Google協力、QunaSysが量子プログラミングや量子アルゴリズムを学ぶイベント「Cirq Bootcamp」開催

Google協力、QunaSysが量子プログラミングや量子アルゴリズムを学ぶイベント「Cirq Bootcamp」開催

QunaSys(キュナシス)は、Googleの協力のもと、量子プログラミングや量子アルゴリズムを学ぶイベント「Cirq Bootcamp」を開催すると発表した。開催期間は6月26日午前9時から14時(JST)。参加費は無料。対象は、量子コンピューティングに興味がある大学生・大学院生だが、高校生や社会人も参加可能としている。開催形態はオンラインのみ(Zoom)。申し込みの際登録したメールアドレスにZoomの招待リンクを送付する。

同イベントでは、Googleがオープンソースで開発している、量子プログラミングフレームワーク「Cirq」を解説する。NISQ(Noisy Intermidiate Scale Quantum)デバイスに特化したPython用ライブラリーにあたり、基本的な使い方から研究事例まで採り上げ、量子アルゴリズムの理解を深めることを目的としている。

イベント前半ではCirqの使い方を学び、後半では「Google Quantum AI」の研究者がCirqを活用した実際の研究を紹介する。

NISQデバイスとは、中規模の誤り訂正無しの量子コンピューターを指す。2019年にGoogleがNISQデバイスによる量子超越性を示して以来、NISQデバイス上で実行可能なアルゴリズム開発や誤り訂正の実現に向けた研究が加速している。

「Cirq Bootcamp」開催概要

  • 開催期間:6月26日午前9時から14時(JST)。途中抜け・途中参加可
  • 対象:大学生・大学院生。高校生・社会人などの参加も可能
  • 参加費:無料
  • 開催形態:オンラインのみ。申し込みの際登録したメールアドレスにZoomの招待リンクを送付
  • 申し込みCirq Bootcampの「Cirq Bootcamp 応募フォーム」より行う

プログラム概要

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量子ビジネス構築に向けCambridge QuantumとHoneywellが合弁会社を設立

つい先日、量子コンピュータへの参入を発表したばかりのHoneywell(ハネウェル)と、量子コンピュータのソフトウェア開発に注力しているCambridge Quantum Computing(ケンブリッジ・クォンタム・コンピューティング、CQ)は米国時間6月8日、Honeywellの量子ソリューション(HQS)事業とCQを新たな合弁会社という形で統合すると発表した

HoneywellはCQと長く提携しており、2020年CQに投資もした。今回のアイデアは、HoneywellのハードウェアとCQのソフトウェアに関する専門知識を合わせ、両社がいうところの「世界最高性能の量子コンピューターと、初の最先端量子オペレーティングシステムを含む量子ソフトウェアの完全な組み合わせ」を構築することだ。

2社(両社のプレスリリースでは「コンビネーション」と呼んでいる)は、2021年の第3四半期に取引が完了すると見込む。Honeywellの会長兼CEOであるDarius Adamczyk(ダリウス・アダムジク)氏が新会社の会長に就任する。CQの創業者でCEOのIlyas Khan(イリヤス・カーン)がCEOに就任し、現在のHoneywell Quantum Solutions(ハネウェル・クオンタム・ソリューションズ)の社長であるTony Uttley(トニー・ウットリー)氏は、新会社でもその役割を継続する。

HoneywellがHQSをスピンオフし、CQと統合して新会社を形成し、リーダーシップと財務面での役割を果たしていく構想だ。Honeywellは、新会社の過半数の株式を所有し、2億7000万〜3億ドル(約300〜330億円)を投資する。また、新会社との間で、量子ハードウェアの中核となるイオントラップの製造に関する長期的な契約を結ぶ。CQの株主は、新会社の45%を所有することになる。

画像クレジット:Honeywell

アダムジク氏は「新会社は業界最高の人材、世界最高性能の量子コンピュータ、初の最先端量子オペレーティングシステム、そして量子コンピュータ業界の未来を牽引する、ハードウェアに依存しない包括的なソフトウェアを有することになります。新会社は、量子コンピューター業界の爆発的な成長を支える重要なグローバルインフラを提供することで、短期間に価値を創造する上で非常に有利な立場にあります」と述べた。

2社は、量子ビジネスを成功させるには、大規模な投資に支えられ、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたワンストップショップを顧客に提示する必要があると主張している。2社は今回の統合により、それぞれの専門分野におけるリーダーとしての地位を確立し、事業を拡大するとともに、研究開発や製品ロードマップを加速することができるとしている。

「2018年にHoneywellの量子ビジネスを初めて発表して以来、多くの投資家から、このエキサイティングでダイナミックな業界の最前線にある当社の先端技術に直接投資したいという声を聞いてきましたが、今回、それが可能になります」とアダムジク氏は話した。「新会社は、急速な成長を促進するために必要な、新しい多様な資金源を大規模に確保する最良の手段となるでしょう」。

CQは2014年創業で、現在約150人の従業員を抱える。同社は2020年12月に発表した4500万ドル(約50億円)のラウンドを含め、合計7280万ドル(約80億円)を調達した。この最後のラウンドには、Honeywell、IBM Ventures、JSR、Serendipity Capital、Alvarium Investments、Talipot Holdingsが出資した。これは、異なる技術を使用しているものの、多くの点で新会社と直接競合しているIBMが、新会社の(小さな)一部を所有することになったことも意味している。

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画像クレジット:Honeywell

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

IBMと東京大学が量子コンピューター実用化に必要な部品の試験を行うハードウェア・テストセンターを開設

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IBMは6月7日、将来の量子コンピューター技術の研究開発を行うハードウェア・テストセンター「The University of Tokyo – IBM Quantum Hardware Test Center」を東京大学浅野キャンパスに開設し、量子コンピューター動作環境を再現するプラットフォーム「量子システム・テストベッド」を設置したことを発表した。

同センターの開設は、IBMと東京大学が2019年12月に設立を発表した「Japan–IBM Quantum Partnership」に基づくもの。このパートナーシップは、「産業界とともに進める量子アプリケーションの開発」「量子コンピューターシステム技術の開発」「量子科学の推進と教育」の3つの推進を目指している。IBMはこれを「量子コンピューターの研究開発を進めるための日本の産学連携プログラム」と位置づけている。

東京大学に設置した量子システム・テストベッド

量子システム・テストベッドは、量子コンピューターに必要な部品の試験を行うための大規模なプラットフォームだ。IBMと東京大学は、日本の参加企業や団体にアクセスを提供し、量子コンピューターの実用化に不可欠な材料や部品・技術の研究開発を行うことにしている。たとえば、「高度な極低温マイクロ波コンポーネントとサブシステムおよび制御エレクトロニクス」「超伝導量子ビットを安定的に動作させるために必要な材料」「高品質な信号伝送に必要な高周波部品や配線」、さらに「極低温を実現するために必要な冷凍機やコンプレッサー」とそれらの制御技術などが含まれる。

また、ナノ構造物理や超伝導などの研究で知られる仙場浩一氏が6月1日付けで東京大学大学院理学系研究科に特任教授に着任し、各メーカーとの協業から研究開発を牽引してゆくことになった。

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東京大学に量子ネイティブ人材を育成する「量子ソフトウェア」寄付講座が開設、2021年6月1日~2024年5月31日の3年間

東京大学に量子ネイティブ人材を育成する「量子ソフトウェア」寄付講座が開設、2021年6月1日~2024年5月31日の3年間

電通国際情報サービスは5月24日、東京大学大学院に、協賛企業9社による「量子ソフトウェア」寄付講座を開設すると発表した。期間は2021年6月1日から2024年5月31日までの3年間。

