マニュアル作成サービス「Teachme Biz」運営が9000万円を調達、シリーズB調達額は3.3億円に

スタディストは、写真や説明文を追加するだけで簡単に業務マニュアルが作成できるクラウド型マニュアル作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz」を提供している。本日スタディストは記者会見を開催し、総額約9000万円の資金調達を発表した。引受先はちばぎんキャピタル、横浜キャピタル、三井住友海上キャピタルだ。同時に千葉銀行と四国銀行との業務提携も発表している。

スタディストは、2017年5月9日にSalesforce Venturesから、続く6月26日に総額1.2億円をリクルートホールディングス、日本ベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルから調達した。今回の発表を含め、2017年内に実施した3回の資金調達の総額は3.3億円になったとスタディストは説明している。

Teachme Bizの導入企業は1500社以上になり、32.6%は地方のユーザー、とスタディストの代表取締役を務める鈴木悟史氏は話す。スタディストでは今後さらに地方の企業にリーチしていき、全国展開を進めるという。今回、地方銀行と業務提携を実施した目的は、地方企業との接点を持つためだ。千葉銀行と四国銀行との業務提携では、両行が地元企業に対してTeachme Bizを紹介するビジネスマッチングを実施するという。

また、海外展開も進める計画だ。すでにマレーシアでは現地資本の回転寿司店での導入事例もあるという。海外展開の戦略について鈴木氏は、まずASEANに進出する日本企業にTeachme Bizを訴求していき、その後ベトナムやインドネシアなどでもサービスを広めていきたいと話す。

Teachme Bizの開発面では、単にマニュアルの電子化ツールに留まらず、「業務を動かすプラットフォーム」になるための機能を追加すると鈴木氏は説明する。Teachme Bizではすでに管理者がマニュアルと共に、特定のユーザーにタスクを配信できる機能を実装した。

この「タスク配信機能」では、従業員がマニュアルを開封したかどうかや、タスクを処理したかどうかといった進捗も確認することが可能だ。この機能で例えば、チェーン展開する本社の担当者は、各店舗の担当者に陳列のマニュアルとタスクをTeachme Bizで配信し、現場に行かずとも各店舗の進捗を確認できるようになる。

今後、タスクが完了するまでにかかった時間や成果を撮影した写真をアップロードする機能なども提供予定だ。タスクとマニュアルの両方を必要な人に配信することで、職場がより効率的に作業を実施できるようにしたいと鈴木氏は話している。

楽天が米スタートアップと組んで、ドローン空域管制プラットフォーム「楽天AirMap」をローンチ

空港の管制官は、航空機が他の機体などに接近、衝突しないようパイロットに指示を出し、空の安全を守っている。楽天AirMapでは、ドローンの飛行においても空港の管制官と同じように空の安全を守るためのシステムを提供したい考えだ。本日楽天AirMapは、ドローンが安全に飛行するためのUTM(無人航空機管制)プラットフォームの提供を開始した。

AirMapは2014年12月にカルフォルニアで設立した会社で、ドローンの空域管理ソリューションを提供している。2017年3月、AirMapは楽天と合弁で楽天AirMapを設立し、今回日本でのサービス提供に至った。

AirMapは米国でドローン操縦者や関連事業者、開発者向けにいくつかサービスを展開している。ドローン操縦者には空域の飛行要件を確認し、安全な飛行ルートを計画するためのアプリを提供している。

空間管理者ダッシュボードのイメージ

 

土地を所有・管理する自治体や大学、空港などの空域管理者向けには、管轄内のドローンの飛行状況を把握できるダッシュボードを開発している。空域管理者はこのダッシュボードからドローンの飛行を承認したり、ドローンの運行者にSMSや電話で直接連絡することが可能だという。現在125カ所以上の空港および空域管理者が、AirMapの空域管理者向けツールを利用していると楽天AirMapは説明している。

また、ドローンメーカーやアプリ開発者向けにはUTMプラットフォームのAPIやSDKを用意している。

今回楽天AirMapでは、まずドローンメーカーやアプリ開発者向けの機能を提供していくという。ドローン開発者はこれらのAPIで飛行禁止や制限エリアといった情報の取得やフライトプランの作成、フライト中のアラートの受信、フライトログの生成の機能を活用できるようになる。今後、ドローン操縦者や空域管理者向けにサービスを広げていく計画、と楽天AirMapは説明している。

2014年12月に設立したAirMapは、2015年7月のシードラウンドで260万ドル、2016年4月のシリーズAで1500万ドルを調達した。2017年2月、2600万ドルを調達したシリーズBラウンドではMicrosoft Venturesをリードインベスターを務め、楽天やソニーなども参加している。

楽天出身・出張手配サービスのAIトラベルが4000万円を資金調達、法人向けサービスも開始

出張が決まったとき、地図アプリ、乗換案内や航空会社サイトの時刻表、ホテルや航空券の予約サイトなどを駆使してプランを決め、交通手段を確保し、最適な場所と価格のホテルを予約するのは、楽しいという人もいるかもしれないが、なかなか手間がかかることは間違いない。「AI Travel」は、国内外への出張時に、出発地と目的地、行き帰りの日時と、大体の宿泊予算を入力するだけで、AIが最適なホテル・飛行機・新幹線を調べてくれて、そのまま予約までできる出張手配・予約・管理サービスだ。

このサービスを提供するAIトラベルは8月23日、旅費の申請・精算機能や、部門やプロジェクトごとの経費の一元管理・分析機能を追加した、AI Travelの法人向けサービスの提供を発表、申し込み受付を開始した。法人向けサービスでは、海外出張時のビザの手配代行やリスク管理のサポート、主要な会計ソフトへのデータ入力などにも対応するという。AIトラベルは法人サービスでは、出張者の手配効率の向上だけでなく、総務・経理の業務の自動化・効率化による管理コストの削減、出張経費の可視化も図れる。「TechCrunch Tokyo 2016」のスタートアップバトルでファイナリストにも選ばれている

また同日、AIトラベルはプレシリーズAラウンドとして、ジェネシアベンチャーズベンチャーユナイテッド、TLMを引受先とした総額約4000万円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。

サービス開始当初から、出張の多いビジネスマンにとっての利便性もうっていたAI Travel。だが実際にユーザーへのヒアリングを進めていくと、「予約のプロセスが楽になっても、出張者の多くは(会社のルール上の)申請フローにおける雑務に対してまだ不満を強く持っているということが分かってきた」(AIトラベル代表取締役の藤原由翼氏)という。また同時に、出張者を管理する総務・経理部門にも課題感があった。

「上司からは業務効率の改善やコスト削減を依頼され、現場からは面倒なプロセスに対する不満が出たり、出張報告書の依頼や経費精算に関するやりとりでのストレスなどがあったりする。もっと効率的にできるはず…と思っても最適なサービスが分からないという意見が多かった」(藤原氏)

実際藤原氏が法人向けの旅行サービスを調査したところ、観光向けサイトに多少の機能が追加されただけ、もしくは逆に多大なコストのかかる大規模なシステムしかなかったのだという。

「米国ではトラベルマネージャーという出張管理を専門とした役職があり、インハウスで雇っている例が多いことも分かりました。既存のプレイヤーのように旅行代理店として予約を増やすことを目的とせず、企業の出張を(まるで優秀なトラベルマネージャーがいるかのように)適切にマネジメントできるサービスを目指しています」(藤原氏)。トラベルマネージャーは、実際経費削減や業務改善といった観点まで含めて出張を管理する。AI Travelも単なる代理店機能でなく、そこまでの機能を提供したいという。すでに、月間50〜100件程度の出張が発生する会社を中心に試験的な導入も行っている。

AIトラベル代表の藤原氏は楽天出身で、インキュベイト・ファンドのデザインフェローを務めた後、2014年に起業した。今回の調達資金により、サービス開発と運営体制をより一層強化する、としている。

全ゲノムのサービスプラットフォーム「GENOMIC EXPLORER」が正式ローンチ、運営元は5000万円を調達

ゲノムスタートアップのAWAKENSは8月21日、総額約5000万円の資金調達を実施した。今回のエンジェルラウンドに参加したのは500 Startups Japan、エムスリー、日本医療機器開発機構、エンジェル投資家の鎌田富久氏、西野恒五郎氏(マーソ代表取締役)、北野 宏明氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長)、その他複数の個人投資家だ。

AWAKENSは2017年1月にサンフランシスコに設立し、コンシューマー向けの「GENOMIC EXPLORER」と法人向けの「GENOME LINK」の2つのサービスを準備している。GENOMIC EXPLORERは米国でベータ版を先行リリースしていて、米国時間8月22日に正式版をリリースした。日本では今年秋以降に提供を開始する予定だ。

