上ではこの仕組みが最適だと考えた」(キラメックス取締役でTechAcademyキッズの事業責任者を務める樋口隆広氏)

TechAcademyキッズでは子ども向けプログラミング言語「Scratch」を利用したコースを提供し、まずはゲーム感覚で楽しみながらプログラミングを学べるようにする。今後はWebアプリケーションやスマートフォンアプリなどステップに応じた教材も用意していくという。

子どもたちは教室に足を運び、基本的には動画を見ながら自分で手を動かしてプログラミングを学ぶ。先生たちの役割は必要に応じてそれをサポートすること。そのためプログラミングに精通していなくても、スクールを開講することができる。

「未経験の人でも教えられる環境を作れれば、日本のプログラミング教育の発展につながる。これまで培ってきたノウハウを活用することで、テクノロジー教育の裾野を広げ、もっと多くの人に提供していきたい」(樋口氏)

冒頭でも触れたように、2020年に向けてプログラミングを教えるスクールや個人も増えてきている。ただそういった人からも「どういうステップで教えていってあげるべきかがわからない」という声が多いそうだ。

実際にTechAcademyの受講生の中には、街のスクールでプログラミング言語に触れた後、次のステップとしてTechAcademyを選んだ小学生がいるという。「『階段を作る』ようなイメージ。自己実現をサポートできるようなカリキュラムを(フランチャイズパッケージの中で)整えていきたい」(樋口氏)

クオリティのコントロールや安全性の担保の面から、フランチャイズ契約を希望する事業者に対して最低限の審査を実施。クリアした事業者がパートナーとなる。本日より先行受付をスタートしていて、サービスの開始自体は4月頃の予定だ。

キラメックスは2009年2月の創業。クーポン共同購入サイトの運営などを経て、2012年からプログラミング学習事業のTechAcademyを始めた。現在のオンライン完結型のプログラミング学習サービスは2015年6月より開始。翌年2月にユナイテッドの子会社となった。

当時は3つしかなかった学習コースは現在23コースになり、メンター数は100人から400人にまで増加。同様にアクティブの受講生も100人から1500人と約2年で急増している。最近ではAIコースやブロックチェーンコースのように、トレンドのテクノロジーを学べるコースも始めた。

また中高生向けの「TechAcademyジュニア」や転職支援の「TechAcademyキャリア」などプログラミング教育を軸にサービスを拡大。研修用プログラム(企業へTechAcademyを提供)や、卒業生の人材紹介事業といった法人向けの事業も展開している。

写真左がキラメックス代表取締役社長の村田雅行氏、右が同社取締役でTechAcademyキッズの事業責任者を務める樋口隆広氏

日本初の薬事承認を目指す「治療アプリ」のキュア・アップが15億円を資金調達

従来の薬事法が2014年に改正され、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」となってから、診断や治療を目的としたプログラムが単体で医療機器として申請されるようになり、ヘルステック分野で注目を集めている。

キュア・アップが疾患治療用プログラム医療機器として研究開発するのは、スマートフォンで使える「治療アプリ」。同社は2月26日、既存株主のBeyond Next Ventures慶應イノベーション・イニシアティブに加え、新たに伊藤忠商事伊藤忠テクノロジーベンチャーズCYBERDYNE第一生命保険三菱UFJキャピタルいわぎん事業創造キャピタル、セゾン・ベンチャーズ(クレディセゾンのコーポレートベンチャーキャピタル)、ちばぎんキャピタルみずほキャピタルを引受先とする総額約15億円の第三者割当増資を実施すると発表した。

キュア・アップは医師でもある代表の佐竹晃太氏が、2014年7月に設立したヘルステックのスタートアップ。医薬品や旧来の治療方法ではなく、患者の身近にあるスマホアプリを病気の治療に取り入れる、治療アプリとして開発している。

現状、通院と通院の間に医療機関が患者と接点を持ち、フォローを行うことは難しい。キュア・アップではスマホを利用することで、これまで介入の難しかった患者の意識・習慣や、あらゆる場所・時間帯における患者の生活にアプリを通して接点ができ、それぞれの状態に応じた、パーソナライズドされたフォローを行う仕組みを構築してきた。

現在は、医療機関向けのニコチン依存症治療用アプリ「CureApp禁煙」の治験を実施中。同じく医療機関向けの非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療用アプリ「CureApp脂肪肝」も臨床試験が進行中だ。

さらに医療機関向け治療アプリ開発で蓄積した知見を基に、法人向けの健康増進プログラム「ascure(アスキュア)禁煙プログラム」の提供も、2017年4月より開始している。東証一部企業を中心に、健康経営を意識する企業での導入が進んでいるという。

キュア・アップでは、今回の調達資金をもとに、治験中のCureApp禁煙について日本初の薬事承認・保険償還を目指すほか、その他の疾患について治療アプリの研究開発を進める。また、法人向け健康増進プログラムについても、提供中の禁煙プログラムに加え、生活習慣病やメンタルヘルス対策分野へも順次展開していく予定。さらに、ヘルステック分野で日本発のモバイルソリューションとして、海外進出も準備しているということだ。

キュア・アップはこれまでに、2015年10月にBeyond Next Venturesから1億円を調達2017年2月にBeyond Next Ventures、慶應イノベーション・イニシアティブ、SBIインベストメントから3.8億円を調達している。

“家庭教師のフリマ”サービス「レコンズ」今春スタート、スマホ学習塾「アオイゼミ」が発表

スマホで学べる中高生向けのオンライン学習塾「アオイゼミ」を運営するZ会グループによる買収を受けて、昨年12月に取材に答えた同社代表取締役社長の石井貴基氏は「アオイゼミの旗振りで来春、新規事業のリリースを予定している」と話していたのだが、2月26日、その新サービスの発表があった。

新しいサービスは、家庭教師と生徒のCtoCマッチングサービス「家庭教師のレコンズ(以下レコンズ)」だ。石井氏はレコンズのことを「いわば『カテキョのフリマ』サービス」と言っている。メルカリの参入発表でも注目を集める教育関連CtoCの分野に、Z会グループとして参入する。

レコンズは、家庭教師を探す機能、教師とメッセージでやり取りできる機能、決済機能を備え、子どもに合った家庭教師を見つけて直接契約できる、CtoCプラットフォームだ。授業依頼から指導報告、授業料の支払いまでサービス内で完結することができる。

サービス提供開始は今春を予定(「4月にはスタートしたい」と石井氏は言っていた)。リリースに先駆け、授業を受けたい側、授業をしたい側、双方の事前登録を本日より公式サイトで開始する。

葵がレコンズで目指すのは「理想の先生をもっと気軽に見つけて学ぶ」ことだと石井氏は話す。既存の家庭教師派遣サービスでは、一般的には授業料の約50〜60%が手数料として派遣会社に支払われる。このため、授業料が高額になりやすく、逆に先生の収入は少なくなる。

レコンズではCtoCマッチングプラットフォームの形をとることで、中間マージンを約20%程度にできるため、子どもに合った教師を適切な授業料で雇えて、教える側も収入を増やせるという。

また、家庭教師ではなく個別指導塾であれば授業料は抑えられるが、複数の子どもに1人の先生がつくことになる。石井氏は「レコンズなら授業料を抑えながら、マンツーマンでの授業を実現できる。家庭教師のCtoC化で、学習塾市場にも新しい動きが出るのではないだろうか」と話している。