この講座は、東京大学大学院理学系研究科に設置され、同研究室科の「知の物理学研究センター」の協力で推進される。寄付講座とは、大学外部の団体から資金や人材などの寄付を受けて開かれる講座のこと。協賛企業は、CSK、NTTデータ、電通国際情報サービス、日鉄ソリューションズ、三井住友フィナンシャルグループ日本総合研究所、日本電気、日本ユニシス、富士通、blueqat。

この講座の目的は次の3つ。

  1. 量子コンピューター、情報圧縮や計算の効率化に役立つテンソルネットワーク、情報抽出を行うサンプリング手法などを組み合わせた新しい量子機会学習手法や量子アプリケーションの開発
  2. 大規模シミュレーションによる量子コンピューターの背後に潜む物理の理解と最先端知見の獲得による社会実装における課題の解決
  3. 量子ネイティブな専門人材育成

2021年度は、試行段階として、学生向けのセミナー形式の講義、社会人向け講義、シンポジウムなどのイベントの実施を予定している。2022年から本格的な講座を開始し、量子ネイティブ人材の育成を行う。協賛企業は、自社社員をここで学ばせることもできる。

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長距離量子暗号通信の事業化を目指すLQUOMが資金調達、量子中継機の事業化に向けたプロトタイプ開発

長距離量子暗号通信の事業化を目指すLQUOMが資金調達、量子中継機の事業化に向けたプロトタイプ開発

長距離量子暗号通信の事業化を目指すLQUOM(ルクオム)は4月19日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による資金調達を実施したと発表した。調達額は非公開としているものの、8000万円規模とみられる。引受先は、インキュベイトファンド。

2020年1月設立のLQUOMは、長距離量子暗号通信の実現に必須となる量子中継機の開発および事業化を進めるスタートアップ企業。新関和哉氏(横浜国立大学 大学院工学府)が代表取締役で、堀切智之氏(横浜国立大学大学院工学研究院准教授)がテクニカルアドバイザーに就任している。

同社はこれまで、量子中継器の実現に必要な「量子光源」「量子メモリー」「インターフェース技術」の3つの要素技術の研究、またこれらの統合技術の開発を進めてきたという。今回調達した資金は、量子中継機の事業化に向けたプロトタイプの開発および人材採用に投資する。

実用化に向けて製品組み込みを目指す量子光源

実用化に向けて製品組み込みを目指す量子光源

量子インターネットを見据えた波長変換器

量子インターネットを見据えた波長変換器

現在の暗号通信は素因数分解問題を利用しており、最先端のコンピューターを活用しても、解読に膨大な計算時間を必要とし、その膨大な解読時間が暗号通信としての安全性を保証している。

一方、昨今開発が進む量子コンピューターの計算速度は、将来的に最新コンピューターと比較して桁違いに速くなるとされ、従来の暗号通信の安全性が危険に晒されることが想定されている。IoT、自動運転、遠隔医療、金融、軍事などは高度なセキュリティーが必要不可欠であり、新たな暗号通信が求められているという。

このような背景から、量子力学に基づく量子暗号通信が複数の研究機関で研究されているそうだ。

ただ、量子暗号通信を用いると、原理的にかつ絶対に盗聴が不可能であるものの、現時点では通信距離が数十km程度にとどまっているという状況にある。本格的な社会実装に必要な数百km以上の長距離通信が実現されるまでには至っていないという。

LQUOMは、この長距離通信を実現するために必要となる量子中継器の研究・開発について、国内外の研究機関と協力して行っており、近い将来の実用化を目指すとしている。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:資金調達(用語)横浜国立大学(組織)量子暗号(用語)量子インターネット(用語)量子コンピュータ(用語)LQUOM(企業)日本(国・地域)

IonQがIBMの量子コンピュータ開発キット「Qiskit」をサポート

先にSPACを通じて上場したイオントラップによる量子コンピューティング企業のIonQが米国時間4月12日、同社の量子コンピューティングプラットフォームをオープンソースのソフトウェア開発キットであるQiskitと統合すると発表した。つまりQiskitのユーザーはコードに大きな変更を加えることなく、自分のプログラムをIonQのプラットフォームに持ち込むことができる。

これは一見大したことはないように思えるが、QiskitはIBM Researchによって設立されたIBMの量子コンピュータ用デフォルトツールであることは注目に値する。IBMとIonQ(公平を期すためにいうと、この分野の他の多くの企業も)の間には健全な競争関係があり、その理由の1つは両社がそれぞれのプラットフォームの中核で非常に異なる技術を採用しているからだ。IonQはイオントラップに賭けており、これによりそのマシンは室温で稼働できるが、IBMの技術ではマシンを過冷却する必要がある。

IonQは今回、Qiskit用の新しいプロバイダライブラリをリリースし、GitHub上のQiskitパートナーリポジトリの一部として、またはPython Package Index経由で利用可能な、Qiskit用の新しいプロバイダライブラリをリリースした。

IonQのCEO兼社長のPeter Chapman(ピーター・チャップマン)は「IonQは当社の量子コンピュータとAPIをQiskitコミュニティが簡単に利用できるようにすることに興奮しています。オープンソースはすでに、従来のソフトウェア開発に革命を起こしています。今回の統合により、広く適用可能な第一世代の量子アプリケーションに世界が一歩近づくことになります」。

一方で、これはIonQがIBMを少しいじめているようにも見えるが、Qiskitが量子コンピュータを扱うデベロッパーの標準になったことも認めているともいえる。しかしこのようなライバル関係を別にすれば、私たちは量子コンピューティングの初期段階にあり、まだ明確なリーダーがいないため、量子コンピュータ向けのアプリケーションを開発したいと考えている開発者にとっては大きなメリットとなる。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:IonQIBMQiskit量子コンピュータ

画像クレジット:Kai Hudek, IonQ

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:塚本直樹 / Twitter

IBMが量子コンピュータQuantum System Oneを初めて民間の医療機関に導入

IBMは、近年、同社製のQuantum System One(クアンタム・システム・ワン)を世界各地に設置してきたが、米国時間3月30日、Cleveland Clinic(クリーブランド・クリニック)との新しい10年間パートナーシップ契約により、米国の民間セクターとしては初めてとなる設置を発表した。これは、IBMが自社施設以外で初めて設置される量子コンピュータというだけでなく、医療機関が購入し導入する初の量子コンピュータでもある。この契約により、クリーブランド・クリニックはIBMが間もなく運用を開始する次世代型1000量子ビットを超える量子コンピュータへのアクセスも可能になる。

今はまだ、商用量子コンピューティングはほんの初期段階であり、現在、ほとんどのユーザーは量子システムにクラウドを介してアクセスしている。実験としては、それで十分だ。しかし、量子コンピュータをオンプレミス(部内型)で設置し、システムをフルアクセスで使いたいと考える研究機関や商用ユーザーが次第に増えている。

今回の新しい契約は、IBMとクリーブランド・クリニックとの長期的なパートナーシップの一環だ。これには、IBMの高性能コンピューティングのためのハイブリッドクラウドのポートフォリオとAIツールも含まれる。またこのパートナーシップは、クリーブランド・クリニックが新しく開設するCenter for Pathogen Research & Human Health(病原体研究およびヒトの健康センター)の基礎ともなる。この施設は、オハイオ州、非営利経済開発団体JobsOhio(ジョブズオハイオ)、クリーブランド・クリニックによる5億ドル(約550億円)の資金援助に支えられている。

