“ものづくりワークショップ”でリアル店舗の体験を変えるCraftieが1.1億円を調達

左からグローバル・ブレインの池田翔氏、同社の百合本安彦氏、Craftie代表取締役の康瑛琴氏

アート・クラフト領域に特化したワークショップ予約プラットフォーム「Craftie(クラフティ)」を展開するCraftieは1月23日、グローバル・ブレインと複数の個人投資家より約1.1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドではグローバル・ブレインが1億円を出資。コミュニティファクトリー創業者で現在はメルペイ取締役CPOの松本龍祐氏やエウレカ共同創業者の西川順氏、元nanapi CTOの和田修一氏を含む数名の個人投資家も参加している。

もともとは個人が手芸や絵画、アクセサリー作りなど“ものづくりのワークショップ”を気軽に検索して予約できる場所として2017年3月に正式リリースされたCraftie。現在では「ワークショップを軸に新しい体験やコミュニティを作りたい」というリアル店舗を持つ法人からの問い合わせが増加し、当初に比べてサービスの幅も広がった。

同社では法人向けのサービスを「Craftie Partnership」として正式に提供し、今後さらに拡大させていく計画。今回調達した資金を基にパートナーシップの強化と提供エリアの拡大に向けて、人材採用を進める。

多様なものづくりワークショップを集約したオンラインプラットフォーム

リリース時にも紹介した通り、Craftieはものづくりワークショップを開催する個人や教室と、そこに参加したいユーザーを繋げるプラットフォームだ。

一口にものづくりワークショップと言ってもアロマやアクセサリー、クレイアート、ペーパークラフト、陶芸、染物、絵画、アメイジングクッキーなど、その種類は実に幅広い。Craftieには多様なワークショップが集約されていて、探すだけでなくその場で予約できる。

ワークショップを開催する講師や教室にとっては、熱量のあるユーザーに自分の存在を知ってもらえる場所になる。特に近年は副業のひとつの形として、個人が自分の趣味やスキルを他人に“シェア”するような事例も増えてきた。

例えば語学やプログラミングをレクチャーしたり、エクセルの使い方やプレゼン方法などビジネススキルを伝授したり。ものづくりも例外ではない。

Craftie代表取締役の康瑛琴氏によると現在Craftieには約300人の講師が登録していて、本業を別に持つ人が約1/3ほどを占めるそう。仕事以外の時間を有効活用し、自分の好きな領域のワークショップを開催する。そんな人たちが講師として一歩目を踏み出す場所としても機能し始めているという。

仕組みとしてはスキルシェアのマーケットプレイス「ストアカ」などに近しい部分もあるが、Craftieではものづくり領域に特化してサービスを磨いてきた。現在ワークショップのメニュー数は1000種類ほどまで拡大。このコンテンツを活用して昨年から徐々に取り組み始めたというのが、法人向けのサービスだ。

ワークショップ軸に新しい店舗体験を展開

今回Craftie Partnershipとして正式にサービス化された同社の法人向け事業は、ワークショップを軸にリアル店舗の新しい体験づくりをサポートするものだ。具体的には各クライアントの店舗スペースを活用したコンテンツをCraftieの運営チームが一緒に設計し、Craftieに登録している講師とワークショップを展開していく構造になっている。

今の時代、それこそAmazonや楽天のようなサイトに行けば大抵のものがオンライン上でスピーディーに購入できる。僕自身ここ数年で食料品や一部の生活用品などを除いた多くのものをオンラインで購入するようになったけれど、同じような人もいるはずだ。

だからこそ「単にモノを売るだけではなくそれ以上の価値を出すにはどうしたらいいか、という考えが小売業界では共通認識になっている」と康氏は話す。そして顧客がわざわざ店舗に行きたいと思うような新しい体験のフックとして、ワークショップのニーズが増えているという。

「リアルな店舗における新しい価値を提供したいという企業から問い合わせを頂くケースが増えてきた。店舗、講師、参加者が一緒になって楽しめる1〜2時間のワークショップを実施すると、そこには独自のストーリーや、これまでになかったコミュケーションが生まれる。顧客とは通常のショッピングよりも長い時間付き合うことができ、新しい関係性やコミュニティ作りのきっかけになる」(康氏)

すでにFlying Tiger Copenhagenや蔦屋家電のほか、全国規模で店舗を展開する企業がクライアントになっている。康氏の話ではこれからワークショップを実施する企業も含め「今集客に苦しんでいるというのではなく、先を見据えてお店の新しい体験づくりにチャレンジしようという背景で取り組んでいる企業が多い」そう。そのため企業内で集客数1位の店舗など、すでに人気のあるスペースと連携することも珍しくない。

法人向けのサービスはもともとスケーラブルなイメージがわかなかったため、Craftieリリース当初はあまり力を入れてこなかった領域だ。ただ昨年ごろからパイロット版としていくつか事例を積み上げる中でナレッジも蓄積され、収益が上がるモデルも見え始めてきたという。

Craftieでは単発のワークショップを企画するのではなく、月額定額制のサブスクリプションモデルでクライアントと中長期的に渡って毎月ワークショップを実施していく。継続的に実施することが店舗に根付くコミュニティを構築することに繋がるほか、エンドユーザーに質の高い体験を提供することにも繋がるからだ。

約2年に渡って、様々なものづくりワークショップに携わってきたCraftie。そこで培ってきたワークショップ運営やコミュニティ作りに関するノウハウやデータが参加者の満足度を高める上では欠かせないものであり、クライアントからの問い合わせが増えてきていることにも繋がっていると言う。

「企業を巻き込んだ一連の体験づくりをスケーラブルにやっていけるかが今後の肝になる。いかにビジネスとしてきちんと成立するモデルを作り、付加価値の高いサービスにしていけるか。単発のイベント屋さんではなく、ブランドのコミュニティ作りを後押しするサービスとして、いろいろな店舗へ広げていきたい」(康氏)

小松菜栽培ロボ開発のレグミンがインキュベイトファンドから1億円を調達

レグミンは1月22日、インキュベイトファンドを引き受け先とする1億円の第三者割当増資を実施した。レグミンは、自律走行型ロボットを活用して農業の効率化を目指すスタートアップ。

レグミンで代表取締役を務める成勢卓裕氏(写真左から2番目)と野毛慶弘氏(写真左から3番目)、インキュベイトファンドの代表パートナーを務める赤浦 徹氏(写真右から2番目)

農業ロボットの開発および、AIを活用した生産者向け経営プラットフォームを提供しており、第1弾として小松菜の栽培コストを75%カットすることを目標とした、葉物野菜の種まきから農薬・肥料の散布、収穫までを全自動化するロボットを開発。ロボットによる野菜や障害物位置の自動認識やAI画像解析による農作物の成長状況の把握などによって、農業機械費および人件費の削減に貢献することを目指しているという。そのほか遊休農地の「調達」および、スーパーなどへの「流通・販売」までを一貫して担うことで、生産・流通の両課程の効率化を実現。日本の農業は販売農地が18年前対比で50%減少しているなど深刻な労働力不足に陥っていることから、同社はロボットを活用して日本の農業の持続的な発展に取り組んでいるという。

小松菜などの葉物野菜の収穫を効率化するロボットを開発するレグミン

レグミンの代表取締役を務める成勢卓裕氏は「『日本の美味しい野菜を次の世代にも残したい』という想いで農業界の抱える課題にチャレンジしたいと起業いたしました。若手就農者を増やし、テクノロジーを活用する事で日本の素晴らしい農業を次の世代に、更には世界中に広めていきたいと考えております」。同じく代表取締役を務める野毛慶弘氏は「私は祖父母共に農家の家系で幼少期より農業の手伝いをして過ごしました。静岡銀行で農業関連企業を複数支援した後、退職後は日本中(九州、四国、関東、東海)の農地を巡りました。その後、農業に従事すると同時に地場優良スーパーの青 果部門で働き農業に関する知識を深めました。日本中の農地を巡って洗い出した課題や農業従事や青果部門での勤務による知識を踏まえ、日本の農業をより良くするために起業しました。」とコメントしている。

第三者割当増資の引き受け先であるインキュベイトファンドは、シードスタートアップへの投資に特化した独立系ベンチャーキャピタル。代表パートナーである赤浦 徹氏は「野毛さん、成勢さんの農業にかける想いと人柄に惹かれ、ビジネスモデルの設計からご一緒し、投資させていただきまし た。レグミン社の事業は後継者不足や耕作放棄地の増加など、日本の農業が直面する問題を解決する社会的意義の大き な事業になると考えており、共に事業成長に取り組んでまいります」とコメントしている。