レコンズのスタートは、Z会グループにとっても意味を持つ。オンライン学習塾のアオイゼミ利用者は、現在30万人以上。「普段の自宅での学習にはアオイゼミを利用し、週1日家庭教師にサポートしてもらう、といった使い方ができるので、相性がいい。お互いのサービスを補い合う関係が成立する」と石井氏は言う。

さらにZ会グループの利用者OB・OGが、家庭教師として登録することも期待される。「アオイゼミからは今年数万人が卒業して新大学生となる。またZ会OB・OGも、毎年2000人以上が東京大学、京都大学に合格するなど、数千人が難関大学に進んでいるし、学習塾・栄光ゼミナールのOB・OGも同じく数千人が難関大学に進学する。グループの卒業生で、良質な家庭教師がすぐにそろえられる環境にある」(石井氏)

習い事や語学学習など、知識を教える人と学ぶ人を結び付けるCtoCサービスとしては、メルカリが発表した「teacha(ティーチャ)」のほかにも、クラウドワークスが事業譲受した「サイタ」、グローバルウェイの「TimeTicket(タイムチケット)」、ストリートアカデミーの「ストアカ」、語学学習に特化した「フラミンゴ」などがある。

そんな中で石井氏は「レコンズでは、Z会グループの強みが生かせる、小中高の児童・生徒と大学受験生のみにフォーカスする」と言う。「グループには教材だけでなく、長年の指導ノウハウも培われている。そのノウハウをレコンズに最適化して、先生の教育も行い、質の高い授業ができるようにサポートしていく。また“成績の上げ方”などのテクニックについても、追加情報として提供していきたい」(石井氏)

教師の質については、石井氏はこんなことも言っている。「あまり細かい制約は、レコンズではかけないようにしたい。例えば、今までは“最初は一律で時給1500円”などと決められている給料も、このサービスでは先生に決めてほしいと思っている。『最難関校の学生だけど、社会貢献としてできるだけ安く教える』とか『有名大学ではないけれど児童福祉学を専攻していて、登校拒否や学習障害などに詳しい』とか、学歴だけじゃなくて個性に合わせて選べることを、サービスの魅力にしたい」(石井氏)

とはいえ「ご家庭に訪問したり、カフェで顔を合わせたりして勉強することになるので、教師の本人確認は徹底してやる」とのこと。また利用家庭のレビューによる「授業の満足度」を表示する仕組みがあり、「評価が下がった先生はすぐ分かるようになっているので、そうしたことで質の担保をしていく」と石井氏は説明する。

石井氏は「将来的には、先生への支払いサイトは早めたい。自分も学生時代、給料がなかなか入らなくて苦労したので。また先生の実績に応じて、手数料を下げるような仕組みも取り入れていけたら」とレコンズの今後の展開についても、既に考えている。

さらに「これができたらすごいと思うんだけど」と石井氏が語るのは「奨学生制度」だ。「レコンズの登録者で『どこの学生だったら、4年間でいくらぐらい稼げる』といったデータがたまったら、新聞奨学生のように奨学金を出して、大学への進学を支援する、といったこともできたらいいなあ、と思っている」(石井氏)

また海外展開についても、石井氏は念頭に置いているとのこと。「教材ありきのサービスだとローカライズが重荷になるが、レコンズは教材モデルではないのでローカライズする部分が少ない。オペレーションを今後磨いていけば、国外にも出せるサービスになると思う。Z会グループの強みである、指導方法などのノウハウを生かしながら、マッチングプラットフォームとしてブラッシュアップすれば、海外にも行けると考えている」(石井氏)

株式のようにコミュニティの価値を売買できる「fever」が3月オープン、事前登録ユーザーは3万人超える

2017年7月にサービスを発表したメタップスの「タイムバンク」は、人の時間を売買するサービスとして話題を集めた。株式のように自分の価値を売買できる「VALU」もある。それらのサービスに対し、3月よりリリースを予定しているAsobicaの「fever(フィーバー)」は、複数人で構成された“コミュニティ”の価値を売買できるサービスだ。

3名以上のメンバーが所属するコミュニティがfeverに“上場する”ことで、コミュニティの価値を表す「コミュニティコイン」を発行できる。コミュニティの活動に共感したり将来性を感じたりしたユーザーは、発行されたコインの購入を通してコミュニティへの金銭的な支援を行うことができる。

コインの購入に利用できるのは今のところ日本円のみだ。株式のように、1コインあたり〇〇円という価格で購入できる。コミュニティが発行できる総コイン数はAsobicaとコミュニティの運営側が協議の上、決定する。一方、コイン売り出し時の発行価格は、Asobicaがコミュニティの所属人数、SNSアカウントのフォロワーの人数などを参考に算出するという。

新規発行後のコインの価格は、株式と同じように取引所での需給関係で決まる。なので、将来性のあるコミュニティに“投資”をしておき、コインの価格が上がったところで売却したり、取引所で他のユーザーからコインを購入したりすることも可能だ。

また、コインは取引所で売買できるだけでなく、そのコミュニティが提供するサービスやプロダクトを意味する「チケット」と交換することもできる。例えば、コミュニティが何かしらのイベントを行うとすれば、その参加券やVIP席へのアップグレードがチケットで、その購入に利用できるのがコミュニティコインとなる。

ここまで聞くと、仮想通貨を発行することで広く資金を集める「ICO(イニシャルコインオファリング)」の仕組みと非常に似ているように感じる。こんなご時世でもあるから、気になるのはfeverで取引するコインは仮想通貨にあたるのかという点だ。

それについてAsobica代表取締役の今田考哉氏は、「コミュニティが発行するコインは、feverのサービス内でのみ売買できるものであり、不特定多数への売買を前提とした仮想通貨には当たらないと認識している」とコメントした。ただし、同社は将来的に、コインの決済手段として日本円だけでなくBitcoinなどの仮想通貨も受け入れていきたいとも考えており、そのために仮想通貨交換業者としての登録を現在準備中だとしている。

Asobicaは、2018年1月26日から2月9日にfeverへ上場するコミュニティの事前募集を行った。また、その事前募集したコミュニティの中からサービスリリース時点で上場できる5つのコミュニティを選ぶため、ユーザーによる投票を行うことも併せて発表した。

その結果、事前募集には計107のコミュニティが応募し、投票に参加した事前登録ユーザーの数は2万人以上となった。投票の後もユーザーの事前登録は受け付けており、現時点における事前登録ユーザーは約3万人だ。

ユーザー投票で選ばれた上位5つのコミュニティに加え、6位から20位のコミュニティから抽選で選ばれた2つのコミュニティがfeverの取引所へ上場することが決定している。

  • 黄桜すいプロジェクト: 秋田県由利本荘市の地域おこしを行う非営利民間団体
  • TOLAND: ビルを一棟単位でプロデュースし、カフェ、BAR、イベントスペースなどを運営
  • 日本ドローンレース協会(JDRA): オリンピック正式種目化を目指して活動するドローンレース団体
  • ぺーたーず: フリースペースの「ひみつきち」運営。昼はイベント、夜はカフェバーに変身
  • 箕輪編集室: 編集者の箕輪厚介氏が率いるクリエイティブチーム
  • イケハヤ経済圏:バーチャルブロガー「イケハヤ」を取り巻く経済圏
  • YBP PROJECT TEAM:日本初の世界基準BMXレースコース「YBP(Yuta’s Bike Park)」を運営