「今回紹介するのは、専用の完全なシステムを導入する初の【略】民間セクターまたは非営利団体と呼びたいところですが今はまだ【略】非政府機関ですが、本当に重要なのは、数十年間にわたる私たちの約束です」とIBM Research(IBM基礎研究所)の上級副所長でありディレクターのDario Gil(ダリオ・ギル)氏は私に話した。「ある意味、彼らは我々のロードマップ全体にわたるパートナーです。つまり、単に領収書をもらって、一連の量子コンピュータと、2022年には次世代量子コンピュータにアクセスできるようになるというだけの話ではありません。また彼らは、最初の1000量子ビット以上のシステムが欲しいと申し込んだ最初の人たちなのです」。

現在、量子コンピューティングに大きく投資できるのは、かなり先を見通せる団体だと彼は指摘する。国や州が、多岐にわたる広範な分野での可能性を有するこの生まれたばかりのテクノロジーに取り組み始めたのは、そのためでもある。だが、非営利団体も同様の賭けに出た。「彼らには、非常に高レベルの志があります。未来を見据えているからです」とギル氏は、クリーブランド・クリニックのリーダーシップについて語った。

契約の一部として、クリーブランド・クリニックの研究者たちは、IBMのクラウド内にある量子ポートフォリオ全体にアクセスできるようになるとギル氏はいう。IBMは、センターに内部設置された量子コンピュータの保守管理とサポートを行うものの、システム自体はIBMの所有となる。これはドイツや日本の政府系研究所との契約に似ていると彼は説明する。

「その保守管理とサポートは極めて重要です」とギル氏は、そうする理由について語った。「そのためには我々と、我々の専門性が必要です。しかもこれは、IBMの中でも最もセンシティブなテクノロジーでもあるため、私たちは、このマシンのセキュリティと安全の確保に、特に厳格に目を光らせる必要があるのです」。

契約の一環として、IBMとクリーブランド・クリニックは、同クリニックの研究者が量子コンピュータを、さらにAIと高性能コンピューティングを扱えるよう技能を構築することになっている。

「この革新的なコラボレーションを通じて、私たちは未来を現実にする特別なチャンスを得ました」と、クリーブランド・クリニック院長でCEOの医学博士Tom Mihaljevic(トム・ミハリェヴィッチ)氏は話す。「この新しいコンピュータ技術は、生命科学における発見に革命を起こし、結果的に人々の生活を向上させます。この発見加速装置によって、当院の名だたるチームは未来を見据えたデジタルインフラを構築し、医療の変革を推し進め、同時に未来の働き手を訓練し、経済を発展させます」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IBM量子コンピュータ

画像クレジット:IBM Research / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:金井哲夫)

IBMが量子コンピュータの開発者認定を開始

IBMは米国時間3月29日、量子コンピュータのプログラミングに関する初の開発者認定を開始すると発表した

量子コンピュータはまだ初期段階にあるとはいえ、業界の識者の多くは、今こそ基本的なコンセプトを学ぶべきだというだろう。量子コンピュータのハードウェア面では、すぐに直感的に理解できるものはほとんどないが、実際に使われているソフトウェアツールは、現在業界で活躍している人々が開発したものがほとんどであり、ほぼすべての開発者にとって身近に感じられるはずだ。

正式名称「IBM Quantum Developer Certification(IBM量子開発者認定)」は、当然ながら、IBM自身のソフトウェアツール、特に量子コンピュータ用のSDK(ソフトウェア開発キット)である「Qiskit(キスキット)」に焦点を当てている。Qiskitはすでに60万回以上もインストールされており、非常に人気が高いことが証明されている。2020年、IBM Quantum(クァンタム)とQiskitのチームが量子サマースクールを開催した際には、約5000人の開発者が参加したという。

しかし、開発者はQiskitの基本(量子回路の定義と実行など)を知るだけでなく、量子コンピューティング自体の基本も学ぶ必要がある。ブロッホ球パウリ行列ベル状態などを理解すれば、Pearson VUE(ピアソンVUE)プラットフォームで実施される予定の認定試験を受けるのに十分な準備が整うだろう。

IBMでQuantum Education and Open Science(量子教育とオープンサイエンス)のグローバルリードを務めるAbe Asfaw(エイブ・アスファー)氏は、これが計画されている一連の量子開発者認証で最初の段階にすぎないことを明かした。

「私たちが構築しているのは、複数の階層からなる開発者認証です」と、同氏は筆者に語った。「今回発表したものはその最初の段階で、開発者に量子回路の扱い方を案内するものです。Qiskitを使ってどのように量子回路を構築し、それをどのように量子コンピュータ上で実行するのか。そして、量子コンピュータ上で実行した後、その結果をどのように見て、どのように解釈するのか。それが、私たちが開発している今後の一連の認証の段階となり、これらの認証は、最適化、化学、金融などの分野で検討されているユースケースに与えられます。その人が量子回路を扱えると示すことができれば、これらの仕事をすべて開発者のワークフローに統合することが可能になります」。

4つの量子ビットと4つの古典ビットで構成される量子回路を作成する文はどれか?(画像クレジット:IBM)

量子回路を構築するためのスキルや直感を身につけるには時間がかかることもあり、IBMはかなり前から開発者に向けた量子コンピューティングについての教育に力を入れてきたと、アスファー氏は強調した。また、オープンソースのQiskit SDKには、開発者が回路レベル(古典的なコンピューティングの世界でC言語やアセンブリで記述するのに近い)とアプリケーションレベル(こちらでは多くのことが抽象化されている)の両方において作業するために必要な多くのツールが統合されていることも、アスファー氏は言及した。

「これは、現在クラウドやPythonで開発している人が、これらのツールを実行することで、容易に量子コンピューティングをワークフローに組み込めるようにするためのものです」と、アスファー氏はいう。「正直なところ、最も難しいのは、量子コンピューティングが今日、現実のものであり、量子コンピュータを使って仕事ができるという安心感を与えることだと思います。それはJupyter Notebook(ジュピターノートブック)を開いてPythonでコードを書くのと同じくらい簡単なことなのです」。

アスファー氏は、IBMがすでに量子コンピューティングに興味を持つ(パートナー企業の)開発者のスキルアップを支援していることに言及した。だが、これまでは非常に場当たり的なプロセスに過ぎなかった。今回、新たに導入される認定プログラムによって、開発者は自分のスキルを正式に証明することができ、自分のワークフローの中で量子コンピューティングを活用できる立場にあると示すことが可能になる。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:IBM量子コンピュータ

画像クレジット:IBM Research / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「量子ネイティブ」育成に向けた「Q-LEAP 量子技術教育プログラム」公式サイトが公開

「量子ネイティブ」育成に向けた「Q-LEAP 量子技術教育プログラム」公式サイトが公開

「Q-LEAP 量子技術教育(QEd)プログラム」は3月25日、公式サイトを公開した。同サイトは、経済・社会的な重要課題に対し、量子科学技術(光・量子技術)を駆使して、非連続的な解決(Quantum leap)を目指す文部科学省・研究開発プログラム「光・量子飛躍フラッグシッププログラム」(Q-LEAP)において採択された人材育成プログラムのひとつとして運営されている。研究開発課題名は「量子技術教育のためのオンラインコース・サマースクール開発プログラム」で、研究開発代表者は野口篤史准教授(東京大学総合文化研究科)。

同サイトでは、量子技術や各種の量子実験に関する定期的なオンラインコースと、各機関でのインターンシップ、また集中的なサマースクールを組み合わせたハイブリッド型式による教育プログラムを作成予定。これらコースは開催とともに動画としても公開。内容に合わせた教科書に類する教材も作成・公開予定としている。