コンシューマー向けのGENOMIC EXPLORERは自身の全ゲノムデータを見える化し、ゲノムデータの網羅的な解釈情報へのアクセスするためのサービスだ。

自身の全ゲノム情報を取得するにはGENOMIC EXPLORERで遺伝子検査キットを注文するか、あるいはすでに米国の遺伝子検査サービス23andMeAncestry.comを受けたことのあるユーザーはその検査結果をアップロードして利用することもできる。ただ、23andmeやAncestry.comの検査は全ゲノムの解析ではないので、一部のデータしか閲覧できない。

GENOMIC EXPLORERの特徴は全ゲノム配列の生データを見たり、世界中の論文から自分のゲノムのどこにどのような傾向が出ているか調べたりできる点だ。また、レポーティング機能では、自分が朝型か夜型なのかや体質的に不足しやすい栄養素、味覚、性格の傾向などを知ることができる。

現在、数万円で受けられる遺伝子検査は複数あるが、そうしたサービスはゲノムデータ全体の0.01%から0.03%程度の配列データでしか解析していないものが多く、遺伝子検査サービスごとに解析結果が異なることもあると共同ファウンダーでCEOを務める高野誠大氏は説明する。

GENOMIC EXPLORERでは、まずユーザーにとって信頼できる情報にアクセスできる場を提供し、ユーザーが自分のゲノムについて知りたいことを調べ、理解できるようにしたい考えだという。ただ、最終的にAWAKENSが目指しているのはゲノムのビジュアライズツールに留まらず、「ユーザーがそのデータを他のサービスで活用できるプラットフォームになること」と高野氏は説明する。

現状では、全ゲノムの遺伝子検査は十数万円程度かかるが、今後5年から10年でその費用は数万円台まで下がることが見込まれている。そうなれば、ほとんどの人が人生のどこかの時点で自身のゲノムデータを取得し、そのデータを例えば、医療、ヘルスケア、フィットネス、教育サービスなどで活用するようになると高野氏は考えている。それは例えば、ユーザーが自身のゲノムデータをフィットネスサービスと連携することで、より自分の体質や性格に合ったサービスを受けられるような世界だ。

AWAKENSではそうした未来の実現のために、ユーザーのゲノム情報を個別化サービスに連携するためのB2B事業GENOME LINKを準備している。GENOME LINKは日本で医療やフィットネスといった分野企業とのパートナーシップを進めていると高野氏は言う。

高野氏は前職で医療ベンチャーのエムスリーにおいてゲノムビジネスの新規事業に携わっていた。同社の共同ファウンダーでCOOを務める松田祐太氏もDeNAにて遺伝子検査MYCODEの立ち上げに携わっていたそうだ。全ゲノムデータを用いるサービスは彼らが週末プロジェクトとして始めたものだったが、投資家のサポートもあり起業に至ったのだという。

今回の調達した資金は主にサービス開発と法人パートナー企業との連携構築を進める計画と高野氏は話している。

日本では8月21日に遺伝子検査サービスなどを提供するジェネシスヘルスケアが楽天から総額14億円を調達したとTechCrunch Japanでも報じた。他にもDeNAライフサイエンスやユーグレナの完全子会社となることを発表したGenequestなどの遺伝子検査サービスがある。遺伝子検査が一般的になるほど、その先データをどのように活用するかが重要な部分になりそうだ。

「Android 8.0」は日本時間8月22日未明に正式発表、ライブ配信も実施

eng-logo-2015グーグルは、次期モバイルOS「Android O」(Android 8.0)をニューヨーク時間8月21日14時40分に正式発表します。約1世紀ぶりに北米大陸を横断する皆既日食にAndroid Oのイメージを合わせてきました。日本時間では8月22日の午前3時40分となります。

Android Oの新機能は、アプリ起動速度の短縮やバッテリー寿命の向上など。

注目の新機能は、コピー&ペーストの手間を大幅に軽減する「Copy-Less-Paste」。機械学習(AI)により、ユーザーがテキストを長押ししなくても、ダブルタップだけで最適な範囲を選択可能にします。さらに、選択したテキストや画像の内容に応じたコンテキストメニュー。例えば住所なら「Google Mapを開く」、メールアドレスなら「Gmailを開く」が表示されます。

さらにAndroid 7.0で刷新したマルチタスク機能をさらに強化。新たにピクチャーインピクチャーを追加し、動画を見ながらの作業も容易になります。

なおAndroid Oのコードネームは「Oreo」(オレオ)となることが濃厚です。その理由は、グーグルがSNSにアップロードした動画のファイル名が「GoogleOreo_Teaser_0817_noDroids (1).mp4」となっていたため。

Android O発表会はライブストリーミングも実施予定。こちらのURLから視聴できます。

Engadget 日本版からの転載。

現場主義SFA「Senses」運営のマツリカが総額1.3億円を資金調達、中規模企業向け新プランも提供開始へ

クラウド型営業支援ツール「Senses」を提供するマツリカは8月21日、第三者割当増資による総額約1億3000万円の資金調達実施を発表した。引受先はDraper Nexus Venturesアーキタイプベンチャーズニッセイ・キャピタルの3社。

Draper Nexus Venturesとアーキタイプベンチャーズは、2016年4月のシードラウンドでも約5000万円をマツリカに出資済み。今回の出資に伴い、Draper Nexus VenturesのManaging Directorで、セールスフォースベンチャーズの元日本投資責任者を務めていた倉林陽氏が社外取締役に就任する。倉林氏はテラスカイSansanなどへの投資実績も持つ人物だ。

現場営業の目線にこだわって作ったSFA「Senses」

マツリカは2015年4月の設立。共同代表を務める黒佐英司氏は「NewsPicks」でおなじみのユーザベースで、経済情報検索サービス「SPEEDA」の販促・保守、営業・マーケティング戦略の立案・執行を担当していた。もう1人の共同代表である飯作供史氏も、ユーザベースで技術統括執行役員としてプロダクト運営、製品開発に携わっていた。

黒佐氏は、マツリカで営業支援ツールを手がけることにしたきっかけについて、こう話す。「ユーザベースにいた当時、上場準備に伴って営業やマーケティングの人員が増える中、SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)ツールを入れたいということで導入を検討したが、既存のツールではしっくり来なかった。何がかというと、現場にメリットがない点だ。管理者にとってはメリットがあるのだが、現場の営業担当にとっては『入力させられる』ツールになっている。BtoBツールとはいえ、実際に使うユーザーに価値が届いていないのは、もったいないなと感じていた」(黒佐氏)

そうして開発されたのが、クラウド型SFA/CRMツール、Sensesだ。案件や顧客の管理、レポーティング機能など、既存のSFA/CRMツールが持つ基本的な機能に加えて、「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」と黒佐氏は言う。「これまでのツールとの違いはまず、入力しやすく使いやすい、という点。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanとの連携機能があって、メールやカレンダーなどの情報を自動で取り込めるので、入力の手間を省き、簡単に情報をためることができる。UI/UXについても、3〜4クリックを費やしていたところを1〜2クリックで操作できるようにするなど、画面にとことんこだわった」(黒佐氏)

また「たまった情報を記録するだけでなく、活用できるようにした」点も、現場目線を重視した結果だと黒佐氏は続ける。「AIを使った情報解析で、担当者に次の行動を提案する機能を搭載した。過去の案件から似たような例で成功した行動をサジェストしてくれる」(黒佐氏)

Sensesは、2016年4月にサービスを公開し、2017年初からはより本格的にサービスを展開。現在、有料の基本プランとして「スタータープラン」を1ユーザーあたり月額5000円で提供し、利用企業数は100社に届く勢いだという。そしてマツリカでは今回の資金調達と同時に、中規模以上の企業を対象にしたアップグレードプランとして、「Growthプラン」の提供を発表している。

Growthプランでは、AIでのデータ解析機能を強化。現場担当者の次の行動をアシストするスタータープランの機能に加え、部門全体での売上や成約数などの目標達成に対するアラートを通知するなど、経営管理サイドのニーズにも応える機能を準備しているそうだ。また、営業担当が一定数以上となる中規模企業を想定し、営業組織の階層化にも対応する予定だという。

Growthプランは、まずは2017年内にベータ版として提供を開始。2018年には本格展開を行う予定だ。黒佐氏は「今後、スタータープランに代わる主力サービスに育てていきたい」と述べている。

「SMB向けのSFAとして競合と戦っていく」

今回の資金調達の目的について、黒佐氏は「まずは開発に投資する。現在開発中のGrowthプランを仕上げていくことと、既存ユーザーが増える中、新規機能だけでなく、サービスの安定運用に向けてもリソースを割いていく」と話している。また、営業、マーケティングの強化も図る考えだ。「2017年初のサービスの本格展開から半年以上を経て、販売のサイクルが整ってきた。どの程度マーケティングに(費用)投下すれば、どのぐらい成果が上がる、というのが見えてきたので、いよいよ拡販体制に入り、成長速度を上げていく」(黒佐氏)