野菜の収穫といえば、TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルのファイナリストであるinahoが開発している、アスパラガス、きゅうり、ピーマン、トマト、ナスなどに対応したロボットもある。人工知能とロボットで日本の農業の深刻な問題を解決するスタートアップの動向については、TechCrunchとしても継続して追いかけていきたい。

野菜のように、顔の見える生産者から電気を買う「みんな電力」が11.8億円調達

「顔の見える電力プラットフォーム」を提供するみんな電力は1月21日、シリーズBラウンドにおいてTBSイノベーション・パートナーズ、SBIインベストメント、TOKAIホールディングス、セガサミーホールディングス、丸井グループ、電通から11億8000万円を調達したと発表した。

みんな電力は電力小売業を営むスタートアップ。でも、普通の電力小売とはちょっと違う方法で電気を販売している。最近、道の駅や一部のスーパーなどでは野菜を作った人の顔が見えるように、農家の人々のプロフィールが入ったポップアップが売り場に用意されていることがある。みんな電力は、それと同じように、電気を発電した人の顔が見ることができ、その発電所を「応援」することが可能なプラットフォームだ。

みんな電力のWebページにいくと、電気の生産者の一覧ページがある。そこに掲載された発電所のプロフィールページでは、どんなひとが、どこで、どれくらいの電気を発電しているのかが分かる。みんな電力と契約して電気を買うユーザーがその中から応援したい発電所を選ぶと、電気料金の一部がその発電所に寄付される仕組みだ。みんな電力に供給される電気の約75%以上は、太陽光発電などの再生可能エネルギー電源で発電され、固定価格買取制度(FIT)を通して事業者に販売された「FIT電気」だ。だから、ユーザーはみんな電力を通して再生可能エネルギーの普及にも協力することにもなるというわけだ。

みんな電力は今回調達した資金を利用して、ブロックチェーン技術を用いたP2P電力流通プラットフォーム「ENECTION2.0」の商用化を進める。

固定価格買取制度は、個人などが再生可能エネルギー電源で発電した電気を一定期間のあいだは電力会社が固定価格で買い取ることを国が保証するという制度だ。しかし、みんな電力によれば、しかし前身となる「余剰電力買取制度」ができてから10年が経過した今年、2019年11月にはその買い取り期間が終了する電源が50万件以上発生する見通しだ。そうなれば、個人が電気の生産者にもなり、自由契約で電気を売ることが可能な時代になる。みんな電力はその時代に併せてENECTION2.0を拡大することで「誰でも再生可能エネルギーを作り、シェアできる社会」を目指すという。

株式のように自分の価値を取引できる「VALU」が5億円調達、Android版アプリも公開

まるで株式のように自分の価値を取引できる「VALU」を運営するVALUは1月21日、シリーズAラウンドでグローバル・ブレインから5億円を調達したと発表した。また、今回の資金調達を期に、グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏がVALUの社外取締役に就任する。

VALUは、ソーシャルメディアのフォロワー数・友達数などの情報に応じて算出された価格で模擬株式(VA)を発行し、ユーザー間で取引できるサービスだ。また、株式の優待制度と同様に、各ユーザーは株主(VALUER)に向けてイベントの参加権やノベリティといった優待を設定することもできる。VALUERは将来に期待が持てる人のVALUを購入し、優待を楽しみながら、その人がさらに有名になったときに値上がったVAを売却して利益を得ることができる。その点では、VALUは文字通り「ヒトに投資」できるサービスだと言えるだろう。

2017年5月にベータ版をローンチしたVALUはこれまでに、約10万人のユーザーを獲得。ユーザーの累計支援総額(VAの取引総額)は10億円を突破したという。

そのVALUは2017年12月に個人投資家の千葉功太郎氏から数千万円規模の資金を調達。そして今回シリーズAラウンドとして5億円の資金調達に踏み切った。同社はこの資金をもとに、開発強化のための人材採用、新規事業開発に取り組むという。加えて、VALUは同時にAndroid版アプリのリリースも発表している。

今後の方針として、VALU代表取締役の小川晃平氏は「2019年の春までに、SNS機能の追加拡張と優待機能の改善を行います。また、夏までには、取引機能の大幅な刷新・改善を予定しています」とコメントしている。

Webマーケ支援のADlive、XTech Venturesなどから1億6000万円調達

中小企業を対象にWebマーケティング支援などを行うADlive(アドリヴ)は1月18日、XTech Venturesとみずほキャピタルから1億6000万円を調達したと発表した。

ADliveは中小企業に特化したWebマーケティングを手がけるスタートアップだ。Webサイト制作、保守・運用、多言語化サポートなどをパッケージにしたコンサルティングソリューションの「URUURERU」を提供するほか、広告やWebサイトのクリエイティブ制作、営業ツールの開発などを行う。

同社は2017年5月にURUURERUを提供開始。中小企業を中心に、これまでに約500社をクライアントとして獲得している。1社あたりの平均顧客単価は30万円程度だという。

ADliveは今回調達した資金を利用して、今後も中小企業向けのプロモーションを続けるとともに、アジア諸国への展開にも取り組んでいくという。

美容医療の経験や悩みをシェアするSNS「Meily」が資金調達

メイリーCEOの川井優恵乃氏(写真中央)と、NOW共同代表の家入一真氏(写真左)、梶谷亮介(写真右)

美容医療SNS「Meily(メイリー)」を運営するメイリーは1月18日、NOW、YJキャピタル、EastVentures、およびフリークアウト代表取締役の本田謙氏など複数の個人投資家から数千万円規模の資金調達を完了したと発表した。

2018年4月にリリースしたMeilyは、美容整形をした人や近い将来したい人が交流するSNSだ。他のユーザーの施術例を写真で見たり、Q&A機能を通じて他のユーザーに質問したりできる。現在のユーザー数やダウンロード数は非公開とのことだが、同サービス上では現時点で1万件以上の投稿が寄せられているという。

従来、美容整形に関する情報を集める手段としてはWeb上のポータルサイトや口コミサイト、Twitter、Instagramなどの既存SNSなどがあった。しかし、美容整形に関する情報は複数サイト(サービス)に分散している、信憑性に欠ける、美容整形に特化していないSNSでは情報の検索性が低いなどの問題があった。そのことから、代表取締役の川井優恵乃氏を中心として6人の開発メンバーが集まり開発したのがMeilyだ。

川井氏自身も過去に美容整形を行った経験をもつ。大学在学中に総額430万円もの費用をかけて美容整形を行ったという。川井氏は自身が身をもって感じた課題感をもとに創業を決意。マッチングアプリの「Tinder」で創業メンバーを見つけ、同じくマッチングアプリの「paters」で先輩起業家や投資家などとのコネクションを作りながらMeilyのアイデアを徐々に形にしていった。創業後、メイリーはYJキャピタルとEastVenturesが共同で運営するアクセラレーターの「CodeRepublic」に採択され、同アクセラレーターから700万円を調達している。

メイリーにとって、今回の調達ラウンドは2回目となる。同社は今回調達した資金を利用して、開発体制の強化を図るほか、ユーザー獲得のためのプロモーションにも力を入れる。川井氏は、「美容医療や美容整形のハードルを下げるためには、今のプロダクトだけではカバーできない点もある。心理的なハードルを取り除く保険や金銭的なハードルを取り除く金融のサービスも必要だと感じている」と話し、回答率やその質の向上などに取り組むほか、関連事業への意欲も見せた。

Niantic、シリーズCで2.45億ドル調達、評価額は約40億ドル

昨年12月頃から、Niantic(ポケモンGOや近日公開予定のHarry Potter: Wizards Unite[ハリーポッター:魔法同盟]の開発元)がシリーズCラウンドで巨額の資金を調達中だということは知られていた。その時点で金額は約2億ドルと言われていた。

同社はつい先ほどラウンドの詳細を正式発表し、最終金額が2.45億ドルだったことを明らかにした。

Nianticによると、同ラウンドはIVPのリードで行われ、aXiomatic、Gaming、Battery Ventures、Causeway Media Partners、CRV、およびSamsung Ventresが参加した。同社は企業評価額が〈ほぼ〉40億ドルだったことも認め、最初にこの調達ラウンドのうわさが出たときの数字に言及した。

これはポケモンで圧倒的成功を成し遂げたNianticが、次期計画を構築する中での資金調達だ。同社はこれも大いに郷愁を誘う知的財産に基づくゲーム、Wizards Uniteを近々スタートする一方、同社の誇るARフレームワーク(および興味ある場所の巨大データベース)をサードパーティー・デベロッパー向けにゆっくりと公開していく準備を進めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

企業を“卒業”したアルムナイとの新しい関係づくりをSaaSで支援、ハッカズークが資金調達

人事・採用に携わる人やHR Techの関係者なら、「アルムナイ(alumni)」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。もともと学校の「卒業生」「同窓生」といった意味だが、企業のOB・OGの意味でも使われるようになっている。