またメンバー・講師として、日本を代表する様々な物理系の若手研究者が参画し、最先端の量子技術の講義を行う。

  • 東京大学 飯山悠太郎氏。専門:量子ソフトウェア
  • 大阪大学 生田力三氏。専門:量子通信
  • 東京大学 長田有登氏。専門:冷却原子・強磁性スピン・イオントラップ・超伝導量子回路
  • 理化学研究所 川上恵里加氏。専門:電子スピン
  • 沖縄科学技術大学院大学 久保結丸氏。専門:常磁性スピン・ハイブリッド量子系
  • 東京工業大学 小寺哲夫氏。専門:量子ドット・スピン
  • 沖縄科学技術大学院大学 高橋優樹氏。専門:イオントラップ
  • 東京大学 武田俊太郎氏。専門:光量子計算
  • 東京大学 玉手修平氏。専門:超伝導量子回路
  • 東京大学 寺師弘二氏。専門:量子ソフトウェア
  • 分子科学研究所 富田隆文氏。専門:冷却原子
  • 大阪大学/量研機構 根来誠氏。専門:NMR・量子計測・電子スピン・超伝導量子回路
  • 東京大学 野口篤史氏。専門:量子制御
  • NTT物性科学基礎研究所 橋坂昌幸氏。専門:量子ホール効果
  • 量子科学技術研究開発機構 増山雄太氏。専門:量子計測・超伝導量子回路と冷却原子
  • 理化学研究所 松尾貞茂氏。専門:超伝導・ナノ細線・半導体物性
  • 理化学研究所 山口敦史氏。専門:原子時計
  • 国際基督教大学 山崎歴舟氏。専門:ハイブリッド量子系
  • 東京工業大学 米田淳氏。専門:量子ドット・電子スピン

近年量子技術は新たな展開を迎えており、これまで見ることさえ難しかった量子が測定技術や周辺テクノロジーにより「操作の対象」となってきた。

同サイトは、量子コンピューター・量子シミュレーション・量子インターネット・量子センサーなどの応用が量子技術の成熟によって可能となってきていること、また今後10~30年という間に社会進出してくるものと指摘。

ただし、量子技術また量子を取り巻くテクノロジーを扱う技術者の育成は明らかに遅れを取っているという。同サイトのプログラムを通し、これまでの量子技術を習得するとともに、今後の未来を開拓する新たな知見の探求を呼びかけている。

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日本IBMが量子コンピューター「IBM Q」を神奈川県・かわさき新産業創造センターに設置、2021年中に稼働

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は3月23日、東京大学とIBMによる「Japan IBM Quantum Partnership」で表明していた「IBM Quantum System One」の国内設置拠点について、「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」(KBIC)に決定したと発表した。稼働開始は本年中を予定。

ここに設置される量子コンピューターについては、東京大学とIBMの契約に基づき東京大学が占有権を有する。東京大学はこのシステムを活用し、企業、公的団体や大学等研究機関と量子コンピューターの利活用に関する協力を進める。

かわさき新産業創造センターは、「新川崎・創造のもり」地区に位置する産学交流によるインキュベーション施設。2012年よりIBM東京基礎研究所のサイエンス&テクノロジー・グループが東京大学と共同で社会連携講座を開設しており、次世代ITに関するハードウェア研究を続ける研究拠点でもある。

量子コンピューターの常時安定稼働には電気・冷却水・ガスなどのインフラの安定供給や耐振動環境が必要で、KBICは川崎市の全面的な支援により安定稼働に最適な環境を実現しているという。量子コンピューターを安定稼働させることで、同研究所が現在東京大学と進めている研究活動が加速することが期待されるとしている。

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カテゴリー:ハードウェア
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マイクロソフトの量子計算機プラットフォーム「Azure Quantum」がパブリックプレビューに

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間2月1日、Honeywell Quantum Solutions、IonQ、1QBitといったパートナーが提供する量子ハードウェアとソフトウェアツールを利用するためのクラウドベースプラットフォーム「Azure Quantum」がパブリックプレビューに入ったと発表した。Azure Quantumは2020年5月から限定プレビューが始まっていた。当時はMicrosoftの一部パートナーや顧客にしか公開されていなかったが、2月1日からは量子コンピューティングに興味のある人は誰でもサービスの試してみることができる。

このサービスは現在、わずかな料金で提供されている。しかし、今後はすぐに値段が高くなる可能性がある。完全な料金表はこちらから確認できるが、基本的なシステムの利用方法では計算時間あたり約10ドル(約1000円)が必要になる。

画像クレジット:Microsoft

量子コンピューティングはまだ黎明期にあるため、MicrosoftやIBM、Rigettiのような競合企業の特定のプラットフォームで構築することは、特定のツールセットを購入することを意味する。Microsoftの場合、それはオープンソースのQuantum Development KitとそのQ#言語、そして最近発表されたLLVMベースのハードウェアに依存しないQuantum Intermediate Representation(QIR)中間言語だ。

「Azure Quantumのパブリックプレビューへの移行は、量子コンピューティングと私たちのエコシステムにとって重要なマイルストーンです」と、Microsoft QuantumのGMであるKrysta Svore(クリスタ・スヴォー)氏は伝える。「これはNational Quantum Initiative Quantum Research Centersへの選定、新しいAzure Quantumパートナーの追加、量子ビットのスケーリング制御回路におけるハードウェアの進歩など、2020年の勢いを引き継いでいます」。

量子コンピュータを構築するためのMicrosoftの取り組みは、まだ実用的な量子ビットには至っていないが、同社は他の分野でも前進している。しかし当分の間、Microsoftはこのプラットフォームを動かすために、同分野の他のプレイヤーとの提携に賭けている。これにより同社は「世界初の量子ソリューション向けフルスタック型パブリッククラウドエコシステム」を提供していると主張することも可能になる。

画像クレジット:Microsoft

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:MicrosoftAzure Quantum量子コンピュータ

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:塚本直樹 / Twitter

blueqatとコーセーが量子コンピューティング活用し化粧品の製品特徴分布を多次元解析する独自アルゴリズム開発

blueqatとコーセーが量子コンピューティング活用し化粧品の製品特徴分布を多次元解析する独自アルゴリズム開発

コーセーは12月17日、量子コンピュータソフトウェア開発ツールおよびクラウド環境提供のblueqatと共同で、ハイブリッド量子コンピューティング技術を応用して化粧品の製品特徴の分布を解析する独自アルゴリズムを開発し、特許出願を行ったと発表した。

これは、製品特徴のポジショニングについて、従来一般的であった2次元マッピングではなく、多次元空間で捉えて解析する手法という。多次元空間において既存品が多く存在する「実現性の高い」領域と、既存品の少ない「新規性の高い」領域の探索を行う。

加えて、量子コンピューティング技術の応用により、これまで困難であった多次元での製品ポジショニングマップの解析を可能にした。

同技術によって、既存領域を可視化すると同時に、未知の製品領域が明らかになり、人間が思いもよらなかった新しい化粧品設計への可能性を拓くことができたとしている。

またハイブリッド量子コンピューティング技術は、複雑な計算に対して、量子コンピューターと従来型コンピューターを段階的に組み合わせて計算方法を最適化するという技術。それぞれのコンピューターに得意な計算分野があるため、役割分担をすることで全体の計算を大幅に高速化する可能性を持つとしている。

コーセーによると、化粧品の新製品開発においては、ブランドや製品のポジショニングマップを作り、既存製品の官能など品質の位置関係を可視化して着想を得ることが一般的という。人間は平面での広がりを最も効率よく認識できることから、ポジショニングマップは平面図(2次元)で作成することが多く、平面図で既存製品を分布させると、既存品が多く存在する「実現性の高い」領域と、既存品が少ない「新規性の高い」領域が可視化される。