なお、中規模企業向けとしてGrowthプランの提供を予定してはいるものの、黒佐氏は「今後の競合サービスとの戦い方としては『SMB(中小企業)向けのSFAならSenses』とまず思い浮かぶようなサービスにしたい」とも語っている。「今までならSFAといえばSalesforceしか選択肢がなく、小規模の企業では導入をためらっていたかもしれない。そこでSensesを第一の選択肢として考えてもらえるようにしたい」(黒佐氏)

また、中期的には「グローバル展開も考えている」と黒佐氏は言う。「SFAは国によって違うというところがあまりなく、ローカライズもそれほど要らないので、英語化して販売することも検討している」(黒佐氏)。さらに、営業支援ツールとしてのSensesを、人事や広報部門向けにチューニングすることで、新サービスラインアップとして提供する構想もあるという。社員や採用候補者、あるいはパブリックリレーションを図るメディアなどを、社内外の“顧客”と見立ててアプローチすることを考えれば、当然の発想かもしれない。「実際、Sensesの顧客の中に、既に人事・広報部門で利用しているケースがある。意図しない使い方を、ユーザーが見つけてくれている形だ。実はマツリカでも、新規営業開拓と既存顧客管理のほかに、採用や広報でSensesを使っている。自分たちでもナレッジをためたところで、プロダクトとして出したいと考えている」(黒佐氏)

筑波大発、水中ドローンの空間知能化研究所が1.9億円を資金調達

テレビのバラエティー番組やYouTubeの動画などでも、今や日常的に目にする飛行型ドローンの空撮映像。国土交通省が建設・土木の生産性向上を目指してICTの活用を進める取り組み「i-Construction」の中でも、ドローンを使った測量作業のマニュアルや安全基準が用意され、建築・土木の現場など、業務での活用も盛んになってきた。

一方、水中撮影や調査はまだあまり手軽といえる状況ではない。GoProなどを使った映像も見かけるが、業務用途では主にダイバーや潜水士による有人撮影が行われている。さらに40メートルを超える深さになると、遠隔無人探査機(ROV)と呼ばれる機材が使われるが、ROVは操作が難しく高価なのが難点だ。とはいえ、近年ダムや港湾などで、水中インフラの維持・管理、高寿命化のニーズは高まっていて、より手軽に、安価で水中を撮影・調査する方法が求められている。

筑波大学発のベンチャー、空間知能化研究所の水中ドローンは、そうしたニーズに応えるべく、開発が進められている。日本では初の水中ドローン専業メーカーである空間知能化研究所は、8月21日、Beyond Next Ventures三井住友海上キャピタルおよびSMBCベンチャーキャピタルが運用するファンド、フリービットインベストメントを引受先とする、総額1億9000万円の資金調達の実施を発表した。調達により、資本金の合計は2億2180万円(資本準備金を含む)となる。

空間知能化研究所の設立は2014年6月。メカ・回路・組込みソフトウェアを一気通貫で開発する技術バックグラウンドを持つ、筑波大学出身の伊藤昌平氏を代表取締役に、またセンサー、クラウドシステムの専門家で筑波大学教授の中内靖氏を取締役会長として、共同で設立した企業だ。

空間知能化研究所が現在開発を進める、業務用の水中ドローン「SPIDER」は、母船上から電源を供給して操作していた従来のROVと比べて、小型・軽量でバッテリー駆動式。電源供給が不要な分、ケーブルを細くすることができ、取り回しやすくなっている。特別な専用コントローラーは不要で、PCとゲームパッドがあれば操作ができる。また、搭載された8つのスラスターで深度・姿勢を自動維持する機能や、画像処理による機体の位置保持機能を実装予定で、潮流などがある程度強い海でも映像撮影がより簡単に実現できるという。

SPIDERの潜行性能は300メートル。ダムや近海でのインフラ整備に必要な深度は十分にクリアしながら、従来のROVを利用した場合にかかる導入コストや運用コストを数分の1に削減できる、と空間知能化研究所では説明している。2017年11月にはSPIDERのレンタルを開始。レンタル費用は、1日あたり20万円程度となる予定だ。また2018年春には、機材自体の販売も予定している。

空間知能化研究所では今回の調達資金で、SPIDERの開発と製品化を進めるという。また、現在は市場ニーズの高い潜行性能300mのドローン開発に専念しているが、将来的には深海の探査にも使えるような製品開発を行いたいという。「構造的には1000メートルの水深にも耐えられる設計となっており、相模湾での実証実験では水深350メートルの潜行実績がある。今まであまり見られたことがなかった水中の撮影・探査が手軽にできる取り組みとして、まずはSPIDERを試しに気軽に利用してみてほしい。SPIDERのレンタル、製品化で一歩一歩、水中ドローン普及・開発のための実績を重ねていきたい」(空間知能化研究所)

楽天、遺伝子検査サービスのジェネシスヘルスケアに14億円出資

遺伝子検査サービスなどを提供するジェネシスヘルスケアは8月21日、楽天を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額14億円を調達したと発表した。これにより楽天CEOの三木谷浩史が同社の社外取締役に就任する。

ジェネシスヘルスケアは今回調達した資金をシステム・研究開発、広告活動、人材開発・育成の強化などに充当するとしている。

約3万円の費用で360項目の疾患リスクを判定

ジェネシアヘルスケアは、個人向けの遺伝子検査キットを販売するほか、法人向けの遺伝子検査サービス、医療機関向けの生活習慣リスク判定サービス、「Genebank」というDNA保存サービス(万一の際の身元確認などに利用)などを展開している。

同社が2017年8月1日にリリースしたばかりのプロダクトが、遺伝子検査キットの「GeneLife Genesis2.0」だ。価格は2万9800円。360の検査項目でユーザーがもつ疾患リスクや身体的特徴を判定する。

具体的には、生活習慣病や心筋梗塞などの疾患リスク、シミやシワが出来やすいなど肌のタイプ、自分の体質に適したダイエット方法などを知ることが可能だ。

検査結果はGenesis2.0の専用アプリ(iOS/Android)で見ることができる。

ジェネシスヘルスケアによる遺伝子の累計解析回数はこれまでに50万回以上。同社は遺伝子解析サービスの提供を通じて約52万人分の遺伝情報データを保有している(2017年8月現在)。

今回の出資に際し、楽天CEOの三木谷氏はプレスリリースのなかで、「日本が抱える医療費削減や健康意識向上などに向けた課題解決には、ジェネシスヘルスケアの遺伝子解析のような未来技術を活用し、社会にセルフメディケーションの概念を浸透させていくことが必要」だとコメントしている。

ジェネシスヘルスケアは2004年の設立。外資系投資銀行に勤務していた佐藤バラン伊里氏が、夫のデビット・バラン氏とともに共同創業した。

ジェネシスヘルスケアと同様に遺伝子検査サービスを行う企業として、国内ではDeNAライフサイエンス、先日ユーグレナの完全子会社となることを発表したGenequestなどがある。

ジェネシスヘルスケアは2015年7月にも資金調達を実施。同ラウンドに参加した投資家は三井物産Founders Fundで、総額6億2000万円を調達している。

建設業の『人』の100%有効活用めざす――職人の手配アプリ「助太刀くん」が5000万円調達

建設現場ではたらく職人を手配するアプリ「助太刀くん」を開発する東京ロケットは8月21日、リード投資家であるジェネシア・ベンチャーズKLab Venture Partnersから総額5000万円を調達したと発表した。

同社は調達した資金を利用して、エンジニアの採用を積極的に行い開発・運営体制の強化を図る。

助太刀くんは2017年9月にWeb版が先行リリースされる予定だ。

写真左より、COOの謝宣真氏、CEOの我妻陽一氏、CTOの金田悠一氏。

旧態依然とした建設業に注目

「2020年といえば?」と聞かれたら、東京オリンピックと答えるか、ドラマ「Doctor Who」でサイルリアンが覚醒する年だと答える人がほとんどだろう。

その東京オリンピックを控えた日本では今、建設需要が活発だ。

しかし同時によく聞くのが、建設業界の人手不足という問題。つい先日の7月14日には、建設業の「人手不足倒産」が高水準に達しているというニュースもあった。

東京ロケット代表の我妻陽一氏は、「建設業界で働く人の絶対数は足りていない。でも、今あるリソースを100%有効活用できていないのもたしか。助太刀くんは、そのためのアプリだ」と語る。

現状のリソースを100%有効活用できていないのは、この業界に古くから存在する「囲い込み」という慣習が原因だ。

我妻氏によれば、建設業界のいわゆる「元請け」は、繁忙期に必要な職人を確実に確保するために職人を囲い込み、他の元請けからの仕事の情報が職人に届きにくいような構造ができてしまっている。

これは、職人が契約上そのように縛られているということではない。職人は社員ではないが、社員集会のようなものを開いて「仲間意識」を高めるというような方法で囲い込みが行なわれているそうだ。