なお、各コミュニティの上場日や提供するチケットは、今後fever運営とのすり合わせの上で決定する予定だ。

今田氏は、2018年の終わりまでに数百のコミュニティを上場させたいと話す一方で、ユーザーが購入するコインの対価となるサービスやプロダクトを当該コミュニティが本当に持ち合わせているのかなど、コミュニティの質をチェックしながら徐々に数を増やしていきたいと語る。

Asobica代表取締役の今田考哉氏

今田氏は学生時代、出身地の福井県を盛り上げたいとの思いから、現地で野外音楽フェスティバルの運営活動を行っていた。その活動は徐々に規模を増し、福井県では「最大規模」とも呼べるほどに成長したという。しかし、今田氏は4回目の野外フェスティバル運営で失敗し、学生にして約50万円の借金を背負うことになった。

その時、「応援しているよ」という支援の“声”と、実際の金銭的な支援のあいだには大きなギャップがあることを改めて実感したと今田氏は話す。

「その経験で資金調達の仕組みに興味をもつようになった。その結果たどり着いたのが『クラウドファンディング』だったが、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げる側は毎回ページを作り込む必要があるなど、ハードルが高い。一方で、支援する側には『応援はしたいけれど、その代わりに受け取る商品はいらない』という人もいる。支援の見返りとして受け取るコインを売買できるようにすれば、支援する人のモチベーションを高めることができるのではないかと考えた」(今田氏)

feverを運営するAsobicaは2017年9月の設立。これまで外部調達を行っていないが、同社初となる資金調達ラウンドに向けて準備を進めている最中だという。

悪用されたDMCAとは? 凍結されていた「艦これ」公式Twitterが復活

人気ゲーム「艦隊これくしょん -艦これ-」のTwitter公式アカウントが2月22日に一時凍結される騒ぎがあった。夜8時45分時点では復活しているが、130万人以上のフォロワーを持つ巨大アカウントだけにユーザーから注目が集まった。

HTTPS://TWITTER.COM/KANCOLLE_STAFF

「艦これ」の運営サイドは同日夕に、艦これの開発/運営公式ツイッターアカウント(@KanColle_STAFF)について、「Twitter社に連続の虚偽通告があり、DMCA著作権侵害ということで、同アカウントを本日運用できない状態になりました」と発表した

公式アカウントが使っているアイコン画像について、偽名の第三者が「自分が描いたものだ」と主張してきたと説明している。運営側は「DMMさん、KADOKAWAさんと協力しつつ、必要な対応にあたってまいります」としている。

このDMCAとは、アメリカのデジタルミレニアム著作権法のこと。そもそもは自分の著作権が侵害されたときに、TwitterやGoogleなどに「削除」を申請する仕組みだ。今回はその仕組みが悪用されたと、運営側はみている。

DMCAが悪用されたら…

DMCA制度に詳しい検索エンジンの専門家、辻正浩さんはハフポスト日本版の取材に対し、「悪質ないたずらとしか思えない」と話した。

辻さんは、本来問題がないサイトなのに、DMCAの申し立てをされた結果、そのサイトがGoogleの検索結果などから「消される」という事態は、ほかにも起きていると指摘する。

DMCAは、申請があった場合ひとまず対処し、異議申し立てがあれば改めて精査する、という仕組みになっている。最終的には「誤解が解ける」としても、そこにはどうしてもタイムラグが発生する。

辻さんは「一時的にでも、企業の公式アカウントが差し止められるような事態になれば、社会的な悪影響は非常に大きい。イタズラだとすれば大変悪質だ」と憂慮する。

こうしたDMCAの悪用に、対抗する方法はあるのだろうか?

辻さんは「DMCAが悪意に弱い仕組みであることは事実です。DMCAの申し立ては大量に来るため、毎回、詳細に審査することは難しい」と指摘する。

だが、いまのところDMCAの仕組みが劇的に変わることはなさそうだという。

そのうえで、解決に向けては2つのアプローチがあるとした。

ひとつは、TwitterやGoogleなどが技術的な対処を向上させること。Googleは機械学習を使って、おかしなDMCA申し立てを自動的に却下する仕組みを設けており、近年その精度を上げてきている。ただ現時点では、そういった高度な技術がある企業ばかりではないという。

もうひとつは、ネットユーザーのモラルを高めることだという。

法的処分も…

TwitterはDMCAについて、虚偽や悪意による報告は「法的処分の対象となり、経済的不利益を被ることになります」と警告する。ただ、こうした枠組みが正常に機能するためには、一人一人のユーザーの良識も必要だ。

HuffPost Japanからの転載。

日産とDeNAが次世代交通サービス「Easy Ride」の実証実験へ、無人運転車両を活用

日産自動車とディー・エヌ・エー(DeNA)は2月23日、無人運転車両を活用した交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を3月5日から開始することを明らかにした。一般モニター約300組が参加する予定だ。

「いつでも誰でも、好きな場所から行きたい場所へ、もっと自由な移動を実現する交通サービス」をテーマに掲げるEasy Ride。今回の実験では、モニターが自動運転技術を搭載した実験車両に乗車。日産グローバル本社から横浜ワールドポーターズまでの合計約4.5Kmのコースを往復運行する。

Easy Rideでは目的地をモバイルアプリで設定するが、行きたい場所を直接指定する以外の手段も実現。「やりたいこと」をテキストや音声で入力し、表示されたおすすめの候補地から選ぶこともできるという。

乗車中にも走行ルート周辺のおすすめスポット、最新のイベント情報など約500件の情報を車載タブレットに表示。店舗で使えるクーポンを40件用意するなど、従来とは違う新しい乗車体験を提供していく。

また安心して乗車できるように、走行中の車両の状態をリアルタイムで把握できる遠隔管制センターを設置。両社の先進技術を合わせたシステムによる遠隔管制のテストも実施する。

両社では実証実験終了後に無人運転環境でのサービスの検討や運行ルートの拡充、有人車両との混合交通下での最適な車両配備ロジックや乗降フローの確立、多言語対応などの検証を進める方針。

限定された環境から始めて、2020年代早期には本格的なサービス提供を目指すとしている。

DeNAがライブ配信の「Mirrativ」を分割、プロデューサーの赤川隼一氏が新会社で運営

DeNAは2月22日、同社が運営するスマホ画面共有型ライブ配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」を簡易吸収分割によりエモモに承継することを決議、吸収分割契約を締結したことを明らかにした。実施日(効力発生日)は2018年3月30日を予定しているという。

承継先のエモモは2018年2月9日の設立で、代表取締役社長を務めるのは赤川隼一氏だ(赤川氏が100%の株を所有)。同氏は以前DeNAの執行役員社長室長を務めていた人物で、その後プロデューサーとしてMirrativを立ち上げた。

DeNAは会社分割の対価としてエモモより8億6000万円を受領する予定。またエモモでは今後、本件の効力発生日までに第三者割当増資を実施する予定だという。

Mirrativは「ひとりじゃないスマホライフを」をコンセプトに、2015年8月からスタート。スマホでライブ配信ができるサービス自体は数多くあるものの、数タップで「スマホの画面ごと」配信できるのがユニークな点だ。