しかし、化粧品開発で考慮すべき製品特徴は「しっとり」「さらさら」といった「官能項目」に加えて、「処方報」「効果効能」やSPF値のような「スペック」から粘度のような「物理特性」まで非常に多岐に渡るため、これらを複合的に考慮するためには多次元のポジショニングマップ作成が必要となるとしている。

これは複数の図を同時に解析するようなものであるため、現実的には人間が認識できる範囲を超えており、熟練研究者のバランス感覚に頼っているのが現状という。また、コンピューターによる統計的手法を用いることで多次元のポジショニングマップ解析は可能なものの、解析対象の軸を増やすほど計算時間がかかるため、従来のコンピューターのみでの実運用は困難としている。

今後コーセーは、今回の技術を応用し、新しい美の価値、未知の驚き、ワクワクする化粧品を提供することを目指す。同社はこれからも、blueqatとの取り組みのように、既存の価値観や技術分野に捉われない、新しい顧客価値に向けてより一層積極的に取り組んでいくとしている。

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最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテストの結果発表

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表
日本IBMは、11月9日から11月30日までの3週間にわたり開催した、量子コンピューターの競技型プログラミング・コンテスト「IBM Quantum Challenge」(The Quantum Challenge Fall 2020)の結果を発表した。東京大学工学部物理工学科の長吉博成氏が、全問クリアに加えて、最後の問題を解く際に最も低い量子コストを達成し最優秀者となった。

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表

同コンテストは、参加枠2000名限定に対し、85ヵ国から3320人以上の応募があったという。最も申し込みが多かった国はインドで、日本は2番目だった。また男性は75%で、女性は25%という比率だった。

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表
コンテスト参加者は、毎週難易度が上がる形で新しい課題を与えられ、2000名の参加者のうち、第1週目の演習課題をすべて解けた者は1091名、第2週目が576名だった。最後の最も難しい本戦課題を含め、すべての演習課題を正解できた者は227名だった。

優勝者の長吉氏は、問題の制約条件のユニークな特徴を利用した戦略を適用することで、最も少ない量子コストで解を得ることに成功した。

最終週の本戦問題については、問題作成者のIBM Quantumの松尾篤史氏が執筆した解答例長吉氏の解法と解説のどちらも、Github上で公開されている。さらに、トップチームの解法解説も掲載されており、アプローチや駆使したテクニックを学べる

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表

コンテストの内容は、qRAM(量子ランダムアクセスメモリー)を使って近未来の量子データ構造を実装し、データベース探索を行うGrover(グローバー)のアルゴリズムを使って量子ゲームソルバーを設計する方法を学ぶというもの。qRAMとGroverのアルゴリズムの組み合わせは、将来の量子システムを使った量子機械学習や複雑な意思決定問題の分野で、実生活の問題を解決するために数多くの応用が見込まれている。

参加者のスコアは、「コスト=S+10C」という式に基づいて、回路の実装コストを測定することで決定。

(Sは1量子ビットゲートの数、CはCNOT(CX)ゲートの数で)任意の量子回路は、1量子ビットゲートと2量子ビットゲートに分解できる。現在の誤り(エラー)耐性のないNISQ(ニスク。Noisy Intermediate-Scale Quantum)デバイスでは、CNOTのエラーレートは、一般的に1量子ビットゲートのものと比較して10倍となる。そのため、回路の実装コストを評価するために、CNOTゲートを1量子ビットゲートの10倍に設定。今回のチャレンジでは少ないゲートコストで正解にたどり着くことがゴールとなっている。

日本IBMによると、今回のコンテストの大きな成果は、量子コンピューティングと、量子コンピューター向けPython用フレームワーク「Qiskit」に関する知識とスキルレベルの向上といった学習体験にあるという。参加者の事前と事後アンケートの結果を比較したところ、より高いレベルの経験とスキルを身につけた様子がうかがえるとした。

量子コンピューティング

量子コンピューティングに関する知識の変化

Qiskitに関する知識とスキルレベルの変化

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タグ:IBM(企業)IBM Quantum Challenge東京大学(用語)プログラミング(用語)量子コンピュータ(用語)

IonQ、2023年にデータセンター向けラックマウント型量子コンピューターを発売予定

量子コンピューティングのスタートアップIonQ(イオンキュー)は12月9日、今後数年間のロードマップを発表した。9月のIBM(アイビーエム)からの同様の動きに続くものだが、その内容は控えめに言っても、かなり意欲的なものだ。

今年初めのTechCrunch Disruptイベントで、イオンキューのCEO兼社長であるPeter Chapman(ピーター・チャップマン)氏は、わずか5年後にはデスクトップ型の量子コンピューターが手に入ることを示唆した。これは、全く異なる方式の量子テクノロジーを使用していることも多い同社の競合企業からは聞ける話ではないだろう。しかし、イオンキューは、2023年にはデータセンター向けにモジュラー型のラックマウント量子コンピューターを販売できるようになり、2025年までに同社のシステムは、さまざまなユースケースで量子の幅広い優位性を実現できるほど強力なものになるだろうと言う。

今日の発表に先立って行われたインタビューで、チャップマン氏は、同社が2021年に向けて取り組んでいるハードウェアのプロトタイプを見せてくれたが、それはワークベンチに収まるものだった。実際の量子チップの大きさは、現在50セント硬貨の大きさだ。同社は、システムを動作させるすべての光学系を統合した1つのチップに、実質上、同社のコアテクノロジーを実装しようと試みている。

画像クレジット:イオンキュー

 

「それが目標だ」と同氏はチップについて語る。「2023年になればすぐに、別の方法でスケールアップすることができる。そして、台湾の誰かに量産を頼んで1万個作ってもらえばいい。製造でもスケールアップが可能になる。当社が開発しているハードウェアの中にあるもので量子的なものは何もない」と同氏は述べたが、イオンキューの共同設立者でチーフサイエンティストのChris Monroe(クリス・モンロー)氏はすぐにそれに割って入り、「原子を除いてはそうだ」と付け加えた。

これは重要なポイントだ。同社のマシンのコアテクノロジーとしてイオントラップ型量子コンピューティングに賭けたおかげで、イオンキューは、アイビーエムなどがマシンを機能させるために必要とする、低温度に悩まされる必要がないからだ。一部の懐疑論者は、イオンキューのテクノロジーはスケールアップが難しいと主張しているが、チャップマン氏とモンロー氏はそれをあっさりと否定している。事実、イオンキューの新しいロードマップでは、2028年までに数千のアルゴリズム量子ビット(algorithmic qubit、誤り訂正処理のために、10倍から20倍の物理量子ビットで構成されるイオンキュー独自の指標)を持つシステムを目指している。

「2024年の初めに約40量子ビット(アルゴリズム量子ビット)に達した時点で、おそらく機械学習において量子の優位性が見られるようになるだろう」とチャップマン氏は説明する。「ある程度広範な分野で量子の優位性が得られるのは、大体72量子ビットに到達した時ではないかというのが共通認識だろう。つまり、2025年だ。2027年に入れば、数百量子ビットに達するだろう。もしかしたら[2028]年には数千量子ビットに達するかもしれない。そして今や、完全なフォールト・トレランスに乗り出しつつある」。

イオンキューは量子アルゴリズムの実行に使用できる量子ビットをアルゴリズム量子ビットと呼んでいるが、その増加数は、徐々に大きくなっていくだろう。業界の人間は「論理量子ビット」について話す傾向があるが、イオンキューの定義は少し異なる。