そんななか、職人が幅広い案件の情報にリーチできるようにすることを目的に生まれたのが助太刀くんだ。

2つの情報入力で簡単登録、案件がプッシュ通知で届く

助太刀くんの機能は大きく分けて2つある。建設現場の監督が職人を募集する機能と、職人が募集中の案件に応募する機能だ。

職人がアプリをダウンロードして自分の「職種」と「居住地」を入力するだけで、仕事の案件がプッシュ通知で届く仕組みだ。

また、助太刀くんには現場監督と職人がおたがいを評価するシステムや、請求書代行サービスなどの機能も備えている。

「建設業界では、基幹システムや現場管理のICT化は進んでいるが、最大のリソースである『人』に関わるシステムは昔から変わっていない。人や仕事を探すのは仲間からの紹介が頼りで、仕事の依頼は電話で連絡するのが通常だ」(我妻氏)

東京ロケット提供資料より

でも、そもそも高齢化が進む建設業界でスマホアプリなんかウケるのかと疑問に思うTechCrunch Japan読者もいることだろう。

それについて我妻氏は、「メインターゲットとなる20代から40代の職人は、建設業従事者全体の約55%ほどを占める。その年代のスマホ普及率は高い。また、最近では50代のスマホ普及率も約49%ほどにまで上がっている」と答えた。

また、アプリの離脱率を限りなく減らすために、「居住地」と「職種」の2つの情報を入力するだけで登録が完了するようにしたのだそう。

助太刀くんのマネタイズ方法は3つ。仕事の発注に対する課金、広告収入、そしてペイメントだ。

「当初は助太刀くんが請求書を送付し、発注者が職人に直接支払うというかたちだが、将来的にはエスクローやファクタリング機能を取り入れて、そこでもマネタイズしていく」と我妻氏は説明する。

我妻氏は東京ロケットを創業する以前、大手電気工事会社で現場監督として働いたあと、電気工事会社を11年経営した経験をもつ。

これは僕も取材して分かったことなのだけれど、建設業界は古くからの慣習や“しきたり”に溢れていて、複雑だ。その点、この業界に長年関わってきた我妻氏の知見は、東京ロケットがもつ強みの1つになるだろう。

日本の建設業は生産額が29.4兆円、就業者数が500万人の巨大マーケット。そして、このマーケットに狙いを定めたスタートアップも近年増えてきている。これまでにTechCrunch Japanで紹介したものだけでも、写真管理アプリの「Photoruction」、チャットアプリの「stacc」、施工管理アプリの「ANDPAD」などがある。

副業系サービスをまとめたカオスマップ(2017年版)が公開

副業したい人とスタートアップ企業のマッチングサービスである「シューマツワーカー」を運営する社食コレクションは8月18日、副業系サービスをまとめた「副業サービスマップ 2017」を公開した。

同社が副業系サービスのカオスマップを公開するのは今回がはじめて。

社食コレクションはプレスリリースのなかで、「総合型のクラウドソーシングのユーザーが順調に伸びているなか、特定のスキルを活かせるものや個人の資産をシェアできるサービスなども増加しており、副業の定義が多様化している」としている。

少子高齢化が進む日本では、労働人口は減る一方だ。2016年には約6650万人だった労働人口が、約50年後の2065年には4000万人弱となる(約40%減)という調査結果もある。

そんな状況下にある日本では、個人があまった時間に自分の知恵や知識を有効活用するという「副業系サービス」がこれからも増えていくのではないだろうか。

アンディ・ルービン氏のEssential Phoneは1週間以内に出荷開始。予約者へメールが届く

eng-logo-2015「Androidの父」として知られているアンディ・ルービン氏が、Google退社後に設立した企業 Essential。そのEssentialが5月末に発表したハイエンドスマートフォン Essential Phone(PH-1)が、一週間以内に発送されると予約者に対してメールを送信しています。

Androidの父が新スマホEssential PH-1発表。チタン&セラミックに狭額フル画面、拡張モジュール対応のハイエンド

このEssential Phone、発表直後には一か月以内に出荷予定とされていましたが、ようやく出荷の準備が整ったようです。ただし、今回出荷される本体色はBlack Moonのみ。
9to5Googleによると、予約を受け付けていたもう1つのカラーPure Whiteはさらに数週間かかるようで、こちらの予約者にはBlack Moonへの交換も可能と案内されています。

また、同時に特別価格で予約を受け付けていたオプションの360度カメラは今回含まれておらず、準備ができ次第あらためて連絡するとしています。

PH-1はルービン氏設立の企業からという点やその外観やなどから、発表時には大いに注目されたものの、7月上旬には幹部役員の退職が相次いて報じられるなど不穏なニュースも流れていました。

その反面、AmazonのAlexa Fundや中国Tencentから3億ドルの資金を調達、先日には製品出荷前にも関わらず企業価値として約12億ドルの評価を受けるなどのニュースも出ています。

実際の評価は端末次第ではありますが、その端末の情報も公式発表からは特にリークや噂なども出てきておらず、実際に手にしてみないと何とも言えないという状況です。

そのEssential Phoneの価格は$699(約7万7,000円)。公式サイトで販売されるほか、米キャリアではSprintが独占販売を行います。

また、以前にFinancial Timesが報じた内容によれば、日本、英国、欧州での販売も予定されているとのこと。ただし、米国外のキャリアでの取り扱いについてはしばらく後となり、年末に発表を行うとしています。
Engadget 日本版からの転載。

人気YouTuberのインサイダー騒動で揺れる「VALU」、運営元が対応策を発表

YouTuberヒカル氏のVALUページ

個人が株式会社のように自分の価値を「模擬株式」として発行し取引できるサービス「VALU」。2017年5月31日にベータ版が公開されたばかりのサービスだが、当初から様々な観点で話題を集めた。

SNSのフォロワー数や友達数をベースに自分自身の価値が「時価総額」という形で数値化される斬新なアイデアに加え、知名度がない個人がファンを募れる可能性を持つサービスであり、そこに配当や優待という仕組みを組み込んだ点はおもしろいという声が多かったように思う。一方でVALUの発行者が退会した場合にVALUの価値がなくなってしまうリスクや、いわゆるインサイダー取引のような形で悪用されうることなど具体的な懸念点も言及されていた。

そんな状況下において、8月16日人気YouTuberのヒカル氏ら複数のユーザーがまさにインサイダー取引のように思われる行動をとったことで大きな騒動となった。それを受けて17日、運営元のVALUが本件の対応策を発表している。

騒動の発端となったのは8月14日にYouTuberのヒカル氏、ラファエル氏、いっくん氏がTwitter上などでVALUを本格的に運用し始める旨の投稿を行ったこと。多くのファンの期待を集め価格が高騰していたが、翌日15日には3人の株式を保有する井川氏を含む4人が全株式を売りに出した。(ヒカル氏らはVAZが立ち上げた事務所NextStageに所属しており、井川氏はVAZの顧問を務める人物)

一連の行動があらかじめ計画した上で行われたようにも思われたため「インサイダー取引」や「詐欺」にあたるのではないかという批判が殺到。本人たちは期待感を煽って価格を釣り上げたことや、インサイダー取引を否定した上で「自社株買いを行います」と17日に報告した。

運営元のVALUもその意向を受けて利用者保護の観点から、現在の売買注文をすべてキャンセルする特別措置をとることを発表。一連の取引で発生した手数料収入については、VALUと同様のミッションを掲げる組織へ寄付するという(寄付先、寄付金額は現時点では未定)。また取引に関する新たなルール作りを進めていることも明かした。なお現時点では4人のページでは赤帯で「このアカウントの出金を停止しています。」と表示されている。

まだ新しいサービスなだけに当初から課題も多く言及されていたVALU。今回の騒動でも整備が追いついていない印象を受けたが、期待値も高いサービスなだけに今後の対応に注目したい。

キャッシュアウト、買収撤回、裏切り——ソウゾウ松本氏はどん底をどう乗り越えたのか

ソウゾウ代表取締役・メルカリ執行役員の松本龍祐氏

編集部注):起業家の成功談よりも、苦しい時期を乗り越えた話にこそ、重要な学びがあるのではないか。この記事では資金調達やプロダクトローンチのニュースではあまりフォーカスされない、起業家の経験を伝えていく。今回話を聞いたのは、現在ソウゾウ代表取締役・メルカリ執行役員を務める松本龍祐氏だ。松本氏はかつてソーシャルゲームやスマートフォンアプリを手がけるコミュニティファクトリーを立ち上げ、その代表を務めた人物。

コミュニティファクトリーは、2011年101月にリリースした無料写真加工アプリ「DECOPIC(デコピック)」がヒット。2012年9月にはヤフーが買収するに至った。いわゆるM&Aによるイグジットを果たしたわけだが、そこまでにはさまざまな苦労があった。どのようにして松本氏は苦労を乗り越えていったのか——これまでの歩みに迫る。