スキームこそ違うが、DeNAではこれまでもSHOWROOMみんなのウェディングを分割してきた。Mirrativについてもここまで着実に成長していて、今後さらなる成長を目指し今回の分割契約に至ったようだ。

またDeNAからの発表とは別にMirrativの公式Tumblrでも本件について言及されている。DeNAの公式の発表では特に記載はなかったが、エモモは3月下旬に株式会社ミラティブに商号を変更する予定のようだ。

「ミラティブは3月30日より、株式会社エモモ(3月下旬に株式会社ミラティブに商号変更予定)による運営となり、各ストアでの提供元表記も順次変更されます。

株式会社エモモ(3月下旬に株式会社ミラティブに商号変更予定)は、ミラティブ運営のために設立された新会社です。ユーザの皆さんと共にさらに楽しく進化していくミラティブの今後にご期待ください」

なおTumblrの投稿では同サービスの活動レポートとして、ユーザーの利用動向についても紹介されている。

 

ストリーミングがダウンロードに肉薄、2017年の年間音楽配信売上

Spotify、Apple Music、LINE MUSIC、AWA、Amazon Music Unlimited、Google Play Music…。あげだすとキリがないのでこのあたりでやめておくが、ここ数年で音楽ストリーミングサービスについての話題は事欠くことがない。

2月21日に日本レコード協会が発表した2017年の年間音楽配信売上に関するデータも、まさにそれを反映している。

発表によると2017年年間の音楽配信売上実績は、数量で1億4571万ダウンロード(対前年比92%)、金額で573億円(対前年比108%)と4年連続で成長。特に近年ストリーミングの売り上げが伸びてきていて、2017年はダウンロードと肩を並べる規模になっている。

売上金額ベース(2017年1月〜12月の累計)でダウンロードが270億9700万円、ストリーミングが263億300万円。わずか約7億円の差だ。

この勢いだと2018年はストリーミングがダウンロードの売り上げを超えた、なんてこともありうるかもしれない。

AOKIがビジネスウェアの定額レンタルサービスを4月から開始、専門スタッフがコーディネート

suitsboxのFacebookページより

ここ最近、専門家がユーザーに合わせてオーダーメイドしたものを、定期購入や月額レンタルといったサプスクリプションモデルで提供するプロダクトが増えてきている。

中でも盛り上がっているのがファッションの分野だろうか。定額制のファッションレンタルサービスとして、2015年2月にリリースされた「airCloset(エアークローゼット)」は会員数15万人を突破。運営元のエアークローゼットは累計で2桁億円の資金調達をしている。

近いものではストライプインターナショナルの「メチャカリ」があるほか、レンタルではないがスタートトゥデイもZOZOTOWN内の新サービスとして「おまかせ定期便」を始めたばかりだ。

この流れは何もカジュアルウェアに限った話ではない。4月30日にリリースされる予定の「suitsbox」はビジネスウェアの定額制レンタルサービス。開発しているのは「スーツのAOKI」でおなじみのAOKIだ。

suitsboxは同社がこれまで蓄積してきたビジネスウェアのサイジングデータと独自のロジックを活用し、申し込み時のQ&Aで最適なサイズを分析。ユーザーの要望に合わせてスタイリストがコーディネートしたスーツ・シャツ・ネクタイをセットで提供するというサービスだ。

2018年2月の時点で提供可能な商品サイズは、身長160cm〜180cm、ウェスト74cm〜90cmの範囲。
「お試しライトコース(月額7800円)」「スタンダードコース(月額1万5800円)」「アドバンスドコース+(月額2万4800円)」という3つのコースを設けている。

到着した商品が好みに合わなかった場合、月に1回無料で交換が可能。交換や返却時のクリーニングは不要だ。1ヵ月に何度も交換できる借り放題サービスもオプションで用意するという。

suitsboxは4名の若手社員が中心となって立ち上げた新規プロジェクトで、昨年Makuakeでクラウンドファンティングにも挑戦し、話題を集めた(目標金額の223%の達成)。

今後は季節に応じたビジネスウェアに加えてカジュアルウェア、パーティーウェア・コーディネートアイテムの全てを体験できるようなサービスに拡張していく方針。まずはビジネスウェア市場の活性化とユーザー数1万人を目指していくという。

家を留守にする猫の飼い主が助け合うアプリ「nyatching」、猫の日にリリース

ペットを飼っていると困ってしまうのが、出張や旅行で自宅を何日間か留守にするとき。可愛いペットたちに餌をあげなくてはならないし、トイレシートも変えなければならない。散歩につれて行く必要もある。

でも、ペットシッターを雇えば1回あたり数千円の料金がかかるし、ペットホテルは環境の変化によるペットへの負担が心配だ。上京したての人などは特に、家を留守にする間にペットを預けられる友人や家族がいないこともしばしばだ。

本日サービスローンチを発表した「nyatching(ニャッチング)」は、そんなときに重宝できそうなサービス。その運営元であるnyans(ニャンズ)は2月22日、同サービスの事前登録の受付を開始すると発表した。

nyatchingは、猫の飼い主同士をつなげるマッチングサービスだ。ユーザーは自身と飼い猫のプロフィールを登録し、近所に住む飼い主仲間を検索する。気になる相手がいれば、Facebookの“友だち申請”にあたる「マーキングボタン」を押す。両方がマーキングすれば、マッチが成立してメッセージのやり取りをすることができる。実際に会ってみてお互いの信頼が築けたら、家を留守にしなければならないときなどに助け合うきっかけになる。

nyansは飼い主同士のマッチングアプリだが、考え方によってはペットシッター専門のクラウドソーシングと捉えることもできる。しかし、nyans代表取締役の谷口紗喜子氏は、飼い主が他のユーザーにペットの世話を頼むときに仲介手数料を頂くことはまったく考えていないと話す。「『お金をもらえるから』という理由で飼い主に使われるサービスを作りたくなかったからです」(谷口氏)。

その代わり、nyansはサービス運営で集めたデータを活用してマネタイズをする。谷口氏によれば、日本のペットフード業界は飽和状態であり、ペットフードを販売する各社は高付加価値のペットフード販売へと舵をとりつつあるという。高付加価値製品のマーケティングによく使われるのがサンプリング。nyansはここに目をつけた。

「ペットフード会社は、アルバイトを雇ってスーパーに配置するなどの方法でサンプルを提供しています。業界への聞き込みをした結果、ペットフード業界が潜在顧客に対して直接サンプルを提供する手段がないことが分かりました」(谷口氏)

先ほど述べた通り、nyatchingのユーザーは登録時に猫と自分自身のプロフィールを登録する。そこには、現在与えているペットフードは何か、どんな病院に通っているのか、飼い猫の種類と年齢などの情報が含まれる。これらは他のユーザーのペットの世話を引き受けるときに必要な情報でもあるから、ごく自然なかたちでnyatchingに集まるデータだ。

nyansはそれらのデータを利用して、将来的にnyatchingをペットフード会社向けのマーケティング・プラットフォームとして開放することでマネタイズを図る。それに加えて、同社は保険会社と共同で、ペットの世話を頼むときの“万が一”に備える短期保険の販売も行うという。