異なる量子システムを比較する方法について話していると、チャップマン氏は「忠実度は十分ではない」と指摘する。搭載するのが72量子ビットであろうと7200万量子ビットであろうと、そのうちの3量子ビットしか使えないのであれば意味がない、と同氏は言う。「『1000量子ビットに達する予定』と書かれたロードマップを見ても、『それで?』となるだけだ。当社であれば、個々の原子を使っているので、ガスの小瓶を見せて、『見てくれ、1兆量子ビットある、すぐに計算に取り掛かれるぞ!』と言うことができる。しかし、それではあまり実用的ではない。そこで、当社のロードマップでは使用できる量子ビットについて説明しようと試みたわけだ」。

同氏はまた、アイビーエムや量子エコシステムに参加する他の企業が支持している量子ボリュームは、あるポイントでの数値が高くなりすぎるため、特に有用ではないと主張する。しかしイオンキューは、基本的にはまだ量子ボリュームを使用しているものの、アルゴリズム量子ビットを特定のシステムの量子ボリュームの二進対数として定義している。

イオンキューが32アルゴリズム量子ビット(現在のシステムは22)を達成できれば、現在のシステムでの400万量子ボリュームに代わり、42億量子ボリュームを達成することが可能になるという

モンロー氏が言及したように、同社のアルゴリズム量子ビットの定義には、可変誤り訂正も考慮されている。誤り訂正は量子コンピューティングの主要な研究分野であることに変わりはないが、当面はゲートの忠実度を高く保つことができるため、まだ心配する必要はないとイオンキューは主張する。そして、既に初めてのフォールトトレラントな誤り訂正処理を13対1のオーバーヘッドで実証している。

「当社の方式のエラー率は、もともと非常に低いため、現時点の22アルゴリズム量子ビットであれば誤り訂正を行う必要はない。しかし、[99.99%]の忠実度を得るために、多少の誤り訂正を含めるつもりだ。それはいつでもできる。簡単な調整のようなものだ。どの程度の誤り訂正が必要かというと、オールオア・ナッシングではない」とモンロー氏は説明する。

イオンキューは、「他の方式では、ゲートの忠実度や量子ビットの接続性が低いため、1つの量子ビットの誤り訂正を行うには、1000、1万、あるいは10億量子ビットが必要になるかもしれない」との考えを率直に話す。

イオンキューは同日、これらすべてを実践し、システムの比較が容易になるとするAlgorithmic Qubit Calculator(アルゴリズム量子ビット計算機)を公開した。

近い将来、イオンキューは、誤り訂正のために16対1のオーバーヘッドを使用する予定だ。つまり、1つの高忠実度のアルゴリズム量子ビットを確保するために16の物理量子ビットを使用するということだ。そして、約1000論理量子ビットに達する時には、32対1のオーバーヘッドを使用する予定だ。「量子ビットを追加すると、忠実度を上げる必要がある」とチャップマン氏は説明する。つまりイオンキューは、2028年の1000量子ビットマシンのためには、3万2000物理量子ビットを制御する必要があるということだ。

イオンキューは、自社方式のスケールアップに技術的なブレークスルーは必要ないと長い間公言してきた。実際、同社は、1つのチップに多くのテクノロジーを搭載することで、特別なことをしなくてもそのシステムは、より安定したものになると主張する(結局のところ、ノイズは量子ビットの大敵だ)。また、レーザービームを遠くまで飛ばす必要がなくなることも、安定する理由の1つだ。

チャップマン氏は、些細なことでもためらわず宣伝するが、同社は近日中に量子コンピューターの1台を小型飛行機で飛ばして、システムの安定性のデモンストレーションを計画しているとさえ述べている。しかし、注目に値するのは、イオンキューが短期間でシステムをスケールアップすることに、競合企業よりもはるかに強気であるということだ。モンロー氏も同様の認識だが、現時点では基本的な物理学の話だと主張する。

「特にソリッドステートプラットフォームでは、物理学の面で素晴らしい仕事をしている」とモンロー氏は言う。「毎年少しずつ進歩しているが、10年後のロードマップは、ソリッドステート(固体)量子ビットをベースにしたもので、物質科学のブレークスルーに依存している。達成は可能かもしれないが、確証はない。しかし、原子の物理は上手くまとめられているし、当社は工学的な進路に非常に自信を持っている。なぜなら、実績のあるプロトコルと実績のあるデバイスに基づいているからだ」。

「当社には製造の問題がない。100万個の量子ビットが欲しいって?問題ない。すぐにやってみせるさ」とチャップマン氏は冗談交じりに話した。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IonQ 量子コンピュータ

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(翻訳:Dragonfly)

IPAが量子コンピューティング普及に向け「量子アニーリング・イジングマシンプログラミング実践講座」開催

IPAが量子コンピューティング普及に向け「量子アニーリング・イジングマシンプログラミング実践講座」開催

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は11月13日、量子コンピューティング技術の普及・啓発を目的に「量子アニーリング・イジングマシンプログラミング実践講座」(無料)を全3回の日程で開催すると明らかにした。定員は20名。定員を上回る応募があった場合は抽選となり、抽選結果は12月3日18:00までに連絡を行う。申し込みはconnpassより行える。

開催日時は、第1回:2020年12月11日18:30~21:00(オンライン)、第2回:2021年1月22日18:30~21:00(オンライン)、第3回:2月23日10:00~18:00(オフライン)。第3回はワークショップ形式で、実施会場は東京都内の貸会議室を予定。また第1~3回まで全3回への申込みとなり、一部だけの受講は行えない。

応募条件は、Pythonによる基本的なプログラミング経験、同講座で使用可能なPCを用意できること、第1回および第2回でオンライン受講できるインターネット環境、第3回開催の東京都内の会場に参加できること、第1~3回まで全てに参加できること。

講座では、Pythonによる基本的なプログラミングの経験を前提に、最新の量子アニーリングマシンやイジングマシンを用いたプログラミングの基礎を学ぶ。また、受講者が考えたテーマによるアプリケーションを開発。実機に触れる機会の少ないアニーリングマシンやイジングマシンを実際に利用できる学習機会としている。講師は、最前線で量子アニーリング・イジングマシンを用いた研究開発を実践している企業の開発者と大学の研究者が担当する。

  • 申し込み:「【全3回】量子アニーリング・イジングマシンプログラミング実践講座」より応募
  • 定員:20名。定員を上回る場合は抽選。抽選結果は12月3日18:00までに連絡
  • 応募条件:Pythonによる基本的なプログラミング経験、同講座で使用可能なPCを用意できること、第1回および第2回でオンライン受講できるインターネット環境、第3回開催の東京都内の会場に参加できること、第1~3回まで全てに参加できること
  • 講師:松田佳希氏(フィックスターズ ソリューション事業部 エグゼクティブエ ンジニア)、田中宗氏(慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 准教授)、棚橋耕太郎氏(リクルートコミュニケーションズ リードエンジニア)、田村亮氏(物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研 究拠点 主任研究員 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 講師)
  • 第1回:12月11日18:30~21:00 オンラインによるハンズオン形式
  • 第2回:1月22日18:30~21:00 オンラインによるハンズオン形式
  • 第3回:2月23日10:00~18:00 オフライン(集合)でのワークショップ形式。実施会場は東京都内の貸会議室を予定

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IBMが量子コンピューターの競技型オンライン・プログラミング・コンテスト開催、慶応大とコラボ