突如、追い出される……カフェ経営で味わった挫折

起業について最初から話をすると、2001〜2002年頃までさかのぼります。私は当時学生で起業し、都内でカフェをやっていました。当時はいわゆるカフェブーム。軽い気持ちでギャラリーを借りて、土日だけカフェにする、というイベントを友達と定期的に開催していました。

そうしているいうちに、知り合いから経営があまりうまくいっていないカフェのオーナーを紹介されて、実際に会ってみることにしました。その頃、飲食店経営の書籍も読んでいたこともあって、オーナーと話をする中で、「ここだったら坪単価、月10万円くらいの売上が欲しいですね」なんて本に載っていることをそのまま言ってみたら、どういうわけか「又貸しするよ」と言ってもらえたんです。

そのカフェはお世辞にもオシャレとは言えない内装だったので、内装も含めて普通にやれば上手くいくんじゃないかな、と思いました。とはいえ、飲食関係の人脈もなかったので、当時のガラケーのメーリングリストを使って知人や友人にいろんな人を紹介してもらいました。

オシャレな外国家電を個人輸入している人を紹介してもらったり、恵比寿のカフェで料理長やっていた人を紹介してもらったり——トントン拍子で良い人を紹介してもらうことができ、カフェの経営をスタートしました。

とは言え、フタを開けてみれば最初から自転車操業でした。家賃が月70万円くらいかかるのですが、貯金は20万円しかない。何かトラブルがあれば、すぐキャッシュアウトになるという状態でした。ですが、最初の月にはいろんな友達が貸切パーティーを開いてくれたりと支援してくれ、運転資金は少しずつですが積み上がっていました。

当時のことを振り返ると——自分が旗振りをして、決意を持って進めていけば、まわりの人がついてきてくれるんだなと思いました。これが今に続く起業の原体験になっています。

ただ、カフェの経営事態は結果的に失敗に終わりました。月70万円の家賃って、結構な額じゃないですか。当時、「もし何かあったら、逃げればいいかな」というズルい気持ちもあって、きちんと契約も結んでいなかったんです。そうしたら、黒字になってしばらく経った後、カフェから追い出されてしまいました。自分で購入したアンプやスピーカー、大きなポリバケツを抱えて、当時住んでいた家まで歩いて帰りました。これが最初の大きな挫折です。

SNSブームに乗って誕生した「コミュニティファクトリー」

追い出される前、カフェの経営はうまくいっていたので、まったく大学に行かず、辞めようと思っていました。ですが突如仕事がなくなったので、焦って大学に通い始めました(笑)。2004年のことだった思います。

ちょうど「GREE」に次いで「mixi」がサービスを開始するなど、ネットにはSNSブームが来ていました。そこで私は友達を招待しまくって、SNSでの発信を楽しんでいました。そんな中で“友達を10人紹介し、レポート書いたら1万円もらえる”というキャンペーンを実施している新たなSNSを友達から教えてもらいました。

自分でもレポートを書いてみたところ、どうやら一番細かい内容だったみたいで、中の人から「一緒に事業をやろうよ」と誘われて、社長とエンジニアに次ぐ、3人目のメンバーとしてジョインしました。この経験が、インターネットサービスを主体的に運営することになったポイントかもしれないですね。

その後、約1年ぐらい、GREEやmixiをライバル視しながら、SNSを作っていきました。結局その会社は現在の人人網(レンレン)に買収され、日本法人が解散になったタイミングで運営から抜けました。

また、目の前の仕事がなくなり、どうしようか……と思っていたのですが、2004年当時、SNSの企画を考えているような人はこの業界にもほとんどいませんでした。それで、自ら「プランナー」という肩書きで名刺を作り、ブログマーケティングやSNS利用の事例をまとめた冊子を作ったんです。それを持って、知り合いの広告代理店の人の営業に同行して、クライアントから「コミュニティサービスやりたいよね」と言われたら企画を提案する。そんなことをやっていました。

案件を受注できたら、知り合いのエンジニアやデザイナーに発注する。自分は営業、企画、ディレクターとして仕事を進めていきました。そうして、少しずつ実績を作っていったら、仕事の規模が大きくなっていきまして……。最終的に、ナショナルクライアントの仕事まで請け負うようになったんですね。取引上、さすがにここまで来たら会社にしてもらわないと困るということで、立ち上げたのがコミュニティファクトリーです。クライアントの代わりにコミュニティをつくるから、“コミュニティの工場”という意味で「コミュニティファクトリー」にしました。2005〜2006年(編集注:創業は2006年2月)くらいのことです。

コミュニティファクトリーのオフィスの一部

その頃はまだライブドア・ショックが起きる前。まだ企業内に「Web2.0」的な事業に費やす予算が残っている会社も多く、案件も想像以上に獲得できたこともあって、順調に会社も大きくなっていきました。

日本のメンバーが3人に増えた時に、前職での経験を生かして中国でのオフショア開発をやることになり、中国で3人のチームを作ってみたんです。今、考えると開発メンバーが日本に1人もいない段階で、中国にチームを作るのは相当無茶だったのですが。のちに日本に開発体制を戻したときに、横に人がいて開発が進むのは、かなりラクだと思いました(笑)

好調なスタートを切った学生向けSNS「LinNo」

中国を開発の拠点にして、日本と中国とを行き来する感じで働いていました。そうしたら、人人網がFacebookのクローンのようなSNSを開発し、大ヒットしたんです。「そのSNSを日本でも展開すればいい」という提案もあって、人人網の創業者・CEOのジョー・チェン(Joe Chen)から30万ドルを出資してもらい、体制を整え、開発を進めていき、大学生向けのSNSをつくりました。

人人網はローカルマーケティングが非常にうまくて、中国の大学内に学生組織をつくり、SNSのロゴを焼印で付けたチキンを配る代わりに、会員登録を促すというマーケティングをしていたんです。その手法でユーザー数をかなり伸ばしていました。

ただ、「日本の大学生はチキンじゃ釣られないかもな」とも思っていました。何が良いかいろいろと考えた結果、「日本は過去問だ」と思ったんです。テストの過去問を共有できる、ファイルアップロード機能を搭載したSNSにしました。それでビラをつくって、まずは慶應義塾大学の日吉キャンパスでテスト的に始めたら、全生徒1万2000人のうち4000人くらいが1週間で会員登録したんです。

そうした実績もあり、VCから出資を受けて「株式会社リンノ」を設立し、大学生向けのSNS「LinNo」の開発・運営をすることにしました。5人の学生を執行役員にしてマーケティングを行っていき、開発はコミュニティファクトリーに委託する。そんな感じのスキームでした。設立時に2億円の出資を受けたのは、当時(ローンチは2008年7月)としてはあまり例がなかったと思います。

執行役員が学生ということで、いろんな大学生が来てくれて、関東と関西を含めて30校近くの大学で支部が立ち上がりました。それぞれ学生から過去問を集めて、それをもとにしたマーケティングを実施していました。授業の評価ができる機能があったり、時間割を管理できたり、ガラケーでもPDFをFlash liteに変換して閲覧できる機能を作ったりして。大学生にとっては便利な機能だったんじゃないかと思います。当時は学生の売り手市場。最終的に企業の採用につながるようなビジネスモデルを考えていました。

ただ、LinNoを運営していく中で、過去問を共有するSNSだと、テスト期間が終わったら全く使われなくなることが分かりました。今考えれば当たり前です。とにかく、アクティビティが上がらない。そこでサービスを経常的に使うゲームやコンテンツがあったらいいんじゃないか、ということで、プラットフォーム化することにしたんです。ちょうどFacebookがオープン化し、オープンソーシャルの仕様が出たタイミングだったので、FacebookとオープンソーシャルのAPIに対応したプラットフォームを開発し、その上で内製で占いとかミニゲームなどをいくつか実装していました。

キャッシュアウトまで残り1カ月、消えた買収

ただ、リーマン・ショックが起こり、リンノに暗雲が立ち込み始めたんです。出資を受けた2億円は、1年間でマーケティング費用を中心に使い切る予定でした。計画は順調に進んでいて、次の増資を検討していた中での事でした。ほとんどのVCが新規投資自体をしなくなり、八方塞がりでした。そんな中、ジョー・チェンから「日本に進出しようと思っているから、お前の会社を買う」と言われ、助かったと思っていたのですが……。

キャッシュアウトまで、あと1カ月というタイミングで買収の話がなくなってしまったんです。今思えば買収話なんてそんなもので、アテにしていた自分が悪かったんですが。そこに追い討ちをかけるかのように、スタッフの学生が不祥事を起こして週刊誌の記者から電話が来るまでになりました。よくネットや漫画などで言われる「ガクブル」という状況はまさにこれか——そう思うまでになりました。そんな経験は初めてでした。