HR Techスタートアップのハッカズークが提供するのは、そんなアルムナイと企業との関係性を退職後もつなぐためのプラットフォーム「Official-Alumni.com」だ。1月16日、ハッカズークは、ドリームインキュベータと複数の個人投資家を引受先として第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。

企業とアルムナイとの新しい関係性を築く

「採用活動から勤務中の人事管理で、候補者や社員との関係性を築いてきた企業が、退職後も退職者との人的リレーションを保ち、企業と退職者との新しい関係性を築こう、というのがアルムナイリレーションの考え方だ」ハッカズーク代表取締役CEOの鈴木仁志氏は、このように同社のサービスについて説明する。

人材不足の折、アルムナイリレーションシップは再雇用やリファラル採用など、採用活動の場面で注目されることが増えている。だが、鈴木氏によれば「現在、当社のサービスを利用する顧客企業はみんな、再雇用だけでなく、アルムナイを業務委託パートナーとして活用したり、退職した企業のお客さんになるアルムナイもいる」とのこと。

元社員の再雇用やリファラル採用での口コミ・紹介といった制度をアルムナイ向けに用意することのメリットは、採用に直接関係する部分でもあり、想像が付きやすい。さらに、ともに仕事をする相手として、また顧客としても、その企業をよく知るからこそ接点を持ち続けるメリットがあるそうだ。

そのほかにも「アルムナイと取り組むオープンイノベーションは、うまくいきやすい」と鈴木氏はいう。「アルムナイは一度社外に出ることで、古巣にどのような変革が必要かは分かっている。一方で社内の政治力学も知っているので、全くの他人が推し進めるのとは違い、よい提案になる」のだそうだ。

アルムナイリレーションでは「会社だけが得をする形は絶対うまくいかない、といつもクライアントにも伝えている」と鈴木氏は述べ、アルムナイとの関係性を続けることの効果を説明している。

「アルムナイは、社外にいながら古巣の良さを一番知っている。組織の中で一度は折り合いが付かずに辞めてしまったとしても、そこでの仕事自体は好きだったり、サービスには愛着があったりする人も多い。そうした人たちと企業が互いにポジティブな関係性を育むことで、働き方改革ならぬ“辞め方改革”が進むはずだ」(鈴木氏)

鈴木氏は「退職したら関係が切れる、という前提では、退職者はきれいな辞め方をしないこともある。退職後もつながる前提なら、きれいに辞め、企業にもメリットが大きい」という。

アルムナイ特化型SaaS「Official-Alumni.com」

アルムナイリレーション専用SaaSのOfficial-Alumni.comは、2018年1月にベータ版がリリースされた。ハッカズークでは、このシステムに加え、制度の企画・設計コンサルティング、運用サポートをサービスとして提供している。

Official-Alumni.comは、企業がアルムナイとの接点を作り、「今アルムナイがどうしているか」を知るためのウェブアプリだ。チャット形式のメッセージ機能で、アルムナイとのコミュニケーションの接点を保ち、データを蓄積。実名でのやり取りだけでなく、「意見箱」のように匿名でアルムナイが情報発信する機能も備えている。

「匿名メッセージは、例えば企業がよいと思って取り入れた人事制度に、社員が実は不満を抱えている、といった本音の評判をOB・OG経由で聴き取る、というような形で利用されている」(鈴木氏)

それぞれのメッセージ機能は1対1のやり取りが基本だが、グループチャットができる「ルーム機能」も備えている。

「SNSなどでOB・OGグループを作ると、メンバー間で迷惑メッセージの発信リスクが生まれるが、Official-Alumni.comでは個々のメンバーの検索はできないので、その心配がない。一方で『○○年退職組のグループ』というように目的や属性ごとにグループが作れるので、活発なコミュニケーションは行える」と鈴木氏。「SNSやチャットツール、CRMといった非特化型のほかのサービスとは違う、アルムナイ特化型システムとなっている」と話している。

システムにはNPS/eNPSを活用して、アルムナイのエンゲージメントを測定する「Gauge(ゲージ)」も採用されている。管理画面はCRMライクな見た目だが、こうした機能を取り入れ、やはりアルムナイ管理に特化したつくりになっているという。

「アルムナイ」への理解を進めて成長加速を目指す

「アルムナイという言葉が浸透してきた今、言葉は広がってきたが『企業が退職者をも搾取するためのもの』といった誤解もある」と鈴木氏は語る。こうした風潮を変えていくことで、ハッカズークの成長を加速させたい、という思いが資金調達の背景にはあるそうだ。

ハッカズークは2017年7月の設立。鈴木氏は人事・採用のコンサルティング・アウトソーシングのレジェンダ・グループのシンガポール法人で代表取締役社長を務めていた人物だ。海外のHR Tech動向に明るく、TechCrunch JapanにHR Tech Conferenceのレポートを寄稿したことや、イベントTechCrunch Schoolで海外HR Tech市場のトレンドを解説してもらったこともある。

今回の資金調達は2018年5月に実施した、複数のエンジェル投資家による調達に続くもの。ドリームインキュベータのほかに、ポケラボ創業者でジラフ執行役員の佐々木俊介氏、ほか個人投資家1名から出資を受けた。調達金額は明らかにされていないが、関係者によれば数千万円規模だということだ。

新たに株主となったドリームインキュベータについて鈴木氏は「調達金額の多寡よりも、戦略コンサルティングとインキュベーションで力のあるVCのドリームインキュベータの支援を得ることで、事業拡大を加速したいと考えた」と話している。

調達資金は、PR、プロダクト開発、そしてコンサルティングやカスタマーサクセスのための人材採用に充てる。「PRに関しては、アルムナイリレーションが企業にとっても、個人にとっても必要で、なくてはならないものになるということを伝えたい。企業がアルムナイとつながること、アルムナイも企業とつながることが当たり前で、メリットになるということを発信していく」(鈴木氏)

「Official-Alumni.comの熱狂的ファンをつくるのが、2019年の目標」と鈴木氏は語る。「顧客の中には、後輩のために熱心にコミュニケーションを取るアルムナイがいる企業もあって、チャットで使える『アルムナイスタンプ』まで作っている。そういう機能を入れられるのは、特化型サービスの強みだ。強いカルチャーは、熱量のあるカルトを醸成する。その中でアルムナイと企業が永続的につながることができる」(鈴木氏)

現在の顧客企業は規模も業種も、アルムナイリレーションを取る目的もさまざまだと、鈴木氏はいう。「システム開発や人材系企業ではオープンイノベーションのために利用している例がある。また飲食・小売などでは、店舗のディスプレイなど“ビジュアルマーチャンダイジング”やメニューの新商品開発などで、アルムナイから意見をもらうケースも」(鈴木氏)

どういった規模や目的でサービスの利用が進み、どこでOfficial-Alumni.comがスケールするかは、今後見極めていくという鈴木氏。直近では、辞めた人が何をしているかを把握することができて、アルムナイへのメリット提供や関係性が作れるように、システムに加えてコンサルティングで対応していくと話していた。

写真左端:ハッカズーク代表取締役CEO 鈴木仁志氏

中身まで検索閲覧できる法律書籍のデータベース「Legal Library」が数千万円を調達

近年、法務の課題をテクノロジーを用いて解決する「リーガルテック(LegalTech)」関連のスタートアップを取り上げる機会が増えてきた。

例をあげると契約書にまつわる業務を効率化するGVA TECHLegalForceHolmes(旧リグシー)、Hubble(旧RUC)のほか、集団訴訟プラットフォームを展開するクラスアクション、特許や商標など知財関連のプロダクトを手がけるAI Samurai(旧ゴールドアイピー)、Cotoboxなど。この領域の起業家は弁護士を筆頭に現場をよく知る専門家が多いのも特徴かもしれない。

今回紹介するLegal Technologyも、弁護士である二木康晴氏が立ち上げたスタートアップだ。オンライン上で法律専門書を自由に検索・閲覧できるリサーチサービス「Legal Library(リーガルライブラリー)」を開発する同社は1月11日、複数の個人投資家より資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドにはヴォーカーズ(Vorkers)代表取締役社長の増井慎二郎氏やMomentum代表取締役CEOの高頭博志氏を含む数名が参加。調達額は数千万円になるという。

日経テレコンやSPEEDAの法律版を目指す

二木氏が「ビジネスのリサーチに使われている『日経テレコン』や『SPEEDA』の法律版のようなサービスを目指している」と話すように、Legal Libraryはリーガルリサーチを効率化するクラウドサービスだ。