この将来の展望まで聞いてみると、「お金を稼ぐことが目的で使うサービスを作りたくなかった」という谷口氏の言葉に非常に納得がいった。サンプルマーケティングの場としてプラットフォームを開放するのであれば、そこには本当の猫好きが集まっている必要がある。お金を受け取れるから世話をしてあげる人ではなく、猫が好きだから世話をする人を集めることが重要になるのだ。

nyansは2017年11月の設立。同社のビジョンは「ペットの殺処分ゼロの世界」を目指すことだと谷口氏は話す。そのため、今後nyansは今回リリースしたnyatching以外にもさまざまなサービスをリリースしていくという。なお、彼らは現在シードラウンドでのファイナンスに向けて準備を進めている最中だ。

そうだ、最後に1つ。谷口氏を取材していたとき、ものの数分で彼女が“真の猫好き”なのだと分かった。谷口氏は福岡県に在住しているから今回の取材はビデオチャットだったのだけれど、彼女は猫の話をするとき、目を輝かせ画面に向かって身を乗り出すように話をする。なにより、サービスローンチは2月22日(ニャンニャンニャン)、猫の日だ。

自分が本当に好きなことをビジネスにすることの重要性は、いたるところで目にしたり、聞いたりする。でも、今回の取材で改めてそれを実感した。

旅先のアクティビティやレストランを検索できる「Liigo」が本日ローンチ

2017年はインバウンド需要が盛況な年となった。観光庁によれば、訪日外国人観光客の人数は2869万人となり過去最高を記録したほか、訪日観光客による消費総額は4兆4161億円と、こちらも過去最高額を更新している。

そんななか、日本では訪日観光客をターゲットにしたサービスが次々に誕生し、インバウンド業界はまさに群雄割拠の様相を呈している。本日サービスローンチを発表した「Liigo(リーゴ)」も、そのインバウンド業界に誕生した新しいサービスの1つだ。

リーゴが提供する旅行情報の検索サービスLiigoは、提携するパートナー企業から提供された旅行先のツアーやアクティビティ、レストランなどの情報を検索できるサービス。リクルート傘下の「Indeed」がさまざまな求人サイトを網羅して検索できるように、Liigoはインバウンド向けの情報をまるっと検索できるサービスと言っていいかもしれない。

リリース時点においてリーゴと提携を結ぶ企業は合計9社で、日本のアクティビティ情報を紹介する「アクティビティジャパン」やツアー予約サイトの「VELTRA(ヴェルトラ)」などがその例だ。

リーゴ代表取締役の宮本秀範氏は、「情報を1つにまとめて同じフォーマットのなかに入れることで、通常はあまり見られることのない地方の観光情報にもスポットライトを当てたい」と話す。

Liigoは現在、日本語、英語、中国語(簡体字、繁体字)に対応している。ただ、実際にサイトを訪れてみると、言語を英語に指定しても中国語のコンテンツがトップに表示されてしまうこともある。この辺りは改善が必要だろう。

ところで、宮本氏は学生時代に企業からのスポンサーを受けて世界一周旅行をしたという変わった経歴の持ち主だ。大学在学中、世界中の大学で日本語を学ぶ外国人から話を聞くことで“外側から見た日本”を調査する「世界一志友プロジェクト」を創設。外国への進出を目指す企業を中心に14社から協賛を得たという。

「異文化とのふれあいが自分の人生を変えた」と語る宮本氏は、その文化交流の“入口”とも言える観光領域でビジネスを行うべく、2017年2月にリーゴを創業した。これまで外部調達はまだ行っていない。同社は今後、サービスに決済機能も導入することで、Liigoだけで検索から体験までの一連の流れが完結するモデルを目指すという。

「就活相談のるので、偉くなったらビール1杯ご馳走して下さい」――OB・OG訪問サービス「Matcher」が資金調達

OB・OG訪問を行いたい学生と社会人をつなげるサービス「Matcher」を提供するMatcherは2月20日、DGインキュベーションクルーズベンチャーズベンチャーユナイテッド、およびユーザーローカル代表取締役の伊藤将雄氏のほか個人投資家1名を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は5300万円だ。

Matcherのメンバー。写真左より2番目が代表取締役の西川晃平氏

自分と同じ大学を卒業した社会人の先輩から、仕事の内容や社内の雰囲気を聞くOB・OG訪問。Matcherはそのプロセスを簡単にするだけなく、ボランティア精神で成り立つOB・OG訪問にギブアンドテイクの仕組みを加えたサービスだ。

学生がOB・OG訪問をしようとする場合、大学のキャリアセンターに行き、卒業生の個人情報が記載された紙の台帳を頼りにアポイントメントを取っていくという流れが一般的だ。ただ、この従来のシステムには2つの問題がある。

1つは、紙の台帳なので情報の更新頻度が低いことだ。例えば、記載されている電話番号が現在使われていなかったり、肝心の訪問相手がすでに転職してしまっていることもある。

2つ目の問題は、その紙の台帳には卒業生のデータしか記載されていないという点だ。大学が自校の卒業生の個人情報しか集められないのは当然といえば当然ではある。でも考えてみれば、それはOB・OG訪問という既存のシステムが抱える問題なのであって、学生にとっては訪問相手が母校の卒業生であるかどうかはあまり重要ではないのかもしれない。

訪問相手がたまたま人事の決定権を持っていて、いわゆる“コネ”が期待できるというのは極めて特殊なケースだと思うし、結局のところ、まずは会社の中の人と会って話しを聞くことこそが学生たちの目的ではないだろうか。

OB・OG訪問時に感じた不満が創業のきっかけ

Matcher代表取締役の西川晃平氏も、これらの問題を身を持って体感した学生の1人だった。就活生だった当時、西川氏は大手広告代理店への就職を志望していた。そこで西川氏はOB・OG訪問を行うためにキャリアセンターを訪れた。

西川氏がキャリアセンターで渡された紙の台帳をめくってみると、彼が志望する企業に勤めている先輩はたったの2人しかいなかった。仕方なくその2人に連絡をとってみたが、連絡先の情報が古いためか、結局彼らから連絡が返ってくることはなかったという。

この経験がきっかけで後にMatcherを創業した西川氏は、同サービスを通してこの2つの問題を解決しようとした。まず、WebサービスのMatcherは紙の台帳と比較して情報の新鮮度は高くなる。また、Matcherは特に出身校ごとに縛りを設けていないため、学生は自分の大学の出身者以外にもアプローチすることが可能だ。

ギブアンドテイクの仕組みを取り入れる

ただ、ここで1つ疑問が生まれる。Matcherに登録する社会人ユーザーのモチベーションとは何だろうか。

母校の後輩と面談する通常のOB・OG訪問の場合、社会人側のモチベーションは恐らく、自分の後輩だから面倒をみてあげたいという美徳と、彼らにちょっとだけ先輩風を吹かしたいという欲のどちらかだ(僕だったら後者)。でも、出身大学に縛りを設けていないMatcherではそのモチベーションが働くことはない。

そのため、Matcherでは社会人ユーザーがプロフィール欄に「就職相談にのるので、〇〇してくれませんか?」というコメントを載せることができる仕組みになっている。ギブアンドテイクの仕組みを取り入れて、社会人ユーザーのモチベーションを増やそうという試みだ。