ただ、しっかりと話を聞いたら、(記者と学生)お互いに言い分があったようでした。その話を正直に記者に話して、何かあれば訴えてもらってもいいですと伝えたところ、「学生の不祥事に関しては記事にすることができない」と言われ、週刊誌沙汰になることはありませんでした。毅然とした態度をとった結果だったのかもしれません。ですが資金繰りが厳しい状態は変わらず、LinNo自体は縮小せざるを得なくなって、最大100人くらいいたインターン生も10人以下になりました。

これから先どうなっていくんだろうか——そんなこと漠然と考えているときに、エンジェル投資家から電話がかかってきました。もともと、小泉(メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏。当時はミクシィ取締役CFOだった)との知り合いだったみたいで、「いま小泉と飲んでるんだけど来ない?」と言われたんです。夜の23時くらいだったんですけど、二つ返事で「行きます」と答えました。

実際に行ってみたら、「mixiのオープン化を考えていて、ミクシィファンドの立ち上げを考えているんだけど興味ある?」と言われて、すぐに「めっちゃあります」と。そこで小泉から「じゃあ今度、原田(DeNA執行役員の原田明典氏。当時はミクシィ代表取締役副社長だった)にプレゼンしてみてよ」と言われたので、プレゼンのために2週間くらいの時間で開発できるソーシャルアプリ、ソーシャルゲームの開発を進めていきました。

そしてプレゼン当日、「これがダメだったら会社を畳むかもしれない」ということをメンバーに伝え、プレゼンに臨みました。プレゼン自体は良い評価をしてもらえて、ミクシィから出資を受ける話が進んでいきました。ただ、ミクシィも初めての投資案件だったので、実行までに3カ月くらい時間がかかりました。当時、資金もなかったので、オフィスも安いところに引っ越しましたし、親戚にお金を借りながら受託事業をやっていました。

ミクシィからの出資を受けるまでを振り返って、VCから大きな出資を受けて舞い上がっていたなと思います。ただ、毎月のP/Lを見るのは怖かったんですよ。1日P/Lを見る度に背筋を凍らせて、残りの30日は楽しく過ごしてたんですけど、それじゃダメですよね。

あとはPR施策の見込みの甘さもありましたね。普通は2回くらい外したときに抜本的に施策を見直さなければいけないんですけど、学校のテスト期間は年に2回しかないので、なかなか変えられずにいました。中国の成功事例を見すぎていたのも良くなかったですね。

ただ、良かったことはオープンソーシャルに可能性を見出して、無理やりにでも乗っかったことです。それがあったからこそ、ミクシィから出資をしてもらえたと思います。

「お前は裏切られているぞ」大ヒットサービスの誕生前夜の事件

その後結果的に、リンノの社長を退任することになりました。当時の出資先から「VCキャリアをかけて言うけれども、ソーシャルアプリは絶対来ない」と言われたのが記憶に残っています。それ以降はコミュニティファクトリー1本でやっていくことになりました。

mixiオープン化のローンチパートナーということで、受託以外にも自社でアプリを開発していました。それでローンチ時に数本アプリを出したのですが、そのうちの1本が、「わたしのドレイちゃん」というアプリでして……大炎上しました。ローンチから3時間くらいでクローズすることになってしまいました(編集注:このゲームはユーザーがマイミクシィ(mixi上の友人)を「ドレイ」として買い取り、ニックネームを付けて強制労働させてお金を得る、というコンセプトだった。これにインターネット上で批判が集まり、公開当日の閉鎖となった)。

その後もmixiアプリをいくつか出していたのですが、なかなかヒット作が出ず、苦労していました。そんな中、大ヒットしたのが、「みんなのケンテイ」でした(編集注:さまざまなテーマの「検定」や「診断」をクイズ感覚でプレイできるアプリ)。最大で800万ユーザーが登録していて、1日に20万ユーザーずつ増えていくというペースでした。

当時飲み屋に行ったら、隣の大学生グループ全員が一斉にみんなのケンテイで遊んでいて、それをネタに飲んでたんですよね。当たり前に定着している、という状況にめちゃめちゃ感動しました。多くの人に使われるサービスを作りたい、と強く思うようになりました。

実はまだ、この段階ではコミュニティファクトリーの開発拠点は中国にありました。これから頑張っていこうと思っていたら、突然、中国にいるエンジェル投資家から、「お前は裏切られてるぞ」と連絡がありました。一体、何のことだと思っていたら、少し前に辞めたばかりの、中国法人の元代表からその投資家に出資の相談があったということが分かりました。その人物は創業からのメンバーだったのですが、いろいろと話を聞いてみたら、社内の優秀なメンバーを引き抜いて新しい会社を作ろうとしていたんです。さらには「日本法人にも協力者がいる」と言っていたことも知りました。社内に裏切り者がいる——その事実だけが明らかになったんです。

誰が当事者かわからず、誰にも言えないまま1人で調査を進めていましたが、数ヶ月後、実際に社内に引き抜きを画策している人物が見つかり、最終的には証拠の書類を全部見せて、その人物には会社を辞めてもらいました。問題は解決したのですが、これがきっかけで中国法人はクローズせざるを得なくなりました。ただ、ソーシャルゲーム事業の成長スピードは想像以上で、日本の社員も増えているところだったので、致命的とならなかったのが幸運でした。みんなのケンテイを中心とした広告収益が徐々に積み上がってきたのですが、ソーシャルゲームで大きなヒットを生み出すことはできていませんでした。

心の声には従え——アプリDLは累計8000万件に

そして次のタイミングではソシャゲは捨てて、スマホアプリの開発に振り切る、という経営判断をしたんです。2011年の頭に、「1年後に収益の半分をスマホアプリから上げる」という目標を立てたんですが、6月くらいのタイミングで100%をスマホアプリに切り替えることに。もちろん最悪のシナリオも想定した上で、この判断と、それでも会社に残ってもらえるかという手紙を書き、社員の前で読み上げました。

手紙を読み切った後、それでも一緒にやっていきたい」と言ってくれたメンバーは、これまでの半分以下の9人でした。そのメンバーと開発し、1カ月後にリリースしたアプリこそが、コミュニティーファクトリーの今後を決めることになる「DECOPIC」だったんです。

2011年当時、「Path」というコミュニケーションアプリを見て、少人数の写真のコミュニケーションが良さそうだと思い、「Mix Snap」という写真のコミュニケーションアプリをリリースしました。ただ、そのアプリはmixiログイン(mixiのアカウントを利用したログイン)しかできない上に、Android版からリリースしたこともあって、結局2000件ほどしかダウンロードされませんでした。ただそこにも学びがありました。ユーザーを見てみると、7割くらいが台湾からのアクセスだったんです。それで、「写真ならもしかして海外でもサービスが通用するのではないか」と思いました。また、日本の「カワイイ」文化が海外でも受けていることは知っていたので、ピボットして作ったDECOPICは、最初からなんとなく「当たる」という感じがしていました。

決して最初から女性向けのアプリを作りたかった訳ではないです。単純に考えたら、獲得できるユーザーが半分(男女のうち女性のみで)になっちゃうわけですから。ただ、それ以上にアプリを当てたかった。だからこそ振り切った判断をしました。最初の数日、バイラルでユーザー数が一気に増えて、そこからは試行錯誤しつつサービスが伸びていきました。そこからはDECOPICだけでなく会社全体を女性向けアプリ事業にピボットして、どんどん女子向けアプリをリリースしました。DECOPICをローンチした半年後には出資やM&Aの話が来るようになり、その半年後にヤフーと買収の話をした、という感じですね。2012年9月にバイアウトしました。その後ヤフー時代も含めるとコミュニティファクトリーのアプリ群で累計8000万件を超えていたので、このチャレンジとピボットは成功したんじゃないかと思っています。

M&A前、最初は事業会社でシナジーのあるところから出資を受けたいと思っていました。そこでいくつかの事業会社さんを中心に、増資、買収のお話を進めていました。

元々ヤフーにも出資のお願いに行ったんですが、当時のヤフーは「爆速」をキーワードに経営体制が変わった直後のタイミングでした。CMOの村上さんとお話したんですがヤフーが面白そうで、1時間の面談後には、バイアウトすることを決めていました。

自分の中で、教訓として残っているのは、「これはやった方がいい」という心の声が聞こえたときに、やらなかったことはすごく後悔する、ということですね。もちろん、当時はやらない理由もあったのですが、心の声には従った方がいい。社内のリソースの問題やそれまでの経緯など、やらない理由はいくらでも挙げられるんです。でも、そこで無理でもやるかやらないかが経営者としての実力だと思います。自分の場合、ソシャゲのときは100%やりきれなかったけれど、スマホアプリの時には「やるべき」と思ったから、社内に誰もエンジニアが居ない状態から無理やり体制を作って、なんとかローンチまで漕ぎ着けました。その結果なんとか生き残れたんだと思います。