法律専門書をオンライン上でデータベース化し、キーワードに関する内容が書かれている本を出版社横断で検索できる仕組みを構築。検索画面には書籍の表紙画像が並び、クリックすると各書籍の該当箇所が表示され“中身まで閲覧できる”のが特徴だ。

「会社201①」など文中で条文の記載がある場合、クリックすることで「e-Gov」の法令検索サービスの該当条文ページに遷移。その場ですぐに条文と照らし合わせることもできる。

また実務においては専門書に記載のある「契約書のひな形」を参考にして書類を作成することも少なくない。Legal Libraryではこのひな形をWordで出力する機能を搭載することで、契約書の作成までスムーズにする効果もある。

このようなリーガルリサーチは、これまでアナログな側面が強かった業務だ。弁護士やパラリーガルは何か調べたい事項がある場合、弁護士会の図書館や事務所内の図書室などで関連する書籍を手当たり次第チェックしている。

そもそも答えとなる内容を探し出すのに一苦労。その後も該当部分をコピーしたり、ひな形を使いたい場合に手打ちで入力したりなど手間のかかる作業が多く、効率化できる余地があった。

「Google検索のような形で法律書籍の中身まで検索できるサービスがあれば便利ではないかというのが最初の構想。法律書籍をデータベース化すればこれに近いものが実現できると考えて起業した。弁護士にヒアリングをしても課題を感じている人は多く、地味だけど確実にニーズのあるサービスだと考えている」(二木氏)

検索結果として表示される書籍の順番は、これまでに閲覧された回数などに沿って決められる。図書館だと「どの本がどのくらい読まれているのか」がわからないので、多くの専門家が参考にしている書籍をパッと判断することは難しいかもしれないが、Legal Libraryならそんな書籍にもすぐにアクセスできるというわけだ。

まずは弁護士の利用を想定しているが、ゆくゆくは他の士業やビジネスマンなどにも広げていく計画。二木氏自身も法律事務所を経て経営共創基盤で働いていた経験があるが、コンサルタントに見せても反応が良かったという。

「ビジネスマンがどうやってリーガルリサーチをしているかというと、多くの人がGoogleを使う。ただ検索結果の中には誰が書いたかわからないようなブログ記事や古い記事も含まれている。(リーガルリサーチをする際に)信頼性の高い価値ある情報を調べたいというニーズは弁護士に限らない」(二木氏)

たとえばスタートアップにおいても個人のデータを扱うプロダクトであれば個人情報保護法が関わってくるし、FinTechにおける資金決済法や金融商品取引法、銀行法のように業界ごとの法律を調べる機会も多いだろう。

弁護士でなければ毎日頻繁に使うサービスではないかもしれないけれど、ちょっとしたリーガルリサーチを自分でやりたいと思った際に、正しい情報を扱った書籍にオンライン上で即座にアクセスでき流のであれば使い勝手は良さそうだ。

出版社との実証実験をスタート、夏頃には正式版リリースを予定

二木氏によると今のところ出版社側の反応も良いそう。すでに法律専門書を手がける老舗出版社の有斐閣や弘文堂が実証実験に参画する方針で、今後も順次参加する出版社の数を増やす計画だという。

上述したように弁護士会の図書館や各法律事務所内の図書室が充実してくると、そもそも紙の書籍が売れにくくなる可能性がある。Legal Libraryはサブスクリプションモデルでの提供を予定していて、読まれたページ数に応じて出版社に収益を配分する仕組みを予定。出版社にとっては新しい法律書籍の売り方にもなり得る。

また「どの部分がよく読まれているか、どこにラインマーカーが引かれたかといったデータを取れるようになる点もメリット」(二木氏)だという。

今後は出版社との実証実験後を進めながら、春ごろにβ版、夏ごろに正式版の提供を目指してプロダクトの開発に取り組む。

まだローンチ前ではあるものの、すでに弁護士から使いたいという問い合わせもきているそう。中には日本の書籍をすぐに調べることの難しい留学中の弁護士もいるようで、法律書籍のオンライン化が進めば弁護士の働き方の幅も広がるかもしれない。

「(Legal Libraryを普及させて)数年後には若手の弁護士の間で『Legal Libraryがない時代はどうやってリサーチをしていたんだろう』という会話が生まれるようなサービスを目指していきたい」(二木氏)

ポケモンGO開発のNiantic、1.9億ドルの調達ラウンドを完了

モバイルARゲームのスタートアップNianticが1.9億ドルの調達ラウンドを完了したことが、新に提出されたSEC書類 でわかった

申請がなされたのは、先月WSJの記事で、同社が2億ドルの資金をIVP、aXiomatic Gaming、およびSamsunから企業価値39億ドルで調達することが示唆された後のことだ。提出書類によると、同ラウンドは12月20日の報道後まもなく完了した。

このラウンドの完了によって、Nianticは総額4.15億ドル以上を調達したことになる。同社の出資者にはほかにFounders Fund、Spark Capital、およびAlsop Louie Partnersyらがいる。書類にはこの調達ラウンドに26組の投資家が参加したことが記されている。

新たな資金を得たポケモンGOクリエイターは、次の主要タイトルHarry Potter: Wizards Uniteの準備に取り掛かっている。この拡張現実ゲームの公開日は未定だが、今年中には公開されると見られている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

エグジット経験のある2人の元CFOが創業したWARCが2億円を調達、知見活かしスタートアップの成長支援へ

写真左からWARC代表取締役社長の山本彰彦氏、取締役の石倉壱彦氏

「自分たち自身が創業期からエグジットまでを経験しているので、各フェーズごとに起こりうる問題や事象、必要なノウハウに関しての知見がある。(それらを活用して)スタートアップの成長を一気通貫で支援していきたい」

そう話すのはスタートアップ支援事業を展開するWARC共同創業者の山本彰彦氏と石倉壱彦氏だ。

2人の共通点は監査法人を経てスタートアップにジョインし、CFOや役員としてエグジットを経験していること。そこで得た知見やネットワークをフル活用してスタートアップの成長を支えるべく、2017年にWARCを立ち上げた。

そのWARCは1月4日、山本氏と石倉氏を含む複数の個人から約2億円を調達したことを明らかにした。創業者を除く個人投資家の名前は明かされていないものの、2人と同じくスタートアップでCFO経験のあるメンバーなど複数名のエンジェル投資家が第三者割当増資を引き受けているという。

これまでは表立ったリリースなどを行わず“ひっそり”と事業を運営してきたWARC。今回の資金調達を機に事業を本格始動する計画だ。

CXOや役員経験者が集まった専門家集団

WARCを一言で紹介すると「CFOを中心としたCXOや役員経験者を始め、専門的なスキルや経験を持つ人材が集まったプロフェッショナル集団」といったところだろうか。彼ら彼女らの知見を活かしたコンサルティングや人材紹介など、クライアントの成長フェーズに合わせたサービスをトータルで提供している。

創業者の2人はともにKPMGあずさ監査法人の出身だ。山本氏は同社を経て社員数名のイグニスにCFOとして、石倉氏はアカツキに経営管理部長としてジョイン。財務領域をメインに、初期からIPOに至るまで会社の成長を支えてきた。

石倉氏に関してはIPOだけでなく、3ミニッツのCFOとしてグリーへのバイアウトも経験。事業家としての立場に加えて個人投資家としても活動するなど、様々な視点からスタートアップに携わっている。

この2人を筆頭に、WARCには各領域で経験を積んできた人材が集結。転職エージェントでベンチャー領域特化チームの責任者やHR系スタートアップのCOOを務めていた取締役の加藤健太氏、コンサルティングファームなどを経てリクルートホールディングスで人材紹介事業の立ち上げに携わった取締役の芝隼人氏、サイバーエージェントでの人事マネージャーを経てコンサルティングファームで人事部門向のコンサルタントを務めていた執行役員の篠原さくら氏らが中心メンバーだ。

成長段階に合わせて4つの軸で企業をサポート

さて、そのようなメンバーが集まって一体どのような事業を展開しているのだろうか。現在のWARCの事業内容は「コンサルティングサービス」「M&Aアドバイザリーサービス」「タレントエージェンシー」「投資」の4つだ。

経営課題の解決や財務戦略、採用戦略などコーポレート領域を中心に、戦略の策定からハンズオンによる実行までを支援。M&Aについても初期構想からクロージング後までをサポートする。

加えて石倉氏が「抱えている課題に合わせて、ヒトモノカネあらゆる側面から企業をアクセラレートする」と話すように、人手が不足しているのであれば適切な人材を紹介し、成長のために資金が必要なのであれば自ら投資も行う。12月に日本経済新聞社との資本業務提携を発表したケップルなど、すでに6社へ投資している。