IBMが量子コンピューターのオンライン・プログラミング・コンテスト開催、慶応大がコラボ

IBMは11月2日、慶應義塾大学量子コンピューティングセンターとのコラボレーションのもと、量子コンピューターの競技型オンライン・プログラミング・コンテスト「IBM Quantum Challenge」を開催すると発表した。期間は日本時間11月9日9時から3週間(11月30日午前8時59分59秒まで)。高校生以上なら誰でも応募可能だが、参加枠2000名限定となっているため早めの登録を呼びかけている。また事前にIBMアカウント(IBM id)へのアカウント登録(無料)が必要。

なお、参加登録を完了した人すべてに参加権が与えられるわけではなく、参加確定者には、本番開始前までに確定通知とともに本番サイトから参加方法を案内する。

  • IBM Quantum Challenge
  • 開始: 11月8日19時00分(米国東部標準時)、11月9日9時00分(日本時間)
  • 終了: 11月29日午後6時59分59秒(米国東部標準時)、11月30日午前8時59分59秒(日本時間)
  • 参加枠: 2000名限定
  • 応募方法: 「Hello, quantum world」または「IBM Quantum Experience」より応募。IBMアカウント(IBM id)へのアカウント登録(無料)が必要
  • 参加確定者には、本番開始前までに確定通知とともに本番サイトから参加方法を案内

IBM Quantum Challengeは、初心者から経験者までコンテスト形式チャレンジに参加することで、量子コンピューティングに関する基礎から応用まで学べるというもの。

今回のチャレンジは第3回にあたり、参加者には量子コンピューティングの可能性をさらに押し広げ、次の重要なハードウェアのマイルストーンを達成するために新たな課題に挑戦してもらうという。より大規模な量子システムを考えるときに不可欠な要素となる量子データ構造について学び、探求することになる。

2019年9月実施の「IBM Quantum Challenge 2019」では、世界中から初心者と経験者を問わず参加(量子アルゴリズム開発のスタートアップ「QunaSys」チームが準優勝)。2020年5月の第2回チャレンジでは、45ヵ国から1745人が参加し、1日で、18台のIBM Quantumシステム上で10億回路以上の実行に成功した。

IBM Quantum Challenge

IBM Quantum Challengeでは、オープンソースの量子コンピューター向けPython用フレームワーク「Qiskit」を用いて、毎週新しい演習問題に取り組むことで、量子コンピューティングの知識とスキルを向上させることができる。

Qiskitについては、「Qiskit 0.23.0 documentation」の日本語版が公開されている。

  • 1週目: 最初の週の演習セットは、初心者に向け量子計算の基礎を学べるよう設計。また、有名な量子アルゴリズムであるグローバーのアルゴリズムを学習し、その特性を探る。経験者にとっても、第1週目は第2週に備えるための良いウォーミングアップとなる
  • 2週目: 近未来の量子システムを想定した量子データ構造の実装を学習し、グローバーのアルゴリズムを使って解く量子ゲームソルバーを設計する方法を学ぶ。この演習は、第1週で学んだ知識を活かしながら、第3週(最終週)の準備にもつながる
  • 3週目: 参加者はより複雑なデータ構造を扱うことを求められ、前の週に学習したグローバーのアルゴリズムを使って問題を解くことが求められる。経験豊富な量子プログラマーにとっても、難しく感じるはず

なお、前回および今回のチャレンジは、慶應義塾大学量子コンピューティングセンターとのコラボレーションのもと、開催。出題問題の作成を中心とする、佐藤隆貴彦氏と西尾真氏の貢献も挙げられている。

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エー・スター・クォンタムが3億円調達、量子コンピューター活用TV広告枠マーケシステム実装に向け電通と提携

エー・スター・クォンタムが3億円調達、量子コンピューター活用のTV広告枠マーケティングに向け電通と提携

量子コンピューターのソフトウェア開発を手がけるエー・スター・クォンタムは11月2日、第三者割当増資として、シリーズA総額3億円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、Abies Ventures、電通グループ、NECキャピタルソリューションなど運営の価値共創ベンチャー2号有限責任事業組合、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合、NBCエンジェルファンド2号投資事業有限責任組合、Plug and Play Japanおよび米Plug and Play Tech Center。

また、電通と量子コンピューターを活用したテレビ広告枠の組み合わせ最適化と運用の高速化により、新たなマーケティングソリューションの開発・実装を目指すため業務提携を締結したと明らかにした。

調達した資金は、業務提携を行った電通をはじめ共同研究を行うパートナー企業との連携、物流分野、広告分野、保険分野、金融分野、医療分野への挑戦、エンジニア・研究者の採用強化にあて、企業価値を向上させる。さらに、これらを発展させ量子コンピューターのソフトウェア開発領域においてグローバルなリーディングカンパニーに進化するため研鑽を重ねるとしている。

エー・スター・クォンタムは、「私たちは量子計算に基づき、従来の科学では解決困難な社会的課題を最適化することにより人類の進化に貢献する」というビジョンのもと、2018年7月に創業。特に、物流分野、広告分野の組み合わせ問題を解くための研究開発を行ってきた。

エー・スター・クォンタムは、量子コンピューターの基盤技術確立に貢献することと、ゲート方式とアニーリング方式のどちらにもかかわる技術を確立し、付加価値を生み出だすためにビジネス利用が可能なソフトウェア開発と早期事業化を目指す。

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タグ: エー・スター・クォンタム電通資金調達(用語)量子コンピュータ(用語)日本

QunaSysが量子コンピューター向け量子計算クラウド「QunaSys Qamuy」プライベートβ提供

QunaSysが量子コンピューター向け量子計算クラウド「QunaSys Qamuy」プライベートβ提供

量子コンピューターのアプリケーション開発に取り組むQunaSys(キュナシス)は10月20日、量子コンピューター上で量子化学計算を行うためのクラウドサービス「QunaSys Qamuy」のプライベート・ベータ版を提供開始した。プライベート・ベータ版提供を通じて国内外ユーザー企業からのフィードバックを獲得し、研究開発方針に随時反映を行うことで、開発成果の社会実装を加速する。

同社は、令和元年度(2019年度)より内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」(管理法人:量研)の研究テーマのひとつ「次世代アクセラレータ基盤に係る研究開発」に参画。

同研究テーマでは、今後重要な計算資源となる次世代アクセラレーター(イジング型コンピューター、NISQコンピューター、誤り耐性ゲート型コンピューターなど)を対象として、各々の得意・不得意を考慮し、適材適所で最適に活用することでアプリケーション全体を高速化・高度化するプラットフォームの構築を目指している。この研究開発において、QunaSysは、NISQ(Noisy Intermidiate Scale Quantum)コンピューター、誤り耐性ゲート型量子コンピューターのインターフェイス技術の開発を担い、主に量子化学計算を対象としたアルゴリズムエンジンの開発に注力しているという。

今回、開発を進めてきたアルゴリズムエンジンの基幹部分が完成したことから、今後のさらなる機能拡充に向けたフィードバックを得ることを目的として、同エンジンを組み込んだクラウドサービス「QunaSys Qamuy」の試験的な提供を開始したとしている。

同社は、QunaSys Qamuyについて、量子コンピューター向け量子化学計算クラウドサービスとしては世界最高性能・最多機能としている。QunaSys Qamuyを用いることで、古典コンピューター上での量子化学計算との性能比較・各種アルゴリズムの性能比較などの検証が可能となるという。

2020年度は、QunaSys運営の量子コンピューターの応用検討コミュニティ「QPARC」のプログラムにおいて、メンバー企業にプライベート・ベータ版として提供を開始する。また、量子化学計算活用においてすでに豊富な実績を持つ国内外の材料・製薬・エレクトロニクス・自動車領域の先進企業にも、先行的に活用してもらう予定。