スタートアップ業界で前向きにやった失敗を責める人なんて居ないので、とにかくなんでも挑戦をしていってほしいと思います。

「セカイラボ」提供元のモンスター・ラボが7億円の資金調達、M&Aも実施し海外展開を加速

海外の開発チームに仕事を依頼できるオフショア開発サービス「セカイラボ」などを展開するモンスター・ラボは8月17日、YJキャピタルを含む複数の投資家による第三者割当増資により、約7億円を調達したことを明らかにした。

セカイラボを立ち上げてから4度目となる今回のラウンドに参加したのは、YJキャピタルのほか新生企業投資、山陰中央テレビ、Fenox Venture Capital、田部(島根県雲南市に本社を構える事業会社)および既存投資家だ。

モンスター・ラボは昨年11月に島根県のごうぎんキャピタル、りそなキャピタルなどから2.5億円の資金調達を実施しているほか、2015年11月にデジタルガレージとパソナテックから4億円、2014年8月にEast Ventures、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルなどから1.2億円を調達。今回調達した資金をもとに欧米企業からの受注拡大に加えて、日本企業が海外展開する際のサポートなどにもさらに力を入れていく。

モンスター・ラボはアジア、北米、欧州にそれぞれ開発拠点を持っているため、顧客はニーズに応じて最適なチームへ依頼できる点が同社のオフショア開発事業の特徴。世界の最適な場所、最適なチームにITサービス開発のプロセスをアウトソーシングできることから、同社では「グローバルソーシング」という打ち出し方をしている。

今月8日にはデンマークに本社を構えるアプリ開発会社Nodesを買収したことを発表。すでに事業展開していた北米とアジアに加え、今後は欧州でも事業を拡大していく予定だ。またこの買収によりモンスター・ラボは9ヶ国17都市に拠点を構えることとなった。

モンスター・ラボでは2019年を目処に、グループ全体の売り上げの約50%を海外市場から獲得することを目指していくという。

Kickstarter Japan、正式ローンチは9月13日と発表

2017年5月、TechCrunch Japanでクラウドファンディングサービスの先駆けであるKickstarterが年内にも日本でローンチを予定していると伝えたが、ついにローンチ日が決まったようだ。本日Kickstarterは、9月13日にKickstarter Japanを正式ローンチすると発表した。

Kickstarterは今朝、日本ローンチの予告ページにサインアップしたユーザーに対し、「Kickstarter Japan 公開のお知らせ」のメールを送付した。その中で、Kickstarter Japanは9月13日に公開すること、またクリエイターは日本の銀行口座・身分証明書を使ってプロジェクトが立ち上げられることを伝えている。

お待たせしました!2017年9月13日、Kickstarter Japanを公開します。

当日から、Kickstarterを日本語で使用できるようになります。また、クリエイターは日本の銀行口座・身分証明書を使って、プロジェクトを立ち上げることができるようになります。

Kickstaterでプロジェクトの立ち上げを検討しているクリエイターはKickstarterの登録ページから事前に詳細を伝えることができる。

 

オーガニック農作物を農家から直接買えるマーケットプレイス「食べチョク」、正式サービス開始

東京・根津に店舗を持ち、都内に宮崎県産の野菜をデリバリーするベジオベジコ、農家・生産者とレストランの直接取引を実現するプラネット・テーブルなど、テクノロジーで農作物の消費や流通のあり方を変えるスタートアップが続々生まれているが、今回紹介するのは、個人の消費者と農家をマッチングするサービスだ。ビビッドガーデンは8月17日、オーガニック農作物の生産者と消費者をマッチングするマーケットプレイス「食べチョク」を正式リリースした。

食べチョクは、同社が設定した基準を満たしたオーガニック農家が出品者となり、自らが手がける農作物を1箱から出品、販売できるサービス。ユーザーがサイト上から農作物を購入すると、中間業者を入れることなく農家がすぐに直送するというもの。農家の月間手数料は無料で、リスクなく参加できることから、問い合わせも増えているという。正式サービスローンチ時には計60のオーガニック農家が出品者として登録する。

「食べチョク」の仕組み

5月にベータ版としてサービスをオープン。ノンプロモーションながら、口コミを中心にユーザーを増やしているという。今回、ベータ版でのユーザーの声をもとにサイトを改修。出品する商品についても「BBQセット」「珍しい果物セット」といったように、ユーザーの用途に合わせたパッケージを農家と協力して作っているという。「ベータ版のユーザーからは、『おいしかったのでギフトとして友人に送りたい』『夏のBBQなど、イベントに向けて購入したい』という声が多くあったため、カテゴリで商品を探せるようにしている」(ビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈氏)。また、農作物に痛みや不備があった際の補償制度も用意。出品システムも改良し、農家の負担を削減しているという。

ビビッドガーデン代表の秋元氏の実家は、もともと農家を営んでいたが、市場出荷のみでのビジネスを継続することが難しく、現在では遊休農地となっているのだという。そこで、同じ悩みを抱える生産者の力になりたいという思いから、小規模農家の販路拡大を支援すべく食べチョクを立ち上げたと語る。

今後は正式リリースにあわせて、プロモーションも展開する。まずは二子玉川エリアを中心に、リアルイベントなども展開。年内にもユーザー数を数千人規模に、農家を100件規模に拡大することを目指す。「農家も数ではなく質を高めつつ、サービスを広げていく」(秋元氏)

「食べチョク」で取り扱う農作物について

チケット売買もビットコインで——コインチェックがチケットキャンプに対応

8月12日に単位価格が4000ドルを超えたビットコイン。そのビットコインを決済に使える場面が、また増える。ビットコイン決済サービス「Coincheck Payment」を提供するコインチェックは8月17日、ミクシィグループのフンザが運営する「チケットキャンプ」にCoincheck Paymentを導入。ライブやイベントなどのチケットを、ビットコイン決済で購入することができるようになった。日本のチケット業界では初のビットコイン決済対応となる。

チケットキャンプは利用者数500万人を超える、チケット売買のサービス。チケットキャンプでのビットコイン決済は全世界のビットコインウォレットに対応し、PCブラウザ、スマートフォンブラウザで利用できる。チケットキャンプのiOS/Androidアプリにも、今後対応していく予定だという。コインチェックが提供する「Coincheckウォレット」ではシステム上から直接決済が可能。またCoincheckウォレット以外のウォレットを利用する場合は、支払い時に表示されるQRコードを読み込むことで決済ができる。

コインチェックでは、これまでにもCoincheck Paymentを国内外へ提供してきた。現在、Coincheck Paymentで決済可能なサービスには、DMM.comの各サービスや、寄付金の受付電気料金の支払いなどがある。7月にはAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にも導入され、メガネスーパーなどでビットコイン決済対応を開始している。

コインチェックは2012年の設立。2014年8月から仮想通貨取引所「Coincheck」の運営を行ってきた。8月10日には、Fintechスタートアップへの投資育成プログラム「Coincheck investment program」を開始。ブロックチェーンや仮想通貨、Fintech事業を開発・運営する法人・個人を支援していくと発表している。

Nayutaがジャフコらから1.4億円を調達、ブロックチェーン上のレイヤー2技術開発へ

福岡市に本拠を置きIoTとブロックチェーン分野に取り組むスタートアップ企業Nayutaが、ジャフコおよび個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1億4000万円の資金を調達したことを明らかにした。調達実施日はこの2017年7月28日、出資比率は非開示。同社が外部から資本を調達するのはこれが最初である。

調達した資金は主に研究開発に振り向ける。現時点では同社のフルタイムスタッフは2名だが、Nayuta代表取締役の栗元憲一氏は「人員を増やしエンジニアを5〜6名にしたい。Biz Devの人材も採りたい」と話している。また、同社の取り組みにはハードウェア開発が関係することもあり大きめの資本が必要と判断したとのことだ。

同社が注力するのは、ビットコインを筆頭とするブロックチェーンの上に構築するレイヤー2(あるいは2nd Layer)技術だ。ブロックチェーンの上に「ペイメント専用のレイヤー(層)」を構築する試みである(下の図を参照)。現状のビットコインでは難しい「単位時間あたり取引能力の拡大」、「リアルタイムな取引」、「マイクロペイメント」を可能とする技術群を開発していく。

今までのNayutaの取り組みとしては、ビットコインのブロックチェーン上のOpen Asset Protocolを応用したスマートコンセント(発表資料(PDF))や、BLE(Bluetooth Low Energy)に基づく人流解析システム、大型放射光施設「SPring-8」の測定データの有効活用を図るためブロックチェーンを応用して構築したデータ流通インフラシステムのプロトタイプ(発表資料)などがある。この7月28日に開催した「MUFG Digital アクセラレータ」第2期のDemo Dayでは「準グランプリ」を受賞している。

レイヤー2で世界の最先端と実装を競う

レイヤー2に関連しては、ビットコインのLightning Networkが知名度も高く注目されている。Nayutaは、このLightning Networkと同様の機能を実現する層と、その上のアプリケーション層の両方を開発していく。同社が開発したビットコインの「レイヤー2」を用いる決済技術については以前TechCrunch Japanで報じている。同社はこの時点で、Lightning Networkの既存実装とは独立に、自社による実装に基づくマイクロペイメントを実現している