コンサルティングであればコンサルティングファーム、M&Aであれば仲介業者や会計事務所といったように各領域ごとでは複数のプレイヤーが存在するが、企業の成長フェーズに合わせて必要なサポートを一気通貫で提供している事業者は多くない。

メンバー自身の“生の経験や知見”を基に、シード期のスタートアップから大企業までを領域横断で支援するのがWARCのスタイルであり、それこそが最大の特徴と言えるだろう。

スタートアップ領域でチャレンジする人を増やしたい

WARCがこれらの事業を通じて目指すのはスタートアップの成長を加速させることだけではない。そもそも山本氏と石倉氏がこの事業を立ち上げた背景には「スタートアップ界隈でチャレンジする人を増やしたい」という思いがあった。

「(個人投資家として)多くのスタートアップを見るようになって、CFOなど起業家を支えるビジネスサイドの人材がいる会社は成長スピードが全く違うことを痛感した。若手の会計士やコンサルタントなどスタートアップに興味がある人材は増えてきているように思うが、まだまだ圧倒的に足りていない」(石倉氏)

2人の話ではカルチャーが合わない、能力を発揮できない、給料が下がるといったことをリスクに感じ、スタートアップへ進むことを躊躇している人材が少なくないそう。スタートアップ界隈に馴染みがないと、自分の能力を活かしやすいステージや今後伸びていく面白いマーケットを見分けるのも簡単ではない。

「個人的にはどんな人でもフィールドやポジションを変えると活躍できる場所があるはずだと思っていて、自分にとってはそれがスタートアップだった。特にアーリーステージのスタートアップは事業面の優先度が高く、(監査法人などナレッジファーム出身者が)お金の使い方など財務面で工夫できる場面も多い。十分に活躍できる能力があるのに、それを知らないため『まだ無理なのでは』と思い留まってしまっている人も多い」(山本氏)

会社名ドリブンではなく、経営者のビジョンや志に惹かれて企業を選ぶ人が珍しくない時代だからこそ「人と人の志をどんどんマッチングして、チャレンジを後押しする」(石倉氏)ことがWARCの目標だ。

他社に人材を紹介するだけでなく自社でも積極的に専門家の採用を実施。WARCの一員としてハンズオンでクライアントをサポートする経験を重ねることで、企業の成長を支えると同時にCFOとして活躍できるような人材を社内で育成し、送り出していきたいという意向もある。

2019年にはHR Techサービスのリリースも予定

現時点ではWARCの事業はある種“アナログ”な側面が強いけれど、企業と人のマッチング領域においてはテクノロジーを活用したHR Techサービスも提供していく予定だ。

山本氏いわく「HR領域で散らばっている情報を整理するという意味で、HRにおけるGoogleのようなイメージ」で、企業単位だけでなく、個人の働く選択肢を増やすプロダクトを目指すという。

HR Techはここ数年で盛り上がっている領域のひとつで、SNS要素やスワイプ形式、チャットUIなどスマホにフォーカスしたユーザー体験を取り入れたものや、データやAIの活用をウリにしたものなど続々と新サービスが生まれている。

たとえばHR Techナビが公開しているHR Tech業界のカオスマップに掲載されているものだけでもけっこうな数になるが、「レガシーなまま取り残されている領域で、もっと進化できる余地はある」というのが山本氏の見解だ。

WARCでは今のところ2019年春頃のサービスリリースを予定しているそうなので、こちらについてはまたその際にでも紹介したい。

分散型の次世代認証基盤を使った「鍵」を開発するビットキーがVOYAGEなどから3.4億円を調達

ブロックチェーンに似た分散技術などを活用し、独自の電子鍵テクノロジーを開発するスタートアップ、ビットキーは12月26日、総額3.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はVOYAGE VENTURESと、複数の事業会社経営者、エンジェル投資家だ。

ビットキーのキーテクノロジー「ビットキー」は、次世代ID/Keyとして、スマートコントラクトやスマートオラクルを応用した各種分散技術、暗号化技術などを活用した、同社独自のデジタルキー基盤だ。分散技術でもブロックチェーンは使わず、独自でブレイクスルーした技術を用いているという。

ビットキーは「改ざん不可能で、複数間で安全にやり取りでき、コスト面にも優れたID・電子鍵のプラットフォーム」として、サービス提供を目指している。また同社はビットキーを搭載した、物理的なスマートロックデバイスの開発も行っており、まずはBtoC領域で提供していく構えだ。

同社は2018年8月創業(会社設立は5月)。ビットキー代表取締役 CEOの江尻祐樹氏は、リンクアンドモチベーショングループでコンサルタント業務に従事した後、ワークスアプリケーションズへ入社。コンサルタントとして活動しながら、旧知のエンジニアたちとともに、2017年末にブロックチェーン/分散システム研究会を立ち上げた。

その後、ブロックチェーン/P2Pや分散技術を活用した、新しいデジタルID認証/キー基盤を開発し、事業化するべくビットキーを設立。江尻氏がワークスアプリケーションズで出会った、共同代表でCOOの福澤匡規氏と、同じく共同代表でCCOの寳槻昌則氏とともに、研究会の参加者を中心にしたメンバーでスタートした。

ビットキー代表取締役 CEO 江尻祐樹氏

江尻氏は会社設立の動機について「ちょっと壮大に聞こえるかもしれませんが、デジタル化が進む現代において、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)やBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などのジャイアントに独占、支配、依存することで生じている社会問題の解決です」と語る。

つまり、巨大デジタル企業の台頭により起きるデータ寡占の問題を、分散型テクノロジーを使うことで、解決したいということだ。

「裏を返すと、より安全で利便性の高い、デジタル社会のID・権利・取引のプラットフォームを生み出して、世の中を前進させたいともいえます」(江尻氏)

ビットキーでは今回の資金調達により、開発体制の強化を図る。また、今後の正式リリースに備え、セールスやマーケティング、カスタマーサクセスなどの体制づくりも行っていく。

またその後の展開について、江尻氏は「2019年には、スマートロックほか関連プロダクトの『Tobira事業』でロケットスタートを切り、世界一のシェア、出荷台数を1年で実現したい。2020年には日本で、家、オフィス、ホテルなど、どこの扉もビットキーを使って開けるのが当たり前、というのを目指す」と話している。

2020年はTobira事業以外でも、モビリティやスマート行政などの領域にも進出し、可能であればオリンピックでも活用してみたい、と江尻氏はコメント。2021年にはメディカルや自動運転車などとの連携、グローバルへの本格進出も目指すとしている。

「中国、アメリカ(企業の進出の仕方)とは違う、コミュニティの仲間を増やし手を取り合う形で、さまざまな国と連携して、世界の“デジタル社会インフラ”にしていきたい。初めはアジア、ヨーロッパへの展開を想定しています」(江尻氏)

またR&Dの面でも「政府や大学・研究機関と連携し、よりセキュアでセーフティの高いプラットフォーム化や、生体認証・AIと連携した、デバイスすらいらない認証基盤・デジタルキープラットフォーム化についても少し話をし始めている」と江尻氏は述べていた。

トランプの国境の壁を支援する民間人によるクラウドファンディングは何が問題なのか?

フロリダの人間は、大蛇ワニレストランの珍事件など、奇妙な事件に遭遇することが多いようだ。 それは、2013年、Twitterのパロディーアカウント「フロリダマン」が登場してからのことで、たちまち大人気になった。

だが、5日前にクラウドファンディング・プラットフォームGoFundMeでフロリダマンが開始した、ドナルド・トランプが推進するメキシコ国境の壁の建設資金を集めるためのキャンペーンは、どうもジョークにしか思えない。10億ドル(約111億円)という強気な目標を立てて先週の日曜日にローンチしてばかりだが、すでに20万人以上の個人から1300万ドル(約14億5000万円)もの資金を調達した。GoFundMeのキャンペーンには締切がない。

その増え続ける巨額の現金の山がどこへ行くのか、そこに疑問がわく。このキャンペーンを立ち上げたBrain Kolfageという男性は、以前、10月にFacebookによって削除されたRight Wing News(右翼ニュース)というFacebookページと共に、陰謀説を唱えるウェブサイトを運営していた。

イラクに派遣されて両足と片腕を失ったアメリカ退役軍人のKolfageは、GoFundMeのページで自身の行動の公共性について長々と話している。また彼は、Fox Newsに「何度も登場している。(だから)自分が信頼できる実在の人物であることがわかる」だろうと言っている。その一方で彼は、寄付しようと思っている人の気持ちを「邪魔したくない」と昨日(現地時間21日)のNBC Newsで語り、これまでのメディアでの問題発言については言及しなかった。