そういったお願いには「インターンにチャレンジしませんか?」といった採用目的のものもあれば、「将来偉くなったらビール1杯ご馳走してくれませんか?」といったユニークなお願いもあるそうだ。

もちろん、社会人ユーザーのなかには人事部に所属していて、学生発掘の目的のためにMatcherを利用している人もいる。ただ、その割合は全体の30%ほどで、残りの70%はボランティア目的の登録だという。

また、社会人ユーザーを増やす試みは、このギブアンドテイクの仕組みだけではない。西川氏は“未来の社会人ユーザー”となり得る学生ユーザーの満足度を高めることが重要だという。

「現在、就職をした学生ユーザーがそのまま社会人ユーザーとしてサービスに残る率は20%ほど。学生ユーザー時のマッチング回数が高ければ高いほど、その“転換率”も高くなるという傾向がある」と西川氏は話す。当面はこの転換率を30%まで高めることが目標だという。

西川氏によれば、現在Matcherに登録する学生ユーザーは2万4000人で、一方の社会人ユーザー数は6000人だという。その6000人が所属する企業の合計数は2000社だ。

ダイレクト・リクルーティング機能でマネタイズ

MatcherはこうしたOB・OG訪問サービスを無料で開放する一方、企業向けの「スカウト機能」でマネタイズを図っている。これは、企業がMatcherに登録する学生ユーザーを直接スカウトできる機能で、利用料金は1面談あたり1万円〜だ。現時点での導入企業数は約100社で、新卒採用予定のITベンチャー企業がその大半を占めるという。

今回のラウンドで5300万円を調達したMatcherは今後、ユーザー体験向上のためのサービス開発、営業・運用サポート体制の拡充を行うほか、マネタイズの軸を増やすための新規事業および新機能の開発に注力していくという。

Matcherは2015年11月の創業。2017年1月には金額非公開の資金調達ラウンドを実施している

熊本電力が仮想通貨マイニングに参入、太陽光の余剰発電など活用

eng-logo-2015熊本県の新電力会社 熊本電力 が、仮想通貨マイニング事業への参入を発表しました。太陽光の余剰発電などを活用し、1kwhあたり10円台の安価な電力を採掘に利用できるとしています。

熊本電力は、太陽光発電所の建設・運用を担うTake Energy Corporation傘下の新電力会社です。電力自由化に伴い、主に九州・関東地方で電力の売買業務などを行っています。

仮想通貨マイニング事業への参入にあたり、関連会社のOZ(オズ)マイニングを設立。熊本電力の安価なエネルギー供給によるデータセンター型、およびコンテナ型のマイニング施設を構築し、顧客に販売するとのこと。また、複数マイナーが協力して採掘するクラウドマイニングシステムの販売にも取り組むとしています。

モルガン・スタンレーのレポートによると、仮想通貨マイニングによる電力消費は、2018年に世界全体の総消費電力の0.6%に達する公算があるとのこと。これは、アルゼンチン1国の総消費電力に匹敵します。

九州地区は太陽光発電が盛んなことでも知られており、九州電力管区では2017年5月に、昼の総電力需要の7割を太陽光がまかなったことでも話題となりました。一方で、太陽光発電所が増加し続けると昼間だけが過剰発電となるため、既存の発電所が出力調整に追われることになります。調整がうまくいかない場合は停電になることもあり、これを避けるために太陽光発電所への出力抑制が検討されています。

しかし、それではせっかく発電したエネルギーを有効活用しきれない点が問題となっています。熊本電力によると、仮想通貨マイニング事業は、これら自然エネルギーの過剰発電問題の解消にも繋がるとのことです。

見出しの写真は熊本電力親会社のTake Energy Corporationが運営するメガソーラー「水増ソーラーパーク」。写真は同社HPより

Engadget 日本版からの転載。

DMM.comがアダルト事業を分社化、上場の可能性は否定

仮想通貨から英会話までさまざまなビジネスを展開するDMM.com。同社は2月21日、これまで同社が展開してきたアダルト事業を2018年3月1日をもって分社化すると発表した。当該事業は、2017年12月26日付けで設立された新会社デジタルコマースに承継される。

分社化にいたった背景としてDMM.comは、「2018年には、グループ創立20年となり、企業として節目となる年を迎えるにあたり、グループ全体の企業価値の最大化を目的に、この度、成人向け事業の分社化を決定致しました」と述べている。

石川県のレンタルビデオ屋として開業したDMM.comは、2000年代からさまざまな事業へとビジネスの幅を広げてきた。近年ではスタートアップの買収にも積極的で、2017年にはクラウドストレージ「POOL」のピックアップや、音楽アプリ「nana」の開発を行うnana musicなどを買収してきた。なかでも話題になったのが、DMM.comによるCASHの買収劇だ。サービスを開始してから2ヶ月弱のスタートアップを70億円で買収するという、同社のスピーディーな買収手腕に注目が集まった。

そのDMM.comが、1990年代初頭から手がけてきたアダルト事業を分社化した。DMM.comグループ傘下の社名やサービス名には、「DMM〇〇」といったような“冠つき”のものが多い。そんななか、アダルト事業を承継する新会社には「デジタルコマース」という、一見するだけではDMM.comグループだと分からない社名がつけられている。そのことからも、同社が分社化によって企業イメージの変更を狙っているようにも見える。

そうなると気になるのが、DMM.comグループの上場だ。DMM.comのリクルートページには、2017年2月期の売上高が1823億円(ただしこれは分社化する以前の数字)とあることからも、同社が上場するだけの実力を備えた企業であることは確かだ。

TechCrunch Japanの取材に対し、DMM.comは「現時点で上場の予定はなく、今回の分社化は事業構造を明確化させるため」(広報部)と、現段階での上場の可能性を否定している。

アンバサダーマーケティングのアジャイルメディア・ネットワークがマザーズ上場へ

商品やブランドのファンである消費者「アンバサダー」を活用したマーケティングサービスなどを提供するアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)は2月21日、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場が承認されたと発表した。上場予定日は3月28日で、証券コードは6573。

AMNでは上場にともない、7万株を公募し、5万4000株を売り出す。売出株を放出するのはモバイル・インターネットキャピタルが運営するMICイノベーション3号ファンド(3万6700株)、MICイノベーション4号ファンド(1万5300株)、および同社の監査役を以前務めていた御手洗大祐氏(2000株)。オーバーアロットメントによる売出しは1万8600株。

公募・売出し価格の仮条件の決定は3月7日、ブック・ビルディング期間は3月9日から3月15日までで、公開価格決定日は3月16日。主幹事証券会社はみずほ証券となっている。

AMNの2015年12月期の売上高は4億9861万円、経常利益は3286万円。2016年12月期の売上高は5億5467万円、経常利益は2090万円で、純利益は1123万円だった。

AMNは2007年2月の設立。ブロガーのネットワークを築き、ステルスマーケティングへの課題意識を発信するなど、現在のインフルエンサーマーケティングの礎となる活動を行ってきた。その後、SNSの発展にともない、「ブランドや製品の熱心なファン」であるアンバサダーを重視したマーケティングプログラムの運営を開始。アンバサダーの効果測定や分析を行うサービスなど、関連サービスも提供している。現在代表を務めるのは取締役社長の上田怜史氏。