ブロックチェーンとレイヤー2は、どちらも必要とされる技術だ。この2017年8月には、レイヤー2プロトコル実装に必要となるSegWit仕様がビットコインのブロックチェーンでアクティベートされることが決定した。最近、いわゆる「ビットコイン分裂」の懸念が盛んに報道されたが、この騒動の実態はSegWit有効化をめぐる動きだった。SegWit仕様が使えるようになれば、レイヤー2技術の実装と応用が加速することは間違いない。

このように聞くと「すでに登場しているLightning Networkの実装を使ってその上のレイヤーを開発した方が効率的ではないか」との疑問を持つ人もいるかもしれない。この疑問に対して、同社では「レイヤー2はどの実装が標準になるのか、まだ分からない段階。Lightning Networkだけではなく、様々なパターンの技術が出てくるだろう。IoT分野に取り組む上で、自分たちで作ることでレイヤー2の技術を身につけておくことは大事だ」(栗元氏)と話す。特に大事な部分はリアルタイム性に関連する部分だ。

「IoT分野では、ほとんどのものにリアルタイム性が要求される。レイヤー2がうまく構築できれば、(リアルタイム性に欠ける)パブリックブロックチェーンでもIoT分野で新しいソリューション、ガバナンスを作っていける可能性がある」(栗本氏)。

Nayutaが狙うのは特にIoTと関連するレイヤー2分野だ。リアルタイム性を筆頭にIoT分野(あるいは組み込みシステム分野)では、技術をブラックボックスとして利用するだけでなく「中身」を把握していることが競争力につながる場合が多い。同社が自社による独自実装にこだわっている理由はそこにある。

ブロックチェーン、レイヤー2、IoTの組み合わせは世界的に見ても最先端の取り組みだ。その最先端のソフトウェアテクノロジー分野で日本のスタートアップが正面から世界との技術競争に挑む形となる。資金調達のタイミングと同時にSegWit仕様の有効化が重なったことは幸運でもあるが、競争も激しくなるだろう。今後の同社の取り組みは要注目といえる。

日本最大、TechCrunch Tokyo 2017スタートアップバトル登壇企業を募集開始

TechCrunch Japanは11月16、17日に、東京の渋谷ヒカリエで「TechCrunch Tokyo 2017」を開催する。毎年ヒカリエの大ホール会場で立ち見が出るほどの盛り上がりを見せる目玉企画「スタートアップバトル」(以下、バトル)は、もちろん今年もある。参加企業の募集をスタートしたのでお知らせしたい。

渋谷ヒカリエの大ホールはいつも立ち見がでる満席だ

優勝チームには100万円の賞金、そのほか多くのスポンサー賞がある

バトルを簡単に説明すると、スタートアップが今年ローンチしたプロダクトと事業プランをプレゼンで競い合うというもの。バトル登壇の場でローンチを発表してもらうスタートアップも大いに歓迎している。

応募条件は下記2点:
・未ローンチまたは2016年10月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業であること。
・創業年数3年未満(2014年10月以降に創業)で上場企業の子会社でないこと。

例年100社を超えるスタートアップからの応募がある。書類審査に通過した20社がイベント初日に行われるファーストラウンドに進出してプロダクトを競い合う。ここから勝ち上がった6社が2日目のファイナルラウンドに進出して、優勝を1社決定する。優勝チームには賞金100万円を贈呈する。ほかにスポンサー賞も多数ある。

翻訳の問題から日本では「バトル」と言っているが、米国の本家TechCrunchでの元々の名称は「バトルフィールド」(戦場)だ。ステージ上で起業家たちが投資家を中心とした審査員からの厳しい質問をさばき、いかに注目と資金を集めるかを競うというニュアンスが込められているからだ。

日本ではそこまで激しいものではないものの、去年からはステージ上に審査員の方々に登壇いただいて質疑をしていただいくようにしている。審査員はVCやネット企業の経営者、エンジェル投資家などからなる。

ステージ上では審査員からの質問に起業家が答える

起業家たちは当日に向けてプレゼンとビジネスプラン、デモに磨きをかけてのぞむ

スタートアップの本質の1つは「社会課題の解決」。聴衆にビジョンを語る起業家たちは真剣そのもの

多くのビジネスモデルを見てきた投資家たちが、実際に投資判断をするのと同じくらいの真剣さで質問を投げ、起業家が応じる。一般的に言うと、起業家というのは特定の事業ドメインや技術について、ものすごく幅広い知識と深い洞察を持っている。一方、投資家は広く俯瞰した視点と過去の経験・知見から汎化したパターンの鑑識眼を持っている。だから、そのやり取り自体が学びの多いセッションだ。起業志望の人はもちろん、大企業で新規事業を探している人にとって、テックビジネスの最前線を学べる絶好の機会でもあると思う。学生であれば、新しく事業を作るとはどういうことか、いかに難しいことなのかということも分かることと思う。

例えば、昨年優勝した「小児科オンライン」のピッチと質疑は以下のとおりだ。

アテンションを集める絶好の機会

さて、バトル応募企業には特典もある。まずは書類審査を通過してバトルに出場した全チームには、会場の展示ブースを無償で提供する。惜しくもバトル出場を逃したチームの中でも、同様の特典を用意する予定だ。

スタートアップバトルの応募締め切りは9月30日23時59分。迷っているなら、仮登録でメールアドレスだけでも登録しておいて頂ければと思う。われわれの方から1カ月前に本登録を促すお知らせをお送りさせていただく。

本登録フォームは、こちら。

仮登録フォーム、こちら。

スタートアップ企業の成功に必要なものは、いろいろある。起業家としてのビジョンや志、巻き込み力、それを起点とした説得力のあるプロダクトと市場の狙い。狙いを決めて、やりきるだけのチーム力。

それから、仲間や支援を増やすという意味では資金やアテンションも必要だ。そのアテンションを得る方法としてのイベント登壇、そしてそこでの優勝というのは非常に効果が高いものだ。イベント登壇は資金調達や顧客・提携先獲得、メディア取材へと繋げる「デビュー戦」の場とも言える。過去のTechCrunch Tokyoスタートアップバトル登壇企業の資金調達総額は300億円を超えている。観客数だけでなく、この意味でもメディア主催で日本最大のスタートアップのピッチコンテストとなっている。スタートアップ企業のコアにいる起業家や投資家に加えて、大手有力企業のアライアンス担当者や事業開発部門の人々も数多く見に来ているのが、ほかのスタートアップ関連イベントとの違いの1つになっている。

今年も多くの出会いや気付きが生まれることを願いつつ、着々とステージを用意中だ。走り出したばかりのスタートアップ企業・起業家の皆さまからの、ご応募をTechCrunch Japanスタッフ一同、心からお待ちしています!

おっと、スタートアップバトルへの登壇ではなく、一般参加者向けのチケット販売も開始しているので合わせてお知らせしておきたい。

Snapchatにピカチュウ変身レンズ追加、一緒に記念撮影も。期間限定

eng-logo-2015写真・動画コミュニケーションアプリのスナチャことSnapchatに、リアルタイム画像フィルタ『ピカチュウレンズ』が加わりました。

顔認識でピカチュウの耳・目・鼻・頬をリアルタイムに重ねて、恐るべき人類総電気鼠化を実現します。

使い方はSnapchatを起動して画面をタップして、左右スワイプでピカチュウの顔のレンズを選ぶだけ。

顔を認識すると、よくあるネコミミや犬耳フィルタと同じように、ピカ耳が生え目玉がつぶらになり鼻とチークが合成されます。

さらに口を開けると10万ボルト的なエフェクトともに、画面にピカチュウが登場。ポーズをキメて一緒に撮影できます。

まあこれだけといえばこれだけですが、レンズの効果は前面カメラでも背面カメラでも有効。顔認識は映像やイラストや人間以外にも反応するため、カメラを構え罪のないターゲットを勝手にピカチュウ化したり、マゼルナ危険的な何かを無理にピカチュウハイブリッド化して遊ぶこともできます。

ピカチュウレンズは個別のダウンロードなどは必要なく、無料でいつの間にか使えるようになっていますが、短期間のみの限定提供です。

本日8月15日までの横浜『ピカチュウだけじゃない ピカチュウ大量発生チュウ!』イベントに参加するかたの記念自撮りにはもちろん、会期中横浜に足繁く通い昼夜を問わず歩き回り血眼で「日焼けしたピカチュウ」を探したものの見つからずパニック寸前、という皆様は、せめて日焼けしたであろう自分をピカチュウ化してみてはいかがでしょうか。だめか。

会場はお祭り状態! 横浜で開催中のポケモンGOパークはポケGOユーザーに全力でオススメ

Engadget 日本版からの転載。