それより心配なのが、寄付の100パーセントが「トランプ・ウォール」に使われるとKolfageはGoFundMeのページに書いているが、今の時点では、その資金を政府に提供できる制度がない。それを実現するためには、そのための法案が議会を通過しなければならない。Kolfageはこう言っている。「この資金を、適切な場所にどのように届けるか? 私たちはトランプ政権と連絡をとり、調達が完了した時点で資金を送る先について確認をしています。この情報が確定し次第、お知らせします。すでに私たちは、非常に高度なレベルで複数のコンタクトをとり、支援を得ています」

このページでは、また、Carlyle Groupの共同創設者David Rubensteinが750万ドル(約8億3400万円)をワシントン記念塔のてっぺん近くにできたひび割れの修繕費用として寄付した2012年の話を例にあげて、アメリカ政府が過去に個人の投資家から巨額の寄付を受け取っている事実を伝えている。しかし、彼のGoFundMeキャンペーンでは、米国議会がその活動の背後にあり、750万ドルの寄付が、それに同額を上乗せする条件(マッチングギフト)で修繕に使用されたのかどうかは明らかにしていない。

たしかに、National Endowment for the Humanities(全米人文科学基金)などのいくつもの政府機関が、マッチングギフト制度のもとで個人の寄付を受け取っている。しかしこの考え方は、寄付金で政府主導の活動に大きな力を与えるものであり、自分たちには決定権のない寄付を募ることになる。バージニア州選出の共和党下院議員で下院司法委員会の議長を務めるBob Goodlatteは、昨日、New York Postにこう述べている。「市民が資金を集めて『政府がこういう目的で私の金を使う』と宣言することなど、とうてい許されない」

アメリカ人有権者のおよそ3分の1が共和党支持者で、その3分の2がトランプが推し進める国境の壁の建設を支持していると考えると、Kolfageの10億ドルの目標が突拍子もない額だとは言い切れない。キャンペーンにはすでに、5万ドル(約560万円)を寄付した人が1人現れている。さらに勢いがつけば、他の人たちも、これが財政的政治的な力を動かす単純で直接的な方法だと思うようになる。

このまま勢いが高まれば、ある時点でこのキャンペーンには、Kolfageに寄付することが賢い方法なのか否かという疑問とは別に、いろいろな問題が浮かび上がってくる。なかでも、紐付きの寄付を政府が受け取ることは法律に反するわけだが、アメリカの一般市民がGoFundMeなどの資金調達プラットフォームを通して団結すれば、ロビイスト・グループのような大きな力を振るうようになるかも知れないという心配がある。KolfageのGoFundMeキャンペーンにどれだけ金が集まっても、政府は壁を作る責任を負うわけではないが、共和党議員たちはすでに、壁の建設のための寄付を財務省が国民から受け取れるようにする法案の準備を進めている。来月、民主党が下院の過半数を占めるようになれば、この法案が通る見通しは消えるが、将来の政権に筋道を付ける可能性は残る。

では、Kolfageが集めた数百万ドルの資金はどこへ行くのか。それを見るのは興味深い。昨日のNew York Postの記事にも書かれているが、GoFundMeでは、「明記された用途以外に資金を使ってはいけない」という規定がある。そのため、政府がKolfageと協力する道が絶たれれば、Kolfageは寄付者に寄付金を返金しなければならなくなる。または、少くともGoFundMeは(我々の質問への返答はないが)、そうする責任を負うことになるだろう。

GoFundMeは、以前にも寄付者に返金をしたことがある。

つい先月のことだ。ニュージャージーの夫婦と1人のホームレスの男性が、GoFundMeを使って作り話で40万ドル(約4450万円)以上を集めた罪で告発された。彼らはその金を、車や旅行や高級ハンドバッグやカジノなどに使っていた。その夫婦と男性は、不正行為による窃盗を犯したことから、詐欺と共謀による第二級窃盗罪に問われている。GoFundMeは、キャンペーンに寄付をした1万4000人の寄付者に全額を返金すると話している。

おかしなことに、GoFundMeは、自社がどれだけの資金を調達しているかは公表していない。同社に投資をしているのは、Iconiq、Stripes Group、Accel、TCV、Greylock、Meritech Capitalなどだ。GoFundMeが最初に外部からのラウンド投資を受けたのは4年前。同社は2010年に設立されている。

上の写真:コロラド州キャッスルロックにある小規模ショッピングセンター。ここでKolfageのGoFundMeキャンペーンへの寄付が呼びかけられていた。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

IoT/M2M関連ソリューション提供のアプトポッドが8億調達

自動車産業をはじめとするさまざまな産業に向けIoT/M2M関連ソリューションを提供するアプトポッドは12月20日、シリーズBラウンドで総額約8億円の第三者割当増資による資金調達を実施したと発表。引受先は鴻海ベンチャー投資のパートナーである2020、未来創生2号ファンド、そしてSUBARU-SBI Innovation Fund。

2006年に設立され産業IoTミドルウェア/サービス製品を開発・提供しているアプトボットは2017年2月に実施したシリーズAの資金調達以降、大型案件やグローバル展開へ向けた人材採用の強化、製品機能の拡充、そして革新的な産業 IoT の実現に向けた新たな研究開発に注力してきた。

2018年、同社は1月に動車産業における研究開発向けクラウドサービスパッケージ「Visual M2M Automotive Pro」、そして5月に産業IoTミドルウェア「intdash」ならびに時系列データの可視化・ 解析を支援するWebアプリケーション「Visual M2M」を正式リリース。

同じく2018年5月にはサイボーグを開発するメルティンMMIとサイボーグ技術と高速IoT技術の融合によるアバターロボットプラットフォームの実現を目指した共同研究を開始したと発表している。

自動車、産業機器、ロボティクス/ドローンなどの産業における「大容量モバイル通信(大容量 LTE/5G)を視野に入れたデジタルトランスフォーメーションプロジェクト」や「次世代に向けたコネクテッドサービスプロジェクト」、「MaaS社会に向けた実証プロジェクト」など先進的なプロジェクトにおいて、アプトポッド製品の採用が進んでいるという。

アプトポッドいわく本ラウンドは「これらの採用実績や急増するプロジェクトへの対応を踏まえ、事業会社との関係性強化 による事業拡大、経営資源の確保、製品開発の加速」を目的とした資金調達。具体的には、様々な次世代要件に向けた技術開発を深化、製品機能の拡張開発・急増するプロジェクトへの安定対応体制の強化、そして海外事業展開を目的としている。

スマホで手軽にできるAR対戦アプリ「ペチャバト」はガチで身体を動かすシューティングゲーム

AR技術を使ったゲーム、といえば「ポケモンGO」を思い浮かべる人が多いだろうか。最近さまざまなARゲームが登場しているが、今日登場したのは身体を「ガチで」動かすゲーム。12月12日に正式リリースされた「ペチャバト」(iOS版)は、スマホで手軽にできるAR対戦シューティングアプリだ。

ペチャバトは、4人まで参加できる対戦型。スマートフォンを使って、雪合戦やドッジボールのように、タップして「弾」を投げ合い、相手のスマホの位置に表示される「的」に弾が当たってインクがはじけたら得点になる。必殺技を当てることができれば、より多く得点できる。

攻撃を当てながら相手の攻撃を避け、相手のHPを削りきるか、制限時間終了時によりHPが残っていたユーザーが勝利となる。

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ペチャバトを開発したのは、2017年8月創業のGraffity。空間を複数人のスマホで共有して“見る”ことができる、独自のAR技術が実装されていることが、ゲームのカギとなっている。

冒頭にも挙げたポケモンGOは、スマホで手軽に遊べる点はペチャバトと同じ。ただ、今年中に予定されている対戦モードの実装は、もうちょっとだけ待たなければならないようだ。

また先日、プロリーグ立ち上げが発表された対戦型ARスポーツ「HADO」では、リアルタイムに試合が楽しめるが、ヘッドマウントディスプレイとアームセンサーを装着してプレイするスタイルは「スマホで手軽に」というのとは、ちょっと違う。

Graffity代表取締役の森本俊亨氏は「スマホ同士でAR空間を、1秒以内という瞬時で共有できる体験を提供するのは、世界中でも初めてのことではないか」と話している。そして、ポケモンGOの対戦対応も相まって「AR共有の形が変わり、これから多くのアプリが出るのでは」と推測する。

「AR空間共有の一つの事例として、雪合戦や鬼ごっこのようなオフラインにデジタル化を持ち込んだ、世界初の事例がペチャバト。とてもイノベーティブなプロダクトだと考えている」(森本氏)

12月初めごろから一部ユーザーにテスト公開されてきたペチャバトは、ユーザー同士の招待により広まり、1週間で1万バトルの対戦が繰り広げられたという。ユーザーは、男子高校生・大学生を中心に想定しているそうだ。