ネットショップ作成サービス「BASE」CMに香取慎吾さんが出演へ

この数年、一般ユーザー向けアプリを中心に、グノシーやメルカリといったスタートアップもテレビCMを流すようになってきている。今日発表があったのは、ネットショップ作成サービス「BASE」初のCM放映。3月3日(土)からスタートするCMに出演するのは、「新しい地図」の香取慎吾さんだ。全国のものづくりをする方々を支援したいとする運営のBASEが、絵画やオブジェの制作などでも活躍する同氏を起用した。

新しい地図からはこれまでにも、スマホ・PCで荷物の管理までできる格安収納サービス「サマリーポケット」のテレビCMに稲垣吾郎さんが出演、翻訳デバイス「ili」のイメージキャラクターに草彅剛さんが就任するなど、スタートアップのプロダクトのイメージキャラクターとして起用が続いている。

以前はネットでの露出がなかった3人だが、Abema TVの盛り上がりもあったし、IT系スタートアップの「新しさ」や「Disrupt(破壊)」、「民主化」といったイメージとも相性がよいと考えられているのかもしれない。

「グノシー」でライブ動画番組が2月24日スタート、クイズとエンタメトークから

2018年1月にライブ動画の配信を開始すると発表していたGunosyが、情報キュレーションアプリ「グノシー」で配信する初回コンテンツの内容を発表した。

今回発表された動画コンテンツは以下の2つだ。

  • グノシーQ : トリビアクイズで連続したら賞金を山分け。配信時間は毎日21:30から。
  • ウワサTV : 話題のネットニュースについて掘り下げるエンタメトーク番組。配信は毎週水曜日の21:30から。

「グノシーQ」の初回配信は2月24日、「ウワサTV」は3月7日から配信される。

これらのライブ動画は、Gunosyが企画段階から参画し、レシピ動画サービスの「DELISH KITCHEN」を手がけるエブリーと共同で制作した。同コンテンツの特徴としてGunosyは、「ユーザー参加型のインタラクティブ性」としている。グノシーQではタレントも起用する予定だ。

Gunosyは、このライブ動画サービスによって「ユーザーのサービス体験をさらに向上させ、ユーザーが求める情報が届くプラットフォームの構築を目指す」と述べている。

今後同社は、グノシーに加えて、ニュースアプリの「ニュースパス」や女性向け情報アプリ「LUCRA(ルクラ)」でも同様にライブ動画の配信を開始していく予定だ。

Zaifが「0円売買」不具合について謝罪と報告

仮想通貨取引所「Zaif」を運営するテックビューロは2月16日に発生していた同取引所の不具合について20日、経緯の説明と謝罪を行った。

問題が発生したのは、2月16日17時40分ごろから58分ごろの間。Zaifが提供する「簡単売買」サービス上で、ビットコインおよびモナーコインを0円で売買できる状態になっていた。また、この時間帯にあるユーザーが21億BTC(約2200兆円相当)を0円で購入、そのうちの20億BTCを売り注文に出したことで、板情報にビットコインの発行上限枚数の2100万BTCを超える、異常な数値が表示されることとなった。

このユーザー“麺屋銀次”氏は「0円の表示を見つけ、決済できないだろうと思って試したところ、購入できてしまった。また購入したBTCを買えないように指値で販売してみたところ、こちらも注文できてしまった。Zaifにはすぐメールで報告した」とYouTubeで述べている。

テックビューロでは、問題の原因について「簡単売買の価格計算システムに異常が生じ、ウェブシステム側で0円でも売買できてしまうという不具合が重なり、7名のお客様が0円で仮想通貨を購入してしまった。一部のお客様が0円で購入した仮想通貨を取引所で売り注文に出されたため、取引板に異常な数値が表示された」と説明している。

不具合に対しては、問題の発生時点から対応を開始し、修正を実施。現在は正常に稼働しているという。0円で購入された売買については、システムの異常によるものとして、訂正扱いとし、対象ユーザーの残高データについても修正を実施した。

テックビューロによれば、不具合の対象となった顧客は7名で、そのうち6名との対応を完了、1名と継続対応中、他の顧客には影響はない、という。

仮想通貨取引所にまつわるトラブルでは、1月26日にコインチェックで580億円分のNEM不正流出が起き、大きな話題となっている。

「金曜の夜はDAUが3倍」、完全審査制マッチングアプリ『イヴイヴ』が1.1億円調達

恋人探しのマッチングアプリ「イヴイヴ」を提供するMarketDriveは2月21日、名称非公開の法人1社と個人2名の既存投資家計3名を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は1億1000万円だ。

海外生まれの「Tinder」、エウレカが提供する「Pairs」、サイバーエージェントグループの「タップル誕生」、ネットマーケティングの「Omiai」など、ここ数年でマッチングアプリが以前にも増して市民権を得てきたように思う。

MarketDriveの「イヴイヴ」もそんなマッチングアプリの1つだ。同サービスは、人の目による審査を通過してはじめてアプリが利用できるという「完全審査制」を特徴としており、特に女性ユーザー向けに“安心・安全”というメリットを打ち出している。また、ユーザーが任意で本人確認書類を提出することにより、プロフィール欄に「本人確認済み」を表すマークをつけ、マッチ率アップを促すなどの施策も行っている。

イヴイヴならではの独自の機能もある。Market Drive代表取締役の伊藤太氏は、「恋愛は2人でやるものではなく、第三者と相談しながら進めるものだ」と話していて、その言葉を反映するような“サポーター機能”というものがある。これは、アプリ内に常駐するキャラクターにチャットで恋愛相談ができるという機能。チャット対応はMarket Drive社員が5名体制で行っているそうだ。「マッチして初めての会話では何を話せばいいの?」だとか、「マッチ率を上げるには?」などの質問があるという。

実はマッチングアプリには“ゴールデンタイム”とも言える時間帯がある。それは金曜日の夜だ。そこに特化した機能もある。イヴイヴでは毎週金曜日の21〜24時限定で、今すぐにトークできる人だけを探せる「プチ恋機能」を用意している。なんと、プチ恋機能の時間帯は通常と比べ、DAUベースで2〜3倍のトラフィックがあるという。「プチ恋の時間帯にトラフィックの集中でサーバーがダウンした」(伊藤氏)なんていうエピソードもある。華金、恐るべし。

イヴイヴのダウンロード数は現時点で約30万ダウンロード。ユーザーの性別の比率は女性が35%、男性が65%だという。Market Driveは今回調達した資金を利用して、自社で運営するYouTubeチャンネルを中心としたプロモーションの強化を行うとしている。

Market Driveの創業は2016年7月。2017年12月の1億6000万円に続き、今回のラウンドが同社にとって4度目の外部調達となる。累計調達金額は3億7000万円だ。

なお、Market Driveは、これまでに行った計4回の資金調達ラウンドにおけるバリュエーションを今回の取材ですべて開示した。

  • 2016年8月の第1回ラウンド: Post Money Valuation = 3億円で3000万円調達
  • 2017年4月の第2回ラウンド: Pre Money Valuation = 8億円で6400万円調達
  • 2017年12月の第3回ラウンド: Pre Money Valuation = 18億円で1億6500万円調達
  • 2018年2月の第4回ラウンド: pre Money Valuation = 40億円で1億1000万円調達