QunaSysが量子コンピューター向け量子計算クラウド「QunaSys Qamuy」プライベートβ提供

2018年2月設立のQunaSysは、世界に先駆けた量子コンピューターの産業応用を目指し、量子化学計算を行うためのアルゴリズムエンジンなどの開発を手がけるスタートアップ企業。量子コンピューターの新しい使い方・アルゴリズムを提案し、それらアルゴリズムを実際の材料開発に活用するソフトウェアの開発などを進行。また、日本の量子コンピュータ業界のエコシステム形成にも取り組んでいる。

  • 量子コンピューター向けアルゴリズムの開発(自社単独・共同開発)
  • 量子化学計算向けクラウドサービスQunaSys Qamuyの開発
  • 量子技術に関するメディア「Qmedia」の運営
  • 量子コンピューターの勉強のための無料教材提供サイト「Quantum Native Dojo」運営
  • 量子コンピューターの応用検討コミュニティ「QPARC」の運営

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カテゴリー: ネットサービス
タグ: QunaSysQunaSys QamuyQPARC量子コンピューター日本

東芝が量子暗号通信システム事業を2020年度第4四半期から開始、2035年度に市場の約1/4獲得目指す

東芝が量子暗号通信システム事業を2020年度第4四半期から順次開始

東芝は10月19日、国内外での量子暗号通信(QKD。Quantum Key Distribution)システムのプラットフォーム提供およびシステムインテグレーション事業を2020年度第4四半期から順次開始すると発表した。

東芝は、これまで20年以上の歳月をかけて量子暗号通信の技術開発に取り組み、世界トップクラスの成果と実績を蓄積。量子鍵配送サービスをいち早く提供することで、2035年度に全世界で約200億ドル(約2.1兆円)と見込まれる量子鍵配送サービス市場の約1/4(2030年度で約30億ドル・約3150億円)を獲得し、量子暗号通信業界のリーディングカンパニーを目指す。

国内事業では、東芝デジタルソリューションズが実運用環境下における複数拠点間の量子暗号通信実証事業を情報通信研究機構(NICT)より受注。2020年度第4四半期に量子暗号通信システムを納入し、2021年4月に実証事業を開始予定。同社は、これまで量子暗号通信の様々な実証実験を進めているが、量子暗号通信システムインテグレーション事業としては同案件が日本初の案件となる。

海外事業では、英国政府研究開発機関において量子暗号通信を実用化する、BT Group plc.との共同実証試験を9月16日から開始済み。また米国では、Quantum XchangeとともにVerizon Communications Inc.が9月3日に公表した量子暗号通信トライアルに参加している。

東芝は、2021年度以降、英国・米国のほかに、欧州、アジアの主要国でも現地事業パートナーとともに量子暗号通信システム事業を推進する予定。

量子暗号通信事業を推進するため、東芝は2種類の量子鍵配送プラットフォームを開発。ひとつはデータ通信用光ファイバーを共有する「多重化用途向け」プラットフォーム、もうひとつは鍵配送の速度と距離を最大化した「長距離用途向け」プラットフォーム。同社は今後、国内外で量子鍵配送ネットワークを構築し、金融機関を中心とした顧客向け量子鍵配送サービスを2025年度までに本格的に開始する予定。

本格的なサービスの開始に先立ち、英国ケンブリッジに製造拠点を置き、2020年度第3四半期より特定ユーザー向けのサービス提供を開始する。

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カテゴリー: セキュリティ
タグ: 東芝量子暗号量子コンピュータ日本

凸版印刷・NICT・QunaSys・QunaSys・ISARAが量子セキュアクラウド技術の確立で連携

凸版印刷・NICT・QunaSys・QunaSys・ISARAが量子セキュアクラウド技術の確立で連携

凸版印刷情報通信研究機構(NICT)QunaSysISARAは10月19日、高度な情報処理と安全なデータ流通・保管・利活用を可能とする量子セキュアクラウド技術の確立に向け4社連携を開始すると発表した。

量子セキュアクラウド技術の開発を4社連携のもと推進し、2022年度中に社会実装に向けたソフトウェアの実証実験を開始する。また、2025年に限定的な実用化を、2030年にサービス化を目指す。

量子コンピューティング技術とは、量子力学的な現象を持つ量子ビットを用いた計算処理技術であり、高い計算処理能力を有する次世代コンピューティング技術として期待されている。

量子セキュアクラウド技術は、量子暗号技術と秘密分散技術を融合し、データの安全な流通・保管・利活用を可能とするクラウド技術。量子セキュアクラウド技術の確立により、改ざん・解読が不可能な高いセキュリティ性を担保するだけでなく、例えば、医療、新素材、製造、金融分野で蓄積された個人情報や企業情報など秘匿性の高いデータの収集・分析・処理・利用を可能とする。

具体的な連携内容としては、システム設計や仕様検討、最新の量子暗号技術の実装、秘密分散技術を利用したバックアップやデータ保管の実装、耐量子-公開鍵暗号によるデジタル署名の開発などにより、データ保管・交換基盤および耐量子-公開鍵認証基盤となる量子セキュアクラウド技術を確立する。

またNICTは、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、量子ICTフォーラム/量子鍵配送技術推進委員会やITU-T(国際電気通信連合/電気通信標準化部門)、ISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)やETSI(欧州電気通信標準化機関)などの国際標準化組織へ、2022年度までにネットワーク要件、ネットワークアーキテクチャ、ネットワークセキュリティ要件、および鍵管理、量子暗号モジュールの評価・検定に関する提案を行い、国際標準化を推進。凸版印刷はICカードに関する知見を活かし、NICTをサポートする。

4社の役割

  • 凸版印刷: ICカードの開発・製造事業を通し培ってきた、暗号技術・認証技術・不正アクセス防止技術など、ICカードのセキュリティ技術に関する知見を活用。ICカードへの耐量子-公開鍵暗号の適用および量子セキュアクラウド技術の利用拡大に向けた導入支援、秘匿性の高い情報の安全なバックアップやデータ流通サービス、ソリューションの提供などに向けて取り組む
  • NICT: 内閣府主導の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety5.0 実現化技術」の一環として、東京QKD(量子鍵配送)ネットワークなどを活用し、量子セキュアクラウド技術の研究を実施。これまでに量子暗号、秘密分散および次世代の耐量子-公開鍵認証基盤を搭載した、保健医療用の長期セキュアデータ保管・交換システム「H-LINCOS」(Healthcare long-term integrity and confidentiality protection system)を開発。これら知見と経験を活かし、H-LINCOSやさらに高度な計算エンジンを搭載した量子セキュアクラウド技術の確立とその国際標準化を目指して取り組む
  • QunaSys: 量子コンピューター向けアルゴリズムおよび量子コンピューターを活用した量子化学計算ソフトウェア「QunaSys Qamuy」の開発を通し、量子コンピューティング技術を蓄積。その知見と経験を活かし、量子セキュアクラウド技術を活用した材料開発のサービス提供、またユーザー視点での量子セキュアクラウド技術の構築に貢献する
  • ISARA: 長年にわたるサイバーセキュリティ技術の蓄積をもとに、現在のコンピューティングエコシステムを量子の時代まで守り続ける、アジャイルな暗号技術と耐量子セキュリティソリューション事業の世界的リーダー。また、NICTと構築した「H-LINCOS」では、保健医療分野のための耐量子-公開鍵認証方式を開発。これらの暗号実装技術と公開鍵認証技術をアジャイル方式で開発してきたノウハウを活かし、量子セキュアクラウド技術の国際標準化に準拠する耐量子セキュリティソリューション開発を目指す

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