利益化については「順調に推移したところで、ソーシャルゲームとしての課金と広告によるマネタイズを検討している」とのこと。広告については「当初は動画広告を想定しているが、AR独自の価値を使ったものも開発していきたい」と森本氏は話している。またAndroid版についても、iOS版での検証後に開発を予定。来年中には海外への展開も考えているという。

すべての現実空間を3次元データ化するARCloud構想

Graffityでは、これまでにも空間上に落書きを保存してほかのユーザーと共有できる「Graffity」を2017年11月にリリース。AR体験を共有できるビデオチャットアプリなども打ち出し、グローバルでの検証を行ってきた。

森本氏は「ARで人と人とのつながりにイノベーションを起こしたい」と話す。これまでコンシューマー向けのARプロダクトにフォーカスして開発してきているが、森本氏はそのこだわりについて「B2CのARは大きな領域。2019年、2020年に向けて本格的に立ち上がる分野だと考えている。その大きなところを取りに行きたい」と述べている。

Graffityはペチャバト正式リリースと同時に、総額8000万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。第三者割当増資の引受先は國光宏尚氏、佐藤裕介氏、古川健介氏、中川綾太郎氏、伊藤将雄氏、大冨智弘氏、ほかエンジェル投資家2名とベンチャーキャピタル1社(企業名は現段階では非公開)。GraffityにとってはプレシリーズA調達に当たる。

調達資金は「人材獲得とマーケティングに投資する。またもちろん、プロダクトを育てることにも使っていく」と森本氏は話す。さらに「すべての現実空間を3次元データとしてクラウドに保存する」という「ARCloudプラットフォーム」構想についても説明。そこにも投資していく、と語っている。

これは実に壮大な構想で、2次元でそれを実現してGoogle マップに落とし込んだ、Googleがやっていそうな計画だ。森本氏は、ARCloudプラットフォームの実現には「データ、それもリアルタイムでのデータ取得が大事になる」という。

「Googleは屋外データは着々と取得していると思うが、我々は屋内・室内の3次元データをゲーミフィケーションで取っていこうと考えている。それがGraffityの中長期的なビジョンだ」(森本氏)

またB2Cプロダクトへのこだわりを見せた森本氏だが、「B2Bについてもいろいろと技術提供を始める準備をしている」とのこと。「これから他社とのコラボレーションで研究開発を本格化させる」と述べていた。

名刺管理のSansanが30億円を調達、法人向けサービスは7000社以上で導入

個人向けの名刺管理アプリ「Eight」や法人向けの「Sansan」を提供するSansanは12月6日、日本郵政キャピタル、T. Rowe Price Japan Fund、 SBI インベストメント、DCM Venturesから合計約30億円の資金調達を実施したと発表した。

2017年8月には未来創生ファンド、DCM Ventures、Salesforce Venturesから約42億円を調達したことを発表している。これまでの累計調達総額は約114億円だ。

Sansanは今回のシリーズEラウンドを通じ、「出会いから イノベーションを生み出す」という新たなミッションのもと「名刺を起点とした、イノベーションを生み出す事業の展開を加速していく」予定だ。旧ミッションは「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」。

Sansanは2007年6月に設立し、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を開発・提供。大手企業を中心に7000 社以上で導入されている。加えて2012年より個人向け名刺アプリ「Eight」を提供開始。現在登録ユーザーは200万人を超えている。

AI開発ノウハウをオープン化するABEJA、米Googleから数億円規模と見られる資金調達

AIプラットフォーム「ABEJA Platform」などを展開するABEJAは12月4日、2018年6月に実施して42億5000万円を集めたシリーズCのエクステンションラウンドとして、Googleなどを引受先とした第三者割当増資を発表した。Googleからの出資は、同社の投資部門(GV)からの出資ではなく、Google本体からの出資となる。

調達金額は非公開ではあるものの、企業データベース「Crunch Base」によれば、シリーズC以前の同社の累計調達金額は、金額が公開されているものだけを合わせても約4500万ドル(現レートで約50億円)。同社が本日発表したリリースには「累計調達額は60億円を超えた」とあるから、非公開分やレート差分を考慮すると数億円台後半、もしくは10億円前後の規模だと推測できる。

ABEJAは2012年の創業で、当初よりディープラーニングを軸とするAIを活用したプラットフォーム「ABEJA Platform」の開発に取り組んできた。これは、ABEJAが蓄積した過去の開発実績やノウハウをオープンなプラットフォームとして提供するというもの。様々な業界、顧客に合わせたソリューションを提供しており、AIの本番運用を支援した企業数は現在150社を超えるという。

また、小売・流通業界、製造業界、インフラ業界向けに特化したパッケージサービス「ABEJA Insight」も提供しており、これまでに国内約100社への導入実績があるという。2017年3月にはシンガポールに法人を設立し、グローバル展開も果たした。

Google Cloud Japan代表の阿部伸一氏は、「ABEJAは、機械学習領域における優れた技術力のみならず、日本のAI市場において数多くの企業と実装レベルでの協業実績を持つ」とコメントし、ABEJAの技術力と導入実績を評価した。

ABEJAは今回の資金調達ラウンドの実施を受け、「引き続きAI、特にディープラーニングの活用により国内外問わず多様な業界やシーンにおけるビジネスのイノベーションを促進し、産業構造の変革に貢献する」とコメントしている。

ブロックチェーン導入コンサルのBlockBase、家入一真氏ら率いるNOWから数千万円を調達

ブロックチェーン技術の導入コンサルティングを行うBlockBaseは12月3日、起業家の家入一真氏と投資家の梶谷亮介氏が代表を務めるNOWから資金調達を行ったと発表した。金額は非公開だが、数千万円規模の調達と見られる。

「ブロックチェーン」という言葉はすでに市民権を得ているように思うが、実際にその技術をビジネスに導入しようと思うと何から手につけていいか分からないという企業も多いだろう。BlockBaseはそういった企業向けにブロックチェーン技術の導入コンサルティングを行うスタートアップだ。コンサルティングの具体的な内容は以下の通り。

  • 課題の把握とプロジェクトスコープの再設定
  • 現場の技術者とチームを組み、プロダクトアウト的な高速プロトタイピングの実行
  • チームビルドを通じ、ボトムアップ的なロードマップの策定、経営層への提案支援

また、同社はブロックチェーン関連技術を活用した自社プロダクトの企画・開発も手がけている。BlockBaseによれば、特にビジネスのセクターや採用する技術に制限は設けておらず、今後もプロダクトのプロトタイピングを高速、大量に繰り返していく方針だという。

今回の資金調達ラウンドに参加したNOWは、2018年6月にCAMPFIRE代表の家入一真氏、ファンドや証券会社でスタートアップ投資やIPO支援などを行ってきた梶谷亮介氏が設立したVCだ。家入氏は連続起業家としてこれまでもエンジェル投資を行い、若手起業家に対してアドバスする立場にあった。NOWは、その家入氏が“VCでありながらエンジェル投資家である”という姿勢を維持しながら投資を行うというのが特徴のVCだ。

NOWはこれまでに、ブロックチェーンを政治コミュニティサービスに活用したPolipoliや、オープンソースコミュニティを運営するBoostIOなどに投資を行ってきた。なお、NOWは同日、BlockBaseへの出資とともに、新生銀行、大和証券グループなど計7社から20億円の出資を受け、セカンドクローズを実施したことも併せて発表している。

建設職人向け情報サイト「職人さんドットコム」が1.45億円を資金調達

IT活用が遅れているといわれ続けてきた建設業界だが、多くの人・モノ・金がかかわる業界だけあってこの数年、仕事の受発注マッチングアプリ「助太刀」や写真管理アプリ「Photoruction」など、スタートアップの動きが活発になった分野でもある。

そんな中で、建設職人向けの情報サイト「職人さんドットコム」を運営する職人さんドットコムは、2006年3月設立と界隈の中では“老舗”と言える企業だろう(何しろTwitterと同じ年の設立だ)。同社は12月3日、大和企業投資、サムライインキュベート、三菱UFJキャピタル、みなとキャピタルを引受先として、総額1.45億円の第三者割当増資を実施したと発表した。

2006年の創業当初は、建築業界向けにホームページ作成サービスを提供していた職人さんドットコムだが、2013年4月に職人のスマートフォン向け情報発信サービスとして、自社サイト運営を開始。創業者で代表取締役の猪澤幸男氏が、職人として働いていた時代に建設現場で感じた「情報不足」「情報化の遅れ」を解消し、職人が働きやすい現場を実現したい、という思いから、情報流通の場として運営してきた。