スタートアップが過去のラウンドにまでさかのぼってバリュエーションを開示することは非常にめずらしい。なお、同社はこれらすべてのラウンドにおいて、ベンチャーファイナンスで利用されることが多い優先株式ではなく、普通株式を発行することで資金を調達しているという。

「若き研究者よ、今こそ立ち上がれ」社員1人のバイオベンチャーJiksak、ALSなくす挑戦へ1.9億円を調達

「患者さんの本や研究をきっかけに、ALSという病気が想像以上に辛い病気だと知った。発症原因についていくつか仮説はあるものの、正しいものがつかめていない状況で治療方法も見つかっていない。自分の研究をこの病気の解決に繋げられないかと考えた」—— Jiksak Bioengineering代表取締役CEOの川田治良氏は、ALSをなくすチャレンジを始めたきっかけをそのように話す。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は進行とともに随意筋のコントロールを失っていく病気。意識がはっきりしているのに、手足を動かしたり声を出したりできなくなってしまう。数年前にソーシャルメディアで大きな話題を集めた「アイス・バケツ・チャレンジ」で、ALSを知った人も多いのではないだろうか。

この難病を「独自の細胞培養技術」を通じてなくそうとしているのが、Jiksak Bioengineeringだ。同社は2月21日、ベンチャーキャピタルのANRI、大原薬品工業、エッセンシャルファーマ、メディフューチャーを引受先とした第三者割当増資と助成金を合わせて、総額1.9億円を調達したことを明らかにした。

今後は組織体制を強化し、これまで研究開発を重ねてきた製品を実際に販売するフェーズに入っていくという。

人体と同じような神経組織を作製し、試験の成功確度をあげる

同社が取り組むのは「人工的に人体と同じような神経組織を作製することで、ALSなどの治療薬を見つけ出す」ということだ。ポイントとなるのは、いかに体内に近い環境を試験官の中につくりだせるか。それが試験の成功確度をあげることにも直接つながる。

同社ではマイクロ流体デバイスの仕組みと、iPS細胞をもとに三次元構造を有する細胞組織(Nerve Organoid / ナーブオルガノイド)を形成。それを数センチ程度のマイクロチップに詰め込んで販売する。これはOrgan on a chip(日本語では人工臓器チップと訳されるそう)とよばれる技術で、アメリカでは非常に注目を集めているそうだ。

では実際のところJiksak Bioengineeringの技術は従来と何が違うのか。最大の特徴は「細胞核と軸索(体の導線のような役割を果たすもの)をわけて培養できる」ことにあるという。

川田氏によると、そもそも体内の運動神経は軸索が伸びて束になっているそう。この状態に近いシチュエーションを作りだすための「軸索を長く伸ばして、束ねる技術」が同社独自のものだ。

これはJiksak Bioengineeringが作る細胞組織の写真で、中央の黒い部分が細胞核、そしてそこからにょろっとでているのが軸索だ。一般的な技術で作られたものではこの2つがここまで明確に区分できず「ミックスされている」状態なのだそう。混ざってしまっている状態では軸索部分だけを切り出して、分析や実験をすることができなかった。

「(軸索だけを切り出すことができれば)軸索の中にだけ存在するものを評価できるようになる。たとえば健常者とALS患者のiPS細胞からオルガノイドを作った際に、軸索を切り出すことで『軸索の中で何か悪いことが起きているのかどうか』を確認できる」(川田氏)

川田氏によると、実はALSやパーキンソン病に関する論文の中には「軸索の中で問題が起きているのではないか」と主張しているものも多いそう。Jiksakの技術ならば、この仮説に対してきちんとアプローチができるようになる。

このように人体に近い環境を作れることで2つのメリットがあるという。1つは試験の成功確度があがること。そしてもう1つは基礎研究の段階から、人体に近い組織で実験ができるようになることだ。

従来の試験方法では、バイオ細胞→動物→治験(人間)という対象順に研究を行う。ただ川田氏によると「人間と動物、人間とバイオ細胞は全然違うもののため、人間とは異なる2つの環境で条件をクリアしたとしても(最終的に)うまくいかないケースも多い」そう。Jiksakのオルガノイドはこのプロセス自体も変えられうるという。

自分みたいなやつでも、スタートアップできる

せっかくなので川田氏のことも少し紹介しておきたい。同氏は東大の生産技術研究所でマイクロ流体デバイスを用いた細胞培養や、iPS細胞の研究に従事。博士課程でハーバード大学に行ったのち、帰国後は再び東大に戻った。

もちろんそのまま大学で研究を続けるという選択肢もあったのだろうが「この技術を確立して少しでも早く産業界に展開したい」という気持ちが強かったそう。研究の傍ら、外部の人と合う中でANRIの鮫島昌弘氏と出会い、出資を受けられる目処が立った。同時期にNEDOSUI採択案件(研究開発型ベンチャー支援事業)にも選出。ある意味「東大のポストを捨てる」ような形で、2017年2月に起業した。

2018年2月に鮫島氏が社外取締役に就任したが、今でも社員は川田氏1人だけ。今回の資金調達も研究開発と並行して「周りからは相当ディスられながらも1人でやった」(川田氏)そうだ。

「大学で研究することももちろん価値があることだけれど(その研究を事業として)社会に生かしていくくことも大切。ポスドク(博士後研究員)の中には、今後自分の研究をどう進めていくか悩んでいる人も多い。今はアカデミアの領域以外にもチャレンジできる場所があり、自分みたいな人間でも起業して資金調達をしながら事業を進めていける環境だ。起業という選択肢があってもいいし、博士号をとったような人材が(ビジネスの現場に)でてくると、日本のバイオベンチャーもさらに盛り上がる」(川田氏)

創業時に川田氏が使っていたラボ。当時はFabcafeの一室でやっていたという。ちなみにこの部屋は鮫島氏が見つけてきたもの。「彼との二人三脚は弊社の根幹だった」(川田氏)

たとえばアメリカでは著名なVCであるAndreessen Horowitzが人工臓器チップの可能性について言及するなど、この分野に注目する投資家も多い。累計で5900万ドルを集めているEmulateのようなスタートアップも生まれている。

一方で日本はバイオベンチャーが少ないため(川田氏は起業家自体がそもそも少ないという)、そこに投資をするVCも限られている。資金調達を進める中で、専門知識がある事業会社の担当者の反応が良い一方、VCの反応がイマイチなどギャップに苦しんだこともあったそうだ。

それでも1人で必要な軍資金を集めた川田氏。これまでは研究開発がメインだったが、今後はいよいよ次のフェーズに入っていくという。

まず開発したチップを製薬企業や大学の研究者などに販売をしていく(チップを単体で売るのではなく、細胞を入れた状態で販売)ほか、製薬企業とは個別に共同研究契約を提携。各企業のニーズに合わせてオーダーメイドのような形で技術・製品を提供していく方針だ。

また現時点で詳細は明かせないということだが、軸索束を使った再生医療製品の開発にも取り組むという。

「これからは人材採用も進めて組織体制を強化しつつ、販売するチップを大量に生産できる『神経工場』のようなものを作る。チップの販売や共同研究、自社での再生医療製品の開発も合わせて、ALSをはじめとする難病をなくすチャレンジを続けていきたい」(川田氏)