2018年5月にサイトをリニューアルし、現在は求人情報や、プロ向け資材・工具のショップ検索、工具・資材のメーカー検索などのサービスを、職人向けに無料で提供。また、2017年からスタートした「工具防犯登録」では、電動ドリルやレーザー測定器など、高額なプロ工具の盗難を防ぐための防犯登録システムを提供する。

同社では資金調達により、工具防犯登録システム、サービスの拡充に向けた社内体制の強化や、職人向けSNSなどの新事業展開のため、マーケティングや人材採用、セキュリティ強化などへ投資を行うとしている。

オープンソースの貢献者が報われる文化を——報賞金サービス「IssueHunt」運営が1億円を資金調達

オープンソースプロジェクトの多くは、コードの改良(メンテナンス)を行うメンテナーの無償の働きにより維持されている。世界中のIT企業がオープンソースを利用して開発を行っているにもかかわらず、そのことは称賛されるどころか、あまり意識されることもない。なんなら「いいコードが“無料”で“落ちていた”」という扱いを受けていることさえある。

「世の中へ素晴らしい貢献をしてくれている彼・彼女らに、何か恩返しができないだろうか」オープンソースプロジェクトの貢献者へのこうした思いから、報賞金サービス「IssueHunt(イシューハント)」がリリースされたのは、今年6月20日のことだ。

そのIssueHuntを運営するBoostIO(ブーストアイオー)が12月3日、総額約1億円の資金調達を実施したと発表した。第三者割当増資の引受先は、ベンチャーキャピタルのANRINOWと以下の個人投資家たちだ。

  • LayerX CEO 福島良典氏(Gunosy 元CEO)
  • DMM.com CTO 松本勇気氏
  • Increments 代表取締役 海野弘成氏
  • 中川綾太郎氏
  • 古川健介氏
  • メルカリ 木下慶氏
  • Progate 代表取締役 加藤將倫氏
  • Cryptoeconomics Lab Co-founder CTO 落合渉悟氏
  • 非公開1名

IssueHuntは、GitHubのリポジトリ(プロジェクトのデータベース)に上げられたイシュー(課題、バグ報告など)に対して、誰でも好きな額を報賞金として「投げ銭」できるサービスだ。リポジトリのオーナーは自分が管理するリポジトリを指定することで、IssueHunt上にイシューを自動的にインポートすることが可能。ソースを利用するユーザーに投げ銭を依頼したり、コード改良などの貢献を求めたりできる。

報賞金付きのイシューに対して改良を行ったユーザー(コントリビューター)がプルリクエスト(レビュー・反映依頼)を行い、コードレビューを経て反映が完了すると報賞金がもらえる。金額のうち10%をBoostIOが手数料として、20%をリポジトリのオーナーが受け取り、残りの額をコントリビューターが受け取ることができる。

リリース後半年ほどだが、既に150カ国以上のユーザーがIssueHuntを利用。Alibabaの有志が開発するAnt Designや、もとはIntelで開発されていたNW.js(node-webkit)、Googleのマテリアルデザイン実装のためのReactコンポーネントを提供するMATERIAL-UIといった有名なオープンソースプロジェクトも参加している。

BoostIO代表取締役CEOの横溝一将氏は「有名プロジェクトの参加が信用の担保になっている」と好調の理由を分析。現在、約90%が国外のユーザーであり、また自分でオープンソースソフトウェアを開発するような、レベルの高いユーザーが多いそうだ。

オープンソースの世界でも開発者の貢献に応える文化を作る

“オープンソースのメンテナーたちは疲れ果てて、支払いを受けることも稀である。新世代にむけて経済を変えていこう。”
TechCrunch Japan記事「オープンソースの持続可能性」より

横溝氏はこの記事の内容に触れ、「共感しかない」とコメント。「オープンソースの環境は持続可能性に欠ける。無償ボランティアを超えて、貢献者に報酬が行き渡らないと続いていかない」と述べている。

「オープンソースソフトウェアの多くが無償のボランティアで作られている。でもそれらのソフトウェアは、いつの間にかあった、とか、機械が自動的に作っている、というわけではなくて、誰かが時間を使って、クリエイティビティや労働力をつぎ込んでいるんです」(横溝氏)

横溝氏は2014年、大学在学中に福岡で起業した。当初は受託でシステム開発を行っていたが、2016年4月にプログラマ向けのEvernoteライクな開発アプリ「Boostnote(ブーストノート)」を公開。このBoostnoteを2年ほど、オープンソースで運用したことが、IssueHunt誕生のきっかけとなった。

Boostnoteはプログラマのためのノートアプリであり、200以上の国と地域で使われているが、そのプロダクトは開発者コミュニティに支えられている。「コミュニティでイシューを上げて改修してもらうことで、とてもよいプロダクトになった」と横溝氏は言う。

今ではコアチームが開発に関わることはほとんどなく、コミュニティ主体で運営が行われているBoostnote。その体験から「貢献者にお返しができていないことを、心苦しく思っていた」と横溝氏はいう。そのBoostnoteの貢献者のために作られた報賞金プログラムが、IssueHuntの原型だった。

報賞金プログラムを開始して1週間で、レビューが追いつかないほどのプルリクエストが届くようになったというBoostnote。「これはオープンソースのエコシステムが抱える課題を解決できるのでは」との考えから、IssueHuntがスタートすることになった。

IssueHuntに登録されているプロジェクト数は、今は数百程度で、横溝氏は「まだまだ」とさらなるサービス浸透を狙う。

「IssueHuntは、オープンソースソフトウェア開発者の貢献に応える、という文化を作っていくプロダクト。だからそう簡単には利用は拡大しないとは思っているけれども、どんどん参加を増やしていきたい。1年半後には、オープンソースの開発者なら誰でも聞いたことがあるサービスに、3年後には、みんなが使っているという状況を目指したい」(横溝氏)

横溝氏は、日本のオープンソース環境についても課題感を持っている。「オープンソースプロジェクトに貢献する開発者が少ない。その理由のひとつは英語力。でも意外と壁は高くないんです。それを開発者に伝えるのも我々の務め。ミートアップや学校と連携したハッカソンなどを開催していこうと考えています」(横溝氏)

オープンソースへの貢献が少ない、もうひとつの理由として横溝氏は「隠したがること」とプログラミング文化、意識の違いを挙げる。「組織に所属するエンジニアなどは特にそうだが、隠しておく方が自分や組織のためになる、得をする、という考えが強い。これについてもオープンソースのメリットを啓蒙して、IssueHuntが先駆者となる開発者を作る土台になれば、と思っています」(横溝氏)

そうした啓蒙の取り組みの一つとして、12月1日からスタートしたのが、オンラインイベント「IssueHunt Fest 2018」だ。世界中のオープンソースプロジェクトを対象に、IssueHuntを通じてスポンサードを12月25日までの約1カ月間行う。

「企業のオープンソースに対する寄付貢献を一般化したい」ということで、今回初めて開催されるイベントだが、Microsoft、LINE、メルカリ、Framgia、Cryptoeconomics Labをはじめとした企業がスポンサーとして参加。今後、毎年12月・4月の約1カ月、それぞれ定期的に実施していく予定だという。

参加した開発者には、貢献度に応じて、例えば「プルリク3件以上でステッカーを送付」とか「上位10人にはTシャツをプレゼント」といった特典も予定されているそうだ。

海外では、オープンソースであっても商用ユーザー向けにはライセンスが発行できるというサービス「License Zero」や、プロジェクト支援のプラットフォーム「Open Collective」などが既に提供されている。「企業がオープンソースに寄付をするという文化がある。それを日本にも根付かせたい」と横溝氏は話している。

さらに横溝氏は、JavaScriptコンパイラのBabelなど、現在は世界中でも片手ほどしかいない専業のオープンソース開発者を「1万人ぐらいにしたい」と意気込みを語る。「開発者が、オープンソースへの貢献だけでも生活が担保されるようなきっかけを作りたい」と述べている。

「BoostIOのミッションは“才能だけで正当な評価が行われるようにする”こと」そう話す横溝氏。今回の調達資金は「マーケティングなどへの投資ではなく、オープンソースを持続可能にするためのチャレンジに使う」という。

「投資というよりは、コミュニティに還元したい。世界中でカンファレンスを開くことも考えていて、2019年4月にも開催を予定している。またBoostIOのチームは世界中に散らばっているので、世界で採用を進めるつもり。例えばオープンソース専業の開発者を企業として雇用する、といったことも考えている」(横溝氏)

「日本企業がオープンソースを支えるためにお金で貢献できるような文化を作る。オープンソースに貢献する会社がクールだと思われ、それが当たり前だと思われるような文化にしたい」と横溝氏は語る。

BoostIO代表取締役CEOの横溝一将氏